(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】受動部品
(51)【国際特許分類】
H05K 1/16 20060101AFI20241112BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20241112BHJP
H05K 3/38 20060101ALI20241112BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20241112BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H05K1/16 D
H05K3/46 H
H05K3/38 B
H01L27/04 C
H05K3/46 Q
(21)【出願番号】P 2020190480
(22)【出願日】2020-11-16
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【氏名又は名称】川本 学
(72)【発明者】
【氏名】中谷 比沙希
(72)【発明者】
【氏名】姫田 ▲高▼志
(72)【発明者】
【氏名】木倉 丈
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/167456(WO,A1)
【文献】特開2002-009248(JP,A)
【文献】特開2006-073850(JP,A)
【文献】特開2012-070018(JP,A)
【文献】特開2007-281278(JP,A)
【文献】特開2006-128309(JP,A)
【文献】特表2005-526378(JP,A)
【文献】米国特許第06593185(US,B1)
【文献】特開平07-283077(JP,A)
【文献】特開平07-045475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H01L 21/822
H01L 27/04
H05K 3/10 - 3/26
H05K 3/38
H01G 4/00 - 4/10
H01G 4/14 - 4/224
H01G 4/255- 4/40
H01G 13/00 -17/00
H05K 1/09
H05K 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に凹部が設けられている絶縁性の基板と、
前記凹部の少なくとも一部に充填された下部電極と、
前記下部電極の表面に設けられた誘電体膜と、
前記誘電体膜を挟んで前記下部電極に対向する上部電極と
、
前記基板の上面、及び前記誘電体膜を覆う絶縁膜と
を備え、
前記下部電極は、前記基板の上面より上方に突出しており、
前記基板の
上面に対して垂直な方向である高さ方向の、前記下部電極の寸法が、前記誘電体膜の高さ方向の寸法より大き
く、
前記下部電極の上面、及び前記基板の上面より上方の前記下部電極の側面は、前記誘電体膜、または前記誘電体膜と前記絶縁膜との双方により覆われている受動部品。
【請求項2】
上面に凹部が設けられている絶縁性の基板と、
前記凹部の少なくとも一部に充填された下部電極と、
前記下部電極の表面に設けられた誘電体膜と、
前記誘電体膜を挟んで前記下部電極に対向する上部電極と
を備え、
前記基板の上面に対して垂直な方向である高さ方向の、前記下部電極の寸法が、前記誘電体膜の高さ方向の寸法より大きく、
平面視において、前記誘電体膜が前記下部電極に包含されてい
る受動部品。
【請求項3】
前記下部電極の上面と前記基板の
上面との高さの差が、前記下部電極の上面に配置されている前記誘電体膜の厚さよりも小さい請求項1に記載の受動部品。
【請求項4】
前記基板は、酸化ケイ素または窒化ケイ素を主成分として含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載の受動部品。
【請求項5】
前記誘電体膜は、前記基板と主成分が同一の絶縁材料で形成されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の受動部品。
【請求項6】
前記基板は、異なる材料が前記基板の厚さ方向に接する第1界面を有しており、前記凹部は前記基板の
上面から前記第1界面まで達している請求項1乃至3のいずれか1項に記載の受動部品。
【請求項7】
前記第1界面より上側の材料が酸化ケイ素を主成分とする絶縁材料であり、下側の材料が窒化ケイ素を主成分とする絶縁材料である請求項6に記載の受動部品。
【請求項8】
前記基板は、異なる材料が前記基板の厚さ方向に接する第2界面を、前記第1界面より深い位置に有しており、前記第2界面より深い領域、及び前記第1界面より浅い領域は主成分が同一の絶縁材料で形成されており、前記第1界面と前記第2界面との間の層の厚さが、前記基板の
上面と前記第1界面との間の層の厚さより薄い請求項6または7に記載の受動部品。
【請求項9】
前記下部電極が、CuまたはAuを主成分とする金属で形成されている請求項1乃至7のいずれか1項に記載の受動部品。
【請求項10】
前記下部電極と前記基板との間に配置された下地金属層を、さらに備えており、
前記下地金属層は、Ti、Tiを含有する合金、Ta、Taを含有する合金、Ni、Niを含有する合金、Zr、またはZrを含有する合金で形成されている請求項8に記載の受動部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受動部品に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信機能を有する電子機器の急速な普及に伴い、無線通信において、極めて多数の高周波数帯域が利用されるようになってきている。一つの通信モジュールで複数の周波数帯域(マルチバンド)を利用した通信、及び複数の無線通信規格(マルチモード)に基づく通信を実現することが望まれている。マルチバンド及びマルチモードに対応した通信モジュールの大型化を抑制するために、通信モジュールに搭載される部品の小型薄型化及び部品の高集積化が進んでいる。
