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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20241112BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20241112BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20241112BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H01L29/78 652J
H01L29/78 653C
H01L29/78 652C
H01L29/78 652K
H01L29/78 652F
H01L29/78 652T
H01L29/78 655A
H01L29/78 658E
H01L29/78 658A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020195325
(22)【出願日】2020-11-25
(65)【公開番号】P2022083790
(43)【公開日】2022-06-06
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 洋平
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/068697(WO,A1)
【文献】特開2019-016775(JP,A)
【文献】特開2012-169384(JP,A)
【文献】特開2009-188290(JP,A)
【文献】特開2019-102555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 29/739
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレンチゲート構造を有する半導体装置であって、
第1導電型のドリフト層(12)と、前記ドリフト層上に形成された第2導電型のベース層(13)と、前記ドリフト層内において前記ドリフト層と前記ベース層との界面から離れた位置に形成された複数の第2導電型のディープ層(18)と、前記ベース層の表層部に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第1不純物領域(14)と、前記ドリフト層のうちの前記ベース層側と反対側に形成された第1導電型または第2導電型の第2不純物領域(11)と、を含み、前記第1不純物領域側の面を一面(10a)とし、前記第2不純物領域側の面を他面(10b)とする半導体基板(10)と、
前記半導体基板の一面側から前記ベース層よりも深く形成されて前記ドリフト層に達し、前記半導体基板の一面における一方向を長手方向として延設されたトレンチ(15)が形成され、前記トレンチ内に、ゲート絶縁膜(16)およびゲート電極(17)が配置された複数のトレンチゲート構造と、
前記半導体基板の一面側に形成され、前記ベース層および前記第1不純物領域と電気的に接続される第1電極(21)と、
前記半導体基板の他面側に形成され、前記第2不純物領域と電気的に接続される第2電極(22)と、を備え、
前記ディープ層は、前記トレンチの底面よりも深い位置に形成され、
前記半導体基板には、前記一面側から前記第1不純物領域および前記ベース層を貫通して前記ディープ層に達すると共に隣合う前記トレンチと接し、前記第1電極と接続されると共に第2導電型とされた複数の接続柱領域(19)が形成され、
前記複数の接続柱領域は、前記複数のディープ層が少なくとも1つの前記接続柱領域と接続される状態で形成されると共に、それぞれの前記接続柱領域が他の前記接続柱領域と前記トレンチの長手方向において離れていると共に、前記トレンチの長手方向と交差する交差方向において少なくとも2つのトレンチが配置される状態で離れている半導体装置。
【請求項2】
前記ディープ層は、前記トレンチの長手方向と交差する交差方向に延設されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数の接続柱領域は、隣合う前記トレンチの間に少なくとも1つ配置されている請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記複数の接続柱領域は、1つの共通の前記トレンチを挟んで両側に配置された前記接続柱領域が異なる前記ディープ層と接続されている請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記複数のトレンチ、前記複数のディープ層、および前記複数の接続柱領域の前記半導体基板の一面側におけるレイアウトにおいて、前記複数の接続柱領域は、前記トレンチの長手方向において隣合う前記接続柱領域の間隔(L2)と、前記トレンチの長手方向と交差する交差方向において隣合う前記接続柱領域の間隔(L1)とがそれぞれ等しくされている請求項1ないし4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記複数の接続柱領域は、それぞれ1つの前記ディープ層と接続されている請求項1ないし5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
トレンチゲート構造を有する半導体装置であって、
第1導電型のドリフト層(12)と、前記ドリフト層上に形成された第2導電型のベース層(13)と、前記ベース層の表層部に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第1不純物領域(14)と、前記ドリフト層のうちの前記ベース層側と反対側に形成された第1導電型または第2導電型の第2不純物領域(11)と、を含み、前記第1不純物領域側の面を一面(10a)とし、前記第2不純物領域側の面を他面(10b)とする半導体基板(10)と、
前記半導体基板の一面側から前記ベース層よりも深く形成されて前記ドリフト層に達し、前記半導体基板の一面における一方向を長手方向として延設されたトレンチ(15)が形成され、前記トレンチ内に、ゲート絶縁膜(16)およびゲート電極(17)が配置された複数のトレンチゲート構造と、
前記半導体基板の一面側に形成され、前記ベース層および前記第1不純物領域と電気的に接続される第1電極(21)と、
前記半導体基板の他面側に形成され、前記第2不純物領域と電気的に接続される第2電極(22)と、を備え、
