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特許7585839液体吐出装置、その制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】液体吐出装置、その制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241112BHJP
   B41J 19/18 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B41J2/01 107
B41J2/01 401
B41J2/01 105
B41J19/18 A
B41J19/18 P
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021018047
(22)【出願日】2021-02-08
(65)【公開番号】P2022120966
(43)【公開日】2022-08-19
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
(72)【発明者】
【氏名】三本 匡雄
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-291577(JP,A)
【文献】特開2019-042938(JP,A)
【文献】特開2009-298061(JP,A)
【文献】特開2010-194883(JP,A)
【文献】特開2001-180017(JP,A)
【文献】特開2012-131157(JP,A)
【文献】米国特許第05033889(US,A)
【文献】中国特許出願公開第101138912(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41J 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有するヘッドと、
前記ヘッドを正走査方向及び前記正走査方向とは逆方向の逆走査方向からなる走査方向に移動させる走査機構と、
前記ヘッドに対して前記走査方向と交差する搬送方向に相対的に記録媒体を搬送する搬送機構と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
画像データに基づいて記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる記録処理であって、前記搬送機構により記録媒体を前記搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、前記走査機構により前記ヘッドを前記走査方向に移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる走査動作とを含む、記録処理を実行し、
前記走査動作は、前記正走査方向に前記ヘッドを移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる正走査動作と、前記逆走査方向に前記ヘッドを移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる逆走査動作とを含み、かつ、前記正走査動作及び前記逆走査動作のそれぞれにおいて前記ヘッドの減速距離が加速距離よりも長く、
前記制御部は、さらに、
前記正走査動作の前に、前記正走査動作における前記減速距離に対応する減速領域の少なくとも一部が、前記正走査動作において前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出領域に該当するか否かを判断する、第1判断処理を実行し、
前記第1判断処理において前記正走査動作で前記減速領域の少なくとも一部が前記吐出領域に該当すると判断された場合、前記正走査動作を実行せず、前記画像データのうち前記正走査動作に対応する部分画像データに基づいて前記逆走査動作を実行し、
前記第1判断処理において、少なくとも前記吐出領域の前記正走査方向の端部と前記減速距離とに基づいて導出される前記ヘッドの停止予定位置が、停止限界位置を超える場合に、前記正走査動作の前記減速領域の少なくとも一部が前記吐出領域に該当すると判断することを特徴とする、液体吐出装置。
【請求項2】
前記複数のノズルは、前記走査方向に並ぶ複数のノズル列を構成し、
前記制御部は、
前記第1判断処理において、前記吐出領域の前記正走査方向の端部と、前記減速距離と、前記ヘッドの前記正走査方向の端部から、前記複数のノズル列における前記正走査動作で液体を吐出させるノズル列のうち前記逆走査方向の端部に位置するノズル列までの、前記走査方向の距離とに基づいて、前記停止予定位置を導出することを特徴とする、請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記停止限界位置は、前記走査方向に記録媒体を挟む第1停止限界位置及び第2停止限界位置であって、記録媒体の前記走査方向の一端との前記走査方向の間隔が記録媒体の前記走査方向の他端との前記走査方向の間隔よりも小さい第1停止限界位置と、記録媒体の前記他端との前記走査方向の間隔が記録媒体の前記一端との前記走査方向の間隔よりも小さい第2停止限界位置と、を含み、
前記第1停止限界位置と記録媒体の前記一端との前記走査方向の間隔は、前記第2停止限界位置と記録媒体の前記他端との前記走査方向の間隔よりも小さく、
前記制御部は、
記録媒体の前記走査方向の縁を含む領域に前記ノズルから液体を吐出させる縁無し記録を行うか否かを判断する、第2判断処理をさらに実行し、
前記第2判断処理において前記縁無し記録を行わないと判断された場合、前記第1判断処理を実行し、
前記第2判断処理において前記縁無し記録を行うと判断された場合、前記第1判断処理を実行せず、前記正走査動作及び前記逆走査動作のうち前記一端から前記他端に向けて前記ヘッドを移動させる動作を実行することを特徴とする、請求項又はに記載の液体吐出装置。
【請求項4】
複数のノズルを有するヘッドと、
前記ヘッドを正走査方向及び前記正走査方向とは逆方向の逆走査方向からなる走査方向に移動させる走査機構と、
前記ヘッドに対して前記走査方向と交差する搬送方向に相対的に記録媒体を搬送する搬送機構と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
画像データに基づいて記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる記録処理であって、前記搬送機構により記録媒体を前記搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、前記走査機構により前記ヘッドを前記走査方向に移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる走査動作とを含む、記録処理を実行し、
前記走査動作は、前記正走査方向に前記ヘッドを移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる正走査動作と、前記逆走査方向に前記ヘッドを移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる逆走査動作とを含み、かつ、前記正走査動作及び前記逆走査動作のそれぞれにおいて前記ヘッドの減速距離が加速距離よりも長く、
前記制御部は、さらに、
前記正走査動作の前に、前記正走査動作における前記減速距離に対応する減速領域の少なくとも一部が、前記正走査動作において前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出領域に該当するか否かを判断する、第1判断処理を実行し、
前記第1判断処理において前記正走査動作で前記減速領域の少なくとも一部が前記吐出領域に該当すると判断された場合、前記画像データのうち前記正走査動作に対応する部分画像データに基づく前記逆走査動作における前記加速距離に対応する加速領域の少なくとも一部が、前記逆走査動作において前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出領域に該当するか否かを判断する、第3判断処理を実行し、
前記第3判断処理において前記逆走査動作の前記加速領域の少なくとも一部が前記吐出領域に該当すると判断された場合、前記逆走査動作の前記加速領域に該当する前記吐出領域の範囲が、前記正走査動作の前記減速領域に該当する前記吐出領域の範囲よりも狭いか否かを判断する、第4判断処理を実行し、
