(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】照合装置及び照合プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20241112BHJP
G07D 7/202 20160101ALI20241112BHJP
G07D 7/12 20160101ALI20241112BHJP
【FI】
G06T7/00 300E
G07D7/202
G07D7/12
(21)【出願番号】P 2020212626
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 滋
(72)【発明者】
【氏名】平田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】北川 喜浩
【審査官】松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-034747(JP,A)
【文献】特表2007-534067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G07D 7/202
G07D 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
照合対象である検査画像に対して、照射する光の照射方向を変えて
第2撮影装置によって撮影された複数の撮影画像を取得し、
カメラ、光源、及び画像の位置関係が、
前記第2撮影装置による前記検査画像の撮影時における前記検査画像を撮影するカメラ、前記検査画像に光を照射する光源、及び前記検査画像の位置関係と同じになるように調整した上で、光の照射方向によって模様が変化する照合画像に照射する光の照射方向を変えて前記照合画像を
前記第2撮影装置と機種の異なる第1撮影装置によって予め撮影しておいた複数の登録画像と、前記撮影画像の各々に含まれる前記検査画像との類似度に従い、前記検査画像と前記照合画像の照合結果を通知する
照合装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記照合画像を照射する光の照射方向を前記照合画像の周囲に沿って90度ずつずらして撮影した4枚の画像を含む前記登録画像を用いて、前記照合結果を通知する
請求項1記載の照合装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記4枚の画像に加えて、更に前記4枚の画像を撮影する場合に前記照合画像に照射した各々の光の照射方向に対して、光の照射方向を前記照合画像の周囲に沿ってそれぞれ90度未満ずらして撮影した4枚の追加画像を含む前記登録画像を用いて、前記照合結果を通知する
請求項2記載の照合装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記4枚の画像を撮影する場合に前記照合画像に照射した各々の光の照射方向に対して、光の照射方向を前記照合画像の周囲に沿ってそれぞれ45度ずらして撮影した画像を前記4枚の追加画像として前記登録画像に追加する
請求項3記載の照合装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、1つの点光源から照射された光によって撮影された前記登録画像を用いて、前記検査画像と前記照合画像の照合結果を通知する
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の照合装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記点光源の光軸と前記登録画像を撮影する
前記第1撮影装置におけるカメラの光軸との成す角度が、前記検査画像を撮影する
前記第2撮影装置におけるカメラの光軸と前記第2撮影装置に内蔵される内蔵点光源の光軸との成す角度にあわせて調整された前記登録画像を用いて、前記検査画像と前記照合画像の照合結果を通知する
請求項5記載の照合装置。
【請求項7】
前記照合画像は、記録媒体上に立体的に形成された立体画像である
請求項1~請求項6の何れか1項に記載の照合装置。
【請求項8】
前記立体画像は、前記記録媒体上に粉体を定着して形成された画像である
請求項7記載の照合装置。
【請求項9】
前記粉体による画像は、前記記録媒体の表面に黒又は銀の粉体で構成された画像である
請求項8記載の照合装置。
【請求項10】
前記照合画像は、銀の粉体が混合して構成された材料を付着した物体表面の画像である
請求項1~請求項6の何れか1項に記載の照合装置。
【請求項11】
コンピュータに、
照合対象である検査画像に対して、照射する光の照射方向を変えて
第2撮影装置によって撮影された複数の撮影画像を取得し、
カメラ、光源、及び画像の位置関係が、
前記第2撮影装置による前記検査画像の撮影時における前記検査画像を撮影するカメラ、前記検査画像に光を照射する光源、及び前記検査画像の位置関係と同じになるように調整した上で、光の照射方向によって模様が変化する照合画像に照射する光の照射方向を変えて前記照合画像を
前記第2撮影装置と機種の異なる第1撮影装置によって予め撮影しておいた複数の登録画像と、前記撮影画像の各々に含まれる前記検査画像との類似度に従い、前記検査画像と前記照合画像の照合結果を通知する処理を実行させる
照合プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照合装置及び照合プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ランダムパターンを有する被認証デバイスと、前記被認証デバイスのランダムパターンを取得して、その真正性を認証するデバイス認証装置とを備えるデバイス認証システムであって、前記被認証デバイスは、光の透過性が高い基材に埋め込まれた、光を反射するラメを有し、前記デバイス認証装置は、前記被認証デバイスに光を照射する光源と、前記被認証デバイスで反射した光の像から前記被認証デバイスのランダムパターンを読み取るランダムパターン読み取り手段と、前記ランダムパターン読み取り手段で読み取ったランダムパターンから前記被認証デバイスに固有の第1IDデータを取得する第1データ取得手段と、前記第1IDデータの真正性を判定するための照合用の第2IDデータを記録する第2データ記録手段と、前記第2データ記録手段に記録された前記第2IDデータを取得する第2データ取得手段と、前記第1IDデータと前記第2IDデータとの関連性を計算し、前記被認証デバイスの真正性を認証する関連性計算手段とを備えるデバイス認証システムが開示されている。
【0003】
特許文献2には、物体の表面上の対象箇所を撮影する撮影手段と、前記対象箇所に対して光を照射する照射手段と、前記照射手段から照射される前記光の、前記対象箇所に対する相対的な方向を、異なる複数の方向に順次切り替え、前記複数の方向の各々について、当該方向に前記光が照射されているときに前記撮影手段に前記対象箇所の撮影を行わせることにより、前記複数の方向の各々についての撮影画像を取得する制御を行う制御手段と、前記複数の方向の各々についての前記撮影画像が示す特徴情報と、各物体について登録されている特徴情報を照合することにより前記物体を識別する識別手段と、を含む物体識別装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-171109号公報
【文献】特開2020-154946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
物体表面に形成された照合画像の模様を識別情報として、個体を識別する照合装置が知られている。こうした照合装置では、照合対象となる検査画像を撮影した撮影画像と、予め照合画像を撮影した登録画像と、を予め定めた照合アルゴリズムに従って比較し、検査画像と登録画像の照合を行う。
【0006】
ただし、検査画像が真正の照合画像であったとしても、検査画像と照合画像の撮影条件が異なれば、検査画像は照合画像と類似しないと判定されることもある。
【0007】
例えば撮影装置の機種毎に、撮影装置におけるカメラ及び画像を照射するライトの位置が異なる上、撮影者による画像の撮影角度も異なるため、同じ画像の同じ領域を撮影しても画像、カメラ、及びライトの位置関係が異なり、その結果として画像の見え方が変化し、検査画像は照合画像と類似しないと判定されることがある。
【0008】
本発明は、1方向から撮影された検査画像を登録画像と照合する場合と比較して、検査画像が照合画像の複製であるか否かを精度よく照合することができる照合装置及び照合プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1態様に係る照合装置はプロセッサを備え、前記プロセッサは、照合対象である検査画像に対して、照射する光の照射方向を変えて撮影された複数の撮影画像を取得し、カメラ、光源、及び画像の位置関係が、前記検査画像の撮影時における前記検査画像を撮影するカメラ、前記検査画像に光を照射する光源、及び前記検査画像の位置関係と同じになるように調整した上で、光の照射方向によって模様が変化する照合画像に照射する光の照射方向を変えて前記照合画像を予め撮影しておいた複数の登録画像と、前記撮影画像の各々に含まれる前記検査画像との類似度に従い、前記検査画像と前記照合画像の照合結果を通知する。
【0010】
第2態様に係る照合装置は、第1態様に係る照合装置において、前記プロセッサが、前記照合画像を照射する光の照射方向を前記照合画像の周囲に沿って90度ずつずらして撮影した4枚の画像を含む前記登録画像を用いて、前記照合結果を通知する。
