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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】電動車両の下部構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/00 20060101AFI20241112BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20241112BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20241112BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B60K1/00
B60K1/04 Z
B62D25/20 G
H05K5/02 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021053435
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150715
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樫原 宏明
(72)【発明者】
【氏名】池田 義典
(72)【発明者】
【氏名】辻 大介
(72)【発明者】
【氏名】谷本 晃一
(72)【発明者】
【氏名】河村 利彦
(72)【発明者】
【氏名】山崎 範治
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-172879(JP,A)
【文献】特開2016-159639(JP,A)
【文献】特開2021-003932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00- 6/12
B60K 7/00- 8/00
B62D 25/20
H05K 5/02
H02M 7/42- 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用の高電圧バッテリを搭載し、その電力を利用した走行が可能な電動車両の下部構造であって、
車室の下側に拡がるフロアパネルと、
前記フロアパネルの下方、かつ、その左右方向の中間に設けられる所定の車両構造と、
前記フロアパネルの下面の左右の側部に沿って前後方向に延びる一対のフロアサイドフレームと、
前記高電圧バッテリと接続されていて、前記車両構造と前記フロアサイドフレームの一方との間に配置される所定の高電圧部品と、
前記高電圧バッテリと接続されていて、前記車両構造と前記フロアサイドフレームとの間に配置される第2高電圧部品と、
前記高電圧部品を前記フロアパネルに取り付ける取付ブラケットと、
前記フロアパネルよりも前方に配置され、その左右の後端部の一方が前記高電圧部品の前方に位置するフロントサブフレームと、
前記フロントサブフレームと前記高電圧部品との間に配置されるガイドブラケットと、
を備え、
前記取付ブラケットが、
前記高電圧部品と前記車両構造との間の少なくとも一部を仕切る内側壁部と、
前記高電圧部品と前記フロアサイドフレームとの間の少なくとも一部を仕切る外側壁部と、
前記内側壁部の上縁部と前記外側壁部の上縁部とに掛け渡された上壁部と、
前記内側壁部の下縁部と前記外側壁部の下縁部とに掛け渡された下壁部と、
を含む外殻構造を有し
前記第2高電圧部品が、前記高電圧部品と重なるように、前記下壁部の下側に配置され、
前記ガイドブラケットが、
前方に向かって上向きに傾斜したガイド面部と、
前記ガイド面部の両側に設けられた一対のフランジ部と、
を有し、
前記フランジ部の一方がフロアサイドフレームに取り付けられるともに、前記フランジ部の他方がトンネルサイドフレームに取り付けられていて、前記ガイド面部が、前記フロントサブフレームが後退した場合に、当該フロントサブフレームを前記第2高電圧部品の下方に案内する、電動車両の下部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電動車両の下部構造において、
前記フロアパネルの左右方向の中間が上側に凹むことによって前後方向に延びるように設けられたトンネル部と、
前記トンネル部の下縁に沿って延びるトンネルサイドフレームと、
を更に備え、
前記車両構造は、前記トンネル部の内部に配置された変速機であり、
前記外側壁部は、前記フロアサイドフレームの側面と対向し、前記内側壁部は、前記取付ブラケットが前記トンネルサイドフレームに取り付けられることによって、前記変速機の側面と対向している、電動車両の下部構造。
【請求項3】
請求項1に記載の電動車両の下部構造において、
前記ガイドブラケットが、前記車両構造と左右方向に対向する縦壁部を有している、電動車両の下部構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の電動車両の下部構造において、
流体を流すために前記フロアパネルに沿って前後方向に延びる少なくとも1本の配管を更に含み、
前記配管が、前記上壁部の上方を通って配索されている、電動車両の下部構造。
【請求項5】
請求項4に記載の電動車両の下部構造において、
前記配管が複数本からなり、
前記複数の配管が、前記上壁部の左右方向の中央部位に集約した状態で配索されている、電動車両の下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する技術は、例えばハイブリッド車、電気自動車などの、電力を利用した走行が可能な電動車両の下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハイブリッド車が開示されている。そのハイブリッド車には、駆動用の高電圧部品として、インバータ(22、同文献における符号を示す。以下同様)、コンバータ(23)、バッテリなどがフロアパネルの下側に配置されている。具体的には、48Vのバッテリがトンネル部の内部に配置されている。インバータ(22)およびコンバータ(23)は、トンネル部の左側の領域に、前後方向に直列に並べて配置されている。
