(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】クッション部材、車載用スピーカアセンブリ、及び、製造方法
(51)【国際特許分類】
H04R 1/02 20060101AFI20241112BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H04R1/02 102B
B60R11/02 S
(21)【出願番号】P 2021023176
(22)【出願日】2021-02-17
【審査請求日】2023-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 和幸
(72)【発明者】
【氏名】江口 敬一
【審査官】齊田 寛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-34588(JP,A)
【文献】特開2017-100570(JP,A)
【文献】特開2017-60051(JP,A)
【文献】特開2009-280125(JP,A)
【文献】特開2005-20292(JP,A)
【文献】特開平10-210582(JP,A)
【文献】特開平8-186887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/02
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用スピーカの振動板の外周を支持する支持部材に貼り付けられ、前記支持部材とドアトリムとの間に挟まれる、クッション部材であって、
前記ドアトリムと接触するトリム面と、
前記トリム面から立ち上がる2つの側面と、
を備え、
前記2つの側面の少なくとも何れか一方は、前記トリム面よりも高剛性である側面補強部を有する、
クッション部材。
【請求項2】
前記側面補強部は前記2つの側面にそれぞれ設けられている、
請求項1に記載のクッション部材。
【請求項3】
前記トリム面と対向する対向面に設けられ、前記トリム面よりも高剛性である対向面補強部を更に備え、
前記対向面補強部は、前記少なくとも1つの側面補強部と一体的に形成されている、
請求項1又は2に記載のクッション部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の前記クッション部材と、
前記車載用スピーカと、
を備えた、
車載用スピーカアセンブリであって、
前記支持部材には、前記トリム面に対して直交する方向に突出するリブが設けられており、
前記2つの側面のうち1つの側面は、前記リブに隣接しており、
前記少なくとも1つの側面補強部は、前記2つの側面のうち前記リブから遠い側面に設けられる側面補強部を含む、
車載用スピーカアセンブリ。
【請求項5】
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載のクッション部材の製造方法であって、
前記2つの側面の少なくとも何れか一方を熱硬化することにより前記少なくとも1つの側面補強部を形成する、
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッション部材、車載用スピーカアセンブリ、及び、製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2017-60051号公報)は、ドアパネルのインナーパネルに取り付けられる車載用スピーカを開示している。インナーパネルにドアトリムを取り付けると、ドアトリムの環状突起が車載用スピーカのフレームの鍔部に貼り付けられたクッション部材に食い込む。これにより、車載用スピーカとドアトリムとのシール性が確保される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、車載用スピーカにクッション部材が貼り付けられた状態で車載用スピーカを長期間保管した場合、例えば車載用スピーカを梱包する袋がクッション部材を長期間変形させるなどして、クッション部材に変形癖が残ってしまう場合があった。
【0004】