前記第4判断処理において前記逆走査動作の前記加速領域に該当する前記吐出領域の範囲が前記正走査動作の前記減速領域に該当する前記吐出領域の範囲よりも狭くないと判断された場合、前記正走査動作を実行し、
前記第4判断処理において前記逆走査動作の前記加速領域に該当する前記吐出領域の範囲が前記正走査動作の前記減速領域に該当する前記吐出領域の範囲よりも狭いと判断された場合、前記正走査動作を実行せず、前記部分画像データに基づいて前記逆走査動作を実行することを特徴とする、液体吐出装置。
【請求項5】
記憶部をさらに備え、
前記記憶部は、前記減速距離として、
前記正走査動作における前記ヘッドの目標速度が第1速度である場合の第1減速距離と、
前記正走査動作における前記ヘッドの目標速度が前記第1速度よりも高い第2速度である場合の第2減速距離であって、前記第1減速距離よりも長い第2減速距離と、を記憶し、
前記制御部は、
前記正走査動作における前記ヘッドの目標速度が前記第1速度である場合は、前記記憶部に記憶された前記第1減速距離に基づいて、前記第1判断処理を実行し、
前記正走査動作における前記ヘッドの目標速度が前記第2速度である場合は、前記記憶部に記憶された前記第2減速距離に基づいて、前記第1判断処理を実行することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第1判断処理において前記正走査動作の前記減速領域の少なくとも一部が前記吐出領域に該当すると判断された場合、前記部分画像データに基づいて前記逆走査動作を実行する前に、前記正走査動作の前に実行される前記走査動作と前記部分画像データに基づく前記逆走査動作とにより形成される画像が、所定の品質以下となるか否かを判断する、第判断処理を実行し、
前記第判断処理において前記画像が前記所定の品質以下となると判断された場合、前記正走査動作を実行し、
前記第判断処理において前記画像が前記所定の品質以下とならないと判断された場合、前記正走査動作を実行せず、前記部分画像データに基づいて前記逆走査動作を実行することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記正走査動作の前、かつ、前記第1判断処理の前に、前記正走査動作の前に実行される前記走査動作と前記正走査動作が実行されない場合に実行される前記逆走査動作とにより形成される画像が、所定の品質以下となるか否かを判断する、第判断処理を実行し、
前記第判断処理において前記画像が前記所定の品質以下となると判断された場合、前記正走査動作を実行し、
前記第判断処理において前記画像が前記所定の品質以下とならないと判断された場合、前記第1判断処理を実行することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記第1判断処理において前記正走査動作の前記減速領域が前記吐出領域に該当しないと判断された場合、前記正走査動作を実行することを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
複数のノズルを有するヘッドと、前記ヘッドを正走査方向及び前記正走査方向とは逆方向の逆走査方向からなる走査方向に移動させる走査機構と、前記ヘッドに対して前記走査方向と交差する搬送方向に相対的に記録媒体を搬送する搬送機構と、を備えた液体吐出装置を制御する制御方法であって、
画像データに基づいて記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる記録処理であって、前記搬送機構により記録媒体を前記搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、前記走査機構により前記ヘッドを前記走査方向に移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる走査動作とを含む、記録処理を実行し、
前記走査動作は、前記正走査方向に前記ヘッドを移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる正走査動作と、前記逆走査方向に前記ヘッドを移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる逆走査動作とを含み、かつ、前記正走査動作及び前記逆走査動作のそれぞれにおいて前記ヘッドの減速距離が加速距離よりも長く、
さらに、
前記正走査動作の前に、前記正走査動作における前記減速距離に対応する減速領域の少なくとも一部が、前記正走査動作において前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出領域に該当するか否かを判断する、第1判断処理を実行し、
前記第1判断処理において前記正走査動作で前記減速領域の少なくとも一部が前記吐出領域に該当すると判断された場合、前記正走査動作を実行せず、前記画像データのうち前記正走査動作に対応する部分画像データに基づいて前記逆走査動作を実行し、
前記第1判断処理において、少なくとも前記吐出領域の前記正走査方向の端部と前記減速距離とに基づいて導出される前記ヘッドの停止予定位置が、停止限界位置を超える場合に、前記正走査動作の前記減速領域の少なくとも一部が前記吐出領域に該当すると判断することを特徴とする、制御方法。
【請求項10】
複数のノズルを有するヘッドと、前記ヘッドを正走査方向及び前記正走査方向とは逆方向の逆走査方向からなる走査方向に移動させる走査機構と、前記ヘッドに対して前記走査方向と交差する搬送方向に相対的に記録媒体を搬送する搬送機構と、を備えた液体吐出装置を制御する制御方法であって、
画像データに基づいて記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる記録処理であって、前記搬送機構により記録媒体を前記搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、前記走査機構により前記ヘッドを前記走査方向に移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる走査動作とを含む、記録処理を実行し、
前記走査動作は、前記正走査方向に前記ヘッドを移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる正走査動作と、前記逆走査方向に前記ヘッドを移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる逆走査動作とを含み、かつ、前記正走査動作及び前記逆走査動作のそれぞれにおいて前記ヘッドの減速距離が加速距離よりも長く、
さらに、
前記正走査動作の前に、前記正走査動作における前記減速距離に対応する減速領域の少なくとも一部が、前記正走査動作において前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出領域に該当するか否かを判断する、第1判断処理を実行し、
前記第1判断処理において前記正走査動作で前記減速領域の少なくとも一部が前記吐出領域に該当すると判断された場合、前記画像データのうち前記正走査動作に対応する部分画像データに基づく前記逆走査動作における前記加速距離に対応する加速領域の少なくとも一部が、前記逆走査動作において前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出領域に該当するか否かを判断する、第3判断処理を実行し、
前記第3判断処理において前記逆走査動作の前記加速領域の少なくとも一部が前記吐出領域に該当すると判断された場合、前記逆走査動作の前記加速領域に該当する前記吐出領域の範囲が、前記正走査動作の前記減速領域に該当する前記吐出領域の範囲よりも狭いか否かを判断する、第4判断処理を実行し、
前記第4判断処理において前記逆走査動作の前記加速領域に該当する前記吐出領域の範囲が前記正走査動作の前記減速領域に該当する前記吐出領域の範囲よりも狭くないと判断された場合、前記正走査動作を実行し、
前記第4判断処理において前記逆走査動作の前記加速領域に該当する前記吐出領域の範囲が前記正走査動作の前記減速領域に該当する前記吐出領域の範囲よりも狭いと判断された場合、前記正走査動作を実行せず、前記部分画像データに基づいて前記逆走査動作を実行することを特徴とする、制御方法。
