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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】発泡成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/00 20060101AFI20241112BHJP
   B29C 45/46 20060101ALI20241112BHJP
   B29C 44/46 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B29C44/00 D
B29C45/46
B29C44/46
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021056775
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022153976
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】三輪 雅申
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-171751(JP,A)
【文献】特開2017-61706(JP,A)
【文献】特開2016-060152(JP,A)
【文献】特開2007-176133(JP,A)
【文献】特開2004-98459(JP,A)
【文献】特開平06-297475(JP,A)
【文献】特開昭61-27224(JP,A)
【文献】国際公開第2006/038670(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2215789(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00
B29C 45/46
B29C 44/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサートフィルムが装填された金型内で、溶融樹脂を射出発泡成形する発泡成形体の製造方法において、
該インサートフィルムとして、該溶融樹脂と熱融着しないフィルムを用い、
射出発泡成形後、該インサートフィルムを取り外して発泡成形体を得る発泡成形体の製造方法であって、
前記溶融樹脂がポリカーボネート樹脂よりなり、
前記インサートフィルムは、前記溶融樹脂の射出発泡成形温度よりも高い融点を有するポリエステル系樹脂よりなる2軸延伸フィルムであることを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【請求項2】
揮発性発泡剤、無機発泡剤、又は分解型発泡剤を用いて射出発泡成形することを特徴とする請求項1に記載の発泡成形体の製造方法。
【請求項3】
前記無機発泡剤として、超臨界状態又は亜臨界状態の窒素、二酸化炭素又はこれらの混合物を用いて超臨界又は亜臨界射出発泡成形を行うことを特徴とする請求項に記載の発泡成形体の製造方法。
【請求項4】
前記インサートフィルムの前記溶融樹脂当接面側が離型処理されていることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の発泡成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサートフィルムが装填された金型内で、溶融樹脂を射出発泡成形して発泡成形体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂、例えば、ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、機械的物性、電気的特性に優れた樹脂であり、例えば自動車材料、電気・電子機器材料、住宅材料、その他の工業分野における部品製造用材料等に幅広く利用されている。特にコンピューター、ノートブック型パソコン、各種携帯端末、プリンター、複写機等の電気・電子機器やOA・情報機器等の部品等として好適に使用されている。
近年、これらの機器は小型化や軽量化が急速に進展しており、使用する樹脂量を減らして軽量化するために、発泡成形する方法が採用されつつある。
【0003】
発泡成形法としては、化学発泡剤や物理発泡剤を用いて製造する方法があるが、化学発泡法は、発泡剤を用いるためコストが高く、また発泡体中に残存する発泡剤の分解残留物による発泡体の変色や臭気の発生、化学発泡剤による成形機の汚れ等の問題がある。
一方、物理発泡剤によるガス発泡法は、成形機で樹脂を溶融しブタン等の低沸点有機化合物を供給し混練した後、低圧域に放出することにより発泡成形する方法であり、この方法に用いられる低沸点有機化合物は、樹脂に対して親和性があるため溶解性に優れ高倍率の発泡体を得ることができる。しかし、これらの発泡剤はコストが高い上に、低沸点有機化合物は可燃性等の危険性を有している。
【0004】
このような問題点を解決する為に、物理発泡剤の中でもクリーンでコストがかからない窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガスを発泡剤とする方法が提案されている。しかしながら、これら不活性ガスはそのままでは樹脂との親和性が低いので溶解性に乏しく、得られる発泡体は、気泡径が大きく不均一で、セル密度が小さいため、外観、機械的強度等に問題がある。