本開示の目的は、クッション部材に意図しない変形癖を付き難くする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示によれば、車載用スピーカの振動板の外周を支持する支持部材に貼り付けられ、前記支持部材とドアトリムとの間に挟まれる、クッション部材であって、前記ドアトリムと接触するトリム面と、前記トリム面から立ち上がる2つの側面と、を備え、前記2つの側面の少なくとも何れか一方は、前記トリム面よりも高剛性である側面補強部を有する、クッション部材が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、前記クッション部材に意図しない変形癖が付き難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】フロントドアの部分断面図である。(第1実施形態)
【
図2】クッション部材にドアトリムのトリムリブが食い込んだ状態を示す断面図である。(第1実施形態)
【
図3】クッション部材の変形前の状態を示す断面図である。(第1実施形態)
【
図4】クッション部材にトリムリブが接触する直前の断面図である。(比較例)
【
図5】クッション部材にトリムリブが接触した直後の断面図である。(比較例)
【
図6】斜めに変形したクッション部材の断面図である。(比較例)
【
図7】クッション部材にトリムリブが接触する直前の断面図である。(第1実施形態)
【
図8】外周面補強部がトリムリブを避けるように変形した様子を示す断面図である。(第1実施形態)
【
図9】クッション部材にトリムリブが食い込んだ状態を示す断面図である。(第1実施形態)
【
図10】クッション部材の製造フローである。(第1実施形態)
【
図11】クッション部材の断面図である。(第2実施形態)
【
図12】クッション部材にトリムリブが食い込んだ状態を示す断面図である。(第2実施形態)
【
図13】クッション部材の断面図である。(第3実施形態)
【
図14】クッション部材の平面図である。(第4実施形態)
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、
図1から
図10を参照して、本開示の第1実施形態を説明する。
【0009】
図1には、フロントドア1の部分断面図を示している。フロントドア1は、車両用ドアの一具体例である。フロントドア1は、インナーパネル2と、二点鎖線で示すアウターパネル3と、スピーカアセンブリ4と、ドアトリム5と、を含む。
【0010】
インナーパネル2及びアウターパネル3は、車両鉄板としてのドアパネル6を構成している。
【0011】
スピーカアセンブリ4は、インナーパネル2に複数のネジ7で固定されている。
【0012】
ドアトリム5は、スピーカアセンブリ4を覆い隠すようにインナーパネル2に取り付けられている。具体的には、ドアトリム5の上端にフック8が形成されている。ドアトリム5をインナーパネル2に取り付けるには、まず、ドアトリム5を傾けてフック8をインナーパネル2のパネル上端2aに引っ掛け、その後、ドアトリム5に設けられている図示しない複数のクリップをインナーパネル2に形成されている図示しない複数のクリップ孔にそれぞれ嵌合する。なお、インナーパネル2のパネル上端2aにウェザーストリップを配置し、ウェザーストリップにドアトリム5のフック8を引っ掛ける構成としてもよい。
【0013】
スピーカアセンブリ4は、車載用スピーカとしてのスピーカ本体10と、スピーカ本体10を保持するブラケット11と、クッション部材30と、を含む。
【0014】
スピーカ本体10は、入力された電気音響信号を振動板14の振動に変換して空気を振動させることで車室内に再生音として出力するものである。スピーカ本体10は、磁気ギャップを有する磁気回路12と、磁気ギャップに配置されるボイスコイル13と、ボイスコイル13に連動して振動する振動板14と、ボイスコイル13及び振動板14を弾性的に保持するダンパー15と、磁気回路12と振動板14の外周縁及びダンパー15の外周縁を保持する金属製のフレーム16と、を含む。
【0015】
磁気回路12は、ボトムプレート17と、ボトムプレート17から放音方向に突出するセンターポール18と、トッププレート19と、ボトムプレート17とトッププレート19の間に配置される永久磁石20と、を含む。
【0016】