【0011】
第3態様に係る照合装置は、第2態様に係る照合装置において、前記プロセッサが、前記4枚の画像に加えて、更に前記4枚の画像を撮影する場合に前記照合画像に照射した各々の光の照射方向に対して、光の照射方向を前記照合画像の周囲に沿ってそれぞれ90度未満ずらして撮影した4枚の追加画像を含む前記登録画像を用いて、前記照合結果を通知する。
【0012】
第4態様に係る照合装置は、第3態様に係る照合装置において、前記プロセッサが、前記4枚の画像を撮影する場合に前記照合画像に照射した各々の光の照射方向に対して、光の照射方向を前記照合画像の周囲に沿ってそれぞれ45度ずらして撮影した画像を前記4枚の追加画像として前記登録画像に追加する。
【0013】
第5態様に係る照合装置は、第1態様~第4態様の何れかの態様に係る照合装置において、前記プロセッサが、1つの点光源から照射された光によって撮影された前記登録画像を用いて、前記検査画像と前記照合画像の照合結果を通知する。
【0014】
第6態様に係る照合装置は、第5態様に係る照合装置において、前記プロセッサが、前記点光源の光軸と前記登録画像を撮影する第1撮影装置におけるカメラの光軸との成す角度が、前記検査画像を撮影する第2撮影装置におけるカメラの光軸と前記第2撮影装置に内蔵される内蔵点光源の光軸との成す角度にあわせて調整された前記登録画像を用いて、前記検査画像と前記照合画像の照合結果を通知する。
【0015】
第7態様に係る照合装置は、第1態様~第6態様の何れかの態様に係る照合装置において、前記照合画像が、記録媒体上に立体的に形成された立体画像である。
【0016】
第8態様に係る照合装置は、第7態様に係る照合装置において、前記立体画像が、前記記録媒体上に粉体を定着して形成された画像である。
【0017】
第9態様に係る照合装置は、第8態様に係る照合装置において、前記粉体による画像が、黒又は銀の粉体で構成された表面の撮影画像である。
【0018】
第10態様に係る照合装置は、第1態様~第6態様の何れかの態様に係る照合装置において、前記照合画像が、銀の粉体が混合して構成された材料を付着した物体表面の画像である。
【0019】
第11態様に係る照合プログラムは、コンピュータに、照合対象である検査画像に対して、照射する光の照射方向を変えて撮影された複数の撮影画像を取得し、カメラ、光源、及び画像の位置関係が、前記検査画像の撮影時における前記検査画像を撮影するカメラ、前記検査画像に光を照射する光源、及び前記検査画像の位置関係と同じになるように調整した上で、光の照射方向によって模様が変化する照合画像に照射する光の照射方向を変えて前記照合画像を予め撮影しておいた複数の登録画像と、前記撮影画像の各々に含まれる前記検査画像との類似度に従い、前記検査画像と前記照合画像の照合結果を通知する処理を実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0020】
第1態様及び第11態様によれば、1方向から撮影された検査画像を登録画像と照合する場合と比較して、検査画像が照合画像の複製であるか否かを精度よく照合することができる、という効果を有する。
【0021】
第2態様によれば、1枚の照合画像に対して少なくとも4枚の登録画像があれば照合結果を通知することができる、という効果を有する。
【0022】
第3態様によれば、4枚の登録画像を用いて検査画像の照合を行う場合よりも、精度良く検査画像を照合できる、という効果を有する。
【0023】
第4態様によれば、照合画像を照射する光の照射方向を真正画像の周囲に沿って90度ずつずらして撮影した登録画像を用いて検査画像の照合を行う場合よりも、撮影装置の輪郭と、当該撮影装置に内蔵されたカメラと光源を結ぶ直線と、の成す角度が45度となるようにカメラ及び光源が配置されている撮影装置で撮影された検査画像の照合精度を向上させることができる、という効果を有する。
【0024】
第5態様によれば、複数の光源から照射された光によって撮影された登録画像を用いて検査画像の照合を行う場合よりも、1つの点光源で光の照射を行う撮影装置で撮影された検査画像の照合精度を向上させることができる、という効果を有する。
【0025】
第6態様によれば、登録画像を撮影する際の点光源の光軸と第1撮影装置の光軸との成す角度を、検査画像を撮影する第2撮影装置の光軸と内蔵点光源の光軸との成す角度にあわせることなく撮影した登録画像を用いて検査画像の照合を行う場合よりも、精度良く検査画像を照合できる、という効果を有する。
【0026】
第7態様によれば、1枚の照合画像から、模様の異なる複数枚の登録画像を取得することができる、という効果を有する。
【0027】
第8態様によれば、粉体で記録媒体に画像を形成する画像形成装置で生成された真正画像を用いた照合を行うことができる、という効果を有する。
【0028】
第9態様によれば、黒及び銀以外の粉体で構成された照合画像を用いる場合よりも、検査画像と照合画像の照合精度を向上させることができる、という効果を有する。
【0029】
第10態様によれば、銀以外の粉体が混合された材料による画像よりも、検査画像と照合画像の照合精度を向上させることができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】真正の照合画像と、照合画像を複製した複製画像の一例を示す図である。
【
図3】照合画像と複製画像の類似度を示すグラフの一例を示す図である。
【
図6】左照射の照合画像と、下照射の照合画像との類似度を示すグラフの一例である。
【
図8】スマートフォンによる検査画像の撮影形態の一例を示す図である。
【
図9】専用機材による照合画像の撮影形態の一例を示す図である。
【
図10】直交配置を備えた第1のスマートフォンの撮影形態の一例を示す図である。
【
図11】直交配置を備えた第2のスマートフォンの撮影形態の一例を示す図である。
【
図12】直交配置を備えた第3のスマートフォンの撮影形態の一例を示す図である。
【
図13】直交配置を備えた第4のスマートフォンの撮影形態の一例を示す図である。
【
図14】傾斜配置を備えた第5のスマートフォンの撮影形態の一例を示す図である。
【
図15】傾斜配置を備えた第6のスマートフォンの撮影形態の一例を示す図である。
【
図16】傾斜配置を備えた第7のスマートフォンの撮影形態の一例を示す図である。
【
図17】傾斜配置を備えた第8のスマートフォンの撮影形態の一例を示す図である。
【
図18】第2のスマートフォンにおける他の撮影形態の一例を示す図である。
【
図19】第4のスマートフォンにおける他の撮影形態の一例を示す図である。
【
図20】第6のスマートフォンにおける他の撮影形態の一例を示す図である。
【
図21】第7のスマートフォンにおける他の撮影形態の一例を示す図である。
【
図22】第8のスマートフォンにおける他の撮影形態の一例を示す図である。
【
図23】第5のスマートフォンを横方向又は縦方向に配置した撮影形態の一例を示す図である。
【
図24】第6のスマートフォンを横方向又は縦方向に配置した撮影形態の一例を示す図である。
【
図25】第7のスマートフォンを横方向又は縦方向に配置した撮影形態の一例を示す図である。
【
図26】第8のスマートフォンを横方向又は縦方向に配置した撮影形態の一例を示す図である。
【
図27】コンピュータにおける電気系統の要部構成例を示す図である。
【
図28】照合装置のCPUによって実行される照合処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、同じ構成要素及び同じ処理には全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0032】
図1は、本実施形態で用いる照合画像1の一例を拡大した拡大図である。照合画像1は、例えばトナーといった粉体を用いて画像を形成する画像形成装置によって記録媒体4(
図8参照)に形成される画像である。本実施形態では照合画像1が記録媒体4に形成されているものとして説明を行うが、例えば食品の容器のように記録媒体4以外の物体に照合画像1を形成してもよい。すなわち、照合画像1の形成先は、照合画像1が形成可能な物体であればその種類は限定されない。
【0033】
例えば黒色の粉体を用いて記録媒体4に形成された照合画像1を拡大してみると、
図1に示すように、照合画像1は各々の粉体が凝集して記録媒体4に定着することで立体的に形成される立体画像であることがわかる。立体画像とは、例えば記録媒体4における粉体の積層方向に、粉体の平均粒子径以上の凹凸が濃淡として認められるような画像をいう。粉体の平均粒子径には様々なものが存在するためどのような平均粒子径の粉体を用いてもよいが、本実施形態における照合画像1を形成する粉体の平均粒子径は約6μmである。
【0034】
また、金属粒子を粉体に混合して形成した画像を照合画像1として用いることができる。金属粒子の一例であるアルミニウム粒子などを混合した粉体による画像は銀色を呈し、同じく金属粒子の一例である真鍮粒子を混合した粉体による印画像は金色を呈する。
【0035】
こうした照合画像1を構成する粉体にはアルミニウムなどの金属粒子が含まれるため、照合画像1に光を照射すると、光がランダムに積層された粉体の金属粒子によって反射され、照合画像1は、反射する光の強さに応じて濃淡の模様を表示することになる。したがって、記録媒体4に形成された照合画像1を物体に貼り付けたり、画像形成装置で物体に直接照合画像1を形成したりすることで物体と照合画像1を対応付ければ、照合画像1の模様を判別することで、照合画像1と対応付けられた物体が識別できるようになる。
【0036】
しかしながら、例えばスマートフォン6(
