(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】サセプタ、炭化珪素エピタキシャル層の成長方法および炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20241112BHJP
C30B 25/12 20060101ALI20241112BHJP
C30B 29/36 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H01L21/205
C30B25/12
C30B29/36 A
(21)【出願番号】P 2020216479
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎薗 太郎
【審査官】原島 啓一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/207942(WO,A1)
【文献】特開2015-053393(JP,A)
【文献】特開2006-041028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/469
H01L 21/67-21/683
H01L 21/86
C23C 16/00-16/56
C30B 1/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を配置するための凹部が設けられたサセプタであって、
主面と、
前記主面に連なる内周面と、
前記内周面に連なる底面とを備え、
前記凹部は、前記内周面と前記底面とによって構成されており、
前記内周面は、前記底面に対して垂直に延びる第1側面部と、前記第1側面部および前記主面の各々に連なる第2側面部とを含み、
前記主面に対して垂直な断面において、前記第2側面部は、湾曲
状であり、
且つ、外側に凸であ
る、サセプタ。
【請求項2】
前記第2側面部の曲率半径は、0.05mm以上1mm以下である、請求項
1に記載のサセプタ。
【請求項3】
基板を配置するための凹部が設けられたサセプタであって、
主面と、
前記主面に連なる内周面と、
前記内周面に連なる底面とを備え、
前記凹部は、前記内周面と前記底面とによって構成されており、
前記内周面は、前記底面に対して垂直に延びる第1側面部と、前記第1側面部および前記主面の各々に連なる第2側面部とを含み、
前記主面に対して垂直な断面において、前記第2側面部は、
直線状であり、
且つ、前記主面および前記第1側面部の各々に対して傾斜してお
り、
前記主面に対して垂直な方向において、前記第1側面部の高さは、前記第2側面部の高さよりも大きい、サセプタ。
【請求項4】
前記主面、前記内周面および前記底面の各々は、炭化珪素により構成されている、請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載のサセプタ。
【請求項5】
前記主面の算術平均粗さは、3μm以下である、請求項1
から請求項4のいずれか1項に記載のサセプタ。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載のサセプタを準備する工程と、
前記サセプタに炭化珪素基板を配置する工程と、
前記炭化珪素基板上に炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程とを備えた、炭化珪素エピタキシャル層の成長方法。
【請求項7】
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載のサセプタを準備する工程と、
前記サセプタに炭化珪素基板を配置する工程と、
前記炭化珪素基板上に炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程とを備えた、炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サセプタ、炭化珪素エピタキシャル層の成長方法および炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2005-311290号公報(特許文献1)には、少なくとも表面が炭化珪素で構成されたサセプタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、寿命を長くすることができるサセプタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係るサセプタは、基板を配置するための凹部が設けられたサセプタであって、主面と、内周面と、底面とを備えている。内周面は、主面に連なっている。底面は、内周面に連なっている。凹部は、内周面と底面とによって構成されている。内周面は、底面に対して垂直に延びる第1側面部と、第1側面部および主面の各々に連なる第2側面部とを含んでいる。主面に対して垂直な断面において、第2側面部は、湾曲状または直線状である。第2側面部が湾曲状の場合、第2側面部は、外側に凸である。第2側面部が直線状の場合、第2側面部は、主面および第1側面部の各々に対して傾斜している。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、寿命を長くすることができるサセプタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るサセプタの構成を示す平面模式図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線に沿った断面模式図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態に係るサセプタの構成を示す断面模式図である。