【0005】
特許文献1には、発泡剤として超臨界流体を用い、これを樹脂に含浸させることにより、極めて微細なセル径と大きなセル密度を有する発泡体を得る技術が記載されている。超臨界流体を発泡剤として用いる発泡成形方法は、MuCell(登録商標)とも称される微細発泡成形技術であり、超臨界流体を高圧下で溶融樹脂に溶解したものを成形機に供し、急激な減圧により微細な発泡セルを有する成形品を得る成形技術である。
このような超臨界発泡成形によれば、超臨界流体は、液体に近い優れた溶解性と気体に近い優れた拡散性を有するため樹脂への溶解性が高く、また樹脂中での拡散速度も大きいことから、短時間で発泡剤を樹脂中に含浸させることが可能となる。
【0006】
ところで、射出発泡成形ではスワールマークと呼ばれる筋状の外観不良が生じる。これは溶融樹脂の流動末端で発生した気泡が破裂し、成形品表面で引き伸ばされてできた痕であり、射出発泡成形では気泡が無数に発生するため、成形品の表面全体に筋ができる。
【0007】
この問題に対して、表面を平滑にし、外観を良くするために、特許文献2,3に記載されるように、フィルムインサート成形などで表面に加飾層を設けて外観を改善する方法が提案されている。この方法では、インサートされたフィルムによる表面層が形成された発泡成形体が得られる。
【0008】
しかしながら、インサートフィルムを用いて表面層を形成する射出発泡成形では、得られた発泡成形体は、この表面層の存在により、表面平滑な発泡成形体を得ることはできるが、この表面層の存在により非発泡層が厚くなり、薄い成形品や発泡層の軽量化率が大きいものでは、非発泡層の割合が重量、体積共に大きくなり、軽量化効果、断熱効果が小さいものになる。
特に、厚みの厚いフィルムをインサートすると、成形品全体に対するフィルムの割合が大きくなり、軽量化効果、断熱効果が大きく損なわれる。
インサートフィルムの厚さを薄くすることで成形品全体に占めるフィルムの割合を小さくして、軽量化効果、断熱効果の低減を抑制することはできるが、その場合にはフィルムと発泡成形部との間に気泡が混入し易く、外観不良となったり、フィルムの密着性が悪くなったり、フィルムの取り扱い時に傷や凹みが生じ、異物混入を招いたりするなどの問題が生じる。
【0009】
このように、インサートフィルムを用いる射出発泡成形では、表面平滑で外観のよい発泡成形体を得ることができる反面、インサートフィルムよりなる表面層の存在で、軽量化効果、断熱効果が損なわれる問題がある。
一方で、インサートフィルムを用いなければ、発泡成形体本来の軽量化効果、断熱効果を得ることはできるが、表面の筋状のスワールマークの存在で外観の悪い発泡成形体となる。
【0010】
なお、インサートフィルムは、得られる発泡成形体の表面層形成のため設けられるため、このインサートフィルムによる表面層は、得られた発泡成形体の発泡成形部と密着性よく一体化される必要がある。このため、インサートフィルムには、射出樹脂と高度に熱融着する樹脂フィルムが選択されているのが現状である。
また、従来の射出発泡成形において、射出発泡成形後に得られた発泡成形体からインサートフィルムを取り外すという技術思想は存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第5158986号公報
【文献】特表2004-523375号公報
【文献】特開2004-98459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、射出発泡成形に当たり、インサートフィルムを用いて表面平滑で外観に優れた発泡成形体を得た上で、インサートフィルムを用いることによる軽量化効果、断熱効果の低減を解消することができる発泡成形体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決すべく種々検討した結果、インサートフィルムとして、射出発泡成形される樹脂と熱融着しないフィルムを用いて射出発泡成形し、射出発泡成形後、得られた発泡成形体から、このインサートフィルムを取り外すことで、表面平滑で外観に優れた発泡成形体を得ることができると共に、発泡成形体本来の軽量化効果、断熱効果を得ることができることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0014】
[1] インサートフィルムが装填された金型内で、溶融樹脂を射出発泡成形する発泡成形体の製造方法において、
該インサートフィルムとして、該熱可塑性樹脂組成物と熱融着しないフィルムを用い、
射出発泡成形後、該インサートフィルムを取り外して発泡成形体を得ることを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【0015】
[2] 前記インサートフィルムは、前記溶融樹脂の射出発泡成形温度よりも高い融点を有する樹脂、前記溶融樹脂の射出発泡成形温度よりも高いガラス転移点温度を有する樹脂、融点が250℃以上の熱可塑性樹脂の2軸延伸フィルム、又は熱硬化性樹脂のフィルムから選ばれるフィルムよりなることを特徴とする[1]に記載の発泡成形体の製造方法。
