(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】ノズル、現像装置及び被処理体の加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20241112BHJP
G03F 7/30 20060101ALI20241112BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H01L21/30 569D
G03F7/30 501
H01L21/306 Z
(21)【出願番号】P 2020198652
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【氏名又は名称】大森 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100211052
【氏名又は名称】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】神田 真治
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 紀仁
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-288390(JP,A)
【文献】特開昭61-129055(JP,A)
【文献】特開2004-274028(JP,A)
【文献】特開2009-047740(JP,A)
【文献】特開2011-209535(JP,A)
【文献】特開2008-114183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を噴射するノズルであって、
中心軸線を有する筒状の筐体を備え、
前記筐体は、
前記筐体内に前記処理液を供給する液供給口と、
前記筐体内に圧縮気体を供給する気体供給口と、
前記処理液を前記圧縮気体と共に噴射する噴射口と、
を有し、
前記噴射口は前記中心軸線を中心とする円環形状を有
し、
前記中心軸線の延在方向において前記液供給口と前記噴射口との間に配置されたロッド部材であり、前記噴射口側に向かうにつれて直径が拡大する傾斜面を有する、該ロッド部材を更に備え、
前記液供給口から供給された前記処理液と前記気体供給口から供給された前記圧縮気体との混合物を前記噴射口に案内する流体通路が前記筐体の内周面と前記傾斜面との間に形成された、ノズル。
【請求項2】
処理液を噴射するノズルであって、
中心軸線を有する筒状の筐体を備え、
前記筐体は、
前記筐体内に前記処理液を供給する液供給口と、
前記筐体内に圧縮気体を供給する気体供給口と、
前記処理液を前記圧縮気体と共に噴射する噴射口と、
を有し、
前記噴射口は前記中心軸線を中心とする円環形状を有し、
前記処理液を前記中心軸線に沿って前記筐体内に導く液供給管と、
前記液供給管を流れる前記処理液を拡散する拡散板であり、前記中心軸線を中心とする周方向に沿って配列された複数の開口が形成された、該拡散板と、
を更に備える
、ノズル。
【請求項3】
前記噴射口から前記処理液を霧状にして噴射するように構成された、請求項1又は2に記載のノズル。
【請求項4】
前記処理液が、レジスト膜を現像する現像液、又は、被処理体をエッチングするエッチング液である、請求項1~
3の何れか一項に記載のノズル。
【請求項5】
被処理体上に形成されたレジスト膜を現像する現像装置であって、
処理容器と、
前記処理容器内に配置された請求項1~
4の何れか一項に記載のノズルと、
前記処理容器内で前記被処理体を前記ノズルに対して相対的に移動させる搬送機構と、
前記処理液として現像液を前記ノズルに供給する現像液供給装置と、
前記圧縮気体を前記ノズルに供給する圧縮気体供給装置と、
を備える、現像装置。
【請求項6】
前記現像液供給装置は、40℃以上に加熱された前記現像液を前記ノズルに供給する、請求項
5に記載の現像装置。
【請求項7】
前記処理容器内から前記現像液を含む気体を回収し、気液分離する回収装置を更に備える、請求項
5又は
6に記載の現像装置。
【請求項8】
被処理体上に感光性を有するレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を露光する工程と、
円環状の噴射口を有するノズルの内部で現像液及び圧縮空気を混合する工程と、
露光された前記レジスト膜に対して
前記ノズルから圧縮気体
と現像液
との混合物を噴射してレジストパターンを形成する工程と、
を含
み、
前記噴射口の中心軸線に沿った方向から見て円環状をなし、且つ、前記噴射口から離れるにつれて径が大きくなる噴射パターンで前記現像液を噴射する、被処理体の加工方法。
【請求項9】
前記噴射口から前記現像液を霧状にして噴射する、請求項
8に記載の加工方法。
【請求項10】
前記現像液の噴射方向が、前記中心軸線に対して10°以下の角度で傾斜している、請求項
8に記載の加工方法。
【請求項11】
前記レジストパターンを介して研磨材を前記被処理体に噴射して、前記被処理体の一部を除去する工程を更に含む、請求項
8~
10の何れか一項に記載の加工方法。
【請求項12】
前記ノズルから前記レジストパターンを介してエッチング液を前記被処理体に噴射して、前記被処理体の一部を除去する工程を更に含む、請求項
8~
11の何れか一項に記載の加工方法。
【請求項13】
前記レジストパターンに剥離液を供給して、前記被処理体から前記レジストパターンを除去する工程を更に含む、請求項
8~