【
図4】
図4は、第3実施形態に係るサセプタの構成を示す断面模式図である。
【
図5】
図5は、第4実施形態に係るサセプタの構成を示す断面模式図である。
【
図6】
図6は、比較例に係るサセプタを用いてエピタキシャル成長を行った状態を示す断面模式図である。
【
図7】
図7は、実施例に係るサセプタを用いてエピタキシャル成長を行った状態を示す断面模式図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル層の成長方法を概略的に示すフロー図である。
【
図9】
図9は、サセプタに炭化珪素基板を配置する工程を示す一部断面模式図である。
【
図10】
図10は、炭化珪素基板上に炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程を示す一部断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の概要]
まず本開示の実施形態の概要について説明する。本明細書の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示す。結晶学上の指数が負であることは、通常、数字の上に”-”(バー)を付すことによって表現されるが、本明細書では数字の前に負の符号を付すことによって結晶学上の負の指数を表現する。
【0009】
(1)本開示に係るサセプタ100は、基板を配置するための凹部6が設けられたサセプタ100であって、主面5と、内周面3と、底面4とを備えている。内周面3は、主面5に連なっている。底面4は、内周面3に連なっている。凹部6は、内周面3と底面4とによって構成されている。内周面3は、底面4に対して垂直に延びる第1側面部1と、第1側面部1および主面5の各々に連なる第2側面部2とを含んでいる。主面5に対して垂直な断面において、第2側面部2は、湾曲状または直線状である。第2側面部2が湾曲状の場合、第2側面部2は、外側に凸である。第2側面部2が直線状の場合、第2側面部2は、主面5および第1側面部1の各々に対して傾斜している。
【0010】
(2)上記(1)に係るサセプタ100によれば、主面5、内周面3および底面4の各々は、炭化珪素により構成されていてもよい。
【0011】
(3)上記(1)または(2)に係るサセプタ100によれば、主面5の算術平均粗さは、3μm以下であってもよい。
【0012】
(4)上記(1)から(3)のいずれかに係るサセプタ100によれば、第2側面部2は、湾曲状であってもよい。第2側面部2の曲率半径は、0.05mm以上1mm以下であってもよい。
【0013】
(5)上記(1)から(3)のいずれかに係るサセプタ100によれば、第2側面部2は、直線状であってもよい。主面5に対して垂直な方向において、第2側面部2の高さは、0.05mm以上1mm以下であってもよい。
【0014】
(6)上記(1)から(5)のいずれかに係るサセプタ100によれば、主面5に対して垂直な方向において、第1側面部1の高さは、第2側面部2の高さよりも大きくてもよい。
【0015】
(7)本開示に係る炭化珪素エピタキシャル層の成長方法は、以下の工程を備えている。上記(1)から(6)のいずれかに記載のサセプタが準備される。サセプタに炭化珪素基板が配置される。炭化珪素基板上に炭化珪素エピタキシャル層が形成される。
【0016】
(8)本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法は、以下の工程を備えている。上記(1)から(6)のいずれかに記載のサセプタが準備される。サセプタに炭化珪素基板が配置される。炭化珪素基板上に炭化珪素エピタキシャル層が形成される。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の実施形態の詳細について説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
【0018】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係るサセプタ100の構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係るサセプタ100の構成を示す平面模式図である。
図1に示されるように、第1実施形態に係るサセプタ100には、基板を配置するための凹部6が設けられている。基板は、たとえば炭化珪素基板である。サセプタ100は、炭化珪素基板上に炭化珪素エピタキシャル層を形成する際に使用される。サセプタ100は、たとえばCVD(Chemical Vapor Deposition)装置において使用される。サセプタ100は、たとえばグラファイト製であってもよいし、炭化珪素製であってもよい。
【0019】
図2は、
図1のII-II線に沿った断面模式図である。
図2に示す断面は、主面5に対して垂直である。
図1および
図2に示されるように、サセプタ100は、主面5と、内周面3と、底面4とを主に有している。内周面3は、主面5に連なっている。底面4は、内周面3に連なっている。凹部6は、内周面3と底面4とによって構成されている。内周面3は、第1側面部1と、第2側面部2とを有している。第1側面部1は、底面4に連なっている。第1側面部1は、底面4に対して垂直に延びている。
【0020】