【0016】
[3] 前記溶融樹脂がポリカーボネート樹脂よりなり、前記インサートフィルムがポリエステル系樹脂よりなる軸延伸フィルムであることを特徴とする[1]又は[2]に記載の発泡成形体の製造方法。
【0017】
[4] 揮発性発泡剤、無機発泡剤、又は分解型発泡剤を用いて射出発泡成形することを特徴とする[1]ないし[3]のいずれかに記載の発泡成形体の製造方法。
【0018】
[5] 前記無機発泡剤として、超臨界状態又は亜臨界状態の窒素、二酸化炭素又はこれらの混合物を用いて超臨界又は亜臨界射出発泡成形を行うことを特徴とする[4]に記載の発泡成形体の製造方法。
【0019】
[6] 前記インサートフィルムの前記溶融樹脂当接面側が離型処理されていることを特徴とする[1]ないし[5]のいずれかに記載の発泡成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、インサートフィルムとして、射出発泡成形される樹脂と熱融着しないフィルムを用いて射出発泡成形し、射出発泡成形後、得られた発泡成形体から、このインサートフィルムを取り外すことで、表面平滑で外観に優れた発泡成形体を得ることができると共に、発泡成形体本来の軽量化効果、断熱効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の発泡成形体の製造方法の実施の形態の一例を示す模式的な断面図である。
図2】本発明の発泡成形体の製造方法により、射出発泡成形により得たフィルム付き発泡成形体((a)図)と、フィルム取り外し後の発泡成形体((b)図)の一例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
本発明の発泡成形体の製造方法は、インサートフィルムが装填された金型内で、溶融樹脂を射出発泡成形する発泡成形体の製造方法において、該インサートフィルムとして、該熱可塑性樹脂組成物と熱融着しないフィルムを用い、射出発泡成形後、該インサートフィルムを取り外して発泡成形体を得ることを特徴とする。
【0024】
具体的には、図1(a),(b)に示す通り、金型1A,1Bの一方(図1(a)では金型1A)の金型面に、インサートフィルム2を装填し、その後型締めして、溶融樹脂3を金型1A,1Bのキャビティ内に射出発泡成形する。これにより、図1(b),図2(a)のように、表面にインサートフィルム2を有する発泡成形体4を得る。その後、図2(b)のように、インサートフィルム2を発泡成形体4から取り外すことにより、製品としての発泡成形体4を得る。
【0025】
この発泡成形体4は、図、1(b)、図2(a),(b)に示す通り、発泡層4bの両表面にスキン層(射出発泡成形において金型近傍に形成される非発泡層)4aが形成されたものである。
インサートフィルム2を発泡成形体4の表面層として一体成形すると、図2(a)のように、インサートフィルム2の厚さDと、スキン層4aの厚さD,Dの合計(D+D+D)が、発泡成形体4の非発泡層となり、軽量化効果、断熱効果が大きく損なわれるが、インサートフィルム2を取り外すと、非発泡層は、表面のスキン層4aの厚さ(D+D)のみとなり、軽量化効果、断熱効果の低減の問題は解消される。
しかも、得られた発泡成形体4の表面4Aは、インサートフィルム2の存在により表面平滑で外観に優れたものとなる。
【0026】
[射出発泡成形]
本発明において、インサートフィルムを用いて射出発泡成形し、その後インサートフィルムを取り外すこと以外、射出発泡成形の方式には特に制限はなく、例えば、以下のような方法を採用することができる。
【0027】
射出成形機内で溶融状態の樹脂に、発泡剤を混合又は溶解し、インサートフィルムをインサートした金型内に射出成形する際に樹脂を発泡させつつ金型内に充填する方法で(1)キャビティ容量よりも少量の樹脂を射出し、射出時の減圧により気泡を発生させ、気泡の拡大によってキャビティ内を充填させるショートショット法;キャビティ容量が可変である金型を用い、(2)キャビティ容量と同量の樹脂を射出し、充填後にキャビティ容積を拡大することにより気泡を発生、拡大させ発泡成形体を得る、コアバック法などの方法を採用することができる。
【0028】
使用する発泡剤としては、揮発性の発泡剤、無機系の発泡剤、分解型発泡剤のいずれも使用できる。揮発性発泡剤としては、n-ブタン、i-ブタン、n-ペンタン、i-ペンタン、ヘキサン等の低級脂肪族炭化水素化合物;シクロブタン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物;メタノール、エタノール等の低級脂肪族1価アルコール化合物;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン化合物;クロロメチル、クロロエチル、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン等の低沸点ハロゲン化炭化水素化合物等が挙げられる。無機発泡剤としては、ガス状、超臨界状態、亜臨界状態のいずれかの状態にある窒素や二酸化炭素;水等を挙げることができる。
【0029】
