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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】振動モータ
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
B06B1/04 S
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021013169
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022016270
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2020119456
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 篤範
(72)【発明者】
【氏名】光畑 遼一
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-060158(JP,U)
【文献】特開平10-127033(JP,A)
【文献】特開2003-145044(JP,A)
【文献】特開2002-205008(JP,A)
【文献】特開2014-028349(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030266(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止部と、
マグネットを有し、前記静止部に対して、上下方向に延びる中心軸に沿って振動可能な可動部と、
弾性部材と、
を有し、
前記静止部は、
前記可動部よりも径方向外方に配置され、前記中心軸に沿って延びる筒状のハウジングと、
前記可動部よりも上方に配置され、前記ハウジングに固定され、前記中心軸と交差する方向に広がる天面部と、
前記可動部に駆動力を付与可能なコイルと、
を有し、
前記弾性部材は、前記天面部よりも下方、かつ、前記可動部よりも上方に配置され、
前記弾性部材は、前記天面部と前記可動部との両方に固定され、前記可動部を前記中心軸に沿って振動可能に支持し、
前記可動部の下面全体は、当該振動モータの下端部又は当該振動モータの外部空間と直接的に上下方向に対向する、振動モータ。
【請求項2】
前記コイルは、前記中心軸を囲む環状であり、前記マグネットの径方向外側面よりも径方向外方に配置される、請求項1に記載の振動モータ。
【請求項3】
前記静止部は、前記中心軸に沿って延びる筒状の軸受部を有し、
前記軸受部の径方向内側面は、前記可動部の径方向外側面と径方向に対向して配置される、請求項1または請求項2に記載の振動モータ。
【請求項4】
前記天面部は、上方に凹む第1凹部を有し、
前記弾性部材の上端部は、前記第1凹部に収容されて固定される、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項5】
前記弾性部材の上端部は、前記第1凹部内に収容される接着剤によって固定される、請求項に記載の振動モータ。
【請求項6】
前記可動部は、収容部を有し、
前記収容部は、前記可動部の上面と、前記上面の内縁と前記上面の外縁との少なくとも一方から上方へ延びる壁面と、を有し、
前記弾性部材の下端部は、前記収容部に収容されて固定される、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項7】
前記収容部は、前記内縁と前記外縁とのうち前記内縁のみから上方へ延びる前記壁面を有し、
前記弾性部材の下端部は、前記収容部に収容される接着剤によって固定される、請求項に記載の振動モータ。
【請求項8】
前記可動部は、前記マグネットよりも上方に配置され、前記マグネットを保持するホルダーを有し、
前記ホルダーは、前記収容部を有する、請求項または請求項に記載の振動モータ。
【請求項9】
前記弾性部材の径方向外端は、前記マグネットの径方向外側面よりも径方向外方に配置される、請求項に記載の振動モータ。
【請求項10】
前記可動部は、前記マグネットを含むコア部と、前記ホルダーと、前記マグネットと前記ホルダーを固定する接着剤のみからなる、請求項または請求項に記載の振動モータ。
【請求項11】
前記ハウジングは、外径4mm以下の円筒状であり、
前記弾性部材の上下方向の長さは、3mm以下である、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項12】
前記第1凹部上下方向の深さは、0.1mm以上0.5mm以下である、請求項4または請求項に記載の振動モータ。
【請求項13】
前記収容部の上下方向の深さは、0.1mm以上0.5mm以下である、請求項6からは請求項10のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の振動モータを有する、触覚デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートフォン等の携帯機器など各種機器には、振動発生装置として振動モータが備えられている。振動モータは、例えば、着信またはアラーム等を利用者に知らせる機能、あるいはヒューマンインタフェースにおける触覚フィードバックの機能などの用途で用いられる。
【0003】
従来の振動装置は、移動体と、磁性流体と、電磁石と、収納部材と、を有する。磁性流体は、移動体の往復移動方向の両端面側に配設される。電磁石は、所定の交流電源に接続可能な電極を有する。電磁石は、磁性流体を介して移動体のそれぞれの磁極に対面する磁極を有する。収納部材は、移動体を往復移動方向に摺動可能に収納する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-130655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の振動装置においては、磁性流体によって移動体の往復移動を支持しているため、磁性流体と他の部材との結合が困難になる場合があった。よって、移動体を安定して往復移動させることが困難になる場合があった。
【0006】
上記状況に鑑み、本発明は、安定した振動を発生させることができる振動モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的な振動モータは、静止部と、マグネットを有し、前記静止部に対して、上下方向に延びる中心軸に沿って振動可能な可動部と、弾性部材と、を有する。前記静止部は、前記可動部よりも径方向外方に配置され、前記中心軸に沿って延びる筒状のハウジングと、前記可動部よりも上方に配置され、前記ハウジングに固定され、前記中心軸と交差する方向に広がる天面部と、前記可動部に駆動力を付与可能なコイルと、を有する。前記弾性部材は、前記天面部よりも下方、かつ、前記可動部よりも上方に配置される。前記弾性部材は、前記天面部と前記可動部との両方に固定され、前記可動部を前記中心軸に沿って振動可能に支持する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の例示的な振動モータによると、安定した振動を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る振動モータの断面斜視図である。
