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特許7585798光ケーブルの製造方法及び光ケーブルの製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】光ケーブルの製造方法及び光ケーブルの製造装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
G02B6/44 391
G02B6/44 366
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021004661
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2022109389
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】大石 鉄治
(72)【発明者】
【氏名】武田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】高橋 健
(72)【発明者】
【氏名】石川 正彦
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/025814(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0003802(US,A1)
【文献】国際公開第2017/061196(WO,A1)
【文献】特開2012-032755(JP,A)
【文献】特開2008-076897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
H01B 11/00-11/22, 13/22-13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルコアの周囲に、外面に識別標識を備えた外被を形成する外被形成工程と、
前記外被形成工程の前に、前記ケーブルコアの周方向の位置を揃える位置固定工程と、
を有し、
前記ケーブルコアは、外周部に内部シースを有し、前記内部シースは、前記ケーブルコアの中心を挟んで対向する位置に配される、長手方向に延びる2本の抗張力体を含み、
前記位置固定工程は、前記長手方向とは異なる方向に作用する第1荷重を前記ケーブルコアに印加する第1曲げ工程を有し、
前記位置固定工程は、
環状に配置された複数個の第1ローラの外側に前記ケーブルコアを架け、前記ケーブルコアを前記複数個の第1ローラに接触させながら、前記複数個の第1ローラの周囲を周回させる工程を有する、光ケーブルの製造方法。
【請求項2】
前記外被形成工程の前に、前記ケーブルコアの周囲に金属シートを形成する金属シート形成工程を有し、
前記金属シート形成工程の前に、前記第1曲げ工程を行い、
前記位置固定工程は、前記金属シート形成工程の後に、前記長手方向とは異なる方向に作用する第2荷重を前記ケーブルコアに印加する第2曲げ工程を、さらに有する、請求項に記載の光ケーブルの製造方法。
【請求項3】
前記外被形成工程において、前記金属シートの前記周方向の少なくとも一つの端部と前記識別標識との間の前記周方向での位置関係が一定に保持される請求項に記載の光ケーブルの製造方法。
【請求項4】
前記位置固定工程は、
千鳥状に配置された複数個の第2ローラに前記ケーブルコアを架け、前記ケーブルコアを複数個の第2ローラに接触させながら、前記複数個の第2ローラの間を蛇行させる工程を有する、請求項から請求項のいずれか1項に記載の光ケーブルの製造方法。
【請求項5】
パスライン上の第1位置において、ケーブルコアの周囲に金属シートを形成する金属シート形成部と、
前記第1位置よりも前記パスラインの上流側の第2位置において、長手方向とは異なる方向に作用する第1荷重を前記ケーブルコアに印加する第1荷重印加部と、
前記第1位置よりも前記パスラインの下流側の第3位置において、前記ケーブルコアの中心を挟んで対向する位置に配される、前記長手方向に延びる2本の抗張力体を含む前記ケーブルコアの周囲に、外面に識別標識を備えた外被を形成する外被形成部と、
を有し、
前記第1位置における前記ケーブルコアの周方向の位置が揃い、
前記外被形成部において、前記金属シートの前記周方向の少なくとも一つの端部と前記識別標識との間の前記周方向での位置関係が一定に保持され