【0003】
トンネル部の左側の領域には、間隔を隔てて前後方向に延びるフロアサイドフレームとトンネルサイドフレームとが設けられている。これらフロアサイドフレームとトンネルサイドフレームの間に、パネル状のブラケット(26)がボルト止めすることによって架設されている。インバータ(22)は、このブラケット(26)の上に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-172879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のハイブリッド車の側方に、他の車両が衝突した場合(いわゆる側突)、フロアパネルが変形し、ブラケットを取り付けているボルトが剪断するおそれがある。従って、側突時には、インバータは、フロアサイドフレームとトンネルサイドフレームとの間に挟まれたり、落下したりして、破損する懸念がある。
【0006】
開示する技術では、フロアパネルにおけるトンネル部の側方の領域に、高電圧部品を配置した電動車両において、その側方から強い衝撃を受けた場合でも、高電圧部品を効果的に保護できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示する技術は、駆動用の高電圧バッテリを搭載し、その電力を利用した走行が可能な電動車両の下部構造に関する。
【0008】
前記電動車両の下部構造は、車室の下側に拡がるフロアパネルと、前記フロアパネルの下方、かつ、その左右方向の中間に設けられる所定の車両構造と、前記フロアパネルの下面の左右の側部に沿って前後方向に延びる一対のフロアサイドフレームと、前記高電圧バッテリと接続されていて、前記車両構造と前記フロアサイドフレームの一方との間に配置される所定の高電圧部品と、前記高電圧部品を前記フロアパネルに取り付ける取付ブラケットと、を備える。
【0009】
そして、前記取付ブラケットが、前記高電圧部品と前記車両構造との間の少なくとも一部を仕切る内側壁部と、前記高電圧部品と前記フロアサイドフレームとの間の少なくとも一部を仕切る外側壁部と、前記内側壁部の上縁部と前記外側壁部の上縁部とに掛け渡された上壁部と、前記内側壁部の下縁部と前記外側壁部の下縁部とに掛け渡された下壁部と、
を含む外殻構造を有している。
【0010】
すなわち、この電動車両には、車室の下側に拡がるフロアパネルの下方、かつ、その左右方向の中間に、所定の車両構造(例えば、車両部品、フレームなどの構造物)が設けられている。フロアパネルの下面には、その左右の側部に沿って一対のフロアサイドフレームが前後方向に延びている。
【0011】
そして、この電動車両にはまた、エアコンなどの電源とされるバッテリ(通常は電圧が12Vの鉛蓄電池)よりも電圧が高い、駆動用の高電圧バッテリが搭載されている。電動車両は、その電力を利用した走行が可能である。電動車両は、例えば、ハイブリッド車、電気自動車などである。
【0012】
電動車両には、モータ、インバータ、コンバータなどの、高電圧バッテリと接続される高電圧部品が備えられている。そのような所定の高電圧部品が、上述した車両構造とフロアサイドフレームの一方との間に配置されていて、取付ブラケットでフロアパネルに取り付けられている。
【0013】
そして、その取付ブラケットが、高電圧部品と車両構造との間の少なくとも一部を仕切る内側壁部、高電圧部品とフロアサイドフレームとの間の少なくとも一部を仕切る外側壁部、上壁部、および、下壁部を含む外殻構造を有している。
【0014】
すなわち、この電動車両の下部構造によれば、第1に、高電圧部品の周囲が取付ブラケットによって囲まれているので、走行時に、石などの跳ね上げがあっても、高電圧部品を保護できる。しかも、その両側には、車両構造とフロアサイドフレームがあるので、より効果的に保護できる。車体の下方は、上下方向のスペースが狭く限られているが、このように配置することで、そのスペースを有効に活用できる。
【0015】
第2に、取付ブラケットによって外殻構造を構成したことにより、衝突時においても、高電圧部品を効果的に保護できる。
【0016】
すなわち、電動車両に対する側方からの衝突(いわゆる側突)により、車体が変形、破損する場合がある。その場合、高電圧部品が落下したり、変形したフロアサイドフレームが高電圧部品に衝突したりするおそれがある。
【0017】
特に、この電動車両のように、車両構造とフロアサイドフレームとの間に高電圧部品を配置した場合には、これらの間に挟まれて、高電圧部品が押し潰されるおそれがある。それに対し、この電動車両では、高電圧部品の周囲は、取付ブラケットによる外殻構造によって囲まれている。
【0018】
従って、フロアサイドフレームが変形して内側に入り込み、取付ブラケットが内側に押し付けられると、取付ブラケットは、車両構造に接触して左右両側から押し付けられることになる。このとき、取付ブラケットによって外殻構造が構成されているので、これらの押付力に対して突っ張ることができる。従って、押し潰されることを防止できる。取付ブラケットの内部に格納されている高電圧部品に外力は作用しない。側突が発生しても、高電圧部品を保護できる。
【0019】
車両構造とフロアサイドフレームとの間に強い力で挟まれるので、高電圧部品も含め、取付ブラケットの落下を防止できる。更に、取付ブラケットの突っ張り作用により、取付ブラケットの取付部位、つまり取付ボルトによる締結部位の間隔も大きく変化しない。そのため、取付ボルトに作用する剪断力も抑制される。取付ボルトの剪断も防止できる。
【0020】
前記電動車両の下部構造はまた、前記フロアパネルの左右方向の中間が上側に凹むことによって前後方向に延びるように設けられたトンネル部と、前記トンネル部の下縁に沿って延びるトンネルサイドフレームと、を更に備え、前記車両構造は、前記トンネル部の内部に配置された変速機であり、前記外側壁部は、前記フロアサイドフレームの側面と対向し、前記内側壁部は、前記取付ブラケットが前記トンネルサイドフレームに取り付けられることによって、前記変速機の側面と対向している、としてもよい。
【0021】
すなわち、この電動車両の下部構造によれば、上述した車両構造は、トンネル部の内部に配置された変速機である。そして、外側壁部は、フロアサイドフレームの側面と対向し、内側壁部は、取付ブラケットがトンネルサイドフレームに取り付けられることによって、変速機の側面と対向している。
