IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 村田機械株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-運搬台車、及び、運搬台車移動ユニット 図1
  • 特許-運搬台車、及び、運搬台車移動ユニット 図2
  • 特許-運搬台車、及び、運搬台車移動ユニット 図3
  • 特許-運搬台車、及び、運搬台車移動ユニット 図4
  • 特許-運搬台車、及び、運搬台車移動ユニット 図5A
  • 特許-運搬台車、及び、運搬台車移動ユニット 図5B
  • 特許-運搬台車、及び、運搬台車移動ユニット 図5C
  • 特許-運搬台車、及び、運搬台車移動ユニット 図5D
  • 特許-運搬台車、及び、運搬台車移動ユニット 図6
  • 特許-運搬台車、及び、運搬台車移動ユニット 図7
  • 特許-運搬台車、及び、運搬台車移動ユニット 図8
  • 特許-運搬台車、及び、運搬台車移動ユニット 図9
  • 特許-運搬台車、及び、運搬台車移動ユニット 図10
  • 特許-運搬台車、及び、運搬台車移動ユニット 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】運搬台車、及び、運搬台車移動ユニット
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20241112BHJP
【FI】
G05D1/43
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021035459
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2022135557
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】森口 智規
【審査官】渡邊 捷太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-148871(JP,A)
【文献】特開平05-112238(JP,A)
【文献】特開平09-185413(JP,A)
【文献】特開2020-193077(JP,A)
【文献】特開2019-133404(JP,A)
【文献】特開2012-243246(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0073402(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0050365(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、前記車体の第1端部に設けられた第1レーザレンジセンサと、前記車体の前記第1端部とは反対側の第2端部に設けられた第2レーザレンジセンサと、を備える自律走行車により運搬される運搬台車であって、
物品を積載可能な積載部と、
前記積載部を支持する上部と、前記運搬台車を運搬する際に前記自律走行車に支持される下部と、を有する枠体と、
前記枠体から下方に延びる第1支持脚及び第2支持脚と、
第1支持脚に接合され、下面に車輪が設けられる第1車輪支持体と、
第2支持脚に接合され、下面に車輪が設けられる第2車輪支持体と、
を備え、
前記枠体の下部が前記自律走行車により支持された状態において、前記第1支持脚及び第2支持脚は、以下の位置関係にある、
(i)記第1支持脚により前記第1レーザレンジセンサ及び前記第2レーザレンジセンサの検出範囲が遮られることで規定される第1重複領域、及び、前記第2支持脚により前記第1レーザレンジセンサ及び前記第2レーザレンジセンサの検出範囲が遮られることで規定される第2重複領域が、前記枠体の外縁よりも内側にある、
運搬台車。
【請求項2】
前記枠体に設けられ、前記自律走行車が前記枠体の下方に進入する際に前記枠体に対する前記自律走行車の位置を検出するためのマーカをさらに備える、請求項1に記載の運搬台車。
【請求項3】
前記枠体の下部には、前記自律走行車が通過可能な切り欠きが設けられる、請求項1又は2に記載の運搬台車。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の運搬台車と、
前記運搬台車の前記枠体の下方に潜り込み、前記運搬台車の前記枠体の下部を支持することで前記運搬台車を運搬する自律走行車と、
を備え、
前記自律走行車は、
車体と、
前記車体の第1端部に設けられた第1レーザレンジセンサと、
前記車体の前記第1端部とは反対側の第2端部に設けられた第2レーザレンジセンサと、
前記車体の上面に設けられ、前記運搬台車の前記枠体の下部を支持する支持部と、
を有する運搬台車移動ユニット。
【請求項5】
前記支持部は、前記運搬台車の枠体の下部を持ち上げることで前記枠体の下部を支持し、
前記支持部が前記運搬台車の前記枠体の下部を持ち上げた状態において、前記第1支持脚及び前記第2支持脚の高さ範囲内に、前記第1レーザレンジセンサ及び前記第2レーザレンジセンサのセンシング高さ位置が入っている、請求項4に記載の運搬台車移動ユニット。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行車により運搬される運搬台車、及び、当該運搬台車と自律走行車とを備える運搬台車移動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の移動領域を自律的に走行する自律走行車と、物品を積載可能であり自律走行車に支持されて移動することで物品を運搬する運搬台車と、を備えた移動ユニットが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