前記第1荷重印加部は、
環状に配置された複数個の第1ローラの外側に前記ケーブルコアを架け、前記ケーブルコアを前記複数個の第1ローラに接触させながら、前記複数個の第1ローラの周囲を周回させる、光ケーブルの製造装置。
【請求項6】
前記第1位置よりも前記パスラインの下流側であって、前記第3位置の上流側の第4位置において、前記長手方向とは異なる方向に作用する第2荷重を前記ケーブルコアに印加する第2荷重印加部を有する請求項に記載の光ケーブルの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ケーブルの製造方法及び光ケーブルの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内部シースと外部シースとの間に補強シート及び引裂紐が設けられた光ケーブルが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-106568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の光ケーブルによれば所期の目的は達成されるものの、補強シートの隙間の位置が長手方向でずれると、解体作業等がしにくくなることがある。
【0005】
本開示は、ケーブル外被を解体しやすくすることができる光ケーブルの製造方法及び光ケーブルの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の光ケーブルの製造方法は、ケーブルコアの周囲に、外面に識別標識を備えた外被を形成する外被形成工程と、前記外被形成工程の前に、前記ケーブルコアの周方向の位置を揃える位置固定工程と、を有し、前記ケーブルコアは、外周部に内部シースを有し、前記内部シースは、前記ケーブルコアの中心を挟んで対向する位置に配される、長手方向に延びる2本の抗張力体を含み、前記位置固定工程は、前記長手方向とは異なる方向に作用する第1荷重を前記ケーブルコアに印加する第1曲げ工程を有し、前記位置固定工程は、環状に配置された複数個の第1ローラの外側に前記ケーブルコアを架け、前記ケーブルコアを複数個の第1ローラに接触させながら、前記複数個の第1ローラの周囲を周回させる工程を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ケーブル外被を解体しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、光ケーブルの一例を示す断面図である。
図2図2は、光ケーブルの製造装置を示す図である。
図3図3は、環状の第1ローラセットの構成を示す平面図である。
図4図4は、テンションメンバに作用する荷重を示す模式図(その1)である。
図5図5は、テンションメンバに作用する荷重を示す模式図(その2)である。
図6図6は、フォーマにおける金属テープの変形を示す断面図である。
図7図7は、千鳥型の第2ローラセットの構成を示す平面図である。
図8図8は、第3ローラセットの構成を示す平面図である。
図9図9は、支持線を含む光ケーブルの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
〔1〕 本開示の一態様に係る光ケーブルの製造方法は、ケーブルコアの周囲に、外面に識別標識を備えた外被を形成する外被形成工程と、前記外被形成工程の前に、前記ケーブルコアの周方向の位置を揃える位置固定工程と、を有する。
【0012】
識別標識を備えた外被を形成する前にケーブルコアの周方向の位置を揃える。このため、識別標識に対する相対的な位置ずれを抑制し、ケーブル外被を解体しやすくできる。
【0013】
〔2〕 〔1〕において、前記ケーブルコアは、外周部に内部シースを有し、前記内部シースは、前記ケーブルコアの中心を挟んで対向する位置に配される、長手方向に延びる2本の抗張力体を含み、前記位置固定工程は、前記長手方向とは異なる方向に作用する第1荷重を前記ケーブルコアに印加する第1曲げ工程を有してもよい。この場合、2本の抗張力体に作用する荷重が釣り合うようにケーブルコアに周方向の力が作用するため、ケーブルコアの周方向の位置を揃えやすい。
【0014】
