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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】ブラスト加工装置及び定量供給装置
(51)【国際特許分類】
   B24C 7/00 20060101AFI20241112BHJP
   B24C 5/02 20060101ALI20241112BHJP
   B24C 5/04 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B24C7/00 F
B24C7/00 A
B24C5/02 A
B24C5/04 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021018341
(22)【出願日】2021-02-08
(65)【公開番号】P2022121155
(43)【公開日】2022-08-19
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 紀仁
(72)【発明者】
【氏名】前田 和良
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-176701(JP,A)
【文献】特開2002-346929(JP,A)
【文献】実開平01-092370(JP,U)
【文献】特開2001-252872(JP,A)
【文献】特表平01-502413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 7/00
B24C 5/02
B24C 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨材と気体からなる固気二相流を噴射するブラスト加工装置であって、
前記研磨材を貯留する貯留室を内部に画成する貯留容器と、
前記貯留室から前記貯留容器の外部に前記研磨材を供給する定量供給装置と、
前記定量供給装置から供給される前記研磨材を圧縮空気と共に噴射するブラスト加工用のノズルと、
を備え、
前記定量供給装置は、
水平方向に沿って延在し、内部に空間を画成し、前記空間と前記貯留室とを連通する導入口と、前記導入口から水平方向に離間した位置において下方に向けて開口された供給口とを有するケーシングと、
前記ケーシングに収容され、水平方向に沿って延在する回転軸を有し、前記回転軸を中心として回転することによって前記空間内の前記研磨材を前記導入口から前記供給口に向けて搬送するスクリュと、
を有し、
前記スクリュは、鉛直方向において前記供給口と重ならないように前記ケーシングに収容され
前記ノズルと前記ケーシングの前記供給口とを接続する接続配管を備え、
前記ノズルは、前記ケーシングとの相対的な位置関係が固定されるように設けられ、
前記研磨材は、気流によって前記接続配管の内部を移送される、
ブラスト加工装置。
【請求項2】
前記貯留室に収容され、空気源に接続され、前記空気源からの空気を給気する複数の気孔が設けられた給気部材を備える、請求項1に記載のブラスト加工装置。
【請求項3】
記ノズルは、前記定量供給装置から前記ノズルに向かって前記研磨材を移送する経路に連結されるノズルボディと、前記ノズルボディの内部に前記圧縮空気を導入して前記研磨材を前記ノズルボディの内部に吸引する気流を発生させる空気ノズルと、前記ノズルボディの内部に移送された前記研磨材を前記圧縮空気と共に噴射する噴射ノズルと、を含み、
前記気流の発生に伴い発生した圧力損失が0.1kPa以下となるように前記ノズルが配置される、請求項1又は2に記載のブラスト加工装置。
【請求項4】
厚さ方向に貫通する開口が形成され、前記ケーシングの内部を仕切るように前記スクリュの先端と前記供給口との間に配置される規制板を備える、請求項1~の何れか一項に記載のブラスト加工装置。
【請求項5】
前記ケーシングの内壁との間に隙間を形成するように前記スクリュの先端に固定される規制板を備える、請求項1~の何れか一項に記載のブラスト加工装置。
【請求項6】
前記貯留容器、前記定量供給装置、及び前記ノズルはユニットを構成し、
被加工物に対して前記ユニットを相対的に移動させる移動機構を備え
前記移動機構は、前記ユニットの高さ位置に直交する前記ユニットの縦位置、又は、前記ユニットの前記高さ位置と前記ユニットの前記縦位置とに直交する前記ユニットの横位置を変更する、
