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特許7585903光デバイス、光通信装置及び光デバイスの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】光デバイス、光通信装置及び光デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/035 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
G02F1/035
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021042906
(22)【出願日】2021-03-16
(65)【公開番号】P2022142650
(43)【公開日】2022-09-30
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昌樹
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-250080(JP,A)
【文献】特開2007-017683(JP,A)
【文献】特開平11-295675(JP,A)
【文献】特開2020-020953(JP,A)
【文献】国際公開第2014/016940(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0170781(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125, 1/21-7/00
G02B 6/12-6/14
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜基板の所定箇所に設けられた突状の光導波路と、
前記薄膜基板及び前記光導波路上に積層されたバッファ層と、
前記バッファ層上に積層され、前記光導波路に電圧を印加する電極とを有し、
前記電極は、
前記光導波路の側壁に積層された前記バッファ層の段差部を被覆する光デバイスであって、
DC電極の第1の光調整部と、
RF電極の第2の光調整部と、を有し、
前記第1の光調整部は、
前記突状の第1の光導波路と、
前記薄膜基板及び前記第1の光導波路上に積層された前記バッファ層と、
前記バッファ層上に積層され、前記第1の光導波路に電圧を印加するDC(Direct Current)側の信号電極及び接地電極とを有し、
DC側の信号電極と接地電極は、
前記第1の光導波路の側壁に積層された前記バッファ層の段差部を被覆し、
前記第2の光調整部は、
前記突状の第2の光導波路と、
前記薄膜基板及び前記第2の光導波路上に積層された前記バッファ層と、
前記バッファ層上に積層され、前記第2の光導波路に電圧を印加するRF(Radio Frequency)側の信号電極及び接地電極とを有し、
RF側の信号電極及び接地電極は、
前記第2の光導波路の側壁に積層された前記バッファ層の段差部と離間し、
前記DC側の信号電極と前記接地電極との電極間隔は、
前記RF側の信号電極と前記接地電極との電極間隔に比較して狭くすることを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
薄膜基板の所定箇所に設けられた突状の光導波路と、
前記薄膜基板及び前記光導波路上に積層されたバッファ層と、
前記バッファ層上に積層され、前記光導波路に電圧を印加する電極とを有し、
前記電極は、
前記光導波路の側壁に積層された前記バッファ層の段差部を被覆する光デバイスであって、
DC電極の第1の光調整部と、
RF電極の第2の光調整部とを有し、
前記第1の光調整部は、
1の光導波路と、
前記薄膜基板及び前記第1の光導波路上に積層された前記バッファ層と、
前記バッファ層上に積層され、前記第1の光導波路に電圧を印加するDC側の信号電極及び一対の接地電極とを有し、
DC側の信号電極と接地電極は、
前記第1の光導波路の側壁に積層された前記バッファ層の段差部を被覆し、
前記第2の光調整部は、
2の光導波路と、
前記薄膜基板及び前記第2の光導波路上に積層された前記バッファ層と、
前記バッファ層上に積層され、前記第2の光導波路に電圧を印加するRF側の信号電極及び一対の接地電極とを有し、
RF側の信号電極及び接地電極は、
前記第2の光導波路の側壁に積層された前記バッファ層の段差部と離間し、
前記DC側の信号電極と一方の接地電極との間の前記第1の光導波路の導波路幅は、前記RF側の信号電極と前記一方の接地電極との間の前記第2の光導波路の導波路幅に比較して長くすることを特徴とす光デバイス。
【請求項3】
薄膜基板の所定箇所に設けられた突状の光導波路と、
前記薄膜基板及び前記光導波路上に積層されたバッファ層と、
前記バッファ層上に積層され、前記光導波路に電圧を印加する電極とを有し、
前記電極は、
前記光導波路の側壁に積層された前記バッファ層の段差部を被覆する光デバイスであって、
DC電極の第1の光調整部と、
RF電極の第2の光調整部とを有し、
前記第1の光調整部は、
前記突状の第1の光導波路と、
前記薄膜基板及び前記第1の光導波路上に積層された前記バッファ層と、
前記バッファ層上に積層され、前記第1の光導波路に電圧を印加するDC側の信号電極及び一対の接地電極とを有し、
DC側の信号電極と接地電極は、
前記第1の光導波路の側壁に積層された前記バッファ層の段差部を被覆し、
前記第2の光調整部は、
前記突状の第2の光導波路と、
前記薄膜基板及び前記第2の光導波路上に積層された前記バッファ層と、
前記バッファ層上に積層され、前記第2の光導波路に電圧を印加するRF側の信号電極及び一対の接地電極とを有し、
RF側の信号電極及び接地電極は、
前記第2の光導波路の側壁に積層された前記バッファ層の段差部と離間し、
前記DC側の信号電極と一方の接地電極との間の前記第1の光導波路と前記DC側の信号電極と他方の接地電極との間の前記第1の光導波路と間の導波路間隔は、前記RF側の信号電極と前記一方の接地電極との間の前記第2の光導波路と前記RF側の信号電極と他方の接地電極との間の前記第2の光導波路と間の導波路間隔に比較して長くすることを特徴とす光デバイス。
