(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】木質柱梁接合部の耐火構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
E04B1/94 K
E04B1/94 R
(21)【出願番号】P 2021056764
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2024-02-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 刊行物名:2020年度大会(関東)学術講演梗概集、建築デザイン発表梗概集、 発行日:2020年7月20日、 発行所:一般社団法人 日本建築学会、 該当ページ:第213~第214ページ
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 浩之
(72)【発明者】
【氏名】貞弘 雅晴
(72)【発明者】
【氏名】坂田 尚子
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 博則
(72)【発明者】
【氏名】辻 靖彦
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-196672(JP,A)
【文献】特開2017-053098(JP,A)
【文献】特開2016-211325(JP,A)
【文献】特開2022-063733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
E04B 1/26
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質柱と木質梁とが接合された木質柱梁接合部の耐火構造であって、
前記木質梁の下面を覆う第一耐火材と、
前記第一耐火材の下面を覆う第二耐火材と、
前記木質柱において前記木質梁が突き付けられている突付面を覆う第三耐火材と、
前記第三耐火材の、前記木質柱とは反対側の面を覆う第四耐火材と、
を有し、
前記第一耐火材及び前記第二耐火材と、前記木質柱、前記第三耐火材、及び前記第四耐火材との間、並びに、
前記第三耐火材及び前記第四耐火材と、前記木質梁、前記第一耐火材、及び前記第二耐火材との間、に空間を有しており、
前記木質梁の長手方向において、前記第一耐火材及び前記第二耐火材が存在しない領域に、前記第三耐火材又は前記第四耐火材の少なくとも一部が存在し、
前記木質柱の長手方向において、前記第三耐火材及び前記第四耐火材が存在しない領域に、前記第一耐火材又は前記第二耐火材の少なくとも一部が存在し、
前記木質柱の前記突付面と交差する側面を覆う第五耐火材により、前記空間の側面側が覆われていることを特徴とする木質柱梁接合部の耐火構造。
【請求項2】
請求項1に記載の木質柱梁接合部の耐火構造であって、
前記空間は、
前記第一耐火材と前記木質柱との間に位置する第一空間部と、前記第二耐火材と前記第三耐火材との間に位置する第二空間部とは、前記第一耐火材と前記第三耐火材との間に位置する第三空間部により互いに連通しており、
前記第三空間部と、前記第二耐火材と前記第四耐火材との間に位置する第四空間部とは、前記第二空間部により互いに連通していることを特徴とする木質柱梁接合部の耐火構造。
【請求項3】
請求項2に記載の木質柱梁接合部の耐火構造であって、
前記木質柱の長手方向において、
前記第三耐火材は、前記第四耐火材よりも前記木質梁側に突出しており、
前記第四耐火材の小口は、前記第一耐火材と対向しており、
前記第三耐火材の突出量は、前記第四耐火材の前記小口と前記第一耐火材との間隔よりも大きいことを特徴とする木質柱梁接合部の耐火構造。
【請求項4】
請求項3に記載の木質柱梁接合部の耐火構造であって、
前記木質柱の長手方向において、
前記第二耐火材の厚みは、前記第四耐火材の前記小口と前記第一耐火材との間隔よりも厚いことを特徴とする木質柱梁接合部の耐火構造。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の木質柱梁接合部の耐火構造であって、
前記木質梁の長手方向において、
前記第一耐火材は、前記第二耐火材よりも前記木質柱側に突出しており、
前記第二耐火材の小口は、前記第四耐火材と対向しており、
前記第一耐火材の突出量は、前記第二耐火材の前記小口と前記第四耐火材との間隔よりも大きいことを特徴とする木質柱梁接合部の耐火構造。
【請求項6】
請求項1に記載の木質柱梁接合部の耐火構造であって、
前記空間は、
前記第三耐火材と前記木質梁との間に位置する第五空間部と、前記第四耐火材と前記第一耐火材との間に位置する第六空間部とは、前記第三耐火材と前記第一耐火材との間に位置する第七空間部により互いに連通しており、
前記第七空間部と、前記第四耐火材と前記第二耐火材との間に位置する第八空間部とは、前記第六空間部により互いに連通していることを特徴とする木質柱梁接合部の耐火構造。
【請求項7】
請求項6に記載の木質柱梁接合部の耐火構造であって、
前記木質梁の長手方向において、
前記第一耐火材は、前記第二耐火材よりも前記木質柱側に突出しており、
前記第二耐火材の小口は、前記第三耐火材と対向しており、
前記第一耐火材の突出量は、前記第二耐火材の前記小口と前記第三耐火材との間隔よりも大きいことを特徴とする木質柱梁接合部の耐火構造。
【請求項8】
請求項7に記載の木質柱梁接合部の耐火構造であって、
前記木質梁の長手方向において、
前記第四耐火材の厚みは、前記第二耐火材の前記小口と前記第三耐火材との間隔よりも厚いことを特徴とする木質柱梁接合部の耐火構造。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の木質柱梁接合部の耐火構造であって、
前記木質柱の長手方向において、
前記第三耐火材は、前記第四耐火材よりも前記木質梁側に突出しており、
前記第四耐火材の小口は、前記第二耐火材と対向しており、
前記第三耐火材の突出量は、前記第四耐火材の前記小口と前記第二耐火材との間隔よりも大きいことを特徴とする木質柱梁接合部の耐火構造。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の木質柱梁接合部の耐火構造であって、
前記空間における、
前記木質梁の長手方向において最も狭い部位の幅は、前記木質柱及び前記木質梁を備える木質柱梁架構に外力が作用して当該木質柱梁架構が変形する際に前記木質梁の長手方向において想定すべき最大変位量より広く、
前記木質柱の長手方向において最も狭い部位の幅は、前記木質柱梁架構に外力が作用して当該木質柱梁架構が変形する際に前記木質柱の長手方向において想定すべき最大変位量より広いことを特徴とする木質柱梁接合部の耐火構造。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の木質柱梁接合部の耐火構造であって、
前記空間には、充填材は充填されていないことを特徴とする木質柱梁接合部の耐火構造。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の木質柱梁接合部の耐火構造であって、
前記第二耐火材の下側に設けられる第一仕上げ材と、前記第一仕上げ材との間に第九空間部を形成し前記第四耐火材の木質柱とは反対側に設けられる第二仕上げ材と、を有し、
前記第九空間部と前記木質梁との間には、前記第一耐火材及び前記第二耐火材が存在し、
前記第九空間部と前記木質柱との間には、前記第三耐火材及び前記第四耐火材が存在することを特徴とする木質柱梁接合部の耐火構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質柱梁接合部の耐火構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、木材で構成された構造部材の屋外側に耐火被覆層が設置されて耐火構造をなす木造建築物の外壁構造は知られている(例えば、特許文献1参照)。この外壁の耐火構造の耐火被覆層は、木材で構成された構造部材を火災の熱から保護するために、構造部材の表面に設けられており、複数の軽量気泡コンクリートパネルを突き付け接合してなる第1被覆層と、複数の不燃材料製パネルを突き付け接合してなる第2被覆層とが積層されて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
構造部材を火災の熱から保護するためには、火災時に火炎が直接構造部材に達しないように、上記従来の耐火構造のように、軽量気泡コンクリートパネルや不燃材料製パネル等の耐火板を突き付け接合し、できるだけ隙間無く覆うことが望ましい。しかしながら、木質の構造部材をなす柱や梁の周囲を耐火板で、隙間無く覆って接合すると、地震等により柱梁架構に揺れが生じて、柱と梁の接合部に変形が生じた際に、弾性を有しない柱と梁の耐火材が、互いに押圧して損傷させてしまう虞がある。さらに、柱梁の耐火材の相互の押圧によって生じる抵抗力が、あらかじめ構造計算に基づき設計された柱梁架構の構造耐力へ影響してしまい、構造材の材料強度等に基づいて計算された構造設計の精度を悪化させてしまう虞がある。
【0005】
例えば、水平方向に間隔を空けて配置された2本の柱間に梁が掛け渡されて門型に接合された柱梁接合部は、地震により揺れが生じると、各々の柱側の接合部において、柱と梁とがなす角度が、鋭角または鈍角をなすように変形が生じる。このとき、鋭角をなすように変形が生じた際に、梁の表面に設けられている耐火材の端が、柱の表面に設けられている耐火材を押圧し、めり込むなどして耐火材が損傷するという課題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、より高い耐火性能を備え、地震等により変形が生じても耐火材の損傷が生じ難い木質柱梁接合部の耐火構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため、本発明の木質柱梁接合部の耐火構造は、木質柱と木質梁とが接合された木質柱梁接合部の耐火構造であって、前記木質梁の下面を覆う第一耐火材と、前記第一耐火材の下面を覆う第二耐火材と、前記木質柱において前記木質梁が突き付けられている突付面を覆う第三耐火材と、前記第三耐火材の、前記木質柱とは反対側の面を覆う第四耐火材と、を有し、前記第一耐火材及び前記第二耐火材と、前記木質柱、前記第三耐火材、及び前記第四耐火材との間、並びに、前記第三耐火材及び前記第四耐火材と、前記木質梁、前記第一耐火材、及び前記第二耐火材との間、に空間を有しており、前記木質梁の長手方向において、前記第一耐火材及び前記第二耐火材が存在しない領域に、前記第三耐火材又は前記第四耐火材の少なくとも一部が存在し、前記木質柱の長手方向において、前記第三耐火材及び前記第四耐火材が存在しない領域に、前記第一耐火材又は前記第二耐火材の少なくとも一部が存在し、前記木質柱の前記突付面と交差する側面を覆う第五耐火材により、前記空間の側面側が覆われていることを特徴とする。