請求項に記載のブラスト加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブラスト加工装置及び定量供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
研磨材と気体からなる固気二相流を噴射ノズルより被加工物に向けて噴射して表面処理を行うブラスト加工は、広く知られている。ブラスト加工は、鋳造品のスケール除去や湯じわ消し、錆取り、塗装皮膜の除去、下地処理、などに用いられる。さらに、近年では電子部品の微細加工や平滑仕上げなど、高い加工精度が要求される用途でも、ブラスト加工が用いられている。
【0003】
高い加工精度を実現するための一つの要件として、ノズルに対して研磨材を定量で安定して供給することが挙げられる。特許文献1には、定量の研磨材をノズルに供給する定量供給装置を備えるブラスト加工装置が記載されている。このブラスト加工装置は、研磨材が貯留されているタンクの下方部にスクリュが設けられ、スクリュポンプから排出された研磨材をバッファ装置により一時的に収容した後、研磨材供給経路を介して研磨材をノズルに供給する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平07-328924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたブラスト加工装置では、バッファ装置によって、ブラスト加工用のノズルで発生した負圧(研磨材を吸引する吸引力)の変動やスクリュの変動が吸収され、ノズルに研磨材を供給する定量性を向上させている。しかし、このブラスト加工装置では、研磨材が供給されるための経路の圧力損失が高くなるため、負圧を高める必要がある。負圧はノズルに供給される圧縮空気の圧力に依存するため、必然的に従来より高い圧力の圧縮空気を供給する必要がある。本来、供給される圧縮空気の圧力は、ブラスト加工の目標とする表面状態に応じて設定されるものである。ここで、研磨材の吸引力に合わせて圧縮空気の圧力を設定した場合は、目標とする表面状態に加工できない場合がある。逆に、目標とする表面状態への加工に合わせて圧縮空気の圧力を設定した場合は、ノズルへの研磨材の供給量が不足したり研磨材の供給量が安定しなかったりする場合がある。即ち、特許文献1に開示されたブラスト加工装置では、目標とする表面状態を得るために必要な定量の研磨材を噴射できない恐れがある。そこで、本開示は、ブラスト加工装置において定量の研磨材を噴射する際に、噴射する研磨材の量が増減することを抑制できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係るブラスト加工装置は、貯留容器、定量供給装置、及びブラスト加工用のノズルを備える。貯留容器は、研磨材を貯留する貯留室を内部に画成する。定量供給装置は、貯留室から貯留容器の外部に研磨材を供給する。ノズルは、定量供給装置から供給される研磨材を圧縮空気と共に噴射する。定量供給装置は、ケーシング及びスクリュを有する。ケーシングは、水平方向に沿って延在し、内部に空間を画成する。また、ケーシングは、空間と貯留室とを連通する導入口と、導入口から水平方向に離間した位置において下方に向けて開口された供給口とを有する。スクリュは、ケーシングに収容され、水平方向に沿って延在する回転軸を有する。そして、スクリュは、回転軸を中心として回転することによって空間内の研磨材を導入口から供給口に向けて搬送する。スクリュは、鉛直方向において供給口と重ならないようにケーシングに収容される。
【0007】
このブラスト加工装置では、研磨材は、貯留容器の内部に画成される貯留室から、定量供給装置のケーシングに導入される。定量供給装置では、研磨材は、スクリュの回転によってケーシングの下方に向けて開口される供給口に向かって搬送される。供給口において、供給口とスクリュとは鉛直方向において重ならないため、スクリュに滞積する研磨材は、供給口に落下しない。供給口から落下した研磨材は、圧縮空気と共にブラスト加工用のノズル(以降、単に「ノズル」と記す)から噴射される。供給口がケーシングの下方に向けて開口されているので、供給口からノズルまで距離を短くすることができる。その結果、研磨材の移送による噴射圧力の損失を抑えることができる。よって、このブラスト加工装置は、定量の研磨材を噴射する際に、噴射する研磨材の量が増減することを抑制し、且つ良好にブラスト加工を行うことができる。
