(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】3次元積層物造形装置及び3次元積層物造形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20241112BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20241112BHJP
B33Y 50/00 20150101ALN20241112BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/106
B33Y50/00
(21)【出願番号】P 2021058212
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】山本 康博
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-500251(JP,A)
【文献】特表2020-508909(JP,A)
【文献】特開2015-168135(JP,A)
【文献】特開平03-158228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/393
B29C 64/106
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融樹脂を貯留するシリンダと、
前記シリンダに連通した吐出ノズルと、
前記シリンダ内を往復直線運動するピストンであって、前記吐出ノズルに接近する方向に移動し前記シリンダ内の前記溶融樹脂を加圧することにより、前記吐出ノズルから前記溶融樹脂を吐出させるピストンと、を備え、前記吐出ノズルから吐出される前記溶融樹脂である樹脂ビードをテーブル上に積層することで、3次元造形物を造形する3次元積層物造形装置であって、
前記テーブルに対して前記吐出ノズルを相対的に移動させる移動部と、
前記吐出ノズルの移動速度を取得する取得部と、
前記ピストンの移動を制御するピストン制御部と、を備え、
前記ピストン制御部は、前記吐出ノズルの移動速度に基づいて、前記ピストンの移動を制御
し、
前記吐出ノズルから吐出される前記溶融樹脂の吐出流量を予測する流量予測部と、
前記吐出ノズルの移動を制御する吐出ノズル制御部と、を備え、
前記吐出ノズル制御部は、前記予測された吐出流量に基づいて、前記樹脂ビードの寸法が一定となるように、前記移動部を制御することにより前記吐出ノズルの移動速度を制御する3次元積層物造形装置。
【請求項2】
前記ピストン制御部は、前記吐出ノズルの移動速度に基づいて、前記樹脂ビードの寸法が一定となるように、前記ピストンの移動速度を制御する請求項1に記載の3次元積層物造形装置。
【請求項3】
前記ピストンに対して前記吐出ノズル側とは反対側の前記シリンダ内の空間は、樹脂原料が供給される樹脂原料被供給室であり、
前記ピストンに対して前記吐出ノズル側の前記シリンダ内の空間は、前記溶融樹脂を貯留する可塑化室であり、
前記ピストンは、前記吐出ノズルから離れる方向に移動することにより、前記樹脂原料被供給室に供給された前記樹脂原料を可塑化して当該可塑化された樹脂原料である前記溶融樹脂を前記可塑化室に貯留し、前記吐出ノズルに接近する方向に移動し前記可塑化室に貯留された前記溶融樹脂を加圧することにより、前記可塑化室に貯留された前記溶融樹脂を前記吐出ノズルから吐出させる請求項1又は2に記載の3次元積層物造形装置。
【請求項4】
前記ピストン制御部は、前記吐出ノズルから吐出される前記溶融樹脂の流量が、前記吐出ノズルの移動速度×前記樹脂ビードの断面積になるように、前記ピストンの移動速度を制御する請求項1から3のいずれか1項に記載の3次元積層物造形装置。
【請求項5】
前記シリンダに貯留された前記溶融樹脂の温度を制御する温度制御部をさらに備える請求項1から4のいずれか1項に記載の3次元積層物造形装置。
【請求項6】
前記吐出ノズル制御部は、前記吐出ノズルの移動速度が、前記予測された吐出流量/前記樹脂ビードの断面積になるように、前記移動部を制御することにより前記吐出ノズルの移動速度を制御する請求項
1に記載の3次元積層物造形装置。
【請求項7】
前記ピストン制御部は、所定タイミングで、前記ピストンが前記吐出ノズルから離れる方向に所定量移動するように前記ピストンを制御する請求項1から
6のいずれか1項に記載の3次元積層物造形装置。
【請求項8】
前記所定タイミングは、前記吐出ノズルの移動速度が0以外から0に変化したタイミングである請求項
7に記載の3次元積層物造形装置。
【請求項9】
前記所定量は、前記吐出ノズル内の樹脂圧力が前記吐出ノズル外の樹脂圧力より低くなる量である請求項
8に記載の3次元積層物造形装置。
【請求項10】
前記所定タイミングは、前記吐出ノズルの移動速度が0以外から0に変化すると予測されるタイミングより所定時間前のタイミングである請求項
7に記載の3次元積層物造形装置。
【請求項11】
前記所定量は、前記吐出ノズル内の樹脂圧力が前記吐出ノズル外の樹脂圧力より低くなる量である請求項
10に記載の3次元積層物造形装置。
【請求項12】
前記所定時間は、前記ピストンが前記所定量移動するのに要する時間である請求項
10又は11に記載の3次元積層物造形装置。
【請求項13】
溶融樹脂を貯留するシリンダと、
前記シリンダに連通した吐出ノズルと、
前記シリンダ内を往復直線運動するピストンであって、前記吐出ノズルに接近する方向に移動し前記シリンダ内の前記溶融樹脂を加圧することにより、前記吐出ノズルから前記溶融樹脂を吐出させるピストンと、を備え、前記吐出ノズルから吐出される前記溶融樹脂である樹脂ビードをテーブル上に積層することで、3次元造形物を造形する3次元積層物造形装置における3次元造形物造形方法であって、
前記3次元積層物造形装置は、前記テーブルに対して前記吐出ノズルを相対的に移動させる移動部をさらに備え、
前記吐出ノズルの移動速度を取得する取得ステップと、
前記ピストンの移動を制御するピストン制御ステップと、を備え、
前記ピストン制御ステップは、前記吐出ノズルの移動速度に基づいて、前記ピストンの移動を制御
し、
前記吐出ノズルから吐出される前記溶融樹脂の吐出流量を予測する流量予測ステップと、
前記吐出ノズルの移動を制御する吐出ノズル制御ステップと、をさらに備え、
前記吐出ノズル制御ステップは、前記予測された吐出流量に基づいて、前記樹脂ビードの直径が一定となるように、前記移動部を制御することにより前記吐出ノズルの移動速度を制御する3次元積層物造形方法。
【請求項14】
前記ピストン制御ステップは、所定タイミングで、前記ピストンが前記吐出ノズルから離れる方向に所定量移動するように、前記ピストンを制御する請求項
13に記載の3次元積層物造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元積層物造形装置及び3次元積層物造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直列に配置された押出機(スクリュー)とギアポンプを備え、上流に位置する押出機(スクリュー)から送られてくる溶融樹脂(流動性材料)をギアポンプで調整することにより、吐出ノズルから吐出される溶融樹脂の流量を制御する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2018/0056602号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の装置においては、溶融樹脂の流量を制御するには、押出機(スクリュー)及びギアポンプの両方の回転を同時に制御しなければならず、制御性が悪いという課題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、吐出ノズルから吐出される溶融樹脂の流量の制御性を改善することができる3次元積層物造形装置及び3次元積層物造形方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる3次元積層物造形装置は、
溶融樹脂を貯留するシリンダと、
前記シリンダに連通した吐出ノズルと、
前記シリンダ内を往復直線運動するピストンであって、前記吐出ノズルに接近する方向に移動し前記シリンダ内の前記溶融樹脂を加圧することにより、前記吐出ノズルから前記溶融樹脂を吐出させるピストンと、を備え、前記吐出ノズルから吐出される前記溶融樹脂である樹脂ビードをテーブル上に積層することで、3次元造形物を造形する3次元積層物造形装置であって、
前記テーブルに対して前記吐出ノズルを相対的に移動させる移動部と、
前記吐出ノズルの移動速度を取得する取得部と、
前記ピストンの移動を制御するピストン制御部と、を備え、
前記ピストン制御部は、前記吐出ノズルの移動速度に基づいて、前記ピストンの移動を制御する。
【0007】
このような構成により、吐出ノズルから吐出される溶融樹脂の流量の制御性を改善することができる。
【0008】
これは、押出機(スクリュー)及びギアポンプの両方の回転を制御するのではなく、溶融樹脂が貯留されたシリンダ内を往復直線運動するピストンの移動を制御することにより、溶融樹脂の流量を制御すること(流量制御の単純化)によるものである。
【0009】
また、前記ピストン制御部は、前記吐出ノズルの移動速度に基づいて、前記樹脂ビードの寸法が一定となるように、前記ピストンの移動速度を制御してもよい。
【0010】
このようにすれば、吐出ノズルの移動速度に基づいて、溶融樹脂が貯留されたシリンダ内を往復直線運動するピストンの移動速度を制御することにより、樹脂ビードの寸法を一定(略一定)に制御することができる。
【0011】
また、前記ピストンに対して前記吐出ノズル側とは反対側の前記シリンダ内の空間は、樹脂原料が供給される樹脂原料被供給室であり、
前記ピストンに対して前記吐出ノズル側の前記シリンダ内の空間は、前記溶融樹脂を貯留する可塑化室であり、
前記ピストンは、前記吐出ノズルから離れる方向に移動することにより、前記樹脂原料被供給室に供給された前記樹脂原料を可塑化して当該可塑化された樹脂原料である前記溶融樹脂を前記可塑化室に貯留し、前記吐出ノズルに接近する方向に移動し前記可塑化室に貯留された前記溶融樹脂を加圧することにより、前記可塑化室に貯留された前記溶融樹脂を前記吐出ノズルから吐出させてもよい。
【0012】
このようにすれば、一旦樹脂原料を可塑化し貯留した後、往復直線運動する一つのピストンにより当該貯留した溶融樹脂を加圧することにより、吐出ノズルから溶融樹脂を吐出させることができる。これにより、押出機(スクリュー)及びギアポンプの両方の回転を同時に制御する上記特許文献1と比べ、制御性が改善される。また、樹脂原料の可塑化(溶融樹脂の生成及び貯留)と貯留された溶融樹脂の流量の制御とを、往復直線運動する一つのピストンで行うことができる。また、一つのピストンにより樹脂原料の可塑化と貯留された溶融樹脂の流量の制御とを行うことができるため、樹脂原料を可塑化するための機構を別途設ける必要がない。
【0013】
また、前記ピストン制御部は、前記吐出ノズルから吐出される前記溶融樹脂の流量が、前記吐出ノズルの移動速度×前記樹脂ビードの断面積になるように、前記ピストンの移動速度を制御してもよい。
【0014】
このようにすれば、樹脂ビードの寸法を一定(略一定)に制御することができる。
【0015】
また、前記シリンダに貯留された前記溶融樹脂の温度を制御する温度制御部をさらに備えていてもよい。
【0016】
このようにすれば、シリンダに貯留された溶融樹脂の温度を当該溶融樹脂に適した温度(過熱されず溶融状態が保たれる温度)となるように制御することができる。
【0017】
また、前記吐出ノズルから吐出される前記溶融樹脂の吐出流量を予測する流量予測部と、
前記吐出ノズルの移動を制御する吐出ノズル制御部と、を備え、
前記吐出ノズル制御部は、前記予測された吐出流量に基づいて、前記樹脂ビードの寸法が一定となるように、前記移動部を制御することにより前記吐出ノズルの移動速度を制御してもよい。
【0018】
このようにすれば、予測された吐出流量に基づいて、吐出ノズルの移動速度を制御することにより、樹脂ビードの寸法を一定(略一定)に制御することができる。
【0019】
また、前記吐出ノズル制御部は、前記吐出ノズルの移動速度が、前記予測された吐出流量/前記樹脂ビードの断面積になるように、前記移動部を制御することにより前記吐出ノズルの移動速度を制御してもよい。
【0020】
このようにすれば、樹脂ビードの寸法を一定(略一定)に制御することができる。
【0021】
また、前記ピストン制御部は、所定タイミングで、前記ピストンが前記吐出ノズルから離れる方向に所定量移動するように前記ピストンを制御してもよい。
【0022】
このようにすれば、所定タイミングで、ピストンが吐出ノズルから離れる方向に所定量移動するようにピストンを制御することにより、吐出圧力を負圧(例えば、外気圧より小さい圧力)にすることができる。これにより、残圧や重力等により溶融樹脂が吐出され続けるのを抑制することができる。その結果、樹脂ビードの寸法を一定(略一定)に制御することができる。
【0023】
また、前記所定タイミングは、前記吐出ノズルの移動速度が0以外から0に変化したタイミングであってもよい。
【0024】
このようにすれば、吐出ノズルの移動速度が0以外から0に変化したタイミング(移動する吐出ノズルが停止したタイミング)で吐出圧力を負圧(例えば、外気圧より小さい圧力)にすることができる。
【0025】
また、前記所定量は、前記吐出ノズル内の樹脂圧力が前記吐出ノズル外の樹脂圧力より低くなる量であってもよい。
【0026】
このようにすれば、吐出ノズル内の樹脂圧力が前記吐出ノズル外の樹脂圧力より低くなることにより、残圧や重力等により溶融樹脂が吐出され続けるのを抑制することができる。
【0027】
また、前記所定タイミングは、前記吐出ノズルの移動速度が0以外から0に変化すると予測されるタイミングより所定時間前のタイミングであってもよい。
【0028】
このようにすれば、吐出ノズルの移動速度が0以外から0に変化する(移動する吐出ノズルが停止する)と予測されるタイミングより前の所定時間の間、吐出圧力を負圧(例えば、外気圧より小さい圧力)にすることができる。
【0029】
また、前記所定量は、前記吐出ノズル内の樹脂圧力が前記吐出ノズル外の樹脂圧力より低くなる量であってもよい。
【0030】
このようにすれば、吐出ノズル内の樹脂圧力が前記吐出ノズル外の樹脂圧力より低くなることにより、残圧や重力等により溶融樹脂が吐出され続けるのを抑制することができる。
【0031】
また、前記所定時間は、前記ピストンが前記所定量移動するのに要する時間であってもよい。
【0032】
このようにすれば、吐出ノズルの移動速度が0以外から0に変化するタイミング(移動する吐出ノズルが停止するタイミング)と同じタイミングで、残圧や重力等により溶融樹脂が吐出され続けるのを抑制することができる(吐出ノズルから吐出される溶融樹脂の流量を0(ゼロ)にできる)。
【0033】
また、前記吐出ノズルから離れる方向への前記ピストンの移動速度は、前記樹脂原料被供給室から可塑化室にエアが流入しない速度であってもよい。
【0034】
このようにすれば、可塑化室へのエアの混入を防止することができる。
【0035】
また、前記可塑化室と前記吐出ノズルとの間に配置され、前記可塑化室と前記吐出ノズルとを連通する前記溶融樹脂の流路を開く開位置又は当該流路を閉鎖する閉位置に位置するチェックボールと、
弾性力により前記チェックボールを前記閉位置に位置させる弾性部材と、をさらに備え、
前記チェックボールは、前記ピストンが前記吐出ノズルに接近する方向に移動し前記シリンダ内の前記溶融樹脂を加圧する圧力が所定圧力を超えた場合、前記弾性部材を弾性変形させつつ前記閉位置から前記開位置に移動し、前記ピストンが前記吐出ノズルから離れる方向に移動した場合、前記弾性部材が弾性変形前の形状に戻る復元力により前記開位置から前記閉位置に移動してもよい。
