(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】自動運転システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20241112BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241112BHJP
G01C 21/36 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G08G1/00 X
G08G1/16 A
G01C21/36
(21)【出願番号】P 2021039623
(22)【出願日】2021-03-11
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 国仁
(72)【発明者】
【氏名】岩本 貴之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健文
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-052571(JP,A)
【文献】国際公開第2020/230693(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客を運搬するモビリティサービスを提供する自動運転車両に適用される自動運転システムであって、
1又は複数のプロセッサを備え、
前記1又は複数のプロセッサは、
前記自動運転車両に搭載された認識センサを用いて前記自動運転車両の周囲の状況を認識する認識処理と、
目的地までのルート又は周回ルートを前記自動運転車両の目標ルートとして設定するルート設定処理と
を実行するように構成され、
前記ルート設定処理は、
前記目標ルートの複数の候補を取得するルート候補取得処理と、
前記認識処理の認識性能に応じて、前記複数の候補の中から前記目標ルートを選択するルート選択処理と、
を含み、
前記目標ルートの前記複数の候補は、
幹線道路と前記幹線道路よりも狭い生活道路の両方を通る第iルートと、
前記幹線道路だけを通り前記生活道路を通らない第jルートと
を含み、
前記認識処理の前記認識性能は、
第i認識性能と、
前記第i認識性能よりも低い第j認識性能と
を含み、
前記ルート選択処理において、前記1又は複数のプロセッサは、
前記認識性能が前記第i認識性能である場合に前記第iルートを前記目標ルートとして選択し、前記認識性能が前記第j認識性能である場合に前記第jルートを前記目標ルートとして選択する
自動運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗客を運搬するサービスを提供する自動運転車両の目標ルートを設定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、自律車両に対するルートプランニング方法を開示している。自律車両は、走行中にストールする可能性がある。自律車両がストールする要因(ストールファクタ)としては、不十分なバッテリ、低通信品質エリア、工事区間、悪天候、等が例示される。目的地へのルート上にストールファクタが存在し、且つ、そのルート上に自律車両のユーザがいない場合、ストールファクタが存在しない代替ルートが設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗客を運搬するモビリティサービスを提供する自動運転車両の目標ルートを設定することを考える。特許文献1に開示されている技術によれば、ストールファクタを避けるように目標ルートが設定される。しかしながら、単純にストールファクタを避けて目標ルートを設定するだけでは、同程度の道路条件にいるユーザ間の不公平感を招くおそれがある。
【0005】
例えば、同程度の道路条件の2地点においてユーザが乗車することを希望する場合を考える。目標ルートが単純にストールファクタを避けるように変更される場合、自動運転車両が一方の地点を経由するが、他方の地点を経由しなくなる可能性がある。その場合、同程度の道路条件にいるユーザ間の不公平感が発生する。
【0006】
本開示の1つの目的は、乗客を運搬するモビリティサービスを提供する自動運転車両の目標ルートを設定する際にユーザ間の不公平感を抑制することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の観点は、自動運転システムに関連する。
自動運転システムは、乗客を運搬するモビリティサービスを提供する自動運転車両に適用される。
自動運転システムは、1又は複数のプロセッサを備える。
