(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】機器工事確認システム、及び機器工事確認方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20241112BHJP
【FI】
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2021008146
(22)【出願日】2021-01-21
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】満井 法嗣
【審査官】星野 裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/250928(WO,A1)
【文献】特開2020-191086(JP,A)
【文献】特開2004-093557(JP,A)
【文献】特開2011-130652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器工事に際して現場で行われる確認作業を支援する情報処理システムであって、
現場を撮影した画像データに含まれている機器を検出するとともに、検出した前記機器を識別する情報である機器属性を前記画像データから取得する機器検出部と、
前記画像データに含まれている前記機器の端子を検出するとともに、検出した前記端子を識別する情報である端子属性を前記画像データから取得する端子検出部と、
前記画像データに含まれている前記端子に接続する電線を検出するとともに、検出した前記電線を識別する情報である電線属性を前記画像データから取得する電線検出部と、
前記端子の前記端子属性と当該端子に接続する電線の前記電線属性とを対照することにより、前記端子と前記電線との結線の良否を確認する結線良否確認部と、
前記現場に向けて庫出しされた機器に関する情報である庫出機器情報を記憶する記憶部と、
前記機器検出部が取得した前記機器属性と前記庫出機器情報とを対照することにより、前記現場に設置されている前記機器が当該現場に向けて庫出しされた機器と同じ機器であるか否かを確認する庫出機器同定部と、
を備える、機器工事確認システム。
【請求項2】
機器工事に際して現場で行われる確認作業を支援する情報処理システムであって、
現場を撮影した画像データに含まれている機器を検出するとともに、検出した前記機器を識別する情報である機器属性を前記画像データから取得する機器検出部と、
前記画像データに含まれている前記機器の端子を検出するとともに、検出した前記端子を識別する情報である端子属性を前記画像データから取得する端子検出部と、
前記画像データに含まれている前記端子に接続する電線を検出するとともに、検出した前記電線を識別する情報である電線属性を前記画像データから取得する電線検出部と、
前記端子の前記端子属性と当該端子に接続する電線の前記電線属性とを対照することにより、前記端子と前記電線との結線の良否を確認する結線良否確認部と、
現在日時を提供する計時装置と、
現場で撮影された画像データに含まれている情報表示器を検出するとともに前記情報表示器に表示されている日時である表示日時を検出し、検出した前記表示日時を前記計時装置から提供される前記現在日時と対照することにより前記表示日時が正しいか否かを確認し、確認した結果に基づく情報を出力する日時表示確認部と、
を備える、機器工事確認システム。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の機器工事確認システムであって、
前記機器検出部は、前記画像データに含まれている機器の検出と前記機器属性の取得を、画像認識を行う機械学習モデルである機器検出モデルを用いて行い、
前記端子検出部は、前記画像データに含まれている端子の検出と前記端子属性の取得を、画像認識を行う機械学習モデルである端子検出モデルを用いて行い、
前記電線検出部は、前記画像データに含まれている電線の検出と前記電線属性の取得を、画像認識を行う機械学習モデルである電線検出モデルを用いて行う、
機器工事確認システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の機器工事確認システムであって、
前記端子属性は、前記端子や前記端子の近傍に付されている情報であり、
前記電線属性は、前記電線の被覆に付されている情報である、
機器工事確認システム。
【請求項5】
請求項
2に記載の機器工事確認システムであって、
前記日時表示確認部は、現場で撮影された前記画像データに含まれている前記情報表示器の検出と前記表示日時の検出を、機械学習モデルである日時表示検出モデルを用いて行う、
機器工事確認システム。
【請求項6】
機器工事に際して現場で行われる確認作業を支援する方法であって、
情報処理装置が、
現場を撮影した画像データに含まれている機器を検出するとともに、検出した前記機器を識別する情報である機器属性を前記画像データから取得するステップと、
前記画像データに含まれている前記機器の端子を検出するとともに、検出した前記端子を識別する情報である端子属性を前記画像データから取得するステップと、
前記画像データに含まれている前記端子に接続する電線を検出するとともに、検出した前記電線を識別する情報である電線属性を前記画像データから取得するステップと、
前記端子の前記端子属性と当該端子に接続する電線の前記電線属性とを対照することにより、前記端子と前記電線との結線の良否を確認するステップと、
前記現場に向けて庫出しされた機器に関する情報である庫出機器情報を記憶するステップと、
取得した前記機器属性と前記庫出機器情報とを対照することにより、前記現場に設置されている前記機器が当該現場に向けて庫出しされた機器と同じ機器であるか否かを確認するステップと、
を実行する、機器工事確認方法。
【請求項7】
請求項
6に記載の機器工事確認方法であって、
前記情報処理装置は、
前記画像データに含まれている機器の検出と前記機器属性の取得を、画像認識を行う機械学習モデルである機器検出モデルを用いて行い、
前記画像データに含まれている端子の検出と前記端子属性の取得を、画像認識を行う機械学習モデルである端子検出モデルを用いて行い、
前記画像データに含まれている電線の検出と前記電線属性の取得を、画像認識を行う機械学習モデルである電線検出モデルを用いて行う、
機器工事確認方法。
【請求項8】
機器工事に際して現場で行われる確認作業を支援する方法であって、
現在日時を提供する計時装置を有する情報処理装置が、
現場を撮影した画像データに含まれている機器を検出するとともに、検出した前記機器を識別する情報である機器属性を前記画像データから取得するステップと、
前記画像データに含まれている前記機器の端子を検出するとともに、検出した前記端子を識別する情報である端子属性を前記画像データから取得するステップと、
前記画像データに含まれている前記端子に接続する電線を検出するとともに、検出した前記電線を識別する情報である電線属性を前記画像データから取得するステップと、