自律走行車は、自律走行する際に、移動領域における自己位置を推定(自己位置推定)する。自己位置推定などに用いるデータを収集するため、自律走行車は、周囲の障害物や壁などの情報を収集するレーザレンジセンサを備えている。レーザレンジセンサは、レーザ光を出力し当該レーザ光を所定の範囲で走査し、障害物や壁などによりレーザ光が反射されて生じる反射光を受光することで、周囲の障害物や壁などを検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-148871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の運搬台車は、自律走行車により支持されない状態のときに自身を支持するために、運搬台車の下方の延びる部材(例えば、支柱)に取り付けられた車輪を有している。自律走行車は、運搬台車を移動させるときに、運搬台車の下方に潜り込んでその下部を支持する。そのため、従来の移動ユニットでは、自律走行車が運搬台車を支持するときに、レーザレンジセンサからのレーザ光が上記部材により遮られて、移動ユニットの周囲に存在する障害物等の一部を適切に検知できなかった。
【0005】
本発明の目的は、レーザレンジセンサを有する自律走行車と自律走行車に支持されて運搬される運搬台車とを備える移動ユニットにおいて、移動ユニットの周囲に存在する障害物等を適切に検知可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る運搬台車は、自律走行車により運搬される運搬台車である。自律走行車は、車体と、第1レーザレンジセンサと、第2レーザレンジセンサを備える。第1レーザレンジセンサは、車体の第1端部に設けられる。第2レーザレンジセンサは、車体の第1端部とは反対側の第2端部に設けられる。
運搬台車は、積載部と、枠体と、第1支持脚と、第2支持脚と、第1車輪支持体と、第2車輪支持体と、を備える。
積載部は、物品を積載可能である。枠体は、積載部を支持する上部と、運搬台車を運搬する際に自律走行車に支持される下部と、を有する。
第1支持脚及び第2支持脚は、枠体から下方に延びる。
第1車輪支持体は、第1支持脚に接合され、下面に車輪が設けられる。
第2車輪支持体は、第2支持脚に接合され、下面に車輪が設けられる。
【0007】
枠体の下部が自律走行車により支持された状態において、第1支持脚及び第2支持脚は、以下のいずれかの位置関係にある。
(i)第1支持脚及び第2支持脚のいずれもが、前記第1レーザレンジセンサ及び前記第2レーザレンジセンサによって画定される非検出領内にある。
(ii)第1支持脚により第1レーザレンジセンサ及び第2レーザレンジセンサの検出範囲が遮られることで規定される第1重複領域、及び、第2支持脚により第1レーザレンジセンサ及び第2レーザレンジセンサの検出範囲が遮られることで規定される第2重複領域が、枠体の外縁よりも内側にある。
【0008】
運搬台車の第1支持脚と第2支持脚とを上記のような位置関係とすることにより、レーザレンジセンサの検出範囲内に支持脚が含まれなくなるので、レーザレンジセンサが障害物等を欠けることなく検知できる。
または、一方のレーザレンジセンサの検出範囲に支持脚が含まれるために当該レーザレンジセンサが障害物等を検知できなくても、他方のレーザレンジセンサの検出範囲内に当該障害物等を含めることができる。つまり、一方のレーザレンジセンサで検知できない障害物等を他方のレーザレンジセンサにより検知できる。
【0009】
運搬台車は、マーカをさらに備えてもよい。マーカは、枠体に設けられ、自律走行車が枠体の下方に進入する際に枠体に対する自律走行車の位置を検出する。
これにより、自律走行車が運搬台車の枠体の下方に進入する際に、自律走行車が枠体の下部における位置を正確に知ることができる。
【0010】
枠体の下部には、自律走行車が通過可能な切り欠きが設けられてもよい。これにより、自律走行車は、運搬台車の枠体を支持する際に枠体の下方に進入しやすくなる。
【0011】
本発明の他の見地に係る運搬台車移動ユニットは、上記の運搬台車と、自律走行車と、を備える。自律走行車は、運搬台車の前記枠体の下方に潜り込み、運搬台車の枠体の下部を支持することで運搬台車を運搬する。
自律走行車は、車体と、第1レーザレンジセンサと、第2レーザレンジセンサと、支持部と、を有する。
第1レーザレンジセンサは、車体の第1端部に設けられる。
第2レーザレンジセンサは、車体の第1端部とは反対側の第2端部に設けられる。
支持部は、車体の上面に設けられ、運搬台車の枠体の下部を支持する。
【0012】
上記の運搬台車移動ユニットにおいては、運搬台車の枠体の下部が自律走行車の支持により支持された状態において、運搬台車の第1支持脚及び第2支持脚は、以下のいずれかの位置関係にある。
(i)第1支持脚及び第2支持脚のいずれもが、前記第1レーザレンジセンサ及び前記第2レーザレンジセンサによって画定される非検出領域内にある。
(ii)第1支持脚により第1レーザレンジセンサ及び第2レーザレンジセンサの検出範囲が遮られることで規定される第1重複領域、及び、第2支持脚により第1レーザレンジセンサ及び第2レーザレンジセンサの検出範囲が遮られることで規定される第2重複領域が、枠体の外縁よりも内側にある。
【0013】
運搬台車の第1支持脚と第2支持脚とを上記のような位置関係とすることにより、自律走行車のレーザレンジセンサの検出範囲内に支持脚に遮られなくなるので、レーザレンジセンサが障害物等を欠けることなく検知できる。
または、一方のレーザレンジセンサの検出範囲に支持脚が含まれるために当該レーザレンジセンサが障害物等を検知できなくても、他方のレーザレンジセンサの検出範囲内に当該障害物等を含めることができる。つまり、一方のレーザレンジセンサで検知できない障害物等を他方のレーザレンジセンサにより検知できる。