【0008】
一実施形態において、ブラスト加工装置は、給気部材を備えてもよい。この給気部材は、貯留室に収容され、空気源に接続され、空気源からの空気を給気する複数の気孔が設けられてもよい。この場合、貯留容器に貯留される研磨材は、空気を給気されて流動化する。このブラスト加工装置は、研磨材が貯留容器の内壁に付着し、ブリッジング(棚吊り)を抑制できる。
【0009】
一実施形態において、ブラスト加工装置は、接続配管を備えてもよい。この接続配管は、ノズルとケーシングの供給口とを接続してもよい。ノズルは、ケーシングとの相対的な位置関係が固定されるように設けられてもよい。この場合、ノズルの姿勢はケーシングの位置に限定されるため、接続配管はノズルに追従して変形しなくなる。このため、このブラスト加工装置は、接続配管の変形に伴って研磨材の流れが変化することを回避できる。よって、このブラスト加工装置は、噴射する研磨材の量が増減することを抑制できる。
【0010】
一実施形態において、ノズルは、ノズルボディと、空気ノズルと、噴射ノズルと、を含んでもよい。ノズルボディは、定量供給装置からノズルに向かって研磨材を移送する経路に連結されてもよい。空気ノズルは、ノズルボディの内部に圧縮空気を導入して研磨材をノズルボディの内部に吸引する気流を発生させてもよい。噴射ノズルは、ノズルボディの内部に移送された研磨材を圧縮空気と共に噴射してもよい。そして、この気流の発生に伴い発生した圧力損失が0.1kPa以下となるようにノズルが配置されてもよい。
【0011】
一実施形態において、ブラスト加工装置は、規制板を備えてもよい。この規制板は、厚さ方向に貫通する開口が形成され、ケーシングの内部を仕切るようにスクリュの先端と供給口との間に配置されてもよい。この場合、スクリュに搬送された研磨材は、規制板に押し付けられる。これにより、規制板の開口を通過した研磨材は、所定のかさ密度まで圧縮される。よって、このブラスト加工装置は、ノズルに送り出す研磨材のかさ密度を安定させることができる。
【0012】
一実施形態において、ブラスト加工装置は、規制板を備えてもよい。この規制板は、ケーシングの内壁との間に隙間を形成するようにスクリュの先端に固定されてもよい。この場合、スクリュに搬送された研磨材は、規制板に押し付けられる。これにより、規制板とケーシングの内壁との間に形成される隙間を通過した研磨材は、所定のかさ密度まで圧縮される。よって、このブラスト加工装置は、ノズルに送り出す研磨材のかさ密度を安定させることができる。
【0013】
一実施形態において、ブラスト加工装置は、移動機構を備えてもよい。この移動機構は、貯留容器、定量供給装置、及びノズルがユニットを構成し、被加工物に対してユニットを相対的に移動させてもよい。このブラスト加工装置は、ノズルと定量供給装置とをユニット化させた状態で被加工物に対してブラスト加工を施すことができる。
【0014】
本開示の他の側面に係る定量供給装置は、ケーシング及びスクリュを備える。ケーシングは、水平方向に沿って延在し、内部に空間を画成する。また、ケーシングは、研磨材を空間へ導入するための導入口と、導入口から水平方向に離間した位置において下方に向けて開口された供給口とを有する。スクリュは、ケーシングに収容され、水平方向に沿って延在する回転軸を有する。そして、スクリュは、回転軸を中心として回転することによって空間内の研磨材を導入口から供給口に向けて搬送する。スクリュは、鉛直方向において供給口と重ならないようにケーシングに収容される。
【0015】
この定量供給装置では、研磨材は、スクリュの回転によってケーシングの下方に向けて開口される供給口に向かって搬送される。供給口において、供給口とスクリュとは鉛直方向において重ならないため、スクリュに滞積する研磨材は、供給口に落下しない。供給口から落下した研磨材は、圧縮空気と共にブラスト加工用のノズルから噴射される。よって、この定量供給装置は、ブラスト加工装置へ定量の研磨材を供給する際に研磨材の量が増減することを抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本開示に係る技術によれば、噴射する研磨材の量が増減することを抑制し、且つ良好にブラスト加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る定量供給装置を備えるブラスト加工装置の一例を示す全体図である。
図2】変形例に係るブラスト加工装置の一部を示す概要図である。