前記端子の前記端子属性と当該端子に接続する電線の前記電線属性とを対照することにより、前記端子と前記電線との結線の良否を確認するステップと、
現場で撮影された画像データに含まれている情報表示器を検出するとともに前記情報表示器に表示されている日時である表示日時を検出し、検出した前記表示日時を前記計時装置から提供される現在日時と対照することにより前記表示日時が正しいか否かを確認し、確認した結果に基づく情報を出力するステップと、
を実行する、機器工事確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器工事確認システム、及び機器工事確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、工事現場で工事を行う現場作業者の能力を容易に把握できるようにすることを目的として構成された工事現場画像の判定装置に関して記載されている。上記判定装置は、複数の学習用工事現場画像と、各学習用工事現場画像に関する良不良判定を含む学習データを用いて学習器を学習し、学習済みの学習器に、判定対象工事現場画像を入力し、学習器の出力データに基づいて判定対象工事現場画像に関する良不良判定を行う。
【0003】
特許文献2には、高圧計器用変成器を無停電で取り替えることを目的として構成された高圧計器用変成器の無停電取替装置について記載されている。上記無停電取替装置では、電源側と負荷との間に、高圧開閉器と計器用変成器を接続した回路の高圧開閉器の両側にPTをV結線に接続し、高圧開閉器の電源側にPTを接続し、各PTの二次側を検電/検相/表示の機能と高圧開閉器操作機能を有する制御部に接続し、計器用変成器に電力量計を接続した構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-75078号公報
【文献】特開平2-60434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電力の配電のための機器の工事に際しては、現場において、適切な機器が設置され、機器間の配線が正しく行われていることについての確認(チェック、良否判定、検査等)作業が行われる。例えば、高圧受電設備に関する工事に際しては、現場に設置されている複数の機器(高圧変成器、計量器、試験用開閉器(チェックターミナル)等)の夫々が備える端子について、各端子への電線の結線の良否を作業者が目視により確認している。しかしこうした現場において目視確認の対象となる端子の数は数十以上に上るため、作業者の負担軽減と確認精度の確保が課題となっている。
【0006】
特許文献1には、学習器の出力データに基づき判定対象工事現場画像に関する良不良判定を行う判定装置について記載されている。しかしこの判定装置は、工事現場で工事を行う現場作業者の能力を容易に把握できるようにすることを目的として構成されており、機器の設置工事における作業者の作業者の負担軽減や確認精度の確保に寄与するものではない。また、特許文献2に記載の無停電取替装置は、高圧計器用変成器を無停電で取り替えることを目的として構成されたものに過ぎない。
【0007】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、機器工事における確認作業を行う作業者の負担軽減を図るとともに、機器の確認の精度を確保することが可能な、機器工事確認システム、及び機器工事確認方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明のうちの一つは、機器工事に際し現場に設置される機器を確認する情報処理システム(機器工事確認システム)であって、現場を撮影した画像データに含まれている機器を検出するとともに、検出した前記機器を識別するための情報である機器属性を特定する機器検出部と、前記画像データに含まれている前記機器の端子を検出するとともに、検出した前記端子を識別するための情報である端子属性を特定する端子検出部と、前記画像データに含まれている前記端子に接続する電線を検出するとともに、検出した前記電線を識別するための情報である電線属性を特定する電線検出部と、前記端子の前記端子属性と当該端子に接続されている前記電線属性とを対照することにより、前記端子と前記電線との結線の良否を確認する結線良否確認部と、を備える。
【0009】
このように、本発明の機器工事確認システムは、現場を撮影した画像データに含まれている機器の端子の端子属性と当該端子に接続する電線の電線属性とを自動的に取得し、これらを対照することにより端子と電線の結線の良否を確認するので、機器工事における確認作業を行う作業者の負担軽減を図るとともに、機器の確認精度を確保することができる。
【0010】
本発明の他の一つは、上記の機器工事確認システムであって、前記機器検出部は、前記画像データに含まれている機器の検出と前記機器属性の取得を、画像認識を行う機械学習モデルである機器検出モデルを用いて行い、前記端子検出部は、前記画像データに含まれている端子の検出と前記端子属性の取得を、画像認識を行う機械学習モデルである端子検出モデルを用いて行い、前記電線検出部は、前記画像データに含まれている電線の検出と前記電線属性の取得を、画像認識を行う機械学習モデルである電線検出モデルを用いて行う。
【0011】
このように、本発明の機器工事確認システムは、画像認識を行う機械学習モデルである機器検出モデルにより端子と電線を検出するので、機器の確認作業を効率よく確実に行うことができる。
【0012】
本発明の他の一つは、上記の機器工事確認システムであって、前記端子属性は、前記端子や前記端子の近傍に付されている情報であり、前記電線属性は、前記電線の被覆に付されている情報である。
【0013】
このように、本発明の機器工事確認システムは、現場の機器に元々付されている情報(端子に付されている情報や電線の被覆に付されている情報)を、端子属性や電線属性として用いて結線の良否を確認するので、現場に設置される機器に別途の情報を付す等の準備が必要でなく、様々な現場に容易かつ柔軟に適用することができる。
【0014】
本発明の他の一つは、上記の機器工事確認システムであって、前記現場に向けて庫出しされた機器に関する情報である庫出機器情報を記憶する記憶部と、前記機器検出部が特定した前記機器属性と前記庫出機器情報とを対照することにより、前記現場に設置されている前記機器が当該現場に向けて庫出しされた機器と同じ機器であるか否かを確認する庫出機器同定部と、を更に備える。
【0015】
このように、本発明の機器工事確認システムは、現場に設置されている機器が当該現場に向けて庫出しされた機器と同じ機器であるか否かを自動的に確認するので、庫出機器と異なる機器が誤って現場に設置されてしまうのを防いで工事の確実性及び安全性を高めることができる。
【0016】
