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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】情報表示媒体、情報表示媒体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/06 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
B41M3/06 F
B41M3/06 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021054783
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2021154738
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2020058089
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 直孝
(72)【発明者】
【氏名】五十部 慎也
(72)【発明者】
【氏名】進藤 優
(72)【発明者】
【氏名】高岡 宏彰
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-187397(JP,A)
【文献】特開2019-214134(JP,A)
【文献】特開2015-189154(JP,A)
【文献】特開2020-044670(JP,A)
【文献】特開2013-188966(JP,A)
【文献】特開平11-028586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/00- 3/18
7/00- 9/04
B42D 15/02
25/00-25/485
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
突状の形態で情報が形成された情報表示媒体であって、
基材と、
前記基材の少なくとも一方面側に設けられる熱印加で発泡可能な樹脂層としての突状情報形成層とを有し、
前記突状情報形成層は、赤外線で反応する光熱変換材料を含有し、
前記突状情報形成層の所望の位置に形成させる情報の形状に沿った第1レーザ照射光によって層内を発泡させた形態で形成された突状の当該情報の、全面、頂部からその周辺領域、層面との境界領域、当該境界領域を含んだ層面上の周辺にかけた領域、突状の傾斜面から境界領域にかけた領域の何れかを第2レーザ照射光によって炭化させた視認強調部形成されていることを特徴とする情報表示媒体。
【請求項2】
突状の形態で情報が形成された情報表示媒体であって、
基材と、
前記基材の少なくとも一方面側に設けられる熱印加で発泡可能な樹脂層としての突状情報形成層とを有し、
前記突状情報形成層は、赤外線で反応する光熱変換材料を含有し、
前記突状情報形成層の所望の位置に形成させる情報の形状に沿った第1レーザ照射光によって層内を発泡させた形態で形成された突状の当該情報の全面の一部に前記突状の情報を第2レーザ照射光によって炭化させた炭化部形成され、
前記突状の情報には前記炭化部である網点が集合配置された領域あるいは前記炭化部自体である炭化部形成領域が形成されていることを特徴とする情報表示媒体。
【請求項3】
前記突状情報形成層の層面は前記突状の部分からその周囲に延在する平坦領域を有し、前記突状の部分から前記突状情報形成層の層面の前記平坦領域にわたって連続して形成された前記炭化部形成領域を有することを特徴とする請求項2に記載の情報表示媒体。
【請求項4】
前記炭化による色の濃度が互いに異なる前記炭化部形成領域有することを特徴とする請求項2または3に記載の情報表示媒体。
【請求項5】
前記網点の密度が互いに異なる前記炭化部形成領域有することを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の情報表示媒体。
【請求項6】
前記突状の部分は頂部に板状の前記基材と略平行に延在形成された頂面と、前記頂面に一部または全部が位置するように形成された前記炭化部形成領域とを有することを特徴とする請求項~5のいずれか1項に記載の情報表示媒体。
【請求項7】
前記光熱変換材料は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化タングステン化合物、六ホウ化物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の情報表示媒体。