フレーム16は、磁気回路12のトッププレート19に固定されている。フレーム16の外周縁にはフランジ21が形成されている。振動板14の外周縁は、フレーム16のフランジ21に固定されている。振動板14の外周縁には、可撓性を有する素材でできたエッジ(不図示)が備えられ、エッジがフレーム16のフランジ21に固定されていてもよい。
【0017】
ブラケット11は、スピーカ本体10をインナーパネル2に取り付けるための取付部材である。ブラケット11は、例えばABS樹脂などの樹脂製であってリング状に形成されており、ブラケット内部空間22を有する。スピーカ本体10は、ブラケット11のブラケット内部空間22に収容されている。詳しくは、フレーム16はブラケット内部空間22に収容されており、磁気回路12はブラケット内部空間22に収容されずに露出している。
【0018】
そして、ブラケット11を車室内側から複数のネジ7でインナーパネル2に固定することで、スピーカ本体10はインナーパネル2に固定される。なお、ブラケット11は省略することができる。この場合、典型的には、スピーカ本体10のフレーム16のフランジ21が複数のネジ7でインナーパネル2に固定される。
【0019】
本実施形態において、ブラケット11は、スピーカ本体10の振動板14を支持する支持部材の一具体例である。しかし、ブラケット11を省略した場合、スピーカ本体10のフレーム16がスピーカ本体10の振動板14を支持する支持部材の一具体例となり得る。ブラケット11およびフレーム16は、振動板14を全周に渡って支持する支持部材に限定されず、振動板14の外周の一部を支持する支持部材であってよい。
【0020】
図1に示すようにブラケット11は概ね断面矩形であって、放音方向を向く、即ち、車室を向く車室面11aを有する。車室面11aは、クッション搭載面の一具体例である。ブラケット11は、矩形に限定されず、曲面を有して構成されていてもよい。
【0021】
ドアトリム5は、ドアトリム本体50と、グリル51と、を含む。ドアトリム本体50は、例えばABS樹脂などの樹脂製のパネルであって、スピーカアセンブリ4と対向する部分に開口50aを有する。グリル51は、開口50aを塞ぐように配置されており、スピーカアセンブリ4から出力された再生音が通過できるように例えばメッシュ状に形成されている。ドアトリム5は、グリル51が含まれない構成であってもよい。
【0022】
ドアトリム本体50の開口50aの周縁近傍には、インナーパネル2に向かって突出する環状のトリムリブ50bが形成されている。
【0023】
図2は、
図1のA部拡大図である。
図2に示すように、クッション部材30は、ブラケット11の車室面11aに例えば両面テープにて環状に貼り付けられている。そして、ドアトリム5をインナーパネル2に取り付けた状態で、ドアトリム5のドアトリム本体50のトリムリブ50bがクッション部材30に食い込んでいる。これによって、スピーカ前面空間が、振動板14、エッジ(不図示)、フレーム16、ブラケット11の車室面11a、クッション部材30、クッション部材30に接触したトリムリブ50b、ドアトリム5、によって車室内のみと連通することになり、振動板14から出力された再生音がインナーパネル2とドアトリム5の間に漏れることなく、車室内へと出力される。これにより、再生音の音質を劣化させる可能性を抑制することができる。
【0024】
クッション部材30は、支持部材の一具体例であるブラケット11の車室面11aに貼り付けられるものとしたが、他の形態の支持部材、例えばブラケット11を介さずにフレーム16が支持部材として振動板を支持し、ドアトリム5のトリムリブ50bと勘合する場合、フレーム16の車室面側に貼り付けられてもよい。また、クッション部材30は、ブラケット11やフレーム16に、振動板14やエッジ(不図示)の貼り付け部を挟んで貼り付けられてもよい。貼り付ける面も、車室面側に限定されない。これらの場合であっても、振動板14から出力された再生音がインナーパネル2とドアトリム5の間に漏れることなく、車室内へと出力される。これにより、再生音の音質を劣化させる可能性を抑制することができる。
【0025】
図3には、変形前のクッション部材30の断面図を示している。
図3に示すように、クッション部材30は、クッション本体部31と、外周面補強部32と、内周面補強部33と、を含む。
【0026】