図7参照)に代表されるカメラ機能付き情報機器や画像形成装置の性能が向上しているため、真正の照合画像1をスマートフォン6で撮影し、撮影した照合画像1を画像形成装置で記録媒体に形成すれば、照合画像1を複製した複製画像2が得られる。具体的には、撮影した画像の解像度が1000dpiに達するスマートフォン6や、4800dpiの解像度で画像を形成するインクジェットプリンタを用いれば、照合画像1の模様の特徴を示す複製画像2が形成される。
【0037】
図2は、真正の照合画像1と、上記のようにスマートフォン6とインクジェットプリンタを用いて作成した照合画像1に対する複製画像2の一例を示す図である。なお、
図2に示す照合画像1及び複製画像2は、それぞれ1012dpiの解像度で撮影した画像である。
【0038】
図2に示す複製画像2は、真正の照合画像1に比べて不鮮明であるが、照合画像1における濃淡の模様の特徴は複製画像2上に再現されていることがわかる。
【0039】
本実施形態では矩形の照合画像1を用いて説明を行うが、照合画像1の形状に制約はなく、円、楕円、及び多角形等の他の形状であってもよい。
【0040】
図3は、
図2に示した照合画像1と複製画像2との類似度を、例えばZNCC(Zero-mean Normalized Cross-Correlation)のような公知の照合アルゴリズムを用いて算出した算出結果の一例を示すグラフ3Aである。ここでは一例として、
図2に示す照合画像1及び複製画像2の解像度を、それぞれ600dpiに変換してから類似度を算出している。また、類似度の算出に用いた照合アルゴリズムは、複数の方法を組み合わせることで類似度の算出精度を向上することができ、一例として2種類の方法で照合画像1と複製画像2との類似度を算出する。
【0041】
図3において、縦軸は第1の方法で算出した類似度を示し、横軸は第2の方法で算出した類似度を示す。縦軸及び横軸共、数値が大きいほど画像が類似していることを示している。したがって、グラフ3Aの対角線に沿って右上に行く程、画像同士が類似していることを示し、グラフ3Aの左下に行く程、画像同士が類似していないことを示している。
【0042】
図3における“□”は、照合画像1と複製画像2の類似度を、それぞれ対応する箇所毎に算出した結果を示す点である。“□”の点はグラフ3Aの右上の領域に集中していることから、照合画像1と複製画像2は類似していることがわかる。
【0043】
図3における“○”は、例えば同じ照合画像1を2回撮影した画像同士の類似度を、それぞれ対応する箇所毎に算出した結果を示す点である。当然のことながら、同じ照合画像1同士を比較しているため、各々の照合画像1は類似していることを示している。
【0044】
また、
図3における“△”は、異なる照合画像1同士の類似度を、それぞれ対応する箇所毎に算出した結果を示す点である。当然のことながら、異なる照合画像1同士であれば、その類似度を示す“△”の点はグラフ3Aの左下の領域に集中し、各々の照合画像1が類似していないことを示している。
【0045】
図3に示すように、照合画像1と複製画像2の類似度は、同じ照合画像1同士の類似度と同程度の類似度を示していることから、照合画像1と判別できない程の精密さで照合画像1の複製を作成できることがわかる。
【0046】
しかしながら、粉体により構成される照合画像1に現れる濃淡の模様は表面凹凸の陰影が反映されたものであり、同じ照合画像1であっても光の照射方向を変えると、照合画像1の模様が変化する。粉体は、例えば数10μmの単位で凝集する傾向があるため、照合画像1の模様も凝集単位の幅で変化する傾向がある。
【0047】
金属粒子を混合した粉体により構成された照合画像1は、正反射を生じる金属粒子の微小面がランダムに配置されていることを反映しており、同じ照合画像1であっても、光の照射方向を変えると、照合画像1の模様が変化する。数μm~10μm程度の粒子を用いると、数10μmの単位で明るさが変化する傾向がある。
【0048】
図4において、
図4(A)は、照合画像1の左辺と直交する方向に沿って、上方向の左(左斜め上)から照合領域に向かって光を照射した場合の照合画像1の一例を示す図である。以降では、こうした光の照射形態を「光を左方向から照射する」という。
【0049】
図4(B)は、
図4(A)に示した照合画像1を2回撮影し、撮影した照合画像1同士の類似度を、それぞれ対応する箇所毎に算出した結果(“○”で示される)と、
図4(A)に示した照合画像1、及び
図4(A)とは異なる照合画像1の左方向から光を照射して撮影した別の照合画像1の類似度を、それぞれ対応する箇所毎に算出した結果(“△”で示される)を示すグラフ3Bの一例である。なお、グラフ3Bにおける縦軸及び横軸が表す意味は、
図3に示したグラフ3Aと同じである。
【0050】
すなわち、光の照射方向が同じであれば、各々撮影された同じ照合画像1同士は類似していると判定され、光の照射方向が同じであっても、異なる照合画像1同士は類似していないと判定されることが
図4(B)のグラフ3Bからわかる。
【0051】
一方、
図5において
図5(A)は、
図4(A)に示した照合画像1と同じ照合画像1であって、照合画像1の底辺と直交する方向に沿って、下斜め上から照合領域に向かって光を照射した場合の照合画像1の一例を示す図である。以降では、こうした光の照射形態を「光を下方向から照射する」という。
【0052】
図5(B)は、
図5(A)に示した照合画像1を2回撮影し、撮影した照合画像1同士の類似度を、それぞれ対応する箇所毎に算出した結果(“○”で示される)と、
図5(A)に示した照合画像1、及び
図5(A)とは異なる照合画像1の下方向から光を照射して撮影した別の照合画像1の類似度を、それぞれ対応する箇所毎に算出した結果(“△”で示される)を示すグラフ3Cの一例である。なお、グラフ3Cにおける縦軸及び横軸が表す意味は、
図3に示したグラフ3Aと同じである。
【0053】
この場合においても、光の照射方向が同じであれば、各々撮影された同じ照合画像1同士は類似していると判定され、光の照射方向が同じであっても、異なる照合画像1同士は類似していないと判定されることが
図5(B)のグラフ3Cからわかる。
【0054】
これに対して、
図6は、
図4(A)に示した照合画像1と、
図5(A)に示した照合画像1との類似度、すなわち異なる方向から光を照射した同じ照合画像1同士の類似度を、それぞれ対応する箇所毎に算出した結果(“○”で示される)と、同じ方向から光を照射した異なる照合画像1同士の類似度を、それぞれ対応する箇所毎に算出した結果(“△”で示される)と、を示すグラフ3Dの一例である。
【0055】
図6から、同じ照合画像1であっても、光の照射方向が異なれば、異なる照合画像1と同じ程度に照合画像1が異なると判定されることがわかる。
【0056】
本実施形態では、同じ照合画像1であっても、光の照射方向によって照合画像1の類似度が変化するという照合画像1の性質を利用して、撮影装置で撮影された照合対象の画像(「検査画像9」という)が照合画像1に類似しているか否かを照合する照合システム5について説明する。
【0057】
検査画像9を撮影する撮影装置は、カメラ6Aと光を照射する1つの光源6B(
図8(A)参照)を備えていればどの様な種類の撮影装置であってもよいが、本実施形態では、スマートフォン6を用いて検査画像9を撮影する例について説明する。スマートフォン6は第2撮影装置の一例である。
【0058】
図7は、本実施形態に係る照合システム5の一例を示す構成図である。照合システム5は、検査画像9を撮影するスマートフォン6と、撮影画像に含まれる検査画像9と照合画像1を照合する照合装置10を含む。スマートフォン6は、例えば無線基地局7を通じて通信回線8に接続され、同じく通信回線8に接続された照合装置10と接続される。通信回線8は有線回線であっても無線回線であってもよく、また、専用回線であっても公衆回線であってもよい。
【0059】
なお、説明の便宜上、
図7には1台のスマートフォン6しか図示していないが、実際には複数のスマートフォン6が照合装置10に接続される場合もある。
【0060】
照合装置10は、通信部11及び照合部12の各機能部と、登録画像DB(Database)13を含む。
【0061】
通信部11は、通信回線8を通じてスマートフォン6とデータ通信を行う。具体的には、通信部11は、照射する光の照射方向を変えながら検査画像9を撮影した複数の撮影画像をスマートフォン6から取得し、取得した撮影画像の各々を照合部12に引き渡す。
【0062】
照合部12は、通信部11から撮影画像を受け付けると、受け付けた撮影画像毎に、撮影画像に含まれる検査画像9と登録画像DB13に予め登録されている登録画像に含まれる照合画像1との類似度を公知の照合アルゴリズムを用いて算出する。その上で、照合部12は、撮影画像に含まれる検査画像9と登録画像に含まれる照合画像1の照合結果を通信部11に通知する。
【0063】
ここで、登録画像とは、光の照射方向によって模様が変化する照合画像1毎に、光の照射方向を変えながら照合画像1を撮影した画像のことであり、照合画像1の原本となる画像である。照合画像1毎に光の照射方向を変えながら照合画像1を撮影することからもわかるように、1枚の照合画像1に対して、複数の登録画像が存在する。以降では、1枚の照合画像1から得られた複数の登録画像のことを「登録画像群」という。
【0064】
すなわち、照合画像1毎に登録画像群が存在し、各々の登録画像群に含まれる登録画像が登録画像群単位で登録画像DB13に登録されている。また、各々の登録画像群は、何れの照合画像1を撮影した登録画像群であるかがわかるように、照合画像1と登録画像群とを対応付けた情報が登録画像DB13で管理されている。
【0065】