【請求項4】
薄膜基板の所定箇所に設けられた突状の光導波路と、
前記薄膜基板及び前記光導波路上に積層されたバッファ層と、
前記バッファ層上に積層され、前記光導波路に電圧を印加する電極とを有し、
前記電極は、
前記光導波路の側壁に積層された前記バッファ層の段差部を被覆する光デバイスであって、
DC電極の第1の光調整部と、
RF電極の第2の光調整部とを有し、
前記第1の光調整部は、
前記突状の第1の光導波路と、
前記薄膜基板及び前記第1の光導波路上に積層された前記バッファ層と、
前記バッファ層上に積層され、前記第1の光導波路に電圧を印加するDC側の信号電極及び一対の接地電極とを有し、
DC側の信号電極と接地電極は、
前記第1の光導波路の側壁に積層された前記バッファ層の段差部を被覆し、
前記第2の光調整部は、
前記突状の第2の光導波路と、
前記薄膜基板及び前記第2の光導波路上に積層された前記バッファ層と、
前記バッファ層上に積層され、前記第2の光導波路に電圧を印加するRF側の信号電極及び一対の接地電極とを有し、
RF側の信号電極及び接地電極は、
前記第2の光導波路の側壁に積層された前記バッファ層の段差部と離間し、
前記DC側の信号電極の厚みは、
前記RF側の信号電極の厚みに比較して薄くすることを特徴とす光デバイス。
【請求項5】
薄膜基板の所定箇所に設けられた突状の光導波路と、
前記薄膜基板及び前記光導波路上に積層されたバッファ層と、
前記バッファ層上に積層され、前記光導波路に電圧を印加する電極とを有し、
前記電極は、
前記光導波路の側壁に積層された前記バッファ層の段差部を被覆する光デバイスであって、
DC電極の第1の光調整部と、
RF電極の第2の光調整部とを有し、
前記第1の光調整部は、
前記突状の第1の光導波路と、
前記薄膜基板及び前記第1の光導波路上に積層された前記バッファ層と、
前記バッファ層上に積層され、前記第1の光導波路に電圧を印加するDC側の信号電極及び一対の接地電極とを有し、
DC側の信号電極と接地電極は、
前記第1の光導波路の側壁に積層された前記バッファ層の段差部を被覆し、
前記第2の光調整部は、
前記突状の第2の光導波路と、
前記薄膜基板及び前記第2の光導波路上に積層された前記バッファ層と、
前記バッファ層上に積層され、前記第2の光導波路に電圧を印加するRF側の信号電極及び一対の接地電極とを有し、
RF側の信号電極及び接地電極は、
前記第2の光導波路の側壁に積層された前記バッファ層の段差部と離間し、
前記DC側の接地電極の厚みは、
前記RF側の接地電極の厚みに比較して薄くすることを特徴とす光デバイス。
【請求項6】
前記第2の光調整部内の前記第2の光導波路と前記第1の光調整部内の前記第1の光導波路との間の接合部は、前記第2の光調整部内の前記第2の光導波路から前記第1の光調整部内の前記第1の光導波路に向けて導波路をテーパー状に幅広くすることを特徴とする請求項1~5の何れか一つに記載の光デバイス。
【請求項7】
電気信号に対する信号処理を実行するプロセッサと、
光を発生させる光源と、
前記プロセッサから出力される電気信号を用いて、前記光源から発生する光を変調する光デバイスとを有し、
前記光デバイスは、
薄膜基板の所定箇所に設けられた突状の光導波路と、
前記薄膜基板及び前記光導波路上に積層されたバッファ層と、
前記バッファ層上に積層され、前記光導波路に電圧を印加する電極とを有し、
前記電極は、
前記光導波路の側壁に積層された前記バッファ層の段差部を被覆する光デバイスであって、
DC電極の第1の光調整部と、
RF電極の第2の光調整部と、を有し、
前記第1の光調整部は、
前記突状の第1の光導波路と、
前記薄膜基板及び前記第1の光導波路上に積層された前記バッファ層と、
前記バッファ層上に積層され、前記第1の光導波路に電圧を印加するDC(Direct Current)側の信号電極及び接地電極とを有し、
DC側の信号電極と接地電極は、
前記第1の光導波路の側壁に積層された前記バッファ層の段差部を被覆し、
前記第2の光調整部は、
前記突状の第2の光導波路と、
前記薄膜基板及び前記第2の光導波路上に積層された前記バッファ層と、
前記バッファ層上に積層され、前記第2の光導波路に電圧を印加するRF(Radio Frequency)側の信号電極及び接地電極とを有し、
RF側の信号電極及び接地電極は、
前記第2の光導波路の側壁に積層された前記バッファ層の段差部と離間し、
前記DC側の信号電極と前記接地電極との電極間隔は、
前記RF側の信号電極と前記接地電極との電極間隔に比較して狭くすることを特徴とする光通信装置。
【請求項8】
薄膜基板の所定箇所に設けられた突状の光導波路と、
前記薄膜基板及び前記光導波路上に積層されたバッファ層と、
前記バッファ層上に積層され、前記光導波路に電圧を印加する電極とを有し、
前記電極は、
前記光導波路の側壁に積層された前記バッファ層の段差部を被覆する光デバイスであって、
DC電極の第1の光調整部と、
RF電極の第2の光調整部と、を有し、
前記第1の光調整部は、
前記突状の第1の光導波路と、
前記薄膜基板及び前記第1の光導波路上に積層された前記バッファ層と、
前記バッファ層上に積層され、前記第1の光導波路に電圧を印加するDC(Direct Current)側の信号電極及び接地電極とを有し、
DC側の信号電極と接地電極は、
前記第1の光導波路の側壁に積層された前記バッファ層の段差部を被覆し、
前記第2の光調整部は、
前記突状の第2の光導波路と、
前記薄膜基板及び前記第2の光導波路上に積層された前記バッファ層と、
前記バッファ層上に積層され、前記第2の光導波路に電圧を印加するRF(Radio Frequency)側の信号電極及び接地電極とを有し、
RF側の信号電極及び接地電極は、
前記第2の光導波路の側壁に積層された前記バッファ層の段差部と離間し、
前記DC側の信号電極と前記接地電極との電極間隔は、
