(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】スパークプラグ
(51)【国際特許分類】
H01T 13/04 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
H01T13/04
(21)【出願番号】P 2020216798
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】高田 健一朗
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-103353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 7/00-23/00
F02P 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に軸孔(121)を有する筒状の絶縁碍子(12)と、
前記絶縁碍子の先端部から突出するように前記軸孔の先端側に挿入されて保持される中心電極(13)と、
前記中心電極と所定の隙間を有して配置され、前記中心電極との間に火花放電を形成する接地電極(14)と、
前記絶縁碍子の基端部から突出するように前記軸孔の基端側に挿入されて保持される円柱状の端子金具(18)と、
前記軸孔の内部において前記中心電極と前記端子金具との間に配置される抵抗層(15)と、
前記軸孔の内部において前記端子金具と前記抵抗層との間に配置され、前記端子金具と前記抵抗層とを電気的に接続する導電性シール層(17)と、を備え、
前記端子金具の先端部には、
前記端子金具の中心軸に沿って延びるように形成され、前記端子金具の中心軸を中心とする周方向に所定の間隔を空けて配置される複数の脚部(183)が設けられ、
複数の前記脚部は、前記導電性シール層に埋め込まれて
おり、
前記端子金具は、
外周面にねじ山が形成されるねじ部(181)と、前記ねじ部の先端部から外径が徐々に大きくなるように形成される肩部(182)と、を備え、
複数の前記脚部は、前記肩部の底面から前記端子金具の中心軸に平行に延びるように形成されている、
スパークプラグ。
【請求項2】
前記端子金具の先端部には、
複数の前記脚部として、前記端子金具の中心軸を中心とする周方向に等角度間隔で配置される4つの前記脚部が設けられている
請求項1に記載のスパークプラグ。
【請求項3】
前記肩部には、
複数の前記脚部の間に形成される隙間に貫通する複数の切り欠き(Sc1~Sc4)が形成されている
請求項
1に記載のスパークプラグ。
【請求項4】
前記脚部の先端部には、テーパ面(183a)が形成されている
請求項1~
3のいずれか一項に記載のスパークプラグ。
【請求項5】
前記脚部の外周面には、ねじ山が形成されている
請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
【請求項6】
前記脚部は、湾曲した形状を有している
請求項
5に記載のスパークプラグ。
【請求項7】
内部に軸孔(121)を有する筒状の絶縁碍子(12)と、
前記絶縁碍子の先端部から突出するように前記軸孔の先端側に挿入されて保持される中心電極(13)と、
前記中心電極と所定の隙間を有して配置され、前記中心電極との間に火花放電を形成する接地電極(14)と、
前記絶縁碍子の基端部から突出するように前記軸孔の基端側に挿入されて保持される円柱状の端子金具(18)と、
前記軸孔の内部において前記中心電極と前記端子金具との間に配置される抵抗層(15)と、
前記軸孔の内部において前記端子金具と前記抵抗層との間に配置され、前記端子金具と前記抵抗層とを電気的に接続する導電性シール層(17)と、を備え、
前記端子金具の先端部から前記端子金具の基端部に向かう方向を所定方向とするとき、
前記端子金具には、
前記端子金具の先端面から前記端子金具の中心軸に沿って前記所定方向に延びるように形成されて、前記端子金具の外周面に貫通する複数の貫通孔(187)が形成され、
前記端子金具の先端部は、
複数の前記貫通孔に前記導電性シール層が流れ込むようにして前記導電性シール層に埋め込まれている
スパークプラグ。
【請求項8】
前記端子金具には、複数の前記貫通孔として、前記端子金具の中心軸を中心とする周方向に等角度間隔で配置される4つの貫通孔が形成されている
請求項
7に記載のスパークプラグ。
【請求項9】
前記端子金具の先端面は円錐状に形成されている
請求項
7又は8に記載のスパークプラグ。
【請求項10】
前記端子金具は、
前記先端部において円錐状の先端面が形成される端部とは反対側の端部に連続するように形成され、前記先端部よりも小さい外径を有する縮径部(185)を更に備え、