図3】他の変形例に係るブラスト加工装置の一部を示す概要図である。
図4】規制板の変形例を示す概要図である。
図5】規制板の他の変形例を示す概要図である。
図6】規制板の他の変形例を示す概要図である。
図7】実施例に係るブラスト加工装置を示す全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。「上」「下」「左」「右」の語は、図示する状態に基づくものであり、便宜的なものである。
【0019】
[ブラスト加工装置の構成]
図1は、実施形態に係る定量供給装置を備えるブラスト加工装置の一例を示す全体図である。図1に示されるブラスト加工装置1は、研磨材Mを噴射する装置であり、いわゆる吸引式(重力式)のブラスト加工装置として構成される。図1に示されるように、ブラスト加工装置1は、貯留容器10、定量供給装置20、及びノズル30を備える。貯留容器10は、内部に研磨材Mを貯留する貯留室Sを画成し、研磨材Mを貯留する。
貯留容器10は、定量供給装置20と接続される。
【0020】
定量供給装置20は、貯留容器10に貯留された研磨材Mを外部へ送り出す装置である。定量供給装置20は、いわゆるスクリュフィーダーであり、貯留容器10に貯留された研磨材Mを定量で連続的に送り出す。定量供給装置20は、貯留容器10の下方に配置される。定量供給装置20は、その一部が貯留容器10の下部に収容されてもよい。定量供給装置20は、ケーシング21と、ケーシング21に収容されるスクリュ24とを有する。
【0021】
ケーシング21は、水平方向に沿って延在する中空筒状の部材である。ケーシング21の内部には、空間Vが画成される。ケーシング21は、貯留容器10の貯留室Sと空間Vとを連通する導入口22を有する。導入口22は、例えば上方に向けて開口される。研磨材Mは、導入口22を介して貯留容器10の貯留室Sから定量供給装置20の空間Vへ導入される。ケーシング21は、導入口22から水平方向に離間した位置において供給口23を有する。供給口23は、ケーシング21の下方に向けて開口される。供給口23は、スクリュ24によって搬送される研磨材Mが落下するようにケーシング21の下部に形成される。供給口23は、研磨材Mを落下させてノズル30へ送り出す。
【0022】
スクリュ24は、ケーシング21の内部の空間Vに収容される。スクリュ24は、回転軸24a及び羽根24bを有する。回転軸24aは、ケーシング21に収容され、水平方向に沿って延在する。羽根24bは、互いに隣り合う2つの羽根24bが所定の間隔で並ぶように螺旋状に回転軸24aの外周面に固定される。スクリュ24は、第1軸受部26a及び第2軸受部26bに回転可能に支持される。第1軸受部26a及び第2軸受部26bは、軸受と軸受の支持部とを含む部材である。スクリュ24は、モータ25に連結されて回転軸24aを中心に回転駆動する。隣り合う2つの羽根24bの間に入り込んだ研磨材Mは、スクリュ24の回転駆動によってケーシング21の供給口23へ搬送される。
【0023】
スクリュ24は、鉛直方向において供給口23と重ならないようにケーシング21に収容される。例えば、スクリュ24が導入口22の近傍で第1軸受部26a及び第2軸受部26bに片持ちで回転可能に支持される場合、スクリュ24は、鉛直方向において供給口23と重ならない位置まで、導入口22から供給口23へ向かって延在する。換言すれば、スクリュ24は、供給口23の上方には存在しない。
【0024】
ケーシングの供給口23は、接続配管31を介してノズル30と接続される。接続配管31は、供給口23から送り出された研磨材Mをノズル30へ移送する。接続配管31は、内部に研磨材Mを移送可能な流路を画成する。接続配管31は、例えば、樹脂製のホース又は金属製の配管などである。
【0025】
ノズル30は、接続配管31から供給される研磨材Mを圧縮空気と共に噴射する。ノズル30は、ノズルボディ30a、ノズルボディの一端側から挿入された空気ノズル30b、ノズルボディの他端側に挿入された噴射ノズル30c、を備える。圧縮空気は、空気ノズル30bに接続される空気配管32からノズルボディ30aの内部に供給される。空気ノズル30bから噴射された圧縮空気によるエジェクタ現象によって、ノズルボディ30aの内部で負圧が発生する。ノズルボディ30aの内部で発生した負圧は、ノズルボディ30aに接続される接続配管31に気流を発生させる。研磨材Mは、接続配管31に発生する気流によって供給口23からノズルボディ30aに移送される。移送された研磨材Mは、ノズルボディ30aの内部で圧縮空気と混合される。噴射ノズル30cより、研磨材Mは圧縮空気との固気二相流としてワークWへ噴射される。
