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  • 特許-冷却設備監視システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】冷却設備監視システム
(51)【国際特許分類】
   F28F 27/00 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
F28F27/00 501Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021045628
(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公開番号】P2022144566
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】菊池 陽介
(72)【発明者】
【氏名】原 和也
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-249300(JP,A)
【文献】特開平06-210270(JP,A)
【文献】特開2003-065883(JP,A)
【文献】特開2020-200982(JP,A)
【文献】特開平06-213592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 27/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却塔により冷却水を冷却する冷却設備の運転状態を監視する冷却設備監視システムであって、
前記冷却塔の入口における冷却水の入口温度の検出値を取得する入口温度取得部と、
前記冷却塔の出口における冷却水の出口温度の検出値を取得する出口温度取得部と、
前記冷却設備の系内に供給される補給水及び薬剤の少なくともいずれかの供給量の検出値を取得する供給量取得部と、
入口温度取得部が取得した前記入口温度の検出値と前記出口温度取得部が取得した前記出口温度の検出値との差に基づいて、前記補給水及び薬剤の少なくともいずれかの供給量の理論値を算出する理論値算出部と、
前記供給量取得部が取得した前記供給量の検出値と、前記理論値算出部が算出した前記供給量の理論値とに基づいて前記冷却設備の異常の有無を判定する異常判定部と、
前記異常判定部が前記冷却設備に異常があると判定した場合にその旨を報知する報知部と、
を備える冷却設備監視システム。
【請求項2】
前記異常判定部は、
前記補給水の供給量の検出値が前記補給水の供給量の理論値よりも大きい場合には、前記冷却設備に水漏れの可能性があると判断し、
前記補給水の供給量の検出値が前記補給水の供給量の理論値よりも小さい場合には、前記冷却設備の水質センサが汚れている可能性があると判断する、請求項1に記載の冷却設備監視システム。
【請求項3】
前記異常判定部は、
前記薬剤の供給量の検出値が前記薬剤の供給量の理論値よりも大きい場合には、前記薬剤が漏れている可能性があると判断し、
前記薬剤の供給量の検出値が前記薬剤の供給量の理論値よりも小さい場合には、前記薬剤の供給装置が詰まっている可能性があると判断する、請求項1又は2に記載の冷却設備監視システム。
【請求項4】
前記理論値算出部は、過去の前記入口温度の検出値と前記出口温度の検出値との差と前記供給量の検出値との関係を考慮して、前記供給量の理論値を算出する、請求項1から3のいずれかに記載の冷却設備監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却設備監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
所定の循環流路を循環する冷却水を冷却塔において冷却する冷却設備が広く利用されている。冷却塔は、冷却水の一部を蒸発させることで気化熱として大気中にエネルギーを放出し、これによって冷却水の温度を低下させる。冷却塔を用いる冷却設備では、冷却塔において蒸発した水を補うために、補給水が供給される。
【0003】