【請求項11】
複数のノズルを有するヘッドと、前記ヘッドを正走査方向及び前記正走査方向とは逆方向の逆走査方向からなる走査方向に移動させる走査機構と、前記ヘッドに対して前記走査方向と直交する搬送方向に相対的に記録媒体を搬送する搬送機構と、を備えた液体吐出装置を、
画像データに基づいて記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる記録手段であって、前記搬送機構により記録媒体を前記搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、前記走査機構により前記ヘッドを前記走査方向に移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる走査動作とを実行する、記録手段として機能させ、
前記走査動作は、前記正走査方向に前記ヘッドを移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる正走査動作と、前記逆走査方向に前記ヘッドを移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる逆走査動作とを含み、かつ、前記正走査動作及び前記逆走査動作のそれぞれにおいて前記ヘッドの減速距離が加速距離よりも長く、
さらに、前記液体吐出装置を、
前記正走査動作の前に、前記正走査動作における前記減速距離に対応する減速領域の少なくとも一部が、前記正走査動作において前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出領域に該当するか否かを判断する、第1判断手段として機能させ、
前記第1判断手段により前記正走査動作で前記減速領域の少なくとも一部が前記吐出領域に該当すると判断された場合、前記記録手段は、前記正走査動作を実行せず、前記画像データのうち前記正走査動作に対応する部分画像データに基づいて前記逆走査動作を実行し、
前記第1判断手段は、少なくとも前記吐出領域の前記正走査方向の端部と前記減速距離とに基づいて導出される前記ヘッドの停止予定位置が、停止限界位置を超える場合に、前記正走査動作の前記減速領域の少なくとも一部が前記吐出領域に該当すると判断することを特徴とする、プログラム。
【請求項12】
複数のノズルを有するヘッドと、前記ヘッドを正走査方向及び前記正走査方向とは逆方向の逆走査方向からなる走査方向に移動させる走査機構と、前記ヘッドに対して前記走査方向と直交する搬送方向に相対的に記録媒体を搬送する搬送機構と、を備えた液体吐出装置を、
画像データに基づいて記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる記録手段であって、前記搬送機構により記録媒体を前記搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、前記走査機構により前記ヘッドを前記走査方向に移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる走査動作とを実行する、記録手段として機能させ、
前記走査動作は、前記正走査方向に前記ヘッドを移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる正走査動作と、前記逆走査方向に前記ヘッドを移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる逆走査動作とを含み、かつ、前記正走査動作及び前記逆走査動作のそれぞれにおいて前記ヘッドの減速距離が加速距離よりも長く、
さらに、前記液体吐出装置を、
前記正走査動作の前に、前記正走査動作における前記減速距離に対応する減速領域の少なくとも一部が、前記正走査動作において前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出領域に該当するか否かを判断する、第1判断手段
前記第1判断手段により前記正走査動作で前記減速領域の少なくとも一部が前記吐出領域に該当すると判断された場合、前記画像データのうち前記正走査動作に対応する部分画像データに基づく前記逆走査動作における前記加速距離に対応する加速領域の少なくとも一部が、前記逆走査動作において前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出領域に該当するか否かを判断する、第3判断手段、及び、
前記第3判断手段により前記逆走査動作の前記加速領域の少なくとも一部が前記吐出領域に該当すると判断された場合、前記逆走査動作の前記加速領域に該当する前記吐出領域の範囲が、前記正走査動作の前記減速領域に該当する前記吐出領域の範囲よりも狭いか否かを判断する、第4判断手段、として機能させ、
前記第4判断手段により前記逆走査動作の前記加速領域に該当する前記吐出領域の範囲が前記正走査動作の前記減速領域に該当する前記吐出領域の範囲よりも狭くないと判断された場合、前記記録手段は、前記正走査動作を実行し、
前記第4判断手段により前記逆走査動作の前記加速領域に該当する前記吐出領域の範囲が前記正走査動作の前記減速領域に該当する前記吐出領域の範囲よりも狭いと判断された場合、前記記録手段は、前記正走査動作を実行せず、前記部分画像データに基づいて前記逆走査動作を実行することを特徴とする、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各走査動作におけるヘッドの減速距離が加速距離よりも長い液体吐出装置、その制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(図4(a))には、キャリッジの速度がゼロからV1になるまでのキャリッジの移動距離がキャリッジの速度がV1からゼロになるまでのキャリッジの移動距離よりも短いこと(即ち、ヘッドの減速距離が加速距離よりも長いこと)が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-199255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘッドの加減速中に画像を形成する場合、当該加減速中に形成された画像と、ヘッドの定速中に形成された画像とで、品質にばらつきが生じ、画像全体としての品質が悪化し得る。
【0005】
本発明の目的は、各走査動作におけるヘッドの減速距離が加速距離よりも長い場合において、ヘッドの加減速中に画像を形成することに起因する画像品質の悪化を抑制できる液体吐出装置、その制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液体吐出装置は、複数のノズルを有するヘッドと、前記ヘッドを正走査方向及び前記正走査方向とは逆方向の逆走査方向からなる走査方向に移動させる走査機構と、前記ヘッドに対して前記走査方向と交差する搬送方向に相対的に記録媒体を搬送する搬送機構と、制御部と、を備え、前記制御部は、画像データに基づいて記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる記録処理であって、前記搬送機構により記録媒体を前記搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、前記走査機構により前記ヘッドを前記走査方向に移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる走査動作とを含む、記録処理を実行し、前記走査動作は、前記正走査方向に前記ヘッドを移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる正走査動作と、前記逆走査方向に前記ヘッドを移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる逆走査動作とを含み、かつ、前記正走査動作及び前記逆走査動作のそれぞれにおいて前記ヘッドの減速距離が加速距離よりも長く、前記制御部は、さらに、前記正走査動作の前に、前記正走査動作における前記減速距離に対応する減速領域の少なくとも一部が、前記正走査動作において前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出領域に該当するか否かを判断する、第1判断処理を実行し、前記第1判断処理において前記正走査動作で前記減速領域の少なくとも一部が前記吐出領域に該当すると判断された