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  • -幅木及び幅木の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】幅木及び幅木の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 19/04 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
E04F19/04 101A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020193147
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022081917
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】田浦 理
(72)【発明者】
【氏名】右田 雅人
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-052082(JP,U)
【文献】特開2020-094473(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0106889(US,A1)
【文献】実開平03-018346(JP,U)
【文献】特開2013-044142(JP,A)
【文献】特開2004-316265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面と床面との境界部に沿って配置される幅木であって、
板状に形成される幅木本体と、
前記幅木本体に貼付される化粧シートと、
を備え、
前記化粧シートは、少なくとも前記幅木本体の上面及び前面に貼付さられるとともに、前記前面の下端からゆとりをもって下側に回されて、当該幅木本体の後面に貼付されるものであり、
前記化粧シートは当該幅木本体の下面から離れて膨らんだ膨出部を有し、
前記幅木本体の前記下面は、前記前面側が低く、前記後面側が高くなるように傾斜して形成され、
前記壁面、前記床面、及び幅木本体の前記下面とで形成される側面視略三角形の室内側に露出しない空間が形成されて、
前記膨出部の前記化粧シートの余剰部分が、当該空間に隠されることを特徴とする幅木。
【請求項2】
請求項1に記載の幅木を製造する幅木の製造方法であって、
接着剤を塗布した前記化粧シートを、前記幅木本体の前記後面上部から前記上面及び前記前面に亘って押し付けるとともに、前記前面の下端から前記幅木本体の下面との間に距離を開けて前記後面に回して、当該後面下部に押し付けて接着することを特徴とする幅木の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面の不陸を吸収することができる幅木及び当該幅木の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、壁面と床面との境界部分に沿って配置される内装見切り材としての幅木が知られている。このような幅木の中には、例えば、図7に示すように、表面に化粧シート101を張り付けた幅木本体102と、幅木本体102の下端に形成された溝103に挿入される挿入部105を有する弾性部材104とを備えた幅木100が提案されている。幅木100は、下端に弾性部材104を取り付けることで、床面に不陸が生じる場合でも、幅木100の下端に形成されている弾性部材104を床面に当接させて、弾性部材104を床面の凹凸に沿って変形させて、幅木100と床面との接合箇所の見栄えが低下することを防ぐことができるものである。(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
このような床面の不陸に対応した幅木100は、幅木本体102と弾性部材104とを2部材で形成しているので、それぞれの部材を製造した後に2部材102,104を嵌合する工程が必要となり、製造効率が悪いという問題があった。
【0004】
これに対して、図8に示すように、幅木本体201の表面に柔軟な化粧シート202が貼着されており、下端部分に化粧シート202の裏面側より化粧シート202が残存するように長手方向にV字状溝203を設けており、V字状溝203は下端部分に複数並設されており、幅木本体201の下側表面204を長手方向にわたりその縦断面が下方へ略円弧状に膨らむよう曲成した幅木200が提案されている(特許文献3参照)。この幅木200によると、幅木本体201がV字溝203により曲げ可能となっているとともに、化粧シート202と幅木本体201のみで幅木200が形成されているので、製造工程において2部材を嵌合する工程を減らすことができ、製造効率に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-273976号公報
【文献】特開2018-44310号公報
【文献】特開2008-25314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1又は特許文献2のような2部材を嵌合する幅木100は当該2部材を嵌合する工程が増える分、製造の効率が下がるものであるが、特許文献3のように幅木本体201の下端にV字溝203を設ける幅木200の場合でも、当該V字溝203を加工する工程が必要であり、生産性が下がるおそれがある。また、幅木本体201は、幅木100の形状を維持できる剛性を有するものであるので、長手方向にV字溝203を設けたとしても床面の不陸に対して十分に追従させることは困難である。