【0036】
このようにすれば、シリンダ内を往復直線運動するピストンの移動に応じてチェックボールが自動的に開位置又は閉位置に移動することにより、複数のシリンダと吐出ノズルとを連通させ、一方のシリンダ内の溶融樹脂を吐出ノズルから吐出させる場合、他方のシリンダ内に溶融樹脂が逆流することを防止することができる。
【0037】
また、前記ピストン制御部は、前記吐出ノズルの出口と前記3次元造形物とが流体的につながった状態で、前記ピストンが前記吐出ノズルから離れる方向に所定量移動するように前記ピストンを制御することにより、前記3次元造形物のうち未硬化の前記樹脂ビードを吸引してもよい。
【0038】
これにより、3次元造形物のうち一旦積層された未硬化の樹脂ビード(例えば、樹脂ビードが重なった部分の樹脂ビード)を吸引することができる。その結果、樹脂ビードの寸法を一定(略一定)に制御することができる。
【0039】
また、前記シリンダと前記ピストンとの複数の組み合わせを備えていてもよい。
【0040】
このようにすれば、途切れることなく連続して溶融樹脂を吐出させることができる。
【0041】
また、本発明にかかる3次元積層物造形方法は、
溶融樹脂を貯留するシリンダと、
前記シリンダに連通した吐出ノズルと、
前記シリンダ内を往復直線運動するピストンであって、前記吐出ノズルに接近する方向に移動し前記シリンダ内の前記溶融樹脂を加圧することにより、前記吐出ノズルから前記溶融樹脂を吐出させるピストンと、を備え、前記吐出ノズルから吐出される前記溶融樹脂である樹脂ビードをテーブル上に積層することで、3次元造形物を造形する3次元積層物造形装置における3次元造形物造形方法であって、
前記3次元積層物造形装置は、前記テーブルに対して前記吐出ノズルを相対的に移動させる移動部をさらに備え、
前記吐出ノズルの移動速度を取得する取得ステップと、
前記ピストンの移動を制御するピストン制御ステップと、を備え、
前記ピストン制御ステップは、前記吐出ノズルの移動速度に基づいて、前記ピストンの移動を制御する。
【0042】
また、前記吐出ノズルから吐出される前記溶融樹脂の吐出流量を予測する流量予測ステップと、
前記吐出ノズルの移動を制御する吐出ノズル制御ステップと、を備え、
前記吐出ノズル制御ステップは、前記予測された吐出流量に基づいて、前記樹脂ビードの直径が一定となるように、前記移動部を制御することにより前記吐出ノズルの移動速度を制御してもよい。
【0043】
また、前記ピストン制御ステップは、所定タイミングで、前記ピストンが前記吐出ノズルから離れる方向に所定量移動するように、前記移動部を制御してもよい。
【発明の効果】
【0044】
本発明により、吐出ノズルから吐出される溶融樹脂の流量の制御性を改善することができる3次元積層物造形装置及び3次元積層物造形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】実施の形態1の射出成形装置を概略的に示す図である。
【
図2】実施の形態1の射出成形装置の制御系のブロック図である。
【
図3】実施の形態1の射出成形機のZ軸-側の部分を拡大して示す図である。
【
図7】実施の形態1の第1のピストンユニット及び第2のピストンユニットを示す斜視図である。
【
図8】実施の形態1の第1のピストンユニット及び第2のピストンユニットを示す分解図である。
【
図9】実施の形態1の射出成形装置の動作を示す図である。
【
図10】実施の形態1の射出成形装置の動作を示す図である。
【
図11】実施の形態1の射出成形装置の動作を示す図である。
【
図12】実施の形態1の射出成形装置の動作を示す図である。
【
図13】実施の形態1の射出成形装置の動作を示す図である。
【
図14】実施の形態2の射出成形機2Aの構成図である。
【
図15】実施の形態2の制御装置7Aの構成図である。
【
図16】(a)ノズル移動速度と指示流量との関係を表すグラフ(ノズル径が1mm、シリンダー径が20mmの場合)、(b)ノズル移動速度と指示流量との関係を表す他のグラフ(ノズル径が12mm、シリンダー径が100mmの場合)である。
【
図18】(a)体積弾性率の算出数値表の一例、(b)
図18(a)をプロットしたグラフである。
【
図19】圧力と流量の関係をせん断速度と溶融粘度の関係に変換する具体例(樹脂名:ABS、温度:210℃)である。
【
図20】
図19中の「せん断速度」及び「溶融粘度」をプロットしたグラフである。
【
図21】ターゲット圧力算出部31Aの動作例のフローチャートである。
【
図22】移動速度算出部32Aの動作例(トーピード移動速度フィードフォーワード制御)のフローチャートである。
【
図24】式12~式15中の各要素を図示した概略図である。
【
図25】吐出の2サイクル目以降の動作例のフローチャートである。
【
図26】式18~式19中の各要素を図示した概略図である。
【
図27】流量制御の実施例1、実施例2共通のフローチャートである。
【
図28】実施例1のシミュレーション結果(1~3サイクル)をまとめた表である。
【
図29】実施例2のシミュレーション結果(1~3サイクル)をまとめた表である。
【
図30】実施の形態3の制御装置7Bの構成図である。
【
図31】異常検出部35Aの動作例(自動停止判定及び欠陥発生判定ロジック)のフローチャートである。
【
図32】異常検出部35Aの他の動作例(自動停止判定及び欠陥発生判定ロジック)のフローチャートである。
【
図33】3Dプリンタに用いた時の造形欠陥予測位置の記録方法の実施例のフローチャートである。
【
図34】実施例3の結果(1~6サイクル)をまとめた表である。
【
図35】位置記憶部25に記憶された造形欠陥の予測位置(異常検出部35Aが異常(欠陥)を検出した時点のノズル位置)の一例である。
【
図36】実施例4の結果(1~5サイクル)をまとめた表である。
【
図37】実施の形態4の3Dプリンタ300のシステム構成図である。
【
図38】(a)X軸方向ノズル速度と時間との関係を表すグラフ、(b)Y軸方向ノズル速度と時間との関係を表すグラフ、(c)ノズル並進速度の大きさと時間との関係を表すグラフである。
【
図39】3Dプリンタ300の機能ブロック図である。
【
図40】3Dプリンタ300の動作の概略のフローチャートである。
【
図41】3Dプリンタ300の動作の詳細のフローチャートである。
【
図42】押し出す流量Q
iと吐出ノズル18の並進速度V
Rとの関係を表すグラフである。
【
図43】
図41のフローチャートにより造形した3次元造形物Ob1(積層造形体)の例である。
【
図44】3Dプリンタ300の他の動作例1の詳細のフローチャートである。
【
図45】吐出ノズル18の並進速度V
iと予測された吐出流量Q
P(予測流出量)との関係を表すグラフである。
【
図46】
図44のフローチャートにより造形した3次元造形物Ob2(積層造形体)の例である。
【
図47】3Dプリンタ300の他の動作例2の詳細のフローチャートである。
【
図49】3Dプリンタ300の他の動作例3の詳細のフローチャートである。
【
図50】
図49のフローチャートにより造形した3次元造形物Ob3(積層造形体)の例である。
【
図52】実施の形態6の利点及び比較例6の課題1を図示した図である。
【
図53】流体的に繋がった状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本開示を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本開示が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0047】
<実施の形態1>
先ず、本実施の形態の射出成形装置の構成を説明する。本実施の形態の射出成形装置は、射出成形機を用いてワークを積層造形する際に好適である。
図1は、本実施の形態の射出成形装置を概略的に示す図である。
図2は、本実施の形態の射出成形装置の制御系のブロック図である。なお、以下の説明では、説明を明確にするために、三次元(XYZ)座標系を用いて説明する。
【0048】
射出成形装置1は、
図1及び
図2に示すように、射出成形機2、供給装置3、テーブル4(以下、ベースプレート4とも呼ぶ)、移動装置5、加熱装置6及び制御装置7を備えている。射出成形機2は、例えば、連続的に溶融樹脂を射出可能な構成である。
図3は、本実施の形態の射出成形機のZ軸-側の部分を拡大して示す図である。
図4は、
図3のIV-IV矢視断面図である。
図5は、
図1のV-V矢視断面図である。
図6は、
図3のVI-VI矢視断面図である。
【0049】
射出成形機2は、
図1乃至
図3に示すように、第1のシリンダ11、第2のシリンダ12、端部プレート13、第1のピストンユニット14、第2のピストンユニット15、第1の駆動部16、第2の駆動部17、射出部18及び第1の制御部19を備えている。
【0050】
第1のシリンダ11は、
図3に示すように、Z軸方向に延在しており、第1のシリンダ11のZ軸+側の端部が閉塞された有天筒形状を基本形態としている。つまり、第1のシリンダ11は、Z軸+側に配置された閉塞部11a、及び閉塞部11aの周縁部と連続し、且つ、閉塞部11aからZ軸-側に延在する筒状の側壁部11bを備えており、第1のシリンダ11のZ軸-側の端部が開放されている。
【0051】
第1のシリンダ11の閉塞部11aには、
図3に示すように、当該閉塞部11aをZ軸方向に貫通する貫通孔11cが形成されている。また、第1のシリンダ11の側壁部11bにおけるZ軸+側の部分には、
図3及び
図4に示すように、樹脂原料が供給される供給孔11dが形成されている。樹脂原料は、例えば、樹脂ペレット(複数)である。
【0052】
第2のシリンダ12は、
図3及び
図4に示すように、Z軸方向に延在しており、第1のシリンダ11とY軸方向で並べられている。第2のシリンダ12は、第1のシリンダ11と等しい構成とされているため、重複する説明は省略するが、貫通孔12cを有する閉塞部12a、及び供給孔12dを有する側壁部12bを備えており、第2のシリンダ12のZ軸-側の端部が開放されている。
【0053】
端部プレート13は、
図3に示すように、第1のシリンダ11及び第2のシリンダ12のZ軸-側の端部に固定されている。端部プレート13は、本体部13a及び逆止弁13bを備えている。本体部13aは、例えば、板形状を基本形態としており、Y軸方向に間隔を開けて貫通孔13cが形成されている。
【0054】
貫通孔13cは、
図3に示すように、本体部13aをZ軸方向に貫通しており、貫通孔13cのZ軸-側の部分に逆止弁13bが収容される収容部13dを備えている。収容部13dのZ軸+側の面は、貫通孔13cの中心から外側に向かうのに従ってZ軸-側に傾斜する傾斜面である。
【0055】
このとき、貫通孔13cのZ軸+側の部分は、貫通孔13cの中心から外側に向かうのに従ってZ軸+側に傾斜する傾斜面を備え、当該傾斜面のZ軸-側の端部が収容部13dのZ軸+側の端部と連続しているとよい。
【0056】
逆止弁13bは、Z軸-側への溶融樹脂の流れを許容し、Z軸+側への溶融樹脂の流れを遮断する。逆止弁13bは、例えば、チェックバルブで構成することができ、
図3に示すように、チェックボール13e及びスプリング13fを備えている。ここで、スプリング13fの弾性力は、チェックボール13eに予め設定された圧力が作用した際に逆止弁13bが開放されるように、適宜、設定すればよい。
【0057】
このような端部プレート13は、
図3に示すように、端部プレート13で第1のシリンダ11のZ軸-側の開放口及び第2のシリンダ12のZ軸-側の開放口を覆うように、本体部13aに形成されたボルト孔13gに通されたボルト13hを介して第1のシリンダ11及び第2のシリンダ12のZ軸-側の端部に固定されている。
【0058】
このとき、端部プレート13におけるY軸-側の貫通孔13cが第1のシリンダ11に対してZ軸-側に配置され、端部プレート13におけるY軸+側の貫通孔13cが第2のシリンダ12に対してZ軸-側に配置される。
【0059】
ここで、端部プレート13におけるY軸-側の貫通孔13cの中心軸と、第1のシリンダ11の中心軸と、が略重なるように配置され、端部プレート13におけるY軸+側の貫通孔13cの中心軸と、第2のシリンダ12の中心軸と、が略重なるように配置されるとよい。
【0060】
第1のピストンユニット14は、
図3に示すように、第1のシリンダ11の内部を摺動可能に当該第1のシリンダ11の内部に配置されている。
図7は、本実施の形態の第1のピストンユニット及び第2のピストンユニットを示す斜視図である。
図8は、本実施の形態の第1のピストンユニット及び第2のピストンユニットを示す分解図である。
【0061】
第1のピストンユニット14は、
図7及び
図8に示すように、トーピードピストン14a、逆止リング14b、ストッパ14c、加圧ピストン14d及び付勢手段14eを備えている。トーピードピストン14aは、トーピードピストン14aのZ軸+側の端部が閉塞された有天筒形状を基本形態としており、大凡、第1のシリンダ11の内周形状と対応する外周形状を有する。このとき、トーピードピストン14aのZ軸+側の面は、トーピードピストン14aの中央から周縁部に向かうのに従ってZ軸-側に向かって傾斜する傾斜面とされているとよい。
【0062】
トーピードピストン14aの外周面には、
図7及び
図8に示すように、溝部14fが形成されている。溝部14fは、Z軸方向に延在しており、トーピードピストン14aの周方向に略等しい間隔で配置されている。
【0063】
但し、溝部14fは、後述するように、第1のシリンダ11における第1のピストンユニット14に対してZ軸+側の第1の空間S1に供給された樹脂原料が溝部14fを通過する際に、樹脂原料を可塑化させて溶融樹脂とし、当該溶融樹脂を第1のシリンダ11における第1のピストンユニット14に対してZ軸-側の第2の空間S2に流入させることができる形状及び配置であればよい。
【0064】
逆止リング14bは、
図5、
図7及び
図8に示すように、第1のシリンダ11の内周形状と略等しい外周形状を有する環形状であり、トーピードピストン14aに対してZ軸-側に配置されている。ストッパ14cは、逆止リング14bをトーピードピストン14aのZ軸-側の端部に保持する。
【0065】
ストッパ14cは、例えば、
図8に示すように、リング部14g及び引っ掛け部14hを備えている。リング部14gは、トーピードピストン14aの内周形状と略等しい外周形状を有する。引っ掛け部14hは、Z軸に対して直交する方向から見て略L字形状であり、引っ掛け部14hの鉛直部分のZ軸+側の端部がリング部14gに固定されている。
【0066】
引っ掛け部14hの水平部分は、
図8に示すように、引っ掛け部14hの鉛直部分のZ軸-側の端部からリング部14gの外側に向かって突出している。引っ掛け部14hは、リング部14gの周方向に略等しい間隔で配置されている。
【0067】
リング部14g、及び引っ掛け部14hの鉛直部分が逆止リング14bの貫通孔に通された状態で、リング部14gがトーピードピストン14aのZ軸-側の端部の開放口に嵌合されている。これにより、逆止リング14bは、ストッパ14cを介してトーピードピストン14aのZ軸-側の端部に保持されている。
【0068】
このとき、引っ掛け部14hの鉛直部分のZ軸方向の長さは、逆止リング14bのZ軸方向の厚さに対して長い。これにより、逆止リング14bは、第1のシリンダ11のZ軸-側の端部と引っ掛け部14hの水平部分との間でZ軸方向に移動可能である。但し、ストッパ14cは、逆止リング14bをZ軸方向に移動可能に第1のシリンダ11のZ軸-側の端部に保持できる構成であればよい。
【0069】
加圧ピストン14dは、