1又は複数のプロセッサは、
自動運転車両に搭載された認識センサを用いて自動運転車両の周囲の状況を認識する認識処理と、
目的地までのルート又は周回ルートを自動運転車両の目標ルートとして設定するルート設定処理と
を実行するように構成される。
ルート設定処理は、
目標ルートの複数の候補を取得するルート候補取得処理と、
認識処理の認識性能に応じて、複数の候補の中から目標ルートを選択するルート選択処理と、
を含む。
ルート選択処理において、1又は複数のプロセッサは、認識性能が低下するにつれてより距離の短い候補を目標ルートとして選択する。
【0008】
第2の観点は、目標ルート設定方法に関連する。
目標ルート設定方法は、乗客を運搬するモビリティサービスを提供する自動運転車両の目標ルートを設定する。
目標ルート設定方法は、
自動運転車両に搭載された認識センサを用いて自動運転車両の周囲の状況を認識する認識処理と、
目的地までのルート又は周回ルートを自動運転車両の目標ルートとして設定するルート設定処理と
を含む。
ルート設定処理は、
目標ルートの複数の候補を取得するルート候補取得処理と、
認識処理の認識性能に応じて、複数の候補の中から目標ルートを選択するルート選択処理と、
を含む。
ルート選択処理は、認識性能が低下するにつれてより距離の短い候補を目標ルートとして選択する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、認識処理の認識性能に応じて、複数の候補の中から目標ルートが選択される。より詳細には、認識性能が低下するにつれてより距離の短い目標ルートが選択される。これにより、認識性能が低下した場合であっても、自動運転車両を利用したモビリティサービスを継続しやすくなる。すなわち、モビリティサービスの継続性が確保される。
【0010】
また、本開示によれば、ルート全体の距離を考慮することにより、ユーザ間の不公平感を抑制することも可能となる。距離の短い目標ルートは、幹線道路を主に通り、生活道路に進入する確率は低い。よって、同程度の道路条件にいるユーザに対しては、同程度のモビリティサービスが提供されることになる。従って、ユーザ間の不公平感が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施の形態に係るモビリティサービスの概要を説明するための概念図である。
【
図2】本開示の実施の形態における自動運転車両のルート候補の例を示す概念図である。
【
図3】本開示の実施の形態に係る自動運転システムの構成例を示すブロック図である。
【
図4】本開示の実施の形態における運転環境情報の例を示すブロック図である。
【
図5】本開示の実施の形態に係る自動運転システムによる自動運転制御に関連する処理を示すフローチャートである。
【
図6】本開示の実施の形態に係る自動運転システムによるルート設定処理を示すフローチャートである。
【
図7】本開示の実施の形態に係る自動運転システムによるルート選択処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の実施の形態に係る自動運転システムによるルート選択処理の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。
【0013】
1.概要
図1は、本実施の形態に係るモビリティサービスの概要を説明するための概念図である。モビリティサービスは、乗客(ユーザ)を運搬するサービスである。本実施の形態では、モビリティサービスは、自動運転(自律走行)可能な自動運転車両1により提供される。例えば、自動運転車両1は、自動運転バスである。ここでの自動運転としては、ドライバが必ずしも100%運転に集中しなくてもよいことを前提としたもの(例えば、いわゆるレベル3以上の自動運転)を想定している。
【0014】
自動運転車両1は、自動運転により、目的地まで走行する、あるいは、周回ルート上を走行する。そのような自動運転車両1が走行する運行ルートを、以下、「目標ルートRT」と呼ぶ。
【0015】
自動運転システム10は、自動運転車両1に適用されるシステムであり、自動運転車両1を制御する。例えば、自動運転システム10は、自動運転車両1に搭載されている。あるいは、自動運転システム10の少なくとも一部は、自動運転車両1の外部の遠隔システムに含まれ、リモートで自動運転車両1を制御してもよい。つまり、自動運転システム10は、自動運転車両1と遠隔システムとに分散的に配置されてもよい。
【0016】
自動運転システム10は、自動運転車両1の目標ルートRTを設定する「ルート設定処理」を行う。後述されるように、本実施の形態によれば、自動運転システム10は、目標ルートRTを可変に設定することができる。そして、自動運転システム10は、目標ルートRTに従って走行するように自動運転車両1を制御する「自動運転制御」を行う。