【0014】
支持部は、運搬台車の枠体の下部を持ち上げることで枠体の下部を支持してもよい。
この場合、支持部が運搬台車の枠体の下部を持ち上げた状態において、運搬台車の第1支持脚及び第2支持脚の高さ範囲内に、自律走行車の第1レーザレンジセンサ及び第2レーザレンジセンサのセンシング高さ位置が入っていてもよい。
これにより、自律走行車が運搬台車を持ち上げて支持する際に、自律走行車のレーザレンジセンサから出力されるレーザ光がその走査範囲の大部分で支持脚に遮られなくなる。
【発明の効果】
【0015】
運搬台車移動ユニットでは、自律走行車の各レーザレンジセンサにより障害物等を欠けることなく検知できるとともに、一方のレーザレンジセンサにより検知できなかった障害物等を他方のレーザレンジセンサで検知できるので、周囲に存在する障害物等を適切に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】移動ユニットの斜視図。
図2】自律走行車の側面図。
図3】自律走行車の上面図。
図4】自律走行車において支持部を昇降させた状態を示す図。
図5A】再生器材を運搬するための積載部を有する運搬台車の一例を示す図。
図5B】リネンを運搬するための積載部を有する運搬台車の一例を示す図。
図5C】リネンを運搬するための積載部を有する運搬台車の他の例を示す図。
図5D】検体等を運搬するための積載部を有する運搬台車の一例を示す図。
図6】マーカの配置位置の一例を示す図。
図7】マーカの構成を示す図。
図8】平面視における第1支持脚と第2支持脚の配置位置を示す図。
図9】第1レーザレンジセンサ、第2レーザレンジセンサ、第1支持脚、及び、第2支持脚の配置の変形例を示す図。
図10】第1レーザレンジセンサ、第2レーザレンジセンサ、第1支持脚、及び、第2支持脚の配置の他の変形例を示す図(その1)。
図11】第1レーザレンジセンサ、第2レーザレンジセンサ、第1支持脚、及び、第2支持脚の配置の他の変形例を示す図(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.第1実施形態
(1)運搬台車移動ユニット
図1を用いて、運搬台車移動ユニット100(以下、移動ユニット100と呼ぶ)を説明する。図1は、移動ユニットの斜視図である。以下の説明において、自律走行車1及び運搬台車3の進行方向をX方向と定義し、水平面内で進行方向とは垂直な方向、すなわち、自律走行車1及び運搬台車3の幅方向をY方向と定義し、高さ方向をZ方向と定義する。
移動ユニット100は、例えば、病院内で使用される各種物品を運搬するための移動ユニットである。移動ユニット100は、病院内の移動開始位置(物品の運搬開始位置)から移動終了位置(物品の運搬目的位置)まで自律的に移動して、無人で物品を運搬できる。移動ユニット100で運搬可能な物品としては、例えば、患者に投与するための薬剤、手術等の患者の治療に用いる滅菌器材、マスク、ガーゼなどの使い捨ての医療材料、検査対象の患者の血液や尿などの検体、病理検体、輸血液、医療機器、及び、布団等のリネン、などがある。
【0018】
図1に示すように、移動ユニット100は、自律走行車1と、運搬台車3と、を備える。自律走行車1は、運搬台車3を支持した状態で、又は、単独で、物品を運搬する所定の領域内(例えば、病院内)を無軌道で自律的に走行する。図1に示すように、自律走行車1は、運搬台車3の枠体の下方に潜り込み、運搬台車3の枠体の下部を持ち上げて支持することで、運搬台車を運搬する。
【0019】
運搬台車3は、物品を収納して運搬するために用いられる台車であって、自律走行車1により支持されることで所定の領域内を運搬される。後述するように、本実施形態において、運搬台車3は、運搬する物品の種類、数量などに応じて複数種類存在する。
【0020】
(2)自律走行車
次に、図2及び図3を用いて、移動ユニット100の自律走行車1の構成を説明する。図2は、自律走行車の側面図である。図3は、自律走行車の上面図である。自律走行車1は、車体Bと、走行部11と、第1レーザレンジセンサ13aと、第2レーザレンジセンサ13bと、支持部15と、制御部17と、を有する。
車体Bは、自律走行車1の本体を構成する、平面視で略矩形の筐体である。走行部11は、車体Bの下部に取り付けられ、自律走行車1を走行させる。走行部11は、差動二輪型の走行部であり、具体的には、一対の主輪11aと、一対の従動輪11bと、を有する。
【0021】
一対の主輪11aのそれぞれは、車体Bの左右に設けられ、モータ11cの出力回転軸の回転に従って回転する。また、モータ11cの出力回転軸には、出力回転軸の回転量を測定するエンコーダが設けられている。一対の従動輪11bのそれぞれは、車体Bの前後に設けられ、主輪11aの回転により車体Bが走行するのに従って従動して回転する。
【0022】
第1レーザレンジセンサ13aは、車体Bの第1端部に設けられる。本実施形態において、第1端部は、車体Bにおいて、自律走行車1の進行方向前側、かつ、幅方向の左端部である。第1レーザレンジセンサ13aは、自律走行車1の主に進行方向前方に存在する物体(例えば、壁、障害物等)の位置に関する情報を取得する。
第2レーザレンジセンサ13bは、車体Bにおいて、第1レーザレンジセンサ13aが設けられる第1端部とは反対側の第2端部に設けられる。本実施形態において、第2端部は、車体Bにおいて、自律走行車1の進行方向後側、かつ、幅方向の右端部である。第2レーザレンジセンサ13bは、自律走行車1の主に進行方向後方に存在する物体の位置に関する情報を取得する。本実施形態において、第1レーザレンジセンサ13aと第2レーザレンジセンサ13bとは、平面視において、車体Bの中心に対して点対称の位置関係にある。
