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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】建物の空間・仕様体験装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 25/04 20060101AFI20241112BHJP
   E04H 1/02 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G09B25/04
E04H1/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021011266
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2022114821
(43)【公開日】2022-08-08
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋口 公亮
(72)【発明者】
【氏名】鷺原 正義
(72)【発明者】
【氏名】関谷 祐希
(72)【発明者】
【氏名】岩元 祐樹
【審査官】三村 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-109847(JP,A)
【文献】特開2007-187755(JP,A)
【文献】特開2010-249992(JP,A)
【文献】特開2007-109205(JP,A)
【文献】特開平10-039729(JP,A)
【文献】特許第6714267(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第102542899(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/00-29/14
E04H 1/00-1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面壁と、前記正面壁に直交して互いに相対する左右の側壁と、によって少なくとも三方が包囲される体験空間を具備し、
前記左右の側壁のうち一方は固定側壁、他方は前記固定側壁との間隔を拡縮するように面直方向に移動する可動側壁となされ、
前記正面壁は、前記両側壁に左右両側縁を見切られるようにして配置された可動式の壁仕上げ見本パネルによって構成され、
前記壁仕上げ見本パネルは、その表面に施工される壁仕上げ材の種類が異なる複数枚が用意され、それら複数枚の壁仕上げ見本パネルが前記体験空間の外側に収納されて、その中から任意に選択された一枚が前記正面壁の位置に入れ替え自在に建て込まれ、
前記正面壁と相対する位置には支持フレームを介して映像投写装置が設置され、
前記支持フレームは前記映像投写装置を、前記正面壁に向かって進退可能に、かつ、前記固定側壁と前記可動側壁との間隔の拡縮に応じて前記正面壁の見かけの間口の中央に移動させ得るように支持し、
前記映像投写装置から前記正面壁に、対象建物の壁面に表れる建具、家具、設備その他の空間・仕様構成要素の仮想映像が、前記正面壁の見かけの間口および高さの全体にわたって実寸大で投写され
前記可動側壁、前記壁仕上げ見本パネル、前記支持フレームおよび前記映像投写装置の 移動および映像の投写を操作するための操作盤が、前記体験空間内の適所に設置されて、 前記可動側壁、前記壁仕上げ見本パネル、前記支持フレームおよび前記映像投写装置の駆 動を制御する主制御装置に接続され、
前記操作盤は、拠点サーバーに保存された対象建物の物件情報を前記拠点サーバーから 取り込み、前記物件情報の中から対象建物の任意の居室の設計内容に合わせて前記体験空 間を変化させるために必要な図面情報および仕様情報を前記主制御装置に伝達し、
前記主制御装置には、前記図面情報に基づいて前記可動側壁を移動させる可動側壁制御 部と、同図面情報に基づいて前記支持フレームを移動させる支持フレーム制御部と、前記 仕様情報に基づいて当該仕様に対応する前記壁仕上げ見本パネルを前記正面壁の位置まで 移動させる壁仕上げ見本パネル制御部と、前記図面情報および前記仕様情報に基づいて壁 面に表れる空間・仕様構成要素の仮想映像を前記映像投写装置から投写させる映像投写装 置制御部と、が接続されている