照合部12は、複数の撮影画像に含まれる各々の検査画像9が、特定の1つの登録画像群に含まれる複数の登録画像とそれぞれ類似していれば、各々の撮影画像に含まれる検査画像9は、当該特定の登録画像群に対応した照合画像1を光の照射方向を変えながら撮影した画像であると照合する。
【0066】
照合部12から照合結果を受け付けた通信部11は、受け付けた照合結果を例えば撮影画像を送信してきたスマートフォン6に送信する。これにより、撮影された検査画像9が、登録画像DB13に登録されている何れかの登録画像に含まれる照合画像1と一致しているか否かを表す照合結果がスマートフォン6に通知されることになる。
【0067】
ユーザが撮影した検査画像9が、インクジェットプリンタで照合画像1を複製した複製画像2である場合、複製画像2は立体画像とはならずに平面的な画像となる。したがって、光の照射方向を変えながら複製画像2を撮影したとしても、撮影画像に含まれる複製画像2の模様に変化は生じず、同じ模様を示す複製画像2を撮影した撮影画像が複数枚得られることになる。
【0068】
この場合、何れか1枚の撮影画像に含まれる複製画像2と同じ模様を示す登録画像は登録画像DB13に存在することになる。しかしながら、他の撮影画像に含まれる複製画像2の模様は、先の1枚の撮影画像に含まれる複製画像2の模様と同じであるため、他の撮影画像に含まれる各々の複製画像2と同じ模様を示す登録画像は、先の登録画像以外には登録画像群に存在しないことになる。したがって、複数の撮影画像に含まれる各々の複製画像2が、特定の1つの登録画像群に含まれる複数の登録画像とそれぞれ類似することがないため、ユーザが撮影した検査画像9は照合画像1の複製ということになり、照合装置10は照合画像1の真贋を照合できるようになる。
【0069】
なお、登録画像DB13は必ずしも照合装置10に含まれている必要はなく、通信回線8に接続された図示しない外部装置に含まれていてもよい。この場合、照合装置10は必要に応じて、通信回線8を通じて図示しない外部装置に含まれる登録画像DB13を参照する。
【0070】
次に、照合画像1の照合に用いる登録画像の撮影形態について説明する。そのためには、まずスマートフォン6を用いて照合対象となる検査画像9を撮影する撮影形態について説明しておく。
【0071】
図8は、スマートフォン6による検査画像9の撮影形態の一例を示す図である。
図8(A)に示すように、スマートフォン6にはカメラ6Aと光源6Bが内蔵されている。光源6Bには、1点から光を照射する点光源が用いられる。すなわち、光源6Bは内蔵点光源の一例である。なお、光源6Bは、1つ若しくは複数のLED(Light Emitting Diode)が集中配置される光源でもよい。
【0072】
ユーザは、
図8(B)に示すように、スマートフォン6のカメラ6Aが照合対象となる検査画像9と向かい合うように、スマートフォン6のカメラ6Aが配置されている面(「スマートフォン6の撮影面」という)を検査画像9に向けて、検査画像9の撮影を行う。
【0073】
撮影画像に含まれる検査画像9の大きさ、光源6Bによる光の照射によって照らされる検査画像9上の照度分布、及び光源6Bによる光の照射角度といった検査画像9の撮影状態に影響を与える撮影環境属性は、カメラ6Aの光軸と光源6Bの光軸との成す角度(「照射角φ」という)、及びスマートフォン6の撮影面と検査画像9との間の距離(「撮影距離H」という)によって変化する。
【0074】
このようにして撮影される撮影画像に含まれる検査画像9と照合画像1との照合を少しでも精度よく行うためには、
図9に示すように、専用機材15を用いて照合画像1を撮影する場合の照射角φ及び撮影距離Hを、ユーザがスマートフォン6を用いて検査画像9を撮影する場合の照射角φ及び撮影距離Hに近づけて撮影することが好ましい。
【0075】
そのため、専用機材15では、専用機材15におけるカメラ15Aのレンズの中心と光源15Bの照射面の中心との距離(「デバイス距離W」という)が可変できるようになっている。登録画像の撮影者は、専用機材15の撮影距離Hをスマートフォン6で撮影する場合の撮影距離Hに近づけた上でデバイス距離Wを調整して、専用機材15における照射角φをスマートフォン6で撮影する場合の照射角φに近づける。
【0076】
スマートフォン6の機種にもよるが、スマートフォン6では撮影距離Hを100mmとした場合に、スマートフォン6で規定されている最高解像度の画像が撮影されることが多い。撮影距離Hを100mmよりも長くすると、撮影画像に含まれる検査画像9の大きさが小さくなってしまい、登録画像との照合が行いにくくなる一方、撮影距離Hを100mmよりも短くすると、検査画像9にカメラ6Aの焦点があわず、検査画像9の解像度が低下する傾向が見られる。したがって、専用機材15における撮影距離Hは100mm±αmm(αは実数)の調整範囲内に設定することが好ましい。αは、スマートフォン6で最高解像度とみなすことができる解像度の画像が得られる変動幅を示す予め定めた長さである。
【0077】
一方、機種が異なる場合であっても、カメラ15A及び光源15Bのそれぞれの大きさと、スマートフォン6自体の大きさとの関係性から、スマートフォン6におけるデバイス距離Wは、10mm以上15mm以下程度の範囲に収まっていることが多い。したがって、専用機材15のデバイス距離Wもこれにあわせて10mm以上15mm以下程度に設定される。
【0078】
なお、スマートフォン6の光源6Bには1つの点光源が用いられることが多い。したがって、専用機材15の光源15Bによる照度分布をスマートフォン6の光源6Bによる照度分布に近づけるためには、専用機材15の光源15Bも1つの点光源であることが好ましい。
【0079】
次に、専用機材15で複数の登録画像を撮影する場合に光源15Bから照射する光の照射方向について検討する。
【0080】
既に説明したように、光の照射方向を変えることで照合画像1の模様は変化し、同じ照合画像1であっても異なる照合画像1であると判定される。
【0081】
したがって、スマートフォン6で撮影した撮影画像に含まれる検査画像9と、登録画像に含まれる照合画像1を照合するためには、スマートフォン6で検査画像9を撮影する際に照射した光の方向と同じ方向に専用機材15の光源15Bから光を照射して、専用機材15で照合画像1を撮影する必要がある。
【0082】
特に、カメラ6Aと光源6Bのそれぞれの中心を結ぶ直線がスマートフォン6の何れかの輪郭線と直交するように、カメラ6Aと光源6Bが配置されているスマートフォン6を用いて検査画像9を撮影する場合、少なくとも異なる2方向から光を照射して照合画像1を撮影した複数の登録画像を予め用意しておけばよい。
【0083】
なお、カメラ6Aと光源6Bのそれぞれの中心を結ぶ直線がスマートフォン6の何れかの輪郭線と直交するようにカメラ6Aと光源6Bが配置されていることを、「直交配置」という。
【0084】
こうしたカメラ6Aと光源6Bが直交配置となっているスマートフォン6が用いられる場合、例えば左照射の照合画像1を撮影した登録画像と、下照射の照合画像1を撮影した登録画像を用意しておけば、カメラ6Aと光源6Bの相対位置によらず、撮影画像に含まれる検査画像9と、登録画像に含まれる照合画像1の照合が可能となる。
【0085】
なお、照合画像1や検査画像9といった何らかの画像に対して、カメラ6Aの左側に光源6Bを配置して、画像に左から右方向に向かって光を照射することを「左照射」、カメラ6Aの右側に光源6Bを配置して、画像に右から左方向に向かって光を照射することを「右照射」、カメラ6Aの上側に光源6Bを配置して、画像に上から下方向に向かって光を照射することを「上照射」、及びカメラ6Aの下側に光源6Bを配置して、画像に下から上方向に向かって光を照射することを「下照射」という。
【0086】
図10は、カメラ6Aと光源6Bが直交配置となっている第1のスマートフォン6における光の照射方向の一例を示す図である。
【0087】
図10(A)は、スマートフォン6における撮影面の反対側の面、すなわち画面が配置された操作面からスマートフォン6を眺めた図である。
図10(A)のスマートフォン6では、スマートフォン6の輪郭線の短辺に沿ってカメラ6Aと光源6Bが配置され、スマートフォン6の上半分において、スマートフォン6の操作面から見て右側にカメラ6A、左側に光源6Bが配置されている。なお、スマートフォン6の操作面から見た場合、カメラ6A及び光源6Bは直接見えないため、点線で図示している。
【0088】
図10(B)は、
図10(A)のスマートフォン6で左照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0089】
図10(C)は、
図10(A)のスマートフォン6で下照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0090】
図11は、カメラ6Aと光源6Bが直交配置となっている第2のスマートフォン6における光の照射方向の一例を示す図である。
【0091】
図11(A)に示すように、
図11のスマートフォン6は、スマートフォン6の輪郭線の短辺に沿ってカメラ6Aと光源6Bが配置され、スマートフォン6の上半分において、スマートフォン6の操作面から見て左側にカメラ6A、右側に光源6Bが配置されている。
【0092】
図11(B)は、
図11(A)のスマートフォン6で左照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0093】
図11(C)は、
図11(A)のスマートフォン6で下照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0094】
