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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】芯鞘複合繊維およびマルチフィラメント
(51)【国際特許分類】
   D01F 8/14 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
D01F8/14 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020571859
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2020037537
(87)【国際公開番号】W WO2021070740
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2019185219
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019195290
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松浦 知彦
(72)【発明者】
【氏名】増田 正人
(72)【発明者】
【氏名】川原 慎也
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和哉
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-088974(JP,A)
【文献】特開平08-109513(JP,A)
【文献】特開平08-260278(JP,A)
【文献】特開2016-186134(JP,A)
【文献】特公昭48-033415(JP,B1)
【文献】特公昭49-017639(JP,B1)
【文献】特開2001-131829(JP,A)
【文献】特開平01-045867(JP,A)
【文献】特公昭46-041408(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 1/00- 9/04
D02G 1/00- 3/48
D02J 1/00-13/00
D03D 1/00-27/18
D04B 1/00- 1/28,
21/00-21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯成分よりも鞘成分の方が溶剤に対する溶出速度が大きいポリマーからなる芯鞘複合繊維の繊維横断面において、断面形状が真円または楕円形状であり、凸部を3個以上有した多葉形状の芯成分を鞘成分が完全に被覆しており、鞘成分の最大厚みSmaxと最小厚みSminの比Smax/Sminが5.0以上である芯鞘複合繊維。
【請求項2】
多葉形状の芯成分において、凸部先端に芯成分の重心方向への溝を有し、芯成分重心Gから溝底Mまでの距離GMと、芯成分重心Gから凸部先端Nまでの距離GNの比GN/GMが1.1~1.5である請求項1に記載の芯鞘複合繊維。
【請求項3】
芯成分が鞘成分により2個以上に分割されており、分割された芯成分がそれぞれ多葉形状を有している請求項1または請求項2に記載の芯鞘複合繊維。
【請求項4】
鞘成分により分割された芯成分において、隣り合う芯成分が融点の異なるポリマーからなる請求項3に記載の芯鞘複合繊維。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の芯鞘複合繊維の芯成分からなるマルチフィラメントであり、平均繊維間空隙距離が10~30μmであり、そのうち繊維間空隙距離が5μm未満の割合が10~50%の空隙構造を有するマルチフィラメント
【請求項6】
空隙率が30~80%の空隙構造を有する請求項に記載のマルチフィラメント。
【請求項7】
融点の異なるポリマーで構成された2種類以上の捲縮性繊維からなり、該捲縮性繊維が均一に混在している請求項または請求項に記載のマルチフィラメント。
【請求項8】
繊維横断面において、凸部を3個以上有した多葉形状の繊維で構成される請求項から請求項のいずれか1項に記載のマルチフィラメント。
【請求項9】
繊維横断面において、凸部先端に溝を有しており、溝底Mから凸部先端Nまでの距離MNと繊維径Dの比(MN/D)が0.04~0.20の繊維で構成される請求項から請求項のいずれか1項に記載のマルチフィラメント。
【請求項10】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の芯鞘複合繊維またはマルチフィラメントが一部に含まれる繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然シルク調の高級感がある光沢を有し、軽やかで柔軟かつ反発感のあるテキスタイルを得るのに適した芯鞘複合繊維およびマルチフィラメントに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルやポリアミドなどからなる合成繊維は優れた力学特性や寸法安定性を有しているため、衣料用途から非衣料用途まで幅広く利用されている。しかし、人々の生活が多様化し、より良い生活を求めるようになった昨今では、衣料をはじめとする多くの用途で、従来の合成繊維にはない高度な風合いや機能が求められている。
【0003】
合成繊維に関わる技術開発の変遷を紐解くと、天然素材が有する特長の模倣をモチベーションとして各要素技術が進化したといっても過言ではない。これは麻、羊毛、綿、絹などの天然繊維の持つ風合いや機能が優れており、これ等が織り成す複雑な光沢や風合いを魅力的でかつ高級であると人間が感じるからである。
【0004】
このように天然素材を模倣してきた合成繊維の歴史の中でも、特に天然素材の最高級品種である絹(以下、天然シルクと記載)の特性を達成することを目的としたシルキー素材に関しては、ポリマー技術から繊維断面形状を設計したり、異繊維を混繊するなどの製糸技術まで幅広い繊維技術に関する提案がある。
【0005】
例えば、比較的高度に光を反射するポリエステル繊維の断面形状を多葉形状の異形断面とすると、多葉形状の凹凸により光の反射が増幅され、天然シルクのような高輝度でありながらマイルドな光沢を有した繊維になることが知られており、シルキー素材の代表例として多量に生産されている。しかしながら、単純な異形断面とするだけでは光沢以外の天然シルクの風合い(ドライ感、軽やか、柔軟、反発感など)を満たすことは困難な場合があり、断面形状を更に複雑化させることにより、天然シルクの風合い等を追求した複合繊維に関する繊維技術が種々開示されている。
【0006】
特許文献1では、繊維横断面において、多葉形状であると共に、多葉形状の頂点に易溶出成分を繊維内部方向へ先細り状に配置させた複合繊維が提案されている。該複合繊維においては、易溶出成分を溶出処理した際に、多葉形状の頂点に溝が配されることで、多葉形状による光の反射と溝部による摩擦力の増加により、天然シルクのような高級感のある光沢とドライ感のある触感、さらには天然シルクからなるテキスタイルの特長である絹鳴りを再現できるとしている。
【0007】
特許文献2では、繊維横断面において、易溶出成分が難溶出成分を複数個に分割した複合繊維が提案されている。該複合繊維においては、易溶出成分を溶出処理した際に1本の複合繊維が複数の異形断面繊維に分割されることで、細繊維径化による効果と異形断面化による効果が相まって、天然シルクのような高級感のある光沢やドライ感のある触感に加えて、柔軟な風合いを付与することが可能であるとしている。
【0008】
また、収縮差のある繊維を混繊したマルチフィラメントによりシルキー織編物が得られることが知られており、特許文献3では紡糸混繊方式により製造した、熱収縮率の異なる少なくとも2種の繊維群からなる収縮差混繊マルチフィラメントが提案されている。該収縮差混繊マルチフィラメントにおいては一方に共重合ポリエステルからなる繊維を用いるものであり、熱を加えた際に収縮差による繊維群間での糸長差が生じ、布帛に豊かなふくらみ等を付与し、シルキー素材とすることが可能であるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開昭57-5912号公報
【文献】特開2010-222771号公報
【文献】特開平2-19528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1のように、溶出成分を利用した特殊断面形状の形成により、光の反射や摩擦力を制御することで、天然シルク特有の高級感のある光沢やドライ感のある触感、特異な絹鳴りなどをある程度は再現できる。しかしながら、特許文献1においては、繊維間空隙が不十分になる場合があり、布帛において単繊維が密集した形で形成される。このため、衣服として着用した場合に、快適と感じる軽やかで柔軟な風合いが不足する場合があった。
【0011】
一方、特許文献2のように、溶出分割等の細繊維径化により単繊維1本1本の曲げ剛性を低下させることで布帛に柔軟性を付与する方法は、柔軟性を付与するという観点では有効である。しかしながら、特許文献2ではマルチフィラメント中に形成される空隙は限られたものになる場合があり、さらに糸径を細めたことにより布帛の組織によっては単繊維が最密充填されたものとなりやすい。このため、天然シルク特有の軽やかな風合いとするためには、布帛を精密に設計する必要があるなど、素材展開には制約になることがある。
【0012】
また、特許文献3のように、異収縮の繊維を混繊させることで布帛にふくらみを付与する方法は、ふくらみによる軽やかさが得られるという観点では有効であるものの、別々の繊維を引取時または糸加工時に混繊することから繊維の偏りが生じる場合がある。このように、繊維に偏りが発生する場合には、例えば、高収縮側の繊維が偏在している箇所では目詰まりが生じ、柔軟な風合いが損なわれることがあった。
【0013】
以上のように、合成繊維を活用したシルキー素材として、これまで種々の技術提案がなされてきたものの、天然シルクのような高級感のある光沢を有しつつ、軽やかで柔軟かつ反発感のある風合いをバランス良く発現する技術が存在するとは言い難い。そこで、本発明の目的は上記した従来技術の問題点を解消し、天然シルクに迫る良好なテキスタイルを得るのに適した芯鞘複合繊維およびマルチフィラメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、以下の手段によって達成される。すなわち、
2種類以上のポリマーからなる芯鞘複合繊維の繊維横断面において、凸部を3個以上有した多葉形状の芯成分を鞘成分が完全に被覆しており、鞘成分の最大厚みSmaxと最小厚みSminの比Smax/Sminが5.0以上である芯鞘複合繊維、
上記記載の芯鞘複合繊維の芯成分からなるマルチフィラメント、
平均繊維間空隙距離が5~30μmであり、そのうち繊維間空隙距離が5μm未満の割合が10~50%の空隙構造を有するマルチフィラメント、
上記記載の芯鞘複合繊維またはマルチフィラメントが一部に含まれる繊維製品、
である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の芯鞘複合繊維、またはマルチフィラメントを用いれば、マルチフィラメント中に天然シルクのような、繊維一本一本の間に5μm未満の微細な繊維間空隙と10μm以上の粗大な繊維間空隙が均一に混在した特異な空隙構造を形成することができ、天然シルク調の高級感がある光沢を有し、軽やかで柔軟かつ反発感のあるテキスタイルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】天然シルクの元となる蚕の繭からとれた生糸の横断面構造の概略図である。
図2】(a)(b)本発明の芯鞘複合繊維の横断面構造の概略図の例である。
図3】(a)(b)(c)従来技術の複合繊維の横断面構造の概略図の例である。
図4】(a)(b)(c)本発明の芯鞘複合繊維の横断面構造の概略図の例である。
図5】(a)(b)本発明の芯鞘複合繊維の横断面構造の概略図の例である。
図6】(a)(b)従来技術の複合繊維の横断面構造の概略図の例である。
図7】本発明のマルチフィラメントを構成する捲縮性繊維が有する捲縮形態の一例である。
図8】本発明のマルチフィラメントの横断面構造の概略図の例である。(a)は「均一に混在している」を理解するための図、(b)は平均繊維間空隙距離の測定方法を理解するための図である。
図9】(a)(b)本発明のマルチフィラメントを構成する捲縮性繊維の横断面構造の概略図の例である。
図10】(a)(b)本発明のマルチフィラメントが製造可能な芯鞘複合繊維の一例の横断面構造の概略図である。
図11】従来技術のマルチフィラメントが製造可能な複合繊維の一例の横断面構造の概略図である。
図12】本発明の芯鞘複合繊維およびマルチフィラメントの製造方法を説明するための複合口金の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について望ましい実施形態と共に詳述する。
【0018】
天然シルクの風合いの発現原理を追求するにあたって、天然シルクの製糸プロセスを見直してみると、天然シルクの元となる蚕の繭からとれた生糸の時点では、2つの三角断面の難溶出成分からなるフィブロイン(図1のa)が易溶出成分からなるセリシン(図1のb)で覆われた繊維断面形状からなっていることがわかる。天然シルクでは、この生糸からセリシンを溶出するという特異な製糸プロセスが存在しており、このセリシン溶出による繊維間空隙の発現により、天然シルク特有の軽やかで柔軟な風合いが醸し出されると考えられる。
【0019】
従来のシルキー素材でもアルカリ等の薬剤により繊維を細らせて、繊維間空隙を形成させる手法が用いられることが多いが、本発明者等はこの繊維間空隙の形成過程に着目して、天然シルク織物と従来技術によるシルキー素材の詳細観察から、天然シルクと従来素材との間にはこの形成される繊維間空隙のサイズや分布に大きな差があることを発見した。
【0020】
すなわち、天然シルクの場合には、単繊維一本一本の間に5μm未満の微細な繊維間空隙と10μm以上の粗大な繊維間空隙が均一に混在しているのに対して、従来素材では、5μm未満または10μm以上のどちらかに偏った繊維間空隙しか形成できず、この空隙形成の差こそが織編物の特性に大きく影響を与えていることを見出したのである。