【0017】
自動運転制御においては、自動運転車両1の周囲の状況を認識することが必要である。自動運転車両1は、周囲の状況を認識する認識センサ(外界センサ)を備えている。認識センサとしては、カメラ、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ、等が例示される。自動運転システム10は、認識センサを用いることによって、歩行者、他車両(先行車両、駐車車両、等)、道路構成(白線、縁石、ガードレール、壁、中央分離帯、路側構造物、等)、標識、等を認識する。そして、自動運転システム10は、認識センサ21を用いた認識処理の結果に基づいて、自動運転制御を行う。
【0018】
但し、認識処理の認識性能は、様々な要因により低下する可能性がある。例えば、降雨、降雪、等の天候条件において認識性能が低下する可能性がある。他の例として、認識センサの汚れにより認識性能が低下する可能性がある。更に他の例として、認識センサの不調により認識性能が低下する可能性がある。
【0019】
認識処理の認識性能が低下すると、認識処理の結果に基づく自動運転制御の精度も低下するおそれがある。この点を考慮して、本実施の形態に係る自動運転システム10は、認識性能に応じて自動運転車両1の目標ルートRTを可変的に設定する(切り替える)。
【0020】
図2は、目標ルートRTの候補の例を示している。目標ルートRTの候補を、以下、「ルート候補」と呼ぶ。
図2には、第1ルートR1、第2ルートR2、及び第3ルートR3の三種類のルート候補が示されている。尚、
図2に示される例では、目標ルートRTは周回ルートであるが、目的地へ向かうルートの場合も同様である。
【0021】
三種類のルート候補のうち、第1ルートR1が最も長く、第3ルートR3が最も短い。例えば、第1ルートR1は、比較的広い幹線道路を通るだけでなく、比較的狭い生活道路にも進入する。一方、第3ルートR3は、比較的広い幹線道路を主に通り、比較的狭い生活道路には進入しない。第2ルートR2は、第1ルートR1と第3ルートR3の中間である。
【0022】
自動運転制御の観点から言えば、ルート距離が長くなるにつれて、要求される認識性能も高くなる。何故なら、ルート距離が長くなるにつれて、狭い生活道路を含む様々な形態の道路を走行する時間及び頻度が大きくなるからである。逆に、ルート距離が短い場合、認識性能が比較的低い状態であっても、自動運転制御を継続できる可能性が高い。
【0023】
以上の観点から、本実施の形態によれば、複数のルート候補が認識性能と関連付けられる。ルート距離が最も長い第1ルートR1は、認識性能が高い状態に関連付けられる。ルート距離が中程度の第2ルートR2は、認識性能が中間の状態に関連付けられる。ルート距離が最も短い第3ルートR3は、認識性能が低い状態に関連付けられる。第1ルートR1は、デフォルトの目標ルートRTであり、第2ルートR2及び第3ルートR3は、認識性能が低下した場合の代替の目標ルートRTであると言える。
【0024】
自動運転システム10は、認識処理の認識性能に応じて目標ルートRTを選択する。つまり、自動運転システム10は、複数のルート候補の中から、認識性能に応じた目標ルートRTを選択する。
【0025】
例えば、認識性能が高い場合、自動運転システム10は、ルート距離が最も長い第1ルートR1を目標ルートRTとして選択する。認識性能が低下した場合、自動運転システム10は、第2ルートR2を目標ルートRTとして選択する。認識性能が更に低下した場合、自動運転システム10は、第3ルートR3を目標ルートRTとして選択する。すなわち、自動運転システム10は、認識性能が低下するにつれてより距離の短いルート候補を目標ルートRTとして選択する。
【0026】
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、認識処理の認識性能に応じて、複数のルート候補の中から目標ルートRTが選択される。例えば、認識性能が低下するにつれてより距離の短い目標ルートRTが選択される。これにより、認識性能が低下した場合であっても、自動運転車両1を利用したモビリティサービスを継続しやすくなる。すなわち、モビリティサービスの継続性が確保される。
【0027】
また、本実施の形態によれば、ルート全体の距離を考慮することにより、ユーザ間の不公平感を抑制することも可能となる。
【0028】