【0022】
従って、側突時には、取付ブラケットは、フロアサイドフレームと変速機の間に挟まれる。そして、これらに押し付けられることで、突っ張り作用を発揮する。トンネルサイドフレームに取付ブラケットを取り付けたことで、トンネル部の内部に配置されている変速機の側面が利用できる。フロアサイドフレームとトンネルサイドフレームとで、取付ブラケットを挟み込む必要が無いので、トンネルサイドフレームの断面の大型化を回避できる。変速機の側に取付ブラケットを大きくできるので、高電圧部品の横幅を拡張できる。
【0023】
前記電動車両の下部構造はまた、前記高電圧バッテリと接続されていて、前記車両構造と前記フロアサイドフレームとの間に配置される第2高電圧部品を更に備え、前記第2高電圧部品が、前記高電圧部品と重なるように、前記下壁部の下側に配置されている、としてもよい。
【0024】
そうすれば、取付ブラケットを、第2高電圧部品をフロアパネルに取り付けるためのブラケットとしても利用できるので、部材点数を削減できる。部材コストを低減できる。そして、側突が発生しても、取付ブラケットが突っ張った状態になることで、第2高電圧部品も押し潰されるおそれはない。取付ブラケットが落下しないので、第2高電圧部品も落下しない。従って、第2高電圧部品もまた、側突が発生しても保護できる。
【0025】
前記電動車両の下部構造はまた、前記フロアパネルよりも前方に配置され、その左右の後端部の一方が前記高電圧部品の前方に位置するフロントサブフレームと、前記フロントサブフレームと前記高電圧部品との間に配置されるガイドブラケットと、を更に備え、前記ガイドブラケットが、前方に向かって上向きに傾斜したガイド面部と、前記ガイド面部の両側に設けられた一対のフランジ部と、を有し、前記フランジ部の一方がフロアサイドフレームに取り付けられるともに、前記フランジ部の他方がトンネルサイドフレームに取り付けられていて、前記ガイド面部が、前記フロントサブフレームが後退した場合に、当該フロントサブフレームを前記第2高電圧部品の下方に案内する、としてもよい。
【0026】
すなわち、この電動車両の下部構造によれば、フロアパネルよりも前方にフロントサブフレームが配置されていて、その左右の後端部の一方が高電圧部品の前方に位置している。そして、そのフロントサブフレームと高電圧部品との間に、ガイドブラケットが配置されている。
【0027】
そのガイドブラケットは、フロアサイドフレームとトンネルサイドフレームに両側が取り付けられていて、前方に向かって上向きに傾斜したガイド面部を有している。そのガイド面部は、フロントサブフレームが後退した場合に、そのフロントサブフレームを第2高電圧部品の下方へと案内する。
【0028】
従って、電動車両の前突時または斜突時にフロントサブフレームが後退する場合があるが、その場合においても、ガイド面部により、高電圧部品および第2高電圧部品を保護できる。更に、そのガイド面部は、トンネルサイドフレームおよびフロアサイドフレームの双方に取り付けられている。それにより、側突時には、取付ブラケットと協働して、フロアパネルが左右方向に押し潰されることを抑制できる。側突時には、高電圧部品および第2高電圧部品を、よりいっそう保護できる。
【0029】
前記電動車両の下部構造はまた、前記ガイドブラケットが、前記車両構造と左右方向に対向する縦壁部を有している、としてもよい。
【0030】
そうすれば、ガイドブラケットもまた、側突時に、縦壁部が車両構造に押し付けられる。ガイドブラケットも、取付ブラケットと同様に、左右方向に突っ張った状態となる。ガイドブラケットも強固に支持されるので、その落下を防止できる。
【0031】
前記電動車両の下部構造はまた、流体を流すために前記フロアパネルに沿って前後方向に延びる少なくとも1本の配管を更に含み、前記配管が、前記上壁部の上方を通って配索されている、としてもよい。
【0032】
そうすれば、取付ブラケットの突っ張り作用により、配管も側突から保護できる。
【0033】
特に、前記配管が複数本からなる場合、前記複数の配管が、前記上壁部の左右方向の中央部位に集約した状態で配索されている、とするとよい。
【0034】
そうすれば、これら配管は、取付ブラケットの左右両側から離れて位置することになるので、取付ブラケットの突っ張り作用により、配管が複数であっても、側突から、効果的に保護できる。
【発明の効果】
【0035】
開示する技術を適用した電動車両であれば、その側方から強い衝撃を受けた場合でも、高電圧部品を効果的に保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、電動車両の前側部分の下部構造をその下方から見た概略図である。
図2図2は、図1における要部の拡大図である。
図3図3は、ガイドブラケットを省略した図2相当図である。
図4図4は、図2において矢印線A-Aで示す部分の概略断面図である。
図5図5は、電動車両の要部を左斜め後上方から見た概略斜視図である。
図6図6は、取付ブラケットおよびガイドブラケットを上方の後側から見た概略図である。
図7図7は、取付ブラケットおよびガイドブラケットを上方の前側から見た概略図である。
図8図8は、取付ブラケットおよびインバータの取り付け状態を示した概略図である。
図9図9は、図2において矢印線B-Bで示す部分の概略断面図である。
図10図10は、図2において矢印線C-Cで示す部分の概略断面図である。
図11図11は、側突時における取付ブラケットの突っ張り作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、開示する技術を適用した実施形態の1つを説明する。なお、説明において示す前後、左右、および、上下の各方向は、車両を基準としたものである。各図において、これら方向を矢印で示す。左右方向は、車幅方向に相当する。
【0038】
<電動車両の下部構造>
図1に、実施形態における電動車両1の下部構造を示す。図1は、電動車両1の前側部分の下部構造をその下方から見た概略図である。図1において、電動車両1の右側部分の一部は、便宜上、左側部分に比べて図示を省略している。また、他の図においても、適宜図示を省略して表してある。
