IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図1
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図2
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図3
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図4
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図5
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図6
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図7
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図8
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図9
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図10
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図11
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図12
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図13
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図14
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図15
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図16
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図17
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図18
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図19
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】内燃機関用のスパークプラグ
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/54 20060101AFI20241112BHJP
   H01T 13/32 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H01T13/54
H01T13/32
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021012871
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022116612
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 明光
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-017689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02P 1/00-3/12
F02P 7/00-17/12
H01T 7/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、
上記副燃焼室の内壁面(501)から上記副燃焼室内に突出した突出壁部(7)と、を有し、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる噴孔(51)が形成されており、該噴孔は、該噴孔を介して上記副燃焼室に気流が導入されることによって該副燃焼室にスワール流が生じるように形成されており、
上記突出壁部は、プラグ径方向の内側を向く内側面(71)を有し、
上記噴孔を開口方向に延長した延長領域(51E)は、上記突出壁部の内側面を通過
上記突出壁部は、上記プラグカバーと一体的に形成されている、内燃機関用のスパークプラグ(1)。
【請求項2】
上記副燃焼室は、上記絶縁碍子の外周面と上記ハウジングの内周面との間に、環状の空間であるポケット部(502)を有し、上記絶縁碍子の外周面は、上記ポケット部に対向する部位に、先端側へ向かうほど縮径する碍子傾斜面(31)を有し、上記ポケット部のプラグ軸方向(Z)の全長(D4)の1/3の長さ分、上記ポケット部の先端(503)よりも基端側に位置する、上記ポケット部の内周面よりも、プラグ径方向の外側に上記突出壁部の内側面が位置する、請求項1に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項3】
筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、
上記副燃焼室の内壁面(501)から上記副燃焼室内に突出した突出壁部(7)と、を有し、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる噴孔(51)が形成されており、該噴孔は、該噴孔を介して上記副燃焼室に気流が導入されることによって該副燃焼室にスワール流が生じるように形成されており、
上記突出壁部は、プラグ径方向の内側を向く内側面(71)を有し、
上記噴孔を開口方向に延長した延長領域(51E)は、上記突出壁部の内側面を通過
上記副燃焼室は、上記絶縁碍子の外周面と上記ハウジングの内周面との間に、環状の空間であるポケット部(502)を有し、上記絶縁碍子の外周面は、上記ポケット部に対向する部位に、先端側へ向かうほど縮径する碍子傾斜面(31)を有し、上記ポケット部のプラグ軸方向(Z)の全長(D4)の1/3の長さ分、上記ポケット部の先端(503)よりも基端側に位置する、上記ポケット部の内周面よりも、プラグ径方向の外側に上記突出壁部の内側面が位置する、内燃機関用のスパークプラグ(1)。