図7及び
図8に示すように、加圧ピストン14dのZ軸-側の端部が閉塞された有底筒形状であり、例えば、加圧ピストン14dのZ軸-側の端面は、XY平面と平行な略平坦面である。そして、加圧ピストン14dの外周形状は、トーピードピストン14aの内周形状と略等しい。
【0070】
加圧ピストン14dは、
図3に示すように、トーピードピストン14aの内周面と加圧ピストン14dの外周面との間をシール部材14iで塞いだ状態で当該トーピードピストン14aの内部に摺動可能に挿入されている。
【0071】
つまり、トーピードピストン14aの内部は加圧ピストン14dの摺動部として機能し、加圧ピストン14dがトーピードピストン14aに対してZ軸方向に摺動することで、トーピードピストン14aに対する第1のシリンダ11の第2の空間S2への突出量が変化する。なお、加圧ピストン14dの外周縁で囲まれた領域の面積や最大移動量などは、後述する。
【0072】
このとき、詳細な機能は後述するが、
図7及び
図8に示すように、加圧ピストン14dのZ軸-側の端面には、溶融樹脂が侵入する侵入部14jが形成されているとよい。侵入部14jは、例えば、加圧ピストン14dのZ軸-側の端面に形成された溝部であり、Z軸に対して直交する方向に延在している。
【0073】
但し、侵入部14jは、加圧ピストン14dのZ軸-側の端面が端部プレート13のZ軸+側の端部に接触した状態で、加圧ピストン14dのZ軸-側の端面と端部プレート13のZ軸+側の端部との間に溶融樹脂を侵入させることができる形状であればよい。
【0074】
付勢手段14eは、加圧ピストン14dをトーピードピストン14aに対して第1のシリンダ11の第2の空間S2の側に付勢する。付勢手段14eは、例えば、
図8に示すように、コイルバネなどの弾性部材である。
【0075】
付勢手段14eは、付勢手段14eのZ軸+側の端部がトーピードピストン14aのZ軸+側の端部に接触し、付勢手段14eのZ軸-側の端部が加圧ピストン14dのZ軸-側の端部に接触した状態で、加圧ピストン14dの内部に配置されている。なお、付勢手段14eの付勢力などは、後述する。
【0076】
第2のピストンユニット15は、
図3に示すように、第2のシリンダ12の内部を摺動可能に当該第2のシリンダ12の内部に配置されている。第2のピストンユニット15は、第1のピストンユニット14と等しい構成とされているため、重複する説明は省略するが、
図5、
図7及び
図8に示すように、外周面に溝部15fが形成されたトーピードピストン15a、逆止リング15b、リング部15g及び引っ掛け部15hを備えるストッパ15c、加圧ピストン15d及び付勢手段15eを備えている。
【0077】
そして、
図3に示すように、トーピードピストン15aの内周面と加圧ピストン15dの外周面との間をシール部材15iで塞いだ状態で、加圧ピストン15dがトーピードピストン15aの内部に摺動可能に挿入されている。このとき、
図5、
図7及び
図8に示すように、加圧ピストン15dのZ軸-側の端面にも、溶融樹脂が侵入する侵入部15jが形成されているとよい。
【0078】
第1の駆動部16は、第1のピストンユニット14をZ軸方向に駆動させる。第1の駆動部16は、
図3に示すように、モータ16a、ネジ軸16b、スライダ16c、ロッド16d及びケース16eを備えている。モータ16aは、例えば、サーボモータであり、ケース16eのZ軸+側の端部に固定されている。モータ16aの出力軸の回転角度は、エンコーダ16f(
図2を参照)によって検出される。
【0079】
ネジ軸16bは、
図3に示すように、Z軸方向に延在しており、ケース16eの内部で軸受け16gを介して回転可能に支持されている。そして、ネジ軸16bのZ軸+側の端部は、ケース16eのZ軸+側の端部に形成された貫通孔16hに通された状態で、モータ16aの出力軸から駆動力を伝達可能に当該出力軸に接続されている。
【0080】
スライダ16cは、ネジ孔を備えており、ケース16eの内部でスライダ16cがネジ軸16bに沿って移動するように、スライダ16cのネジ孔がネジ軸16bに噛み合わされている。これらのネジ軸16b及びスライダ16cは、ボールネジを構成し、ケース16eの内部に収容されている。
【0081】
ロッド16dは、
図3に示すように、Z軸方向に延在しており、ケース16eのZ軸-側の端部に形成された貫通孔16i及び第1のシリンダ11の貫通孔11cに通されている。ロッド16dのZ軸+側の端部はスライダ16cに固定され、ロッド16dのZ軸-側の端部は第1のピストンユニット14のトーピードピストン14aのZ軸+側の端部に固定されている。
【0082】
ケース16eは、
図3に示すように、モータ16a、ネジ軸16b、スライダ16c及びロッド16dを支持する。ケース16eは、例えば、箱形状であり、ケース16eの内部に密閉空間を形成している。このようなケース16eのZ軸-側の端部には、第1のシリンダ11の閉塞部11aが固定されている。
【0083】
第2の駆動部17は、第2のピストンユニット15をZ軸方向に駆動させる。第2の駆動部17は、第1の駆動部16と略等しい構成とされているため、重複する説明は省略するが、
図3に示すように、モータ17a、ネジ軸17b、スライダ17c、ロッド17d及びケース17eを備えている。
【0084】
つまり、モータ17aは、ケース17eのZ軸+側の端部に固定されており、モータ17aの出力軸の回転角度がエンコーダ17f(
図2を参照)によって検出される。ネジ軸17bは、
図3に示すように、軸受け17gを介してケース17eの内部で支持されており、ネジ軸17bがケース17eのZ軸+側の端部に形成された貫通孔17hに通された状態で、ネジ軸17bのZ軸+側の端部がモータ17aの出力軸に接続されている。
【0085】
スライダ17cは、ケース17eの内部でネジ軸17bに沿って移動するように、スライダ17cのネジ孔がネジ軸17bに噛み合わされている。ロッド17dは、ケース17eのZ軸-側の端部に形成された貫通孔17i及び第2のシリンダ12の貫通孔12cに通されている。そして、ロッド17dのZ軸+側の端部はスライダ17cに固定され、ロッド17dのZ軸-側の端部は第2のピストンユニット15のトーピードピストン15aのZ軸+側の端部に固定されている。
【0086】
ケース17eは、
図3に示すように、モータ17a、ネジ軸17b、スライダ17c及びロッド17dを支持し、ケース16eの内部に密閉空間を形成している。そして、ケース17eのZ軸-側の端部には、第2のシリンダ12の閉塞部12aが固定されている。
【0087】
本実施の形態では、
図1及び
図3に示すように、ケース17eを第1の駆動部16のケース16eと一体的に形成しており、共通の密閉空間を形成している。そのため、以下の説明では、第1の駆動部16のケース16eを示す場合、第2の駆動部17のケース17eも併せて示している場合がある。但し、ケース17eは、第1の駆動部16のケース16eと別部材で構成してもよい。
【0088】
射出部18は、第1のシリンダ11及び第2のシリンダ12から押し出される溶融樹脂を射出することができるように、端部プレート13に対してZ軸-側に配置されている。射出部18は、
図3に示すように、溶融樹脂を射出する射出口18a(樹脂吐出孔。本発明の吐出ノズルに相当。以下、吐出ノズル18a又はノズル18aとも呼ぶ)、射出口18aからZ軸+側であって、且つ、Y軸-側に延在する第1の分岐路18b、及び、射出口18aからZ軸+側であって、且つ、Y軸+側に延在する第2の分岐路18cを備えている。ここで、射出口18aは、Z軸-側に向かうのに従って絞られた形状であるとよい。
【0089】
射出部18は、
図3に示すように、リテーリングナット18dを介して端部プレート13に固定されている。このとき、第1の分岐路18bのZ軸+側の端部は、端部プレート13におけるY軸-側の貫通孔13cと連通し、第2の分岐路18cのZ軸+側の端部は、端部プレート13におけるY軸+側の貫通孔13cと連通する。
【0090】
射出部18は、射出口18aが形成される第1のプレート18eと、第1の分岐路18b及び第2の分岐路18cが形成される第2のプレート18fと、に分割されており、詳細な機能は後述するが、第1のプレート18e又は第2のプレート18fの少なくとも一方がセラミックプレートで構成されているとよい。ここで、射出部18には、逆止弁13bの一部を収容する収容部を形成することができる。
【0091】
第1の制御部19は、詳細は後述するが、エンコーダ16f、17fの検出結果に基づいて、第1の駆動部16のモータ16a及び第2の駆動部17のモータ17aを制御する。
【0092】
供給装置3は、樹脂原料を第1のシリンダ11及び第2のシリンダ12に供給する。供給装置3は、
図1乃至
図3に示すように、排気部31、ホッパ32、加圧部33及び第2の制御部34を備えている。排気部31は、第1のシリンダ11の第1の空間S1、第2のシリンダ12における第2のピストンユニット15に対してZ軸+側の第1の空間S3、及びトーピードピストン14a、15aと加圧ピストン14d、15dとで囲まれた空間から気体を排出する。
【0093】
詳細には、排気部31は、排気路31a、排気孔31b及び排気弁31cを備えている。排気路31aは、
図3に示すように、第1の駆動部16のロッド16d並びにトーピードピストン14a、及び第2の駆動部17のロッド17d並びにトーピードピストン15aに夫々形成されている。排気路31aは、ロッド16d、17dの内部を通ってトーピードピストン14a、15aのZ軸+側の端部を貫通し、Z軸方向に延在している。
【0094】
排気路31aのZ軸-側の端部は、分岐しており、ロッド16d、17dのZ軸-側の端部の周面に到達すると共に、トーピードピストン14a、15aと加圧ピストン14d、15dとで囲まれた空間に到達し、排気路31aのZ軸+側の端部は、ロッド16d、17dのZ軸+側の端面に到達している。
【0095】
そのため、排気路31aのZ軸-側の端部は、第1のシリンダ11の第1の空間S1及びトーピードピストン14aと加圧ピストン15dとで囲まれた空間、又は第2のシリンダ12の第1の空間S3及びトーピードピストン15aと加圧ピストン15dとで囲まれた空間に連通し、排気路31aのZ軸+側の端部は、第1の駆動部16のケース16eの内部に配置されている。
【0096】
排気孔31bは、第1の駆動部16のケース16eに形成されている。但し、第1の駆動部16のケース16eと第2の駆動部17のケース17eとが別部材で構成されている場合、各々のケース16e、17eに排気孔31bが形成される。排気弁31cは、排気管35を介して排気孔31bに接続されている。排気弁31cは、例えば、電磁バルブである。
【0097】
ホッパ32は、第1のシリンダ11の第1の空間S1及び第2のシリンダ12の第1の空間S3に供給する樹脂原料Mを収容する。本実施の形態では、
図1に示すように、ホッパ32として、第1のホッパ32a及び第2のホッパ32bを備えている。
【0098】
第1のホッパ32aは、第1のホッパ32aの内部を密閉可能な構成とされており、第1の供給管36を介して第1のシリンダ11の供給孔11dに接続されている。第2のホッパ32bは、第2のホッパ32bの内部を密閉可能な構成とされており、第2の供給管37を介して第2のシリンダ12の供給孔12dに接続されている。
【0099】
これらの第1のホッパ32a及び第2のホッパ32bは、余熱ヒータによって樹脂原料Mを乾燥状態に維持できる構成であればよい。これにより、樹脂原料Mを可塑化する際に発生する水蒸気による造形不良を抑制することができる。
【0100】
また、第1のシリンダ11の供給孔11d、第2のシリンダ12の供給孔12d、第1の供給管36及び第2の供給管37の内径は、樹脂原料Mである樹脂ペレットの対角線の2倍以下であるとよい。
【0101】
これにより、第1のシリンダ11の供給孔11d、第2のシリンダ12の供給孔12d、第1の供給管36及び第2の供給管37で樹脂原料Mが並んでブリッジを起こし、各々の内部が詰まることを抑制できる。
【0102】
加圧部33は、ホッパ32内を気体で加圧するエアポンプである。本実施の形態では、
図1に示すように、加圧部33は、第1の接続管38を介して第1のホッパ32aに接続され、且つ、第2の接続管39を介いて第2のホッパ32bに接続されている。
【0103】
加圧部33は、例えば、常時、ホッパ32内を加圧する。そのため、排気弁31c及び端部プレート13の逆止弁13bが閉じた状態では、第1のシリンダ11と、第2のシリンダ12と、トーピードピストン14a、15aと加圧ピストン14d、15dとで囲まれた空間と、第1の駆動部16のケース16eと、で形成される密閉空間が当該ケース16eの外側に対して高圧に維持される。
【0104】
第2の制御部34は、後述する所望のタイミングで第1のシリンダ11の第1の空間S1又は第2のシリンダ12の第1の空間S3から気体を排出するために、排気弁31cを制御する。
【0105】
テーブル4は、
図1に示すように、射出成形機2に対してZ軸-側に配置されており、射出成形機2の射出口18aから射出される溶融樹脂を積層してワークを成形するための成形台である。この射出口18aから射出(吐出)される溶融樹脂は、樹脂ビード(射出口18aから吐出された溶融樹脂が糸のように固まったもの)と呼ばれる。ここで、テーブル4は、例えば、加熱可能な構成とされているとよい。移動装置5は、ワークを成形するために射出成形機2及びテーブル4を移動させる。移動装置5は、例えば、
図1及び
図2に示すように、ガントリー装置51、昇降装置52及び第3の制御部53を備えている。
【0106】
ガントリー装置51は、射出成形機2をX軸方向及びY軸方向に移動させる。ガントリー装置51としては、一般的なガントリー装置を用いることができ、例えば、
図37に示すように、X軸方向に延在するスライドレール51aとY軸方向に延在するスライドレール51bとを組み合わせて構成することができる。なお、ガントリー装置51として、射出成形機2をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動させるものを用いてもよい。
【0107】
昇降装置52は、テーブル4をZ軸方向に昇降させる。昇降装置52としては、例えば、一般的な昇降装置を用いることができ、ボールネジで構成することができる。第3の制御部53は、射出成形機2から射出される溶融樹脂を積層して所望のワークを成形するためにガントリー装置51及び昇降装置52を制御する。
【0108】
加熱装置6は、
図1乃至
図3に示すように、第1の加熱部61、第2の加熱部62、温度検出部63及び第4の制御部64を備えている。第1の加熱部61は、可塑化された溶融樹脂を保温する。
【0109】
第1の加熱部61は、例えば、第1のシリンダ11及び第2のシリンダ12のZ軸-側の部分を囲むシートヒータで構成することができる。但し、第1の加熱部61は、可塑化された溶融樹脂を保温できればよく、第1の加熱部61の構成及び配置は限定されない。
【0110】
第2の加熱部62は、溶融樹脂の温度を所望の温度に加熱する。第2の加熱部62は、例えば、
図3及び
図6に示すように、シートヒータ62a及び伝熱部材62bを備えている。シートヒータ62aは、Z軸方向から見て、射出部18の射出口18aを中心に略等しい間隔で配置されている。伝熱部材62bは、伝熱部材62bの略中央に貫通孔が形成された円板状であり、セラミックプレートで構成されている。
【0111】
伝熱部材62bは、第1のプレート18eと第2のプレート18fとの間に配置されている。このとき、シートヒータ62aは、伝熱部材62bと第1のプレート18eとの間、又は伝熱部材62bと第2のプレート18fとの間に配置される。これにより、シートヒータ62aの熱を第1のプレート18e又は第2のプレート18fに良好に伝達することができる。
【0112】
