(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】画像形成装置、および、画像形成装置の布搬送量決定方法
(51)【国際特許分類】
D06H 3/12 20060101AFI20241112BHJP
D06H 3/08 20060101ALI20241112BHJP
D06B 11/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
D06H3/12
D06H3/08
D06B11/00 B
(21)【出願番号】P 2021009665
(22)【出願日】2021-01-25
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】能見 亮太郎
【審査官】山下 航永
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-138361(JP,A)
【文献】特開2002-294547(JP,A)
【文献】特開2007-196625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06B 1/00 - 23/30
D06C 3/00 - 29/00
D06G 1/00 - 5/00
D06H 1/00 - 7/24
D06J 1/00 - 1/12
B41J 2/01
B41J 2/165 - 2/20
B41J 2/21 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布を搬送する搬送部と、
前記布に画像を印画する印画部と、
布幅方向の複数箇所で前記布の状態を検出する布目検出センサと、
前記布目検出センサにより検出した複数箇所のデータから前記布の搬送量を決定する補正量決定部と、
前記印画部および前記布目検出センサをキャリッジとして、布幅方向に走査する走査部と、
を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記布目検出センサは、前記印画部よりも上流側に設けられている、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記布目検出センサを布幅方向に複数定置している、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記布目検出センサは、前記印画部の直近の上流側ローラと前記印画部との間の前記布の状態を検出する、
請求項
1から3のうち何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記布目検出センサは、前記布の緯糸数をカウント可能である、
請求項
1から3のうち何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記布目検出センサは、前記布を照射する光源を有する、
請求項
1から5のうち何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記布の斜行を補正する斜行補正手段を更に有し、
前記布目検出センサで前記布の斜行を検出すると、前記斜行補正手段により前記布の斜行を補正する、
請求項
1から6のうち何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記布のシワを補正するシワ補正手段を更に有し、
前記布目検出センサで前記布のシワを検出すると、前記シワ補正手段により前記布のシワを補正する、
請求項
1から7のうち何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記搬送部は、前記布目検出センサの直前と直後で前記布を把持し、前記布を間欠的に搬送し、
前記補正量決定部は、前記布目検出センサが検出した前記布の伸縮状態から、前記布の張力を所定値とするように前記搬送部を制御する、
請求項1
から8のうち何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記搬送部は、前記印画部を挟んで対向した位置に設置された一対の搬送ローラを含んで構成される、
請求項
1から9のうち何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記搬送ローラは、前記布を把持するグリップ構造を有する、
請求項
10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記補正量決定部は、前記
布目検出センサが検出した前記布の伸縮状態から、次の搬送量の補正値を計算する
、
請求項1から8のうち何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記布目検出センサは、前記印画部よりも前記布の搬送方向の上流側における張力を検出する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項14】