本発明の他の一つは、上記の機器工事確認システムであって、現在日時を提供する計時装置と、現場で撮影された画像データに含まれている情報表示器を検出するとともに前記情報表示器に表示されている日時である表示日時を検出し、検出した前記表示日時を前記計時装置から提供される前記現在日時と対照することにより前記表示日時が正しいか否かを確認し、確認した結果に基づく情報を出力する日時表示確認部と、を更に備える。
【0017】
このように、本発明の機器工事確認システムは、現場に設置されている情報表示器の日時表示が正しいか否かを自動的に判定するので、電力量計等の機器が保持している日時が正しいか否かの確認にかかる作業者の負担を軽減することができる。
【0018】
本発明の他の一つは、上記の機器工事確認システムであって、前記日時表示確認部は、現場で撮影された前記画像データに含まれている前記情報表示器の検出と前記表示日時の検出を、画像認識を行う機械学習モデルである日時表示検出モデルを用いて行う。
【0019】
このように、本発明の機器工事確認システムは、画像認識を行う機械学習モデルである機器検出モデルにより、現場で撮影された画像データに含まれている情報表示器の検出と表示日時の検出を行うので、情報表示器の検出と表示日時の検出を効率よく確実に行うことができる。
【0020】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、機器工事における確認作業を行う作業者の負担軽減を図るとともに、機器の確認の精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】機器工事確認システムが備える主な機能を示す図である。
【
図2A】高圧受電設備工事において現場に設置される機器の例である。
【
図2B】高圧受電設備工事において現場に設置される機器の例である。
【
図5】機器工事確認システムを実現する情報処理装置の一例である。
【
図8】機器同定処理を説明するフローチャートである。
【
図9】結線確認処理を説明するフローチャートである。
【
図10】日時確認処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明を実施するための形態について説明する。尚、以下の説明において、同一の又は類似する構成について共通の符号を付して説明を省略することがある。
【0024】
図1に、一実施形態として説明する情報処理システム(以下、「機器工事確認システム1」と称する。)が備える主な機能を示している。機器工事確認システム1は、電力会社等の電力供給者から需要家への電力の供給に関する機器の設置や交換等の工事に際して現場で行われる、機器の設置状況の確認(チェック、良否判定、検査等)にかかる作業を支援する。本実施形態では、機器工事確認システム1の適用の対象となる工事が高圧受電設備に関する工事(高圧計器(高圧変成器(計器用変成器)や計量器(電力量計)の設置工事や交換工事。以下、「高圧受電設備工事」と称する。)である場合を例として説明する。但し、機器工事確認システム1が適用される工事の種類は必ずしも限定されない。
【0025】
機器工事確認システム1は、例えば、現場を撮影した画像に基づき、現場に設置されている機器が備える端子(ターミナル)への電線(ケーブルの心線)の結線の良否判定(結線が正しく行われているか)を行う。これにより、結線の良否判定にかかる作業者の負担軽減や作業効率の向上、確認精度の向上を図ることができる。
【0026】
また、機器工事確認システム1は、例えば、現場を撮影した画像に基づき、当該現場に向けて庫出しされた機器(以下、「庫出機器」と称する。)と同じ機器(形式や製造番号が一致する機器)が現場に設置されているか否かを判定する。これにより、庫出機器と異なる機器が誤って現場に設置されてしまうのを防いで工事の確実性や安全性を高めることができる。
【0027】
また、機器工事確認システム1は、例えば、現場を撮影した画像に基づき、現場に設置されている機器の動作状況(本例では電力量計が保持している日時が正しいか否か(日時があっているか否か)を判定する。これにより、機器の動作状況の確認にかかる作業者の負担軽減並びに作業効率の向上を図ることができる。
【0028】
図2Aは、高圧受電設備工事において現場に設置される機器の例(高圧変成器2、試験用開閉器3、計量器4、及び情報表示器5)である。
【0029】
例示する機器のうち、高圧変成器2は、例えば、電力会社等の電力提供側と高圧受電契約を結んでいる需要家側(例えば、製品の製造工場)に設置される。高圧変成器2(VCT)は、電源側から供給される電力を負荷側に供給する機器であり、電源側から供給される高電圧を低電圧に変換する計器用変圧器(VT:Voltage Transformer)として機能するとともに、電源側から供給される大電流を小電流に変換する変流器(CT:Current Transformer)として機能する。
【0030】
同図に示すように、高圧変成器2は、電源側から電力を供給する3つの電力線71aの夫々が接続する一次端子群21a(UK,VK,WK)と、負荷側に電力を供給する3つの配電線71bの夫々が接続する一次端子群21b(UL,VL,WL)とを有する。3つの電力線71aの夫々の被覆の色は異なる。また、3つの配電線71bの夫々の被覆の色は異なる。尚、このように電力線71aや配電線71bを構成する各電線の被覆は夫々異なる色で色分けされているため、例えば、電線の被覆の色と端子に付されている色とを照合することで、端子と電線との結線が正しく行われているか否かを目視により確認することができる。また、各電線の被覆に各電線を識別するための情報が付されている場合には、当該情報と各端子に付されている情報とを照合するにより結線の良否を確認することができる。後述するように、機器工事確認システム1は、こうした情報を画像認識して照合することにより、効率よく確実に結線の良否を判定する。
【0031】
また、高圧変成器2は、計器用変圧器による変換後の低電圧と変流器による変換後の小電流を計量器3に提供するためのケーブル72(7心ケーブル)の7つの電線が夫々接続する二次端子群22(1S,P1,P3,3S,3L,P2,1L)を有する。7つの電線の夫々の被覆の色は異なる。
【0032】
また、高圧変成器2には、庫出しされた高圧変成器2と現場に設置された高圧変成器2とが同じか否かを判定するための情報が記載された図示しない表示板が設けられている。本例では、表示板は、高圧変成器2の形式及び製造番号についての所定の形式(文字、バーコード、QRコード(登録商標)等)による表示を含むものとする。
【0033】
試験用開閉器3(「チェックターミナル」とも称する。)は、現場における計量器4の試験や交換を安全かつ確実に行うこと等を目的として用いられる機器であり、本例では高圧変成器2と計量器4との間に介在するように設けられる。尚、試験用開閉器3は、高圧変成器2に附随して設けられていることもある。計量器4の交換作業時等における無計量状態及び停電状態を回避すべく、試験用開閉器3には、代替用の計量器が一時的に取り付けられることもある。