【0023】
第1レーザレンジセンサ13a、及び、第2レーザレンジセンサ13bは、自律走行車1の周囲に存在する物体に対して照射したレーザ光が当該物体で反射してセンサにより受光されるまでの時間に基づいて、センサと物体との間の距離を測定する測距センサである。第1レーザレンジセンサ13a、及び、第2レーザレンジセンサ13bは、中心角が270°である半円内の範囲にてレーザ光を走査して、当該範囲内にある物体とレーザレンジセンサとの間の距離と、レーザレンジセンサに対する物体の存在方向(角度)と、を当該物体に関する情報として取得する。
【0024】
支持部15は、運搬台車3を運搬する際に、運搬台車3の下部を支持する。本実施形態において、支持部15は、車体Bの上部に設けられ、モータ(図示せず)などの駆動機構により、図4のように高さ方向に昇降可能な平面部材である。図4は、自律走行車において支持部を昇降させた状態を示す図である。
上記の支持部15は、高さ方向に上昇して運搬台車3の下部を持ち上げることで、運搬台車3を支持する。その一方、運搬台車3の下部を持ち上げた支持部15は、高さ方向に下降して運搬台車3を床面に降ろすことで、運搬台車3の支持を解除できる。
【0025】
制御部17は、車体Bの内部に設けられた、CPU、記憶装置(例えば、RAM、ROM、SSD、ハードディスクなど)、ネットワークインタフェース、各種入出力インタフェース等により構成され、自律走行車1を制御するコンピュータシステムである。なお、制御部17の一部又は全部は、SoC(System on Chip)で構成されていてもよい。
【0026】
制御部17は、第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bにより取得された物体に関する情報に基づいて自律走行車1の自己位置を推定し、推定した自己位置から目標位置まで移動ユニット100を移動させるために必要な主輪11aの駆動量に応じた制御信号をモータ11cに出力することで、自律走行車1を自律走行させる。
【0027】
なお、自律走行車1には、自律走行車1への物体の接近を検知する超音波センサが設けられてもよい。超音波センサにより物体の接近が検知された場合、制御部17は、自律走行車1と物体との接触を回避する自律的な走行制御を実行してもよい。これにより、より確実に自律走行車1と物体との接触を回避できる。
【0028】
(3)運搬台車
次に、図5A図5Dを用いて、移動ユニット100の運搬台車3の構成を説明する。図5A図5Dは、運搬台車3の構成を示す図である。運搬台車3は、枠体31と、積載部33と、第1支持脚35aと、第2支持脚35bと、第1車輪支持体37aと、第2車輪支持体37bと、を備える。
枠体31は、平面視で略矩形の部材であって、積載部33を支持する上部31aと、運搬台車3を運搬する際に自律走行車1に支持される下部31bと、を有する。自律走行車1が運搬台車3の枠体31を支持する際に枠体31の下方に進入しやすくなるよう、枠体31の下部31bには、自律走行車1が通過可能な切り欠き31cが設けられる。
【0029】
枠体31の下部31bの切り欠き31cは、枠体31の辺のうち、第1車輪支持体37a及び第2車輪支持体37bが延びる方向とは垂直な方向の辺に設けられる。
具体的には、図5A図5Cに示すように、X方向に延びる車輪支持体を有する運搬台車3の場合には、切り欠き31cは、枠体31のY方向に延びる辺のいずれか又は両方に設けられる。一方、図5Dに示すように、Y方向に延びる車輪支持体を有する運搬台車3の場合には、切り欠き31cは、枠体31のX方向に延びる辺のいずれか又は両方に設けられる。
【0030】
また、枠体31には、自律走行車1が枠体31の下方に進入する際に、枠体31に対する自律走行車1の位置を検出するためのマーカ39が設けられている。具体的には、マーカ39は、枠体31の下部31bの内側において、自律走行車1が枠体31の下方に進入する際に、第1レーザレンジセンサ13aにより検知される位置に設けられる。
例えば、自律走行車1が運搬台車3の進行方向後側から進入する場合には、マーカ39は、図6に示すように、枠体31の下部31bの内側の左側面に設けられる。図6は、マーカの配置位置の一例を示す図である。
【0031】
図7に示すように、マーカ39は、所定の間隔を空けて並んで配置された3つの反射部39aと、2つの反射部39aの間に配置された無反射部39bと、を有する。図7は、マーカの構成を示す図である。
反射部39aは、第1レーザレンジセンサ13aから出力されたレーザ光を反射する部材である。反射部39aは、例えばミラーである。無反射部39bは、第1レーザレンジセンサ13aから出力されたレーザ光を反射しない黒色の部材である。
【0032】
積載部33は、運搬台車3にて運搬する物品を積載する。図5A図5Dに示すように、積載部33の形態は、病院内で運搬される物品の種類、搬送する物品の数量に応じて異なっている。
図5Aに示す運搬台車3の積載部33は、再生器材(滅菌器材、医療機器など)を運搬するための積載部である。この積載部33は、枠体31の上部31aにおいてX方向の前後に設けられた壁部33aと、枠体31の上部31aに積載された複数の収納部33bと、を有する。運搬する再生器材は、収納部33bの内部に収納される。なお、図1に示す運搬台車3も、再生器材を運搬するための台車である。
【0033】
図5B及び図5Cに示す運搬台車3の積載部33は、リネンを運搬するための積載部である。この積載部33は、枠体31の上部31aにおいてX方向の前後に設けられた壁部33aと、枠体31の上部31aのY方向の両端に設けられ、Z方向にスライド可能な開閉部33cと、を有する。運搬するリネンは、枠体31の上部31aの壁部33aと開閉部33cとに囲まれた空間内に収納される。収納されたリネンは、開閉部33cを高さ方向にスライドさせることで取り出すことができる。