クッション本体部31は、貼付面34、トリム面35、外周面36、内周面37を有する。クッション本体部31は、典型的には、連続気泡構造体であるウレタンフォームである。
【0027】
貼付面34は、ブラケット11の車室面11aに例えば両面テープで貼り付けられる。
【0028】
トリム面35は、典型的には、貼付面34と反対側の面である。
図2に示すように、トリム面35は、インナーパネル2にドアトリム5を取り付けた状態でトリムリブ50bに接触する、トリムリブ50bに対向する面である。即ち、
図2に示すように、インナーパネル2にドアトリム5を取り付けた状態でトリムリブ50bはトリム面35に食い込む。
【0029】
図3に戻り、外周面36及び内周面37は、クッション本体部31の2つの側面に相当している。即ち、外周面36及び内周面37は、トリム面35から立ち上がる面であって、貼付面34とトリム面35を互いに連結する。
【0030】
外周面補強部32及び内周面補強部33は、トリム面35、または、クッション本体部31よりも高剛性である。外周面補強部32及び内周面補強部33は、クッション本体部31の外周面36及び内周面37の少なくとも一部、または外周面36及び内周面37の全周に渡って、それぞれ設けられている。外周面補強部32及び内周面補強部33は、クッション本体部31と一体であって、クッション本体部31の外周面36及び内周面37の剛性を、トリム面35よりも高めた部位であってもよい。
【0031】
外周面補強部32及び内周面補強部33は、典型的には、クッション本体部31の2つの側面(外周面36及び内周面37)を熱硬化することにより形成され得る。即ち、クッション本体部31の融点よりも高い温度に加熱された物体をクッション本体部31の2つの側面に押し当てることにより、クッション本体部31の2つの側面を加熱溶融し冷却硬化させることで、外周面補強部32及び内周面補強部33が形成される。上記の熱硬化は、クッション部材30を環状に曲げてブラケット11の車室面11aに貼り付ける前であって、クッション部材30が直線上に延びている段階で行われることが好ましい。
【0032】
これに対し、外周面補強部32及び内周面補強部33は、クッション本体部31の外周面36及び内周面37に貼り付けられる、クッション本体部31よりも高剛性なシートやウレタンフォームなどの、別部材であってもよい。言い換えると、クッション部材30は、クッション本体部31の一面のうち少なくとも一部が外周面補強部32または内周面補強部33である部材であってもよく、クッション本体部31の少なくとも一面に、外周面補強部32または内周面補強部33を組み合わせて構成された部材であってもよい。
【0033】
外周面補強部32及び内周面補強部33の厚みは、典型的には、外周面36と内周面37の間の距離の1/10から1/4までの任意の値とすることができる。
【0034】
このように、クッション部材30が外周面補強部32及び内周面補強部33を備えることで、クッション部材30の意図しない変形癖が付き難くなる。具体的には、クッション部材30がブラケット11の車室面11aに貼り付けられた状態でスピーカアセンブリ4を袋に入れて保管した場合、クッション部材30が袋によって径方向内方または外方に倒れるように変形した状態が継続する可能性がある。ここで、「径方向」とは、スピーカ本体10のボイスコイル13の径方向に相当している。この場合、スピーカアセンブリ4を袋から取り出した後も、クッション部材30には、トリム面35が湾曲したり、トリム面35が径方向内方または外方に倒れ込むような変形癖が残ることになる。これにより、
図2に示すようにトリムリブ50bをトリム面35に食い込ませることができなくなり、クッション部材30によるシール性が損なわれる虞がある。これに対し、クッション部材30が外周面補強部32及び内周面補強部33を備えることで、クッション部材30がブラケット11の車室面11aに貼り付けられた状態でスピーカアセンブリ4を袋に入れて保管した場合でも、クッション部材30が袋によって径方向内方または外方に倒れるように変形することがなく、従って、クッション部材30の意図しない変形癖が付き難くなり、もって、クッション部材30によるシール性が問題なく発揮される。外周面補強部32及び内周面補強部33は、クッション本体部31の外周面36及び内周面37の少なくともいずれかに、全周に渡って設けられてもよく、クッション部材30および外周面補強部32及び内周面補強部33の剛性に応じた、クッション部材30の意図しない変形が抑制できる間隔を空けて、断続的に設けられてもよい。例えばクッション部材30および外周面補強部32及び内周面補強部33のいずれかの剛性が高い場合、クッション部材30および外周面補強部32及び内周面補強部33のいずれかの剛性が低い場合と比べて、広い間隔を持って、外周面補強部32及び内周面補強部33が設けられてよい。