【0021】
これは、繊維間空隙のサイズが10μm以上になると、織編物の結束点で固定された繊維が可動できることによる柔軟性や高い空隙率での見かけ密度の低下による軽やかさの向上効果が得られる一方、繊維間空隙のサイズが5μm以上となると曲げ剛性の低下により反発感が低下するため、5μm未満または10μm以上のどちらかに偏った繊維間空隙しか形成できない従来素材では、軽やかさや柔軟性と反発感にはトレードオフの関係が存在する。一方、軽やかさや柔軟性を担う10μm以上の粗大な繊維間空隙と、反発感を担う5μm未満の微細な繊維間空隙が均一に混在している天然シルクでは、このトレードオフの関係が解消され、軽やかで柔軟かつ反発感のある風合いをバランス良く発現することができる。
【0022】
この着想に基づいて、本発明は構成されており、上記した天然シルクが奏でる特異な繊維間空隙を形成することを目的に、本発明の複合繊維では、2種類以上のポリマーからなる芯鞘複合繊維の繊維横断面において、凸部を3個以上有した多葉形状の芯成分を鞘成分が完全に被覆していることが重要であり、本発明の第1の要件となる。
【0023】
本発明で言う芯鞘複合繊維とは、2種類以上のポリマーから構成されており、繊維軸に対して垂直方向の断面において、鞘成分が芯成分を被覆するよう設置されている断面形態を有する繊維を言う。
【0024】
本発明の芯鞘複合繊維を構成する芯成分および鞘成分としては、熱可塑性ポリマー同士であると加工性に優れるため、繊維を構成するポリマー群としては、例えばポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリスチレン系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリメタクリル酸メチル系、ポリフェニレンサルファイド系などのポリマー群およびその共重合体が好ましい。特に高い界面親和性を付与することができ、複合断面異常のない繊維が得られるという観点から、該芯鞘複合繊維に用いる熱可塑性ポリマーは全て同一ポリマー群およびその共重合体であることが好ましい。さらに天然シルクに近い曲げ剛性とできるのみならず、染色した際に良好な発色性が得られるという観点から、ポリエステル系の組合せとすることが特に好ましい範囲として挙げられる。また、酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機質、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤をポリマー中に含んでいてもよい。
【0025】
また環境問題に注目が集まる中、本発明においても植物由来のバイオポリマーやリサイクルポリマーを用いることは環境負荷低減の観点からも好適なことであり、上記した本発明に用いられるポリマーは、ケミカルリサイクル、マテリアルリサイクルおよびサーマルリサイクルのいずれの手法で再資源化されたリサイクルポリマーを用いることができる。バイオポリマーやリサイクルポリマーを用いる場合にも、ポリエステル系樹脂はそのポリマー特性として、本発明の特徴を顕著化することができ、上記した通り、天然シルクに近い曲げ剛性や良好な発色性が得られるという観点からリサイクルポリエステルは本発明に好適に用いることができる。
【0026】
ここで本発明の芯鞘複合繊維は、織り編み等の高次加工を施した後、鞘成分を溶出して芯成分からなるマルチフィラメントを得ることを目的としている。このため、鞘成分の溶出に用いる溶剤に対して、芯成分が難溶出、鞘成分が易溶出となることが好ましく、用途に応じて芯成分を選定しておき、そこから用いることができる溶剤を鑑みて前述のポリマーの中から鞘成分を選定すると好適である。この際、難溶出成分(芯成分)と易溶出成分(鞘成分)の溶剤に対する溶出速度比が大きいほど好適な組み合わせと言え、溶出速度比が3000倍までの範囲を目安にポリマーを選択すると良い。
【0027】
鞘成分としては、例えば、ポリエステルおよびその共重合体、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリスチレンおよびその共重合体、ポリエチレン、ポリビニールアルコールなどの溶融成形可能で、他の成分よりも易溶出性を示すポリマーから選択することが好適である。また、鞘成分の溶出工程を簡易化するという観点では、鞘成分は、水系溶剤あるいは熱水などに易溶出性を示す共重合ポリエステル、ポリ乳酸、ポリビニールアルコールなどが好ましく、特に、結晶性を維持しながらもアルカリ水溶液などの水系溶剤に対して易溶出性を示すため、加熱下で擦過が付与される仮撚り加工等においても、複合繊維間の融着等が起こらず高次加工通過性という観点から、5-ナトリウムスルホイソフタル酸が5mol%から15mol%が共重合されたポリエステルおよび前述した5-ナトリウムスルホイソフタル酸に加えて重量平均分子量500から3000のポリエチレングリコールが5wt%から15wt%の範囲で共重合されたポリエステルが特に好ましいポリマーとして挙げられる。
【0028】
一般的に繊維間空隙のサイズが大きくなると、織編物の結束点で固定された繊維が可動できることによる柔軟性や高い空隙率での見かけ密度の低下による軽やかさの向上効果が得られる一方、前述したように曲げ剛性の低下による反発感の低下も引き起こす。このトレードオフの関係を解消するには、軽やかさの向上効果を担う10μm以上の粗大な繊維間空隙と、柔軟性と反発感を両立する5μm未満の微細な繊維間空隙が混在することが重要であり、これを達成するには、本発明の芯鞘複合繊維において、凸部を3個以上有した多葉形状の芯成分を鞘成分が完全に被覆していることが必要となる。
【0029】
凸部を3個以上有した多葉形状の芯成分を鞘成分が完全に被覆していれば、鞘厚みの大きい多葉形状の凹部では鞘溶出により10μm以上の粗大な繊維間空隙が形成しつつ、鞘厚みの小さい凸部では5μm未満の微細な繊維間空隙を形成することが可能となるため、天然シルク特有の軽やかで柔軟な風合いを有しつつ、反発感のある風合いを達成できる。さらに繊維表面への凹凸部形成により、光の反射増幅効果も得られることから、天然シルクのような高輝度かつマイルドな光沢といった高級感のある光沢が発現できるのみならず、繊維表面に凹凸が形成され、ドライ感のある触感を得ることが出来る。この観点からすると、凸部が多いほど、繊維間空隙形成や光沢の効果、ドライ感が高まるため、例えば図2(a)に示すような凸部を3個有した3葉形状や図2(b)に示すような凸部を4個有した4葉形状が好ましい。ただし、凹凸部の数が多くなりすぎると、凹凸部の間隔が細かくなっていき、その効果は徐々に丸断面へと近似してしまうため、本発明における芯成分の多葉形状が有する凸部の実質的な上限は6個である。
【0030】
本発明の複合繊維においては、鞘成分の溶出により、隣り合う単繊維間に可動できるだけの5μm未満の微細な繊維間空隙を形成するという観点から、鞘成分の最小厚みSminと繊維径Dの比Smin/Dが0.01以上である複合繊維であることが好ましい。
【0031】
本発明において、繊維径Dとは、本発明の芯鞘複合繊維からなるマルチフィラメントをエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、繊維軸に垂直方向の繊維横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で10本以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影する。この際、金属染色を施すとポリマー間の染め差を利用して、芯成分と鞘成分の接合部のコントラストを明確にすることができる。撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した繊維の直径をμm単位で小数点1桁目まで測定し、この動作を無作為に抽出した繊維10本について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第1位を四捨五入した値を繊維径D(μm)とした。ここで繊維軸に垂直方向の繊維横断面が真円で無い場合はその面積を測定し、円換算で求められる値を採用した。
【0032】
また、本発明で言う鞘成分の最小厚みSminとは、例えば図2(a)、図5(a)に示すように、繊維横断面上に存在する芯成分1の重心G1から任意の繊維表面に向かって直線を引き、芯成分1の外周と直線との交点S1と繊維表面と直線との交点Fの距離、S1-Fを、小数点第1位まで測定した値として求め、得られた値のうち最小の値を算出するものである。この動作を無作為に抽出した繊維10本について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第1位を四捨五入した値を鞘成分の最小厚みSmin(μm)とした。ここで、例えば図4(a)、図5(b)に示すように、芯成分1の重心G1から任意の繊維表面に向かって引いた直線上に、重心を取った芯成分1とは異なる芯成分2が存在する場合には、芯成分1の外周と直線との交点S1と、芯成分2の外周と直線との交点のうちS1に最も近い交点S2との距離、S1-S2を測定した値を採用した。なお、図中の符号について、例えばG1は芯成分1の重心、G2は芯成分2の重心、Gはそれらの総称であり、他の符号についても同じである。
【0033】
さらには、求めた繊維径Dと鞘成分の最小厚みSminについて、その比(Smin/D)の単純な数平均を算出し、小数点第3位で四捨五入した値をSmin/Dとした。
【0034】
鞘成分の最小厚みSminと繊維径Dの比Smin/Dが0.01以上となるような鞘成分の配置とすると、得られた織編物では、鞘溶出により織編物の結束点で固定された繊維が可動できるだけの5μm未満の微細な繊維間空隙を発現でき、柔軟な風合いを付与することができるため、好ましい。この観点からすると、Smin/Dが高いほど5μm未満の微細な繊維間空隙のサイズが大きくなり、より繊維が可動しやすくなるため、Smin/Dを0.03以上とすれば、さらなる柔軟性の増大により天然シルク特有の高ドレープ性も表現することが可能になり、より好ましい範囲として挙げることが出来る。一方、繊維間空隙のサイズが大きくなりすぎると曲げ回復性も低下するため、天然シルクの風合いの一つである反発感が損なわれることから、本発明における実質的な上限は0.1となる。
【0035】
前述のように、繊維間空隙のサイズが大きくなることによる柔軟性や軽やかさの向上に対する反発感の低下というトレードオフの関係を解消するには、芯成分を多葉形状とすることで、鞘厚みの大きい多葉形状の凹部では鞘溶出により10μm以上の粗大な繊維間空隙が形成しつつ、鞘厚みの小さい凸部では5μm未満の微細な繊維間空隙を形成することが重要であり、さらにはこの最大と最小の繊維間空隙の大きさを制御することが重要である。そこで本発明者らが鋭意検討した結果、最大と最小の繊維間空隙の比をある範囲以上とすることで、2つの繊維間空隙に十分な差が生まれ、天然シルク特有の軽やかで柔軟かつ反発感のある風合いを際立たせることができると見出した。すなわち、鞘成分の最大厚みSmaxと最小厚みSminの比Smax/Sminが5.0以上であることが第2の要件となる。
【0036】
本発明において、鞘成分の最大厚みSmaxとは、例えば図2(a)、図5(a)に示すように、繊維横断面上に存在する芯成分1の重心G1から任意の繊維表面に向かって直線を引き、芯成分1の外周と直線との交点S1と繊維表面と直線との交点Fの距離、S1-Fを、小数点第1位まで測定した値として求め、得られた値のうち最大の値を算出するものである。この動作を無作為に抽出した繊維10本について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第1位を四捨五入した値を鞘成分の最小厚みSmax(μm)とした。ここで、例えば図4(a)、図5(b)に示すように、芯成分1の重心G1から任意の繊維表面に向かって引いた直線上に、重心を取った芯成分1とは異なる芯成分2が存在する場合には、芯成分1の外周と直線との交点S1と、芯成分2の外周と直線との交点のうちS1に最も近い交点S2との距離、S1-S2を測定した値を採用した。
【0037】
さらには、求めた鞘成分の最大厚みSmaxと鞘成分の最小厚みSminについて、その比(Smax/Smin)の単純な数平均を算出し、小数点第2位で四捨五入した値をSmax/Sminとした。
【0038】
本発明の芯鞘複合繊維においては、10μm以上の粗大な繊維間空隙にあたる鞘成分の最大厚みSmaxと5μm未満の微細な繊維間空隙にあたる最小厚みSminの比Smax/Sminが5.0以上とすれば、天然シルク特有の軽やかで柔軟かつ反発感のある風合いを十分に際立たせることができる。さらにSmax/Sminを10.0以上とすれば、天然シルク特有に近い繊維間空隙サイズを形成することができ、より天然シルクに近い軽やかさが得られるため、より好ましい範囲として挙げられる。また、この軽やかさの観点からはSmax/Sminは高いほど好ましいが、Smax/Sminが高いと鞘成分の溶出後に得られる異形断面繊維の異形度が高くなり、布帛とした際にギラツキやスジといった高次課題を生じる場合もあることから、Smax/Sminの実質的な上限は30.0である。
【0039】
本発明の芯鞘複合繊維における鞘成分の面積比率としては、10%から50%とするのが好ましい。鞘成分が占める面積を高くとすると、鞘成分の溶出による繊維間空隙形成効果が高まることから、10%以上が好ましく、より好ましくは20%以上である。また、鞘成分の面積比率を高くするほど繊維間空隙という観点では好ましい一方、鞘成分の溶出過多による強度低下や溶出処理時間の長時間が生じる場合があることから、実質的な上限は50%となる。
【0040】
本発明の芯鞘複合繊維においては、繊維横断面が真円または楕円形状であり、繊維の内接円径RA図4(a)のAの直径)と外接円径RB図4(a)のBの直径)の関係が1.0≦RB/RA≦2.5であることが好ましい。ただし、ここで言うRB/RAは繊維の異形度を表す。
【0041】