【0034】
同図に示すように、例示する試験用開閉器3は、ケーブル72(7心ケーブル)の7つの電線が夫々接続される端子群31a(1S,P1,P3,3S,3L,P2,1L)と、計量器4に接続するケーブル73(7心ケーブル)の7つの電線が夫々接続される端子群31b(1S,P1,P3,3S,3L,P2,1L)とを有する。また、例示する試験用開閉器3には、端子群31aと端子群31bとの間の端子毎の開閉を制御するための着脱可能な接栓32が設けられている。接栓32は、例えば、代替用の計量器の取り付けに際して用いられる。
【0035】
計量器4は、有効電力や無効電力を計量可能な三相3線式の電力量計である。計量器4は、計量法により所定期間毎の交換が義務づけられている。例示する計量器4は、ケーブル(7心ケーブル)の7つの電線の夫々が接続される端子群41a(1S,P1,P3,3S,3L,P2,1L)を有する。また、例示する計量器4は、情報表示器5とケーブル74が結線される端子群41b(C1,C2,DT,SG,D)を有する。
【0036】
また、計量器4は、計量値の計測に用いる現在日時等の日時情報を出力する機能を有する。また、例示する計量器4は、通信機能を備えており、計量値の通知先等の他の装置と通信する。尚、計量器4には、庫出しされた計量器4と現場に設置された計量器4とが同じものか否かを判定(同定)するための図示しない表示板が設けられている。本例では、表示板は、計量器4の形式及び製造番号についての所定の形式(文字、バーコード、QRコード(登録商標)等)の表示を含むものとする。
【0037】
使用電力量等の情報の表示器(以下、「情報表示器5」と称する。)は、ケーブル74を介して計量器4と通信可能に接続され、計量器4が計量した計量値(有効電力量、無効電力量、平均力率等)や計量器4の動作状態や計量器4が保持する現在日時等に関する情報55を表示する。例示する情報表示器5は、作業者が計量器4の日時情報を設定するためのユーザインタフェースを備える。
【0038】
図2Bは、高圧受電設備工事において現場に設置される機器の他の例(高圧変成器2、試験用開閉器3、計量器4、及び情報表示器5)である。例示する高圧変成器2及び試験用開閉器3の構成は、
図2Aと同様である(同図では、高圧変成器2は省略している)。計量器4については、基本的な構成は
図2Aと同様であるが、情報表示器5との接続方法が異なり、端子群41a(1S,P1,P3,3S,3L,P2,1L)の一部(P3,P2)と端子群41b(C1,C2,DT,SG,D)の一部(DT,SG)にその電線が接続されたケーブル74(4心ケーブル)を介して、情報表示器5と通信可能に接続されている。情報表示器5は、ケーブル74の各電線が接続される端子群51(P3,P2,DT1,SG1,DT2,SG2)を備える。
【0039】
図1に戻り、同図に示すように、機器工事確認システム1は、記憶部110、モデル学習部120、画像データ取得部125、機器検出部130、端子検出部135、電線検出部140、結線良否確認部145、庫出機器同定部150、日時表示確認部155、及び確認結果生成部160の各機能を有する。
【0040】
上記機能のうち、記憶部110は、画像データ111、学習モデル112、学習データ113、庫出機器情報114、及び確認結果115を記憶する。
【0041】
画像データ111は、画像データ取得部125によって取得されるデータであり、現場において撮影された映像を所定の形式で符号化することにより得られるデータである。画像データ111は、動画から切り出された一コマ(1フレーム)であってもよい。画像データ111は、スマートフォンやディジタルスチールカメラ等を用いて人が撮影したものでもよいし、自動的に撮影されたものでもよい。
【0042】
図1に示すように、学習モデル112は、機器検出モデル1121、端子検出モデル1122、電線検出モデル1123、結線良否確認モデル1124、及び日時表示検出モデル1125の各機械学習モデルを含む。
【0043】
このうち機器検出モデル1121は、画像データ111に所定の機器が写っていることを検出する機械学習モデルである。機器検出モデル1121は、画像データ111に所定の機器が写っている場合、更に当該機器を識別する情報(形式、製造番号等。以下、「機器属性」と称する。)を取得する。機器検出モデル1121は、例えば、画像データ111に写っている機器の形態等を特徴量として用いて機器属性を取得する。また、機器検出モデル1121は、例えば、機器に付されている表示板の表示を認識(文字認識、バーコード認識、QRコード(登録商標)認識等)することにより機器属性を取得する。
【0044】
端子検出モデル1122は、画像データ111に所定の機器が写っている場合に当該機器の端子が写っていることを検出する機械学習モデルである。端子検出モデル1122は、画像データ111に当該機器の端子が写っていることを検出した場合、更に当該機器の端子を識別する情報(端子や端子の近傍に付されている文字、番号、色、その他端子の各種特徴。以下、「端子属性」と称する。)を取得する。端子検出モデル1122は、例えば、画像データ111に写っている端子の形態等を特徴量として用いて端子属性を取得する。
【0045】
電線検出モデル1123は、画像データ111に所定の機器の端子が写っている場合に当該端子に接続されている電線を検出する機械学習モデルである。電線検出モデル1123は、端子に接続されている電線を検出した場合、更に当該電線を識別する情報(電線の被覆の色、電線の被覆に記載されている文字、電線に付されている札、その他電線の各種特徴。以下、「電線属性」と称する。)を特定する。電線検出モデル1123は、例えば、画像データ111に写っている電線の形態等を特徴量として用いて電線属性を取得する。
【0046】
結線良否確認モデル1124は、端子検出モデル1122により検出される端子と、電線検出モデル1123により検出される、当該端子に接続されている電線と、の結線の良否(正しい関係で結線されているか否か)を、当該端子の端子属性と当該電線の電線属性とを対照することにより確認する。例えば、結線良否確認モデル1124は、端子に付されている色や文字と電線に付されている色や文字が一致するか否かにより、端子と電線の結線の良否を確認する。
【0047】
日時表示検出モデル1125は、画像データ111に、情報表示器5が表示する日時が写っていることを検出する機械学習モデルである。日時表示検出モデル1125は、日時の表示が写っている場合、更に表示されている日時を特定(認識)する。尚、日時表示検出モデル1125は、例えば、文字認識技術により画像データ111に写っている日時の表示の検出や日時の特定を行う。
【0048】