例えば、同程度の道路条件の2地点においてユーザが乗車することを希望する場合を考える。仮に、目標ルートRTが単純に障害(ストールファクタ)を避けるように変更される場合、自動運転車両1が一方の地点を経由するが、他方の地点を経由しなくなる可能性がある。その場合、同程度の道路条件にいるユーザ間の不公平感が発生する。
【0029】
本実施の形態によれば、認識性能が低下するにつれてより距離の短い目標ルートRTが選択される。距離の短い目標ルートRT(例:第3ルートR3)は、幹線道路を主に通り、生活道路に進入する確率は低い。よって、同程度の道路条件にいるユーザに対しては、同程度のモビリティサービスが提供されることになる。従って、ユーザ間の不公平感が抑制される。
【0030】
以下、本実施の形態に係る自動運転システム10について更に詳しく説明する。
【0031】
2.自動運転システム
2-1.構成例
図3は、本実施の形態に係る自動運転システム10の構成例を示すブロック図である。自動運転システム10は、センサ群20、走行装置30、及び制御装置100を含んでいる。
【0032】
センサ群20は、自動運転車両1に搭載されている。センサ群20は、自動運転車両1の周囲の状況を認識する認識センサ(外界センサ)21を含んでいる。認識センサ21としては、カメラ、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ、等が例示される。
【0033】
また、センサ群20は、自動運転車両1の状態を検出する車両状態センサを含んでいる。車両状態センサは、速度センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ、舵角センサ、等を含んでいる。更に、センサ群20は、自動運転車両1の位置及び方位を検出する位置センサを含む。位置センサとしては、GPS(Global Positioning System)センサが例示される。
【0034】
走行装置30は、自動運転車両1に搭載されている。走行装置30は、操舵装置、駆動装置、及び制動装置を含んでいる。操舵装置は、車輪を転舵する。例えば、操舵装置は、パワーステアリング(EPS: Electric Power Steering)装置を含んでいる。駆動装置は、駆動力を発生させる動力源である。駆動装置としては、エンジン、電動機、インホイールモータ、等が例示される。制動装置は、制動力を発生させる。
【0035】
制御装置100は、自動運転車両1を制御する。制御装置100は、1又は複数のプロセッサ110(以下、単にプロセッサ110と呼ぶ)と1又は複数の記憶装置120(以下、単に記憶装置120と呼ぶ)を含んでいる。プロセッサ110は、各種処理を実行する。例えば、プロセッサ110は、CPU(Central Processing Unit)を含んでいる。記憶装置120は、各種情報を格納する。記憶装置120としては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、等が例示される。プロセッサ110がコンピュータプログラムである制御プログラムを実行することにより、プロセッサ110(制御装置100)による各種処理が実現される。制御プログラムは、記憶装置120に格納されている、あるいは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されている。制御装置100は、1又は複数のECU(Electronic Control Unit)を含んでいてもよい。制御装置100の一部は、自動運転車両1の外部の情報処理装置であってもよい。その場合、制御装置100の一部は、自動運転車両1と通信を行い、自動運転車両1をリモートで制御する。
【0036】
2-2.運転環境情報
プロセッサ110は、センサ群20を用いて、自動運転車両1の運転環境を示す運転環境情報200を取得する。運転環境情報200は、記憶装置120に格納される。
【0037】
図4は、運転環境情報200の例を示すブロック図である。運転環境情報200は、周辺状況情報210、車両状態情報220、地図情報230、車両位置情報240、天候情報250、等を含んでいる。
【0038】
周辺状況情報210は、自動運転車両1の周囲の状況を示す情報である。プロセッサ110は、認識センサ21を用いて周辺状況情報210を取得する。周辺状況情報210は、認識センサ21によって得られる情報を含む。例えば、周辺状況情報210は、カメラによって撮像される画像情報を含む。他の例として、周辺状況情報210は、LIDARによって得られる点群情報を含む。
【0039】