図2図2は、図1に示す振動モータの側面断面図である。
図3図3は、第1変形例に係る振動モータの側面断面図である。
図4図4は、第1軸受部の一部を上方から視た正面図である。
図5図5は、第1変形例における空気の逃げの様子を模式的に示す図である。
図6図6は、第1変形例における可動部が溝部を超えた位置まで移動した状態を示す図である。
図7図7は、第2変形例に係る振動モータの側面断面図である。
図8図8は、第4変形例に係る振動モータの側面断面図である。
図9図9は、第4変形例における空気の逃げの様子を模式的に示す図である。
図10図10は、第4変形例における可動部が空気孔を超えた位置まで移動した状態を示す図である。
図11図11は、第5変形例に係る振動モータの側面断面図である。
図12図12は、第6変形例に係る振動モータの側面断面図である。
図13図13は、第7変形例に係る振動モータの側面断面図である。
図14図14は、本発明の第2実施形態に係る振動モータの断面斜視図である。
図15図15は、本発明の第3実施形態に係る振動モータの縦断面斜視図である。
図16図16は、本発明の第3実施形態に係る振動モータの縦断面図である。
図17図17は、基板とコイルとの電気的な接続に関する構成を示す斜視図である。
図18図18は、変形例に係る軸受部の一部構成を示す縦断面図である。
図19図19は、別の変形例に係る軸受部の下端部を示す斜視図である。
図20図20は、ホルダーの変形例を示す斜視図である。
図21図21は、振動モータを搭載したタッチペンを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して本発明の例示的な実施形態を説明する。
【0011】
可動部なお、図面において、振動モータの中心軸Jが延びる方向を「上下方向」として、上方をX1、下方をX2として示す。なお、上記上下方向は、振動モータを機器に搭載する際の振動モータの取り付け方向を限定しない。また、中心軸Jに対する径方向を単に「径方向」と称する。
【0012】
<1.第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る振動モータ10の断面斜視図である。図2は、図1に示す振動モータ10の側面断面図である。
【0013】
振動モータ10は、静止部1と、可動部2と、弾性部材3と、を有する。可動部2は、静止部1に対して、上下方向(X方向)に延びる中心軸Jに沿って振動可能である。
【0014】
静止部1は、ハウジング11と、天面部13と、コイル14と、を有する。静止部1は、第1スリーブ軸受12をさらに有する。ハウジング11は、中心軸Jに沿って延びる円筒状の部材である。なお、ハウジング11は、円筒状に限らず、例えば四角筒状などであってもよい。ハウジング11は、磁性体により構成される。上記磁性体としては、例えばステンレスである。ハウジング11は、後述する可動部2を内部に収容する。すなわち、静止部1は、可動部2よりも径方向外方に配置され、中心軸Jに沿って延びる筒状のハウジング11を有する。
【0015】
第1スリーブ軸受12は、第1蓋部121と、第1軸受部122と、を有する。すなわち、静止部1は、第1蓋部121と、第1軸受部122と、を有する。第1蓋部121は、略円盤状である。第1軸受部122は、第1蓋部121から上方に突出して上下方向に延びる略円筒状である。すなわち、静止部1は、中心軸Jに沿って延びる筒状の第1軸受部122を有する。なお、第1蓋部121は、略円盤状に限らず、例えば略四角板状であってもよいし、第1軸受部122は、略円筒状に限らず、例えば略四角筒状であってもよい。第1蓋部121と第1軸受部122は、単一部材である第1スリーブ軸受12を構成する。なお、第1蓋部121と第1軸受部122は、別体であってもよい。その場合、第1蓋部121とハウジング11とが単一部材を構成してもよい。
【0016】
第1スリーブ軸受12は、ハウジング11の下方からハウジング11の内部へ挿入されてハウジング11に固定される。第1蓋部121は、ハウジング11の下端部を塞ぐ。第1軸受部122は、第1蓋部121より上方においてハウジング11の内部に配置される。
【0017】
第1スリーブ軸受12は、例えば低摩擦係数・低摩耗性の樹脂から構成される。上記樹脂としては、例えばPOM(ポリアセタール)である。
【0018】
静止部1は、天面部13を有する。天面部13は、略円盤状であり、ハウジング11の上端部を塞いで当該上端部に固定される。すなわち、静止部1は、可動部2よりも上方に配置され、ハウジング11に固定され、中心軸Jと交差する方向に広がる天面部13を有する。なお、天面部13は、略円盤状に限らず、例えば略四角板状であってもよい。ハウジング11、第1蓋部121、および天面部13から筐体が構成される。
【0019】
コイル14は、可動部2の上下方向に延びる中心軸J周りに導線を巻き回されて形成され、ハウジング11の内面に固定される。コイル14は、中心軸Jを囲む環状田である。ハウジング11は、内部にコイル14を収容する。コイル14は、通電を行うことにより磁界を発生させる。すなわち、静止部1は、可動部2に駆動力を付与可能なコイル14を有する。コイル14は、第1軸受部122の上端面に固定される。
【0020】
可動部2は、マグネット21を有する。可動部2は、さらに磁性体22と、ホルダー23と、を有し、ハウジング11内部に収容される。マグネット21は、下方のマグネット部21Aと、上方のマグネット部21Bと、を有する。磁性体22は、マグネット部21A,21Bにより上下方向両側から挟まれる。マグネット部21A,21Bおよび磁性体22は、上下方向に延びる略円柱状である。なお、マグネット部21A,21Bおよび磁性体22は、略円柱状に限らず、例えば略四角柱状であってもよい。
【0021】
マグネット部21Aの下方がN極であり、上方がS極である。マグネット部21Bの下方がN極であり、上方がS極である。すなわち、N極同士が磁性体22を挟んで上下方向に対向する。ハウジング11を磁性体により構成することで、マグネット21およびコイル14により生じる磁界が振動モータ10の外部へ漏れることを抑制し、磁力を高めることができる。なお、S極同士が磁性体22を挟んで上下方向に対向してもよい。
【0022】
ホルダー23は、マグネット部21B(マグネット21)における上方部分を保持する。すなわち、可動部2は、マグネット21よりも上方に配置され、マグネット21を保持するホルダー23を有する。ホルダー23は、上方へ円柱状に凹む柱状凹部23Aを有する。マグネット部21Bにおける上方部分は、柱状凹部23Aに嵌合される。ホルダー23は、ウェイト(おもり)として機能し、例えばタングステン合金により構成される。コイル14の第1方向他方側面14Aは、ホルダー23の第1方向一方側面23Bと第1方向に対向して配置される。これにより、コイル14の第1方向他方側面14Aの全部がホルダー23の第1方向一方側面23Bよりも径方向外方に配置される場合に比べ、振動モータ10の径方向のサイズを小さくすることができる。
