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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 5/01 20060101AFI20241112BHJP
   E03D 1/30 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
E03D5/01
E03D1/30
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020204492
(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公開番号】P2022091580
(43)【公開日】2022-06-21
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松永 隆志
(72)【発明者】
【氏名】吾郷 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】両角 和美
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-133318(JP,A)
【文献】特開2013-029018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00
E03D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水によって洗浄される水洗大便器であって、
便器本体と、
洗浄水を貯留する洗浄水タンクと、
前記洗浄水タンクに洗浄水を供給する給水部と、
前記洗浄水タンクに貯留された洗浄水を前記便器本体に供給するポンプと、
前記ポンプの駆動を制御する制御部と、
前記ポンプに流れる電流値を測定する電流値検知手段と、
前記洗浄水タンク内の水位を検知する水位検知手段と
を備え、
前記制御部は、前記水位検知手段によって検知された前記水位および、前記水位検知手段により前記洗浄水タンク内の洗浄水があることを検知する水位である所定水位を比較して前記洗浄水タンク内の洗浄水の有無を判定する第1判定と、前記電流値検知手段によって測定された前記電流値と閾値とを比較して前記洗浄水タンク内の洗浄水の有無を判定する第2判定とを行い、前記第1判定の判定結果と前記第2判定の判定結果とに基づいて前記閾値の異常判定を行うこと
を特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1判定において、前記水位検知手段によって検知された前記水位と前記所定水位とを比較して前記洗浄水タンク内の洗浄水があると判定して便器洗浄を開始し、かつ、前記第2判定において、前記電流値が前記閾値よりも低い場合には前記閾値の異常と判定すること
を特徴とする請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2判定において、前記電流値が前記閾値よりも低い場合は前記給水部によって前記洗浄水タンクに洗浄水を供給し、前記水位検知手段によって満水水位が検知されるまでにかかる時間が所定時間よりも短い場合には前記閾値の異常と判定すること
を特徴とする請求項2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
前記制御部は、前記閾値の異常と判定すると、便器洗浄を実行し、当該便器洗浄に伴う前記電流値検知手段によって測定された電流値に応じて新たな閾値を再設定すること
を特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄水によって便器本体を洗浄する水洗大便器には、洗浄水タンクに貯留された洗浄水を便器本体に供給するポンプを備えるものが知られている。このような水洗大便器では、洗浄水タンク内に洗浄水がない状態でポンプを駆動すると、たとえば、ポンプの封止構造(メカニカルシール)が破損して漏水するなど、ポンプ性能に悪影響を与えるおそれがある。
【0003】
このため、たとえば、洗浄水タンク内の上方および下方に洗浄水タンク内の水位を検知するためのフロートスイッチを備え、洗浄水タンク内の下方のフロートスイッチが所定水位を検知した場合にはポンプを停止するものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
また、たとえば、洗浄水タンク内に洗浄水がある場合と洗浄水がない場合とでポンプが受ける水の抵抗が変化するため、ポンプに流れる電流値に差異が生じ、このようなポンプ特性による電流値の差異によって洗浄水タンク内に洗浄水がないと判定された場合にポンプを停止するものがある(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-2075号公報
【文献】特開2001-342989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したような従来技術のうち、上方および下方のフロートスイッチを用いたものは、水位検知センサであるフロートスイッチが2つあるため、コスト面や洗浄水タンクの小型化の面から好ましくない。
【0007】