【0007】
そこで、本発明は、床面の不陸に十分対応することができ、生産性が低下することを防ぐことができる幅木を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の幅木は、壁面と床面との境界部に沿って配置される幅木であって、板状に形成される幅木本体と、前記幅木本体に貼付される化粧シートと、を備え、前記化粧シートは、少なくとも前記幅木本体の上面及び前面に貼付さられるとともに、前記前面の下端からゆとりをもって下側に回されて、当該幅木本体の後面に貼付されるものであり、前記化粧シートは当該幅木本体の下面から離れて膨らんだ膨出部を有し、前記幅木本体の前記下面は、前記前面側が低く、前記後面側が高くなるように傾斜して形成され、前記壁面、前記床面、及び幅木本体の前記下面とで形成される側面視略三角形の室内側に露出しない空間が形成されて、前記膨出部の前記化粧シートの余剰部分が、当該空間に隠されることを特徴としている。なお、幅木本体の「前面」は、幅木が壁面と床面との境界部に沿って配置される際に、壁面と反対側となる面をいい、幅木本体の「後面」は、幅木が壁面と床面との境界部に沿って配置される際に、壁面側となる面をいう。
【0010】
本発明の幅木の製造方法は、上述のいずれかの幅木を製造する幅木の製造方法であって、接着剤を塗布した前記化粧シートを、前記幅木本体の前記後面上部から前記上面及び前記前面に亘って押し付けるとともに、前記前面の下端から前記幅木本体の下面との間に距離を開けて前記後面に回して、当該後面下部に押し付けて接着することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の幅木によると、板状に形成される幅木本体の上面及び前面に化粧シートが貼付されており、当該化粧シートは、幅木本体の下面からゆとりをもって下側に回されて、幅木本体の後ろ面に貼付されることで、幅木本体の下面から離れた膨らんだ膨出部を有するので、例えば玄関の上がり框や階段の上段框とフローリング床との段差のようにわずかな段差が形成される位置の床面に幅木を形成する場合であっても、膨出部が床面に押し付けられることによって床面に沿うように変形することができるので、床面の不陸によって幅木の下端に間隙が発生することを抑制でき、内装の意匠性が低下することを防止できる。しかも、幅木本体を表面を化粧する化粧シートによって、不陸を調整することができているので、別途、幅木の下端に不陸を調整するための弾性材料を固定する必要がなく、幅木の製造コストを低減させることができる。
【0012】
本発明の幅木によると、幅木本体の下面は、前面側が低く、後面側が高くなるように傾斜して形成されているので、幅木を壁面と床面との境界部に沿って配置したときに、幅木本体の下面は後面側が床面からより離れて配置されることとなり、幅木本体、床面、及び壁面に囲まれた、室内側に露出しない空間が形成される。そして、床面に化粧シートの膨出部を押し付けたときに、膨出部が変形することによって生じる化粧シートの余剰を、当該空間に納めることで、化粧シートの余剰を室内側に露出しないように隠すことができ、内装の意匠性の低下を抑制することができる。
【0013】
本発明の幅木の製造方法によると、接着剤を塗布した化粧シートを幅木本体の後面上部から上面及び前面に亘って押し付けるので、幅木の室内側に露出する面にはすべて化粧シートが貼付されることとなる。そして、当該化粧シートを前面の下端から幅木本体の下面との間に距離を開けて後面に回して、後面下部に押し付けて接着するので、一枚の化粧シートが、幅木本体表面の化粧材としての役割と、不陸を調整するための膨出部を形成する役割とを兼ねることができる。このように、幅木本体に一枚の化粧シートを貼付する作業のみで、不陸調整可能な幅木を完成させることができるので、別途幅木の下端に弾性材料を取り付ける場合に比べて、幅木の原料コストを低減させることができるとともに、幅木の製造の作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】幅木の全体構成を示す側面図。
図2】幅木の全体構成を示す斜視図。
図3】幅木を壁面と床面との境界に沿って配置した状態を説明する断面図。
図4】幅木によって不陸調整がなされる状態を示す上段框の断面図。
図5】不陸により床面から幅木本体が浮いた状態に配置された幅木を説明する断面図。
図6】幅木の製造方法を示す側面図。
図7】下端に弾性を有する部材を取り付けた従来の幅木を示す図。
図8】下端にV字溝を設けて幅木本体の下側表面を円弧状曲成した従来の幅木を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る幅木の実施形態について、各図を参照しつつ説明する。本実施形態の幅木1は、壁面2と床面3との境界部4に沿って配置される住宅の内装見切り材としての幅木1である。なお、幅木1は住宅に設けられるものに限定されるものではなく、居住性又は非居住性の様々な建物の壁面2及び床面3の境界部4に設けられるものであってもよい。
【0016】