12の何れか一項に記載の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ノズル、現像装置及び被処理体の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被処理体の表面に形成されたレジスト膜に現像液を供給して、当該レジスト膜を現像する現像装置が記載されている。この現像装置は、横長スリット形状の噴射口を含むノズルを有し、当該ノズルから噴射口の短手方向に傾斜した方向に現像液を高圧エアと共に噴射することで、被処理体上にレジストパターンを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、特許文献1に記載のノズルでは、噴射口の短手方向に傾斜した方向に現像剤が噴射されることによって当該短手方向へのレジスト膜の現像が促進される。一方、噴射口の長手方向では、レジスト膜に対して略垂直方向から現像剤が供給されることによりレジスト膜の現像の進行が抑制される。したがって特許文献1に記載のノズルを用いて現像処理を行った場合には、噴射口の長手方向及び短手方向においてレジストパターンのパターン寸法に違いが生じることがある。このようなレジストパターンを用いて被処理体を加工すると面内方向によって被処理体の加工精度にばらつきが生じることがある。したがって、特に被処理体の加工に高い精度が要求される場合には、要求された精度で被処理体を加工することが困難になることがある。
【0005】
そこで本開示は、被処理体に対する加工の均一性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、処理液を噴射するノズルが提供される。このノズルは、中心軸線を有する筒状の筐体を備える。この筐体は、筐体内に処理液を供給する液供給口と、筐体内に圧縮気体を供給する気体供給口と、処理液を圧縮気体と共に噴射する噴射口と、を有する。噴射口は中心軸線を中心とする円環形状を有する。
【0007】
上記態様に係るノズルは、円環形状を有する噴射口を有し、当該噴射口から液供給口から導かれた処理液及び気体供給口から導かれた圧縮気体が噴射される。円環形状を有する噴射口からは、中心軸線を中心とする周方向において均一に処理液が噴射されるので、当該周方向おいて加工精度のばらつきが抑制される。よって、被処理体に対する加工の均一性を向上させることができる。
【0008】
一実施形態のノズルは、中心軸線の延在方向において液供給口と噴射口との間に配置されたロッド部材であり、噴射口側に向かうにつれて直径が拡大する傾斜面を有する、該ロッド部材を更に備え、液供給口から供給された処理液及び気体供給口から供給された圧縮気体を噴射口に案内する流体通路が筐体の内周面と傾斜面との間に形成されていてもよい。筐体の内周面とロッド部材との間に形成された流体通路に流入した処理液及び圧縮気体は、ロッド部材の傾斜面に沿って案内され、噴射口から噴射される。これにより、中心軸線に対して傾斜した方向に処理液が噴射されるので、被処理体の開口部の側壁面に満遍なく処理液を供給することができる。その結果、被処理体の加工精度を向上させることができる。
【0009】
一実施形態のノズルは、噴射口から処理液を霧状にして噴射するように構成されていてもよい。処理液を霧状にして噴射することで、被処理体の開口部の内部まで処理液が供給されやすくなるので、被処理体の加工精度をより高めることができる。
【0010】
一実施形態では、処理液を中心軸線に沿って筐体内に導く液供給管と、液供給管を流れる処理液を拡散する拡散板であり、中心軸線を中心とする周方向に沿って配列された複数の開口が形成された、該拡散板と、を更に備えていてもよい。この実施形態では、液供給管を流れた処理液は、拡散板に衝突して拡散してから圧縮空気と共に流体通路に案内される。このように拡散された処理液を流体通路に導入することによって、噴射口から噴射される処理液の均一性を向上させることができる。
【0011】
一実施形態では、処理液が、レジスト膜を現像する現像液、又は、被処理体をエッチングするエッチング液であってもよい。上述したノズルから現像液又はエッチング液を被処理体に噴射することによって、被処理体を高い均一性で加工することができる。
【0012】
一態様では、被処理体上に形成されたレジスト膜を現像する現像装置が提供される。この現像装置は、処理容器と、処理容器内に配置された上記ノズルと、処理容器内で被処理体をノズルに対して相対的に移動させる搬送機構と、処理液として現像液をノズルに供給する現像液供給装置と、圧縮気体をノズルに供給する圧縮気体供給装置と、を備える。
【0013】
上記態様に係る現像装置では、上述のノズルから圧縮気体と共に現像液を被処理体に対して噴射することにより、レジスト膜を高い均一性で現像することができる。
【0014】
一実施形態では、現像液供給装置は、40℃以上に加熱された現像液をノズルに供給してもよい。40℃以上に加熱された現像液をノズルに供給することによって、レジスト膜を効果的に現像することができる。
【0015】
一実施形態では、処理容器内から現像液を含む気体を回収し、気液分離する回収装置を更に備えてもよい。回収装置によって現像液を含む気体を気液分離することによって、当該気体から現像液を回収することができる。
【0016】
一態様に係る被処理体の加工方法は、被処理体上に感光性を有するレジスト膜を形成する工程と、レジスト膜を露光する工程と、露光されたレジスト膜に対して円環状の噴射口を有するノズルから圧縮気体と共に現像液を噴射してレジストパターンを形成する工程と、を含む。
【0017】
上記態様に係る加工方法では、円環状の噴射口を有するノズルから現像液を噴射してレジストパターンを形成する。円環状の噴射口からは、当該噴射口の周方向に均一に現像液が噴射されるので、レジスト膜を高い均一性で現像することができる。このように形成されたレジストパターンを用いることで、被処理体に対する加工の均一性を向上させることができる。
【0018】
一実施形態では、噴射口から現像液を霧状にして噴射してもよい。現像液を霧状にして噴射することで、レジスト膜の膨潤を抑制することができると共に、レジスト膜の開口部の内部まで現像液が供給されやすくなる。したがって、レジスト膜に高い精度でパターンを形成することができる。
【0019】
一実施形態では、噴射口の中心軸線に沿った方向から見て円環状をなし、且つ、噴射口から離れるにつれて径が大きくなる噴射パターンで現像液を噴射してもよい。このような噴射パターンで現像液を噴射することによって、レジスト膜に高い均一性及び高い精度でパターンを形成することができる。