前記貫通孔は、
前記端子金具の先端面から前記先端部の内部を貫通する貫通部(187a)と、
前記貫通部に繋がるように前記縮径部の外周面に形成される溝部(187b)と、を有する
請求項
9に記載のスパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1に記載のスパークプラグがある。特許文献1に記載のスパークプラグは、絶縁碍子、端子金具、中心電極、導電性シール層、及び抵抗層を備えている。絶縁碍子は筒状に形成されており、その内部に軸孔を有している。端子金具は、その基端部が絶縁碍子の一端部から突出するように絶縁碍子の軸孔に挿入されている。中心電極は、その先端部が絶縁碍子の他端部から突出するように絶縁碍子の軸孔に挿入されている。絶縁碍子の軸孔において端子金具の先端部と中心電極の基端部との間には導電性シール層及び抵抗層が介在している。端子金具の先端部は導電性シール層に圧入されている。特許文献1に記載のスパークプラグでは、端子金具の先端部の全周にR面又はC面を形成することにより、端子金具の先端部を導電性シール層に圧入する際に、その先端部に曲げ等の変形が生じ難くなるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、スパークプラグの小型化が進んでいるため、絶縁碍子の軸孔の内径が小さくなるとともに、それに伴って端子金具の外径が小さくなってきている。結果的に、端子金具の剛性が低くなっているため、特許文献1に記載されるように端子金具の先端部にR面又はC面を形成したとしても、端子金具の先端部を導電性シール層に圧入する際に、端子金具の先端部が曲がり易くなっている。仮に端子金具の先端部が曲がると、その先端部の外周の一部が軸孔の内周面に接近するとともに、端子金具の先端部の外周の一部とは反対側の部分が軸孔の内周面から離間することとなる。結果的に、絶縁碍子の軸孔の内周面に対して端子金具の先端部が接近する部分では、端子金具の先端部により導電性シール層及び抵抗層がスパークプラグの先端部側に向かって押し込まれる。一方、絶縁碍子の軸孔の内周面に対して端子金具の先端部が離間する部分では、それらの間の隙間が拡がることになるため、その隙間に向かって、すなわちスパークプラグの基端部側に向かって導電性シール層及び抵抗層のそれぞれの一部が流動する。
【0005】
このように、導電性シール層及び抵抗層において、スパークプラグの先端部に向かって押し込まれる部分と、スパークプラグの基端部に向かって流動する部分とが形成されると、それらの境界部分にせん断力が発生する可能性がある。このようなせん断力は抵抗層に亀裂を生じさせ、結果として抵抗層に導通不良を発生させる要因となる。抵抗層に導通不良が発生すると、スパークプラグにおいて火花放電を形成することができず、エンジンの失火等、車両の走行中に不具合が発生する懸念がある。
【0006】
本開示は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、抵抗層に亀裂が発生し難くすることが可能なスパークプラグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するスパークプラグは、筒状の絶縁碍子(12)と、中心電極(13)と、接地電極(14)と、円柱状の端子金具(18)と、抵抗層(15)と、導電性シール層(17)と、を備える。絶縁碍子は、内部に軸孔(121)を有する。中心電極は、絶縁碍子の先端部から突出するように軸孔の先端側に挿入されて保持される。接地電極は、中心電極と所定の隙間を有して配置され、中心電極との間に火花放電を形成する。端子金具は、絶縁碍子の基端部から突出するように軸孔の基端側に挿入されて保持される。抵抗層は、軸孔の内部において中心電極と端子金具との間に配置される。導電性シール層は、軸孔の内部において端子金具と抵抗層との間に配置され、端子金具と抵抗層とを電気的に接続する。端子金具の先端部には、複数の脚部(183)が設けられる。複数の脚部は、端子金具の中心軸に沿って延びるように形成され、端子金具の中心軸を中心とする周方向に所定の間隔を空けて配置される。複数の脚部は、導電性シール層に埋め込まれている。
【0008】
この構成によれば、複数の脚部を導電性シール層に圧入する際に、複数の脚部がガイドとなって端子金具の先端部が導電性シール層に埋め込まれるため、端子金具の先端部が曲がり難くなる。結果的に、端子金具の先端部が曲がることに起因して抵抗層にせん断力が発生するような状況を回避できるため、抵抗層に亀裂が生じ難くなる。
【0009】