〔3〕 〔2〕において、前記外被形成工程の前に、前記ケーブルコアの周囲に金属シートを形成する金属シート形成工程を有し、前記金属シート形成工程の前に、前記第1曲げ工程を行い、前記位置固定工程は、前記金属シート形成工程の後に、前記長手方向とは異なる方向に作用する第2荷重を前記ケーブルコアに印加する第2曲げ工程を、さらに有してもよい。この場合、鳥獣等による光ケーブルの損傷を抑制しやすく、また、2本の抗張力体に作用する荷重を釣り合わせやすい。
【0015】
〔4〕 〔3〕において、前記外被形成工程は、前記金属シートの前記周方向の少なくとも一つの端部と前記識別標識との間の前記周方向での位置関係が一定に保持されてもよい。この場合、識別標識を手掛かりに金属シートの一つの端部を見つけやすくできる。
【0016】
〔5〕 〔2〕~〔4〕において、前記位置固定工程は、環状に配置された複数個の第1ローラの外側に前記ケーブルコアを架け、前記ケーブルコアを複数個の第1ローラに接触させながら、前記複数個の第1ローラの周囲を周回させる工程を有してもよい。この場合、2本の抗張力体に作用する荷重を釣り合わせやすい。
【0017】
〔6〕 〔2〕~〔5〕において、前記位置固定工程は、千鳥状に配置された複数個の第2ローラに前記ケーブルコアを架け、前記ケーブルコアを複数個の第2ローラに接触させながら、前記複数個の第2ローラの間を蛇行させる工程を有してもよい。この場合、2本の抗張力体に作用する荷重を釣り合わせやすい。
【0018】
〔7〕 本開示の他の一態様に係る光ケーブルの製造方法は、ケーブルコアの周囲に金属シートを形成する金属シート形成工程と、前記金属シートの周囲に、外面に識別標識を備えた外被を形成する外被形成工程と、前記ケーブルコアの周方向の位置を揃える位置固定工程と、を有し、前記ケーブルコアは、外周部に内部シースを有し、前記内部シースは、前記ケーブルコアの中心を挟んで対向する位置に配され、長手方向に延びる2本の抗張力体を含み、前記位置固定工程は、前記金属シート形成工程の前に、環状に配置された複数個の第1ローラの外側に前記ケーブルコアを架け、前記ケーブルコアを複数個の第1ローラに接触させながら、前記複数個の第1ローラの周囲を周回させることで、前記長手方向とは異なる方向に作用する第1荷重を前記ケーブルコアに印加する第1曲げ工程と、前記金属シート形成工程の後に、千鳥状に配置された複数個の第2ローラに前記ケーブルコアを架け、前記ケーブルコアを複数個の第2ローラに接触させながら、前記複数個の第2ローラの間を蛇行させることで、前記長手方向とは異なる方向に作用する第2荷重を前記ケーブルコアに印加する第2曲げ工程と、を有し、前記外被形成工程において、前記金属シートの前記周方向の少なくとも一つの端部と前記識別標識との間の前記周方向での位置関係が一定に保持される。
【0019】
〔8〕 本開示の他の一態様に係る光ケーブルの製造装置は、パスライン上の第1位置において、ケーブルコアの周囲に金属シートを形成する金属シート形成部と、前記第1位置よりも前記パスラインの上流側の第2位置において、長手方向とは異なる方向に作用する第1荷重を前記ケーブルコアに印加する第1荷重印加部と、前記第1位置よりも前記パスラインの下流側の第3位置において、前記ケーブルコアの中心を挟んで対向する位置に配される、前記長手方向に延びる2本の抗張力体を含む前記ケーブルコアの周囲に、外面に識別標識を備えた外被を形成する外被形成部と、を有し、前記第1位置における前記ケーブルコアの周方向の位置が揃い、前記外被形成部において、前記金属シートの前記周方向の少なくとも一つの端部と前記識別標識との間の前記周方向での位置関係が一定に保持される。
【0020】
第1位置において金属シート形成部より金属シートが形成され、第1位置よりもパスラインの上流側の第2位置において第1荷重印加部により第1荷重がケーブルコアに印加される。また、第2位置よりもパスラインの下流側の第3位置において識別標識を備えた外被が形成される。第1位置においてケーブルコアの周方向の位置が揃い、金属シートの周方向の少なくとも一つの端部と識別標識との間の周方向での位置関係が一定に保持される。このため、識別標識を手掛かりに金属シートの少なくとも一つの端部を見つけやすい。
【0021】