布を搬送する搬送部、前記布に画像を印画する印画部、布幅方向の複数箇所で前記布の状態を検出する布目検出センサ、
前記印画部および前記布目検出センサをキャリッジとして、布幅方向に走査する走査部、および制御部を有する画像形成装置の布搬送量決定方法において、
前記制御部が
、前記走査部により前記キャリッジを布幅方向に走査するステップ、
前記布目検出センサにより複数箇所のデータを検出するステップ、
前記布の搬送量を決定するステップ、
を実行する画像形成装置の布搬送量決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布を搬送して画像を形成する画像形成装置、および、画像形成装置の布搬送量決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタにおいて、布を適正な張力で搬送をする装置および方法として、布の伸縮やシワ状態をCCD(Charge Coupling Device)カメラなどの非接触検出器で読取り、搬送量を補正するものがある。
【0003】
□特許文献1には、布地印刷システムが記載されおり、この文献の段落0029には、「布地114のウェブ(シート)の横方向に3個または5個のエリアCCDアレイ134を配置し、それを使用して、X及びY方向の両方の誘発張力Tx、Tyの関数として組織パターンの空間周波数変化を監視することができる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の幅方向に固定されたカメラであるエリアCCDアレイでは、布の一部の状態しか検出できない。また、エリアCCDアレイと印刷サブシステム250との間に、多くの搬送要素が入っている。これにより、布幅の中で不均一な伸縮が発生した場合、当該技術では、実際に必要な補正量と算出した補正量に誤差が生じ、適正な補正量をフィードバックできず、よって適切に布の搬送を制御できない。
【0006】
そこで、本発明は、画像形成装置、および、画像形成装置の布搬送量決定方法において、布に画像を形成する際、適切に布の搬送を制御することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の上記課題は、下記の構成により解決される。
【0008】
(1)
布を搬送する搬送部と、
前記布に画像を印画する印画部と、
布幅方向の複数箇所で前記布の状態を検出する布目検出センサと、
前記布目検出センサにより検出した複数箇所のデータから前記布の搬送量を決定する補正量決定部と、
前記印画部および前記布目検出センサをキャリッジとして、布幅方向に走査する走査部と、
を有する画像形成装置。
【0009】
(2)
前記布目検出センサは、前記印画部よりも上流側に設けられている、
(1)に記載の画像形成装置。
【0011】
(3)
前記布目検出センサを布幅方向に複数定置している、
(1)に記載の画像形成装置。
【0012】
(4)
前記布目検出センサは、前記印画部の直近の上流側ローラと前記印画部との間の前記布の状態を検出する、
(1)から(3)のうち何れかに記載の画像形成装置。
【0013】
(5)
前記布目検出センサは、前記布の緯糸数をカウント可能である、
(1)から(3)のうち何れかに記載の画像形成装置。
【0014】
(6)
前記布目検出センサは、前記布を照射する光源を有する、
(1)から(5)のうち何れかに記載の画像形成装置。
【0015】
(7)
前記布の斜行を補正する斜行補正手段を更に有し、
前記布目検出センサで前記布の斜行を検出すると、前記斜行補正手段により前記布の斜行を補正する、
(1)から(6)のうち何れかに記載の画像形成装置。
【0016】
(8)
前記布のシワを補正するシワ補正手段を更に有し、
前記布目検出センサで前記布のシワを検出すると、前記シワ補正手段により前記布のシワを補正する、
(1)から(7)のうち何れかに記載の画像形成装置。
【0017】
(9)
前記搬送部は、前記布目検出センサの直前と直後で前記布を把持し、前記布を間欠的に搬送し、
前記補正量決定部は、前記布目検出センサが検出した前記布の伸縮状態から、前記布の張力を所定値とするように前記搬送部を制御する、
(1)から(8)のうち何れかに記載の画像形成装置。
【0018】
(10)
前記搬送部は、前記印画部を挟んで対向した位置に設置された一対の搬送ローラを含んで構成される、
(1)から(9)のうち何れかに記載の画像形成装置。
【0019】
(11)
前記搬送ローラは、前記布を把持するグリップ構造を有する、
(10)に記載の画像形成装置。
【0020】
(12)
前記補正量決定部は、前記布目検出センサが検出した前記布の伸縮状態から、次の搬送量の補正値を計算する、
(1)から(8)のうち何れかに記載の画像形成装置。
【0021】