【請求項8】
前記基材の一方面上に所定の情報が形成された印刷層が設けられ、前記印刷層上に熱印加で発泡可能な樹脂層としての前記突状情報形成層が設けられ、前記突状情報形成層が透明性を有していることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の情報表示媒体。
【請求項9】
板状の基材の少なくとも一方面側に設けられた熱印加で発泡可能な樹脂層としての突状情報形成層は、赤外線で反応する光熱変換材料を含有し、前記突状情報形成層に第1レーザ照射光を照射して前記樹脂層の層内を発泡させ前記樹脂層に前記基材とは逆側へ膨出する膨出部によって突状形態の情報を形成し、
次いで、突状の前記情報の全面の一部に前記突状の情報を第2レーザ照射光によって炭化させて炭化部を形成する、
ことを特徴とする情報表示媒体の製造方法。
【請求項10】
前記光熱変換材料は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化タングステン化合物、六ホウ化物からなる群から選択されることを特徴とする請求項9に記載の情報表示媒体の製造方法。
【請求項11】
前記基材の一方面上に所定の情報が形成された印刷層が設けられ、前記印刷層上に熱印加で発泡可能な樹脂層としての前記突状情報形成層が設けられ、前記突状情報形成層が透明性を有していることを特徴とする請求項9または10に記載の情報表示媒体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレジットカードやキャッシュカード等の突状に情報が形成された情報表示媒体、情報表示媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばクレジットカードなどでは、一方面上にカード情報(所有者情報)がいわゆるエンボス加工による浮彫形態で形成されているものが普及しているが、熱印加で発泡可能な樹脂層を用いて他方面に凹部を形成させずに突状の情報を形成させることも知られている。このような発泡形態で形成された突状の情報を視認容易とすることが望ましい。
【0003】
従来、樹脂層の発泡形態で情報を形成させる技術が、例えば特許文献1,2で知られている。特許文献1には、印刷版として使用され得るレリーフ構造を持つ合成素材で作られた多層式証明カードに関し、当該合成素材がレーザー光レコーダーの波長領域を吸収する素材であることが記載されている。また、特許文献2には、カードに関して、基材にレーザ照射により発熱する第1レーザ発熱層が積層され、当該第1レーザ発熱層に第1発泡層が積層され、当該第1発泡層に最表層としての表層が積層されるものであり、第1レーザ発熱層の発熱により第1発泡層が発泡して表層を突出部として形成させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭58-187397号公報
【文献】特開2013-188966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1,2のように発泡形態で情報等を形成させた場合、反り等の変形を防止することができるが、所定の情報を当該発泡形態で突出させて形成させると突出の高さによっては裾部分がなだらかとなって境界部分が視覚上あいまいで情報として視認しにくく媒体使用時の利便性に欠けるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は上記課題に鑑みなされたもので、発泡形態で形成された突状の情報を視認容易として利便性を向上させる情報表示媒体、情報表示媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、第1の発明では、突状の形態で情報が形成された情報表示媒体であって、基材と、前記基材の少なくとも一方面側に設けられる熱印加で発泡可能な樹脂層であり、所望の位置に形成させる情報の形状に沿った第1レーザ照射光によって層内を発泡させた形態で形成された突状の当該情報の、全面、頂部からその周辺領域、層面との境界領域、当該境界領域を含んだ層面上の周辺にかけた領域、突状の傾斜面から境界領域にかけた領域の何れかを第2レーザ照射光によって炭化させた視認強調部を形成させた突状情報形成層と、を有する構成とする。