尚、以上に示した各機械学習モデルの種類は必ずしも限定されないが、例えば、深層学習(DNN(Deep Neural Network)、CNN(Convolutional Neural Network)等)により実現される。また、各機械学習モデルは、例えば、定常状態をオートエンコーダ(VAE(Variational Autoencoder)等)により学習することにより得られる機械学習モデル(異常検知モデル)でもよい。また、各機械学習モデルによる画像データ111に基づく物体の検出は、例えば、「sliding window method」、「HOG(Histograms of Oriented Gradients)特徴量」、「region proposal method」、「Faster R-CNN」、「YOLO(You Only Look Once)」、「SSD(Single Shot Detector)」、「End-to-END学習」等)を用いて行われる。また、各機械学習モデルが用いる特徴量は、人間系により設定してもよいし、例えば、公知の特徴量抽出手法(SIFT(Scale-Invariant Feature Transform)、SURF(Speeded-Up Robust Features)、FAST(Features from Accelerated Segment Test)、BRIEF(Binary Robust Independent Elementary Features)、ORB(Oriented FAST and Rotated BRIEF)等)により情報処理装置が自動的に抽出した特徴量を用いてもよい。
【0049】
図1に示すように、学習データ113は、機器検出モデル1121の学習に用いる学習データ1131、端子検出モデル1122の学習に用いる学習データ1132、電線検出モデル1123の学習に用いる学習データ1133、結線良否確認モデル1124の学習に用いる学習データ1134、及び日時表示検出モデル1125の学習に用いる学習データ1135を含む。
【0050】
機器検出モデル1121の学習に用いる学習データ1131は、例えば、機器が写っている画像データと当該機器の種類(正解情報、ラベル)とを対応づけたデータである。学習データ1131は、例えば、機器が写っていない画像データと機器が写っていないことを示す情報とを対応づけたデータを含んでいてもよい。尚、機器検出モデル1121の精度を高めるために、機器検出モデル1121の学習は、機器を様々な態様(光の加減、撮影方向、撮影位置等の撮影条件の異なる様々な態様)で撮影された画像データに基づく十分な量の学習データ1131を用いて行われる。
【0051】
端子検出モデル1122の学習に用いる学習データ1132は、例えば、端子が写っている画像データと当該端子の端子属性を示す情報(正解情報、ラベル)とを対応付けたデータである。学習データ1132は、例えば、端子が写っていない画像データと端子が写っていないことを示すデータとを対応づけたデータを含んでいてもよい。尚、端子検出モデル1122の精度を高めるために、端子検出モデル1122の学習は、端子を様々な態様(光の加減、撮影方向、撮影位置等の撮影条件の異なる様々な態様)で撮影した画像データに基づく十分な量の学習データ1132を用いて行われる。
【0052】
電線検出モデル1123の学習に用いる学習データ1133は、例えば、電線が写っている画像データと当該電線の電線属性を示す情報(正解情報、ラベル)とを対応付けたデータである。学習データ1133は、例えば、電線が写っていない画像データと電線が写っていないことを示すデータとを対応づけたデータを含んでいてもよい。尚、電線検出モデル1123の精度を高めるために、電線検出モデル1123の学習は、電線を様々な態様(光の加減、撮影方向、撮影位置等の撮影条件の異なる様々な態様)で撮影した画像データに基づく十分な量の学習データ1133を用いて行われる。
【0053】
結線良否確認モデル1124の学習に用いる学習データ1134は、例えば、端子属性と電線属性の組み合わせと、当該組み合わせが正しい組み合わせであるか否かを示す情報(正解情報、ラベル)とを対応づけたデータである。尚、結線良否確認モデル1124の精度を高めるために、結線良否確認モデル1124の学習は、端子属性と電線属性との様々な組み合わせについての十分な量の学習データ1134を用いて行われる。
【0054】
日時表示検出モデル1125の学習に用いる学習データ1135は、例えば、情報表示器5が表示する日時の表示が写っている画像データと日時を示す情報(正解情報、ラベル)とを対応づけたデータである。尚、日時表示検出モデル1125の精度を高めるために、日時表示検出モデル1125の学習は、日時の表示が写っている画像データと日時を示す情報との様々な組み合わせについての十分な量の学習データ1134を用いて行われる。
【0055】
図1に示す庫出機器情報114は、当該現場に向けて庫出された機器を特定する情報(形式及び製造番号)を含む。機器工事確認システム1は、庫出機器情報114を、例えば、ユーザインタフェースを介して、もしくは、通信により取得する。
【0056】
図3に庫出機器情報114の一例を示す。例示する庫出機器情報114は、庫出日時1141、現場ID1142、形式1143、製造番号1144等の項目を有する一つ以上のエントリ(レコード)で構成される。庫出機器情報114のエントリの一つは庫出しされる一つの機器に対応する。上記項目のうち、庫出日時1141には、当該機器が庫出される日時が設定される。現場ID1142には、当該機器の設置先の現場の識別子である現場IDが設定される。形式1143には、当該機器の形式が設定される。製造番号1144には、当該機器の製造番号が設定される。
【0057】
図1に戻り、確認結果115は、結線良否確認部145、庫出機器同定部146、及び日時表示確認部155により確認された結果を示す情報を含む。確認結果115の内容は、確認結果生成部160により作業者等のユーザに提供される。
【0058】
図4に、確認結果115の一例を示す。例示する確認結果115は、機器ID1151、形式1152、製造番号1153、結線状況1154、庫出同定1155、日時表示1156等の項目を有する複数のエントリ(レコード)で構成される。確認結果115のエントリの一つは現場に設置されている一つの機器に対応する。上記項目のうち、機器ID1151には、現場に設けられている機器の機器IDが設定される。形式1152には、当該機器の形式を示す情報(形式番号、型番等)が設定される。製造番号1153には、当該機器の製造番号が設定される。結線状況1154には、当該機器の端子についての結線良否確認部145による結線の良否の判定結果が設定される。庫出同定1155には、庫出機器同定部150による同定の結果が設定される。日時表示1156には、日時表示確認部155による日時表示の確認結果が設定される。
【0059】
図1に示すモデル学習部120は、対応する学習データ113による学習モデル112の学習、即ち、学習データ1131による機器検出モデル1121の学習、学習データ1132による端子検出モデル1122の学習、学習データ1133による電線検出モデル1123の学習、学習データ1134による結線良否確認モデル1124の学習、及び学習データ1135による日時表示検出モデル1125の学習を行う。尚、学習データ113を学習に用いるデータと検証に用いるデータに分割し、学習に用いるデータで学習した後の学習モデル112について検証に用いるデータで検証を行うようにしてもよい。