また、ポンプ特性による電流値の差異を利用したものは、ポンプ駆動時の洗浄水タンク内の水量、モータ温度などの外乱、ポンプ特性の個体間のばらつきなどによって、洗浄水タンク内の洗浄水の有無を誤検知するおそれがある。
【0008】
また、ポンプ特性による電流値の差異を利用したものは、ポンプに流れる電流値と閾値とを比較して洗浄水タンク内の洗浄水の有無を判定する。洗浄水タンク内に洗浄水がある場合にポンプを所定の回転数以上で回転させたときの電流値は、閾値の設定当初においては必ず閾値以上となるため、洗浄水があることを正しく判定することができるが、経年劣化などで電流値が変化すると、洗浄水がないと判定するようになる。具体的には、電流値は、たとえば、年単位の時間が経つと徐々に低くなる傾向がある。このため、実際は洗浄水がある場合でも洗浄水がないと判定してしまい、ポンプを停止する。
【0009】
実施形態の一態様は、水位検知センサの数量を減らしつつ、洗浄水タンク内の洗浄水の有無の検知を精度よく行うことができる水洗大便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の一態様に係る水洗大便器は、洗浄水によって洗浄される水洗大便器であって、便器本体と、洗浄水を貯留する洗浄水タンクと、前記洗浄水タンクに洗浄水を供給する給水部と、前記洗浄水タンクに貯留された洗浄水を前記便器本体に供給するポンプと、前記ポンプの駆動を制御する制御部と、前記ポンプに流れる電流値を測定する電流値検知手段と、前記洗浄水タンク内の水位を検知する水位検知手段とを備え、前記制御部は、前記水位検知手段によって検知された前記水位および所定水位を比較して前記洗浄水タンク内の洗浄水の有無を判定する第1判定と、前記電流値検知手段によって測定された前記電流値と閾値とを比較して前記洗浄水タンク内の洗浄水の有無を判定する第2判定とを行い、前記第1判定の判定結果と前記第2判定の判定結果とに基づいて前記閾値の異常判定を行うことを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、水位検知手段で洗浄水タンク内の水位(実水位)を検知し、ポンプに流れる電流値(ポンプ電流値)によって洗浄水タンク内の洗浄水の有無(水あり/水なし)を検知するため、フロートスイッチなどの水位検知センサの数量を減らすことができる。また、第1判定の判定結果、すなわち、水位検知手段によって検知された洗浄水タンク内の水位と、第2判定の判定結果、すなわち、ポンプ電流値と閾値とを比較して得られた水ありまたは水なしの判定結果とによって閾値の異常判定を行うため、閾値異常による水あり/水なしの誤検知を抑制することができ、水あり/水なし検知を精度よく行うことができる。これらのことから、フロートスイッチなどの水位検知センサの数量を減らしつつ、水あり/水なし検知を精度よく行うことができる。
【0012】
また、上記した水洗大便器では、前記制御部は、前記第1判定において、前記水位が前記所定水位よりも高い状態で便器洗浄を開始し、かつ、前記第2判定において、前記電流値が前記閾値よりも低い場合には前記閾値の異常と判定することを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、水位検知手段によって検知された水位(実水位)から洗浄水タンク内には洗浄水が十分にある状態で開始した便器洗浄にもかかわらず電流値検知手段を用いた判定結果が水なし判定の場合、電流値検知手段において誤って判定している可能性が高い。このため、第1判定後の第2判定においてポンプ電流値が閾値よりも低い場合には閾値の異常と判定することで、現在の閾値が異常であることを検知することができる。
【0014】
また、上記した水洗大便器では、前記制御部は、前記第2判定において、前記電流値が前記閾値よりも低い場合は前記給水部によって前記洗浄水タンクに洗浄水を供給し、前記水位検知手段によって満水水位が検知されるまでにかかる時間が所定時間よりも短い場合には前記閾値の異常と判定することを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、電流値検知手段を用いて水なし判定された後に洗浄水タンク内の水位が満水水位になるまでにかかる時間が所定時間(便器洗浄後の洗浄水タンクが満水になるまでの時間)よりも短い場合には、電流値検知手段において洗浄水タンク内の洗浄水の有無を正しく判定していないため、閾値の異常と判定する。これにより、現在の閾値が異常であることを検知することができる。
【0016】
また、上記した水洗大便器では、使用者からの便器洗浄操作を受け付ける便器洗浄受付手段と、便器洗浄開始から所定条件の成立までの期間、前記便器洗浄受付手段からの入力を制限する制限手段とをさらに備え、前記制御部は、前記第1判定において、前記水位が前記所定水位よりも低い状態で便器洗浄を開始し、かつ、前記第2判定において、前記電流値が前記閾値よりも高い場合に、前記制限手段が前記便器洗浄受付手段からの入力を制限している期間中に前記便器洗浄受付手段が便器洗浄操作を受け付けると前記閾値の異常と判定することを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、電流値検知手段を用いて水あり判定された後、制限手段によって便器洗浄受付手段からの入力が制限されている期間中に使用者の便器洗浄操作を検知すると、たとえば、使用者は洗浄水が流れないから複数回の便器洗浄操作を行うものと推定されることから、洗浄水が流れていないと判断することができ、現在の閾値が異常であることを検知することができる。