【0039】
図2は、図1における要部の拡大図である。図3は、ガイドブラケットを省略した図2相当図である。図4は、図2において矢印線A-Aで示す部分の概略断面図である。図5は、電動車両1の要部を上方の後側から見た概略斜視図である。
【0040】
電動車両1は、ハイブリッド車である。すなわち、駆動源として、エンジン2とモータ3とが搭載されている。それにより、電動車両1は、エンジン2のみの駆動、モータ3のみの駆動、並びに、エンジン2およびモータ3の双方の駆動、のいずれかによって走行する。なお、開示する技術は、ハイブリッド車に限らず、モータのみを搭載した電気自動車にも適用できる。
【0041】
電動車両1はまた、いわゆるFR車である。電動車両1は、車室の前側にエンジンルームを備え、後輪を駆動して走行する。電動車両1は、必要に応じて後輪と共に前輪も駆動する(四輪駆動)。図1において、CRで示す範囲に車室が設けられ、ERで示す範囲にエンジンルームが設けられている。
【0042】
図1に示すように、その車室の下部の左右両側には、前後方向に平行して延びる一対のサイドシル10,10が配置されている。そして、これらサイドシル10,10の間に、車室の下側に拡がる略水平なフロアパネル11が配置されている。フロアパネル11の左右方向の中間部分には、上側(車室側)に向かって凹むトンネル部11aが、前後方向に延びるように設けられている。
【0043】
フロアパネル11の前縁部分は、前後方向に面した状態で左右方向に拡がるダッシュパネル12の下縁部分に連結されている。フロアパネル11とダッシュパネル12との境界部分は、前方に向かって上向きに湾曲している。ダッシュパネル12により、車室の前側部分がエンジンルームと区画されている。トンネル部11aは、ダッシュパネル12を越えてエンジンルームまで延びている。
【0044】
フロアパネル11における各サイドシル10とトンネル部11aとの間の部分には、フロアサイドフレーム13とトンネルサイドフレーム14とが、前後方向に延びるように設けられている。これらフロアサイドフレーム13およびトンネルサイドフレーム14の各々は、樋状の部材をフロアパネル11の下面に接合することによって閉断面構造を形成している。トンネルサイドフレーム14よりもフロアサイドフレーム13の方がフロアパネル11から下方に大きく突出している(図4参照)。
【0045】
各トンネルサイドフレーム14は、トンネル部11aの下縁に沿って延びるように配置されている。各フロアサイドフレーム13は、フロアパネル11の下面の側部に沿って、詳細には、フロアパネル11の各トンネルサイドフレーム14とサイドシル10との間に配置されている。各トンネルサイドフレーム14の前端部は、隣接している各フロアサイドフレーム13に接続されている。
【0046】
エンジン2は、エンジンルームの車幅方向の略中央に縦置きされている。つまり、回転軸が前後方向に延びるように、エンジン2が配置されている。
【0047】
エンジンルームの左右両側には、一対のフロントサイドフレーム15,15が前後方向に延びている(右側のフロントサイドフレーム15は図示省略)。各フロントサイドフレーム15の後端部は、下向きに湾曲した状態で、各フロアサイドフレーム13の前端部に連結されている。各フロントサイドフレーム15の前端部の間には、クロスメンバ16が架設(掛け渡した状態で設置)されている。
【0048】
各フロントサイドフレーム15の上方かつ車幅方向の外側には、エプロンメンバ17が配置されている。一方、両フロントサイドフレーム15の下方かつ車幅方向の内側には、フロントサブフレーム20が配置されている。フロントサブフレーム20は、エンジンルームの下部に配置されており、エンジン2、フロントサスペンション21などが、フロントサブフレーム20によって支持されている。
【0049】
フロントサブフレーム20は、左右一対のサイドフレーム部20a,20a、フロントサスペンションメンバ部20b、リアサスペンションメンバ部20c、左右一対のブレース部20d,20dなどで構成されている。フロントサブフレーム20は、左右対称状に構成されている。
【0050】
各サイドフレーム部20aは、各フロントサイドフレーム15の下側に沿うように、前後方向に延びている。詳細には、各サイドフレーム部20aは、ダッシュパネル12よりも前方のエンジンルームの下部に位置し、ダッシュパネル12およびフロアパネル11よりも低い位置に配置されている(図10参照)。
【0051】
各サイドフレーム部20aの前端部分は、上方に湾曲し、各フロントサイドフレーム15の前端部に連結されている。各サイドフレーム部20aの後端部分は、ダッシュパネル12の直前かつ下方に位置し、各フロントサイドフレーム15の後端部に連結されている。各サイドフレーム部20aの後端部分の間に、左右方向に延びるリアサスペンションメンバ部20cが架設されている。
【0052】
各サイドフレーム部20aの後端部分にはまた、各ブレース部20dが連結されている。各ブレース部20dは、各サイドフレーム部20aの後端部分から車幅方向の外側に突き出すように配置されている。各ブレース部20dは、後方に向かって傾斜することにより、その突端部分がフロアパネル11の前端部分の下面に連結されている。
【0053】
フロントサスペンションメンバ部20bは、各サイドフレーム部20aの中間部位の間に架設されている。フロントサブフレーム20には、フロントサスペンション21が組付けられている。フロントサスペンション21の一部(ロワーアーム等)が、各サイドフレーム部20aの車幅方向の外側に張り出している。
【0054】
図1図2に示すように、エンジン2の後部には、ダンパを介してモータ3が連結されている。モータ3は、永久磁石形の同期モータである。モータ3は、インバータ制御による3相の交流によって駆動する。
【0055】
そして、そのモータ3の後部に、ATトランスミッション6(自動変速機)が連結されている。ATトランスミッション6は、エンジン2およびモータ3の一方または双方から出力される駆動力を、車速に応じて変速して出力する。
【0056】