【0008】
このような木質柱梁接合部の耐火構造によれば、第一耐火材、及び、第二耐火材と、木質柱、第三耐火材、及び、第四耐火材との間、並びに、第三耐火材、及び、第四耐火材と、木質梁、第一耐火材、及び、第二耐火材との間、に空間を有しているので、たとえ地震等により木質の柱梁架構に変形が生じたとしても、第一耐火材、及び、第二耐火材はいずれも、木質柱、第三耐火材、及び、第四耐火材を押圧せず、また、第三耐火材、及び、第四耐火材はいずれも、木質梁、第一耐火材、及び、第二耐火材を押圧しない。このため、地震等により木質の柱梁架構に変形が生じたとしても、耐火材に損傷が生じることを防止することが可能である。
【0009】
また、木質梁の長手方向において、第一耐火材及び第二耐火材が存在しない領域には、第三耐火材又は第四耐火材の少なくとも一部が存在しているので、木質梁の下側にはいずれかの耐火材が存在する。このため、火災時に下方からの火炎に木質梁が直接晒されることを防止することができる。
【0010】
また、木質柱の長手方向において、第三耐火材及び第四耐火材が存在しない領域に、第一耐火材又は第二耐火材の少なくとも一部が存在しているので、木質柱の突付面側にはいずれかの耐火材が存在する。このため、火災時に木質柱の突付面側において、木質柱が火炎に直接晒されることを防止することができる。このため、より高い耐火性能を備えることが可能である。
【0011】
また、第一耐火材、及び、第二耐火材と、木質柱、第三耐火材、及び、第四耐火材との間、並びに、第三耐火材、及び、第四耐火材と、木質梁、第一耐火材、及び、第二耐火材との間の空間は、木質柱の側面を覆う第五耐火材により空間の側面側が覆われているので、側面側から火炎が空間に進入することを防止することができる。このため、更に高い防火性能を備えることが可能である。
【0012】
このように、地震等により変形が生じても、木質柱と木質梁の耐火材の突き付け部での耐火材同士の押圧や損傷が生じ難く、耐火性能が高い木質柱梁接合部の耐火構造を提供することが可能である。
【0013】
かかる木質柱梁接合部の耐火構造であって、前記空間は、前記第一耐火材と前記木質柱との間に位置する第一空間部と、前記第二耐火材と前記第三耐火材との間に位置する第二空間部とは、前記第一耐火材と前記第三耐火材との間に位置する第三空間部により互いに連通しており、前記第三空間部と、前記第二耐火材と前記第四耐火材との間に位置する第四空間部とは、前記第二空間部により互いに連通していることを特徴とする。
【0014】
このような木質柱梁接合部の耐火構造によれば、第一耐火材と木質柱との間に位置する第一空間部と、第二耐火材と第三耐火材との間に位置する第二空間部とは、木質柱の長手方向に間隔を空けて形成されるが、第一空間部と第二空間部とは、それらの間にて第一耐火材と第三耐火材との間に形成される第三空間部により連通される。また、第三空間部と、第二耐火材と第四耐火材との間に位置する第四空間部とは、木質柱の長手方向及び木質梁の長手方向に間隔を空けて形成されるが、第三空間部と第四空間部とは、それらの間に形成される第二空間部により連通される。このため、空間部は第二耐火材及び第四耐火材の表面側から木質柱及び木質梁に至るまで屈曲する階段状をなしている。このため、木質柱梁架構に作用する外力による木質柱の長手方向及び木質梁の長手方向の変位をいずれも吸収することが可能であり、且つ、火災時に木質柱及び木質梁が直接火炎に晒されることを抑制することが可能である。
【0015】
かかる木質柱梁接合部の耐火構造であって、前記木質柱の長手方向において、前記第三耐火材は、前記第四耐火材よりも前記木質梁側に突出しており、前記第四耐火材の小口は、前記第一耐火材と対向しており、前記第三耐火材の突出量は、前記第四耐火材の前記小口と前記第一耐火材との間隔よりも大きいことを特徴とする。
【0016】
このような木質柱梁接合部の耐火構造によれば、第四耐火材の小口と第一耐火材との間隔より、第三耐火材が第四耐火材よりも木質梁側に突出する突出量の方が大きいので、第四耐火材の小口と第一耐火材との間の空間と、木質柱との間には第三耐火材が存在する。このため、たとえ第四耐火材の小口と第一耐火材との間の空間に火炎が進入したとしても第三耐火材により木質柱が直接火炎に晒されることを防止することが可能である。
【0017】
かかる木質柱梁接合部の耐火構造であって、前記木質柱の長手方向において、前記第二耐火材の厚みは、前記第四耐火材の前記小口と前記第一耐火材との間隔よりも厚いことを特徴とする。
【0018】
このような木質柱梁接合部の耐火構造によれば、第一耐火材の下面を覆う第二耐火材の厚みが、第四耐火材の小口と第一耐火材との間隔よりも厚いので、第四耐火材の小口と第一耐火材との間の空間の木質柱とは反対側には、第二耐火材が存在している。このため、第四耐火材の小口と第一耐火材との間の空間に、木質柱側に向かって火炎が進入することをより確実に抑制することが可能である。
【0019】
かかる木質柱梁接合部の耐火構造であって、前記木質梁の長手方向において、前記第一耐火材は、前記第二耐火材よりも前記木質柱側に突出しており、前記第二耐火材の小口は、前記第四耐火材と対向しており、前記第一耐火材の突出量は、前記第二耐火材の前記小口と前記第四耐火材との間隔よりも大きいことを特徴とする。
【0020】
このような木質柱梁接合部の耐火構造によれば、第二耐火材の小口と第四耐火材との間隔より、第一耐火材が第二耐火材よりも木質柱側に突出する突出量の方が大きいので、第二耐火材の小口と第四耐火材との間の空間と、木質梁との間には第一耐火材が存在する。このため、たとえ第二耐火材の小口と第四耐火材との間の空間に火炎が進入したとしても第一耐火材により木質梁が直接火炎に晒されることを防止することが可能である。
【0021】
かかる木質柱梁接合部の耐火構造であって、前記空間は、前記第三耐火材と前記木質梁との間に位置する第五空間部と、前記第四耐火材と前記第一耐火材との間に位置する第六空間部とは、前記第三耐火材と前記第一耐火材との間に位置する第七空間部により互いに連通しており、前記第七空間部と、前記第四耐火材と前記第二耐火材との間に位置する第八空間部とは、前記第六空間部により互いに連通していることを特徴とする。
【0022】
このような木質柱梁接合部の耐火構造によれば、第三耐火材と木質梁との間に位置する第五空間部と、第四耐火材と第一耐火材との間に位置する第六空間部とは、木質梁の長手方向に間隔を空けて形成されるが、第五空間部と第六空間部とは、それらの間に形成される第七空間部により連通される。また、第七空間部と、第四耐火材と第二耐火材との間に位置する第八空間部とは、木質梁の長手方向及び木質柱の長手方向に間隔を空けて形成されるが、第七空間部と第八空間部とは、それらの間に形成される第六空間部により連通される。このため、空間部は第二耐火材及び第四耐火材の表面側から木質柱及び木質梁に至るまで屈曲する階段状をなしている。このため、木質柱梁架構に作用する外力による木質柱の長手方向及び木質梁の長手方向の変位をいずれも吸収することが可能であり、且つ、火災時に木質柱及び木質梁が直接火炎に晒されることを抑制することが可能である。
【0023】
かかる木質柱梁接合部の耐火構造であって、前記木質梁の長手方向において、前記第一耐火材は、前記第二耐火材よりも前記木質柱側に突出しており、前記第二耐火材の小口は、前記第三耐火材と対向しており、前記第一耐火材の突出量は、前記第二耐火材の前記小口と前記第三耐火材との間隔よりも大きいことを特徴とする。
【0024】
このような木質柱梁接合部の耐火構造によれば、第二耐火材の小口と第三耐火材との間隔より、第一耐火材が第二耐火材よりも木質柱側に突出する突出量の方が大きいので、第二耐火材の小口と第三耐火材との間の空間と、木質梁との間には第一耐火材が存在する。
このため、たとえ第二耐火材の小口と第三耐火材との間の空間に火炎が進入したとしても第一耐火材により木質梁が直接火炎に晒されることを防止することが可能である。
【0025】
かかる木質柱梁接合部の耐火構造であって、前記木質梁の長手方向において、前記第四耐火材の厚みは、前記第二耐火材の前記小口と前記第三耐火材との間隔よりも厚いことを特徴とする。
【0026】
このような木質柱梁接合部の耐火構造によれば、第三耐火材の、木質柱とは反対側の面を覆う第四耐火材の厚みが、第二耐火材の小口と第三耐火材との間隔よりも厚いので、第二耐火材の小口と第三耐火材との間の空間の下側には、第四耐火材が存在している。このため、第二耐火材の小口と第三耐火材との間の空間に、木質梁側に向かって火炎が進入することをより確実に抑制することが可能である。
【0027】
かかる木質柱梁接合部の耐火構造であって、前記木質柱の長手方向において、前記第三耐火材は、前記第四耐火材よりも前記木質梁側に突出しており、前記第四耐火材の小口は、前記第二耐火材と対向しており、前記第三耐火材の突出量は、前記第四耐火材の前記小口と前記第二耐火材との間隔よりも大きいことを特徴とする。
【0028】
このような木質柱梁接合部の耐火構造によれば、第四耐火材の小口と第二耐火材との間隔より、第三耐火材が第四耐火材よりも木質梁側に突出する突出量の方が大きいので、第四耐火材の小口と第二耐火材との間の空間と、木質柱との間には第三耐火材が存在する。このため、たとえ第四耐火材の小口と第二耐火材との間の空間に火炎が進入したとしても第三耐火材により木質柱が直接火炎に晒されることを防止することが可能である。
【0029】
かかる木質柱梁接合部の耐火構造であって、前記空間における、前記木質梁の長手方向において最も狭い部位の幅は、前記木質柱及び前記木質梁を備える木質柱梁架構に外力が作用して当該木質柱梁架構が変形する際に前記木質梁の長手方向において想定すべき最大変位量より広く、前記木質柱の長手方向において最も狭い部位の幅は、前記木質柱梁架構に外力が作用して当該木質柱梁架構が変形する際に外力が作用して変形する際に前記木質柱の長手方向において想定すべき最大変位量より広いことを特徴とする。
【0030】