前記ドリフト層は、前記第2不純物領域よりも低不純物濃度とされた低濃度領域(12a)と、前記低濃度領域上に配置されたJFET部(12b)と、前記JFET部上に配置され、前記ベース層との界面を構成する電流分散層(12c)とを有し、
前記JFET部は、前記半導体基板の一面における一方向を長手方向とする複数の線状部分を有する構成とされ、
前記JFET部における線状部分の間には、第2導電型とされた複数の電界ブロック層(23)がそれぞれ配置され、
前記電流分散層は、前記JFET部および前記電界ブロック層上に配置されており、
前記トレンチは、底面が前記電流分散層に位置する状態で形成され、
前記半導体基板には、前記一面側から前記第1不純物領域、前記ベース層、および前記電流分散層を貫通して前記電界ブロック層に達すると共に隣合う前記トレンチと接し、前記第1電極と接続されると共に第2導電型とされた複数の接続柱領域(19)が形成され、
前記複数の接続柱領域は、前記複数の電界ブロック層が少なくとも1つの前記接続柱領域と接続される状態で形成されると共に、それぞれの前記接続柱領域が他の前記接続柱領域と前記トレンチの長手方向において離れていると共に、前記トレンチの長手方向と交差する交差方向において少なくとも2つのトレンチが配置される状態で離れている半導体装置。
【請求項8】
前記電界ブロック層は、前記トレンチの長手方向と交差する交差方向に延設されている請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記複数の接続柱領域は、隣合う前記トレンチの間に少なくとも1つ配置されている請求項7または8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記複数の接続柱領域は、1つの共通の前記トレンチを挟んで両側に配置された前記接続柱領域が異なる前記電界ブロック層と接続されている請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記複数のトレンチ、前記複数の電界ブロック層、および前記複数の接続柱領域の前記半導体基板の一面側におけるレイアウトにおいて、前記複数の接続柱領域は、前記トレンチの長手方向において隣合う前記接続柱領域の間隔(L2)と、前記トレンチの長手方向と交差する交差方向において隣合う前記接続柱領域の間隔(L1)とがそれぞれ等しくされている請求項7ないし10のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項12】
前記複数の接続柱領域は、それぞれ1つの前記電界ブロック層と接続されている請求項7ないし11のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレンチゲート構造を有する半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、トレンチゲート構造を有する半導体装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この半導体装置は、n型の基板上に、n型のドリフト層、p型のベース層、n型のソース領域が順に積層された半導体基板を用いて構成されている。そして、半導体基板には、ソース領域およびベース層を貫通するように複数のトレンチが形成されており、各トレンチには、ゲート絶縁膜およびゲート電極が順に形成されている。これにより、トレンチゲート構造が形成されている。
【0003】
ドリフト層の表層部には、ドリフト層とベース層との界面から離れた位置にp型層が形成されている。そして、半導体基板には、ソース領域およびベース層を貫通してp型層に達すると共にp型とされた接続柱領域が形成されている。詳しくは、この半導体装置では、接続柱領域がトレンチの長手方向と交差する方向に延設されている。
【0004】
そして、この半導体装置では、ベース層およびソース領域と電気的に接続されるように上部電極が形成され、n型の基板と接続されるように下部電極が形成されている。
【0005】
このような半導体装置は、ゲート電極に所定の閾値電圧以上の電圧が印加されることにより、ベース層のうちのトレンチと接する部分にチャネル領域(すなわち、反転層)が形成される。そして、半導体装置は、上部電極と接続されたソース領域からチャネル領域を介して電子がドリフト層に供給されることにより、上部電極と下部電極との間に電流が流れてオン状態となる。また、この半導体装置は、ゲート電極に所定の閾値電圧以上の電圧が印加されないようにすることにより、ベース層に形成されていたチャネル領域が消滅してオフ状態となる。そして、この半導体装置は、p型層が形成されていることにより、オフ状態において、ゲート絶縁膜に高電界が印加されることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-169384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような半導体装置において、電流が流れる領域(すなわち、アクティブ領域)を増加することでオン抵抗の低減を図りたいという要望がある。
【0008】
本発明は上記点に鑑み、オン抵抗の低減を図ることのできる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1では、トレンチゲート構造を有する半導体装置であって、第1導電型のドリフト層(12)と、ドリフト層上に形成された第2導電型のベース層(13)と、ドリフト層内においてドリフト層とベース層との界面から離れた位置に形成された複数の第2導電型のディープ層(18)と、ベース層の表層部に形成され、ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第1不純物領域(14)と、ドリフト層のうちのベース層側と反対側に形成された第1導電型または第2導電型の第2不純物領域(11)と、を含み、第1不純物領域側の面を一面(10a)とし、第2不純物領域側の面を他面(10b)とする半導体基板(10)と、半導体基板の一面側からベース層よりも深く形成されてドリフト層に達し、半導体基板の一面における一方向を長手方向として延設されたトレンチ(15)が形成され、トレンチ内に、ゲート絶縁膜(16)およびゲート電極(17)が配置された複数のトレンチゲート構造と、半導体基板の一面側に形成され、ベース層および第1不純物領域と電気的に接続される第1電極(21)と、半導体基板の他面側に形成され、第2不純物領域と電気的に接続される第2電極(22)と、を備えている。そして、ディープ層は、トレンチの底面よりも深い位置に形成され、半導体基板には、一面側から第1不純物領域およびベース層を貫通してディープ層に達すると共に隣合うトレンチと接し、第1電極と接続されると共に第2導電型とされた複数の接続柱領域(19)が形成され、複数の接続柱領域は、複数のディープ層が少なくとも1つの接続柱領域と接続される状態で形成されると共に、それぞれの接続柱領域が他の接続柱領域とトレンチの長手方向において離れていると共に、トレンチの長手方向と交差する方向において少なくとも2つのトレンチが配置される状態で離れている。