周辺状況情報210は、更に、自動運転車両1の周囲の物体に関する物体情報215を含んでいる。物体としては、歩行者、自転車、他車両(先行車両、駐車車両、等)、道路構成(白線、縁石、ガードレール、壁、中央分離帯、路側構造物、等)、標識、ポール、障害物、等が例示される。物体情報215は、自動運転車両1に対する物体の相対位置及び相対速度を示す。例えば、カメラによって得られた画像情報を解析することによって、物体を識別し、その物体の相対位置を算出することができる。また、LIDARによって得られた点群情報に基づいて、物体を識別し、その物体の相対位置と相対速度を取得することもできる。物体情報は、物体の移動方向や移動速度を含んでいてもよい。
【0040】
車両状態情報220は、自動運転車両1の状態を示す情報である。プロセッサ110は、車両状態センサから車両状態情報220を取得する。車両状態情報220は、自動運転車両1の運転状態(自動運転/手動運転)を示していてもよい。
【0041】
地図情報230は、一般的なナビゲーション地図を含む。地図情報230は、レーン配置、道路形状、等を示していてもよい。地図情報230は、ランドマーク、信号、標識、等の位置情報を含んでいてもよい。プロセッサ110は、地図データベースから、必要なエリアの地図情報を取得する。地図データベースは、自動運転車両1に搭載されている所定の記憶装置に格納されていてもよいし、外部の管理サーバに格納されていてもよい。後者の場合、プロセッサ110は、管理サーバと通信を行い、必要な地図情報を取得する。
【0042】
地図情報230は、更に、自動運転車両1の目標ルートRTを含んでいてもよい。目標ルートRTの設定の詳細に関しては後述される。
【0043】
車両位置情報240は、自動運転車両1の位置を示す情報である。プロセッサ110は、位置センサによる検出結果から車両位置情報240を取得する。また、プロセッサ110は、物体情報215と地図情報230を利用した周知の自己位置推定処理(Localization)により、高精度な車両位置情報240を取得してもよい。
【0044】
天候情報250は、雨、雪、霧、等の天候条件を示す。天候情報250は、降雨量、降雪量、霧濃度、等を示してもよい。例えば、天候情報250は、天気情報サービスシステムから提供される。プロセッサ110は、通信を介して、天気情報サービスシステムから天候情報250を取得する。他の例として、プロセッサ110は、周辺状況情報210に基づいて、天候情報250を取得してもよい。例えば、カメラによって撮像される画像情報を解析することによって、天候を判別し、天候情報250を取得することができる。
【0045】
2-3.車両走行制御
プロセッサ110は、自動運転車両1の走行を制御する「車両走行制御」を実行する。車両走行制御は、操舵制御、加速制御、及び減速制御を含む。プロセッサ110は、走行装置30(操舵装置、駆動装置、制動装置)を制御することによって車両走行制御を実行する。具体的には、プロセッサ110は、操舵装置を制御することによって操舵制御を実行する。また、プロセッサ110は、駆動装置を制御することによって加速制御を実行する。また、プロセッサ110は、制動装置を制御することによって減速制御を実行する。
【0046】
2-4.自動運転制御に関連する処理
プロセッサ110は、自動運転車両1の自動運転を制御する。
図5は、本実施の形態に係る自動運転制御に関連する処理を示すフローチャートである。
図5に示される処理フローは、一定サイクル毎に繰り返し実行される。
【0047】
ステップS100において、プロセッサ110は、上述の運転環境情報200を取得する「情報取得処理」を行う。情報取得処理は、自動運転車両1の周囲の状況を認識する「認識処理」も含む(ステップS150)。認識処理において、プロセッサ110は、認識センサ21を用いて自動運転車両1の周囲の状況を認識し、周辺状況情報210(特に物体情報215)を取得する。
【0048】
ステップS200において、プロセッサ110は、運転環境情報200に基づいて自動運転制御を行う。このとき、プロセッサ110は、自動運転車両1が目標ルートRTに従って走行するように車両走行制御を行う。
【0049】
より詳細には、プロセッサ110は、運転環境情報200に基づいて、自動運転車両1の走行プランを生成する。走行プランは、現在の走行車線を維持する、車線変更を行う、右左折を行う、障害物を回避する、等が例示される。更に、プロセッサ110は、運転環境情報200に基づいて、自動運転車両1が走行プランに従って走行するために必要な目標トラジェクトリ(目標軌道)を生成する。目標トラジェクトリは、目標位置及び目標速度を含んでいる。そして、プロセッサ110は、自動運転車両1が目標トラジェクトリに追従するように、上記の車両走行制御を行う。
【0050】
3.ルート設定処理
