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  • 特許-車両用ドア構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】車両用ドア構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
B60J5/00 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021009311
(22)【出願日】2021-01-25
(65)【公開番号】P2022113234
(43)【公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正義
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-201376(JP,A)
【文献】特開2015-027830(JP,A)
【文献】特開2018-154149(JP,A)
【文献】特開2008-001272(JP,A)
【文献】特開2003-094943(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0134129(US,A1)
【文献】特開2008-302876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアの車外側のアウタパネルと、該アウタパネルの車内側に接合して該アウタパネルとの間に閉断面を形成するインナパネルと、長尺な形状で該閉断面内で該インナパネルにかけ渡され該車両用ドアを補強するリンフォースとを備える車両用ドア構造において、
前記インナパネルは、
前記アウタパネルの側縁に接合されるインナ側縁部と、
前記インナ側縁部から屈曲して前記アウタパネルから離れるように延びるインナ端面部とを有し、
前記リンフォースは、
長手方向の一端に形成されて前記インナ端面部に沿って接合される接合部と、
前記接合部に連続して形成されつつ該接合部から屈曲して前記インナ端面部から離れるように延びる延伸部と、
前記延伸部に連続して形成されつつ該延伸部からさらに前記アウタパネル側に凸に湾曲しながら延びて所定箇所が該アウタパネルに接合される湾曲部とを有し、
前記延伸部は、前記接合部および前記湾曲部に比べて相対的に剛性が低いことを特徴とする車両用ドア構造。
【請求項2】
前記延伸部は、平板状に形成された平面領域を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア構造。
【請求項3】
前記リンフォースはさらに、前記湾曲部にその長手方向にわたって形成されて前記アウタパネル側に突出するビードを有し、
前記湾曲部は、前記ビードの頂部で前記アウタパネルに接合されることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ドア構造。
【請求項4】
前記リンフォースはさらに、前記湾曲部から前記延伸部に形成されて前記アウタパネル側に突出するビードを有することを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア構造。
【請求項5】
前記ビードの延伸部における幅は、前記湾曲部における幅よりも細いことを特徴とする請求項4に記載の車両用ドア構造。
【請求項6】
前記ビードの幅は、前記接合部に向かって次第に細くなっていることを特徴とする請求項4または5に記載の車両用ドア構造。
【請求項7】
当該車両用ドア構造はさらに、前記ビードと前記アウタパネルとの間に設けられるシール部材を備えることを特徴とする請求項3から6のいずれか1項に記載の車両用ドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用ドアの内部には、補強用のリンフォースが設けられることがある。例えば、特許文献1のドア構造では、ドアインナパネル4にベルトラインレインフォースメント10が設置されている。ベルトラインレインフォースメント10は、ドアアウタパネル9の裏面に近接するように配置されていて、ドアアウタパネル9が変形したときにこれを受け止めることが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-302876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、段落0020および図2等に記載されているように、ベルトラインレインフォースメント10の後端の取付部10bが、ドアサッシュ部3に取り付けられている。しかしながら、図4に記載されているように、ベルトラインレインフォースメント10は、主要な部分がドアアウタパネル9に近接するよう湾曲していて、全体の形状がΩ状になっている。