(13)
前記布目検出センサは、前記印画部よりも前記布の搬送方向の上流側における張力を検出する、
(1)に記載の画像形成装置。
【0022】
(14)
布を搬送する搬送部、前記布に画像を印画する印画部、布幅方向の複数箇所で前記布の状態を検出する布目検出センサ、前記印画部および前記布目検出センサをキャリッジとして、布幅方向に走査する走査部、および制御部を有する画像形成装置の布搬送量決定方法において、
前記制御部が、前記走査部により前記キャリッジを布幅方向に走査するステップ、
前記制御部が前記布目検出センサにより複数箇所のデータを検出するステップ、
前記布の搬送量を決定するステップ、
を実行する画像形成装置の布搬送量決定方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、画像形成装置、および、画像形成装置の布搬送量決定方法において、布に画像を形成する際、適切に布の搬送を制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1の実施形態における画像形成装置の概略を示す構成図である。
【
図5】布目検出センサが検出した布の状態を示す図である。
【
図6】布目検出センサが検出した布の状態を示す図である。
【
図8】補正コントローラによる補正動作を示すフローチャートである。
【
図9】補正コントローラによる補正動作を示すフローチャートである。
【
図10】第2の実施形態における画像形成装置のキャリッジと搬送コアの側面図である。
【
図11】布目検出センサの走査を示す上面図である。
【
図12】第3の実施形態における画像形成装置の布目検出センサの走査を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明者は、ロールトゥロール搬送方式において、伸縮性布の張力をコントロールできないという課題を解決するため、印画部の直前で布の伸縮状態を検出し、検出した値で布の搬送量を補正制御するようにした。以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1は、第1の実施形態における画像形成装置1の概略を示す構成図である。
画像形成装置1は、補正コントローラ2と、インタフェース3と、搬送部4と、走査部5と、キャリッジ6とをそれぞれ備えて構成される。これら各部は、システムバスを介して接続されており、各種の信号、データを互いに入出力可能である。画像形成装置1は、印画部が布幅方向に動作して、布に画像を形成(印画)するスキャン型印刷装置であり、印画部の走査と布の間欠的な搬送とを交互に実施するものである。
【0027】
補正コントローラ2は、CPU(Central Processing Unit)21、RAM(Random Access Memory)22、ROM(Read Only Memory)23、および、記憶部24を備える。
【0028】
CPU21(演算装置の一例)は、ROM23または記憶部24から読出したプログラムを実行することで画像形成装置1内の各部の動作を制御すると共に、各部から取得した信号、データ等に基づいて所定の処理を行うことが可能である。第1の実施形態では、補正コントローラ2のCPU21が、搬送部4、走査部5、キャリッジ6の動作を制御する。CPU21は、後述する布目検出センサ61で採取した複数のデータから、布7の次回の搬送における搬送量の補正量を決定するための演算部であり、かつ制御部でもある。
【0029】
ROM23には、CPU21が実行するプログラムまたはそのプログラムの実行時に使用するデータ等が保存される。CPU21は、ROM23に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、画像形成装置1に係る各種処理を実行する。
RAM22には、CPU21の演算処理の途中に発生した変数やパラメータなどが一時的に書き込まれる。
【0030】
記憶部24は、例えばハードディスクドライブやSSD(Solid State Drive)などの大容量の記憶装置であり、本実施の形態に係る各種データを記憶する記憶部として用いられる。この記憶部24には、OS(Operating System)、各種のパラメータの他に、印画プログラム241と補正コントロールプログラム242とが記録されている。
【0031】
印画プログラム241は、CPU21に、入力された画像データに基づき、走査部5を制御してインクジェットヘッド62を走査させて布7に印画させるためのプログラムである。
【0032】
補正コントロールプログラム242は、CPU21に、布7の布目状態に基づき、布7を間欠的に所定値ずつ搬送させると共に、搬送部4の搬送量を補正するためのプログラムである。CPU21が補正コントロールプログラム242を実行することにより、後記する補正量決定部が具現化される。
【0033】
