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7585804固液分離処理方法、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】固液分離処理方法、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/30 20060101AFI20241112BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20241112BHJP
   C22B 3/08 20060101ALI20241112BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20241112BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B01D21/30 A
C22B23/00 102
C22B3/08
B01D21/01 B
B01D21/24 T
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021007855
(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公開番号】P2022112162
(43)【公開日】2022-08-02
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】栗本 広大
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/112248(WO,A1)
【文献】特開2020-132982(JP,A)
【文献】特開2004-025109(JP,A)
【文献】特開2013-198865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D21/00-21/34
B01D24/00-43/00
C22B1/00-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シックナーを多段に設けてスラリーを多段洗浄しながら、有機凝集剤を添加して該スラリー中の固形分を分離し、該固形分が除去された溶液を得る固液分離処理方法であって、
前記スラリーに前記有機凝集剤を添加するに際して、
第1段目のシックナー内の液をサンプリングし、
サンプリングした前記液の、前記スラリーを投入してから固液分離が完了するまでの時間である濾過時間を測定し、
測定された濾過時間に基づいて前記有機凝集剤の添加量を調整する、
固液分離処理方法。
【請求項2】
孔径0.45μmのメンブレンフィルターを用いて測定したときの前記液の濾過時間が10秒以上15秒以下となるように、前記有機凝集剤の添加量を調整する、
請求項1に記載の固液分離処理方法。
【請求項3】
前記シックナーは、その周縁部に配設され上澄み液を排出するオーバーフロー部と、その中心部に垂直に配設された筒状のフィードウェルと、を有する沈降分離槽を備え、
前記オーバーフロー部を流れる前記上澄み液をサンプリングし、該上澄み液の濾過時間を測定する、
請求項1又は2に記載の固液分離処理方法。
【請求項4】
前記スラリーは、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法において該ニッケル酸化鉱石に対して酸による浸出処理を施して得られるスラリーである、
請求項1乃至3のいずれかに記載の固液分離処理方法。
【請求項5】
ニッケル酸化鉱石に酸を添加して浸出処理を施すことで得られる浸出スラリーを固液分離し、分離した浸出液からニッケル及びコバルトを回収するニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法であって、
シックナーを多段に設けて前記浸出スラリーを多段洗浄しながら、有機凝集剤を添加して該浸出スラリー中の固形分である浸出残渣を分離し、該浸出残渣が除去された浸出液を得る固液分離処理を行う工程を含み、
前記固液分離処理では、前記浸出スラリーに前記有機凝集剤を添加するに際して、
第1段目のシックナー内の液をサンプリングし、
サンプリングした前記液の、前記浸出スラリーを投入してから固液分離が完了するまでの時間である濾過時間を測定し、
測定された濾過時間に基づいて前記有機凝集剤の添加量を調整する、
湿式製錬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固液分離処理方法に関するものであり、より詳しくは、スラリーを多段洗浄しながら有機凝集剤を添加してスラリー中の固形分を分離して清澄性の高い溶液を得る固液分離処理方法、及びその方法を適用したニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低品位のニッケル酸化鉱石からニッケルを回収する技術として、近年、オートクレーブを使用して高温高圧下で酸浸出するHPAL法と称される湿式製錬方法が行われている。