図12は、カメラ6Aと光源6Bが直交配置となっている第3のスマートフォン6における光の照射方向の一例を示す図である。
【0095】
図12(A)に示すように、
図12のスマートフォン6は、スマートフォン6の輪郭線の長辺に沿ってカメラ6Aと光源6Bが配置され、スマートフォン6の上半分において、スマートフォン6の操作面から見て上側にカメラ6A、下側に光源6Bが配置されている。
【0096】
図12(B)は、
図12(A)のスマートフォン6で左照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0097】
図12(C)は、
図12(A)のスマートフォン6で下照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0098】
図13は、カメラ6Aと光源6Bが直交配置となっている第4のスマートフォン6における光の照射方向の一例を示す図である。
【0099】
図13(A)に示すように、
図13のスマートフォン6は、スマートフォン6の輪郭線の長辺に沿ってカメラ6Aと光源6Bが配置され、スマートフォン6の上半分において、スマートフォン6の操作面から見て下側にカメラ6A、上側に光源6Bが配置されている。
【0100】
図13(B)は、
図13(A)のスマートフォン6で左照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0101】
図13(C)は、
図13(A)のスマートフォン6で下照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0102】
検査画像9に対して
図10~
図13に示すようにスマートフォン6を配置すれば、カメラ6Aと光源6Bが直交配置となっているスマートフォン6で、左照射の検査画像9を撮影した撮影画像と、下照射の検査画像9を撮影した撮影画像が得られる。
【0103】
なお、ユーザがスマートフォン6で検査画像9を撮影する場合の撮影条件が、専用機材15で照合画像1を撮影した場合の撮影条件に近づくように、スマートフォン6は、ユーザによる検査画像9の撮影を補助するためのガイドを表示してもよい。
【0104】
撮影条件とは、スマートフォン6のカメラ6A、光源6B、及び検査画像9の位置関係を規定する条件である。具体的には、スマートフォン6は、光源6Bの照射角φ及びカメラ6Aの撮影距離Hが、専用機材15で照合画像1を撮影した際の光源15Bの照射角φ及びカメラ15Aの撮影距離Hに近づいたことを知らせる情報をスマートフォン6の画面に表示してもよい。
【0105】
一方、スマートフォン6におけるカメラ6Aと光源6Bの配置は直交配置に限られない。例えばカメラ6Aと光源6Bのそれぞれの中心を結ぶ直線とスマートフォン6の何れかの輪郭線との成す角度が90度以外の角度で交差するようにカメラ6Aと光源6Bが配置された「傾斜配置」のスマートフォン6も存在する。
【0106】
図14は、カメラ6Aと光源6Bが傾斜配置となっている第5のスマートフォン6における光の照射方向の一例を示す図である。
【0107】
図14(A)に示すように、
図14のスマートフォン6は、スマートフォン6の操作面から見て、スマートフォン6の上半分に配置されたカメラ6Aの位置から左斜め下方向に光源6Bが配置されている。
【0108】
図14(B)は、
図14(A)のスマートフォン6で左照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0109】
図14(C)は、
図14(A)のスマートフォン6で下照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0110】
図15は、カメラ6Aと光源6Bが傾斜配置となっている第6のスマートフォン6における光の照射方向の一例を示す図である。
【0111】
図15(A)に示すように、
図15のスマートフォン6は、スマートフォン6の操作面から見て、スマートフォン6の上半分に配置されたカメラ6Aの位置から右斜め下方向に光源6Bが配置されている。
【0112】
図15(B)は、
図15(A)のスマートフォン6で左照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0113】
図15(C)は、
図15(A)のスマートフォン6で下照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0114】
図16は、カメラ6Aと光源6Bが傾斜配置となっている第7のスマートフォン6における光の照射方向の一例を示す図である。
【0115】
図16(A)に示すように、
図16のスマートフォン6は、スマートフォン6の操作面から見て、スマートフォン6の上半分に配置されたカメラ6Aの位置から右斜め上方向に光源6Bが配置されている。
【0116】
図16(B)は、
図16(A)のスマートフォン6で左照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0117】
図16(C)は、
図16(A)のスマートフォン6で下照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0118】
図17は、カメラ6Aと光源6Bが傾斜配置となっている第8のスマートフォン6における光の照射方向の一例を示す図である。
【0119】
図17(A)に示すように、
図17のスマートフォン6は、スマートフォン6の操作面から見て、スマートフォン6の上半分に配置されたカメラ6Aの位置から左斜め上方向に光源6Bが配置されている。
【0120】
図17(B)は、
図17(A)のスマートフォン6で左照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0121】
図17(C)は、
図17(A)のスマートフォン6で下照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0122】
検査画像9に対して
図14~
図17に示すようにスマートフォン6を配置すれば、カメラ6Aと光源6Bが傾斜配置となっているスマートフォン6であっても、左照射の検査画像9を撮影した撮影画像と、下照射の検査画像9を撮影した撮影画像が得られる。
【0123】
ここでは、左照射の照合画像1を撮影した登録画像と、下照射の照合画像1を撮影した登録画像を照合画像1の登録画像群として用意する例に基づき、当該光の照射方向にあわせて検査画像9を撮影するスマートフォン6の配置について説明してきた。しかしながら、照合画像1の登録画像群に含まれる登録画像は、左照射の照合画像1を撮影した登録画像と下照射の照合画像1を撮影した登録画像に限られない。例えば右照射の照合画像1を撮影した登録画像と、上照射の照合画像1を撮影した登録画像であってもよい。
【0124】
その上で、専用機材15で照合画像1を撮影した際の光の各照射方向と一致するように、ユーザがスマートフォン6の配置を変えながら、スマートフォン6で各々の照射方向における検査画像9を撮影すればよい。
【0125】
すなわち、1枚の照合画像1の登録画像群として、光の照射方向が異なる2枚の登録画像があれば、照合装置10は、2枚の登録画像に含まれる各々の照合画像1と、2枚の撮影画像に含まれる各々の検査画像9との類似度に基づき、検査画像9と照合画像1の照合が可能となる。
【0126】
しかしながら、
図10~
図17に示したスマートフォン6の配置の中には、ユーザがスマートフォン6を手に持ってその配置で撮影しようとすると、身体の関節の可動域の関係上実現困難な配置や、スマートフォン6を一方の手から他方の手に持ち替える必要のある配置が存在する。例えば
図11(B)、
図13(C)、
図15(B)、
図16(B)、
図16(C)、及び
図17(C)のように、スマートフォン6を上下逆転させて持つ必要のある配置は、そうでない配置に比べて、検査画像9を撮影する場合におけるスマートフォン6の操作性が劣る。
【0127】
こうした状況に対応するため、1枚の照合画像1の登録画像群として、光の照射方向が異なる4枚の登録画像を撮影し、登録画像DB13に登録してもよい。各々の光の照射方向が異なるほど照合画像1の模様の変化も大きくなることから、この場合、上照射の照合画像1を撮影した登録画像、右照射の照合画像1を撮影した登録画像、下照射の照合画像1を撮影した登録画像、及び左照射の照合画像1を撮影した登録画像というように、照合画像1を照射する光の照射方向を照合画像1の周囲に沿って90度ずつずらして撮影することが好ましい。
【0128】
「光の照射方向を照合画像1の周囲に沿ってずらしながら撮影する」とは、例えば照合画像1を正面から眺めた場合に、照合画像1の輪郭線に沿って専用機材15の光源15Bを移動させながら照合画像1がある方向に光を照射して、専用機材15で撮影することをいう。なお、照合画像1上での照度が高すぎるとハレーションが起こりやすくなることから、光源15Bの光軸が照合画像1と交差しないような位置関係で照合画像1の撮影を行ってもよい。
【0129】
図11(A)に示したスマートフォン6の場合、ユーザが
図11(B)に示したような左照射の検査画像9を撮影しなくてもいいように、上照射の照合画像1を撮影した登録画像、及び右照射の照合画像1を撮影した登録画像も登録画像群に含めておくことが好ましい。
【0130】
図18は、
図11(A)に示したスマートフォン6で検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0131】
このうち、
図18(A)は、