分解型発泡剤としては、バリウムアゾカルボキシレート、アゾジカルボンアミド等のアゾ化合物、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾカルボンアミド等のヒドラジン化合物、重炭酸ナトリウム等の重炭酸塩等が挙げられる。
【0030】
これらの中で、超臨界状態又は亜臨界状態の窒素、二酸化炭素又はこれらの混合物が好ましい。
発泡剤は、単独で使用しても2種以上併用して使用してもよい。
発泡剤の使用量は発泡剤の種類や所望の発泡倍率により適宜定めることができるが、好ましくは射出発泡成形する樹脂100質量部に対し、発泡剤0.1~20質量部である。
【0031】
本発明における射出発泡成形法としては、特に生産効率の観点で超臨界射出発泡成形が好ましい。
超臨界流体に使用する気体は窒素ガス又は二酸化炭素ガスが好ましい。
超臨界射出発泡成形としては、先述のショートショット法、コアバック法等が用いられる。いずれも樹脂の計量時に超臨界流体をシリンダー内に注入し、溶解させる点が共通しているが、発泡過程が異なる。
気泡核の生成は、金型において圧力が窒素又は二酸化炭素の臨界圧力以下の圧力に圧
力低下することで、窒素又は二酸化炭素を過飽和状態にし、過飽和状態になった溶融樹
脂組成物に多数のセル核が発生することにより行われる。
【0032】
超臨界射出発泡成形の具体例は、以下の通りである。
【0033】
先ず、射出発泡成形する樹脂のペレットを、射出成形機のホッパーから成形機に投入し、成形機スクリューの搬送ゾーン、圧縮ゾーンにて加熱溶融した後、成形機スクリューの計量ゾーン及び圧縮ゾーンに送る。そして、窒素又は二酸化炭素ガスを超臨界流体としたものを計量ゾーン部に設けた注入口より注入し、この超臨界流体と溶融樹脂を加圧・単一相化し、射出成形機のノズルから射出し、スプルー、ランナー内を単一相を維持しながら流動させて、予めインサートフィルムを装填した金型キャビティに送る。ゲートを通過後に気泡核が発生し、気泡が拡大しながら金型内への充填が進行することにより、超臨界射出発泡成形が行われる。ここで、気泡核の生成は、金型において圧力が窒素又は二酸化炭素の臨界圧力以下の圧力に低下することで、窒素又は二酸化炭素が過飽和状態となり、過飽和状態になった溶融樹脂組成物に多数のセル核が発生することにより行われる。
【0034】
射出発泡成形条件としては、通常の条件を採用することができる。例えば、溶融樹脂の射出速度は通常10~150mm/sec、型締め時の保圧は不要で、発泡による圧力で完全充填される。
【0035】
[射出発泡成形樹脂]
本発明において、射出発泡成形に用いる樹脂としては特に制限はなく、本発明は、一般的な熱可塑性樹脂組成物に適用することができる。
例えば、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリ塩化ビニル;アクリル樹脂;ポリアリーレート;ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリエーテルイミド;ポリエーテルサルフォン;ポリアミド系樹脂;ポリサルフォン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルケトン;オレフィン系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。これらの樹脂は、用途等に応じて1種類単独でも2種類以上を混合して使用してもよく、また、これらの熱可塑性樹脂には、必要に応じて可塑剤、剥離剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤等の種々の添加剤や物性改良のための各種フィラー、ガラス繊維、カーボン繊維等、さらには、着色剤、染料等を混合して使用してもよい。
【0036】
射出発泡成形用樹脂としては、特にポリカーボネート樹脂を主成分とするポリカーボネート樹脂組成物が好適に用いられる。
【0037】
以下に、このポリカーボネート樹脂組成物について説明する。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂組成物には特に制限はない。
なお、ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂に他の成分を配合した組成物に限らず、ポリカーボネート樹脂単独であってもよい。また、ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂を30質量%以上、特に50~100質量%含むものであることが、本発明の効果が有効に発揮され好ましい。
【0038】
<ポリカーボネート樹脂>
ポリカーボネート樹脂組成物に含まれるポリカーボネート樹脂としては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族-脂肪族ポリカーボネート樹脂が挙げられるが、好ましくは、芳香族ポリカーボネート樹脂であり、具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲン又は炭酸のジエステルと反応させることによって得られる熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体又は共重合体が用いられる。