【0003】
通信モジュールに複数の部品を高集積化して実装するために、部品の三次元実装や、パッケージ基板への部品の埋め込み等の技術が用いられる。また、ノイズフィルタや帯域フィルタ等の集積化された受動部品にも、小型薄型化、またはパッケージ基板への埋め込み実装対応等が要求されている。
【0004】
部品の小型薄型化を図るために、ガラス基板とキャパシタとを含むパッシブオンガラスデバイス(POG)が提案されている(特許文献1)。このデバイスは、ガラス基板上に配置された下部電極と、その表面を覆う誘電体膜と、その上の上部電極を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された構造のキャパシタに熱負荷がかかると、下部電極と誘電体膜との線膨張係数の差により熱応力が発生する。熱応力は、特に下部電極のエッジ部に集中するため、エッジ部で誘電体膜にクラックが発生しやすい。誘電体膜にクラックが発生すると、キャパシタの静電容量が変動してしまう。キャパシタでフィルタを構成している場合には、キャパシタの静電容量の変動によってフィルタの共振点も変動するため、所望のフィルタ特性が得られなくなってしまう。
【0007】
本発明の目的は、熱応力による静電容量の変動が生じにくいキャパシタを含む受動部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によると、
上面に凹部が設けられている絶縁性の基板と、
前記凹部の少なくとも一部に充填された下部電極と、
前記下部電極の表面に設けられた誘電体膜と、
前記誘電体膜を挟んで前記下部電極に対向する上部電極と、
前記基板の上面、及び前記誘電体膜を覆う絶縁膜と
を備え、
前記下部電極は、前記基板の上面より上方に突出しており、
前記基板の上面に対して垂直な方向である高さ方向の、前記下部電極の寸法が、前記誘電体膜の高さ方向の寸法より大きく、
前記下部電極の上面、及び前記基板の上面より上方の前記下部電極の側面は、前記誘電体膜、または前記誘電体膜と前記絶縁膜との双方により覆われている受動部品が提供される。
【発明の効果】
【0009】
上述の構成とすることにより、誘電体膜に加わる熱応力が低減される。その結果、熱応力による静電容量の変動が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1Aは、第1実施例による受動部品の平面図であり、
図1B及び
図1Cは、それぞれ
図1Aの一点鎖線1B-1B及び一点鎖線1C-1Cにおける断面図である。
【
図4】
図4Aは、第2実施例による集積型の受動部品の等価回路図であり、
図4Bは、第2実施例による集積型の受動部品に含まれる複数の受動素子平面視における位置関係を示す図である。
【
図5】
図5は、第2実施例による受動部品のキャパシタC4、C6が配置された領域及びその近傍の断面図である。
【
図6】
図6Aは、基板の凹部に充填された下部電極の平面図であり、
図6Bは、6個のキャパシタのそれぞれの誘電体膜の平面図である。
【
図7】
図7Aは、6個のキャパシタのそれぞれの上部電極及び下部電極引出配線の平面図であり、
図7Bは、1層目の配線層に含まれる金属パターンの平面図である。
【
図8】
図8Aは、2層目の配線層に含まれる金属パターンの平面図であり、
図8Bは、3層目の配線層に含まれる金属パターンの平面図である。
【
図12】
図12Aは、第3実施例による受動部品に用いられる基板の断面図であり、
図12Bは、凹部を形成した基板の断面図である。
【
図13】
図13Aは、第4実施例による受動部品に用いられる基板の断面図であり、
図13Bは、凹部を形成した基板の断面図である。
【
図14】
図14は、第5実施例による受動部品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施例]
図1A、
図1B、及び
図1Cを参照して、第1実施例による受動部品について説明する。
図1Aは、第1実施例による受動部品の平面図であり、
図1B及び
図1Cは、それぞれ
図1Aの一点鎖線1B-1B及び一点鎖線1C-1Cにおける断面図である。絶縁性の基板20の一方の表面に凹部20Aが設けられている。凹部20Aが設けられている表面を上面ということとする。凹部20A内に、下部電極21が充填されている。下部電極21は、基板20の上面より上方に突出している。
【0012】
誘電体膜22が、基板20の上面より上方の下部電極21の側面、及び下部電極21の上面を覆う。誘電体膜22は、さらに、基板20の上面のうち下部電極21を取り囲む額縁状の領域を覆っている。平面視において、誘電体膜22の輪郭線の内側に下部電極21が配置されている。
【0013】
基板20の上面及び誘電体膜22を、絶縁膜25が覆う。絶縁膜25に、誘電体膜22まで達する開口25Aが設けられている。さらに、絶縁膜25及び誘電体膜22に、下部電極21まで達する開口22Aが設けられている。平面視において開口25Aの下端及び開口22Aの下端は、下部電極21に包含される。開口25Aの内部、及び開口25Aの周囲の絶縁膜25の上面に上部電極23が配置されている。上部電極23は誘電体膜22を挟んで下部電極21に対向する。下部電極21、誘電体膜22、及び上部電極23によって、金属/絶縁体/金属構造(MIM構造)のキャパシタが構成される。
【0014】
開口22Aの内部、及び開口22Aの周囲の絶縁膜25の上面に下部電極引出配線26が配置されている。下部電極引出配線26は、下部電極21に接続されている。
【0015】