したがって、湾曲した部分にドアアウタパネル9から荷重がかかると、湾曲した部分と取付部10bとの外角を支点にしてテコの力が生じるおそれがある。この力は、取付部10bの先端側をドアサッシュ部3から剥離させる方向に作用し、溶接部などに応力が集中して亀裂を発生させやすく、リンフォースの強度および耐久性を低下させる原因になりかねない。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、リンフォースの強度および耐久性を向上可能な車両用ドア構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用ドア構の代表的な構成は、車両用ドアの車外側のアウタパネルと、アウタパネルの車内側に接合してアウタパネルとの間に閉断面を形成するインナパネルと、長尺な形状で閉断面内でインナパネルにかけ渡され車両用ドアを補強するリンフォースとを備える車両用ドア構造において、インナパネルは、アウタパネルの側縁に接合されるインナ側縁部と、インナ側縁部から屈曲してアウタパネルから離れるように延びるインナ端面部とを有し、リンフォースは、長手方向の一端に形成されてインナ端面部に沿って接合される接合部と、接合部から屈曲してインナ端面部から離れるように延びる延伸部と、延伸部からさらにアウタパネル側に凸に湾曲しながら延びて所定箇所がアウタパネルに接合される湾曲部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リンフォースの強度および耐久性を向上可能な車両用ドア構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係る車両用ドア構造の概要を示した図である。
図2図1のリンフォースの後端付近を各方向から示した図である。
図3図2(a)のリンフォースのA-A断面図である。
図4図2(a)のリンフォースの第1変形例を示した図である。
図5図2(a)のリンフォースの第2変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る車両用ドア構造は、車両用ドアの車外側のアウタパネルと、アウタパネルの車内側に接合してアウタパネルとの間に閉断面を形成するインナパネルと、長尺な形状で閉断面内でインナパネルにかけ渡され車両用ドアを補強するリンフォースとを備える車両用ドア構造において、インナパネルは、アウタパネルの側縁に接合されるインナ側縁部と、インナ側縁部から屈曲してアウタパネルから離れるように延びるインナ端面部とを有し、リンフォースは、長手方向の一端に形成されてインナ端面部に沿って接合される接合部と、接合部から屈曲してインナ端面部から離れるように延びる延伸部と、延伸部からさらにアウタパネル側に凸に湾曲しながら延びて所定箇所がアウタパネルに接合される湾曲部とを有することを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、ドア閉時などにアウタパネルに生じる荷重は、当該アウタパネルからリンフォースの湾曲部へと伝えられる。そして、リンフォースの湾曲部は、延伸部が変形を許容することで、全体としてたわむ。このとき、湾曲部がたわむ力は、接合部をインナ端面部に押し付ける方向に作用する。そのため、接合部とインナ端面部とをスポット溶接した場合、その溶接部に剥離方向やせん断方向の力がかかり難い。よって、上記構成によれば、溶接部への応力集中を避けることができ、これによってリンフォースの強度および耐久性を向上させて、ドアの振動やアウタパネルの変形等を抑えることが可能になる。
【0011】
上記の延伸部は、平板状に形成された平面領域を有してもよい。この構成によって、延伸部をよりたわみやすくすることが可能になる。特に、平面領域の剛性が湾曲部に比較して相対的に低ければ、延伸部をたわませることが可能となる。
【0012】
上記のリンフォースはさらに、湾曲部にその長手方向にわたって形成されてアウタパネル側に突出するビードを有し、湾曲部は、ビードの頂部でアウタパネルに接合されてもよい。
【0013】
上記ビードを設けることによって、湾曲部の剛性を向上させ、延伸部にたわみの発生を促すことが可能になる。また、ビードによって湾曲部の剛性を向上させることで、ドア組付前におけるリンフォース単体での取扱いの際において当該リンフォースの変形を防ぐことが可能になる。
【0014】
上記のリンフォースはさらに、湾曲部から延伸部に形成されてアウタパネル側に突出するビードを有してもよい。
【0015】
上記ビードを設けることによって、湾曲部から延伸部にかけての剛性を向上させ、延伸部のその他の部分にたわみの発生を促すことが可能になる。また、ビードによって湾曲部から延伸部にかけての剛性を向上させることで、ドア組付前におけるリンフォース単体での取扱いの際において当該リンフォースの変形を防ぐことが可能になる。