【0018】
また、上記した水洗大便器では、前記制御部は、前記閾値の異常と判定すると、便器洗浄を実行し、当該便器洗浄に伴う前記電流値検知手段によって測定された電流値に応じて新たな閾値を再設定することを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、閾値の異常と判定すると現時点のポンプ電流値に応じた新たな閾値を再設定するため、以降の誤検知を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
実施形態の一態様によれば、水位検知センサの数量を減らしつつ、洗浄水タンク内の洗浄水の有無の検知を精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施形態に係る水洗大便器の構成の概要を示す図である。
図2図2は、水洗大便器の全体構成を示す図である。
図3図3は、水あり/水なしの場合のポンプ電流値を示す図である。
図4図4は、水あり/水なしの誤検知の説明図である。
図5図5は、閾値の異常判定制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、閾値の異常判定制御の処理手順の他の例(その1)を示すフローチャートである。
図7図7は、閾値の異常判定制御の処理手順の他の例(その2)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する水洗大便器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0023】
まず、図1を参照して、実施形態に係る水洗大便器1の構成の概要について説明する。図1は、実施形態に係る水洗大便器1の構成の概要を示す図である。なお、図1においては、水洗大便器1を模式的に示している。
【0024】
図1に示すように、水洗大便器1は、便器本体10と、洗浄水タンク20と、給水部40と、ポンプ50と、制御部60とを備える。
【0025】
便器本体10は、リム吐水部15と、リム導水路16とを備える。リム吐水部15は、たとえば、ボウル部11(図2参照)へ洗浄水を吐水する吐水口である。リム導水路16は、リム吐水部15へ洗浄水を流通させる流路である。
【0026】
洗浄水タンク20は、洗浄水を貯留する。洗浄水タンク20は、たとえば、給水源から給水路41を介して供給される洗浄水を貯留する。また、洗浄水タンク20内には、水位検知手段30が設けられる。水位検知手段30は、洗浄水タンク20に貯留される洗浄水の水位を検出する。
【0027】
給水部40は、たとえば、給水路41に設けられる開閉弁である。給水部40は、洗浄水タンク20の水位に応じて、後述するポンプ50の駆動中に給水路41を開閉する。給水部40は、たとえば、洗浄水タンク20の水位が満水水位W0を下回った場合、すなわち、便器洗浄が開始してポンプ50が駆動する場合に開弁して、洗浄水を洗浄水タンク20へ供給する。給水部40は、洗浄水タンク20の水位が満水水位W0になると閉弁して、洗浄水タンク20への洗浄水の供給を停止する。
【0028】
このように、水洗大便器1は、便器洗浄中(ポンプ50の駆動中)に、給水源から洗浄水タンク20に対して給水を行うとともに、洗浄水を補給するように構成される。これにより、洗浄水を補給しながら、便器洗浄を行うことができるため、洗浄水タンク20の容積を小さくすることができ、小型化を図ることができる。
【0029】
ポンプ50は、洗浄水タンク20の洗浄水を加圧する。具体的には、ポンプ50は、洗浄水タンク20に貯留された洗浄水を、洗浄水タンク20内に配置された吸入口51aから吸入流路51を介して吸入して加圧する。ポンプ50は、加圧した洗浄水を吐出流路52を介してリム導水路16へ吐出する。
【0030】
制御部60は、ポンプ50の駆動を制御する。制御部60は、ポンプ50の駆動を制御して便器本体10へ洗浄水を供給する。すなわち、制御部60は、ポンプ50の駆動を制御して便器洗浄を行う。
【0031】
また、水洗大便器1は、電流値検知手段70を備える。電流値検知手段70は、ポンプ50の駆動中、ポンプ50に流れる電流値を測定する。
【0032】
ところで、このような、ポンプ50によって加圧した洗浄水を供給する水洗大便器1の場合、洗浄水タンク20内に洗浄水がない状態でポンプ50を駆動すると、すなわち、ポンプ50を空運転すると、上記したように、たとえば、ポンプ50の封止構造(メカニカルシール)が破損して漏水するなど、ポンプ性能に悪影響を与えるおそれがある。
【0033】
このため、本実施形態では、制御部60は、洗浄水タンク20内の洗浄水の有無の検知(以下、「水あり/水なし検知」という)を行う。また、制御部60は、水あり/水なし検知を、電流値検知手段70によって測定されたポンプ50に流れる電流値(以下、「ポンプ電流値」という)を用いて行う。制御部60は、ポンプ電流値に基づいて、洗浄水タンク20内の洗浄水の有無を判定する。
【0034】
次に、図2を参照して、水洗大便器1の全体構成について詳細に説明する。図2は、水洗大便器1の全体構成を示す図である。なお、図2においても、図1と同様、水洗大便器1を模式的に示している。