【0010】
請求項7では、トレンチゲート構造を有する半導体装置であって、第1導電型のドリフト層(12)と、ドリフト層上に形成された第2導電型のベース層(13)と、ベース層の表層部に形成され、ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第1不純物領域(14)と、ドリフト層のうちのベース層側と反対側に形成された第1導電型または第2導電型の第2不純物領域(11)と、を含み、第1不純物領域側の面を一面(10a)とし、第2不純物領域側の面を他面(10b)とする半導体基板(10)と、半導体基板の一面側からベース層よりも深く形成されてドリフト層に達し、半導体基板の一面における一方向を長手方向として延設されたトレンチ(15)が形成され、トレンチ内に、ゲート絶縁膜(16)およびゲート電極(17)が配置された複数のトレンチゲート構造と、半導体基板の一面側に形成され、ベース層および第1不純物領域と電気的に接続される第1電極(21)と、半導体基板の他面側に形成され、第2不純物領域と電気的に接続される第2電極(22)と、を備えている。そして、ドリフト層は、第2不純物領域よりも低不純物濃度とされた低濃度領域(12a)と、低濃度領域上に配置されたJFET部(12b)と、JFET部上に配置され、ベース層との界面を構成する電流分散層(12c)とを有し、JFET部は、半導体基板の一面における一方向を長手方向とする複数の線状部分を有する構成とされ、JFET部における線状部分の間には、第2導電型とされた複数の電界ブロック層(23)がそれぞれ配置され、電流分散層は、JFET部および電界ブロック層上に配置されており、トレンチは、底面が電流分散層に位置する状態で形成され、半導体基板には、一面側から第1不純物領域、ベース層、および電流分散層を貫通して電界ブロック層に達すると共に隣合うトレンチと接し、第1電極と接続されると共に第2導電型とされた複数の接続柱領域(19)が形成され、複数の接続柱領域は、複数の電界ブロック層が少なくとも1つの接続柱領域と接続される状態で形成されると共に、それぞれの接続柱領域が他の接続柱領域とトレンチの長手方向において離れていると共に、トレンチの長手方向と交差する交差方向において少なくとも2つのトレンチが配置される状態で離れている。
【0011】
これらの半導体装置によれば、複数の接続柱領域がトレンチの長手方向および長手方向と交差する方向に離れて配置されている。このため、例えば、接続柱領域がトレンチの長手方向に延設されている場合や、長手方向と交差する交差方向に延設されている場合と比較して、第1不純物領域が形成される領域を増加でき、電流が流れるアクティブ領域を増加できる。したがって、オン抵抗の低減を図ることができる。
【0012】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態における半導体装置の斜視断面図である。
図2図1中のII-II線に沿った断面図である。
図3図1に示す、ソース領域、トレンチ、ディープ層、接続柱領域の半導体基板の一面側におけるレイアウトを示す平面図である。
図4】チャネル消失量と、L1/2+L2/2との関係を示す図である。
図5A図1に示す半導体装置の製造工程を示す斜視断面図である。
図5B図5Aに続く半導体装置の製造工程を示す斜視断面図である。
図5C図5Bに続く半導体装置の製造工程を示す斜視断面図である。
図5D図5Cに続く半導体装置の製造工程を示す斜視断面図である。
図5E図5Dに続く半導体装置の製造工程を示す斜視断面図である。
図5F図5Eに続く半導体装置の製造工程を示す斜視断面図である。
図5G図5Fに続く半導体装置の製造工程を示す斜視断面図である。
図6】第1実施形態の変形例におけるソース領域、トレンチ、ディープ層、接続柱領域の半導体基板の一面側におけるレイアウトを示す平面図である。
図7】第1実施形態の変形例における示すソース領域、トレンチ、ディープ層、接続柱領域の半導体基板の一面側におけるレイアウトを示す平面図である。
図8】第2実施形態におけるソース領域、トレンチ、ディープ層、接続柱領域の半導体基板の一面側におけるレイアウトを示す平面図である。
図9】チャネル消失量と、L1/2+L2/2との関係を示す図である。
図10】第2実施形態の変形例におけるソース領域、トレンチ、ディープ層、接続柱領域の半導体基板の一面側におけるレイアウトを示す平面図である。
図11】第3実施形態における半導体装置の斜視断面図である。
図12図11中のXII-XII線に沿った断面図である。
図13図11に示すソース領域、トレンチ、電界ブロック層、接続柱領域の半導体基板の一面側におけるレイアウトを示す平面図である。
図14A図11に示す半導体装置の製造工程を示す斜視断面図である。
図14B図14Aに続く半導体装置の製造工程を示す斜視断面図である。
図14C図14Bに続く半導体装置の製造工程を示す斜視断面図である。
図14D図14Cに続く半導体装置の製造工程を示す斜視断面図である。
図14E図14Dに続く半導体装置の製造工程を示す斜視断面図である。
図14F図14Eに続く半導体装置の製造工程を示す斜視断面図である。
図14G図14Fに続く半導体装置の製造工程を示す斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の半導体装置は、図1図3に示されるように、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略)が形成されて構成されている。なお、半導体装置は、特に図示しないが、セル領域、およびセル領域を囲むように形成された外周領域を有している。そして、MOSFETは、半導体装置のうちのセル領域に形成されている。以下では、半導体基板10の面方向における一方向をX方向とし、半導体基板10の面方向における一方向と直交する方向をY方向とし、X方向およびY方向と直交する半導体基板10の厚さ方向をZ方向として説明する。また、図3は、断面図ではないが、理解をし易くするため、後述するゲート絶縁膜16、ゲート電極17、および接続柱領域19にハッチングを施してある。そして、後述の図3に対応する各図においても、断面図ではないが、理解をし易くするため、ゲート絶縁膜16、ゲート電極17、および接続柱領域19にハッチングを施してある。