このような木質柱梁接合部の耐火構造によれば、空間における、木質梁の長手方向において最も狭い部位の幅は、木質柱及び木質梁を備える木質柱梁架構に外力が作用して当該木質柱梁架構が変形する際に木質梁の長手方向において想定すべき最大変位量より広いので、地震等により木質柱梁架構に変形が生じても、木質梁の長手方向の変位を空間により吸収することができる。また、空間における、木質柱の長手方向において最も狭い部位の幅は、木質柱梁架構外力が作用して当該木質柱梁架構が変形する際に、木質柱の長手方向において想定すべき最大変位量より広いので、地震等により木質柱梁架構に変形が生じても、木質柱の長手方向の変位を空間により吸収することができる。このため、木質柱梁架構に外力が作用して木質柱梁架構が変形しても、木質柱と木質梁の耐火材の突き付け部での耐火材同士の押圧や損傷が生じることを、より確実に防止することが可能である。ここで、想定すべき最大変形量とは、たとえば、所定の耐震性能を確保するための設計計算上において、想定すべき木質柱梁架構の変形時における、木質柱の長手方向及び木質梁の長手方向の変位量として想定すべき変位量の最大値などを示している。
【0031】
かかる木質柱梁接合部の耐火構造であって、前記空間には、充填材は充填されていないことを特徴とする。
【0032】
このような木質柱梁接合部の耐火構造によれば、木質梁及び木質柱は、空間に進入した火炎に直接晒されないので、空間に充填材を充填する必要はない。このため、空間に充填する充填材、及び充填材を充填する作業にかかるコストを削減することが可能である。また、空間に充填材が充填されていないので、木質柱梁架構が変形する際に木質梁及び木質柱の挙動が充填材により規制されない。このため、地震等による木質柱梁架構の変形時に耐火材に損傷が生じることをより確実に防止することが可能である。
【0033】
かかる木質柱梁接合部の耐火構造であって、前記第二耐火材の下側に設けられる第一仕上げ材と、前記第一仕上げ材との間に第九空間部を形成し前記第四耐火材の木質柱とは反対側に設けられる第二仕上げ材と、を有し、前記第九空間部と前記木質梁との間には、前記第一耐火材及び前記第二耐火材が存在し、前記第九空間部と前記木質柱との間には、前記第三耐火材及び前記第四耐火材が存在することを特徴とする。
【0034】
このような木質柱梁接合部の耐火構造によれば、第二耐火材の下側に設けられる第一仕上げ材と、第四耐火材の木質柱とは反対側に設けられる第二仕上げ材との間に形成される第九空間部と木質梁との間、及び第九空間部と木質柱との間には、いずれも耐火材が存在するので、たとえ第一仕上げ材と第二仕上げ材との間の第九空間部に火炎が進入したとしても耐火材により木質梁及び木質柱が直接火炎に晒されることを防止することが可能である。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、より高い耐火性能を備え、地震等により変形が生じても耐火材の損傷が生じ難い木質柱梁接合部の耐火構造を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本実施形態の木質柱梁接合部の耐火構造を示す側面図である。
【
図2】本実施形態の木質柱梁接合部の耐火構造を示す平面図である。
【
図5】
図5(a)は、木質柱梁架構に1枚目の耐火ボードを取り付けた状態を示す側面図であり、
図5(b)は、
図5(a)におけるC1-C1断面図であり、
図5(c)は
図5(a)におけるC2-C2断面図である。
【
図7】
図7(a)は、木質柱梁架構に2枚目の耐火ボードを取り付けた状態を示す側面図であり、
図7(b)は、
図7(a)におけるE1-E1断面図であり、
図7(c)は、
図7(a)におけるE2-E2断面図である。
【
図9】
図9(a)は、木質柱梁架構に3枚目の耐火ボードを取り付けた状態を示す側面図であり、
図9(b)は、
図9(a)におけるG1-G1断面図であり、
図9(c)は、
図9(a)におけるG2-G2断面図である。
【
図13】本発明にかかる木質柱梁接合部の耐火構造の第一変形例を示す側面図である。である。
【
図14】本発明にかかる木質柱梁接合部の耐火構造の第二変形例を示す側面図である。である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の木質柱梁接合部の耐火構造を、図を用いて説明する。
【0038】
本実施形態においては、水平方向に間隔を隔てて立設されている2本の木質柱1の間に、水平に配置された木質梁2が掛け渡されており、当該木質梁2の長手方向における端面2aが、木質柱1の側面に突き付けられて接合されている木質柱梁架構3の木質柱梁接合部の耐火構造について説明する。
【0039】
木質柱梁架構3の木質梁2の両端部における木質柱1との接合部における耐火構造は、同一なので、ここでは、右側に位置する木質柱1と木質梁2との接合部の耐火構造を例に挙げて説明する。
本実施形態の木質柱梁架構3に用いられている木質柱1及び木質梁2は、断面が略矩形状をなし、同じ幅のLVL等の木質の部材で形成されている。
【0040】
図1、
図2に示すように、矩形状をなす木質柱1の各側面1a、1b、1c及び矩形状をなす木質梁2の下面2b及び両梁側面2cにはそれぞれ、たとえば強化石膏ボードなどでなる3枚の耐火材4、5が積層されており、最も表面側に設けられている耐火材4、5の表面に例えばスギ表面材等の仕上げ材6、7が設けられている。尚、木質梁2の上面は床スラブ8により覆われている。
【0041】
以下の説明において、木質柱梁架構3の入隅部において内側となり、木質柱1において木質梁2が突き付けられている側面(以下、突付面という)1aに重ねて取り付けられている3枚の耐火材4を、木質柱1側から順に柱内面第一ボード41、柱内面第二ボード42、柱内面第三ボード43、と称し、木質梁2の下面2bに重ねて取り付けられている3枚の耐火材5を、木質梁2側から順に梁下面第一ボード51、梁下面第二ボード52、梁下面第三ボード53と称して説明する。
【0042】
また、柱内面第三ボード43の表面に取り付けられている仕上げ材6を、柱内面仕上げ材61と称し、梁下面第三ボード53の下面に取り付けられている仕上げ材7を梁下面仕上げ材71と称する。ここで、梁下面第一ボード51が、木質梁2の下面2bを覆う第一耐火材に相当し、梁下面第二ボード52が第一耐火材の下面を覆う第二耐火材に相当する。また、柱内面第一ボード41が、木質柱1において木質梁2が突き付けられている突付面1aを覆う第三耐火材に相当し、第三耐火材の、木質柱1とは反対側の側面(以下、反対面という)1bを覆う第四耐火材に相当する。また、梁下面仕上げ材71が、第二耐火材の下側に設けられる第一仕上げ材に相当し、柱内面仕上げ材61が第一仕上げ材との間に第九空間部を形成し前記第四耐火材の木質梁1とは反対側に設けられる第二仕上げ材に相当する。
【0043】
以下の説明においては、各耐火材4、5及び、各仕上げ材6、7の外周の縁となる端面のうち、各耐火材4、5及び、各仕上げ材6、7が取り付けられた状態で、木質柱1の突付面1aまたは木質梁2の下面2bと対向する端面を小口と称し、そのほかの端面を、単に端面と称する。具体的には、柱内面第一ボード41、柱内面第二ボード42、柱内面第三ボード43において木質梁2の下面2bと対向する端面を小口41a、42a、43aとし、木質梁2の梁側面2cと同じ方向に向く端面を、単に端面41c、42c、43cと称し、梁下面第一ボード51、梁下面第二ボード52、梁下面第三ボード53において木質柱1の突付面1bと対向する端面を小口51a、52a、53aとし、木質梁2の梁側面2cと同じ方向に向く端面を、単に端面51c、52c、53cと称する。また、柱内面仕上げ材61において、木質梁2の下面2bと対向する端面を小口61aとし、木質梁2の梁側面2cと同じ方向に向く端面を、単に端面61cと称し、梁下面仕上げ材71において木質柱1の突付面1bと対向する端面を小口71aとし、木質梁2の梁側面2cと同じ方向に向く端面を、単に端面71cと称する。
【0044】
木質柱1の突付面1aとは反対側の反対面1bに重ねて取り付けられている3枚の耐火材4を、木質柱1側から順に柱外面第一ボード44、柱外面第二ボード45、柱外面第三ボード46と称し、柱外面第三ボード46の表面46aに取り付けられている仕上げ材6を、柱外面仕上げ材62と称する。また、木質柱1の突付面1aと直交する面をなす両側の側面(以下、直交側面という)1cに重ねて取り付けられている3枚の耐火材4を、木質柱1側から順に柱側面第一ボード47、柱側面第二ボード48、柱側面第三ボード49と称し、柱側面第三ボード49の表面に取り付けられている仕上げ材6を、柱側面仕上げ材63と称する。
【0045】
また、木質梁2の両側の側面(以下、梁側面という)2cに重ねて取り付けられている3枚の耐火材5を、木質梁2側から順に梁側面第一ボード54、梁側面第二ボード55、梁側面第三ボード56、とし、梁側面第三ボード56の表面56aに取り付けられている仕上げ材7を、梁側面仕上げ材72と称する。
【0046】
木質柱梁接合部における木質梁2の下面2b側に取り付けられている梁下面第一ボード51、梁下面第二ボード52、梁下面第三ボード53、及び、梁下面仕上げ材71は、
図3、
図4に示すように、いずれも各々の小口51a、52a、53a、71aが、木質梁2の端面2aが突き付けられている木質柱1の突付面1aと、木質梁2の長手方向に間隔を隔てた位置に配置されている。
【0047】
重ねて取り付けられた梁下面第一ボード51、梁下面第二ボード52、梁下面第三ボード53、及び、梁下面仕上げ材71の小口51a、52a、53a、71aと木質柱1の突付面1aとの間隔は、梁下面仕上げ材71の小口71aと木質柱1の突付面1aとの間隔が最も広く、木質梁2側に位置するにつれて段階的に間隔が狭くなり、木質梁2の下面2bに直接取り付けられている梁下面第一ボード51の小口51aと木質柱1の突付面1aとの間隔が最も狭くなっている。
【0048】
すなわち、梁下面第三ボード53は、梁下面仕上げ材71の小口71aよりも木質柱1側に突出しており、梁下面第二ボード52は、梁下面第三ボード53の小口53aよりも木質柱1側に突出しており、梁下面第一ボード51は、梁下面第二ボード52の小口52aよりも木質柱1側に突出している。
【0049】
木質柱梁接合部における木質柱1の突付面1a側に取り付けられている柱内面第一ボード41、柱内面第二ボード42、柱内面第三ボード43、及び、柱内面仕上げ材61は、いずれも各々の小口41a、42a、43a、61aが、木質梁2の下面2bと、木質柱1の長手方向に間隔を隔てた位置に配置されている。
【0050】