〔9〕 〔8〕において、前記第1位置よりも前記パスラインの下流側であって、前記第3位置の上流側の第4位置において、前記長手方向とは異なる方向に作用する第2荷重を前記ケーブルコアに印加する第2荷重印加部を有してもよい。この場合、2本の抗張力体に作用する荷重が釣り合うようにケーブルコアに周方向の力が作用するため、第1位置においてケーブルコアの周方向の位置が揃いやすい。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態について詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0023】
まず、本実施形態により製造する光ケーブルの構成について説明する。図1は、光ケーブルの一例を示す断面図である。
【0024】
光ケーブル1は、ユニット10と、ユニット10を収容する内部シース20と、内部シース20の周囲に配される金属シート30と、金属シート30の周囲に配される外部シース40とを備える。ユニット10、内部シース20、金属シート30及び外部シース40は、断面視で同心円形状となっている。光ケーブル1は、図1の手前側、奥側に延在しており、この延在する方向を光ケーブル1の長手方向という。外部シース40は外被の一例である。
【0025】
ユニット10内には、複数本の光ファイバ16(光ファイバ心線)が配設されている。光ファイバ16は、ガラスの周囲に紫外線硬化型樹脂を被覆したものである。一般的には、複数の光ファイバ16を平行に並べて、紫外線硬化型樹脂で一括被覆した、光ファイバテープ心線の形で用いられる。
【0026】
内部シース20は、ユニット10の外周囲全体をポリエチレン樹脂等で被覆する。内部シース20は、例えば押出成形により形成することができる。
【0027】
内部シース20内に光ファイバ16と平行に延びる2本のテンションメンバ17が埋め込まれている。2本のテンションメンバ17は、ケーブルコア14の中心を挟んで対向する位置に設けられており、2本のテンションメンバ17の中心を通る直線の、テンションメンバ17の中心間の中点は、ユニット10の中心に一致する。テンションメンバ17は、敷設時にかかる張力から光ファイバ16を保護する。テンションメンバ17としては、例えば鋼線が用いられるが、繊維強化プラスチック(fiber reinforced plastic:FRP)又はアラミド繊維等が用いられてもよい。テンションメンバ17は抗張力体の一例である。ユニット10と、内部シース20と、テンションメンバ17とがケーブルコア14に含まれる。
【0028】
内部シース20の外周部には、光ファイバ16と平行に延びる引裂紐12が設けられている。例えば、2本の引裂紐12が、ケーブルコア14の中心を挟んで対向して設けられており、2本の引裂紐12の中心を通る直線の、引裂紐12の中心間の中点は、ユニット10の中心に一致する。引裂紐12は、例えばケーブルコア14の周方向においてテンションメンバ17が設けられた位置から約90度ずれた位置に設けられている。
【0029】
金属シート30は、例えばステンレス鋼等の金属で形成されている。詳細は後述するが、例えば金属テープを筒状に成形することで金属シート30を形成できる。金属シート30は、鳥獣害対策等を目的として、光ケーブル1の内部の光ファイバ16を保護するために光ファイバ16の周囲を被う内部シース20をさらに包囲するように配設されている。
【0030】
金属シート30には、光ケーブル1の長手方向に延びる隙間31が形成されている。金属シート30の周方向の第1端部が第2端部に段差状に重なり、隙間31は第1端部と第2端部との間に形成されている。隙間31は、光ケーブル1を解体する際、外部シース40から刃物等のピーラーを光ケーブル1の中心に向かって挿入して、このピーラーが隙間31を通って内部シース20に達することができるように、設けられている。
【0031】
外部シース40は、ケーブルコア14の外周囲全体を金属シート30の外方からポリエチレン樹脂等で被覆する。外部シース40は、例えば押出成形により形成することができる。外部シース40の外面には突起42が形成されている。突起42はケーブルコア14を覆う外部シース40から径方向外方に突出する。1本のテンションメンバ17の位置と、金属シート30の隙間31の位置と、突起42の位置とは、ケーブルコア14の周方向において、周方向の位置が一致している。なお、本開示における「一致」とは、完全な一致を意味するものではなく、例えば20度程度以内のずれがあってもよい。 また、2本のテンションメンバ17を結ぶ直線上に、隙間31及び突起42が存在することになるが、多少ずれていてもよい。突起42は、金属シート30の隙間の位置等を示す意味で、識別標識の一例である。なお、便宜上、図1では、外部シース40と内部シース20との間に空隙が存在するようにしているが、金属シート30と内部シース20とが密着し、外部シース40と金属シート30とが密着していてもよい。すなわち、外部シース40と内部シース20との間に、実質的に空隙が存在しなくてもよい。