【0016】
本実施形態の半導体装置は、SiCで構成されるn型の基板11を有する半導体基板10を備えている。基板11は、例えば、n型不純物濃度が1.0×1019/cmとされ、厚さが300μm程度とされている。なお、本実施形態では、基板11がMOSFETにおけるドレイン領域を構成し、基板11が第2不純物領域に相当する。
【0017】
そして、この基板11の表面には、例えば、n型不純物濃度が3.0~10.0×1015/cmとされ、厚さが5~15μm程度とされたSiCからなるn型のドリフト層12が形成されている。ドリフト層12の不純物濃度は、深さ方向において一定であってもよいが、濃度分布に傾斜を付け、ドリフト層12のうちの基板11側の方が基板11から離れる側よりも高濃度となるようにされると好ましい。例えば、ドリフト層12は、基板11の表面から3~5μm程度の部分の不純物濃度が2.0×1015/cm程度他の部分よりも高くなるようにするとよい。これにより、ドリフト層12の内部抵抗を低減できるため、オン抵抗を低減することが可能となる。
【0018】
ドリフト層12上には、ドリフト層12よりも高不純物濃度とされたp型のベース層13が形成されており、ベース層13上には、ベース層13よりも高不純物濃度とされたn型のソース領域14が形成されている。なお、本実施形態では、ソース領域14が第1不純物領域に相当する。
【0019】
ベース層13は、例えば、p型不純物濃度が5.0×1016~2.0×1019/cmとされ、厚さが2.0μm程度で構成されている。ソース領域14は、例えば、表層部におけるn型不純物濃度(すなわち、表面濃度)が1.0×1020/cmとされ、厚さが0.3μm程度で構成されている。
【0020】
そして、半導体基板10には、ベース層13およびソース領域14を貫通してドリフト層12に達するようにトレンチ15が形成されている。そして、このトレンチ15の側面と接するように、ベース層13およびソース領域14が配置されている。なお、ソース領域14は、図3に示されるように、隣合うトレンチ15の側面に接するように形成されている。また、トレンチ15は、例えば、幅が0.5~2.0μm、深さが1.0μm以上(例えば2.4μm)とされる。
【0021】
トレンチ15は、内壁面にゲート絶縁膜16が形成され、ゲート絶縁膜16の表面は、ドープトPoly-Siにて構成されたゲート電極17が配置されている。本実施形態では、このようにしてトレンチゲート構造が構成されている。そして、このトレンチゲート構造(すなわち、トレンチ15)は、図1中のY方向を長手方向として延設され、図1中のX方向に等間隔に並べられることでストライプ状とされている。つまり、トレンチゲート構造の長手方向がY方向とされ、トレンチゲート構造の配列方向がX方向とされている。なお、トレンチゲート構造の配列方向とは、トレンチ15の長手方向と交差する交差方向であって、半導体基板10の面方向に沿った方向のことである。本実施形態では、トレンチ15の長手方向と交差する交差方向は、トレンチ15の長手方向と直交する方向となる。
【0022】
また、ドリフト層12には、ベース層13との界面から離れた位置に複数のp型のディープ層18が形成されている。本実施形態では、ディープ層18は、図1図3に示されるように、トレンチ15の長手方向と交差する(具体的には、直交する)X方向に沿って延設されていると共に、トレンチ15の長手方向であるY方向に平行に並べられることでストライプ状に配置されている。また、ディープ層18は、トレンチ15の底部よりも深く形成されており、例えば、ドリフト層12とベース層13との界面からの深さが0.6~1.0μm程度とされている。
【0023】
そして、半導体基板10には、ベース層13およびソース領域14を貫通してディープ層18に達すると共に、隣合うトレンチ15にそれぞれ接するように、p型の接続柱領域19が複数形成されている。つまり、本実施形態の半導体基板10の一面10aは、トレンチ15、ソース領域14および接続柱領域19が形成されている。そして、半導体基板10は、接続柱領域19が形成されていない領域にソース領域14が形成された状態となっている。
【0024】
具体的には、複数の接続柱領域19は、各ディープ層18が少なくとも1つの接続柱領域19と接続されるように形成されていると共に、X方向およびY方向に点在して形成されている。つまり、本実施形態の接続柱領域19は、X方向に沿って延設されつつ部分的に間引かれているともいえるし、Y方向に沿って延設されつつ部分的に間引かれているともいえる。
【0025】
本実施形態では、各接続柱領域19は、隣合うトレンチ15の間に少なくとも1つが配置されつつ、それぞれY方向において隣合う2つのディープ層18と接続されるように形成されている。そして、各接続柱領域19は、他の接続柱領域19からX方向およびY方向に離れた位置に形成されている。なお、各接続柱領域19は、X方向において少なくとも2つのトレンチ15が配置されるように形成されている。
【0026】
本実施形態では、図3に示されるように、各接続柱領域19は、X方向において隣合う接続柱領域19の間に4本のトレンチ15が配置され、Y方向において隣合う接続柱領域19の間に6本のディープ層18が配置されるように形成されている。また、1つの共通のトレンチ15を挟んで両側に配置された接続柱領域19は、異なるディープ層18と接続されるように形成されている。
【0027】
さらに、本実施形態の各接続柱領域19は、X方向において隣合う接続柱領域の間隔L1がそれぞれ等しく、かつY方向において隣合う接続柱領域の間隔L2がそれぞれ等しくなるように形成されている。つまり、各接続柱領域19は、X方向に進むにつれてY方向に順にずれるように配置されている。
【0028】
図1および図2に示されるように、半導体基板10の一面10aには、層間絶縁膜20が形成されている。そして、層間絶縁膜20上には、層間絶縁膜20に形成されたコンタクトホール20aを介してソース領域14および接続柱領域19と電気的に接続される上部電極21が形成されている。なお、ベース層13およびディープ層18は、接続柱領域19と接続されており、接続柱領域19を介して上部電極21と電気的に接続されている。
【0029】