図5Bに示す積載部33の壁部33aの高さは、図5Cに示す積載部33の壁部33aの高さよりも大きくなっている。
【0034】
図5Dに示す運搬台車3の積載部33は、検体、薬剤、診療材料等の安全性の確保が必要な物品を運搬するための積載部である。この積載部33は、枠体31の上部31aにおいてX方向の前後に設けられた壁部33aと、枠体31の上部31aのY方向の両端に設けられ、Z方向にスライド可能な鍵付きシャッター33dと、を有する。運搬する物品は、枠体31の上部31aの壁部33aと鍵付きシャッター33dとに囲まれた空間内に収納される。収納された物品は、鍵付きシャッター33dを高さ方向にスライドさせることで取り出すことができる。
【0035】
積載部33は、さらに、把持部33eを有している。把持部33eは、ユーザが人力にて運搬台車3を移動させる際に、ユーザが把持する部材である。図5A及び図5Cに示すような背の低い運搬台車3の場合、把持部33eは、壁部33aの上部に設けられる。一方、図5B及び図5Dに示すような背の高い運搬台車3の場合、把持部33eは、壁部33aの側面に設けられる。
【0036】
第1支持脚35aは、枠体31の下部31bから下方に延びる部材である。
本実施形態において、第1レーザレンジセンサ13aは、自律走行車1の進行方向前側、かつ、幅方向の左端部に設けられる。また、第2レーザレンジセンサ13bは、自律走行車1の進行方向後側、かつ、幅方向の右端部に設けられる。
従って、本実施形態において、第1支持脚35aは、図8に示すように、枠体31の下部31bのうち、移動ユニット100の進行方向前側の端部、かつ、枠体31の幅方向(Y方向)の右端部から下方に延びる。図8は、平面視における第1支持脚と第2支持脚の配置位置を示す図である。
【0037】
より具体的には、第1支持脚35aの平面視における配置位置は、第1レーザレンジセンサ13aの中心から延びる第1支持脚35aの2つの接線L1と、第2レーザレンジセンサ13bの中心から延びる第1支持脚35aの2つの接線L2と、により囲まれる領域(第1重複領域R1と呼ぶ)が、枠体31の外縁よりも内側に存在するよう定められる。
上記の2つの接線L1の間の領域は、第1レーザレンジセンサ13aが第1支持脚35aにより遮られることで規定され、第1レーザレンジセンサ13aにより障害物等を検知できない領域である。また、上記の2つの接線L2の間の領域は、第2レーザレンジセンサ13bが第1支持脚35aにより遮られることで規定され、第2レーザレンジセンサ13bにより障害物等を検知できない領域である。
【0038】
すなわち、接線L1と接線L2とにより囲まれる領域である第1重複領域R1は、第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bが第1支持脚35aにより遮られることで規定される領域であって、第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bにより障害物等を検知できない領域である。本実施形態では、第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bにより障害物等を検知できない領域である第1重複領域R1が、枠体31の外縁よりも内側に存在するよう定められる。そして、第1支持脚35aは、第1重複領域R1内に配置される。
【0039】
また、自律走行車1の支持部15が枠体31の下部31bを持ち上げて支持した状態において、第1支持脚35aの高さ範囲内には、第1レーザレンジセンサ13aのセンシング高さ位置が入る。具体的には、支持部15が枠体31の下部31bを持ち上げた状態において、第1支持脚35aの高さ位置は、車体Bにおける第1レーザレンジセンサ13aの高さ位置とほぼ一致する。
【0040】
第1支持脚35aと第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bとが上記のような位置関係にあることにより、一方のレーザレンジセンサの検出範囲に第1支持脚35aが含まれるために当該レーザレンジセンサが障害物等を検知できなくても、他方のレーザレンジセンサの検出範囲内に一方のレーザレンジセンサにより検知できない障害物等を含めることができる。つまり、一方のレーザレンジセンサで検知できない障害物等を他方のレーザレンジセンサにより検知できる。
【0041】
第2支持脚35bは、枠体31の下部31bから下方に延びる部材である。
本実施形態において、第1レーザレンジセンサ13aは、自律走行車1の進行方向前側、かつ、幅方向の左端部に設けられる。また、第2レーザレンジセンサ13bは、自律走行車1の進行方向後側、かつ、幅方向の右端部に設けられる。
従って、本実施形態において、第2支持脚35bは、図8に示すように、枠体31の下部31bのうち、移動ユニット100の進行方向後側の端部、かつ、枠体31の幅方向(Y方向)の左端部から下方に延びる。
【0042】
より具体的には、第2支持脚35bの平面視における配置位置は、第1レーザレンジセンサ13aの中心から延びる第2支持脚35bの2つの接線L3と、第2レーザレンジセンサ13bの中心から延びる第2支持脚35bの2つの接線L4と、により囲まれる領域(第2重複領域R2と呼ぶ)が、枠体31の外縁よりも内側に存在するよう定められる。
上記の2つの接線L3の間の領域は、第1レーザレンジセンサ13aが第2支持脚35bにより遮られることで規定され、第1レーザレンジセンサ13aにより障害物等を検知できない領域である。また、上記の2つの接線L4の間の領域は、第2レーザレンジセンサ13bが第2支持脚35bにより遮られることで規定され、第2レーザレンジセンサ13bにより障害物等を検知できない領域である。