【0035】
上記の効果は、クッション部材30が少なくとも外周面補強部32及び内周面補強部33の何れか一方を備えることで発揮され得る。外周面補強部32も内周面補強部33もクッション本体部31の径方向内方または外方への変形を抑制できるからである。ただし、スピーカアセンブリ4を梱包する袋がクッション本体部31の外周面36に接触し易いことを考慮すると、上記の効果に対しては、内周面補強部33よりも外周面補強部32の方が寄与すると言える。またクッション部材30が少なくとも外周面補強部32及び内周面補強部33の何れか一方を備えてクッション本体部31の径方向内方への変形を抑制する場合には、クッション部材30の変形が振動板14またはエッジの振動を阻害し、再生音の音質を劣化させる可能性を抑制することができる。この効果に対しては、外周面補強部32よりも内周面補強部33の方が、より径方向内方への変形を抑制する効果に寄与すると言える。
【0036】
また、
図2に示すように、クッション部材30が外周面補強部32及び内周面補強部33を備えることにより、トリムリブ50bがトリム面35に食い込んだとき、トリム面35には高い張力が発生する。これは、外周面補強部32及び内周面補強部33が互いに近づく方向に変形し難いからである。そして、トリム面35に発生した高い張力により、トリム面35とトリムリブ50bとの接触圧が高まり、もって、クッション部材30によるシール性が高い次元で実現される。この効果は、クッション部材30が外周面補強部32及び内周面補強部33の何れか一方を備える場合でも発揮され得る。この場合でも、クッション部材30が外周面補強部32及び内周面補強部33の何れも備えない場合と比較して、トリム面35の弾性変形が外周面補強部32又は内周面補強部33によって抑制されるからである。
【0037】
ところで、インナーパネル2にドアトリム5を取り付けるに際し、
図1に示すドアトリム5のフック8がインナーパネル2のパネル上端2aから若干上方に浮いたまま、インナーパネル2のパネル上端2aを支点としてドアトリム5をスピーカアセンブリ4に近づけることが懸念される。この場合でも、ドアトリム5に設けられた複数のクリップをインナーパネル2に設けられた複数のクリップ孔に嵌合することで、クリップ嵌合によるセルフアライメント効果により、上記の浮きは自動的に解消される。しかしながら、ドアトリム5のフック8がインナーパネル2のパネル上端2aから若干上方に浮いたまま、インナーパネル2のパネル上端2aを支点としてドアトリム5をスピーカアセンブリ4に近づけた場合、クッション部材30によるシール性が悪くなる問題が生じ得る。
【0038】
図4から
図6には、比較例を示している。
図4及び
図5には、ドアトリム5のフック8がインナーパネル2のパネル上端2aから若干浮いたまま、インナーパネル2のパネル上端2aを支点としてドアトリム5をスピーカアセンブリ4に近づけたときのクッション部材30とトリムリブ50bを示している。
図4及び
図5に示すように、ドアトリム5がインナーパネル2に対して相対的に浮いた状態でインナーパネル2にドアトリム5を取り付けようとすると、トリムリブ50bがトリム面35と外周面36が交差する角部38に接触し、角部38が対角方向に押し退けられる。その後、
図6に示すように、トリムリブ50bは、上記のセルフアライメント効果により、ブラケット11の車室面11aに近づきつつ径方向内方に平行移動する。この結果、クッション本体部31の角部38は更に対角方向に押し退けられる。結果として、クッション本体部31は、トリム面35及び外周面36の大きな湾曲変形を伴いつつ断面三角形状に圧縮変形されることになる。この断面三角形状の圧縮変形は、環状に曲げられたクッション本体部31の全域で生じるものではなく、環状のクッション本体部31のうち最もフック8に近い上端領域の外周側及び最もフック8から遠い下端領域の内周側でのみ生じる。従って、環状のクッション本体部31に対するトリムリブ50bの食い込み方が場所によって異なるので、クッション部材30によるシール性を著しく損なうこととなる。