ことを特徴とする建物の空間・仕様体験装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載された建物の空間・仕様体験装置において、
前記固定側壁または前記可動側壁の少なくともいずれか一方に、前記壁仕上げ見本パネルが入れ替え自在に建て込まれるように構成されている
ことを特徴とする建物の空間・仕様体験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願が開示する発明は、住宅等の建築予定者が、その設計段階において、居室空間の雰囲気や内装仕様等を実寸大で確認するための空間・仕様体験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の建築予定者(発注主等)が、その建物の設計段階において設計内容を確認したり検討したりするための手段としては、模型、コンピュータグラフィックスによるパース図やバーチャル映像、仕上材のカットサンプル等によることが一般的である、しかし、建築の専門家でない者が、それらの手段だけで実際の空間のイメージを正確に想像することは難しく、完成後に違和感や不満を訴えることも少なくない。設計内容を正確に把握するには実寸大の模型(モックアップ)やモデルルームを製作するのが望ましいが、戸建て住宅のような小規模建物については、そのような予算をなかなか確保できないのが実情である。
【0003】
そこで、本出願人は、戸建て住宅の建築予定者が、できるだけ実際の完成状態に近いかたちで、設計されている居室内の雰囲気を擬似的に確認できる体験装置を開発し、特許文献1~3に開示している。それらの体験装置は、可動式の壁を動かして設計寸法通りの広さの空間を形成し、その空間に家具を配置して使い勝手を確認したり、窓に見立てたスクリーンに、その窓から見える隣地や外構の風景を投映して、敷地内における建物の配置や窓の位置等を確認したりできるような構成を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-020761公報
【文献】特開平10-039729公報
【文献】特開平10-039730公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の体験装置は、家具、住宅設備、窓等の種類や位置を自由自在に変更しながら、建築予定者の希望を確認して設計情報にフィードバックできるほどの機能を具備してはいない。また、壁に設置するスイッチやコンセントの位置、棚の大きさや棚板の配置、といった、実際に居住する際の暮らしやすさに関わるきめ細かい造作や設備仕様を確認できるほどの表現力も備えてはいない。さらに、壁面を仕上げるクロスや天然素材、タイル等の仕様を実際の質感やスケール感で確認できるような構成にもなってはいない。
【0006】
本願が開示する発明は、従来よりも高度な機能や表現力によって前述のような要望を実現することのできる建物の空間・仕様体験装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的を達成するために、本願が開示する発明に係る建物の空間・仕様体験装置は、正面壁と、前記正面壁に直交して互いに相対する左右の側壁と、によって少なくとも三方が包囲される体験空間を具備し、前記左右の側壁のうち一方は固定側壁、他方は前記固定側壁との間隔を拡縮するように面直方向に移動する可動側壁となされ、前記正面壁は、前記両側壁に左右両側縁を見切られるようにして配置された可動式の壁仕上げ見本パネルによって構成され、前記壁仕上げ見本パネルは、その表面に施工される壁仕上げ材の種類が異なる複数枚が用意され、それら複数枚の壁仕上げ見本パネルが前記体験空間の外側に収納されて、その中から任意に選択された一枚が前記正面壁の位置に入れ替え自在に建て込まれ、前記正面壁と相対する位置には支持フレームを介して映像投写装置が設置され、前記支持フレームは前記映像投写装置を、前記正面壁に向かって進退可能に、かつ、前記固定側壁と前記可動側壁との間隔の拡縮に応じて前記正面壁の見かけの間口の中央に移動させ得るように支持し、前記映像投写装置から前記正面壁に、対象建物の壁面に表れる建具、家具、設備その他の空間・仕様構成要素の仮想映像が、前記正面壁の見かけの間口および高さの全体にわたって実寸大で投写され、前記可動側壁、前記壁仕上げ見本パネル、 