(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/46 20180101AFI20241112BHJP
F24F 11/70 20180101ALI20241112BHJP
F24F 11/80 20180101ALI20241112BHJP
F24F 11/89 20180101ALI20241112BHJP
F24F 11/79 20180101ALI20241112BHJP
F24F 120/10 20180101ALN20241112BHJP
【FI】
F24F11/46
F24F11/70
F24F11/80
F24F11/89
F24F11/79
F24F120:10
(21)【出願番号】P 2021001979
(22)【出願日】2021-01-08
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 泰明
(72)【発明者】
【氏名】植木 貴司
(72)【発明者】
【氏名】松岡 勝己
(72)【発明者】
【氏名】河崎 聡
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-057951(JP,A)
【文献】特開2013-195047(JP,A)
【文献】特開2017-083084(JP,A)
【文献】特開2020-099580(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0146485(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103429045(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00 - 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の空調を、当該室内を水平方向に仮想的に分割した複数の分割領域ごとに行う空調システムであって、
上記各分割領域に設けられた、冷房、暖房および送風機能を有する空調機と、
上記各分割領域に設けられ、当該各分割領域での人の存在を検出する人検出手段と、
上記分割領域のうち、上記人検出手段によって人の存在が検出されたタスク領域が、設定された温度になるように、当該タスク領域の空調機に冷房または暖房運転を行わせるとともに、上記分割領域のうち、当該タスク領域と隣り合い且つ上記人検出手段によって人の存在が検出されないアンビエント領域の空調機に、当該タスク領域から当該アンビエント領域に空気が流れ出すのを抑えるエアカーテンを形成するように、送風運転を行わせる制御装置と、
上記複数の分割領域の境界近傍にそれぞれ設けられ、相隣り合う分割領域間での熱量の移動を検出する熱漏れ検出手段と、を備え、
上記制御装置は、上記熱漏れ検出手段の検出結果に基づき、上記タスク領域から漏れる熱量が所定基準値以下となるように、当該タスク領域の空調機および/または上記アンビエント領域の空調機を制御するように構成されて
おり、
上記熱漏れ検出手段は、
上記相隣り合う分割領域のうちの一方側における上記境界近傍の天井に設けられた天井第1センサと、上記相隣り合う分割領域のうちの他方側における上記境界近傍の天井に設けられた天井第2センサとで構成される天井付近熱漏れ検出手段と、
上記相隣り合う分割領域のうちの一方側における上記境界近傍の床に設けられた床第1センサと、上記相隣り合う分割領域のうちの他方側における上記境界近傍の床に設けられた床第2センサとで構成される床付近熱漏れ検出手段と、を備えていることを特徴とする空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関し、特に、室内における人が存在する領域を効率的に温度調整する空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、室内を、人が存在する領域(タスク領域)と、それ以外の領域(アンビエント領域)とに分け、タスク領域を集中的に冷暖房する空調方式であるタスク・アンビエント空調が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、人が居るか否かを検知する人検知センサと、温度を検出する温度センサと、を有する複数の室内機が通信接続され、人検知センサが人の存在を検知した場合、温度センサが検出する温度が予め設定された設定温度になるように冷房または暖房運転を行い、且つ、人の存在を検知した室内機と隣り合う位置にある、人の存在を検知していない室内機を送風運転する空気調和システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のものによれば、人の存在を検知した室内機と連動させて、隣り合う位置にある、人の存在を検知していない室内機から送風運転を行うことにより、冷暖房運転によって温度調整された空気が、人の存在を検知していない空調エリアへ流れ出すことを防止し、人が居る空調エリアだけを効率的に温度調節し、省エネ性と快適性を高めることができるとされている。