【0023】
弾性部材3は、中心軸J周りに巻き回される巻きばねである。弾性部材3の下端部は、ホルダー23の上端面に固定され、弾性部材3の上端部は、天面部13の内面に固定される。弾性部材3の固定は、例えば接着により行われる。すなわち、弾性部材3は、ホルダー23と天面部13との間に配置される。静止部1は、天面部13よりも下方、かつ可動部2よりも上方に配置される弾性部材3を有する。弾性部材3は、天面部13と可動部2との両方に固定され、可動部2を中心軸Jに沿って振動可能に支持する。なお、弾性部材3の固定は、接着に限らず、例えば溶接、嵌め合い、カシメなどにより行ってもよい。
【0024】
第1軸受部122は、円筒状の軸受内周面122Aを有する。コイル14に通電が行われず可動部2が静止状態である非稼働状態の場合、マグネット部21Aの下方の一部分は、軸受内周面122Aから間隙S1をもって第1軸受部122の内部に収容される。すなわち、第1軸受部122は、可動部2における下方部分P1の外側面に対して間隙S1をもって配置される軸受内周面122Aを有する。第1軸受部122の径方向内側面は、可動部2の径方向外側面と径方向に対向して配置される。第1軸受部122は、振動モータ10の軸受部である。なお、図1および図2は、非稼働状態での振動モータ10を示す。
【0025】
非稼働状態では、磁性体22は、コイル14の内側に位置する。コイル14は、マグネット21の径方向外側面よりも径方向外方に配置される。コイル14は、中心軸Jを囲む環状である。また、非稼働状態では、弾性部材3が自然長となるが、ホルダー23によって弾性部材3を可動部2に固定することが容易となる。
【0026】
コイル14に通電することにより、コイル14により生じる磁界とマグネット21による磁界との相互作用により、マグネット21に駆動力が付与される。すなわち、可動部2に駆動力が付与されることにより、可動部2は、上下方向に振動する。コイル14の構成により、可動部2の振動が安定する。
【0027】
弾性部材3は天面部13と可動部2の両方に固定されるため、可動部2の振動が安定する。従って、振動モータ10は、安定した振動を発生させることができる。
【0028】
また、図2に示すように、可動部2の下面2BT全体は、第1蓋部121と直接的に上下方向に対向する。すなわち、可動部2の下面2BT全体は、振動モータ10の下端部と直接的に上下方向に対向する。これにより、可動部2の下部は、第1軸受部122によって支持されるが、上下方向には支持されていない。これにより、可動部を上下方向の両方から弾性部材等で支持する場合に比べて、可動部の上下方向における復元力が必要以上に大きくなることを抑制できる。よって、可動部の上下方向における振動を大きくすることができる。また、可動部2よりも下方に弾性部材を配置する必要がないため、振動モータ10の構成が簡素になり、量産性が向上する。また、このような可動部2の弾性部材3による片持ち構成であると、弾性部材3を天面部13と可動部2の両方に固定することが重要となる。
【0029】
なお、可動部2の下面2BT全体が、振動モータ10の外部空間と直接的に対向するようにしてもよい。つまり、図2の構成において第1蓋部121を設けないようにしてもよい。
【0030】
また、可動部2が振動するときに、可動部2が第1軸受部122の軸受内周面122A(径方向内側面)に接触した場合に、可動部2は静止された第1軸受部122に対して摺動するので、可動部2の動きが一方向の動きに制限される。よって可動部2の振動が安定する。また、ハウジング11が磁性体によって構成される場合は、磁性体により構成されるハウジング11に吸引力によって可動部2が引き寄せられて張り付く現象が発生することを抑制でき、可動部2を安定して稼働させることができる。
【0031】
また、可動部2が下方に動くときに、第1軸受部122と第1蓋部121により囲まれる空間に収容される空気を可動部2が押し込むことで、ダンパーの効果が発揮される。これにより、可動部2と第1蓋部121との第1方向における距離を適切に保つことができる。
【0032】
また、仮に弾性部材を上方、下方のそれぞれに配置することにより弾性部材を2つ設ける振動モータの構成の場合、それぞれの弾性部材の特性に不一致が生じる虞があり、共振周波数等の製品性能を安定化させることが難しい。これに対して、本実施形態の構成では、弾性部材3が1つであるので、製品性能の安定化を図ることができる。また、上記のように2つの弾性部材を設ける場合において下方においてホルダーと弾性部材を設ける構成に比べて、本実施形態の構成では、上記ホルダーと上記弾性部材を第1軸受部122に置き換えることができるので、コストを削減できる。
【0033】
<2.第1変形例>
以下、上記で説明した第1実施形態の各種変形例について述べる。なお、以下説明する各種変形例は、適宜に組み合わせて実施することが可能である。
【0034】
図3は、第1変形例に係る振動モータ101の側面断面図である。図3に示すように、第1変形例においては、第1軸受部122には、溝部1221が設けられる。溝部1221は、軸受内周面122Aに設けられる。溝部1221は、上下方向に沿って延びる。なお、溝部1221は、間隙S1に含まれる。
【0035】
図4は、第1軸受部122の一部を上方から視た正面図である。図4に示すように、溝部1221は、複数設けられる。なお、溝部1221は、1個であってもよい。すなわち、軸受内周面122Aは、上下方向に沿って設けられる少なくとも1つの溝部1221を有する。
【0036】
溝部1221の上端1221Aは、第1軸受部122の上端122Bにおいて開口している。すなわち、溝部1221の上端1221Aは、第1軸受部122の上端122Bに位置する。
【0037】
また、溝部1221の下端1221Bは、第1軸受部122の下端122Cよりも上方に位置する。
【0038】
このような第1変形例では、図5に示すように、稼働状態において可動部2(マグネット部21A)が下方に動くときに、可動部2により押し込まれた空気が溝部1221に逃げる。なお、図5において、空気の流れF1を示す。これにより、ダンパーの効果が弱まり、可動部2の摺動性を向上できる。
【0039】
また、溝部1221に逃げた空気は、上端1221Aから外部へ流れ出すので、空気が逃げやすくなり、可動部2の摺動性をより向上できる。
【0040】
また、図6に示すように、可動部2が上下方向に動くときに、可動部2が下端1221Bを下方へ超えると、空気の逃げが抑制され、空気による抵抗が大きくなる。従って、可動部2が第1蓋部121に接触することを抑制できる。
【0041】
<3.第2変形例>
図7は、第2変形例に係る振動モータ102の側面断面図である。振動モータ102は、緩衝部材410,420を有する。緩衝部材410,420は、例えばシリコンゴム、熱可塑性ポリウレタンなどから構成される。
【0042】
緩衝部材410は、第1蓋部121における可動部2(マグネット部21A)の下端面T1と上下方向に対向する内面に固定される。緩衝部材420は、天面部13における可動部2(ホルダー23)の上端面T2と上下方向に対向する内面に固定される。緩衝部材410,420の固定は、例えば両面テープにより行われる。