第2の発明では、突状の形態で情報が形成された情報表示媒体であって、基材と、前記基材の少なくとも一方面側に設けられる熱印加で発泡可能な樹脂層であり、所望の位置に形成させる情報の形状に沿った第1レーザ照射光によって層内を発泡させた形態で形成された突状の当該情報の全面の一部に前記突状の情報を第2レーザ照射光によって炭化させた炭化部を形成させた突状情報形成層と、を有し、前記突状の情報には前記炭化部である網点が集合配置された領域あるいは前記炭化部自体である炭化部形成領域が形成されている構成とする。
前記突状情報形成層の層面は前記突状の部分からその周囲に延在する平坦領域を有し、前記突状の部分から前記突状情報形成層の層面の前記平坦領域にわたって連続して形成された前記炭化部形成領域を有していても良い。
上述の情報表示媒体は、前記炭化による色の濃度が互いに異なる前記炭化部形成領域、を有していても良い。
上述の情報表示媒体は、前記網点の密度が互いに異なる前記炭化部形成領域、を有していても良い。
上述の情報表示媒体は、前記突状の部分は頂部に板状の前記基材と略平行に延在形成された頂面と、前記頂面に一部または全部が位置するように形成された前記炭化部形成領域とを有していても良い。
第3の発明は、板状の基材の少なくとも一方面側に設けられた熱印加で発泡可能な樹脂層に第1レーザ照射光を照射して前記樹脂層の層内を発泡させ前記樹脂層に前記基材とは逆側へ膨出する膨出部によって突状形態の情報を形成し、次いで、突状の前記情報の全面の一部に前記突状の情報を第2レーザ照射光によって炭化させて炭化部を形成する、ことを特徴とする情報表示媒体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基材の少なくとも一方面側に熱印加で発泡可能な樹脂層としての突状情報形成層が設けられ、当該突状情報形成層の所望の位置に形成させる情報の形状に沿った第1レーザ照射光によって層内を発泡させた形態で形成された突状の当該情報の、全面、頂部からその周辺領域、層面との境界領域、当該境界領域を含んだ層面上の周辺にかけた領域、突状の傾斜面から境界領域にかけた領域の何れかを第2レーザ照射光によって炭化させた視認強調部を形成させた構成とすることにより、形成させた陰影部が発泡形態の突状情報を視覚上立体的など強調して視認させるために当該突状情報を視認容易として媒体使用時の利便性を向上させることができるものである。
また、本発明によれば、突状情報を第2レーザ照射光の照射によって炭化させた炭化部を突状情報の外面の一部に形成することで、情報表示媒体に炭化部が無い場合に比べて多くの情報を形成することが可能である。その結果、偽造防止効果の向上等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る情報表示媒体の構成図である。
図2図1の情報表示媒体の製造説明図である。
図3】本発明に係る情報表示媒体の他の部分構成図である。
図4】本発明に係る情報表示媒体であって、突状の部分から突状情報形成層の層面の平坦領域にわたって連続する炭化部が形成された構成について炭化部付近を示す平面図である。
図5図4の情報表示媒体の炭化部付近を示す斜視図である。
図6】本発明に係る情報表示媒体であって、突状情報の側面のみに炭化部が形成された構成について突状情報付近を示す斜視図である。
図7】本発明に係る情報表示媒体であって、突状情報の側面から突状情報形成層の層面にわたって延在する炭化部が形成された構成について炭化部付近を示す斜視図である。
図8】本発明に係る情報表示媒体であって、色の濃度が互いに異なる部分を有する炭化部が形成された突状情報の付近を示す斜視図である。
図9】本発明に係る情報表示媒体であって、突状情報に形成された平坦な頂面に炭化部が形成された構成について突状情報の付近を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図により説明する。
図1に、本発明に係る情報表示媒体の構成図を示す。図1(A)、(B)において、情報表示媒体11は、基材12の一方面上に所定の情報が形成された印刷層13が設けられ、当該印刷層13上に熱印加で発泡可能な樹脂層としての突状情報形成層14が設けられ、当該突状情報形成層14の所定位置に突状情報15が形成され、当該突状情報15に対し、層面との境界領域を炭化させた視認強調部16が形成されたものである。
【0011】
上記基材12は、例えば全体的に不透明な例えば白色の樹脂を主成分として例えば厚さ560μmのものであり、例えばポリカーボネート(PC)が使用されるが、他にポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PET-G)などの公知の不透明な樹脂が使用することも可能である。