【0006】
しかしながら、特許文献1のものでは、タスク領域からアンビエント領域へ熱が漏れることが考慮されていない。それ故、特許文献1のものでは、かかる熱の漏れに起因してタスク領域で温度変動が生じた場合に、設定温度を変えなければ、快適性を維持することが困難となる一方、タスク領域での快適性を維持するために、設定温度を大幅に上げたり下げたりすれば、省エネルギー性を実現することが困難となり、この点で改良の余地がある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、タスク・アンビエント空調を行う空調システムにおいて、快適性と省エネルギー性とを両立することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係る空調システムでは、冷房または暖房運転が行われるタスク領域から、これと隣り合うアンビエント領域へ漏れる熱量に基づいて、空調機を制御するようにしている。
【0009】
具体的には、本発明は、室内の空調を、当該室内を水平方向に仮想的に分割した複数の分割領域ごとに行う空調システムを対象としている。
【0010】
そして、この空調システムは、上記各分割領域に設けられた、冷房、暖房および送風機能を有する空調機と、上記各分割領域に設けられ、当該各分割領域での人の存在を検出する人検出手段と、上記分割領域のうち、上記人検出手段によって人の存在が検出されたタスク領域が、設定された温度になるように、当該タスク領域の空調機に冷房または暖房運転を行わせるとともに、上記分割領域のうち、当該タスク領域と隣り合い且つ上記人検出手段によって人の存在が検出されないアンビエント領域の空調機に、当該タスク領域から当該アンビエント領域に空気が流れ出すのを抑えるエアカーテンを形成するように、送風運転を行わせる制御装置と、上記複数の分割領域の境界近傍にそれぞれ設けられ、相隣り合う分割領域間での熱量の移動を検出する熱漏れ検出手段と、を備え、上記制御装置は、上記熱漏れ検出手段の検出結果に基づき、上記タスク領域から漏れる熱量が所定基準値以下となるように、当該タスク領域の空調機および/または上記アンビエント領域の空調機を制御するように構成されており、上記熱漏れ検出手段は、上記相隣り合う分割領域のうちの一方側における上記境界近傍の天井に設けられた天井第1センサと、上記相隣り合う分割領域のうちの他方側における上記境界近傍の天井に設けられた天井第2センサとで構成される天井付近熱漏れ検出手段と、上記相隣り合う分割領域のうちの一方側における上記境界近傍の床に設けられた床第1センサと、上記相隣り合う分割領域のうちの他方側における上記境界近傍の床に設けられた床第2センサとで構成される床付近熱漏れ検出手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0011】
この構成によれば、制御装置が、人検出手段によって人の存在が検出されたタスク領域の空調機に冷房または暖房運転を行わせるとともに、タスク領域と隣り合い且つ人検出手段によって人の存在が検出されないアンビエント領域の空調機に、タスク領域からアンビエント領域に空気が流れ出すのを抑えるエアカーテンを形成するように、送風運転を行わせることから、タスク領域の温度調節を効率的に行うことができる。
【0012】
しかも、制御装置は、タスク領域とアンビエント領域との間での熱量の移動を検出する熱漏れ検出手段の検出結果に基づき、タスク領域から漏れる熱量が所定基準値以下となるように、例えば、タスク領域の空調機の設定温度や風量や風向き等、および/または、アンビエント領域の空調機の送風量や風向き等、を制御することから、タスク領域からアンビエント領域へ漏れる熱量を可及的に少なくして、タスク領域での快適性を維持することができる。このように、設定温度を大幅に上げたり下げたりすることなく、タスク領域の温度変動を抑えることができるので、省エネルギー性を実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に係る空調システムによれば、快適性と省エネルギー性とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る空調システムを模式的に示す図である。
【
図2】空調システムにおける制御概念を模式的に説明する図である。
【
図3】エアカーテンの制御例を模式的に説明する図である。
【
図4】空調システムによる制御例を示すフローチャートである。
【
図5】熱漏れ量の時間推移の一例を模式的に説明する図である。
【