【0020】
一実施形態では、現像液の噴射方向が、中心軸線に対して10°以下の角度で傾斜していてもよい。中心軸線に対して10°以下の角度で傾斜する方向に現像液を噴射することによって、レジスト膜の開口部の側壁面に現像液を満遍なく供給することができるので、レジスト膜に高い精度でパターンを形成することができる。
【0021】
一実施形態では、レジストパターンを介して研磨材を被処理体に噴射して、被処理体の一部を除去する工程を更に含んでもよい。上述した方法によって形成されたレジストパターンを用いて被処理体を加工することで、被処理体を高い均一性で加工することができる。
【0022】
一実施形態では、ノズルからレジストパターンを介してエッチング液を被処理体に噴射して、被処理体の一部を除去する工程を更に含む。上述したノズルを用いてエッチング液を噴射することによって、被処理体を高い均一性で加工することができる。
【0023】
一実施形態では、レジストパターンに剥離液を供給して、被処理体からレジストパターンを除去する工程を更に含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様及び種々の実施形態によれば、被処理体に対する加工の均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】一実施形態に係る現像装置を概略的に示す図である。
【
図6】
図2のVI―VI線に沿った現像液の噴射流の断面図である。
【
図7】被処理体に対するノズルの走査方向を示す図である。
【
図8】現像処理によってレジスト膜の一部が除去される様子を示す図である。
【
図9】一実施形態に係る被処理体の処理方法を示すフローチャートである。
【
図10】レジスト膜を形成する工程を示す図である。
【
図11】レジスト膜を露光する工程を示す図である。
【
図12】レジスト膜を現像する工程を示す図である。
【
図13】被処理体をブラスト加工する工程を示す図である。
【
図14】レジストパターンを剥離する工程を示す図である。
【
図15】(a)は比較例1によって形成されたレジストパターンを示すSEM写真であり、(b)は実施例1によって形成されたレジストパターンを示すSEM写真である。
【
図16】(a)は比較例2によって形成されたレジストパターンを示すSEM写真であり、(b)は実施例2によって形成されたレジストパターンを示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。以下の説明では、露光によってパターンが転写される感光性皮膜をレジスト膜と称し、レジスト膜を現像することでレジスト膜に転写されたパターンに対応する形状を有する開口部が形成された皮膜をレジストパターンと称する。
【0027】
図1は、一実施形態に係る現像装置100を概略的に示す図である。
図1に示す現像装置100は、例えばフォトリソグラフィによってパターンが露光されたレジスト膜を現像する現像装置である。以下の説明では、後述するノズル2の移動方向をX方向、後述する被処理体10の搬送方向をY方向、X方向及びY方向に垂直な方向をZ方向として説明する。
【0028】
図1に示すように、現像装置100は、処理容器1、ノズル2、被処理体搬送機構3、ノズル搬送機構4、現像液供給装置5、圧縮空気供給装置(圧縮気体供給装置)6及び回収装置7を備えている。
【0029】
処理容器1は、その内部に現像室S1を画成している。現像室S1には、処理対象物である被処理体10が配置される。被処理体10は、例えばプリント基板、シリコン基板、ガラス基板、メタル基板等の加工基板であり、これらの加工基板に所定の処理が施された中間生産物であってもよい。被処理体10の表面上には、所定のパターンが転写されたレジスト膜12が形成されている。レジスト膜12は、例えば感光性を有するドライフィルムレジストである。
【0030】
ノズル2は、後述する噴射口20が被処理体10に対向した状態で現像室S1に配置されている。ノズル2は、被処理体10上に形成されたレジスト膜12に対して処理液として現像液14を噴射する。なお、現像装置100は、複数のノズル2を備えていてもよい。
【0031】
上記被処理体搬送機構3及びノズル搬送機構4は、現像室S1内で被処理体10をノズル2に対して移動させる搬送装置を構成する。被処理体搬送機構3は、現像室S1内で被処理体10を支持する。被処理体搬送機構3は、例えばベルトコンベア装置であり、その上に載置された被処理体10をY方向に搬送する。
【0032】
ノズル搬送機構4は、現像室S1でノズル2を保持している。ノズル搬送機構4は、例えばX方向に延在するレール41と、当該ノズル2を保持する保持部材42と、保持部材42を駆動する駆動部43とを含む。ノズル搬送機構4は、駆動部43の駆動力によって、保持部材42をレール41に沿って移動させることでノズル2をX方向に搬送する。
【0033】
なお、現像装置100は、搬送装置として被処理体搬送機構3及びノズル搬送機構4のうち一方を備え、被処理体10及びノズル2の一方のみをX方向及びY方向に移動させてもよいし、被処理体搬送機構3及びノズル搬送機構4の双方を備え、被処理体10及びノズル2の双方を移動させてもよい。
【0034】
現像液供給装置5は、レジスト膜12を現像するための現像液14を高圧・高温状態で貯えている。現像液14は、例えば炭酸ナトリウム水溶液を含有する。現像液供給装置5には、配管51が接続され、現像液供給装置5は当該配管51を介して現像液14をノズル2へ供給する。なお、現像液供給装置5は、40℃以上に加熱された現像液14をノズル2へ圧送してもよい。
【0035】
圧縮空気供給装置6は、例えばコンプレッサを含み、配管52を介してノズル2に圧縮空気(圧縮気体)15を供給する。圧縮空気供給装置6からノズル2に供給される圧縮空気15の圧力は、現像液供給装置5からノズル2に供給される現像液14の圧力よりも僅かに小さくてもよい。ノズル2に供給される圧縮空気15の圧力とノズル2に供給される現像液14の圧力との差圧を調整することによってノズル2からの現像液14の噴射量が調整される。現像液14の噴射量は、ノズル2に供給される圧縮空気15の圧力とノズル2に供給される現像液14の圧力との差圧が大きくなるにつれて増加する。例えば、この差圧は、0.01MPa以上0.05MPa以下に設定されてもよい。なお、圧縮空気供給装置6は、空気以外の気体をノズル2に供給してもよい。