【0043】
すなわち、接線L3と接線L4とにより囲まれる領域である第2重複領域R2は、第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bが第2支持脚35bにより遮られることで規定される領域であって、第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bにより障害物等を検知できない領域である。本実施形態では、第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bにより障害物等を検知できない領域である第2重複領域R2が、枠体31の外縁よりも内側に存在するよう定められる。そして、第2支持脚35bは、第2重複領域R2内に配置される。
【0044】
また、自律走行車1の支持部15が枠体31の下部31bを持ち上げて支持した状態において、第2支持脚35bの高さ範囲内には、第2レーザレンジセンサ13bのセンシング高さ位置が入っている。具体的には、支持部15が枠体31の下部31bを持ち上げた状態において、第2支持脚35bの高さ位置は、車体Bにおける第2レーザレンジセンサ13bの高さ位置とほぼ一致する。
【0045】
第2支持脚35bと第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bとが上記のような位置関係にあることにより、一方のレーザレンジセンサの検出範囲に第2支持脚35bが含まれるために当該レーザレンジセンサが障害物等を検知できなくても、他方のレーザレンジセンサの検出範囲内に一方のレーザレンジセンサにより検知できない障害物等を含めることができる。つまり、一方のレーザレンジセンサで検知できない障害物等を他方のレーザレンジセンサにより検知できる。
【0046】
第1車輪支持体37aは、細長い部材であり、長さ方向の一端の上部が第1支持脚35aに接合されている。第1車輪支持体37aは、切り欠き31cが設けられた枠体31の辺が延びる方向とは垂直な方向に延びる。
具体的には、図1図5A図5Cに示す切り欠き31cが枠体31の幅方向(Y方向)に延びる辺に設けられている運搬台車3の場合、第1車輪支持体37aは、運搬台車3の進行方向(X方向)に延びる。一方、図5Dに示す切り欠き31cが枠体31の進行方向(X方向)に延びる辺に設けられている運搬台車3の場合、第1車輪支持体37aは、枠体31の幅方向(Y方向)に延びる。
【0047】
第2車輪支持体37bは、細長い部材であり、長さ方向の一端の上面が第2支持脚35bに接合されている。第2車輪支持体37bは、切り欠き31cが設けられた枠体31の辺が延びる方向とは垂直な方向に延びる。
具体的には、図1図5A図5Cに示す切り欠き31cが枠体31の幅方向(Y方向)に延びる辺に設けられている運搬台車3の場合、第2車輪支持体37bは、運搬台車3の進行方向(X方向)に延びている。一方、図5Dに示す切り欠き31cが枠体31の進行方向(X方向)に延びる辺に設けられている運搬台車3の場合、第2車輪支持体37bは、枠体31の幅方向(Y方向)に延びている。
【0048】
第1車輪支持体37a及び第2車輪支持体37bの下面には、車輪Wが設けられる。図1図5A図5Dに示す運搬台車3では、第1車輪支持体37a及び第2車輪支持体37bのそれぞれの長さ方向の両端の下面に、1つずつ合計4つの車輪Wが設けられる。
車輪Wは、枠体31が自律走行車1の支持部15にて支持されていないときには、床面に接して運搬台車3を支持する。一方、枠体31が自律走行車1の支持部15にて持ち上げられて支持されるときには、車輪Wは床面から浮いた状態となる。
【0049】
第1車輪支持体37a及び第2車輪支持体37bの下面に設けられる車輪Wの数は、3以上の任意の数とできる。また、第1車輪支持体37aと第2車輪支持体37bの両方に少なくとも1つの車輪Wが設けられていれば、第1車輪支持体37a及び第2車輪支持体37bのそれぞれに設けられる車輪Wの数は任意とできる。
【0050】
(4)移動ユニットの動作
以下、上記の構成を有する自律走行車1と運搬台車3を備える移動ユニット100において、自律走行車1により運搬台車3を支持し、移動ユニット100が自律走行車1により自律的に移動するまでの動作を簡単に説明する。
まず、運搬台車3を持ち上げて支持するために、自律走行車1が運搬台車3に向けて移動し、運搬台車3の枠体31の下方に進入する。運搬台車3の下方に進入する際に、自律走行車1の制御部17は、第1レーザレンジセンサ13aにてマーカ39を検知して、枠体31に対する自律走行車1の相対位置を推定する。
【0051】
具体的には、制御部17は、第1レーザレンジセンサ13aからレーザ光を出力してから当該レーザ光がマーカ39の反射部39aにて反射して発生した反射光を受光するまでの時間に基づいて、第1レーザレンジセンサ13aと各反射部39aとの間の距離を算出する。また、各反射部39aからの反射光がどの方向に向けて出力されたレーザ光による反射光であるかの情報に基づいて、第1レーザレンジセンサ13aから見た各反射部39aの存在方向(角度)を算出する。
【0052】
次に、第1レーザレンジセンサ13aと各反射部39aとの間の距離と、第1レーザレンジセンサ13aから見た各反射部39aの存在方向と、2つの反射部39a間の実際の距離と、に基づいて、所定の数式(例えば、Cassiniの解法)を用いてマーカ39に対する自律走行車1の相対位置を算出する。その後、制御部17は、マーカ39に対する自律走行車1の相対位置と、枠体31におけるマーカ39の実際の配置位置とに基づいて、枠体31に対する自律走行車1の相対位置を推定する。
【0053】
