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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】苗移植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20241112BHJP
   A01C 13/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
A01C11/02 301C
A01C11/02 302C
A01C13/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020212094
(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公開番号】P2022098610
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】村並 昌実
(72)【発明者】
【氏名】大久保 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】山根 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】東 幸太
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 弘喜
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-248576(JP,A)
【文献】特開2008-022761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/00-14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレーム(19)上に苗収容体(22)を横長ループ状に周回する苗供給装置(43)と該苗収容体(22)から苗を受け取って畝に移植する植付装置(42)を設けた苗移植機において、
苗供給装置(43)から植付装置(42)にかけて周囲を覆う可撓性の保護カバー(3)を設け
苗供給装置(43)の供給フレーム(24)に取り付ける保護カバー(3)は搬送方向下手側端部を供給フレーム(24)に連結し、中間部を保護カバー(3)の上部を苗収容体(22)に向けて押さえるカバー保持具(25)で供給フレーム(24)に取り付けたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
植付装置(42)の左右複数の植付具(20a,20b,20c,20d)のそれぞれ後部に覆土鎮圧輪(37a,37b,37c,37d)を鎮圧フレーム(53a,53b,53c,53d)で鎮圧回動軸(55)に枢支し、左右側の覆土鎮圧輪(37a,37d)を枢支する鎮圧フレーム(53a,53d)は機体フレーム(19)を支持する左右後輪(44L,44R)との干渉を避けて鎮圧回動軸(55)から抜き外し可能な形状としたことを特徴とする請求項1に記載の苗移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜苗を畝に移植する作業を行う苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
苗移植機は、特開2020-31612号公報に記載されている。この苗移植機は、左右方向を長手方向とする供給フレームに、複数の苗搬送カップを無端状に配置して周回させる苗搬送供給テーブルを備え、この苗搬送供給テーブルから落下供給される苗を所定軌跡で昇降する植付装置に供給して植え付けるものである。
【0003】
植付装置は左右一対装着されており、苗搬送供給テーブルの苗を植付装置の植付具が上死点付近まで上昇して受け取り移植動作をする。また、苗搬送供給テーブルには苗の落下位置を調節する機構があり、植え付ける苗の前後間(株間)に合わせて落下位置を調節することができる。
【0004】
これにより、作業者が苗搬送カップに投入した苗は苗搬送供給テーブルで落下供給位置まで搬送され、植付装置の植付具に落下供給されて圃場に植え付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020- 31612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の苗移植機は、苗搬送カップの落下位置の調節機構を操作しやすくすべく、苗搬送カップの周回軌跡の一部はカバー等で覆われておらず、移植作業中に作業者の手が侵入して危険な場合がある。