【0043】
なお、緩衝部材410,420は、いずれか一方だけを設けてもよい。すなわち、静止部1は、第1蓋部121における可動部2の下端面T1と上下方向に対向する内面と、天面部13における可動部2の上端面T2と上下方向に対向する内面と、の少なくとも一方に配置される緩衝部材410,420を有する。
【0044】
可動部2は、通常動作時には緩衝部材410,420とは接触しない。しかしながら、振動モータ102を落下させた等の場合は、可動部2の下端面T1が緩衝部材410に接触するか、あるいは、可動部2の上端面T2が緩衝部材420に接触する。従って、可動部2と静止部1とが接触することによる騒音等を抑制できる。
【0045】
<4.第3変形例>
第3変形例として、上記第1実施形態に係る振動モータ10において、間隙S1に、潤滑剤、あるいは磁性流体を配置してもよい。潤滑剤は、例えばオイルである。なお、磁性流体を配置する場合、磁性流体は、マグネット部21Aとともに動く。
【0046】
これにより、可動部2は上下方向に動きやすくなる。また、可動部2の摩耗を抑制し、長寿命化を図ることができる。さらに、可動部2と第1軸受部122との摩擦による音の発生を抑制でき、静音性を向上できる。
【0047】
<5.第4変形例>
図8は、第4変形例に係る振動モータ104の側面断面図である。図8に示すように、振動モータ104においては、第1軸受部122は、空気通路1222と、空気孔1223と、を有する。空気通路1222は、上下方向に沿って配置される。空気孔1223は、空気通路1222に連通されて軸受内周面122Aに配置される。
【0048】
なお、図8の空気通路1222は、上方が第1軸受部122の上端面まで延びていない。なお、後述する実施形態のように、空気通路は、第1軸受部122の上端面まで延びて開口してもよい。また、空気通路は、空気孔1223よりも下方へ延びてもよい。その場合、空気通路は、第1蓋部121の下端面まで延びて開口してもよい。
【0049】
図8に示す構成によれば、図9に示すように、可動部2が上下方向に動くときに、可動部2が空気孔1223より上方に位置する場合は、可動部2により押し込まれた空気が空気孔1223を介して空気通路1222に流入し、可動部2は下方に動きやすくなる。なお、図9には、空気の流れF2を示す。そして、図10に示すように、可動部2が空気孔1223を下方へ超えると、空気孔1223は塞がれて空気の逃げが抑制され、空気による抵抗が大きくなる。従って、可動部2と第1蓋部121との第1方向における距離を適切に保つことができる。
【0050】
なお、空気通路および空気孔の組は、1組に限らず、第1軸受部122の周方向に複数の組を並べて設けてもよい。
【0051】
<6.第5変形例>
図11は、第5変形例に係る振動モータ105の側面断面図である。図11に示すように、振動モータ105では、マグネット部21Aの外周面を覆う第1摺動部材24が形成される。すなわち、可動部2における下方部分P1は、マグネット21(マグネット部21A)の一部分211と、一部分211の外周面に配置される第1摺動部材24と、を有する。第1摺動部材24は、摩擦係数の低い、例えばフッ素層などにより構成される。なお、マグネット部21Aは円柱状の部材でもよいし、四角柱状等の部材であってもよい。マグネット21Aの径方向外側面に第1摺動部材24が形成されていればよい。
【0052】
このような構成によれば、軸受内周面122Aに接触した可動部2の摺動動作によるマグネット21の摩耗を抑制し、摩耗による磁束変化を抑制できる。また、可動部2の摩耗により発生する可動部2の上方部分の上下方向以外の動きによるあばれを抑制できる。従って、可動部2の同軸度を改善できる。なお、同軸度は、一致するべき規定の軸直線からの軸直線のずれを示す。ここでは、上記既定の軸直線は、中心軸Jである。
【0053】
<7.第6変形例>
図12は、第6変形例に係る振動モータ106の側面断面図である。図12に示すように、振動モータ106では、可動部2は、第2摺動部材25を有する。第2摺動部材25は、ホルダー23の外周面に配置されてハウジング11の内面に対して摺動する。第2摺動部材25は、第1摺動部材24と同様に、例えばフッ素層などにより構成される。
【0054】
このような構成によれば、可動部2の上方部分の上下方向以外の動きによるあばれを抑制し、可動部2の同軸度を改善できる。また、仮に第2摺動部材25を設けず、ハウジング11が磁性体によって構成される場合、磁性体により構成されるハウジング11に吸引力によって可動部2が引き寄せられて張り付くことを抑制するためにはホルダー23の外周面とハウジング11の内面との間隙をある程度設ける必要がある。すると、振動モータを小型化する際に、ウェイトとしてのホルダー23のサイズが小さくなる。これに対して、本実施形態であれば、第2摺動部材25を設けるので、ホルダー23の外周面をハウジング11の内面に近づけても可動部2が引き寄せられて張り付くことを抑制でき、可動部2を安定して稼働させることができる。また、振動モータ106を小型化する際にもウェイトとしてのホルダー23のサイズを大きくすることができる。従って、振動モータ106の振動性能を向上できる。なお、振動モータ106において、第2摺動部材25とハウジング11との間に、潤滑剤、あるいは磁性流体を配置してもよい。すなわち、第2摺動部材25の径方向外側面とハウジング11との間には、潤滑剤又は磁性流体が配置される。潤滑剤は、例えばオイルである。なお、磁性流体を配置する場合、磁性流体は、第2摺動部材25とともに動く。
【0055】
<8.第7変形例>
図13は、第7変形例に係る振動モータ107の側面断面図である。図13に示すように、振動モータ107では、第1蓋部121は、上下方向に貫通する貫通孔121Aを有する。貫通孔121Aは、複数設けられる。なお、貫通孔121Aは、1個であってもよい。すなわち、第1蓋部121は、上下方向に貫通する貫通孔121Aを少なくとも1つ有する。また、貫通孔121Aは、第1蓋部121における可動部2の下端面T1と一方向に対向する内面に配置される。
【0056】
このような構成によれば、可動部2が上下方向に動くときに、空気が貫通孔121Aから外部へ逃げるので、可動部2は動きやすくなる。
【0057】
<9.第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について述べる。図14は、本発明の第2実施形態に係る振動モータ20の断面斜視図である。振動モータ20の構成における第1実施形態との相違点は、振動モータ20が第2スリーブ軸受15を有することである。
【0058】
静止部1は、第2スリーブ軸受15を有する。第2スリーブ軸受15は、第2蓋部151と、第2軸受部152と、を有する。すなわち、静止部1は、第2蓋部151と、第2軸受部152と、を有する。
【0059】