枠体31の下方に進入した自律走行車1が枠体31の中心位置に到達したと推定されると、制御部17は、当該位置において自律走行車1の走行を停止させる。
なお、図5Dに示すような枠体31の幅方向から自律走行車1が進入する運搬台車3の場合、制御部17は、枠体31の中心位置で自律走行車1の走行を停止させた後、その場で自律走行車1を回転させて、自律走行車1を進行方向に向ける。
【0054】
自律走行車1を枠体31の中心位置に到達させた後、制御部17は、支持部15を上昇させて、第1支持脚35a及び第2支持脚35bの高さ位置が第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bの高さ位置と一致するまで、枠体31の下部31bを持ち上げる。これにより、運搬台車3の車輪Wが床面から浮いた状態となり、運搬台車3が自律走行車1に支持される。
【0055】
運搬台車3を自律走行車1により支持した後、制御部17は、運搬台車3を支持した自律走行車1(すなわち、移動ユニット100)を、例えば上位コントローラ(図示せず)から指令された目標位置まで自律走行させる。
【0056】
具体的には、制御部17は、まず、第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bにて取得した物体に関する情報を用いて、移動ユニット100の周囲に存在する物体(障害物等)の位置を表す地図情報(ローカルマップ)を作成する。次に、制御部17は、ローカルマップと、移動ユニット100の移動領域を表す地図情報とのマップマッチングにより、自律走行車1の自己位置を推定する。
その後、制御部17は、推定された自己位置から目標位置まで移動ユニット100を走行させるために必要な主輪11aの回転量に応じた制御信号をモータ11cに出力する。上記の動作を所定の周期毎に繰り返し実行することで、制御部17は、自律走行車1を目的位置まで自律走行させることができる。
【0057】
上記にて説明した移動ユニット100においては、第1レーザレンジセンサ13a、第2レーザレンジセンサ13b、第1支持脚35a、及び、第2支持脚35bの配置位置が適切に設定されているため、第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bにより、移動ユニット100の進行方向の前方及び後方のより広範囲に存在する物体を欠けることなく検知できるとともに、支持脚の存在により一方のレーザレンジセンサにより検知できない物体を他方のレーザレンジセンサで検知できる。
そのため、制御部17は、移動ユニット100の周囲に存在する物体を欠けることなく表した適切なローカルマップを作成できる。その結果、制御部17は、自律走行車1の自己位置を精度よく推定できる。
【0058】
また、第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bにて得られた情報を障害物の検知に用いる場合には、移動ユニット100の周囲に存在する障害物を漏れなく検知できる。
【0059】
(5)変形例1
第1レーザレンジセンサ13a、第2レーザレンジセンサ13b、第1支持脚35a、及び、第2支持脚35bの位置関係は、枠体31の下部31bが自律走行車1により支持されたときに、第1支持脚35aにより第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bの検出範囲が遮られることで規定される第1重複領域R1が枠体31の外縁よりも内側にあり、第2支持脚35bにより第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bの検出範囲が遮られることで規定される第2重複領域R2が枠体31の外縁よりも内側にあるように定められていれば、上記にて説明した位置関係に限定されない。
【0060】
例えば、図9に示すように、第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bをそれぞれ車体Bの幅方向の端部に設けた場合には、第1支持脚35aを枠体31の下部31bのうち進行方向前側の端部に設け、第2支持脚35bを枠体31の下部31bのうち進行方向後側の端部に設けることができる。
図9は、第1レーザレンジセンサ、第2レーザレンジセンサ、第1支持脚、及び、第2支持脚の配置の変形例を示す図である。
【0061】
図9に示す場合も、第1支持脚35aの平面視における配置位置は、第1レーザレンジセンサ13aの中心から延びる第1支持脚35aの2つの接線L1と、第2レーザレンジセンサ13bの中心から延びる第1支持脚35aの2つの接線L2と、により囲まれる第1重複領域R1が、枠体31の外縁よりも内側に存在するよう定められる。つまり、第1支持脚35aにより第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bの検出範囲が遮られることで規定される第1重複領域R1が枠体31の外縁よりも内側にある。
また、第2支持脚35bの平面視における配置位置は、第1レーザレンジセンサ13aの中心から延びる第2支持脚35bの2つの接線L3と、第2レーザレンジセンサ13bの中心から延びる第2支持脚35bの2つの接線L4と、により囲まれる第2重複領域R2が、枠体31の外縁よりも内側に存在するよう定められる。つまり、第2支持脚35bにより第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bの検出範囲が遮られることで規定される第2重複領域R2が枠体31の外縁よりも内側にある。
【0062】
このように、第1支持脚35a及び第2支持脚35bの枠体31の下部31bにおける配置位置は、車体Bにおける第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bの配置位置に従って、上記の条件を満たすよう任意に調整できる。