重ねて取り付けられた柱内面第一ボード41、柱内面第二ボード42、柱内面第三ボード43、及び、柱内面仕上げ材61の小口41a、42a、43a、50aと木質梁2の下面2bとの間隔は、柱内面仕上げ材61の小口61aと木質梁2の下面2bとの間隔が最も広く、木質柱1に近づくにつれて段階的に間隔が狭くなり、木質柱1の突付面1aに直接取り付けられている柱内面第一ボード41の小口41aと木質柱1の突付面1aとの間隔が最も狭くなっている。
【0051】
すなわち、柱内面第三ボード43は、柱内面仕上げ材61の小口61aよりも木質梁2側に突出しており、柱内面第二ボード42は、柱内面第三ボード43の小口43aよりも木質梁2側に突出しており、柱内面第一ボード41は、柱内面第二ボード42の小口42aよりも木質梁2側に突出している。
【0052】
柱内面第一ボード41と木質梁2の下面2bとの間には、木質柱梁架構3に外力が作用して当該木質柱梁架構3が変形する際に木質柱1の長手方向において想定すべき最大変位量より広い、例えば約5mmの間隔を有する間隙が設けられている。また、各耐火材4、5の厚みは、いずれも例えば21mmであり、梁下面第一ボード51の小口51aは、木質柱1に取り付けられた柱内面第一ボード41の、木質柱1とは反対側となる表面41bとの間には、木質柱梁架構3に外力が作用して当該木質柱梁架構3が変形する際に木質梁2の長手方向において想定すべき最大変位量より広い、例えば約5mmの間隔を有する間隙が設けられている。このため、梁下面第一ボード51の小口51aは、木質梁2側の部位が木質柱1の突付面1aと対向して突付面1aとの間に第一間隙S1を有し、梁下面第二ボード52側の部位が柱内面第一ボード41の表面41bと対向して柱内面第一ボード41の表面との間に第二間隙S2を有している。ここで、第一間隙S1は、梁下面第一ボード51の小口51aと木質柱1の突付面1aとが対向している部分のみの間に形成されている空間であり、
図4においては、木質梁2の長手方向に沿う長方形状の領域で示されている。また、第二間隙S2は、梁下面第一ボード51の小口51aと柱内面第一ボード41の表面41bとが対向している部分のみの間に形成されている空間であり、
図4においては、木質柱1の長手方向に沿う長方形状の領域で示されている。
【0053】
柱内面第一ボード41の表面41bに取り付けられている柱内面第二ボード42は、その小口42aが、梁下面第一ボード51の下面51bと、例えば約5mmの間隔を空けた位置に配置されて取り付けられている。このため、柱内面第二ボード42の小口42aは、木質柱1側の部位が木質梁2の下面2bと対向して当該下面2bとの間に間隙を有し、柱内面第三ボード43側の部位が梁下面第一ボード51の下面51bと対向して当該下面51bとの間に間隙を有している。
【0054】
梁下面第一ボード51の下面51bに取り付けられている梁下面第二ボード52は、その小口52aが、柱内面第二ボード42の表面42bと、例えば約5mmの間隔を空けた位置に配置されて取り付けられている。このため、梁下面第二ボード52の小口52aは、木質梁2側の部位が、柱内面第一ボード41の表面41bと対向して当該表面41bとの間に第三間隙S3を有し、梁下面第三ボード53側の部位が柱内面第二ボード42の表面42bと対向して当該表面42bとの間に第四間隙S4を有している。ここで、第三間隙S1は、梁下面第二ボード52の小口52aと柱内面第一ボード41の表面41bとが対向している部分のみの間に形成されている空間であり、
図4においては、木質梁2の長手方向に沿う長方形状の領域で示されている。また、第四間隙S4は、梁下面第二ボード52の小口52aと柱内面第二ボード42の表面42bとが対向している部分のみの間に形成されている空間であり、
図4においては、木質柱1の長手方向に沿う長方形状の領域で示されている。
【0055】
柱内面第二ボード42の表面42bに取り付けられている柱内面第三ボード43は、その小口43aが、梁下面第二ボード52の下面52bと、例えば約5mmの間隔を空けた位置に配置されて取り付けられている。このため、柱内面第三ボード43の小口43aは、木質柱1側の部位が梁下面第一ボード51の下面51bと対向して当該下面51bとの間に間隙を有し、柱内面仕上げ材61側の部位が梁下面第二ボード52の下面52bと対向して当該下面52bとの間に間隙を有している。
【0056】
梁下面第二ボード52の下面52bに取り付けられている梁下面第三ボード53は、その小口53aが、柱内面第三ボード43の表面43bと、例えば約5mmの間隔を空けた位置に配置されて取り付けられている。このため、梁下面第三ボード53の小口53aは、木質梁2側の部位が、柱内面第二ボード42の表面42bと対向して当該表面42bとの間に第五間隙S5を有し、梁下面仕上げ材71側の部位が柱内面第三ボード43の表面43bと対向して当該表面43bとの間に第六間隙S6を有している。
【0057】
柱内面第三ボード43の表面43bに取り付けられている柱内面仕上げ材61は、その小口61aが、梁下面第三ボード53の下面53bと、例えば約5mmの間隔を空けた位置に配置されて取り付けられている。このため、柱内面仕上げ材61の小口61aは、木質柱1側の部位が梁下面第二ボード52の下面52bと対向して当該下面52bとの間に間隙を有し、柱内面仕上げ材61の表面61b側の部位が梁下面第三ボード53の下面53bと対向して当該下面53bとの間に間隙を有している。
【0058】
梁下面第三ボード53の下面53bに取り付けられている梁下面仕上げ材71は、その小口71aが、柱内面仕上げ材61の表面61bと、例えば約5mmの間隔を空けた位置に配置されて取り付けられている。このため、梁下面仕上げ材71の小口71aは、木質梁2側の部位が、柱内面第三ボード43の表面43bと対向して当該表面43bとの間に第七間隙S7を有し、梁下面仕上げ材71の下面71b側の部位が柱内面仕上げ材61の表面61bと対向して当該表面61bとの間に第八間隙S8を有している。
【0059】
このように、木質柱梁接合部の入隅部には、木質柱1側に設けられている柱内面第一ボード41、柱内面第二ボード42、柱内面第三ボード43及び柱内面仕上げ材61と、木質梁2側に設けられている梁下面第一ボード51、梁下面第二ボード52、梁下面第三ボード53及び梁下面仕上げ材71と、の間に、第一間隙S1から第八間隙S8までが階段状に繋がって連通する空間Sが設けられている。尚、本実施形態においては、第一間隙S1、第三間隙S3、第五間隙S5、第七間隙S7における木質柱1の長手方向の幅L2及び第二間隙S2、第四間隙S4、第六間隙S6、第八間隙S8における木質梁2の長手方向の幅L4は、同一であり、空間Sにおいて木質柱1の長手方向及び木質梁2の長手方向において最も狭い部位に相当する。また、第三間隙S3における木質柱1の長手方向の幅L2が、第四耐火材の小口と第一耐火材との間隔に相当し、第四間隙S4における木質梁2の長手方向の幅L4が、第二耐火材の小口と第四耐火材との間隔に相当する。また、第八間隙S8が、第一仕上げ材と第二仕上げ材との間に形成される第九空間部に相当する。
【0060】
このため、木質梁2の長手方向において、第一耐火材をなす梁下面第一ボード51及び第二耐火材をなす梁下面第二ボード52が存在しない領域に、第三耐火材をなす柱内面第一ボード41又は第四耐火材をなす柱内面第二ボード42の少なくとも一部が存在し、木質柱1の長手方向において、第三耐火材をなす柱内面第一ボード41及び第四耐火材をなす柱内面第二ボード42が存在しない領域に、第一耐火材をなす梁下面第一ボード51又は第二耐火材をなす梁下面第二ボード52の少なくとも一部が存在している。
【0061】
ここで、第一間隙S1が第一耐火材と木質柱との間に位置する第一空間部に相当し、第三間隙S3が第二耐火材と第三耐火材との間に位置する第二空間部に相当し、第二間隙S2が第一耐火材と第三耐火材との間に位置する第三空間部に相当する。また、第四間隙S4が第二耐火材と第四耐火材との間に位置する第四空間部に相当する。
【0062】
本実施形態においては、空間Sにおいて、木質柱1の長手方向、及び、木質梁2の長手方向における最も狭い部位の幅を5mmとした例について説明したが、これに限らず、空間Sにおける、木質柱1の長手方向、及び、木質梁2の長手方向における最も狭い部位の幅は、木質柱梁架構3に例えば地震等の外力が作用して変形する際に、木質柱1の長手方向の変位量、及び、木質梁2の長手方向において想定すべき最大変位量より広く設定されていれば構わない。このとき想定すべき最大変位量は、たとえば、所定の耐震性能を確保するために許容しなければならない地震動により生じる木質柱の長手方向及び木質梁の長手方向の変位量として想定すべき変位量の最大値などである。
【0063】
図5(a)、
図5(b)に示すように、木質柱1の突付面1aを覆う柱内面第一ボード41、及び、木質柱1の反対面1bを覆う柱外面第一ボード44は、直交側面1cと隣り合う端面41c、44bが、直交側面1cと同一平面をなすように面一に設けられており、直交側面1cに直接取り付けられた柱側面第一ボード47は、直交側面1cと、柱内面第一ボード41、及び、柱外面第一ボード44において直交側面1cと隣り合う端面41c、44bとを覆うように取り付けられている。
【0064】
直交側面1cに取り付けられた柱側面第一ボード47は、柱内面第一ボード41の端面41cを覆っているので、柱内面第一ボード41の厚み分、木質柱1の突付面1aよりも内側(木質柱1とは反対側)に突出している。このため、木質梁2が木質柱1の突付面1aに突き付けられている部位では、
図5(c)に示すように、柱側面第一ボード47が、突付面1aより木質梁2側に突出して、突出している第一突出部47aが木質梁2の梁側面2cを覆っているが、柱側面第一ボード47は木質梁2とは接合されていない。
また、柱側面第一ボード47により、木質梁2の下面2bと、柱内面第一ボード41の小口41aとの間に形成された空間Sの側面側が覆われる。
【0065】
木質梁2の下面2bを覆う梁下面第一ボード51は、
図6に示すように、木質梁2の梁側面2cと隣り合う端面51cが、梁側面2cと同一平面をなすように面一に設けられており、梁側面2cに直接取り付けられた梁側面第一ボード54は、梁側面2cと、梁下面第一ボード51において梁側面2cと隣り合う端面51cとを覆うように取り付けられている。
【0066】
図5(c)に示すように、梁側面2cに直接取り付けられた梁側面第一ボード54は、木質柱1側の端面54bが、柱側面第一ボード47の端面47cと、木質梁2の長手方向に例えば約5mmの間隔を空けて配置され、梁側面第一ボード54と柱側面第一ボード47との間には空間をなす第一目地R1が設けられている。
【0067】
図7(a)、