【0007】
また、植付装置の植付具は苗搬送供給テーブルに最接近したタイミングで苗の落下供給を受ける構成ではあるが、ある程度の風が吹いていると僅かな隙間であっても苗が植付具からずれた位置に吹き流されてしまい、苗が植え付けられなくなる問題が発生する。
【0008】
本発明は、苗搬送供給テーブルでの作業の安全性が高いと共に、苗搬送供給テーブルに投入した苗が風の影響等を受けることなく、確実に植付装置に引き継がれる苗移植機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0010】
第1の本発明は、
機体フレーム(19)上に苗収容体(22)を横長ループ状に周回する苗供給装置(43)と該苗収容体(22)から苗を受け取って畝に移植する植付装置(42)を設けた苗移植機において、
苗供給装置(43)から植付装置(42)にかけて周囲を覆う可撓性の保護カバー(3)を設け、
苗供給装置(43)の供給フレーム(24)に取り付ける保護カバー(3)は搬送方向下手側端部を供給フレーム(24)に連結し、中間部を保護カバー(3)の上部を苗収容体(22)に向けて押さえるカバー保持具(25)で供給フレーム(24)に取り付けたことを特徴とする苗移植機である。
第2の本発明は、
植付装置(42)の左右複数の植付具(20a,20b,20c,20d)のそれぞれ後部に覆土鎮圧輪(37a,37b,37c,37d)を鎮圧フレーム(53a,53b,53c,53d)で鎮圧回動軸(55)に枢支し、左右側の覆土鎮圧輪(37a,37d)を枢支する鎮圧フレーム(53a,53d)は機体フレーム(19)を支持する左右後輪(44L,44R)との干渉を避けて鎮圧回動軸(55)から抜き外し可能な形状としたことを特徴とする第1の本発明の苗移植機である。
本発明に関連する第1の発明は、機体フレーム(19)上に苗収容体(22)を横長ループ状に周回する苗供給装置(43)と該苗収容体(22)から苗を受け取って畝に移植する植付装置(42)を設けた苗移植機において、苗供給装置(43)から植付装置(42)にかけて周囲を覆う可撓性の保護カバー(3)を設けたことを特徴とする苗移植機とする。
【0011】
本発明に関連する第2の発明は、保護カバー(3)の上端は苗収容体(22)の上下中間に位置し、下端は植付装置(42)の植付具(20)が上死点に達した位置より下としたことを特徴とする本発明に関連する第1の発明の苗移植機とする。
【0012】
本発明に関連する第3の発明は、苗供給装置(43)の供給フレーム(24)に取り付ける保護カバー(3)は搬送方向下手側端部を供給フレーム(24)に連結し、中間部を保護カバー(3)の上部を苗収容体(22)に向けて押さえるカバー保持具(25)で供給フレーム(24)に取り付けたことを特徴とする本発明に関連する第1の発明の苗移植機とする。
【0013】
本発明に関連する第4の発明は、植付装置(42)の左右複数の植付具(20a,20b,20c,20d)のそれぞれ後部に覆土鎮圧輪(37a,37b,37c,37d)を鎮圧フレーム(53a,53b,53c,53d)で鎮圧回動軸(55)に枢支し、左右側の覆土鎮圧輪(37a,37d)を枢支する鎮圧フレーム(53a,53d)は機体フレーム(19)を支持する左右後輪(44L,44R)との干渉を避けて鎮圧回動軸(55)から抜き外し可能な形状としたことを特徴とする本発明に関連する第1から3のいずれかの発明の苗移植機とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明で、苗供給装置(43)から植付装置(42)に亘って保護カバー(3)で覆うことにより、移植作業中に作業者の手が苗供給装置(43)と植付装置(42)の間に近付くことを防止できるので、作業の安全性が向上する。さらに、保護カバー(3)の搬送方向下手側端部を供給フレーム(24)に連結することにより、保護カバー(3)の固定が外れても苗収容体(22)の周回に巻き込まれ、完全に脱落したり、破損したりすることが防止される。
本発明に関連する第1の発明で、苗供給装置(43)から植付装置(42)に亘って保護カバー(3)で覆うことにより、移植作業中に作業者の手が苗供給装置(43)と植付装置(42)の間に近付くことを防止できるので、作業の安全性が向上する。
【0015】
また、苗供給装置(43)の停止中であれば、可撓性の保護カバー(3)をめくることで苗供給装置(43)の下部に設ける落下位置調節機構を調整できる。
【0016】
本発明に関連する第2の発明で、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、保護カバー(3)の上端が苗収容体(22)の上下中間に位置することにより、作業者の手が保護カバー(3)の上端を越えても苗収容体(22)で内部に侵入することを防止できる。