ROM23と記憶部24は、不揮発性メモリであり、CPU21が動作するために必要なプログラムやデータ等を記録する。ROM23と記憶部24は、補正コントローラ2を構成するコンピュータによって実行されるプログラムを格納した、コンピュータが読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。
【0034】
インタフェース3は、NIC(Network Interface Card)やモデム等で構成される。インタフェース3は、LAN(Local Area Network)を介して、不図示のプリンタコントローラやパーソナルコンピュータ等の各装置との接続を確立し、補正コントローラ2が各種データの送受信を実行する通信部である。
【0035】
搬送部4は、上流搬送モータ411と下流搬送モータ412、ローラ傾き量変化アクチュエータ42、シワ補正機構43を含んで構成される。搬送部4は、布を搬送するための機構部であり、布目検出センサ61の直前と直後で布7を把持し、布7を間欠的に搬送し、前述した補正コントローラ2によって制御される。上流搬送モータ411は、例えばステッピングモータ等の回転量が制御可能なアクチュエータであり、
図2に示す上流搬送ローラ45aを駆動する。下流搬送モータ412は、例えばステッピングモータ等の回転量が制御可能なアクチュエータであり、
図2に示す下流搬送ローラ46を駆動する。
【0036】
ローラ傾き量変化アクチュエータ42は、搬送部4の何れかローラの傾き量を変化させるためのアクチュエータである。これにより、補正コントローラ2は、布の斜行を検出したときに搬送ローラの傾き量を補正して、布のテンションバランスを変えることで布を正しく搬送可能とする。なお、布の斜行は、布の主走査方向の各位置における緯糸数の移動平均の偏りによって検出する。
【0037】
シワ補正機構43は、螺旋形状のローラおよびこのローラの駆動モータを含んで構成され、前述した補正コントローラ2によって制御される。補正コントローラ2は、布のシワを検出したときに、搬送経路上で螺旋形状のローラを布に当接させることで、布に対して主走査方向へ広げる力を与える。布が正常な状態での緯糸数に対して、シワが発生した部分では大きく検出した緯糸数が減少する。そのため、緯糸数が或る閾値以下になった場合はシワが発生していると判断する。また、シワの発生は主走査方向に複数出る傾向にあり、緯糸数の変化が高低を繰り返すような検出をした場合もシワであると判断する。
シワ補正機構43は、後記する
図7で詳細に説明する。
【0038】
走査部5は、キャリッジ6を布幅方向に走査させる機構部であり、前述した補正コントローラ2によって制御される。
キャリッジ6は、インクジェットヘッド62を含み、布目検出センサ61を装着して構成される印画部であり、走査部5によって布幅方向に走査される。走査部5は、布目検出センサ61をキャリッジ6の動作と同一方向へ往復移動可能な機構部である。インクジェットヘッド62は、布に画像を印画する印画部である。布目検出センサ61は、布を照射する光源を有し、自らの受発光で布の緯糸数をカウント可能な検出手段である。キャリッジ6は、後述する
図2から
図4で詳細に説明する。
【0039】
図2は、搬送コアの側面図である。ここでは布7の搬送路を側面から示している。
搬送コアは、布7の搬送路のうち、布7に対して画像を形成(印画)する部位とその前後の部位である。
図2には、キャリッジ6と、上流搬送ローラ45aおよびピンチローラ45bと、下流搬送ローラ46と、ガイドプレート47と、ガイドローラ44とが図示されている。
【0040】
ガイドローラ44は、金属で構成された従動ローラであり、
図2における最も上流側である。ガイドローラ44の直近の下流側に設けられたガイドプレート47は、金属板である。これらガイドローラ44とガイドプレート47は、布7の搬送をガイドするものであり、布7の皺などを除去するために設けられている。
【0041】
上流搬送ローラ45aは、ガイドプレート47の直近の下流側、かつキャリッジ6の直近の上流に設けられたローラであり、上流搬送モータ411によって駆動されて、布7を搬送する。上流搬送ローラ45aの表面は、布7を把持するためのグリップ構造を有し、例えばサメ肌に加工されている。ピンチローラ45bは、上流搬送ローラ45aが搬送する布7に当接している。上流搬送ローラ45aおよびピンチローラ45bは、この布7を把持するものである。
【0042】
下流搬送ローラ46は、キャリッジ6の直近の上流に設けられたローラであり、下流搬送モータ412によって駆動されて、布7を搬送する。下流搬送ローラ46の表面は、布7を把持するためのグリップ構造を有し、例えばサメ肌に加工されている。搬送部4は、布目検出センサ61の直前と直後で布7を把持し、布7を間欠的に搬送する。インクジェットヘッド62の上流側に上流搬送ローラ45aが、下流側に下流搬送ローラ46が設けられている。これら上流搬送ローラ45aと下流搬送ローラ46は、インクジェットヘッド62を挟んで対向した位置に設置された一対の搬送ローラである。これにより、インクジェットヘッド62が印画する位置における布7の張力を制御可能である。