【0012】
上記印刷層13は、所定の情報が単色または多色で印刷インキにより例えば厚さ2μm印刷された層である。上記突状情報形成層14は、赤外線で反応する光熱変換材料が含有されたポリカーボネート(PC)で例えば厚さ100~200μmの透明な層であり、所望の位置に形成させる情報の形状に沿った第1レーザ照射光によって層内で発泡させた形態で形成させた突状情報15の、層面との境界領域を第1レーザ照射光によって炭化させた視認強調部16を形成させたものである。上記光熱変換材料としては、例えば酸化インジウムスズ(ITO)、酸化タングステン化合物、六ホウ化物が挙げられ、公知のものである。
【0013】
上記境界領域とは、ここでは突状情報形成層14がレーザ光の照射で光熱変換材料が反応して発泡を開始するなだらかな部分より突状に盛り上がりを開始する領域とする。また、上記炭化とは、レーザ光の照射で光熱変換材料の熱で周囲の樹脂材料が黒化していくことであり、レーザ光の照射量に応じて黒色やグレイとすることができ、グレイは突状情報15の周辺の色に応じて濃淡で選択的に形成されるものである。
【0014】
なお、突状情報15はレーザ光の照射で形成させていることから、当該情報は可変情報として媒体ごとに異なる情報が形成可能である(媒体共通の情報であってもよい)。
【0015】
すなわち、情報表示媒体11は、図1(A)に示すように、表面上から突状情報形成層14が透明性を有していることから印刷層13の情報が目視され、当該突状情報形成層14に形成された突状情報15がその視認強調部16によって視覚上立体的に視認されるものである。
【0016】
そこで、図2に、図1の情報表示媒体の製造説明図を示し、情報表示媒体の製造方法を説明する。まず、図2(A)に示すように、基材12上に所定の情報を印刷インキで印刷して印刷層13を形成する。続いて、図2(B)に示すように、印刷層13上に例えば厚さ100~200μmの光熱変換材料を含有するPCの突状情報形成層14が例えば接着剤で接着されることで情報表示媒体の基体とさせる。
【0017】
そして、図2(C)に示すように、突状情報形成層14の所望の位置に形成させる突状情報15の形状に沿って、例えば出力50Wでの印加エネルギP1の第1レーザ照射光21Aを例えば画素数2000dpiで照射することにより、照射領域における層内の光熱変換材料が発熱することによって周囲の樹脂材料が発泡して突状に盛り上がり、突状形態の情報(突状情報15)が形成されることとなる。
【0018】
続いて、図2(D)に示すように、形成された突状情報15における個々の発泡部分の層面との境界領域に対し、例えば出力41Wでの印加エネルギP2の第2レーザ照射光21Bを例えば画素数600dpiで照射することにより、照射領域部分の光熱変換材料が発熱し、周囲の樹脂材料を黒色(ここでは黒色とするが、適宜所望の濃淡のグレイでもよい)に炭化させて視認強調部16を形成させることで図1(A)に示す情報表示媒体11とさせるものである。なお、上記発泡及び炭化のためのレーザ光の照射は、レーザ照射装置の機種に応じて設定されるものである。第1レーザ照射光21A及び第2レーザ照射光21Bは例えばYAGレーザーを好適に用いることができる。
【0019】
このように、形成させた視認強調部16が発泡形態の突状情報15を視覚上立体的など強調して目視させることができ、当該突状情報15を視認容易として媒体使用時の利便性を向上させることができるものである。
視認強調部は、突状情報15を含む突状情報形成層14への第2レーザ照射光21Bの照射によって形成した炭化部である。炭化部は、少なくとも突状情報形成層14の全面の一部に形成される。
【0020】
次に、図3に、本発明に係る情報表示媒体の他の部分構成図を示す。図3は、視認強調部16の各形成位置を示したもので、図3(A)は、形成された突状情報15における個々の発泡部分の境界領域を含んだ層面上の周辺にかけた領域とし、図3(B)は、形成された突状情報15における個々の発泡部分の突状の傾斜面から境界領域にかけた領域とし、図3(C)は、形成された突状情報15における個々の発泡部分の頂部からその周辺領域とし、図3(D)は、形成された突状情報15における個々の発泡部分の全面としたものである。このような視認強調部16の形成位置であっても発泡形態の突状情報15を視覚上立体的など強調して目視させることができるものである。
【0021】