【0036】
回収装置7は、現像室S1から現像液14を含む気体を回収し、気液分離する。
図1に示すように、回収装置7は、気液分離機61を備えている。気液分離機61は、例えばサイクロン式の気液分離機であり、配管53を介して現像室S1に接続されると共に配管54を介してブロア62に接続されている。レジスト膜12の現像時には、ノズル2から現像液14及び圧縮空気15が噴射されることによって現像室S1の内部圧力が増加する。したがって、現像室S1を負圧にすることが要求される。ブロア62は、配管54を介して気液分離機61内の気体を吸引する。ブロア62によって気液分離機61内の圧力が負圧になることで、現像室S1内の現像液14を含む気体が配管53を介して気液分離機61に吸引される。気液分離機61は、フィルタを含み、当該フィルタによって吸引された気体に含まれる現像液14を捕集し、捕集した現像液14を回収タンク63に回収する。回収タンク63に回収された現像液14は、レジスト膜12の現像処理に再利用される。
【0037】
また、ノズル2から噴射された現像液14は、現像室S1の下方に設けられたタンクに回収される。当該タンクに回収された現像液14は、ポンプによって現像装置100の外部に排出される。なお、回収された現像液14は、現像液供給装置5に戻され、レジスト膜12の現像処理に再利用されてもよい。
【0038】
図2及び
図3を参照して、一実施形態のノズルについて詳細に説明する。
図2はノズル2の斜視図であり、
図3はノズル2の中心軸線AXに沿った断面図である。
図2及び
図3に示すように、ノズル2は、円環形状を有する噴射口20を有し、当該噴射口20から現像液14及び圧縮空気15を気液二相流として噴射する。以下の説明では、噴射口20側の方向をノズル2の先端側と称し、噴射口20とは反対側の方向をノズル2の基端側と称することがある。
【0039】
図2及び
図3に示すように、ノズル2は筒状の筐体22を備えている。筐体22は、その軸線が中心軸線AXに一致する円筒形状を有し、その内部に混合室S2を有する。筐体22は、基端部221、中間部222及び先端部223を含む。基端部221、中間部222及び先端部223は、ノズル2の基端側からこの順に配置されている。これら基端部221、中間部222及び先端部223は、一体的に形成されていてもよいし、別体として構成され互いに連結されていてもよい。基端部221の内周面221sは、中心軸線AXに平行な方向において略一定の径を有している。中間部222の内周面222sは、ノズル2の先端側に向かうにつれて徐々に縮径している。先端部223の内周面223sは、ノズル2の先端部に向かうにつれて徐々に拡径している。基端部221の内周面221s及び中間部222の内周面222sは、混合室S2を画成している。先端部223の内周面223sは、後述する流体通路40を画成している。
【0040】
筐体22には、筐体22内に現像液14を供給する液供給口24と筐体22内に圧縮空気15を供給する気体供給口26とが形成されている。液供給口24は、筐体22の中心軸線AX上に形成され、当該液供給口24には液供給管25が挿入されている。液供給管25は、現像液14を中心軸線AXに沿って混合室S2に導く導入路28を提供する。液供給管25の基端側の端部は配管51に接続されている。液供給管25の先端側の端部は、混合室S2内に配置されている。現像液供給装置5から供給された現像液14は、配管51及び液供給管25を通って混合室S2に導かれる。
【0041】
一実施形態では、液供給管25の先端側の端部には、液供給管25を流れる現像液14を拡散する拡散板30が設けられてもよい。拡散板30は、略円板形状を有し、中心軸線AX上に配置されている。
【0042】
図4は、拡散板30の平面図である。
図4に示すように、拡散板30には、現像液14が通過可能な複数の開口32が形成されている。これら複数の開口32は、中心軸線AXを中心とする仮想円Cに沿って等間隔で配列されている。拡散板30は、導入路28内を中心軸線AX方向に流れる現像液14を拡散して複数の開口32から噴射する。
【0043】
気体供給口26は、筐体22の基端部221に形成されている。気体供給口26には、気体供給管27が接続されている。気体供給管27は、配管52を介して圧縮空気供給装置6に接続されている。圧縮空気供給装置6から供給された圧縮空気15は、配管52及び気体供給管27を介して混合室S2に導かれ、混合室S2内で現像液14と混合される。
【0044】
ノズル2は、ロッド部材36及び突出部38を更に備えている。ロッド部材36及び突出部38は、中心軸線AXに平行な方向において液供給口24と噴射口20との間に配置されている。突出部38は、略円柱形状を有し、拡散板30の下面に接続されている。ロッド部材36の上面は、突出部38と略同一の径を有し、突出部38に固定されている。ロッド部材36の下面は、ロッド部材36の上面よりも大きな径を有している。すなわち、ロッド部材36は、ノズル2の先端側に近づくにつれて径が大きくなる円錐台形状をなしており、噴射口20に近づくにつれて直径が拡大する傾斜面36sを有している。
【0045】
図3に示すように、傾斜面36sは中心軸線AXに対して角度θで傾斜している。角度θは、レジストパターンに形成されるパターン寸法等に応じて任意に設定される。この角度θに応じて噴射口20から噴射される現像液14の噴射角度が定められる。例えば、角度θは、0°よりも大きく、10°以下に設定される。
【0046】
ロッド部材36の傾斜面36sは、先端部223の内周面223sと隙間を介して対面するように配置されている。言い換えれば、先端部223の内周面223sは、ロッド部材36の傾斜面36sを囲むように配置されている。これら内周面223sと傾斜面36sとの間には、液供給口24から供給された現像液14及び気体供給口26から供給された圧縮空気15を混合室S2から噴射口20に案内する流体通路40が形成される。