前記RF側の信号電極と前記接地電極との電極間隔に比較して狭くする光デバイスの製造方法において、
支持基板上に積層された前記薄膜基板の所定箇所に前記突状の光導波路を形成し、
前記薄膜基板及び前記光導波路上に前記バッファ層を積層して前記突状の光導波路の側壁に被覆する前記バッファ層の段差部を形成し、
前記バッファ層上の前記段差部の一部を露出するためのレジストを形成した後、メッキ処理で前記バッファ層上に電極を形成する
ことを特徴とする光デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス、光通信装置及び光デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば、光変調器のような光デバイスは、表面に光導波路が形成された光変調器チップを備えることがある。光変調器チップの光導波路上には信号電極が配置され、信号電極に電圧が印加されると、光変調器チップの表面に対して垂直方向の電界が光導波路内に発生する。この電界によって光導波路の屈折率が変化するため、光導波路を伝搬する光の位相が変化し、光を変調することが可能となる。すなわち、光変調器チップの光導波路は、例えば、マッハツェンダ干渉計を構成し、平行に配置された複数の光導波路間の光の位相差により、例えば、XY偏波多重されるIQ信号を出力することができる。
【0003】
光変調器チップが高速変調を実行する際には、光導波路に沿って配置される信号電極に、例えば、数10GHzの帯域を有する高速信号が入力される。このため、信号電極には、広帯域の伝送特性を得ることができるコプレーナ導波路(CPW:Coplanar Waveguide)構造が採用されることがある。すなわち、光導波路の上方には、信号電極と、信号電極を挟む一対の接地電極とが配置されることがある。
【0004】
一方、光導波路は、例えば、チタン等の金属を基板表面から拡散することにより、信号電極と重ならない位置に形成されることがある。また、LN(Lithium Niobate:ニオブ酸リチウム)結晶の薄膜を用いた薄膜光導波路が信号電極と重ならない位置に形成されることがある。薄膜光導波路は、金属を拡散させる拡散光導波路よりも光の閉じ込めを強くすることができ、電界の印加効率を改善し、駆動電圧を低減できる。
【0005】
図14は、光変調器のDC電極の一例を示す略断面図である。図14に示すDC(Direct Current)電極200は、Si(シリコン)等の支持基板201と、支持基板201上に積層された中間層202とを有する。更に、DC電極200は、中間層202上に積層された薄膜LN基板203と、薄膜LN基板203上に積層されたSiO2のバッファ層204とを有する。
【0006】
薄膜LN基板203には、上方へ突起する凸形状の薄膜光導波路207が形成される。そして、薄膜LN基板203及び薄膜光導波路207は、バッファ層204によって被覆され、バッファ層204の表面にコプレーナ構造の信号電極205及び一対の接地電極206が配置される。つまり、バッファ層204上には、信号電極205と、信号電極205を挟む一対の接地電極206とが配置されている。
【0007】
信号電極205と接地電極206との間に位置する薄膜LN基板203には、凸形状の薄膜光導波路207が形成されている。凸形状の薄膜光導波路207は、側壁面207Aと、平坦面207Bとを有する。更に、信号電極205と接地電極206との間に位置するバッファ層204にも、凸形状の薄膜光導波路207全体を被覆する段差部204Aがある。
【0008】
このような薄膜光導波路207によれば、信号電極205に電圧を印加して電界を発生させ、薄膜光導波路207の屈折率を変化させることにより、薄膜光導波路207を伝搬する光を変調することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2013/0170781号明細書
【文献】特開2000-66157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
バッファ層203は、例えば、印加されたDC電圧に起因して起きる出射光の経時変化として変動するDCドリフトを抑制するために抵抗値が適切な値になるように組成を決めることになる。しかしながら、薄膜光導波路207上にバッファ層204を成膜した場合に、薄膜光導波路207の側壁面207Aを被覆するバッファ層204の段差部204Aの厚みは、薄膜光導波路207の平坦面207Bを被覆するバッファ層204の段差部204Aの厚みに比較して薄くなる。その結果、薄膜光導波路207の側壁面207Aを被覆するバッファ層204の段差部204Aにクラックが生じてバッファ層204の抵抗値が上昇方向に変化しやすくなる。従って、例えば、DC電圧を印加しても光変調しないようなDCドリフトが正の方向に変化し、DCドリフトが不安定となるため、光変調器の寿命を縮めてしまうおそれがある。
【0011】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、DCドリフトの正方向への変化を抑制できる光デバイス等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願が開示する光デバイスは、1つの態様において、薄膜基板の所定箇所に設けられた突状の光導波路と、前記薄膜基板及び前記光導波路上に積層されたバッファ層と、前記バッファ層上に積層され、前記光導波路に電圧を印加する電極とを有する。前記電極は、前記光導波路の側壁に積層された前記バッファ層の段差部を被覆する。
【発明の効果】
【0013】
本願が開示する光デバイス等の1つの態様によれば、DCドリフトの正方向への変化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施例の光通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、実施例1の光変調器の構成の一例を示す平面模式図である。
図3A図3Aは、実施例1の光変調器の第1のDC電極の一例を示す略断面図である。