図6】変形例1に係る熱漏れ量の演算手法を模式的に説明する図である。
【
図7】変形例2に係る熱漏れ量の演算手法を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
-空調システム-
図1は、本実施形態に係る空調システム1を模式的に示す図である。この空調システム1は、天井5と床7とで区画された室内3の空調を、当該室内3を水平方向に仮想的に分割した複数の分割領域3A,3B,3Cごとに行うものである。より詳しくは、空調システム1は、室内3を、人Pが存在する分割領域(タスク領域)3Bと、それ以外の分割領域(アンビエント領域)3A,3Cと、に分けて、タスク領域3Bを集中的に冷暖房する空調方式であるタスク・アンビエント空調を行うものである。なお、分割領域3A,3B,3Cは、例えばパーテションや壁などによって物理的に分割されている訳ではなく、後述するエアカーテン9A,9Cによって「仮想的」に分割されている。
【0017】
この空調システム1は、
図1に示すように、各分割領域3A,3B,3Cに設けられた空調機21,22,23と、各分割領域3A,3B,3Cに設けられた人感センサ31,32,33と、複数の分割領域3A,3B,3Cの境界近傍にそれぞれ設けられた熱漏れ検出センサ41,42,43,44と、各空調機21,22,23を制御する制御装置10と、を備えている。
【0018】
各空調機21,22,23は、冷房機能、暖房機能および送風機能を有している。より詳しくは、各空調機21,22,23は、送風温度や送風量や風向(空気を吹出す角度)を調整可能に構成されている。例えば空調機21,22,23は、室内3の空気を吸い込み、冷媒によって空気中の熱だけを室外機(図示せず)から排出し、冷媒によって熱が排出された冷たい空気だけを室内3に戻すことで、予め設定された設定温度まで室内3を冷やすことが可能になっている(冷房機能)。また、空調機21,22,23は、室外機で外気中にある熱を奪い、蒸発器(図示せず)を使って熱を放出した際に温められた空気を部屋に流すことで室内3を設定温度まで暖めることが可能になっている(暖房機能)。さらに、空調機21,22,23は、フィルター(図示せず)を通して吸い込んだ空気を冷媒や蒸発器を通さずに室内3に吐き出すことで、単に風を発生させることも可能になっている(送風機能)。
【0019】
空調機21,22,23は、
図1に示すように、有線または無線の通信線11を介してそれぞれ制御装置10と接続されていて、制御装置10から出力される指令に従い、それぞれ送風温度や送風量や風向を調整することで、互いに別個に冷房機能、暖房機能または送風機能を発揮するようになっている。それ故、本実施形態の空調システム1では、例えば、空調機22に暖房運転を行わせる一方、空調機21,23に送風運転を行わせること等も可能になっている。
【0020】
人感センサ(人検出手段)31,32,33は、赤外線や、超音波や、可視光や、赤外線と超音波との組合せ等を用いて、それぞれ分割領域3A,3B,3Cでの人Pの所在を検出可能に構成されている。人感センサ31,32,33は、
図1に示すように、有線または無線の通信線13を介してそれぞれ制御装置10と接続されていて、検出結果を制御装置10へ出力するようになっている。例えば
図1では、人感センサ32によって分割領域3Bでの人Pの存在が検出され、この検出結果が制御装置10へ出力されるとともに、人感センサ31,33によって分割領域3A,3Cでの人Pの不存在がそれぞれ検出され、これらの検出結果が制御装置10へ出力される。これにより、制御装置10は、分割領域3Bを、集中的に冷暖房をすべきタスク領域と認識する一方、分割領域3A,3Cを、冷暖房を行わないアンビエント領域と認識する。
【0021】
熱漏れ検出センサ(熱漏れ検出手段)41,42,43,44は、相隣り合う分割領域3A,3B,3C間での熱量の移動を検出するものであり、それぞれ二つ一組のセンサ41A,41B,42B,42C,43A,43B,44B,44Cで構成されている。
【0022】
より詳しくは、熱漏れ検出センサ41は、天井5における分割領域3Aと分割領域3Bとの境界近傍で、分割領域3B側に設けられた第1センサ41Bと、分割領域3A側に設けられた第2センサ41Aとで構成されていて、天井5付近における分割領域3Bと分割領域3Aとの間での熱量の移動(熱漏れ)を検出する。また、熱漏れ検出センサ42は、天井5における分割領域3Bと分割領域3Cとの境界近傍で、分割領域3B側に設けられた第1センサ42Bと、分割領域3C側に設けられた第2センサ42Cとで構成されていて、天井5付近における分割領域3Bと分割領域3Cとの間での熱漏れを検出する。さらに、熱漏れ検出センサ43は、床7における分割領域3Aと分割領域3Bとの境界近傍で、分割領域3B側に設けられた第1センサ43Bと、分割領域3A側に設けられた第2センサ43Aとで構成されていて、床7付近における分割領域3Bと分割領域3Aとの間での熱漏れを検出する。また、熱漏れ検出センサ44は、床7における分割領域3Bと分割領域3Cとの境界近傍で、分割領域3B側に設けられた第1センサ44Bと、分割領域3C側に設けられた第2センサ44Cとで構成されていて、床7付近における分割領域3Bと分割領域3Cとの間での熱漏れを検出する。熱漏れ検出センサ41,42,43,44は、