【0017】
また、保護カバー(3)の下端は植付装置(42)の植付具(20)が上死点に達した位置より機体下方に位置するので、苗収容体(22)から植付具(20)に苗が引き継がれる際、保護カバー(3)により風の影響を受けることが防止され、苗の植付姿勢が乱れることや、植付が行われなくなることが防止される。
【0018】
本発明に関連する第3の発明で、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、保護カバー(3)の搬送方向下手側端部を供給フレーム(24)に連結することにより、保護カバー(3)の固定が外れても苗収容体(22)の周回に巻き込まれ、完全に脱落したり、破損したりすることが防止される。
【0019】
また、保護カバー(3)の上部がカバー保持具(25)で苗収容体(22)に向けて押さえられているので、周回移動する苗収容体(22)に保護カバー(3)に巻き込まれることが防止される。
【0020】
本発明に関連する第4の発明で、本発明に関連する第1から3のいずれかの発明の効果に加えて、走行車体(40)を支持する左右後輪(44L,44R)のトレッドを狭く変更しても、左右後輪(44L,44R)に干渉することなく左右側部の覆土鎮圧輪(37a,37d)を取り外せるので、作業形態を変更する際に効率良く作業が行える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】苗移植機としての玉葱苗移植機の右側面図
図2】玉葱苗移植機の平面図
図3】苗供給装置の前斜視図
図4】苗供給装置の左上斜視図
図5】保護カバーの拡大側断面図
図6】鎮圧輪の平面図
図7】左側鎮圧輪の取り外し平面図
図8】別実施例の鎮圧輪平面図
図9】水タンクの斜視図
図10】水タンク支持部台の斜視図
図11】別実施例の水タンク支持部台正面図
図12】水タンク支持部台を縮めた正面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態として玉葱苗を移植する玉葱苗移植機10を示す側面図であり、図2は、玉葱苗移植機10の平面図である。
【0024】
なお、以下の説明では、操縦ハンドル47を配置した側を後とし、その反対側、すなわちエンジン41を配置した側を前とする。そして、機体前側に向かって右手側を右とし、左手側を左とする。
【0025】
玉葱苗移植機10は、機体を前進走行可能とする走行車体40と、走行車体40の後部に設けた歩行操縦用の操縦ハンドル47と、圃場に苗を植付ける植付装置42と、植付装置42に苗を供給する苗供給装置43を備えている。
【0026】
走行車体40は、エンジン41と、エンジン41の動力が伝達されて駆動回転する左右一対の駆動車輪である後輪44と、後輪44の前方に転動自在に支持した左右一対の前輪45とを備えている。
【0027】
エンジン41の後側には、ミッションケース39が配置されている。ミッションケース39は、その左側部からエンジン41の左側方に延びるケース部分を有しており、このケース部分がエンジン41の左側部と連結している。このケース部分にエンジン41の出力軸が入り込んでミッションケース39内の伝動機構に動力が伝達する構成となっている。
【0028】
ミッションケース39の左右両側部には、前後に長い走行用伝動ケース38の前部が回動自在に取り付けられている。具体的には、走行用伝動ケース38の前部の機体内側部に、走行用伝動ケース38と一体回転可能に回転するアクスルケース11を設け、このアクスルケース11をミッションケース39の左右両側部に回動自在に取付けて、左右走行用伝動ケース38L,38Rをミッションケース39の左右両側部に対応して回動自在に取付けている。そして、この左右走行用伝動ケース38L,38Rの後部側方に突出させた後輪車軸12に左右一対の後輪44,44を装着している。
【0029】
左右走行用伝動ケース38L,38Rの前部の回動軸心位置には、ミッションケース39から左右両外側方に延出させた車輪駆動軸の先端が入り込んで、ミッションケース39内の走行部系変速伝動部を経た走行用の動力が左右走行用伝動ケース38L,38R内の伝動機構に伝達している。そして、走行用の動力は左右走行用伝動ケース38L,38R内の伝動機構を介して、左右走行用伝動ケース38L,38Rの後端車軸12に伝動し、後輪44,44が駆動回転する構成としている。
【0030】