図3B図3Bは、実施例1の光変調器の第2のDC電極の一例を示す略断面図である。
図4図4は、実施例1の光変調器のRF電極の一例を示す略断面図である。
図5A図5Aは、第1のDC電極の中間層形成工程の一例を示す説明図である。
図5B図5Bは、第1のDC電極のLN基板形成工程の一例を示す説明図である。
図5C図5Cは、第1のDC電極の研磨工程の一例を示す説明図である。
図6A図6Aは、第1のDC電極の薄膜光導波路形成工程の一例を示す説明図である。
図6B図6Bは、第1のDC電極のバッファ層形成工程の一例を示す説明図である。
図6C図6Cは、第1のDC電極の電極形成工程の一例を示す説明図である。
図7A図7Aは、比較例のDC電極のDCドリフトの関係の一例を示す説明図である。
図7B図7Bは、実施例1の第1のDC電極のDCドリフトの関係の一例を示す説明図である。
図8図8は、光変調器のDCドリフトの経時変化の一例を示す説明図である。
図9A図9Aは、実施例2の第1のDC電極の一例を示す略断面図である。
図9B図9Bは、実施例2のRF電極の一例を示す略断面図である。
図10A図10Aは、実施例3の第1のDC電極の一例を示す略断面図である。
図10B図10Bは、実施例3のRF電極の一例を示す略断面図である。
図11A図11Aは、実施例4の第1のDC電極の一例を示す略断面図である。
図11B図11Bは、実施例4のRF電極の一例を示す略断面図である。
図12A図12Aは、実施例5の第1のDC電極の一例を示す略断面図である。
図12B図12Bは、実施例5のRF電極の一例を示す略断面図である。
図13図13は、実施例6の光変調器の第1のDC電極とRF電極との間の光導波路の結合構造の一例を示す説明図である。
図14図14は、光変調器のDC電極の一例を示す略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願が開示する光デバイス等の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
図1は、本実施例の光通信装置1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示す光通信装置1は、出力側の光ファイバ2A(2)及び入力側の光ファイバ2B(2)と接続する。光通信装置1は、DSP(Digital Signal Processor)3と、光源4と、光変調器5と、光受信器6とを有する。DSP3は、デジタル信号処理を実行する電気部品である。DSP3は、例えば、送信データの符号化等の処理を実行し、送信データを含む電気信号を生成し、生成した電気信号を光変調器5に出力する。また、DSP3は、受信データを含む電気信号を光受信器6から取得し、取得した電気信号の復号等の処理を実行して受信データを得る。
【0017】
光源4は、例えば、レーザダイオード等を備え、所定の波長の光を発生させて光変調器5及び光受信器6へ供給する。光変調器5は、DSP3から出力される電気信号によって、光源4から供給される光を変調し、得られた光送信信号を光ファイバ2Aに出力する光デバイスである。光変調器5は、例えば、LN(Lithium Niobate:ニオブ酸リチウム)光導波路とコプレーナ(CPW:Coplanar Waveguide)構造の信号電極とを備えるLN光変調器等の光デバイスである。LN光導波路は、LN結晶の基板で形成される。光変調器5は、光源4から供給される光がLN光導波路を伝搬する際に、この光を信号電極へ入力される電気信号によって変調することで、光送信信号を生成する。
【0018】
光受信器6は、光ファイバ2Bから光信号を受信し、光源4から供給される光を用いて受信光信号を復調する。そして、光受信器6は、復調した受信光信号を電気信号に変換し、変換後の電気信号をDSP3に出力する。
【0019】
図2は、実施例1の光変調器5の構成の一例を示す平面模式図である。図2に示す光変調器5は、入力側に光源4からの光ファイバ4Aを接続し、出力側に送信信号送出用の光ファイバ2Aを接続する。光変調器5は、第1の光入力部11と、第2の光調整部であるRF(Radio Frequency)変調部12と、第1の光調整部であるDC(Direct Current)印加部13と、第1の光出力部14とを有する。第1の光入力部11は、第1の光導波路11Aと、第1の導波路接合部11Bとを有する。第1の光導波路11Aは、光ファイバ4Aと接続する1本の光導波路と、1本の光導波路から分岐する2本の光導波路と、各2本の光導波路を分岐する4本の光導波路と、各4本の光導波路を分岐する8本の光導波路とを有する。第1の導波路接合部11Bは、第1の光導波路11A内の8本の光導波路とLN光導波路21内の8本のLN光導波路21との間を接合する。
【0020】
RF変調部12は、LN光導波路21と、RF電極22と、RF終端器23とを有する。RF変調部12は、第1の光導波路11から供給される光がLN光導波路21を伝搬する際に、この光をRF電極22の信号電極22Aから印加される電界によって変調する。LN光導波路21は、例えば、薄膜LN基板53を用いて形成される光導波路であり、入力側から分岐を繰り返し、複数の平行な8本のLN光導波路を有する。LN光導波路21を伝搬して変調された光は、DC印加部13内の第1のDC電極32へ出力される。薄膜LN基板53は、結晶のX軸の方向にDC電圧を印加した場合に屈折率が高くなるXカット基板である。
【0021】
RF電極22内の信号電極22Aは、LN光導波路21に重ならない位置に設けられるCWP構造の伝送路であり、DSP3から出力される電気信号に応じてLN光導波路21へ電界を印加する。RF電極22内の信号電極22Aの終端は、RF終端器23に接続されている。RF終端器23は、信号電極22Aの終端に接続され、信号電極22Aによって伝送される信号の不要な反射を防止する。
【0022】
DC印加部13は、RF変調部12のLN光導波路21と接合するLN光導波路31と、第1のDC電極32と、第2のDC電極33とを有する。第1のDC電極32は、4個の子側MZ(Mach-Zehnder)である。第2のDC電極33は、2個の親側MZである。