【0026】
ワークWは、ブラスト加工の対象となる被加工物である。一例として、ワークWは、ガラス、シリコン、セラミックス、等の硬脆材料、又は各種金属、又はCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)材料やGFRP(GlassFiber Reinforced Plastics)などの複合材料である。ワークWは、テーブル33に載置される。
【0027】
テーブル33は、ブラスト加工の間、載置されるワークWを固定する台である。例えば、テーブル33は、ワークWを吸着する載置面を有する。テーブル33は、ノズル30の噴射方向と交差するように配置される。テーブル33は、ワークWの位置をノズル30に対して相対的に移動させてもよい。
【0028】
処理容器3は、内部に加工室Pを画成し、ノズル30、ワークW及びテーブル33を収容する。ブラスト加工は加工室Pで行われる。圧縮空気の固気二相流としてワークWへ噴射された研磨材Mは、ワークWの切削粉と共に加工室Pの下部へ落下する。加工室Pの下部へ落下した研磨材M及びワークWの切削粉は、回収配管12に回収される。回収配管12は、処理容器3の加工室Pと分級機構11とを接続する。
【0029】
分級機構11は、回収配管12を通じて、加工室Pの下部へ落下した研磨材M及びワークWの切削粉を回収する。分級機構11は、回収した研磨材M及びワークWの切削粉を分離する。分級機構11は、例えば、サイクロン式の分級機である。分級機構11は、再利用が可能な研磨材Mと、再利用が不可能な研磨材M及びワークWの切削紛とを分離する。再利用が可能な研磨材Mは、貯留容器10へ戻される。再利用が不可能な研磨材M及びワークWの切削紛は、集塵機2に回収される。
【0030】
集塵機2は、再利用が不可能な研磨材M及びワークWの切削紛を回収する装置である。集塵機2は、分級機構11に接続される。集塵機2は、負圧を発生させる。集塵機2の負圧は、分級機構11及び分級機構11に接続される回収配管12に気流を発生させる。再利用が不可能な研磨材M及びワークWの切削紛は、気流に乗って集塵機2へ吸引される。吸引された再利用が不可能な研磨材M及びワークWの切削紛は、例えば、フィルタなどによって集塵機2に回収される。
【0031】
ブラスト加工装置1は、制御装置4によって制御される。制御装置4は、例えばPLC(ProgrammableLogic Controller)として構成される。制御装置4は、CPU(Central ProcessingUnit)などのプロセッサと、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などのメモリと、タッチパネル、マウス、キーボード、ディスプレイなどの入出力装置と、ネットワークカードなどの通信装置とを含むコンピュータシステムとして構成されてもよい。制御装置4は、メモリに記憶されているコンピュータプログラムに基づくプロセッサの制御のもとで各ハードウェアを動作させることにより、制御装置4の機能を実現する。例えば、制御装置4は、空気配管32から供給される圧縮空気の圧力を制御する。制御装置4は、定量供給装置20が送り出す研磨材Mの量を制御する。制御装置4は、研磨材Mの噴射量、研磨材Mを吹き付ける圧力、及びノズル30とワークWとの間の位置関係の少なくとも何れか一つを制御してもよい。
【0032】
以上、実施形態に係るブラスト加工装置1及び定量供給装置20によれば、研磨材Mは、貯留容器10の内部に画成される貯留室Sから、定量供給装置20のケーシング21に導入される。定量供給装置20では、研磨材Mは、スクリュ24の回転によってケーシング21の下方に向けて開口される供給口23に向かって搬送される。供給口23において、供給口23とスクリュ24とは鉛直方向において重ならないため、スクリュ24に滞積する研磨材Mは、供給口23に落下しない。供給口23から落下した研磨材Mは、圧縮空気と共にブラスト加工用のノズル30から噴射される。よって、このブラスト加工装置1及び定量供給装置20は、噴射する研磨材の量が増減することを抑制できる。
【0033】
本開示のブラスト加工装置1は、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。
【0034】