本発明の芯鞘複合繊維においては、鞘溶出による多葉形状の形成で異なる繊維間空隙を混在させることが重要であり、図3(a)、(b)のような鞘成分の溶出前後で相似的に変化する芯鞘複合繊維ではなく、図2(a)、(b)や図4(b)、(c)、図5(a)のような真円、または図4(a)、図5(b)のような楕円形状の芯鞘複合繊維に多葉形状の芯成分とすると、10μm以上の繊維間空隙と5μm未満の繊維間空隙を混在させることができるため、好ましい。また、異形度を表すRB/RAを1.0≦RB/RA≦2.5とすれば、本発明の芯鞘複合繊維がマルチフィラメントとして存在した場合に最密充填されやすくなることから、鞘成分に溶出後に得られる繊維間空隙を斑なく均一にすることができるため、品質管理の観点から好ましい。
【0042】
本発明の芯鞘複合繊維において、鞘成分の溶出後にドライ感のある触感を強調できるという観点から、多葉形状の芯成分において、凸部先端に芯成分の重心方向への溝を有し、芯成分の重心Gから溝底Mまでの距離、GMと、芯成分の重心Gから凸部先端Nまでの距離、GNの比、GN/GMが1.1~1.5であることが好ましい。
【0043】
本発明で言う芯成分の重心Gから溝底Mまでの距離、GMとは、例えば図5(a)に示すように、芯成分の面積を1/2とする任意の2本の直線の交点である芯成分の重心、G1と、溝表面における芯成分の重心、G1に最も近い点である溝底、M1との距離を算出するものである。このとき芯成分が2個以上存在する場合には、各芯成分で求めた値のうち最も大きい値を採用した。この動作を無作為に抽出した繊維10本について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第1位を四捨五入した値を芯成分の重心Gから溝底Mまでの距離、GM(μm)とした。
【0044】
また本発明で言う芯成分の重心Gから凸部先端Nまでの距離、GNとは、例えば図5(a)に示すように、芯成分の重心、G1と、溝表面における芯成分の重心、G1に最も遠い点である凸部先端、N1との距離を算出するものである。このとき芯成分が2個以上存在する場合には、各芯成分で求めた値のうち最も大きい値を採用した。この動作を無作為に抽出した繊維10本について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第1位を四捨五入した値を芯成分の重心Gから凸部先端Nまでの距離、GN(μm)とした。
【0045】
さらには、求めた芯成分の重心Gから溝底Mまでの距離、GMと芯成分の重心Gから凸部先端Nまでの距離、GNについて、その比(GN/GM)の単純な数平均を算出し、小数点第3位で四捨五入した値をGN/GMとした。このとき芯成分に凸部先端に溝が存在しない場合はGN/GM=1.0とした。
【0046】
本発明においては、鞘成分の溶出後に凸部先端に芯成分の重心方向へGN/GMが1.1以上となる深さの溝を有することで、溝表面が肌へ点で接触することによる摩擦力の向上により、ドライ感のある触感を強調することができるため、好ましい。さらにGN/GMを1.3以上となるような溝深さとするとドライ感に加えて光が乱反射されるようになり、よりマイルドな光沢となるだけでなく、光の正反射による白ボケが抑制されて染色した際の発色性も向上することから、より好ましい範囲として挙げられる。ただし、溝深さを深くしていくと、摩擦力が高くなりすぎることでフィブリル化等の耐摩耗性の悪化が生じる場合があることから、GN/GMの実質的な上限は1.5である。
【0047】
天然シルク特有の繊維間空隙をより詳細に再現することで天然シルク風合いを追求するという観点から、本発明の芯鞘複合繊維においては、芯成分が鞘成分により2個以上に分割されており、分割された芯成分それぞれが前述の多葉形状を有していることが好ましい。
【0048】
天然シルクの元となる蚕の繭からとれた生糸の時点では、2つの三角断面の難溶出成分からなるフィブロイン(図1のa)が易溶出成分からなるセリシン(図1のb)で覆われた繊維断面形状からなっている。すなわち、分割して隣り合った繊維間での空隙は、マルチフィラメント中の単繊維の配置に寄らずに、常にセリシン溶出の割合のみで制御されており、これが天然シルク特有の単繊維一本一本の間に5μm未満の微細な繊維間空隙が安定的に存在している状態を生み出していると理解でき、本発明の芯鞘複合繊維においては、芯成分が鞘成分により2個以上に分割されており、分割された芯成分がそれぞれ多葉形状を有していることが好ましい。分割数については、2個以上であれば特に限定されるものではなく、例えば図4(c)に示すように6個の芯成分に分割してもよいが、分割数が増えるに伴い、得られる繊維間空隙が小さくなることに加えて、断面の精密制御も困難となることから、実質的な分割数の上限値は10個となる。
【0049】
本発明において、繊維間空隙をより粗大化させるためには、繊維横断面において、融点が異なるポリマーを隣り合わせに配置し、融点の違いからくる熱処理時の収縮差から芯鞘複合繊維に捲縮形態を、あるいは芯鞘複合繊維の鞘成分を溶出した後に糸長差を発現させることが好ましい。繊維間空隙を粗大化することができれば、光の乱反射が増大することで高級感のある光沢や高発色が得られるのみならず、空隙率が増加して見かけ密度が低下することによる軽やかさをより強調することができる。
【0050】
すなわち、本発明の芯鞘複合繊維においては、鞘成分により分割された芯成分において、隣り合う芯成分1(例えば図4(a)、(b)、(c)のc1)と芯成分2(例えば図4(a)、(b)、(c)のc2)が融点の異なるポリマーからなることが好ましい。
【0051】
本発明において、融点の異なるポリマーとは、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリスチレン系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリメタクリル酸メチル系、ポリフェニレンサルファイド系などの溶融成形可能なポリマー群およびその共重合体の中から、融点が10℃以上異なるポリマーの組合せをいう。また、本発明の芯鞘複合繊維においては、芯成分の収縮差を利用して芯鞘複合繊維に捲縮形態を、あるいは芯鞘複合繊維の鞘成分を溶出した後に糸長差を発現することが目的であるため、芯成分の融点の異なるポリマーの組合せとしては、芯成分1を高収縮の低融点ポリマーとし、芯成分2を低収縮の高融点ポリマーとして使用することが好ましく、このような低融点ポリマーと高融点ポリマーの組合せとしては、例えばポリエステル系として共重合ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート、熱可塑性ポリウレタン/ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル系エラストマー/ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル系エラストマー/ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド系としてナイロン66/ナイロン610、ナイロン6‐ナイロン66共重合体/ナイロン6または610、PEG共重合ナイロン6/ナイロン6または610、熱可塑性ポリウレタン/ナイロン6または610、ポリオレフィン系としてエチレン‐プロピレンゴム微分散ポリプロピレン/ポリプロピレン、プロピレン‐αオレフィン共重合体/ポリプロピレンなどの種々の組み合わせが挙げられるが、本発明の芯鞘複合繊維において、天然シルクに近い曲げ剛性とできるのみならず、染色した際に良好な発色性が得られるという観点から、分割される芯成分はポリエステル系の組合せとすることが特に好ましい範囲として挙げられる。また共重合ポリエチレンテレフタレートにおける共重合成分としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられるが、ポリエチレンテレフタレートとの収縮差を最大化できるという観点からは、イソフタル酸を5mol%から15mol%が共重合されたポリエチレンテレフタレートとすることが好ましい。
【0052】
本発明の芯鞘複合繊維における低融点ポリマーである芯成分1と高融点ポリマーである芯成分2の面積比率としては、芯成分1/芯成分2が70%/30%~30%/70%の範囲であることが好ましい。かかる範囲であれば、低融点ポリマーが熱処理で高収縮する際での目付詰まりによる風合い硬化の影響を受けることなく、収縮差による芯鞘複合繊維に捲縮形態を、あるいは芯鞘複合繊維の鞘成分を溶出した後に糸長差を十分に発現でき、より粗大化な繊維間空隙を得ることができる。
【0053】
本発明の芯鞘複合繊維は、一旦、織編物や不織布、抄紙など多様なシート状の繊維構造体とした後に、鞘成分を溶出して芯成分からなるマルチフィラメントを得るものである。該マルチフィラメントでは、その特異な繊維断面形状や繊維間空隙から発現した高級感のある光沢やドライ感のある触感、軽やかで柔軟かつ反発感のある風合いといった天然シルクの風合いを得ることが可能となる。
【0054】
前述のような高級感のある光沢や軽やかで柔軟かつ反発感のある風合いといった天然シルクの風合いを最大限発揮するには、マルチフィラメント中に天然シルクが奏でるような繊維一本一本の間に5μm未満の微細な繊維間空隙と10μm以上の粗大な繊維間空隙が均一に混在した空隙構造を形成させることがポイントとなる。そのため、本発明のマルチフィラメントにおいては、平均繊維間空隙距離が5~30μmであり、そのうち繊維間空隙距離が5μm未満の割合が10~50%の空隙構造を有することが重要となる。
【0055】
ここで本発明で言う繊維間空隙距離とは、マルチフィラメントからなる布帛において、布帛の長さ方向に垂直かつマルチフィラメントの繊維軸方向に垂直な布帛断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で10本以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影する。撮影された各画像に対して図8(b)のように繊維が10本収まる真円を描き、該真円の内側に存在する繊維10本において、任意の繊維1本を選び、該繊維と隣り合う繊維の重心を結ぶ直線とそれぞれの繊維表面との交点を求め、交点間の距離をμm単位小数点1桁目まで測定した。さらに求めた値の小数点第1位を四捨五入した値を繊維間空隙距離(μm)とした。ここでいう「隣り合う」とは、任意の2本の繊維の重心と重心を結ぶ直線上に他の繊維が存在しないことを意味する。この動作を真円の内側に存在する繊維10本において、図8(b)のように隣り合う全ての繊維に対して行い、結果の単純な数平均を求め、小数点第1位を四捨五入した値を平均繊維間空隙距離(μm)とした。また繊維間空隙距離が5μm未満となる割合も算出した。
【0056】
平均繊維間空隙距離が長いほど、織編物の結束点で固定された繊維が可動できるだけの空間が生まれ、柔軟性の向上効果が得られることから、平均繊維間空隙距離は5μm以上である必要がある。さらに平均繊維間空隙距離を10μm以上とすれば、嵩高性を発現することで布帛とした際には見かけ密度が低下し、軽やかさの向上効果も加わることから、天然シルクに近い軽やかで柔軟な風合いを発現できるため、好ましい範囲として挙げられる。この観点からすると軽やかさや柔軟性が向上する一方、マルチフィラメント中に均一に混在させた5μm未満の繊維間空隙での曲げ剛性低下抑制効果は小さくなり、反発感が低下する傾向となるため、平均繊維間空隙距離は30μmが実質的な上限となる。
【0057】
上記に加えて、平均空隙間距離が高まることによる曲げ剛性の低下を抑制でき、反発感を維持するため、繊維間空隙距離が5μm未満の割合が10%以上とする必要がある。さらに繊維間空隙距離が5μm未満の割合が20%以上とすれば、軽やかさや柔軟性と反発感はトレードオフの関係が解消され、軽やかで柔軟かつ反発感のある風合いをバランス良く発現することができるため、好ましい範囲として挙げられる。この観点からすると繊維間空隙距離が5μm未満の割合を高くすると反発感が向上する一方、軽やかさや柔軟性が低下する傾向となるため、繊維間空隙距離が5μm未満の割合は50%が実質的な上限となる。
【0058】
本発明のマルチフィラメントにおいては、空隙率が30~80%の空隙構造を有することが好ましい。
【0059】
ここで本発明で言う空隙率とは、マルチフィラメントからなる布帛において、布帛の長さ方向に垂直かつマルチフィラメントの繊維軸方向に垂直な布帛断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で10本以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影する。撮影された各画像に対して図8(b)のように繊維が10本収まる真円を描き、該真円の断面積から真円の内側に存在する繊維10本の総断面積を引いた値を算出した。このとき真円の内側に繊維の1/2以上が含まれている場合は繊維1本としてカウントし、断面積はμm単位で小数点1桁目まで測定した。さらに求めた値を真円の断面積で割った値を算出し、100を掛けた後に小数点第1位を四捨五入した値を空隙率(%)とした。
【0060】
マルチフィラメント中に空隙率が30%以上の空隙構造を有していると、織編物の結束点で固定された繊維が可動できるだけの空間が生まれ、柔軟性の向上効果が得られるため好ましい。
【0061】
さらに空隙率が50%以上の空隙構造とすれば、高い空隙率を有することで布帛とした際には見かけ密度が低下し、軽やかさの向上効果も加わることから、天然シルクに近い軽やかで柔軟な風合いを発現できるため、より好適な範囲として挙げられる。この観点からすると平均繊維間空隙距離と空隙率は高いほど軽やかさや柔軟性が向上する一方、マルチフィラメント中に均一に混在させた5μm未満の繊維間空隙での曲げ剛性低下抑制効果は小さくなり、反発感が低下する傾向となるため、空隙率が80%の空隙構造を有することが実質的な上限となる。
【0062】
本発明のマルチフィラメントにおいては、融点の異なるポリマーで構成された2種類以上の捲縮性繊維からなり、該捲縮性繊維が均一に混在していることが好ましい。 ここで本発明で言う捲縮性繊維とは、図7のように繊維がねじれた捲縮形態を有することを言う。
【0063】