また、上記課題と解決する他のスパークプラグは、筒状の絶縁碍子(12)と、中心電極(13)と、接地電極(14)と、円柱状の端子金具(18)と、抵抗層(15)と、導電性シール層(17)と、を備える。絶縁碍子は、内部に軸孔(121)を有する。中心電極は、絶縁碍子の先端部から突出するように軸孔の先端側に挿入されて保持される。接地電極は、中心電極と所定の隙間を有して配置され、中心電極との間に火花放電を形成する。端子金具は、絶縁碍子の基端部から突出するように軸孔の基端側に挿入されて保持される。抵抗層は、軸孔の内部において中心電極と端子金具との間に配置される。導電性シール層は、軸孔の内部において端子金具と抵抗層との間に配置され、端子金具と抵抗層とを電気的に接続する。端子金具には、複数の貫通孔(187)が形成されている。端子金具の先端部から端子金具の基端部に向かう方向を所定方向とするとき、貫通孔は、端子金具の先端面から端子金具の中心軸に沿って所定方向に延びるように形成されている。端子金具の先端部は、複数の貫通孔に導電性シール層が流れ込むようにして導電性シール層に埋め込まれている。
【0010】
この構成によれば、端子金具の先端部を導電性シール層に圧入する際に、端子金具の先端部に形成された貫通孔に導電性シール層が流れることにより、端子金具の先端部に加わる圧力を低減することができる。結果的に、端子金具の先端部を導電性シール層に圧入する際に端子金具の先端部が曲がり難くなる。よって、端子金具の先端部が曲がることに起因して抵抗層にせん断力が発生するような状況を回避できるため、抵抗層に亀裂が生じ難くなる。
【0011】
なお、上記手段、特許請求の範囲に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明の効果】
【0012】
本開示のスパークプラグによれば、抵抗層に亀裂を発生し難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1実施形態のスパークプラグの破断断面構造を示す断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の端子金具の先端部の正面構造を示す正面図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線に沿った断面構造を示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図2のIV-IV線に沿った断面構造を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図2のV-V線に沿った断面構造を示す断面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態のスパークプラグの製造工程の一部を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1実施形態のスパークプラグの製造工程の一部を示す断面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態のスパークプラグの製造工程の一部を示す断面図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態のスパークプラグの製造工程の一部を示す断面図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態の変形例の端子金具の先端部の正面構造を示す正面図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態の変形例のスパークプラグの製造工程の一部を示す断面図である。
【
図13】
図13(A)~(C)は、第1実施形態の変形例のスパークプラグの製造工程の一部を示す断面図である。
【
図14】
図14は、第1実施形態の変形例のスパークプラグの製造工程の一部を示す断面図である。
【
図15】
図15は、第1実施形態の変形例の端子金具の先端部の正面構造を示す正面図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態の端子金具の正面構造を示す正面図である。
【
図18】
図18は、第2実施形態の端子金具の底面構造を示す底面図である。
【
図19】
図19は、第2実施形態の変形例の端子金具の正面構造を示す正面図である。
【
図20】
図20は、第2実施形態の変形例の端子金具の底面構造を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、スパークプラグの一実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