図7(b)に示すように、柱内面第一ボード41の表面41bに取り付けられた柱内面第二ボード42、及び、柱外面第一ボード44の表面44aに取り付けられた柱外面第二ボード45は、柱側面第一ボード47の表面47bと隣り合う端面42c、45bが、柱側面第一ボード47の表面47bと同一平面をなすように面一に設けられており、柱側面第一ボード47に取り付けられた柱側面第二ボード48は、柱側面第一ボード47の表面47bと、柱内面第二ボード42、及び、柱外面第二ボード45の柱側面第一ボード47の表面47bと隣り合う端面42c、45bとを覆うように取り付けられている。
【0068】
柱側面第一ボード47に取り付けられた柱側面第二ボード48は、柱内面第二ボード42の端面42cを覆っているので、柱内面第一ボード41および柱内面第二ボード42の厚み分、木質柱1の突付面1aよりも内側に突出している。このため、木質梁2が木質柱1の突付面1aに突き付けられている部位では、
図7(c)に示すように、柱側面第二ボード48が、突付面1aより木質梁2側に突出して、突出している第二突出部48aが木質梁2の梁側面2cを覆っているが、柱側面第二ボード48も木質梁2とは接合されていない。
【0069】
また、柱側面第二ボード48により、木質梁2の下面2bと、柱内面第一ボード41の小口41aとの間から、梁下面第一ボード51の下面51bと、柱内面第二ボード42の小口42aとの間まで繋がっている空間Sの側面側が覆われる。
【0070】
梁下面第一ボード51の下面51bに取り付けられた梁下面第二ボード52は、
図8に示すように、梁側面第一ボード54の表面54aと隣り合う端面52cが、梁側面第一ボード54の表面54aと同一平面をなすように面一に設けられており、梁側面第一ボード54に取り付けられた梁側面第二ボード55は、梁側面第一ボード54の表面54aと、梁下面第二ボード52において梁側面第一ボード54の表面54aと隣り合う端面52cとを覆うように取り付けられている。
【0071】
図7(c)に示すように、梁側面第一ボード54に取り付けられた梁側面第二ボード55は、木質柱1側の端面55bが、柱側面第二ボード48の端面48cと、木質梁2の長手方向に例えば約5mmの間隔を空けて配置され、梁側面第二ボード55と柱側面第二ボード48との間には空間をなす第二目地R2が設けられている。
【0072】
図9(a)、
図9(b)に示すように、柱内面第二ボード42の表面42bに取り付けられた柱内面第三ボード43、及び、柱外面第二ボード45の表面45aに取り付けられた柱外面第三ボード46は、柱側面第二ボード48の表面48bと隣り合う端面43c、46bが、柱側面第二ボード48の表面48bと同一平面をなすように面一に設けられており、柱側面第二ボード48に取り付けられた柱側面第三ボード49は、柱側面第二ボード48の表面48bと、柱内面第二ボード42、及び、柱外面第二ボード45の柱側面第二ボード48の表面48bと隣り合う端面43c、46bを覆うように取り付けられている。
【0073】
柱側面第二ボード48に取り付けられた柱側面第三ボード49は、柱内面第三ボード43の端面43cを覆っているので、柱内面第一ボード41、柱内面第二ボード42および柱内面第三ボード43の厚み分、木質柱1の突付面1aよりも内側に突出している。このため、木質梁2が木質柱1の突付面1aに突き付けられている部位では、
図9(c)に示すように、柱側面第三ボード49が、突付面1aより木質梁2側に突出して、突出している第三突出部49aが木質梁2の梁側面2cを覆っているが、柱側面第三ボード49も木質梁2とは接合されていない。
【0074】
また、柱側面第三ボード49により、木質梁2の下面2bと、柱内面第一ボード41の小口41aとの間から、梁下面第二ボード52の下面52bと、柱内面第三ボード43の小口43aとの間まで繋がっている空間Sの側面側が覆われる。ここで、柱側面第一ボード47、柱側面第二ボード48、及び、柱側面第三ボード49が、木質柱1の突付面1aと交差する直交側面1cを覆い、空間Sの側面側を覆う第五耐火材に相当する。
【0075】
梁下面第二ボード52の下面52bに取り付けられた梁下面第三ボード53は、
図10に示すように、梁側面第二ボード55の表面55aと隣り合う端面53cが、梁側面第二ボード55の表面55aと同一平面をなすように面一に設けられており、梁側面第二ボード55に取り付けられた梁側面第三ボード56は、梁側面第二ボード55と、梁下面第三ボード53において梁側面第二ボード55の表面55aと隣り合う端面53cを覆うように取り付けられている。
【0076】
図9(c)に示すように、梁側面第二ボード55に取り付けられた梁側面第三ボード56は、木質柱1側の端面56bが、柱側面第三ボード49の端面49cと、木質梁2の長手方向に例えば約5mmの間隔を空けて配置され、梁側面第三ボード56と柱側面第三ボード49との間には空間をなす第三目地R3が設けられている。
【0077】
図1、
図11に示すように柱内面第三ボード43の表面43bに取り付けられた柱内面仕上げ材61、及び、柱外面第三ボード46の表面46aに取り付けられた柱外面仕上げ材62は、柱側面第三ボード49の表面49bと隣り合う端面61c、62aが、柱側面第三ボード49の表面49bと同一平面をなすように面一に設けられており、柱側面第三ボード49に取り付けられた柱側面仕上げ材63は、柱側面第三ボード49の表面49bと柱内面仕上げ材61、及び、柱外面仕上げ材62の柱側面第三ボード49の表面49bと隣り合う端面61c、62aを覆うように取り付けられている。
【0078】
柱側面第三ボード49に取り付けられた柱側面仕上げ材63は、柱内面仕上げ材61の端面61cを覆っているので、柱内面第一ボード41、柱内面第二ボード42、柱内面第三ボード43および柱内面仕上げ材61の厚み分、木質柱1の突付面1aよりも内側に突出している。このため、木質梁2が木質柱1の突付面1aに突き付けられている部位では、
図2に示すように、柱側面仕上げ材63が、突付面1aより木質梁2側に突出して、突出している第四突出部63aが木質梁2の梁側面2cを覆っているが、柱側面仕上げ材63も木質梁2とは接合されていない。
【0079】
また、柱内面仕上げ材61により、木質梁2の下面2bと、柱内面第一ボード41の小口41aとの間から、梁下面第三ボード53の下面53bと、柱内面仕上げ材61の小口61aとの間まで繋がっている空間Sの側面側が覆われる。
【0080】
梁下面第三ボード53の下面53bに取り付けられた梁下面仕上げ材71は、
図12に示すように、梁側面第三ボード56の表面56aと隣り合う端面71cが、梁側面第三ボード56の表面56aと同一平面をなすように面一に設けられており、梁側面第三ボード56に取り付けられた梁側面仕上げ材72は、梁側面第三ボード56と、梁下面仕上げ材71において梁側面第三ボード56の表面56aと隣り合う端面71cとを覆うように取り付けられている。
【0081】
図2に示すように、梁側面第三ボード56に取り付けられた梁側面仕上げ材72は、木質柱1側の端面72aが、柱側面仕上げ材63の端面63bと、木質梁2の長手方向に例えば約5mmの間隔を空けて配置され、梁側面仕上げ材72と柱側面仕上げ材63との間には空間をなす第四目地R4が設けられている。
【0082】
梁側面第一ボード54と柱側面第一ボード47との間に形成された第一目地R1は、木質梁2の梁側面2cと、柱側面第一ボード47の表面47bに取り付けられている柱側面第二ボード48により塞がれている。梁側面第二ボード55と柱側面第二ボード48との間に形成された第二目地R2は、梁側面第一ボード54の表面54aと、柱側面第二ボード48の表面48bに取り付けられている柱側面第三ボード49により塞がれている。梁側面第三ボード56と柱側面第三ボード49との間に形成された第三目地R3は、梁側面第二ボード55の表面55aと、柱側面第三ボード49の表面49bに取り付けられている柱側仕上げ材63により塞がれている。梁側面仕上げ材72と柱側面仕上げ材63との間に形成された第四目地R4は、木質梁2側が梁側面第三ボード56の表面56aにより塞がれている。このため、木質梁2の梁側面2c側に形成されたいずれの目地R1、R2、R3、R4も、木質梁の幅方向に繋がっていない。
【0083】
本発明に係る木質柱梁接合部の耐火構造は、木質柱1と木質梁2とが接合された木質柱梁接合部の耐火構造であって、前記木質梁2の下面2bを覆う梁下面第一ボード(第一耐火材)51と、前記梁下面第一ボード(第一耐火材)51の下面51bを覆う梁下面第二ボード(第二耐火材)52と、前記木質柱1において前記木質梁2が突き付けられている突付面1aを覆う柱内面第一ボード(第三耐火材)41と、前記柱内面第一ボード(第三耐火材)41の表面(前記木質柱1とは反対側の面)41bを覆う柱内面第二ボード(第四耐火材)42と、を有し、前記梁下面第一ボード(第一耐火材)51及び前記梁下面第二ボード(第二耐火材)52と、前記木質柱1、前記柱内面第一ボード(第三耐火材)41、及び前記柱内面第二ボード(第四耐火材)42との間、並びに、前記柱内面第一ボード(第三耐火材)41及び前記柱内面第二ボード(第四耐火材)42と、前記木質梁2、前記梁下面第一ボード(第一耐火材)51、及び前記梁下面第二ボード(第二耐火材)52との間、に空間Sを有しており、前記木質梁2の長手方向において、前記梁下面第一ボード(第一耐火材)51及び前記梁下面第二ボード(第二耐火材)52が存在しない領域に、前記柱内面第一ボード(第三耐火材)41又は前記柱内面第二ボード(第四耐火材)42の少なくとも一部が存在し、前記木質柱1の長手方向において、前記柱内面第一ボード(第三耐火材)41及び前記柱内面第二ボード(第四耐火材)42が存在しない領域に、前記梁下面第一ボード(第一耐火材)51又は前記梁下面第二ボード(第二耐火材)52の少なくとも一部が存在し、前記木質柱1の前記直交側面(突付面1aと交差する側面)1cを覆う柱側面第一ボード(第五耐火材)47、柱側面第二ボード(第五耐火材)48により、前記空間Sの側面側が覆われている。
【0084】
また、前記空間Sは、前記梁下面第一ボード(第一耐火材)51と前記木質柱1との間に位置する第一間隙(第一空間部)S1と、前記梁下面第二ボード(第二耐火材)52と前記柱内面第一ボード(第三耐火材)41との間に位置する第三間隙(第二空間部)S3とが、前記梁下面第一ボード(第一耐火材)51と前記柱内面第一ボード(第三耐火材)41との間に位置する第二間隙(第三空間部)S2により互いに連通しており、前記第二間隙(第三空間部)S2と、前記梁下面第二ボード(第二耐火材)52と前記柱内面第二ボード(第四耐火材)42との間に位置する第四間隙(第四空間部)S4とが、前記第三間隙(第二空間部)S3により互いに連通している。
【0085】