前記支持フレームおよび前記映像投写装置の移動および映像の投写を操作するための操作 盤が、前記体験空間内の適所に設置されて、前記可動側壁、前記壁仕上げ見本パネル、前 記支持フレームおよび前記映像投写装置の駆動を制御する主制御装置に接続され、前記操 作盤は、拠点サーバーに保存された対象建物の物件情報を前記拠点サーバーから取り込み 、前記物件情報の中から対象建物の任意の居室の設計内容に合わせて前記体験空間を変化 させるために必要な図面情報および仕様情報を前記主制御装置に伝達し、前記主制御装置 には、前記図面情報に基づいて前記可動側壁を移動させる可動側壁制御部と、同図面情報 に基づいて前記支持フレームを移動させる支持フレーム制御部と、前記仕様情報に基づい て当該仕様に対応する前記壁仕上げ見本パネルを前記正面壁の位置まで移動させる壁仕上 げ見本パネル制御部と、前記図面情報および前記仕様情報に基づいて壁面に表れる空間・ 仕様構成要素の仮想映像を前記映像投写装置から投写させる映像投写装置制御部と、が接 続されている、との基本的構成を採用する。この基本的構成によれば、設計段階の物件情 報を活用して、対象建物の居室の壁面に表れる空間・仕様構成要素が、きわめて実際に近い形態で、体験空間内に自動的に具現化される。正面壁として建て込まれる壁仕上げ見本パネルには、実際の壁仕上げ材が実際のサイズで施工されているので、バーチャル映像等では確認できない質感、凹凸、風合い等をリアルに確認することができる。
【0008】
この基本的構成に係る建物の空間・仕様体験装置においては、前記映像投写装置によって投写される映像を、対象建物の図面情報および仕様情報に基づいて作成された窓サッシおよび窓付属物、造作家具、大型の置き家具、設備機器および電設小物、その他壁面周りに表れる壁付け部材の仮想映像と、前記窓サッシの外に見える風景の仮想映像と、を含むものとすることで、実生活により近い感覚で細部の使い勝手等を綿密に確認することが可能になる。
【0009】
また、前記支持フレームが、前記固定側壁および前記可動側壁の上方に架け渡される横架材と、前記可動側壁の外側に立設されて前記横架材の一端を支持する直立材と、からなる正面視L字形に構成され、前記横架材の他端が前記固定側壁の上縁部に沿って設置されたガイドレールを介して移動可能に支持されるとともに、前記直立材の下端には床面上を走行するキャスターが取り付けられているものとすることで、映像投写装置をスムーズに適切な位置へ移動させることができる。
【0012】
さらに、前記体験空間に表された空間・仕様構成要素に対する変更の要望を前記操作盤の画面から入力すると、登録されている図面情報または仕様情報がフィードバックされて、前記拠点サーバーに保存されている対象建物の物件情報が更新される構成を採用すれば、設計内容の確認から設計変更への流れを、より効率化することができる。
【0013】
さらに、この建物の空間・仕様体験装置は、前記映像投写装置が複数台、設置されて、少なくとも一台の映像投写装置が、前記固定側壁または前記可動側壁の少なくともいずれか一方に、当該壁面に表れる空間・仕様構成要素の仮想映像を投写するように構成されてもよい。また、前記固定側壁または前記可動側壁の少なくともいずれか一方に、前記壁仕上げ見本パネルが入れ替え自在に建て込まれるように構成されてもよい。これらによれば、体験空間の表現力がさらに増大する。
【発明の効果】
【0014】
前述のように構成される建物の空間・仕様体験装置によれば、対象建物の居室の壁面に表れる空間・仕様構成要素が、きわめて実際に近い形態で体験空間内に具現化される。正面壁として建て込まれる壁仕上げ見本パネルには、実際の壁仕上げ材が実際のサイズで施工されているので、バーチャル映像等では確認できない質感、凹凸、風合い等をリアルに確認することができる。
【0015】
正面壁に、大きな家具や建具だけでなく、棚等の造作や、スイッチパネル、コンセントカバー、壁付けの手摺といった小物も実際の位置関係で表現した場合には、建築予定者が実生活にきわめて近い感覚で、細部の使い勝手等を綿密に確認することができる。
【0016】