【0060】
画像データ取得部125は、現場で撮影された画像データを取得する。画像データ取得部125が取得した画像データは、記憶部110が画像データ111として記憶する。
【0061】
機器検出部130は、機器検出モデル1121により、画像データ111に含まれている機器の検出、及び機器が検出された場合は当該機器の機器属性の取得を行う。
【0062】
端子検出部135は、端子検出モデル1122により、画像データ111に写っている端子の検出、及び端子が検出された場合は当該端子の端子属性の取得を行う。
【0063】
電線検出部140は、電線検出モデル1123により、画像データ111に写っている電線の検出、及び電線が検出された場合は当該電線の電線属性の取得を行う。
【0064】
結線良否確認部145は、結線良否確認モデル1124により、端子と電線の結線の良否を判定する。
【0065】
庫出機器同定部150は、機器検出部130により特定された機器の種類(形式、製造番号)を庫出機器情報114と照合することにより、現場に設置された機器が当該現場について庫出しされた機器と同じものか否かを確認(同定)する。
【0066】
日時表示確認部155は、日時表示検出モデル1125により、画像データ111に写っている日時の表示の検出、及び日時の表示を検出した場合は当該日時の特定(識別、文字認識)を行う。また、日時表示確認部155は、特定した日時を機器工事確認システム1が保持する日時と対照することにより、特定した日時が正しいか否かを判定する。
【0067】
確認結果生成部160は、結線良否確認部145により確認された端子と電線の結線の良否を確認した結果、庫出機器同定部150による現場に設置された機器が当該現場について庫出しされた機器と同じものか否かの確認結果、及び日時表示確認部155による日時表示が正しいか否かの確認結果を、確認結果115として記憶する。確認結果生成部160は、確認結果115を随時出力(画面表示、音声出力等)する。
【0068】
図5は、
図1に示した機器工事確認システム1の実現に用いる情報処理装置(コンピュータ)のハードウェアの一例である。例示する情報処理装置10は、プロセッサ11、主記憶装置12、補助記憶装置13、入力装置14、出力装置15、通信装置16、計時装置17、及び撮影装置18を備える。機器工事確認システム1は、通信可能に接続された複数の情報処理装置10により構成してもよい。また、情報処理装置10は、その全部又は一部が、例えば、クラウドシステムによって提供される仮想サーバのように、仮想化技術やプロセス空間分離技術等を用いて提供される仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。また、情報処理装置10によって提供される機能の全部又は一部は、例えば、クラウドシステムがAPI(Application Programming Interface)等を介して提供するサービスによって実現してもよい。また、情報処理装置10によって提供される機能の全部又は一部は、例えば、SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)等を利用して実現されるものであってもよい。情報処理装置10の一部は、例えば、工事の現場に持ち込まれる、スマートフォン、タブレット、ノートブック型パーソナルコンピュータ等の携帯型の情報端末であってもよい。
【0069】
同図において、プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、AI(Artificial Intelligence)チップ等を用いて構成されている。
【0070】
主記憶装置12は、プログラムやデータを記憶する装置であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ(NVRAM(Non Volatile RAM))等である。
【0071】
補助記憶装置13は、例えば、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ、光学式記憶装置(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等)、ストレージシステム、ICカード、SDカードや光学式記録媒体等の記録媒体の読取/書込装置、クラウドサーバの記憶領域等である。補助記憶装置13には、記録媒体の読取装置や通信装置16を介してプログラムやデータを読み込むことができる。補助記憶装置13に格納(記憶)されているプログラムやデータは主記憶装置12に随時読み込まれる。
【0072】
入力装置14は、外部からの入力を受け付けるインタフェースであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、カードリーダ、ペン入力方式のタブレット、音声入力装置等である。
【0073】
出力装置15は、処理経過や処理結果等の各種情報を出力するインタフェースである。出力装置15は、例えば、上記の各種情報を可視化する表示装置(液晶モニタ、LCD(Liquid Crystal Display)、グラフィックカード等)、上記の各種情報を音声化する装置(音声出力装置(スピーカ等))、上記の各種情報を文字化する装置(印字装置等)である。尚、例えば、情報処理装置10が通信装置16を介して他の装置との間で情報の入力や出力を行う構成としてもよい。
【0074】
入力装置14及び出力装置15は、ユーザとの間で情報の受け付けや情報の提示を行うユーザインタフェースを構成する。
【0075】
通信装置16は、他の装置との間の通信を実現する装置である。通信装置16は、インターネット等の通信ネットワークを介して他の装置との間の通信を実現する、有線方式又は無線方式の通信インタフェースであり、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USBモジュール等である。
【0076】
計時装置17は、精度の高い現在日時を生成する装置であり、RTC(Real Time Clock)等を用いて構成される。計時装置17は、通信装置16がNTP(Network Time Protocol)により取得した日時により日時を較正するものであってもよい。
【0077】
撮影装置18は、静止画又は動画を撮影し、撮影した映像に基づき画像データ111を生成する。撮影装置18は、例えば、現場の作業者が使用するスマートフォンに付属するカメラやデジタルスチールカメラである。尚、撮影装置18により取得される画像データ111についての画像認識を行うとともに、例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)やミリ波レーダ等の物体検知センサにより得られる現場の情報をパラメータとする学習データを用いて学習した機械学習モデルを用いて、対象(機器、端子、電線)の検出精度を向上するようにしてもよい。