【0039】
図7から
図9は、本実施形態を示す図である。
図7から
図9は、
図4から
図6にそれぞれ対応している。
図7及び
図8には、ドアトリム5のフック8がインナーパネル2のパネル上端2aから若干浮いたまま、インナーパネル2のパネル上端2aを支点としてドアトリム5をスピーカアセンブリ4に近づけたときのクッション部材30とトリムリブ50bを示している。
図7及び
図8に示すように、ドアトリム5がインナーパネル2に対して相対的に浮いた状態でインナーパネル2にドアトリム5を取り付けようとすると、トリムリブ50bがトリム面35と外周面36が交差する角部38に接触する。このとき、外周面補強部32が、貼付面34とトリム面35が向かい合う方向において圧縮変形し難い性質を有しているので、外周面補強部32は、径方向外方に湾曲変形してトリムリブ50bから径方向外方に逃げることになる。従って、角部38が対角方向に大きく押し退けられることがない。その後、
図9に示すように、トリムリブ50bは、上記のセルフアライメント効果により、ブラケット11の車室面11aに近づきつつ径方向内方に平行移動する。このとき、外周面補強部32の剛性により角部38が径方向内方に移動することなく、単にトリムリブ50bがトリム面35上を径方向内方に向かって滑る。この結果、トリムリブ50bがトリム面35の適正な位置、即ち、トリム面35の中央に食い込むことになり、もって、環状のクッション部材30による高いシール性がクッション部材30全域にわたって発揮されるようになる。
【0040】
また、クッション部材30が外周面補強部32を備えることで、ドアトリム5のトリムリブ50bが外周面補強部32に当たったときに作業員に異物感を与えることができる。作業員は、異物感を感じ取ることで、ドアトリム5がインナーパネル2に対して相対的に浮いた状態でインナーパネル2にドアトリム5を取り付けようとしたことを認識し得る。
【0041】
次に、
図10を参照して、クッション部材30の製造方法を説明する。
【0042】
S100:
まず、クッション本体部31を形成する。具体的には、金型内でウレタンを発泡させることによりクッション本体部31を形成する。
【0043】
S110:
次に、クッション本体部31の2つの側面を熱硬化することにより、2つの側面に2つの側面補強部をそれぞれ形成する。2つの側面補強部は、それぞれ、クッション部材30を環状に湾曲させた際に外周面補強部32及び内周面補強部33となる。
【0044】
以上に、第1実施形態を説明したが、上記第1実施形態は以下の特徴を有する。
【0045】
スピーカ本体10(車載用スピーカ)の振動板14の外周を支持するブラケット11(支持部材)に貼り付けられ、ブラケット11とドアトリム5との間に挟まれる、クッション部材30は、ドアトリム5と接触するトリム面35と、トリム面35から立ち上がる外周面36及び内周面37(2つの側面)と、を備える。外周面36及び内周面37は、トリム面35よりも高剛性である外周面補強部32及び内周面補強部33をそれぞれ有する。以上の構成によれば、クッション部材30に意図しない変形癖が付き難い。
【0046】
なお、外周面36及び内周面37に外周面補強部32及び内周面補強部33をそれぞれ設けることに代えて、外周面36及び内周面37の何れか一方のみに補強部(外周面補強部32又は内周面補強部33)を設けるようにしてもよい。
【0047】
図10に示すように、クッション部材30は、クッション本体部31を形成し(S100)、クッション本体部31の2つの側面を熱硬化することにより外周面補強部32及び内周面補強部33を形成する(S110)。以上の方法によれば、外周面補強部32及び内周面補強部33を安価に形成することができる。
【0048】
(第2実施形態)
以下、
図11及び
図12を参照して、本開示の第2実施形態を説明する。以下、本実施形態が上記第1実施形態と相違する点を説明し、重複する説明は省略する。
【0049】
本実施形態では、