また、前記木質柱1の長手方向において、前記柱内面第一ボード(第三耐火材)41は、前記柱内面第二ボード(第四耐火材)42よりも前記木質梁2側に突出しており、前記柱内面第二ボード(第四耐火材)42の小口42aは、前記梁下面第一ボード(第一耐火材)51と対向しており、前記柱内面第一ボード(第三耐火材)41の突出量L1は、前記柱内面第二ボード(第四耐火材)42の前記小口42aと前記梁下面第一ボード(第一耐火材)51との間隔L2よりも大きい構成となっている。
【0086】
また、前記木質柱1の長手方向において、前記梁下面第二ボード(第二耐火材)52の厚みt1は、前記柱内面第二ボード(第四耐火材)42の前記小口42aと前記梁下面第一ボード(第一耐火材)51との間隔L2よりも厚い構成となっている。
【0087】
また、前記木質梁2の長手方向において、前記梁下面第一ボード(第一耐火材)51は、前記梁下面第二ボード(第二耐火材)52よりも前記木質柱1側に突出しており、前記梁下面第二ボード(第二耐火材)52の小口52aは、前記柱内面第二ボード(第四耐火材)42と対向しており、前記梁下面第一ボード(第一耐火材)51の突出量L3は、前記梁下面第二ボード(第二耐火材)52の前記小口52aと前記柱内面第二ボード(第四耐火材)42との間隔L4よりも大きい構成となっている。
【0088】
また、前記空間Sにおける、前記木質梁2の長手方向において最も狭い部位の幅L4は、前記木質柱1及び前記木質梁2を備える木質柱梁架構3に外力が作用して当該木質柱梁架構3が変形する際に前記木質梁2の長手方向において想定すべき最大変位量より広く、前記木質柱1の長手方向において最も狭い部位の幅L2は、前記木質柱梁架構3に外力が作用して当該木質柱梁架構3が変形する際に前記木質柱1の長手方向において想定すべき最大変位量より広く設定されている。
【0089】
また、前記空間Sには、充填材は充填されていない。
また、また、前記梁下面第二ボード(第二耐火材)52の下側に設けられる梁下面仕上げ材(第一仕上げ材)71と、前記梁下面仕上げ材(第一仕上げ材)71との間に第八間隙(第九空間部)S8を形成し前記柱内面第二ボード(第四耐火材)42の木質柱1とは反対側に設けられる柱内面仕上げ材(第二仕上げ材)61と、を有し、前記第八間隙(第九空間部)S8と前記木質梁2との間には、前記梁下面第一ボード(第一耐火材)51及び前記梁下面第二ボード(第二耐火材)52が存在し、前記第八間隙(第九空間部)S8と前記木質柱1との間には、前記柱内面第一ボード(第三耐火材)41及び前記柱内面第二ボード(第四耐火材)42が存在している。
【0090】
本実施形態に係る木質柱梁接合部の耐火構造によれば、梁下面第一ボード51、梁下面第二ボード52、及び、梁下面第三ボード53と、木質柱1、柱内面第一ボード41、柱内面第二ボード42、及び、柱内面第三ボード43との間、並びに、柱内面第一ボード41、柱内面第二ボード42、及び、柱内面第三ボード43と、木質梁2、梁下面第一ボード51、梁下面第二ボード52、及び、梁下面第三ボード53との間、に空間Sを有しているので、例え地震等により木質柱梁架構3に変形が生じたとしても、梁下面第一ボード51、梁下面第二ボード52、及び、梁下面第三ボード53はいずれも、木質柱1、柱内面第一ボード41、柱内面第二ボード42、及び、柱内面第三ボード43を押圧せず、また、柱内面第一ボード41、柱内面第二ボード42、及び、柱内面第三ボード43はいずれも、木質梁2、梁下面第一ボード51、梁下面第二ボード52、及び、梁下面第三ボード53を押圧しない。このため、地震等により木質柱梁架構3に変形が生じたとしても、耐火材4(41、42、43)、5(51、52、53)同士による押圧及び損傷が生じることを防止することが可能である。
【0091】
また、木質梁2の長手方向において、梁下面第一ボード51、梁下面第二ボード52、及び、梁下面第三ボード53が存在しない領域には、柱内面第一ボード41、柱内面第二ボード42、及び、柱内面第三ボード43の少なくとも一部が存在しているので、木質梁2の下側にはいずれかの耐火材4(41、42、43)、5(51、52、53)が存在する。このため、火災時に下方からの火炎に木質梁2が直接晒されることを防止することができる。
【0092】
また、木質柱1の長手方向において、柱内面第一ボード41、柱内面第二ボード42、及び、柱内面第三ボード43が存在しない領域に、梁下面第一ボード51、梁下面第二ボード52、及び、柱内面第三ボード53の少なくとも一部が存在しているので、木質柱1の突付面1a側にはいずれかの耐火材4(41、42、43)、5(51、52、53)が存在する。このため、火災時に木質柱1の突付面1a側からの火炎に木質柱1が直接晒されることを防止することができる。このため、より高い耐火性能を備えることが可能である。
【0093】
また、梁下面第一ボード51、梁下面第二ボード52、及び、梁下面第三ボード53と、木質柱1、柱内面第一ボード41、柱内面第二ボード42、及び、柱内面第三ボード43との間、並びに、柱内面第一ボード41、柱内面第二ボード42、及び、柱内面第三ボード43と、木質梁2、梁下面第一ボード51、梁下面第二ボード52、及び、梁下面第三ボード53との間の空間Sは、木質柱1の直交側面1cを覆う柱側面第一ボード47、柱側面第二ボード48、及び、柱側面第三ボード49により空間Sの直交側面1c側が覆われているので、直交側面1c側から火炎が空間Sに進入することを防止することができる。このため、更に高い防火性能を備えることが可能である。
【0094】
このように、地震等により変形が生じても耐火材4、5の押圧による損傷が生じ難くく耐火性が高い木質柱梁接合部の耐火構造を提供することが可能である。
【0095】
また、梁下面第一ボード51と木質柱1との間に位置する第一間隙S1と、梁下面第二ボード52と柱内面第一ボード41との間に位置する第三間隙S3とは、木質柱1の長手方向に間隔を空けて形成されるが、第一間隙S1と第三間隙S3とは、それらの間にて梁下面第一ボード51と柱内面第一ボード41との間に形成される第二間隙S2により連通される。また、第二間隙S2と、梁下面第二ボード52と柱内面第二ボード42との間に位置する第四間隙S4とは、木質柱1の長手方向及び木質梁2の長手方向に間隔を空けて形成されるが、第二間隙S2と第四間隙S4とは、それらの間に形成される第三間隙S3により連通される。このため、空間Sは梁下面第二ボード52及び柱内面第二ボード42の表面52b、42b側から木質柱1及び木質梁2に至るまで屈曲する階段状をなしている。このため、木質柱梁架構3における、木質柱1の長手方向及び木質梁2の長手方向の変位をいずれも吸収することが可能であり、且つ、火災時に木質柱1及び木質梁2が直接火炎に晒されることを抑制することが可能である。
【0096】
また、第四間隙S4と、梁下面第三ボード53と柱内面第三ボード43との間に位置する第六間隙S6とは、木質柱1の長手方向及び木質梁2の長手方向に間隔を空けて形成されるが、第四間隙S4と第六間隙S6とは、それらの間にて梁下面第三ボード53と柱内面第二ボード42との間に形成される第五間隙S5により連通される。さらに、第五間隙S5と、梁下面仕上げ材71と柱内面第三ボード43との間に位置する第七間隙S7とは、木質柱1の長手方向に間隔を空けて形成されるが、第五間隙S5と第七間隙S7とは、それらの間に形成される第六間隙S6により連通される。このように、木質柱1及び木質梁2に重ねる耐火材の枚数を増やすことにより、階段状をなす空間Sを長く設けることができるので、火災時に木質柱1及び木質梁2が直接火炎に晒されることをより確実に抑制することが可能である。
【0097】
また、柱内面第二ボード42の小口42aと梁下面第一ボード51との間隔L2より、柱内面第一ボード41が柱内面第二ボード42よりも木質梁2側に突出する突出量L1の方が大きいので、柱内面第二ボード42の小口42aと梁下面第一ボード51との間の空間と、木質柱1との間には柱内面第一ボード41が存在する。このため、たとえ空間Sに火炎が進入したとしても柱内面第一ボード41により木質柱1が直接火炎に晒されることを防止することが可能である。
【0098】
また、梁下面第一ボード51の下面51bを覆う梁下面第二ボード52の厚みt1が、柱内面第二ボード42の小口42aと梁下面第一ボード51との間隔L2よりも厚いので、柱内面第二ボード42の小口42aと梁下面第一ボード51との間の空間の木質柱1とは反対側には、梁下面第二ボード52が存在している。このため、柱内面第二ボード42の小口42aと梁下面第一ボード51との間の空間に、木質柱1側に向かって火炎が進入することをより確実に抑制することが可能である。
【0099】
また、梁下面第二ボード52の小口52aと柱内面第二ボード42との間隔L4より、梁下面第一ボード51が梁下面第二ボード52よりも木質柱1側に突出する突出量L3の方が大きいので、梁下面第二ボード52の小口52aと柱内面第二ボード42との間の空間と、木質梁2との間には梁下面第一ボード51が存在する。このため、たとえ梁下面第二ボード52の小口52aと柱内面第二ボード42との間の空間に火炎が進入したとしても梁下面第一ボード51により木質梁2が直接火炎に晒されることを防止することが可能である。
【0100】
また、空間Sにおける、木質梁2の長手方向において最も狭い部位の幅L4を、木質柱1及び木質梁2を備える木質柱梁架構3に例えば地震等の外力が作用して変形する際に、木質梁2の長手方向において想定すべき最大変位量より大きく設定しているので、地震等により木質柱梁架構3に変形が生じても、木質梁2の長手方向の変位を空間Sにより吸収することができる。また、空間Sにおける、木質柱1の長手方向において最も狭い部位の幅L2を、木質柱梁架構3に例えば地震等の外力が作用して変形する際に、木質柱1の長手方向において想定すべき最大変位量より大きく設定しているので、地震等により木質柱梁架構3に変形が生じても、木質柱1の長手方向の変位を空間Sにより吸収することができる。このため、耐火材4、5に損傷が生じることをより確実に防止することが可能である。
【0101】
また、木質柱1及び木質梁2は、火炎が空間Sに進入しても火炎に直接晒されず、また、目地R1~R3には火炎が進入しないので、空間S及び目地R1~R3に充填材を充填する必要はない。このため、空間S及び目地R1~R3に充填する充填材、バックアップ材、及び、バックアップ材を装着した後に充填材を充填する作業にかかるコストを削減することが可能である。また、空間S及び目地R1~R3に充填材が充填されていないので、木質柱梁架構3が変形する際に木質柱1及び木質梁2の挙動が充填材により規制されない。このため、地震等による木質柱梁架構3の変形時に耐火材4(41、42、43)、5(51、52、53)が損傷することをより確実に防止することが可能である。尚、本実施形態においては、空間S及び目地R1~R3に充填材を充填しない例について説明したが、空間S及び目地R1~R3のいずれかの位置に充填材を充填しても構わない。