【0035】
図2に示すように、水洗大便器1の便器本体10は、たとえば、陶器で形成される。便器本体10は、ボウル部11と、排水トラップ管路12とを備える。なお、図2においては、図示の簡略化のため、便器本体10が備える便座や便座を覆う便蓋などの一部の部材の図示を省略している。また、図2においては、床置き式の便器本体10を例示しているが、これに限定されず、たとえば、壁掛け式でもよい。
【0036】
ボウル部11は、上記したリム導水路16に接続されるとともに、汚物を受けることが可能なボウル状に形成される。ボウル部11は、汚物を受ける汚物受け面11aと、汚物受け面11aの上縁に形成されるリム部14と、上記したリム吐水部15とを備える。
【0037】
リム吐水部15は、リム部14の内周面14aに開口され、上記したリム導水路16に接続される。これにより、リム吐水部15は、リム導水路16から供給された洗浄水をボウル部11の汚物受け面11aへ吐水して汚物受け面11aにおいて旋回流を生じさせる。なお、以下では、リム吐水部15から洗浄水が吐出されることを「リム吐水」という場合がある。
【0038】
排水トラップ管路12は、入口部12aと、トラップ上昇部12bと、トラップ下降部12cとを備える。入口部12aは、汚物受け面11aの底部に対して連続するように設けられる。入口部12aは、ボウル部11からの洗浄水を排水トラップ管路12へ流入させる。トラップ上昇部12bは、入口部12aから斜め上方へ向けて延びるように形成される。トラップ下降部12cは、トラップ上昇部12bから下方へ向けて延びるように形成される。
【0039】
また、トラップ下降部12cの下端には、排水管17が接続される。水洗大便器1においては、便器洗浄を行う場合、ボウル部11の洗浄水は、排水トラップ管路12の入口部12a、トラップ上昇部12bおよびトラップ下降部12cを介して排水管17へと排水される。
【0040】
また、水洗大便器1においては、便器洗浄を行った後、排水トラップ管路12およびボウル部11には、洗浄水が溜まる。なお、排水トラップ管路12などに溜まった洗浄水を「溜水」という。このように、排水トラップ管路12などが溜水で満たされることで、溜水が封水として機能し、排水管17からの臭気などがボウル部11側へ逆流することを防止する。
【0041】
ここで、洗浄水タンク20内に配置される水位検知手段30の一例について説明する。水位検知手段30は、フロートスイッチのような水位検知センサである。以下、水位検知手段30を「フロートスイッチ」という。
【0042】
フロートスイッチ30は、洗浄水タンク20内において所定水位となる満水水位W0の位置に配置され、洗浄水タンク20内の水位が満水水位W0である場合に、水位が満水水位W0であることを示す満水信号を制御部60へ出力する。なお、満水水位W0は、便器洗浄前の初期水位であるが、初期水位が満水水位W0に限定されるものではない。
【0043】
制御部60は、CPU(Central Processing Unit)などの図示しない演算処理装置や、RAM(Random Access Memory)などの図示しない記憶装置を備える。また、制御部60は、フロートスイッチ30および電流値検知手段70などから入力される信号などに基づいて、ポンプ50を制御する。
【0044】
なお、制御部60は、たとえば、ポンプ50を制御して便器洗浄を行う。このとき、制御部60は、フロートスイッチ30から満水信号が入力された状態で、便器洗浄が開始されるものとする。
【0045】
ポンプ50は、たとえば、DCモータ(図示せず)を駆動源に有するDCポンプである。このため、ポンプ50に流れる電流値(ポンプ電流値)を測定する電流値検知手段70は、たとえば、DCモータの巻線電流の電流値を測定する。電流値検知手段70は、たとえば、電流検出回路によって構成される。
【0046】
また、水洗大便器1は、便器洗浄受付手段80と、制限手段90とを備える。便器洗浄受付手段80は、使用者が便器洗浄を行いたい場合に使用者によって操作される。便器洗浄受付手段80は、たとえば、操作レバーや操作リモコンなどである。制限手段90は、便器洗浄開始から所定条件の成立までの期間、便器洗浄受付手段からの入力を制限する。
【0047】
ここで、制御部60は、洗浄水タンク20内に洗浄水がない場合にポンプ50を駆動することを避けるために、洗浄水タンク20内の洗浄水の有無の検知(水あり/水なし検知)を行う。また、制御部60は、水あり/水なし検知を実行する場合には、ポンプ電流値に基づいて、洗浄水タンク20内の洗浄水の有無を判定する。
【0048】
図3は、水あり/水なしの場合のポンプ電流値を示す図である。なお、図3には、図中、右側に水ありの場合のポンプ電流値を示し、左側に水なしの場合のポンプ電流値を示している。また、図3においては、縦方向は電流値(A)を示し、横方向は時間(秒)を示している。
【0049】
図3に示すように、水ありの場合、ポンプ50が回転するときの洗浄水による抵抗が大きいことから、ポンプ50が回転するための電流値は大きく(高く)なる。一方で、水なしの場合、ポンプ50が回転するときの洗浄水による抵抗が小さいことから、ポンプ50が回転するための電流値は小さく(低く)なる。図示の例では、水ありの場合と水なしの場合との間に差dがある。
【0050】