<第1実施形態>
はじめに、スパークプラグの第1実施形態について説明する。
図1に示される本実施形態のスパークプラグ10は、車両のエンジンヘッドに取り付けられて、電圧の印加に基づき火花放電を形成することによりエンジンの気筒内の混合気を着火するために用いられる。スパークプラグ10は、ハウジング11と、絶縁碍子12と、中心電極13と、接地電極14とを備えている。
【0015】
ハウジング11は、炭素鋼等の金属材料により、スパークプラグ10の中心軸m10を中心に円筒状に形成されている。ハウジング11の内部には、絶縁碍子12の下端部が同軸上に挿入されている。
絶縁碍子12は、アルミナ等の絶縁材料により中心軸m10を中心に円筒状に形成されている。絶縁碍子12の外周部分にはハウジング11が一体的に組み付けられている。絶縁碍子12の内部には軸孔121が形成されている。軸孔121は、絶縁碍子12の中心軸m10に沿って絶縁碍子12の先端部122から基端部123を貫通するように形成されている。軸孔121には、中心電極13、抵抗層15、導電性シール層16,17、及び端子金具18が挿入されて保持されている。
【0016】
中心電極13は、絶縁碍子12の先端部から突出するように軸孔121の先端側に挿入されて保持されている。具体的は、中心電極13は電極母材131と電極チップ132とを有している。電極母材131は、耐熱性に優れるニッケル(Ni)合金等により、中心軸m10を中心に円柱状に形成されている。電極母材131の先端部は絶縁碍子12の下端から露出している。電極チップ132は電極母材131の先端部に接合されている。電極チップ132は、中心軸m10を中心に円柱状に形成されている。電極チップ132は、高融点で耐消耗性に優れたイリジウム(Ir)を主材料として、イリジウムの高温揮発性を抑制するためにロジウム(Rh)を含むイリジウム合金等により形成されている。
【0017】
抵抗層15は、中心電極13の基端部と端子金具18の先端部との間に配置されている。抵抗層15は、導電性材料を含む抵抗体材料、例えばカーボン粉末とガラス粉末とを含むカーボンレジスタンスガラス粉末等を混合することにより構成されている。第1導電性シール層16は中心電極13と抵抗層15との間に配置されている。第2導電性シール層17は端子金具18と抵抗層15との間に配置されている。各導電性シール層16,17は、金属粉末とガラス粉末とを含む導電性ガラス材料、例えば銅ガラス粉末等を混合することにより構成されている。抵抗層15は、導電性シール層16,17を介して中心電極13及び端子金具18に電気的に接続されている。したがって、中心電極13及び端子金具18は、導電性シール層16,17及び抵抗層15を介して互いに電気的に接続されている。
【0018】
端子金具18は、中心軸m10を中心に略円柱状に形成されている。端子金具18は、例えば鋼材により構成されている。端子金具18の一端部には端子部180が形成されている。端子金具18は、端子部180が絶縁碍子12の基端側から突出するように軸孔121の基端側に挿入されて保持されている。本実施形態では、端子部180が端子金具18の基端部に相当する。
【0019】
接地電極14は電極母材141と貴金属チップ142とを有している。電極母材141はニッケル合金等により形成されている。電極母材141はハウジング11の下端面に一体的に取り付けられている。電極母材141はハウジング11の下端面から湾曲して延びるように形成されている。電極母材141の先端部は中心電極13の電極チップ132に対向するように位置している。貴金属チップ142は電極母材141の先端部に接合されている。貴金属チップ142は、イリジウム合金や白金合金等の貴金属合金、例えばPt-20Ir材等により形成されている。貴金属チップ142は、所定の隙間を有して中心電極13の電極チップ132に対向して配置されている。
【0020】
このスパークプラグ10では、高電圧を印加する外部回路が端子金具18の端子部180に接続される。外部回路により端子金具18の端子部180に高電圧が印加されると、中心電極13の電極チップ132と接地電極14の貴金属チップ142との間に火花放電が形成される。このスパークプラグ10が形成する火花放電によりエンジンの気筒内の混合気を着火することにより混合気が燃焼する。
【0021】
次に、
図2~
図5を参照して、端子金具18の先端部の構造について詳しく説明する。
図2に示されるように、端子金具18の先端部18aには、ねじ部181と、肩部182と、複数の脚部183とが形成されている。