【0102】
また、梁下面第二ボード52の下側に設けられている梁下面仕上げ材71と、柱内面第二ボード42の木質柱1とは反対側に設けられている柱内面仕上げ材61との間に形成される第八間隙S8と木質梁2との間、及び、第八間隙S8と木質柱1との間には、いずれも耐火材4(41、42、43)、5(51、52、53)が存在するので、たとえ梁下面仕上げ材71と柱内面仕上げ材61との間の第八間隙S8に火炎が進入したとしても少なくともいずれかの耐火材4(41、42、43)、5(51、52、53)により木質柱1及び木質梁2が直接火炎に晒されることを防止することが可能である。
【0103】
上記実施形態においては、
図4に示すように、木質柱1側に設けられた耐火材4(41、42、43)の一部が、木質梁2の下側に設けられた耐火材5(51、52、53)の小口51a、52a、53aと木質柱1との間に位置して階段状の空間Sが形成されている例について説明したが、これに限るものではない。例えば、
図13に示すように、木質梁2の下側に設けられた耐火材5(51、52、53)の一部が、木質柱1側に設けられた耐火材4(41、42、43)の小口41a、42a、43aと木質梁2との間に位置して階段状の空間Sが形成されていても構わない。
【0104】
図13に示す第一変形例の場合には、梁下面第一ボード51と木質柱1の突付面1aとの間には、例えば約5mmの間隔を有する間隙が設けられている。また、柱内面第一ボード41の小口41aは、木質梁2に取り付けられた梁下面第一ボード51の下面51bと例えば約5mmの間隔を有する間隙が設けられている。このため、柱内面第一ボード41の小口41aは、木質柱1側の部位が木質梁2の下面2bと対向して下面2bとの間に第九間隙S9を有し、柱内面第二ボード42側の部位が梁下面第一ボード51の下面51bと対向して梁下面第一ボード51の下面51bとの間に第十間隙S10を有している。ここで、第九間隙S9は、柱内面第一ボード41の小口41aと木質梁2の下面2bとが対向している部分のみの間に形成されている空間であり、
図13においては、木質柱1の長手方向に沿う長方形状の領域で示されている。また、第十間隙S10は、柱内面第一ボード41の小口41aと梁下面第一ボード51の下面51bとが対向している部分のみの間に形成されている空間であり、
図13においては、木質梁2の長手方向に沿う長方形状の領域で示されている。
【0105】
梁下面第一ボード51の下面51bに取り付けられている梁下面第二ボード52は、その小口52aが、柱内面第一ボード41の表面41bと、例えば約5mmの間隔を空けた位置に配置されて取り付けられている。このため、梁下面第二ボード52の小口52aは、木質梁2側の部位が木質柱1の下面2bと対向して当該下面2bとの間に間隙を有し、梁下面第三ボード53側の部位が柱内面第一ボード41の表面41bと対向して当該表面41bとの間に間隙を有している。
【0106】
柱内面第一ボード41の表面41bに取り付けられている柱内面第二ボード42は、その小口42aが、梁下面第二ボード52の下面52bと、例えば約5mmの間隔を空けた位置に配置されて取り付けられている。このため、柱内面第二ボード42の小口42aは、木質柱1側の部位が、梁下面第一ボード51の下面51bと対向して当該下面51bとの間に第十一間隙S11を有し、柱内面第三ボード43側の部位が梁下面第二ボード52の下面52bと対向して当該下面52bとの間に第十二間隙S12を有している。ここで、第十一間隙S11は、柱内面第二ボード42の小口42aと梁下面第二ボード52の下面52bとが対向している部分のみの間に形成されている空間であり、
図13においては、木質柱1の長手方向に沿う長方形状の領域で示されている。また、第十二間隙S12は、柱内面第二ボード42の小口42aと梁下面第二ボード52の下面52bとが対向している部分のみの間に形成されている空間であり、
図13においては、木質梁2の長手方向に沿う長方形状の領域で示されている。
【0107】
梁下面第二ボード52の下面52bに取り付けられている梁下面第三ボード53は、その小口53aが、柱内面第二ボード42の表面42bと、例えば約5mmの間隔を空けた位置に配置されて取り付けられている。このため、梁下面第三ボード53の小口53aは、木質梁2側の部位が柱内面第一ボード41の表面41bと対向して当該表面41bとの間に間隙を有し、梁下面仕上げ材71側の部位が柱内面第二ボード42の表面42bと対向して当該表面42bとの間に間隙を有している。
【0108】
柱内面第二ボード42の表面42bに取り付けられている柱内面第三ボード43は、その小口43aが、梁下面第三ボード53の下面53bと、例えば約5mmの間隔を空けた位置に配置されて取り付けられている。このため、柱内面第三ボード43の小口43aは、木質柱1側の部位が、梁下面第二ボード52の下面52bと対向して当該下面52bとの間に第十三間隙S13を有し、柱内面仕上げ材61側の部位が梁下面第三ボード53の下面53bと対向して当該下面53bとの間に第十四間隙S14を有している。
【0109】
梁下面第三ボード53の下面53bに取り付けられている梁下面仕上げ材71は、その小口71aが、柱内面第三ボード43の表面43bと、例えば約5mmの間隔を空けた位置に配置されて取り付けられている。このため、梁下面仕上げ材71の小口71aは、木質梁2側の部位が柱内面第二ボード42の表面42bと対向して当該表面42bとの間に間隙を有し、梁下面仕上げ材71の下面71b側の部位が柱内面第三ボード43の表面43bと対向して当該表面43bとの間に間隙を有している。
【0110】
柱内面第三ボード43の表面43bに取り付けられている柱内面仕上げ材61は、その小口61aが、梁下面仕上げ材71の下面71bと、例えば約5mmの間隔を空けた位置に配置されて取り付けられている。このため、柱内面仕上げ材61の小口61aは、木質柱1側の部位が、梁下面第三ボード53の下面53bと対向して当該下面53bとの間に第十五間隙S15を有し、柱内面仕上げ材61の表面61b側の部位が梁下面仕上げ材71の下面71bと対向して当該下面71bとの間に第十六間隙S16を有している。
【0111】
このように、木質柱梁接合部の入隅部には、木質梁2側に設けられている梁下面第一ボード51、梁下面第二ボード52、梁下面第三ボード53及び梁下面仕上げ材71と、木質柱1側に設けられている柱内面第一ボード41、柱内面第二ボード42、柱内面第三ボード43及び柱内面仕上げ材61と、の間に、第九間隙S9から第十六間隙S16までが階段状に繋がって連通する空間Sが設けられている。尚、本実施形態においては、第九間隙S9、第十一間隙S11、第十三間隙S13、第十五間隙S15における木質梁2の長手方向の幅L6及び第十間隙S10、第十二間隙S12、第十四間隙S14、第十六間隙S16における木質柱1の長手方向の幅L8は、同一であり、空間Sにおいて木質梁2の長手方向及び木質柱1の長手方向において最も狭い部位に相当する。また、第十一間隙S11における木質梁2の長手方向の幅L6が、第二耐火材の小口と第三耐火材との間隔に相当し、第十二間隙S12における木質柱1の長手方向の幅L8が、第四耐火材の小口と第二耐火材との間隔に相当する。また、第十六間隙S16が、第一仕上げ材と第二仕上げ材との間に形成される第九空間部に相当する。
【0112】
このため、木質柱1の長手方向において、第三耐火材をなす柱内面第一ボード41及び第四耐火材をなす柱内面第二ボード42が存在しない領域に、第一耐火材をなす梁下面第一ボード51又は第二耐火材をなす梁下面第二ボード52の少なくとも一部が存在し、木質梁2の長手方向において、第一耐火材をなす梁下面第一ボード51及び第二耐火材をなす梁下面第二ボード52が存在しない領域に、第三耐火材をなす柱内面第一ボード41又は第四耐火材をなす柱内面第二ボード42の少なくとも一部が存在している。
【0113】
ここで、第九間隙S9が第三耐火材と木質梁との間に位置する第五空間部に相当し、第十一間隙S11が第四耐火材と第一耐火材との間に位置する第六空間部に相当し、第十間隙S10が第三耐火材と第一耐火材との間に位置する第七空間部に相当する。また、第十二間隙S12が第四耐火材と第二耐火材との間に位置する第八空間部に相当する。
【0114】
本発明に係る木質柱梁接合部の耐火構造は、前記空間Sが、柱内面第一ボード(第三耐火材)41と木質梁2との間に位置する第九間隙(第五空間部)S9と、柱内面第二ボード(第四耐火材)42と梁下面第一ボード(第一耐火材)51との間に位置する第十一間隙(第六空間部)S11とが、柱内面第一ボード(第三耐火材)41と梁下面第一ボード(第一耐火材)51との間に位置する第十間隙(第七空間部)S10により互いに連通しており、第十間隙(第七空間部)S10と、柱内面第二ボード(第四耐火材)42と梁下面第二ボード(第二耐火材)52との間に位置する第十二間隙(第八空間部)S12とが、第十一間隙(第六空間部)S11により互いに連通している。
【0115】
また、木質梁2の長手方向において、梁下面第一ボード(第一耐火材)51は、梁下面第二ボード(第二耐火材)52よりも木質柱1側に突出しており、梁下面第二ボード(第二耐火材)52の小口52aは、柱内面第一ボード(第三耐火材)41と対向しており、梁下面第一ボード(第一耐火材)51の突出量L5は、梁下面第二ボード(第二耐火材)52の小口52aと柱内面第一ボード(第三耐火材)41との間隔L6よりも大きい構成となっている。
【0116】
また、木質梁2の長手方向において、柱内面第二ボード(第四耐火材)42の厚みt2は、梁下面第二ボード(第二耐火材)52の小口52aと柱内面第一ボード(第三耐火材)41との間隔L6よりも厚い構成となっている。
【0117】
また、木質柱1の長手方向において、柱内面第一ボード(第三耐火材)41は、柱内面第二ボード(第四耐火材)42よりも木質梁2側に突出しており、柱内面第二ボード(第四耐火材)42の小口42aは、梁下面第二ボード(第二耐火材)52と対向しており、柱内面第一ボード(第三耐火材)41の突出量L7は、柱内面第二ボード(第四耐火材)42の小口42aと梁下面第二ボード(第二耐火材)52との間隔L8よりも大きい構成となっている。
【0118】