ATトランスミッション6の後部には、トランスファー8が設けられている。トランスファー8の左側から前方に向かってフロントプロペラシャフト9Fが延びている。トランスファー8から後方に向かってリアプロペラシャフト9Rが延びている。トランスファー8は、これらフロントプロペラシャフト9Fおよびリアプロペラシャフト9Rを通じて、ATトランスミッション6から出力される駆動力を、前輪と後輪に伝達する。
【0057】
ダンパ、モータ3、ATトランスミッション6、トランスファー8、および、リアプロペラシャフト9Rは、エンジン2の後部に直列に連結されていて、トンネル部11aの内部を通って後方に直線状に延びている。ATトランスミッション6は、トンネル部11aの前側部分の内部に配置されている。トランスファー8の下側には、左右のトンネルサイドフレーム14に架設されたブラケット22が配置されている。トランスファー8は、このブラケット22によって支持されている。
【0058】
エンジン2の右側には、排気マニホールドなどの排気装置30が取り付けられている。排気装置30から電動車両1の後端に向かって排気管31が延びている。排気管31の前側部分は、トンネル部11aの右側に拡がるフロアパネル11の下面に沿って配置されている。排気管31の後側部分は、リアプロペラシャフト9Rの下側に並んだ状態で、トンネル部11aに配置されている。排気管31の前側部分と後側部分との間には、浄化装置32が設置されている。
【0059】
<高電圧部品>
電動車両1には、エンジン駆動で走行する従来の車両と同様の電装品、制御装置などの車両部品が設置されている。電動車両1には、これら車両部品に加え、モータ3を駆動するために、高電圧バッテリ60とともに、複数の高電圧部品が搭載されている。
【0060】
具体的には、インバータ50(「所定の高電圧部品」に相当)、DC/DCコンバータ40(第2高電圧部品、単にコンバータ40ともいう)などが搭載されている。
【0061】
(高電圧バッテリ)
車両部品の電源として、バッテリ(通常は電圧が12Vの鉛蓄電池、以下、低電圧バッテリと呼ぶ)が、エンジンルームに搭載されている。それに加え、電動車両1には、高電圧部品の電源として、それよりも電圧の高いバッテリ(高電圧バッテリ60)が搭載されている。
【0062】
この電動車両1には、電圧が300V以上の高電圧バッテリ60が搭載されている(いわゆるストロングハイブリッド車)。高電圧バッテリ60のサイズは大きい。そのため、この電動車両1では、図1に示すように、高電圧バッテリ60は、左右一対で構成されており(右側高電圧バッテリ60Rおよび左側高電圧バッテリ60L)、フロアパネル11におけるトンネル部11aの左右の広い領域に配置されている。
【0063】
詳細には、フロアパネル11の下面のうち、右側および左側の各々の、フロアサイドフレーム13とトンネルサイドフレーム14とに沿ってこれらの間に拡がる領域(特に、左側の領域を「左サイド領域」ともいう)であって、トランスファー8およびリアプロペラシャフト9Rの前側部分の左右両側の領域に、右側および左側の各高電圧バッテリ60R,60Lが配置されている。各高電圧バッテリ60R,60Lは、フロアサイドフレーム13とトンネルサイドフレーム14とに架設された大型のバッテリケースに格納されている。
【0064】
図2図3に示すように、左側高電圧バッテリ60Lは、その前端部分の左端が前方に突出しており、その突端部分に接続端子61を有している。接続端子61は、CVハーネス42によってコンバータ40と接続されている。接続端子61は、IVハーネス52によってインバータ50と接続されている。
【0065】
(インバータ、コンバータ)
図1図2図3に示すように、インバータ50およびコンバータ40は、左サイド領域における接続端子61の前方であって、ATトランスミッション6の左方に配置されている。
【0066】
これらインバータ50およびコンバータ40は、上下に重ねた状態で、取付ブラケット70を介してフロアパネル11に取り付けられている。図1図2に示すように、インバータ50およびコンバータ40の前方には、ガイドブラケット80が配置されている。取付ブラケット70およびガイドブラケット80については、別途後述する。
【0067】
インバータ50およびコンバータ40の各々は、外形が、縦横の長さが厚みよりも充分に大きい、矩形板状の部品である(図4参照)。インバータ50およびコンバータ40の各々は、前後方向(縦)の長さよりも左右方向(横)の長さの方が大きい(つまり横幅が大きい)。インバータ50の横幅はコンバータ40の横幅と略同一であり、インバータ50の縦幅はコンバータ40の縦幅よりも大きい。
【0068】
図示はしないが、インバータ50には、3つのスイッチング回路が横一列に並んだ状態で内蔵されている。モータ3に対して各スイッチング回路を均等に配置することで、モータ3を安定して制御できる。これらスイッチング回路でスイッチング処理を行うことにより、インバータ50は、モータ3に制御された3相の交流を出力する。インバータ50を制御することで、モータ3は所定の出力で駆動する。
【0069】
図3に示すように、インバータ50は、その右側部分の前端部および後端部の双方に、IVハーネス52を接続するためのIVハーネス接続部51を有している。前側のIVハーネス接続部51には、モータ3と接続するIVハーネス52が接続されている。後側のIVハーネス接続部51には、高電圧バッテリ60と接続するIVハーネス52が接続されている。
【0070】
インバータ50は、作動時に発熱するため、循環する冷却水によって冷却できるように構成されている(水冷式)。インバータ50の前端部および後端部の双方に、冷却水を循環させるIV冷却水配管53が接続されている。
【0071】
コンバータ40は、高電圧バッテリ60の電圧を降圧して12Vの直流電流を出力する。コンバータ40は、その左右の側部に、CVハーネス42を接続するためのCVハーネス接続部41を有している。右側のCVハーネス接続部41には、高電圧バッテリ60から延びるCVハーネス42が接続されている。左側のCVハーネス接続部41には、12Vの電流を出力するCVハーネス42が接続されている。
【0072】