[定量供給装置とノズルとの接続の変形例]
図2は、変形例に係るブラスト加工装置の一部を示す概要図である。図2に示されるブラスト加工装置においては、ノズル30は、ケーシング21との相対的な位置関係が固定されるようにケーシング21の供給口23に接続される。例えば、ノズル30が金属製の接続配管31によって供給口23と接続されることで、ノズル30とケーシング21との間の相対的な位置関係が固定される。あるいは、フレーム部材(不図示)にノズル30及び定量供給装置20が固定されることで、ノズル30とケーシング21との間の相対的な位置関係が固定されてもよい。フレーム部材にノズル30及び定量供給装置20が固定される場合、接続配管31は、樹脂製のホースとしてもよい。
【0035】
ケーシング21の供給口23からノズル30へ研磨材Mが移送される経路では圧力損失が発生する。圧力損失は、流路を形成する接続配管31と流路を流れる気流との間で発生する摩擦損失である。気流によって接続配管31の内部を移送される研磨材Mの流量は、圧力損失に応じて変化する。この圧力損失は、流路の全長及び形状に応じて変化する。流路の全長が伸びる場合、又は流路が湾曲する場合に、圧力損失は増加する。例えば、ノズル30とケーシング21との相対的な位置関係が変化する場合、流路の全長及び形状はノズル30とケーシング21との相対的な位置関係に応じて変化する。この場合、圧力損失の増減によって、ノズル30へ移送される研磨材Mの流量は変動する。ノズル30とケーシング21との間の相対的な位置関係が固定されることで、ケーシング21の供給口23とノズル30との間の研磨材Mが移送される流路が変形することが回避され、ノズル30へ移送される研磨材Mの流量が安定する。
【0036】
また、噴射ノズルから噴射される研磨材を定量供給装置から誘引する際の経路の圧力損失が大きいと、研磨材Mを十分に吸引することができない。圧力損失が大きくなる位置にノズル30が配置された場合は、研磨材Mを十分に吸引できるような負圧(吸引力)を得るため、ノズル30に導入する圧縮空気の圧力を更に高める必要がある。しかし、研磨材Mを噴射する圧力も高まるため、必然的にブラスト加工の能力も向上することになる。その結果、目標とする表面状態に対して、ブラスト加工が過剰な加工となる場合がある。従って、研磨材Mを十分に吸引できるような負圧が得られるようにノズル30を配置する必要がある。その為に、圧力損失が0.1kPa以下の範囲となるように、ノズル30を配置する位置を調整してもよい。
【0037】
図2に示されるブラスト加工装置においては、貯留容器10、定量供給装置20、及びノズル30は、一体化して構成され、ユニット5を形成する。ユニット5は、貯留容器10、定量供給装置20、及びノズル30を一体として移動可能な単位に構成した、ブラスト加工装置1の一部である。ユニット5においては、ノズル30は、ケーシング21との相対的な位置関係が固定されるようにケーシング21の供給口23へ接続配管31を介して接続される。ユニット5及びワークWは、処理容器3(図1参照)の内部に画成される加工室Pに収容される。
【0038】
ブラスト加工装置は、ワークWに対してユニット5を相対的に移動させる移動機構60を備える。移動機構60は、ワークWに対してユニット5を相対的に移動させる。移動機構60は、例えば、ユニット5の縦位置(X方向)、横位置(Y方向)及び高さ位置(Z方向)を変更する3軸直交ロボットとすることができる。研磨材Mを噴射するノズル30の位置は、移動機構60がユニット5を移動させる位置に応じて変化する。移動機構60は、ワークWの大きさ及びブラスト加工条件に基づいて、ユニット5の位置を変更する。
【0039】
以上、図2に示されるブラスト加工装置においては、ノズル30とケーシング21との相対的な位置関係が固定される。この場合、研磨材Mが移送される流路の全長及び形状は、ブラスト加工中も含めて変化しない。ノズル30の姿勢はケーシング21の位置に限定されるため、接続配管31はノズルに追従して変形しなくなる。このため、このブラスト加工装置は、接続配管31の変形に伴って研磨材Mの流れが変化することを回避できるので、安定したブラスト加工を行う事ができる。さらに、図2に示されるブラスト加工装置においては、ワークWの位置をノズル30に対して相対的に移動させるテーブル33を処理容器3に収容する必要がなくなるため、ワークWをノズル30に対して相対的に移動させるブラスト加工装置と比べて、小型化できる。
【0040】
[貯留容器及び定量供給装置の変形例]