基板20として、酸化ケイ素を主成分とする非晶質基板(ガラス基板)、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、または酸化ハフニウムを主成分とするセラミック基板等を用いることができる。基板に含有される特定の材料の含有率が50重量%以上である場合、その特定の材料は主成分であるということができる。
【0016】
基板20として、その他にシリコン基板の表面を熱酸化して酸化シリコン層を形成した基板、GaAsの表面に酸化物絶縁体膜または窒化物絶縁体膜を形成した基板等を用いてもよい。酸化物絶縁体膜、窒化物絶縁体膜は、例えば化学気相堆積(CVD)法を用いて形成することができる。
【0017】
誘電体膜22として、酸化ケイ素を主成分とする絶縁材料、または窒化ケイ素を主成分とする絶縁材料等を用いることができる。下部電極21、上部電極23、下部電極引出配線26には、Cu、Au、Cuを主成分とする金属、またはAuを主成分とする金属が用いられる。絶縁膜25には、エポキシ、ポリイミド等の有機絶縁材料(絶縁性樹脂)が用いられる。
【0018】
次に、第1実施例の優れた効果について説明する。
第1実施例による受動部品において、下部電極21を、下部電極引出配線26に接触する箇所から上部電極23の直下の領域まで、またはその逆方向に電流が流れる。下部電極21が薄い場合には、下部電極21の電気抵抗によってキャパシタのQ値が低下する。第1実施例では、下部電極21の一部分が凹部20Aに充填されているため、凹部20Aが設けられていない構成と比べて下部電極21が厚くなる。これにより、下部電極21が低抵抗化され、キャパシタのQ値を向上させることができる。
【0019】
凹部20Aを形成することなく、基板20の上面に厚い下部電極21を配置すると、下部電極21の側面による段差が高くなる。段差が高くなると、下部電極21のエッジ部分に位置する誘電体膜22への熱応力の集中が生じやすくなる。この熱応力の集中は、誘電体膜22にクラックが発生する要因になる。誘電体膜22にクラックが発生すると、キャパシタの静電容量が変動してしまう。また、下部電極21の側面の段差が高くなると、誘電体膜22の被覆性(カバレッジ)が低下する。被覆性の低下は、耐湿性の低下の要因になる。
【0020】
第1実施例では、下部電極21の下側の一部を凹部20A内に配置しているため、基板20の上面から下部電極21の上面までの段差が低くなる。これにより、下部電極21のエッジ部分への熱応力の集中を緩和するとともに、誘電体膜22の被覆性の低下を抑制することができる。
【0021】
次に、下部電極21と誘電体膜22との寸法の好ましい範囲について説明する。
基板20の上面に対して垂直な方向を高さ方向と定義する。下部電極21の高さ方向の寸法をh1と表記し、誘電体膜22の高さ方向の寸法をh2と表記する。第1実施例では、誘電体膜22の最も下側の面が基板20の上面に接しているため、寸法h2は、基板20の上面から誘電体膜22の最も高い位置、すなわち下部電極21の上面に配置されている部分の上面までの高さに等しい。クラックの発生を抑制し、かつ下部電極21の電気抵抗の上昇を抑制するために、寸法h1を寸法h2より大きくすることが好ましい。
【0022】
酸化ケイ素及び窒化ケイ素は高い絶縁性を有するため、基板20に、酸化ケイ素または窒化ケイ素を主成分とする絶縁材料を用いることにより、良好な高周波特性を有するキャパシタを得ることができる。窒化ケイ素を主成分とするセラミックは非晶質の酸化ケイ素に比べて高い熱伝導率を持つ。基板20に窒化ケイ素を主成分とするセラミックを用いることにより、放熱特性を高めることができる。これにより、1枚の基板20に複数の受動素子を集積化する場合、十分な放熱性を確保しつつ、高集積化を図ることができる。
【0023】
また、基板20と誘電体膜22とを、主成分が同一の絶縁材料で形成することが好ましい。基板20と誘電体膜22とを主成分が同一の絶縁材料で形成すると、両者の間の線膨張係数の差が小さくなるため、熱応力の発生を抑制することができる。
【0024】
下部電極21に高導電率材料であるCuまたはAuを用いると、下部電極21の電気抵抗が小さくなる。また、CuまたはAuからなる下部電極21の形成に電解メッキを用いることができるため、下部電極21を容易に厚膜化することが可能になる。
【0025】
次に、
図2Aから
図3Cまでの図面を参照して第1実施例の変形例による受動部品について説明する。
図2Aから
図3Cまでの図面は、それぞれ第1実施例の変形例による受動部品の断面図である。
【0026】
図2Aに示した変形例では、下部電極21と基板20との間に下地金属層24が配置されている。下地金属層24は、Ti、Tiを含有する合金、Ta、Taを含有する合金、Ni、Niを含有する合金、Zr、またはZrを含有する合金で形成されている。下地金属層24を配置することにより、基板20への下部電極21の密着性を高めることができる。さらに、下部電極21を構成する金属の、基板20への熱拡散を抑制することができる。これにより、キャパシタの品質を高めることができる。
【0027】
図2Bに示した変形例では、下部電極21の上面と基板20の上面とが、ほぼ面一になっている。このため、誘電体膜22が配置される下地表面がほぼ平坦になる。この場合、誘電体膜22の高さ方向の寸法h2は、誘電体膜22自体の厚さに等しい。本変形例では、下部電極21と基板20との間の段差が形成されないため、熱応力の集中を緩和する効果、及び誘電体膜22の被覆性の低下を抑制する効果を、より高めることができる。
【0028】
なお、下部電極21の上面と基板20の上面とが完全に面一である必要はない。下部電極21の上面と基板20の上面との高さの差が、下部電極21の上面に配置されている誘電体膜22の厚さより小さい場合、熱応力の集中を緩和する十分な効果、及び誘電体膜22の被覆性の低下を抑制する十分な効果が得られる。
