(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】電動車両の健康状態管理支援装置
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20241112BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20241112BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20241112BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20241112BHJP
G16H 20/00 20180101ALI20241112BHJP
【FI】
G16H10/00
A61B5/00 102A
G08B21/02
G08B25/04 K
G16H20/00
(21)【出願番号】P 2020207748
(22)【出願日】2020-12-15
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 悠
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-197569(JP,A)
【文献】特開2006-280513(JP,A)
【文献】特開2008-265676(JP,A)
【文献】特開2015-153141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
A61B 5/00
G08B 21/02
G08B 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子型の電動車両に搭載される健康状態管理支援装置であって、
前記電動車両の運転者の健康データを取得するバイタルセンサと、
所定の無線通信方式に従って他の装置と通信を行なう通信部と、
前記電動車両の運転者に通知する各種情報を表示する表示部と、
前記電動車両の運転者の意識の有無を判定する意識判定部と、
前記健康データを他の装置に前記通信部を介して送信する制御部と、を備え
、
前記制御部は、予め設定された閾値と、前記健康データの値とを比較して、前記健康データに異常が有るか否かを判定し、前記健康データに異常が有ると判定した場合に、前記表示部に警告メッセージを表示させて走行中止を促し、前記表示部に運転者の操作を促す表示を行なわせ、運転者の反応の有無で前記電動車両の運転者に意識があるか否かを判定する電動車両の健康状態管理支援装置。
【請求項2】
前記通信部は、通信機能及び位置情報機能を備える電子機器で構成される請求項1に記載の電動車両の健康状態管理支援装置。
【請求項3】
前記閾値は、前記電動車両の運転者個人に応じて変更可能に構成される請求項
1または請求項2に記載の電動車両の健康状態管理支援装置。
【請求項4】
前記電動車両の外部に各種情報を報知する報知部を備え、
前記制御部は、前記電動車両の運転者に意識が無いと判定した場合には、予め設定された連絡先に緊急連絡を行ない、前記報知部により救助アラートを報知し、前記電動車両を徐々に停車させる請求項
1から請求項3のいずれか1項に記載の電動車両の健康状態管理支援装置。
【請求項5】
前記電動車両の周辺の障害物を検出するADASセンサと、
前記制御部の制御により前記電動車両の進行する向きを変えるステアリングと、を備え、
前記制御部は、前記電動車両を徐々に停車させる際に、前記ADASセンサにより障害物を検出した場合には、障害物を回避するように前記ステアリングを制御する請求項
4に記載の電動車両の健康状態管理支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の健康状態管理支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車に乗車中の個人の病気(持病)を検査するための検査装置により個人の病気を検査し、検査結果から異常と判定された場合、最適な医療機関を選択し、選択された医療機関を個人に通報することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
健康上の不安から自動車の運転を控え、車椅子型の電動車両を利用することが考えられる。このような電動車両においても、運転者の健康状態の情報を収集し、運転者の健康状態に異常が発生した場合に、事故を未然に防ぐことが求められる。
【0005】