本実施形態の上部電極21は、例えば、Ni/Al等の複数の金属にて構成されている。そして、複数の金属のうちのn型SiC(すなわち、ソース領域14)を構成する部分と接触する部分は、n型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。また、複数の金属のうちの少なくともp型SiC(すなわち、接続柱領域19)と接触する部分は、p型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。なお、本実施形態では、上部電極21が第1電極に相当している。
【0030】
基板11の他面10b側には、基板11と電気的に接続される下部電極22が形成されている。なお、本実施形態では、下部電極22が第2電極に相当している。本実施形態では、このような構造により、nチャネルタイプの反転型であるトレンチゲート構造のMOSFETが構成されている。そして、このようなMOSFETが複数配置されることでセル領域が構成されている。
【0031】
以上が本実施形態における半導体装置の構成である。なお、本実施形態では、n型、n型が第1導電型に相当しており、p型が第2導電型に相当している。また、本実施形態では、上記のように構成されることにより、半導体基板10は、基板11、ドリフト層12、ベース層13、ソース領域14を含んで構成される。そして、本実施形態では、基板11がSiCで構成されると共に、ドリフト層12やベース層13等がSiCで構成されている。このため、本実施形態の半導体装置は、SiC半導体装置であるともいえる。
【0032】
次に、上記半導体装置の作動について説明する。
【0033】
まず、上記半導体装置では、ゲート電極17にゲート電圧が印加される前の状態では、ベース層13にチャネル領域が形成されない。したがって、下部電極22に正の電圧を印加したとしても、ソース領域14から電子はベース層13内に到達することはできず、上部電極21と下部電極22との間に電流が流れない。
【0034】
次に、オフ時(例えば、ゲート電圧=0V、ドレイン電圧=650V、ソース電圧=0V)には、下部電極22に電圧を印加しても逆バイアスになるため、ベース層13とドリフト層12との間より空乏層が広がる。この際、上記半導体装置では、ベース層13の不純物濃度がドリフト層12より高くされているため、空乏層がほぼドリフト層12側に広がる。例えば、ベース層13の不純物濃度をドリフト層12の不純物濃度の10倍とした場合、空乏層は、ベース層13側に約0.7μm伸び、ドリフト層12側に約7.0μm伸びるが、上記半導体装置では、ベース層13の厚みを2.0μmと空乏層の伸び量よりも大きくしてあるため、パンチスルーしないようにできる。そして、ドレイン電圧が0Vの場合より空乏層が広がっており、絶縁体として振舞う領域が更に広がっているため、上部電極21と下部電極22との間に電流が流れない。
【0035】
また、ゲート電圧が0Vになっているため、ドレイン-ゲート間にも電界がかかる。このため、ゲート絶縁膜16の底部にも電界集中が発生し得る。しかしながら、上記半導体装置は、トレンチ15よりも深いディープ層18を備えた構造としているため、ディープ層18とドリフト層12とのpn接合部での空乏層がドリフト層12側に大きく伸びることになり、ドレイン電圧の影響による高電圧がゲート絶縁膜16に入り込み難くなる。これにより、ゲート絶縁膜16内での電界集中、特にゲート絶縁膜16のうちのトレンチ15の底部での電界集中を緩和することが可能となり、ゲート絶縁膜16が破壊されることを防止することが可能となる。
【0036】
一方、オン時(例えば、ゲート電圧=20V、ドレイン電圧=1V、ソース電圧=0V)には、ゲート電極17にゲート電圧として20Vが印加されるため、ベース層13のうちのトレンチ15に接している表面にチャネル領域(すなわち、反転層)が形成される。このため、上部電極21からソース領域14に注入された電子がベース層13に形成されたチャネル領域を介してドリフト層12に達し、上部電極21と下部電極22との間に電流が流れる。
【0037】
この際、複数の接続柱領域19は、上記のようにX方向およびY方向に点在して形成されている。このため、例えば、接続柱領域19がX方向に延設されてY方向に並べて配置されている場合や、Y方向に延設されてX方向に並べて配置されている場合と比較して、ソース領域14が形成される領域を増加でき、電流が流れるアクティブ領域を増加できる。したがって、オン抵抗の低減を図ることができる。
【0038】
この場合、X方向において隣合う接続柱領域19を結ぶ仮想線と、Y方向において隣合う接続柱領域19を結ぶ仮想線とが交差する4つの接続柱領域19の中心は、L1/2+L2/2の位置となる。そして、図4に示されるように、L1/2+L2/2を長くするほどX方向またはY方向にて隣合う接続柱領域19の間隔が長くなるため、チャネル消失量を少なくできる。但し、L1/2+L2/2を短くするほど、ディープ層18と接続柱領域19との接続柱領域が増加するため、チャネル消失量が多くなるものの、ディープ層18の電位を安定化させることができる。したがって、接続柱領域19は、使用される用途に応じ、X方向において隣合う接続柱領域19の間隔L1およびY方向において隣合う接続柱領域19の間隔L2が調整されることが好ましい。なお、ここでは、上部電極21から電子が注入されるソース領域14の減少量をチャネル消失量としている。
【0039】
次に、上記半導体装置の製造方法について、図5A図5Hを参照しつつ簡単に説明する。
【0040】
まず、図5Aに示されるように、基板11上にドリフト層12のうちの基板11側の部分を構成する下層ドリフト層121を配置する。例えば、下層ドリフト層121は、基板11の表面上にエピタキシャル成長等をすることによって形成される。
【0041】
次に、図5Bに示されるように、下層ドリフト層121上に図示しないフォトレジストを配置してパターニングを行い、フォトレジストをマスクとしてイオン注入等を行うことによって下層ドリフト層121の表層部にディープ層18を形成する。
【0042】
その後、図5Cに示されるように、下層ドリフト層121上にドリフト層12のうちのベース層13側の部分を構成する上層ドリフト層121を配置することにより、下層ドリフト層121および上層ドリフト層122を有するドリフト層12を構成する。本実施形態では、このようにしてドリフト層12の内部にディープ層18が配置された状態となる。
【0043】
続いて、図5Dに示されるように、ドリフト層12上に、ベース層13、ソース領域14を形成することで半導体基板10を構成する。例えば、ベース層13は、ドリフト層12の表面上にエピタキシャル成長等をすることによって形成される。ソース領域14は、ベース層13上に図示しないフォトレジストを配置してパターニングを行い、フォトレジストをマスクとしてイオン注入等を行うことで形成される。