ここで、第1のプレート18e及び第2のプレート18fが、上述のようにセラミックプレートで構成されている場合、セラミックプレートは金属に比べて熱容量が小さいため、第2の加熱部62の熱を効率良く溶融樹脂に伝えることができる。また、第2の加熱部62が損傷した場合、リテーリングナット18dを緩めると第2の加熱部62を簡単に交換することができる。
【0113】
温度検出部63は、溶融樹脂の温度を検出する。温度検出部63は、例えば、射出部18に設けられている。このとき、温度検出部63は、セラミックプレートで構成されている側の第1のプレート18e又は第2のプレート18fに設けられるとよい。これにより、溶融樹脂の温度を精度良く検出することができる。
【0114】
第4の制御部64は、温度検出部63の検出結果に基づいて、溶融樹脂の温度が予め設定された範囲内になるように第1の加熱部61及び第2の加熱部62を制御する。なお、第1のシリンダ11及び第2のシリンダ12が溶融樹脂Rを保温できる構成とされている場合、加熱装置6を省略してもよい。
【0115】
制御装置7は、
図2に示すように、第1の制御部19、第2の制御部34、第3の制御部53及び第4の制御部64を備えており、ワークを成形するために、第1の制御部19、第2の制御部34、第3の制御部53及び第4の制御部64を制御する。
【0116】
次に、本実施の形態の射出成形装置1において、第1のシリンダ11の第1の空間S1又は第2のシリンダ12の第1の空間S3に供給した樹脂原料Mを可塑化しつつ、第1のシリンダ11の第2の空間S2、又は第2のシリンダ12における第2のピストンユニット15に対してZ軸-側の第2の空間S4に溶融樹脂を流入させる際に、第1のシリンダ11の第2の空間S2又は第2のシリンダ12の第2の空間S4への気体の流入を抑制するための好ましい条件を説明する。
【0117】
先ず、第1のピストンユニット14の加圧ピストン14dにおけるXY断面での外周縁で囲まれた領域の面積は、ロッド16dにおけるXY断面での外周縁で囲まれた領域の面積以上であるとよい。同様に、第2のピストンユニット15の加圧ピストン15dにおけるXY断面での外周縁で囲まれた領域の面積は、ロッド17dにおけるXY断面での外周縁で囲まれた領域の面積以上であるとよい。
【0118】
そして、溶融樹脂を射出するためにトーピードピストン14aが最もZ軸+側に配置され、第1のシリンダ11の第2の空間S2に加圧ピストン14dが配置された状態での当該第2の空間S2の容積は、樹脂原料Mを可塑化するためにトーピードピストン14aが最もZ軸-側に配置され、第1のシリンダ11の第1の空間S1にロッド16dが配置された状態での当該第1の空間S1の容積以下であるとよい。
【0119】
同様に、溶融樹脂を射出するためにトーピードピストン15aが最もZ軸+側に配置され、第2のシリンダ12の第2の空間S4に加圧ピストン15dが配置された状態での当該第2の空間S4の容積は、樹脂原料Mを可塑化するためにトーピードピストン15aが最もZ軸-側に配置され、第2のシリンダ12の第1の空間S3にロッド17dが配置された状態での当該第1の空間S3の容積以下であるとよい。
【0120】
好ましくは、更に以下の<式1>乃至<式3>を満たすとよい。
<式1> (π×(Dc2-Dr2)×Lr×γ)/4≧(π×(Dc2-Dp2)×Lr)/4
<式2> π×Lr×{(Dc2-Dr2)×γ-(Dc2-Dp2)}/4≦π×Dp2×Lp/4
<式3> (Dc2-Dp2)/(Dc2-Dr2)≦γ≦Dp2/(Dc2-Dr2)×Lp/Lr+(Dc2-Dp2)/(Dc2-Dr2)
【0121】
ここで、Dcは第1のシリンダ11及び第2のシリンダ12の内径、Dpは加圧ピストン14d、15dの外径、Drはロッド16d、17dの外径、Lpは加圧ピストン14d、15dの最大ストローク量(最大移動量)、Lrはトーピードピストン14a、15aの最大ストローク量(最大移動量)、γは樹脂原料Mの充填率である。
【0122】
<式1>に示すように、第1のシリンダ11の第1の空間S1又は第2のシリンダ12の第1の空間S3に供給された樹脂原料Mの容積が、樹脂原料Mを可塑化する際の第1のシリンダ11の第2の空間S2又は第2のシリンダ12の第2の空間S4の容積の増加量以上であるとよい。
【0123】
ここで、樹脂原料Mの容積は、溶融樹脂の容積と略等しい。そのため、第1のシリンダ11の第2の空間S2又は第2のシリンダ12の第2の空間S4に流入する溶融樹脂の容積が、溶融樹脂が流入する際の第1のシリンダ11の第2の空間S2又は第2のシリンダ12の第2の空間S4の容積の増加量以上であるとよい、と言い換えることができる。
【0124】
<式2>に示すように、溶融樹脂の容積から第1のシリンダ11の第2の空間S2又は第2のシリンダ12の第2の空間S4の容積の増加量を差し引いた差分に対して、加圧ピストン14d、15dが最もZ軸-側に配置された状態からZ軸+側に移動することで、第1のシリンダ11の第2の空間S2又は第2のシリンダ12の第2の空間S4の容積が増加し得る量以上であるとよい。
【0125】
これにより、<式1>による、溶融樹脂の容積から第1のシリンダ11の第2の空間S2又は第2のシリンダ12の第2の空間S4の容積の増加量を差し引いた分の溶融樹脂を、加圧ピストン14d、15dがZ軸+側に移動することで吸収することができる。
【0126】
<式3>は、<式1>及び<式2>を樹脂原料Mの充填率について解いたものであり、樹脂原料Mの種類などが異なる場合でも<式3>を満たすことで、第1のシリンダ11の第2の空間S2又は第2のシリンダ12の第2の空間S4への気体の流入を抑制することができる。
【0127】
次に、本実施の形態の射出成形装置1を用いてワークを成形する流れを説明する。
図9乃至
図13は、本実施の形態の射出成形装置の動作を示す図である。
図9乃至
図13では、上段に射出成形機2の動作を示し、下段に第1のシリンダ11及び第2のシリンダ12での樹脂原料Mの可塑化及び溶融樹脂Rの射出などのタイミングを示している。
【0128】
ここで、
図9(a)の状態では、供給装置3の第1のホッパ32aからの第1のシリンダ11の第1の空間S1への樹脂原料Mの供給が完了している状態で、第1のピストンユニット14がZ軸-側に移動して第1のシリンダ11の第2の空間S2に流入した溶融樹脂Rを射出している。
【0129】
一方、第2のピストンユニット15がZ軸-側に移動し、第2のシリンダ12の第2の空間S4から溶融樹脂Rの射出を開始している。このとき、第2のピストンユニット15の加圧ピストン15dは、最もZ軸+側に配置されているものとする。また、排気部31の排気弁31cは閉鎖されているものとする。
【0130】
このような状態から、第1の制御部19は、モータ16aを制御して第1のピストンユニット14のZ軸-側の移動を継続させて溶融樹脂Rの射出を継続させつつ、モータ17aを制御して第2のピストンユニット15のZ軸-側の移動を継続させて溶融樹脂Rの射出を継続させる。
【0131】
次に、第1の制御部19は、エンコーダ16fの検出結果を参照して、第1のピストンユニット14が最もZ軸-側(下死点)に到達したことを確認すると、
図9(b)→
図9(c)→
図10(a)に示すように、モータ16aを制御し、第1のピストンユニット14のZ軸+側への移動を開始させる。
【0132】
このように第2のシリンダ12からの溶融樹脂Rの射出が開始されてから第1のシリンダ11からの溶融樹脂Rの射出が停止されるまでの期間は、第1のシリンダ11及び第2のシリンダ12から溶融樹脂Rが射出されることになる。
【0133】
そのため、第2のシリンダ12から溶融樹脂Rが射出される期間を、第1のシリンダ11から溶融樹脂Rが射出される期間と予め設定された第1の期間重複させることができる。よって、第1のシリンダ11及び第2のシリンダ12から連続的に溶融樹脂Rを射出することができる。
【0134】
ここで、予め設定された第1の期間は、各々のピストンユニット14、15の移動速度に応じて、適宜、設定することができる。そして、射出部18から射出される溶融樹脂Rの射出量が目標射出量になるように、第1の制御部19がモータ16a、17aを制御して、各々のピストンユニット14、15の移動速度を調整すると、所望のワークを精度良く成形することができる。
【0135】
第1のピストンユニット14のZ軸+側への移動を開始すると、樹脂原料Mが第1のピストンユニット14と、第1のシリンダ11の閉塞部11aと、第1のシリンダ11の側壁部11bと、で圧縮され、樹脂原料Mが第1のピストンユニット14のトーピードピストン14aの溝部14fを通過しつつ可塑化して溶融樹脂Rとなり、第1のシリンダ11の第2の空間S2に流入する。
【0136】
このとき、供給孔11dが第1のシリンダ11の側壁部11bに形成されており、樹脂原料Mが供給孔11dから漏れ出し難い。しかも、第1のピストンユニット14で樹脂原料Mを可塑化する際に作用するZ軸+側の力を第1のシリンダ11の閉塞部11aで受けることができる。
【0137】
また、第1のピストンユニット14のトーピードピストン14aのZ軸+側の面がトーピードピストン14aの中央から周縁部に向かうのに従ってZ軸-側に向かって傾斜する傾斜面に形成されている場合、第1のピストンユニット14がZ軸+側に移動する際に、樹脂原料Mを第1のピストンユニット14のトーピードピストン14aの溝部14fに良好に誘導することができる。
【0138】
そして、第1のピストンユニット14がZ軸+側に移動する際に、第1のピストンユニット14の逆止リング14bがZ軸-側に押され、トーピードピストン14aと逆止リング14bとの隙間を介して当該逆止リング14bの貫通孔から溶融樹脂Rを第1のシリンダ11の第2の空間S2に良好に流入させることができる。
【0139】
このように第1のピストンユニット14がZ軸+側に移動する場合、加圧ピストン14dのZ軸-側の端部が端部プレート13に接触した状態を維持するように、付勢手段14eの付勢力によって加圧ピストン14dがトーピードピストン14aに対してZ軸-側に突出する。
【0140】
そして、本実施の形態では、加圧ピストン14dのXY断面での外周縁で囲まれた領域の面積がロッド16dのXY断面での外周縁で囲まれた領域の面積以上であり、且つ、溶融樹脂Rを射出するためにトーピードピストン14aが最もZ軸+側に配置され、第1のシリンダ11の第2の空間S2に加圧ピストン14dが配置された状態での当該第2の空間S2の容積は、樹脂原料Mを可塑化するためにトーピードピストン14aが最もZ軸-側に配置され、第1のシリンダ11の第1の空間S1にロッド16dが配置された状態での当該第1の空間S1の容積以下である。
【0141】
そのため、トーピードピストン14aがZ軸+側に移動する際の第1のシリンダ11の第2の空間S2の容積の増加量が、第1のシリンダ11の第1の空間S1の容積の減少量以下になるように、付勢手段14eによって加圧ピストン14dが付勢されており、第1のシリンダ11の第2の空間S2に溶融樹脂Rが流入する際の気体の流入を抑制することができる。
【0142】
一方、第1の制御部19は、エンコーダ17fの検出結果を参照しつつモータ17aを制御し、第2のピストンユニット15のZ軸-側への移動を継続させる。これにより、溶融樹脂Rが端部プレート13のY軸+側の逆止弁13bをZ軸-側に押し込みつつY軸+側の貫通孔13c、射出部18の第2の分岐路18c及び射出口18aを介して射出される。このとき、Y軸-側の逆止弁13bは、第2のシリンダ12から射出される溶融樹脂Rの圧力により、Z軸+側への溶融樹脂Rの流れを遮断する。
【0143】
そして、第2のピストンユニット15がZ軸-側に移動する際に、第2のピストンユニット15の逆止リング15bがZ軸+側に押され、逆止リング15bによってトーピードピストン15aの溝部15fが塞がれるので、トーピードピストン15aの溝部15fを介して溶融樹脂Rが第2のシリンダ12の第1の空間S3に逆流することを抑制することができる。
【0144】
次に、第1の制御部19は、エンコーダ16fを参照して、第1のピストンユニット14が最もZ軸+側に到達したことを確認すると、
図10(b)に示すように、モータ16aを制御して第1のピストンユニット14のZ軸-側への移動を開始させる。一方、第1の制御部19は、エンコーダ17fを参照しつつモータ17aを制御し、第2のピストンユニット15のZ軸-側への移動を継続させる。
【0145】
このとき、第1のピストンユニット14の加圧ピストン14dは、トーピードピストン14aからZ軸-側に最も突出した状態であり、第1のピストンユニット14がZ軸-側に移動するのに伴って、第1のシリンダ11の第2の空間S2内の溶融樹脂Rの圧力が上昇する。
【0146】
そして、第1のシリンダ11の第2の空間S2の溶融樹脂Rが加圧ピストン14dの侵入部14jに侵入することで、溶融樹脂Rの圧力による力が付勢手段14eの付勢力を上回るようになり、
図10(c)→
図11(a)→
図11(b)に示すように、加圧ピストン14dがZ軸-側に押し込まれる。この時、トーピードピストン14aと加圧ピストン14dとで囲まれた空間内の気体は、当該空間の容積が減少した分、排気路31aからケース16e内に排気される。
【0147】
一方、第1の制御部19がエンコーダ17fを参照して、第2のピストンユニット15がZ軸方向の予め設定された位置に到達したことを確認すると、第2の制御部34は、排気部31の排気弁31cを制御し、排気弁31cを開放させる。
【0148】
これにより、第2のシリンダ12の第1の空間S3の気体がロッド17dの排気路31aを通って、ケース16eの内部に侵入し、排気孔31b及び排気弁31cを介して排出される。その結果、第2のホッパ32bから第2のシリンダ12の第1の空間S3に流入する気体の流れが生じ、
図10(c)→
図11(a)→
図11(b)に示すように、第2のホッパ32bから樹脂原料Mが気体に押され、第2のシリンダ12の供給孔12dを介して当該第2のシリンダ12の第1の空間S3に供給される。
【0149】
このとき、供給孔12dは、第2のシリンダ12の側壁部12bに形成されているので、樹脂原料Mが気体と共に渦を巻きながら、Z軸-側に落下する。そのため、樹脂原料Mを第2のシリンダ12の第1の空間S3内に略均一に供給することができる。
【0150】
次に、加圧ピストン14dが最もZ軸+側に到達(例えば、加圧ピストン14dのZ軸+側の端部がトーピードピストン14aのZ軸+側の端部に接触)し、第1のピストンユニット14のZ軸-側の端部で溶融樹脂RをZ軸-側に押し込む圧力が予め設定された圧力に到達すると、端部プレート13のY軸-側の逆止弁13bが開放する。
【0151】
これにより、溶融樹脂Rが端部プレート13のY軸-側の逆止弁13bをZ軸-側に押し込みつつY軸-側の貫通孔13c、射出部18の第1の分岐路18b及び射出口18aを介して射出される。
【0152】
このとき、第1のピストンユニット14がZ軸-側に移動する際に、第1のピストンユニット14の逆止リング14bがZ軸+側に押され、逆止リング14bによってトーピードピストン14aの溝部14fが塞がれるので、トーピードピストン14aの溝部14fを介して溶融樹脂Rが第1のシリンダ11の第1の空間S1に逆流することを抑制することができる。
【0153】
一方、第1の制御部19がエンコーダ17fを参照して、第2のピストンユニット15が最もZ軸-側近傍に到達したことを確認すると、第2の制御部34は、排気部31の排気弁31cを制御して閉鎖する。このとき、第2のシリンダ12の第1の空間S3に樹脂原料Mが満たされた状態となる。
【0154】
つまり、排気部31の排気弁31cを開放するだけで、自動的に樹脂原料Mを第2のシリンダ12の第1の空間S3に供給することができる。このとき、第2のピストンユニット15が予め設定されたZ軸方向の位置に到達してから最もZ軸-側近傍に到達するまでの間で第2のシリンダ12の第1の空間S3に樹脂原料Mが供給されるので、第2のシリンダ12に定量的に樹脂原料Mを供給することができる。