図3は、他の変形例に係るブラスト加工装置の一部を示す概要図である。図3に示されるブラスト加工装置は、貯留容器10に収容される給気部材40を備える。
【0041】
給気部材40は、貯留容器10に貯留される研磨材Mを導入口22へ流れやすくする部材である。給気部材40は、空気源41に接続され、空気源41からの空気を給気する複数の気孔が設けられる。給気部材40は、一例として焼結金属であり多孔質の部材である。空気源41は、例えば、送風機、圧縮機、ブロアなどである。
【0042】
給気部材40に貯留される研磨材Mは、給気部材40からの給気によって流動性が増加する。粉体の流動性とは、粉体の流れやすさである。流動性が高い粉体は、液相に近い挙動を示す。流動性が低い粉体は、固相に近い挙動を示す。粉体の流動性は、粉体が含む空気の量、粉体を構成する粒子径及び粒子の物性などに基づいて定まる。貯留容器10に貯留される研磨材Mは、給気部材40の気孔から空気が給気されて流動性が向上する。このブラスト加工装置は、研磨材Mが貯留容器10の内部に付着することを抑制できる。
【0043】
図3に示されるブラスト加工装置は、ケーシング21の内部を仕切るようにスクリュ24の先端と供給口23との間に配置される規制板50を備える。規制板50は、ケーシング21の内部の研磨材Mのかさ密度を一定にするための部材である。規制板50は、例えば円盤部材である。規制板50は、一例として、スクリュ24の先端に固定される。規制板50には、厚さ方向に貫通する開口が形成される。規制板50の厚さ方向は、ケーシング21の水平方向に一致する。開口は、スクリュ24に搬送される研磨材Mが通過可能に設けられる。開口は、規制板50に所定の間隔で複数形成されてもよい。
【0044】
貯留容器10に貯留されている研磨材Mのうち一定量の研磨材Mが導入口22からケーシング21の内部に導入される。研磨材Mは、スクリュ24の回転によって供給口23に向かって搬送される。研磨材Mが規制板50に達すると、スクリュ24に搬送された研磨材Mは、規制板50に押し付けられる。これにより、規制板50の開口を通過した研磨材Mは、所定のかさ密度まで圧縮される。よって、このブラスト加工装置1は、ノズル30に送り出す研磨材Mのかさ密度を安定させることができる。
【0045】
[規制板の他の変形例]
ブラスト加工装置1は、ケーシング21の内壁との間に隙間を形成するようにスクリュ24の先端に固定される規制板50を備えてもよい。この場合、規制板50には開口が形成されなくてもよい。スクリュ24に搬送された研磨材Mは、規制板50に押し付けられる。これにより、規制板50とケーシング21の内壁との間に形成される隙間を通過した研磨材Mは、所定のかさ密度まで圧縮される。よって、このブラスト加工装置1は、ノズル30に送り出す研磨材のかさ密度を安定させることができる。
【0046】
図4は、規制板の変形例を示す概要図である。図4に示されるように、規制板50は、スクリュ24の先端と供給口23との間の位置において、ケーシング21の内側に固定されてもよい。つまり、規制板50は、スクリュ24と共に回転しなくてもよい。
【0047】
図5は、規制板50の他の変形例を示す概要図である。図5に示されるように、規制板50は、スクリュ24の先端と供給口23との間の位置において、ケーシング21の内側に第2軸受部26bと一体に設けられてもよい。この場合、第2軸受部26bの軸受支持部に開口が設けられる。スクリュ24は、導入口22の近傍の第1軸受部26aと供給口23の近傍の第2軸受部26b(規制板50)とに両持ちで回転可能に支持される。
【0048】
図6は、規制板50の他の変形例を示す概要図である。図6に係るブラスト加工装置1は、スクリュ24の先端に固定される規制板50、及びスクリュ24の先端と供給口23との間の位置において、ケーシング21の内側に第2軸受部26bと一体に設けられる規制板50(第2軸受部26b)を備える。スクリュ24は、導入口22の近傍の第1軸受部26aと供給口23の近傍の第2軸受部26b(規制板50)とに両持ちで回転可能に支持される。スクリュ24の回転軸24aは、第2軸受部26b(規制板50)を超えて延在する。スクリュ24の先端に固定される規制板50は、第2軸受部26b(規制板50)よりも供給口23の近傍に配置される。
【0049】
[その他の変形例]