場合、前記正走査動作を実行せず、前記画像データのうち前記正走査動作に対応する部分画像データに基づいて前記逆走査動作を実行することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る制御方法は、複数のノズルを有するヘッドと、前記ヘッドを正走査方向及び前記正走査方向とは逆方向の逆走査方向からなる走査方向に移動させる走査機構と、前記ヘッドに対して前記走査方向と交差する搬送方向に相対的に記録媒体を搬送する搬送機構と、を備えた液体吐出装置を制御する制御方法であって、画像データに基づいて記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる記録処理であって、前記搬送機構により記録媒体を前記搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、前記走査機構により前記ヘッドを前記走査方向に移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる走査動作とを含む、記録処理を実行し、前記走査動作は、前記正走査方向に前記ヘッドを移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる正走査動作と、前記逆走査方向に前記ヘッドを移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる逆走査動作とを含み、かつ、前記正走査動作及び前記逆走査動作のそれぞれにおいて前記ヘッドの減速距離が加速距離よりも長く、さらに、前記正走査動作の前に、前記正走査動作における前記減速距離に対応する減速領域の少なくとも一部が、前記正走査動作において前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出領域に該当するか否かを判断する、第1判断処理を実行し、前記第1判断処理において前記正走査動作で前記減速領域の少なくとも一部が前記吐出領域に該当すると判断された場合、前記正走査動作を実行せず、前記画像データのうち前記正走査動作に対応する部分画像データに基づいて前記逆走査動作を実行することを特徴とする。
【0008】
本発明に係るプログラムは、複数のノズルを有するヘッドと、前記ヘッドを正走査方向及び前記正走査方向とは逆方向の逆走査方向からなる走査方向に移動させる走査機構と、前記ヘッドに対して前記走査方向と直交する搬送方向に相対的に記録媒体を搬送する搬送機構と、を備えた液体吐出装置を、画像データに基づいて記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる記録手段であって、前記搬送機構により記録媒体を前記搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、前記走査機構により前記ヘッドを前記走査方向に移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる走査動作とを実行する、記録手段として機能させ、前記走査動作は、前記正走査方向に前記ヘッドを移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる正走査動作と、前記逆走査方向に前記ヘッドを移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる逆走査動作とを含み、かつ、前記正走査動作及び前記逆走査動作のそれぞれにおいて前記ヘッドの減速距離が加速距離よりも長く、さらに、前記正走査動作の前に、前記正走査動作における前記減速距離に対応する減速領域の少なくとも一部が、前記正走査動作において前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出領域に該当するか否かを判断する、第1判断手段として機能させ、前記第1判断手段により前記正走査動作で前記減速領域の少なくとも一部が前記吐出領域に該当すると判断された場合、前記正走査動作を実行せず、前記画像データのうち前記正走査動作に対応する部分画像データに基づいて前記逆走査動作を実行する手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各走査動作におけるヘッドの減速距離が加速距離よりも長い場合において、ヘッドの加減速中に画像を形成することに起因する画像品質の悪化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係るプリンタの全体構成を示す平面図である。
図2図1に示されているヘッドの断面図である。
図3図1のプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
図4】ヘッドの加速距離及び減速距離を示すグラフである。
図5図1のプリンタのCPUが実行するプログラムを示すフロー図である。
図6図5のS8~S10を説明するための模式図である。
図7図5のS8を説明するための模式図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るプリンタのCPUが実行するプログラムを示すフロー図である。
図9図8のS20,S21を説明するための模式図である。
図10】本発明の第3実施形態に係るプリンタのCPUが実行するプログラムを示すフロー図である。
図11】本発明の第4実施形態に係るプリンタのCPUが実行するプログラムを示すフロー図である。
図12】本発明の第5実施形態に係るプリンタのCPUが実行するプログラムを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
先ず、図1図4を参照し、本発明の第1実施形態に係るプリンタ100の全体構成、及び、プリンタ100の各部の構成について説明する。
【0012】
プリンタ100は、図1に示すように、下面に複数のノズルNが形成されたヘッド10と、ヘッド10を保持するキャリッジ20と、キャリッジ20及びヘッド10を走査方向(鉛直方向と直交する方向)に移動させる走査機構30と、用紙1(記録媒体)を下方から支持するプラテン40と、用紙1を搬送方向(走査方向及び鉛直方向と直交する方向)に搬送する搬送機構50と、プラテン40に対して走査方向の一方に配置されたフラッシング受容部材60と、プラテン40に対して走査方向の他方に配置されたキャップ70と、制御装置90とを備えている。
【0013】
ノズルNは、走査方向に並ぶ4つのノズル列Nc,Nm,Ny,Nkを構成している。各ノズル列Nc,Nm,Ny,Nkは、搬送方向に並ぶ複数のノズルNで構成されている。ノズル列Ncを構成するノズルNはシアンのインク、ノズル列Nmを構成するノズルNはマゼンタのインク、ノズル列Nyを構成するノズルNはイエローのインク、ノズル列Nkを構成するノズルNはブラックのインクを、それぞれ吐出する。
【0014】
走査機構30は、キャリッジ20を支持する一対のガイド31,32と、キャリッジ20に連結されたベルト33とを含む。ガイド31,32及びベルト33は、走査方向に延びている。制御装置90の制御によりキャリッジモータ30m(図3参照)が駆動されると、ベルト33が走行し、ガイド31,32に沿ってキャリッジ20及びヘッド10が走査方向に移動する。
【0015】
走査方向は、図1において左方に向かう正走査方向D1と、図1において右方に向かう逆走査方向D2(正走査方向D1とは逆の方向)とからなる。走査機構30は、正走査方向D1及び逆走査方向D2の双方向に、キャリッジ20及びヘッド10を移動させることができる。
【0016】
プラテン40は、ヘッド10の下方に配置されている。プラテン40の上面に、用紙1が支持される。
【0017】
搬送機構50は、2つのローラ対51,52を有する。搬送方向においてローラ対51とローラ対52との間に、ヘッド10及びプラテン40が配置されている。制御装置90の制御により搬送モータ50m(図3参照)が駆動されると、ローラ対51,52が用紙1を挟持した状態で回転し、用紙1が搬送方向に搬送される。このように、搬送機構50はヘッド10に対して相対的に用紙1を搬送する。
【0018】
フラッシング受容部材60は、搬送方向においてガイド31,32の間に配置されており、その表面にフラッシング領域60rを有する。フラッシング領域60rは、搬送機構50による用紙1の搬送領域外にあり、搬送領域と走査方向に隣接する位置にある。フラッシング領域60rに向けて、後述するフラッシング処理が行われる。