【0047】
この流体通路40は、ロッド部材36の傾斜面36sに沿って延在し、流体通路40の延在方向において略一定の幅(内周面223sと傾斜面36sと間の距離)を有している。流体通路40は、中心軸線AXに対して垂直な断面から見て円環形状を有し、その直径は噴射口20に向かうにつれて拡大されている。流体通路40は、混合室S2で混合された現像液14及び圧縮空気15を噴射口20に案内する。
【0048】
流体通路40の出口は、現像液14及び圧縮空気15を噴射する噴射口20を構成する。
図5は、ノズル2の下面図である。
図5に示すように、ノズル2の噴射口20は、ロッド部材36の下面と先端部223の内周面223sの下面との間に形成され、中心軸線AXを中心とする円環形状を有している。現像液14は、噴射口20から噴射されるときに、圧縮空気15のせん断力によって微細化され霧状になって噴射される。
【0049】
図3を参照して、ノズル2内の現像液14及び圧縮空気15の流れについて説明する。現像液供給装置5から供給された現像液14は、配管51を通って液供給管25に導かれ、導入路28を中心軸線AXの延在方向に沿って流れる。導入路28の端部に到達した現像液14は、拡散板30に衝突して導入路28内で拡散される。導入路28内で拡散した現像液14は、複数の開口32の何れかをランダムで通過して混合室S2に噴射される。これにより、複数の開口32から均一な量の現像液14が排出される。
【0050】
一方、圧縮空気供給装置6から供給された圧縮空気15は、配管52及び気体供給口26を介して混合室S2内に導入される。混合室S2内に導入された圧縮空気15は、複数の開口32を通過した現像液14と混ざり合いながら、中間部222の内周面222sに沿って現像液14と共に流体通路40に案内される。そして、現像液14及び圧縮空気15は流体通路40の入口に導入され、流体通路40を噴射口20に向けて流れる。このとき、現像液14及び圧縮空気15の流れ方向は、ロッド部材36の傾斜面36sに沿った方向に整えられる。流体通路40を流れた現像液14は、圧縮空気15と共に円環状の噴射口20から噴射される。このとき、現像液14は圧縮空気15によってせん断され、霧状になって噴射口20から噴射される。
【0051】
噴射口20からの現像液14の噴射方向は、ロッド部材36の傾斜面36sの傾斜方向に一致する。すなわち、中心軸線AXを基準とする噴射口20からの現像液14の噴射角度は、傾斜面36sの角度θと一致する。すなわち、現像液14は、中心軸線AXに対して10°以下の角度θで噴射口20から噴射される。なお、現像液14は、中心軸線AXに対して0°よりも大きな角度で噴射口20から噴射される。
【0052】
図6は、
図2のVI―VI線に沿った現像液14の噴射流の断面図である。噴射口20は円環形状を有しているので、
図6に示すように、噴射口20から噴射された現像液14の流れは、中心軸線AXに対して垂直な断面から見て円環状のパターンを有する。また、中心軸線AXに対して角度θで噴射口20から現像液14が噴射されるので、噴射口20から離れるにつれて現像液14の噴射幅Wは大きくなる。すなわち、円環形状の噴射口20からは、空円錐型(ホローコーン型)の噴射パターンで現像液14が噴射される。このような噴射パターンで現像液14を噴射することにより、高い均一性及び高い精度でレジスト膜12を現像することが可能となる。
【0053】
図1を再び参照する。
図1に示すように、現像装置100は、制御装置8を更に備えている。制御装置8は、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、現像装置100の各部を制御する。制御装置8では、入力装置を用いてオペレータが現像装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うことができ、また、表示装置により現像装置100の稼働状況を可視化して表示すことができる。現像装置100の記憶部には、現像装置100で実行される各種処理をプロセッサにより制御するための制御プログラムや、処理条件に応じて現像装置100の各構成部に処理を実行させるためのプログラムが格納されている。
【0054】
制御装置8は、被処理体搬送機構3、ノズル搬送機構4、現像液供給装置5、圧縮空気供給装置6及び回収装置7と通信可能に接続されている。例えば、制御装置8は、現像液供給装置5及び圧縮空気供給装置6に制御信号を送出して、ノズル2に供給される現像液14及び圧縮空気15の流量を制御する。また、制御装置8は、回収装置7に制御信号を送出して気液分離機61及びブロア62の動作を制御する。さらに、制御装置8は、被処理体搬送機構3及びノズル搬送機構4に制御信号を送出して、Y方向における被処理体10の搬送速度、及び、X方向におけるノズル2の移動速度を制御する。
【0055】
図7は、被処理体10に対するノズル2の相対的な移動方向を模式的に示す図である。制御装置8は、ノズル2に対して現像液14及び圧縮空気15が供給された状態で、被処理体搬送機構3を制御して被処理体10を開始位置SからY方向の一方側に一定の速度で移動させた後、ノズル搬送機構4を制御してノズル2をX方向の一方側に一定の速度で移動させる。次いで、制御装置8は、被処理体搬送機構3を制御して被処理体10をY方向の他方側に一定の速度で移動させた後、ノズル搬送機構4を制御してノズル2をX方向の一方側に一定の速度で移動させる。制御装置8は、上述のように被処理体搬送機構3及びノズル搬送機構4を繰り返し制御して、被処理体10に対してノズル2を二次元的に走査することで被処理体10上に形成されたレジスト膜12の全面に現像液14を均一に噴射する。
【0056】
上記のように、現像液14が、被処理体10上に形成されたレジスト膜12に対して噴射されることにより、レジスト膜12が現像される。