水あり/水なし検知では、ポンプ電流値が予め設定された所定の閾値よりも高いかまたは低いかで、洗浄水タンク20内の洗浄水の有無を判定する。この場合、ポンプ電流値が閾値よりも高い場合は水ありと判定し、ポンプ電流値が閾値よりも低い場合は水なしと判定する。また、この場合、たとえば、洗浄水タンク20内が満水状態の場合の電流値を基に算出した閾値となる。
【0051】
ここで、本実施形態のように、ポンプ特性による電流値の差異を利用して水あり/水なし検知を行う場合、洗浄水タンク20内に洗浄水がある場合にポンプ50を所定の回転数以上で回転させたときの電流値は閾値の設定当初においては必ず閾値以上となるため、洗浄水があることを正しく判定することができるが、経年劣化などで電流値が変化すると洗浄水がないと判定するなど、水あり/水なしの誤検知となるおそれがある。
【0052】
図4は、水あり/水なしの誤検知の説明図である。なお、図4には、水あり/水なしの誤検知のパターンを表にして示している。まず、水なしの誤検知のパターンを説明する。図4に示すように、水なしの誤検知では、便器洗浄前の洗浄水タンク20が実際には水ありの場合は誤った判定結果であり、洗浄水タンク20に洗浄水はあるが、ポンプ50は停止する。このため、便器洗浄を行うことができない(トイレ流せない)。
【0053】
また、水なしの誤検知では、便器洗浄前の洗浄水タンク20が実際に水なしの場合は、閾値異常であるが結果的に判定結果となる。この場合は、洗浄水タンク20内にはそもそも洗浄水がないため、便器洗浄を行うことができない(トイレ流せない)。ただし、水なしの判定結果であっても、正常な判定はできていない。
【0054】
次に、水ありの誤検知のパターンを説明する。図4に示すように、水ありの誤検知では、便器洗浄前の洗浄水タンク20が実際に水ありの場合は、閾値異常であるが結果的に判定結果となる。この場合は、便器洗浄を行うことができる(トイレ流せる)が、正常な判定はできていない。
【0055】
また、水ありの誤検知では、便器洗浄前の洗浄水タンク20が実際には水なしの場合は誤った判定結果であり、洗浄水タンク20に洗浄水はないが、ポンプ50は回転する。しかし、ポンプ50は空運転であるため、便器洗浄を行うことができない(トイレ流せない)。
【0056】
このように、ポンプ電流値に基づいて水あり/水なし検知を行う場合、図4中において斜線を付して強調している、水なしの誤検知で実際には水ありの場合、水ありの誤検知で実際には水なしの場合に影響度が大きい。このうち、水ありの誤検知で実際には水なしのときはポンプ50の空運転となるため、より影響度が大きい。
【0057】
このため、本実施形態では、制御部60は、上記したような閾値異常に対応して閾値の異常判定を行う。制御部60は、閾値の異常判定では、フロートスイッチ30によって検知された水位と所定水位(たとえば、満水水位)とを比較して水あり/水なしを判定する第1判定を行う。また、制御部60は、閾値の異常判定では、第1判定を行った後、ポンプ電流値と閾値とを比較して水あり/水なしを判定する第2判定を行う。制御部60は、第1判定の判定結果と第2判定の判定結果とに基づいて、閾値異常を判定する。
【0058】
次に、図5を参照して、制御部60による閾値の異常判定制御の処理手順の一例について説明する。図5は、閾値の異常判定制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0059】
図5に示すように、閾値の異常判定では、制御部60は、第1判定を行う。すなわち、制御部60は、フロートスイッチ30によって検知された水位と所定水位とを比較して水ありまたは水なしを判定する(ステップS101)。制御部60は、ステップS101の処理において水あり(ステップS101:Yes)と判定した場合には、たとえば、記憶部(図示せず)によって「水あり」を記憶し(ステップS102)、便器洗浄動作を開始する(ステップS103)。
【0060】
また、制御部60は、ステップS101の処理において水なし(ステップS101:No)と判定した場合には、たとえば、記憶部によって「水なし」を記憶する(ステップS104)。制御部60は、ステップS104の処理の後も便器洗浄動作を開始する(ステップS103)。
【0061】
次いで、制御部60は、第2判定を行う。すなわち、制御部60は、ポンプ電流値と閾値とを比較して水ありまたは水なしを判定し、ポンプ50が空運転か否かを判定する(ステップS105)。制御部60は、ポンプ50が空運転ではないと判定した場合(ステップS105:No)、便器洗浄動作を継続する(ステップS106)。制御部60は、指定時間が経過すると、便器洗浄動作を終了する(ステップS107)。
【0062】
また、制御部60は、ステップS105の処理においてポンプ50が空運転であると判定した場合(ステップS105:Yes)、便器洗浄動作を停止し(ステップS108)、便器洗浄動作を終了する(ステップS107)。
【0063】
次いで、制御部60は、給水部40によって洗浄水タンク20に洗浄水を供給する(ステップS109)。
【0064】
次いで、制御部60は、たとえば、フロートスイッチ30によって、便器洗浄動作開始時において水ありまたは水なしを判定する(ステップS110)。制御部60は、ステップS110の処理において水ありと判定した場合(ステップS110:Yes)、便器洗浄動作を停止するか否かを判定する(ステップS111)。制御部60は、ステップS111の処理において便器洗浄動作を停止すると判定した場合(ステップS111:Yes)、異常判定としてカウントする(ステップS112)。