【0029】
図2Cに示した変形例では、下部電極21の上面が基板20の上面より低い。すなわち、凹部20Aの一部分に下部電極21が充填されている。誘電体膜22は、下部電極21の上面、凹部20Aの側面のうち下部電極21の上面より高い領域、及び基板20の上面のうち凹部20Aの周囲を覆う。この場合には、誘電体膜22の高さ方向の寸法h2は、下部電極21の上面から、基板20の上面を覆う誘電体膜22の上面までの距離に等しい。本変形例においても、寸法h1は寸法h2より大きい。このため、熱応力の集中を緩和する効果、及び誘電体膜22の被覆性の低下を抑制する効果が得られる。
【0030】
図3A、
図3B、及び
図3Cに示した変形例では、平面視において誘電体膜22が下部電極21に包含されている。すなわち、誘電体膜22は、下部電極21の上面に配置されており、下部電極21の側面や凹部20Aの側面まで達していない。
図3Aに示した変形例では、下部電極21の上面が基板20の上面より高い位置に配置されている。
図3Bに示した変形例では、下部電極21の上面と基板20の上面とがほぼ面一である。
図3Cに示した変形例では、下部電極21の上面が基板20の上面より低い位置に配置されている。
【0031】
これらの変形例では、誘電体膜22が下部電極21の平坦な上面に配置されており、上面のエッジまで達していない。このため、誘電体膜22の高さ方向の寸法h2は、誘電体膜22自体の厚さに等しく、下部電極21の高さ方向の寸法h1は、下部電極21自体の厚さに等しい。
【0032】
第1実施例では、絶縁膜25(
図1B、
図1C)に有機絶縁材料が用いられており、その上面が平坦化されている。これに対して
図3A、
図3B、
図3Cに示した変形例では、絶縁膜25に窒化ケイ素等の無機絶縁材料が用いられ、その上面は平坦化されていない。下部電極21の表面のうち誘電体膜22で覆われていない領域が、無機絶縁材料からなる絶縁膜25で覆われているため、十分な耐湿性を確保することができる。
【0033】
図3A、
図3B、及び
図3Cに示した変形例においては、下部電極21のエッジ部分に誘電体膜22が配置されていないため、エッジ部分の誘電体膜に熱応力が集中することはない。このため、誘電体膜22にクラックが発生することに起因するキャパシタンスの変動も生じない。また、下部電極21の全体または少なくとも一部が、基板20に設けられた凹部20A内に充填されているため、下部電極21を厚くしても、凹部20Aを設けない構成と比べて、下部電極21の側面または凹部20Aの側面に現れる段差が低くなる。このため、絶縁膜25の被覆性の低下を抑制することができる。絶縁膜25の被覆性の低下を抑制しつつ、かつ下部電極21を厚くすることができるため、下部電極21の電気抵抗を低減させることができる。その結果、キャパシタのQ値を向上させることができる。
【0034】
[第2実施例]
次に、
図4Aから
図11Cまでの図面を参照して、第2実施例による受動部品について説明する。
図1Aから
図3Cを参照して説明した第1実施例及びその変形例では、基板20に1つのキャパシタが設けられているが、第2実施例では、1枚の基板にキャパシタ及びインダクタ等の複数の受動素子が設けられている。
【0035】
図4Aは、第2実施例による集積型の受動部品の等価回路図である。第2実施例による受動部品は、6個のキャパシタと5個のインダクタとを含むバンドパスフィルタである。入力端子Inと出力端子Outとの間に、入力端子In側から順番にキャパシタC1、インダクタL1、及びキャパシタC2が直列に接続されている。入力端子Inとグランド端子GNDとの間に、キャパシタC3とインダクタL2との直列回路、及びキャパシタC4とインダクタL3との直列回路が並列に接続されている。出力端子Outとグランド端子GNDとの間に、キャパシタC5とインダクタL4との直列回路、及びキャパシタC6とインダクタL5との直列回路が並列に接続されている。
【0036】
図4Bは、第2実施例による受動部品に含まれる複数の受動素子の平面視における位置関係を示す図である。基板上に、C1からC6までの6個のキャパシタ、L1からL5までの5個のインダクタ、入力端子In、出力端子Out、及び2個のグランド端子GNDが配置されている。これらの受動素子は、基板の上に配置された複数の配線層に含まれる導体パターンで構成される。
図4Bにおいては、複数の配線層のそれぞれに含まれる導体パターンを区別することなく重ねて示している。
【0037】
図5は、キャパシタC4、C6が配置された領域及びその近傍の断面図である。絶縁性の基板50の上面に、複数の凹部50Aが形成されている。基板50として、例えば窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化ハフニウム等を主成分として含有するセラミック基板、酸化ケイ素を主成分とするガラス基板が用いられる。その他に、半導体材料と絶縁材料とからなる複合基板を用いてもよい。複合基板として、例えばSi基板の表面を熱酸化して酸化物絶縁体膜を形成した基板、GaAs等の半導体基板の上に化学気相堆積(CVD)法等によって酸化物絶縁体膜や窒化物絶縁体膜を形成した基板等を用いることができる。高周波用の受動部品の基板50には、酸化ケイ素、窒化ケイ素等の特に絶縁性の高い材料を用いることが好ましい。また、窒化ケイ素は高い熱伝導性を持つことから、受動素子に大きな電力が投入される用途に適している。基板50の厚さは、受動部品の高さに対する要請等から決められ、例えば50μm以上300μm以下の範囲から選択される。
【0038】
図5に現れている2つの凹部50A内に、それぞれキャパシタC4の下部電極C4L及びキャパシタC6の下部電極C6Lが充填されている。