なお、ミッションケース39内に設けた左右それぞれのサイドクラッチ(図示せず)により、左右の各後輪44,44の駆動を断つことが出来る構成になっている。従って、機体を旋回させるときには、サイドクラッチにより旋回内側となる左右一方の後輪44を非駆動状態にしてスムーズに旋回出来る構成としている。
【0031】
また、左右走行用伝動ケース38L,38Rには、左右走行用伝動ケース38L,38Rの前部側を回動支点として後輪44,44を上下させる、上下回動する駆動手段が連結している。具体的には、左右走行用伝動ケース38L,38Rのミッションケース39への取付部には、上方に延びるアーム13が一体的に取り付けられており、アーム13がミッションケース39に固定された昇降用油圧シリンダのピストンロッド先端に取り付けた連結体の左右両側部と連結している。左右一方側(右側)は、連結ロッドで連結し、他方側(左側)は、機体の傾斜に対応して伸縮作動可能な左右水平制御用油圧シリンダで連結している。
【0032】
昇降用油圧シリンダが作動してそのピストンロッドが機体後方に突出すると、左右のアーム13は後方に回動し、これに伴い走行用伝動ケース38が下方に回動して、機体が上昇する。反対に、昇降用油圧シリンダのピストンロッドが機体前方に移動してシリンダ内に引っ込むと、左右のアーム13は前方に回動し、これに伴い走行用伝動ケース38が上方に回動して、機体が下降する。
【0033】
この昇降用油圧シリンダは、畝面に接地して機体と畝面との上下間隔の変動に伴って動作する車高センサ14によって作動する。車高センサ14の動作は機体の位置を基準とした畝上面高さを検出する動作となり、そのセンサセンサ作に基づいて機体を畝上面高さに対応して設定高さになる構成で昇降用油圧シリンダが作動する構成としている。
【0034】
また、左右水平制御用油圧シリンダが伸縮作動すると、その左右水平制御用油圧シリンダと連結する左側のアーム13が回動して、左側の後輪44のみを上下動させ、機体を左右に傾斜させる。この左右水平制御用油圧シリンダは、左右水平を基準として機体の左右傾斜を検出するセンサ6の検出結果に基づいて作動して、機体を左右水平にする構成としている。
【0035】
エンジン41下方でミッションケース39に取り付けた横フレーム16の左右両側部に、上下に長い左右前輪支持脚17L,17Rが取付けられており、左右前輪45,45は、左右前輪支持脚17L,17Rの下端部を左右昇降シリンダ7L,7Rで昇降可能にした前輪車軸18に回転自在に取り付けられている。
【0036】
従って、左右前輪45は、走行車体40に対して上下調節可能に設けられており、前輪45の高さを調節することが出来る構成としている。
【0037】
前記操縦ハンドル47は、機体後部に設けられており、後輪44の後輪車軸12より機体後側に位置している。具体的には、ミッションケース39に前端部を固定した機体フレーム19の後端部に取り付けられている。
【0038】
機体フレーム19は、機体の左右中央で後方に延び、前後中間部から斜め後上方に延びている。
【0039】
操縦ハンドル47は、機体フレーム19の後端部から左右に後方に延びてその各後端部を操縦ハンドル47のグリップ部としている。
【0040】
なお、図2では、グリップ部を左右に分かれた構成としているが、操縦ハンドル47の左右の後端部を互いに左右に連結してその連結部分をグリップ部としても良い。
【0041】
植付装置42は、先端が下方に向かう嘴状の複数の植付具と、植付具の下端部が圃場面より上方となる位置と圃場面より下方となる位置とに植付具を上下動させる上下動機構21と、嘴状の植付具の下端部が閉じて上方から苗を受け入れて内側に苗を収容可能する閉状態と植付具の下端部が左右に開いて内側に収容した苗を下方に放出可能とする開状態とに植付具20を開閉する開閉機構とを備える。
【0042】
本実施の形態1の植付装置42は、植付具20を左右に設定間隔で四体並べて配備した四条植の構成としており、これらの植付具20を、機体左側から順に第1植付具20a、第2植付具20b、第3植付具20c及び第4植付具20dとする。
【0043】
4体の第1植付具20a、第2植付具20b、第3植付具20c及び第4植付具20d
は、ミッションケース39から伝動される伝動ケース26の左右両側部に設けられた上下動機構21に2体ずつ装着されている。尚、伝動ケース26は、機体フレーム19に下部を固定した取付部材の上部に固着されている。
【0044】
上下動機構21は、伝動ケース26を基準として前部が上下回動自在に装着され、後部の左右両側に植付具20が連結した昇降リンクを備えている。そして、別途設けた駆動機構により伝動ケース26内からの動力で昇降リンクを上下動させ、昇降リンクの左右に連結した、第1植付具20a及び第2植付具20b、又は、第3植付具20c及び第4植付具20dが上下動する構成となっている。