ノズル30は、ケーシング21の導入口22との相対的な位置関係が固定されるように供給口23に接続されなくてもよい。貯留容器10、定量供給装置20、及びノズル30は、ユニット5を構成しなくてもよい。ブラスト加工装置1は、ワークWに対してユニット5を相対的に移動させる移動機構60を備えなくてもよい。
【0050】
ブラスト加工装置1は、貯留容器10に収容され、空気源41に接続され、空気源41からの空気を給気する複数の気孔が設けられた給気部材40を備えなくてもよい。ブラスト加工装置1は、厚さ方向に貫通する開口が形成され、ケーシング21の内部を仕切るようにスクリュ24の先端と供給口23との間に配置される規制板50を備えなくてもよい。ブラスト加工装置1は、ケーシング21の内部との間に隙間を形成するようにスクリュ24の先端に固定される規制板50を備えなくてもよい。
【0051】
ブラスト加工装置1は、直圧式のブラスト加工装置であってもよい。ブラスト加工装置1は、湿式のブラスト加工装置であってもよい。研磨材Mを再使用しない場合、ブラスト加工装置1は、分級機構11及び集塵機2を備えていなくてもよい。この場合、作業者が貯留容器10に研磨材Mを供給してもよい。
【0052】
移動機構60は、直交ロボットに限定されない。移動機構60は、例えば、多関節ロボット、パラレルリンクロボット及びスカラーロボットであってもよい。
【0053】
[ノズルの配置及びブラスト条件の検証]
研磨材を定量供給装置から誘引する際の経路における圧力損失が0.1kPa以下となるようなノズル30の配置及びブラスト条件を検討した。
[実施例]
図7に示されるブラスト加工装置1Aを用いた。ブラスト加工装置1Aでは、ノズル30は、定量供給装置20の下方に配置した。ノズル30は、ブラスト加工装置1のノズル30と同一である。噴射ノズル30cの口径は、直径がφ8mmである。接続配管31を用いてノズルボディ30aと定量供給装置20とを接続した。その他の構成は、図1に示されるブラスト加工装置1と同一である。ブラスト条件として、噴射圧力を150~600kPaに設定し、研磨材Mとして新東工業株式会社製のグリーンカーボランダムGC#600を使用した。接続配管31の上流及び下流に圧力センサを設け、ブラスト加工中において得られた圧力センサの検出結果の差分を接続配管31の圧力損失とした。また、ノズル30からの噴射量を測定した。結果を表1に示す。
[比較例]
図7に示されるブラスト加工装置1Aにおいて、定量供給装置の配置位置と、定量供給装置からノズルまでの供給路の長さとを変更した。定量供給装置は、ノズル30よりも下方に位置するように配置した。接続配管31に替えて、接続配管31よりも10倍以上の長さを有するホースを用いた。ブラスト条件として、噴射圧力を50~600kPaに設定した。その他のブラスト条件は実施例と同一である。ブラスト加工中において得られた圧力センサの検出結果の差分をホースの圧力損失とした。また、ノズル30からの噴射量を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1は、圧力損失の測定結果を示す表である。表1に示されるように、実施例では、噴射圧力が50~600kPaの範囲において、圧力損失が0.1kPa以下となることが確認された。噴射圧力が50kPaの場合、研磨材Mの噴射量が500g/minとなり、圧力損失は0.1kPa以下となった。即ち、実施例では圧力損失が少ないため、極めて低い圧力であっても研磨材Mが安定して噴射されることが確認された。比較例では、噴射圧力が150~600kPaの範囲において、圧力損失が0.1kPaより大きくなることが確認された。噴射圧力が150kPaの場合、研磨材Mの噴射量が150g/minとなり、圧力損失は0.1kPaより大きくなった。これは、比較例では圧力損失が大きいため、極めて低い圧力では研磨材Mの噴射が脈動を起こし、最低使用可能圧力が高くなることを示している。このため、比較例では、低圧条件下では研磨材Mが安定して噴射されず、また、最低使用可能圧力においても少量しか安定して噴射されないことが確認された。
【符号の説明】
【0056】
1…ブラスト加工装置、10…貯留容器、20…定量供給装置、21…ケーシング、22…導入口、23…供給口、24…スクリュ、24a…回転軸、30…ノズル、30a…ノズルボディ、30b…空気ノズル、30c…噴射ノズル、31…接続配管、40…給気部材、41…空気源、50…規制板、60…移動機構、M…研磨材、S…貯留室、V…空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7