プロセッサ110は、自動運転車両1の目標ルートRTを設定する「ルート設定処理」を行う。目標ルートRTは、目的地までのルート、又は、周回ルートである。ルート設定処理は、自動運転車両1の運行前に行われてもよいし、自動運転車両1の運行中に行われてもよい。ルート設定処理は、一定間隔毎に行われてもよい。
【0051】
図6は、本実施の形態に係る自動運転システム10によるルート設定処理を示すフローチャートである。
【0052】
3-1.ルート候補取得処理(ステップS310)
ステップS310において、プロセッサ110は、複数のルート候補を取得する「ルート候補取得処理」を行う。複数のルート候補の例は、
図2で示された通りである。ルート候補情報300は、複数のルート候補を示す情報である。プロセッサ110は、ルート候補情報300を取得し、取得したルート候補情報300を記憶装置120に格納する(
図3参照)。
【0053】
例えば、複数のルート候補は、モビリティサービスの管理者によって予め決定される。この場合、ルート候補情報300は、管理者によって生成され、自動運転システム10に提供される。プロセッサ110は、管理者からルート候補情報300を取得する。
【0054】
他の例として、プロセッサ110が、自らルート候補情報300を生成してもよい。この場合、プロセッサ110は、地図情報230に基づいて、様々なルート候補を探索し、ルート候補情報300を取得する。
【0055】
複数のルート候補は、認識処理の認識性能と予め関連付けられてもよい。この場合、ルート候補情報300は、ルート候補と認識性能とを関連付けて示す。
【0056】
3-2.認識性能取得処理(ステップS320)
ステップS320において、プロセッサ110は、認識処理(ステップS150)の認識性能を取得する「認識性能取得処理」を行う。認識性能情報400は、認識性能を示す情報である。プロセッサ110は、認識性能情報400を取得し、取得した認識性能情報400を記憶装置120に格納する(
図3参照)。
【0057】
認識性能の取得方法としては、次のように様々な例が考えられる。
【0058】
第1の例において、プロセッサ110は、天候情報250に基づいて、認識性能を取得する。例えば、晴れの場合、プロセッサ110は、認識性能は高いと判断する。荒天指数(例:降雨量、降雪量、あるいは霧濃度)が第1閾値を超えた場合、プロセッサ110は、認識性能は中程度と判断する。荒天指数が第1閾値よりも大きい第2閾値を超えた場合、プロセッサ110は、認識性能は低いと判断する。荒天指数が第2閾値よりも大きい第3閾値を超えた場合、プロセッサ110は、認識処理は実質的に不可能であると判断する。
【0059】
第2の例において、プロセッサ110は、過去の認識処理の結果に基づいて、認識性能を取得する。例えば、地図情報230には、基準物体の位置(絶対位置)が予め登録されているとする。基準物体としては、信号、標識、ポール、白線、ガードレール、等が例示される。物体情報215は、認識処理によって検出された基準物体の相対位置を示す。物体情報215と車両位置情報240を組み合わせることにより、認識処理によって検出された基準物体の絶対位置が得られる。プロセッサ110は、地図情報230に登録されている基準物体と認識処理によって検出された基準物体とを照らし合わせることによって、認識処理による基準物体の検出率を算出する。そして、プロセッサ110は、算出した検出率に基づいて認識性能を判断する。例えば、検出率が第1閾値以上である場合、プロセッサ110は、認識性能は高いと判断する。検出率が第1閾値未満、第2閾値以上である場合、プロセッサ110は、認識性能は中程度と判断する。検出率が第2閾値未満、第3閾値以上である場合、プロセッサ110は、認識性能は低いと判断する。検出率が第3閾値未満である場合、プロセッサ110は、認識処理は実質的に不可能であると判断する。
【0060】
第3の例において、プロセッサ110は、認識処理によって認識された物体の種類に基づいて、認識性能を取得する。例えば、少なくとも白線が認識された場合、プロセッサ110は、認識性能は「低」以上であると判断する。自動運転車両1の前方の物体が少なくとも認識された場合、プロセッサ110は、認識性能は「中」以上であると判断する。自動運転車両1の周囲全方向の物体が認識された場合、プロセッサ110は、認識性能は高いと判断する。
【0061】
第4の例において、プロセッサ110は、ローカライズ精度を認識精度として取得してもよい。
【0062】
3-3.ルート選択処理(ステップS330)
ステップS320において、プロセッサ110は、「ルート選択処理」を行う。ルート選択処理において、プロセッサ110は、認識処理の認識性能に応じて、複数のルート候補の中から目標ルートRTを選択する。複数のルート候補は、上述のルート候補情報300から得られる。認識処理の認識性能は、上述の認識性能情報400から得られる。