【0078】
情報処理装置10には、例えば、オペレーティングシステム、ファイルシステム、DBMS(DataBase Management System)(リレーショナルデータベース、NoSQL等)、KVS(Key-Value Store)等が導入されていてもよい。
【0079】
機器工事確認システム1が備える前述した各機能は、情報処理装置10のプロセッサ11が、主記憶装置12に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、もしくは、情報処理装置10のハードウェア(FPGA、ASIC、AIチップ等)によって実現される。情報処理装置10は、前述した各種の情報(データ)を、例えば、データベースのテーブルやファイルシステムが管理するファイルとして記憶する。
【0080】
続いて、機器工事確認システム1が行う主な処理について説明する。
【0081】
図6は、機器工事確認システム1が、学習モデル112(機器検出モデル1121、端子検出モデル1122、電線検出モデル1123、結線良否確認モデル1124、及び日時表示検出モデル1125)の学習に際して行う処理(以下、「学習処理S600」と称する。)を説明するフローチャートである。モデル学習部120は、機器検出モデル1121、端子検出モデル1122、電線検出モデル1123、結線良否確認モデル1124、及び日時表示検出モデル1125の夫々について、夫々に対応する学習データ1131~1135を用いて個別に学習を行う(S611)。尚、学習モデル112の学習には通常は多くの情報処理資源を必要とするため、例えば、学習モデル112の学習は、クラウドシステムが提供する機械学習用のAPI(Application Programming Interface)を用いて行ってもよい。
【0082】
図7は、機器工事確認システム1が、現場での機器の設置状況の確認に際して行う処理(以下、「確認処理S700」と称する。)を説明するフローチャートである。現場の作業者等(以下、「ユーザ」と称する。)は、例えば、機器工事確認システム1の構成要素であるスマートフォンを操作しつつ機器工事確認システム1を利用して機器の設置状況の確認を行う。以下、同図とともに確認処理S700について説明する。
【0083】
まず、機器工事確認システム1は、ユーザから、作業種別(「庫出し機器と現場に設置された機器の同定」、「結線の良否確認」、「表示日時の確認」のいずれか)の指定を受け付ける(S701)。ユーザが「機器の同定」を指定した場合(S702:機器同定)、機器工事確認システム1は、機器同定処理S710を実行し、その後、確認処理S700は終了する。ユーザが「結線の良否確認」を指定した場合(S702:結線良否)、機器工事確認システム1は、結線確認処理S720を実行し、その後、確認処理S700は終了する。ユーザが「表示日時の確認」を指定した場合(S702:表示日時)、機器工事確認システム1は、日時確認処理S730を実行し、その後、確認処理S700は終了する。
【0084】
図8は、
図7の機器同定処理S710を説明するフローチャートである。以下、同図とともに機器同定処理S710について説明する。尚、機器同定処理S710は、例えば、ユーザが所持するスマートフォンのアプリケーションソフトウェアにより行われる。
【0085】
まず、機器工事確認システム1の画像データ取得部125が、現場の画像データを取得し画像データ111として記憶する(S811)。上記画像データは、例えば、ユーザが現場でスマートフォンを操作することにより撮影した画像データである。画像データは静止画として撮影されたものでもよいし、動画データから切り出された一コマ(一フレーム)でもよい。
【0086】
続いて、機器工事確認システム1の機器検出部130が、画像データ111に含まれている機器の検出を行う(S812)。機器を検出できなければ(S813:NO)、処理はS811に戻る。一方、機器を検出すると(S813:YES)、機器検出部130は、検出した機器の機器属性を取得する(S814)。尚、S811~S814の処理は、例えば、ユーザがスマートフォンの撮影装置で現場に設置されている機器を撮影しつつリアルタイムに行われる。
【0087】
続いて、機器工事確認システム1の庫出機器同定部150が、機器検出部130が取得した機器属性を庫出機器情報114と対照する(S815)。対照の結果、機器属性が当該現場への庫出機器と同じであれば(S816:YES)、庫出機器同定部150は、当該機器が同定された旨を示す情報を出力(画面表示、音声出力等)する(S817)。一方、機器属性が当該現場への庫出機器と異なっていれば(S816:NO)、庫出機器同定部150は、当該機器が当該現場への庫出機器と異なる旨の警告を示す情報を出力(画面表示、音声出力等)する(S818)。
【0088】
S819では、庫出機器同定部150は、庫出し機器を確認した結果を、確認結果115の庫出同定1155に設定する。例えば、庫出機器同定部150は、庫出しした機器が現場に設置されていれば「OK」を、庫出しした機器と異なる機器が現場に設置されていれば警告を示す情報を庫出同定1155に設定する。
【0089】
図9は、
図7の結線確認処理S720を説明するフローチャートである。以下、同図とともに結線確認処理S720について説明する。
【0090】
まず機器工事確認システム1の画像データ取得部125が、現場の画像データを取得し画像データ111として記憶する(S911)。上記画像データは、例えば、ユーザが現場でスマートフォンを操作することにより撮影した画像データである。画像データは静止画として撮影されたものでもよいし、動画データから切り出された一コマ(一フレーム)でもよい。
【0091】
続いて、機器工事確認システム1の機器検出部130が、画像データ111に含まれている機器の検出を行う(S912)。機器を検出できなければ(S913:NO)、処理はS911に戻る。一方、機器を検出すると(S913:YES)、機器検出部130は、検出した機器の機器属性を取得する(S914)。
【0092】
続いて、機器工事確認システム1の端子検出部135が、画像データに含まれている端子の検出を行う(S915)。端子を検出できなければ(S916:NO)、処理はS911に戻る。一方、端子を検出すると(S916:YES)、端子検出部135は、検出した端子の端子属性を取得する(S917)。
【0093】
続いて、機器工事確認システム1の電線検出部140が、画像データに含まれている電線の検出を行う(S918)。電線を検出できなければ(S919:NO)、処理はS911に戻る。一方、電線を検出すると(S919:YES)、電線検出部140は、検出した電線の電線属性を取得する(S920)。
【0094】