【0044】
次に、図5Eに示されるように、ソース領域14上に図示しないフォトレジストを配置してパターニングを行い、フォトレジストをマスクとしてイオン注入等を行うことによって接続柱領域19を形成する。但し、ここでの接続柱領域19は、トレンチ15が形成される部分にもはみ出して形成される。
【0045】
次に、図5Fに示されるように、ソース領域14および接続柱領域19上に図示しないフォトレジストを配置してパターニングを行い、フォトレジストをマスクとして異方性エッチングを行うことでトレンチ15を形成する。この際、接続柱領域19をトレンチ15が形成される部分にも形成することにより、多少の位置ずれがあったとしても、隣合うトレンチ15のそれぞれに接続柱領域19が接する状態にできる。
【0046】
その後は、図5Gに示されるように、一般的な製造プロセスを行い、ゲート絶縁膜16、ゲート電極17、層間絶縁膜20、上部電極21、下部電極22等を形成することにより、上記図1に示す半導体装置が製造される。
【0047】
なお、上記では、接続柱領域19をイオン注入によって形成する方法を説明したが、次のように接続柱領域19を形成してもよい。例えば、接続柱領域19を構成する部分に接続柱用トレンチを形成し、接続柱用トレンチ内にp型SiCを埋め込んで接続柱領域19を形成するようにしてもよい。
【0048】
以上説明した本実施形態によれば、複数の接続柱領域19のそれぞれは、X方向およびY方向に離れて配置されることにより、点在して配置されている。また、接続柱領域19は、X方向においては、少なくとも2つのトレンチ15が接続柱領域19の間に配置されるように形成されている。接続柱領域19は、Y方向においては、複数のディープ層18が配置されるように形成されている。このため、接続柱領域19がX方向に延設されてY方向に並べて配置されている場合や、Y方向に延設されてX方向に並べて配置されている場合と比較して、ソース領域14が形成される領域を増加でき、電流が流れるアクティブ領域を増加できる。したがって、オン抵抗の低減を図ることができる。
【0049】
(1)また、本実施形態では、ディープ層18がX方向に沿って延設されている。このため、ディープ層18とトレンチ15との位置関係を詳細に制御する必要がなく、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0050】
(2)また、本実施形態では、隣合うトレンチ15の間に少なくとも1つの接続柱領域19が配置されている。このため、ディープ層18の電位を安定化し易くできる。
【0051】
(3)また、本実施形態では、1つの共通のトレンチ15を挟んで両側に配置された接続柱領域19が異なるディープ層18と接続されている。このため、接続柱領域19が密集して形成され難くなり、オン抵抗の低減を図ることができる。
【0052】
(4)また、本実施形態では、複数の接続柱領域19は、X方向において隣合う接続柱領域の間隔L1がそれぞれ等しく、かつY方向において隣合う接続柱領域の間隔L2がそれぞれ等しくなるように形成されている。つまり、複数の接続柱領域19は、規則的なレイアウトとなるように形成されている。このため、ディープ層18の電位を安定化し易くできる。
【0053】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態の変形例について説明する。上記第1実施形態において、接続柱領域19は、図6に示されるように、X方向において隣合う接続柱領域19の間に3本のトレンチ15が配置されるように形成されていてもよい。また、図7に示されるように、接続柱領域19は、X方向において隣合う接続柱領域19の間に2本のトレンチ15が配置されるように形成されていてもよい。さらに、特に図示しないが、接続柱領域19は、X方向において隣合う接続柱領域19の間に5本以上のトレンチ15が配置されるように形成されていてもよい。
【0054】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、接続柱領域19の形状を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0055】
本実施形態の半導体装置は、図8に示されるように、各接続柱領域19がそれぞれ1つのディープ層18と接続されている。そして、本実施形態の各接続柱領域19は、X方向において隣合う接続柱領域19の間に4本のトレンチ15が配置され、Y方向において隣合う接続柱領域19の間に2本のディープ層18が配置されるように形成されている。
【0056】
以上説明した本実施形態によれば、複数の接続柱領域19のそれぞれは、X方向およびY方向に離れて配置されることにより、点在して配置されている。また、接続柱領域19は、X方向においては、少なくとも2つのトレンチ15が接続柱領域19の間に配置されるように形成されている。接続柱領域19は、Y方向においては、複数のディープ層18が配置されるように形成されている。このため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
(1)また、本実施形態では、各接続柱領域19は、1つのディープ層18と接続されている。このため、図9に示されるように、上記第1実施形態と比較すると、L1/2+L2/2を等しくした場合、チャネル消失量を低減できる。つまり、さらにオン抵抗の低減を図ることができる。
【0058】
(第2実施形態の変形例)
上記第2実施形態の変形例について説明する。上記第2実施形態において、接続柱領域19は、図10に示されるように、X方向において隣合う接続柱領域19の間に2本のトレンチ15が配置され、Y方向において隣合う接続柱領域19の間に1本のディープ層18が配置されるように形成されていてもよい。
【0059】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、電界ブロック層等を追加したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0060】
本実施形態の半導体装置では、図11および図12に示されるように、ドリフト層12は、基板11側から順に、低濃度領域12a、JFET部12b、電流分散層12cを有する構成とされている。JFET部12bは、X方向に沿って延設された複数の線状部分を有する構成とされている。
【0061】