【0155】
そして、第2のシリンダ12の第1の空間S3に樹脂原料Mが供給される期間と、第2のシリンダ12から溶融樹脂Rが射出される期間と、を予め設定された第2の期間重複させることができる。
【0156】
そのため、第2のシリンダ12からの溶融樹脂Rの射出と、第2のシリンダ12への樹脂原料Mの供給と、を効率良く繰り返すことができる。ここで、予め設定された第2の期間は、第2のピストンユニット15の移動速度や排気部31の排気弁31cを開放するタイミングなどに応じて、適宜、設定することができる。
【0157】
次に、第1の制御部19は、エンコーダ17fを参照して、第2のピストンユニット15が最もZ軸-側(下死点)に到達したことを確認すると、モータ17aを制御し、
図11(c)→
図12(a)→
図12(b)に示すように、第2のピストンユニット15のZ軸+側の移動を開始させる。このとき、Y軸+側の逆止弁13bは、第1のシリンダ11から射出される溶融樹脂Rの圧力により、Z軸+側への溶融樹脂Rの流れを遮断する。
【0158】
これにより、樹脂原料Mが第2のピストンユニット15と、第2のシリンダ12の閉塞部12aと、第2のシリンダ12の側壁部12bと、で圧縮され、樹脂原料Mが第2のピストンユニット15のトーピードピストン15aの溝部15fを通過しつつ可塑化して溶融樹脂Rとなり、第2のシリンダ12の第2の空間S4に流入する。
【0159】
このとき、供給孔12dが第2のシリンダ12の側壁部12bに形成されており、樹脂原料Mが供給孔12dから漏れ出し難い。しかも、第2のピストンユニット15で樹脂原料Mを可塑化する際に作用するZ軸+側の力を第2のシリンダ12の閉塞部12aで受けることができる。
【0160】
また、第2のピストンユニット15のトーピードピストン15aのZ軸+側の面がトーピードピストン15aの中央から周縁部に向かうのに従ってZ軸-側に向かって傾斜する傾斜面に形成されている場合、第2のピストンユニット15がZ軸+側に移動する際に、樹脂原料Mを第2のピストンユニット15のトーピードピストン15aの溝部15fに良好に誘導することができる。
【0161】
そして、第2のピストンユニット15がZ軸+側に移動する際に、第2のピストンユニット15の逆止リング15bがZ軸-側に押され、トーピードピストン15aと逆止リング15bとの隙間を介して当該逆止リング15bの貫通孔から溶融樹脂Rを第2のシリンダ12の第2の空間S4に良好に流入させることができる。
【0162】
このように第2のピストンユニット15がZ軸+側に移動する場合、加圧ピストン15dのZ軸-側の端部が端部プレート13に接触した状態を維持するように、付勢手段15eの付勢力によって加圧ピストン15dがトーピードピストン15aに対してZ軸-側に突出する。
【0163】
そして、本実施の形態では、加圧ピストン15dのXY断面での外周縁で囲まれた領域の面積がロッド17dのXY断面での外周縁で囲まれた領域の面積以上であり、且つ、溶融樹脂Rを射出するためにトーピードピストン15aが最もZ軸+側に配置され、第2のシリンダ12の第2の空間S4に加圧ピストン15dが配置された状態での当該第2の空間S4の容積は、樹脂原料Mを可塑化するためにトーピードピストン15aが最もZ軸-側に配置され、第2のシリンダ12の第1の空間S3にロッド17dが配置された状態での当該第1の空間S3の容積以下である。
【0164】
そのため、トーピードピストン15aがZ軸+側に移動する際に、第2のシリンダ12の第2の空間S4の容積の増加量が、第2のシリンダ12の第1の空間S3の容積の減少量以下になるように、付勢手段15eによって加圧ピストン15dが付勢されており、第2のシリンダ12の第2の空間S4に溶融樹脂Rが流入する際の気体の流入を抑制することができる。
【0165】
一方、第1の制御部19は、エンコーダ16fの検出結果を参照しつつモータ16aを制御し、第1のピストンユニット14のZ軸-側への移動を継続させる。これにより、第1のシリンダ11からの溶融樹脂Rの射出が開始されてから第2のシリンダ12からの溶融樹脂Rの射出が停止されるまでの期間は、第1のシリンダ11及び第2のシリンダ12から溶融樹脂Rが射出されることになる。
【0166】
そのため、第1のシリンダ11から溶融樹脂Rが射出される期間を、第2のシリンダ12から溶融樹脂Rが射出される期間と予め設定された第1の期間重複させることができる。よって、第1のシリンダ11及び第2のシリンダ12から連続的に溶融樹脂Rを射出することができる。
【0167】
そして、射出部18から射出される溶融樹脂Rの射出量が目標射出量になるように、第1の制御部19はモータ16a、17aを制御して、各々のピストンユニット14、15の移動速度を調整すると、所望のワークを精度良く成形することができる。
【0168】
次に、
図12(c)に示すように、第1の制御部19は、エンコーダ17fを参照して、第2のピストンユニット15が最もZ軸+側に到達したことを確認すると、モータ17aを制御して第2のピストンユニット15のZ軸-側への移動を開始させる。一方、第1の制御部19は、エンコーダ16fを参照しつつモータ16aを制御し、第1のピストンユニット14のZ軸-側への移動を継続させる。
【0169】
このとき、第2のピストンユニット15の加圧ピストン15dは、トーピードピストン15aからZ軸-側に最も突出した状態であり、第2のピストンユニット15がZ軸-側に移動するのに伴って、第2のシリンダ12の第2の空間S4内の溶融樹脂Rの圧力が上昇する。
【0170】
そして、第2のシリンダ12の第2の空間S4の溶融樹脂Rが加圧ピストン15dの侵入部15jに侵入することで、溶融樹脂Rの圧力による力が付勢手段15eの付勢力を上回るようになり、
図13(a)に示すように、加圧ピストン15dがZ軸-側に押し込まれる。この時、トーピードピストン15aと加圧ピストン15dとで囲まれた空間内の気体は、当該空間の容積が減少した分、排気路31aからケース16e内に排気される。
【0171】
一方、第1の制御部19がエンコーダ16fを参照して、第1のピストンユニット14がZ軸方向の予め設定された位置に到達したことを確認すると、第2の制御部34は、排気部31の排気弁31cを制御し、排気弁31cを開放させる。
【0172】
これにより、第1のシリンダ11の第1の空間S1の気体がロッド16dの排気路31aを通って、ケース16eの内部に侵入し、排気孔31b及び排気弁31cを介して排出される。その結果、第1のホッパ32aから第1のシリンダ11の第1の空間S1に流入する気体の流れが生じ、第1のホッパ32aから樹脂原料Mが気体に押され、第1のシリンダ11の供給孔11dを介して当該第1のシリンダ11の第1の空間S1に供給される。
【0173】
このとき、供給孔11dは、第1のシリンダ11の側壁部11bに形成されているので、樹脂原料Mが気体と共に渦を巻きながら、Z軸-側に落下する。そのため、樹脂原料Mを第1のシリンダ11の第1の空間S1内に略均一に供給することができる。
【0174】
次に、
図13(b)に示すように、第1の制御部19がエンコーダ16fを参照して、第1のピストンユニット14が最もZ軸-側近傍に到達したことを確認すると、第2の制御部34は、排気部31の排気弁31cを制御して閉鎖する。このとき、第1のシリンダ11の第1の空間S1に樹脂原料Mが満たされた状態となる。
【0175】
つまり、排気部31の排気弁31cを開放するだけで、自動的に樹脂原料Mを第1のシリンダ11の第1の空間S1に供給することができる。このとき、第1のピストンユニット14が予め設定されたZ軸方向の位置に到達してから最もZ軸-側近傍に到達するまでの間で第1のシリンダ11の第1の空間S1に樹脂原料Mが供給されるので、第1のシリンダ11に定量的に樹脂原料Mを供給することができる。
【0176】
そして、第1のシリンダ11の第1の空間S1に樹脂原料Mを供給される期間と、第1のシリンダ11から溶融樹脂Rを射出される期間と、を予め設定された第2の期間重複させることができる。
【0177】
そのため、第1のシリンダ11からの溶融樹脂Rの射出と、第1のシリンダ11への樹脂原料Mの供給と、を効率良く繰り返すことができる。ここで、予め設定された第2の期間は、第1のピストンユニット14の移動速度や排気部31の排気弁31cを開放するタイミングなどに応じて、適宜、設定することができる。
【0178】
次に、第1の制御部19は、モータ16aを制御して第1のピストンユニット14のZ軸-側への移動を継続させると共に、モータ17aを制御して第2のピストンユニット15のZ軸-側への移動を継続させる。
【0179】
そして、
図13(c)に示すように、
図9(a)の状態に移行して、加圧ピストン15dが最もZ軸+側に到達(例えば、加圧ピストン15dのZ軸+側の端部がトーピードピストン15aのZ軸+側の端部に接触)し、第2のピストンユニット15のZ軸-側の端部で溶融樹脂RをZ軸-側に押し込む圧力が予め設定された圧力に到達すると、端部プレート13のY軸+側の逆止弁13bが開放する。
【0180】
これにより、溶融樹脂Rが端部プレート13のY軸+側の逆止弁13bをZ軸-側に押し込みつつY軸+側の貫通孔13c、射出部18の第2の分岐路18c及び射出口18aを介して射出される。
【0181】
このように第1の制御部19がモータ16a、17aを制御して第1のシリンダ11及び第2のシリンダ12から連続的に溶融樹脂Rを射出しつつ、射出される溶融樹脂Rによってテーブル4のZ軸+側の面で所望のワークが積層造形されるように、第3の制御部53がガントリー装置51及び昇降装置52を制御すると、ワークを成形することができる。
【0182】
このとき、第4の制御部64は、温度検出部63の検出結果に基づいて、射出される溶融樹脂Rの温度が予め設定された範囲内になるように、第1の加熱部61及び第2の加熱部62を制御する。これにより、溶融樹脂Rを安定した状態で射出することができる。
【0183】
本実施の形態の射出成形装置1、射出成形機2及び射出成形方法は、トーピードピストン14a、15aに対する第1、第2のシリンダ11、12の第2の空間S2、S4への突出量が変化するように、Z軸方向に摺動可能な加圧ピストン14d、15d、及び加圧ピストン14d、15dをトーピードピストン14a、15aに対してZ軸-側に付勢する付勢手段14e、15eを備えている。
【0184】
そのため、第1、第2のシリンダ11、12の第2の空間S2、S4に溶融樹脂Rが流入する際の当該第2の空間S2、S4の容積を小さくすることができ、溶融樹脂Rを第2の空間S2、S4に流入させる際の当該第2の空間S2、S4への気体の流入を抑制することができる。そのため、本実施の形態の射出成形装置1、射出成形機2及び射出成形方法は、溶融樹脂Rを射出する際の当該溶融樹脂Rへの気体の混入を抑制することができ、ワークの品質の向上に寄与することができる。
【0185】
特に、本実施の形態の射出成形装置1、射出成形機2及び射出成形方法は、トーピードピストン14a、15aがZ軸+側に移動する際の第1、第2のシリンダ11、12の第2の空間S2、S4の容積の増加量が、第1、第2のシリンダ11、12の第1の空間S1、S3の容積の減少量以下になるように、付勢手段14e、15eが加圧ピストン14d、15dを付勢するので、第1、第2のシリンダ11、12の第2の空間S2、S4に溶融樹脂Rが流入する際の気体の流入を抑制することができる。
【0186】
しかも、本実施の形態の射出成形装置1、射出成形機2及び射出成形方法は、第1のシリンダ11から溶融樹脂Rが射出される期間と、第2のシリンダ12から溶融樹脂Rが射出される期間と、の一部を重複させる。これにより、第1のシリンダ11及び第2のシリンダ12から溶融樹脂Rを連続的に射出することができる。
【0187】
また、本実施の形態の射出成形装置1、射出成形機2及び射出成形方法は、排気部31の排気弁31cを制御するだけで、自動的に樹脂原料Mを第1、第2のシリンダ11、12に供給することができる。つまり、本実施の形態の供給装置3は、樹脂原料Mの自動供給装置として機能させることができる。そのため、簡単な構成で樹脂原料Mを供給することができる。
【0188】
また、第1のピストンユニット14又は第2のピストンユニット15が予め設定されたZ軸方向の位置に到達してから最もZ軸-側近傍に到達するまで第1のシリンダ11又は第2のシリンダ12に樹脂原料Mを供給するので、樹脂原料Mを第1のシリンダ11及び第2のシリンダ12に定量的に供給することができる。そのため、樹脂原料Mの計量器を省略することができる。
【0189】
なお、予め設置されたZ軸方向の位置は、第1のピストンユニット14又は第2のピストンユニット15が最もZ軸-側近傍に到達するまでに、第1のシリンダ11の第1の空間S1又は第2のシリンダ12の第1の空間S3が樹脂原料Mで満たされるように設定されればよい。
【0190】
ここで、第1のシリンダ11のZ軸-側の端部は開放しているので、第1のピストンユニット14や第1の駆動部16のロッド16dを第1のシリンダ11のZ軸-側の開放口から挿入することができる。同様に、第2のシリンダ12のZ軸-側の端部は開放しているので、第2のピストンユニット15や第2の駆動部17のロッド17dを第2のシリンダ12のZ軸-側の開放口から挿入することができる。そのため、特許文献1の射出成形装置が有するようなプランジャを省略することができる。
【0191】
ちなみに、射出成形機2は、
図3に示すように、第1の駆動部16のケース16eと、第1のシリンダ11及び第2のシリンダ12と、の間に冷却部8を備えているとよい。冷却部8は、例えば、環形状を基本形態としており、冷却部8をZ軸方向に貫通するようにロッド16d又は17dが通される貫通孔8aが形成されている。そして、冷却部8には、貫通孔8aを囲むように冷却媒体が流れる冷却路8bが形成されている。
【0192】
このような構成により、射出成形装置1でワークを成形する際に、冷却部8の冷却路8bに冷却媒体を流すと、第1のシリンダ11及び第2のシリンダ12からの熱が第1の駆動部16の軸受け16gや第2の駆動部17の軸受け17gに伝わり難い。そのため、軸受け16g、17gの温度変化を抑制することができ、軸受け16g、17gの動作不良を抑制することができる。その結果、ワークを精度良く成形することができる。
【0193】
<実施の形態2>
次に、実施の形態2の射出成形機2Aの構成を説明する。
【0194】
図14は、実施の形態2の射出成形機2Aの構成図である。
【0195】
実施の形態2の射出成形機2Aの構成は、上記実施の形態1の射出成形機2の構成と同様であるが、以下の点が相違する。
【0196】
図14に示すように、実施の形態2の射出成形機2Aには、第1の圧力検出部65及び第2の圧力検出部66が追加されている。第1の圧力検出部65は、第1のシリンダ11内に収容(貯留)された溶融樹脂に加えられる圧力を検出する圧力検出センサで、例えば、ひずみゲージである。ひずみゲージは、第1のシリンダ11内に収容(貯留)された溶融樹脂に加えられる圧力による第1のシリンダ11外壁のひずみより圧力を検出する。第1の圧力検出部65は、例えば、第1のシリンダ11の外周面のうち溶融樹脂が収容される部分に対応する箇所に取り付け(例えば、貼り付け)られている。第2の圧力検出部66は、第2のシリンダ12内に収容(貯留)された溶融樹脂に加えられる圧力を検出する圧力検出センサで、例えば、ひずみゲージである。ひずみゲージは、第2のシリンダ12内に収容(貯留)された溶融樹脂に加えられる圧力による第2のシリンダ12外壁のひずみより圧力を検出する。第2の圧力検出部66は、例えば、第2のシリンダ12の外周面のうち溶融樹脂が収容される部分に対応する箇所に取り付け(例えば、貼り付け)られている。
【0197】