【0003】
具体的に、HPAL法による湿式製錬方法では、オートクレーブを使用して酸浸出する浸出工程と、浸出スラリーからニッケル及びコバルトを含む浸出液(以下、「ニッケル貴液」ともいう)と浸出残渣とを分離する固液分離工程と、浸出液に含まれる鉄等の不純物を中和除去する中和工程と、中和終液から亜鉛を分離する脱亜鉛工程と、亜鉛を除去した後の溶液からニッケル及びコバルトの混合硫化物を得る硫化工程と、を有する。
【0004】
湿式製錬方法において、浸出工程での浸出処理を経て得られる浸出スラリーには、未溶解の浸出残渣や、反応に関与しなかった余剰の遊離酸が含まれている。そのため、その遊離酸を中和除去する予備中和処理を経たのち、複数の固液分離シックナーを用いてニッケル貴液と浸出残渣とに分離する向流多段洗浄を利用した固液分離工程へと送られる。
【0005】
向流多段洗浄を利用した固液分離工程における処理では、上澄み液として得られるニッケル貴液の清澄性が高いこと、また、沈殿物として得られる浸出残渣の固体濃度が高いことが求められており、この両者を達成する目的で有機凝集剤が添加されている。
【0006】
ここで、特許文献1には、スラリーを多段洗浄しながら固形分を分離除去する固液分離処理方法が開示されており、スラリーの洗浄を効果的に行って上澄み液の清澄性を向上させる方法が提案されている。具体的には、凝集剤を、第1段目のシックナーのフィードウェルに添加するとともに、第2段目のシックナーのオーバーフロー部のにその凝集剤の一部を添加することを特徴とするものである。
【0007】
特許文献1に開示の方法によれば、清澄性の高い上澄み液(ニッケル貴液)を得ることができ、シックナーの段数をより少なくして処理することも可能となり、固液分離装置の設置スペースを縮小させることができ、有効な技術であるといえる。
【0008】
ところが、固液分離処理において用いる凝集剤の使用量をさらに削減して、より効率的な処理を行うために、一層の改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開2014/112248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、複数段のシックナーを用いて多段洗浄しながらスラリーに対する固液分離を行う処理において、凝集剤の添加量を削減して、効率的な処理を行うことを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、処理対象のスラリーに有機凝集剤を添加するに際して、第1段目のシックナー内の液をサンプリングし、サンプリングした液の濾過時間の測定値に基づいてその有機凝集剤の添加量を調整することで、有機凝集剤の添加量を有効に削減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
(1)本発明の第1の発明は、シックナーを多段に設けてスラリーを多段洗浄しながら、有機凝集剤を添加して該スラリー中の固形分を分離し、該固形分が除去された溶液を得る固液分離処理方法であって、前記スラリーに前記有機凝集剤を添加するに際して、第1段目のシックナー内の液をサンプリングし、サンプリングした前記液の濾過時間を測定し、測定された濾過時間に基づいて前記有機凝集剤の添加量を調整する、固液分離処理方法である。
【0013】
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、孔径0.45μmのメンブレンフィルターを用いて測定したときの前記液の濾過時間が10秒以上15秒以下となるように、前記有機凝集剤の添加量を調整する、固液分離処理方法である。
【0014】
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記シックナーは、その周縁部に配設され上澄み液を排出するオーバーフロー部と、その中心部に垂直に配設された筒状のフィードウェルと、を有する沈降分離槽を備え、前記オーバーフロー部を流れる前記上澄み液をサンプリングし、該上澄み液の濾過時間を測定する、固液分離処理方法である。
【0015】
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記スラリーは、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法において該ニッケル酸化鉱石に対して酸による浸出処理を施して得られるスラリーである、固液分離処理方法である。
【0016】