また、冷却設備では、冷却塔における水の蒸発、補給水の給水等によって冷却水の水質が変化し得る。このため、冷却設備は、冷却水の水質を検出し、冷却水の水質を所定範囲内に保持するよう、例えばスケール防止剤、pH調整剤、スライムコントロール剤等の薬剤を自動的に注入するよう構成され得る。このような冷却設備には、冷却水の水質の測定値、薬剤の注入量等をシステムの管理者が容易に把握できるように画面表示、警報発出等の報知を行う手段が設けられることが多い。例えば特許文献1には、冷却設備の各種の測定値をデータベースに送信し、データベースに蓄積したデータを用いて、冷却水の濃縮倍率、薬剤濃度及びpHを算出し、ウェブ上に表示することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-207629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、サーバにおいて、データベースに蓄積したデータの解析、診断を行い、その結果を表示することも記載されている。冷却水の水質を自動的に管理する冷却設備では、例えば水質を検出するセンサ等になんらかの異常が発生した場合には、制御入力となるデータに誤差が生じるため、補給水位の供給量、薬剤の注入量等が不適切となり得る。しかしながら、従来の監視システムは、例えばセンサの汚れによる検出誤差等の異常が発生しても、冷却設備の管理者が異常の発生に容易に気付くことができない。このため、本発明は、冷却設備における異常の発生を検知できる冷却設備監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る冷却設備監視システムは、冷却塔により冷却水を冷却する冷却設備の運転状態を監視する冷却設備監視システムであって、前記冷却塔の入口における冷却水の入口温度の検出値を取得する入口温度取得部と、前記冷却塔の出口における冷却水の出口温度の検出値を取得する出口温度取得部と、前記冷却設備の系内に供給される補給水及び薬剤の少なくともいずれかの供給量の検出値を取得する供給量取得部と、入口温度取得部が取得した前記入口温度の検出値と前記出口温度取得部が取得した前記出口温度の検出値との差に基づいて、前記補給水及び薬剤の少なくともいずれかの供給量の理論値を算出する理論値算出部と、前記供給量取得部が取得した前記供給量の検出値と、前記理論値算出部が算出した前記供給量の理論値とに基づいて前記冷却設備の異常の有無を判定する異常判定部と、前記異常判定部が前記冷却設備に異常があると判定した場合にその旨を報知する報知部と、を備える。
【0007】
上述の冷却設備監視システムにおいて、前記異常判定部は、前記補給水の供給量の検出値が前記補給水の供給量の理論値よりも大きい場合には、前記冷却設備に水漏れの可能性があると判断し、前記補給水の供給量の検出値が前記補給水の供給量の理論値よりも小さい場合には、前記冷却設備の水質センサが汚れている可能性があると判断してもよい。
【0008】
上述の冷却設備監視システムにおいて、前記異常判定部は、前記薬剤の供給量の検出値が前記薬剤の供給量の理論値よりも大きい場合には、前記薬剤が漏れている可能性があると判断し、前記薬剤の供給量の検出値が前記薬剤の供給量の理論値よりも小さい場合には、前記薬剤の供給装置が詰まっている可能性があると判断してもよい。
【0009】
上述の冷却設備監視システムにおいて、前記理論値算出部は、過去の入口温度の検出値と出口温度の検出値との差と前記供給量の検出値との関係を考慮して、前記供給量の理論値を算出してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、冷却設備における異常の発生を検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態の冷却設備監視システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態の冷却設備監視システム1の構成を示す模式図である。
【0013】
冷却設備監視システム1は、冷却設備100の運転状態を監視するシステムである。冷却設備100は、冷却水を大気に暴露させてその一部を気化させることによって冷却水の温度を低下させる冷却塔110と、冷却塔110から例えば冷凍機等の負荷Lに冷却水を供給し、負荷Lに冷熱を与えて温度が上昇した冷却水を冷却塔110に還流させる循環流路120と、冷却塔110において気化した冷却水を補填するよう系内に補給水を供給する給水機構130と、冷却水の水質を一定に保持するよう冷却水に薬剤を注入する薬剤供給装置140と、を備える。
【0014】
冷却塔110は、散水器111と、充填材112と、回収水槽113と、送風機114と、入口温度センサ115と、出口温度センサ116と、冷却水水質センサ117と、を有する。
【0015】
散水器111は、循環流路120から還流する冷却水を充填材112に上方から散水する。散水器111としては、例えば、冷却水が流出する多数の小孔が形成されたパイプ(散水パイプ)、底部に多数の小孔が形成された浅い容器(散水パン)等を用いることができる。