【0039】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。また、難燃性向上の為に、上述した芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物や、シロキサン構造を有する両末端フェノール性OH基含有ポリマー、またはそのオリゴマーを用いてもよい。
【0040】
ポリカーボネート樹脂の好ましい例としては、ジヒドロキシ化合物として2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン又は2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とを併用したポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0041】
ポリカーボネート樹脂は、1種の繰り返し単位からなる単独重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。
【0042】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、制限はないが、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度20℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量(Mv)で、好ましくは10,000~40,000、より好ましくは14,000~32,000である。粘度平均分子量がこの範囲であると、得られる樹脂組成物の超臨界発泡成形における成形性が良く、且つ機械的強度の大きい成形品が得られやすい。ポリカーボネート樹脂の最も好ましい分子量範囲は16,000~30,000である。
【0043】
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ粘度計を用いて、20℃にて、ポリカーボネート樹脂のメチレンクロライド溶液の粘度を測定し極限粘度([η])を求め、次のSchnellの粘度式から算出される値である。
[η]=1.23×10-4Mv0.83
【0044】
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)及び溶融法(エステル交換法)のいずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、溶融法で製造したポリカーボネート樹脂に、末端のOH基量を調整する後処理を施したポリカーボネート樹脂も好ましい。
【0045】
また、ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1,500以上、好ましくは2,000以上であり、また、通常9,500以下、好ましくは9,000以下である。さらに、含有されるポリカーボネートリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下とすることが好ましい。
【0046】
また、ポリカーボネート樹脂は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生された芳香族ポリカーボネート樹脂、いわゆるマテリアルリサイクルされた芳香族ポリカーボネート樹脂の使用も可能である。使用済みの製品としては、光学ディスクなどの光記録媒体、導光板、自動車窓ガラスや自動車ヘッドランプレンズ、風防などの車両透明部材、水ボトルなどの容器、メガネレンズ、防音壁やガラス窓、波板などの建築部材などが好ましく挙げられる。また、再生ポリカーボネート樹脂としては、製品の不適合品、スプルー、またはランナーなどから得られた粉砕品、またはそれらを溶融して得たペレットなども使用可能である。
【0047】
<その他の成分>
ポリカーボネート樹脂組成物はポリカーボネート樹脂の他に、ポリカーボネート樹脂以外の他の熱可塑性樹脂や添加剤を含むものであってもよい。
【0048】
他の熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアクリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
【0049】
ポリエステル樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンエーテルとポリスチレン及び/又はHIPS(耐衝撃性ポリスチレン)との混合樹脂などが挙げられる。スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、HIPS、AS樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。
【0050】
また、ポリカーボネート樹脂組成物には、所望の物性を得るため、必要に応じて各種の添加剤、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤等の安定剤、顔料、染料、滑剤、難燃剤、滴下防止剤、離型剤、摺動性改良剤などを配合することができる。
【0051】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。