第2蓋部151は、略円盤状である。第2軸受部152は、第2蓋部151から下方に突出して上下方向に延びる略円筒状である。第2蓋部151と第2軸受部152は、単一部材としての第2スリーブ軸受15を構成する。なお、第2スリーブ軸受15の構成の各種変形については、先述した第1スリーブ軸受12と同様である。
【0060】
第2スリーブ軸受15は、ハウジング11の上方からハウジング11の内部へ挿入されてハウジング11に固定される。第2蓋部151は、ハウジング11の上端部を塞ぐ。第2軸受部152は、第1軸受部122の上方かつ第2蓋部151より下方においてハウジング11の内部に配置される。
【0061】
第2スリーブ軸受15は、例えば低摩擦係数・低摩耗性の樹脂から構成される。上記樹脂としては、例えばPOM(ポリアセタール)である。
【0062】
第2軸受部152は、円筒状の軸受内周面152Aを有する。非稼働状態の場合、マグネット部21Bの上方の一部分は、軸受内周面152Aから間隙S2をもって第2軸受部152の内部に収容される。すなわち、第2軸受部152は、可動部2における上方部分P2の外周面に対して間隙S2をもって配置される軸受内周面152Aを有する。なお、図14は、非稼働状態での振動モータ20を示す。
【0063】
コイル14に通電することで、マグネット21に駆動力が付与され、可動部2は上下方向に振動する。可動部2が振動するときに、可動部2が軸受内周面122A、152Aと接触した場合、可動部2は静止された第1軸受部122および第2軸受部152に対して摺動するので、可動部2の動きをほぼ上下方向の動きに制限する。これにより、可動部2の動きが安定する。さらに、ハウジング11が磁性体で構成される場合は、可動部2の張り付きを抑制し、可動部2を安定して稼働させることができる。
【0064】
また、可動部2が上方に動くときに、第2軸受部152と第2蓋部151により囲まれる空間に収容される空気を可動部2が押し込むことで、ダンパーの効果が発揮され、可動部2が第2蓋部151に接触することを抑制できる。
【0065】
さらに、本実施形態では、第1実施形態と比べて、ホルダーおよび弾性部材を軸受部に置き換えているので、コストをさらに削減できる。
【0066】
なお、図14に示す構成では、第1軸受部122が空気通路1222および空気孔1223を有し、第2軸受部152が空気通路1522および空気孔1523を有している。
【0067】
空気通路1222は、空気孔1223よりも上方へ第1軸受部122の上端面まで延びて開口する。すなわち、空気通路1222の上端1222Aは、第1軸受部122の上端面に位置する。
【0068】
これにより、可動部2が下方に動くときに、可動部2によって押し込まれた空気は、空気孔1223を介して空気通路1222に流れ込み、上端1222Aから外部へ流れ出す。従って、空気が逃げやすくなり、可動部2は下方に動きやすくなる。
【0069】
空気通路1522は、空気孔1523よりも下方へ第2軸受部152の下端面まで延びて開口する。すなわち、空気通路1522の下端1522Aは、第2軸受部152の下端面に位置する。
【0070】
これにより、可動部2が上方に動くときに、可動部2によって押し込まれた空気は、空気孔1523を介して空気通路1522に流れ込み、下端1522Aから外部へ流れ出す。従って、空気が逃げやすくなり、可動部2は上方に動きやすくなる。なお、可動部2が空気孔1523を上方へ超えると、空気孔1523が塞がれるので、ダンパーの効果が強まり、可動部2と第2蓋部151との第1方向間における距離を適切に保つことができる。
【0071】
なお、本実施形態には、先述した第1実施形態についての各種変形例を適宜、適用することが可能である。
【0072】
<10.第3実施形態>
<10-1 振動モータの全体構成>
図15は、本発明の第3実施形態に係る振動モータ30の縦断面斜視図である。図16は、図15に示す振動モータ30の縦断面図である。
【0073】
振動モータ30は、静止部4と、可動部5と、を備える。本実施形態においては、振動モータ30は、弾性部材6と、基板7と、をさらに有する。可動部5は、中心軸Jの方向に沿って延びる。可動部5は、静止部1に対して、中心軸Jに沿って振動可能である。中心軸Jは、上下方向に延びる。すなわち、可動部5は、上下方向に振動可能である。
【0074】
<10-2 静止部>
静止部4は、ハウジング41と、軸受部42と、コイル43と、を有する。本実施形態においては、静止部1は、天面部44をさらに有する。
【0075】
ハウジング41は、上下方向に延びる円筒状の部材である。なお、ハウジング41は、円筒状に限らず、例えば四角筒状などであってもよい。すなわち、ハウジング41は、上下方向に延びる筒状であればよい。ハウジング41は、磁性体により構成される。上記磁性体は、例えばステンレスである。ハウジング41は、内部に可動部5およびコイル43を収容する。
【0076】
軸受部42は、中心軸Jに沿って延びる筒状のスリーブ軸受である。軸受部42は、例えば低摩擦係数・低摩耗性の樹脂から構成される。上記樹脂は、例えばLCD(液晶ポリマー)である。
【0077】
軸受部42は、上下方向に延びる円柱状の中空部42Aを有する。軸受部42は、第1領域部421と、第2領域部422と、第3領域部423と、を有する。第2領域部422は、第1領域部421の下方に配置される。すなわち、軸受部42は、第1領域部421の下方に配置される第2領域部422を有する。第3領域部423は、第1領域部421の上方に配置される。第1領域部421、第2領域部422、および第3領域部423のそれぞれの内径は、略同一である。これにより、上下方向に径が略一定の中空部42Aが構成される。
【0078】
第1領域部421、第2領域部422、および第3領域部423は、一体的に形成される。第1領域部421は、上下方向に延びる円筒状である。第1領域部421の径方向外周には、導線が巻き付けられてコイル43が形成される。コイル43は、中心軸J周りに導線が巻かれることで形成される。コイル43の径方向内側面は、第1領域部421の径方向外側面に接触する。すなわち、軸受部42は第1領域部421を有し、第1領域部421は、コイル43の径方向内方に配置されるコイル内領域部421Aを有する。
【0079】
第1領域部421の径方向外端位置は、コイル43の径方向内端位置と一致する。これにより、振動モータ30の製造時に、軸受部42を形成してから、コイル43を第1領域部421に巻き付けることができるため、振動モータ30の量産性が向上する。
【0080】
第2領域部422は、上下方向に延びる円筒状の基部422Aと、基部422Aの下端部から径方向外方に突出する第3凸部422Bを有する。つまり、第2領域部422は、径方向外方に突出する第3凸部422Bを有する。第3凸部422Bは、円環状である。振動モータ30の製造時に、軸受部42は、ハウジング41内部に下方から挿入される。挿入により、第3凸部422Bの上面は、ハウジング41の下面と上下方向に接触する。これにより、ハウジング41に対して軸受部42の上下方向における位置決めを行うことができる。
【0081】
軸受部42は、ハウジング41の内部に配置される。軸受部42をハウジング41内に収容した状態において、ハウジング41は、コイル43の径方向外端よりも径方向外方に配置される。すなわち、静止部4は、コイル43の径方向外端よりも径方向外方に配置され、上下方向に延びる筒状のハウジング41を有する。