【0032】
光ケーブル1の解体作業では、例えば突起42の根元にピーラーを当て、ピーラーを用いて外部シース40の一部を剥ぐ。外部シース40の突起42の近傍の部分が剥がされると、金属シート30の隙間31が露出する。隙間31にピーラーを挿入することで、金属シート30を広げることができる。そして、引裂紐12を見つけ、引裂紐12をケーブルコア14の径方向で中心から離れる方向に引っ張ることで、金属シート30及び外部シース40を引き裂くことができる。
【0033】
次に、上記の光ケーブル1の製造に好適な光ケーブルの製造装置について説明する。図2は、光ケーブルの製造装置を示す図である。
【0034】
光ケーブルの製造装置200は、コアサプライ210と、環状の第1ローラセット220と、フォーマ230と、千鳥型の第2ローラセット240と、クロスヘッド250と、第3ローラセット260と、巻取装置270と、金属テープ供給部280とを有する。製造装置200(製造ライン)の最上流側(図2における最左側)にコアサプライ210が配置され、最下流側(図2における最右側)に巻取装置270が配置されている。第1ローラセット220、フォーマ230、第2ローラセット240、クロスヘッド250及び第3ローラセット260は、この順でコアサプライ210と巻取装置270との間に配置されている。フォーマ230が設けられたパスライン上の第1位置は、第1ローラセット220が設けられたパスライン上の第2位置と、第2ローラセット240が設けられたパスライン上の第4位置との間にある。金属テープ供給部280はフォーマ230に金属テープを供給する。また、外被を形成するクロスヘッド250の位置が、パスライン上の第3位置である。
【0035】
コアサプライ210には、ケーブルコア14が巻き付けられている。すなわち、内部シース20と、引裂紐12と、テンションメンバ17とが設けられたユニット10がコアサプライ210に巻き付けられている。コアサプライ210からケーブルコア14が巻き解かれ、第1ローラセット220にケーブルコア14が供給される。
【0036】
図3は、第1ローラセットの構成を示す平面図である。第1ローラセット220は、図3に示すように、環状に配置された複数個、例えば8個の第1ローラ221を有する。各第1ローラ221は、図に対し垂直な方向を軸にして回転する。第1ローラセット220を通過する際に、ケーブルコア14は曲げられ、ケーブルコア14には、複数個の第1ローラ221が構成する環の中心に向く方向(長手方向とは異なる方向)の第1荷重が連続的に印加される。第1ローラ221の表面は、ケーブルコア14の表面が倣うように凹状の曲面となっていることが好ましい。第1ローラセット220は第1荷重印加部の一例である。
【0037】
ここで、第1ローラセット220を通過する際に、ケーブルコア14がどのような向きに揃って曲がるかを考える。ケーブルコアには、2本のテンションメンバ17A、17Bがケーブルコア14を挟んで対向する位置に存在しているので、ケーブルコア14が曲がる方向に対し、テンションメンバ17A、17Bが縦方向に並んでいると曲げにくく、横方向に並んでいると曲げやすい。このため、図5のように、2本のテンションメンバ17A、17Bを結ぶ直線が、曲げ方向に対し平行な状態からずれた状態にあると、周方向に回転する力が働き、図4のように、平行な状態になろうとする。
【0038】
図4に示すように、第1ローラ221の回転中心軸Cとテンションメンバ17Aとの間の距離LAと、回転中心軸Cとテンションメンバ17Bとの間の距離LBとが等しい場合、互いの曲げ半径が等しい。このため、テンションメンバ17Aに作用する曲げに対する反発力と、テンションメンバ17Bに作用する曲げに対する反発力とが互いに釣り合う。従って、ケーブルコア14には周方向に回転させる力は作用しない。