図11(A)のスマートフォン6で上照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0132】
図18(B)は、
図11(A)のスマートフォン6で右照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0133】
図13(A)に示したスマートフォン6の場合、ユーザが
図13(C)に示したような下照射の検査画像9を撮影しなくてもいいように、上照射の照合画像1を撮影した登録画像、及び右照射の照合画像1を撮影した登録画像も登録画像群に含めておくことが好ましい。
【0134】
図19は、
図13(A)に示したスマートフォン6で検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0135】
このうち、
図19(A)は、
図13(A)のスマートフォン6で上照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0136】
図19(B)は、
図13(A)のスマートフォン6で右照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0137】
図15(A)に示したスマートフォン6の場合、ユーザが
図15(B)に示したような左照射の検査画像9を撮影しなくてもいいように、上照射の照合画像1を撮影した登録画像、及び右照射の照合画像1を撮影した登録画像も登録画像群に含めておくことが好ましい。
【0138】
図20は、
図15(A)に示したスマートフォン6で検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0139】
このうち、
図20(A)は、
図15(A)のスマートフォン6で上照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0140】
図20(B)は、
図15(A)のスマートフォン6で右照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0141】
図16(A)に示したスマートフォン6の場合、ユーザが
図16(B)及び
図16(C)に示したような左照射及び下照射の検査画像9を撮影しなくてもいいように、上照射の照合画像1を撮影した登録画像、及び右照射の照合画像1を撮影した登録画像も登録画像群に含めておくことが好ましい。
【0142】
図21は、
図16(A)に示したスマートフォン6で検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0143】
このうち、
図21(A)は、
図16(A)のスマートフォン6で上照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0144】
図21(B)は、
図16(A)のスマートフォン6で右照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0145】
図17(A)に示したスマートフォン6の場合、ユーザが
図17(C)に示したような下照射の検査画像9を撮影しなくてもいいように、上照射の照合画像1を撮影した登録画像、及び右照射の照合画像1を撮影した登録画像も登録画像群に含めておくことが好ましい。
【0146】
図22は、
図17(A)に示したスマートフォン6で検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0147】
このうち、
図22(A)は、
図17(A)のスマートフォン6で上照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0148】
図22(B)は、
図17(A)のスマートフォン6で右照射の検査画像9を撮影する場合のスマートフォン6の配置の一例を示す図である。
【0149】
また、例えば
図11(A)に示したスマートフォン6の場合、ユーザは
図11(B)に示したスマートフォン6の配置で検査画像9を撮影するよりも、
図11(C)、
図18(A)、及び
図18(B)に示したスマートフォン6の配置で検査画像9を撮影する方が、検査画像9を撮影しやすい。したがって、ユーザは
図11(A)に示したスマートフォン6を用いる場合、上照射、右照射、及び下照射のうち、何れか2つの光の照射方向で検査画像9を撮影する可能性が高くなる。
【0150】
この場合、各照合画像1の登録画像群として、それぞれ上照射の照合画像1を撮影した登録画像、右照射の照合画像1を撮影した登録画像、下照射の照合画像1を撮影した登録画像、及び左照射の照合画像1を撮影した登録画像を登録画像DB13に登録しておけば、上下左右何れかの照射方向で撮影した撮影画像であって、光の照射方向が異なる2枚の撮影画像が照合装置10に送信されてきても、照合装置10は、検査画像9が照合画像1の複製画像2であるか否かを判定した上で、検査画像9と照合画像1の照合を行うことができる。
【0151】
すなわち、カメラ6Aと光源6Bがどのように配置されているスマートフォン6であっても、スマートフォン6で撮影された撮影画像に含まれる検査画像9と照合画像1の照合が行えるように、照合装置10の登録画像DB13には、例えば上照射、右照射、下照射、及び左照射のように少なくとも光の照射方向が異なる4枚の登録画像を含む登録画像群を照合画像1毎に登録しておくことが好ましい。
【0152】
一方で、カメラ6Aと光源6Bが直交配置となっているスマートフォン6で上照射、右照射、下照射、及び左照射の各検査画像9を撮影する場合、
図10~
図13、
図18、及び
図19に示したように、ユーザはスマートフォン6を横方向又は縦方向に配置して撮影すればよいが、カメラ6Aと光源6Bが傾斜配置となっているスマートフォン6で上照射、右照射、下照射、及び左照射の各検査画像9を撮影する場合、
図14~
図17、及び
図20~
図22に示したように、ユーザは検査画像9に対してスマートフォン6を斜め方向に配置して撮影しなければならない状況が発生する。
【0153】
ユーザは、スマートフォン6が斜め方向に配置されるようにスマートフォン6を持つよりも、スマートフォン6が横方向又は縦方向に配置されるようにスマートフォン6を持つ方が持ちやすく、かつ、操作しやすい傾向がある。
【0154】
したがって、ユーザがカメラ6Aと光源6Bが傾斜配置となっているスマートフォン6を横方向又は縦方向に配置して検査画像9を撮影することを想定し、当該スマートフォン6を横方向又は縦方向に配置した場合における光源6Bの光の照射方向と同じ照射方向で撮影した登録画像も登録画像群として、照合画像1毎に登録画像DB13に登録しておくことが好ましい。
【0155】
なお、スマートフォン6を横方向に配置するとは、スマートフォン6の輪郭線の長辺がユーザの視野内で左右方向に沿って見えるように配置することであり、スマートフォン6を縦方向に配置するとは、スマートフォン6の輪郭線の長辺がユーザの視野内で上下方向に沿って見えるように配置することをいう。また、スマートフォン6を斜め方向に配置するとは、スマートフォン6の輪郭線の長辺と、ユーザの視野内の左右方向に沿って仮想的に設定した水平線との成す角度が90度以外の角度となるようにスマートフォン6を配置することをいう。
【0156】
図23は、
図14に示した傾斜配置のスマートフォン6を横方向又は縦方向に配置した配置例を示す図である。
【0157】
図23(A)は、カメラ6Aが上側に来るようにしてスマートフォン6を縦方向に配置した配置例を示す図である。この場合、スマートフォン6の光源6Bは、左照射となる光の照射方向に対して、光の照射方向を検査画像9の周囲に沿って反時計方向に45度ずらした方向(「左斜め下方向」という)から検査画像9に光を照射する(「左斜め下照射」という)ことになる。
【0158】
図23(B)は、カメラ6Aが左側に来るようにしてスマートフォン6を横方向に配置した配置例を示す図である。この場合、スマートフォン6の光源6Bは、下照射となる光の照射方向に対して、光の照射方向を検査画像9の周囲に沿って反時計方向に45度ずらした方向(「右斜め下方向」という)から検査画像9に光を照射する(「右斜め下照射」という)ことになる。
【0159】
図23(C)は、カメラ6Aが右側に来るようにしてスマートフォン6を横方向に配置した配置例を示す図である。この場合、スマートフォン6の光源6Bは、上照射となる光の照射方向に対して、光の照射方向を検査画像9の周囲に沿って反時計方向に45度ずらした方向(「左斜め上方向」という)から検査画像9に光を照射する(「左斜め上照射」という)ことになる。
【0160】
なお、カメラ6Aが下側に来るようにして
図23に示すスマートフォン6を縦方向に配置した場合、スマートフォン6の光源6Bは、右照射となる光の照射方向に対して、光の照射方向を検査画像9の周囲に沿って反時計方向に45度ずらした方向(「右斜め上方向」という)から検査画像9に光を照射する(「右斜め上照射」という)ことになる。しかしながら、この場合、スマートフォン6を上下逆転させて持つ必要があるため、
図23に示した各配置におけるスマートフォン6の操作性に比べてスマートフォン6の操作性が劣る。したがって、
図23に示すような傾斜配置のスマートフォン6の場合、照合装置10の登録画像DB13には、上照射、右照射、下照射、及び左照射の照合画像1を撮影した4枚の登録画像に加えて、例えば左斜め下照射、右斜め下照射、及び左斜め上照射の照合画像1を撮影した登録画像を登録画像群として登録しておけばよい。
【0161】
図24は、
図15に示した傾斜配置のスマートフォン6を横方向又は縦方向に配置した配置例を示す図である。
【0162】