そこで、本発明は、運転者の健康状態を管理し、運転者の健康状態に異常が発生したことを検出することができる電動車両の健康状態管理支援装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明は、車椅子型の電動車両に搭載される健康状態管理支援装置であって、前記電動車両の運転者の健康データを取得するバイタルセンサと、所定の無線通信方式に従って他の装置と通信を行なう通信部と、前記電動車両の運転者に通知する各種情報を表示する表示部と、前記電動車両の運転者の意識の有無を判定する意識判定部と、前記健康データを他の装置に前記通信部を介して送信する制御部と、を備え、前記制御部は、予め設定された閾値と、前記健康データの値とを比較して、前記健康データに異常が有るか否かを判定し、前記健康データに異常が有ると判定した場合に、前記表示部に警告メッセージを表示させて走行中止を促し、前記表示部に運転者の操作を促す表示を行なわせ、運転者の反応の有無で前記電動車両の運転者に意識があるか否かを判定するものである。
【発明の効果】
【0007】
このように、本発明によれば、運転者の健康状態を管理し、運転者の健康状態に異常が発生したことを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る電動車両の健康状態管理支援装置のブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る電動車両の健康状態管理支援装置の健康状態管理処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る電動車両の健康状態管理支援装置は、車椅子型の電動車両に搭載される健康状態管理支援装置であって、電動車両の運転者の健康データを取得するバイタルセンサと、所定の無線通信方式に従って他の装置と通信を行なう通信部と、健康データを他の装置に通信部を介して送信する制御部と、を備えるよう構成されている。
【0010】
これにより、本発明の一実施の形態に係る電動車両の健康状態管理支援装置は、運転者の健康状態を管理し、運転者の健康状態に異常が発生したことを検出することができる。
【実施例】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係る電動車両の健康状態管理支援装置について詳細に説明する。
【0012】
図1において、本発明の一実施例に係る健康状態管理支援装置を搭載した車椅子型の電動車両1は、表示部としてのディスプレイ2と、通信部としての通信装置3と、モータ4と、ステアリング5と、報知部としての報知装置6と、バイタルセンサ7と、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems)センサ8と、意識判定部としての目線センサ9と、制御部10とを含んで構成される。
【0013】
ディスプレイ2は、運転者に報知する各種情報を表示する。ディスプレイ2は、タッチセンサを備えたタッチパネルで構成されてもよい。
【0014】
通信装置3は、所定の無線通信方式に従って、所定のサーバ装置などと通信し、各種情報を送受信する。通信装置3としては、制御部10と有線または無線で接続可能なスマートフォンなどの電子機器がある。この電子機器が位置情報機能を有していれば、位置情報を使うことができる。
【0015】
モータ4は、図示しないバッテリから供給される電力により駆動するようになっている。また、モータ4は、複数のギヤ等によって構成された図示しない動力伝達機構を介して電動車両1の駆動輪に連結されている。したがって、電動車両1は、モータ4の駆動力によって走行可能とされる。なお、モータ4は、動力伝達機構等を介さずに直接駆動輪に駆動力を伝達可能なインホイールモータであってもよい。
【0016】
ステアリング5は、図示しないハンドルに入力された運転者の操作により図示しない操舵輪の向きを変えて電動車両1の進行する向きを変える。ステアリング5は、モータにより操舵輪の向きを変えることができるようになっている。ステアリング5は、制御部10の制御により操舵輪の向きを変えられるようになっている。
【0017】
報知装置6は、例えば、スピーカ、ランプ、ブザーなどで構成され、視覚、聴覚などを通じて各種情報を電動車両1の外部に報知する。
【0018】
バイタルセンサ7は、運転者の血圧、心拍数、体温等の健康データを非接触で検出する。バイタルセンサ7として、ハンドルに設けられる接触型のセンサを用いてもよい。
【0019】
ADASセンサ8は、電動車両1周辺の歩行者や電柱などの障害物を検出する。
目線センサ9は、電動車両1の運転者の目線を検出する。目線センサ9は、運転者の目線から運転者の意識があるかないかを検知することができる。
【0020】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0021】
このコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを制御部10として機能させるためのプログラムが格納されている。
【0022】
すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、これらのコンピュータユニットは、本実施例における制御部10として機能する。
【0023】
制御部10の入力ポートには、前述のバイタルセンサ7、ADASセンサ8、目線センサ9を含む各種センサ類が接続されている。