図8(a)は、露光された露光領域12aと露光されていない未露光領域12bを含むレジスト膜12を示す断面図である。
図8(b)に示すように、ノズル2の噴射口20からレジスト膜12に対して現像液14が噴射されると、レジスト膜12の未露光領域12bが溶け出して選択的に除去される。
図8(c)に示すように、レジスト膜12の露光領域12aが完全に除去されると、露光されたパターンに対応する開口部45が形成されたレジストパターン16が得られる。
【0057】
上述したように、現像装置100は、円環形状の噴射口20から空円錐型の噴射パターンで現像液14を噴射する。ノズル2から噴射される現像液14は、噴射口20の周方向において均一に噴射されるので、高い均一性でレジストパターン16を形成することが可能である。また、円環形状の噴射口20から現像液14を噴射することによって、例えば円形の噴射口から現像液を噴射した場合と比較して広い範囲に現像液14を供給することができるのでレジスト膜12の現像処理を高速化することが可能である。
【0058】
また、ノズル2から中心軸線AXに対して角度θで傾斜した方向に現像液14が噴射されることで、レジスト膜12の露光領域12aの側壁面に現像液14を満遍なく供給することができる。その結果、レジストパターン16の開口部45の垂直性を高めることができ、高い精度でパターンを形成することができる。例えば、露光時にレジスト膜12に照射されるエネルギー線Lはレジスト膜12の下部に向かうにつれて減衰するので、現像時にレジスト膜12の開口部の側壁面は下方に向かうにつれて幅が狭まる逆テーパ形状になりやすい。したがって、中心軸線AXに対して平行な方向に現像液14を噴射した場合には、レジスト膜12の側壁面に直接現像液14が当たらずにレジスト膜12の下部に現像残りが発生することがある。これに対し、ノズル2から中心軸線AXに対して角度θで傾斜した方向に現像液14を噴射することにより、レジスト膜12の下部の側壁面に対して現像液14を直接接触させることができるので、レジスト膜12の膜厚が大きい場合であっても微細且つ均一性の高いパターンを有するレジストパターン16を形成することが可能となる。
【0059】
さらに、従来の現像装置では、レジスト膜12の現像中に現像液14が染み込むことでレジスト膜12が膨潤することがあった。レジスト膜12が膨潤すると、レジストパターン16に形成される開口部45の幅が縮小する原因となる。これに対し、上述の現像装置100では、ノズル2の噴射口20から霧状の現像液14が高速で噴射されるので、レジスト膜12への現像液14の染み込みが抑制され、レジスト膜12の膨潤が抑制される。さらに、霧状の現像液14がレジスト膜12の未露光領域12bの奥まで入り込むので、開口部45の垂直性を向上させることができる。したがって、レジストパターン16に形成されるパターンの精度を高めることができる。
【0060】
次に、一実施形態の被処理体の加工方法について説明する。
図9は、一実施形態に係る被処理体の加工方法を示すフローチャートである。この方法は、現像装置100を含む基板処理システムを用いて行われる。以下では、開口部を有するレジストパターン16を用いて被処理体10を加工することで被処理体10の一部を除去する方法について説明する。
【0061】
この方法では、まず被処理体10上にレジスト膜12が形成される(ステップST1:レジスト膜の形成)。被処理体10上に形成されるレジスト膜12は、フォトレジストであり、例えば液状レジスト又はドライフィルムレジストが利用される。液状レジストを用いてレジスト膜12を形成する場合には、コータ(例えば、スピンコータ、ロールコータ、ダイコータ、バーコータ等)を用いて、或いは、スクリーン印刷によって被処理体10上に液状レジストが均一に塗布される。その後、塗布された液状レジストを乾燥させることにより被処理体10上にレジスト膜12が形成される。
【0062】
一方、ドライフィルムレジストを用いてレジスト膜12を形成する場合には、ラミネート装置が利用される。
図10は、レジスト膜12の形成に使用される例示的なラミネート装置70を示している。ラミネート装置70は、感光性を有するドライフィルムレジストを保持する供給ローラ71と、ドライフィルムレジストを巻き取って被処理体10に圧着する圧着ローラ72と、被処理体10を支持するテーブル73とを備えている。圧着ローラ72は、供給ローラ71から巻き取られたドライフィルムレジストを保護フィルムを剥がしながら加圧することで当該ドライフィルムレジストを被処理体10上に貼り付ける。圧着ローラ72は、例えば加熱素子を含み、ドライフィルムレジストを加熱しながら被処理体10の上面に圧着してもよい。これにより、被処理体10の上面にレジスト膜12が形成される。なお、テーブル73の内部にも加熱素子が設けられ、圧着ローラ72及びテーブル73の一方又は双方を用いてドライフィルムレジストを加熱することでドライフィルムレジストを被処理体10上に貼り付けてもよい。
【0063】
ドライフィルムレジストのラミネート条件は、被処理体10の加工条件に応じて適宜設定される。例えば、被処理体10として、直径300mm、厚み10mmのアルミナ基板を使用し、且つ、被処理体10上に直径500μmのドット形状を有するレジストパターン16を形成する場合には、一例として、以下に示すラミネート条件で被処理体10上にドライフィルムレジストが形成される。
【0064】
(ラミネート条件)
・テーブルの設定温度:70℃
・テーブルの搬送速度:500mm/min
【0065】
なお、ドライフィルムレジスト又はレジスト液に含有されるレジスト材料は、ポジ型レジスト材料であってもよいし、ネガ型レジスト材料であってもよい。ポジ型レジスト材料は、レジスト膜12の露光領域12aが溶け出し未露光領域12bが残るレジスト材料である。ネガ型レジスト材料は、レジスト膜12の未露光領域12bが溶け出し、露光領域12aが残るレジスト材料である。
【0066】
次いで、露光装置によって被処理体10上に形成されたレジスト膜12が露光される(ステップST2:露光処理)。このステップは、