【0023】
LN光導波路31は、8本のLN光導波路と、8本のLN光導波路の内、2本のLN光導波路と合流する4本のLN光導波路とを有する。8本のLN光導波路31は、2本のLN光導波路毎に第1のDC電極32を配置している。第1のDC電極32は、LN光導波路31上の信号電極32Aにバイアス電圧を印加することで、電気信号のON/OFFが光信号のON/OFFに対応するようにバイアス電圧を調整して、同相軸成分のI信号若しくは直交軸成分のQ信号を出力する。LN光導波路31内の4本のLN光導波路は、2本のLN光導波路毎に第2のDC電極33を配置している。第2のDC電極33は、LN光導波路31上の信号電極33Aにバイアス電圧を印加することで、電気信号のON/OFFが光信号のON/OFFに対応するようにバイアス電圧を調整してI信号若しくはQ信号を出力する。
【0024】
第1の光出力部14は、第2の導波路接合部41と、第2の光導波路42と、PR(Polarization Rotator)43と、PBC(Polarization Beam Combiner:偏波ビームコンバイナ)44とを有する。第2の導波路接合部41は、DC印加部13内のLN光導波路31と第2の光導波路42との間を接合する。第2の光導波路42は、第2の導波路接合部41に接続する4本の光導波路と、4本の光導波路の内、2本の光導波路と合流する2本の光導波路とを有する。
【0025】
PR43は、一方の第2のDC電極33から入力したI信号若しくはQ信号を90度回転して90度回転後の垂直偏波の光信号を得る。そして、PR43は、垂直偏波の光信号をPBC44に入力する。PBC44は、PR43からの垂直偏波の光信号と、他方の第2のDC電極33から入力した水平偏波の光信号とを合波して偏波多重信号を出力する。
【0026】
次に、実施例1の光変調器5の構成について、具体的に説明する。図3Aは、実施例1の光変調器5の第1のDC電極32の一例を示す略断面図である。図3Aに示す第1のDC電極32は、支持基板51と、支持基板51上に積層された中間層52とを有する。更に、第1のDC電極32は、中間層52に積層された薄膜LN基板53と、薄膜LN基板53上に積層されたバッファ層54と、バッファ層54に積層された、CWP構造の信号電極32A及び接地電極32Bとを有する。
【0027】
薄膜LN基板53には、LN結晶の薄膜を用いた基板であって、所定箇所を上方へ突起する凸形状の薄膜光導波路55が形成される。そして、薄膜LN基板53及び薄膜光導波路55がバッファ層54によって被覆され、バッファ層54の表面にCWP構造の信号電極32A及び一対の接地電極32Bが配置される。つまり、バッファ層54上には、信号電極32Aと、信号電極32Aを挟む一対の接地電極32Bとが配置されている。
【0028】
信号電極32Aと接地電極32Bとの間に位置する薄膜LN基板53には、突状、例えば、凸形状の薄膜光導波路55が形成されている。凸形状の薄膜光導波路55は、側壁面55Aと、平坦面55Bとを有する。更に、信号電極32Aと接地電極32Bとの間に位置するバッファ層54にも、凸形状の薄膜光導波路55全体を被覆する段差部54Aがある。薄膜光導波路55の側壁面55Aを被覆する段差部54Aは、その側壁面541Aを接地電極32B及び信号電極32Aの一部で被覆する。
【0029】
支持基板51は、例えば、SiO2(二酸化ケイ素)又はTiO2(二酸化チタン)等の基板である。中間層52は、例えば、SiO2又はTiO2等の屈折率が高い透明材からなる層である。同様に、バッファ層54は、SiO2又はTiO2等からなる層である。
【0030】
中間層52とバッファ層54との間には、厚さが0.5~3μmの薄膜LN基板53が挟まれており、薄膜LN基板53には、上方へ突起する凸形状の薄膜光導波路55が形成されている。薄膜光導波路55となる突起の幅は、例えば、1~8μm程度である。薄膜LN基板53及び薄膜光導波路55は、バッファ層54によって被覆されており、バッファ層54の表面に信号電極32A及び接地電極32Bが配置される。つまり、信号電極32Aは、一対の接地電極32Bに対向している。信号電極32Aと接地電極32Bとの間の電極間隔をX1とする。
【0031】
信号電極32Aは、例えば、金や銅等の金属材料からなり、幅が2~10μm、厚みが1~20μmの信号電極である。接地電極32Bは、例えば、アルミニウム等の金属材料からなり、厚みが1μm以上の接地電極である。DSP3から出力される電気信号に応じた高周波信号が信号電極32Aによって伝送されることにより、信号電極32Aから接地電極32Bへ向かう方向の電界が発生し、この電界が薄膜光導波路55に印加される。その結果、薄膜光導波路55への電界印加に応じて薄膜光導波路55の屈折率が変化し、薄膜光導波路55を伝搬する光を変調することが可能となる。
【0032】
図3Bは、実施例1の光変調器5の第2のDC電極33の一例を示す略断面図である。図3Bに示す第2のDC電極33は、支持基板51と、支持基板51上に積層された中間層52とを有する。更に、第2のDC電極33は、中間層52に積層された薄膜LN基板53と、薄膜LN基板53上に積層されたバッファ層54と、バッファ層54に積層された、CWP構造の信号電極33A及び接地電極33Bとを有する。
【0033】
薄膜LN基板53には、上方へ突起する凸形状の薄膜光導波路55が形成される。そして、薄膜LN基板53及び薄膜光導波路55がバッファ層54によって被覆され、バッファ層54の表面にCWP構造の信号電極33A及び一対の接地電極33Bが配置される。つまり、バッファ層54上には、信号電極33Aと、信号電極33Aを挟む一対の接地電極33Bとが配置されている。信号電極33Aと接地電極33Bとの間の電極間隔をX1とする。
【0034】