【0016】
充填材112は、散水器111から散水される冷却水と、送風機114によって導入される空気との接触効率を向上する。このため、充填材112は、冷却水の表面積を大きく保ちながら冷却水の通過(落下)速度を抑制し、空気の通過抵抗が小さくなるよう、気孔径及び気孔率が大きい多孔質体状に形成され得る。
【0017】
回収水槽113は、充填材112を通過した冷却水を受け取って貯留する。なお、冷却塔110は、回収水槽113から散水器111に冷却水がポンプアップされるよう構成されてもよい。また、循環流路120から冷却水が回収水槽113に還流されてもよい。
【0018】
送風機114は、散水器111の上方に、充填材112の上部から空気を吸引して冷却塔110の上方に空気を吹き出させるよう配設される。これにより、充填材112には側方から空気が供給され、充填材112の内部で冷却水と空気とが接触する。
【0019】
入口温度センサ115は、冷却塔110の入口における冷却水の温度である入口温度を検出する。このため、入口温度センサ115は、冷却塔110に導入された直後の冷却水の温度を検出するよう、散水器111に配設され得る。また、入口温度センサ115は、冷却塔110に導入される直前の冷却水の温度を検出するよう、循環流路120に配設されてもよい。
【0020】
出口温度センサ116は、冷却塔110の出口における冷却水の温度である出口温度を検出する。このため、出口温度センサ116は、冷却塔110から送出される直前の冷却水の温度を検出するよう、回収水槽113に配設され得る。また、出口温度センサ116は、冷却塔110から流出した直後の冷却水の温度を検出するよう、循環流路120に配設されてもよい。
【0021】
冷却水水質センサ117は、例えば電気伝導度センサ等によって構成される。冷却水水質センサ117は、回収水槽113において冷却水の水質を検出するよう配設され得る。
【0022】
循環流路120は、回収水槽113から冷却水を送出する循環ポンプ121を有する。負荷Lにおいて、冷却水は熱交換により冷熱を放出し、温度上昇する。このため冷却塔110には、温度が上昇した冷却水が還流する。循環ポンプ121は、一定の流量で冷却水を送出するよう設定され得る。これにより、散水器111において散水される冷却水の水量が一定に保持され得る。
【0023】
給水機構130は、充填材112の中で蒸発し、外気中に散逸した冷却水を補填するよう外部から供給される補給水を冷却設備100の系内に供給する。給水機構130は、補給水を回収水槽113に供給するよう配設され得る。具体的には、給水機構130は、回収水槽113における冷却水の水位を一定に保つボールタップ131を有する構成され得る。また、給水機構130は、冷却水が濃縮した場合に補給水を供給して冷却水を希釈するために、冷却水水質センサ117の検出値に応じて開閉される希釈弁132を有し得る。さらに、給水機構130は、補給水の水質を検出する補給水水質センサ133と、補給水の供給量を検出する給水流量計134と、を有する。
【0024】
薬剤供給装置140は、冷却水の水質を一定範囲内に保持するよう冷却設備100の系内に、スケール防止剤、スライムコントロール剤、腐食防止剤等の薬剤を供給する。薬剤供給装置140は、回収水槽113に薬剤を投入するよう配設され得る。薬剤供給装置140は、薬剤を貯留する薬剤タンク141と、薬剤タンク141から薬剤を送出する薬剤ポンプ142と、を有する。また、薬剤供給装置140には、薬剤の供給量を測定する薬剤供給量計143が設けられる。薬剤供給量計143は、薬剤タンク141における薬剤の残存量を測定するレベルセンサ、薬剤ポンプ142の吐出量を検出する吐出量チェッカ又は流量計等から構成され得る。薬剤供給装置140は、補給水水質センサ133の検出値に応じて補給水の単位量当たりの必要な薬剤供給量を設定し、給水流量計134によって検出される補給水供給量に応じて冷却水に薬剤を注入する。
【0025】
以上の構成を有する冷却設備100の運転状態を監視する冷却設備監視システム1は、入口温度取得部10と、出口温度取得部20と、補給水供給量取得部30と、薬剤供給量取得部40と、理論値算出部50と、異常判定部60と、報知部70と、を備える。
【0026】
冷却設備監視システム1は、メモリ、CPU、入出力インターフェイス等を有する1又は複数のコンピュータ装置に適切なプログラムを実行させることによって実現され得る。冷却設備監視システム1の各構成要素は、冷却設備監視システム1の機能を類別したものであって、その物理構成及びプログラム構成において明確に区分できるものでなくてもよい。また、冷却設備監視システム1は、冷却設備100の制御装置と一体又は冷却設備100と一対一に対応するものであってもよいが、複数の冷却設備100とネットワークを介して接続され、複数の冷却設備100の運転状態を監視するよう構成されてもよい。