【0024】
一方、制御部10の出力ポートには、前述のディスプレイ2、通信装置3、モータ4、ステアリング5、報知装置6を含む各種制御対象類が接続されている。
【0025】
本実施例において、制御部10は、バイタルセンサ7により検出した運転者の健康データを、例えば所定のサーバ装置に通信装置3を介して送信する。制御部10は、健康データとともに、電動車両1の車速などの電動車両1の走行データを送信してもよい。
【0026】
制御部10は、通信装置3として位置情報機能を有する電子機器が接続されている場合、前述の走行データに位置情報を含めてもよい。
【0027】
制御部10は、バイタルセンサ7により検出した運転者の健康データに異常が無いかを判定する。制御部10は、健康データに異常が有ると判定した場合には、ディスプレイ2により警告メッセージを表示し、運転者に走行の中止を促す。また、制御部10は、健康データに異常が有ると判定した場合に、予め設定された連絡先に電子メール等で通知を行なってもよい。
【0028】
制御部10は、例えば、血圧、心拍数、体温等の健康データそれぞれに閾値を設定し、閾値を上回ったり、下回ったりしたことで、健康データの異常を判定する。制御部10は、健康データの閾値を運転者が設定可能にする。
【0029】
制御部10は、通信装置3として電子機器が接続されている場合、電子機器により健康データの異常を判定させるようにしてもよい。
【0030】
制御部10は、通信装置3として電子機器が接続されている場合、電子機器に警告メッセージを表示させてもよい。
【0031】
制御部10は、健康データに異常が有ると判定した場合に、目線センサ9により運転者に意識が有るかを判定する。制御部10は、ディスプレイ2に備えられたタッチセンサやスイッチへの操作を促す表示をディスプレイ2で行ない、その反応の有無で運転者に意識が有るかを判定してもよい。
【0032】
制御部10は、運転者に意識が無いと判定した場合には、報知装置6により走行を停止することを周辺に知らせる走行停止移行アラートを報知し、電動車両1を自動運転により停止させる。制御部10は、電動車両1を自動運転により停止させる際、ADASセンサ8により障害物を検出した際は、ステアリング5を制御して障害物を回避しつつ、速度を徐々に落として電動車両1を停止させる。車椅子型の電動車両1では、最高速度は時速6キロ程度であるが、急停止して運転者が落下せぬよう、制御部10は、ブレーキ制御により電動車両1を徐々に停車させる。
【0033】
制御部10は、運転者に意識が無いと判定した場合に予め設定された連絡先に緊急連絡を行ない、報知装置6により救助を求める救助アラートを報知する。
【0034】
制御部10は、自動運転により電動車両1を停止させた際、走行停止を予め設定された連絡先に連絡する。
【0035】
制御部10は、健康データに異常が有ると判定し、運転者に意識が有る場合には、電動車両1の走行が停止されたかを確認し、電動車両1の走行が停止されたときは、走行停止を予め設定された連絡先に連絡する。
【0036】
制御部10は、健康データに異常が有ると判定し、電動車両1が停止したときは、健康データと走行データを、例えば所定のサーバ装置に通信装置3を介して送信する。
【0037】
以上のように構成された本実施例に係る電動車両の健康状態管理支援装置による健康状態管理処理について、
図2を参照して説明する。なお、以下に説明する健康状態管理処理は、制御部10が動作を開始すると開始され、予め設定された時間間隔で実行される。
【0038】
ステップS1において、制御部10は、前述した健康データ及び走行データを所定のサーバ装置に通信装置3を介して送信する。ステップS1の処理を実行した後、制御部10は、ステップS2の処理を実行する。
【0039】
ステップS2において、制御部10は、健康データに基づいてユーザの健康状態が正常であるか否かを判定する。ユーザの健康状態が正常であると判定した場合には、制御部10は、ステップS1の処理を実行する。
【0040】
ユーザの健康状態が正常でないと判定した場合には、制御部10は、ステップS3の処理を実行する。
【0041】
ステップS3において、制御部10は、ディスプレイ2に警告メッセージを表示させる。ステップS3の処理を実行した後、制御部10は、ステップS4の処理を実行する。
【0042】
ステップS4において、制御部10は、健康状態に異常が発生したことを予め設定された連絡先に通知する。ステップS4の処理を実行した後、制御部10は、ステップS5の処理を実行する。
【0043】
ステップS5において、制御部10は、ユーザに意識が有るか否かを判定する。ユーザに意識が有ると判定した場合には、制御部10は、ステップS6の処理を実行する。
【0044】
ユーザに意識が無いと判定した場合には、制御部10は、ステップS9の処理を実行する。
【0045】