【請求項4】
上記突出壁部の内側面は、上記ポケット部の内周面の基端(504)よりも、プラグ径方向の外側に位置する、請求項2又は3に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項5】
上記接地電極は、上記ハウジングに固定された固定端部(61)から上記副燃焼室内に突出しており、上記放電ギャップは、上記ハウジングの先端よりも先端側に形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項6】
筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、
上記副燃焼室の内壁面(501)から上記副燃焼室内に突出した突出壁部(7)と、を有し、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる噴孔(51)が形成されており、該噴孔は、該噴孔を介して上記副燃焼室に気流が導入されることによって該副燃焼室にスワール流が生じるように形成されており、
上記突出壁部は、プラグ径方向の内側を向く内側面(71)を有し、
上記噴孔を開口方向に延長した延長領域(51E)は、上記突出壁部の内側面を通過
上記接地電極は、上記ハウジングに固定された固定端部(61)から上記副燃焼室内に突出しており、上記放電ギャップは、上記ハウジングの先端よりも先端側に形成されている、内燃機関用のスパークプラグ(1)。
【請求項7】
上記副燃焼室は、上記絶縁碍子の外周面と上記ハウジングの内周面との間に、環状の空間であるポケット部(502)を有し、上記絶縁碍子の外周面は、上記ポケット部に対向する部位に、先端側へ向かうほど縮径する碍子傾斜面(31)を有し、上記ハウジングの内周面は、上記ポケット部に対向する部位に、基端側へ向かうほど縮径するハウジング傾斜面(21)を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項8】
筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、
上記副燃焼室の内壁面(501)から上記副燃焼室内に突出した突出壁部(7)と、を有し、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる噴孔(51)が形成されており、該噴孔は、該噴孔を介して上記副燃焼室に気流が導入されることによって該副燃焼室にスワール流が生じるように形成されており、
上記突出壁部は、プラグ径方向の内側を向く内側面(71)を有し、
上記噴孔を開口方向に延長した延長領域(51E)は、上記突出壁部の内側面を通過
上記副燃焼室は、上記絶縁碍子の外周面と上記ハウジングの内周面との間に、環状の空間であるポケット部(502)を有し、上記絶縁碍子の外周面は、上記ポケット部に対向する部位に、先端側へ向かうほど縮径する碍子傾斜面(31)を有し、上記ハウジングの内周面は、上記ポケット部に対向する部位に、基端側へ向かうほど縮径するハウジング傾斜面(21)を有する、内燃機関用のスパークプラグ(1)。
【請求項9】
上記接地電極は、上記中心電極に対して先端側から上記放電ギャップを介してプラグ軸方向(Z)に対向する軸方向対向面(62)を有し、
プラグ中心軸(C)と上記副燃焼室の外周との中間位置よりもプラグ中心軸に近い位置に、上記放電ギャップに対してプラグ径方向から対向する径方向対向面(8)が形成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項10】
筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、
上記副燃焼室の内壁面(501)から上記副燃焼室内に突出した突出壁部(7)と、を有し、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる噴孔(51)が形成されており、該噴孔は、該噴孔を介して上記副燃焼室に気流が導入されることによって該副燃焼室にスワール流が生じるように形成されており、
上記突出壁部は、プラグ径方向の内側を向く内側面(71)を有し、
上記噴孔を開口方向に延長した延長領域(51E)は、上記突出壁部の内側面を通過
上記接地電極は、上記中心電極に対して先端側から上記放電ギャップを介してプラグ軸方向(Z)に対向する軸方向対向面(62)を有し、
プラグ中心軸(C)と上記副燃焼室の外周との中間位置よりもプラグ中心軸に近い位置に、上記放電ギャップに対してプラグ径方向から対向する径方向対向面(8)が形成されている、内燃機関用のスパークプラグ(1)。
【請求項11】
プラグ軸方向(Z)から見たとき、上記突出壁部の内側面は、プラグ径方向の外側に向かって凹んでいる、請求項1~10のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項12】
プラグ軸方向から見たとき、上記突出壁部の内側面は、プラグ中心軸(C)を中心とする仮想円(VC)に沿って形成されている、請求項11に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項13】
上記突出壁部の内側面におけるプラグ軸方向(Z)の長さ(D1)及びプラグ周方向の長さ(D2)は、それぞれ上記噴孔の内径(D3)以上である、請求項1~12のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用のスパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、先端に副燃焼室を備えたスパークプラグが知られている。当該スパークプラグにおいて、副燃焼室を覆うプラグカバーには、噴孔が設けられている。当該噴孔は、当該噴孔を介して副燃焼室に気流が導入されることによって、副燃焼室にスワール流が生じるように形成されている。スワール流を形成することにより、放電によって生じた初期火炎を副燃焼室内に拡散させ、副燃焼室内の燃焼を促進させようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第102018211009号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のスパークプラグにおいて、副燃焼室内に生じた初期火炎は、スワール流によって、外周側へ運ばれやすい。すなわち、副燃焼室の内壁面の近傍に、初期火炎が移動しやすい。副燃焼室において、内壁面の近傍は、比較的温度が低くなりやすい。それゆえ、初期火炎は、副燃焼室の内壁面によって冷却されやすい。そのため、着火性を向上させる観点から改善の余地がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、