【0027】
入口温度取得部10は、入口温度センサ115から入口温度の検出値を取得する。入口温度取得部10は、一定の時間間隔で入口温度センサ115の検出値を取得し、取得した入口温度の検出値の時系列データを記憶するよう構成されることが好ましい。
【0028】
出口温度取得部20は、出口温度センサ116から出口温度の検出値を取得する。出口温度取得部20は、一定の時間間隔で出口温度センサ116の検出値を取得し、取得した出口温度の検出値の時系列データを記憶するよう構成されることが好ましい。
【0029】
補給水供給量取得部30は、給水流量計134が検出した流量を積算することにより、補給水供給量の検出値を取得するよう構成され得る。補給水供給量取得部30は、一定の時間間隔で補給水供給量の検出値を算出し、算出した補給水供給量の検出値の時系列データを記憶するよう構成されることが好ましい。
【0030】
薬剤供給量取得部40は、薬剤供給量計143から薬剤供給量の検出値を取得する。薬剤供給量取得部40は、一定の時間間隔で薬剤供給量計143の検出値を取得し、取得した薬剤供給量の検出値の時系列データを記憶するよう構成されることが好ましい。
【0031】
理論値算出部50は、入口温度取得部10が取得した入口温度の検出値と出口温度取得部20が取得した出口温度の検出値との差に基づいて、補給水供給量及び薬剤供給量の理論値を算出する。具体的には、入口温度の検出値と出口温度の検出値との差に循環流路120における冷却水の流量を乗じた値が負荷Lにおける消費冷熱量であるため、理論値算出部50は、この消費冷熱量と冷却塔110における蒸発潜熱とが等しいものとして、冷却塔110における冷却水の蒸発量、つまり補給水供給量の理論値を算出することができる。また、補給水水質センサ133の検出値から算出される補給水の単位量当たりに必要な薬剤の供給量と前記補給水供給量の理論値との積として薬剤供給量の理論値を算出することができる。
【0032】
また、理論値算出部50は、過去の前記入口温度の検出値と前記出口温度の検出値との差と補給水供給量及び薬剤供給量の検出値との関係を考慮して、補給水供給量及び薬剤供給量の理論値を算出してもよい。現実の冷却設備100では、循環流路120の途中から冷却水の一部を系外に排出するようなオペレーションを日常的に行っている場合がある。このような場合、冷却設備100の過去運転時における負荷Lにおける消費冷熱量を示す入口温度の検出値と出口温度の検出値との差と、補給水供給量及び薬剤供給量の検出値との間の相関を確認することで、冷却水の系外への排出量を推定できる。このため、理論値算出部50は、このような冷却水の系外への排出量の推定量を加算した値として、給水供給量及び薬剤供給量の理論値を算出してもよい。
【0033】
冷却水の冷却設備100の系外への排出量は、一定量(時間に比例する量)、消費冷熱量に比例する量、その他消費冷熱量の関数として表される量等として、周知の統計手法によって推定され得る。簡単な例として、前回までの一定期間の入口温度の検出値と出口温度の検出値との差の平均値に対する補給水供給量及び薬剤供給量の検出値の平均値の比を算出し、この比を今回の入口温度の検出値と出口温度の検出値との差に乗じた値を、補給水供給量及び薬剤供給量の理論値としてもよい。また、冷却設備監視システム1が複数の冷却設備100の運転状態を監視するものである場合、複数の冷却設備100のデータを統計的に処理して、補給水供給量及び薬剤供給量の理論値を算出してもよい。
【0034】
異常判定部60は、補給水供給量取得部30が取得した出口温度の検出値及び薬剤供給量取得部40が取得した薬剤供給量の検出値と、理論値算出部50が算出した補給水供給量及び薬剤供給量の理論値とに基づいて冷却設備100の異常の有無を判定する。つまり、異常判定部60は、補給水供給量の実測値と理論値との間に有意な差がある場合及び薬剤供給量の実測値と理論値との間に有意な差がある場合には、冷却設備100に異常があると判定するよう構成され得る。
【0035】