図11に示すように、貼付面34(トリム面35と対向する面)に、クッション本体部31よりも高剛性である対向面補強部40が設けられている。対向面補強部40は、外周面補強部32及び内周面補強部33と連結されて設けられている。即ち、外周面補強部32、内周面補強部33、対向面補強部40は、一体的に形成されたU字補強部41を構成する。換言すれば、クッション部材30は、クッション本体部31とU字補強部41によって構成される。そして、貼付面34は、ブラケット11の車室面11aに対して対向面補強部40を挟んで間接的に貼り付けられることになる。対向面補強部40は、外周面補強部32と同様、クッション本体部31のトリム面35と対向する面を熱硬化させることにより形成し得る。また、U字補強部41は、クッション部材30の表面でなく、クッション部材30の内部に備えられてもよい。この場合、クッション部材30の断面から見た場合に、H字形である補強部であってもよい。
【0050】
このようにクッション部材30が対向面補強部40を備えることで、外周面補強部32及び内周面補強部33の車室面11a側の端部32a及び端部33aの支持態様が単純支持(simply supported)ではなく固定支持(fixed)となる。これにより、
図12に示すように、端部32a及び端部33aの撓み角は理論上ゼロとなり、外周面補強部32及び内周面補強部33が互いに近づくことが抑制される。これにより、トリムリブ50bがトリム面35に食い込んだとき、トリム面35には更に高い張力が発生し、もって、クッション部材30によるシール性が更に高い次元で実現される。また、対向面補強部40は、外周面補強部32及び内周面補強部33との間が必ずしも厳密に連結されていなくてもよく、外周面補強部32及び内周面補強部33が互いに近づくことが抑制される効果を有する程度の隙間があってもよい。
【0051】
本実施形態では、クッション部材30が、外周面補強部32、内周面補強部33、対向面補強部40から成るU字補強部41を備えることとしたが、これに代えて、外周面補強部32と対向補強部40から成るL字補強部を備えてもよい。この場合でも、外周面補強部32の端部32aの撓み角が理論上ゼロとなるので、外周面補強部32が径方向内方に倒れるように変形することが抑制され、もって、クッション部材30によるシール性が高い次元で実現される。クッション部材30が内周面補強部33と対向面補強部40から成るL字補強部を備える場合も同様である。またL字補強部は、クッション部材30の表面でなく、クッション部材30の内部に備えられてもよい。この場合、クッション部材30の断面から見た場合に、T字形である補強部であってもよい。
【0052】
以上、第2実施形態を説明したが、第2実施形態は以下の特徴を有する。
【0053】
クッション部材30は、トリム面35と対向する面に設けられ、トリム面35よりも高剛性である対向面補強部40を更に備える。対向面補強部40は、外周面補強部32及び内周面補強部33と一体的に設けられている。以上の構成によれば、クッション部材30によるシール性が更に高い次元で実現される。
【0054】
また、クッション部材30が対向面補強部40を備えることで、ブラケット11の車室面11aに窪みや段差があっても気にすることなくクッション部材30をブラケット11の車室面11aに貼り付けることができる。
【0055】
(第3実施形態)
以下、
図13を参照して、本開示の第3実施形態を説明する。以下、本実施形態が上記第1実施形態と相違する点を説明し、重複する説明は省略する。
【0056】
本実施形態では、
図13に示すように、ブラケット11の車室面11aから放音方向に環状に突出するリブ11bが設けられている。即ち、ブラケット11には、車室面11aに対して直交する方向に突出するリブ11bが設けられている。リブ11bは、外周面11c及び内周面11dを有する。リブ11bは、ブラケットでなく、別の形態の支持部材の一例であるフレーム16に設けられていてもよい。
【0057】