さらに、この体験空間内で客員された空間・仕様構成要素に対する変更の要望を物件情報にフィードバックするように構成した場合には、設計業務が大幅に効率化される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本願が開示する発明の一実施形態に係る建物の空間・仕様体験装置の平面図(a)および(b)正面図である。
図2図1に示した建物の空間・仕様体験装置において正面壁(壁仕上げ見本パネル)を移動させるレールの要部を示す説明図である。
図3】壁の移動や映像の投写を制御するシステムの全体的構成と、操作盤の画面イメージを示す説明図である。
図4図3に示したシステムによって物件情報を体験空間に反映させるための情報フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本願が開示する発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1は、本願が開示する発明の一実施形態に係る建物の空間・仕様体験装置1の平面図(a)と、A-A位置から見た正面図(b)である。この空間・仕様体験装置は、互いに相対する正面壁2と背面壁3、およびそれらに直交して互いに相対する左右の側壁4、5によって四面が包囲された平面視矩形の体験空間10を有する。それら四面のうち、背面壁3と、一方(例示形態では正面に向かって左側)の側壁4は固定されている。以下、固定されている側壁4を「固定側壁4」と呼ぶ。背面壁3には、この体験空間10への出入口31が設けられている。
【0020】
他方(例示形態では正面に向かって右側)の側壁5は、直立姿勢のまま面直方向に平行移動して固定側壁4との間隔を拡縮させるように建て込まれている。以下、この側壁5を「可動側壁5」と呼ぶ。可動側壁5は、例えばその下部に取り付けられた走行装置(図示せず)が床面に設置された複数本のガイドレール51上を走行するなどして無段階に移動するように構成されており、その走行装置には駆動エンジン(図示せず)が組み付けられている。可動側壁5は、固定側壁4との間隔を3~10m程度の範囲内で変化させることができるように、その移動範囲が設定されている。可動側壁5における背面壁3側の縁部と、固定されている背面壁3との間には、可動側壁5が移動する際に干渉しない程度の隙間が設けられている。
【0021】
正面壁2は、固定側壁4と可動側壁5との最大間隔に対応する壁長を備えた壁仕上げ見本パネル21によって構成される。壁仕上げ見本パネル21は、平坦な下地材の表面全体に壁仕上げ材を施工したものである。この空間・仕様体験装置では、例えば織物調のクロス、シート状のクロス、塗り壁調のクロス、天然木材の挽き板、タイル等々、様々な種類の壁仕上げ材を施工した多数枚の壁仕上げ見本パネル21があらかじめ用意されており、それらが体験空間10の外側に設けられたストックスペース22にまとめて収納されている。
【0022】
それぞれの壁仕上げ見本パネル21は、例えば図2に示すように、天井および床面に設置されたレール部材23、24に駆動エンジン付きの走行装置(図示せず)等を介して個別に支持されている。そのレール部材23、24は、ストックスペース22に収納されている任意の壁仕上げ見本パネル21を、正面壁2の位置に入れ替えることができるように配設されている。正面壁2の位置に建て込まれる壁仕上げ見本パネル21は、その左右両側縁が固定側壁4および可動側壁5によって見切られることになり、したがって可動側壁5が移動すると、正面壁2の見かけの間口(壁長)も拡縮する。
【0023】
前記正面壁2と相対する位置には、支持フレーム6を介して、映像投写装置(プロジェクタ)7が設置されている。支持フレーム6は、例えば固定側壁4と可動側壁5との最大間隔にわたってそれらの上方を跨ぐように架け渡される横架材61と、その横架材61の一端を支持して可動側壁5の外側に立設される直立材62と、を正面視略L字形に結合するなどして構成されている。例示形態では、横架材61の他端が固定側壁4の上縁部に沿って設置されたガイドレール41を介して支持されるとともに、直立材62の下端には床面上を走行するキャスター63が取り付けられており、これらを介して支持フレーム6が正面壁2に向かって進退し得るように保持されている。支持フレーム6の適所には、これを移動させる駆動エンジン(図示せず)が組み付けられている。
【0024】