(5)本発明の第5の発明は、ニッケル酸化鉱石に酸を添加して浸出処理を施すことで得られる浸出スラリーを固液分離し、分離した浸出液からニッケル及びコバルトを回収するニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法であって、シックナーを多段に設けて前記浸出スラリーを多段洗浄しながら、有機凝集剤を添加して該浸出スラリー中の固形分である浸出残渣を分離し、該浸出残渣が除去された浸出液を得る固液分離処理を行う工程を含み、前記固液分離処理では、前記浸出スラリーに前記有機凝集剤を添加するに際して、第1段目のシックナー内の液をサンプリングし、サンプリングした前記液の濾過時間を測定し、測定された濾過時間に基づいて前記有機凝集剤の添加量を調整する、湿式製錬方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数段のシックナーを用いて多段洗浄しながらスラリーに対する固液分離を行う処理において、凝集剤の添加量を削減し、効率的な処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1段目のシックナー内からサンプリングした上澄み液の濾過時間と、濁度指数との関係を調査した結果を示すグラフ図である。
図2】シックナーを多段に連結させてCCD法を行う処理装置の構成図である。
図3図2に示した処理装置の各段を構成するシックナーの構成図である。
図4】ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法の流れを示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」ともいう)について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0020】
≪1.固液分離処理方法≫
<1-1.概要について>
本実施の形態に係る固液分離処理方法は、有機凝集剤を添加してスラリーに含まれる固形分を分離し、その固形分が除去された溶液を得るための方法である。固液分離処理では、シックナーが多段に設けられた装置により行われ、スラリーを多段洗浄しながら、スラリー中の固形分を分離する。
【0021】
具体的に、本実施の形態に係る固液分離処理方法は、処理対象のスラリーに有機凝集剤を添加するに際して、第1段目のシックナー内の液をサンプリングし、サンプリングした液の濾過時間を測定し、測定された濾過時間に基づいて有機凝集剤の添加量を調整することを特徴としている。
【0022】
固液分離処理の対象であるスラリーとしては、特に限定されないが、例えば、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおいて、ニッケル酸化鉱石に対して酸による浸出処理を施して得られるスラリー(浸出スラリー)を挙げることができる。浸出スラリーを固液分離処理の対象とした場合、その処理によって、鉄等の不純物金属を含む固形分である浸出残渣を分離して、ニッケル及びコバルトを含む浸出液(以下、「ニッケル貴液」ともいう)を回収することができる。
【0023】
本発明者らにより、上述した浸出スラリーを対象とした、多段洗浄しながら行う固液分離処理において、第1段目のシックナーから得られる上澄み液の濁度と、その上澄み液の濾過時間との関係について研究したところ、図1に示す結果が得られた。なお、濾過時間の測定は孔径0.45μmのメンブレンフィルターを用いて行った。
【0024】
すなわち、図1に示すように、上澄み液の濾過時間が短いほどその濁度指数は上昇傾向にあり、濾過時間が15秒を超えた以降の時間では濁度の大きな低下は認められない。このことから、上澄み液の濁度管理において、その第1段目のシックナーから得れる上澄み液の“濾過時間”を指標することができることがわかった。そして、上澄み液の濾過時間を指標として、その濾過時間の測定結果に基づいて有機凝集剤の添加量を調整するようにすることで、適切な量の有機凝集剤を添加しながら濁度の上昇を抑えて清澄性を向上できることを見出した。なお、濁度指数とは、実際に測定した濁度(単位NTU)を所定の濁度(単位NTU)で除した値を示す。
【0025】
また特に、その濾過時間としては、10秒以上15秒以下の範囲となることを基準として、有機凝集剤の添加量を調整することがより好ましいことを見出した。
【0026】
そこで、本実施の形態に係る固液分離処理方法では、処理対象のスラリーに有機凝集剤を添加するに際して、第1段目のシックナー内の液をサンプリングし、サンプリングした液の濾過時間を測定し、測定された濾過時間に基づいて有機凝集剤の添加量を調整する。このような方法によれば、固液分離処理により得られる溶液、つまり固形分を分離除去して得られる溶液の清澄性を高めて安定化させることができるとともに、処理に用いる有機凝集剤の使用量を削減することができ、効率的な処理を実現することができる。
【0027】