図2に示されるように、第2側面部2は、第1側面部1および主面5の各々に連なっている。別の観点から言えば、第2側面部2の一端は第1側面部1に連なっており、かつ第2側面部2の他端は第1側面部1に連なっている。主面5に対して垂直な方向において、第2側面部2は、第1側面部1と主面5との間に位置している。径方向において、第2側面部2は、第1側面部1と主面5との間に位置している。なお、径方向とは、主面5に対して平行な方向であって、かつ凹部6の中心から外部に向かう方向である。
【0021】
図1に示されるように、主面5に対して垂直な方向に見て、内周面3は、直線状部32と、円弧状部31とを有していてもよい。円弧状部31は、直線状部32に連なっている。上記においては、内周面3は、直線状部32と円弧状部31とを有している場合について説明したが、本実施形態は上記に限定されない。内周面3は、円弧状部31のみを有しており、直線状部32を有していなくてもよい。
【0022】
図2に示されるように、主面5に対して垂直な断面において、第2側面部2は、湾曲状であってもよい。別の観点から言えば、主面5と内周面3との境界は、R面取りされて形成されている。第2側面部2は、円弧状であってもよい。第2側面部2が湾曲状の場合、第2側面部2は、外側に凸である。
【0023】
第2側面部2の曲率半径Rは、たとえば0.05mm以上1mm以下である。第2側面部2の曲率半径Rの下限は、特に限定されないが、たとえば0.1mm以上であってもよいし、0.2mm以上であってもよい。第2側面部2の曲率半径Rの上限は、特に限定されないが、たとえば0.9mm以下であってもよいし、0.8mm以下であってもよい。第2側面部2の曲率半径Rは、特に好ましくは、0.1mm以上0.7mm以下である。加工の制御性および長寿命化が両立するからである。第2側面部2の曲率半径Rは、特に好ましくは、0.2mm以上0.6mm以下である。加工の制御性および長寿命化が両立するからである。
【0024】
図2に示されるように、主面5に対して垂直な方向において、第1側面部1の高さ(第1高さH1)は、第2側面部2の高さ(第2高さH2)よりも大きくてもよい。主面5に対して垂直な方向において、底面4から主面5までの高さは、第3高さH3である。第3高さH3は、凹部6の深さに対応する。第1高さH1は、第3高さH3の半分よりも大きくてもよい。第2高さH2は、第3高さH3の半分よりも小さくてもよい。第1高さH1の上限は、特に限定されないが、たとえば第2高さH2の2倍以下であってもよいし、第2高さH2の3倍以下であってもよい。第2高さH2は、好ましくは第3高さH3の10%以上60%以下である。第2高さH2は、特に好ましくは第3高さH3の20%以上50%以下である。
【0025】
主面5の算術平均粗さ(Ra)は、たとえば3μm以下である。主面5の算術平均粗さ(Ra)の上限は、特に限定されないが、たとえば2.7μm以下であってもよいし、2.4μm以下であってもよい。主面5の算術平均粗さ(Ra)の下限は、特に限定されないが、たとえば0.1μm以下であってもよいし、0.3μm以下であってもよい。
【0026】
次に、算術平均粗さ(Ra)の測定方法について説明する。算術平均粗さ(Ra)は、たとえば原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope)を用いて測定することができる。原子間力顕微鏡としては、たとえばVeeco社製の「Dimension300」を用いることができる。カンチレバー(探針)としては、たとえばBruker社製の型式「NCHV-10V」を用いることができる。
【0027】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るサセプタ100の構成について説明する。第2実施形態に係るサセプタ100は、第2側面部2が直線状である点において、第1実施形態に係るサセプタ100と異なっており、その他の構成については、第1実施形態に係るサセプタ100と同様である。以下、第1実施形態に係るサセプタ100と異なる構成を中心に説明する。
【0028】
図3は、第2実施形態に係るサセプタ100の構成を示す断面模式図である。
図3に示される断面図は、
図1のII-II線に沿った断面図に対応する。
図3に示されるように、第2側面部2は、直線状であってもよい。別の観点から言えば、主面5と内周面3との境界は、C面取りされて形成されている。
図3に示されるように、第2側面部2は、主面5および第1側面部1の各々に対して傾斜している。直線状の第2側面部2の一端は、主面5に連なっている。直線状の第2側面部2の他端は、第1側面部1に連なっている。
【0029】
第1側面部1と第2側面部2とがなす角度(傾斜角θ1)は、90°よりも大きく180°よりも小さい。傾斜角θ1の下限は、特に限定されないが、たとえば100°以上であってもよいし、110°以上であってもよい。傾斜角θ1の上限は、特に限定されないが、たとえば170°以下であってもよいし、160°以下であってもよい。
【0030】
図3に示されるように、主面5に対して垂直な方向において、第2側面部2の高さ(第2高さH2)は、たとえば0.05mm以上1mm以下であってもよい。第2高さH2の下限は、特に限定されないが、たとえば0.1mm以上であってもよいし、0.2mm以上であってもよい。第2高さH2の上限は、特に限定されないが、たとえば0.9mm以下であってもよいし、0.8mm以下であってもよい。第2高さH2は、特に好ましくは0.15mm以上0.6mm以下である。加工の制御性および長寿命化が両立するからである。第2高さH2は、特に好ましくは0.2mm以上0.5mm以下である。加工の制御性および長寿命化が両立するからである。第2高さH2は、好ましくは第3高さH3の10%以上60%以下である。第2高さH2は、特に好ましくは第3高さH3の20%以上50%以下である。
【0031】