さらに本発明で言う「捲縮性繊維が均一に混在している」とは、図8(a)に示すようにマルチフィラメント中の任意の捲縮性繊維Xにおいて、捲縮性繊維Xに隣り合う全ての捲縮性繊維のうち、捲縮性繊維Xと異なるポリマーで構成された捲縮性繊維Yが少なくとも1本以上存在していることを意味する。また本発明で言う「隣り合う」とは、捲縮性繊維Xの重心と任意の捲縮性繊維の重心を結ぶ直線上に他の捲縮性繊維が存在しないことを意味する。本発明のマルチフィラメントが有する空隙構造を得る手法としては、図2(a)や図5(a)のような芯鞘複合繊維を複数束ねてから鞘成分を溶出する手法や図4(a)(b)(c)のような融点の異なるポリマーからなる芯成分が隣り合わせに配置された芯鞘複合繊維を複数本束ねてから鞘成分を溶出して分割した後に、熱処理により糸長差を発現させる手法など様々な手法が存在するが、マルチフィラメント中に5μm未満の微細な繊維間空隙と10μm以上の粗大な繊維間空隙をより均一に混在させるという観点からすると、図10(a)、(b)に示すような、繊維横断面を鞘成分dにより2個に分割された芯成分c1、c2が融点の異なるポリマーからなる芯鞘複合繊維を複数本束ねてから熱処理により捲縮形態を発現させ、その後の鞘成分を溶出してポリマー毎に分割することで、異なるポリマーで構成された捲縮性繊維を均一に混在させる手法を用いることが好ましい。
【0064】
上記の手法を用いれば、芯鞘複合繊維に熱処理を施すことで捲縮形態が発現し、10μm以上の粗大な繊維間空隙を形成できる。さらに芯成分間に鞘成分が存在することから、鞘成分を溶出した後には、隣り合わせになった融点の異なるポリマーからなる捲縮性繊維の間により安定的に5μm未満の繊維間空隙を形成することができるため、マルチフィラメント中に5μm未満の微細な繊維間空隙と10μm以上の粗大な繊維間空隙をより均一に混在させることができる。すなわち、本発明のマルチフィラメントにおいては、融点の異なるポリマーで構成された2種類以上の捲縮性繊維からなり、該捲縮性繊維が均一に混在していることが好ましく、これにより特異な繊維断面形状や空隙構造から発現した高級感のある光沢やドライ感のある触感、軽やかで柔軟かつ反発感のある風合いといった天然シルクの風合いをより際立たせることができる。
【0065】
本発明のマルチフィラメントにおいて、捲縮性繊維が5山/cm以上の捲縮山数を有することが好ましい。
【0066】
係る範囲とすれば、繊維間での排除体積効果を十分に発揮することができ、数十μmの粗大な繊維間空隙を形成することが可能となる。さらに10山/cm以上とすれば、繊維間での排除体積効果がより高まることで、繊維間空隙のサイズをより粗大化することができ、天然シルクに近い軽やかで柔軟な風合いを発現できることから、より好適な範囲として挙げられる。一方、捲縮山数が多くしていくと、捲縮形態による立体障害効果が排除体積効果を上回ることで繊維間の絡み合いが生じてしまい、柔軟性が損なわれる場合があることから、捲縮山数の上限としては100山/cmとなる。
【0067】
本発明のマルチフィラメントにおいては、異なるポリマーで構成された2種類以上の捲縮性繊維の糸長差が3%以上であることが好ましい。糸長差を3%以上とすることで、捲縮形態を発現した融点の異なるポリマーで構成された捲縮性繊維の捲縮山数を10山/cm以上とすることができる。ただし、糸長差が大きくなりすぎるとそれに伴い捲縮山数も増大し、捲縮形態による立体障害効果が排除体積効果を上回ることで繊維間の絡み合いが生じてしまい、柔軟性が損なわれる場合があることから、糸長差の上限は20%となる。
【0068】
本発明のマルチフィラメントにおいては、捲縮性繊維が単独ポリマーから構成されることが好ましい。捲縮性繊維を単独ポリマーから構成すれば、隣り合った融点の異なるポリマーで構成された芯鞘複合繊維が熱処理により捲縮形態を発現することで、隣り合った捲縮性繊維では捲縮位相が揃い、5μm未満の微細な繊維間空隙を形成することが可能となる。一方、2種類以上の異なるポリマーから構成した場合は、複合断面によっては断面上のポリマーの重心が異なることで、隣り合った融点の異なるポリマーで構成された繊維は鞘成分を溶出した後に異なる捲縮形態を有した捲縮性繊維となることから捲縮位相は揃わず、5μm未満の微細な繊維間空隙を安定的に形成することが困難となる。
【0069】
本発明のマルチフィラメントを構成する繊維においては、繊維横断面において、凸部を3個以上有した多葉形状であることが好ましい。
【0070】
繊維横断面において、凸部を3個以上有した多葉形状とすれば、繊維表面への凹凸部が形成することにより光の反射増幅効果が得られ、前述した大小サイズの繊維間空隙が存在することでの光の複雑な反射も相まって、天然シルクのような高輝度かつマイルドな光沢といった高級感のある光沢が発現できる。さらに繊維表面に凹凸が形成されることによる摩擦力の向上により、ドライ感のある触感も得ることが出来る。この観点からすると、凸部が多いほど光沢の効果やドライ感が高まるが、凹凸部の数が多くなりすぎると、凹凸部の間隔が細かくなっていき、その効果は徐々に丸断面へと近似してしまうため、本発明のマルチフィラメントを構成する繊維が有する凸部の実質的な上限は6個となる。
【0071】
本発明のマルチフィラメントを構成する繊維においては、内接円径R図9(a)のCの直径)と外接円径R図9(a)のDの直径)の関係が1.5≦R/R≦2.0であることが好ましい。ただし、ここで言うR/Rは繊維の異形度を表す。係る範囲とすれば多葉形状の凹凸部で反射増幅された光がギラつくことなく均一に反射されるため、品質管理の観点から好ましい。
【0072】
本発明のマルチフィラメントを構成する繊維においては、ドライ感のある触感を強調できるという観点から、繊維横断面において、凸部先端に溝を有しており、溝底Mから凸部先端Nまでの距離、MNと繊維径Dの比(MN/D)が0.04~0.20であることが好ましい。
【0073】
本発明で言う溝底Mから凸部先端Nまでの距離、MNと繊維径Dの比(MN/D)は、本発明のマルチフィラメントをエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、繊維軸に垂直方向の繊維横断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で10本以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影することにより求めることができる。撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した繊維において、例えば図9に示すように、捲縮性繊維の繊維横断面における断面積を1/2にする任意の2本の直線の交点である重心Gから溝表面に最も近い点である溝底Mと最も遠い点である凸部先端Nとの距離、MNを算出した。
【0074】
また該繊維の直径をμm単位で小数点1桁目まで測定した。このとき繊維軸に垂直方向の繊維横断面が真円で無い場合はその面積を測定し、円換算で求められる値を繊維径として採用した。
【0075】
これら求めた溝底Mから凸部先端Nまでの距離、MNと繊維径Dについて、その比(MN/D)を小数点第4位まで算出し、この動作を無作為に抽出した繊維10本について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第3位で四捨五入した値をMN/Dとした。このとき捲縮性繊維に凸部先端の溝が存在しない場合はMN/D=0とした。
【0076】
本発明のマルチフィラメントを構成する繊維においては、MN/Dが0.04以上となる深さの溝を有することで、溝表面が肌へ点で接触することによる摩擦力の向上により、ドライ感のある触感を強調することができ、好ましい。さらにMN/Dが0.10以上となるような溝深さとするとドライ感に加えて光が乱反射されるようになり、よりマイルドな光沢となるだけでなく、光の正反射による白ボケが抑制されて染色した際の発色性も向上することから、より好ましい範囲として挙げられる。ただし、溝深さを深くしていくと、摩擦力が高くなりすぎることでフィブリル化等の耐摩耗性の悪化が生じる場合があることから、MN/Dの実質的な上限は0.20である。
【0077】
本発明のマルチフィラメントを構成する繊維においては、風合いをより柔軟にするという観点から、繊維径を15μm以下とすることが好ましい。さらに繊維径を12μm以下とすることで、天然シルクの単糸繊度である約10μmに近づき、より天然シルクに近い肌触りを得ることができるため、肌に触れるインナーやシャツ、ブラウス等の一般衣料用途に好適な範囲となる。ただし、繊維径が細すぎると曲げ回復性が低下し、天然シルクの風合いの一つである反発感が損なわれるのみならず、発色性も低下する場合があることから、繊維径は8μm以上とすることが好ましい。
【0078】
本発明の芯鞘複合繊維およびマルチフィラメントにおいては、天然シルクが奏でるような繊維一本一本の間に5μm未満の微細な繊維研空隙と数十μmの粗大な繊維間空隙が均一に混在した特異な空隙構造を形成することができる。そのため、本発明の芯鞘複合繊維またはマルチフィラメントが少なくとも1部を構成する繊維製品とすると、天然シルク特有の様々な風合いを再現できることから、従来天然シルクが主に用いられていた洋装や和装はもちろんのこと、合成繊維ならではの取扱い性の容易さも相まって、ジャケット、スカート、パンツ、下着などの一般衣料から、スポーツ衣料、衣料資材、カーペット、ソファー、カーテンなどのインテリア製品、カーシートなどの車輌内装品、化粧品、化粧品マスク、ワイピングクロス、健康用品などの生活用途など多岐に渡る繊維製品に好適に用いることができる。
【0079】
以下に本発明の芯鞘複合繊維およびマルチフィラメントの製造方法の一例を詳述する。
【0080】
2種類以上のポリマーからなる本発明の芯鞘複合繊維を製糸する方法としては長繊維の製造を目的とした溶融紡糸法、湿式および乾湿式などの溶液紡糸法、シート状の繊維構造体を得るのに適したメルトブロー法およびスパンボンド法などによって製造することも可能であるが、生産性を高めるという観点から、溶融紡糸法が好適である。また、溶融紡糸法においては、後述する複合口金を用いることにより製造可能であり、その際の紡糸温度については、用いるポリマー種のうち、主に高融点や高粘度ポリマーが流動性を示す温度とする。この流動性を示す温度としては、分子量によっても異なるが、そのポリマーの融点から融点+60℃の間で設定すると安定して製造することができる。
【0081】
紡糸速度については、500~6000m/分程度にするとよく、ポリマーの物性や繊維の使用目的によって変更可能である。特に、高配向とし力学特性を向上させるという観点からすると、500~4000m/分とし、その後延伸することで、繊維の一軸配向を促進できるため、好ましい。延伸に際しては、ポリマーのガラス転移温度など、軟化できる温度を目安として、予熱温度を適切に設定することが好ましい。予熱温度の上限としては、予熱過程で繊維の自発伸長により糸道乱れが発生しない温度とすることが好ましい。例えば、ガラス転移温度が70℃付近に存在するPETの場合には、通常この予熱温度は80~95℃程度で設定される。
【0082】
また、本発明の芯鞘複合繊維における口金での単孔当たりにおける吐出量としては、0.1~10g/分・孔程度にすると安定して製造することが可能となる。吐出されたポリマー流は、冷却固化後、油剤を付与され、規定の周速になったローラーで引き取られる。その後、加熱ローラーで延伸され、所望の芯鞘複合繊維となる。
【0083】
また、2種類以上のポリマーからなる本発明の芯鞘複合繊維において、使用するポリマーの溶融粘度比を5.0未満、溶解度パラメータ値の差を2.0未満とすることで、安定的に複合ポリマー流を形成でき、良好な複合断面の繊維を得ることができるため好ましい。
【0084】
2種類以上のポリマーからなる本発明の芯鞘複合繊維を製造する際に用いる複合口金としては、特開2011-208313号公報に記載される複合口金を用いるのが好ましい。本願の図12に示した複合口金は、上から計量プレート1、分配プレート2および吐出プレート3の大きく3種類の部材が積層された状態で紡糸パック内に組み込まれ、紡糸に供される。ちなみに図12は、Aポリマー、Bポリマー、Cポリマーといった3種類のポリマーを用いた例である。従来複合口金では、3種類以上のポリマーを複合化することは困難であり、やはり図12に例示したような微細流路を利用した複合口金を用いることが好ましい。
【0085】
図12に例示した口金部材では、計量プレート1が各吐出孔および各分配孔当たりのポリマー量を計量して流入し、分配プレート2によって、単繊維の断面における複合断面およびその断面形状を制御、吐出プレート3によって、分配プレート2で形成された複合ポリマー流を圧縮して、吐出するという役割を担っている。
【0086】
複合口金の説明が錯綜するのを避けるために、図示されていないが、計量プレート1より上に積層する部材に関しては、紡糸機および紡糸パックに合わせて、流路を形成した部材を用いれば良い。計量プレート1を、既存の流路部材に合わせて設計することで、既存の紡糸パックおよびその部材がそのまま活用することができる。このため、特に該口金のために紡糸機を専有化する必要はない。また、実際には流路-計量プレート間あるいは計量プレート1-分配プレート2間に複数枚の流路プレートを積層すると良い。これは、口金断面方向および単繊維の断面方向に効率よく、ポリマーが移送される流路を設け、分配プレート2に導入される構成とすることが目的である。吐出プレート3より吐出された複合ポリマー流は、上述の製造方法に従い、冷却固化後、油剤を付与され、規定の周速になったローラーで引き取られる。その後、加熱ローラーで延伸加工が施され、所望の芯鞘複合繊維となる。
【0087】
本発明の芯鞘複合繊維から鞘成分を除去して芯成分からなるマルチフィラメントを製造する場合には、鞘成分を溶出して芯成分からなる繊維を得る必要があり、そのためには易溶出成分が溶解可能な溶剤などに該芯鞘複合繊維を浸漬して鞘成分を除去すればよい。易溶出成分が、5-ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどが共重合された共重合ポリエチレンテレフタレートやポリ乳酸等の場合には、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液を用いることができる。この時、アルカリ水溶液は50℃以上に加熱すると、加水分解の進行を早めることができるため、好ましい。また、流体染色機などを利用すれば、一度に大量に処理をすることができるため、工業的な観点から好ましい。
