(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】電動車両の下部構造
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20241112BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D25/20 G
(21)【出願番号】P 2021052654
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 憲治
(72)【発明者】
【氏名】大神 宗之
(72)【発明者】
【氏名】角田 龍平
(72)【発明者】
【氏名】中山 俊太朗
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-144825(JP,A)
【文献】特開2013-067334(JP,A)
【文献】特開2017-077842(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0290445(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0081040(US,A1)
【文献】特開2019-023029(JP,A)
【文献】特開2020-011610(JP,A)
【文献】特開2019-147423(JP,A)
【文献】特開2019-167032(JP,A)
【文献】国際公開第2014/034421(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00- 6/12, 7/00- 8/00,16/00
B62D 17/00-25/08,25/14-29/04
B60R 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両の下部構造であって、
車両前後方向に伸びるフロアトンネルが設けられたフロアパネルと、
前記フロアパネルの車両下方に配置され、かつ前記フロアトンネルの車幅方向の両側部に配置されるトンネルサイドフレームと、
前記フロアパネルの車両下方に配置され、かつ前記トンネルサイドフレームよりも車幅方向の外側に配置されるフロアサイドフレームと、
前記フロアパネルの車両下方に配置され、かつ車幅方向において前記トンネルサイドフレームと前記フロアサイドフレームとの間に配置されるバッテリユニットと、
車幅方向に沿って前記トンネルサイドフレームから前記フロアサイドフレームへ跨がるように形成され、前記バッテリユニットを前記トンネルサイドフレームおよび前記フロアサイドフレームに接続する取付ブラケットと、
前記フロアパネル上に配置され、該フロアパネルの車幅方向の両側部を架け渡すように配設されたフロアクロスメンバーと、を備え、
前記取付ブラケットは、
前記バッテリユニットの底部を支持する下壁部と、
前記下壁部の車両外側の端部から上方に向かって延び、前記フロアサイドフレームに接続される外側縦壁部と、
前記下壁部の車両内側の端部から上方に向かって延び、前記トンネルサイドフレームに接続される内側縦壁部と、を有し、
前記内側縦壁部と前記トンネルサイドフレームとの接続位置は、前記外側縦壁部と前記フロアサイドフレームとの接続位置よりも車両上方に位置
し、
前記フロアクロスメンバーの車両下側には、車両側方から荷重が入力された際に前記フロアクロスメンバーの車両上側への折曲を促進するように構成された脆弱部が形成される
ことを特徴とする電動車両の下部構造。
【請求項2】
請求項1に記載された電動車両の下部構造において、
前記内側縦壁部の車両前後方向における幅の長さは、前記外側縦壁部の車両前後方向における幅の長さよりも短い
ことを特徴とする電動車両の下部構造。
【請求項3】
請求項2に記載された電動車両の下部構造において、
前記内側縦壁部は、
前記トンネルサイドフレームに接続される第1の内側縦壁部と、
前記第1の内側縦壁部に対して車両前後方向に並んで配置され、かつ前記トンネルサイドフレームに接続される第2の内側縦壁部と、を有し、
前記第1の内側縦壁部の車両前後方向における幅の長さと、前記第2の内側縦壁部の車両前後方向における幅の長さと、を合算した全長が、前記外側縦壁部の車両前後方向における幅の長さよりも短い
ことを特徴とする電動車両の下部構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載された電動車両の下部構造において、
前記トンネルサイドフレームは、
前記フロアトンネルの車両内側に面し、かつ車両上側に向かうにしたがって車両内側に向かうように傾斜した第1縦壁部と、
前記フロアトンネルの車両外側に面し、かつ車両上側に向かうにしたがって車両外側に向かうように傾斜した第2縦壁部と、を有し、
前記第2縦壁部は、前記バッテリユニットの上端部における車両内側の角部に対し、車幅方向に沿って向かい合うように設けられているとともに、車両上下方向に対して前記第1縦壁部よりも急峻に傾斜するように形成される
ことを特徴とする電動車両の下部構造。
【請求項5】
請求項
1に記載された電動車両の下部構造において、
前記脆弱部は、車幅方向において前記トンネルサイドフレームよりも車両外側に配置され、
前記バッテリユニットの上端部における車両外側の角部が切り欠かれることによって、前記バッテリユニットの上端部と、前記フロアパネルの下面との間に空きスペースが形成され、
前記空きスペースの車両外側には、車両前後方向に延びる配管類が配置される
ことを特徴とする電動車両の下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、電動車両の下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、車両のバッテリ搭載構造が開示されている。具体的に、この特許文献1には、バッテリを下方から支持する取付ブラケットと、フロアトンネル(トンネル部)の左右両端に配置されるトンネルサイドフレームと、フロアパネルの車両下方に配置され、かつトンネルサイドフレームよりも車両外側に配置されるフロアサイドフレーム(フロアフレーム)とを備えた車両が開示されている。
【0003】
そして、前記特許文献1に係る取付ブラケットは、トンネルサイドフレームからフロアサイドフレームへ跨がるように形成されており、トンネルサイドフレームおよびフロアサイドフレームにバッテリを接続することで、そのバッテリをフロアパネルの下方に配設することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示されているような車両を用いた場合、フロアサイドフレームを車両外側に配置してサイドシルに接近させることで、トンネルサイドフレームとフロアサイドフレームとの間隔を広げることができる。トンネルサイドフレームとフロアサイドフレームとの間隔を広げることは、バッテリの大型化、ひいては、バッテリ容量の向上に資する。