また、実施の形態2では、エンコーダ16f、17fに代えて、ポテンシオメータを用いる。以下、ポテンシオメータ16f、17fと呼ぶ。ポテンシオメータ16fは、モータ16a(サーボモータ)の位置検出手段である。ポテンシオメータ16fの位置検出値により、第1のトーピード14の位置を検出することができる。同様に、ポテンシオメータ17fは、モータ17a(サーボモータ)の位置検出手段である。ポテンシオメータ17fの位置検出値により、第2のトーピード15の位置を検出することができる。また、シートヒータ62aに代えて、セラミックヒータを用いる。以下、セラミックヒータ62aと呼ぶ。
【0198】
また、実施の形態2では、温度検出部63(第1のシリンダ11、第2のシリンダ12が収容する溶融樹脂の温度を検出する手段)として、熱電対を用いる。
【0199】
次に、実施の形態2の制御装置7Aについて説明する。
【0200】
図15は、実施の形態2の制御装置7Aの構成図である。
【0201】
図15に示すように、制御装置7Aは、記憶部20、制御部30A、メモリ40を備えている。
【0202】
記憶部20は、例えば、ハードディスク装置やROM等の不揮発性の記憶部である。記憶部20には、kデータテーブル21、nデータテーブル22、Kデータテーブル23が記憶されている。また、記憶部20には、吐出ノズルの寸法24(例えば、ノズル径、ノズル長)が記憶されている。また、記憶部20には、制御部30Aが実行する所定プログラム(図示せず)が記憶されている。
【0203】
kデータテーブル21には、樹脂の種類及び温度ごとの擬塑性粘度kが予め記憶されている。擬塑性粘度kについては後述する。nデータテーブル22には、樹脂の種類ごとのべき指数nが予め記憶されている。べき指数nについては後述する。Kデータテーブル23には、樹脂の種類ごとの体積弾性率Kが予め記憶されている。体積弾性率Kについては後述する。
制御部30Aは、図示しないが、プロセッサを備えている。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。プロセッサは、1つの場合もあるし、複数の場合もある。プロセッサは、記憶部20からメモリ40(例えば、RAM)に読み込まれた所定プログラムを実行することにより、主に、ターゲット圧力算出部31A、移動速度算出部32A、移動速度制御部33A、修正体積弾性率算出部34Aとして機能する。これらの一部又は全部は、ハードウェアで実現してもよい。
【0204】
制御装置7Aには、モータ16a、17a、ポテンシオメータ16f、17f、温度検出部63、第1の圧力検出部65、第2の圧力検出部66、XY軸駆動装置50、Z軸駆動装置60等が電気的に接続されている。
【0205】
XY軸駆動装置50は、不図示の機構により、射出成形機2A(吐出ノズル18a)をXY軸駆動する。Z軸駆動装置60は、不図示の機構により、ベースプレート4をZ軸駆動する。
【0206】
上記構成の射出成形装置は、XY軸駆動する射出成形機2A(吐出ノズル18a)から吐出(射出)される溶融樹脂により、Z軸駆動できるベースプレート4上に樹脂ビードを形成し順次積層しながら3次元造形物(積層造形体)を造形する3Dプリンタ(本発明の積層造形装置の一例)として機能する。
【0207】
次に、実施の形態2の射出成形機2Aの動作の概略について説明する。以下の処理は、制御部30A(プロセッサ)が記憶部20からメモリ40(例えば、RAM)に読み込まれた所定プログラムを実行することにより実現される。
【0208】
吐出ノズル18aの樹脂吐出孔直下にベースプレート4を配置し、積層造形体の1層目となる造形軌跡に従い、XY軸駆動装置50により吐出ノズル18aを移動させる。その際、吐出ノズル18aの移動速度が制御装置7Aに入力され、
図27のフローチャートに従って駆動指令値をモータ16a、17aに出力する。
【0209】
制御装置7Aは、位置(位置検出値)、圧力(圧力検出値)、温度(温度検出値)と記憶部(データテーブル21~23)に記憶されている値(擬塑性粘度、べき指数、体積弾性率、ノズルの寸法)とから
図21のフローチャートに従って、指示流量を得るようにターゲット圧力を算出する。その際、1サイクル目は
図22のフローチャートに従って、指示移動速度を算出し、それに基づいた駆動指令値をモータ16a又は17aに出力する。2サイクル目からは
図25のフローチャートに従って、修正体積弾性率K´を算出し、それを用いた指示移動速度を算出し、それに基づいた駆動指令値をモータ16a又は17aに出力する。
【0210】
<用語の定義>
「指示流量」とは、吐出ノズル18aから吐出する溶融樹脂の流量の目標値(目標流量)で、単位時間あたりにノズル18aから吐出する溶融樹脂の流量をいう。指示流量Qは、次の式4で表される。
【0211】
Q=樹脂ビードの断面積(=ノズルの断面積)×ノズル移動速度・・・(式4)
【0212】
図16(a)は、ノズル移動速度と指示流量との関係を表すグラフである(ノズル径が1mm、シリンダー径が20mmの場合)。なお、移動速度がゼロに近い領域では、制御最低流量(
図16(a)中、7.85)を下回るときは、指示流量はゼロとしてもよい。
図16(b)は、ノズル移動速度と指示流量との関係を表す他のグラフである(ノズル径が12mm、シリンダ径が100mmの場合)。なお、移動速度がゼロに近い領域では、制御最低流量(
図16(b)中、1,131)を下回るときは、指示流量はゼロとしてもよい。
【0213】
「べき指数」とは、樹脂ごとに決まる定数をいう。
【0214】
図17は、べき指数の一例(代表例)である。べき指数としては、公知のもの(例えば、プラスチック製品設計法本間精一著、日刊工業新聞社2011年のp9参照)を用いてもよい。
【0215】
「擬塑性粘度」とは、樹脂ごとに温度で決まる定数をいう。擬塑性粘度を求める例について説明する。
【0216】
図19は、圧力と流量の関係をせん断速度と溶融粘度の関係に変換する具体例(樹脂名:ABS、温度:210℃)である。
図20は、
図19中の「せん断速度」及び「溶融粘度」をプロットしたグラフである。
【0217】
図19の実験結果より、測定された圧力と流量の関係をせん断速度と溶融粘度の関係に変換し、
図20に示すように両対数グラフにプロットし、累乗近似式(y=kx
(n-1))に最小2乗法であてはめ、y=42500x
-0.75を得る。これにより、擬塑性粘度k=42,500が得られる。樹脂名:ABS、温度:210℃以外の樹脂、温度についても、同様にして、擬塑性粘度を求めることができる。
【0218】
「体積弾性率」とは、溶融樹脂の特性で決まる定数をいう。
図18(a)は体積弾性率の算出数値表の一例、
図18(b)は
図18(a)をプロットしたグラフである。
【0219】
「ターゲット圧力」とは、吐出ノズル18aから吐出する溶融樹脂の流量を指示流量とするために、シリンダ11又は12内に収容(貯留)された溶融樹脂に加える圧力をいう。
【0220】
「予測流出量」とは、Δt(制御時間刻み幅)あたりにノズル18aから吐出すると予測される溶融樹脂の流出量をいう。
【0221】
「指示移動速度」とは、ノズル18aから吐出する溶融樹脂の流量を指示流量とするために、第1のピストンユニット14又は第2のピストンユニット15を移動させる速度をいう。第1のピストンユニット14又は第2のピストンユニット15が本発明のピストンの一例である。以下、第1のピストンユニット14又は第2のピストンユニット15のことを、第1のトーピード14又は第2のトーピード15とも呼ぶ。
「射出成形機を稼働」とは、樹脂(溶融樹脂)を吐出させることをいう。
【0222】
<ターゲット圧力算出部31Aの動作例>
次に、ターゲット圧力算出部31Aの動作例について説明する。
【0223】
ターゲット圧力算出部31Aは、指示流量、溶融樹脂の温度、擬塑性粘度、及び吐出ノズル18aの寸法に基づいて、「ターゲット圧力」を算出する。
【0224】
図21は、ターゲット圧力算出部31Aの動作例のフローチャートである。
【0225】
まず、指示流量Qを入力(取得)する(ステップS10)。
【0226】
次に、指示流量Qに対し、せん断速度Dを次の式5により算出する(ステップS11)。
D=32Q/(πdn
3)・・・(式5)
【0227】
但し、dnは、吐出ノズル18aの最小断面積の直径相当値(ノズル径)である。πは、円周率である。ノズル径dnは、記憶部から取得することができる。
【0228】
次に、吐出直前の溶融樹脂の温度Tを検出する(ステップS12)。温度Tは、温度検出部63(熱電対)により直接検出された温度(温度検出値)であってもよいし、推定した温度であってもよい。ステップS12は、本発明の温度取得部の一例である。
【0229】
次に、温度Tで決まる擬塑性粘度kを算出する(ステップS13)。樹脂(溶融樹脂)の種類及び温度(ステップS12で検出された温度T)に対応する擬塑性粘度kは、kデータテーブル21から取得することができる。なお、樹脂(溶融樹脂)の種類は、例えば、ユーザにより入力される。ステップS13は、本発明の擬塑性粘度取得部の一例である。
【0230】
次に、溶融粘度ηを次の式6により算出する(ステップS14)。
【0231】
η=kDn-1・・・(式6)
但し、nは、樹脂(溶融樹脂)の種類に対応するべき指数である。樹脂(溶融樹脂)の種類に対応するべき指数nは、nデータテーブル22から取得することができる。なお、樹脂(溶融樹脂)の種類は、例えば、ユーザにより入力される。
【0232】
次に、せん断応力τを次の式7により算出する(ステップS15)。
【0233】
τ=ηD・・・(式7)
【0234】
次に、ターゲット圧力Ptを次の式8により算出し(ステップS16)、出力する(ステップS17)。なお、ターゲット圧力Ptは、吐出ノズル18aの外の圧力を大気圧(ゼロ)とした相対圧である。
【0235】
Pt=τ4Ln/dn・・・(式8)
但し、Lnは、吐出ノズル18a(直径dn)の長さ(ノズル長)である。ノズル長Lnは、記憶部20から取得することができる。
【0236】
<移動速度算出部32Aの動作例(トーピード移動速度フィードフォーワード制御)>
次に、移動速度算出部32Aの動作例(トーピード移動速度フィードフォーワード制御)について説明する。
【0237】
移動速度算出部32Aは、「指示移動速度(吐出の1サイクル目)」を算出する。
【0238】
図22は、移動速度算出部32Aの動作例(トーピード移動速度フィードフォーワード制御)のフローチャートである。
【0239】
まず、ステップS16で算出されステップS17で出力されたターゲット圧力Ptを入力(取得)する(ステップS20)。
【0240】
次に、実測圧力Prが検出される(ステップS21)。実測圧力Prとは、第1の圧力検出部65、第2の圧力検出部66の検出値(圧力検出値)をいう。
【0241】
次に、ターゲット圧力Ptになるような加圧量ΔPを次の式9により算出する(ステップS22)。
【0242】
ΔP=Pt-Pr・・・(式9)
【0243】
次に、実位置Xrが検出される(ステップS23)。実位置Xrとは、ポテンシオメータ16f、17fの検出値(位置検出値)をいう。
【0244】
次に、樹脂(溶融樹脂)の種類に対応する体積弾性率Kを設定する(ステップS24)。例えば、吐出の1サイクル目においては、樹脂(溶融樹脂)の種類に対応する体積弾性率Kは、Kデータテーブル23から取得される。なお、樹脂(溶融樹脂)の種類は、例えば、ユーザにより入力される。
【0245】
次に、第1のトーピード14(又は第2のトーピード15)の移動速度のうち加圧分であるV
rpを次の式10により算出する(ステップS25)。なお、次の式10では、加圧により溶融樹脂が流出(吐出)することは考慮されていない。
【数1】
但し、ΔP=K×ΔV/V、ΔV=V
rp×Δt×S(Sは第1のトーピード14(又は第2のトーピード15)の断面積、Δtは制御時間刻み幅)、V=V
0+S×X
r(Vは第1のトーピード14(又は第2のトーピード15)がX
rにあるときの加圧される容積、V
0はデッドボリューム)、S=π/4×d
t(d
tは第1のトーピード14(又は第2のトーピード15)の直径)である。これら各要素は、
図23のように図示できる。
図23は、式10の各要素を図示した概略図である。
【0246】
次に、予測流出量Qpを次の式11により算出する(ステップS26)。
【0247】
Qp=πdn
3/32×{Prdn/(4kLn)}1/n×Δt・・・(式11)
【0248】
この式11は次のようにして導出される。
まず、上記式5を次の式12に変形する。
Qp=Dπdn
3/32・・・(式12)
【0249】
次に、上記式6及び式7を式8に代入すると、次の式13になる。
Pr=kDn4Ln/dn・・・(式13)
【0250】
この式13を次の式14に変形する。
D=(Prdn/4kLn)1/n・・・(式14)
【0251】
上記式12に上記式14を代入すると、次の式15になる。
Qp=πdn
3/32×{Prdn/(4kLn)}1/n・・・(式15)
【0252】
この式15の右辺にΔtを乗算すると、上記式11になる。上記式12~式15中の各要素は、
図24のように図示できる。
図24は、式12~式15中の各要素を図示した概略図である。
【0253】
次に、第1のトーピード14(又は第2のトーピード15)の移動速度のうち流量分であるVrqを次の式16により算出する(ステップS27)。
Vrq=Qp/Δt/S・・・(式16)
【0254】
次に、指示移動速度Vrを加圧分と流量分を合算し、次の式17により算出し、出力する(ステップS28)。
Vr=Vrp+Vrq・・・(式17)
【0255】
<吐出の2サイクル目以降の動作例(トーピード移動速度予測精度向上方法)>
【0256】
次に、吐出の2サイクル目以降の動作例(トーピード移動速度予測精度向上方法)について説明する。
【0257】
吐出の2サイクル目以降、移動速度算出部32Aは、「指示移動速度(吐出の2サイクル目以降)」を算出する。その際、第1のトーピード14(又は第2のトーピード15)が移動した結果生じる圧力変化量を実測圧力より求め、第1のトーピード14(又は第2のトーピード15)が移動したことによる容積変化量と、その容積変化量から実測圧力を用いて上記式11で算出される流出量を引いて「実質的な加圧容積」を求め、圧力変化量と「実質的な加圧容積」とから修正体積弾性率を求め、それを指示移動速度の算出に用いる(後述のステップS32、S33参照)。これにより、溶融樹脂へのエアの巻き込み具合に応じた体積弾性率を反映した予測値(修正体積弾性率)を用いることができるため、精度が向上する。
【0258】
図25は、吐出の2サイクル目以降の動作例のフローチャートである。
【0259】
まず、実測圧力Prが検出される(ステップS30)。実測圧力Prとは、第1の圧力検出部65、第2の圧力検出部66の検出値(圧力検出値)をいう。
【0260】
次に、修正体積弾性率算出部34Aが、修正体積弾性率K´を次の式18により算出する(ステップS31)。
K´=(Pr-Pr-1)/(ΔVp/V)・・・(式18)
但し、Prは制御時間刻み幅Δtとしたとき、修正体積弾性率を算出するときの実測圧力である。Pr-1は、Δt時間前の実測圧力である。ΔVpは、第1のトーピード14(又は第2のトーピード15)がΔt時間で移動することで縮小する容積から流出量を引いたもので、「実質的な加圧容積」である。
【0261】
ΔV
pは、次の式19で算出する。
ΔV
p=V
r×Δt×S-Q
p・・・(式19)
上記式18~式19中の各要素は、
図26のように図示できる。
図26は、式18~式19中の各要素を図示した概略図である。
【0262】
次に、移動速度算出部32Aが、修正体積弾性率K´を2サイクル目の体積弾性率K´として設定する(ステップS32)。
次に、移動速度算出部32Aが、指示移動速度Vrの算出、出力を1サイクル目(ステップS25~S28)と同様に行う(ステップS33)。