【0022】
ねじ部181は、中心軸m10を中心に円柱状に形成されている。ねじ部181の外周面には、ねじ山が形成されている。
肩部182は、ねじ部181の先端部から外径が徐々に大きくなるように形成される部分であって、中心軸m10を中心に円錐台状に形成されている。
【0023】
脚部183は、肩部182の底面から中心軸m10に平行に延びるように形成されている。
図3に示されるように、脚部183は、中心軸m10を中心とする周方向αにおいて等角度間隔で、具体的には90度間隔で4つ配置されている。各脚部183は円弧状に形成されており、同一の形状を有している。4つの脚部183のそれぞれの内周面は、中心軸m10を中心とする同一円周Ca上に位置している。4つの脚部183のそれぞれの外周面は、中心軸m10を中心とする同一円周Cb上に位置している。円周Cbの直径は、絶縁碍子12の軸孔121の内径よりも僅かに小さい値に設定されている。すなわち、各脚部183の外径は絶縁碍子12の軸孔121の内径よりも僅かに小さい。
【0024】
図4に示されるように、各脚部183の先端部は、先端に向かうほど薄肉になるように形成されている。これにより、各脚部183の先端部の内周部分にはテーパ面183aが形成されている。
なお、以下では、各脚部183の内側に形成される空間、より詳細には
図3に示される円周Caの内部に形成される円筒状の空間を「内部空間Sa」と称する。また、各脚部183の間に形成される隙間、より詳細には円周Caと円周Cbとの間に形成される4つの隙間を「隙間Sb1~Sb4」と称する。
【0025】
図5に示されるように、肩部182には、各脚部183の間に形成される4つの隙間Sb1~Sb4から肩部182の側面182aに貫通するように4つの切り欠きSc1~Sc4が形成されている。
次に、本実施形態のスパークプラグ10の製造工程、特に絶縁碍子12に対する中心電極13、抵抗層15、導電性シール層16,17、及び端子金具18の組み付け工程について具体的に説明する。
【0026】
図6に示されるように、スパークプラグ10の製造工程では、まず、絶縁碍子12の内部に中心電極13を挿入する(ステップS10)。具体的には、
図1に示される絶縁碍子12の基端部123に形成される軸孔121の開口部121aから軸孔121の内部に中心電極13を挿入する。その後、第1導電性シール層16を形成するための粉体を軸孔121の開口部121aから軸孔121の内部に投入して(ステップS11)、この粉体を所定の治具を用いて加圧する(ステップS12)。さらに、抵抗層15を形成するための粉体の投入(ステップS13)、粉体の加圧(ステップS14)、第2導電性シール層17を形成するための粉体の投入(ステップS15)、及び粉体の加圧(ステップS16)を順に行う。これにより、
図7に示されるように、絶縁碍子12の内部に、中心電極13、第1導電性シール層16の粉体、抵抗層15の粉体、及び第2導電性シール層17の粉体が順に積層された状態になる。
【0027】
その後、
図6に示されるように、絶縁碍子12の軸孔121の開口部121aから軸孔121の内部に端子金具18を投入して(ステップS17)、端子金具18を加圧する(ステップS18)。この際、端子金具18の脚部183の先端部にテーパ面183aが形成されているため、
図8に示されるように、端子金具18の脚部183の先端部が第2導電性シール層17の粉体に差し込まれる。
【0028】
続いて、
図6に示されるように、絶縁碍子12の外部から熱を加えることにより、抵抗層15の粉体及び導電性シール層16,17の粉体を加熱する(ステップS19)。これにより、抵抗層15の粉体及び導電性シール層16,17の粉体が軟化して流動性を有するようになる。この状態で、所定の治具を用いて端子金具18の端子部180に圧力を加えることにより、端子金具18の先端部18aを第2導電性シール層17に圧入する(ステップS20)。この際、高温の第2導電性シール層17が端子金具18の脚部183の内部空間Sa及び隙間Sb1~Sb4に流動しつつ端子金具18の脚部183が第2導電性シール層17に押し込まれる。また、端子金具18の脚部183の外周面が絶縁碍子12の軸孔121の内周面に沿って移動することにより、脚部183が、第2導電性シール層17への端子金具18の挿入をガイドする。よって、端子金具18のねじ部181が曲がることを抑制しつつ、端子金具18のねじ部181を第2導電性シール層17に圧入することができる。
【0029】
さらに端子金具18が押し込まれて第2導電性シール層17が肩部182の底面に達すると、第2導電性シール層17が肩部182の切り欠きSc1~Sc4を通り抜けてねじ部181の外周面に流動する。結果的に、