図24(A)は、カメラ6Aが上側に来るようにしてスマートフォン6を縦方向に配置した配置例を示す図である。この場合、スマートフォン6の光源6Bは、右斜め下方向から検査画像9に光を照射することになる。
【0163】
図24(B)は、カメラ6Aが左側に来るようにしてスマートフォン6を横方向に配置した配置例を示す図である。この場合、スマートフォン6の光源6Bは、右斜め上方向から検査画像9に光を照射することになる。
【0164】
図24(C)は、カメラ6Aが右側に来るようにしてスマートフォン6を横方向に配置した配置例を示す図である。この場合、スマートフォン6の光源6Bは、左斜め下方向から検査画像9に光を照射することになる。
【0165】
なお、カメラ6Aが下側に来るようにして
図24に示すスマートフォン6を縦方向に配置した場合、スマートフォン6の光源6Bは、左斜め上方向から検査画像9に光を照射することになる。しかしながら、この場合、スマートフォン6を上下逆転させて持つ必要があるため、
図24に示した各配置におけるスマートフォン6の操作性に比べてスマートフォン6の操作性が劣る。したがって、
図24に示すような傾斜配置のスマートフォン6の場合、照合装置10の登録画像DB13には、上照射、右照射、下照射、及び左照射の照合画像1を撮影した4枚の登録画像に加えて、例えば右斜め下照射、右斜め上照射、及び左斜め下照射の照合画像1を撮影した登録画像を登録画像群として登録しておけばよい。
【0166】
図25は、
図16に示した傾斜配置のスマートフォン6を横方向又は縦方向に配置した配置例を示す図である。
【0167】
図25(A)は、カメラ6Aが上側に来るようにしてスマートフォン6を縦方向に配置した配置例を示す図である。この場合、スマートフォン6の光源6Bは、右斜め上方向から検査画像9に光を照射することになる。
【0168】
図25(B)は、カメラ6Aが右側に来るようにしてスマートフォン6を横方向に配置した配置例を示す図である。この場合、スマートフォン6の光源6Bは、右斜め下方向から検査画像9に光を照射することになる。
【0169】
図25(C)は、カメラ6Aが左側に来るようにしてスマートフォン6を横方向に配置した配置例を示す図である。この場合、スマートフォン6の光源6Bは、左斜め上方向から検査画像9に光を照射することになる。
【0170】
なお、カメラ6Aが下側に来るようにして
図25に示すスマートフォン6を縦方向に配置した場合、スマートフォン6の光源6Bは、左斜め下方向から検査画像9に光を照射することになる。しかしながら、この場合、スマートフォン6を上下逆転させて持つ必要があるため、
図25に示した各配置におけるスマートフォン6の操作性に比べてスマートフォン6の操作性が劣る。したがって、
図25に示すような傾斜配置のスマートフォン6の場合、照合装置10の登録画像DB13には、上照射、右照射、下照射、及び左照射の照合画像1を撮影した4枚の登録画像に加えて、例えば右斜め上照射、右斜め下照射、及び左斜め上照射の照合画像1を撮影した登録画像を登録画像群として登録しておけばよい。
【0171】
図26は、
図17に示した傾斜配置のスマートフォン6を横方向又は縦方向に配置した配置例を示す図である。
【0172】
図26(A)は、カメラ6Aが上側に来るようにしてスマートフォン6を縦方向に配置した配置例を示す図である。この場合、スマートフォン6の光源6Bは、左斜め上方向から検査画像9に光を照射することになる。
【0173】
図26(B)は、カメラ6Aが左側に来るようにしてスマートフォン6を横方向に配置した配置例を示す図である。この場合、スマートフォン6の光源6Bは、左斜め下方向から検査画像9に光を照射することになる。
【0174】
図26(C)は、カメラ6Aが右側に来るようにしてスマートフォン6を横方向に配置した配置例を示す図である。この場合、スマートフォン6の光源6Bは、右斜め上方向から検査画像9に光を照射することになる。
【0175】
なお、カメラ6Aが下側に来るようにして
図26に示すスマートフォン6を縦方向に配置した場合、スマートフォン6の光源6Bは、右斜め下方向から検査画像9に光を照射することになる。しかしながら、この場合、スマートフォン6を上下逆転させて持つ必要があるため、
図26に示した各配置におけるスマートフォン6の操作性に比べてスマートフォン6の操作性が劣る。したがって、
図26に示すような傾斜配置のスマートフォン6の場合、照合装置10の登録画像DB13には、上照射、右照射、下照射、及び左照射の照合画像1を撮影した4枚の登録画像に加えて、例えば左斜め上照射、左斜め下照射、及び右斜め上照射の照合画像1を撮影した登録画像を登録画像群として登録しておけばよい。
【0176】
当然のことながら、
図23~
図26に示した各スマートフォン6を上下逆転させて持って検査画像9を撮影するユーザがいることも考慮すれば、照合装置10の登録画像DB13には、上照射、右照射、下照射、及び左照射の照合画像1を撮影した4枚の登録画像と、左斜め上照射、左斜め下照射、右斜め上照射、及び右斜め下照射の照合画像1を撮影した4枚の登録画像の合計8枚の登録画像を、照合画像1毎の登録画像群として登録してもよい。
【0177】
ここでは一例として上照射、右照射、下照射、及び左照射の照合画像1を撮影する場合の光の各照射方向に対して、光の照射方向をそれぞれ照合画像1の周囲に沿って反時計方向に45度ずらした方向から照合画像1に光を照射して撮影した画像を登録画像としたが、例えば30度や70度のように光の照射方向をそれぞれ照合画像1の周囲に沿って反時計方向に90度未満の範囲でずらした方向から照合画像1に光を照射して登録画像を撮影してもよい。また、照合画像1毎の登録画像群として登録される登録画像の枚数にも制限はない。
【0178】
上照射、右照射、下照射、及び左照射を行う光の照射方向に対して、光の照射方向をそれぞれ照合画像1の周囲に沿って反時計方向に90度未満の範囲でずらした方向から照合画像1に光を照射して撮影した登録画像は追加画像の一例である。したがって、左斜め上照射、左斜め下照射、右斜め上照射、及び右斜め下照射の照合画像1を撮影した4枚の登録画像も追加画像の一例となる。
【0179】
なお、登録画像群に上照射、右照射、下照射、及び左照射の照合画像1を撮影した登録画像は必ずしも必要ではなく、左斜め上照射、左斜め下照射、右斜め上照射、及び右斜め下照射の照合画像1を撮影した登録画像だけであってもよい。
【0180】
こうした照合装置10は、コンピュータ20を用いて構成することができる。
図27は、コンピュータ20における電気系統の要部構成例を示す図である。
【0181】
コンピュータ20は、
図7に示した照合装置10の各機能部を担うプロセッサの一例であるCPU(Central Processing Unit)21、コンピュータ20を照合装置10として機能させる照合プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)22、CPU21の一時的な作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)23、不揮発性メモリ24、及び入出力インターフェース(I/O)25を備える。CPU21、ROM22、RAM23、不揮発性メモリ24、及びI/O25はバス26を介して各々接続されている。
【0182】
不揮発性メモリ24は、不揮発性メモリ24に供給される電力が遮断されても、記憶した情報が維持される記憶装置の一例である。したがって、登録画像DB13は、例えば不揮発性メモリ24に構築される。
【0183】
不揮発性メモリ24には半導体メモリが用いられるがハードディスクを用いてもよい。また、不揮発性メモリ24は必ずしもコンピュータ20に内蔵されている必要はなく、例えばコンピュータ20に着脱可能な可搬型の記憶装置であってもよい。
【0184】
I/O25には、例えば通信ユニット27、入力ユニット28、及び表示ユニット29が接続される。
【0185】
通信ユニット27は通信回線8に接続され、スマートフォン6との間でデータ通信を行う通信プロトコルを備える。
【0186】
入力ユニット28は、照合装置10の操作者の指示を受け付けてCPU21に通知する装置であり、例えばボタン、タッチパネル、キーボード、及びマウス等が用いられる。
【0187】
表示ユニット29は、CPU21によって処理された情報を視覚的に表示する装置の一例であり、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等が用いられる。
【0188】
次に、照合装置10における検査画像9と照合画像1の照合処理について説明する。
【0189】
図28は、ユーザのスマートフォン6から、光の照射方向を変えて同じ検査画像9を撮影した複数の撮影画像を受け付けた場合に、照合装置10のCPU21によって実行される照合処理の一例を示すフローチャートである。
【0190】
照合処理を規定する照合プログラムは、例えば照合装置10のROM22に予め記憶されている。照合装置10のCPU21は、ROM22に記憶される照合プログラムを読み込み、照合処理を実行する。
【0191】
ここでは一例として、スマートフォン6から2枚の撮影画像を受け付けた例について説明する。
【0192】
まず、ステップS10において、CPU21は、何れか一方の撮影画像を選択し、選択した撮影画像に含まれる検査画像9と、登録画像DB13に登録されている登録画像に含まれる照合画像1との類似度を公知の照合アルゴリズムを用いて算出し、検査画像9に類似する照合画像1を含んだ登録画像が存在するか否かを判定する。
【0193】
なお、検査画像9と照合画像1が類似するとは、例えば2つの画像の特徴を比較するために各々の画像に予め設定した複数の比較領域のうち、特徴が一致する比較領域の数が基準値以上となることをいう。