【0019】
キャップ70は、上面が開口した箱状の部材であり、キャップ昇降モータ70m(図3参照)の駆動により鉛直方向に移動可能である。ヘッド10がキャップ70の上方に位置するときに、制御装置90の制御によりキャップ昇降モータ70mが駆動され、キャップ70が上方に移動されることで、キャップ70がヘッド10の下面に接触し、キャップ70とヘッド10との間に密閉空間が形成される。このとき、ヘッド10に形成された全てのノズルNがキャップ70で覆われる。このときのキャップ70の状態をキャッピング状態という。一方、キャップ70がヘッド10から離隔してノズルNを覆わない状態(キャップ70とヘッド10との間に密閉空間が形成されない状態)をアンキャッピング状態という。
【0020】
キャップ70は、チューブ及び吸引ポンプ70pを介して、廃インクタンク77と連通している。キャップ70がキャッピング状態にあるときに、制御装置90の制御により吸引ポンプ70pが駆動されると、キャップ70とヘッド10との間の密閉空間が減圧され、ノズルNからインクが強制的に排出される。排出されたインクは、キャップ70に受容され、廃インクタンク77へと流れる。
【0021】
ヘッド10は、図2に示すように、流路ユニット12と、アクチュエータユニット13とを含む。
【0022】
流路ユニット12の下面に、複数のノズルN(図1参照)が形成されている。流路ユニット12の内部には、インクタンク(図示略)に連通する共通流路12aと、ノズルN毎に個別の個別流路12bとが形成されている。個別流路12bは、共通流路12aの出口から圧力室12pを経てノズルNに至る流路である。流路ユニット12の上面には、複数の圧力室12pが開口している。
【0023】
アクチュエータユニット13は、流路ユニット12の上面に複数の圧力室12pを覆うように配置された金属製の振動板13aと、振動板13aの上面に配置された圧電層13bと、圧電層13bの上面に複数の圧力室12pのそれぞれと対向するように配置された複数の個別電極13cとを含む。
【0024】
振動板13a及び複数の個別電極13cは、ドライバIC14と電気的に接続されている。ドライバIC14は、振動板13aの電位をグランド電位に維持する一方、個別電極13cの電位をグランド電位と駆動電位との間で変化させる。具体的には、ドライバIC14は、制御装置90からの制御信号(波形信号FIRE及び選択信号SIN)に基づいて駆動信号を生成し、信号線14sを介して駆動信号を個別電極13cに供給する。これにより、個別電極13cの電位が駆動電位とグランド電位との間で変化する。このとき、振動板13a及び圧電層13bにおいて個別電極13cと圧力室12pとで挟まれた部分(アクチュエータ13x)が変形することにより、圧力室12pの容積が変化し、圧力室12p内のインクに圧力が付与され、ノズルNからインクが吐出される。アクチュエータ13xは、個別電極13c毎(即ち、ノズルN毎)に設けられており、当該個別電極13cに供給される電位に応じて独立して変形可能である。
【0025】
制御装置90は、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)91と、ROM(Read Only Memory)92と、RAM(Random Access Memory)93と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)94とを含む。このうち、CPU91及びASIC94が本発明の「制御部」に該当し、ROM92が本発明の「記憶部」に該当する。
【0026】
ROM92には、CPU91やASIC94が各種制御を行うためのプログラムやデータが格納されている。RAM93は、CPU91やASIC94がプログラムを実行する際に用いるデータ(画像データ等)を一時的に記憶する。制御装置90は、外部装置(パーソナルコンピュータ等)150と通信可能に接続されており、当該外部装置150やプリンタ100の入力部(プリンタ100の筐体の外面に設けられたスイッチやボタン)から入力されたデータに基づいて、CPU91やASIC94により記録処理等を実行する。
【0027】
記録処理において、ASIC94は、CPU91からの指令にしたがい、外部装置150等から受信した記録指令(画像データを含む。)に基づいて、ドライバIC14、キャリッジモータ30m及び搬送モータ50mを駆動させ、搬送機構50によって用紙1を搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、走査機構30によってヘッド10を走査方向に移動させながらノズルNからインクを吐出させる走査動作とを、交互に行わせる。これにより、用紙1上に、インクのドットが形成され、画像が記録される。
【0028】
走査動作は、正走査方向D1(図1参照)にヘッド10を移動させながらノズルNからインクを吐出させる「正走査動作」と、逆走査方向D2にヘッド10を移動させながらノズルNからインクを吐出させる「逆走査動作」とを含む。正走査動作において、ヘッド10は、キャップ70と鉛直方向に重なる位置を始点として移動を開始し、フラッシング受容部材60と鉛直方向に重なる位置を終点として移動を終了する。逆走査動作において、ヘッド10は、フラッシング受容部材60と鉛直方向に重なる位置を始点として移動を開始し、キャップ70と鉛直方向に重なる位置を終点として移動を終了する。
【0029】
正走査動作及び逆走査動作のそれぞれにおいて、図4に示すように、ヘッド10の速度がゼロから目標速度Vtになるまでのヘッド10の移動距離(加速距離La)は、ヘッド10の速度が目標速度Vtからゼロになるまでのヘッド10の移動距離(減速距離Lb)よりも短い。換言すると、正走査動作及び逆走査動作のそれぞれにおいて、ヘッド10の減速距離Lbは加速距離Laよりも長い。ヘッド10を急に減速させると、停止予定位置を行き過ぎてしまったり、停止予定位置の手前で止まってしまったりする問題が生じ得る。ヘッド10の減速を緩やかにする(即ち、減速距離Lbを比較的長くする)ことで、当該問題を抑制できる。
【0030】
ヘッド10の速度は、始点及び終点においてゼロである。ヘッド10の速度は、ヘッド10が始点から加速距離Laを移動するまでの間に、ゼロから目標速度Vtに上昇し、ヘッド10が加速距離Laを移動した後、減速が開始されるまでの間、目標速度Vtに維持される。そしてヘッド10の速度は、減速が開始されてからヘッド10が減速距離Lbを移動して終点に至るまでの間に、目標速度Vtからゼロに下降する。
【0031】
CPU91は、記録処理において、正走査動作と逆走査動作とを行わせる。各走査動作が正走査動作及び逆走査動作のいずれであるかは、例えば、ROM92に記憶された評価テーブル(走査方向D1,D2によるインクの重なり順の違いに起因する色の相違を抑制するためのテーブルであって、画素値(RGB値:0~255の階調値)の組と重み値とが対応付けられたテーブル)に基づいて決定される。
【0032】
ASIC94は、図3に示すように、出力回路94a及び転送回路94bを含む。
【0033】
出力回路94aは、波形信号FIRE及び選択信号SINを生成し、これら信号を記録周期毎に転送回路94bに出力する。記録周期は、用紙1上に形成される画像の解像度に対応する単位距離だけ用紙1がヘッド10に対して相対移動するのに要する時間であり、1画素に対応する。
【0034】
波形信号FIREは、4つの波形データを直列化したシリアル信号である。4つの波形データは、それぞれ1記録周期におけるノズルNから吐出されるインクの液滴量が「ゼロ(吐出なし)」「小」「中」「大」に対応するものであり、パルス数が互いに異なる。
【0035】
選択信号SINは、上記4つの波形データの中から1つを選択するための選択データを含むシリアル信号であり、記録指令に含まれる画像データに基づいて、アクチュエータ13x毎、かつ、記録周期毎に生成される。
【0036】
転送回路94bは、出力回路94aから受信した波形信号FIRE及び選択信号SINをドライバIC14に転送する。転送回路94bは、上記各信号に対応するLVDS(Low Voltage Differential Signaling)ドライバを内蔵しており、各信号をパルス状の差動信号としてドライバIC14に転送する。
【0037】