【0065】
次いで、制御部60は、異常判定カウントが規定回数以上か否かを判定する(ステップS113)。制御部60は、異常判定カウントが規定回数以上と判定した場合(ステップS113:Yes)、閾値異常を確定する(ステップS115)。なお、制御部60は、ステップS113の処理において異常判定カウントが規定回数未満と判定した場合(ステップS113:No)、異常判定処理を終了する。
【0066】
そして、制御部60は、閾値異常を確定すると、閾値の再設定を行い(ステップS116)、異常判定処理を終了する。
【0067】
なお、制御部60は、異常判定カウントが規定回数以上の場合に閾値異常を確定するが、たとえば、異常判定カウントが1回の場合で閾値異常を確定してもよい。
【0068】
また、制御部60は、ステップS110の処理において水なしと判定した場合(ステップS110:No)、異常判定のカウントをリセットする(ステップS114)。また、制御部60は、ステップS111の処理において便器洗浄動作を停止しないと判定した場合(ステップS111:No)も、異常判定のカウントをリセットする(ステップS114)。なお、制御部60は、ステップS114の処理の後、異常判定カウントの処理に戻る。
【0069】
上記したような実施形態に係る水洗大便器1によれば、フロートスイッチ30で洗浄水タンク20内の水位(実水位)を検知し、ポンプ電流値によって水あり/水なしを検知するため、フロートスイッチ30の数量を減らすことができる。また、第1判定の判定結果、すなわち、フロートスイッチ30によって検知された実水位と、第2判定の判定結果、すなわち、ポンプ電流値と閾値とを比較して得られた水ありまたは水なしの判定結果とによって閾値の異常判定を行うため、閾値異常による水あり/水なしの誤検知を抑制することができ、水あり/水なし検知を精度よく行うことができる。これらのことから、フロートスイッチ30の数量を減らしつつ、水あり/水なし検知を精度よく行うことができる。
【0070】
また、閾値の異常と判定すると現時点のポンプ電流値に応じた新たな閾値を再設定するため、以降の誤検知を抑制することができる。
【0071】
次に、図6および図7を参照して、制御部60による閾値の異常判定制御の処理手順の他の例について説明する。図6および図7は、閾値の異常判定制御の処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【0072】
まず、図6に示す例について説明する。図6に示す例は、図5に示す例とは、後述するステップS211の処理(図5の例では、ステップS111の処理)において、便器洗浄動作を停止するか否かを判定し、かつ、給水時間が所定時間よりも短いか否かを判定する点で異なる。
【0073】
図6に示すように、閾値の異常判定では、制御部60は、第1判定を行う。すなわち、制御部60は、フロートスイッチ30によって検知された水位と所定水位とを比較して水ありまたは水なしを判定する(ステップS201)。制御部60は、ステップS201の処理において水あり(ステップS201:Yes)と判定した場合には、たとえば、記憶部(図示せず)によって「水あり」を記憶し(ステップS202)、便器洗浄動作を開始する(ステップS203)。
【0074】
また、制御部60は、ステップS201の処理において水なし(ステップS201:No)と判定した場合には、たとえば、記憶部によって「水なし」を記憶する(ステップS204)。制御部60は、ステップS204の処理の後も便器洗浄動作を開始する(ステップS203)。
【0075】
次いで、制御部60は、第2判定を行う。すなわち、制御部60は、ポンプ電流値と閾値とを比較して水ありまたは水なしを判定し、ポンプ50が空運転か否かを判定する(ステップS205)。制御部60は、ポンプ50が空運転ではないと判定した場合(ステップS205:No)、便器洗浄動作を継続する(ステップS206)。制御部60は、指定時間が経過すると、便器洗浄動作を終了する(ステップS207)。
【0076】
また、制御部60は、ステップS205の処理においてポンプ50が空運転であると判定した場合(ステップS205:Yes)、便器洗浄動作を停止し(ステップS208)、便器洗浄動作を終了する(ステップS207)。
【0077】
次いで、制御部60は、給水部40によって洗浄水タンク20に洗浄水を供給する(ステップS209)。
【0078】
次いで、制御部60は、たとえば、フロートスイッチ30によって、便器洗浄動作開始時において水ありまたは水なしを判定する(ステップS210)。制御部60は、ステップS210の処理において水ありと判定した場合(ステップS210:Yes)、便器洗浄動作を停止するか否かを判定し、かつ、給水時間が所定時間よりも短いか否かを判定する(ステップS211)。なお、所定時間は、たとえば、便器洗浄後に洗浄水タンク20に給水した場合に、満水になるまでにかかる時間である。制御部60は、ステップS211の処理において便器洗浄動作を停止し、かつ、給水時間が所定時間よりも短いと判定した場合(ステップS211:Yes)、異常判定としてカウントする(ステップS212)。