本明細書において、突状情報15(突状の情報)は、突状情報形成層14の一部を第1レーザ照射光21Aの照射によって発泡させて基材12とは逆の側へ突出するように形成した膨出部である。
「層面」は突状情報形成層14の基材12とは逆側の面であり板状(平板状)の情報表示媒体11の片面を形成する。但し「層面」は突状情報形成層14の基材12とは逆の側に形成された突状情報15等の突部の外面を含まない。突状情報形成層14の層面は板状(平板状)の基材12に平行な平坦面(平坦領域)になっている。突状情報15は、突状情報形成層14の層面から基材12とは逆の側へ突出して形成される。
【0022】
突状情報15は、突状情報形成層14の層面から頂部側への離間距離が増大するにしたがい層面に沿う方向の断面(平断面)寸法が縮小するテーパ状に形成されている。
突状情報15の頂部の周囲には、頂部から突状情報形成層14の層面側へ行くにしたがって、突状情報形成層14層面に沿う方向において頂部からの離間距離が増大するように突状情報形成層14層面に対して傾斜する傾斜面が形成されている。
【0023】
突状情報15の傾斜面は、例えば、図3(A)~(D)に示すように、突状情報形成層14の層面から突状情報15頂部側への離間距離が増大するにしたがって突状情報形成層14層面に対する傾斜角度が増大する裾部領域と、裾部から突状情報15頂部側へ行くにしたがって突状情報形成層14層面に対する傾斜角度が減少する頂部周囲領域とを有する形態(変曲湾曲傾斜面)を採用できる。
【0024】
例えば図1(A)に示すように、突状情報形成層14層面に沿って細長く延在する突条状の突状情報15は、その延在方向に垂直の断面(図1(B)参照)における頂部の両側と、延在方向両端とに傾斜面を有する。この突状情報15は4箇所の傾斜面を有する。
【0025】
突状情報15の形状(上述のテーパ状)、傾斜面は、本発明に係る実施形態の突状情報15に共通して適用可能である。
【0026】
図4図5に例示した情報表示媒体11は、突状情報15から突状情報形成層14層面にわたって連続して形成された炭化部17を有する。
図4図5に例示した情報表示媒体11の炭化部17は、突状情報15外面を横断し且つ突状情報15からその両側の突状情報形成層14層面にわたって連続する帯状に形成されている。
【0027】
図6は炭化部17を突状情報15の傾斜面のみに形成した形態、図7は炭化部17を突状情報15の傾斜面からこの傾斜面に接する突状情報形成層14層面にわたって連続するように形成した形態である。
図7の炭化部17は、突状情報15についてはその傾斜面のみに形成されている。但し、図7の炭化部17は、突状情報15の傾斜面のみでなく、例えば突状情報15の頂部にも延在するように形成する等、突状情報15の外面全面における形成範囲に限定は無い。
【0028】
図4図5図7のように突状情報15から突状情報形成層14層面にわたって連続する炭化部17は、視認角度を変えることで見え方が異なる。このため、例えば、平板状の情報表示媒体11の面に垂直以外の方向からの炭化部17の見え方や、複数の視認角度での炭化部17の見え方を情報照合に利用でき、偽造防止効果を高めることができる。
【0029】
図6図7は、突状情報15自体が文字情報を形成しており、炭化部17も文字情報を形成している。図6図7は、突状情報15が形成する文字情報に加えて、炭化部17が形成する文字情報も情報照合に利用できるため、炭化部17が無い場合に比べて偽造防止効果を高めることができる。
【0030】
図8は、突状情報15の頂部に、炭化による色の濃度が互いに異なる領域(炭化部形成領域)17a~17cを複数形成したものである。
図8の各炭化部形成領域17a~17cはそれぞれ面状に形成されている。また、図8の各炭化部形成領域17a~17cはそれぞれ炭化部17に相当する。図8は、複数の炭化部形成領域17a~17cを隣り合う炭化部形成領域17a~17c同士が互いに接するようにして形成したものである。
図8の各炭化部形成領域17a~17cは、それぞれ突状情報15への第2レーザ照射光21Bの照射によって面方向の全体を色の濃度がほぼ均一に炭化させた領域(全面炭化領域)である。図8の各炭化部形成領域17a~17cは、それぞれ情報表示媒体11から離間した所から見たときに、面方向の全体にわたって色の濃度がほぼ均一に見える。
【0031】
炭化部形成領域は面状の炭化部17(全面炭化領域)に限定されず、帯状の炭化部17(例えば図6図7の炭化部17)、線状の炭化部、ドット状の炭化部であっても良い。炭化部形成領域は種々形状の炭化部を含む。