信号電極33Aと接地電極33Bとの間に位置する薄膜LN基板53には、凸形状の薄膜光導波路55が形成されている。凸形状の薄膜光導波路55は、側壁面55Aと、平坦面55Bとを有する。更に、信号電極33Aと接地電極33Bとの間に位置するバッファ層54にも、凸形状の薄膜光導波路55全体を被覆する段差部54Aがある。薄膜光導波路55の側壁面55Aを被覆する段差部54Aは、段差部54Aの側壁面541Aを接地電極33B及び信号電極33Aで被覆する。
【0035】
信号電極33Aは、例えば、金や銅等の金属材料からなり、幅が2~10μm、厚みが1~20μmの信号電極である。接地電極33Bは、例えば、金、銅やアルミニウム等の金属材料からなり、厚みが1μm以上の接地電極である。DSP3から出力される電気信号に応じた高周波信号が信号電極33Aによって伝送されることにより、信号電極33Aから接地電極33Bへ向かう方向の電界が発生し、この電界が薄膜光導波路55に印加される。その結果、薄膜光導波路55への電界印加に応じて薄膜光導波路55の屈折率が変化し、薄膜光導波路55を伝搬する光を変調することが可能となる。
【0036】
図4は、実施例1の光変調器5のRF電極22の一例を示す略断面図である。図4に示すRF電極22は、支持基板51と、支持基板51上に積層された中間層52とを有する。更に、RF電極22は、中間層52に積層された薄膜LN基板53と、薄膜LN基板53上に積層されたバッファ層54と、バッファ層54に積層された、CWP構造の信号電極22A及び接地電極22Bとを有する。
【0037】
薄膜LN基板53には、上方へ突起する凸形状の薄膜光導波路60が形成される。そして、薄膜LN基板55及び薄膜光導波路60がバッファ層54によって被覆され、バッファ層54の表面にCWP構造の信号電極22A及び一対の接地電極22Bが配置される。つまり、バッファ層54上には、信号電極22Aと、信号電極22Aを挟む一対の接地電極22Bとが配置されている。
【0038】
信号電極22Aと接地電極22Bとの間に位置する薄膜LN基板53には、凸形状の薄膜光導波路60が形成されている。凸形状の薄膜光導波路60は、側壁面60Aと、平坦面60Bとを有する。更に、信号電極22Aと接地電極22Bとの間に位置するバッファ層54にも、凸形状の薄膜光導波路60全体を被覆する段差部54Bがある。薄膜光導波路60の側壁面60Aを被覆する段差部54Bの側壁面541Bは、接地電極22B及び信号電極22Aと離間している。
【0039】
中間層52とバッファ層54との間には、厚さが0.5~3μmの薄膜LN基板53が挟まれており、薄膜LN基板53には、上方へ突起する凸形状の薄膜光導波路60が形成されている。薄膜光導波路60となる突起の幅は、例えば、1~8μm程度である。薄膜LN基板53及び薄膜光導波路60は、バッファ層54によって被覆されており、バッファ層54の表面に信号電極22A及び接地電極22Bが配置される。信号電極22Aと接地電極22Bとの間の電極間隔をX2とする。尚、電極間隔X1<電極間隔X2とする。
【0040】
また、信号電極22Aは、高周波損失の小さい、接地電極22Bと異なる材料であることが望ましい。
【0041】
信号電極22Aは、例えば、金や銅等の金属材料からなり、幅が2~10μm、厚みが1~20μmの電極である。接地電極22Bは、例えば、アルミニウム等の金属材料からなり、厚みが1μm以上の電極である。DSP3から出力される電気信号に応じた高周波信号が信号電極22Aによって伝送されることにより、信号電極22Aから接地電極22Bへ向かう方向の電界が発生し、この電界が薄膜光導波路60に印加される。その結果、薄膜光導波路60への電界印加に応じて薄膜光導波路60の屈折率が変化し、薄膜光導波路60を伝搬する光を変調することが可能となる。
【0042】
次に実施例1の第1のDC電極32の製造工程の一例を示す説明図である。尚、第1のDC電極32の製造工程について説明するが、第2のDC電極33の製造工程についても同一の工程を含むものであり、同一工程には同一符号を付すことで、その重複する構成及び工程の説明については省略する。
【0043】
図5Aは、第1のDC電極32の中間層形成工程の一例を示す説明図である。図5Aに示す支持基板51上に中間層52を製膜する。図5Bは、第1のDC電極32のLN基板形成工程の一例を示す説明図である。図5Bに示す中間層52上にLN基板53Aをボンディングする。図5Cは、第1のDC電極32の研磨工程の一例を示す説明図である。図5Cに示す中間層52上にボンディングされたLN基板53Aを研磨処理等で薄膜化することで、中間層52上に薄膜LN基板53を形成する。
【0044】
図6Aは、第1のDC電極32の薄膜光導波路形成工程の一例を示す説明図である。図6Aに示す薄膜LN基板53をエッチングすることで薄膜LN基板53上の所定箇所に凸形状の薄膜光導波路55を形成する。
【0045】
図6Bは、第1のDC電極32のバッファ層形成工程の一例を示す説明図である。図6Bに示す薄膜LN基板53及び薄膜光導波路55上にバッファ層54を製膜する。その薄膜光導波路55上にバッファ層54の段差部54Aを形成することになる。この際、段差部54Aの側壁は平坦面に比較して側壁の製膜が薄くなる場合もある。
【0046】
図6Cは、第1のDC電極32の電極形成工程の一例を示す説明図である。図6Cに示すバッファ層54上に、薄膜光導波路55の平坦面55B上の段差部54Aをレジストした後、電解メッキ処理等で信号電極32Aと一対の接地電極32Bとをバッファ層54上に形成する。そして、薄膜光導波路55の側壁面55A上の段差部54A上にある接地電極32B及び信号電極32Aの厚さが厚くなるため、その接地電極32B及び信号電極32Aの厚みを調整する余分なメッキ部分を除去して第1のDC電極32を製造することになる。
【0047】
図7Aは、比較例の光変調器のDC電極のDCドリフトの関係の一例を示す説明図、図7Bは、実施例1の光変調器5の第1のDC電極32のDCドリフトの関係の一例を示す説明図、図8は、光変調器のDCドリフトの経時変化の一例を示す説明図である。DCドリフトは、バッファ層204(54)及び薄膜光導波路207(55)の抵抗及びキャパシタンスに依存する。バッファ層204(54)の抵抗をRb、バッファ層204(54)のキャパシタンスをCb、薄膜光導波路207(55)の抵抗をRL、薄膜光導波路207(55)のキャパシタンスをCLとする。