【0006】
ところが、前述のようにバッテリ容量を向上させた場合、バッテリの側面(特に、車両外側に面する側面)もサイドシルに近づくことになる。バッテリの側面をサイドシルに接近させると、側突に対して不利になる。
【0007】
側突に対する備えとしては、例えば、バッテリの側方に中空のエネルギ吸収部材を設けることも考えられる。しかしながら、エネルギ吸収部材の新設は、重量の増加、コストアップ等を招くため不都合である。
【0008】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、重量の増加、コストアップ等を招くことなく、バッテリ容量の向上と、側突時におけるバッテリの保護と、を両立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様は、電動車両の下部構造に係る。この電動車両は、車両前後方向に伸びるフロアトンネルが設けられたフロアパネルと、前記フロアパネルの車両下方に配置され、かつ前記フロアトンネルの車幅方向の両側部に配置されるトンネルサイドフレームと、前記フロアパネルの車両下方に配置され、かつ前記トンネルサイドフレームよりも車幅方向の外側に配置されるフロアサイドフレームと、前記フロアパネルの車両下方に配置され、かつ車幅方向において前記トンネルサイドフレームと前記フロアサイドフレームとの間に配置されるバッテリユニットと、車幅方向に沿って前記トンネルサイドフレームから前記フロアサイドフレームへ跨がるように形成され、前記バッテリユニットを前記トンネルサイドフレームおよび前記フロアサイドフレームに接続する取付ブラケットと、を備える。
【0010】
そして、前記第1の態様によれば、前記取付ブラケットは、前記バッテリユニットの底部を支持する下壁部と、前記下壁部の車両外側の端部から上方に向かって延び、前記フロアサイドフレームに接続される外側縦壁部と、前記下壁部の車両内側の端部から上方に向かって延び、前記トンネルサイドフレームに接続される内側縦壁部と、を有し、前記内側縦壁部と前記トンネルサイドフレームとの接続位置は、前記外側縦壁部と前記フロアサイドフレームとの接続位置よりも車両上方に位置する。
【0011】
さらに、第1の態様によれば、前記電動車両は、前記フロアパネル上に配置され、該フロアパネルの車幅方向の両側部を架け渡すように配設されたフロアクロスメンバーを備え、前記フロアクロスメンバーの車両下側には、車両側方から荷重が入力された際に前記フロアクロスメンバーの車両上側への折曲を促進するように構成された脆弱部が形成される。
【0012】
ここで、内側縦壁部とトンネルサイドフレームは、ボルト等の締結具によって直に接続されてもよいし、トンネルクロスメンバー等の部材を介して間接的に接続されてもよい。外側縦壁部とフロアサイドフレームについても同様である。
【0013】
前記第1の態様によると、外側縦壁部とフロアサイドフレームとの接続位置は、内側縦壁部とトンネルサイドフレームとの接続位置よりも車両下方に位置する。この場合、車両側方から荷重が入力された際に、その荷重の入力位置に対し、外側縦壁部とフロアサイドフレームとの接続位置を下方に設定することができるようになる。そのため、第1の態様に係る外側縦壁部は、車両側方から荷重が入力された際に、内側縦壁部と比較して、車両下側に向かう方向に荷重を受け易い。そうした荷重によって外側縦壁部を車両下側に向かって変位させることで、内側縦壁部とトンネルサイドフレームとの接続位置を支点としたブランコのように、取付ブラケットを揺動させることができる。取付ブラケットを揺動させることで、下壁部によって支持されたバッテリユニットも車両下側へと揺動させることが可能になる。その揺動によってバッテリユニットを車両下側へと退避させることで、該バッテリユニットを良好に保護することができる。
【0014】
フロアサイドフレームを車両外側に配置してサイドシルに接近させた場合であってもバッテリユニットを良好に保護することができるという点で、前記第1の態様は、重量の増加、コストアップ等を招くことなく、バッテリ容量の向上と、側突時におけるバッテリの保護と、を両立することができる。
【0015】
さらに、前記第1の態様によると、車両側方から荷重が入力された際に、フロアクロスメンバーを車両上側に向かって突出させることができる。取付ブラケットによってバッテリユニットを車両下側へと揺動させる一方、フロアクロスメンバーを車両上方に向かって突出させることで、フロアクロスメンバーとバッテリユニットとの干渉を抑制することができる。これにより、バッテリユニットを良好に保護する上で有利になる。
【0016】
また、本開示の第2の態様によれば、前記内側縦壁部の車両前後方向における幅の長さは、前記外側縦壁部の車両前後方向における幅の長さよりも短い、としてもよい。
【0017】
前記第2の態様によると、内側縦壁部の幅の長さを短くしたことで、内側縦壁部とトンネルサイドフレームとの接続位置を支点とした取付ブラケットの揺動を促すことが可能になる。このことは、バッテリを保護する上で有用である。
【0018】
また、本開示の第3の態様によれば、前記内側縦壁部は、前記トンネルサイドフレームに接続される第1の内側縦壁部と、前記第1の内側縦壁部に対して車両前後方向に並んで配置され、かつ前記トンネルサイドフレームに接続される第2の内側縦壁部と、を有し、前記第1の内側縦壁部の車両前後方向における幅の長さと、前記第2の内側縦壁部の車両前後方向における幅の長さと、を合算した全長が、前記外側縦壁部の車両前後方向における幅の長さよりも短い、としてもよい。
【0019】
前記第3の態様によると、内側縦壁部を第1および第2の内側縦壁部によって構成することで、前後方向に離れた少なくとも2箇所で取付ブラケットをトンネルサイドフレームに接続することができる。これにより、内側縦壁部とトンネルサイドフレームとの接続の安定化を実現することができる。さらに、前記第3の態様によると、第1の内側縦壁部と第2の内側縦壁部との間に隙間が設けられることになる。そのため、内側縦壁部全体の幅の長さを短く構成するのが容易になり、取付ブラケットの揺動を促進する上でも有利になる。
【0020】
また、本開示の第4の態様によれば、前記トンネルサイドフレームは、前記フロアトンネルの車両内側に面し、かつ車両上側に向かうにしたがって車両内側に向かうように傾斜した第1縦壁部と、前記フロアトンネルの車両外側に面し、かつ車両上側に向かうにしたがって車両外側に向かうように傾斜した第2縦壁部と、を有し、前記第2縦壁部は、前記バッテリユニットの上端部における車両内側の角部に対し、車幅方向に沿って向かい合うように設けられているとともに、車両上下方向に対して前記第1縦壁部よりも急峻に傾斜するように形成される、としてもよい。