幅木1は、図1及び図2に示すように、板状に形成される幅木本体5と、幅木本体5の表面に貼付される化粧シート6とを有する。幅木本体5は、例えばMDF(中密度繊維板)などの木質繊維を原料とする成型板で形成されている。幅木本体5はこれに限定されるものではなく、例えば、他の木質板や樹脂板であってもよい。上端が壁面2と床面3との境界部4に配置されたときに、幅木本体5は、上面11が水平に形成されるとともに、前面12及び後面13が鉛直に配置される。また、幅木本体5の下面14は前面12側が低く、後面13側が高く傾斜する平面状に形成されており、幅木本体5の下面14と前面12との角が鋭角に形成されている。なお、本実施形態において、幅木本体5の前面12は、幅木1が壁面2と床面3との境界部4に沿って配置される際に、壁面2と反対側となる面をいい、幅木本体5の後面13は、幅木1が壁面2と床面3との境界部4に沿って配置される際に、壁面2側となる面をいう。
【0017】
幅木本体5の前面12には、水平な溝15が形成されている。なお、幅木本体5の前面12の形状はこれに限定されるものではなく、溝15等が設けられない平坦に形成されたものであってもよく、又は2本以上の溝が設けられるものであってもよく、幅木1の前面の意匠性や幅木1を壁面2等に固定する際の接合材を目立たなくさせる等の必要に応じた形状であればよい。
【0018】
化粧シート6は、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂で形成されており、表面に幅木1の意匠性を高める色や模様が表示された可撓性を有する柔軟なシートである。化粧シート6は、幅木本体5の後面13の上部から、幅木本体5の上面11及び前面12に亘って接着されており、前面12の下端からゆとりをもって幅木本体5の下側に回されて、当該幅木本体5の後面13の下部に接着されている。化粧シート6は、幅木本体5の前面12で水平な溝15の形状に沿って折れ曲がって溝15の内部に接着されている。化粧シート6は、幅木本体5の下面14には張り付けられず、幅木本体5の下面14と化粧シート6との間に空洞が形成されている。化粧シート6の幅木本体5の下面14の下側で撓んで膨出した部分を膨出部7と呼ぶ。
【0019】
幅木1は、図3に示すように、床面3と壁面2との境界部4に沿って配置され、幅木1の前面12に形成された水平な溝15の底に例えば、隠し釘8を打ち付けて固定している。幅木1が固定されるとき、膨出部7は床面3に押し付けられて床面3の形状に応じて変形し、床面3と幅木本体5との隙間を埋める。幅木本体5の下面14は前面12側が低く、後面13側に向かって高くなるによう傾斜しているので、壁面2、床面3、及び幅木本体5の下面14とで側面視略三角形の室内側に露出しない空間9が形成されており、変形した膨出部7の化粧シート6の余剰部分は、この空間9に隠すことで、室内側の意匠性の低下を抑制することができる。
【0020】
例えば、図4に示すように、階段の上段框31が上階のフローリング床32よりも0.5mm程度高い場合に、当該上段框31とフローリング床32とに跨って幅木1を固定する場合に、上段框31側では、図3に示すように、幅木本体5の下面14の前面12側の端部が化粧シート6を挟んで上段框31に押し付けられる。すなわち、幅木本体5の下面14の前面12側の端部と床面3aとの間の距離αは化粧シート6の厚さと等しくなる。このとき化粧シート6の膨出部7は上段框31の床面3aに押し付けられて、当該床面3aに沿った形状に変形する。一方、図5に示すように、フローリング床32側では、当該フローリング床32の床面3bが上段框31の床面3aよりも低いので、幅木本体5の下面14の前面12側の端部とフローリング床32の床面3bとの間に化粧シート6の厚さ以上の距離βが形成される。そして、当該間隙βには化粧シート6の膨出部7が垂れ下がるように配置されることで、室内側から見れば幅木1が床面3に沿って隙間なく配置されているように見えることとなり、内装の意匠性が低下することを抑制できる。
【0021】
このような、幅木1を製造する際には、MDF板を成型して幅木本体5を形成し、当該幅木本体5を製造ラインに供給する。そして、図示しないが例えばロール状に巻かれた化粧シート6を引き出しつつ、当該化粧シート6の裏面に図示しない接着剤を塗布し、図6に示すように、当該化粧シート6を両端を余らせながら幅木本体5の前面12に接着する。その後、化粧シート6を弛まないように幅木本体5の上面11及び後面13上部に押し付けて接着する。さらに、化粧シート6を、幅木本体5の前面12の下端から幅木本体5の下面14との間に距離を開けて弛ませながら後面13に回し、当該後面13下部に押し付けて接着する。幅木本体5の下面14で弛ませられた化粧シート6は幅木本体5に接着されることなく接着剤を乾燥させて、膨出部7を形成する。
【0022】
このように、本実施形態の幅木の製造方法によると、一枚の化粧シート6が、幅木本体5表面の化粧材としての役割と、不陸を調整するための膨出部7を形成する役割とを兼ねることができ、幅木本体5に一枚の化粧シート6を貼付する作業のみで、不陸調整可能な幅木1を完成させることができるので、別途幅木の下端に弾性材料を取り付ける場合に比べて、幅木1の原料コストを低減させることができるとともに、幅木1の製造の作業性を高めることができる。
【0023】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係る幅木1は、住宅の幅木1及び当該幅木1の製造方法として好適である。
【符号の説明】
【0025】
1 幅木
2 壁面
3 床面
4 境界部
5 幅木本体
6 化粧シート
7 膨出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8