【0039】
一方、図5に示すように、距離LAが距離LBよりも大きい場合、テンションメンバ17Aの曲げ半径が、テンションメンバ17Bの曲げ半径よりも大きい。このため、テンションメンバ17Aに作用する曲げに対する反発力が、テンションメンバ17Bに作用する曲げに対する反発力よりも小さく、不釣り合いとなる。従って、ケーブルコア14には、距離LAと距離LBとが等しく、反発力が釣り合うように周方向に回転させる力が作用する。逆に、距離LAが距離LBよりも小さい場合にも、ケーブルコア14には、距離LAと距離LBとが等しくなるように周方向に回転させる力が作用する。
【0040】
ケーブルコア14が第1ローラセット220を通過する間、ケーブルコア14にはこのような周方向に回転する力が作用する。従って、第1ローラセット220にケーブルコア14が供給された時に、第1ローラ221の回転中心軸Cからテンションメンバ17A、17Bまでの距離LAと距離LBとが一致していない場合(回転中心軸Cに対し、平行な状態からずれた状態)でも、第1ローラセット220から排出される時には、距離LAと距離LBとが一致するようになる。すなわち、テンションメンバ17Aとテンションメンバ17Bとを結ぶ直線が、回転中心軸Cに対し平行に並んだ状態でケーブルコア14が第1ローラセット220から排出される。
【0041】
金属テープ供給部280はフォーマ230に平板状の金属テープ32を供給する。金属テープ32はケーブルコア14の例えば下方に供給され、図6に示すように、フォーマ230は、ケーブルコア14を囲むように金属テープ32を上方に湾曲させ、ケーブルコア14の上方で金属テープ32の端部同士を段差状に重ね合わせる。この結果、第1端部と第2端部との間に隙間31が形成され、金属テープ32がケーブルコア14に巻き付けられ、金属シート30が形成される。この際、ケーブルコア14の周方向で、1本のテンションメンバ17の位置と、隙間31の位置とを一致させる。図6は、フォーマにおける金属テープの変形を示す断面図である。フォーマ230は金属シート形成部の一例である。
【0042】
図7は、千鳥型の第2ローラセットの構成を示す平面図である。第2ローラセット240は、図7に示すように、千鳥状に配置された複数個、例えば3個の第2ローラ241を有する。各第2ローラ241は、図に対し垂直な方向を軸にして回転する。金属シート30が巻き付けられたケーブルコア14は、隣り合う第2ローラ241の間を蛇行する。第2ローラセット240を通過する際に、ケーブルコア14には、平面視で隣り合う2個の第2ローラ241の位置がずれる方向の第2荷重が連続的に印加される。つまり、ケーブルコア14には、図に対し平行な方向(長手方向とは異なる方向)に、第2荷重が印加される。第2ローラ241の表面は、ケーブルコア14に巻き付けられた金属シート30の表面が倣うように凹状の曲面となっていることが好ましい。第2ローラセット240は第2荷重印加部の一例である。
【0043】
なお、千鳥型の第2ローラセット240を、第1荷重印加部として使用しても良い。また、環状の第1ローラセット220の構成を第2荷重印加部として使用しても良いが、金属シート30を形成した後は曲がりにくくなるため、第2荷重印加部として使用するのは、第2ローラセットの構成の方が好ましい。
【0044】
ケーブルコア14には、第2ローラセット240を通過する際にも距離LAと距離LBとが等しくなるように周方向に回転させる力が作用する。このため、フォーマ230を通過する際の2本のテンションメンバ17の周方向の位置を、第1ローラセットのみを用いるときよりも、揃えることができる。
【0045】
クロスヘッド250は、金属シート30が巻き付けられたケーブルコア14に、金属シート30の上から、突起42を含む外部シース40を押出成形により形成する。すなわち、クロスヘッド250は、金属シート30の周囲に外部シース40を形成する。このとき、1本のテンションメンバ17の位置と、隙間31の位置と、突起42の位置とは、ケーブルコア14の周方向において、周方向の位置が一致する。クロスヘッド250は外被形成部の一例である。
【0046】
図8は、第3ローラセットの構成を示す平面図である。第3ローラセット260は、例えば水槽262内に配設された複数個、例えば3個の第3ローラ261を有する。
【0047】