ここで、ニッケル貴液は、清澄性が高いことが求められる。ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスでは、固液分離処理(固液分離工程での処理)により得られるニッケル貴液が、続いて設けられている中和工程、脱亜鉛工程へと順次送られ処理されるが、固液分離処理により得られる上澄み液であるニッケル貴液中のSS(Suspended Substance懸濁物質)が多く清澄性が低下すると、中和工程や脱亜鉛工程にて行われる濾過等の操作でフィルター目詰まりの原因となり、その作業性を著しく損なわせる原因となる。また、浸出スラリーに対する固液分離処理を経て沈殿物として得られる浸出残渣については、その固体濃度が高いことが求められており、浸出残渣に随伴してしまうニッケル貴液に含まれるニッケルのロスを防ぐようにしている。
【0028】
この点、本実施の形態に係る固液分離処理方法を適用することにより、得られるニッケル貴液の清澄性を効果的に向上させることができ、続く工程でのフィルター目詰まり等の不具合の発生を有効に抑制でき、ニッケルロスの発生も防ぐことができる。それに加え、使用する有機凝集剤の量も効果的に削減できることから、湿式製錬プロセス全体における効率性を高めることができる。
【0029】
<1-2.向流多段洗浄による固液分離処理の操作について>
固液分離処理のより詳細な説明に先立ち、シックナーを多段に設けて多段洗浄しながら固液分離処理を行う操作について説明する。なお、処理対象として、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおける浸出工程を経て得られる浸出スラリーを例に挙げて説明する。
【0030】
固液分離処理では、固液分離処理装置であるシックナーを多段に連結させ、浸出スラリーに対して、ニッケルを含まない洗浄液を向流で接触させる向流多段洗浄法(CCD法)による多段洗浄を行いながら、その浸出スラリーに含まれる固形分(浸出残渣)を分離し、固形分が除去された溶液であるニッケル貴液(浸出液)を得る。
【0031】
[シックナーの構成と多段洗浄]
図2は、シックナーを多段に連結させてCCD法を行う固液分離処理装置(以下、単に「処理装置」ともいう)の一例を示す構成図である。なお、図2に示す処理装置1では、シックナーを5段連結させた例を示すが、段数としてはこれに限定されるものではない。
【0032】
CCD法では、固液分離処理が行われる沈降分離槽と、撹拌槽との組合せからなるシックナーを1段として、このシックナーが複数段、例えば5~8段、直列に連結させた処理装置を用いる。処理装置1では、一端(図2中のA側)の第1段目のシックナーに処理対象である浸出スラリーが装入され、他端(図2のB側)の最終段目(第5段目)のシックナーに例えば工業用水等の洗浄液が装入される。そして、その浸出スラリーと洗浄液とが処理装置1内において向流で接触し、同時にA端から装入される浸出スラリーに対して有機凝集剤を添加することで、スラリー中の固形分を凝集させ固液分離を促進させる。
【0033】
[各段のシックナー及び撹拌槽について]
図3は、図2に示した処理装置1の各段を構成するシックナー(1段のみ)の構成図である。上述したように、処理装置1は、複数のシックナーが多段に連結されたものであり、シックナー10は、撹拌槽11と、沈降分離槽12と、を備えて構成されている。
【0034】
撹拌槽11は、その内部に撹拌軸や撹拌羽根等の撹拌部材を備えた槽である。撹拌槽11では、浸出スラリーと、後段のシックナーから流送されたオーバーフロー液とが、それぞれ装入されて撹拌混合される。なお、最終段目(図2の例では第5段目)のシックナーの撹拌槽11には、オーバーフロー液ではなく、新規の洗浄水が装入される。撹拌槽11において、浸出スラリーとオーバーフロー液とが撹拌混合されることで、浸出スラリーが洗浄されて固形分に付着した付着水が洗い流されるようになる。
【0035】
沈降分離槽12は、例えば円筒形状の処理槽であり、その内部に浸出スラリーが装入されて、浸出スラリー中の固形分を沈降分離させる。
【0036】
沈降分離槽12には、その内部に垂直に配設された筒状のフィードウェル13が備えられている。フィードウェル13は、例えば沈降分離槽12が円筒形状の場合には、その沈降分離槽12と略同心円状に設けられている。フィードウェル13は、撹拌槽11から供給された浸出スラリーを沈降分離槽12内に送り込む送路となる。
【0037】
また、沈降分離槽12には、その槽上部の周縁部に浸出スラリー中の固形分を沈降分離させて得られる上澄み液をオーバーフロー(OF)させて排出するためのオーバーフロー部14が設けられている。オーバーフロー部14は、例えば樋のような形状となっており、後段のシックナーからのオーバーフロー液を撹拌槽11に流送させるための流路が接続されている。なお、沈降分離槽12において、オーバーフローした溶液(以下、「オーバーフロー液」ともいう)は、上述したように前段の撹拌槽11に流送され、一方で、それ以外の固形分を含めたスラリーは、沈降分離槽12の下部から取り出されて、ポンプ15によって後段の撹拌槽11にポンプ送液される。
【0038】
[多段洗浄の基本的な流れ]
次に、撹拌槽11と沈降分離槽12とからなるシックナーを複数段に連結させた処理装置1(図2)によって浸出スラリーを多段洗浄しながら固液分離する基本的な流れを説明する。図2中の矢印は、浸出スラリーやオーバーフロー液の流れを示す。