図9に示されるように、ねじ部181の外周面に第2導電性シール層17が位置する程度まで端子金具18が第2導電性シール層17に圧入される。
【0030】
このようにして端子金具18の先端部18aを第2導電性シール層17に圧入した後、
図6に示されるように、絶縁碍子12を冷却する(ステップS21)。これにより、第1導電性シール層16、抵抗層15、及び第2導電性シール層17が硬化して、絶縁碍子12に対する中心電極13、抵抗層15、導電性シール層16,17、及び端子金具18の組み付けが完了する。
【0031】
以上説明した本実施形態のスパークプラグ10によれば、以下の(1)~(4)に示される作用及び効果を得ることができる。
(1)複数の脚部183を導電性シール層17に圧入する際に、複数の脚部183がガイドとなって端子金具18の先端部18aが導電性シール層17に埋め込まれるため、端子金具18の先端部18aが曲がり難くなる。結果的に、抵抗層15にせん断力が発生することを回避できるため、抵抗層15に亀裂が発生し難くなる。これにより、抵抗層15に導通不良が発生し難くなるため、エンジンの失火等の不具合が発生する可能性が低くなる。
【0032】
(2)端子金具18の先端部18aには、中心軸m10を中心とする周方向αに等角度間隔で4つの脚部183が設けられている。この構成によれば、4つの脚部183が導電性シール層17に圧入される際に、各脚部183に均一な圧力が加わり易くなるため、端子金具18の先端部18aが更に曲がり難くなる。よって、抵抗層15に亀裂が更に発生し難くなる。
【0033】
(3)端子金具18は、外周面にねじ山が形成されるねじ部181と、ねじ部181の先端部から外径が徐々に大きくなるように形成される肩部182とを有している。4つの脚部183は、肩部182の底面から端子金具18の中心軸m10に平行に延びるように形成されている。肩部182には、4つの脚部183の間に形成される4つの隙間Sb1~Sb4から肩部182の側面182aに貫通するように4つの切り欠きSc1~Sc4が形成されている。この構成によれば、
図9に示されるように、端子金具18を導電性シール層17に圧入した際に、導電性シール層17がねじ部181の外周面まで流動するため、ねじ部181の外周面の凹凸に導電性シール層17が食い込むようになる。これにより、中心軸m10に平行な方向における端子金具18の変位に対して導電性シール層17が抵抗として機能するようになるため、絶縁碍子12からの端子金具18の抜けを抑制することが可能となる。
【0034】
(4)脚部183の先端部にはテーパ面183aが形成されている。この構成によれば、脚部183を導電性シール層17に差し込み易くなるため、端子金具18の先端部18aが更に曲がり難くなる。よって、抵抗層15に亀裂が更に生じ難くなる。
(変形例)
次に、第1実施形態のスパークプラグ10の変形例について説明する。
【0035】
図10及び
図11に示されるように、本変形例の端子金具18では、そのねじ部181に対して十字状の切削加工及び円筒状の切削加工を施すことにより4つの脚部183が形成されている。したがって、各脚部183の外周面には、ねじ山が形成されている。
図11に示されるように、4つの脚部183のそれぞれの内周面は、中心軸m10を中心とする同一円周Cc上に位置している。また、4つの脚部183のそれぞれの外周面は、中心軸m10を中心とする同一円周Cd上に位置している。円周Cdの直径は絶縁碍子12の軸孔121の内径よりも小さい。すなわち、各脚部183の外径は絶縁碍子12の軸孔121の内径よりも小さい。したがって、
図12に示されるように、端子金具18の先端部18aが導電性シール層17に圧入される前の時点では、脚部183の外周面と絶縁碍子12の軸孔121の内周面との間には隙間が形成されている。
【0036】
本変形例のスパークプラグ10では、
図6に示されるステップS18において端子金具18を加圧することにより、
図12に示されるように端子金具18の脚部183の先端部を導電性シール層17の粉体に差し込んだ後に、ステップS19の加熱工程及びステップS20の端子金具18の圧入工程が行われる。ステップS20の圧入工程では、端子金具18の脚部183の先端部の変形が導電性シール層17により抑制されたまま、脚部183の中央部付近が
図13(A)~(C)に示されるように変形する。すなわち、各脚部183の中央部付近が、各脚部183の内部空間Saに流動した導電性シール層17から受ける抗力と熱とにより、外側に押し拡げられるように変形する。これにより、
図13(C)に示されるように、各脚部183の外周面が絶縁碍子12の軸孔121の内周面に接触する。これにより、