ASIC94は、記録処理において、ドライバIC14を制御し、画素毎に、波形信号FIRE及び選択信号SINに基づいて駆動信号を生成させ、信号線14sを介して駆動信号を個別電極13cに供給させる。これにより、ASIC94は、画素毎に、複数のノズルNのそれぞれから、4種類の液滴量(ゼロ、小、中、大)の中から選択された液滴量のインクを用紙に向けて吐出させる。
【0038】
次いで、図5図7を参照し、CPU91が実行するプログラムについて説明する。
【0039】
当該プログラムの開始時点において、ヘッド10はキャップ70の上方に位置し(図1参照)、キャップ70はキャッピング状態にある。このとき、ヘッド10に形成された全てのノズルNがキャップ70で覆われている。
【0040】
CPU91は、先ず、図5に示すように、外部装置150等から記録指令を受信したか否かを判断する(S1)。記録指令を受信していない場合(S1:NO)、CPU91は、S1の処理を繰り返す。
【0041】
記録指令を受信した場合(S1:YES)、CPU91は、キャップ昇降モータ70mを駆動させ、キャップ70を下方に移動させることで、キャップをキャッピング状態からアンキャッピング状態に移行させる(S2:アンキャップ処理)。
【0042】
S2の後、CPU91は、キャリッジモータ30mを駆動させ、走査機構30によりヘッド10をフラッシング受容部材60に向けて走査方向に移動させる(図1参照)。そしてCPU91は、ヘッド10の移動中に、ノズル列Nc,Nm,Ny,Nk毎に、当該ノズル列がフラッシング受容部材60の上方に位置するタイミングで、画像データとは異なるフラッシングデータに基づいて、ドライバIC14の駆動によりアクチュエータ13xを変形させ、当該ノズル列に属するノズルNからインクを吐出させる(S3:フラッシング処理)。吐出されたインクは、フラッシング領域60rに受容され、廃インクタンク77へと流れる。
【0043】
S3の後、CPU91は、S1で受信した記録指令が示す記録モードが高画質モードであるか否かを判断する(S4)。本実施形態において、記録モードは、高画質モードと、通常画質モードとを含む。高画質モードと通常画質モードとでは、目標速度Vt(図4参照)が互いに異なる。通常画質モードにおける目標速度Vt(第2速度Vt2)は、高画質モードにおける目標速度Vt(第1速度Vt1)よりも高い。
【0044】
記録モードが高画質モードである場合(S4:YES)、CPU91は、減速距離Lbを第1減速距離Lb1とする(S5)。記録モードが高画質モードでない(即ち、通常画質モードである)場合(S4:NO)、CPU91は、減速距離Lbを第2減速距離Lb2(>Lb1)とする(S6)。減速距離Lb1,Lb2は、ROM92に記憶されている。S5,S6において、CPU91は、当該減速距離Lb1,Lb2をROM92から読み出し、RAM93に記憶させる。
【0045】
S5又はS6の後、CPU91は、n=1とする(S7)。
【0046】
S7の後、CPU91は、図6に示すように、第n走査動作における減速距離Lb(S5,S6でRAM93に記憶された第1減速距離Lb1又は第2減速距離Lb2)に対応する減速領域Rbの少なくとも一部が、第n走査動作においてノズルNからインクを吐出させる吐出領域Rに該当するか否かを判断する(S8:第1判断処理)。減速領域Rbは、ヘッド10の速度が目標速度Vtからゼロになるまで、ヘッド10が減速距離Lbを移動する間に、ヘッド10と鉛直方向に重なる領域である。加速領域Raは、ヘッド10の速度がゼロから目標速度Vtになるまで、ヘッド10が加速距離Laを移動する間に、ヘッド10と鉛直方向に重なる領域である。
【0047】
S8において、CPU91は、図7に示すように、ヘッド10の停止予定位置が停止限界位置を超える(即ち、停止予定位置が停止限界位置に対して第n走査動作における走査方向の下流側に位置する)場合、減速領域Rbの少なくとも一部が吐出領域Rに該当する(S8:YES)と判断する(図6参照)。一方、ヘッド10の停止予定位置が停止限界位置を超えない(即ち、停止予定位置が停止限界位置に対して第n走査動作における走査方向の上流側に位置するか、或いは、停止予定位置が停止限界位置と走査方向において同じ位置にある)場合、減速領域Rbが吐出領域Rに該当しない(S8:NO)と判断する。
【0048】
停止予定位置は、吐出領域Rにおける第n走査動作の走査方向(正走査方向D1又は逆走査方向D2)の端部Rxから、当該走査方向(正走査方向D1又は逆走査方向D2)に減速距離Lbと、距離α(停止精度を考慮した値)と、距離Lnとを移動した位置である。距離Lnは、ヘッド10の当該走査方向(正走査方向D1又は逆走査方向D2)の端部10xから、ノズル列Nc,Nm,Ny,Nkにおける第n走査動作でインクを吐出させるノズル列のうち、当該走査方向とは逆の走査方向の端部に位置するノズル列までの、走査方向の距離である。
【0049】
停止限界位置は、プリンタ100の筐体や筐体内の部材(キャップ70、フラッシング受容部材60等)とヘッド10との衝突が生じない限界の位置であり、第1停止限界位置及び第2停止限界位置を含む(図9参照)。第1停止限界位置及び第2停止限界位置は、走査方向に用紙1を挟む。第1停止限界位置は、正走査動作に対する停止限界位置であり、用紙1の走査方向の一端1xとの走査方向の間隔X1が用紙1の走査方向の他端1yとの走査方向の間隔よりも小さい。第2停止限界位置は、逆走査動作に対する停止限界位置であり、他端1yとの走査方向の間隔X2が一端1xとの走査方向の間隔よりも小さい。S8において、第n走査動作が正走査動作である場合は第1停止限界位置が用いられ、第n走査動作が逆走査動作である場合は第2停止限界位置が用いられる。
【0050】
図7は、第n走査動作が正走査動作であり、第n走査動作においてノズル列Nkのみからインクを吐出させる場合の例を示す。一方、例えば、第n走査動作において全ノズル列Nc,Nm,Ny,Nkからインクを吐出させる場合、距離Lnは、端部10xからノズル列Ncまでの走査方向の距離である。
【0051】
減速領域Rbの少なくとも一部が吐出領域Rに該当する場合(S8:YES)、CPU91は、ノズルNからインクを吐出させることなく、当初予定されていた第n走査動作の走査方向(図7の例では正走査方向D1)にヘッド10を移動させる(S9)。
【0052】
S9の後、又は、減速領域Rbが吐出領域Rに該当しない場合(S8:NO)、CPU91は、記録指令に含まれる画像データのうち第n走査動作に対応する部分画像データに基づいて、第n走査動作を実行する(S10)。
【0053】
減速領域Rbが吐出領域Rに該当しない場合(S8:NO)に実行されるS10では、当初予定されていた走査動作(正走査動作又は逆走査動作)が実行される。
【0054】
S9の後に実行されるS10では、当初予定されていた走査動作とは逆方向の走査動作(正走査動作が当初予定されていた場合は逆走査動作、逆走査動作が当初予定されていた場合は正走査動作)が実行される。
【0055】
例えば、図6に示すように、第n走査動作として正走査動作が当初予定されていた場合に、減速領域Rbの少なくとも一部が吐出領域Rに該当するとき(S8:YES)、CPU91は、第n走査動作として正走査動作を実行せず(即ち、ノズルNからインクを吐出させることなく正走査方向D1にヘッド10を移動させ(S9)、S9の後)、第n走査動作として逆走査動作を実行する(S10)。図6の例では、第n走査動作として逆走査動作を実行する場合、加速領域Ra及び減速領域Rbのいずれも吐出領域Rに該当しない(即ち、ヘッド10の加減速中に画像が形成されず、ヘッド10の定速中に画像が形成される)。
【0056】
第n走査動作として正走査動作が当初予定されていた場合に、減速領域Rbが吐出領域Rに該当しないとき(S8:NO)、CPU91は、第n走査動作として正走査動作を実行する(S10)。
【0057】
S10において、CPU91は、画像データ(画像の色に対応したRGB(レッド、グリーン、ブルー)のデータ)を吐出データ(インクの色に対応したCMYKのデータ)に変換する。吐出データは、1記録周期毎に各ノズルNから吐出されるべきインクの液滴量(「ゼロ(吐出なし)」「小」「中」「大」のいずれか)を示す。S9の後に実行されるS10では、当初予定されていた走査動作とは逆方向の走査動作が実行されるため、当初予定されていた吐出データとは吐出データの並び順が逆になる。
【0058】
S10の後、CPU91は、S1で受信した記録指令に基づく記録処理が完了したか否かを判断する(S11)。CPU91は、n=N(N:画像データに基づいて決定される走査動作の数)の場合、記録処理が完了した(S11:YES)と判断する。