図1に示すように、有線または無線の通信線15を介してそれぞれ制御装置10と接続されている。
【0023】
第1センサ41B,42B,43B,44Bおよび第2センサ41A,42C,43A,44Cは共に、温度センサであってもよいし、センサの表面に加えられた(センサを表から裏に貫く)単位時間当たりの熱量に比例する電気信号を生成する熱流センサであってもよい。
【0024】
第1センサ41B,42B,43B,44Bおよび第2センサ41A,42C,43A,44Cが温度センサの場合には、第1センサ41B,42B,43B,44Bの検出した温度T1と、第2センサ41A,42C,43A,44Cの検出した温度T2とが、通信線15を介してそれぞれ制御装置10へ出力される。
【0025】
これに対し、第1センサ41B,42B,43B,44Bおよび第2センサ41A,42C,43A,44Cが熱流センサの場合には、第1センサ41B,42B,43B,44Bの検出した単位時間当たりの熱量Q1と、第2センサ41A,42C,43A,44Cの検出した単位時間当たりの熱量Q2とが、通信線15を介してそれぞれ制御装置10へ出力される。
【0026】
制御装置10は、分割領域3A,3B,3Cのうち、人感センサ31,32,33によって人Pの存在が検出されたタスク領域が、予め設定された設定温度になるように、当該タスク領域の空調機21,22,23に冷房または暖房運転を行わせるとともに、分割領域3A,3B,3Cのうち、当該タスク領域と隣り合い且つ人感センサ31,32,33によって人Pの存在が検出されないアンビエント領域の空調機21,22,23に、当該タスク領域から当該アンビエント領域に空気が流れ出すのを抑えるエアカーテン9A,9Cを形成するように、送風運転を行わせるように構成されている。
【0027】
図1の例では、制御装置10は、人感センサ31,32,33によって人Pの存在が検出された分割領域3Bが、設定温度になるように空調機22に冷房または暖房運転を行わせるとともに、分割領域3Bと隣り合い且つ人感センサ31,33によって人Pの存在が検出されない分割領域3A,3Cの空調機21,23に、分割領域3Bから分割領域3A,3Cに空気が流れ出すのを抑えるエアカーテン9A,9Cを形成するように、送風運転を行わせる。
【0028】
さらに、制御装置10は、熱漏れ検出センサ41,42,43,44の検出結果に基づき、タスク領域から漏れる熱量が所定基準値PV以下となるように、当該タスク領域および/またはアンビエント領域の空調機21,22,23を制御するように構成されている。より詳しくは、制御装置10は、熱漏れ検出センサ41,42,43,44の検出結果に基づき、熱漏れ量を算出し、算出した熱漏れ量が所定基準値PVを超えていれば、熱漏れ量が所定基準値PV以下となるように、タスク領域における空調機の送風温度や風量や風向の調整、および/または、アンビエント領域における空調機の送風量や風向の調整を実行するように構成されている。
【0029】
図2は、空調システム1における制御概念を模式的に説明する図である。分割領域3Bがタスク領域で且つ分割領域3Cがアンビエント領域である場合に、
図2(a)に示すように、(第1センサ44Bの検出した温度T1(熱量Q1)-第2センサ44Cの検出した温度T2(熱量Q2))≧所定温度差TP(所定熱量差QP)であれば、制御装置10は、分割領域3Bから分割領域3Cへの熱漏れが発生していない(熱漏れ量が所定基準値PV以下である)と判定する。この場合、制御装置10は、現在の状態を維持すべく、空調機22に冷房または暖房運転をそのまま行わせるとともに、空調機23にそのまま送風運転を行わせる。
【0030】
これに対し、
図2(b)に示すように、(第1センサ44Bの検出した温度T1(熱量Q1)-第2センサ44Cの検出した温度T2(熱量Q2))<所定温度差TP(所定熱量差QP)であれば、分割領域3Bから漏れた冷風(または温風)によって分割領域3Cの空気が冷やされて(または暖められて)両者の差が小さくなっていることから、制御装置10は分割領域3Bから分割領域3Cへの熱漏れが発生している(熱漏れ量が所定基準値PVを超えている)と判定する。この場合、制御装置10は、
図2(c)に示すように、エアカーテン9Cによる封入効果を強めるべく、空調機23の送風量や風向を変更したり、空調機22の送風温度や風量や風向を変更したりすることで、分割領域3Bから分割領域3Cへ漏れる熱量が所定基準値PV以下となるような制御を実行する。