なお、第3ローラセット260の構成であっても、長手方向とは異なる方向に荷重を印加することは可能であるため、第3ローラセット260を第1荷重印加部として使用しても良く、第2荷重印加部として使用しても良い。また、第3ローラセット260の位置に、第1ローラセット220又は第2ローラセット240が設けられていてもよい。
【0048】
図2図8に示す製造装置200を用いて光ケーブル1を製造する場合、クロスヘッド250を用いてケーブルコア14の周囲に突起42を備えた外部シース40を形成する。その際、突起42に対するケーブルコア14の周方向の位置が、長手方向で揃っている。従って、突起42を手掛かりに、ケーブルの解体を容易に行うことができる。
【0049】
また、ケーブルコア14に2本のテンションメンバ17が含まれ、第1位置より上流側の第2位置において第1ローラセット220により第1荷重がケーブルコア14に印加される。このため、2本のテンションメンバ17に作用する荷重が釣り合うようにケーブルコア14に周方向に回転する力が作用し、第1位置におけるケーブルコア14の周方向の位置が揃いやすい。特に、第1ローラセット220に複数の第1ローラ221が含まれ、第1ローラ221の外側にケーブルコア14を架け、ケーブルコア14を第1ローラ221に接触させながら、第1ローラ221の周囲を周回させることで、2本のテンションメンバ17に作用する荷重を釣り合わせやすい。
【0050】
また、第1位置よりもパスラインの下流側であって、外被形成部(第3位置)の上流側の第4位置において第2ローラセット240により第2荷重がケーブルコア14に印加される。このため、2本のテンションメンバ17に作用する荷重が釣り合うようにケーブルコア14に周方向に回転する力が作用し、第1位置におけるケーブルコア14の周方向の位置が揃いやすい。特に、第2ローラセット240に複数の第2ローラ241が含まれ、第2ローラ241にケーブルコア14を架け、ケーブルコア14を第2ローラ241に接触させながら、第2ローラ241の間を蛇行させることで、2本のテンションメンバ17に作用する荷重を釣り合わせやすい。
【0051】
また、金属シート30を形成することで、鳥獣による光ケーブル1の損傷を抑制しやすい。また、クロスヘッド250にて外部シース40を形成する際に、金属シート30の周方向の少なくとも一つの端部と突起42との間の周方向での位置関係が一定に保持される。このため、突起42を手掛かりに金属シート30の一つの端部を見つけやすい。
【0052】
なお、本開示の方法により製造する光ケーブルが支持線を含んでもよい。図9は、支持線を含む光ケーブルの一例を示す断面図である。
【0053】
図9に示す光ケーブル2は、突起42に代えて及び支持線70及び連結部材82を有する。支持線70は、光ファイバ16と平行に延びる複数の鋼線72を含む。支持線70はシース80に収容されている。シース80は複数の支持線70ポリエチレン樹脂等で被覆する。シース80は、光ケーブル2の長手方向において、連結部材82により外部シース40に連続的又は断続的に連結されている。1本のテンションメンバ17の位置と、金属シート30の隙間31の位置と、連結部材82の位置とは、ケーブルコア14の周方向において、周方向の位置が一致している。また、2本のテンションメンバ17を結ぶ直線上、又はその近傍に隙間31及び連結部材82があってもよい。連結部材82は識別標識の一例である。
【0054】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1、2:光ケーブル
10:ユニット
12:引裂紐
14:ケーブルコア
16:光ファイバ
17:テンションメンバ
17A、17B:テンションメンバ
20:内部シース
30:金属シート
31:隙間
32:金属テープ
40:外部シース
42:突起
70:支持線
72:鋼線
80:シース
82:連結部材
200:製造装置
210:コアサプライ
220:第1ローラセット
221:第1ローラ
230:フォーマ
240:第2ローラセット
241:第2ローラ
250:クロスヘッド
260:第3ローラセット
261:第3ローラ
262:水槽
270:巻取装置
280:金属テープ供給部
C:回転中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9