【0021】
取付ブラケットの揺動が進んだ場合、バッテリユニットにおける車両内側の角部と、前記第2縦壁部とが接触する可能性がある。そこで、前記第4の態様のように第2縦壁部を相対的に急峻に傾斜させたことで、例えば第2縦壁部を車両上下方向と平行に伸ばしたような構成と比較して、第2縦壁部に接触した角部を、車両下方に向かってスムースに案内することが可能となる。これにより、バッテリユニットを保護する上で有利になる。
【0022】
また、本開示の第5の態様によれば、前記脆弱部は、車幅方向において前記トンネルサイドフレームよりも車両外側に配置され、前記バッテリユニットの上端部における車両外側の角部が切り欠かれることによって、前記バッテリユニットの上端部と、前記フロアパネルの下面との間に空きスペースが形成され、前記空きスペースの車両外側には、車両前後方向に延びる配管類が配置される、としてもよい。
【0023】
前記第5の態様によると、バッテリユニットを車両下側へと揺動させる一方、フロアクロスメンバーを車両上方に向かって突出させるのに加えて、第6の態様に係る空きスペースを設けたことで、配管類とバッテリユニットの上面との干渉、および、配管類とフロアクロスメンバーとの干渉を双方とも良好に抑制することができる。また、空きスペースを設けるべくバッテリユニットの角部を切り欠いたことで、角部周辺の上面と配管類とが接触したときに、配管類を車両上方に案内し易くなる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本開示によれば、重量の増加、コストアップ等を招くことなく、バッテリ容量の向上と、側突時におけるバッテリの保護と、を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、電動車両の下部構造を例示する底面図である。
【
図2】
図2は、バッテリユニット周辺の下部構造を例示する底面図である。
【
図3】
図3は、バッテリユニット周辺の下部構造を例示する斜視図である。
【
図6】
図6は、バッテリユニットおよび取付ブラケットを車両内側から見て例示する斜視図である。
【
図7】
図7は、バッテリユニットおよび取付ブラケットを車両外側から見て例示する斜視図である。
【
図8】
図8は、フロアクロスメンバー周辺の構造を例示する図である。
【
図9】
図9は、電動車両の側突時におけるバッテリユニットの揺動を例示する遷移図である。
【
図10】
図10は、取付ブラケットの幅について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明される実施形態は例示である。
【0027】
図1は、本開示に係る電動車両1の下部構造を例示する底面図である。
図2は、バッテリユニット4周辺の下部構造を例示する底面図であり、
図3は、バッテリユニット4周辺の下部構造を例示する斜視図である。詳しくは、
図2は、
図1におけるバッテリユニット4の配設箇所を拡大して示す図であり、
図3は、電動車両1の下部構造を、フロアパネル61を取り除いた状態で、後方の斜め上方からから見た場合の斜視図である。また、
図4は、
図2のA-A断面図であり、
図5は、
図2のB-B断面図である。詳しくは、
図4は、後述の第1の外側締結具831および第1の内側締結具841を通過する横断面であり、
図5は、後述の第2の外側締結具832および第2の内側締結具842を通過する横断面である。
【0028】
なお、以下の説明における「前」、「後」、「上」および「下」なる語は、それぞれ、電動車両1を基準として定義される。すなわち、以下の説明において、「前」とは、電動車両1の前後方向である車両前後方向における「前」を指し、「後」とは車両前後方向における「後」を指す。同様に、「上」とは電動車両1の高さ方向である車高方向における「上」を指し、「下」とは車高方向における「下」を指す。以下の記載では、車両前後方向を単に「前後方向」と呼称したり、車高方向を「上下方向」と呼称したりする場合がある。
【0029】
さらに、車高方向における上方(上側)を「車両上方(車両上側)」または単に「上方(上側)」と呼称したり、車高方向における下方(下側)を「車両下方(車両下側)」または単に「下方(下側)」と呼称したり、車両前後方向における前方(前側)を「車両前方(車両前側)」または単に「前方(前側)」と呼称したり、車両前後方向における後方(後側)を「車両後方(車両後側)」または単に「後方(後側)」と呼称したりする場合もある。
【0030】
また、以下の説明における「左」および「右」なる語も、電動車両1を基準として定義される。すなわち、以下の説明において、「左」とは電動車両1を後側から前側に向かって見た場合における車幅方向の左側を指し、「右」とは車両を後側から前側に向かって見た場合における右側を指す。車幅方向を「左右方向」と呼称する場合がある。
【0031】
さらに、車幅方向に沿った方向のうち、電動車両1の中央部(具体的には、車幅方向におけるフロアトンネル62の中央部)から離間する方向を「車両外方(車両外側)」または単に「外方(外側)」と呼称し、電動車両1の中央部(車幅方向におけるフロアトンネル62の中央部)に接近する方向を「車両内方(車両内側)」または単に「内方(内側)」と呼称する場合がある。
【0032】
(全体構成)
図1に例示される電動車両1は、フロアパネル61、フロアトンネル62等、電動車両1の車体に関連した要素と、電駆システム3、バッテリユニット4等、電動車両1の動力に関連した要素と、を備えている。
【0033】
-車体に関連した要素-
まず、車体に関連した要素として、電動車両1は、フロアパネル61と、フロアトンネル62と、トンネルサイドフレーム63と、サイドシル64と、トンネルクロスメンバー651,652と、フロアサイドフレーム66と、フロアクロスメンバー67と、を備えている。
【0034】
フロアパネル61は、電動車両1の下部に配設されている。フロアパネル61は、電動車両1の車室の床を構成する。フロアパネル61は、電動車両1の車幅方向の両側部に配設された2つのサイドシル64の間をつなぐように、前後方向および車幅方向に広がっている。
【0035】
フロアパネル61には、車両前後方向に伸びるフロアトンネル62が設けられている。このフロアトンネル62は、フロアパネル61における車幅方向の中央部に設けられている。
【0036】
詳しくは、本実施形態に係るフロアトンネル62は、排気管12およびプロペラシャフト52の収容スペースを構成する。フロアトンネル62は、
図4または
図5に示すようにフロアパネル61よりも上方に膨出するとともに、
図1に示すように前後方向に伸びている。
【0037】