【0063】
複数のルート候補の例として、
図2で示されたような第1ルートR1、第2ルートR2、及び第3ルートR3を考える。第1ルートR1は、高い認識性能を要求する。第2ルートR2は、第1ルートR1以下の認識性能を要求する。第3ルートR3は、第2ルートR2以下の認識性能を要求する。
【0064】
例えば、第1ルートR1は、比較的広い幹線道路を通るだけでなく、比較的狭い生活道路にも進入する。第3ルートR3は、比較的広い幹線道路を主に通り、比較的狭い生活道路には進入しない。第1ルートR1が最も長く、第3ルートR3が最も短い。第2ルートR2は、第1ルートR1と第3ルートR3の中間である。
【0065】
他の例として、第1ルートR1は、中央線が無い区間を含んでいる。第2ルートR2では、少なくとも、白線による歩車分離が行われている。第3ルートR3では、縁石及び白線による歩車分離が行われている。
【0066】
図7は、ルート選択処理の一例を示すフローチャートである。
【0067】
ステップS332において、プロセッサ110は、認識性能が高いか否かを判定する。認識性能が高い場合(ステップS332;Yes)、プロセッサ110は、第1ルートR1を目標ルートRTとして選択する(ステップS333)。それ以外の場合(ステップS332;No)、処理は、ステップS334に進む。
【0068】
ステップS334において、プロセッサ110は、認識性能が中程度か否かを判定する。認識性能が中程度である場合(ステップS334;Yes)、プロセッサ110は、第2ルートR2を目標ルートRTとして選択する(ステップS335)。それ以外の場合(ステップS334;No)、処理は、ステップS336に進む。
【0069】
ステップS336において、プロセッサ110は、認識性能が低いか否かを判定する。認識性能が低い場合(ステップS336;Yes)、プロセッサ110は、第3ルートR3を目標ルートRTとして選択する(ステップS337)。それ以外の場合(ステップS336;No)、処理は、ステップS338に進む。
【0070】
ステップS338において、プロセッサ110は、異常対処を行う。例えば、プロセッサ110は、自動運転車両1を停車させる。プロセッサ110は、遠隔支援システムと通信を行い、遠隔オペレータに遠隔支援をリクエストしてもよい。
【0071】
図8は、ルート選択処理の他の例を示すフローチャートである。第1ルートR1は、自動運転車両1の周囲全方向の物体を認識可能な認識性能を要求する。第2ルートR2は、自動運転車両1の前方の物体を少なくとも認識可能な認識性能を要求する。第3ルートR3は、少なくとも白線を認識可能な認識性能を要求する。
【0072】
ステップS331において、プロセッサ110は、天候情報250に基づいて、雨あるいは雪が降っているか否かを判定する。雨あるいは雪が降っていない場合(ステップS331;No)、処理は、ステップS333に進む。一方、雨あるいは雪が降っている場合(ステップS331;Yes)、処理は、ステップS332’に進む。
【0073】
ステップS332’において、プロセッサ110は、周辺物体を認識可能か否かを判定する。周辺物体を認識可能である場合(ステップS332’;Yes)、プロセッサ110は、第1ルートR1を目標ルートRTとして選択する(ステップS333)。それ以外の場合(ステップS332’;No)、処理は、ステップS334’に進む。
【0074】
ステップS334’において、プロセッサ110は、前方物体を認識可能か否かを判定する。前方物体を認識可能である場合(ステップS334’;Yes)、プロセッサ110は、第2ルートR2を目標ルートRTとして選択する(ステップS335)。それ以外の場合(ステップS334’;No)、処理は、ステップS336’に進む。
【0075】
ステップS336’において、プロセッサ110は、白線を認識可能であるか否かを判定する。白線を認識可能である場合(ステップS336’;Yes)、プロセッサ110は、第3ルートR3を目標ルートRTとして選択する(ステップS337)。それ以外の場合(ステップS336’;No)、処理は、ステップS338に進む。
【符号の説明】
【0076】
1 自動運転車両
10 自動運転システム
20 センサ群
21 認識センサ
30 走行装置
100 制御装置
110 プロセッサ
120 記憶装置
200 運転環境情報
210 周辺状況情報
215 物体情報
220 車両状態情報
230 地図情報
240 車両位置情報
250 天候情報
300 ルート候補情報
400 認識性能情報
RT 目標ルート