【0039】
先ず、第1段目のシックナーでは、その撹拌槽11内において、浸出スラリーと、後段の第2段目のシックナーの沈降分離槽12からのオーバーフロー液とが装入され、それらが撹拌混合される。撹拌槽11内では、浸出スラリー中の固形分に付着している付着水がオーバーフロー液によって洗浄され、その後、撹拌槽11から浸出スラリーがフィードウェル13を介して沈降分離槽12内に装入される。
【0040】
このとき、第1段目のシックナーにおいては、フィードウェルを介して浸出スラリーと共に、スラリー中の固形分を凝集させるための有機凝集剤が添加される。そして、装入された沈降分離槽12内で浸出スラリーと有機凝集剤とが混合され、スラリー中の固形分が凝集沈殿して分離される。分離した固形分を含むスラリーは、沈降分離槽12の下部から抜き出されてポンプ15を介して後段の第2段目のシックナーの撹拌槽11に移送される。一方で、沈降分離槽12からオーバーフロー部14を経由してオーバーフローした上澄み液は、湿式製錬方法における次工程(中和工程)へ供給される。
【0041】
次に、第2段目のシックナーでは、その撹拌槽11内に、前段の第1段目のシックナーの沈降分離槽12の下部から抜き出された固形分が装入されるとともに、後段の第3段目のシックナーの沈降分離槽12からのオーバーフロー液が装入され、固形分に付着した水分がオーバーフロー液によって洗い流される。そして、撹拌槽11内で洗浄されて得られたスラリーは、フィードウェル13を介して沈降分離槽12内に装入され、スラリー中の固形分が凝集沈殿して分離される。分離した固形分を含むスラリーは、沈降分離槽12の下部から抜き出されてポンプ15を介して後段の第3段目のシックナーの撹拌槽11に移送される。一方で、沈降分離槽12からオーバーフロー部14を経由したオーバーフロー液は、前段の第1段目のシックナーの撹拌槽11に接続された配管等を経由して撹拌槽11内に装入される。
【0042】
以後、第3段目のシックナー、第4段目のシックナーにおいても、同様の手順によって固形分を含むスラリーがオーバーフロー液と向流で接触することで、多段洗浄される。
【0043】
そして、最終段である第5段目のシックナーでは、その撹拌槽11内に、前段の第4段目のシックナーの沈降分離槽12の下部から抜き出された固形分が装入されるとともに、新規の洗浄水(例えば、湿式製錬プロセスにおける低ニッケル濃度のプロセス液)が装入され、固形分に付着した水分が洗浄水によって洗い流される。そして、撹拌槽11内で洗浄されて得られたスラリーは、フィードウェル13を介して沈降分離槽12内に装入され、スラリー中の固形分が凝集沈殿して分離される。分離した固形分を含むスラリーは、沈降分離槽12の下部からポンプ15で抜き取られ、浸出残渣(CCD残渣)として残渣処理される。一方で、沈降分離槽12からオーバーフロー部14を経由したオーバーフロー液は、前段の第4段目のシックナーの撹拌槽11に接続された配管等を経由して撹拌槽11内に装入される。
【0044】
なお、このようにして、浸出スラリーに対して多段洗浄を行いながら固液分離処理を施すことで、新規の洗浄水としては最終段のシックナーのみに装入すればよいため、その最終段以外の各段のシックナーには新規の洗浄水が不要となる。これにより、洗浄水を大幅に節約することが可能となる。
【0045】
<1-3.固液分離処理の詳細操作について>
上述したように、本実施の形態に係る固液分離処理方法では、多段のシックナーからなる処理設備を用いた向流多段洗浄による処理において、処理対象のスラリーに有機凝集剤を添加するに際し、第1段目のシックナー内の液(例えば上澄み液)をサンプリングし、サンプリングした液の濾過時間を測定し、測定された濾過時間に基づいて有機凝集剤の添加量を調整する。
【0046】
液のサンプリングは、シックナーに設けられているオーバーフロー部から行うことが好ましい。具体的には、図3に示したように、シックナー10は、その周縁部に配設され上澄み液を排出するオーバーフロー部14と、その中心部に垂直に配設された筒状のフィードウェル13と、を有する沈降分離槽12を備えており、オーバーフロー部14を流れる上澄み液をサンプリングし、その上澄み液の濾過時間を測定することが好ましい。
【0047】
また、サンプリングした液の濾過時間の測定は、一定量、例えば100cc~250cc程度の液を、規定目開きの濾紙をセットした吸引濾過器を用いて濾過したときの時間を測定することによって行うことができる。濾紙としては、例えば、孔径0.45μmのメンブレンフィルターを用いることができる。また、吸引濾過器による吸引は、例えば真空ポンプを用いて行うことができる。
【0048】