炭化部形成領域はドット状の炭化部である網点が多数集合配置された領域(網点形成領域)であっても良い。炭化部形成領域は、突状情報15のみに形成することに限定されず、突状情報15に加えて突状情報15から突状情報形成層14層面にわたって連続して延在するように形成しても良い。
【0032】
情報表示媒体11は図8の突状情報15の複数の炭化部形成領域17a~17cを全面炭化領域から網点形成領域に変更した構成も採用可能である。網点形成領域である各炭化部形成領域17a~17cは、情報表示媒体11から離間した所から見たときに、面方向の全体にわたって色の濃度がほぼ均一に見えるようにそれぞれ形成されている。網点形成領域である炭化部形成領域17a~17cは網点の密度を互いに異ならせることで色の濃度を互いに異ならせることができる。「網点の密度」は、突状情報15外面における単位面積当たりの網点の占める比率で算出される。個々の炭化部形成領域17a~17cの色の濃度は、網点のドットサイズ、単位面積当たりの網点のドット数、等によって設定できる。
網点形成領域17a~17cの色の濃度は、第2レーザ照射光21Bの出力調整によって網点を形成するドット自体の色の濃度を調整することで互いに異なるようにしても良い。
【0033】
情報表示媒体11は突状情報15外面に色の濃度が互いに異なる複数の炭化部形成領域が互いに離間させて形成された構成も採用可能である。
【0034】
図9(a)は、網点形成領域の例である。
図9(a)の網点形成領域18は突状情報15外面のみに形成されている。網点形成領域18の一端から他端に行くにしたがって網点のドットサイズが小さくなる(網点の密度が低下する)ことで、一端から他端に行くにしたがって色の濃度が連続的に薄くなるように見える構成となっている。
なお、突状情報15外面の網点形成領域18は、例えば一端から他端に行くにしたがって単位面積当たりの網点のドット数が減少(網点の密度が低下)することで、色の濃度が連続的に薄くなるように形成しても良い。
【0035】
図9(a)、(b)の突状情報15は頂部に板状の基材12と略平行に延在形成された頂面15aを有し、この頂面15aのみに炭化部形成領域(網点形成領域18)が形成されている。頂面15aは基材12と略平行に延在する実質的に平坦な面である。
突状情報15の頂面15aに形成された炭化部形成領域は、情報表示媒体11に垂直の方向から平面視したときに歪み無く視認でき、視認性を向上できる。
突状情報15の頂面15aに形成された炭化部形成領域は、網点形成領域18のほか、全面炭化領域、文字情報を形成するもの等、であっても良く、特に限定は無い。
炭化部形成領域は、突状情報15の頂面15aに加えて、突状情報15外面の頂面15a以外の領域に形成しても良い。
突状情報15の頂部に板状の基材12と略平行に延在する頂面15aが形成された構成、及び突状情報15の頂面15aに一部または全部が位置するように形成された炭化部形成領域を有する構成、は本発明に係る種々実施形態の情報表示媒体11の突状情報15に適用可能である。
【0036】
情報表示媒体11の突状情報15は、例えば、断面(突条状の場合は延在方向に垂直の断面)が突状情報形成層14層面からの突出高さ0.2mm程度、突状情報形成層14側の端における突状情報形成層14層面に平行の幅方向寸法1mm程度、の概略台形状あるいは部分円形状の突部に形成し得る。このようなサイズの突状情報15の外面に印刷によって文字情報等を精度良く形成することは容易でなく、特に突状情報15の傾斜面に印刷によって文字情報等を精度良く形成することは極めて困難である。
突状情報15に炭化部を形成する構成は、サイズが小さい突状情報15への文字情報等の微細な情報の形成を容易に実現でき、突状情報15の傾斜面への文字情報等の形成も容易である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の本発明の情報記録媒体は、クレジットカードやキャッシュカード等の突状に情報が形成された媒体の製造、販売、使用等の産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
11 情報表示媒体
12 基材
13 印刷層
14 突状情報形成層
15 突状情報
15a 頂面
16 視認強調部(炭化部)
17 炭化部
17a~17c 炭化部形成領域
18 炭化部形成領域(網点形成領域)
21A 第1レーザ照射光
21B 第2レーザ照射光
図1
図2
図3
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図9