図2Bに示した第1実施例の変形例のように、下部電極C4L、C6Lの上面は、基板50の上面とほぼ面一にされている。
【0039】
下部電極C4L、C6Lには、Q値の向上のために高導電率材料、例えばAl、Au、Cu、またはこれらの金属を含有する合金等が用いられる。下部電極C4L、C6L等と基板50との間に、密着性を高めるための密着層、または拡散を防止するための拡散防止層を配置してもよい。密着層や拡散防止層として、例えば高融点金属、または高融点金属を含有する合金が用いられる。密着層や拡散防止層として用いられる高融点金属として、Ti、Ni、W、Ta等が挙げられる。
【0040】
下部電極C4L、C6Lのそれぞれの上面を覆うように、誘電体膜C4D、C6Dが配置されている。誘電体膜C4D、C6Dは、例えば窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化タンタル等を主成分として含有する無機絶縁材料が用いられる。なお、熱応力の集中を緩和するために、誘電体膜C4D、C6D等と基板50との線膨張係数の差を小さくすることが好ましい。この線膨張率の差を小さくするために、誘電体膜C4D、C6D等と基板50とを、主成分が同一の絶縁材料で形成することが好ましい。誘電体膜C4D、C6Dの厚さは、所望のキャパシタンス、耐電圧性、及び耐湿性等の観点から決定され、例えば30nm以上500nm以下の範囲から選択される。
【0041】
平面視において、誘電体膜C4D、C6Dの外周の輪郭線で囲まれた領域に、それぞれ下部電極C4L、C6Lが包含されている。すなわち、下部電極C4L、C6Lのそれぞれと誘電体膜C4D、C6Dとの位置関係は、
図2Bに示した下部電極21と誘電体膜22との位置関係と同一である。なお、下部電極C4L、C6Lのそれぞれと誘電体膜C4D、C6Dとの位置関係として、
図1B、
図2A、
図2C、
図3A、
図3B、
図3Cのそれぞれに示した下部電極21と誘電体膜22との位置関係を採用してもよい。
【0042】
誘電体膜C4Dの上に上部電極C4Uが配置されている。誘電体膜C6Dの上に上部電極C6Uが配置されている。さらに、平面視において下部電極C6Lと重なる領域に下部電極引出配線C6Laが配置されている。下部電極引出配線C6Laは、誘電体膜C6Dに設けられた開口を通って下部電極C6Lに接続されている。上部電極C4U、C6U、下部電極引出配線C6Laには、下部電極C4L、C6Lと同一の金属材料が用いられる。
【0043】
上部電極C4U、C6U、下部電極引出配線C6La等を覆うように、基板50の上に1層目の層間絶縁膜51が配置されている。層間絶縁膜51には、例えば窒化ケイ素等の無機絶縁材料が用いられる。
【0044】
1層目の層間絶縁膜51の上に、1層目の配線層の複数の金属パターンが配置されている。1層目の配線層には、配線C134、C256、CL65、及びインダクタL1用の金属パターンが含まれる。配線C134は、層間絶縁膜51に設けられた開口を通って上部電極C4Uに接続されている。1層目の配線層の金属パターンには、高導電率材料であるAl、Au、Cu等が用いられる。なお、比較的安価で、容易に厚膜化することが可能なCu、またはCuを主成分とする導電材料を用いることが好ましい。
【0045】
配線C134は、
図4Aに示した等価回路図においてキャパシタC1、C3、C4を相互に接続する配線に相当する。配線C256は、層間絶縁膜51に設けられた開口を通って上部電極C6Uに接続されている。配線C256は、
図4Aに示した等価回路図においてキャパシタC2、C5、C6を相互に接続する配線に相当する。配線CL65は、層間絶縁膜51に設けられた開口を通って下部電極引出配線C6Laに接続されている。配線CL65は、
図4Aに示した等価回路図において、キャパシタC6とインダクタL5とを接続する配線に相当する。
【0046】
1層目の配線層の上に、2層目の層間絶縁膜52、2層目の配線層、3層目の層間絶縁膜53、3層目の配線層、4層目の層間絶縁膜54が順番に積層されている。2層目の配線層及び3層目の配線層の両方に、配線CIn及びインダクタL1用の金属パターンが含まれる。4層目の層間絶縁膜54の上に、入力端子Inが配置されている。2層目及び3層目の配線層に含まれる配線CInは、
図4Aに示した等価回路図において入力端子Inと、キャパシタC1、C3、C4とを接続する配線に相当する。2層目及び3層目の配線層の金属パターンには、1層目の配線層の金属パターンと同一の材料が用いられる。
【0047】
2層目から4層目までの層間絶縁膜52、53、54には、ヤング率が低い有機絶縁材料、例えばエポキシ、ポリイミド等の樹脂が用いられる。インダクタL1等を構成する金属パターンは、Q値を向上させるために、キャパシタの電極に比べてより厚くされる。このため、熱負荷に対してインダクタL1等を構成する金属パターンと層間絶縁膜52、53、54との間の熱歪が大きくなる。層間絶縁膜52、53、54に、ヤング率の低い有機絶縁材料を用いるのは、熱歪を吸収して応力を低減させるためである。これにより、品質の低下が抑制される。
【0048】
2層目から4層目までの層間絶縁膜52、53、54の上面は平坦化されている。層間絶縁膜52、53、54の上面を平坦化することにより、その上に配置される配線層の金属パターンを微細化するとともに、高いアスペクト比の金属パターンを形成することが可能になる。
【0049】
層間絶縁膜52、53、54の線膨張係数を基板50の線膨張係数に近づけるために、層間絶縁膜52、53、54を構成する有機絶縁材料に無機材料を混在させてもよい。各配線層の金属パターンとその下の樹脂からなる層間絶縁膜との密着性を高めるために、両者の間に密着層を配置してもよい。密着層には、Ti、TiW、Ni等を用いることができる。また、金属パターンとその上の樹脂からなる層間絶縁膜との密着性を高めるために、金属パターンの表面粗化処理、例えばCZ処理を行ってもよい。