コンバータ40もまた、作動時に発熱するため、循環する冷却水によって冷却できるように構成されている(水冷式)。コンバータ40の左側部の前側および後側の双方に、冷却水を循環させるCV冷却水配管43が接続されている。
【0073】
<取付ブラケット、ガイドブラケット>
上述したように、インバータ50およびコンバータ40は、左サイド領域におけるATトランスミッション6の左方に、上下に重ねた状態で、取付ブラケット70を介してフロアパネル11に取り付けられている。詳細には、左サイド領域の前端部分における、ATトランスミッション6と、左側のフロアサイドフレーム13との間に、インバータ50およびコンバータ40は、配置されている(この実施形態では、ATトランスミッション6が「所定の車両構造」に相当)。
【0074】
図2などに示すように、左サイド領域の前方には、フロントサブフレーム20の左側の後端部が位置している。詳細には、左側のサイドフレーム部20aの後端部および左側のブレース部20dが位置している。ガイドブラケット80は、このフロントサブフレーム20の左側の後端部と、インバータ50およびコンバータ40との間に配置されている。
【0075】
図6図7に、取付ブラケット70およびガイドブラケット80を示す。取付ブラケット70およびガイドブラケット80の各々は、所定構造に形成された金属板のプレス加工品からなる。取付ブラケット70とガイドブラケット80は、連結された状態になっている。
【0076】
(取付ブラケット)
取付ブラケット70は、上側ブラケット70Uと下側ブラケット70Dとで一体に構成されている。上側ブラケット70Uは、上下方向から見たとき、略L形状の外形を有している(図8参照)。下側ブラケット70Dは、上下方向から見たとき、左右方向が長い略長方形状の外形を有している。
【0077】
上側ブラケット70Uおよび下側ブラケット70Dの各々には、所定の折曲構造および所定の凹凸構造が形成されている。これら折曲構造および凹凸構造は、構造的に上側ブラケット70Uおよび下側ブラケット70Dの各々の剛性を強化している。
【0078】
上側ブラケット70Uは、前後方向に延びる上内側取付部71と、上内側取付部71の一端に連なって左右方向に延びる架設部72とを有している。上内側取付部71は、左右方向に面する縦長な内区画面71aを有している。架設部72の突端には、上外側取付部73が設けられている。
【0079】
上外側取付部73は、左右方向に面する外区画面73aを有している。外区画面73aと内区画面71aとは左右方向に対向している。上内側取付部71および上外側取付部73の各々には、取付ボルト101を締結するための締結座74が複数設けられている。
【0080】
下側ブラケット70Dは、略長方形板状の底板部75と、底板部75の長手方向における外側の端部に設けられた下外側取付部76を有している。下外側取付部76には、取付ボルト101を締結するための締結座74が複数設けられている。
【0081】
上側ブラケット70Uおよび下側ブラケット70Dは、互い上下方向から突き合わせた状態で、接合ボルト102で締結することにより、一体化されている。詳細には、図4に示すように、底板部75に対して直角に折り曲げて形成された折曲部77が、底板部75の内側の端部に設けられている。
【0082】
この折曲部77の外側に、上内側取付部71の内区画面71aを重ねた状態で、内側から外側に向かって接合ボルト102を締結することで、上側ブラケット70Uと下側ブラケット70Dとが一体化されている。そして、図6図7に示すように、下外側取付部76の上側に、上外側取付部73を重ねた状態で、下側から上側に向かって接合ボルト102を締結することで、上側ブラケット70Uと下側ブラケット70Dとが一体化されている。
【0083】
すなわち、接合ボルト102は、上下方向と左右方向の双方から締結されている。従って、これら接合ボルト102は、水平方向および垂直方向のいずれか一方からの荷重で、全てが剪断されるおそれはない。上側ブラケット70Uおよび下側ブラケット70Dは、効率的な立体的構造で強固に一体化されている。それにより、前後方向が開放され、上下方向および左右方向の一部が開放された、高剛性な外殻構造を有する取付ブラケット70が構成されている。
【0084】
図8の左図に示すように、上内側取付部71は、締結座74を介して、トンネルサイドフレーム14に取付ボルト101で取り付けられている。上外側取付部73は、締結座74を介して、フロアサイドフレーム13に取付ボルト101で取り付けられている。
【0085】
それにより、取付ブラケット70は、図4に示すように、ATトランスミッション6とフロアサイドフレーム13との間に隙間を隔てて挟まれた状態となっている。具体的には、底板部75が、ATトランスミッション6およびフロアサイドフレーム13の双方の下端部と略同じ高さに位置し、取付ブラケット70が、ATトランスミッション6の左側面とフロアサイドフレーム13の右側面との間に位置している。
【0086】
その結果、取付ブラケット70により、ATトランスミッション6の左側面と対向し、インバータ50とATトランスミッション6との間の少なくとも一部を仕切る内側壁部(上内側取付部71の内区画面71a)と、フロアサイドフレーム13の右側面と対向し、インバータ50とフロアサイドフレーム13との間の少なくとも一部を仕切る外側壁部(上外側取付部73の外区画面73a)と、内側壁部の上縁部と外側壁部の上縁部とに掛け渡された上壁部(架設部72)と、内側壁部の下縁部と外側壁部の下縁部とに掛け渡された下壁部(底板部75)とを含む、外殻構造が構成されている。
【0087】
そして、その取付ブラケット70の内部に、インバータ50が格納されている。具体的には、図8の右図に示すように、上側ブラケット70Uと、下側ブラケット70Dとの間に、インバータ50が格納されている。インバータ50は、上述した所定の配置で、底板部75の上に載置され、ボルトで締結して固定されている。なお、取付ブラケット70は前後方向が開放されているので、インバータ50への配線および配管の作業は容易である。
【0088】
インバータ50の周囲が取付ブラケット70によって囲まれているので、走行時に、石などの跳ね上げがあっても、インバータ50を保護できる。しかも、その左右には、ATトランスミッション6とフロアサイドフレーム13があるので、より効果的に保護できる。車体の下方は、上下方向のスペースが狭く限られているが、このように配置することで、そのスペースを有効に活用できる。