【0079】
次いで、制御部60は、異常判定カウントが規定回数以上か否かを判定する(ステップS213)。制御部60は、異常判定カウントが規定回数以上と判定した場合(ステップS213:Yes)、閾値異常を確定する(ステップS215)。なお、制御部60は、ステップS213の処理において異常判定カウントが規定回数未満と判定した場合(ステップS213:No)、異常判定処理を終了する。
【0080】
そして、制御部60は、閾値異常を確定すると、閾値の再設定を行い(ステップS216)、異常判定処理を終了する。
【0081】
なお、制御部60は、異常判定カウントが規定回数以上の場合に閾値異常を確定するが、たとえば、異常判定カウントが1回の場合で閾値異常を確定してもよい。
【0082】
また、制御部60は、ステップS210の処理において水なしと判定した場合(ステップS210:No)、異常判定のカウントをリセットする(ステップS214)。また、制御部60は、ステップS211の処理において便器洗浄動作を停止せず、給水時間が所定時間よりも長いと判定した場合(ステップS211:No)も、異常判定のカウントをリセットする(ステップS214)。なお、制御部60は、ステップS214の処理の後、異常判定カウントの処理に戻る。
【0083】
上記したような実施形態に係る水洗大便器1によれば、フロートスイッチ30で洗浄水タンク20内の水位(実水位)を検知し、ポンプ電流値によって水あり/水なしを検知するため、フロートスイッチ30の数量を減らすことができる。また、第1判定の判定結果、すなわち、フロートスイッチ30によって検知された実水位と、第2判定の判定結果、すなわち、ポンプ電流値と閾値とを比較して得られた水ありまたは水なしの判定結果とによって閾値の異常判定を行うため、閾値異常による水あり/水なしの誤検知を抑制することができ、水あり/水なし検知を精度よく行うことができる。これらのことから、フロートスイッチ30の数量を減らしつつ、水あり/水なし検知を精度よく行うことができる。
【0084】
また、フロートスイッチ30によって検知された実水位から洗浄水タンク20内には洗浄水が十分にある状態で開始した便器洗浄にもかかわらず、電流値検知手段を用いた判定結果が水なし判定の場合、電流値検知手段において誤って判定している可能性が高い。このため、第1判定後の第2判定においてポンプ電流値が閾値よりも低い場合には閾値の異常と判定することで、現在の閾値が異常であることを検知することができる。
【0085】
また、電流値検知手段を用いて水なし判定された後に洗浄水タンク20内の水位が満水水位になるまでにかかる時間が所定時間(便器洗浄後の洗浄水タンク20が満水になるまでの時間)よりも短い場合には、電流値検知手段において洗浄水タンク20内の洗浄水の有無を正しく判定していないため、閾値の異常と判定する。これにより、現在の閾値が異常であることを検知することができる。
【0086】
また、閾値の異常と判定すると現時点のポンプ電流値に応じた新たな閾値を再設定するため、以降の誤検知を抑制することができる。
【0087】
次に、図7に示す例について説明する。図7に示す例は、図6に示す例とは、後述するステップS315~S317の処理を有する点で異なる。
【0088】
図7に示すように、閾値の異常判定では、制御部60は、第1判定を行う。すなわち、制御部60は、フロートスイッチ30によって検知された水位と所定水位とを比較して水ありまたは水なしを判定する(ステップS301)。制御部60は、ステップS301の処理において水あり(ステップS301:Yes)と判定した場合には、たとえば、記憶部(図示せず)によって「水あり」を記憶し(ステップS302)、便器洗浄動作を開始する(ステップS303)。
【0089】
また、制御部60は、ステップS301の処理において水なし(ステップS301:No)と判定した場合には、たとえば、記憶部によって「水なし」を記憶する(ステップS304)。制御部60は、ステップS304の処理の後も便器洗浄動作を開始する(ステップS303)。
【0090】
次いで、制御部60は、第2判定を行う。すなわち、制御部60は、ポンプ電流値と閾値とを比較して水ありまたは水なしを判定し、ポンプ50が空運転か否かを判定する(ステップS305)。制御部60は、ポンプ50が空運転ではないと判定した場合(ステップS305:No)、便器洗浄動作を継続する(ステップS306)。制御部60は、指定時間が経過すると、便器洗浄動作を終了する(ステップS307)。
【0091】
また、制御部60は、ステップS305の処理においてポンプ50が空運転であると判定した場合(ステップS305:Yes)、便器洗浄動作を停止し(ステップS308)、便器洗浄動作を終了する(ステップS307)。
【0092】
次いで、制御部60は、給水部40によって洗浄水タンク20に洗浄水を供給する(ステップS309)。
【0093】
次いで、制御部60は、たとえば、フロートスイッチ30によって、便器洗浄動作開始時において水ありまたは水なしを判定する(ステップS310)。制御部60は、ステップS310の処理において水ありと判定した場合(ステップS310:Yes)、便器洗浄動作を停止するか否かを判定し、かつ、給水時間が所定時間よりも短いか否かを判定する(ステップS311)。なお、所定時間は、たとえば、便器洗浄後に洗浄水タンク20に給水した場合に、満水になるまでにかかる時間である。制御部60は、ステップS311の処理において便器洗浄動作を停止し、かつ、給水時間が所定時間よりも短いと判定した場合(ステップS311:Yes)、異常判定としてカウントする(ステップS312)。