フロアトンネル62の車幅方向の両側部には、左右一対のトンネルサイドフレーム63が配置されている。トンネルサイドフレーム63は、フロアパネル61の下方に配置される。トンネルサイドフレーム63は、高剛性のフレームであって、フロアトンネル62に沿うように前後方向に伸びている。また、トンネルサイドフレーム63は、
図4または
図5に示すように、その開口を上方に向けた断面略ハット状に形成されており、フロアトンネル62の車幅方向の両側部の各下面に接合されている。
【0038】
詳しくは、本実施形態に係るトンネルサイドフレーム63は、
図4に示すように、第1縦壁部63aと、第2縦壁部63bと、を有する。トンネルサイドフレーム63において第1縦壁部63aおよび第2縦壁部63bをつなぐ下壁部には、後述のように、第1トンネルクロスメンバー651および取付ブラケット8を接続することができる。
【0039】
第1縦壁部63aは、フロアトンネル62の車両内側に面している。第1縦壁部63aは、車両上側に向かうにしたがって車両内側に向かうように傾斜している。一方、第2縦壁部63bは、フロアトンネル62の車両外側に面している。第2縦壁部63bは、車両上側に向かうにしたがって車両外側に向かうように傾斜している。
【0040】
ここで、第2縦壁部63bは、車両上下方向に対して第1縦壁部63aよりも急峻に傾斜するように形成される。詳細には、車高方向と第1縦壁部63aの傾斜方向とがなす傾斜角のうち、鋭角となる一方の傾斜角を第1傾斜角θ1とし、車高方向と第2縦壁部63bの傾斜方向とがなす傾斜角のうち、鋭角となる一方の傾斜角を第2傾斜角θ2とすると、第2傾斜角θ2は、第1傾斜角θ1よりも大きくなるように設定されている(θ2>θ1)。すなわち、トンネルサイドフレーム63が有する略ハット状の断面は、左右非対称となっている。
【0041】
フロアトンネル62における所定の箇所、より具体的には、フロアトンネル62の後部における2箇所には、トンネルクロスメンバー651,652が取り付けられている。2つのトンネルクロスメンバー651,652のうち、前側の第1トンネルクロスメンバー651は、トンネルサイドフレーム63に接続されており、2つのトンネルサイドフレーム63同士をつなぐように、車幅方向に伸びている(
図4に一部を図示)。第1トンネルクロスメンバー651は、後述するトランスミッション支持メンバー21よりも後方に位置している。
【0042】
2つのトンネルクロスメンバー651,652のうち、後側の第2トンネルクロスメンバー652も、2つのトンネルサイドフレーム63同士をつなぐように、車幅方向に伸びている。第1トンネルクロスメンバー651は、第2トンネルクロスメンバー652よりも前後方向の幅が広い。
【0043】
フロアサイドフレーム66は、フロアパネル61の車両下方に配置され、かつトンネルサイドフレーム63よりも車幅方向の外側に配置される。フロアサイドフレーム66は、サイドシル64よりも車幅方向の内側に配置される。したがって、フロアサイドフレーム66は、サイドシル64とトンネルサイドフレーム63との間に配設されることになる。
【0044】
フロアサイドフレーム66は、高剛性のフレームである。また、フロアサイドフレーム66は、
図4または
図5に示すように、その開口を上方に向けた断面略ハット状に形成されており、フロアパネル61の車幅方向の両側部の各下面に接合されている。
【0045】
フロアサイドフレーム66は、フロアパネル61の前端部においては、車幅方向について、サイドシル64とトンネルサイドフレーム63との中間付近に位置している。フロアサイドフレーム66は、そこから、電動車両1の後方に向かうに従い、車幅方向の外方へ斜めに傾き、フロアパネル61の前後方向の中央部付近において、サイドシル64の内側に当たる。サイドシル64の内側に当たったフロアサイドフレーム66は、サイドシル64の内側に沿うように、電動車両1の後方に向かって真っ直ぐに伸びている。サイドシル64の内側に当たっているフロアサイドフレーム66は、
図4および
図5に例示されるように、車幅方向においてトンネルサイドフレーム63よりもサイドシル64に近接するようになっている。
【0046】
なお、
図4等では、フロアトンネル62に対して左側方のフロアサイドフレーム66のみを図示しているが、フロアトンネル62に対して右側方にもフロアサイドフレーム66が配設されている。2つのフロアサイドフレーム66は、左右対称に配設されてている。
【0047】
フロアクロスメンバー67は、フロアパネル61上に配置される。フロアクロスメンバー67はまた、フロアトンネル62を間に介して、フロアパネル61の車幅方向の両側部を架け渡すように配設される。
【0048】
具体的に、本実施形態に係るフロアクロスメンバー67は、フロアトンネル62を間に介して、電動車両1の左側に設けられたサイドシル64と、電動車両1の右側に設けられたサイドシル64とをつなぐように車幅方向に伸びている。フロアクロスメンバー67は、車幅方向に伸びる閉断面を構成しており、車室の前側に配置される左右のシートを支持することができる。
【0049】
ここで、
図8に例示されるように、フロアクロスメンバー67は、車幅方向に伸びる中空の第1部品671と、第1部品671の左右両端部(図例では左端部)に設けられる第2部品672と、を有する。第2部品672は、車高方向に沿ってフロアサイドフレーム66の直上方に配置される。
【0050】
また、フロアクロスメンバー67の車両下側には、電動車両1の側方(電動車両1の外側)から荷重が入力された際にフロアクロスメンバー67の車両上側への折曲を促進するように構成された2つの脆弱部673,674が形成される。2つの脆弱部673,674は、双方とも、車幅方向においてトンネルサイドフレーム63よりもフロアサイドフレーム66に近接して配置される。
【0051】
詳しくは、2つの脆弱部673,674のうち、第1部品671に形成される第1脆弱部673は、
図8に例示されるように、バッテリユニット4におけるフロアサイドフレーム66側の角部(車両外側の角部)4b付近に配置される。2つの脆弱部673,674のうち、第2部品672に形成される第2脆弱部674は、バッテリユニット4に比して車両外側に配置されたフロアサイドフレーム66付近に配置される。
【0052】
第1脆弱部673および第2脆弱部674は、双方とも、フロアクロスメンバー67における車両上側の部位に比して、車両下側の部位の変形を促すように形成されている。このように形成すると、電動車両1の側方から荷重が入力された際、フロアクロスメンバー67における車両下側の部位(特に、第1脆弱部673および第2脆弱部674が設けられた部位)は、車幅方向において相互に接近するように変形することになる。この変形は、第1脆弱部673および第2脆弱部674をそれぞれ車幅方向に縮め潰すような変形に相当する。そうした変形を誘発することで、第1脆弱部673または第2脆弱部674を起点とした折曲を発生させるばかりでなく、その折曲を車両上側に突出するような折れ変形とすることができる。