上記副燃焼室の内壁面(501)から上記副燃焼室内に突出した突出壁部(7)と、を有し、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる噴孔(51)が形成されており、該噴孔は、該噴孔を介して上記副燃焼室に気流が導入されることによって該副燃焼室にスワール流が生じるように形成されており、
上記突出壁部は、プラグ径方向の内側を向く内側面(71)を有し、
上記噴孔を開口方向に延長した延長領域(51E)は、上記突出壁部の内側面を通過
上記突出壁部は、上記プラグカバーと一体的に形成されている、内燃機関用のスパークプラグ(1)にある。
本発明の第二の態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、
上記副燃焼室の内壁面(501)から上記副燃焼室内に突出した突出壁部(7)と、を有し、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる噴孔(51)が形成されており、該噴孔は、該噴孔を介して上記副燃焼室に気流が導入されることによって該副燃焼室にスワール流が生じるように形成されており、
上記突出壁部は、プラグ径方向の内側を向く内側面(71)を有し、
上記噴孔を開口方向に延長した延長領域(51E)は、上記突出壁部の内側面を通過し、
上記副燃焼室は、上記絶縁碍子の外周面と上記ハウジングの内周面との間に、環状の空間であるポケット部(502)を有し、上記絶縁碍子の外周面は、上記ポケット部に対向する部位に、先端側へ向かうほど縮径する碍子傾斜面(31)を有し、上記ポケット部のプラグ軸方向(Z)の全長(D4)の1/3の長さ分、上記ポケット部の先端(503)よりも基端側に位置する、上記ポケット部の内周面よりも、プラグ径方向の外側に上記突出壁部の内側面が位置する、内燃機関用のスパークプラグ(1)にある。
本発明の第三の態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、
上記副燃焼室の内壁面(501)から上記副燃焼室内に突出した突出壁部(7)と、を有し、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる噴孔(51)が形成されており、該噴孔は、該噴孔を介して上記副燃焼室に気流が導入されることによって該副燃焼室にスワール流が生じるように形成されており、
上記突出壁部は、プラグ径方向の内側を向く内側面(71)を有し、
上記噴孔を開口方向に延長した延長領域(51E)は、上記突出壁部の内側面を通過し、
上記接地電極は、上記ハウジングに固定された固定端部(61)から上記副燃焼室内に突出しており、上記放電ギャップは、上記ハウジングの先端よりも先端側に形成されている、内燃機関用のスパークプラグ(1)にある。
本発明の第四の態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、
上記副燃焼室の内壁面(501)から上記副燃焼室内に突出した突出壁部(7)と、を有し、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる噴孔(51)が形成されており、該噴孔は、該噴孔を介して上記副燃焼室に気流が導入されることによって該副燃焼室にスワール流が生じるように形成されており、
上記突出壁部は、プラグ径方向の内側を向く内側面(71)を有し、
上記噴孔を開口方向に延長した延長領域(51E)は、上記突出壁部の内側面を通過し、
上記副燃焼室は、上記絶縁碍子の外周面と上記ハウジングの内周面との間に、環状の空間であるポケット部(502)を有し、上記絶縁碍子の外周面は、上記ポケット部に対向する部位に、先端側へ向かうほど縮径する碍子傾斜面(31)を有し、上記ハウジングの内周面は、上記ポケット部に対向する部位に、基端側へ向かうほど縮径するハウジング傾斜面(21)を有する、内燃機関用のスパークプラグ(1)にある。
本発明の第五の態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、
上記副燃焼室の内壁面(501)から上記副燃焼室内に突出した突出壁部(7)と、を有し、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる噴孔(51)が形成されており、該噴孔は、該噴孔を介して上記副燃焼室に気流が導入されることによって該副燃焼室にスワール流が生じるように形成されており、
上記突出壁部は、プラグ径方向の内側を向く内側面(71)を有し、
上記噴孔を開口方向に延長した延長領域(51E)は、上記突出壁部の内側面を通過し、
上記接地電極は、上記中心電極に対して先端側から上記放電ギャップを介してプラグ軸方向(Z)に対向する軸方向対向面(62)を有し、
プラグ中心軸(C)と上記副燃焼室の外周との中間位置よりもプラグ中心軸に近い位置に、上記放電ギャップに対してプラグ径方向から対向する径方向対向面(8)が形成されている、内燃機関用のスパークプラグ(1)にある。
【発明の効果】
【0007】
上記内燃機関用のスパークプラグにおいて、噴孔は、噴孔を介して副燃焼室に気流が導入されることによって副燃焼室にスワール流が生じるように形成されている。そして、噴孔を開口方向に延長した延長領域は、突出壁部の内側面を通過する。それゆえ、突出壁部の内側面よりも内側にスワール流を形成しやすい。つまり、副燃焼室の内壁面から離れた位置にスワール流を形成しやすい。それゆえ、初期火炎は、スワール流によって拡散される際、冷却されにくい。その結果、着火性を向上させることができる。