【0082】
基部422Aの径方向外側面は、コイル43の径方向外側面よりも径方向外方に配置される。すなわち、第2領域部422の径方向外側面は、第1領域部421の径方向外側面よりも径方向外方に配置される。第2領域部422の上面は、コイル43の下端と上下方向に対向して配置される。これにより、コイル43が第2領域部422の上面よりも下方に移動することを抑制できる。
【0083】
第3領域部423は、上下方向に延びる円筒状である。第3領域部423の径方向外端は、コイル43の径方向内端よりも径方向外方に配置される。第3領域部423の下面は、コイル43の上端と上下方向に対向して配置される。第3領域部423は、フランジ部である。これにより、コイル43が第3領域部423の下面よりも上方に移動することを抑制できる。
【0084】
<10-3 可動部>
可動部5は、コア部51と、ホルダー52と、を有する。
【0085】
コア部51は、中心軸Jの方向に沿って延びる円柱状の部材である。本実施形態においては、コア部51は、例えば、上下方向に並ぶ2つのマグネットと、当該マグネットに上下方向に挟み込まれて配置される磁性体と、を有する。すなわち、可動部5は、マグネットと、磁性体と、を有する。この場合、例えば、上方のマグネットにおける下方がN極であり、上方がS極である。下方のマグネットの上方がN極であり、下方がS極である。すなわち、N極同士が上記磁性体を挟んで上下方向に対向する。ハウジング41を磁性体により構成することで、マグネットおよびコイル43により生じる磁界が振動モータ30の外部へ漏れることを抑制し、磁力を高めることができる。なお、上記各マグネットの磁極は、上下方向で上記と反対にしてもよい。
【0086】
ホルダー52は、コア部51における上端部51Tを保持する。ホルダー52は、上方へ円柱状に凹む柱状凹部521を有する。上端部51Tは、柱状凹部521内に配置される。上端部51Tは、柱状凹部521に例えば接着により固定される。すなわち、ホルダー52は、コア部51に固定される。可動部5は、マグネットよりも上方に配置され、マグネットを保持するホルダー52を有する。
【0087】
ホルダー52は、ウェイト(おもり)として機能し、例えば金属により構成される。当該金属の一例は、タングステン合金である。
【0088】
ホルダー52は、収容部522を有する。すなわち、可動部5は、収容部522を有する。収容部522は、ホルダー52の上面から下方へ円環状に凹む。より具体的には、収容部522は、可動部5(ホルダー52)の上面522Aと、上面522Aの内縁から上方へ延びる壁面522Bと、上面522Aの外縁から上方へ延びる壁面522Cと、を有する。すなわち、収容部522は、可動部5の上面522Aと、上面522Aの内縁と上面522Aの外縁との少なくとも一方から上方へ延びる壁面522B,522Cと、を有する。
【0089】
収容部522には、弾性部材6の下端部が収容される。弾性部材6の収容部522への固定は、例えば接着により行われる。すなわち、弾性部材6の下端部は、収容部522に収容されて固定される。収容部522により、弾性部材6を可動部5に位置決めしつつ強固に固定できる。また、マグネットではなくホルダー52に収容部522を設けるため、磁気特性に影響を少なく収容部522を形成できる。
【0090】
静止部4は、天面部44を有する。天面部44は、中心軸Jを中心とする略円盤状の部材である。天面部44は、可動部5よりも上方に配置され、上下方向と交差する方向に広がる。天面部44は、下面から上方へ円環状に凹む第1凹部441を有する。すなわち、天面部44は、上方へ凹む第1凹部441を有する。弾性部材6の上端部は、第1凹部441に収容されて固定される。これにより、弾性部材6を天面部44に位置決めしつつ強固に固定できる。
【0091】
弾性部材6の第1凹部441への固定は、例えば接着により行われる。すなわち、弾性部材6の上端部は、第1凹部441内に収容される接着剤によって固定される。このため、簡単な方法により強固な固定を実現できる。
【0092】
天面部44は、径方向に突出するフランジ部442を有する。振動モータ30の製造時において、天面部44は、上方からハウジング41内に挿入される。このとき、フランジ部442の下面は、ハウジング41の上面と上下方向に接触する。これにより、ハウジング41に対する天面部44の上下方向における位置決めを行えるとともに、振動モータ30の強度向上を図ることができる。
【0093】
このような構成により、可動部5は、弾性部材6を介して天面部44により支持される。弾性部材6が自然長の状態で、図16に示すように、コア部51における下方の一部は、軸受部42の中空部42A内に収容される。これにより、コア部51は、軸受部42によって中心軸Jに沿って振動可能に支持される。すなわち、軸受部42は、可動部5を中心軸Jに沿って振動可能に支持する。すなわち、軸受部42は、中心軸Jに沿って延び、可動部5を中心軸Jに沿って振動可能に支持する。
【0094】
弾性部材6は、天面部44と可動部5(ホルダー52)の両方に固定されるため、可動部5の振動が安定する。
【0095】
コア部51の一部が軸受部42内に収容された状態で、軸受部42の軸受内側面42Sは、コア部51の径方向外側面と径方向に対向する。軸受内側面42Sは、中空部42Aの外周面である。すなわち、軸受部42は、可動部5の径方向外側面と径方向に対向して配置される軸受内側面42Sを有する。可動部5が振動するときに、可動部5が軸受部42の軸受内側面42Sに接触した場合に、可動部5は静止された軸受部42に対して摺動するので、可動部5の動きが上下方向の動きに制限される。これにより、磁性体により構成されるハウジング41に吸引力によって可動部5が引き寄せられて張り付く現象が発生することを抑制でき、可動部5を安定して稼働させることができる。
【0096】
また、可動部5の下方は、軸受部42によって支持されるが、上下方向には支持されていない。これにより、可動部を上下方向の両方から弾性部材等で支持する場合に比べて、可動部の上下方向における復元力が必要以上に大きくなることを抑制できる。よって、可動部の上下方向における振動を大きくすることができる。また、可動部5よりも下方に弾性部材を配置する必要がないため、振動モータ30の構成が簡素になり、量産性が向上する。また、このような可動部5を弾性部材6により支持する片持ち構成のため、弾性部材6が天面部44と可動部5の両方に固定することが重要となる。
【0097】
コイル43に通電を行うことにより、コイル43から磁界が発生する。発生した磁界と、コア部51による磁界との相互作用により、可動部5は上下方向に振動する。すなわち、コイル43は、通電によりマグネットに駆動力を付与可能である。
【0098】
第1領域部421がコイル内領域部421Aを有することにより、可動部5とコイル43とをコイル内領域部421Aにより隔てることができる。これにより、コイル内領域部421Aの径方向厚みを小さくすることができ、振動モータ30を径方向に小型化することが可能となる。