【実施例
【0088】
以下実施例を挙げて、本発明の芯鞘複合繊維およびマルチフィラメントについて具体的に説明する。
【0089】
実施例および比較例については下記の評価を行った。
【0090】
A.ポリマーの溶融粘度
チップ状のポリマーを真空乾燥機によって、水分率200ppm以下とし、東洋精機製キャピログラフによって、歪速度を段階的に変更して、溶融粘度を測定した。なお、測定温度は紡糸温度と同様にし、窒素雰囲気下で加熱炉にサンプルを投入してから測定開始までを5分とし、せん断速度1216s-1の値をポリマーの溶融粘度として評価した。
【0091】
B.ポリマーの融点
チップ状のポリマーを真空乾燥機によって、水分率200ppm以下とし、約5mgを秤量し、TAインスツルメント製示差走査熱量計(DSC)Q2000型を用いて、0℃から300℃まで昇温速度16℃/分で昇温後、300℃で5分間保持してDSC測定を行った。昇温過程中に観測された融解ピークより融点を算出した。測定は1試料につき3回行い、その平均値を融点とした。なお、融解ピークが複数観測された場合には、最も高温側の融解ピークトップを融点とした。
【0092】
C.繊度
100mのマルチフィラメントの重量を測定し、その値を100倍した値を算出した。この動作を10回繰り返し、その平均値の小数点第2位を四捨五入した値をマルチフィラメントの繊度(dtex)とした。
【0093】
D.断面パラメータ(R/R
芯鞘複合繊維をエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、繊維軸に垂直方向の繊維横断面をHITACHI製走査型電子顕微鏡(SEM)で10本以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影した。得られた画像をコンピューターソフトウェアの三谷商事製WinROOFを用いて解析することで、該繊維の外接円径R(例えば図4(a)のBの直径)と該繊維の内接円径R(例えば図4(a)のAの直径)の比であるR/Rについて算出した。ただし、本発明においては、1フィラメントにつき3回測定を行い、これを10フィラメントについて行った結果の単純な数平均を求め、小数点第3位で四捨五入した値をR/Rとした。
【0094】
E.断面パラメータ(Smin/D、Smax/Smin)
芯鞘複合繊維をエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、繊維軸に垂直方向の繊維横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で10本以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影した。この際、金属染色を施すとポリマー間の染め差を利用して、複合成分の接合部のコントラストを明確にすることができる。撮影した画像において、鞘成分の最小厚みSminと繊維径Dの比、Smin/D、鞘成分の最大厚み、Smaxと鞘成分の最小厚み、Sminの比、Smax/Sminについて算出を行った。
【0095】
ただし、本発明においては、撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した繊維の直径をμm単位で小数点1桁目まで測定し、この動作を無作為に抽出した繊維10本について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第1位を四捨五入した値を繊維径D(μm)とした。ここで繊維軸に垂直方向の繊維横断面が真円で無い場合はその面積を測定し、円換算で求められる値を採用した。
【0096】
また、本発明における鞘成分の最小厚みSminとは、例えば図2(a)、図5(a)に示すように、撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した繊維の横断面上に存在する芯成分1の重心、G1から任意の繊維表面に向かって直線を引き、芯成分1の外周と直線との交点、S1と繊維表面と直線との交点Fの距離、S1-Fを、小数点第1位まで測定した値を求め、得られた値のうち最小の値を算出するものである。この動作を無作為に抽出した繊維10本について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第1位を四捨五入した値を鞘成分の最小厚みSmin(μm)とした。ここで、例えば図4(a)、図5(b)に示すように、芯成分1の重心G1から任意の繊維表面に向かって引いた直線上に、重心を取った芯成分1とは異なる芯成分2が存在する場合には、芯成分1の外周と直線との交点S1と、芯成分2の外周と直線との交点のうちS1に最も近い交点S2との距離S1-S2を測定した値を採用した。
【0097】
求めた繊維径Dと鞘成分の最小厚み、Sminについて、その比(Smin/D)の単純な数平均を算出し、小数点第3位で四捨五入した値をSmin/Dとした。
【0098】
また、本発明における鞘成分の最小厚み、Smaxとは、例えば図2(a)、図5(a)に示すように、撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した繊維の横断面上に存在する芯成分1の重心G1から任意の繊維表面に向かって直線を引き、芯成分1の外周と直線との交点S1と繊維表面と直線との交点Fの距離、S1-Fを、小数点第1位まで測定した値を求め、得られた値のうち最大の値を算出するものである。この動作を無作為に抽出した繊維10本について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第1位を四捨五入した値を鞘成分の最小厚みSmax(μm)とした。ここで、例えば図4(a)、図5(b)に示すように、芯成分1の重心G1から任意の繊維表面に向かって引いた直線上に、重心を取った芯成分1とは異なる芯成分2が存在する場合には、芯成分1の外周と直線との交点S1と、芯成分2の外周と直線との交点のうちS1に最も近い交点、S2との距離、S1-S2を測定した値を採用した。
【0099】
求めた鞘成分の最大厚み、Smaxと鞘成分の最小厚み、Sminについて、その比(Smax/Smin)の単純な数平均を算出し、小数点第2位で四捨五入した値をSmax/Sminとした。
【0100】
F.断面パラメータ(GN/GM)
E.項で観察した芯鞘複合繊維が、多葉形状の芯成分において、凸部先端に芯成分の重心方向への溝を有している場合には、芯成分の重心Gから溝底Mまでの距離、GMと芯成分の重心Gから凸部先端Nまでの距離、GNの比、GN/GMについて算出を行った。このとき芯成分に凸部先端に溝が存在しない場合はGN/GM=1.0とした。
【0101】
本発明における芯成分の重心Gから溝底Mまでの距離、GMとは、例えば図5(a)に示すように、芯成分の面積を1/2とする任意の2本の直線の交点である芯成分の重心G1と、溝表面における芯成分の重心G1に最も近い点である溝底M1との距離を算出するものである。このとき芯成分が2個以上存在する場合には、各芯成分で求めた値のうち最も大きい値を採用した。この動作を無作為に抽出した繊維10本について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第1位を四捨五入した値を芯成分の重心Gから溝底Mまでの距離、GM(μm)とした。
【0102】
また本発明における芯成分の重心Gから凸部先端Nまでの距離、GNとは、例えば図5(a)に示すように、芯成分の重心G1と、溝表面における芯成分の重心G1に最も遠い点である凸部先端N1との距離を算出するものである。このとき芯成分が2個以上存在する場合には、各芯成分で求めた値のうち最も大きい値を採用した。この動作を無作為に抽出した繊維10本について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第1位を四捨五入した値を芯成分の重心Gから凸部先端Nまでの距離、GN(μm)とした。
【0103】
求めた芯成分の重心Gから溝底Mまでの距離、GMと芯成分の重心Gから凸部先端Nまでの距離、GNについて、その比(GN/GM)の単純な数平均を算出し、小数点第3位で四捨五入した値をGN/GMとした。
【0104】
G.マルチフィラメント中の繊維の混在状態
マルチフィラメントからなる布帛において、布帛の長さ方向に垂直かつマルチフィラメントに繊維軸方向に垂直な布帛断面をHITACHI製走査型電子顕微鏡(SEM)で10本以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影する。撮影された画像に対してコンピューターソフトウェアの三谷商事製WinROOFを用いて解析することで、図8(a)に示すようにマルチフィラメント中の任意の繊維Xにおいて、繊維Xの重心と任意の繊維の重心を結ぶ直線上に他の繊維が存在しない状態となる全ての繊維のうち、繊維Xと異なるポリマーで構成された繊維Yが何本存在しているかを評価した。この評価を1本のマルチフィラメントの中から無作為に抽出した繊維10本について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第1位で四捨五入した値から混在状態をそれぞれ次の基準に基づき2段階判定した。
【0105】
A:均一に混在している(繊維Xと異なるポリマーで構成された繊維Yが1本以上)
C:偏って混在している(繊維Xと異なるポリマーで構成された繊維Yが1本未満)。
【0106】
H.捲縮山数(山/cm)
マルチフィラメントからなる布帛において、塑性変形させないよう布帛からマルチフィラメントを抜き出し、マルチフィラメントの片方の末端を固定し、もう片方の末端へ1mg/dtexの荷重をかけて30秒間以上経過後に、マルチフィラメントの繊維軸方向へ2点間の距離が1cmとなる任意の箇所にマーキングを施した。その後、塑性変形させないようマルチフィラメントから繊維を分繊し、予めつけておいたマーキングの間が元の1cmとなるように調整してスライドガラス上に固定し、このサンプルをキーエンス社製VHX-2000デジタルマイクロスコープにて、1cmのマーキングが観察できる倍率で画像を撮影した。撮影した画像においてマーキング間の捲縮山数を求めた。この動作を同じポリマーから構成される繊維10本について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第1位で四捨五入した値を捲縮山数(山/cm)とした。もし異なるポリマーからなる繊維が混在している場合、それぞれのポリマーからなる繊維について捲縮山数を求め、最も捲縮山数が大きくなるポリマーからなる繊維の捲縮山数を採用した。
【0107】
I.糸長差
マルチフィラメントからなる布帛において、塑性変形させないよう布帛からマルチフィラメントを抜き出し、マルチフィラメントの片方の末端を固定し、もう片方の末端へ1mg/dtexの荷重をかけて30秒間以上経過後に、マルチフィラメントの繊維軸方向へ2点間の距離が1cmとなる任意の箇所にマーキングを施した。その後、塑性変形させないようマルチフィラメントから繊維を分繊し、予めつけておいたマーキングの間が元の1cmとなるように調整してスライドガラス上に固定し、このサンプルをキーエンス社製VHX-2000デジタルマイクロスコープにて、1cmのマーキングが観察できる倍率で画像を撮影した。得られた画像をコンピューターソフトウェアの三谷商事製WinROOFを用いて解析することで、マーキング間の実繊維長を測定した。この動作を異なるポリマーからなる繊維において、それぞれ繊維10本について行った結果の単純な数平均を求め、得られた結果から(最大の実繊維長-最小の実繊維長)/(最小の実繊維長)×100を算出し、小数点第1位で四捨五入した値を糸長差(%)とした。
【0108】
J.繊維間空隙距離
マルチフィラメントからなる布帛において、布帛の長さ方向に垂直かつマルチフィラメントの繊維軸方向に垂直な布帛断面をHITACHI製走査型電子顕微鏡(SEM)で10本以上の繊維が観察できる倍率として画像撮影する。撮影された画像に対してコンピューターソフトウェア、三谷商事製WinROOFを用いて解析することで、図8(b)のように繊維が10本収まる真円を描き、該真円の内側に存在する繊維10本において、任意の繊維1本を選び、該繊維と隣り合う繊維の重心を結ぶ直線とそれぞれの繊維表面との交点を求め、交点間の距離をμm単位、小数点1桁目まで測定した。さらに求めた値の小数点第1位を四捨五入した値を繊維間空隙距離(μm)とした。ここでいう「隣り合う」とは、任意の2本の繊維の重心と重心を結ぶ直線上に他の繊維が存在しないことを意味する。この動作を真円の内側に存在する繊維10本において、図8(b)のように隣り合う全ての繊維に対して行い、結果の単純な数平均を求め、小数点第1位を四捨五入した値を平均繊維間空隙距離(μm)とした。また繊維間空隙距離が5μm未満となる割合も算出した。
【0109】
K.空隙率
マルチフィラメントからなる布帛において、布帛の長さ方向に垂直かつマルチフィラメントの繊維軸方向に垂直な布帛断面をHITACHI製走査型電子顕微鏡(SEM)で10本以上の繊維が観察できる倍率として画像撮影する。撮影された画像に対してコンピューターソフトウェア、三谷商事製WinROOFを用いて解析することで、図8(b)のように繊維が10本収まる真円を描き、該真円の断面積から真円の内側に存在する繊維10本の総断面積を引いた値を算出した。このとき真円の内側に繊維の1/2以上が含まれている場合は繊維1本としてカウントし、断面積はμm単位で小数点1桁目まで測定した。さらに求めた値を真円の断面積で割った値を算出し、100を掛けた後に小数点第1位を四捨五入した値を空隙率(%)とした。
【0110】
L.異形断面繊維の繊維径
K.項で撮影された画像を用いて、同一画像内で無作為に抽出した繊維の直径をμm単位で小数点1桁目まで測定し、この動作を無作為に抽出した繊維10本について行った結果の最も大きい繊維径について、小数点第1位を四捨五入した値を繊維径D(μm)とした。ここで繊維軸に垂直方向の繊維横断面が真円で無い場合はその面積を測定し、円換算で求められる値を採用した。