【0008】
以上のごとく、上記態様によれば、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグを提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図であって、図2のI-I線矢視断面相当図。
図2図1のII-II線矢視断面相当図。
図3】実施形態1における、噴孔を開口方向に延長した延長領域と突出壁部の内側面との関係を説明する、断面説明図。
図4】実施形態1における、プラグ中心軸を中心とする仮想円と突出壁部の内側面との関係を説明する、プラグ軸方向に直交する断面説明図。
図5図2のV-V線矢視断面相当図。
図6】実施形態1における、突出壁部の内側面におけるプラグ軸方向の長さ等を説明する、断面説明図。
図7】実施形態1における、突出壁部の内側面におけるプラグ周方向の長さを説明する、断面説明図。
図8】実施形態1における、突出壁部の内側面とポケット部の内周面との位置関係を説明する、断面説明図。
図9】実施形態1における、スパークプラグを先端側から見た図。
図10】実施形態1における、圧縮行程において副燃焼室に形成されたスワール流の向きを説明する、プラグ軸方向から見た説明図。
図11】実施形態1における、プラグカバーのプラグ軸方向に沿った断面図。
図12】実施形態1における、スパークプラグが取り付けられた内燃機関の断面説明図。
図13】実施形態2における、スパークプラグの先端部の、プラグ軸方向に直交する断面図。
図14】実施形態3における、スパークプラグの先端部の、プラグ軸方向に直交する断面図であって、図15のXIV-XIV線矢視断面相当図。
図15図14のXV-XV線矢視断面相当図。
図16】実施形態4における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図であって、図17のXVI-XVI線矢視断面相当図。
図17図16のXVII-XVII線矢視断面相当図。
図18】実施形態4における、圧縮行程において副燃焼室に形成されたスワール流の向きを説明する、プラグ軸方向から見た説明図。
図19】実施形態5における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図。
図20】実施形態5における、ポケット部の気流の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
内燃機関用のスパークプラグに係る実施形態について、図1図12を参照して説明する。
本形態の内燃機関用のスパークプラグ1は、図1図2に示すごとく、筒状の絶縁碍子3と、中心電極4と、筒状のハウジング2と、接地電極6と、プラグカバー5と、突出壁部7と、を有する。中心電極4は、絶縁碍子3の内周側に保持されると共に絶縁碍子3から先端側に突出している。ハウジング2は、絶縁碍子3を内周側に保持する。接地電極6は、中心電極4との間に放電ギャップGを形成する。プラグカバー5は、放電ギャップGが配される副燃焼室50を覆うようハウジング2の先端部に設けられている。突出壁部7は、副燃焼室50の内壁面501から副燃焼室50内に突出している。
【0011】
プラグカバー5には、副燃焼室50と外部とを連通させる噴孔51が形成されている。噴孔51は、噴孔51を介して副燃焼室50に気流が導入されることによって副燃焼室50にスワール流が生じるように形成されている。
【0012】
突出壁部7は、プラグ径方向の内側を向く内側面71を有する。図3に示すごとく、噴孔51を開口方向に延長した延長領域51Eは、突出壁部7の内側面71を通過する。
【0013】
本形態のスパークプラグ1は、例えば、自動車、コージェネレーション等の内燃機関における着火手段として用いることができる。図12に示すごとく、ハウジング2の外周面に形成した取付ネジ部22を、シリンダヘッド16のプラグホール161の雌ネジ部に螺合して、スパークプラグ1が内燃機関10に取り付けられる。
【0014】
内燃機関10は、シリンダ12内を往復運動するピストン15を備える。主燃焼室11は、ピストン15の往復運動によって、体積変化する。内燃機関10には、吸気ポート131及び排気ポート141が形成されており、それぞれ吸気弁13又は排気弁14が備えられている。
【0015】
そして、スパークプラグ1の軸方向Zの一端が、内燃機関10の主燃焼室11に配置される。スパークプラグ1の軸方向Zにおいて、主燃焼室11に露出する側を先端側、その反対側を基端側というものとする。また、スパークプラグ1の軸方向Zを、適宜、プラグ軸方向Z、或いは単に、Z方向ともいう。なお、プラグ中心軸Cは、スパークプラグ1の中心軸Cを意味するものとする。また、プラグ中心軸Cは、本形態において、中心電極4の中心軸でもある。また、プラグ径方向とは、スパークプラグ1の中心軸Cに直交する平面上において、スパークプラグ1の中心軸Cを中心とする円の半径方向を意味する。
【0016】
プラグカバー5は、図1に示すごとく、ハウジング2の先端部に溶接等によって接合されている。スパークプラグ1が内燃機関に取り付けられた状態において、プラグカバー5は、副燃焼室50を主燃焼室と区画している。
【0017】
本形態において、プラグカバー5は、周壁部52と底壁部53と角部54とを有する。周壁部52は、副燃焼室50の外周側の一部を覆う略円筒形状の部分である。底壁部53は、副燃焼室50の先端側を覆う部分である。角部54は、周壁部52の先端と底壁部53の外周とを曲面状に繋ぐ部分である。本形態において、噴孔51は、角部54に形成されている。
【0018】
内燃機関に設置されたスパークプラグ1において、プラグカバー5に形成された噴孔51は、副燃焼室50と主燃焼室とを連通させている。内燃機関の圧縮行程等においては、噴孔51を通じて主燃焼室から副燃焼室50へ、気流が導入される。そして、噴孔51を通じて副燃焼室50に導入される気流によって、副燃焼室50にスワール流(図10の破線矢印A参照)が形成される。
【0019】