【0016】
上記のビードの延伸部における幅は、湾曲部における幅よりも細くてもよい。この構成によれば、延伸部の剛性を下げて、延伸部にたわみの発生を促すことが可能になる。
【0017】
上記のビードの幅は、接合部に向かって次第に細くなっていてもよい。この構成によれば、延伸部のうち接合部に近い部分の剛性を下げて、たわみの発生を促すことが可能になる。
【0018】
当該車両用ドア構造はさらに、ビードとアウタパネルとの間に設けられるシール部材を備えてもよい。シール部材を利用することで、湾曲部のビードとアウタパネルとを好適に接続することが可能になる。
【実施例
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
図1は、本発明の実施例に係る車両用ドア構造100の概要を示した図である。以下、図1その他の本願のすべての図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Backward)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Leftward)、R(Rightward)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(upward)、D(downward)で例示する。
【0021】
本実施例では、当該車両用ドア構造100を、車両用ドアである右前側のフロントサイドドア102として実施している。図1のフロントサイドドア102は、車外側を構成するアウタパネル104(図2(b)参照)を省略し、車内側のインナパネル106を車外側から見て図示している。
【0022】
当該車両用ドア構造100は、インナパネル106にかけ渡されてフロントサイドドア102を補強するリンフォース108を備えている。リンフォース108は、長尺な形状で、前端110および後端112それぞれがインナパネル106の車両前側と車両後側とにかけ渡され、車両前後方向に延びた状態に設置される。
【0023】
図2は、図1のリンフォース108の後端112付近を各方向から示した図である。図2(a)は、図1のリンフォース108の後端112付近の拡大図である。本実施例では、リンフォース108の長手方向の一端である後端112側の構成を工夫することで、インナパネル106に設置した状態におけるリンフォース108の強度および耐久性の向上を図っている。
【0024】
図2(b)は、図2(a)のリンフォース108の後端112付近の斜視図である。図2(b)では、形状が把握しやすいよう、リンフォース108およびインナパネル106を部分的に切断している。リンフォース108には、インナパネル106に接合する接合部124と、剛性を補うためのビード130が設けられている。
【0025】
本実施形態では、リンフォース108のうち、インナパネル106に接合される接合部124とビード130を有する湾曲部128の間に、これら接合部124および湾曲部128に比べて相対的に剛性が低い部位として、延伸部126を設けている。後述するように、延伸部126は、リンフォース108にたわみを生じさせる部位であり、当該リンフォース108はこれによって荷重を吸収することが可能になっている。また、他の例として、延伸部126にもビードが形成される場合でも、延伸部126のビードを湾曲部128のビードから徐々に細くなるよう設けることで、延伸部126の剛性を相対的に低くし、上記構成と同様に延伸部126にたわみを生じさせることが可能になる。
【0026】
図3は、図2(a)のリンフォース108のA-A断面図である。図3(a)は、リンフォース108が荷重を受ける前の様子を示している。リンフォース108の詳しい説明に先立って、フロントサイドドア102を構成するパネル部材について説明する。フロントサイドドア102は、車外側のアウタパネル104と、アウタパネル104の車内側に接合されるインナパネル106とを含んで構成されている。
【0027】
インナパネル106は、アウタパネル104の側縁114に接合されるインナ側縁部116と、インナ側縁部116の車両前側から屈曲してアウタパネル104から離れるように延びるインナ端面部118、そしてアウタパネル104に向かい合うように延びているインナ中央部120を含んで構成されている。インナパネル106は、これら構成によって、アウタパネル104との間に閉断面E1を形成している。
【0028】
リンフォース108は、上記閉断面E1内でインナパネル106に車両前後方向にかけ渡されている。前述した接合部124は、インナ端面部118に対して、車両前側からスポット溶接等によって接合される。接合部124は、後端112側の所定範囲に形成されていて、後端112をアウタパネル104側に向けた状態でインナ端面部118に沿って接合される。
【0029】