ここで補正コントローラ2は、間欠的に下流搬送ローラ46を所定値(搬送量)だけ回転させ、同時に上流搬送ローラ45aを所定値に補正量を加えて回転させる。補正コントローラ2(補正量決定部)は、布目検出センサ61が検出した布7の伸縮状態から、布7の張力を所定値とするように搬送部4を制御する。つまり補正コントローラ2(補正量決定部)は、布目検出センサ61が検出した布7の伸縮状態から、次の搬送量の補正値を計算する。補正量が正のとき、布7の張力は弱まる。補正値が負のとき、布7の張力は強くなる。
【0043】
キャリッジ6は、インクジェットヘッド62を内部に備え、外側に布目検出センサ61が搭載されている。この布目検出センサ61は、インクジェットヘッド62よりも上流側に設けられており、インクジェットヘッド62よりも上流側における布7の張力を検出する。この箇所における布7は印画前なので、布7の状態を適切にセンシング可能である。インクジェットヘッド62は、布幅方向(主走査方向)に走査されて、この布7に画像を形成する。布目検出センサ61は、インクジェットヘッド62と上流搬送ローラ45aとの間の布7の布目状態を検出し、走査部5によって布幅方向に走査される。CPU21は、印画部であるインクジェットヘッド62の直前における布7の布目状態を検出して搬送量の補正量を計算し、次回の布7の搬送にフィードバックする。これによりCPU21は、補正精度を向上可能である。また、布7の全幅をスキャン動作するキャリッジ6が布目検出センサ61を搭載することで、1個のセンサで安価に多点のサンプリングデータを採取できる。
なお、これに限られず、布目検出センサ61は、インクジェットヘッド62よりも下流側に設けられていてもよい。
【0044】
図3は、キャリッジ6の走査を示す上面図である。
図3の横方向は、布幅方向である。布7は、図の上側に向けて搬送される。
走査部5は、キャリッジ6を、
図3の横方向(矢印方向)かつ布幅方向に往復運動して走査する。このキャリッジ6の上流側(図の下側)には、布目検出センサ61が設置されている。これにより、インクジェットヘッド62が布幅方向に往復して布7に印画すると同時に、布目検出センサ61も布幅方向に往復して移動する。そして、布目検出センサ61は、インクジェットヘッド62の直前にて、布7の幅全域に亘る多数の検出領域613に係る布目状態を検出する。
【0045】
図4は、布目検出センサ61の動作説明図である。
布目検出センサ61は、自身で発光部611と撮像部612を持っている。発光部611は、例えば赤外線を出射する光源である。撮像部612は、例えば赤外線像を撮像する撮像素子である。布目検出センサ61は、発光部611からの光によって発生する布7の糸目の陰影から、撮像部612で、緯糸数をカウント可能に撮像する。撮像部612が撮像した画像を処理することで、この画像内における緯糸数を数値化することができる。布目検出センサ61は、検出精度を高めるために、自身が光源である発光部611を持っている。
なお、発光部611は、赤外線を出射する光源に限られず、任意の波長を出射する光源であってもよく、限定されない。
【0046】
図5と
図6は、布目検出センサ61が検出した画像における布7の布目状態を示す図である。
具体的に例えば、
図5は、布の静的状態(伸びがゼロの場合)で撮像した画像であり、図の横方向が布幅方向であり、図の上方向が搬送方向である。
図6は、布7が伸びている状態にて撮像した画像であり、図の横方向が布幅方向であり、図の上方向が搬送方向である。
【0047】
図5と
図6の画像中央に検出領域613があり、緯糸71が幅方向に、経糸72が上下方向(搬送方向)に張られている。
図5の検出領域613にて糸目をカウントすると、緯糸71の数は3本である。
【0048】
これに対して
図6は、布7が伸びている状態で撮像した画像である。
図6の検出領域613にて糸目をカウントすると、緯糸71の数は2本に変化する。この変化量を検出することで、
図1のCPU21は、布7の伸び量を数値化する。これを布幅の複数の検出領域613にて行うことにより、CPU21は、布7の幅方向の全域にてサンプリングデータを採取する。
【0049】
図7は、布7のシワ補正機構43を示す斜視図である。
シワ補正機構43は、布目検出センサ61で布7のシワを検出した場合の補正機構である。シワ補正機構43は、不図示のモータによって駆動されるローラ432とローラ431とを含んで構成される。ローラ432は、長手方向の中央を境に対称的に螺旋が切られた形状である。ローラ431は、布7を介してローラ431に当接する従動ローラである。
【0050】