【0050】
入力端子In等には、Cu、Al、Au等の高導電率材料が用いられる。外部回路とのハンダ接続性を確保するために、入力端子In等の表面を、NiAu、NiPdAu等の酸化防止膜で被覆してもよい。また、入力端子In等の上面に、NiSn、NiSnAg等のハンダ層を配置してもよい。
【0051】
次に、
図6Aから
図8Bまでの図面を参照して、キャパシタの電極及び各配線層に配置される金属パターンの形状及び位置関係について説明する。
【0052】
図6Aは、基板50の凹部50A(
図5)に充填された下部電極の平面図である。キャパシタC1、C2、C3、C4、C5、C6のそれぞれの下部電極C1L、C2L、C3L、C4L、C5L、C6Lが配置されている。
【0053】
図6Bは、6個のキャパシタのそれぞれの誘電体膜の平面図である。キャパシタC1、C2、C3、C4、C5、C6のそれぞれの下部電極C1L、C2L、C3L、C4L、C5L、C6L(
図6A)と重なる位置に、誘電体膜C1D、C2D、C3D、C4D、C5D、C6Dが配置されている。各誘電体膜C1D、C2D、C3D、C4D、C5D、C6Dに、下部電極から配線を引き出すための開口が設けられている。誘電体膜C1Dは誘電体膜C4Dに連続しており、誘電体膜C2Dは誘電体膜C6Dに連続している。
【0054】
図7Aは、6個のキャパシタのそれぞれの上部電極及び下部電極引出配線の平面図である。平面視において、誘電体膜C1D、C2D、C3D、C4D、C5D、C6D(
図6B)に設けられた開口と重なる位置に、それぞれ下部電極引出配線C1La、C2La、C3La、C4La、C5La、C6Laが配置されている。これらの下部電極引出配線C1La、C2La、C3La、C4La、C5La、C6Laは、それぞれ下部電極C1L、C2L、C3L、C4L、C5L、C6L(
図6A)に接続されている。
【0055】
さらに、平面視において誘電体膜C1D、C2D、C3D、C4D、C5D、C6D(
図6B)と重なる位置に、それぞれ上部電極C1U、C2U、C3U、C4U、C5U、C6Uが配置されている。上部電極C1U、C2U、C3U、C4U、C5U、C6Uと、その下に配置されている下部電極C1L、C2L、C3L、C4L、C5L、C6L(
図6A)とによって、それぞれキャパシタC1、C2、C3、C4、C5、C6が形成される。
【0056】
図7Bは、1層目の配線層に含まれる複数の金属パターンの平面図である。インダクタL1、L2、L4をそれぞれ構成する3つの金属パターンが配置されている。インダクタL1を構成する金属パターンの一端が、下部電極引出配線C2La(
図7A)に接続されている。インダクタL2を構成する金属パターンの一端が、下部電極引出配線C3La(
図7A)に接続されている。インダクタL4を構成する金属パターンの一端が、下部電極引出配線C5La(
図7A)に接続されている。
【0057】
さらに、1層目の配線層に、配線C134、C256、CL11、CL43、及びCL65が配置されている。配線C134が、上部電極C1U、C3U、C4U(
図7A)を相互に接続する。配線C256が、上部電極C2U、C5U、C6U(
図7A)を相互に接続する。配線CL11、CL43、CL65が、それぞれ下部電極引出配線
C1La、C4La、C6La(
図7A)に接続されている。
【0058】
図8Aは、2層目の配線層に含まれる複数の金属パターンの平面図である。インダクタL1、L2、L3、L4、L5をそれぞれ構成する金属パターンが配置されている。インダクタL1、L2、L4を構成する金属パターンの一端が、それぞれ1層目の配線層に含まれるインダクタL1、L2、L4を構成する金属パターン(
図7B)に接続されている。インダクタL3を構成する金属パターンの一端が、その下の配線層に含まれる配線CL43(
図7B)を介して下部電極引出配線C4La(
図7A)に接続されている。インダクタL5を構成する金属パターンの一端が、その下の配線層に含まれる配線CL65(
図7B)を介して下部電極引出配線C6La(
図7A)に接続されている。
【0059】
さらに、2層目の配線層に配線CL11、CIn、COutが配置されている。配線CL11、CIn、COutは、それぞれ1層目の配線層の配線CL11、C134、C256に接続されている。
【0060】
図8Bは、3層目の配線層に含まれる複数の金属パターンの平面図である。インダクタL1、L2、L3、L4、L5をそれぞれ構成する金属パターン、入力端子用パッドCIn、出力端子用パッドCOut、グランド用パッドL25GND、L34GNDが配置されている。インダクタL1を構成する金属パターンの一端が、2層目の配線層のインダクタL1を構成する金属パターン(
図8A)に接続されており、他端が、2層目及び1層目の配線層の配線CL11(
図8A、
図7B)を介して下部電極引出配線C1La(
図7A)に接続されている。
【0061】
インダクタL2を構成する金属パターンの一端が、2層目の配線層のインダクタL2を構成する金属パターン(
図8A)に接続されており、他端が、グランド用パッドL25GNDに連続している。インダクタL5を構成する金属パターンの一端が、2層目の配線層のインダクタL5を構成する金属パターン(
図8A)に接続されており、他端が、グランド用パッドL25GNDに連続している。
【0062】
インダクタL3を構成する金属パターンの一端が、2層目の配線層のインダクタL3を構成する金属パターン(
図8A)に接続されており、他端が、グランド用パッドL34GNDに連続している。インダクタL4を構成する金属パターンの一端が、2層目の配線層のインダクタL4を構成する金属パターン(
図8A)に接続されており、他端が、グランド用パッドL34GNDに連続している。