図11に示すように、例えば所定のパターンを有するパターンマスク18を介して露光装置の光源からレジスト膜12にエネルギー線L(例えば可視光線又は紫外線)を照射することで行われる。パターンマスク18としては、例えば透明の板材(例えば、ガラス、フィルム、等)上に黒色の膜が形成された構成を有し、エネルギー線Lを透過する領域とエネルギー線Lを透過しない領域とを有するネガ型のマスクが利用される。エネルギー線Lを照射するための光源としてしては、例えばLEDランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプ、キセノンランプ等が利用される。一例では、超高圧水銀ランプから紫外線がレジスト膜12に照射される。この露光処理によって、パターンマスク18のパターンがレジスト膜12に転写される。
【0067】
次いで、レジスト膜12に転写されたパターンが現像される(ステップST3:現像処理)。このステップでは、レジスト膜12に現像液14を吹き付けることでレジスト膜12が現像される。従来の現像装置としては、ポンプで加圧した現像液を現像液噴射ノズルを用いて噴射するシャワー式の現像装置が一般的に知られている。このようなシャワー式の現像装置は、微細なパターンの内部に現像液14が供給されにくく微細なパターンを高い精度で現像することが難しい。これに対して、一実施形態の被処理体の加工方法では、
図1に示す現像装置100を使用してレジスト膜12が現像される。例えば、現像装置100は、被処理体10に対して相対的にノズル2をX方向及びY方向に走査しながら、円環状の噴射口20を有するノズル2から現像液14を圧縮空気15と共にレジスト膜12に噴射する。例えばステップST3では、
図1に示すように、ノズル搬送機構4を用いてノズル2を左右方向(X方向)に高速で移動させながら、被処理体搬送機構3を用いて被処理体10を前後方向(Y方向)に移動させる。このとき、噴射口20からは、空円錐型の噴射パターンで霧状の現像液14がレジスト膜12に噴射される。現像液14がレジスト膜12に対して噴射されることにより、レジスト膜12の露光領域又は未露光領域が選択的に除去される。その後、現像されたレジスト膜12が水洗い及びエアーブロー処理されることで、
図12に示すように、被処理体10上に微細且つ均一なパターンを有するレジストパターン16が形成される。
【0068】
露光装置によるレジスト膜12の現像条件は、レジストパターン16に形成されるパターンの形状及び寸法に応じて適宜設定される。例えば、直径500μmのドット形状を有するレジストパターン16を形成する場合には、以下に示す現像条件にてレジスト膜12が現像される。
【0069】
(現像条件)
・現像液:アルカリ性水溶液
・現像液の温度:40℃
・ノズルの移動幅:500mm
・ノズルの移動速度:10m/min
・被処理体の移動速度:100mm/min
【0070】
なお、一実施形態では、レジスト膜12を硬化させるために、現像処理の前に被処理体10を加熱炉に搬送して加熱処理(プリベイク)を行ってもよい。また、現像処理後に被処理体10を洗浄処理すると共に、再加熱処理(ポストベイク)を行ってもよい。
【0071】
次いで、被処理体10が加工される(ステップST4:加工)。例えば、この加工は、エッチング加工である。例えば、エッチング加工は、ブラスト加工である。例えば、このブラスト加工は、ブラスト処理装置80によって行われる。
図13に示すように、ブラスト処理装置80は、ブラストノズル82を左右方向及び前後方向に走査しながら、レジストパターン16を介して被処理体10に対して圧縮空気と共に研磨材84を吹き付けることにより、被処理体10の表面のうちレジストパターン16の開口部から露出した部分を切削して除去する。その結果、被処理体10にレジストパターン16のパターンが転写される。
【0072】
被処理体10のブラスト加工条件は、被処理体10に形成されるパターンに応じて適宜設定される。例えば、上述したレジストパターン16を用いて被処理体10に深さ50μmの穴を形成する場合には、以下に示すブラスト加工条件にて被処理体10が加工される。
【0073】
(ブラスト加工条件)
・ブラストノズルの移動速度:10m/min
・ブラストノズルの噴射内圧:0.25MPa
【0074】
次いで、剥離装置90によって被処理体10からレジストパターン16が剥離される(ステップST5)。例えば、
図14に示すように、剥離装置90は、スプレーノズル92から被処理体10の表面に剥離液94を散布することで被処理体10の表面からレジストパターン16を除去する。上述した一連の工程によって微細なパターンが形成された被処理体10が作製される。
【0075】
以上、種々の実施形態に係るノズル2、現像装置100及び被処理体の加工方法について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形態様を構成可能である。
【0076】
例えば、上述の実施形態では、ノズル2から現像液14を圧縮空気15と共に噴射させているが、一実施形態ではノズル2からエッチング液を噴射させてもよい。この場合、ノズル2を備えるエッチング装置は、ノズル2の液供給管25に処理液としてエッチング液を供給し、気体供給管27に圧縮空気を供給する。これにより、エッチング液及び圧縮空気が混合室S2内で混合され、円環形状を有する噴射口20から空円錐型の噴射パターンで霧状のエッチング液が噴射される。空円錐型の噴射パターンで霧状のエッチング液をレジストパターン16を介して被処理体10に噴射することで、被処理体10の開口部の側壁面にも満遍なくエッチング液が供給されるので、被処理体10を高い精度で加工することができる。
【0077】
また、