具体的には、図2に示すごとく、噴孔51の中心軸の延長線51Lは、Z方向から見て、プラグ径方向に対して傾斜している。つまり、本形態において、噴孔51は、Z方向から見たとき、噴孔51とプラグ中心軸Cとを通過するプラグ径方向に延びる仮想直線VLに対して、噴孔51の中心軸の延長線51Lが鋭角の角度をもって傾斜している。噴孔51は、各噴孔51における仮想直線VLに対する噴孔51の中心軸の延長線51Lの傾斜方向が、プラグ周方向における同じ側となっている。なお、プラグ周方向は、プラグ中心軸Cを中心とする円周に沿った方向である。
【0020】
このような噴孔51の形成態様により、図10に示すごとく、噴孔51を介して副燃焼室50に導入された気流によって、副燃焼室50にスワール流Aが形成される。本形態の場合、スワール流Aは、プラグ中心軸Cの周りに、図10における反時計回りの螺旋状に生じる。
【0021】
また、内燃機関の膨張行程においては、それぞれの噴孔51を介して、副燃焼室50から主燃焼室へとガスが流出することにより、圧縮行程において形成されるスワール流とは逆回りのスワール流が形成される。
【0022】
噴孔51は、図2~4、図7図9図10に示すごとく、Z方向から見たとき、プラグ周方向に等間隔で形成されている。また、噴孔51は、図1図6図8図11に示すごとく、先端側へ向かうほどプラグ径方向の外側へ向かうように、Z方向に対して傾斜して開口している。
【0023】
噴孔51の中心軸の延長線51Lは、図1図2に示すごとく、突出壁部7の内側面71を通過する。本形態において、延長線51Lは、接地電極6を通過しない。また、延長線51Lは、放電ギャップGを通過しない。
【0024】
本形態においては、4つの突出壁部7が設けられている。それぞれの突出壁部7は、図1に示すごとく、固定部73と基端突出部74とを有する。固定部73は、副燃焼室50の内壁面501に固定されている。より具体的には、固定部73は、プラグカバー5の周壁部52の内壁面501に固定されている。固定部73は、周壁部52の内壁面501からプラグ径方向の内側に向かって突出している。
【0025】
突出壁部7の基端突出部74は、固定部73から、基端側に向かって突出している。基端突出部74は、図1図2に示すごとく、ハウジング2の先端部の内周面に沿って設けられている。基端突出部74とハウジング2の先端部の内周面とは、互いにプラグ径方向に対向している。本形態において、基端突出部74とハウジング2の先端部の内周面との間には、隙間が形成されている。つまり、基端突出部74におけるプラグ径方向の外側を向く面は、ハウジング2の先端部の内周面に当接していない。
【0026】
本形態において、突出壁部7の内側面71の先端は、図5に示すごとく、放電ギャップGよりも先端側に位置している。内側面71の先端は、噴孔51の基端よりも基端側に位置している。内側面71の基端は、放電ギャップGよりも基端側に位置している。内側面71の基端は、プラグカバー5の基端よりも基端側に位置している。内側面71の基端は、後述する中心電極4の小径部41よりも基端側に位置している。内側面71の基端は、図1に示すごとく、絶縁碍子3の先端よりも先端側に位置している。内側面71の基端は、Z方向における、絶縁碍子3の先端と副燃焼室50の先端との中間位置よりも、基端側に位置している。
【0027】
また、副燃焼室50は、絶縁碍子3から先端側に突出した中心電極4の周辺における、ハウジング2の先端部の内周側の空間を含む。また、副燃焼室50は、後述するポケット部502をも含む。
【0028】
図1に示すごとく、副燃焼室50は、絶縁碍子3の外周面とハウジング2の内周面との間に、環状の空間であるポケット部502を有する。絶縁碍子3の外周面は、ポケット部502に対向する部位に、先端側へ向かうほど縮径する碍子傾斜面31を有する。図8に示すごとく、ポケット部502のプラグ軸方向Zの全長D4の1/3の長さ分、ポケット部502の先端503よりも基端側に位置する、ポケット部502の内周面よりも、プラグ径方向の外側に突出壁部7の内側面71が位置する。
【0029】
すなわち、図8に示すごとく、全長D4の1/3の長さ分、ポケット部502の先端503よりも基端側の位置を通ると共に、プラグ中心軸Cに直交する平面を直交平面Pとする。直交平面Pによる断面(図示略)において、絶縁碍子3の外形輪郭よりもプラグ径方向の外側に、突出壁部7の内側面71が配されている。つまり、突出壁部7の内側面71は、直交平面Pよりも先端側に位置する碍子傾斜面31よりも、プラグ径方向の外側に位置する。
【0030】
本形態においては、絶縁碍子3の外周面のうち、ポケット部502に対向する部位の略全体に、碍子傾斜面31が設けてある。
【0031】
図8図9に示すごとく、突出壁部7の内側面71は、ポケット部502の内周面の基端504よりも、プラグ径方向の外側に位置する。
【0032】
つまり、図9に示すごとく、Z方向から見たとき、ポケット部502の内周面と突出壁部7の内側面71とは、互いに重ならない。つまり、Z方向から見たとき、碍子傾斜面31と突出壁部7の内側面71とは、互いに重ならない。
【0033】
また、本形態において、突出壁部7は、図1図2に示すごとく、突出壁部7の基端よりも先端側に位置するハウジング2よりも、プラグ径方向の内側に突出している。つまり、突出壁部7の内側面71は、突出壁部7の基端よりも先端側に位置するハウジング2よりも、プラグ径方向の内側に配置されている。また、突出壁部7は、絶縁碍子3の先端よりも先端側に位置するハウジング2よりも、プラグ径方向の内側に突出している。また、突出壁部7は、副燃焼室50に面するハウジング2の内周面よりも、プラグ径方向の内側に突出している。
【0034】
また、図2図4図7図9図10に示すごとく、プラグ軸方向Zから見たとき、突出壁部7の内側面71は、プラグ径方向の外側に向かって凹んでいる。
【0035】
また、プラグ軸方向Zから見たとき、突出壁部7の内側面71は、図4に示すごとく、プラグ中心軸Cを中心とする仮想円VCに沿って形成されている。
【0036】
本形態において、ハウジング2の内壁面501は、Z方向から見たとき、プラグ中心軸Cを中心とする仮想円に沿って形成されている。つまり、図4に示すごとく、スパークプラグ1の先端部のZ方向に直交する断面において、突出壁部7の内側面71とハウジング2の内壁面501とは、それぞれプラグ中心軸Cを中心とする同心円に沿って形成されている。