尚、S911~S920の処理は、例えば、ユーザがスマートフォンの撮影装置で現場に設置されている機器を撮影しつつリアルタイムに行われる。
【0095】
続いて、機器工事確認システム1の結線良否確認部145が、端子属性と電線属性とを対照することにより、各端子への電線の結線の良否を確認する(S921)。結線が正しく行われていない場合(S922:NO)、結線良否確認部145は、結線が正しく行われていない端子と電線とを特定する情報や警告情報を出力(画面表示、音声出力等)し(S923)、S925の処理に進む。一方、結線が正しく行われている場合(S922:YES)、結線良否確認部145は、結線が良好である旨を出力(画面表示、音声出力等)する(S924)。
【0096】
S925では、結線良否確認部145は、結線を確認した結果を、確認結果115の結線状況1154に設定する。例えば、結線良否確認部145は、結線が正しければ場合は「OK」を、結線が正しくなければ正しくない端子を示す情報を、結線状況1154に設定する。
【0097】
続いて、結線良否確認部145は、確認結果115を生成する(S925)。
【0098】
図10は、
図7の日時確認処理S730を説明するフローチャートである。以下、同図とともに日時確認処理S730について説明する。
【0099】
まず、機器工事確認システム1の画像データ取得部125が、現場の画像データを取得し画像データ111として記憶する(S1011)。上記画像データは、例えば、ユーザが現場でスマートフォンを操作することにより撮影した画像データである。画像データは静止画として撮影されたものでもよいし、動画データから切り出された一コマ(一フレーム)でもよい。
【0100】
続いて、機器工事確認システム1の機器検出部130が、画像データ111に含まれている情報表示器5の検出を行う(S1012)。情報表示器5を検出できなければ(S1013:NO)、処理はS1011に戻る。一方、情報表示器5を検出すると(S1013:YES)、機器工事確認システム1の日時表示確認部155が、画像データに含まれている日時表示の検出を行う(S1014)。日時表示を検出できなければ(S1015:NO)、処理はS1011に戻る。一方、日時表示を検出すると(S1015:YES)、処理はS1016に進む。
【0101】
尚、S1011~S1015の処理は、例えば、ユーザがスマートフォンの撮影装置で現場に設置されている機器を撮影しつつリアルタイムに行われる。
【0102】
S1016では、日時表示確認部155は、検出した日時を計時装置17から取得される日時(以下、「システム日時」と称する。)と対照する。検出した日時が正しくなければ(S1017:NO)、日時表示確認部155は、日時の較正をユーザに促す情報(日時較正指示)を出力し(画面表示、音声出力等)(S1018)、S1020に進む。一方、検出した日時が正しければ(S1017:YES)、日時表示確認部155は、日時が正しい旨を示す情報を出力する(画面表示、音声出力等)。
【0103】
S1020では、日時表示確認部155は、日時を確認した結果を、確認結果115の日時表示1156に設定する。例えば、日時表示確認部155は、結線が正しければ場合は「OK」を、結線が正しくなければ正しくない旨を示す情報を、日時表示1156設定する。
【0104】
ところで、以上の各処理(機器同定処理S710、結線確認処理S720、日時確認処理S730)の結果を示した画面を、例えば、ユーザが操作するスマートフォン等の情報処理装置10の出力装置15(表示装置)に表示するようにしてもよい。
【0105】
図11に、上記画面(以下、「確認結果表示画面1100」と称する。)の一例を示す。例示する確認結果表示画面1100には、確認結果115の内容、即ち、確認の対象となった機器に関する情報(機器ID1151、形式1152、製造番号1153)と、上記の各処理の結果(結線状況1154、庫出同定1155、日時表示1156)が表示されている。ユーザは、確認結果表示画面1100を参照することで、効率よく確認作業を行うことができる。
【0106】
以上に説明したように、機器工事確認システム1は、現場を撮影した画像データ111に含まれている機器の端子の端子属性と当該端子に接続する電線の電線属性とを自動的に取得し、これらを対照することにより端子と電線の結線の良否を自動的に確認するので、機器の設置工事における作業者の負担軽減を図るとともに機器の状況についての確認精度を確保することができる。また、機器工事確認システム1は、画像認識を行う機械学習モデルである機器検出モデルにより端子と電線を検出するので、機器の確認を効率よく確実に行うことができるとともに、機器の確認精度を確保することができる。
【0107】
また、機器工事確認システム1は、現場の機器に元々付されている情報である、端子に付されている情報や電線の被覆に付されている情報を、端子属性や電線属性として用いるので、現場に設置される機器に別途の情報を付す必要がなく、様々な現場に柔軟かつ容易に適用することができる。
【0108】
また、機器工事確認システム1は、現場に設置されている機器が当該現場に向けて庫出しされた機器と同じ機器であるか否かを自動的に確認するので、庫出しした機器と異なる機器が誤って現場に設置されてしまうのを防いで工事の確実性及び安全性を高めることができる。
【0109】
また、機器工事確認システム1は、現場に設置されている情報表示器の日時表示が正しいか否かを自動的に判定するので、電力量計等の機器が保持している日時が正しいか否かの確認にかかる作業者の負担を軽減することができる。
【0110】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、以上の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また上記実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0111】
1 機器工事確認システム、10 情報処理装置、110 記憶部、111 画像データ、112 学習モデル、1121 機器検出モデル、1122 端子検出モデル、1123 電線検出モデル、1124 結線良否確認モデル、1125 日時表示検出モデル、113 学習データ、1131 機器検出モデルの学習に用いる学習データ、1132 端子検出モデルの学習に用いる学習データ、1133 電線検出モデルの学習に用いる学習データ、1134 結線良否確認モデルの学習に用いる学習データ、1135 日時表示検出モデルの学習に用いる学習データ、114 庫出機器情報、115 確認結果、120 モデル学習部、125 画像データ取得部、130 機器検出部、135 端子検出部、140 電線検出部、145 結線良否確認部、150 庫出機器同定部、155 日時表示確認部、160 確認結果生成部、S600 学習処理、S700 確認処理、S710 機器同定処理、S720 結線確認処理、S730 日時確認処理