図9に示す被処理体10の加工方法のステップST4では、被処理体10をレジストパターン16を介してブラスト加工することで被処理体10の一部を除去しているが、一実施形態では、ウエットエッチング(ケミカルエッチング)により、被処理体10の一部を除去してもよい。ウエットエッチングは、エッチング液(薬剤)を用いて被処理体10の表面を化学的に腐食させることで被処理体10を部分的に除去する手法である。一実施形態では、被処理体10をエッチング液に浸漬させてもよく、レジストパターン16を介してエッチング液を被処理体10に噴射して被処理体10の一部を除去してもよい。エッチング液を被処理体10に噴射する場合には、上述したノズル2から空円錐型の噴射パターンでエッチング液を被処理体10に噴射してもよい。円環形状を有するノズル2から被処理体10に対してエッチング液を噴射することによって、高い均一性及び精度で被処理体10を加工することができる。
【0078】
また、別の実施形態では、ステップST4において現像処理されたレジストパターン16を用いて被処理体10をメッキ加工してもよい。例えば、被処理体10上に形成されたレジストパターン16を介してメッキ層を形成することで、被処理体10上にレジストパターン16に形成されたパターンの形状に対応するメタルマスクを形成することができる。
【0079】
一例として、300mm×300mmのステンレス基板上にドライフィルムレジストを貼り付けてドット形状を有するレジストパターン16を形成すると共に、このレジストパターン16を用いて被処理体10上にメタルマスクを形成する場合には、例えば以下のラミネート条件、露光条件及び現像条件に従って、レジスト膜12の形成、露光処理及び現像処理が行われる。
【0080】
(ラミネート条件)
・テーブルの設定温度:70℃
・テーブルの搬送速度:500mm/min
【0081】
(露光条件)
・エネルギー線:紫外線
【0082】
(現像条件)
・現像液:アルカリ性水溶液
・現像液の温度:60℃
・ノズルの移動幅:400mm
・ノズルの移動速度:10m/min
・被処理体の移動速度:30mm/min
【0083】
この実施形態では、上述した条件によって形成されたレジストパターン16を有する被処理体10上に電気メッキ法を用いてニッケル製のメッキ層が形成される。そして、剥離液94を用いてレジストパターン16を剥離することによって、メタルマスクが形成される。
【0084】
以下、上述したノズル2及び現像装置100の効果について、実施例及び比較例に基づいて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0085】
実施例1及び比較例1では、被処理体10上に感光性を有するドライフィルムレジストを形成し、フォトリソグラフィ技術を用いてこのドライフィルムレジストを露光・現像することにより被処理体10の一部を覆うウエットエッチング用のレジストパターン16を形成した。被処理体10上に形成されるべきレジストパターン16の設計寸法は、厚さ15μm、線幅12μmとした。実施例1では、
図2に示すノズル2から空円錐型の噴射パターンで霧状の現像液14をドライフィルムレジストに噴射することでレジストパターン16を形成した。一方、比較例1では、シャワーノズルから液体状の現像液14をドライフィルムレジストに供給することでレジストパターン16を形成した。そして、実施例1及び比較例1によって形成されたレジストパターン16を電子顕微鏡(SEM)で観察した。
【0086】
図15(a)は、比較例1によって形成されたレジストパターン16のSEM写真である。
図15(b)は、実施例1によって形成されたレジストパターン16のSEM写真である。
図15(a)に示すように、比較例1によって形成されたレジストパターン16の線幅はドライフィルムレジストに露光された線幅である12μmよりも狭いことが確認された。比較例1では、液体状の現像液14がドライフィルムレジストに染み込んで膨潤することで、レジストパターン16の開口部が縮小されたと考えられる。これに対して、
図15(b)に示すように、実施例1によって形成されたレジストパターン16の線幅は12μmであり、高い精度でレジストパターン16を形成できることが確認された。
【0087】
次に、実施例2及び比較例2について説明する。実施例2及び比較例2では、被処理体10上に感光性を有するドライフィルムレジストを形成し、フォトリソグラフィ技術を用いてこのドライフィルムレジストを露光・現像することにより被処理体10の一部を覆うサンドブラスト用のレジストパターン16を形成した。被処理体10上に形成されるべきレジストパターン16の設計寸法は、厚さ35μm、線幅30μmとした。実施例2では、
図2に示すノズル2から空円錐型の噴射パターンで霧状の現像液14をドライフィルムレジストに噴射することでレジストパターン16を形成した。一方、比較例2では、シャワーノズルから液体状の現像液14をドライフィルムレジストに供給することでレジストパターン16を形成した。そして、実施例2及び比較例2によって形成されたレジストパターン16を電子顕微鏡(SEM)で観察した。
【0088】
図16(a)は、比較例2によって形成されたレジストパターン16のSEM写真である。
図16(b)は、実施例2によって形成されたレジストパターン16のSEM写真である。
図16(a)に示すように、比較例2によって形成されたレジストパターン16では、底部付近で開口部の幅が縮小されていることが確認された。この開口幅の縮小は、シャワーノズルから供給された現像液の一部が開口部の底部に滞留し、開口部の側壁面に現像液14が十分に供給されなかったことに起因すると考えられる。これに対して、
図16(b)に示すように、実施例2によって形成されたレジストパターン16では開口部の側壁面が高い垂直性を有しており、高い精度でレジストパターン16が現像されていることが確認された。
【符号の説明】
【0089】
1…処理容器、2…ノズル、3…被処理体搬送機構、4…ノズル搬送機構、5…現像液供給装置、6…圧縮空気供給装置(圧縮気体供給装置)、7…回収装置、10…被処理体、12…レジスト膜、14…現像液、15…圧縮空気(圧縮気体)、16…レジストパターン、20…噴射口、22…筐体、24…液供給口、25…液供給管、26…気体供給口、30…拡散板、32…開口、36…ロッド部材、36s…傾斜面、40…流体通路、84…研磨材、94…剥離液、100…現像装置、221s,222s,223s…内周面、AX…中心軸線、θ…角度。