【0052】
ポリカーボネート樹脂組成物に酸化防止剤を含有させる場合、その配合量は、ポリカーボネート樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、通常0.001~1質量部、好ましくは0.01~0.5質量部である。酸化防止剤の配合量が0.001質量部未満の場合は抗酸化剤としての効果が不十分であり、1質量部を超える場合は効果が頭打ちとなり経済的ではない。
【0053】
(熱安定剤)
熱安定剤としては、分子中の少なくとも1つのエステルがフェノール及び/又は炭素数1~25のアルキル基を少なくとも1つ有するフェノールでエステル化された亜リン酸エステル化合物、亜リン酸、及びテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレン-ジ-ホスホナイトの群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0054】
ポリカーボネート樹脂組成物に熱安定剤を含有させる場合、その配合量は、ポリカーボネート樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、通常0.001~1質量部、好ましくは0.01~0.5質量部である。熱安定剤の配合量が0.001質量部未満の場合は熱安定剤としての効果が不十分であり、1質量部を超える場合は耐加水分解性が悪化する場合がある。
【0055】
(離型剤)
離型剤としては、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルの群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0056】
ポリカーボネート樹脂組成物に離型剤を含有させる場合、その配合量は、ポリカーボネート樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、通常0.001~2質量部、好ましくは0.01~1質量部である。離型剤の配合量が0.001質量部未満の場合は離型性の効果が十分でない場合があり、2質量部を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出発泡成形時の金型汚染などの問題がある。
【0057】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤の具体例としては、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤の他、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物などの有機紫外線吸収剤が挙げられる。
【0058】
ポリカーボネート樹脂組成物に紫外線吸収剤を含有させる場合、その配合量は、ポリカーボネート樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、通常0.01~3質量部、好ましくは0.1~1質量部である。紫外線吸収剤の配合量が0.01質量部未満の場合は耐候性の改良効果が不十分の場合があり、3質量部を超える場合はモールドデボジット等の問題が生じる場合がある。
【0059】
(染顔料)
染顔料としては、無機顔料、有機顔料、有機染料などが挙げられる。
【0060】
ポリカーボネート樹脂組成物に染顔料を含有させる場合、その配合量は、ポリカーボネート樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、通常20質量部以下、好ましくは15質量部以下、更に好ましくは12質量部以下である。染顔料の配合量が20質量部を超える場合は耐衝撃性が十分でない場合がある。
【0061】
なお、無機顔料のうちカーボンブラックは無機導電性物質としても機能する。カーボンブラックを無機導電性物質として用いる場合、前述のように、その配合量は、染顔料としての配合量よりも多く設定することができる。
【0062】
(難燃剤)
難燃剤としては、ハロゲン化ビスフェノールAのポリカーボネート、ブロム化ビスフェノール系エポキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、ブロム化ポリスチレンなどのハロゲン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン-3-スルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム等の有機金属塩系難燃剤、ポリオルガノシロキサン系難燃剤などが挙げられるが、リン酸エステル系難燃剤が特に好ましい。
【0063】
ポリカーボネート樹脂組成物に難燃剤を含有させる場合、その配合量は、ポリカーボネート樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、通常1~30質量部、好ましくは3~25質量部、更に好ましくは5~20質量部である。難燃剤の配合量が1質量部未満の場合は難燃性が十分でない場合があり、30質量部を超える場合は耐熱性が低下する場合がある。
【0064】
(滴下防止剤)