【0089】
(側突に対するインバータの保護)
更に、この電動車両1では、取付ブラケット70によって外殻構造を構成したことにより、衝突時においても、インバータ50を効果的に保護できるように工夫されている。
【0090】
すなわち、電動車両1に対する左方からの衝突(いわゆる側突)により、車体が変形、破損する場合がある。その場合、左サイド領域に配置されているインバータ50にも外力が作用する可能性が高い。例えば、インバータ50が落下したり、フロアサイドフレーム13などがインバータ50に衝突したりするおそれがある。
【0091】
特に、この電動車両1のように、ATトランスミッション6とフロアサイドフレーム13との間にインバータ50を配置した場合には、これらの間に挟まれて、インバータ50が押し潰されるおそれがある。それに対し、この電動車両1では、インバータ50の周囲は、取付ブラケット70による外殻構造によって囲まれている。
【0092】
図11の上図に模式的に示すように、側突時には、フロアサイドフレーム13が、その外側から過剰な外力を受ける。それにより、フロアサイドフレーム13の右側面が取付ブラケット70に接触する。取付ブラケット70は内側に押し付けられる。フロアサイドフレーム13が大きく入り込むと、図11の下図に模式的に示すように、取付ブラケット70はATトランスミッション6の左側面に接触する。取付ブラケット70は、左右両側から押し付けられる。
【0093】
このとき、取付ブラケット70は、高剛性な外殻構造を構成しているので、これらの押付力に対して突っ張ることができる。従って、押し潰されることを防止できる。取付ブラケット70の内部に格納されているインバータ50に外力は作用しない。側突が発生しても、インバータ50を保護できる。
【0094】
ATトランスミッション6とフロアサイドフレーム13との間に強い力で挟まれるので、インバータ50も含め、取付ブラケット70の落下を防止できる。更に、取付ブラケット70の突っ張り作用により、フロアサイドフレーム13とトンネルサイドフレーム14との間の間隔も大きく変化しない。すなわち、取付ブラケット70の両側の隙間程度しか、これらの間隔は狭まらない。そのため、取付ボルト101に作用する剪断力も抑制される。取付ボルト101の剪断も防止できる。
【0095】
(DCDCコンバータの保護)
更に、この電動車両1では、コンバータ40をインバータ50と重なるように、下壁部(底板部75)の下側に配置したことにより、側突時においても、コンバータ40も効果的に保護できるように工夫されている。
【0096】
すなわち、コンバータ40は、上述した配置で、底板部75の下面に、ボルトで締結して固定されている。取付ブラケット70は、コンバータ40をフロアパネル11に取り付けるためのブラケットとしても利用(併用)されている。従って、部材点数が削減できる。部材コストが低減できる。
【0097】
上述したように、コンバータ40のサイズは、インバータ50のサイズと略同一、または、小さい。従って、コンバータ40の横幅(左右方向の大きさ)および長さ(前後方向の大きさ)は、取付ブラケット70の横幅および長さよりも小さい。そのため、上方向から見たとき、コンバータ40は、取付ブラケット70からはみ出すことがなく、その下方に隠れる。
【0098】
従って、側突が発生しても、取付ブラケット70が突っ張った状態になることで、コンバータ40も、その左右方向から押し潰されるおそれはない。取付ブラケット70が落下しないので、コンバータ40も落下しない。しかも、コンバータ40は、上下方向では、ATトランスミッション6およびフロアサイドフレーム13の下端と略同一の高さ、または、これらよりも下方に位置している。コンバータ40は、これらによって、直接に挟まれるおそれがない。
【0099】
従って、コンバータ40もまた、側突が発生しても保護できる。インバータ50およびコンバータ40は、上下に同じ向きに重ねて配置してあるので、配線および配管の作業も容易である。
【0100】
(ガイドブラケット)
図6図7に示すように、ガイドブラケット80は、上下方向から見たとき、前方に向かって窄まる略V形状の外形を有している。ガイドブラケット80は、前方に向かって上向きに傾斜した状態で略水平方向に拡がるガイド面部81と、ガイド面部81の外側に設けられた一対のフランジ部82a,82aと、ガイド面部81の内側の縁に連なって略鉛直方向に拡がる縦壁部83と、を有している。
【0101】
各フランジ部82aはフロアサイドフレーム13に、ボルトで締結することによって取り付けられている。ガイドブラケット80は、図7に示すように、更に、その内側の後端部が、下側ブラケット70Dの内側の前端部に連結ボルト103で締結されることにより、取付ブラケット70と連結されている。
【0102】
それにより、縦壁部83は、トンネル部11aの側に面するように配置されている。詳細には、縦壁部83は、図7に示すように、トンネル部11aの右側の縁の下方に位置し、内区画面71aと内外に重なった状態で、トンネル部11aおよび左サイド領域の双方の下側のスペースを仕切るように配置されている。そして、縦壁部83は、図9に示すように、ATトランスミッション6の下端部の左側面と対向するように構成されている。
【0103】
すなわち、ガイドブラケット80は、取付ブラケット70と連結された状態で、トンネルサイドフレーム14およびフロアサイドフレーム13の双方に取り付けられている。それにより、側突時には、取付ブラケット70と協働して、フロアパネル11の左サイド領域が左右方向に押し潰されることを抑制できる。側突時には、インバータ50およびコンバータ40を、よりいっそう保護できる。
【0104】
更に、側突時には、縦壁部83がATトランスミッション6に押し付けられる。ガイドブラケット80も、取付ブラケット70と同様に、左右方向に突っ張った状態となる。ガイドブラケット80も強固に支持されるので、その落下を防止できる。
【0105】