【0048】
電界印加初期においてはキャパシタンスに電荷が蓄積される効果により、キャパシタンスが薄膜光導波路207に印加される電界を決定することになる。従って、信号電極205と接地電極206との間に電圧Vinを印加したときの薄膜光導波路207にかかる電圧は、1/(1+CL/Cb)*Vinとなる。一方で、一定期間が経過した場合、キャパシタンスに電荷が蓄積されて安定化した場合、抵抗が薄膜光導波路207に印加される電界を決定することになる。従って、信号電極205と接地電極206との間に電圧Vinを印加したときに薄膜光導波路207にかかる電圧は、RL/(Rb+RL)*Vinとなる。同様に、電界印加初期では、信号電極32Aと接地電極32Bとの間に電圧Vinを印加したときの薄膜光導波路55にかかる電圧も、1/(1+CL/Cb)*Vinとなる。一方で、一定期間が経過した場合、信号電極32Aと接地電極32Bとの間に電圧Vinを印加したときに薄膜光導波路55にかかる電圧はRL/(Rb+RL)*Vinとなる。
【0049】
図7Aの薄膜光導波路207を被膜するバッファ層204の段差部204Aは、バッファ層204の厚みが薄くなってクラックが入り、バッファ層204の抵抗値が上昇して、周囲の環境により抵抗値が不安定になる。特に、段差部204Aの内、側壁の部分の厚みの薄さが顕著となってクラックが生じやすい。
【0050】
図7Aに示すDC電極では、バッファ層204の抵抗値Rbが薄膜光導波路207の抵抗値RLに比較して高くなると、信号電極205と接地電極206との間に電圧Vinを印加したときに薄膜光導波路207にかかる電圧が低下して光変調されにくくなる。尚、薄膜光導波路207にかかる電圧は、RL/(Rb+RL)*Vinである。その結果、図8に示すようにDCドリフトが正の方向(DC電圧をかけても変調しない)に変化してしまうことになる。特に薄膜光導波路207がXカット基板を採用しているため、その影響は顕著となる。
【0051】
これに対して、図7Bに示す第1のDC電極32では、バッファ層54の段差部54Aの側壁を信号電極32A及び接地電極32Bの一部で被覆することで、バッファ層54の抵抗値Rbは安定して小さくなる。更に、薄膜光導波路55にかかる電圧(RL/(Rb+RL)*Vin)が安定して高くなるため、図8に示すようにDCドリフトが正の方向に変化するのを抑制できる。しかも、薄膜光導波路55を被膜するバッファ層54の段差部54Aの側壁の厚みが薄くなった場合でも、その側壁を信号電極32A及び接地電極32Bの一部で被覆するので、段差部54Aの側壁の強度を強化し、比較例で指摘したクラックが入るような事態を回避できる。その結果、クラックによるバッファ層54の抵抗値が上昇するような事態を回避し、抵抗値を安定化できる。特に薄膜光導波路55がXカット基板を採用しているため、その効果は顕著となる。
【0052】
実施例1の光変調器5の第1のDC電極32は、凸形状の薄膜光導波路55の側壁部55Aに積層されたバッファ層54の段差部54Aを信号電極32A及び接地電極32Bの一部で被覆する。その結果、信号電極32A及び接地電極32Bによる被覆で段差部54Aの抵抗値が安定化して小さくなる。薄膜光導波路55にかかる電圧が安定して高くなるため、DCドリフトが正方向に変化するような事態を回避することで、光変調器5の寿命を延ばすことができる。
【0053】
第2のDC電極33は、凸形状の薄膜光導波路55の側壁部55Aに積層されたバッファ層54の段差部54Aを信号電極33A及び接地電極33Bの一部で被覆する。その結果、信号電極33A及び接地電極33Bによる被覆で段差部54Aの抵抗値が安定化して小さくなる。薄膜光導波路55にかかる電圧が安定して高くなるため、DCドリフトが正方向に変化するような事態を回避することで、光変調器5の寿命を延ばすことができる。
【0054】
第1のDC電極32の信号電極32Aと接地電極32Bとの電極間隔X1を、RF電極22の信号電極22Aと接地電極22Bとの電極間隔X2に比較して狭くしたので、段差部54Aを信号電極32A及び接地電極32Bの一部で被覆することできる。
【0055】
これに対して、光変調器5のRF電極22の信号電極22Aと接地電極22Bとの電極間隔X2を、第1のDC電極32の信号電極32Aと接地電極32Bとの電極間隔X1に比較して広くしたので、高周波信号の伝搬損失を少なくして変調帯域幅が広くできる。
【0056】
第2のDC電極33の接地電極33Bと信号電極33Aとの間の電極間隔X1を、RF電極22の接地電極22Bと信号電極22Aとの間の電極間隔X2に比較して狭くしたので、段差部54Aを信号電極33A及び接地電極33Bの一部で被覆することできる。
【0057】
尚、説明の便宜上、光変調器5としてLN光変調器を例示したが、例えば、ポリマ変調器に適用しても良く、適宜変更可能である。
【0058】
尚、上記実施例1の光変調器5では、第1のDC電極32及びRF電極22の電極間隔を調整する場合を例示したが、第1のDC電極32及びRF電極22の導波路幅を調整しても良く、その実施の形態につき、実施例2として以下に説明する。
【実施例2】
【0059】
図9Aは、実施例2の第1のDC電極32の一例を示す略断面図、図9Bは、実施例2のRF電極22の一例を示す略断面図である。尚、実施例1の光変調器5と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図9Aに示す第1のDC電極32内の薄膜光導波路55の平坦面55Bの幅である導波路幅L1は、図9Bに示すRF電極22内の薄膜光導波路60の平坦面60Bの幅である導波路幅L2に比較して狭くする。
【0060】
その結果、RF電極22の導波路幅L2は、第1のDC電極32の導波路幅L1に比較して広くしたので、製造プロセスの誤差により接地電極22Bと信号電極22Aとの間でショートする確率が小さくなるため、歩留まりの劣化を抑制できる。