【0053】
詳しくは、第1脆弱部673は、フロアクロスメンバー67における第1部品671の下半部に設けられた切り欠きによって構成される。切り欠きを設けることで、第1部品671の下半部を潰し縮めるような変形を促すことができる。一方、第2脆弱部674は、フロアクロスメンバー67における第2部品672の下半部に設けられたビード形状によって構成される。ビード形状を設けることで、第2部品672の下半部を潰し縮めるような変形を促すことができる。
【0054】
-動力に関連した要素-
次に、動力に関連した要素として、電動車両1は、動力の伝達系に関連した要素として、不図示のエンジンと、トランスミッション2と、電駆システム3と、を備えている。電動車両1は、フロントエンジンリヤドライブ車両をベースにした四輪駆動車両である。電動車両1はさらに、動力の伝達系に関連した要素として、トランスファ51と、プロペラシャフト52と、を備えている。
【0055】
エンジンは、少なくともガソリンを含む燃料が供給されるガソリンエンジン、又は、ディーゼル燃料が供給されるディーゼルエンジンである。エンジンは火花点火式又は圧縮着火式である。尚、エンジンの形式に特に制限はない。エンジンは、電動車両1の前部に設けられたエンジンルームの中に、いわゆる縦置きで設置されている。電動車両1の後部には、フューエルタンク11が配設されている。フューエルタンク11は、エンジンに供給する燃料を貯留している。
【0056】
エンジンには、排気ガスを排出するための排気管12が接続されている。排気管12は、電動車両1の車室の床を構成するフロアパネル61の下側に配設されている。排気管12は、エンジンルームから、電動車両1の後方に向かって伸びている。より詳細に、排気管12はフロアトンネル62よりも右側において、エンジンルームから、電動車両1の後方に向かって伸びた後、車幅方向の中央側に折れ曲がり、フロアトンネル62に沿うように、電動車両1の後方に向かってさらに伸びている。なお、排気管12の途中には、触媒コンバータ13が配設されている。
【0057】
電駆システム3は、電気モータ30、インバータ(不図示)、及び、バッテリユニット4を有している。電気モータ30は、エンジンの出力軸上に配設されている。電気モータ30は、エンジンと、トランスミッション2との間に介設されている。電気モータ30は、力行時には車両が走行するための駆動トルクを出力すると共に、車両に制動力を付与する回生を行う。
【0058】
トランスミッション2は、例えば、少なくとも一の遊星歯車機構を含む自動変速機である。尚、トランスミッション2は、自動変速機に限定されない。トランスミッション2は、エンジン及び電気モータ30の出力軸に結合されている。トランスミッション2は、エンジン及び/又は電気モータ30のトルクを変速して出力する。
【0059】
トランスミッション2は、電気モータ30の後側に配設されている。電気モータ30及びトランスミッション2は、
図1及び
図2に示すように、フロアトンネル62の内部に配設されている。トランスミッション2のケースは、フロアトンネル62の前部において、フロアトンネル62に沿うように前後方向に伸びている。
【0060】
トランスファ51は、トランスミッション2の出力軸に接続されている。トランスファ51は、フロアトンネル62の内部に配設されている。トランスファ51のケースとトランスミッション2のケースとは一体化している。以下においては、一体化したトランスファ51のケース及びトランスミッション2のケースを総称して、「トランスミッション2のケース」と呼ぶ。
【0061】
トランスミッション2のケースにおける後端部、より正確には、トランスファ51のケースは、トランスミッション支持メンバー21に支持されている。トランスミッション支持メンバー21は、2つのトンネルサイドフレーム63の間を掛け渡すように、車幅方向に伸びている。
【0062】
トランスファ51には、プロペラシャフト52が接続されている。トランスファ51は、エンジン及び/又は電気モータ30のトルクを、前輪及び後輪に分配する。
【0063】
プロペラシャフト52は、フロアトンネル62の内部において、トランスファ51から車両の後方へ伸びている。プロペラシャフト52は、図外のリヤディファレンシャルギヤを介して、左右の後輪に結合されたリヤドライブシャフトに接続されている。
【0064】
バッテリユニット4は、インバータを介することで、電気モータ30に電気的に接続されている。バッテリユニット4は、電気モータ30へ駆動用の電力を供給するとともに、電気モータ30の回生時には充電される。インバータ31は、力行時には電気モータ30へバッテリユニット4の電力を供給すると共に、回生時にはバッテリユニット4へ電気モータ30の発電電力を送る。
【0065】
バッテリユニット4は、
図1または
図2に例示するように、底面視で、略矩形状を有している。バッテリユニット4は、バッテリモジュール41と、ジャンクションボックス42とを有している。
図6または
図7にも示すように、ジャンクションボックス42は、バッテリユニット4の前端部に配設されている。バッテリモジュール41は、ジャンクションボックス42の後側に配設されている。
【0066】
バッテリユニット4は、フロアパネル61の車両下方に配置される。バッテリユニット4また、車幅方向においてトンネルサイドフレーム63とフロアサイドフレーム66との間に配置される。
【0067】
詳しくは、本実施形態に係るバッテリユニット4は、フロアパネル61の下側において、フロアトンネル62の左側に配設されている。より詳細に、バッテリユニット4は、トランスミッション2よりも後方でかつフューエルタンク11の前方において、トンネルサイドフレーム63とフロアサイドフレーム66との間に配設されている。バッテリユニット4は、エンジンの排気管12及び触媒コンバータ13とは、フロアトンネル62を挟んだ反対側に配設されている。この配設構造は、電駆システム3を熱源から遠ざけることを可能にする。なお、
図1または
図2における符号32は、電駆システム3の一部を構成するDC/DCコンバータ32である。DC/DCコンバータ32は、フロアトンネル62の左側において、トランスミッション2の左側方でかつ、バッテリユニット4の前方に配設されている。
【0068】
前述したように、フロアサイドフレーム66は、フロアパネル61の前後方向の中央部から後部において、サイドシル64に当接するように配設されている。そのため、フロアパネル61の後部において、トンネルサイドフレーム63とフロアサイドフレーム66との車幅方向の間隔は広い。この広いスペースには、大型のバッテリユニット4を配設することができる。従って、バッテリユニット4の容量は、比較的大きい。