【0037】
また、図6図7に示すごとく、突出壁部7の内側面71におけるプラグ軸方向Zの長さD1及びプラグ周方向の長さD2は、それぞれ噴孔51の内径D3以上である。
【0038】
本形態において、それぞれの突出壁部7の内側面71の面積は、噴孔51の開口面積よりも大きい。
【0039】
また、それぞれの突出壁部7は、図1図2に示すごとく、一対の周方向側面72を有する。周方向側面72は、プラグ周方向を向いている。
【0040】
また、突出壁部7は、図11に示すごとく、プラグカバー5と一体的に形成されている。本形態において、突出壁部7とプラグカバー5とは、金属製の部材からなる。
【0041】
また、図2に示すごとく、プラグ軸方向から見たとき、プラグ周方向に隣り合う2つの突出壁部7同士の間に挟まれるように、接地電極6が設けられている。接地電極6は、プラグ軸方向から見たとき、接地電極6と突出壁部7とが互いに重ならないように、設けられている。接地電極6は、Z方向から見たとき、プラグ径方向に沿うように固定されている。
【0042】
本形態において、接地電極6は、略四角柱形状をなしている。つまり、接地電極6は、4つの平坦な側面を備えており、そのうちの一つが基端面63となっている。つまり、基端面63の全体が平坦な面となっている。
【0043】
本形態において、接地電極6の基端面63は、図5に示すごとく、接地電極6の突出端部64に近づくに従って先端側に向かうように傾斜している。
【0044】
また、接地電極6は、ハウジング2に固定された固定端部61から副燃焼室50内に突出している。放電ギャップGは、ハウジング2の先端よりも先端側に形成されている。すなわち、中心電極4が、ハウジング2の先端よりも先端側に突出している。
【0045】
本形態のスパークプラグ1は、接地電極6をハウジング2に固定した後に、プラグカバー5をハウジング2に固定することによって、製造することができる。
【0046】
また、中心電極4の先端部には、他の部分よりも外径が小さい小径部41が形成されている。本形態において、放電ギャップGは、小径部41と接地電極6との間に形成されている。
【0047】
本形態において、放電ギャップGは、小径部41と接地電極6の基端面63とが、Z方向に互いに対向することにより形成されている。具体的には、図5に示すごとく、小径部41の先端面42と接地電極6の基端面63とが互いにZ方向に対向することにより、放電ギャップGが形成されている。なお、Z方向において互いに対向する中心電極4の先端面42と接地電極6の基端面63とのそれぞれに、チップを接合することもできる(図示略)。つまり、中心電極4の先端面42に接合されたチップと接地電極6の基端面63に接合されたチップとの間に、放電ギャップGを形成することもできる。チップは、例えば、イリジウムや白金等の貴金属、又はこれらを主成分とする合金とすることができる。
【0048】
放電ギャップGは、例えば、中心電極4の小径部41をZ方向に投影した領域であって、小径部41の先端面42と接地電極6の基端面63との間の領域である。また、本形態において、プラグ中心軸Cは、放電ギャップGを通過する。
【0049】
次に、本形態の作用効果を説明する。
上記内燃機関用のスパークプラグ1において、噴孔51は、噴孔51を介して副燃焼室50に気流が導入されることによって副燃焼室50にスワール流が生じるように形成されている。そして、噴孔51を開口方向に延長した延長領域51Eは、突出壁部7の内側面71を通過する。それゆえ、突出壁部7の内側面71よりも内側にスワール流を形成しやすい。つまり、副燃焼室50の内壁面501から離れた位置にスワール流を形成しやすい。それゆえ、初期火炎は、スワール流によって拡散される際、冷却されにくい。その結果、着火性を向上させることができる。
【0050】
スパークプラグ1は、内燃機関10に対し、ハウジング2を介して取り付けられる(図12参照)。それゆえ、ハウジング2の熱は、内燃機関10に移動しやすい。そのため、ハウジング2は、スパークプラグ1の他の部分と比較し、温度が低くなりやすい。また、副燃焼室50に形成されたスワール流は、プラグ径方向の外側に向かうに従って、強くなりやすい。したがって、仮に、スパークプラグが突出壁部を有さない場合、放電によって生じた初期火炎は、スワール流によって、ハウジングの内壁面の近傍に移動しやすい。それゆえ、初期火炎はハウジングの内壁面によって冷却されるおそれがある。一方、本形態のスパークプラグ1は、突出壁部7を備える。そのため、突出壁部7の内側面71の内側にスワール流を形成しやすい。それゆえ、初期火炎が、スワール流によって外周側へ運ばれたとしても、ハウジング2等の内壁面501の近傍に移動しにくい。それゆえ、初期火炎は、副燃焼室50の内壁面501による冷却損失を抑えつつ、成長することができる。その結果、着火性を向上させることができる。
【0051】
また、放電によって形成された初期火炎は、スワール流によって副燃焼室50における基端側へ運ばれやすい。これによって、噴孔51から充分離れた位置から火炎が広がり、充分に内圧が高い状態で、火炎ジェットが噴孔51から主燃焼室に噴出することが期待できる。その結果、内燃機関の高負荷時のノック抑制、低負荷時もしくは中負荷時におけるEGR率(すなわち、排気再循環率)の向上が期待でき、燃費向上、エミッション低減が期待できる。
【0052】
また、膨張行程においても、突出壁部7の内側面71よりも内側にスワール流を形成することができる。つまり、膨張行程においては、ピストンが先端側に移動することにより、主燃焼室が副燃焼室50に対して陰圧となる。これにより、噴孔51を介して副燃焼室50から主燃焼室へと気流が導出される。そして、噴孔51を介して副燃焼室50から導出される気流が、突出壁部7の内側面71に案内されることにより、内側面71よりも内側にスワール流を形成することができる。それゆえ、膨張行程においても、放電によって生じた初期火炎は、副燃焼室50の内壁面501による冷却損失を抑えつつ、成長することができる。その結果、膨張行程においても、着火性を向上させることができる。
【0053】
プラグ軸方向Zから見たとき、突出壁部7の内側面71は、プラグ径方向の外側に向かって凹んでいる。それゆえ、内側面71は、副燃焼室50の気流を効率的に案内することができる。それゆえ、内側面71よりも内側において、スワール流を効率的に形成することができる。その結果、初期火炎を一層効率的に成長させることができる。