滴下防止剤としては、例えば、ポリフルオロエチレン等のフッ素化ポリオレフィンが挙げられ、特にフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが好ましい。
【0065】
ポリカーボネート樹脂組成物に滴下防止剤を含有させる場合、その配合量は、ポリカーボネート樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、通常0.02~4質量部、好ましくは0.03~3質量部である。滴下防止剤の配合量が5質量部を超える場合は、得られるCF/PCペレットを成形してなる成形品外観の低下が生じる場合がある。
【0066】
<ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法>
ポリカーボネート樹脂組成物を製造する製造方法には制限はなく、公知の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。
具体例を挙げると、ポリカーボネート樹脂及び、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
【0067】
また、例えば、各成分を予め混合せずに、又は、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによってポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、分散し難い成分を混合する際には、その分散し難い成分を予め水や有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させ、その溶液又は分散液と混練するようにすることで、分散性を高めることもできる。
【0068】
[インサートフィルム]
本発明においては、射出発泡成形後にインサートフィルムを取り外すことから、インサートフィルムとしては、上述のような射出発泡成形における溶融樹脂と射出発泡成形時に熱融着しないものを用いる。射出発泡成形時に熱融着しないインサートフィルムは、用いる射出発泡成形樹脂の種類や射出発泡成形条件等に応じて適宜選択して使用されるが、例えば以下のようなものが挙げられる。
(1) 成形温度よりも高い融点やガラス温度を持つフィルムは当然使用可能であるが、特に成形温度が320℃以下の場合は融点が250℃以上の熱可塑性樹脂の2軸延伸フィルム、成形温度が320℃を超える場合は熱硬化性樹脂からなるフィルムも使用可能で特に望ましい。
(2) インサートフィルムが熱融着はしないが、粘着したり吸着する状態等となって剥離しがたい密着性を持つ場合はさらにフィルム表面を離型処理しても良い。
(3) 具体例として、射出発泡樹脂が芳香族ポリカーボネートの場合ではインサートフィルムとして2軸延伸ポリエステルフィルムが好ましく、PPSやPEEKのような成形温度や金型温度が高温な樹脂の場合では熱硬化性ポリイミドフィルムが望ましい。
【0069】
本発明で用いるインサートフィルムは、その構成材料の樹脂を用いて常法、例えばTダイ成形等により成形し、必要に応じて軸延伸処理を施すことにより製造することができる。Tダイ成形時に、冷却ロールを鏡面にすることで、より鏡面で光沢のあるフィルムが得られ、インサート成形時に、インサートフィルムの表面が転写され、取り外すことにより、より平滑で光沢のある製品が得られる。また冷却ロールに凹凸形状を設けたものを使用すれば凹凸形状のあるフィルムが得られ、インサート成形時に、インサートフィルムの表面が転写され、取り外すことにより、凹凸形状のある製品が得られる。
【0070】
インサートフィルムの厚さは、薄過ぎると機械的強度が不足し、取り扱い時に破損したり、また、フィルムと発泡成形体との間に気泡が混入して成形後にインサートフィルムを取り外したときに気泡の跡が発生したり、インサートフィルムが薄いとフィルムの断熱性が小さいさいためフィルム表面の溶融樹脂接触温度が小さくなるのでインサートフィルムを設けることによる表面平滑化の効果を十分に得ることができない恐れがあるため、インサートフィルムの構成樹脂によっても異なるが、厚さ100μm以上、特に150μm以上のものを用いることが好ましい。一方で、インサートフィルムの厚さが厚過ぎるとフィルム表面温度が表面に伝わりにくく、温度上昇まで時間がかかることから、インサートフィルムの厚さは1000μm以下、特に500μm以下であることが好ましい。
【0071】
なお、製造する発泡成形体がフィルム、シート等の平板状ではなく、凹凸面や湾曲面等を有する三次元的な形状の場合は、金型のインサートフィルムを設ける面に合わせて、真空成形等の熱成形により賦形処理したインサートフィルムを用いてもよい。さらにはインサートフィルムの表面が、エンボスやヘアライン等の凹凸模様、幾何学模様などの形状を持つ場合、成形後インサートフィルムを取り外したときに同一形状の表面に仕上げることも可能である。
【0072】
[発泡成形体]
本発明の発泡成形体の製造方法により製造される発泡成形体(以下、「本発明の発泡成形体」と称す場合がある。)は、インサートフィルムを用いたことにより優れた外観を有すると共に、軽量化効果、断熱効果にも優れる。
【0073】