【0263】
<移動速度制御部33Aの動作例>
移動速度制御部33Aは、第1のトーピード14(又は第2のトーピード15)の移動速度がステップS28で算出、出力された指示移動速度Vrとなるように、モータ16a又は17aを制御する(吐出の1サイクル目)。具体的には、移動速度制御部33Aは、第1のトーピード14(又は第2のトーピード15)の移動速度が指示移動速度Vrとなるように、モータ16a又は17aに対して駆動指令値を出力する。また、移動速度制御部33Aは、第1のトーピード14(又は第2のトーピード15)の移動速度がステップS33で算出、出力された指示移動速度Vrとなるように、モータ16a又は17aを制御する(吐出の2サイクル目以降)。具体的には、移動速度制御部33Aは、第1のトーピード14(又は第2のトーピード15)の移動速度が指示移動速度Vrとなるように、モータ16a又は17aに対して駆動指令値を出力する。
【0264】
<流量制御の実施例1>
次に、流量制御の実施例1について説明する。
【0265】
実施例1は、小型物を高分解能でプリントする吐出制御例である。実施例1では、ノズル径がφ1mmと小さい場合(シリンダー径dt=20mm)、φ1mmの円形断面を持つABS樹脂ビードを直線状に形成するため、ノズル径がφ1mmのノズル18aの移動速度が定常速度(通常用いる最高速度)である160mm/sで駆動されるときの流量制御、ノズル18aの制御方法について説明する。
【0266】
図27は、流量制御の実施例1、実施例2共通のフローチャートである。
図28は、実施例1のシミュレーション結果(1~3サイクル)をまとめた表である。
【0267】
以下の説明において、第1のトーピード14、第2のトーピード15がシリンダ11、12内の溶融樹脂を交互に加圧することにより(
図9~
図13参照)、吐出ノズル18aから溶融樹脂が連続的に吐出するものとする。
【0268】
図27中の各サイクルは、Δt(制御時間刻み幅)に対応する。
【0269】
まず、第1のトーピード14の1サイクル目の処理(ステップS40~S47)について説明する。
【0270】
まず、ノズル移動速度を入力する(ステップS40)。ここでは、ノズル18aの移動速度が160mm/sであることをXY軸駆動装置50から検出し、制御装置7Aに入力されたものとする。
【0271】
次に、指示流量Qを算出する(ステップS41)。ここでは、上記式4により、指示流量Q=樹脂ビードの断面積(=ノズル18aの断面積)×ノズル移動速度=π/4x12mm2×160 mm/s=125.6mm3/sが算出されたものとする。
【0272】
次に、ターゲット圧力Ptを算出する(ステップS42)。具体的には、
図21に示す処理(ステップS11~S17)が実行される。
【0273】
まず、せん断速度Dを算出する(ステップS11)。ここでは、上記式5により、せん断速度D=32Q/(πdn
3)=32×125.6mm3/s/(3.14×(1mm)3)=1,280/sが算出されたものとする。なお、Q=125.6mm3/s、dn=1mmである。
【0274】
次に、吐出直前の溶融樹脂の温度Tを検出する(ステップS12)。ここでは、温度T=210℃が検出されたものとする。
【0275】
次に、温度Tで決まる擬塑性粘度kを算出する(ステップS13)。ここでは、210℃のABS樹脂での擬塑性粘度k=42,500[kg/(m・s
2-n)]が算出されたものとする(
図20参照)。
【0276】
次に、溶融粘度ηを算出する(ステップS14)。ここでは、上記式6により、溶融粘度η=kD
n-1=42,500 kg/(m・s
2-0.25)×1,280
0.25-1/s
0.25-1=199kg/(m・s)=199Pa・sが算出されたものとする。なお、ABS樹脂の場合、n=0.25である(
図17参照)。
【0277】
次に、せん断応力τを算出する(ステップS15)。ここでは、上記式7により、せん断応力τ=ηD=199Pa・s×1,280/s=254,720Pa=0.25MPaが算出されたものとする。なお、η=199Pa・s、D=1,280/sである。
【0278】
次に、ターゲット圧力Ptを算出する(ステップS16)。ここでは上記式8により、ターゲット圧力Pt=τ4L/dn=0.25MPa×4×2mm/1mm=2.0MPaが算出されたものとする。なお、τ=0.25MPa、L=2mm、dn=1mmである。このターゲット圧力Pt(2.0MPa)は制御装置7Aに出力される(ステップS17)。
【0279】
次に、
図27に戻って、実測圧力Prが検出される(ステップS43)。ここでは、実測圧力Pr=0.0MPaが検出されたものとする。
【0280】
次に、加圧量ΔPを算出する。ここでは、上記式9により、加圧量ΔP=Pt-Pr =2.0 MPa-0.0MPa=2.0MPaが算出されたものとする。
【0281】
次に、実位置Xrが検出される(ステップS44)。ここでは、実位置Xr=25mmが検出されたものとする。
【0282】
次に、体積弾性率Kを設定する(ステップS45)。ここでは、体積弾性率K=834 MPaが設定されたものとする(
図18(a)参照)。
【0283】
次に、指示移動速度V
rを算出する(ステップS46)。具体的には、
図22に示す処理(ステップS25~S28)が実行される。
【0284】
まず、第1のトーピード14の移動速度(加圧分)Vrpを算出する(ステップS25)。ここでは上記式10により、移動速度(加圧分)Vrp=(2.0MPa/834MPa)(628mm3+314mm2×25mm)/0.1s/314mm2=0.647 mm/sが算出されたものとする。なお、V0=628mm3、S=π/4×dt=314mm2(dt=20mm)、Δt=0.1secである。なお、Δtは、0.1secに限らず、他の値であってもよい。
【0285】
次に、予測流出量Qpを算出する(ステップS26)。ここでは、上記式11により、予測流出量Qp=πdn
3/32×{Prdn/(4kLn)}1/n×Δt=0mm3が算出されたものとする。なお、Pr=0.0MPaである。
【0286】
次に、第1のトーピード14の移動速度(流量分)Vrqを算出する(ステップS27)。ここでは、上記式16により、移動速度(流量分)Vrq=Qp/Δt/S=0mm/sが算出されたものとする。なお、Qp=0mm3である。
【0287】
次に、指示移動速度Vrを算出し、出力する(ステップS28)。ここでは上記式17により、指示移動速度Vr=Vrp+Vrq=0.647mm/s+0mm/s=0.647mm/sが算出し、出力されたものとする。
【0288】
次に、第1のトーピード14の移動速度がステップS46(ステップS27)で算出された指示移動速度Vrとなるように、モータ16aに対して駆動指令値を出力する(ステップS47)。
【0289】
次に、第1のトーピード14の2サイクル目以降の処理(トーピード移動速度フィードバック制御。ステップS48~S52)について説明する。
【0290】
まず、ノズル移動速度を入力する(ステップS48)。ここでは、ノズル18aの移動速度が160mm/sであることをXY軸駆動装置から検出し、制御装置7Aに入力されたものとする。
【0291】
次に、上記ステップS41~S44と同じ処理が実行される。
【0292】
ここでは、ステップS43において、実測圧力Pr=1.45MPaが検出されたものとする。
【0293】
次に、修正体積弾性率K´が算出される(ステップS49)。ここでは、上記式18により、修正体積弾性率K´=(Pr-Pr-1)/(ΔVp/V)ΔVp=Vr×Δt×S-Qp=(1.45MPa-0MPa)/(20.33 mm3/8,478 mm3)=604.6MPaが算出されたものとする。なお、ΔVp=0.647mm/s×0.1s×314mm2-0mm3=20.33mm3、Pr=1.45MPa、Pr-1 =0MPa、V=628mm3+π/4×202mm2×25mm=8,478 mm3である。
次に、修正体積弾性率K´を2サイクル目の体積弾性率K´として設定する(ステップS50)。
【0294】
次に、指示移動速度Vrの算出を1サイクル目(ステップS46)と同様に行う(ステップS51)。ここでは、上記式17により、指示移動速度Vr=Vrp+Vrq=0.245mm/s + 0.103mm/s=0.348 mm/sが算出されたものとする。なお、ΔP=Pt-Pr=2.0MPa-1.45MPa=0.55MPa、Xr=24.94mm、Vrp=(0.55MPa/604.6MPa)(628mm3+314mm2×24.94mm)/0.1s/314mm2=0.245mm/s、Qp=π×(1mm)3/32×{1.45MPa×1mm /(4×42,500kg/(m・s2-0.25)×2mm)}1/0.25×0.1s=3.25mm3、Vrq=3.25mm3/0.1s/314mm2=0.103mm/sである。
【0295】
次に、第1のトーピード14の移動速度がステップS51で算出された指示移動速度Vrとなるように、モータ16aに対して駆動指令値を出力する(ステップS52)。
【0296】
2サイクル目以降も、最終サイクルと判定されるまで(ステップS53:YES)、すなわち、第1のトーピード14が下死点に達したと判定されるまで、上記ステップS48~S52が繰り返し実行される。なお、第1のトーピード14が下死点に達したか否かは、ポテンシオメータ16fの検出値(位置検出値)に基づき、判定することができる。
【0297】
次に、ステップS40~S52と同様の処理が、第2のトーピード15がZ軸+側へ移動し、最もZ軸-側(下死点)に達する(ステップS54;YES)までの間、実行される。
【0298】
<流量制御の実施例2>
次に、流量制御の実施例2について説明する。
【0299】
実施例2は、自動車サイズの大物を短時間でプリントする吐出制御例である。実施例2では、ノズル径がφ12mmと大きい場合(シリンダー径dt=100mm)、φ12mmの円形断面を持つABS樹脂ビードを直線状に形成するため、ノズル径がφ12mmのノズル18aの移動速度が定常速度(通常用いる最高速度)である160mm/sで駆動されるときの流量制御、ノズル18aの制御方法について説明する。
【0300】
図27は、流量制御の実施例1、実施例2共通のフローチャートである。
図29は、実施例2のシミュレーション結果(1~3サイクル)をまとめた表である。
【0301】
以下の説明において、第1のトーピード14、第2のトーピード15がシリンダ11、12内の溶融樹脂を交互に加圧することにより(
図9~
図13参照)、吐出ノズル18aから溶融樹脂が連続的に吐出するものとする。
【0302】
図27中の各サイクルは、Δt(制御時間刻み幅)に対応する。
【0303】
まず、第1のトーピード14の1サイクル目の処理(ステップS40~S47)について説明する。
【0304】
まず、ノズル移動速度を入力する(ステップS40)。ここでは、ノズル18aの移動速度が160mm/sであることをXY軸駆動装置50から検出し、制御装置7Aに入力されたものとする。
【0305】
次に、指示流量Qを算出する(ステップS41)。ここでは、上記式4により、指示流量Q=樹脂ビードの断面積(=ノズル18aの断面積)×ノズル移動速度=π/4x122mm2×160 mm/s=18,096mm3/sが算出されたものとする。
【0306】
次に、ターゲット圧力Ptを算出する(ステップS42)。具体的には、
図21に示す処理(ステップS11~S17)が実行される。
【0307】
まず、せん断速度Dを算出する(ステップS11)。ここでは、上記式5により、せん断速度D=32×18,096 mm3/s/(3.14×(12mm)3)=106.7/sが算出されたものとする。なお、Q=18,096mm3/s、dn=12mmである。
【0308】
次に、吐出直前の溶融樹脂の温度Tを検出する(ステップS12)。ここでは、温度T=210℃が検出されたものとする。
【0309】
次に、温度Tで決まる擬塑性粘度kを算出する(ステップS13)。ここでは、210℃のABS樹脂での擬塑性粘度k=42,500[kg/(m・s
2-n)]が算出されたものとする(
図20参照)。
【0310】
次に、溶融粘度ηを算出する(ステップS14)。ここでは、上記式6により、溶融粘度η=42,500kg/(m・s
2-0.25)×106.7
0.25-1/s
0.25-1=1,280kg/(m・s)=1,280Pa・sが算出されたものとする。なお、ABS樹脂の場合、n=0.25である(
図17参照)。
【0311】
次に、せん断応力τを算出する(ステップS15)。ここでは、上記式7により、せん断応力τ=1,280Pa・s×106.7/s=136,576Pa=0.14MPaが算出されたものとする。なお、η=1,280Pa・s、D=106.7/sである。
【0312】
次に、ターゲット圧力Ptを算出する(ステップS16)。ここでは上記式8により、ターゲット圧力Pt= 0.14MPa×4×2mm/12mm=0.09MPaが算出されたものとする。なお、τ= 0.14MPa、L=2mm、dn=12mmである。このターゲット圧力Pt(0.09MPa)は制御装置7Aに出力される(ステップS17)。
【0313】
次に、
図27に戻って、実測圧力Prが検出される(ステップS43)。ここでは、実測圧力Pr=0.0MPaが検出されたものとする。
【0314】
次に、加圧量ΔPを算出する。ここでは、上記式9により、加圧量ΔP=Pt-Pr =0.09MPa-0.0MPa=0.09MPaが算出されたものとする。
【0315】
次に、実位置Xrが検出される(ステップS44)。ここでは、実位置Xr=25mmが検出されたものとする。
【0316】
次に、体積弾性率Kを設定する(ステップS45)。ここでは、体積弾性率K=834 MPaが設定されたものとする(
図18(a)参照)。
【0317】
次に、指示移動速度V
rを算出する(ステップS46)。具体的には、
図22に示す処理(ステップS25~S28)が実行される。
【0318】
まず、第1のトーピード14の移動速度(加圧分)Vrpを算出する(ステップS25)。ここでは上記式10により、移動速度(加圧分)Vrp=(0.09MPa/834MPa)(15,700mm3+7,854mm2×25mm)/0.1s/7,854mm2=0.029mm/sが算出されたものとする。なお、V0=15,700mm3、S=7,854mm2(dt=100mm)、Δt=0.1secである。なお、Δtは、0.1secに限らず、他の値であってもよい。
【0319】
次に、予測流出量Qpを算出する(ステップS26)。ここでは、上記式11により、予測流出量Qp=πdn
3/32×{Prdn/(4kLn)}1/n×Δt=0mm3が算出されたものとする。なお、Pr=0.0MPaである。
【0320】
次に、第1のトーピード14の移動速度(流量分)Vrqを算出する(ステップS27)。ここでは、上記式16により、移動速度(流量分)Vrq=Qp/Δt/S=0mm/sが算出されたものとする。なお、Qp=0mm3である。
【0321】
次に、指示移動速度Vrを算出し、出力する(ステップS28)。ここでは上記式17により、指示移動速度Vr=Vrp+Vrq=0.029 mm/s+0mm/s =0.029mm/sが算出し、出力されたものとする。
【0322】
次に、第1のトーピード14の移動速度がステップS46(ステップS27)で算出された指示移動速度Vrとなるように、モータ16aに対して駆動指令値を出力する(ステップS47)。
【0323】
次に、第1のトーピード14の2サイクル目以降の処理(トーピード移動速度フィードバック制御。ステップS48~S52)について説明する。
【0324】
まず、ノズル移動速度を入力する(ステップS48)。ここでは、ノズル18aの移動速度が160mm/sであることをXY軸駆動装置から検出し、制御装置に入力されたものとする。