図14に示されるように、複数の脚部183がガイドとして機能しつつ端子金具18の先端部18aを導電性シール層17に圧入することができるため、端子金具18の先端部18aが曲がり難くなる。よって、第1実施形態のスパークプラグ10と同一又は類似の作用及び効果を得ることができる。
【0037】
また、本変形例のスパークプラグ10のように、脚部183の外周面にねじ山が形成されている構成であれば、従来の端子金具18のねじ部181に切削加工を施すだけで、
図10に示されるような脚部183を有する端子金具18を成形することができる。すなわち、従来の端子金具18を流用することができるため、製造が容易になる。
【0038】
なお、本変形例のスパークプラグ10では、
図15及び
図16に示されるように端子金具18のねじ部181を十字状に切削加工することにより4つの脚部183を形成してもよい。すなわち、
図15及び
図16に示される脚部183は、その内側が円筒状に切削加工されていない点で、
図10及び
図11に示される脚部183と異なる。
図15及び
図16に示されるような脚部183を有する端子金具18を用いた場合であっても、
図10及び
図11に示されるような円弧状の脚部183を有する端子金具18を用いる場合と同一又は類似の作用及び効果をえることができる。また、
図11及び
図16に示されるように端子金具18の先端部18aに脚部183を形成する際の加工方法を適宜変更することにより、脚部183の剛性や形状を任意に変更することができる。これにより、脚部183の拡がり易さや、導電性シール層17に対する圧入性等を調整することができる。
【0039】
<第2実施形態>
次に、スパークプラグ10の第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態のスパークプラグ10との相違点を中心に説明する。
図17に示されるように、本実施形態の端子金具18では、その先端部184が、中心軸m10を中心とする円柱状に形成されている。絶縁碍子12の軸孔121の内径を「r0」とするとき、先端部184の外径r1は軸孔121の内径r0よりも小さい値に設定されている。より詳細には、端子金具18の先端部184と軸孔121の内周面との間に形成される隙間を「ΔC(=(r0-r1)/2)」とすると、隙間ΔCが「0[mm]<ΔC≦0.1[mm]」を満たすように先端部184の外径r1が設定されている。なお、絶縁碍子12の軸孔121の内径r0は「r0≦5[mm]」又は「r0≦3.2[mm]」に設定される。端子金具の先端部184の先端面184aは、先端に向かうほど径が小さくなるように円錐状に形成されている。
【0040】
端子金具18は、その先端部184と端子部180との間に第1縮径部185及び第2縮径部186を有している。第1縮径部185は、先端部184において円錐状の先端面184aが形成される端部とは反対側の端部に連続するように形成されている。第2縮径部186は第1縮径部185と端子部180との間に形成されている。第1縮径部185及び第2縮径部186は中心軸m10を中心に円柱状に形成されている。第1縮径部185の外径を「r2」とし、第2縮径部186の外径を「r3」とするとき、それらの外径r2,r3は、先端部184の外径r1に対して「r1>r3>r2」を満たすように設定されている。
【0041】
端子金具18には、先端部184の先端面184aからその反対側の基端面184bまで先端部184の内部を貫通するように貫通孔187が形成されている。具体的には、
図18に示されるように、貫通孔187は、中心軸m10を中心とする周方向αに等角度間隔で4つ形成されている。
図17に示されるように、端子金具18の先端部184から端子部180に向かう方向を所定方向βとするとき、各貫通孔187は、端子金具18の先端面184aから中心軸m10に沿って所定方向βに延びて端子金具18の先端部184の内部を貫通するように形成されている。貫通孔187は、端子金具18の先端面184aから端子金具18の先端部184の内部を貫通する貫通部187aと、貫通部187aに繋がるように第1縮径部185の外周面に形成される溝部187bとを有している。
【0042】
本実施形態のスパークプラグ10では、端子金具18の先端面184aが円錐状に形成されているため、
図6に示されるステップS20の処理において導電性シール層17に対する端子金具18の圧入性を向上させることができる。また、端子金具18の先端部184と絶縁碍子12の軸孔121の内周面との間に形成される隙間ΔCが狭いため、曲がることなく端子金具18を導電性シール層17に圧入することができる。