【0059】
記録処理が完了していない場合(S11:NO)、CPU91は、n=n+1とする(S12)。S12の後、CPU91は、処理をS8に戻す。
【0060】
記録処理が完了した場合(S11:YES)、CPU91は、走査機構30によりヘッド10をキャップ70に向けて走査方向に移動させ、ヘッド10がキャップ70の上方に配置されたときにヘッド10を停止させる。ヘッド10の停止後、CPU91は、キャップ昇降モータ70mを駆動させ、キャップ70を上方に移動させることで、キャップ70をアンキャッピング状態からキャッピング状態に移行させる(S13:キャップ処理)。
【0061】
S13の後、CPU91は、当該プログラムを終了する。
【0062】
以上に述べたように、本実施形態によれば、正走査動作及び逆走査動作のそれぞれにおいて、ヘッド10の減速距離Lbが加速距離Laよりも長い(図4参照)。CPU91は、第n走査動作(図6の例では正走査動作)において減速領域Rbの少なくとも一部が吐出領域Rに該当すると判断された場合(S8:YES)、当初予定されていた第n走査動作(図6の例では正走査動作)を実行せず、当初予定されていた走査動作とは逆方向の走査動作(図6の例では逆走査動作)を実行する。各走査動作において減速距離Lbが加速距離Laよりも長いため、減速領域Rbの少なくとも一部が吐出領域Rに該当するか否かを判断し、減速領域Rbの少なくとも一部が吐出領域Rに該当すると判断された場合に、逆方向の走査動作を実行することで、ヘッド10の加減速中に画像を形成せず、ヘッド10の定速中に画像を形成できる。したがって、本実施形態によれば、各走査動作における減速距離Lbが加速距離Laよりも長い場合において、ヘッド10の加減速中に画像を形成することに起因する画像品質の悪化を抑制できる。
【0063】
特に、高速記録の実現のため、各走査動作における目標速度Vtを上げると、加速距離Laや減速距離Lbが長くなり、ヘッド10の加減速中に画像を形成する可能性が高まり、画像品質悪化の問題が顕著化する。本実施形態によれば、当該問題を抑制し、高速記録を実現できる。
【0064】
CPU91は、記録モードが高画質モードである場合(即ち、目標速度Vtが第1速度である場合)は第1減速距離Lb1に基づいてS8を実行し、記録モードが通常画質モードである場合(即ち、目標速度Vtが第2速度Vt2(>第1速度Vt1)である場合)は第2減速距離Lb2(>第1減速距離Lb1)に基づいてS8を実行する。この場合、目標速度Vtに応じた減速距離Lbを用いることで、S8の判断をより実効的に実現できる。
【0065】
CPU91は、少なくとも吐出領域Rにおける第n走査動作の走査方向(図7の例では正走査方向D1)の端部Rxと減速距離Lbとに基づいて導出される停止予定位置が、停止限界位置を超える場合に、第n走査動作(図6の例では正走査動作)において減速領域Rbの少なくとも一部が吐出領域Rに該当する(S8:YES)と判断する。この場合、S8の判断をより実効的に実現できる。
【0066】
CPU91は、上記端部Rxと、減速距離Lbと、距離Ln(ヘッド10の当該走査方向(正走査方向D1又は逆走査方向D2)の端部10xから、ノズル列Nc,Nm,Ny,Nkにおける第n走査動作でインクを吐出させるノズル列のうち、当該走査方向とは逆の走査方向の端部に位置するノズル列までの、走査方向の距離)とに基づいて、停止予定位置を導出する。この場合、記録に使用されるノズル列を考慮することで、S8の判断をより実効的に実行できる。
【0067】
CPU91は、第n走査動作において減速領域Rbが吐出領域Rに該当しないと判断された場合(S8:NO)、当初予定されていた第n走査動作(図6の例では正走査動作)を実行する。この場合、S9に係る時間を短縮でき、高速記録を実現できる。
【0068】
<第2実施形態>
続いて、図8及び図9を参照し、本発明の第2実施形態に係るプリンタについて説明する。第2実施形態に係るプリンタは、以下に述べる点を除き、第1実施形態に係るプリンタと同様の構成を有する。
【0069】
第2実施形態では、図9に示すように、第1停止限界位置と用紙1の一端1xとの走査方向の間隔X1が、第2停止限界位置と用紙1の他端1yとの走査方向の間隔X2よりも小さい。
【0070】
また、第2実施形態では、図8に示すように、CPU91が、S3の後かつS4の前に、縁無し記録を行うか否かを判断する(S20:第2判断処理)。縁無し記録は、用紙1の走査方向の縁を含む領域にノズルNからインクを吐出させる記録をいう。これに対し、縁有り記録は、用紙1の走査方向の縁を含む領域にノズルNからインクを吐出させない記録をいう。縁無し記録では用紙1の縁に余白が設けられず、縁有り記録では用紙1の縁に余白が設けられる。
【0071】
縁無し記録を行わない(即ち、縁有り記録を行う)場合(S20:NO)、CPU91は、処理をS4に進める。
【0072】
縁無し記録を行う場合(S20:YES)、CPU91は、処理をS4に進めず、各走査動作が逆走査動作(正走査動作及び逆走査動作のうち、一端1xから他端1yに向けてヘッド10を移動させる動作)となるように、記録処理を実行する(S21)。S21の後、CPU91は、処理をS13に進める。
【0073】
以上に述べたように、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の構成に基づく同様の効果に加え、以下の効果が得られる。
【0074】
CPU91は、縁無し記録を行う場合に(S20:YES)、間隔X1,X2が小さい側から大きい側に向けて走査動作を行う(S21)。つまり、間隔X1,X2が小さい側を加速領域Raとし、間隔X1,X2が大きい側を減速領域Rbとする。これにより、加速領域Ra及び減速領域Rbの大小関係と間隔X1,X2の大小関係とが対応することとなり、ヘッド10の加減速中に画像を形成せず、ヘッド10の定速中に画像を形成できる。即ち、縁無し記録を行う場合において、画像品質の悪化を抑制できる。
【0075】
<第3実施形態>
続いて、図10を参照し、本発明の第3実施形態に係るプリンタについて説明する。第3実施形態に係るプリンタは、以下に述べる点を除き、第1実施形態に係るプリンタと同様の構成を有する。
【0076】
第3実施形態において、CPU91は、減速領域Rbの少なくとも一部が吐出領域Rに該当する場合(S8:YES)、S9の前に、カラーバンディングが発生するか否かを判断する(S30)。カラーバンディングとは、走査方向D1,D2によるインクの重なり順の違いに起因する色の相違である。具体的には、S30において、CPU91は、ROM92に記憶された評価テーブル(走査方向D1,D2によるインクの重なり順の違いに起因する色の相違を抑制するためのテーブルであって、画素値(RGB値:0~255の階調値)の組と重み値とが対応付けられたテーブル)に基づいて、第n-1走査動作により形成される画像と、逆方向の走査動作(S10)とにより形成される画像とが、カラーバンディングを発生させるものであるか否かを判断する。換言すると、S30において、CPU91は、第n-1走査動作(第n走査動作の前に実行される走査動作)と逆方向の走査動作(S10)とにより形成される画像が、所定の品質以下となるかを判断する(第判断処理)。
【0077】
カラーバンディングが発生する場合(即ち、第n-1走査動作と逆方向の走査動作(S10)とにより形成される画像が所定の品質以下となる場合)(S30:YES)、CPU91は、処理をS10に進め、当初予定されていた走査動作(正走査動作又は逆走査動作)を実行する。
【0078】
カラーバンディングが発生しない場合(即ち、第n-1走査動作と逆方向の走査動作(S10)とにより形成される画像が所定の品質以下とならない場合)(S30:NO)、CPU91は、処理をS9に進め、当初予定されていた走査動作を実行せずに、当初予定されていた走査動作とは逆方向の走査動作(正走査動作が当初予定されていた場合は逆走査動作、逆走査動作が当初予定されていた場合は正走査動作)を実行する(S10)。
【0079】
以上に述べたように、第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の構成に基づく同様の効果に加え、以下の効果が得られる。
【0080】