ガイドブラケット80は、左サイド領域の最先端部分、つまり、フロントサブフレーム20の左側の後端部と、取付ブラケット70との間に配置されている。それにより、ガイド面部81の先端は、図10に示すように、フロントサブフレーム20の後端部よりも上方に位置するように構成されている。ガイド面部81の後端は、コンバータ40よりも下方を指向するように構成されている。
【0106】
電動車両1は、前方からの衝突(いわゆる前突)ガイド面部、特に左斜め前方からの衝突(いわゆる斜突)により、車体が変形、破損する場合がある。その場合、フロントサブフレーム20が後退して、その左側の後端部が左サイド領域に入り込む可能性がある。
【0107】
それに対し、上述した構造のガイド面部81が、上述したように配置されているので、フロントサブフレーム20が後退した場合には、フロントサブフレーム20の後端部はコンバータ40の下方に案内される。従って、インバータ50およびコンバータ40は、前突時または斜突時においても、保護できる。
【0108】
(配管の保護)
更に、この電動車両1では、配管90も側突から保護できるように工夫されている。すなわち、電動車両1の下部には、燃料、冷却水などの流体を流すために、フロアパネル11の下面に沿って、複数の流体用の配管90が前後方向に延びるように配索されている。これら配管90が、図4図5に示すように、上壁部(架設部72)の上方の隙間を通って配索されている。取付ブラケット70の上中下に、配管90、インバータ50、および、コンバータ40が、三層に重ねた状態で配置されている。
【0109】
具体的には、バッテリを冷却する冷却水が流れるバッテリ冷媒配管90a、エンジン2の燃料が流れる燃料配管90b、および、後輪のブレーキを作動させる作動油が流れるブレーキ配管90cが、左右方向の中央部位に集約した状態で、取付ブラケット70の上方に位置するフロアパネル11の下面に沿って配索されている。従って、これら複数の配管90も、取付ブラケット70の突っ張り作用により、側突から保護できる。
【0110】
これら複数の配管90の一部(燃料配管90b、ブレーキ配管90c)は、フロアパネル11のうち、強度部材であるフロアサイドフレーム13の内側に沿って配索されている。取付ブラケット70の上方を通るように配索したことで、これらの配管90は、フロアサイドフレーム13から離れて位置することになる。それにより、これらの配管90の支持が不安定になる。
【0111】
それに対し、この電動車両1では、複数の配管90を支持する配管ホルダー91が、取付ブラケット70の上方に配置されている。配管ホルダー91は、横長扁平な部材からなり、フロアパネル11の下面に取り付けられている。複数の配管90は、配管ホルダー91によって安定して支持される。
【0112】
取付ブラケット70の上側ブラケット70Uには、図5図6などに示すように、架設部72の後方に、フロアサイドフレーム13の側が開放された矩形の切欠部78が設けられている。配管ホルダー91は、その切欠部78の上方に配置されている。配管ホルダー91に支持された複数の配管90は、切欠部78を通じて後方に延出されている。
【0113】
更に後方に延びる燃料配管90bおよびブレーキ配管90cは、切欠部78およびその前方のスペースを利用して、フロアサイドフレーム13の側に屈曲されている。これら配管90b、90cの配索が容易にできる。
【0114】
それにより、燃料配管90bおよびブレーキ配管90cは、再度、フロアサイドフレーム13の内側に沿うように配索されている。このように、フロアパネル11の下面に沿って前後方向に延びるように配索されている複数の配管90についても、取付ブラケット70の突っ張り作用を利用して、側突時に保護できるように工夫されている。
【0115】
すなわち、この電動車両1では、ATトランスミッション6とフロアサイドフレーム13との間に位置して、インバータ50を支持する取付ブラケット70の構造を、高い剛性が得られるように立体化した。それにより、インバータ50を取付ブラケット70の内部に格納した。フロアサイドフレーム13が、ATトランスミッション6の側に強い力で押し付けられても、取付ブラケット70が左右方向に突っ張るようにした。
【0116】
その結果、側突が発生しても、取付ブラケット70の内部に格納されているインバータ50を保護できる。更に、取付ブラケット70の下側には、コンバータ40を配置した。取付ブラケット70の上側には、複数の配管90を配置した。従って、コンバータ40および複数の配管90についても側突から保護できる。
【0117】
しかも、取付ブラケット70の前側には、ガイドブラケット80を付設した。それにより、側突に対する保護の強化と共に、前突または斜突からもこれら部材を保護できる。従って、開示する技術を適用したこの電動車両1によれば、安全性を効果的に向上できる。
【0118】
なお、開示する技術は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。例えば、実施形態では、「所定の車両構造」として変速機を例示したが、それに限らない。例えば、モータなどの他の車両部品でもよいし、トンネルサイドフレームなど車両部品の部分的な構造物であってもよい。
【符号の説明】
【0119】
1 電動車両
2 エンジン
3 モータ
5 ダンパ
6 ATトランスミッション
8 トランスファー
9R リアプロペラシャフト
10 サイドシル
11 フロアパネル
11a トンネル部
12 ダッシュパネル
13 フロアサイドフレーム
14 トンネルサイドフレーム
15 フロントサイドフレーム
20 フロントサブフレーム
30 排気装置
31 排気管
32 浄化装置
40 DC/DCコンバータ(高電圧部品)
42 CVハーネス
43 CV冷却水配管
50 インバータ(第2高電圧部品)
52 IVハーネス
53 IV冷却水配管
60 高電圧バッテリ
60R 右側高電圧バッテリ
60L 左側高電圧バッテリ
70 取付ブラケット
70U 上側ブラケット
70D 下側ブラケット
71 上内側取付部
71a 内区画面(内側壁部)
72 架設部(上壁部)
73a 外区画面(外側壁部)
75 底板部(下壁部)
80 ガイドブラケット
90 配管
91 配管ホルダー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11