【0111】
M.断面パラメータ(R/R
K.項で撮影された画像をコンピューターソフトウェア、三谷商事製WinROOFを用いて解析することで、該繊維の外接円径R(例えば図9(a)のCの直径)と該繊維の内接円径R(例えば図9(a)のCの直径)の比であるR/Rについて算出した。ただし、本発明においては、1フィラメントにつき3回測定を行い、これを10フィラメントについて行った結果の単純な数平均を求め、小数点第2位で四捨五入した値をR/Rとした。
【0112】
N.断面パラメータ(MN/D)
K.項で観察した繊維が、凸部先端に溝を有している場合には、溝底Mから凸部先端Nまでの距離、MNと繊維径Dの比、MN/Dについて算出を行った。このとき繊維に凸部先端の溝が存在しない場合は、MN/D=0とした。
【0113】
本発明で言う溝底Mから凸部先端Nまでの距離、MNと繊維径Dの比(MN/D)は、マルチフィラメントをエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、繊維軸に垂直方向の繊維横断面をHITACHI製走査型電子顕微鏡(SEM)で10本以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影することにより求まる。撮影された画像から同一画像内で無作為に抽出した繊維において、コンピューターソフトウェア、三谷商事製WinROOFを用いて解析することで、例えば図9(b)に示すように、繊維の繊維横断面における断面積を1/2にする任意の2本の直線の交点である重心Gから溝表面に最も近い点である溝底Mと最も遠い点である凸部先端Nとの距離、MNを算出した。
【0114】
また該繊維の直径Dをμm単位で、小数点1桁目まで測定した。このとき繊維軸に垂直方向の繊維横断面が真円で無い場合はその面積を測定し、円換算で求められる値を繊維径Dとして採用した。
【0115】
これら求めた溝底Mから凸部先端Nまでの距離、MNと繊維径Dについて、その比(MN/D)を小数点第4位まで算出し、この動作を無作為に抽出した繊維10本について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第3位で四捨五入した値をMN/Dとした。
【0116】
O.風合い評価(光沢感、軽やかさ、柔軟性、反発感、ドライ感)
経糸方向のカバーファクター(CFA)が800、緯糸方向のカバーファクター(CFB)が1200となるように繊維本数を調整し、8枚サテン織物を作成した。ただし、ここで言うCFAおよびCFBとは、織物の経密度および緯密度をJIS-L-1096:2010 8.6.1に準じて2.54cmの区間にて測定し、CFA=経密度×(経糸の繊度)1/2、CFB=緯密度×(緯糸の繊度)1/2の式より求めた値である。得られた織物について、以下の手法を用いて光沢感、軽やかさ、柔軟性、反発感、ドライ感の5つの風合いを評価した。
【0117】
光沢感は、村上色彩技術研究所製 自動変角光度計(GONIOPHOTOMETER GP―200型)を用いて、入射角60°で各サンプルに光を入射し、0.1°毎に受光角0°~90°での光強度を二次元反射光分布測定にて求め、受光角60°付近における最大光強度(鏡面反射)を受光角0°付近における最小光強度(拡散反射)で割った値を算出した。この動作を1箇所あたり3回行い、これを合計10箇所について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第2位を四捨五入した値を対比光沢度とした。得られた対比光沢度から光沢感をそれぞれ次の基準に基づき3段階判定した。
【0118】
S:優れた光沢(対比光沢度<1.6)
A:良好な光沢(1.6≦対比光沢度<1.9)
C:光沢に劣る(1.9≦対比光沢度)。
【0119】
軽やかさは、テロテック製定圧厚さ測定器(PG-14J)を用いて、20cm×20cmの織物の厚み(cm)を測定し、織物の体積を算出した後、該織物の重量(g)を得られた体積で除した値を織物の見掛け密度(g/cm)とした。得られた見掛け密度から軽やかさをそれぞれ次の基準に基づき3段階判定した。
【0120】
S:優れた軽やかさ(見掛け密度≦0.33)
A:良好な軽やかさ(0.34<見掛け密度≦0.39)
C:軽やかさに劣る(0.4<見掛け密度)。
【0121】
柔軟性は、カトーテック製純曲げ試験機(KES-FB2)を用いて、20cm×20cmの織物を有効試料長20cm×1cmで把持し、緯糸方向に最大曲率±2.5cm-1の条件下で曲げたときの、曲率0.5cm-1と1.5cm-1の単位幅当たりの曲げモーメント(gf・cm/cm)の差を曲率差1cm―1で除した値と曲率-0.5cm-1と-1.5cm-1の単位幅当たりの曲げモーメント(gf・cm/cm)の差を曲率差1cm―1で除した値の平均値を算出した。この動作を1箇所あたり3回行い、これを合計10箇所について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第4位を四捨五入した後に100で割った値を曲げ硬さB×10-2(gf・cm/cm)とした。得られた曲げ硬さB×10-2から柔軟性をそれぞれ次の基準に基づき3段階判定した。
【0122】
S:優れた柔軟性(曲げ硬さB×10-2≦1.0)
A:良好な柔軟性(1.0<曲げ硬さB×10-2≦1.9)
C:柔軟性に劣る(1.9<曲げ硬さB×10-2)。
【0123】
反発感は、カトーテック製純曲げ試験機(KES-FB2)を用いて、20cm×20cmの織物を有効試料長20cm×1cmで把持し、緯糸方向に曲げたときの、曲率±1.0cm-1におけるヒステリシスの幅(gf・cm/cm)を算出した。この動作を1箇所あたり3回行い、これを合計10箇所について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第4位を四捨五入した後に100で割った値を曲げ回復2HB×10-2(gf・cm/cm)とした。得られた曲げ回復2HB×10-2から反発感をそれぞれ次の基準に基づき3段階判定した。
【0124】
S:優れた反発感(曲げ回復2HB×10-2≦1.0)
A:良好な反発感(1.0<曲げ回復2HB×10-2≦1.9)
C:反発感に劣る(1.9<曲げ回復2HB×10-2)。
【0125】
ドライ感は、カトーテック製自動化表面試験機(KES-FB4)を用いて、20cm×20cmの織物の10cm×10cmの範囲をピアノ線で巻かれた1cm×1cmの端子に50gの荷重をかけて、1.0mm/secの速さで滑らすことで平均摩擦係数MIUを求めた。この動作を1箇所あたり3回行い、これを合計10箇所について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第2位を四捨五入した値を摩擦係数とした。得られた摩擦係数からドライ感をそれぞれ次の基準に基づき3段階判定した。
【0126】
S:優れたドライ感(0.7≦摩擦係数)
A:良好なドライ感(0.3≦摩擦係数<0.7)
C:ドライ感に劣る(摩擦係数<0.3)。
【0127】
P.発色性
経糸方向のカバーファクター(CFA)が800、緯糸方向のカバーファクター(CFB)が1200となるように繊維本数を調整し、8枚サテン織物を作成した。得られた織物について、分散染料Sumikaron Black S-3B(10%owf)を用いて黒色に染色した。染色後の織物をコニカミノルタ製CM-3700Aを用いて、織物の反射測定からL値を評価した。この動作を1箇所あたり3回の測定を行い、これを合計10箇所について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第1位を四捨五入した値を黒染色L値とした。得られた黒染色L値から発色性を次の基準に基づき3段階判定した。
【0128】
S:発色性に優れる(黒染色L値<15)
A:発色性が良好 (15≦黒染色L値<18)
C:発色性に劣る (18≦黒染色L値)。
【0129】
Q.耐摩耗性
経糸方向のカバーファクター(CFA)が1100、緯糸方向のカバーファクター(CFB)が1100となるように繊維本数を調整し、平織物を作成した。得られた織物について、分散染料Sumikaron Black S-3B(10%owf)を用いて黒色に染色した。染色後の織物を直径10cmの円形に切り出し、蒸留水で湿潤させて円盤に取り付けた。更に30cm角に切り出した織物を乾いたまま水平の板の上に固定した。蒸留水で湿潤させた織物が取り付けられた円盤を水平な板の上に固定された織物に対して水平に接触させ、円盤の中心が直径10cmの円を描くように、荷重420g、速度50rpmで10分間円盤を円運動させ、2枚の織物を摩擦させた。摩擦終了後4時間放置してから、円盤に取り付けた織物の変褪色の程度を、変褪色用グレースケールを用い、0.5級刻みで1~5級の級判定を実施した。得られた級判定の結果から耐摩耗性を次の基準に基づき3段階判定した。
【0130】
S:優れた耐摩耗性(級判定:4級以上)
A:良好な耐摩耗性(級判定:3級または3-4級)
C:耐摩耗性に劣る(級判定:3級未満)。
【0131】
[実施例1]
ポリマー1として、5-ナトリウムスルホイソフタル酸を8mol%、ポリエチレングリコールを9wt%共重合したポリエチレンテレフタレート(SSIA-PEG共重合PET、溶融粘度:100Pa・s、融点:233℃)、ポリマー2としてポリエチレンテレフタレート(PET、溶融粘度:130Pa・s、254℃)を準備した。
【0132】
これらのポリマーを290℃で別々に溶融後、ポリマー1/ポリマー2を重量比で30/70となるように計量して、図12に示した複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させ、図5(a)に示すような真円形状の芯鞘複合繊維であって、三葉断面の凸部先端に溝を有した芯成分を鞘成分が完全に被膜した複合構造となるように、吐出孔から流入ポリマーを吐出した。この時、鞘成分がポリマー1、芯成分がポリマー2となるように配置した。
【0133】
吐出された複合ポリマー流に冷却固化後油剤を付与し、紡糸速度1500m/minで巻取り、90℃と130℃に加熱したローラー間で延伸を行うことで、56dtex-36フィラメントの芯鞘複合繊維を製造した。
【0134】
得られた鞘成分の最小厚みと繊維径の比(Smin/D)は0.03、鞘成分の最大厚みと最小厚みの比(Smax/Smin)は16であった。また芯成分の重心Gから溝底Mまでの距離、GMと芯成分の重心Gから凸部先端Nまでの距離、GNの比(GN/GM)は1.42であり、本発明の芯鞘複合繊維であることが確認できた。
【0135】
また、該芯鞘複合繊維の内接円径Rと外接円径Rの比は1.0であり、マルチフィラメントとして存在した場合に最密充填されやすくなることから、鞘成分に溶出後に得られる繊維間空隙を斑なく均一にすることができるものであった。
【0136】
得られた芯鞘複合繊維を製織した織物を、90℃に加熱した1重量%の水酸化ナトリウム水溶液(浴比1:50)中にて処理することで鞘成分を99%以上除去し、該芯鞘複合繊維の芯成分からなるマルチフィラメント(繊維径10μm)で構成される織物を得た。
【0137】
該マルチフィラメントで構成される織物は、多葉形状の芯成分を完全に被覆した鞘成分が溶出されることで、マルチフィラメント中に天然シルクのような繊維一本一本の間に5μm未満の微細な繊維間空隙と10μm以上の粗大な繊維間空隙が均一に存在した空隙構造を発現していることから、視野角依存性のない良好な光沢(対比光沢度:1.7)や反発感(曲げ回復2HB:0.6×10-2gf・cm/cm)のあるドライ感(摩擦係数:0.7)を有しつつ、良好な軽やかさ(見掛け密度:0.40g/cm)と柔軟性(曲げ硬さB:0.7×10-2gf・cm/cm)を有する天然シルクに近い風合いとなっていた。
【0138】
また該織物を黒色に染色した際には、単繊維間に均一に存在する繊維間空隙と異形断面繊維の凸部先端の溝部での光の乱反射により優れた発色性(黒染色L値:14)を発現しており、該溝部でのフィブリル化による変褪色もない良好な耐摩耗性(3-4級)も有していることが分かった。結果を表1-1に示す。
【0139】
[実施例2,3]
ポリマー1/ポリマー2の重量比を20/80(実施例2)、10/90(実施例3)と変更する以外は全て実施例1に従い実施した。
【0140】
実施例2、3においては、鞘成分を少なくするほど曲げ硬さが大きくなり、天然シルク様の風合いは残しつつも、弾力のある触感が特徴的な織物となっていた。またマルチフィラメント中の繊維の凸部先端の溝部が浅くなることで、耐摩耗性にも優れるものであった。結果を表1-1に示す。
【0141】
[実施例4]
芯鞘複合繊維の複合構造を図2(a)と変更する以外は全て実施例1に従い実施した。
【0142】
実施例4においては、マルチフィラメント中の繊維の凸部先端の溝部が無くなることで、光の乱反射が低減されて反射強度が高まり、光沢の視認性が増すものであった。また、耐摩耗性にも優れていた。結果を表1-1に示す。
【0143】
[比較例1]
ポリマー1として、5-ナトリウムスルホイソフタル酸を8mol%、ポリエチレングリコールを9wt%共重合したポリエチレンテレフタレート(SSIA-PEG共重合PET、溶融粘度:100Pa・s、融点:233℃)、ポリマー2としてポリエチレンテレフタレート(PET、溶融粘度:130Pa・s、254℃)を準備した。
【0144】
これらのポリマーを290℃で別々に溶融後、ポリマー1/ポリマー2を重量比で30/70となるように計量して、図12に示した複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させ、図3(a)に示すような真円形状の芯鞘複合繊維であって、丸断面の芯成分を鞘成分で被覆した単純な複合構造となるように、吐出孔から流入ポリマーを吐出した。この時、鞘成分がポリマー1、芯成分がポリマー2となるように配置した。
【0145】
吐出された複合ポリマー流に冷却固化後油剤を付与し、紡糸速度1500m/minで巻取り、90℃と130℃に加熱したローラー間で延伸を行うことで、56dtex-36フィラメントの芯鞘複合繊維を製造した。
【0146】