そして、このような濾過時間の測定を、一定時間毎に定期的に行い、その測定結果に基づいて有機凝集剤の添加量を調整する。図1に示したように、上澄み液の濾過時間とその濁度との関係において、濾過時間が短いほど濁度は上昇傾向にあり、また所定の濾過時間を超えると濁度の大きな低下は認められなくなる。したがって、シックナー10のオーバーフロー部から上澄み液をサンプリングし、その上澄み液の濾過時間を測定して、その濾過時間の測定値に基づいて有機凝集剤の添加量を調整することで、適切な量の有機凝集剤の添加によって濁度を適切に低下させることが可能となる。
【0049】
例えば、図1に示したように、孔径0.45μmのメンブレンフィルターを用いて上澄み液の濾過時間を測定したとき、その濾過時間が10秒未満である場合には、濁度が高いと考えられることから、有機凝集剤の添加量を増加させるようにフィードバックする。一方で、濾過時間が15秒を超える場合には、それ以上の濁度低下の可能性は低いと考えられることから、有機凝集剤の添加量を減少させるようにフィードバックする。
【0050】
このように、サンプリングした上澄み液の濾過時間の測定値に基づいて、有機凝集剤の添加量を調整することで、必要な適切量の有機凝集剤の添加でもって、その濁度を効果的に低下させることができる。すなわち、有機凝集剤の使用量を有効に削減できる。
【0051】
特に、孔径0.45μmのメンブレンフィルターを用いて測定したときの上澄み液の濾過時間が10秒以上15秒以下となるように有機凝集剤の添加量を調整することが好ましい。このような濾過時間の範囲を基準として有機凝集剤の添加量を調整することで、上澄み液の清澄性を高め、かつその清澄性を安定化させることができるとともに、より効果的に有機凝集剤の使用量を削減することができる。
【0052】
なお、濾過時間が10秒未満となる場合、スラリー中の固形分がフロックを形成する程度が小さいため凝集剤の添加量は少なくて済むものの、一部の固形分はフロックとして沈降せず上澄み液中に留まってしまい、濁度が高くなる可能性がある。また、濾過時間が15秒を超えると、濁度は低下するもののそれ以上に低下せず、一方でこれ以上のところでは、凝集剤の効きが低下するため凝集剤の添加量が増加する可能性がある。このとき、凝集剤が過剰となっていることにより粘性が増加し、濾過時間が増加している可能性もある。
【0053】
また、上澄み液のサンプリングを、第1段目のシックナー内にて行うようにし、その上澄み液の濾過時間を測定していることから、その濾過時間に基づく有機凝集剤の添加量調整を迅速に行うことができ、対応の遅れに基づく生産性の低下を防ぐことができる。例えば、液のサンプリングを、シックナー内ではなく、シックナーを備えた設備の外部に設けられた装置内にて行うような場合には、有機凝集剤の反応性のばらつき等に即座に対応することができず、適切な濁度調整を行うことが困難となる。そして、延いては生産性の低下をもたらす。本実施の形態に係る固液分離処理方法では、上澄み液のサンプリングを、第1段目のシックナー内にて行うようにしていることから、濾過時間の測定値に基づく有機凝集剤の添加量の調整を迅速に行うことができ、生産性の低下を防ぐとともに、より効果的に有機凝集剤の使用量を削減することができる。
【0054】
なお、有機凝集剤について、その種類は特に限定されない。例えば、高分子凝集剤を好ましく用いることができる。
【0055】
≪2.ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法≫
次に、固液分離処理方法を適用したニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法について説明する。上述した固液分離処理方法は、湿式製錬プロセスにおける固液分離工程での処理に有効に適用することができ、得られる浸出液の清澄性を高め、かつその清澄性を安定化させることができるとともに、有機凝集剤の使用量を削減でき、効率的な処理を行うことができる。なお、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法は、例えば高温高圧下で酸による浸出処理を施す方法(HPAL法)を用いて、ニッケル酸化鉱石からニッケル及びコバルトを浸出させて回収する湿式製錬方法である。
【0056】
図4は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法の流れの一例を示す工程図である。ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法は、ニッケル酸化鉱石に硫酸を添加して高温高圧下で浸出処理を施す浸出工程S1と、得られた浸出スラリーを多段洗浄しながら残渣を分離してニッケル及びコバルトを含む浸出液を得る固液分離工程S2と、浸出液のpHを調整し不純物元素を含む中和澱物を分離してニッケル及びコバルトと共に亜鉛を含む中和終液を得る中和工程S3と、中和終液に硫化剤を添加することで亜鉛硫化物の形態で亜鉛を分離除去する脱亜鉛工程S4と、亜鉛を除去したニッケル回収用母液に硫化剤を添加することでニッケル及びコバルトを含む混合硫化物を生成させ回収するニッケル回収工程S5と、を有する。