そして、JFET部12bにおける複数の線状部分の間には、p型の電界ブロック層23が配置されている。つまり、JFET部12bおよび電界ブロック層23は、共に、X方向に延設され、Y方向において交互に繰り返し並べられて配置されている。言い換えると、JFET部12bの線状部分と電界ブロック層23は、それぞれストライプ状とされている。そして、電流分散層12cは、JFET部12bおよび電界ブロック層23上に形成されている。
【0062】
なお、JFET部12bおよび電界ブロック層23は、飽和電流抑制層を構成するものである。また、本実施形態では、JFET部12bが電界ブロック層23よりも下方まで形成されたものとされている。そして、JFET部12bのうちのストライプ状とされている部分は、電界ブロック層23の下方において連結した状態になっている。
【0063】
JFET部12bのうちストライプ状とされている線状部分は、例えば、幅が0.25μm、形成間隔となるピッチが0.6~2.0μmとされている。また、JFET部12bの厚みは、例えば、1.5μmとされており、n型不純物濃度は、低濃度領域12aよりも高くされ、例えば、5.0×1017~2.0×1018/cmとされている。つまり、低濃度領域12aは、JFET部12bよりも低不純物濃度とされている。
【0064】
電界ブロック層23は、電界緩和層を構成する部分である。上記のように、電界ブロック層23は、ストライプ状とされており、例えば、幅が0.15μm、厚みが1.4μmとされている。また、電界ブロック層23は、例えば、不純物濃度が3.0×1017~1.0×1018/cmとされている。本実施形態の場合、電界ブロック層23は、深さ方向においてp型不純物濃度が一定とされている。また、電界ブロック層23は、低濃度領域12aと反対側の表面がJFET部12bの表面と同一平面とされている。
【0065】
電流分散層12cは、後述するようにチャネル領域を通じて流れる電流がX方向に拡散できるようにする層であり、例えば、低濃度領域12aよりも不純物濃度が高くされている。つまり、低濃度領域12aは、電流分散層12cよりも低不純物濃度とされている。本実施形態では、電流分散層12cは、不純物濃度がJFET部12bと同じかそれよりも高くされ、例えば、厚みが0.5μmとされている。また、電流分散層12cは、n型不純物濃度が2.0×1016~5.0×1017/cmとされている。
【0066】
そして、ベース層13は、電流分散層12cの上に形成され、ソース領域14等は上記第1実施形態と同様とされている。また、トレンチ15は、底面が電流分散層12c内に位置するように形成されている。
【0067】
各接続柱領域19は、ベース層13、ソース領域14、および電流分散層12cを貫通して電界ブロック層23に達するように形成されている。なお、図13に示されるように、本実施形態におけるソース領域14、トレンチ15、接続柱領域19、電界ブロック層23のレイアウトは、図3のディープ層18を電界ブロック層23に変更したものと同様である。そして、接続柱領域19は、上記第1実施形態と同様の形状で配置されている。
【0068】
以上が本実施形態における半導体装置の構成である。次に、本実施形態における半導体装置の作動について説明する。
【0069】
本実施形態の半導体装置では、上記第1実施形態と同様に、ゲート電極17にゲート電圧が印加される前の状態では、上部電極21と下部電極22との間に電流が流れない。
【0070】
そして、オン時(例えば、ゲート電圧=20V、ドレイン電圧=1V、ソース電圧=0V)には、ベース層13のうちのトレンチ15に接している表面にチャネル領域(すなわち、反転層)が形成され、ソース領域14と電流分散層12cとの間が導通する。これにより、上部電極21と下部電極22との間に電流が流れる。この際、接続柱領域19が上記第1実施形態と同様の構成とされているため、オン抵抗の低減を図ることができる。
【0071】
一方、オフ時(例えば、ゲート電圧=0V、ドレイン電圧=650V、ソース電圧=0V)には、チャネル領域が無くなり、ソース領域14と電流分散層12cとの間が非導通となり、上部電極21と下部電極22との間の電流が遮断される。
【0072】
この際、本実施形態では、JFET部12bおよび電界ブロック層23が備えられている。このため、半導体装置がオン状態である場合には、JFET部12bおよび電界ブロック層23が飽和電流抑制層として機能し、飽和電流抑制効果を発揮することで低オン抵抗を図りつつ、低飽和電流を維持できる構造とすることが可能となる。具体的には、JFET部12bのうちストライプ状とされた部分と電界ブロック層23とが交互に繰り返し形成された構造とされていることから、次に示すような作動を行う。
【0073】
まず、ドレイン電圧が例えば1~1.5Vのように通常作動時に印加される電圧である場合には、電界ブロック層23側からJFET部12bへ伸びる空乏層は、JFET部12bのうちストライプ状とされた部分の幅よりも小さい幅しか伸びない。このため、JFET部12b内へ空乏層が伸びても電流経路が確保される。そして、JFET部12bの不純物濃度が低濃度領域12aよりも高くされており、電流経路を低抵抗に構成できるため、低オン抵抗を図ることが可能となる。
【0074】
また、負荷短絡等によってドレイン電圧が通常作動時の電圧よりも高くなると、電界ブロック層23側からJFET部12bへ伸びる空乏層がJFET部12bのうちストライプ状とされた部分の幅よりも伸びる。そして、電流分散層12cよりも先にJFET部12bが即座にピンチオフされる。この際、JFET部12bのうちストライプ状とされた部分の幅および不純物濃度に基づいてドレイン電圧と空乏層の幅との関係が決まる。このため、本実施形態では,通常作動時のドレイン電圧よりも少し高い電圧となったときにJFET部12bがピンチオフされるように、JFET部12bのうちストライプ状とされた部分の幅および不純物濃度が設定されている。したがって、低いドレイン電圧でもJFET部12bをピンチオフすることが可能となる。このように、ドレイン電圧が通常作動時の電圧よりも高くなったときにJFET部12bが即座にピンチオフされるようにすることで、低飽和電流を維持することができ、更に負荷短絡等によるSiC半導体装置の耐量を向上することが可能となる。
【0075】
つまり、本実施形態の半導体装置では、JFET部12bおよび電界ブロック層23が飽和電流抑制層として機能すると共に、飽和電流抑制効果を発揮することにより、低オン抵抗と低飽和電流を両立することができる。
【0076】