得られた芯鞘複合繊維を製織した織物を、90℃に加熱した1重量%の水酸化ナトリウム水溶液(浴比1:50)中にて処理することで鞘成分を99%以上除去し、該芯鞘複合繊維の芯成分からなるマルチフィラメント(繊維径10μm)で構成される織物を得た。
【0147】
得られた織物はマルチフィラメント中に繊維一本一本の間に10μm以上の粗大な繊維間空隙は存在するものの、5μm未満の微細な繊維間空隙が存在しておらず、織物を触った際に空隙が潰れてしまうことで、軽やかさや反発感に欠けるものであった。また、芯成分に凸部や溝部が存在しないことから、ドライ感にも欠けるものであった。結果を表1-1に示す。
【0148】
[比較例2]
芯鞘複合繊維の複合構造を図3(b)と変更する以外は全て比較例1に従い実施した。
【0149】
比較例2においては、三葉断面の芯成分であることから、ドライ感は僅かに向上するものの、やはり鞘成分の溶出後に繊維一本一本の間に5μm未満の微細な繊維間空隙が存在しておらず、軽やかさや反発感に欠けるものであった。結果を表1-1に示す。
【0150】
[比較例3]
ポリマー1として、5-ナトリウムスルホイソフタル酸を8mol%、ポリエチレングリコールを9wt%共重合したポリエチレンテレフタレート(SSIA-PEG共重合PET、溶融粘度:100Pa・s、融点:233℃)、ポリマー2としてポリエチレンテレフタレート(PET、溶融粘度:130Pa・s、254℃)を準備した。
【0151】
これらのポリマーを290℃で別々に溶融後、ポリマー1/ポリマー2を重量比で5/95となるように計量して、図12に示した複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させ、図6(a)に示すような、特開昭57-5912号公報に記載される三葉形状の難溶出成分の凸部先端に易溶出成分を繊維内部方向へ先細り状に配置した複合構造となるよう、吐出孔から流入ポリマーを吐出した。この時、易溶出成分がポリマー1、難溶出成分がポリマー2となるように配置した。
【0152】
吐出された複合ポリマー流に冷却固化後油剤を付与し、紡糸速度1500m/minで巻取り、90℃と130℃に加熱したローラー間で延伸を行うことで、56dtex-36フィラメントの複合繊維を製造した。
【0153】
得られた複合繊維を製織した織物を、90℃に加熱した1重量%の水酸化ナトリウム水溶液(浴比1:50)中にて処理することで鞘成分を99%以上除去し、該複合繊維の難溶出成分からなるマルチフィラメント(繊維径12μm)で構成される織物を得た。
【0154】
比較例3においては、三葉形状の異形断面繊維の凸部先端に繊維内部方向へ先細り状の深い溝が存在することから、摩擦係数が高まり、ドライ感には優れるものの、耐摩耗性に劣るものであった。また鞘成分の溶出後に繊維一本一本の間に10μm以上の粗大な繊維間空隙が存在しておらず、高級感に欠けるギラついた光沢であり、また軽やかさや柔軟性、反発感にも欠けるものであった。結果を表1-2に示す。
【0155】
[実施例5,6]
芯鞘複合繊維の芯成分のみからなる異形断面繊維の繊維径を14μm(実施例5)、17μm(実施例6)となるように吐出量を変更する以外は全て実施例4に従い実施した。
【0156】
実施例5、6においては、繊維径を大きくすることで鞘溶出後に得られるマルチフィラメント中の繊維の繊維断面が三葉断面であることによる凹凸が強調されて反射強度がより高まり、得られた織物の光沢の視認性がさらに増すものであった。また、曲げ硬さが高くなることから、天然シルク様の風合いは残しつつも、特徴的な弾力のある触感が得られた。結果を表1-2に示す。
【0157】
[実施例7]
芯鞘複合繊維の複合構造を図2(b)と変更する以外は全て実施例4に従い実施した。
【0158】
実施例7においては、マルチフィラメント中の繊維の繊維断面が三葉断面から四葉断面となることで、凸部での光の乱反射が増大し、より高級感のある光沢へと近づくのみならず、摩擦も向上しドライ感のある触感も増した風合いの織物が得られるものであった。結果を表1-2に示す。
【0159】
[比較例4]
ポリマー1として、5-ナトリウムスルホイソフタル酸を8mol%、ポリエチレングリコールを9wt%共重合したポリエチレンテレフタレート(SSIA-PEG共重合PET、溶融粘度:100Pa・s、融点:233℃)、ポリマー2としてポリエチレンテレフタレート(PET、溶融粘度:130Pa・s、254℃)を準備した。
【0160】
これらのポリマーを290℃で別々に溶融後、ポリマー1/ポリマー2を重量比で20/80となるように計量して、図12に示した複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させ、図3(c)に示すような、特開2010-222771号公報に記載される易溶出成分が難溶出成分を複数個に分割した複合構造となるよう、吐出孔から流入ポリマーを吐出した。この時、易溶出成分がポリマー1、難溶出成分がポリマー2となるように配置した。
【0161】
吐出された複合ポリマー流に冷却固化後油剤を付与し、紡糸速度1500m/minで巻取り、90℃と130℃に加熱したローラー間で延伸を行うことで、56dtex-18フィラメントの複合繊維を製造した。
【0162】
得られた複合繊維を製織した織物を、90℃に加熱した1重量%の水酸化ナトリウム水溶液(浴比1:50)中にて処理することで鞘成分を99%以上除去し、該複合繊維の難溶出成分からなるマルチフィラメント(繊維径6μm)で構成される織物を得た。
【0163】
比較例4においては、マルチフィラメント中の繊維が細繊維径であることから、光沢や柔軟性には優れるものの、繊維一本一本の間に5μm未満の微細な繊維間空隙と10μm以上の粗大な繊維間空隙が均一に存在しておらず、軽やかさや反発感に欠けるものであった。また細繊維径であることから染料で染まりづらく、発色性にも欠けるものであった。結果を表1-2に示す。
【0164】
[実施例8]
ポリマー1として、5-ナトリウムスルホイソフタル酸を8mol%、ポリエチレングリコールを9wt%共重合したポリエチレンテレフタレート(SSIA-PEG共重合PET、溶融粘度:100Pa・s、融点:233℃)、ポリマー2としてイソフタル酸を7mol%共重合したポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET、溶融粘度:140Pa・s、融点:232℃)、ポリマー3としてポリエチレンテレフタレート(PET、溶融粘度:130Pa・s、融点:254℃)を準備した。
【0165】
これらのポリマーを290℃で別々に溶融後、ポリマー1/ポリマー2/ポリマー3を重量比で30/35/35となるように計量して、図12に示した複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させ、図5(b)に示すような楕円形状の芯鞘複合繊維であって、芯成分を鞘成分が完全に被膜しており、芯成分が鞘成分により2個に分割され、分割された芯成分1と芯成分2がそれぞれ三葉断面の凸部先端に溝を有した複合構造となるように、吐出孔から流入ポリマーを吐出した。この時、鞘成分がポリマー1、芯成分1がポリマー2、芯成分2がポリマー3となるように配置した。
【0166】
吐出された複合ポリマー流に冷却固化後油剤を付与し、紡糸速度1500m/minで巻取り、90℃と130℃に加熱したローラー間で延伸を行うことで、56dtex-18フィラメントの芯鞘複合繊維を製造した。
【0167】
得られた鞘成分の最小厚みと繊維径の比(Smin/D)は0.03、鞘成分の最大厚みと最小厚みの比(Smax/Smin)は12であった。また芯成分の重心Gから溝底Mまでの距離、GMと芯成分の重心Gから凸部先端Nまでの距離、GNの比(GN/GM)は1.38であり、本発明の芯鞘複合繊維であることが確認できた。
【0168】
また、該芯鞘複合繊維の内接円径Rと外接円径Rの比は1.8であり、マルチフィラメントとして存在した場合に最密充填されやすくなることから、鞘成分に溶出後に得られる繊維間空隙を斑なく均一にすることができるものであった。
【0169】
得られた芯鞘複合繊維を製織した織物を、90℃に加熱した1重量%の水酸化ナトリウム水溶液(浴比1:50)中にて処理することで鞘成分を99%以上除去した後、130℃の湿熱にて熱処理を施すことで、該芯鞘複合繊維の芯成分からなるマルチフィラメント(繊維径10μm)で構成される織物を得た。
【0170】
該マルチフィラメントで構成される織物は、多葉形状の芯成分を完全に被覆した鞘成分が溶出されることで、天然シルクのような繊維一本一本の間に5μm未満の微細な繊維間空隙と10μm以上の粗大な繊維間空隙が均一に存在した空隙構造を発現しており、また芯成分1と芯成分2が異なる収縮差を有することから鞘成分を溶出後に熱処理を施すことで糸長差が発現し、実施例1と比べて10μm以上の繊維間空隙が粗大となることで、より天然シルクの有する繊維間空隙に酷似した空隙構造を有していた。またその風合いは、視野角依存性のない高級感のある光沢(対比光沢度:1.4)に加え、優れた反発感(曲げ回復2HB:0.8×10-2gf・cm/cm)のあるドライ感(摩擦係数:0.8)を有しつつ、非常に軽やか(見掛け密度:0.32g/cm)かつ優れた柔軟性(曲げ硬さB:0.9×10-2gf・cm/cm)を発現しており、まるで天然シルクのような風合いを有する織物であった。
【0171】
また該織物を黒色に染色した際には、光の乱反射がより強調され、優れた発色性(黒染色L値:13)を発現しており、該溝部でのフィブリル化による変褪色もない良好な耐摩耗性(3-4級)も有していることが分かった。結果を表2-1に示す。
【0172】
[実施例9、10]
ポリマー2をポリプロピレンテレフタレート(PPT)(実施例9)、ポリエチレンテレフタレート(PET)(実施例10)に変更する以外は全て実施例8に従い実施した。
【0173】
実施例9においては、PPTが有するゴム弾性の特性が相まって、より柔軟性に優れた風合いを発現するのみならず、天然シルクにはない特異なストレッチ機能も有した織物であった。またPPTはPET対比低屈折率であることから、得られた織物は発色性にも優れるものであった。
【0174】
実施例10においては、糸長差は発現しないものの、天然シルク様の風合いを十分に発現するものであり、芯成分が2個に分割されることから、実施例1に対して、5μm未満の微細な繊維間空隙と10μm以上の粗大な繊維間空隙がより均一に存在しており、得られた織物の風合いとして、軽やかさ、柔軟性、反発感が向上するものであった。結果を表2-1に示す。
【0175】
[実施例11]
芯鞘複合繊維の複合構造を図4(a)と変更する以外は全て実施例8に従い実施した。
【0176】
実施例11においては、異形断面繊維の凸部先端の溝部が無くなることで、光の乱反射が低減されて反射強度が高まり、光沢の視認性が増すものであった。また、耐摩耗性にも優れていた。結果を表2-1に示す。
【0177】
[実施例12,13]
芯鞘複合繊維の複合構造を図4(a)とし、ポリマー2/ポリマー3の重量比を50/20(実施例12)、20/50(実施例13)と変更する以外は全て実施例8に従い実施した。
【0178】
実施例12、13においては、高収縮成分であるポリマー2の比率を多くするほど、糸長差が強く発現して、得られる織物の軽やかさが増すものであり、また低収縮成分であるポリマー3を多くするほど、光の乱反射が低減されて反射強度が高まり、光沢の視認性が増すのみならず、湿熱処理での高収縮成分の高い収縮率による目詰まりが抑えられ、柔軟性や反発感にも優れるものであった。結果を表2-1、表2-2に示す。
【0179】
[実施例14]
芯鞘複合繊維の複合構造を図4(a)とし、異形度(R/R)を3.0と変更する以外は全て実施例8に従い実施した。
【0180】
芯鞘複合繊維の異形度が大きくなるほど芯成分の異形度も大きくなることから、鞘溶出後に得られるマルチフィラメント中の繊維の繊維断面が三葉断面であることによる凹凸が強調されて反射強度がより高まり、得られた織物の光沢の視認性がさらに増すものであった。結果を表2-2に示す
[実施例15]
芯鞘複合繊維の複合構造を図4(b)、異形度(R/R=1.0)と変更する以外は全て実施例8に従い実施した。
【0181】
芯鞘複合繊維の異形度が小さくなるほど、マルチフィラメントとして存在した場合により最密充填されやすくなることから、鞘成分に溶出後に得られる繊維間空隙を斑なく均一にすることができ、得られる織物の品位が向上するものであった。結果を表2-2に示す
[実施例16]
芯鞘複合繊維の複合構造を図4(c), 異形度(R/R=1.0)と変更する以外は全て実施例8に従い実施した。
【0182】
実施例16においては、芯成分が鞘成分により6個に分割されることで、鞘成分を除去した後に得られる異形断面繊維の繊維径が細くなるため、よりマイルドで高級感の増した光沢となるのみならず、柔軟性にも優れる風合いの織物が得られるものであった。結果を表2-2に示す。
【0183】
[比較例5]
ポリマー1として、5-ナトリウムスルホイソフタル酸を8mol%、ポリエチレングリコールを9wt%共重合したポリエチレンテレフタレート(SSIA-PEG共重合PET、溶融粘度:100Pa・s、融点:233℃)、ポリマー2としてイソフタル酸を7mol%共重合したポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET、溶融粘度:140Pa・s、融点:232℃)、ポリマー3としてポリエチレンテレフタレート(PET、溶融粘度:130Pa・s、融点:254℃)を準備した。
【0184】
これらのポリマーを290℃で別々に溶融後、ポリマー1/ポリマー2/ポリマー3を重量比で5/42.5/42.5となるように計量して、図12に示した複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させ、図6(b)に示すような、特開平2-145825号公報に記載される三葉形状の難溶出成分の凸部先端に易溶出成分を繊維内部方向へ先細り状に配置した複合構造であり、難溶出成分が高収縮成分と低収縮成分の2種類のポリマーからなるよう、吐出孔から流入ポリマーを吐出した。この時、易溶出成分がポリマー1、難溶出成分における高収縮成分がポリマー2、低収縮成分がポリマー3となるように配置した。
【0185】