【0099】
また、第2領域部422は、コイル43の下端よりも下方に配置される。従って、第1領域部421に加えて第2領域部422を軸受部42に設けることで、軸受部42における可動部5と径方向に対向する内側面の上下方向長さが長くなり、可動部5の振動時における傾きを抑制できる。これにより、振動モータ30の振動が安定する。
【0100】
また、図16に示すように、第1領域部421の径方向内側面および第2領域部422の径方向内側面のそれぞれの径方向内方に、可動部5の一部が配置される。より具体的に述べると、弾性部材6が自然長の状態において、第1領域部421の径方向内側面および第2領域部422の径方向内側面のそれぞれの径方向内方に、可動部5の一部が配置される。これにより、軸受部42の内側面と径方向に対向する可動部5の上下方向長さが長くなり、可動部5の振動時における傾きを抑制できる。従って、振動を安定化できる。なお、弾性部材6が自然長の状態において、可動部5の一部は第2領域部422の径方向内方に位置しなくてもよい。
【0101】
また、軸受部42は、第1領域部421よりも上方に配置される第3領域部423を有する。これにより、軸受部42における可動部5と径方向に対向する内側面の上下方向長さが長くなり、可動部5の振動時における傾きをより抑制できる。なお、第3領域部423の径方向外端は、コイル43の径方向内端よりも径方向内方に配置されてもよい。
【0102】
また、ホルダー52の下面52Aは、第3領域部423の上面423Aと上下方向に直接対向して配置される。すなわち、可動部5は、第3領域部423の上面423Aと上下方向に直接対向して配置される面52Aを有する。これにより、可動部5の面52Aが第3領域部423の上面423Aと接触することが可能となり、可動部5の下方への移動を制限できる。特に、第2領域部422の内径は上下方向に略一定であるため、可動部5の下方への移動が上記のように制限されることで、可動部5が第2領域部422より下方へ移動することを抑制できる。また、後述するように、基板7が第2領域部422の下方に配置される場合に、可動部5と基板7との上下方向の間隙を適切に保つことができる。
【0103】
また、図16に示すように、ホルダー52は、上方に突出する突出部523を有する。突出部523、すなわちホルダー52の上面523Aは、天面部44の下面44Aと上下方向に直接対向して配置される。これにより、ホルダー52の上面523Aが天面部44の下面44Aと接触することが可能となり、可動部5の上方への移動を制限できる。
【0104】
また、図16に示すように、コイル43の上面43Aは、ホルダー52の下面52Aと上下方向に対向して配置される。これにより、コイル43の上面43Aの全部がホルダー52の下面52Aよりも径方向外方に配置される場合に比べ、振動モータ30の径方向のサイズを小さくすることができる。
【0105】
また、図16に示すように、弾性部材6の径方向外端は、マグネットの径方向外端面よりも径方向外方に配置される。これにより、弾性部材6はなるべく径方向外方で可動部5に固定されるので、可動部5の振動がより安定する。
【0106】
また、本実施形態では、可動部5は、マグネットを含むコア部51と、ホルダー52と、マグネットとホルダー52を固定する接着剤のみからなる。これにより、簡易な構成によって強固な可動部5を実現できる。
【0107】
<10-4 基板とコイルとの電気的接続の構成>
図17は、基板7とコイル43との電気的な接続に関する構成を示す斜視図である。図17に示すように、第2領域部422の径方向外側面には、上下方向に延び、かつ径方向内方に凹む凹部42Bが形成される。コイル43から引き出される引出線431の一部は、凹部42Bに収容される。なお、引出線431の全部が凹部42Bに収容されてもよい。すなわち、引出線431の少なくとも一部が凹部42Bに収容されていればよい。
【0108】
これにより、引出線431を軸受部42の径方向外方で引き回す必要がない。よって、引出線431を軸受部42の径方向外方で引き回す場合に比べて、振動モータ30において、引出線431が他の部位又は他の部材と干渉することを抑制でき、振動モータ30を径方向に小型化できる。また、振動モータ30の製造効率が向上する。
【0109】
また、図17に示すように、基板7は、第2領域部422よりも下方に配置され、かつ径方向に広がる。基板7は、フレキシブルプリント基板でも、リジッドプリント基板であってもよい。
【0110】
軸受部42は、第2領域部422の下面から下方に突出する第1凸部42Cを有する。下方に引き出された引出線431の下端部は、第1凸部42Cに巻かれる。すなわち、引出線431は、第1凸部42Cにからげられる。
【0111】
基板7は、第1電極部71と、第2電極部72と、を有する。第1電極部71と第2電極部72とは、基板7内部の配線パターン(図17で図示せず)により電気的に接続される。振動モータ30の製造時においては、基板7を第2領域部422に取り付け、第1電極部71と、第1凸部42Cにからげられた引出線431とを、はんだ付けなどにより電気的に接続する作業が行われる。当該作業は、自動でも手作業であってもよい。従って、引出線を直接的に基板に接続するよりも、作業性良く振動モータ30の製造を行える。また、引出線431を第1凸部42Cにからげる機構により、引出線の外径が小さい場合でも引出線と基板7との電気的接続の信頼性が向上する。よって、引出線の外径が小さい場合でも大きい場合でも、引出線と基板との電気的接続の信頼性が向上するため、振動モータの用途に合わせて引出線の外径を調整することができ、コイル43の電気抵抗や出力特性を調整しやすくなる。
【0112】
このようにして、コイル43から下方に引き出される引出線431の下端部は、基板7と電気的に接続される。これにより、コイル43と基板7とを電気的に接続するための引出線431の引き回しを容易にできる。
【0113】
また、基板7は、基板7の径方向外縁から中心軸Jに近づく向きに凹む複数の切欠き部7Aを有する。軸受部42は、第2領域部422の下面から下方に突出する複数の第2凸部42Dを有する。複数の第2凸部42Dは、複数の切欠き部7Aに収容される。これにより、基板7の位置決めを行うことができる。
【0114】
<10-5 軸受部の第1変形例>
図18は、変形例に係る軸受部42の一部構成を示す図である。図18に示す変形例では、コイル43の全部が第1領域部421の内部に配置され、かつ第1領域部421と一体的に形成されている。コイル内領域部421Aは、第1領域部421の一部である。なお、コイル43の一部が第1領域部421の内部に配置されてもよい。すなわち、コイル43の少なくとも一部が第1領域部421の内部に配置され、かつ第1領域部421と一体的に形成されていればよい。これにより、コイル43を軸受部42に強固に固定できる。
【0115】
また、図18に示す構成では、コイル43から引き出される引出線431は、第2領域部422の内部に配置され、かつ第2領域部422と一体的に形成される。これにより、引出線431を軸受部42に強固に固定できる。
【0116】
図18に示す構成は、インサート成型により形成できる。