さらに、JFET部12bを挟み込むように電界ブロック層23を備えることにより、JFET部12bのうちストライプ状とされた部分と電界ブロック層23とが交互に繰り返し形成された構造とされている。このため、ドレイン電圧が高電圧になったとしても、下方から低濃度領域12aに伸びてくる空乏層の伸びが電界ブロック層23によって抑えられ、トレンチゲート構造に延伸することを防ぐことができる。つまり、電界ブロック層23が電界緩和層として機能する。したがって、ゲート絶縁膜16に掛かる電界を低下させる電界抑制効果を発揮させられ、ゲート絶縁膜16が破壊されることを抑制できるため、高耐圧化で信頼性の高い素子とすることが可能となる。そして、このようにトレンチゲート構造への空乏層の延伸を防げるため、ドリフト層12の一部を構成する低濃度領域12aやJFET部12bの不純物濃度を比較的濃くすることができ、低オン抵抗化を図ることが可能となる。
【0077】
次に、上記半導体装置における製造方法について、図14A図14Hを参照しつつ簡単に説明する。なお、上記第1実施形態と同様である部分の説明については省略する。
【0078】
まず、図14Aに示されるように、基板11を用意し、基板11上に低濃度領域12aおよびJFET部12bを配置する。なお、低濃度領域12aおよびJFET部12bは、基板11の表面上にエピタキシャル成長等をすることによって形成される。
【0079】
次に、図14Bに示されるように、JFET部12b上に図示しないフォトレジストを配置してパターニングを行い、フォトレジストをマスクとしてイオン注入等を行うことにより、電界ブロック層23を形成する。
【0080】
なお、ここでは、電界ブロック層23をイオン注入によって形成しているが、イオン注入以外の方法によって電界ブロック層23を形成してもよい。例えば、JFET部12bを選択的に異方性エッチングして電界ブロック層23と対応する位置に凹部を形成し、この上にp型SiCをエピタキシャル成長させた後、JFET部12bの上に位置する部分のp型SiCを除去して電界ブロック層23を形成するようにしてもよい。
【0081】
続いて、図14Cに示されるように、JFET部12bおよび電界ブロック層23の上に電流分散層12cを形成することにより、ドリフト層12を構成する。なお、電流分散層12cは、エピタキシャル成長によって形成される。
【0082】
その後、図14Dに示されるように、電流分散層12cの上に、ベース層13およびソース領域14を順に形成することによって半導体基板10を構成する。なお、ベース層13は、電流分散層12cの表面上にエピタキシャル成長等をすることによって形成される。ソース領域14は、ベース層13上に図示しないフォトレジストを配置してパターニングを行い、フォトレジストをマスクとしてイオン注入等を行うことで形成される。
【0083】
そして、図14Eに示されるように、図示しないフォトレジストを配置してパターニングを行い、フォトレジストをマスクとしてイオン注入等を行うことによって接続柱領域19を形成する。但し、ここでの接続柱領域19は、トレンチ15が形成される部分にもはみ出して形成される。
【0084】
続いて、図14Fに示されるように、ソース領域14上に図示しないフォトレジストを配置してパターニングを行い、フォトレジストをマスクとして異方性エッチングを行うことでトレンチ15を形成する。なお、本実施形態では、底面が電流分散層12c内に位置するようにトレンチ15を形成する。
【0085】
その後は、図14Gに示されるように、一般的な製造プロセスを行い、ゲート絶縁膜16、ゲート電極17、層間絶縁膜20、上部電極21、下部電極22等を形成することにより、上記図11に示す半導体装置が製造される。
【0086】
以上説明した本実施形態によれば、複数の接続柱領域19のそれぞれは、X方向およびY方向に離れて配置されることにより、点在して配置されている。また、接続柱領域19は、X方向においては、少なくとも2つのトレンチ15が接続柱領域19の間に配置されるように形成されている。接続柱領域19は、Y方向においては、複数の電界ブロック層23が配置されるように形成されている。このため、上記第1実施形態と同様に、オン抵抗の低減を図ることができる。また、本実施形態の半導体装置によれば、ドリフト層12が低濃度領域12a、JFET部12b、電流分散層12cを有する構成とされ、JFET部12bの線状部分の間に電界ブロック層23が配置されている。このため、上記のように、オン抵抗の低減を図りつつ、低飽和電流を維持できる。
【0087】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0088】
上記各実施形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプのトレンチゲート構造のMOSFETを半導体スイッチング素子の一例として説明した。しかしながら、これは一例を示したに過ぎず、他の構造の半導体スイッチング素子、例えばnチャネルタイプに対して各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプのトレンチゲート構造のMOSFETとしてもよい。さらに、半導体装置は、MOSFET以外に、同様の構造のIGBTが形成された構成とされていてもよい。IGBTの場合、上記第1実施形態におけるn型のドレイン領域(すなわち、基板11)をp型のコレクタ領域に変更する以外は、上記第1実施形態で説明した縦型MOSFETと同様である。
【0089】
また、上記各実施形態では、基板11、ドリフト層12、ベース層13、ソース領域14等がSiCで構成されるSiC半導体装置について説明した。しかしながら、上記各実施形態における半導体装置は、基板11、ドリフト層12、ベース層13、ソース領域14等がシリコン等で構成されていてもよい。
【0090】
さらに、上記第1、第2実施形態では、ディープ層18がX方向に沿って延設されている例について説明したが、ディープ層18がY方向に延設されていてもよい。同様に、上記第3実施形態では、電界ブロック層23がX方向に沿って延設されている例について説明したが、電界ブロック層23がY方向に沿って延設されていてもよい。
【符号の説明】
【0091】
10 半導体基板
10a 一面
10b 他面
11 基板(第2不純物領域)
12 ドリフト層
13 ベース層
14 ソース領域(第1不純物領域)
15 トレンチ
16 ゲート絶縁膜
17 ゲート電極
18 ディープ層
19 接続柱領域
21 上部電極(第1電極)
22 下部電極(第2電極)
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図14G