【0031】
図3は、エアカーテン9A,9Cの制御例を模式的に説明する図である。例えば、
図3(a)に示すように、熱漏れ量が大きければ、エアカーテン送風量(エアカーテン9A,9Cを形成するための空気の送風量)を強くする一方、熱漏れ量が小さければ、エアカーテン送風量を弱くするような制御を実行するように、制御装置10を構成してもよい。また、例えば、
図3(b)に示すように、熱漏れ量の大小に応じて、エアカーテン風向(エアカーテン9A,9Cを形成するための空気の向き)を変更するように、制御装置10を構成してもよい。なお、
図3(a)や
図3(b)に示す制御例は、例えばマップ化して制御装置10に記憶させてもよい。
【0032】
-制御フロー-
次に、空調システム1による制御例について、
図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、このフローチャートは、制御対象となる分割領域(以下、「対象分割領域」ともいう。)と隣り合う分割領域が、人感センサ31,32,33によって人Pの存在が検出されないアンビエント領域であることを前提としている。
【0033】
先ず、ステップS1では、制御装置10が、人感センサ31,32,33の検出結果に基づいて、対象分割領域に人Pが存在しているか否かを判定する。このステップS1での判定がNOの場合、すなわち、対象分割領域に人Pが存在していない場合には、ステップS2に進み、制御装置10が、対象分割領域の空調機21,22,23に対して、冷暖房を弱運転で行うよう指令を出した後、ステップS3に進む。ステップS3では、仮にアンビエント領域の空調機21,22,23が送風運転を行っていれば、制御装置10が、アンビエント領域の空調機21,22,23の送風運転を停止した後、ENDする。
【0034】
これに対し、ステップS1での判定がYESの場合、すなわち、対象分割領域に人Pが存在している場合には、ステップS4に進む。次のステップS4では、制御装置10が、対象分割領域の温度が設定温度となるように、対象分割領域の空調機21,22,23に冷暖房運転を開始させた後、ステップS5に進む。次のステップS5では、制御装置10が、対象分割領域からアンビエント領域に空気が流れ出すのを抑えるエアカーテンを形成するように、アンビエント領域の空調機21,22,23に送風運転を開始させた後、ステップS6に進む。
【0035】
次のステップS6では、熱漏れ検出センサ41,42,43,44が、対象分割領域およびアンビエント領域の温度(または熱量)を検出した後、ステップS7に進む。次のステップS7では、制御装置10が、熱漏れ検出センサ41,42,43,44の検出結果に基づいて熱漏れ量を算出した後、ステップS8に進む。
【0036】
次のステップS8では、制御装置10が、ステップS7で算出した熱漏れ量が所定基準値PV以下であるか否かを判定する。このステップS8での判定がYESの場合、すなわち、熱漏れ量が所定基準値PV以下である場合には、そのままENDする。
【0037】
一方、ステップS8での判定がNOの場合には、ステップS9に進み、制御装置10が、マップ化して記憶された
図3(a)や
図3(b)に示す制御例に基づいて制御信号を生成し、かかる制御信号をアンビエント領域の空調機21,22,23に出力する。次のステップS10では、アンビエント領域の空調機21,22,23が、制御装置10からの制御信号に従ってエアカーテンの制御を行った後、ENDする。
【0038】
図5は、熱漏れ量の時間推移の一例を模式的に説明する図である。
図4に示したフローチャートのような制御をある程度繰り返すことで、
図5に示すように、熱漏れ量は時間の経過とともに、相対的に低い値にサチレートする(
図5の破線参照)。それ故、対象分割領域に人Pが存在している間中、上記フローチャートのような制御を繰り返すのではなく、熱漏れ量がサチレートした後は、アンビエント領域の空調機21,22,23に最弱運転をさせるように、制御装置10を構成してもよい。
【0039】
(変形例1)
本変形例は、1つの熱流センサによって熱漏れ検出センサを構成している点が、上記実施形態と異なるものである。以下では、便宜上、分割領域3Bをタスク領域と仮定するとともに、分割領域3Cをアンビエント領域と仮定して、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0040】
図6は、本変形例に係る熱漏れ量の演算手法を模式的に説明する図である。
図6に示すように、本変形例では、床7における分割領域3Bと分割領域3Cとの境界近傍で、アンビエント領域である分割領域3C側に設けられた熱流センサ50のみを熱漏れ検出センサとして用いている。
【0041】