クッション部材30は、リブ11bに隣接するように車室面11aに貼り付けられている。即ち、クッション部材30は、リブ11bの外周面11cに面接触するように配置されている。この場合、クッション部材30は、外周面補強部32及び内周面補強部33のうち、特に外周面補強部32を備えることが好ましい。即ち、クッション本体部31の径方向内方への変形はリブ11bによって阻止されるので、内周面補強部33は省略することができる。クッション部材30は、リブ11bの外周面11cに貼り付けられてもよい。すなわち、クッション部材30の内周面37が、貼付面であってもよい。
【0058】
これに対し、クッション部材30がリブ11bの内周面11dに面接触するように配置される場合、クッション部材30は、外周面補強部32及び内周面補強部33のうち、特に内周面補強部33を備えることが好ましい。クッション部材30は、リブ11bの内周面11dに貼り付けられてもよい。すなわち、クッション部材30の外周面36が、貼付面であってもよい。
【0059】
以上に、第3実施形態を説明したが、第3実施形態は以下の特徴を有する。
【0060】
スピーカアセンブリ4(車載用スピーカアセンブリ)は、クッション部材30とスピーカ本体10(車載用スピーカ)を備える。ブラケット11(支持部材)には、トリム面35に対して直交する方向に突出するリブ11bが設けられている。クッション部材30の内周面37は、リブ11bに隣接している。クッション部材30の外周面36に外周面補強部32が設けられている。即ち、クッション部材30の外周面36及び内周面37のうちリブ11bから遠い方である外周面36に外周面補強部32が設けられている。以上の構成によれば、外周面補強部32とリブ11bでクッション本体部31を挟む構成が実現される。
【0061】
また、
図13に示すように、内周面補強部33を省略することにより、クッション部材30をリブ11bに沿って変形させる際に内周面37がシワになり難い。
【0062】
(第4実施形態)
以下、
図14を参照して、本開示の第4実施形態を説明する。以下、本実施形態が上記第1実施形態と相違する点を説明し、重複する説明は省略する。
【0063】
上記第1実施形態では、外周面補強部32及び内周面補強部33は、クッション部材30の長手方向全域または所定の間隔を空けて設けられている。
【0064】
これに対し、本実施形態では、
図14に示すように、クッション本体部31のうちトリムリブ50bが最初に接触する領域にのみ、外周面補強部32及び内周面補強部33が設けられている。前述したように、トリムリブ50bは、スピーカアセンブリ4の典型的には上方に位置するフック8を軸に弧を描きながらクッション本体部31のトリム面35に近づくので、環状のクッション本体部31のうちトリムリブ50bが最初に接触する領域とは、環状のクッション本体部31の上方領域31a、または、スピーカアセンブリ4から見てフック8が位置する方向の領域(不図示)を意味する。外周面補強部32及び内周面補強部33は高剛性であるからクッション部材30を湾曲させてブラケット11の車室面11aに貼り付ける作業性を悪化させることを踏まえると、上記のように外周面補強部32及び内周面補強部33を設ける領域を限定することで、スピーカアセンブリ4の取付時にクッション部材30を変形させてしまう弊害を抑制しつつ、クッション部材30を湾曲させながらブラケット11の車室面11aに貼り付ける作業性を改善し、また剛性を高める領域を限定することで、製造工数の削減に寄与できると言える。
【0065】
上記第1から第4実施形態は、適宜に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 フロントドア
2 インナーパネル
2a パネル上端
3 アウターパネル
4 スピーカアセンブリ
5 ドアトリム
6 ドアパネル
7 ネジ
8 フック
10 スピーカ本体
11 ブラケット
11a 車室面
11b リブ
11c 外周面
11d 内周面
12 磁気回路
13 ボイスコイル
14 振動板
15 ダンパー
16 フレーム
17 ボトムプレート
18 センターポール
19 トッププレート
20 永久磁石
21 フランジ
22 ブラケット内部空間
30 クッション部材
31 クッション本体部
31a 上方領域
32 外周面補強部
32a 端部
33 内周面補強部
33a 端部
34 貼付面
35 トリム面
36 外周面
37 内周面
38 角部
40 対向面補強部
41 U字補強部
50 ドアトリム本体
50a 開口
50b トリムリブ
51 グリル