【0043】
さらに、導電性シール層17に端子金具18の先端部184を圧入する際に、導電性シール層17が先端部184の貫通孔187を通じて第1縮径部185の外周部分に流れて堆積する。そのため、
図6に示されるステップS21に示される冷却工程を経て、第1縮径部185の外周部分に存在する導電性シール層17が硬化すると、中心軸m10に平行な方向における端子金具18の変位に対して導電性シール層17が抵抗として機能するようになる。よって、絶縁碍子12からの端子金具18の抜けを抑制することが可能となる。
【0044】
以上説明した本実施形態のスパークプラグ10によれば、以下の(5)~(8)に示される作用及び効果を得ることができる。
(5)端子金具18には、その先端面184aから第1縮径部185の外周面に貫通する複数の貫通孔187が形成されている。端子金具18の先端部184は、複数の貫通孔187に導電性シール層17が流れ込むようにして導電性シール層17に埋め込まれている。この構成によれば、端子金具18の先端部184を導電性シール層17に圧入する際に、端子金具18の先端部に形成された貫通孔187に導電性シール層17が流れることにより、端子金具18の先端部184に加わる圧力を低減することができる。結果的に、端子金具18の先端部184を導電性シール層17に圧入する際に端子金具18の先端部184が曲がり難くなる。よって、端子金具18の先端部184が曲がることに起因して抵抗層15にせん断力が発生するような状況を回避できるため、抵抗層15に亀裂が生じ難くなる。
【0045】
(6)端子金具18には、中心軸m10を中心とする周方向αに等角度間隔で4つの貫通孔187が形成されている。この構成によれば、端子金具18の先端部184を導電性シール層17に圧入する際に、端子金具18の先端部184に均一な圧力が加わり易くなるため、端子金具18の先端部18aが更に曲がり難くなる。よって、抵抗層15に亀裂が更に生じ難くなる。
【0046】
(7)端子金具18の先端面184aは円錐状に形成されている。この構成によれば、端子金具18の先端部184を導電性シール層17に圧入する際に、端子金具18の先端部184に加わる圧力を更に低減することができるため、端子金具18の先端部18aが更に曲がり難くなる。よって、抵抗層15に亀裂が更に生じ難くなる。
【0047】
(8)貫通孔187は、端子金具18の先端面184aから端子金具18の先端部184の内部を貫通する貫通部187aと、貫通部187aに繋がるように第1縮径部185の外周面に形成される溝部187bとを有している。この構成によれば、端子金具18の先端面184aから貫通孔187に流入した導電性シール層17が第1縮径部185の外周部分に流れるようになるため、導電性シール層17の流動性を確保することができる。これにより、端子金具18の先端部184に加わる圧力を更に低減することができるため、端子金具18の先端部18aが更に曲がり難くなる。よって、抵抗層15に亀裂が更に生じ難くなる。
【0048】
(変形例)
次に、第2実施形態のスパークプラグ10の変形例について説明する。
図19及び
図20に示されるように、本変形例の端子金具18では、先端部184の外周面にスリットが形成される程度に貫通孔187の孔径がより大きい値に設定されている。このような構成であっても、第2実施形態のスパークプラグ10と同一又は類似の作用及び効果を得ることができる。
【0049】
<他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・第1実施形態の端子金具18に形成される脚部183の数は、4つに限らず、任意に変更可能である。要は、端子金具18の先端部18aに複数の脚部183が形成されていればよい。
【0050】
・第2実施形態の端子金具18では、貫通孔187の孔径や個数を適宜変更してもよい。貫通孔187の孔径や個数を変更することにより、例えば
図6に示されるステップS20の圧入工程において端子金具18により導電性シール層16,17及び抵抗層15を押し込む際に、導電性シール層16,17及び抵抗層15に加わる圧力を調整することが可能である。
【0051】
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0052】
Sc1~Sc4:切り欠き
10:スパークプラグ
12:絶縁碍子
13:中心電極
14:接地電極
15:抵抗層
17:導電性シール層
18:端子金具
121:軸孔
181:ねじ部
182:肩部
183:脚部
183a:テーパ面
185:縮径部
187:貫通孔
187a:貫通部
187b:溝部