【0054】
プラグ軸方向Zから見たとき、突出壁部7の内側面71は、仮想円VC(図4参照)に沿って形成されている。それゆえ、内側面71よりも内側において、スワール流を一層効率的に形成することができる。その結果、初期火炎を、より一層効率的に成長させることができる。
【0055】
突出壁部7は、プラグカバー5と一体的に形成されている。それゆえ、スパークプラグ1を効率的に製造することができる。つまり、突出壁部7を、放電加工等により、プラグカバー5と一体的に製造することができる。その結果、生産性を向上させることができる。
【0056】
突出壁部7の内側面71におけるプラグ軸方向Zの長さD1及びプラグ周方向の長さD2は、それぞれ噴孔51の内径D3以上である。それゆえ、突出壁部7の内側面71は、噴孔51を介して副燃焼室50に導入された気流を、確実に案内することができる。その結果、内側面71よりも内側において、スワール流を確実に形成することができる。
【0057】
ポケット部502のプラグ軸方向Zの全長D4の1/3の長さ分、ポケット部502の先端503よりも基端側に位置する、ポケット部502の内周面よりも、プラグ径方向の外側に突出壁部7の内側面71が位置する。それゆえ、副燃焼室50に形成されたスワール流は、副燃焼室50の基端側まで流入しやすい。その結果、着火性を一層向上させることができると共に、副燃焼室50の掃気性を向上させることができる。
【0058】
突出壁部7の内側面71は、ポケット部502の内周面の基端504よりも、プラグ径方向の外側に位置する。それゆえ、副燃焼室50に形成されたスワール流は、副燃焼室50の、より基端側まで流入しやすい。その結果、着火性を、より一層向上させることができると共に、副燃焼室50の掃気性を一層向上させることができる。
【0059】
接地電極6は、ハウジング2に固定された固定端部61から副燃焼室50内に突出している。また、放電ギャップGは、ハウジング2の先端よりも先端側に形成されている。それゆえ、ハウジング2にプラグカバー5を固定する前において、ハウジング2に固定された接地電極6と中心電極4との間に形成された放電ギャップGを確認しやすい。それゆえ、放電ギャップGの調整を容易に行うことができる。その結果、スパークプラグ1を容易に製造することができる。
【0060】
以上のごとく、本形態によれば、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグ1を提供することができる。
【0061】
(実施形態2)
本形態は、図13に示すごとく、実施形態1に対し、突出壁部7の形状を変更した形態である。
【0062】
図13に示すごとく、Z方向から見たとき、突出壁部7のプラグ周方向の両端部は、プラグ周方向の外側に向けて徐々に厚みが小さくなっている。
【0063】
また、Z方向から見たとき、突出壁部7の周方向側面72は、プラグ径方向に対して傾斜している。Z方向から見たとき、突出壁部7の内側面71と周方向側面72とのなす角度αは、270°よりも小さい。
その他は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0064】
Z方向から見たとき、角度αは、270°よりも小さい。それゆえ、副燃焼室50に形成されたスワール流が周方向側面72に向かって流入した場合、スワール流の流入方向と周方向側面72とのなす角度が、鈍角となりやすい。それゆえ、スワール流が周方向側面72に向かって流入したとしても、乱流を形成しにくい。それゆえ、スワール流が弱まりにくい。その結果、着火性を確実に向上させることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0065】
(実施形態3)
本形態は、図14図15に示すごとく、実施形態1に対し、突出壁部7の形状を変更した形態である。
【0066】
本形態においては、1つの突出壁部7が設けられている。突出壁部7は、図14に示すごとく、プラグ軸方向Zから見たとき、略C字形状をなしている。突出壁部7は、図14図15に示すごとく、接地電極6をプラグ周方向の両側から挟むように設けられている。突出壁部7は、プラグ周方向における、接地電極6の近傍以外の範囲に設けられている。
その他は、実施形態1と同様である。
【0067】
突出壁部7は、プラグ軸方向から見たとき、略C字形状をなしている。それゆえ、突出壁部7の内側面71によって、副燃焼室50の気流を効率的に案内することができる。その結果、副燃焼室50において、スワール流を効率的に形成することができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0068】
なお、本形態においては、プラグ軸方向から見たとき、突出壁部7が略C字形状をなしている例を示した。ただし、突出壁部7は、例えば、プラグ周方向の全体に設けることができる。この場合にも、同様の作用効果が得られる。
【0069】
(実施形態4)
本形態は、図16図18に示すごとく、実施形態1に対し、接地電極6の形状を変更した形態である。
【0070】
接地電極6は、図16図18に示すごとく、中心電極4に対して先端側から放電ギャップGを介してプラグ軸方向Zに対向する軸方向対向面62を有する。プラグ中心軸Cと副燃焼室50の外周との中間位置よりもプラグ中心軸Cに近い位置に、放電ギャップGに対してプラグ径方向から対向する径方向対向面8が形成されている。
【0071】
本形態において、径方向対向面8は、接地電極6に形成されている。径方向対向面8は、Z方向に沿って設けられている。径方向対向面8は、プラグ中心軸Cに対し略平行となるように、形成されている。
【0072】
中心電極4の先端面42は、図16に示すごとく、軸方向対向面62に沿って形成されている。
その他は、実施形態1と同様である。
【0073】