また逆に、第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bの車体Bにおける配置位置は、枠体31の下部31bにおける第1支持脚35a及び第2支持脚35bの配置位置に従って、上記の条件を満たすよう任意に調整できる。
【0063】
(6)変形例2
図10及び図11に示すように、第1レーザレンジセンサ13aの障害物等の検出範囲を、第1レーザレンジセンサ13aから第1支持脚35aの接線L5と第2支持脚35bの接線L6との間の領域とし、第2レーザレンジセンサ13bの障害物等の検出範囲を、第2レーザレンジセンサ13bから第1支持脚35aの接線L7と第2支持脚35bの接線L8との間の領域としてもよい。図10及び図11は、第1レーザレンジセンサ、第2レーザレンジセンサ、第1支持脚、及び、第2支持脚の配置の他の変形例を示す図である。
【0064】
第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bの検出範囲を上記のように定めた場合、4つの接線L5~L8により囲まれる領域(非検出領域R3と呼ぶ)は、第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bによって画定される領域であって、両方のレーザレンジセンサにより障害物等を検知できない領域である。非検出領域R3は、第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bの検出限界によって画定されてもよいし、第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bの検出領域を制御することで画定されてもよい。
【0065】
この場合、第1支持脚35a及び前記第2支持脚35bは、いずれも、非検出領域R3内に配置される。これにより、第1レーザレンジセンサ13a及び第2レーザレンジセンサ13bの両方の検出範囲内に第1支持脚35a及び第2支持脚35bの両方が含まれなくなるので、これらレーザレンジセンサが障害物等を欠けることなく検知できる。
【0066】
2.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(A)自律走行車1の車体B、及び/又は、運搬台車3(枠体31)の形状は、略矩形以外の任意の形状とできる。
【0067】
(B)支持部15は、枠体31の下部31bを持ち上げて運搬台車3を支持する方法以外で運搬台車3を支持してもよい。例えば、自律走行車1の上部に設けた枠体31の下部31bを引っ掛けるための部材を支持部とし、自律走行車1が枠体31の下方に進入した際に当該支持部にて枠体31の下部を引っ掛けて支持できる。この場合、車輪Wは、床面に接触したままでもよい。
【0068】
(C)マーカ39は、自律走行車1が枠体31の下方に進入するために移動する際に、第1レーザレンジセンサ13aに検知可能な任意の位置に設けることができる。例えば、枠体31の外側にマーカ39が設けられていてもよい。
【0069】
(D)マーカ39は、図7に示すような反射部39aを有する構成以外のものであってもよい。例えば、マーカ39を、枠体31の所定の位置に設けられた所定の形状の模様とすることもできる。この場合、例えば、自律走行車1の上部にマーカ39を撮影するカメラを設け、当該カメラにて取得した画像におけるマーカ39の位置に基づいて、枠体31に対する自律走行車1の相対位置を推定できる。
【0070】
(E)枠体31の下部31bが自律走行車1により支持された状態において、車体Bの第1端部に設けられる第1レーザレンジセンサ13aは、自律走行車1の進行方向前側に設けられていてもよい。また第2レーザレンジセンサ13bが設けられる第2端部は、車体Bにおいて、自律走行車1の進行方向後側であってもよい。
【0071】
(F)第1レーザレンジセンサ13aの検出範囲と第2レーザレンジセンサ13bの検出範囲は適宜制御することができる。例えば自律走行車1が枠体31の下部31bを支持した状態の時の各レーザレンジセンサの検出範囲よりも、自律走行車1が走行している時の各レーザレンジセンサの検出範囲を広げてもよい。このようにレーザレンジセンサの検出範囲を調整することにより、いつでも自律走行車1及び運搬台車3の外周の障害物等を欠けることなく検知できる。また、第1レーザレンジセンサ13aの検出範囲と第2レーザレンジセンサ13bの検出範囲は等しくなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、自律走行車により運搬される運搬台車、及び、当該運搬台車と自律走行車とを備える移動ユニットに広く適用できる。
【符号の説明】
【0073】
100 運搬台車移動ユニット(移動ユニット)
1 自律走行車
B 車体
11 走行部
11a 主輪
11b 従動輪
11c モータ
13a 第1レーザレンジセンサ
13b 第2レーザレンジセンサ
15 支持部
17 制御部
3 運搬台車
31 枠体
31a 枠体の上部
31b 枠体の下部
31c 切り欠き
33 積載部
33a 壁部
33b 収納部
33c 開閉部
33d 鍵付きシャッター
33e 把持部
35a 第1支持脚
35b 第2支持脚
37a 第1車輪支持体
37b 第2車輪支持体
39 マーカ
39a 反射部
39b 無反射部
W :車輪
L1~L4 接線
P1、P2 交点
R1 第1重複領域
R2 第2重複領域
R3 非検出領域

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9
図10
図11