ローラ432をモータによって回転駆動し、かつローラ432とローラ431で布7を挟んで搬送することで、シワ補正機構43は、布7に主走査方向へ広げる力を与えて布7のシワを改善する。本実施形態では、ローラ432とローラ431とは、常に当接せず、シワを検出した時のみ布7を挟んで補正する。この方式を採用した場合、さらに搬送路の下流にセンサを設けてシワの有無を検出し、シワが無くなった場合は当接を解除するとよい。
【0051】
図8と
図9は、補正コントローラ2による補正動作を示すフローチャートである。
使用する布種による基準値の決定、布の初期状態のデータサンプリング、補正量計算、補正動作へのフィードバックは上記のプロセスで実行される。
最初、この画像形成装置1のオペレータは、プリンタセット前の布の標準状態を入力し(S10)、画像形成装置1に布をセットする(S11)。
【0052】
そして、補正コントローラ2のCPU21は、布目検出スキャンを実行する(S12)。ここで布目検出スキャンとは、CPU21が、走査部5によりキャリッジ6を布幅方向に走査しつつ、布目検出センサ61により布幅方向の複数箇所のデータを検出することをいう。そしてCPU21は、布目検出スキャンデータから布幅で多数点の布目カウントデータを算出する(S13)。補正コントローラ2のCPU21は、布目カウントデータから次回の上流搬送ローラ45aの搬送量を決定する(S14)。
【0053】
補正コントローラ2のCPU21は、布幅方向に多数点で採取された布目カウントデータを、補正計算アルゴリズムに則った計算を行い、上流搬送ローラ45aの次回の搬送量を決定する。ここで布目カウントデータとは、検出領域613における緯糸71の数のことをいう。CPU21は、全ての布目カウントデータの平均値に基づいて搬送量を決定してもよく、また、全ての布目カウントデータの中央値に基づいて搬送量を決定してもよい。更に、CPU21は、その双方から更に平均化計算を行なって、上流搬送ローラ45aの次回の搬送量の最適化を行ってもよい。
【0054】
具体的にいうと、CPU21は、検出領域613における緯糸71の数から布7の張力(布目状態)を算出し、目標の張力との差を算出する。そして、CPU21は、張力差をPI制御して、上流搬送ローラ45aの次回の搬送量を決定する。即ち、CPU21は、上流搬送モータ411の次回の回転量を算出する。
これらステップS10~S13の処理により、補正コントローラ2は、布7のセット時の人為的な作業誤差と標準状態の入力データによる、一回目の誤差補正を行う。
【0055】
そして、CPU21は、プリント前のプレフィードにより布7を所定量だけ搬送し(S15)、布目検出スキャンを実行する(S16)。そしてCPU21は、布目検出スキャンデータから布幅で多数点の布目カウントデータを算出する(S17)。補正コントローラ2のCPU21は、布目カウントデータから、上流搬送ローラ45aの次回の搬送量を決定する(S18)。CPU21は、全ての布目カウントデータの平均値に基づいて搬送量を決定する。これらステップS15~S18の処理により、プレフィード(機械的動作)で発生する搬送量を決定し、二回目の誤差補正を行う。これによりCPU21は、ステップS10で入力した標準状態の入力データと、布セット後の採取データと、プレフィード後の採取データを所定比率で複合させて、上流搬送ローラ45a(上流搬送モータ411)の次回の搬送量を決定する。
【0056】
次にCPU21は、布7を所定量だけ搬送させる(S19)。ここでCPU21は、下流搬送モータ412を所定値(搬送量)だけ回転させ、同時に上流搬送モータ411を所定値に補正量を加えた搬送量だけ回転させる。補正量が正のとき、布7の張力は弱まる。補正量が負のとき、布7の張力は強くなる。
【0057】
CPU21は、インクジェットヘッド62による印画の走査とともに、布目検出センサ61により布目検出スキャンデータを採取し(S20)、布目検出スキャンデータから布幅方向の多数点(複数箇所)の布目カウントデータを算出する(S21)。
【0058】
ステップS22において、CPU21は、緯糸数の異常を検出したか否かを判定する。CPU21は、緯糸数の異常を検出したならば(Yes)、布7のシワの補正を行うと(S23)、ステップS24の判定に進む。CPU21は、緯糸数の異常を検出しなかったならば(No)、ステップS24の判定に進む。
【0059】
ステップS24において、CPU21は、布7の斜行を検出したか否かを判定する。CPU21は、布7の斜行を検出したならば(Yes)、搬送路のローラの傾き量を変化させて斜行補正を行うと(S25)、ステップS26に進む。CPU21は、布7の斜行を検出しなかったならば(No)、ステップS26に進む。
【0060】
補正コントローラ2のCPU21は、布目カウントデータから搬送量の補正計算を行い(S26)、ステップS19に戻る。
これらステップS19~S26の処理により、CPU21は、スキャンごとの緯糸数を取り込み、補正計算を繰り返す。
【0061】
以上で説明したように、本実施形態の画像形成装置によれば、画像形成装置が布に画像を形成する際、適切に布の搬送を制御することができる。