延伸部126は、接合部124に連続して形成されている。延伸部126は、インナ端面部118から離れるように車両前方に屈曲して延びている。これによって、接合部124から延伸部126にかけて、L字形状が形成されている。本実施例では、インナパネル106のインナ端面部118とインナ中央部120の間に、インナ段差部122が形成されている。延伸部126は、インナ段差部122の車外側に重なる範囲に設けられている。
【0030】
延伸部126から連続する部分には、湾曲部128が形成されている。湾曲部128は、延伸部126からさらにアウタパネル104側に凸に湾曲しながら車両前方に延びている。湾曲部128には、前述したビード130(図2(a)参照)が設けられている。ビード130は、湾曲部128にその長手方向にわたって設けられていて、湾曲部128の幅方向の中央側の範囲をアウタパネル104側に突出するよう膨出させることで形成されている。
【0031】
湾曲部128は、ビード130の頂部132の各所に設けた台座部134を利用してアウタパネル104に接合される。当該車両用ドア構造100では、リンフォース108の台座部134とアウタパネル104とをシール部材136を利用して接続している。シール部材136は、リンフォースの湾曲部128のビード130とアウタパネル104との間に設けられて、これら部材をつなぐ。シール部材136を利用することで、湾曲部128のビード130とアウタパネル104とを好適に接続することができる。
【0032】
リンフォース108は、ビード130を設けて湾曲部128の剛性を向上させることで、相対的に延伸部126の剛性を低くし、アウタパネル104から荷重を受けたときに延伸部126にたわみの発生を促している。また、ビード130によって湾曲部128の剛性を向上させることで、ドア組付前におけるリンフォース108単体での取扱いの際において当該リンフォース108の変形を防ぎ、リンフォース108の運搬等を行いやすくすることが可能になっている。
【0033】
図3(b)は、リンフォース108が荷重を受けたときの様子を示している。本実施例の構成では、ドア閉時などにアウタパネル104に生じる荷重P1は、当該アウタパネル104からリンフォース108の湾曲部128へと伝えられる。そして、リンフォース108の湾曲部128は、相対的に剛性の低い延伸部126が変形を許容することで、全体として車幅方向にたわみ、荷重を吸収することが可能になっている。
【0034】
荷重P1によって湾曲部128が車幅方向にたわむとき、湾曲部128よりも端にある接合部124には、力P2が車両後方、すなわち接合部124をインナ端面部118に押し付ける方向に作用する。そのため、接合部124とインナ端面部118とをスポット溶接した場合、その溶接部に剥離方向やせん断方向の力がかかり難い。よって、上記構成によれば、溶接部への応力集中を避けることができ、これによってリンフォース108の強度および耐久性を向上させて、フロントサイドドア102の振動やアウタパネル104の変形等を抑えることが可能になっている。
【0035】
図2(b)に示すように、本実施例では、上記リンフォース108のたわみが円滑に生じるよう、延伸部126は平板状に形成された平面領域138を有している。平面領域138は、凹凸の少ない平らな領域であり、本実施例では延伸部126のほぼ全域に形成されている。延伸部126に平面領域138を設けることで、延伸部126の剛性を接合部124および湾曲部128と比較して相対的に下げ、延伸部126をよりたわみやすくすることができる。
【0036】
なお、本実施例の延伸部126は平板状に形成されているが、これに限らず、他の例として、延伸部は接合部124から湾曲部128にかけて連続する車内側に凸のなだらかな曲面状の領域として形成することも可能である。延伸部を曲面状に形成することによっても、延伸部を円滑にたわませることが可能である。その他、延伸部126に湾曲部128との間で相対的な剛性差が生じる構成として、ビード130を湾曲部128から延伸部126、そして接合部124にかけて徐々に細くなるよう設けることも可能である。
【0037】
ビード130の端部140は、丸みを帯びた形状になっている。ビード130の端部140は、アウタパネル104(図3(b)参照)から荷重P1を受けたときに応力が集中しやすい箇所であり、ビード130の端部140を丸くすることで応力を適度に分散させて延伸部126を円滑にたわませることが可能になっている。
【0038】
上記説明したリンフォース108の接合部124、延伸部126等の要素は、本実施例ではリンフォース108の後端112側に設けているが、前端110側(図1参照)に設けることも、後端112側と前端110側の両方に設けることも可能である。いずれの構成によっても、アウタパネル104(図3(b)参照)からの荷重P1を好適に吸収することが可能である。
【0039】