【0117】
<10-6 軸受部の第2変形例>
図19は、別の変形例に係る軸受部42の下端部42BTを示す斜視図である。図19は、基板7を取り外した状態の図である。軸受部42の下端部42BTは、第2領域部422の下端部に相当する。
【0118】
図19に示すように、下端部42BTには、径方向に延び、かつ軸受部42の下面から上方へ凹む溝状の連通部4221が形成される。連通部4221は、下端部42BTの径方向内方の空間と径方向外方の空間とを連通する。すなわち、軸受部42は、軸受部42の内部空間と軸受部42の外部空間とを連通する連通部4221を有する。これにより、可動部5が上下方向に振動する場合に、連通部4221を通して軸受部42内部の気体が軸受部42外部へ排出されるため、軸受部42内部の気体が圧縮されて振動の振幅が低下することを抑制できる。また、本実施形態のように基板7が軸受部42の下方に配置される構成では、連通部4221を設けて軸受部42内部の気体を軸受部42外部へ排出する構成が特に有用である。
【0119】
なお、連通部4221は、溝状に限らず、例えば軸受部42を径方向に貫通する貫通孔として形成されてもよい。
【0120】
<10-7 ホルダーの変形例>
図20は、ホルダー52の変形例を示す斜視図である。図20に示す変形例に係るホルダー52は、先述した実施形態(図16)での収容部522の代わりに、収容部524を有する。収容部524は、中心軸Jを中心とする円環状の上面524Aと、上面524Aの径方向内縁から上方へ延びる壁面524Bと、を有する。すなわち、収容部524は、上面524Aの内縁と外縁とのうち内縁のみから上方へ延びる壁面524Bを有する。収容部524は、円環状に凹んだ収容部522(図16)において径方向外方の壁面を設けない構成に相当する。
【0121】
弾性部材6の下端部は、収容部524に収容される接着剤によって固定される。収容部524の構成によれば、可動部5および弾性部材6のサイズが小さい場合でも、接着剤を収容部524に注入しやすくなる。
【0122】
<10-8 振動モータのサイズに関して>
【0123】
なお、ハウジング41の外径D1(図16)は、4mm以下とすることが好ましい。例えば、D1=3mmである。すなわち、ハウジング41は、外径4mm以下の円筒状であることが好ましい。特に、振動モータを電子ペンに搭載する場合には、振動モータが電子ペンに搭載された状態で電子ペンの外径を人間の手の大きさに収まるサイズにする必要があるため、振動モータの外径を小さくすることが重要である。その中で、太めの電子ペンにおいては、振動モータの外径を10mm以下にし、細めの電子ペンにおいては、振動モータの外径を4mm以下にすることにより、様々な形状の電子ペンに振動モータを搭載することができる。ハウジングの形状が円筒以外である場合には、第1方向と直交する面におけるハウジングの外縁の長辺が4mm以下であることが好ましい。また、弾性部材6の上下方向の長さL1(図16)は、3mm以下とすることが好ましい。なお、弾性部材6の上下方向の長さL1は、弾性部材6が自然長である場合における長さである。例えば、L1=1.9mmである。これにより、小型の振動モータ30において、安定した振動を発生させることができる。
【0124】
また、第1凹部441又は収容部522の上下方向の深さDP1,DP2(図16)は、0.1mm以上0.5mm以下とすることが好ましい。これにより、小型の振動モータ30において、弾性部材6の固定を強化することができる。
【0125】
<11.搭載対象機器>
図21は、振動モータ10を搭載する対象機器の一例としてのタッチペン50を模式的に示す図である。タッチペン50は、スマートフォンまたはタブレットなどの機器のタッチパネルに接触させることにより、上記機器を操作する装置である。タッチペン50に振動モータ10を搭載することにより、タッチペン50を振動させてユーザに触覚フィードバックを与えることができる。すなわち、タッチペン50は、振動モータ10を有する触覚デバイスの一例である。つまり、触覚デバイスは、振動モータ10を有する。例えば、触覚フィードバックにより、タッチペン50であたかも紙などの上で文字などを記入している感覚をユーザに与えることができる。振動モータ10を触覚デバイスに搭載することにより、安定した触覚フィードバックを実現できる。
【0126】
また、タッチペンに限らず、振動モータ10は、空中操作デバイスなど各種の機器に搭載することが可能である。例えば、振動モータ10を電子ペンや電子筆記具、マウス等の機器に搭載し、当該機器を立体映像や仮想現実の映像に対して入力可能な電子機器とすることが可能である。
【0127】
なお、上記の搭載対象機器については、振動モータ10以外の各種実施形態の振動モータについても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は、例えば、携帯機器などの各種機器に搭載される振動モータに利用することができる。
【符号の説明】
【0129】
1・・・静止部
2・・・可動部
3・・・弾性部材
10・・・振動モータ
11・・・ハウジング
12・・・第1スリーブ軸受
13・・・天面部
14・・・コイル
15・・・第2スリーブ軸受
20・・・振動モータ
21・・・マグネット
21A,21B・・・マグネット部
22・・・磁性体
23・・・ホルダー
23A・・・柱状凹部
24・・・第1摺動部材
25・・・第2摺動部材
410,420・・・緩衝部材
101・・・振動モータ
102・・・振動モータ
104・・・振動モータ
105・・・振動モータ
106・・・振動モータ
107・・・振動モータ
121・・・第1蓋部
121A・・・貫通孔
122・・・第1軸受部
122A・・・軸受内周面
122B・・・上端
122C・・・下端
151・・・第2蓋部
152・・・第2軸受部
152A・・・軸受内周面
211・・・一部分
1221・・・溝部
1221A・・・上端
1221B・・・下端
1222・・・空気通路
1222A・・・上端
1223・・・空気孔
1522・・・空気通路
1522A・・・下端
1523・・・空気孔
J・・・中心軸
P1・・・下方部分
P2・・・上方部分
S1・・・間隙
S2・・・間隙
4・・・静止部
5・・・可動部
6・・・弾性部材
7・・・基板
7A・・・切欠き部
30・・・振動モータ
41・・・ハウジング
42・・・軸受部
42A・・・中空部
42B・・・凹部
42C・・・第1凸部
42D・・・第2凸部
42S・・・軸受内側面
42BT・・・下端部
4221・・・連通部
43・・・コイル
44・・・天面部
51・・・コア部
52・・・ホルダー
71・・・第1電極部
72・・・第2電極部
50・・・タッチペン
421・・・第1領域部
421A・・・コイル内領域部
422・・・第2領域部
422A・・・基部
422B・・・第3凸部
423・・・第3領域部
431・・・引出線
441・・・第1凹部
442・・・フランジ部
521・・・柱状凹部
522・・・収容部
523・・・突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21