【0062】
《第2の実施形態》
図10は、第2の実施形態における画像形成装置1の搬送コアの側面図である。
第2の実施形態のインクジェットヘッド8は、ラインタイプであり、布7の幅全域を一度に印画する。そのため搬送部4は、布7を所定速度で連続して搬送する。そして布目検出センサ61は、走査部5によって布幅方向に走査される。それ以外の構成は、
図2に示した第1の実施形態の搬送コアと同様である。これにより布目検出センサ61は、インクジェットヘッド8とその直近の上流側の上流搬送ローラ45aとの間の布7の布目状態を検出することができる。
【0063】
図11は、布目検出センサ61の走査を示す上面図である。
走査部5は、布目検出センサ61をキャリッジとして、
図3の横方向(矢印方向)かつ布幅方向に往復運動して走査する。インクジェットヘッド8の上流側(図の下側)には、布目検出センサ61が設置されている。インクジェットヘッド8は、布7の布幅方向に一度に印画する。布目検出センサ61は、布幅方向に往復して移動する。そして、布目検出センサ61は、インクジェットヘッド8の直前にて、布7の幅方向の全域に亘る多数の検出領域613に係る緯糸数を検出する。ここで検出領域613に係る緯糸数とは、布目状態のことである。
【0064】
ここで補正コントローラ2は、布7の布目状態から布7の張力を算出し、目標の張力との差を算出する。補正コントローラ2は、この張力差をPI制御して、上流搬送ローラ45aの搬送速度にフィードバックする。具体的にいうと、CPU21は、下流搬送モータ412を所定速度(搬送速度)で回転させ、同時に上流搬送モータ411を所定速度に補正量を加えた搬送速度で回転させる。補正量が正のとき、布7の張力は弱まる。補正量が負のとき、布7の張力は強くなる。
【0065】
以上で説明したように、本実施形態の画像形成装置によれば、画像形成装置が布に画像を形成する際、適切に布の搬送を制御することができる。
【0066】
《第3の実施形態》
図12は、第3の実施形態における画像形成装置1の布目検出センサ61a~61hを示す上面図である。
複数の布目検出センサ61a~61hは、主走査方向(布幅方向)に並んで定置されている。これら布目検出センサ61a~61hにより、CPU21は、布7の幅全域に亘る多数の検出領域に係る布目状態を検出する。画像形成装置1は、インクジェットヘッド8がスキャン動作不要のラインセンサであり、布を所定速度で連続して搬送し、かつ布幅方向に複数のセンサを配置している。これにより布目検出センサ61a~61hは、インクジェットヘッド8とその直近の上流側の上流搬送ローラ45aとの間の布7の布目状態を検出することができる。
【0067】
ここで補正コントローラ2は、布7の布目状態から布7の張力を算出し、目標の張力との差を算出する。補正コントローラ2は、この張力差をPI制御して、上流搬送ローラ45aの搬送速度にフィードバックする。具体的にいうと、CPU21は、下流搬送モータ412を所定速度(搬送量かつ搬送速度)で回転させ、同時に上流搬送モータ411を所定速度に補正量を加えた速度で回転させる。補正量が正のとき、布7の張力は弱まる。補正値が負のとき、布7の張力は強くなる。
【0068】
以上で説明したように、本実施形態の画像形成装置によれば、画像形成装置が布に画像を形成する際、適切に布の搬送を制御することができる。
【0069】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能であり、例えば、次の(a)~(c)のようなものがある。
【0070】
(a) 画像形成装置1は、布目検出センサ61の検出値を補完する副検出手段を設けていてもよく、限定されない。
(b) CPU21は、全ての布目カウントデータの中央値に基づいて補正量を決定してもよい。
【0071】
(c) CPU21は、布目カウントデータの中央値と平均値の双方から更に平均化計算を行なって、補正量の最適化を行ってもよい。
(d) 布目検出センサ61は、インクジェットヘッド62(印画部)よりも下流側に設けられていてもよく、限定されない。
(e)
【符号の説明】
【0072】
1 画像形成装置
2 補正コントローラ (補正量決定部)
21 CPU (制御部)
22 RAM
23 ROM
24 記憶部
241 印画プログラム
242 補正コントロールプログラム
3 インタフェース
4 搬送部
411 上流搬送モータ
412 下流搬送モータ
42 ローラ傾き量変化アクチュエータ
43 シワ補正機構
431 ローラ
432 ローラ
44 ガイドローラ
45a 上流搬送ローラ
45b ピンチローラ
46 下流搬送ローラ
47 ガイドプレート
5 走査部
6 キャリッジ
61 布目検出センサ
611 発光部
612 撮像部
613 検出領域
62 インクジェットヘッド
7 布
71 緯糸
72 経糸
8 インクジェットヘッド