(変形例)
図4は、図2(a)のリンフォース108の第1変形例(リンフォース160)を示した図である。図4では、上記実施例にて既に説明した構成要素と同じものには同じ符号を付していて、これによって既出の構成要素については説明を省略する。また、以下の説明において、既に説明した構成要素と同じ名称のものについては、例え異なる符号を付していても、特に明記しない場合は同じ機能を有しているものとする。
【0040】
リンフォース160では、ビード162が、湾曲部128から延伸部126の一部にわたって設けられている。ビード162は、ビード162(図2(a)参照)と同様に、当該リンフォース160の長手方向に延びるよう、湾曲部128および延伸部126の幅方向の中央側をアウタパネル104(図3(a)参照)側に突出するよう膨出させることで形成されている。
【0041】
ビード162を設けることによって、湾曲部128から延伸部126の一部にかけての剛性を向上させ、延伸部126のその他の部分(平面領域164)に応力を集中させて、平面領域164を中心に延伸部126にたわみの発生を促すことが可能になる。また、ビード162によって湾曲部128から延伸部126にかけての剛性を向上させることで、ドア組付前におけるリンフォース160単体での取扱いの際において当該リンフォース160の変形を防ぎ、リンフォース160の運搬等を行いやすくすることが可能になっている。
【0042】
延伸部126におけるビード162の幅W1は、湾曲部128におけるビード162の幅W2よりも細く設定されている(W1<W2)。特に、延伸部126におけるビード162の幅W1は、接合部124に向かって次第に細くなるよう設定されている。これら構成によれば、延伸部126のうち、平面領域164を含む接合部124に近い部分の剛性を下げて、延伸部126にたわみの発生を促すことが可能になる。また、ビード162の幅W2をなだらかに細くすることで、延伸部126の適度な剛性の確保とたわみやすさとの両立を図ることができる。
【0043】
図5は、図2(a)のリンフォース108の第2変形例(リンフォース180)を示した図である。リンフォース180では、ビード182が、湾曲部128から延伸部126、そして接合部124をわたって後端112に到達するまで設けられている。ビード182もまた、ビード162(図2(a)参照)等と同様に、当該リンフォース180の長手方向に延びるよう、湾曲部128、延伸部126および接合部124の幅方向の中央側を膨出させることで形成されている。
【0044】
当該リンフォース180では、ビード182を後端112に向かって徐々に細く形成している。詳しくは、後端112におけるビード182の幅W3は、湾曲部128におけるビード182の幅W2よりも細く設定されている(W3<W2)。リンフォース180は、ビード182を設けることで、湾曲部128から接合部124にかけての全体の剛性が向上している。
【0045】
また、リンフォース180では、ビード182の上下幅を後端112に向かって徐々に細くすることで、インナ端面部118に接合されている接合部124およびビード182の太い湾曲部128に対して、延伸部126の剛性が相対的に低下している。したがって、リンフォース180においても、アウタパネル104(図3(b)参照)から荷重P1を受けたときに、延伸部126の平面領域164に応力を集中させ、延伸部126にたわみの発生を促すことが可能になっている。
【0046】
リンフォース180においても、ビード182によって湾曲部128から延伸部126および接合部124にかけての剛性を向上させることで、ドア組付前におけるリンフォース180単体での取扱いの際において当該リンフォース180の変形を防ぐことができる。さらに、ビード182を接合部124まで延長することにより、接合部124と延伸部126の角度を一定に保つことが可能となり、リンフォース180の運搬等をより行いやすくすることが可能になっている。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、車両用ドア構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
E1…閉断面、P1…荷重、P2…力、W1…幅、W2…幅、W3…幅、100…車両用ドア構造、102…フロントサイドドア、104…アウタパネル、106…インナパネル、108…リンフォース、110…前端、112…後端、114…側縁、116…インナ側縁部、118…インナ端面部、120…インナ中央部、122…インナ段差部、124…接合部、126…延伸部、128…湾曲部、130…ビード、132…頂部、134…台座部、136…シール部材、138…平面領域、140…端部、160…リンフォース、162…ビード、164…平面領域、180…リンフォース、182…ビード
図1
図2
図3
図4
図5