本形態のスパークプラグ1においては、プラグ中心軸Cと副燃焼室50の外周との中間位置よりもプラグ中心軸Cに近い位置に、径方向対向面8が形成されている。これにより、副燃焼室50において形成されたスワール流を、径方向対向面8によってガイドし、放電ギャップG近傍に集積することができる。それゆえ、放電ギャップGの近傍に、強化された気流を形成することができる。この放電ギャップGの近傍において強化された気流による引き込み効果によって、放電ギャップGにおける放電を引き伸ばすことができる。その結果、副燃焼室50内における着火性が向上し、内燃機関の着火性を向上させることができる。
【0074】
すなわち、圧縮行程等においては、図18に示すごとく、噴孔51を介して副燃焼室50に導入された気流により、副燃焼室50に上昇スワール流Asuと下降スワール流Asdとが形成される。上昇スワール流Asuは、主として突出壁部7の内側面71付近を、プラグ周方向に回転しながら基端側へ向かう。下降スワール流Asdは、主としてプラグ中心軸Cに近い位置において、プラグ周方向に回転しながら先端側へ向かう。また、下降スワール流Asdは、上昇スワール流Asuに対して、弱くなりやすい。ここで、本形態においては、上記のごとく、径方向対向面8を備える。それゆえ、下降スワール流Asdを径方向対向面8によってガイドし、放電ギャップG近傍に集積することができる。それゆえ、放電ギャップGの近傍に、強化された気流を形成することができる。その結果、着火性を向上させることができる。
【0075】
また、放電によって生じた初期火炎は、上昇スワール流Asuによって副燃焼室50における基端側へ運ばれる。これによって、噴孔51から充分離れた位置から火炎が広がり、充分に内圧が高い状態で、火炎ジェットが噴孔51から主燃焼室に噴出することが期待できる。その結果、主燃焼室の着火性を向上させることができる。
【0076】
また、膨張行程においても、副燃焼室50に形成されたスワール流を、径方向対向面8によってガイドし、放電ギャップG近傍に集積することができる。それゆえ、放電ギャップGの近傍に、強化された気流を形成することができる。その結果、膨張行程においても、着火性を向上させることができる。
【0077】
また、中心電極4の先端面42は、接地電極6の軸方向対向面62に沿って形成されている。それゆえ、中心電極4の先端面42と軸方向対向面62とを略平行にすることができる。これにより、中心電極4側の放電の起点位置を分散させやすい。そのため、中心電極4が局部的に摩耗することを抑制し、放電ギャップGの距離が拡大することを抑制することができる。その結果、スパークプラグ1の寿命を延ばすことができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0078】
(実施形態5)
本形態は、図19図20に示すごとく、実施形態1に対し、ハウジング2の形状を変更した形態である。
すなわち、ハウジング2の内周面は、ポケット部502に対向する部位に、基端側へ向かうほど縮径するハウジング傾斜面21を有する。
【0079】
図19図20に示すごとく、本形態においては、ハウジング2の内周面のうち、ポケット部502に対向する部位の略全体に、ハウジング傾斜面21が設けてある。
その他は、実施形態1と同様である。
【0080】
本形態のスパークプラグ1は、ポケット部502に対向する部位に、碍子傾斜面31とハウジング傾斜面21とを有する。これにより、副燃焼室50に形成されたスワール流が、放電ギャップGの外周側において、充分な強さの気流として形成されやすい。
【0081】
すなわち、噴孔51から副燃焼室50に導入された気流は、突出壁部7の内側面71に沿って上昇スワール流を形成しつつ基端側へ向かう。そして、上昇スワール流は、ポケット部502をハウジング2の内周面に沿って基端側へ移動しながら旋回する。ここで、図20に示すごとく、ハウジング2の内周面はハウジング傾斜面21を有するため、基端側へ移動する上昇スワール流Asuは、ポケット部502の基端部に向かうにつれて徐々にプラグ中心軸Cに近付く。図20に符号Asuを付した記号は、ポケット部502における、基端側へ向かう上昇スワール流の主流のイメージを示す。
【0082】
その後、ポケット部502の基端部において跳ね返ったスワール流は、先端側へ向かいながら旋回する。このときの下降スワール流Asdには、プラグ中心軸Cに近付く方向のベクトル成分も残っている。それゆえ、絶縁碍子3の外周面に沿って先端側へ向かいながら旋回する。図20に符号Asdを付した記号は、ポケット部502における、先端側へ向かう下降スワール流の主流のイメージを示す。
【0083】
絶縁碍子3の外周面は碍子傾斜面31を有するため、先端側へ向かう下降スワール流Asdは、徐々にプラグ中心軸Cに近付く。すなわち、スワール流は、基端側へ移動する際も、その後先端側へ移動する際も、徐々にプラグ中心軸Cに近付く。これにより、中心電極4及び放電ギャップGの外周側において、充分な強さの気流を確実に形成することができる。それゆえ、放電ギャップGに生じた放電は、下降スワール流Asdによる引き込み効果によって、プラグ径方向に引き伸ばされやすい。その結果、着火性を向上させることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0084】
上記実施形態1~3、5において、放電ギャップGは、中心電極4と接地電極6とがZ方向に互いに対向することにより形成されている。ただし、放電ギャップは、例えば、中心電極と接地電極とがプラグ径方向に互いに対向することにより形成することもできる。
【0085】
上記実施形態1~5において、突出壁部7は、プラグカバー5と一体的に形成されている。ただし、突出壁部は、ハウジングと一体的に形成することもできる。また、突出壁部は、プラグカバー又はハウジングとは、別部材として設けることもできる。この場合、突出壁部は、プラグカバー又はハウジングよりも、熱伝導率の低い部材によって形成することができる。
【0086】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1…スパークプラグ、2…ハウジング、3…絶縁碍子、4…中心電極、5…プラグカバー、6…接地電極、7…突出壁部、71…内側面、50…副燃焼室、501…内壁面、51…噴孔、51E…噴孔を開口方向に延長した延長領域、G…放電ギャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20