図6(a)に示すように、タスク領域である分割領域3Bの空調機22から出た冷風や温風が、アンビエント領域である分割領域3Cの空調機23で形成されたエアカーテン9Cによって、分割領域3B内に封入されていれば(以下、「封入状態」ともいう。)、分割領域3Bから分割領域3Cに冷風や温風が流れ出さないはずである。それ故、タスク領域である分割領域3Bが封入状態であれば、熱流センサ50を表から裏に貫く熱流は存在せず、熱流センサ50の検出値≒0となるはずである。
【0042】
一方、
図6(b)に示すように、熱漏れが発生して、分割領域3Bから分割領域3Cに冷風や温風が流れ出した場合(以下、「熱漏れ状態」ともいう。)には、
図6(b)の白抜き矢印で示すように、冷風や温風による熱流が、熱流センサ50を表から裏に貫き、単位時間当たりの熱量に比例する電気信号が出力されることになる。そうして、熱漏れ状態における熱流センサ50の検出値は熱漏れ量に比例し、且つ、封入状態における熱流センサ50の検出値≒0なので、熱漏れ状態における熱流センサ50の検出値≒熱漏れ量と見做すことができる。
【0043】
それ故、本変形例では、制御装置10は、熱流センサ50の検出値(≒熱漏れ量)が所定基準値PVを超えていれば、熱流センサ50の検出値が所定基準値PV以下となるように、タスク領域における空調機の送風温度や風量や風向の調整、および/または、アンビエント領域における空調機の送風量や風向の調整を実行するように構成されている。
【0044】
(変形例2)
本変形例は、1つの温度センサによって熱漏れ検出センサを構成している点が、上記実施形態と異なるものである。以下では、便宜上、分割領域3Bをタスク領域と仮定するとともに、分割領域3Cをアンビエント領域と仮定して、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0045】
図7は、本変形例に係る熱漏れ量の演算手法を模式的に説明する図である。
図7に示すように、本変形例では、床7における分割領域3Bと分割領域3Cとの境界近傍で、アンビエント領域である分割領域3C側に設けられた温度センサ60のみを熱漏れ検出センサとして用いている。
【0046】
図7(a)に示すように、タスク領域である分割領域3Bが封入状態であれば、温度センサ60は、空調機22から出た冷風や温風の影響を受けず、温度センサ60の検出値≒アンビエント領域である分割領域3Cの空調機23の設定温度(以下、「アンビエント空調設定温度」ともいう。)となるはずである。
【0047】
一方、
図7(b)に示すように、熱漏れ状態では、温度センサ60は、空調機22から出た冷風や温風の影響を受け、温度センサ60の検出値≠アンビエント空調設定温度となる。そうして、封入状態における温度センサ60の検出値≒アンビエント空調設定温度なので、(温度センサ60の検出値-アンビエント空調設定温度)≒熱漏れ量と見做すことができる。
【0048】
それ故、本変形例では、制御装置10は、(温度センサ60の検出値-アンビエント空調設定温度)が所定基準値PVを超えていれば、(温度センサ60の検出値-アンビエント空調設定温度)が所定基準値PV以下となるように、タスク領域における空調機の送風温度や風量や風向の調整、および/または、アンビエント領域における空調機の送風量や風向の調整を実行するように構成されている。
【0049】
以上のように、変形例1および2によれば、二つ一組のセンサではなく、単一の熱流センサ50および温度センサ60を用いた簡単な構成で、快適性と省エネルギー性とを両立することができる。
【0050】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0051】
上記実施形態では、室内3を仮想的に3つに分割した場合について本発明を適用したが、これに限らず、室内3を仮想的に4以上に分割した場合について本発明を適用してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、室内3を仮想的に一方向に分割したが、これに限らず、平面的に直交する二方向に室内3を仮想的に分割してもよい。
【0055】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によると、快適性と省エネルギー性とを両立することができるので、タスク・アンビエント空調を行う空調システムに適用して極めて有益である。
【符号の説明】
【0057】
1 空調システム
3 室内
3A,3C 分割領域(アンビエント領域)
3B 分割領域(タスク領域)
9A,9C エアカーテン
10 制御装置
21,22,23 空調機
31,32,33 人感センサ(人検出手段)
41,42,43,44 熱漏れ検出センサ(熱漏れ検出手段)
50 熱流センサ(熱漏れ検出手段)
60 温度センサ(熱漏れ検出手段)
P 人
PV 所定基準値