また、空間Sにおける、木質梁2の長手方向において最も狭い部位の幅L6は、木質柱1及び木質梁2を備える木質柱梁架構3に外力が作用して当該木質柱梁架構3が変形する際に木質梁2の長手方向において想定すべき最大変位量より広く、木質柱1の長手方向において最も狭い部位の幅L8は、木質柱梁架構3に外力が作用して当該木質柱梁架構3が変形する際に木質柱1の長手方向において想定すべき最大変位量より広く設定されている。
また、空間Sには、充填材は充填されていない構成となっている。
【0119】
また、梁下面第二ボード(第二耐火材)52の下側に設けられる梁下面仕上げ材(第一仕上げ材)71と、梁下面仕上げ材(第一仕上げ材)71との間に第十六間隙(第九空間部)S16を形成し柱内面第二ボード(第四耐火材)42の木質柱1とは反対側に設けられる柱内面仕上げ材(第二仕上げ材)61と、を有し、第十六間隙(第九空間部)S16と木質梁2との間には、梁下面第一ボード(第一耐火材)51及び梁下面第二ボード(第二耐火材)52が存在し、第十六間隙(第九空間部)S16と木質柱1との間には、柱内面第一ボード(第三耐火材)41及び柱内面第二ボード(第四耐火材)42が存在している。
【0120】
本実施形態の木質柱梁接合部の耐火構造の第一変形例によれば、柱内面第一ボード41と木質梁2との間に位置する第九間隙S9と、柱内面第二ボード42と梁下面第一ボード51との間に位置する第十一間隙S11とは、木質梁2の長手方向に間隔を空けて形成されるが、第九間隙S9と第十一間隙S11とは、それらの間にて梁下面第一ボード51と柱内面第一ボード41との間に形成される第十間隙S10により連通される。また、第十間隙S10と、柱内面第二ボード42と梁下面第二ボード52との間に位置する第十二間隙S12とは、木質柱1の長手方向及び木質梁2の長手方向に間隔を空けて形成されるが、第十間隙S10と第十二間隙S12とは、それらの間に形成される第十一間隙S11により連通される。このため、空間Sは梁下面第二ボード52及び柱内面第二ボード42の表面52b、42b側から木質柱1及び木質梁2に至るまで屈曲する階段状をなしている。このため、木質柱梁架構3における、木質柱1の長手方向及び木質梁2の長手方向の変位をいずれも吸収することが可能であり、且つ、火災時に木質柱1及び木質梁2が直接火炎に晒されることを抑制することが可能である。
【0121】
また、梁下面第二ボード52の小口52aと柱内面第一ボード41との間隔L6より、梁下面第一ボード51が梁下面第二ボード52よりも木質柱1側に突出する突出量L5の方が大きいので、梁下面第二ボード52の小口52aと柱内面第一ボード41との間の空間と、木質梁2との間には梁下面第一ボード51が存在する。このため、たとえ梁下面第二ボード52の小口52aと柱内面第一ボード41との間の空間に火炎が進入したとしても梁下面第一ボード51により木質梁2が直接火炎に晒されることを防止することが可能である。
【0122】
また、柱内面第一ボード41の表面41bを覆う柱内面第二ボード42の厚みt2が、梁下面第二ボード52の小口52aと柱内面第一ボード41との間隔L6よりも厚いので、梁下面第二ボード52の小口52aと柱内面第一ボード41との間の空間の下側には、柱内面第二ボード42が存在している。このため、梁下面第二ボード52の小口52aと柱内面第一ボード41との間の空間に、木質梁2側に向かって火炎が進入することをより確実に抑制することが可能である。
【0123】
また、柱内面第二ボード42の小口42aと梁下面第二ボード52の間隔L8より、柱内面第一ボード41が柱内面第二ボード42よりも木質梁2側に突出する突出量L7の方が大きいので、柱内面第二ボード42の小口42aと梁下面第二ボード52との間の空間と、木質柱1との間には柱内面第一ボード41が存在する。このため、たとえ柱内面第二ボード42の小口42aと梁下面第二ボード52との間の空間に火炎が進入したとしても柱内面第一ボード41により木質柱1が直接火炎に晒されることを防止することが可能である。
【0124】
また、本実施形態の木質柱梁接合部の耐火構造の第一変形例においても、上述した実施形態と同様に、空間S及び目地に充填材を充填する必要はないので、充填材、バックアップ材、及び、充填材を充填する作業にかかるコストを削減することが可能である。また、木質柱梁架構3が地震等により変形する際に木質柱1及び木質梁2の挙動が充填材により規制されないので、地震等による木質柱梁架構3の変形時に耐火材に損傷が生じることをより確実に防止することが可能である。
【0125】
また、梁下面第二ボード52の下側に設けられている梁下面仕上げ材71と、柱内面第二ボード42の木質柱1とは反対側に設けられている柱内面仕上げ材61との間に形成される第十六間隙S16と木質梁2との間、及び、第十六間隙S16と木質柱1との間には、いずれも耐火材4(41、42、43)、5(51、52、53)が存在するので、たとえ梁下面仕上げ材71と柱内面仕上げ材61との間の第十六間隙S16に火炎が進入したとしても少なくともいずれかの耐火材4(41、42、43)、5(51、52、53)により木質柱1及び木質梁2が直接火炎に晒されることを防止することが可能である。
===その他の実施の形態===
【0126】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0127】
上記実施形態においては、木質柱梁接合部の入隅部に階段状の空間Sを設ける例について説明したが、これに限るものではない。例えば、
図14に示すように、空間の一部に、木質柱及び木質梁の長手方向と交差する方向に傾いた第十七間隙S17を有する構成としても構わない。また、空間は、木質柱1の突付面1aに重ねて設けられている耐火材の表面側から木質柱1に向かって直線状に、また、木質梁2の下面2bに重ねて設けられている耐火材の下面側から木質梁2に向かって直線状に形成されていなければ構わない。
【0128】
また、上記実施形態においては、木質柱1の突付面1aおよび木質梁2の下面2bに各々3枚ずつ重ねて耐火材を設けた例について説明したが、これに限らず、耐火材は2枚以上重ねて設けられていれば構わない。また、耐火材として強化石膏ボードを例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、ケイ酸カルシウム板など、耐火性を備えた部材であれば構わない。
また、上記実施形態においては、耐火材の表面に仕上げ材を設けた例について説明したが、仕上げ材は必ずしも設けられていなくとも構わない。
【符号の説明】
【0129】
1 木質柱
1a 突付面
1c 直交側面(木質柱の突付面と交差する側面に相当)
2 木質梁
2a 木質梁の端面
2b 木質梁の下面
2c梁側面
3 木質柱梁架構
4 耐火材
5 耐火材
6 柱内面仕上げ材(第二仕上げ材に相当)
7 梁下面仕上げ材(第一仕上げ材に相当)
8 床スラブ
41 柱内面第一ボード(第三耐火材に相当)
41a 柱内面第一ボードの小口(第三耐火材の小口に相当)
41b 柱内面第一ボードの表面(第三耐火材の木質柱とは反対側の面に相当)
41c 柱内面第一ボードの端面
42 柱内面第二ボード(第四耐火材に相当)
42a 柱内面第二ボードの小口(第四耐火材の小口に相当)
42b 柱内面第二ボードの表面(第四耐火材の木質柱とは反対側の面に相当)
42c 柱内面第二ボードの端面
43 柱内面第三ボード
43a 柱内面第三ボードの小口
43b 柱内面第三ボードの表面
43c 柱内面第三ボードの端面
44 柱外面第一ボード
44a 柱外面第一ボードの表面
45 柱外面第二ボード
45a 柱外面第一ボードの表面
46 柱外面第三ボード
46a 柱外面第一ボードの表面
47 柱側面第一ボード(第五耐火材に相当)
47a 第一突出部
47b 柱側面第一ボードの表面
47c 柱側面第一ボードの端面
48 柱側面第二ボード(第五耐火材に相当)
48a 第二突出部
48b 柱側面第二ボードの表面
48c 柱側面第二ボードの端面
49 柱側面第三ボード(第五耐火材に相当)
49a 第三突出部
49b 柱側面第三ボードの表面
49c 柱側面第三ボードの端面
51 梁下面第一ボード(第一耐火材に相当)
51a 梁下面第一ボードの小口
51b 梁下面第一ボードの下面(第一耐火材の下面に相当)
51c 梁下面第一ボードの端面
52 梁下面第二ボード(第二耐火材に相当)
52a 梁下面第二ボードの小口(第二耐火材の小口に相当)
52b 梁下面第二ボードの下面
52c 梁下面第二ボードの端面
53 梁下面第三ボード
53a 梁下面第三ボードの小口
53b 梁下面第三ボードの下面
53c 梁下面第三ボードの端面
54 梁側面第一ボード
54a 梁側面第一ボードの表面
54b 梁側面第一ボードの端面
55 梁側面第二ボード
55a 梁側面第二ボードの表面
55b 梁側面第二ボードの端面
56 梁側面第三ボード
56a 梁側面第三ボードの表面
56b 梁側面第三ボードの端面
61 柱内面仕上げ材(第二仕上げ材に相当)
61a 柱内面仕上げ材の小口
61b 柱内面仕上げ材の表面
61c 柱内面仕上げ材の端面
62 柱外面仕上げ材
63 柱側面仕上げ材
63a 第四突出部
63b 柱側面仕上げ材の端面
71 梁下面仕上げ材(第一仕上げ材に相当)
71a 梁下面仕上げ材の小口
71b 梁下面仕上げ材の下面
71c 梁下面仕上げ材の端面
72 梁側面仕上げ材
72a 梁側面仕上げ材の端面
L1 柱内面第一ボード(第三耐火材)の突出量
L2 第三間隙における木質柱の長手方向の幅(第四耐火材の小口と第一耐火材との間隔に相当)
L3 梁下面第一ボード(第一耐火材)突出量
L4 第四間隙における木質梁の長手方向の幅(第二耐火材の小口と第四耐火材との間隔に相当)
L5 梁下面第一ボード(第一耐火材)の突出量
L6 第十一間隙における木質梁の長手方向の幅(第二耐火材の小口と第三耐火材との間隔に相当)
L7 柱内面第一ボード(第三耐火材)の突出量
L8 第十二間隙における木質柱の長手方向の幅(第四耐火材の小口と第二耐火材との間隔に相当)
S 空間
S1 第一間隙(第一空間部に相当)
S2 第二間隙(第三空間部に相当)
S3 第三間隙(第二空間部に相当)
S4 第四間隙(第四空間部に相当)
S5 第五間隙
S6 第六間隙
S7 第七間隙
S8 第八間隙(第九空間部に相当)
S9 第九間隙(第五空間部に相当)
S10 第十間隙(第七空間部に相当)
S11 第十一間隙(第六空間部に相当)
S12 第十二間隙(第八空間部に相当)
S13 第十三間隙
S14 第十四間隙
S15 第十五間隙
S16 第十六間隙(第九空間部に相当)
S17 第十七間隙
t1 梁下面第二ボード(第二耐火材)の厚み
t2 柱内面第二ボード(第四耐火材)の厚み