本発明の発泡成形体の発泡成形部の発泡倍率や、形状、寸法、色彩、表面装飾等には特に制限はなく、その用途に応じて任意に設定すればよいが、本発明の発泡成形体は、従来法ではインサートフィルムを用いたことにより形成される表面層が、発泡成形体の軽量化や断熱性に及ぼす影響が大きい薄肉の発泡成形体に有効であり、このようなものとして、例えば発泡成形体全体の厚さとして5mm以下、例えば1.5~3mm程度の薄肉発泡成形体、特に薄肉発泡成形シートやフィルムが挙げられる。
【0074】
このような本発明の発泡成形体の用途としては特に制限はなく、電気・電子機器、OA機器、情報端末機器、機械部品、家電製品、車輌部品、建築部材、各種容器、照明機器等の様々な部品に適用することができる。
【実施例
【0075】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0076】
なお、以下において、射出発泡成形用の樹脂及びインサートフィルムとしては、以下のものを用いた。
射出発泡成形用樹脂:ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名:ユーピロン(登録商標)S-2000R)
粘度平均分子量(Mv):23,000
Tg=145℃
インサートフィルム:厚さ200μmの軸延伸PETフィルム
【0077】
[実施例1]
射出発泡成形用のポリカーボネート樹脂ペレットを、予め120℃で6~12時間予備乾燥し、TREXEL社製のMuCell SCF装置(型式:T-100J)を用いて超臨界状態にした窒素を、日本製鋼所社製J100ADS射出成形機のシリンダーへと所定量注入し、溶融樹脂と混合し、予めインサートフィルムを装填した金型内へ射出し、ショートショット法にて超臨界発泡成形を行い、肉厚2mm(インサートフィルムを剥離除去後の肉厚)、縦80mm×横80mmの発泡成形体を得た。
成形条件は、窒素流入量0.3質量%、計量53mm、射出時間1.3秒、保圧工程は無しとして行った。
【0078】
得られた発泡成形体をインサートフィルムと共に金型から取り出した後、インサートフィルムを剥離除去した。
【0079】
[比較例1]
射出発泡成形後、金型から取り出した後、インサートフィルムを除去しないものを比較例1の発泡成形体とした。肉厚はインサートフィルムを含め2mmとした。
【0080】
[比較例2]
インサートフィルムを用いないこと以外は、実施例1と同様に射出発泡成形を行って発泡成形体を得た。肉厚は2mmとした。
【0081】
実施例1及び比較例1,2で得られた発泡成形体について、以下の評価を行い、結果を表-1に示した。
【0082】
(1) 発泡成形体の断面観察
発泡成形体を厚さ方向に切断し、断面を島津社製X線CT装置TDM1000H-IIで観察し、フィルム(比較例1の場合)、両表面のスキン層、中央の発泡層の厚みをそれぞれ測定し、発泡成形体全体に対する厚さ割合を算出した。
【0083】
(2) 表面粗さ(Ra)の測定
表面粗さ(Ra)をJIS B 0601-2013に従い、評価長さ1.25mm、カットオフ波長0.25mm、カットオフ比100で東京精密社製S3000型表面粗さ計により測定した。
表面粗さ(Ra)は、実施例1の発泡成形体ではインサートフィルムを取り外した面について、比較例の発泡成形体ではインサートフィルム面について、比較例2の発泡成形体では表面について測定した。
【0084】
(3) 射出樹脂軽量化率(%)の算出
一般の射出成形で得た無発泡の同形状成形体重量(X)と発泡成形体との重量(Y)の差を無発泡の同形状成形体の重量(X)で除した値の百分率
{(X)-(Y)}/(X)×100
で算出した。
【0085】
(4) 重量の測定
各発泡成形体の重量を測定した。100×100mmの面積相当に換算した。
【0086】
(5) 軽量化効果、断熱効果の評価
以下の基準で軽量化効果、断熱効果を評価した。
<軽量化効果>
○:フィルムをインサートしていない発泡成形体と発泡層の厚みの比率の差が±5%未満のもの
×:フィルムをインサートしていない発泡成形体より発泡層の厚みの比率が5%以上減少のもの
<断熱効果>
○:フィルムをインサートしていない発泡成形体と無発泡層の厚みの比率が±5%未満のもの
×:フィルムをインサートしていない発泡成形体より無発泡層の厚みの比率が5%以上増加のもの
【0087】
【表1】
【0088】
表-1より、本発明によれば、表面平滑で外観に優れた上で、軽量化効果、断熱効果に優れた発泡成形体を得ることができることが分かる。
これに対して、インサートフィルムを表面層として残した場合、比較例1のように表面平滑性には優れるものの、発泡成形体全体に占める非発泡層の割合が大きく、軽量化効果、断熱効果は大きく損なわれる。
一方で、インサートフィルムを用いていない比較例2では、表面粗さ(Ra)が大きく、外観が劣る。
なお、実施例1と比較例2との対比から、インサートフィルムを取り外す本発明の方法では、むしろ射出発泡成形時のインサートフィルムの存在で、インサートフィルム側のスキン層の厚さを薄くすることができ、発泡成形体全体に占める発泡層厚さ割合は大きくなり、軽量化効果、断熱効果は向上することが分かる。
【符号の説明】
【0089】
1A,1B 金型
2 インサートフィルム
3 溶融樹脂
4 発泡成形体
4a スキン層
4b 発泡層
図1
図2