【0057】
(1)浸出工程
浸出工程S1では、ニッケル酸化鉱石に対して、例えば高圧酸浸出法を用いた浸出処理を施す。具体的には、原料となるニッケル酸化鉱石を粉砕等して得られた鉱石スラリーに硫酸を添加し、例えば高温加圧容器(オートクレーブ)を用いて、220℃~280℃の高い温度条件下で加圧することで鉱石スラリーを撹拌し、浸出液と浸出残渣とからなる浸出スラリーを生成する。
【0058】
ニッケル酸化鉱石としては、主としてリモナイト鉱及びサプロライト鉱等のいわゆるラテライト鉱である。ラテライト鉱のニッケル含有量は、通常、0.8質量%~2.5質量%であり、水酸化物又はケイ苦土(ケイ酸マグネシウム)鉱物として含有される。また、鉄の含有量は、10質量%~50質量%であり、主として3価の水酸化物(ゲーサイト)の形態であるが、一部2価の鉄がケイ苦土鉱物に含有される。また、このようなラテライト鉱の他に、ニッケル、コバルト、マンガン、銅等の有価金属を含有する酸化鉱石、例えば深海底に賦存するマンガン瘤等が用いられる。
【0059】
浸出処理では、浸出反応と高温熱加水分解反応が生じ、ニッケル、コバルト等の硫酸塩としての浸出と、浸出された硫酸鉄のヘマタイトとしての固定化が行われる。ただし、鉄イオンの固定化は完全には進行しないため、通常、得られる浸出スラリーの液部分には、ニッケル、コバルト等の他に2価と3価の鉄イオンが含まれる。
【0060】
浸出処理における硫酸の添加量としては、特に限定されず、鉱石中の鉄が浸出されるような過剰量が用いられる。なお、浸出工程S1では、次工程の固液分離工程S2で生成されるヘマタイトを含む浸出残渣の濾過性の観点から、得られる浸出液のpHが0.1~1.0にとなるように調整することが好ましい。
【0061】
(2)固液分離工程
固液分離工程S2では、シックナーを多段に設けた処理設備を用いて、浸出工程S1を経て生成した浸出スラリーを多段洗浄しながら、有機凝集剤を添加してその浸出スラリーに含まれる固形分である浸出残渣を分離し、ニッケル及びコバルトを含む浸出液を得る。
【0062】
固液分離工程S2における処理では、浸出スラリーを洗浄液と混合した後、固液分離装置としてシックナーを多段に設けて固液分離処理を施す。具体的には、先ず、浸出スラリーを洗浄液により希釈し、次に、スラリー中の浸出残渣をシックナーの沈降物として濃縮させる。これにより、浸出残渣に付着するニッケル分をその希釈の度合いに応じて減少させることができる。また、このようにシックナーを多段に連結して用いることにより、ニッケル及びコバルトの回収率の向上を図ることができる。
【0063】
多段洗浄に用いる洗浄液としては、特に限定されないが、ニッケルを含まず、工程に影響を及ぼさないものを用いることができる。その中でも、pHが1~3の水溶液を用いることが好ましい。洗浄液のpHが高いと、浸出液中にアルミニウムが含まれる場合には嵩の高いアルミニウム水酸化物が生成され、シックナー内での浸出残渣の沈降不良の原因となる。また、洗浄液としては、好ましくは、後工程であるニッケル回収工程S5で得られる低pH(pHが1~3程度)の貧液を繰り返して利用するとよい。
【0064】
本実施の形態においては、固液分離工程S2における処理において、上で詳細説明した固液分離処理方法を適用する。具体的には、浸出スラリーに有機凝集剤を添加するに際して、第1段目のシックナー内の上澄み液をサンプリングし、サンプリングした上澄み液の濾過時間を測定して、測定された濾過時間に基づいて有機凝集剤の添加量を調整する。
【0065】
処理操作については上述した内容と同じであるため、ここでの詳細な説明は省略するが、このような固液分離処理方法を行うことにより、得られる浸出液の清澄性を高め、かつその清澄性を安定化させることができるとともに、有機凝集剤の使用量を削減でき、効率的な処理を行うことができる。
【0066】
(3)中和工程
中和工程S3では、固液分離工程S2にて分離された浸出液のpHを調整し、不純物元素を含む中和澱物を分離して、ニッケル及びコバルトと共に亜鉛を含む中和終液を得る。
【0067】
具体的には、分離された浸出液の酸化を抑制しながら、得られる中和終液のpHが4以下、好ましくは3.0~3.5、より好ましくは3.1~3.2となるように、その浸出液に炭酸カルシウム等の中和剤を添加し、ニッケル回収用の母液の元となる中和終液と、不純物元素として3価の鉄を含む中和澱物スラリーとを生成させる。このようにして浸出液に対する中和処理を施すことで、高圧酸浸出法による浸出処理で用いた過剰の酸を中和してニッケル回収用の母液の元となる中和終液を生成するとともに、溶液中に残留する3価の鉄イオンやアルミニウムイオン等の不純物を中和澱物として除去する。
【0068】
(4)脱亜鉛工程
脱亜鉛工程S4では、中和工程S3から得られた中和終液に硫化水素ガス等の硫化剤を添加して硫化処理を施すことにより亜鉛硫化物を生成させ、亜鉛硫化物を分離除去してニッケル及びコバルトを含むニッケル回収用母液(脱亜鉛終液)を得る。
【0069】