吐出された複合ポリマー流に冷却固化後油剤を付与し、紡糸速度1500m/minで巻取り、90℃と130℃に加熱したローラー間で延伸を行うことで、56dtex-36フィラメント(高収縮:28dtex-18フィラメント、低収縮:28dtex-18フィラメント)の複合繊維を製造した。
【0186】
得られた複合繊維を製織した織物を、90℃に加熱した1重量%の水酸化ナトリウム水溶液(浴比1:50)中にて処理することで鞘成分を99%以上除去した後、130℃の湿熱にて熱処理を施すことで、該複合繊維の難溶出成分からなるマルチフィラメント(繊維径12μm)で構成される織物を得た。
【0187】
比較例5においては、三葉形状の異形断面繊維の凸部先端に繊維内部方向へ先細り状の深い溝が存在することから、摩擦係数が高まり、ドライ感には優れるものの、耐摩耗性に劣るものであった。また高収縮成分と低収縮成分の熱収縮差による捲縮形態の発現により軽やかさは得られるものの、繊維一本一本の間に5μm未満の微細な繊維間空隙と10μm以上の粗大な繊維間空隙が均一に存在していないことに加えて、高収縮成分の収縮率が高いことから目詰まりも発生し、柔軟性、反発感に欠けるものであった。結果を表2-2に示す。
【0188】
[実施例17]
ポリマー1として5-ナトリウムスルホイソフタル酸を8mol%、ポリエチレングリコールを9wt%共重合したポリエチレンテレフタレート(SSIA-PEG共重合PET、溶融粘度:100Pa・s、融点:233℃)、ポリマー2としてイソフタル酸を7mol%共重合したポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET、溶融粘度:140Pa・s、融点:232℃)、ポリマー3としてポリエチレンテレフタレート(PET、溶融粘度:130Pa・s、融点:254℃)を準備した。
【0189】
これらのポリマーを290℃で別々に溶融後、ポリマー1/ポリマー2/ポリマー3を重量比で30/35/35となるように計量して、図12に示した複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させ、図10(b)に示すような芯鞘複合繊維であって、芯成分を鞘成分が完全に被膜しており、芯成分が鞘成分により2個に分割され、分割された芯成分1と芯成分2がそれぞれ三葉断面の凸部先端に溝を有した複合構造となるように、吐出孔から流入ポリマーを吐出した。この時、鞘成分がポリマー1、芯成分1がポリマー2、芯成分2がポリマー3となるように配置した。
【0190】
吐出された複合ポリマー流に冷却固化後油剤を付与し、紡糸速度1500m/minで巻取り、90℃と130℃に加熱したローラー間で延伸を行うことで、56dtex-18フィラメントの芯鞘複合繊維を製造した。
【0191】
得られた鞘成分の最小厚みと繊維径の比(Smin/D)は0.03、鞘成分の最大厚みと最小厚みの比(Smax/Smin)は12であった。また芯成分の重心Gから溝底Mまでの距離、GMと芯成分の重心Gから凸部先端Nまでの距離、GNの比(GN/GM)は1.38であり、本発明の芯鞘複合繊維であることが確認できた。
【0192】
また、該芯鞘複合繊維の内接円径Rと外接円径Rの比は1.8であり、マルチフィラメントとして存在した場合に最密充填されやすくなることから、鞘成分に溶出後に得られる繊維間空隙を斑なく均一にすることができるものであった。
【0193】
得られた芯鞘複合繊維を製織した織物を、130℃の湿熱にて熱処理を行った後、90℃に加熱した1重量%の水酸化ナトリウム水溶液(浴比1:50)中にて処理することで鞘成分を99%以上除去し、異なるポリマーから構成された捲縮性繊維が均一に混在しているマルチフィラメントからなる織物を得た。得られた捲縮性繊維は、三葉断面の凸部先端に溝(MN/D:0.13)を有した複合構造(異型度:1.6)を有しており、繊維径は10μm、捲縮山数は14山/cm、融点の異なるポリマーから構成された捲縮性繊維の糸長差は7%であった。
【0194】
該マルチフィラメントからなる織物は、融点の異なるポリマーが有する熱収縮差から湿熱処理で捲縮形態が発現したことによる繊維間での排除体積効果によって、繊維1本1本の間に10μm以上の粗大な繊維間空隙が形成されるのみならず、隣り合わせになった融点の異なるポリマーからなる捲縮性繊維の間には5μm未満の繊維間空隙を形成しており、マルチフィラメント中に5μm未満の微細な繊維間空隙と10μm以上の粗大な繊維間空隙がより均一に混在した、天然シルクの有する繊維間空隙に酷似した空隙構造を有していた。該空隙構造を評価したところ、平均繊維間空隙距離:10.5μm、繊維間空隙距離が5μm未満の割合:25%、空隙率:65%であった。
【0195】
また該織物は、視野角依存性のない高級感のある光沢(対比光沢度:1.4)や非常に軽やか(見掛け密度:0.32g/cm)でドライ感(摩擦係数:0.8)を有しつつ、実施例8よりも安定的に5μm未満の繊維間空隙距離を形成していることで、反発感(曲げ回復2HB:0.7×10-2gf・cm/cm)や柔軟性(曲げ硬さB:0.8×10-2gf・cm/cm)がより優れており、まるで天然シルクのような風合いを有するものであった。
【0196】
また該織物を黒色に染色した際には、繊維間に均一に存在する10μm以上の粗大な繊維間空隙で光の乱反射がより強調され、優れた発色性(黒染色L値:13)を発現しており、該溝部でのフィブリル化による変褪色もない良好な耐摩耗性(3-4級)も有していることが分かった。結果を表3に示す。
【0197】
[実施例18,19]
ポリマー1/ポリマー2/ポリマー3の重量比を20/40/40(実施例18)、10/45/45(実施例19)と変更する以外は全て実施例17に従い実施した。
【0198】
実施例18,19においては、鞘成分を少なくするほどマルチフィラメントが有する5μm未満の繊維間空隙距離の割合が高くなるものであり、それに伴い曲げ硬さが大きくなることで、天然シルク様の風合いは残しつつも、弾力のある触感が特徴的な織物となっていた。また捲縮性繊維の凸部先端の溝部が浅くなることで、耐摩耗性にも優れるものであった。結果を表3に示す。
【0199】
[実施例20]
ポリマー2をポリプロピレンテレフタレート(PPT、溶融粘度:150Pa・s、融点:233℃)に変更する以外は全て実施例17に従い実施した。
【0200】
実施例20においては、PPTが有するゴム弾性の特性が相まって、より柔軟性に優れた風合いを発現するのみならず、天然シルクにはない特異なストレッチ機能も有した織物であった。またPPTはPET対比低屈折率であることから、得られた織物は発色性にも優れるものであった。結果を表3に示す。
【0201】
[実施例21]
ポリマー2として高い溶融粘度を有するポリエチレンテレフタレート(高粘度PET、溶融粘度:250Pa・s、融点:254℃)に変更する以外は全て実施例17に従い実施した。
【0202】
実施例5においては、ポリマー3とポリマー2の融点差ではなく粘度差で捲縮を発現させることで、マルチフィラメントを構成する捲縮性繊維の捲縮山数も小さくなることから、マルチフィラメントの空隙構造による光の乱反射が抑えられ、光沢の視認性が増すものであった。さらに湿熱処理での捲縮形態の発現が小さくなることで5μm未満の繊維間空隙距離の割合も高くなり、反発感にも優れるものであった。結果を表3に示す。
【0203】
[比較例6]
ポリマー1として5-ナトリウムスルホイソフタル酸を8mol%、ポリエチレングリコールを9wt%共重合したポリエチレンテレフタレート(SSIA-PEG共重合PET、溶融粘度:100Pa・s、融点:233℃)、ポリマー2としてイソフタル酸を7mol%共重合したポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET、溶融粘度:140Pa・s、融点:232℃)、ポリマー3としてポリエチレンテレフタレート(PET、溶融粘度:130Pa・s、融点:254℃)を準備した。
【0204】
これらのポリマーを290℃で別々に溶融後、ポリマー1/ポリマー2を重量比で2.5/47.5、ポリマー1/ポリマー3を重量比で2.5/47.5となるように計量して、図12に示した複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させ、図11に示すような、特開平2-145825号公報に記載される三葉形状の難溶出成分の凸部先端に易溶出成分を繊維内部方向へ先細り状に配置した複合構造であり、高収縮成分と易溶出成分の2成分からなる複合繊維と低収縮成分と易溶出成分の2成分からなる複合繊維が別々の吐出孔から吐出されるよう、流入ポリマーを吐出した。この時、易溶出成分がポリマー1、高収縮成分がポリマー2、低収縮成分がポリマー3となるように配置した。
【0205】
吐出された複合ポリマー流に冷却固化後油剤を付与し、紡糸速度1500m/minで巻取り、90℃と130℃に加熱したローラー間で延伸を行うことで、56dtex-36フィラメント(高収縮:28dtex-18フィラメント、低収縮:28dtex-18フィラメント)の複合繊維を製造した。
【0206】
得られた複合繊維を製織した織物を、130℃の湿熱にて熱処理を行った後、90℃に加熱した1重量%の水酸化ナトリウム水溶液(浴比1:50)中にて処理することで鞘成分を99%以上除去し、該複合繊維の難溶出成分からなるマルチフィラメント(繊維径12μm)で構成される織物を得た。
【0207】
比較例6においては、三葉形状の異形断面繊維の凸部先端に繊維内部方向へ先細り状の深い溝が存在することから、摩擦係数が高まり、ドライ感には優れるものの、耐摩耗性に劣るものであった。また高収縮成分と低収縮成分の糸長差により軽やかさは得られる一方、紡糸混繊方式であることから異なるポリマーからなる繊維が偏って混在しており、5μm未満の繊維間空隙距離の割合が少なく、反発感に欠けるものであった。結果を表3に示す。
【0208】
[実施例22]
芯鞘複合繊維の複合構造を図10(a)と変更する以外は全て実施例17に従い実施した。
【0209】
実施例22においては、マルチフィラメント中の捲縮性繊維の凸部先端の溝部が無くなることで、光の乱反射が低減されて反射強度が高まり、光沢の視認性が増すものであった。また、耐摩耗性にも優れていた。結果を表4に示す。
【0210】
[実施例23,24]
ポリマー2/ポリマー3の重量比を50/20(実施例23)、20/50(実施例24)と変更する以外は全て実施例17に従い実施した。
【0211】
実施例23、24においては、高収縮成分であるポリマー2の比率を多くするほど、よりマルチフィラメント中の捲縮性繊維の捲縮山数や糸長差が発現して、マルチフィラメントが有する空隙構造における平均繊維間空隙距離が高まり、得られる織物の軽やかさが増すものであり、また低収縮成分であるポリマー3を多くするほど、マルチフィラメント中の捲縮性繊維の捲縮山数も小さくなることからマルチフィラメントの空隙構造による光の乱反射が抑えられ、光沢の視認性が増すのみならず、湿熱処理での捲縮形態の発現が小さくなることで5μm未満の繊維間空隙距離の割合も高くなり、反発感にも優れるものであった。結果を表4に示す。
【0212】
[実施例25,26]
マルチフィラメント中の捲縮性繊維の繊維径を14μm(実施例25)、17μm(実施例26)となるように吐出量を変更する以外は全て実施例17に従い実施した。
【0213】
実施例25,26においては、繊維径を大きくすることでマルチフィラメント中の捲縮性繊維が三葉断面であることによる凹凸が強調されて反射強度がより高まり、得られた織物の光沢の視認性がさらに増すものであった。また、曲げ硬さが高くなることから、天然シルク様の風合いは残しつつも、特徴的な弾力のある触感が得られた。結果を表4に示す。
【産業上の利用可能性】
【0214】
本発明のマルチフィラメントは、異なるポリマーで構成された2種類以上の捲縮性繊維がマルチフィラメント中に均一に混在していることで、マルチフィラメント中に天然シルクのような繊維一本一本の間に5μm未満の微細な繊維間空隙と10μm以上の粗大な繊維間空隙が均一に混在した特異な空隙構造を形成することができる。そのため、本発明のマルチフィラメントからなる繊維製品は、天然シルク特有の様々な風合いを再現することができ、従来天然シルクが主に用いられていた洋装や和装はもちろんのこと、合成繊維ならではの取扱い性の容易さも相まって、ジャケット、スカート、パンツ、下着などの一般衣料から、スポーツ衣料、衣料資材、カーペット、ソファー、カーテンなどのインテリア製品、カーシートなどの車輌内装品、化粧品、化粧品マスク、ワイピングクロス、健康用品などの生活用途など多岐に渡る繊維製品に好適に用いることができる。
【0215】
【表1-1】
【0216】
【表1-2】
【0217】
【表2-1】
【0218】
【表2-2】
【0219】
【表3】
【0220】
【表4】
【符号の説明】
【0221】
a 天然シルクの生糸における難溶出成分からなるフィブロイン
b 天然シルクの生糸における易溶出成分からなるセリシン
c 難溶出成分
d 易溶出成分
A 複合繊維断面に2点以上で内接する真円(内接円)
B 複合繊維断面に2点以上で外接する真円(外接円)
C 繊維断面に2点以上で内接する真円(内接円)
D 繊維断面に2点以上で外接する真円(外接円)
F 繊維横断面の面積を2等分するような任意の2本の直線の交点(重心)から任意の繊維表面に向かって引いた直線と繊維表面との交点
G 繊維横断面の面積を2等分するような任意の2本の直線の交点(重心)
M 凸部先端の溝表面における繊維横断面の面積を2等分するような任意の2本の直線の交点(重心)から最も近い点
N 凸部先端の溝表面における繊維横断面の面積を2等分するような任意の2本の直線の交点(重心)から最も遠い点
S 繊維横断面の面積を2等分するような任意の2本の直線の交点から任意の繊維表面に向かって引いた直線と芯成分の外周との交点
X マルチフィラメント中の任意の繊維
Y マルチフィラメント中において、その重心とXの重心とを結ぶ直線上に他の繊維が存在しない状態となる繊維であって、Xと異なるポリマーで構成された繊維
1 計量プレート
2 分配プレート
3 吐出プレート
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