【0061】
更に、光変調器5の第1のDC電極32も、凸形状の薄膜光導波路55の側壁部55Aに積層されたバッファ層54の段差部54Aを信号電極32A及び接地電極32Bの一部で被覆する。その結果、段差部54Aの抵抗値が安定化して小さくなり、薄膜光導波路55にかかる電圧が安定して高くなるため、DCドリフトが正方向に変化するような事態を回避することで、光変調器5の寿命を延ばすことができる。
【0062】
しかしながら、実施例2の第1のDC電極32内の薄膜光導波路55の平坦面55Bの導波路幅L1を広くし過ぎると、薄膜導波路55間の間隔が狭くなるため、薄膜導波路55間での光結合が問題となる。そこで、このような光結合の問題を解消する光変調器5の実施の形態につき、実施例3として以下に説明する。
【実施例3】
【0063】
図10Aは、実施例3の第1のDC電極32の一例を示す略断面図、図10Bは、実施例3のRF電極22の一例を示す略断面図である。尚、実施例1の光変調器5と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図10Aに示す第1のDC電極32内の信号電極32Aを挟んだ隣接する薄膜光導波路55間の導波路間隔P1は、図10Bに示すRF電極22内の信号電極22Aを挟んだ隣接する薄膜光導波路60間の導波路間隔P2に比較して広くする。その結果、導波路間での光結合の問題が解消できる。
【0064】
更に、光変調器5の第1のDC電極32も、凸形状の薄膜光導波路55の側壁部55Aに積層されたバッファ層54の段差部54Aを信号電極32A及び接地電極32Bの一部で被覆する。その結果、段差部54Aの抵抗値が安定化して小さくなり、薄膜光導波路55にかかる電圧が安定して高くなるため、DCドリフトが正方向に変化するような事態を回避することで、光変調器5の寿命を延ばすことができる。
【0065】
尚、実施例1の光変調器5では、第1のDC電極32の信号電極32Aと接地電極32Bとの電極間隔を狭めると、製造プロセス誤差による信号電極32Aと接地電極32Bとの間のショートの可能性が高くなる。そこで、電極を薄くすることで、このような事態を回避できる。しかしながら、RF電極22の厚みを薄くした場合には、高周波での抵抗が増大し、帯域が劣化する。そこで、このような事態を解消する実施の形態として実施例4について説明する。
【実施例4】
【0066】
図11Aは、実施例4の第1のDC電極32の一例を示す略断面図である。図11Bは、実施例4のRF電極22の一例を示す略断面図である。尚、実施例1の光変調器5と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図11Aに示す第1のDC電極32内の信号電極32Aの厚みM1は、図11Bに示すRF電極22内の信号電極22Aの厚みM2に比較して薄くする。その結果、RF電極22での高周波での抵抗の増大を抑制し、帯域が劣化するのを回避できる。
【0067】
更に、光変調器5の第1のDC電極32も、凸形状の薄膜光導波路55の側壁部55Aに積層されたバッファ層54の段差部54Aを信号電極32A及び接地電極32Bの一部で被覆する。その結果、段差部54Aの抵抗値が安定化して小さくなり、薄膜光導波路55にかかる電圧が安定して高くなるため、DCドリフトが正方向に変化するような事態を回避することで、光変調器5の寿命を延ばすことができる。
【実施例5】
【0068】
図12Aは、実施例5の第1のDC電極の一例を示す略断面図、図12Bは、実施例5のRF電極の一例を示す略断面図である。尚、実施例1の光変調器5と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図12Aに示す第1のDC電極32内の接地電極32Bの厚みは、図12Bに示すRF電極22内の接地電極22Bの厚みに比較して薄くする。その結果、第1のDC電極32内の接地電極32Bの厚みがRF電極22内の接地電極22Bの厚みに比較して薄くしたので、RF電極22の帯域を維持しながら、第1のDC電極32の歩留まり劣化を抑制できる。
【0069】
更に、光変調器5の第1のDC電極32も、凸形状の薄膜光導波路55の側壁部55Aに積層されたバッファ層54の段差部54Aを信号電極32A及び接地電極32Bの一部で被覆する。その結果、段差部54Aの抵抗値が安定化して小さくなり、薄膜光導波路55にかかる電圧が安定して高くなるため、DCドリフトが正方向に変化するような事態を回避することで、光変調器5の寿命を延ばすことができる。
【実施例6】
【0070】
図13は、実施例6の光変調器5の第1のDC電極32とRF電極22との間の光導波路の結合構造の一例を示す説明図である。尚、実施例1の光変調器5と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図13に示すRF電極22内の薄膜光導波路60と第1のDC電極32内の薄膜光導波路55との間の接合部は、薄膜光導波路60から薄膜光導波路55に向けてLN光導波路21(31)をテーパー状に幅広くする。その結果、RF電極22の薄膜光導波路60と第1のDC電極32の薄膜光導波路55との光導波路幅が異なる場合でも、両者間で光の散乱損失の発生を抑制できる。RF電極22の薄膜光導波路60から第1のDC電極32の薄膜光導波路55までの光伝播結合の効率の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 光通信装置
3 DSP
4 光源
5 光変調器
22 RF電極
22A 信号電極
22B 接地電極
32 第1のDC電極
32A 信号電極
32B 接地電極
33 第2のDC電極
33A 信号電極
33B 接地電極
53 薄膜基板
54 バッファ層
54A 段差部
54B 段差部
55 薄膜光導波路
55A 側壁面
60 薄膜光導波路
60A 側壁面
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14