【0069】
また、電動車両1は、バッテリユニット4を車体に接続するための取付ブラケット8を備えている。バッテリユニット4は、この取付ブラケット8を介してフロアパネル61に取り付けられている。
【0070】
以下、取付ブラケット8の構成を、バッテリユニット4の詳細と交えて説明する。
【0071】
(取付ブラケットの構成)
図6は、バッテリユニット4よび取付ブラケット8を車両内側から見て例示する斜視図であり、
図7は、バッテリユニット4および取付ブラケット8を車両外側から見て例示する斜視図である。また、
図8は、フロアクロスメンバー67の構造を例示する図である。
図10は、取付ブラケット8の幅について説明するための図である。
【0072】
取付ブラケット8は、
図4および
図5に示すように、車幅方向に沿ってトンネルサイドフレーム63からフロアサイドフレーム66へ跨がるように形成される。取付ブラケット8は、バッテリユニット4をトンネルサイドフレーム63およびフロアサイドフレーム66に接続することができる。バッテリユニット4は、トンネルサイドフレーム63およびフロアサイドフレーム66を介してフロアパネル61に取り付けられる。
【0073】
具体的に、本実施形態に係る取付ブラケット8は、その開口を上方に向けたハット状の横断面を有している。取付ブラケット8は、
図6および
図7に示すように、下壁部80と、外側縦壁部81と、内側縦壁部82と、外側締結具831,832と、内側締結具841,842と、を有している。
【0074】
下壁部80は、
図6または
図7に示すように、バッテリユニット4の底部を支持する。詳しくは、この下壁部80は、車両前後方向および車幅方向に沿って延びる矩形板状に形成されており、車幅方向に沿った断面(車両前後方向に垂直な断面)で見た場合、トンネルサイドフレーム63付近からフロアサイドフレーム66付近に至るまで伸びている。下壁部80は、バッテリユニット4の下側に位置し、バッテリユニット4の底面を覆うように広がっている。下壁部80は、バッテリユニット4を下側から支えている。
【0075】
また、下壁部80の中央部には、矩形状に形成された開口部85が設けられている。この開口部85は、下壁部80、ひいては取付ブラケット8の軽量化に資する。
【0076】
外側縦壁部81は、下壁部80の車両外側の端部(図例では左端部)から上方に向かって延び、フロアサイドフレーム66に接続される。詳しくは、外側縦壁部81は、下壁部80に対して車幅方向の外方(つまり、左側)に位置しており、下壁部80の左側縁と連続している。外側縦壁部81は、バッテリユニット4の左側方において前後方向に広がると共に、上下方向に伸びている。
【0077】
また、外側縦壁部81の上端部は、車幅方向の外方に向かって突出したフランジ状に折り曲げられており、その上端部の前側部分には第1の外側締結具831が挿入されている一方、上端部の後側部分には第2の外側締結具832が挿入されている。第1の外側締結具831および第2の外側締結具832は、外側縦壁部81の上端部に対して下方から挿入されており、それぞれ、フロアサイドフレーム66に締結されている。この締結によって、外側縦壁部81がフロアサイドフレーム66に接続されることになる。
【0078】
内側縦壁部82は、下壁部80の車両内側の端部(図例では右端部)から上方に向かって延び、トンネルサイドフレーム63に接続される。詳しくは、内側縦壁部82は、下壁部80に対して車幅方向の内方(つまり、右側)に位置しており、下壁部80の右側縁と連続している。内側縦壁部82は、バッテリユニット4の右側方において前後方向に広がると共に、上下方向に伸びている。
図10に例示されるように、内側縦壁部82の車両前後方向における幅の長さ(以下、「内側幅」と呼称する)Wiは、外側縦壁部81の車両前後方向における幅の長さ(以下、「外側幅」と呼称する)Woよりも短い。
【0079】
さらに詳しくは、内側縦壁部82は、トンネルサイドフレーム63に接続される第1の内側縦壁部82aと、第1の内側縦壁部82aに対して車両前後方向に並んで配置され、かつトンネルサイドフレーム63に接続される第2の内側縦壁部82bと、を有する。
【0080】
ここで、第1の内側縦壁部82aと第2の内側縦壁部82bは、
図6に例示されるように、互いに独立した部品として構成されおり、車両前後方向に間隔を空けて並んでいる。そして、前述した内側幅Wiは、第1の内側縦壁部82aの車両前後方向における幅の長さ(以下、「第1の内側幅」と呼称する)Wi1と、第2の内側縦壁部82bの車両前後方向における幅の長さ(以下、「第2の内側幅」と呼称する)Wi2と、を合算した全長に相当する(つまり、Wi=Wi1+Wi2)。
【0081】
具体的に、第1の内側縦壁部82aは、第2の内側縦壁部82bに比して車両前側に配置されている。第1の内側縦壁部82aは、下壁部80に対して車幅方向の内方(つまり、右側)に位置しており、下壁部80の右側縁の前側部分と連続している。第1の内側縦壁部82aは、バッテリユニット4の右側方において前後方向に広がると共に、上下方向に伸びている。
【0082】
また、第1の内側縦壁部82aの上端部は、車幅方向の外方に向かって突出したフランジ状に折り曲げられており、その上端部には、前後一対の第1の内側締結具841が挿入されている。
図4に示すように、第1の内側締結具841は、第1の内側縦壁部82aの上端部と、第1トンネルクロスメンバー651とを共締めしている(
図3も参照)。前述のように、第1トンネルクロスメンバー651は、トンネルサイドフレーム63に接続されている。したがって、この共締めによって、第1の内側締結具841が、第1トンネルクロスメンバー651を介してトンネルサイドフレーム63に接続されることになる。
【0083】
つまり、第1の内側縦壁部82aの上端部は、トンネルサイドフレーム63よりも車幅方向の中央側に位置しており、これに伴い、第1の内側縦壁部82aは、車幅方向について、トンネルサイドフレーム63とほぼ同じ位置に位置している。第1の内側縦壁部82aが車幅方向の中央側に位置しているため、バッテリユニット4の右側部は、車幅方向の中央側に位置することが可能になって、バッテリユニット4の右側部は、フロアトンネル62の左側部に隣接している。つまり、バッテリユニット4が大型になり、それに伴い、バッテリユニット4の容量が大容量になる。
【0084】
また、
図10に示すように、本実施形態に係る取付ブラケット8は、第1の外側締結具831と、第1の内側締結具841と、を結ぶ直線L1が、下壁部80に設けた開口部85と交わらないように構成されている。
【0085】