異常判定部60は、補給水供給量及び薬剤供給量の検出値と理論値との大小関係に応じて、冷却設備100に発生している可能性がある異常の種類を特定するよう構成されてもよい。例として、異常判定部60は、補給水供給量の検出値が補給水供給量の理論値よりも有意に大きい場合には、冷却設備100に水漏れの可能性があると判断し、補給水供給量の検出値が補給水供給量の理論値よりも有意に小さい場合には、冷却設備100の冷却水水質センサ117が汚れている可能性があると判断してもよい。また、異常判定部60は、薬剤供給量の検出値が薬剤供給量の理論値よりも有意に大きい場合には、薬剤タンク141から薬剤が外部に漏れている可能性があると判断し、薬剤供給量の検出値が薬剤供給量の理論値よりも有意に小さい場合には、薬剤供給装置140の配管等が詰まっている可能性があると判断してもよい。なお、検出値と理論値との大小関係は、それらの差又は比が予め設定される等価とみなす範囲内にあるか否かによって判定することができる。また、検出値と理論値との間に有意な差があるか否かは、統計的処理によって判断してもよい。
【0036】
報知部70は、異常判定部60が冷却設備100に異常があると判定した場合にその旨を報知する。異常の報知は、例えば、当該冷却設備100への異常報知信号の出力、当該冷却設備100の管理者への電子メールの自動送信等によって行うことができる。
【0037】
また、報知部70は、異常判定部60が冷却設備100に異常があると判定した場合に限らず、所定のタイミングで、入出温度、補給水供給量、薬剤供給量等を当該冷却設備100の管理者等に報告してもよい。つまり、報知部70は、冷却設備100の運転状態を確認できる情報をレポートすることによって、冷却設備100への信頼性を向上するものであってもよい。
【0038】
冷却設備監視システム1は、冷却塔110における冷却水の入口温度と出口温度との差に基づいて、補給水及び薬剤の供給量の理論値を算出する理論値算出部50を備えることにより、電気伝導度等の一般的な指標を用いた補給水及び薬剤の供給制御の他に、補給水等の必要な供給量の理論値を算出することができる。さらに、冷却設備監視システム1は、補給水供給量取得部30及び薬剤供給量取得部40が取得した供給量の検出値と、理論値算出部50が算出した供給量の理論値とに基づいて冷却設備100の異常の有無を判定する異常判定部60を備えることにより、補給水等の供給制御の異常又は想定外の負荷が発生するような設備上の異常の蓋然性を検知することができる。
【0039】
冷却設備監視システム1は、異常判定部60において、補給水の供給量の検出値と理論値とのずれを確認することによって、水漏れ又は冷却水水質センサ117の異常の蓋然性を検知できる。また、冷却設備監視システム1は、異常判定部60において、薬剤供給量の検出値と理論値とのずれを確認することによって、薬剤供給装置140の異常の蓋然性を検知できる。
【0040】
冷却設備監視システム1は、過去の入口温度の検出値と出口温度の検出値との差と供給量の検出値との関係を考慮することによって、例えば冷却塔110における蒸発以外の意図的な冷却水の系外への排出等の特殊なオペレーションが日常的になされている場合にはこのようなオペレーションを加味した供給量の理論値を算出することができる。これにより、通常のオペレーションを異常と判断せず、通常とは異なる意図的でない冷却水の漏出等の蓋然性を検知できる。
【0041】
以上、本発明に係る冷却設備監視システムの好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。例として、本発明に係る冷却設備監視システムは、補給水供給量及び薬剤供給量の一方のみに基づいて冷却設備の異常の有無を判定するよう構成されてもよい。
【0042】
本発明に係る冷却設備監視システムが適用される冷却装置における薬剤供給装置は、冷却水の水質の検出値に応じて薬剤を注入するものに限られず、例えばタイマ等により、一定の時間に予め設定される量の薬剤を注入するよう構成されてもよい。このような場合、冷却設備監視システムは、冷却装置の異常の可能性として、薬剤供給装置の設定値の不良の可能性を検知するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 冷却設備監視システム
10 入口温度取得部
20 出口温度取得部
30 補給水供給量取得部
40 薬剤供給量取得部
50 理論値算出部
60 異常判定部
70 報知部
100 冷却設備
110 冷却塔
111 散水器
112 充填材
121 循環ポンプ
113 回収水槽
114 送風機
115 入口温度センサ
116 出口温度センサ
117 冷却水水質センサ
120 循環流路
131 ボールタップ
132 希釈弁
133 補給水水質センサ
134 給水流量計
130 給水機構
140 薬剤供給装置
141 薬剤タンク
142 薬剤ポンプ
143 補給水水質センサ
143 薬剤供給量計
L 負荷
図1