映像投写装置7は、横架材61の中間付近に取り付けられた懸架レール71に適宜の懸吊部材(図示せず)を介して取り付けられている。そして、正面壁2の見かけの間口が変化すると、それに応じて映像投写装置7も間口方向に移動し、正面壁2の間口の中央に相対するように位置決めされる。その移動も、懸架レール71または懸吊部材に組み付けられた駆動エンジンを介して行われる。
【0025】
この映像投写装置7は、対象建物の物件情報に基づいて作成された建具、家具、設備その他の空間・仕様構成要素の位置および形状を表す仮想映像を、正面壁2の見かけの間口および高さの全体にわたって実寸大で投写する。物件情報および投写される映像の詳細については後述する。
【0026】
前述した可動側壁5、壁仕上げ見本パネル21、支持フレーム6および映像投写装置7の移動と映像の投写は、背面壁3の出入口31付近に設置された操作盤8を介して操作される。図3は、それらの操作を制御するシステムの全体的構成と、操作盤8の画面イメージを示す説明図であり、図4は、それらの操作によって物件情報を体験空間10に反映させるための情報フロー図である。
【0027】
営業担当者や設計担当者によって作成された建物の物件情報は、社員のパソコン81、事業所や支店のサーバー82、本社拠点サーバー83との間で共有される。ここでの物件情報には、対象建物の所在地、規模、建築予定者等に関する基本情報のほか、設計内容に関係する全ての図面情報(平面図、立面図、断面図、展開図、外構図、設備図等)および仕様情報(内外装仕様書等)が含まれる。
【0028】
体験空間10に設置されている操作盤8も本社拠点サーバー83に接続されており、 象建物の物件情報を本社拠点サーバー83から取り込めるように構成されている。建築予定者を体験空間10に招いて、操作盤8の画面上で対象建物の邸名を選択すると、その各階平面図が画面上に表示される。その画面上で任意の居室を選択すると、対象居室の展開図が画面上に表示され、さらにその中のいずれかの壁面を選択すると、その壁面の設計内容に合わせて体験空間10を変化させるために必要な図面情報および仕様情報が取り込まれて、操作盤8に接続されている主制御装置84に伝達される。
【0029】
主制御装置84には、対象建物の図面情報に基づいて可動側壁5を移動させる可動側壁制御部85と、同図面情報に基づいて支持フレーム6を移動させる支持フレーム制御部86と、対象建物の仕様情報に基づいて壁仕上げ見本パネル21を正面壁2の位置に入れ替える壁仕上げ見本パネル制御部87と、対象建物の図面情報および仕様情報に基づいて壁面に表れる空間・仕様構成要素の仮想映像を映像投写装置7から投写させる映像投写装置制御部88と、が接続されている。
【0030】
主制御装置84は、対象建物の図面情報のうち主として平面図および展開図から、居室の広さに関する寸法情報を取り出して、可動側壁制御部85および支持フレーム制御部86に伝達する。その寸法情報に基づいて可動側壁制御部85は、可動側壁5の走行装置に組み付けられた駆動エンジンを動かして可動側壁5を所定の位置まで移動させる。これにより、固定側壁4と可動側壁5との間隔が対象壁面の壁長と同じに設定される。支持フレーム制御部86は、支持フレーム6に組み付けられた駆動エンジンを動かして支持フレーム6を所定の位置まで移動させるとともに、映像投写装置7を正面壁2の間口の中央に相対する位置まで移動させる。
【0031】
また、主制御装置84は、対象建物の仕様情報から壁面の仕上げ情報を取り出して壁仕上げ見本パネル制御部87に伝達する。壁仕上げ見本パネル制御部87には、あらかじめ各壁仕上げ見本パネル21の仕様が登録されている。壁仕上げ見本パネル制御部87は、主制御装置84から伝達された仕様情報に基づいて、その仕様に対応する壁仕上げ見本パネル21を選択し、その走行装置に組み付けられた駆動エンジンを動かして、選択された壁仕上げ見本パネル21を正面壁2の位置まで移動させる。
【0032】
さらに、主制御装置84は、図面情報の展開図および仕様情報の内装仕様書から、窓サッシおよび窓付属物(出窓、カーテンボックス、カーテンレール、カーテン、ブラインド等)、造作家具(収納棚、飾り棚、カウンター、テーブル、ベンチ等)や大型の置き家具(ベッド、ソファ、テーブル、チェア等)、設備機器(システムキッチン、洗面台、照明器具、分電盤、エアコン、暖炉、換気扇、テレビドアフォン等)や電設小物(スイッチパネル、コンセントカバー、情報通信用接続端子等)、その他壁面周りに表れる壁付け部材(手摺、壁掛ミラー等)の位置、種類、形状等に関する情報を取り出して映像投写装置制御部88に伝達する。また、図面情報の外構図から、窓の外に見える庭や隣地の風景に関する情報を取り出して、それらも映像投写装置制御部88に伝達する。映像投写装置7は、それらの情報に基づいて、家具や設備等の実寸大の仮想映像を正面壁2の見かけの間口および高さの全体にわたって投写するとともに、窓の中には窓の外に見える風景を投写する。