図3に示されるように、径方向において、第2側面部2の幅は、第1幅Wである。第1幅Wは、第2高さH2と同じであってもよい。第1幅Wは、第2高さH2よりも大きくてもよいし、第2高さH2よりも小さくてもよい。第1幅Wが第2高さH2よりも大きい場合、傾斜角θ1は135°より小さくなる。第1幅Wが第2高さH2よりも小さい場合、傾斜角θ1は135°より大きくなる。
【0032】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係るサセプタ100の構成について説明する。第3実施形態に係るサセプタ100は、第1部材10と第2部材20とを有している点において、第1実施形態に係るサセプタ100と異なっており、その他の構成については、第1実施形態に係るサセプタ100と同様である。以下、第1実施形態に係るサセプタ100と異なる構成を中心に説明する。
【0033】
図4は、第3実施形態に係るサセプタ100の構成を示す断面模式図である。
図4に示される断面図は、
図1のII-II線に沿った断面図に対応する。
図4に示されるように、サセプタ100は、第1部材10と、第2部材20とを有している。第2部材20は、第1部材10に接している。第2部材20は、第1部材10を覆っている。第1部材10は、たとえばグラファイトである。第2部材20は、炭化珪素である。サセプタ100は、たとえばグラファイトを炭化珪素でコーティングしたものである。
【0034】
図4に示されるように、主面5、内周面3および底面4の各々は、第2部材20によって構成されている。別の観点から言えば、主面5、内周面3および底面4の各々は、炭化珪素により構成されている。主面5、内周面3および底面4の各々は、第1部材10から離間している。主面5上における第2部材20の厚み(第1厚みT1)は、第1高さH1よりも小さくてもよい。同様に、主面5上における第2部材20の厚み(第1厚みT1)は、第2高さH2よりも小さくてもよい。第2部材20の厚み(第1厚みT1)は、例えば100μmである。
【0035】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係るサセプタ100の構成について説明する。第4実施形態に係るサセプタ100は、第1部材10と第2部材20とを有している点において、第2実施形態に係るサセプタ100と異なっており、その他の構成については、第2実施形態に係るサセプタ100と同様である。以下、第1実施形態に係るサセプタ100と異なる構成を中心に説明する。
【0036】
図5は、第4実施形態に係るサセプタ100の構成を示す断面模式図である。
図5に示される断面図は、
図1のII-II線に沿った断面図に対応する。
図5に示されるように、サセプタ100は、第1部材10と、第2部材20とを有している。第2部材20は、第1部材10に接している。第2部材20は、第1部材10を覆っている。第1部材10は、たとえばグラファイトである。第2部材20は、炭化珪素である。サセプタ100は、たとえばグラファイトを炭化珪素でコーティングしたものである。
【0037】
図5に示されるように、主面5、内周面3および底面4の各々は、第2部材20によって構成されている。別の観点から言えば、主面5、内周面3および底面4の各々は、炭化珪素により構成されている。主面5、内周面3および底面4の各々は、第1部材10から離間している。主面5上における第2部材20の厚み(第1厚みT1)は、第1高さH1よりも小さくてもよい。同様に、主面5上における第2部材20の厚み(第1厚みT1)は、第2高さH2よりも小さくてもよい。第2部材20の厚み(第1厚みT1)は、例えば100μmである。
【0038】
次に、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル層の成長方法について説明する。
【0039】
図8は、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル層の成長方法を概略的に示すフロー図である。
図8に示されるように、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル層の成長方法は、サセプタを準備する工程(S10)と、サセプタに炭化珪素基板を配置する工程(S20)と、炭化珪素基板上に炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程(30)とを主に有している。
【0040】
まず、サセプタを準備する工程(S10)が実施される。サセプタを準備する工程(S10)においては、第1実施形態から第4実施形態のいずれかに係るサセプタ100が準備される。
【0041】
次に、サセプタに炭化珪素基板を配置する工程(S20)が実施される。
図9は、サセプタ100に炭化珪素基板51を配置する工程を示す一部断面模式図である。
図9に示されるように、サセプタ100の凹部6に炭化珪素基板51が配置される。炭化珪素基板51は、表面61と、裏面62と、外周面63とを有している。裏面62は、表面61の反対側にある。外周面63は、表面61および裏面62の各々に連なっている。
【0042】
炭化珪素基板51の裏面62は、凹部6の底面4に接する。炭化珪素基板51の外周面63は、凹部6の内周面3に対向する。外周面63は、内周面3に取り囲まれている。外周面63の下部は、第1側面部1に対向する。外周面63の上部は、第2側面部2に対向する。炭化珪素基板51の厚み(第2厚みT2)は、第3高さH3よりも小さくてもよい。
【0043】
次に、炭化珪素基板上に炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程(30)が実施される。