一方、第2の内側縦壁部82bは、第1の内側縦壁部82aに比して車両後側に配置されている。第2の内側縦壁部82bは、下壁部80に対して車幅方向の内方(つまり、右側)に位置しており、下壁部80の右側縁の後側部分と連続している。第2の内側縦壁部82bは、バッテリユニット4の右側方において前後方向に広がると共に、上下方向に伸びている。第2の内側縦壁部82bの車高方向における寸法は、第1の内側縦壁部82aの車高方向における寸法よりも若干短い。
【0086】
また、第2の内側縦壁部82bの上端部は、車幅方向の外方に向かって突出したフランジ状に折り曲げられており、その上端部には、第2の内側締結具842が挿入されている。
図5に示すように、第2の内側締結具842は、第2の内側縦壁部82bの上端部と、トンネルサイドフレーム63とを共締めしている。この共締めによって、第2の内側締結具842が、トンネルサイドフレーム63に接続されることになる。
【0087】
また、
図10に示すように、本実施形態に係る取付ブラケット8は、第2の外側締結具832と、第2の内側締結具842と、を結ぶ直線L2が、下壁部80に設けた開口部85と交わらないように構成されている。また、
図10に示すように、第2の内側締結具842と第2の内側縦壁部82bの上端部との接続位置は、第1の内側締結具841と、第1の内側縦壁部82aの上端部との接続位置に比較して、車両内側に配置されている。
【0088】
そして、本実施形態では、内側縦壁部82とトンネルサイドフレーム63との接続位置は、外側縦壁部81とフロアサイドフレーム66との接続位置よりも車両上方に位置する。
【0089】
言い換えると、本実施形態では、内側縦壁部82とトンネルサイドフレーム63との接続位置の高さ(以下、「内側高さ」とも呼称する)Hi1,Hi2が、外側縦壁部81とフロアサイドフレーム66との接続位置の高さ(以下、「外側高さ」とも呼称する)Hoよりも車両上方に位置するようになっている。
【0090】
具体的に、
図4または
図5に示す例では、外側高さHoおよび内側高さHi1,Hi2
として、下壁部80を基準とした高さ(下壁部80を原点とした高さ)が例示されている。
【0091】
このうち、外側高さHoは、
図4または
図5に示すように、第1の外側締結具831を通過する横断面、または、第2の外側締結具832を通過する横断面で見た高さとすることができる。2つの横断面で見た外側高さHoは、互いに略同一であることから、以下の記載では両者を区別しない。
【0092】
一方、内側高さHi1,Hi2は、
図4に示すように第1の内側締結具841を通過する横断面で見た内側高さHi1、または、
図5に示すように第2の内側締結具842を通過する横断面で見た内側高さHi2とすることができる。図例では、第1の内側締結具841および第1の外側締結具831を通過する横断面で見た内側高さHi1は、第2の内側締結具842および第2の外側締結具832を通過する横断面で見た内側高さHi2よりも若干高い(つまり、Hi1>Hi2)。
【0093】
そして、2つの内側高さHi1,Hi2は、双方とも、外側高さHoよりも高くなるように構成されている(つまり、Hi1>Ho、かつ、Hi2>Ho)。つまり、第1の内側締結具841および第1の外側締結具831を通過する横断面で見た場合、内側高さHi1は、
図4に示すように外側高さHoよりも低い。同様に、第2の内側締結具842および第2の外側締結具832を通過する横断面で見た場合、内側高さHi2は、
図5に示すように外側高さHoよりも低い。このように構成した結果、本実施形態では、内側縦壁部82の車高方向における長さが、外側縦壁部81の車高方向における長さよりも長くなる。詳細には、第1の内側縦壁部82aおよび第2の内側縦壁部82bは、双方とも、外側縦壁部81よりも車両上方に向かって長く伸びる。
【0094】
本実施形態に係るバッテリユニット4は、前述のように構成された取付ブラケット8と、トンネルサイドフレーム63の第2縦壁部63bと、フロアサイドフレーム66と、フロアパネル61と、によって区画される収容スペースに収容されるようになっている。
【0095】
その際、
図5に示すように、第2縦壁部63bは、バッテリユニット4の上端部における車両内側の角部4aに対し、車幅方向に沿って向かい合うように設けられている。車両内側の角部4aの高さ位置は、内側縦壁部82とトンネルサイドフレーム63との接続位置のうち、第2の内側縦壁部82bとトンネルサイドフレーム63との接続位置よりも高い。また、車両内側の角部4aの高さ位置は、第2縦壁部63bの上端部よりも若干低い。
【0096】
一方、フロアサイドフレーム66は、バッテリユニット4の上端部における車両外側の角部4bに対し、車幅方向に沿って向かい合うように設けられる。車両外側の角部4bの高さ位置は、外側縦壁部81とフロアサイドフレーム66との接続位置よりも高い。また、車両外側の角部4bの高さ位置は、フロアサイドフレーム66の上端部よりも若干低い。
【0097】
ここで、
図5の破線に示すように、前記車両外側の角部4bが切り欠かれることによって、バッテリユニット4の上端部と、フロアパネル61の下面との間に空きスペース86が形成されている。
図8に示すように、空きスペース86は、第2脆弱部674の下方に配置される。
【0098】
そして、空きスペース86の車両外側(図例では左側)には、車両前後方向に延びる配管類91が配置されている。これらの配管類91は、ブラケット92を介してフロアサイドフレーム66に取り付けられている。角部4bが切り欠かれたことで、角部4b付近の上面は、配管類91よりも車両下側に位置するようになる。配管類91は、例えば燃料を流通させることができる。
【0099】
配管類91は、車高方向においては、フロアパネル61の下面と、バッテリユニット4において車両外側に突出したフランジ部41aとの間に配置される。配管類91は、車幅方向においては、前記空きスペース86と、フロアサイドフレーム66との間に配置される。配管類91はまた、第1脆弱部673の下方に配置される。
【0100】
(側突性能について)
前述したように、フロアサイドフレーム66を車両外側に配置してサイドシル64に接近させることで、トンネルサイドフレーム63とフロアサイドフレーム66との間隔を広げることができる。トンネルサイドフレームとフロアサイドフレーム66との間隔を広げることは、バッテリユニット4の大型化、ひいては、バッテリ容量の向上に資する。
【0101】
ところが、前述のようにバッテリ容量を向上させた場合、バッテリユニット4の側面(特に、車両外側に面する左側面)もサイドシル64に近づくことになる。バッテリユニット4の側面をサイドシル64に接近させると、側突に対して不利になる。
【0102】
側突に対する備えとしては、例えば、バッテリユニット4の側方に中空のエネルギ吸収部材を設けることが考えられる。しかしながら、エネルギ吸収部材の新設は、重量の増加、コストアップ等を招くため不都合である。
【0103】