【0063】
入力端子用パッドCInが、2層目の配線層の配線CIn(
図8A)を介して1層目の配線層の配線C134(
図7B)に接続されている。出力端子用パッドCOutが、2層目の配線層の配線COut(
図8A)を介して1層目の配線層の配線C256(
図7B)に接続されている。入力端子用パッドCInの上に入力端子In(
図4A、
図5)が配置され、出力端子用パッドCOutの上に出力端子Out(
図4A)が配置される。グランド用パッドL25GND、L34GNDの上に、それぞれグランド端子GND(
図4A)が配置される。
【0064】
図7Bから
図8Bに示したように、インダクタL1、L2、L3、L4、L5は、それぞれ複数の配線層に配置された金属パターンで構成される。
【0065】
次に、
図9Aから
図11Cまでの図面を参照して、第2実施例による受動部品の製造方法について説明する。
図9Aから
図11Cまでの図面は、第2実施例による受動部品の製造途中段階における断面図である。以下の説明では、
図9Aから
図11Cまでの断面図に現れている構成要素の作製手順を説明するが、断面図に現れていない構成要素も同様の手順で作製される。
【0066】
図9Aに示すように、基板50の上面に複数の凹部50Aを形成する。例えば、凹部50Aを形成しない領域をレジストパターンでマスクして基板50の表層部をエッチングすることにより、凹部50Aが形成される。このエッチングには、反応性イオンエッチング(RIE)、誘導結合プラズマ(ICP)エッチング等のドライエッチングプロセス、または化学薬品を用いたウェットエッチングプロセスを用いることができる。なお、基板50に感光性を有するガラス材料を用いることにより、レジストパターンを用いることなくエッチングプロセスを実行することも可能である。
【0067】
図9Bに示すように、基板50の上に金属膜61を堆積させることにより、凹部50A内を金属膜61で埋め込む。以下、金属膜61の堆積手順について具体的に説明する。
【0068】
まず、TiW等からなる密着層を成膜し、その上にCu被膜を形成する。密着層及びCu被膜の形成には、例えばスパッタリング法を用いることができる。Cu被膜を電極として用いてCuを電解メッキすることにより、金属膜61を形成する。
【0069】
図9Cに示すように、凹部50A内に充填されている金属膜61以外の金属膜61(
図9B)を除去する。金属膜61の除去には、化学的研磨、機械的研磨、化学機械研磨(CMP)等を用いることができる。これにより、凹部50A内に、金属膜61からなる下部電極C4L、C6Lが残る。また、下部電極C4L、C6Lの上面が、基板50の上面とほぼ面一になる。なお、研磨条件によっては、下部電極C4L、C6Lの上面が基板50の上面よりやや高くなった状態(
図1Bに相当)や、下部電極C4L、C6Lの上面が基板50の上面よりやや低くなった状態(
図2Cに相当)が生じ得る。
【0070】
図10Aに示すように、下部電極C4L、C6Lの上に、それぞれ開口部を持つ誘電体膜C4D、C6Dを形成する。誘電体膜の成膜には、プラズマ励起化学気相堆積(PE-CVD)法を用いることができる。誘電体膜のパターニングには、反応性イオンエッチング(RIE)を用いることができる。なお、部品の設計上不都合が生じない場合には、開口部以外の誘電体膜を基板全面に残してもよい。
【0071】
図10Bに示すように、誘電体膜C4Dの上に上部電極C4Uを形成し、誘電体膜C6Dの上に上部電極C6U及び下部電極引出配線C6Laを形成する。これらの金属膜の成膜には、真空蒸着法を適用することができる。一例として、厚さ50nmのTi膜を成膜し、その上に厚さ100nmのAu膜を成膜する。これらの金属膜のパターニングには、リフトオフ法を適用する。
【0072】
図10Cに示すように、上部電極C4U、C6U、下部電極引出配線C6Laを覆うように、基板50の上に層間絶縁膜51を形成する。層間絶縁膜51の形成には、PE-CVD法を適用する。
【0073】
図11Aに示すように、層間絶縁膜51の必要な箇所に複数の開口51Hを形成する。開口51Hの形成には、フォトリソグラフィ及びRIE等のドライエッチングを適用する。
【0074】
図11Bに示すように、層間絶縁膜51の上に、1層目の配線層の配線C134、C256、CL65、及びインダクタL1の金属パターンを形成する。以下、金属パターンを形成する手順について説明する。
【0075】
まず、基板50の全域に、Ti膜とCu膜との積層被膜をスパッタリング法により形成する。その後、金属パターンを配置しない領域をレジストパターンで覆う。積層被膜をシード層として用い、Cuを電解メッキする。その後、レジストパターンを有機溶剤で除去し、露出した積層被膜をウェットエッチングにより除去する。
【0076】
図11Cに示すように、基板全面に層間絶縁膜52を形成する。以下、層間絶縁膜52を形成する手順について説明する。
【0077】
まず、感光材料を混在させたBステージのエポキシ樹脂フィルムを、真空ラミネート法により積層する。フォトリソグラフィ工程後にアルカリ溶液による現像を行うことにより、エポキシ樹脂フィルムの所望の箇所に開口を形成する。その後、熱処理を行うことにより、Bステージのエポキシ樹脂フィルムを硬化させる。
【0078】
配線層の形成と層間絶縁膜の形成とを繰り返すことにより、2層目、3層目の配線層(
図5)及び3層目、4層目の層間絶縁膜53、54(
図5)、及び入力端子In(
図5)等を形成する。入力端子Inを形成した後、無電解メッキにより端子表面にNiAuからなる酸化防止膜を形成する。さらに、基板50を、その下面からバックグラインド法により所望の厚さになるまで研削加工する。最後に、基板50をダイシングして個片化することにより、第2実施例による受動部品が完成する。
【0079】
次に、第2実施例の優れた効果について説明する。