CPU91は、減速領域Rbの少なくとも一部が吐出領域Rに該当すると判断された場合(S8:YES)であっても、走査方向D1,D2による画像の品質の悪化の程度が、加減速中の記録による画像の品質の悪化の程度よりも大きい場合(S30:YES)は、当初予定されていた走査動作(正走査動作又は逆走査動作)を実行する。これにより、画像品質の悪化をより確実に抑制できる。
【0081】
<第4実施形態>
続いて、図11を参照し、本発明の第4実施形態に係るプリンタについて説明する。第4実施形態に係るプリンタは、以下に述べる点を除き、第3実施形態(図10参照)に係るプリンタと同様の構成を有する。
【0082】
第3実施形態(図10参照)において、CPU91は、減速領域Rbの少なくとも一部が吐出領域Rに該当する場合(S8:YES)、S9の前に、カラーバンディングが発生するか否かを判断する(S30)。これに対し、第4実施形態(図11参照)において、CPU91は、S7の後、S8の前に、カラーバンディングが発生するか否かを判断する(S30)。
【0083】
カラーバンディングが発生する場合(即ち、第n-1走査動作と逆方向の走査動作(S10)とにより形成される画像が所定の品質以下となる場合)(S30:YES)、CPU91は、処理をS10に進め、当初予定されていた走査動作(正走査動作又は逆走査動作)を実行する。
【0084】
カラーバンディングが発生しない場合(即ち、第n-1走査動作と逆方向の走査動作(S10)とにより形成される画像が所定の品質以下とならない場合)(S30:NO)、CPU91は、処理をS8に進め、減速領域Rbの少なくとも一部が吐出領域Rに該当するか否かを判断する。
【0085】
以上に述べたように、第4実施形態によれば、第1実施形態と同様の構成に基づく同様の効果に加え、以下の効果が得られる。
【0086】
CPU91は、走査方向D1,D2による画像の品質の悪化の程度が、加減速中の記録による画像の品質の悪化の程度よりも大きい場合(S30:YES)は、S8を実行せずに、当初予定されていた走査動作(正走査動作又は逆走査動作)を実行する。これにより、簡素な処理で、画像品質の悪化をより確実に抑制できる。
【0087】
<第5実施形態>
続いて、図12を参照し、本発明の第5実施形態に係るプリンタについて説明する。第5実施形態に係るプリンタは、以下に述べる点を除き、第1実施形態に係るプリンタと同様の構成を有する。
【0088】
第5実施形態において、CPU91は、減速領域Rbの少なくとも一部が吐出領域Rに該当する場合(S8:YES)、S9の前に、部分画像データ(記録指令に含まれる画像データのうち第n走査動作に対応するデータ)に基づく逆方向の走査動作(当初予定されていた走査動作とは逆方向の走査動作:正走査動作が当初予定されていた場合は逆走査動作、逆走査動作が当初予定されていた場合は正走査動作)において、加速領域Raの少なくとも一部が吐出領域Rに該当するか否かを判断する(S50:第判断処理)。
【0089】
逆方向の走査動作において加速領域Raが吐出領域Rに該当しない場合(S50:NO)、CPU91は、処理をS9に進め、当初予定されていた走査動作を実行せずに、当初予定されていた走査動作とは逆方向の走査動作(正走査動作が当初予定されていた場合は逆走査動作、逆走査動作が当初予定されていた場合は正走査動作)を実行する(S10)。
【0090】
逆方向の走査動作において加速領域Raの少なくとも一部が吐出領域Rに該当する場合(S50:YES)、CPU91は、当該逆方向の走査動作における加速領域Raに該当する吐出領域Rの範囲(吐出領域Rのうち加速領域Raと重なる範囲)が、当初予定されていた第n走査動作における減速領域Rbに該当する吐出領域Rの範囲(吐出領域Rのうち減速領域Rbと重なる範囲)よりも狭いか否かを判断する(S51:第判断処理)。
【0091】
逆方向の走査動作における加速領域Raに該当する吐出領域Rの範囲が、当初予定されていた第n走査動作における減速領域Rbに該当する吐出領域Rの範囲よりも狭くない場合(S51:NO)、CPU91は、処理をS10に進め、当初予定されていた走査動作(正走査動作又は逆走査動作)を実行する。
【0092】
逆方向の走査動作における加速領域Raに該当する吐出領域Rの範囲が、当初予定されていた第n走査動作における減速領域Rbに該当する吐出領域Rの範囲よりも狭い場合(S51:YES)、CPU91は、処理をS9に進め、当初予定されていた走査動作を実行せずに、当初予定されていた走査動作とは逆方向の走査動作(正走査動作が当初予定されていた場合は逆走査動作、逆走査動作が当初予定されていた場合は正走査動作)を実行する(S10)。
【0093】
以上に述べたように、第5実施形態によれば、第1実施形態と同様の構成に基づく同様の効果に加え、以下の効果が得られる。
【0094】
CPU91は、減速領域Rbの少なくとも一部が吐出領域Rに該当すると判断された場合(S8:YES)、逆方向の走査動作において加速領域Raが吐出領域Rに該当するか否かを判断する(S50)。そして、ヘッド10の加減速中に形成される画像の範囲が狭い側で走査動作を行う。具体的には、逆方向の走査動作における加速領域Raに該当する吐出領域Rの範囲が、当初予定されていた第n走査動作における減速領域Rbに該当する吐出領域Rの範囲よりも狭い場合は(S51:YES)、ヘッド10の加減速中に形成される画像の範囲が狭い側である、逆方向の走査動作を行う(S9,S10)。逆方向の走査動作における加速領域Raに該当する吐出領域Rの範囲が、当初予定されていた第n走査動作における減速領域Rbに該当する吐出領域Rの範囲よりも狭くない場合は(S51:NO)、ヘッド10の加減速中に形成される画像の範囲が狭い側である、当初予定されていた走査動作を行う(S10)。これにより、画像品質の悪化をより確実に抑制できる。
【0095】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0096】
上述の実施形態では、記録モードとして高画質モード及び通常画質モードを例示したが、これに限定されない。例えば、記録モードは、普通紙モード、光沢紙モード等を含んでもよい。
【0097】
制御部は、目標速度に応じた減速距離に基づいて第1判断処理を実行することに限定されず、目標速度によらず一定の減速距離に基づいて第1判断処理を実行してもよい。
【0098】
停止予定位置は、上述の実施形態では記録で使用されるノズル列(図7の距離Ln)や距離α(停止精度を考慮した値)を考慮して導出されるが、少なくとも吐出領域の正走査方向の端部と減速距離とに基づいて導出されればよい。
【0099】
制御部は、停止予定位置が停止限界位置を超える場合に、減速領域の少なくとも一部が吐出領域に該当すると判断することに限定されない。即ち、第1判断処理における判断手法は、特に限定されず、任意である。
【0100】
上述の実施形態のヘッドは、互いに異なる種類の液体(色が異なるインク)を吐出するノズルを備えているが、これに限定されない。例えば、ヘッドは、同一種類の液体(例えば、色が同じインクのみ)を吐出するノズルを備えてもよい。
【0101】
ノズルから吐出される液体は、インクに限定されず、インク以外の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってもよい。
【0102】
記録媒体は、用紙に限定されず、例えば、布、樹脂部材等であってもよい。
【0103】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液体吐出装置(例えば、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液体吐出装置)にも適用可能である。
【0104】
本発明に係るプログラムは、フレキシブルディスク等のリムーバブル型記録媒体やハードディスク等の固定型記録媒体に記録して配布可能である他、通信回線を介して配布可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 用紙(記録媒体)
1x 一端
1y 他端
10 ヘッド
30 走査機構
50 搬送機構
91 CPU(制御部)
92 ROM(記憶部)
94 ASIC(制御部)
100 プリンタ(液体吐出装置)
D1 正走査方向
D2 逆走査方向
La 加速距離
Lb 減速距離
Lb1 第1減速距離
Lb2 第2減速距離
N ノズル
Nc,Nm,Ny,Nk ノズル列
R 吐出領域
Ra 加速領域
Rb 減速領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12