【0094】
また、制御部60は、ステップS310の処理において水なしと判定した場合(ステップS310:No)、制限手段による受付禁止時間に便器洗浄受付手段において受付操作があったか否かを判定する(ステップS315)。制御部60は、ステップS315の処理において受付操作があったと判定した場合(ステップS315:Yes)、異常判定としてカウントする(ステップS312)。
【0095】
次いで、制御部60は、異常判定カウントが規定回数以上か否かを判定する(ステップS313)。制御部60は、異常判定カウントが規定回数以上と判定した場合(ステップS313:Yes)、閾値異常を確定する(ステップS318)。なお、制御部60は、ステップS313の処理において異常判定カウントが規定回数未満と判定した場合(ステップS313:No)、異常判定処理を終了する。
【0096】
そして、制御部60は、閾値異常を確定すると、閾値の再設定を行い(ステップS319)、異常判定処理を終了する。
【0097】
なお、制御部60は、異常判定カウントが規定回数以上の場合に閾値異常を確定するが、たとえば、異常判定カウントが1回の場合で閾値異常を確定してもよい。
【0098】
また、制御部60は、ステップS311の処理において便器洗浄動作を停止せず、給水時間が所定時間よりも長いと判定した場合(ステップS311:No)、異常判定のカウントをリセットする(ステップS314)。また、制御部60は、ステップS315の処理において受付操作がなかったと判定した場合(ステップS315:No)、異常判定のカウントをリセットする(ステップS317)。なお、制御部60は、ステップS314およびステップS317の処理の後、異常判定カウントの処理に戻る。
【0099】
上記したような実施形態に係る水洗大便器1によれば、フロートスイッチ30で洗浄水タンク20内の水位(実水位)を検知し、ポンプ電流値によって水あり/水なしを検知するため、フロートスイッチ30の数量を減らすことができる。また、第1判定の判定結果、すなわち、フロートスイッチ30によって検知された実水位と、第2判定の判定結果、すなわち、ポンプ電流値と閾値とを比較して得られた水ありまたは水なしの判定結果とによって閾値の異常判定を行うため、閾値異常による水あり/水なしの誤検知を抑制することができ、水あり/水なし検知を精度よく行うことができる。これらのことから、フロートスイッチ30の数量を減らしつつ、水あり/水なし検知を精度よく行うことができる。
【0100】
また、フロートスイッチ30によって検知された実水位から洗浄水タンク20内には洗浄水が十分にある状態で開始した便器洗浄にもかかわらず、電流値検知手段を用いた判定結果が水なし判定の場合、電流値検知手段において誤って判定している可能性が高い。このため、第1判定後の第2判定においてポンプ電流値が閾値よりも低い場合には閾値の異常と判定することで、現在の閾値が異常であることを検知することができる。
【0101】
また、電流値検知手段を用いて水なし判定された後に洗浄水タンク20内の水位が満水水位になるまでにかかる時間が所定時間(便器洗浄後の洗浄水タンク20が満水になるまでの時間)よりも短い場合には、電流値検知手段において洗浄水タンク20内の洗浄水の有無を正しく判定していないため、閾値の異常と判定する。これにより、現在の閾値が異常であることを検知することができる。
【0102】
また、電流値検知手段を用いて水あり判定された後、制限手段90によって便器洗浄受付手段80からの入力が制限されている期間中に使用者の便器洗浄操作を検知すると、たとえば、使用者は洗浄水が流れないから複数回の便器洗浄操作を行うものと推定されることから、洗浄水が流れていないと判断することができ、現在の閾値が異常であることを検知することができる。
【0103】
また、閾値の異常と判定すると現時点のポンプ電流値に応じた新たな閾値を再設定するため、以降の誤検知を抑制することができる。
【0104】
なお、上記した実施形態では、ポンプ50によって加圧した洗浄水を、便器本体10のリム吐水部15へ供給して便器洗浄を行う、いわゆるフルポンプ式の水洗大便器であるが、これに限定されず、たとえば、ジェット吐水部をさらに備え、ジェット吐水部からの吐水によってサイホン作用を発生させる、いわゆるハイブリッド式の水洗大便器でもよい。
【0105】
この場合、たとえば、ポンプ50の下流に切替弁を設け、制御部60によって切替弁を制御することで、ポンプ50で加圧された洗浄水を、リム吐水部15に通じるリム導水路16へ供給するか、ジェット吐水部に通じるジェット導水路へ供給するかを選択することができる。
【0106】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0107】
1 水洗大便器
10 便器本体
20 洗浄水タンク
30 水位検知手段(フロートスイッチ)
50 ポンプ
60 制御部
70 電流値検知手段
80 便器洗浄受付手段
90 制限手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7