第2実施例による受動部品のキャパシタC1、C2、C3、C4、C5、C6は、
図1Aから
図3Cまでの図面を参照して説明した第1実施例またはその変形例による受動部品のキャパシタと同一の構造を有する。このため、第2実施例においても第1実施例と同様に、キャパシタのQ値を向上させ、かつ誘電体膜の被覆性の低下を抑制することができる。
【0080】
次に、第2実施例の変形例について説明する。
第2実施例(
図5)では、インダクタL1等を構成する配線層を3層としているが、受動部品に必要とされる回路構成によって配線層の層数は3層以外の複数層にしてもよい。1層目の配線層の配線C134等を形成した後、2層目の層間絶縁膜52を形成する前に、2層目の層間絶縁膜52の下地表面の全域を窒化ケイ素等の無機絶縁材料からなる被膜で覆ってもよい。この被膜によって耐湿性が向上するため、キャパシタの耐環境性能をさらに向上させることができる。
【0081】
[第3実施例]
次に、
図12A及び
図12Bを参照して、第3実施例による受動部品について説明する。以下、
図4Aから
図11Cまでの図面を参照して説明した第2実施例による受動部品と共通の構成については説明を省略する。
【0082】
図12Aは、第3実施例による受動部品に用いられる基板50の断面図である。
第3実施例による受動部品に用いられる基板50は、異なる材料が基板50の厚さ方向に接する第1界面50Bを有する。第1界面50Bより深い基部50Mは、例えば窒化ケイ素を主成分とする絶縁材料で形成されており、第1界面50Bより浅い表層部50Sは、例えば酸化ケイ素を主成分とする絶縁材料で形成されている。
【0083】
図12Bは、凹部50Aを形成した基板50の断面図である。凹部50Aは、基板50の上面から第1界面50Bまで達している。表層部50Sのエッチングレートに対して基部50Mのエッチングレートが十分遅いエッチング条件で表層部50Sをエッチングすることにより、凹部50Aを形成する。基部50Mに対して表層部50Sを選択的にエッチングすることができるため、凹部50Aの加工の制御性を高めることが可能になる。これにより、キャパシタの下部電極の厚さを高精度に制御することが可能になる。
【0084】
[第4実施例]
次に、
図13A及び
図13Bを参照して、第4実施例による受動部品について説明する。以下、
図12A及び
図12Bを参照して説明した第3実施例による受動部品と共通の構成については説明を省略する。
【0085】
図13Aは、第4実施例による受動部品に用いられる基板50の断面図である。第4実施例では、基板50が、第1界面50Bより深い位置に第2界面50Cを有する。基板50は、基部50M、表層部50S、及び両者の間に配置されたエッチング停止層50Eを含む。基部50Mとエッチング停止層50Eとの界面が第2界面50Cに相当し、エッチング停止層50Eと表層部50Sとの界面が第1界面50Bに相当する。
【0086】
表層部50Sとエッチング停止層50Eが、主成分の異なる絶縁材料で形成されており、エッチング停止層50Eと基部50Mとが、主成分の異なる絶縁材料で形成されている。例えば、基部50M及び表層部50Sを、主成分が同一の絶縁材料、例えば酸化ケイ素を主成分とする絶縁材料で形成し、エッチング停止層50Eを、窒化ケイ素を主成分とする絶縁材料で形成するとよい。
【0087】
図13Bは、凹部50Aを形成した基板50の断面図である。凹部50Aを形成するための表層部50Sのエッチング条件として、エッチング停止層50Eに対して表層部50Sを選択的にエッチングすることができる条件を採用する。これにより、第1界面50Bでエッチングが停止する。このため、第3実施例(
図12A、
図12B)と同様に、凹部50Aの加工の制御性を高めることが可能になり、キャパシタの下部電極の厚さを高精度に制御することが可能になる。
【0088】
第1界面50Bと第2界面50Cとの間のエッチング停止層50Eの厚さを、基板50の上面と第1界面50Bとの間の表層部50Sの厚さより薄くすることが好ましい。エッチング停止層50Eを薄くすることにより、異種材料の線膨張率の差に起因して生じる熱変形または熱応力を低減させることができる。
【0089】
[第5実施例]
次に、
図14を参照して、第5実施例による受動部品について説明する。以下、
図4Aから
図11Cまでの図面を参照して説明した第2実施例による受動部品と共通の構成については説明を省略する。
【0090】
図14は、第5実施例による受動部品の断面図である。第2実施例(
図5)では、1層目の層間絶縁膜51が無機絶縁材料の単層で構成されているが、第5実施例では、1層目の層間絶縁膜51が、下層51Aと上層51Bとの2層で構成されている。下層51Aは、窒化ケイ素を主成分とする無機絶縁材料で形成され、上層51Bは、エポキシやポリイミド等の有機絶縁材料で形成されている。上層51Bの上面は平坦化されている。
【0091】
第5実施例では、1層目の配線層の下地表面が平坦化されているため、1層目の配線層の配線C134、C256、CL65等のアスペクト比を高めることが可能になる。さらに、下層51Aは、耐湿性の高い無機絶縁材料で形成されているため、キャパシタ等の十分な耐湿性を確保することができる。
【0092】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0093】
20 基板
20A 凹部
21 下部電極
22 誘電体膜
22A 開口
23 上部電極
24 下地金属層
25 絶縁膜
25A 開口
26 下部電極引出配線
50 基板
50A 凹部
50B 第1界面
50C 第2界面
50E エッチング停止層
50M 基部
50S 表層部
51 層間絶縁膜
51A 層間絶縁膜の下層
51B 層間絶縁膜の上層
51H 開口
52、53、54 層間絶縁膜
61 金属膜