ステップS6において、制御部10は、電動車両1が走行を停止したか否かを判定する。電動車両1が走行を停止したと判定した場合には、制御部10は、ステップS7の処理を実行する。
【0046】
電動車両1が走行を停止していないと判定した場合には、制御部10は、ステップS5の処理を実行する。
【0047】
ステップS7において、制御部10は、電動車両1が走行を停止したことを予め設定された連絡先に通知する。ステップS7の処理を実行した後、制御部10は、ステップS8の処理を実行する。
【0048】
ステップS8において、制御部10は、健康データ及び走行データを所定のサーバ装置に通信装置3を介して送信する。ステップS8の処理を実行した後、制御部10は、健康状態管理処理を終了する。
【0049】
ステップS9において、制御部10は、予め設定された連絡先に緊急連絡を行ない、走行停止移行アラートを報知装置6に報知させ、電動車両1の速度を徐々に落とす。ステップS9の処理を実行した後、制御部10は、ステップS10の処理を実行する。
【0050】
ステップS10において、制御部10は、電動車両1の進行方向に障害物が有るか否かを判定する。電動車両1の進行方向に障害物が有ると判定した場合には、制御部10は、ステップS11の処理を実行する。
【0051】
電動車両1の進行方向に障害物が無いと判定した場合には、制御部10は、ステップS12の処理を実行する。
【0052】
ステップS11において、制御部10は、障害物を回避するようにステアリング5を制御する。ステップS11の処理を実行した後、制御部10は、ステップS10の処理を実行する。すなわち、障害物を回避した後も制御部10は電動車両1が停止するまで障害物の判定を行ない、障害物を検知すれば再度回避を行なう。
【0053】
ステップS12において、制御部10は、電動車両1が走行を停止したか否かを判定する。電動車両1が走行を停止したと判定した場合には、制御部10は、ステップS7の処理を実行する。
【0054】
電動車両1が走行を停止していないと判定した場合には、制御部10は、ステップS10の処理を実行する。
【0055】
このように、本実施例では、制御部10は、バイタルセンサ7により検出した運転者の健康データを、通信装置3を介して送信する。
【0056】
これにより、運転者の健康データを運転者やその家族、または医療機関などに提供することができ、容易に運転者の健康状態を管理し、運転者の健康状態に異常が発生したことを検出することができる。
【0057】
また、制御部10は、通信装置3として、スマートフォンなどの電子機器を接続可能とする。
【0058】
これにより、電子機器の通信機能や位置情報機能などを利用することができ、詳細な運転者の状況を送信することができる。
【0059】
また、制御部10は、健康データに異常が無いか判定し、異常が有ると判定した場合には、ディスプレイ2に警告メッセージを表示させ、走行停止を促す。
【0060】
これにより、健康データに異常が有る場合には、運転者に注意を促し、運転者に自発的に操作させ、安全な場所で電動車両1を停止させることができる。このため、事故を防ぎつつ早急に救急対応を行なわせることができる。
【0061】
また、制御部10は、健康データに異常が有ると判定した場合に、目線センサ9により運転者の意識が有るか否かを判定する。
【0062】
運転者の意識の有無を確認することで、より重大な事態の発生や、より緊急の対応の要否の判断を行なわせることができる。
【0063】
また、制御部10は、運転者の意識が無いと判定した場合に、予め設定された連絡先に緊急連絡を行ない、報知装置6により救助アラートを報知し、電動車両1を徐々に停車させる。
【0064】
連絡先に緊急連絡を行なうことで、早急な救急対応を促すことができる。電動車両1を徐々に停車させることで、運転者の転落を防ぎつつ電動車両1を停車させることができる。報知装置6により救助アラートを報知することで、救助を求めることができる。
【0065】
また、制御部10は、運転者の意識が無いと判定し、電動車両1を停車させるときに、ADASセンサ8により障害物を検出した際は、ステアリング5を制御して障害物を回避しつつ、速度を徐々に落として電動車両1を停止させる。
【0066】
これにより、運転者に意識が無い場合でも、安全に電動車両1を停車させることができる。
【0067】
本実施例では、各種センサ情報に基づき制御部10が各種の判定や算出を行なう例について説明したが、これに限らず、通信装置3から送信された各種センサの検出情報に基づき車外装置によって各種の判定や算出が行なわれ、その判定結果や算出結果を通信装置3で受信して、その受信した判定結果や算出結果を用いて各種制御を行なってもよい。
【0068】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0069】
1 電動車両
2 ディスプレイ(表示部)
3 通信装置(通信部)
5 ステアリング
6 報知装置(報知部)
7 バイタルセンサ
8 ADASセンサ
9 目線センサ(意識判定部)
10 制御部