【0045】
この上下動の上昇位置では各植付具20a~20dの下端部が圃場面より上方に位置し、下降位置では各植付具20a~20dの下端部が圃場面より下方に位置する。
【0046】
各植付具20a~20dの開閉機構は、伝動ケース26内からの動力で作動し、上下動機構21の作動に連動して、各植付具20a~20dが下降して下端位置に達するとその植付具20a~20dの下部側を左右に開いて下方に開放状態とし、各植付具20a~20dが上昇して上端位置に達するとその植付具20a~20dの下部側を閉じて閉塞状態とする構成である。
【0047】
4体の植付具のうち、左右内側に配置された第2植付具20b及び第3植付具20cは、左右外側に配置された第1植付具20a及び第4植付具20dよりも後側に位置している。又、左右の上下動機構21は、180度位相を異ならせて作動する構成となっており、左右一方の外側の第1植付具20a又は第4植付具20dと、左右他方の内側の第3植付具20c又は第2植付具20bとが、それぞれ圃場において同じ前後位置に苗を植付ける構成としている。
【0048】
苗供給装置43は、苗を上方から受け入れて内側に苗を収容する複数の苗収容体22と、苗収容体22を、第1植付具20a、第2植付具20b、第3植付具20c及び第4植付具20dの上方を通過させて周回移動させる移動機構23と、第1植付具20a、第2植付具20b、第3植付具20c及び第4植付具20dの上方位置で苗収容体22の底部を開放して内側に収容した苗を落下させて、第1植付具20a、第2植付具20b、第3植付具20c及び第4植付具20dの何れかに苗を供給させる苗落下機構とを備える。
【0049】
各苗収容体22は、上下に開口する筒状体と、その筒状体の下側の開口部を開閉する底蓋とを有し、互いにループ状に連結している。開口部の底蓋を開くタイミングを調整するのが落下位置調節機構で、苗収容体22の底蓋を、その苗収容体22に対応する、第1植付具20a、第2植付具20b、第3植付具20c及び第4植付具20dの何れかの上方位置で開放するように調節する。
【0050】
移動機構23は、連結した各苗収容体22が各植付具20a~20dの上方近傍を通過する状態で、機体平面視で左右に長い長円形状のループ状の軌跡で、連結した苗収容体22を左回りに周回動させる。
【0051】
苗収容体22の外周に円筒外周部を形成し、その円筒外周部に外側から回動自在に接続する係合部(丸孔)を設けて、2つの苗収容体22を連結する連結体を複数形成した。そして、その連結体の係合部を苗収容体22の円筒外周部に回動自在に接続し、その円筒外周部を回動軸として隣の苗収容体22が回動自在に連結する状態として、複数の苗収容体22を互いに連結した構成としている。すなわち、苗収容体22と連結体とで無端チェーンの如く連結した構成である。
【0052】
これにより、苗収容体22は、直線的に移動する直線状部分28でも円弧状に移動する円弧状部分29でも隣接する苗収容体22との間隔が変わらないので、苗収容体22から各植付具20a~20dに苗を供給する個所で、苗収容体22の各植付具20a~20dを基準とした位置ズレが生じ難くなり、苗供給が適正に行われて適確な苗の植え付けが出来る。
【0053】
苗供給装置43の移動機構23は、無端チェーンの如く互いに連結する苗収容体22を、左右に設けたスプロケットの外周の円弧状切欠部に巻き掛け、この左右のスプロケットを伝動ケース26内から取り出した動力で駆動回転することにより、各苗収容体22を周回動させる構成としている。
【0054】
苗収容体22が周回する周回移動経路は、平面視で左右方向に延びる直線状部分28と、スプロケットにより直線状部分28から前側又は後側に円弧状に曲がる円弧状部分29とを備えた長円状であり、左右の後輪44より機体内側に配置されている。
【0055】
苗供給装置43は、図3,4,5に示す如く、供給フレーム24に苗収容体22をループ状に配置しているが、その後側を囲うように供給カップレール51をその外側に可撓性透明な樹脂材の保護カバー3を設けている。
【0056】
この保護カバー3の上端は苗収容体22の上下中間部に位置し、下端は上死点まで上昇した植付具20の上部を覆う位置として、左右端部側をビスBで供給フレーム24に取り付け、左右中間部の三箇所をカバー保持具25で供給フレーム24に押し付けてビスBで取り付けている。カバー保持具25の上端には角部を形成して保護カバー3の上端を苗収容体22の側面に向けている。
【0057】
従って、苗供給装置43の後側で植付装置42の上部は保護カバー3で覆われるので、作業者の指先が内部に侵入することなく安全であるが、苗供給装置43下部の落下位置調節機構を触る場合は、保護カバー3をめくることで可能になる。