そこで、本実施形態に係る電動車両1では、取付ブラケット8の形状に工夫を凝らすことで、重量の増加、コストアップ等を招くことなく、バッテリユニット4のバッテリ容量の向上と、側突時におけるバッテリユニット4の保護と、を両立する。具体的に、本実施形態では、内側縦壁部82とトンネルサイドフレーム63との接続位置が、外側縦壁部81とフロアサイドフレーム66との接続位置よりも車両上方に位置するようになっている。
【0104】
図9は、電動車両1の側突時におけるバッテリユニット4の揺動を例示する遷移図である。ステップS1は、側突が発生して取付ブラケット8が揺動し始めた状態を示している。
【0105】
前述したように、外側縦壁部81とフロアサイドフレーム66との接続位置は、内側縦壁部82とトンネルサイドフレーム63との接続位置よりも車両下方に位置する。そのため、外側縦壁部81は、電動車両1の側方から荷重が入力された場合(特に、矢印Fに示すように、フロアパネル61よりも車両上方位置に対して側方から荷重が入力された場合)に、内側縦壁部82と比較して、車両下側に向かう方向に荷重を受け易い。そうした荷重によって外側縦壁部81を車両下側に向かって変位させることで、内側縦壁部82とトンネルサイドフレーム63との接続位置を支点Pとしたブランコのように、取付ブラケット8を揺動させることができる。
【0106】
ステップS2は、取付ブラケット8の揺動が進んだ状態を示している。取付ブラケット8の揺動を進めることで、取付ブラケット8の下壁部80によって支持されたバッテリユニット4も車両下側へと揺動させることが可能になる。この揺動によって、バッテリユニット4は、車両外側の部位を下方に変位させるように、斜めに傾くことになる。
【0107】
また、電動車両1の側方から荷重が入力された場合、フロアクロスメンバー67には、該フロアクロスメンバー67を折れ曲げるような荷重が入力されることになる。前述のように構成された脆弱部673,674を設けたことによって、フロアクロスメンバー67を、車両上方に向かって突出するように折れ曲げることができる。バッテリユニット4を車両下側へと揺動させる一方、フロアクロスメンバー67を車両上方に向かって突出させることで、ステップS2に示すように、フロアクロスメンバー67とバッテリユニット4との干渉を抑制することができる。これにより、バッテリユニット4を良好に保護する上で有利になる。
【0108】
図示は省略したが、ステップS2において、配管類91は、車両内側に向かって変位することになる。しかしながら、前述のようにバッテリユニット4を車両下側へと揺動させる一方、フロアクロスメンバー67を車両上方に向かって突出させるのに加え、前述のように構成された空きスペース86を設けたことで、配管類91とバッテリユニット4の上面との干渉、および、配管類91とフロアクロスメンバー67との干渉を双方とも良好に抑制することができる。また、空きスペース86を設けるべくバッテリユニット4の角部4bを切り欠いたことで、この角部4b周辺の上面と配管類91とが接触したときに、配管類91を車両上方に案内し易くなる。
【0109】
ステップS3は、取付ブラケット8の揺動がさらに進んだ状態を示している。取付ブラケット8の揺動をさらに進めることで、バッテリユニット4の揺動もさらに進行させて、バッテリユニット4を車両下側へと退避させることができる。バッテリユニット4を車両下側へと退避させることで、サイドシル64等が車両内側へ向かって押し潰されてなる車両構成部品Jと、バッテリユニット4との干渉が回避され、バッテリユニット4を良好に保護することができる。
【0110】
このように、フロアサイドフレーム66を車両外側に配置してサイドシル64に接近させた場合であってもバッテリユニット4を良好に保護することができるという点で、この電動車両1は、重量の増加、コストアップ等を招くことなく、バッテリ容量の向上と、側突時におけるバッテリの保護と、を両立することができる。
【0111】
また、取付ブラケット8の揺動がさらに進んだ場合、バッテリユニット4における車両内側の角部4aと、第2縦壁部63bとが接触する可能性がある。しかしながら、前記のように第2縦壁部63bを急峻に傾斜させたことで、例えば第2縦壁部63bを車両上下方向と平行に伸ばしたような構成と比較して、第2縦壁部63bに接触した角部4aを、車両下方に向かってスムースに案内することが可能となる。これにより、バッテリユニット4を保護する上で有利になる。
【0112】
また、内側縦壁部82の車両前後方向における幅の長さである内側幅Wiを、外側縦壁部81の車両前後方向における幅の長さである外側幅Woよりも短く構成したことで、内側縦壁部82とトンネルサイドフレーム63との接続位置を支点Pとした取付ブラケット8の揺動を促進することが可能になる。
【0113】
また、
図10を用いて説明したように、直線L1,L2上と開口部85とが交わらないように構成したことで、直線L1,L2に沿って入力された荷重による取付ブラケット8の変形を抑制することができる。これにより、取付ブラケット8の軽量化による揺動の促進と、取付ブラケット8の剛性の確保と、を両立することができる。
【0114】
なお、前記実施形態では、内側縦壁部82は、第1の内側縦壁部82aと第2の内側縦壁部82bとによって構成されていたが、本開示は、そうした構成には限定されない。
図11に示す取付ブラケット8’のように、1つの内側縦壁部によって内側縦壁部82’を構成してもよい。この場合、内側幅Wi’は、1つの内側縦壁部の車両前後方向における幅の長さに相当する。この内側幅Wi’を外側幅Wo’よりも短くすることで、前記実施形態と同様に、取付ブラケット8’の揺動を促し、ひいては、その下壁部80’に支持されたバッテリユニットを良好に保護することができるようになる。
【0115】
また、
図11に示した例では、前記実施形態と同様に、1つの板状体によって外側縦壁部81’が構成されているが、前記実施形態に係る内側縦壁部82と同様に、2つ以上の板状体によって外側縦壁部81’を構成することもできる。
【0116】
また、ここに開示する技術は、四輪駆動車への適用に限定されない。ここに開示する技術は、フロントエンジンリヤドライブ車両に適用してもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 電動車両
61 フロアパネル
62 フロアトンネル
63 トンネルサイドフレーム
63a 第1縦壁部
63b 第2縦壁部
66 フロアサイドフレーム
67 フロアクロスメンバー
673 第1脆弱部(脆弱部)
674 第2脆弱部(脆弱部)
4 バッテリユニット
8 取付ブラケット
80 下壁部
81 外側縦壁部
82 内側縦壁部
82a 第1の内側縦壁部
82b 第2の内側縦壁部
86 空きスペース
91 配管類
Wo 外側幅
Wi 内側幅