図10は、炭化珪素基板上に炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程を示す一部断面模式図である。まず、炭化珪素基板51がサセプタ100の凹部6に配置された状態で、炭化珪素基板51およびサセプタ100が、たとえば1600℃以上1700℃以下の温度まで加熱される。
【0044】
次に、たとえばシランとプロパンとアンモニアと水素とを含む混合ガスが、炭化珪素基板51上に供給される。シランの流量は、たとえば46sccmとなるように調整される。プロパンの流量は、たとえば28sccmとなるように調整される。水素の流量は、100slmとなるように調整される。これにより、炭化珪素基板51の表面61上に炭化珪素エピタキシャル層52がエピタキシャル成長によって形成される。炭化珪素エピタキシャル層52の厚み(第3厚みT3)は、たとえば5μm以上100μm以下である。以上により、炭化珪素基板51と、炭化珪素エピタキシャル層52とを有する炭化珪素エピタキシャル基板50が製造される。
【0045】
次に、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法について説明する。本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法は、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル層の成長方法と実質的に同じである。具体的には、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法は、サセプタを準備する工程(S10)と、サセプタに炭化珪素基板を配置する工程(S20)と、炭化珪素基板上に炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程(30)とを主に有している。各工程の詳細は上述の通りである。
【0046】
次に、本実施形態に係るサセプタ100の作用効果について説明する。
【0047】
図6は、比較例に係るサセプタ100を用いてエピタキシャル成長を行った状態を示す断面模式図である。
図6に示されるように、サセプタ100の主面5と内周面3とがなす角度θ2は90°である。比較例に係るサセプタ100を使用して炭化珪素基板51上に炭化珪素エピタキシャル層52をエピタキシャル成長により形成すると、サセプタ100の主面5と内周面3との境界付近に炭化珪素堆積物40が成長する。炭化珪素堆積物40は、主面5と内周面3との境界付近から凹部6の中心側に向かって成長する。炭化珪素堆積物40は、強固にサセプタ100に付着しており、取り除くことは困難である。
【0048】
炭化珪素堆積物40は、エピタキシャル成長を繰り返す毎に成長する。主面5と平行な方向において、炭化珪素堆積物40が凹部6に突出する幅は、エピタキシャル成長した炭化珪素エピタキシャル層52の厚み(第3厚みT3)の2.5倍程度である。炭化珪素堆積物40が大きくなると、炭化珪素堆積物40は、サセプタ100の凹部6に配置された炭化珪素エピタキシャル基板50に接触する。炭化珪素堆積物40が炭化珪素エピタキシャル基板50に接触すると、炭化珪素エピタキシャル基板50に応力がかかる。これにより、炭化珪素エピタキシャル基板50が破損するおそれがある。従って、炭化珪素堆積物40が大きくなったサセプタ100は、次回のエピタキシャル成長において使用することができない。結果として、サセプタ100の寿命が短くなる。
【0049】
図7は、実施例に係るサセプタ100を用いてエピタキシャル成長を行った状態を示す断面模式図である。
図7に示されるように、サセプタ100の第1側面部1と第2側面部2とがなす角度は135°である。
図7に示されるように、実施例に係るサセプタ100を使用して炭化珪素基板51上に炭化珪素エピタキシャル層52をエピタキシャル成長により形成すると、炭化珪素堆積物40は、第1側面部1上において成長する。第1側面部1上における炭化珪素堆積物40の厚みは、凹部6の中心に向かうにつれて小さくなる。そのため、第1側面部1と第2側面部2との境界付近から凹部6の中心側に向かって炭化珪素堆積物40が成長することを抑制することができる。
【0050】
本実施形態に係るサセプタ100によれば、凹部6は、内周面3と底面4とによって構成されている。内周面3は、底面4に対して垂直に延びる第1側面部1と、第1側面部1および主面5の各々に連なる第2側面部2とを含んでいる。主面5に対して垂直な断面において、第2側面部2は、湾曲状または直線状である。第2側面部2が湾曲状の場合、第2側面部2は、外側に凸である。第2側面部2が直線状の場合、第2側面部2は、主面5および第1側面部1の各々に対して傾斜している。これにより、第1側面部1と第2側面部2との境界付近から凹部6の中心側に向かって炭化珪素堆積物40が成長することを抑制することができる。結果として、サセプタ100の寿命を長くすることができる。
【0051】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
1 第1側面部
2 第2側面部
3 内周面
4 底面
5 主面
6 凹部
10 第1部材
20 第2部材
31 円弧状部
32 直線状部
40 炭化珪素堆積物
50 炭化珪素エピタキシャル基板
51 炭化珪素基板
52 炭化珪素エピタキシャル層
61 表面
62 裏面
63 外周面
100 サセプタ
H1 第1高さ
H2 第2高さ
H3 第3高さ
R 曲率半径
T1 第1厚み
T2 第2厚み
T3 第3厚み
W 第1幅
θ1 傾斜角
θ2 角度