【0033】
こうして体験空間10に、対象建物の居室内の空間・仕様構成要素が、実際の大きさで自動的に具現化される。正面壁2には、大きな家具や建具だけでなく、棚等のきめ細かい造作や、スイッチパネル、コンセントカバー、壁付けの手摺といった小物までが実際の位置関係で表現されるので、建築予定者は、実生活にきわめて近い感覚で、細部の使い勝手を綿密に確認することができる。また、正面壁2には実際の壁仕上げ材が実際のサイズで施工されているので、バーチャル映像等では確認できない質感、凹凸、風合い等もリアルに確認することができる。
【0034】
この空間・仕様体験装置1は、体験空間10内で確認しながら打合せされた事項を、本社拠点サーバー83に保存されている物件情報にフィードバックするように構成することもできる。図4の下部に示すように、例えば映像で確認、打合せされた窓の位置や大きさ、エアコンの設置高さ、スイッチパネルやコンセントカバーの配置等に関する変更の要望を操作盤8の画面から展開図に入力すると、登録されている図面情報との整合性をチェックした上で図面情報が更新される。また、窓の外に見える隣地の風景等を確認して打合せされた塀の高さや構造等に関する変更の要望を、操作盤8の画面から外構図に入力すると、登録されている図面情報との整合性をチェックした上で図面情報が更新される。また、正面壁2に配置される壁仕上げ見本パネル21を確認して打合せされた壁仕上材の変更に関する要望を、操作盤8の画面から内装仕様情報として入力すると、登録されている仕様情報との整合性をチェックした上で仕様情報が更新される。このようなフィードバック機能を活用することにより、設計内容の確認から設計変更への流れを効率化することができる。
【0035】
さらに、この空間・仕様体験装置の発展的形態として、図示は省くが、映像投写装置を二台ないし三台まで増設し、正面壁2だけでなく片方または両方の側壁にも、当該壁面に表れる空間・仕様構成要素の仮想映像を投写するように構成することが可能である。複数台の映像投写装置は、複数の支持フレームを設置して個別に移動し得るように取り付けることで、各壁面の間口に合わせた仮想映像を精度良く投写することができる。また、片方または両方の側壁の位置にも壁仕上げ見本パネルを入れ替え自在に建て込めるようにすれば、居室全体の雰囲気を一層リアルに具現化することが可能になる。
【0036】
以上、空間・仕様体験装置の実施形態について説明したが、本願が開示する発明の技術的範囲は、例示した実施形態によって限定的に解釈されるべきものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて概念的に解釈されるべきものである。本願が開示する発明の実施に際しては、特許請求の範囲において具体的に特定していない構成要素の形状、構造、材質、数量、接合形態、相対的な位置関係等を、発明の主旨を逸脱しない範囲内で、適宜、改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本願が開示する発明は、戸建て住宅をはじめとする比較的小規模の建物全般の設計段階において、設計内容の確認や変更を効率的に行うための手段として幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 空間・仕様体験装置
10 体験空間
2 正面壁
21 壁仕上げ見本パネル
22 ストックスペース
23 レール部材
24 レール部材
3 背面壁
31 出入口
4 固定側壁
5 可動側壁
51 ガイドレール
6 支持フレーム
61 横架材
62 直立材
63 キャスター
7 映像投写装置
8 操作盤
83 本社拠点サーバー
84 主制御装置
85 可動側壁制御部
86 支持フレーム制御部
87 壁仕上げ見本パネル制御部
88 映像投写装置制御部
図1
図2
図3
図4