具体的には、例えば、加圧された容器内にニッケル及びコバルトと共に亜鉛を含む中和終液を装入し、硫化剤を添加することによって亜鉛をニッケル及びコバルトに対して選択的に硫化し、亜鉛硫化物とニッケル回収用母液とを生成する。
【0070】
(5)ニッケル回収工程
ニッケル回収工程S5では、不純物元素である亜鉛を分離除去して得られたニッケル回収用母液に硫化水素ガス等の硫化剤を吹き込んで硫化反応を生じさせ、ニッケル及びコバルトを含む硫化物(ニッケルコバルト混合硫化物)と貧液とを生成させる。
【0071】
ニッケル回収用母液は、ニッケル酸化鉱石の浸出液から中和工程S3や脱亜鉛工程S4を経て不純物成分が低減された硫酸溶液であり、例えば、pHが3.2~4.0で、ニッケル濃度が2~5g/L、コバルト濃度が0.1~1.0g/Lの溶液である。なお、ニッケル回収用母液には、不純物成分として鉄、マグネシウム、マンガン等が数g/L程度含まれている可能性があるが、これら不純物成分は、回収するニッケル及びコバルトに対して硫化物としての安定性が低く、生成する硫化物には含有されることはない。
【0072】
ニッケル回収工程S5では、不純物成分の少ないニッケルコバルト混合硫化物とニッケル濃度を低い水準で安定させた貧液とを生成して回収する。具体的には、硫化反応により得られたニッケルコバルト混合硫化物のスラリーをシックナー等の沈降分離装置を用いて沈降分離処理を施すことによって、沈殿物であるニッケルコバルト混合硫化物をシックナーの底部より分離回収する。一方で、水溶液成分はオーバーフローさせて貧液として回収する。なお、上述のように、貧液には、硫化されずに含まれる鉄、マグネシウム、マンガン等の不純物元素を含んでいる。
【実施例
【0073】
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0074】
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおいて、浸出工程を経て得られた浸出スラリーに対して向流多段洗浄法(CCD法)による固液分離処理を行った。具体的に、シックナーを6段連結させた処理設備を用い、以下の処理条件で処理を行った。
(処理条件)
浸出スラリーの固形分比率:44.8質量%
浸出スラリーのpH :2.3
浸出スラリーの流量 :249m/h
洗浄液 :低ニッケル濃度の工程水
洗浄液の流量 :225m/h
シックナーの容積 :1500m(各段で同じ)
【0075】
このとき、実施例1では、第1段目のシックナー内のオーバーフロー樋の上澄み液のサンプリングを2時間毎に行い、サンプリングした上澄み液の濾過時間を測定した。濾過時間の測定は、上澄み液を200cc分取し、孔径0.45μmのメンブレンフィルターを用いて行った。
【0076】
そして、上澄み液の濾過時間の測定結果に基づいて、その濾過時間がおよそ13秒となるように、有機凝集剤の添加量を2時間毎に調整して処理を行った。
【0077】
このような固液分離処理を行った結果を、下記表1(平均値)、表2(標準偏差)に示す。なお、表中の凝集剤添加比率とは、第1段目のシックナーへ導入される浸出残渣を含むスラリー流量に対する、ハンドリング性等を考慮して所定の濃度とした有機凝集剤の添加流量の比で算出される値である。
【0078】
表1に示すように、実施例1では、上澄み液であるニッケル貴液の濁度に関して濁度指数が平均で238となり、後述する比較例1に比べて約15%も高めることができた。また、濁度指数の標準偏差は67となり、比較例1に比べて約30%も低下し、清澄性を安定させることができた。さらに、有機凝集剤の使用量に関しては比較例1と比べて約20%も削減することができた。ここで、濁度指数とは、実際に測定した濁度(単位NTU)を所定の濁度(単位NTU)で除した値を示す。
【0079】
[比較例1]
比較例1では、実施例1と同様に、第1段目のシックナー内のオーバーフロー樋の上澄み液のサンプリングを2時間毎に行い、サンプリングした上澄み液の濾過時間を測定したが、濾過時間の測定結果に基づく有機凝集剤の添加量の調整は行わず、濁度の測定結果を元に濁度指数が300以下となるように有機凝集剤の添加量を調整した。
【0080】
このような固液分離処理を行った結果を、下記表1(平均値)、表2(標準偏差)に示す。表1に示すように、実施例1では、上澄み液であるニッケル貴液の濁度指数が平均で238となり、後述する比較例1に比べて約15%も高めることができた。また、濁度指数の標準偏差は67となり、比較例1に比べて約30%も低下し、清澄性を安定させることができた。さらに、有機凝集剤の使用量に関しては比較例1と比べて約20%も削減することができた。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【符号の説明】
【0083】
1 固液分離処理装置
10 シックナー
11 撹拌槽
12 沈降分離槽
13 フィードウェル
14 オーバーフロー部
図1
図2
図3
図4