【0194】
説明の便宜上、以降では、検査画像9に類似する照合画像1を含んだ登録画像のことを「類似登録画像」という。
【0195】
類似登録画像が存在しないということは、検査画像9は登録画像DB13に登録されている何れの登録画像に含まれる照合画像1とも類似していないということになる。すなわち、検査画像9は照合画像1ではないということになる。この場合、ステップS50に移行する。
【0196】
ステップS50において、CPU21は、照合結果を「照合失敗」に設定した上で、通信ユニット27を経由してスマートフォン6に照合結果を送信し、
図28に示した照合処理を終了する。
【0197】
一方、ステップS10の判定処理で検査画像9に類似する類似登録画像が存在すると判定された場合には、ステップS20に移行する。
【0198】
この場合、検査画像9は類似登録画像に含まれる照合画像1である可能性があるが、検査画像9が類似登録画像に含まれる照合画像1の複製画像2である場合も考えられる。仮に、ステップS10で選択した一方の撮影画像に含まれる検査画像9(「一方の検査画像9」という)が真正の照合画像1であるならば、他方の撮影画像に含まれる検査画像9(「他方の検査画像9」という)に類似した類似登録画像が、一方の検査画像9に類似した類似登録画像が含まれる登録画像群の中に存在するはずである。
【0199】
したがって、ステップS20において、CPU21は、一方の検査画像9に類似した類似登録画像が含まれる登録画像群を登録画像DB13から取得する。
【0200】
ステップS30において、CPU21は、ステップS20で取得した登録画像群の中に、一方の検査画像9に類似した類似登録画像とは異なる登録画像であって、他方の検査画像9に類似した類似登録画像が存在するか否かを判定する。他方の検査画像9に類似した類似登録画像が存在する場合にはステップS40に移行する。
【0201】
この場合、光の照射方向を変えて撮影された複数の検査画像9が、同じ照合画像1の異なる光の照射方向における各々の模様と類似するということになるため、複数の撮影画像に含まれる検査画像9は、真正の照合画像1を撮影した画像ということになる。
【0202】
したがって、ステップS40において、CPU21は、照合結果を「照合成功」に設定した上で、通信ユニット27を経由してスマートフォン6に照合結果を送信し、
図28に示した照合処理を終了する。
【0203】
一方、ステップS30の判定処理で他方の検査画像9に類似した類似登録画像が存在しないと判定された場合は、ステップS50に移行する。
【0204】
この場合、検査画像9が光の照射方向に応じた照合画像1の模様と同じ模様を表していないことになるため、スマートフォン6で撮影された検査画像9は照合画像1の複製画像2であると考えられる。したがって、CPU21は、照合結果を「照合失敗」に設定した上で、通信ユニット27を経由してスマートフォン6に照合結果を送信し、
図28に示した照合処理を終了する。
【0205】
ここでは照合装置10が、光の照射方向を変えて同じ検査画像9を撮影した2枚の撮影画像をスマートフォン6から取得する例について説明したが、照合装置10が照合画像1との照合に用いる撮影画像の枚数は2枚に限られず、3枚以上であってもよい。この場合、ユーザがスマートフォン6で検査画像9を撮影した際に照射した光の照射方向と同じ照射方向で撮影した登録画像が必ずしも登録画像群に含まれない場合も考えられる。したがって、少なくとも2枚以上の撮影画像に含まれる検査画像9にそれぞれ類似する類似登録画像を含む特定の登録画像群があれば、照合装置10は、スマートフォン6で撮影された検査画像9を当該特定の登録画像群に対応した真正の照合画像1であると判定すればよい。
【0206】
照合画像1毎に、照合画像1の周囲に沿ったあらゆる方向から光を照射して撮影した登録画像群が存在するという条件の下では、照合装置10は、特定の登録画像群がすべての撮影画像に含まれる検査画像9にそれぞれ類似する類似登録画像を含む場合に、スマートフォン6で撮影された検査画像9は当該特定の登録画像群に対応した真正の照合画像1であると判定してもよい。
【0207】
ここまで、照合画像1が黒色の粉体で形成されている画像表面の構成を元に説明してきたが、前述したように、照合画像1は銀色の粉体で形成されてもよく、また、黒色と銀色の粉体を混ぜ合わせて形成されたものであってもよい。黒色及び銀色の粉体は、他の色の粉体に比べて粉体の色と反射光とのコントラストが大きくなる傾向がある。粉体の色と反射光とのコントラストが大きくなるほど、光の照射方向によって照合画像1に現れる模様の違いがはっきり認識できるようになるため、照合画像1は、黒色及び銀色の少なくとも一方の粉体を用いて形成されることが好ましい。
【0208】
なお、黒色とは、RGB値=(0、0、0)の色(黒色の「基準色」という)、及び黒色の基準色からのずれがR、G、Bの何れの値も許容範囲内にある色をいう。許容範囲とは、RGB値が基準色からずれていたとしても基準色と同じ色であるとみなされるような基準色からの最大ずれ量のことをいう。したがって、銀色とは、銀色の基準色であるRGB値=(192、192、192)の色、及び銀色の基準色からのずれがR、G、Bの何れの値も許容範囲内にある色をいう。
【0209】
上記では、照合画像1が銀色の粉体であってもよいことを説明したが、照合画像1は、銀色の粉体を混合して構成した材料を物体の表面に付着して形成されたものであってもよい。銀色の粉体の混合割合によっては、照合画像1の色は必ずしもRGB値で定義された銀色にならない場合があるが、光の照射方向によって照合画像1に現れる模様の違いが認識できる。
【0210】
なお、スマートフォン6で撮影した検査画像9と照合画像1の照合を照合装置10で行う例について説明したが、照合装置10で実行する照合プログラムをスマートフォン6で実行して、スマートフォン6で検査画像9と照合画像1の照合を行うようにしてもよい。
【0211】
以上、実施形態を用いて照合装置10の一態様について説明したが、開示した照合装置10の形態は一例であり、照合装置10の形態は実施形態に記載の範囲に限定されない。本開示の要旨を逸脱しない範囲で実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、当該変更又は改良を加えた形態も開示の技術的範囲に含まれる。例えば、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、
図28に示した照合処理の順序を変更してもよい。
【0212】
また、上記の実施形態において、一例として照合処理をソフトウェアで実現する形態について説明した。しかしながら、
図28に示したフローチャートと同等の処理をハードウェアで処理させるようにしてもよい。この場合、照合処理をソフトウェアで実現した場合と比較して処理の高速化が図られる。
【0213】
上記の実施形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU21)や、専用のプロセッサ(例えば GPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0214】
また、上記の実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は上記の実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0215】
上記の実施形態では、ROM22に照合プログラムが記憶されている例について説明したが、照合プログラムの記憶先はROM22に限定されない。本開示の照合プログラムは、コンピュータ20で読み取り可能な記憶媒体に記録された形態で提供することも可能である。例えば照合プログラムをCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)及びDVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)のような光ディスクに記録した形態で提供してもよい。また、照合プログラムを、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びメモリカードのような可搬型の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。ROM22、不揮発性メモリ24、CD-ROM、DVD-ROM、USB、及びメモリカードは非一時的(non-transitory)記憶媒体の一例である。
【0216】
更に、照合装置10は、通信ユニット27を通じて、通信回線8に接続された図示しない外部装置から照合プログラムをダウンロードし、ダウンロードした照合プログラムを記憶装置に記憶してもよい。この場合、照合装置10のCPU21は、図示しない外部装置からダウンロードした照合プログラムを記憶装置から読み込んで照合処理を実行する。
【符号の説明】
【0217】
1 照合画像
2 複製画像
3A~3D グラフ
4 記録媒体
5 照合システム
6 スマートフォン
6A (スマートフォンの)カメラ
6B (スマートフォンの)光源
7 無線基地局
8 通信回線
9 検査画像
10 照合装置
11 通信部
12 照合部
13 登録画像DB
15 専用機材
15A (専用機材の)カメラ
15B (専用機材の)光源
20 コンピュータ
21 CPU
22 ROM
23 RAM
24 不揮発性メモリ
25 I/O
26 バス
27 通信ユニット
28 入力ユニット
29 表示ユニット
φ 照射角
H 撮影距離
W デバイス距離