【0058】
各植付具20a~20dは、左右後輪44L,44Rの間に配置し、図6の如く、各植付具20a~20dの下後側に対応して第一覆土鎮圧輪37aと第二覆土鎮圧輪37bと第三覆土鎮圧輪37cと第四覆土鎮圧輪37dを鎮圧回動軸55に回動ボス52と鎮圧フレーム53で上下回動可能に枢支している(図6)。
【0059】
図示の如く、左右側部の第一覆土鎮圧輪37aと第四覆土鎮圧輪37dの鎮圧フレーム53a,53dは、内側に逃がして、図8の如く、左右後輪44L,44Rのトレッドを狭くしても左右側部の第一覆土鎮圧輪37a或いは第四覆土鎮圧輪37dを取り外し易くしている。また、各覆土鎮圧輪37a,37b,37c,37dには、泥の付着を除くホッパスクレーパ56a,56b,56c,56dを設けている。
【0060】
図8には、第一覆土鎮圧輪37aと第四覆土鎮圧輪37dの側部鎮圧フレーム53a,53dの左右片側を無くした実施例を示している。
【0061】
苗供給装置43は、4体の第1植付具20a、第2植付具20b、第3植付具20c及び第4植付具20dに合わせて苗収容体22が一回りで周回移動して苗を供給する構成としている。
【0062】
図2に示すとおり、第1植付具20a、第2植付具20b、第3植付具20c及び第4植付具20dは、それぞれ、第1落下供給位置31a、第2落下供給位置31b、第3落下供給位置31c及び第4落下供給位置31dで、苗収容体22から苗が落下供給される。
【0063】
そして、各植付具20a~20dに対応して落下供給する苗を収容する苗収容体22を各別に設けており、落下位置調節機構で苗収容体22が対応する各植付具20a~20dの上方にきたときのみ底蓋が開き、対応しない各植付具20a~20dの上方では底蓋が開かない構成としている。
【0064】
すなわち、第1植付具20aに対応する苗収容体22は第1落下供給位置31aにきたときのみ、第2植付具20bに対応する苗収容体22は第2落下供給位置31bにきたときのみ、第3植付具20cに対応する苗収容体22は第3落下供給位置31cにきたときのみ、第4植付具20dに対応する苗収容体22は第4落下供給位置31dにきたときのみに、それぞれの底蓋が開いて、対応する植付具20a~20dにのみ苗が供給される構成となっている。
【0065】
移動機構23の作動周期は、上下動機構21の作動周期に同期する設定にされており、各植付具20a~20dに対応する苗収容体22を合わせて1つの苗収容体ユニットとして、その苗収容体ユニットを複数連結した構成とすることにより、苗収容体22が4箇所の落下供給位置31a~31dを直列的に通過しながら、4体の植付具20a~20dに対応して苗供給漏れが生じることなく苗を供給出来、且つ4箇所の落下供給位置31a~31dを通過した後に苗が供給されなかった苗収容体22が生じなくすべく、余すことなく4体の植付具20a~20dに対応して苗を供給出来る構成としている。
【0066】
苗供給装置43に苗を補給する作業者が乗車して苗補給作業が行えるべく、作業者が座る作業者用座席46を設けている。具体的には、苗供給装置43の前側となる機体左右中央位置に後向きに作業者用座席46を配置している。作業者用座席46に座る作業者は、苗供給装置43の前側部に向って後側向き姿勢で着座して、苗供給装置43の前側部、特に苗収容体22の周回移動経路における前側の直線状部分28に対応して苗補給作業を行う。
【0067】
作業者用座席46の左右両側の機体側面視で後輪44の後輪車軸12の上方位置に、苗供給装置43に補給する苗を収容可能な苗載台50を設けている。
【0068】
図9は、苗移植機に苗の移植と同時に灌水を行う灌水装置を設ける場合に使用する水タンク70を示し、図10の機体フレーム19に設ける水タンク支持ステー71に水タンク70を嵌め込む膨らみ部70aを形成している。
【0069】
図11は、水タンク支持ステー71を開閉リンク72で機体フレーム19に取り付ける構成で、図12の如く、水タンク70を使用しない場合は開閉リンク72を閉じると水タンク支持ステー71を小さく納められる。
【符号の説明】
【0070】
3 保護カバー
19 機体フレーム
20a 第1植付具
20b 第2植付具
20c 第3植付具
20d 第4植付具
22 苗収容体
24 供給フレーム
25 カバー保持具
37a 第一覆土鎮圧輪
37b 第二覆土鎮圧輪
37c 第三覆土鎮圧輪
37d 第四覆土鎮圧輪
42 植付装置
43 苗供給装置
44L 左後輪
44R 左右後輪
55 鎮圧回動軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12