【0325】
次に、上記ステップS41~S44と同じ処理が実行される。
【0326】
ここでは、ステップS43において、実測圧力Pr=0.046MPaが検出されたものとする。
【0327】
次に、修正体積弾性率K´が算出される(ステップS49)。ここでは、上記式18により、修正体積弾性率K´=(Pr-Pr-1)/(ΔVp/V)ΔVp=Vr×Δt×S-Qp=(0.046 MPa-0MPa)/(22.88mm3/212,049mm3)=426.3MPaが算出されたものとする。なお、ΔVp=0.029mm/s×0.1s×7,854mm2-0mm3=22.88mm3、Pr=0.046MPa Pr-1 =0MPa、V=15,700mm3+π/4×1002mm2×25mm=212,049mm3である。
【0328】
次に、修正体積弾性率K´を2サイクル目の体積弾性率K´として設定する(ステップS50)。
【0329】
次に、指示移動速度Vrの算出を1サイクル目(ステップS46)と同様に行う(ステップS51)。ここでは、上記式17により、指示移動速度Vr=Vrp+Vrq=0.028mm/s+0.150mm/s=0.178mm/sが算出されたものとする。なお、ΔP=Pt-Pr=0.09MPa-0.046MPa=0.044MPa、Xr=24.98mm、Vrp=(0.044MPa/426.3MPa)(15,700mm3+7,854mm2×24.98mm)/0.1s/7,854mm2=0.028mm/s、Qp=π×(12mm)3/32×{0.046MPa×12mm/(4×42,500kg/(m・s2-0.25)×2mm)}1/0.25×0.1s=117.86mm3、Vrq=117.86mm3/0.1s/7,854mm2=0.150mm/sである。
【0330】
次に、第1のトーピード14の移動速度がステップS51で算出された指示移動速度Vrとなるように、モータ16aに対して駆動指令値を出力する(ステップS52)。
【0331】
2サイクル目以降も、最終サイクルと判定されるまで(ステップS53:YES)、すなわち、第1のトーピード14が下死点に達したと判定されるまで、上記ステップS48~S52が繰り返し実行される。なお、第1のトーピード14が下死点に達したか否かは、ポテンシオメータ16fの検出値(位置検出値)に基づき、判定することができる。
【0332】
次に、ステップS40~S52と同様の処理が、第2のトーピード15がZ軸+側へ移動し、最もZ軸-側(下死点)に達する(ステップS54:YES)までの間、実行される。
【0333】
以上説明したように、実施の形態2によれば、稼働させながら、吐出量を最適に制御することができる射出成形機を提供することができる。
【0334】
これは、指示移動速度(シリンダ内の溶融樹脂を加圧する圧力がターゲット圧力となる、ピストン(第1のトーピード14又は第2のトーピード15)の移動速度のうち加圧分と、吐出ノズル18aから単位時間あたりに吐出する溶融樹脂の流量が予測流出量となる、ピストンの移動速度のうち流量分を合算した指示移動速度)となるようにピストンの移動速度を制御する移動速度制御部33Aを備えていることによるものである。
【0335】
また、実施の形態2によれば、実測圧力より予測流出量を算出し、ピストン(第1のトーピード14又は第2のトーピード15)の目標移動速度を算出することで、実際の流出量を測定することなく、吐出流量を制御することができるため、射出成形機2Aを稼働させながら、吐出流量を制御することができる。
【0336】
また、実施の形態2によれば、吐出し始めのサイクル(例えば、
図27中の第1のトーピードの1サイクル目)では、予め記憶された体積弾性率を用いることで、迅速に目標の指示流量に到達することができる。
【0337】
また、実施の形態2によれば、溶融樹脂へのエアの巻き込み具合に応じた精度の高い流量とすることができる。
【0338】
また、実施の形態2によれば、溶融樹脂の種類(材種)・温度・ノズル寸法を考慮して、ターゲット圧力を算出し、吐出する流量を制御することができる。
【0339】
これは、ターゲット圧力となるようにシリンダ内の溶融樹脂の圧力を制御する移動速度制御部(本発明の圧力制御部の一例)を備えていることによるものである。
【0340】
また、実施の形態2によれば、温度により異なる擬塑性粘度を用いて、溶融樹脂のターゲット圧力を算出することで、正確に樹脂吐出流量の制御を行うことができる。
【0341】
また、実施の形態2によれば、複数の樹脂材種を用いる場合にも、樹脂材種により異なる擬塑性粘度を用いて、溶融樹脂のターゲット圧力を算出することで、正確に樹脂吐出流量の制御を行うことができる。
【0342】
また、実施の形態2によれば、使用している樹脂の種類ごとおよび温度ごとの擬塑性粘度を予め記憶させておくことで、ターゲット圧力を算出する際の演算負荷が低下できる。また、吐出し始めのサイクルから迅速に目標の指示流量とすることができる。
【0343】
また、実施の形態2によれば、移動速度制御部33Aは、溶融樹脂の体積弾性率を用いて、ピストン(第1のトーピード14又は第2のトーピード15)の移動速度をフィードフォワード制御することにより、より正確にターゲット圧力に制御することができる。
【0344】
また、実施の形態2によれば、実測圧力より予測流出量を算出し、ピストン(第1のトーピード14又は第2のトーピード15)の指示移動速度を算出することで、実際の流出量を測定することなく、吐出流量を制御することができるため、射出成形機を稼働させながら、吐出流量を制御することができる。
【0345】
また、実施の形態2によれば、実測圧力より算出される圧力変化量、及び実質的な加圧容積に基づいて、体積弾性率を修正する修正体積弾性率算出部34Aを備えているため、溶融樹脂へのエアの巻き込み具合に応じた精度の高い流量とすることができる。
【0346】
また、実施の形態2によれば、修正体積弾性率算出部34Aは、実測圧力と前記ターゲット圧力の差が所定値以上である場合にのみ、体積弾性率の修正を行うようにすることで、体積弾性率の値を補正する必要があるときのみ、修正を行うことができる。
【0347】
また、実施の形態2によれば、以下の効果を奏する。
【0348】
実施の形態2で説明した樹脂吐出ノズル18aの流量制御は、樹脂ペレット材料(通常、工業的に多量に流通している形態であるため、例えばStratasys社製など従来の3Dプリンタに用いられるフィラメントより大変安価)より樹脂ビード(ノズル18aから吐出された溶融樹脂が糸のように固まったもの)を形成して積層する、3Dプリンタに適用するのが望ましい。
【0349】
その理由として、以下の4点の課題を解決する可能性があることがあげられる。
【0350】
<課題1>
3Dプリンタ(射出成形機2A又はこれを備えた射出成形装置1)ではノズル18aの移動速度が変化しても均一の太さの樹脂ビードが形成できることが求められる。すなわち、移動速度を検知し、それに応じた流量に迅速に対応することが求められる。
【0351】
<課題2>
樹脂吐出ノズルの実際の流量を3Dプリンタを動作させながら測定することは本発明が想定する樹脂ノズルでは困難である。このため、一般的に、樹脂吐出圧力の測定値により制御する方法を取ることになる。
【0352】
<課題3>
しかしながら、本発明者は、樹脂材料の種類や溶融樹脂の温度、吐出孔の径により同一の圧力であっても実際の流量がかなり異なることを見出した。高温では溶融粘度が低くなるため、圧力に対し流量が大きくなりやすい。また、ノズル径が大きいほど壁面摩擦の影響が及ぶ範囲が小さくなるため、見掛け粘度が下がり、圧力に対し流量が大きくなりやすい。また溶融樹脂は非ニュートン流体であるため、流量が大きいほど見掛け粘度が下がり流量が大きくなりやすい。なお、3Dプリンタでは様々な樹脂種類や様々な溶融樹脂の温度、極小径(例えば、φ0.5mm)から大きな吐出孔の径(例えばφ12mm)に1台で対応できたほうが望ましい。(例えば、ペンケースのような小さなものとミニバン程度の大きなものを造形する場合を比べると、積層造形の1層に要する時間が変わるため、次に層を重ねる時までの放熱量などにより、樹脂の温度やノズル径を変える必要がある)。
【0353】
<課題4>
本発明者は、次のことを見出した。すなわち、樹脂ペレット材料を用いる課題として、ペレットの充てん具合などにより可塑化の過程が毎ストロークごとに違う。その結果、溶融状態(エアの巻き込み具合)により、同一の圧縮容積としても実際の圧力上昇が異なり(これは体積弾性率の相違による)、その結果、流量も異なる。
【0354】
実施の形態2は、上記課題1~4を解決するために、様々な樹脂種類や様々な溶融樹脂の温度に対する材料物性値を定数としてデータテーブル21~23に予め記憶し、充てんする樹脂の種類を入力し、溶融樹脂の温度を計測し、それらに対応した定数と装着された吐出孔の径(ノズル径)を入力することで、移動速度から計算された指示流量を吐出するためのターゲット圧力を算出する。これにより、上記課題1、3が解決される。
【0355】
次に、そのターゲット圧力になるよう、実測圧力との差から算出した加圧量を生じるトーピード(第1のトーピード14又は第2のトーピード15)の移動速度と、トーピードが移動中の流出量に相当するトーピードの移動速度を合算した移動速度により制御するものである。流出量の直接の測定は困難であるため、実測圧力から予測した流量を用いる。加圧量を生じるトーピードの移動速度を算出する際、吐出し始めのサイクル(例えば、
図27中の第1のトーピードの1サイクル目)では、データテーブルにある対応する体積弾性率を用いることで、フィードフォーワード制御とし、迅速に目標の指示流量付近に到達する。これにより、上記課題2が解決される。
【0356】
その後のサイクル(例えば、
図27中の第1のトーピードの2サイクル目以降)では、トーピードが移動した結果生じる圧力変化量を実測し、トーピードの位置検出結果から算出する容積変化量と、実測圧力から上記式11で算出される流出量を引いて求める、「実質的な加圧容積」を求め、圧力変化量と「実質的な加圧容積」とから修正体積弾性率を求め、それを用いて指示移動速度を算出することで、溶融樹脂へのエアの巻き込み具合に応じた精度の高い流量とすることができる。これにより、上記課題4が解決される。
【0357】
次に、比較例1~3と対比して、実施の形態2の利点についてさらに説明する。
【0358】
<比較例1>
比較例1(特許第5920859号)は、スクリューで可塑化した樹脂を直後に配置されたギアポンプで流量調整する。
【0359】
比較例1に対する実施の形態2の利点は次のとおりである。すなわち、実施の形態2は、スクリューで可塑化した樹脂を直後に配置されたギアポンプで流量調整する代わりに、トーピードで可塑化した樹脂を一旦可塑化室に貯留し、吐出の際はアクチュエータで制御されたトーピードの移動速度により流量を制御するため、比較例1のノズル先端にあるギアポンプやノズルの内部空間の容積を変化可能とする前後動可能なピストン部材などが不要となり、構造が単純で小さくできる利点がある。
【0360】
<比較例2>
比較例2(特許第4166746号)は、溶融樹脂の流出量を圧力と温度で制御したい場合、ノズルを閉鎖状態にして圧縮率C(P,T)の変化特性を求める。
比較例2に対する実施の形態2の利点は次のとおりである。すなわち、実施の形態2は、指示流量(目標流量)からトーピードの移動速度を制御するアクチュエータを駆動する指示値の算出に必要な材料物性値を定数として装置内のデータテーブルに備えているので、射出工程の前に特性値を測定する工程は必要としないという利点がある。
【0361】
<比較例3>
比較例3(特開平-16195号)は、プランジャの位置に応じて成形材料の体積弾性率が変化すると仮定し、ノズルから射出される成形材料の実際の射出流量値を算出する。
比較例3に対する実施の形態2の利点は次のとおりである。すなわち、実施の形態2は、比較例3では必要な射出工程の前に体積弾性率を決める定数ABCを測定する工程は必要としないという利点がある。この理由は、実施の形態2は最初のサイクル(例えば、
図27中の第1のトーピードの1サイクル目)のみはデータテーブルにある体積弾性率を使用するが、2サイクル目(例えば、
図27中の第1のトーピードの2サイクル目以降)からは射出工程を行いながら修正体積弾性率を毎サイクル求めることができるため、エアの巻き込み具合を考慮した値となり比較例3と同等の効果が出せる。
【0362】
比較例3のフィードバック制御と実施の形態2の違いを次のIで、また、なぜ実施の形態2が射出工程を行いながら修正体積弾性率を求めることができるのかを次のIIで、それぞれ述べる。
【0363】
I:比較例3では圧力と位置の測定結果から「実際の流量」(比較例3での呼び名)を算出し、目標流量との差によりフィードバック制御する。しかし、実施の形態2が想定するノズルでは本当の実際の流量の計測手段を持たない。このため実施の形態2(本発明の技術思想)は流量については2サイクル目以降であってもオープンループ制御である。すなわち、本発明は実測圧力を用いて修正体積弾性率を求め、指示流量(目標流量)を得るためのトーピードの移動速度の予測精度を上げることである。
【0364】
II:実施の形態2が射出工程を行いながら修正体積弾性率を求めることができる理由は、トーピードの移動による容積変化を、「実質的な加圧容積」(圧力を上昇させるために寄与する圧縮容積)と流出量に相当する分の和としてとらえ、流出量を上記式11で実測圧力から算出される精度の高い「予測流出量」とすることで、位置センサ(ポテンシオメータ16f、17f)で計測できる実位置よりトーピードの移動による容積変化も精度の高い値とすることで、後者と前者の差である「実質的な加圧容積」を射出工程を行いながら(=トーピードを移動させて、ノズルを閉鎖することなく樹脂を流出させながら)、高い精度で求めることができることによる。
【0365】
なお、実施の形態2では修正体積弾性率を求める際に、実測圧力とトーピードの移動による容積変化と「予測流出量」を用いるが、上記式11に示すように、「予測流出量」を算出することに実測圧力を用いるが体積弾性率を用いることがない。このため、修正体積弾性率を体積弾性率とは独立して求めることができる。
【0366】
一方、比較例3では「実際の流量q° 」(比較例3での呼び名)を算出することに、実測圧力P°の他に体積弾性率K(z)を用いているために、実施の形態2でいうところの「実質的な加圧容積」を、トーピードの移動による容積変化As・Z°から「実際の流量q° 」を引いて求め、それと実測圧力P°とから修正体積弾性率を求めようとしても、予測値(修正体積弾性率)の算出過程にその予測値(修正体積弾性率)を使うことになり、Excelで言うところの循環参照となり計算が出来ない。
【0367】
また、実施の形態2では、溶融樹脂の温度と流量に対する粘度の変化を考慮した値を用いて、粘度と圧力とから流量が決まる理論式(擬塑性流動での非ニュートン流体のべき法則を用い、溶融粘度のせん断速度依存性、温度依存性を考慮したもの)から目標の指示流量に対するターゲット圧力を計算し制御に用いるのでより予測精度が優れ、迅速に指示流量(目標流量)に到達する。また、データテーブルに様々な樹脂に対するべき指数nを用意しておき、事前に各温度に対して求めたkも準備しておくことで、様々な樹脂の正確な流量制御が可能となる。
【0368】
<実施の形態3>
次に、実施の形態3として、3Dプリンタにおける造形不具合発生時の自動停止及び欠陥位置の記録方法について説明する。
【0369】
実施の形態3の射出成形機2Bの構成は、上記実施の形態2の射出成形機2Aの構成(
図14参照)と同様であるため、説明を省略する。
【0370】
図30は、実施の形態3の制御装置7Bの構成図である。
【0371】
実施の形態3の制御装置7Bの構成は、上記実施の形態2の制御装置7Aの構成(
図15参照)と同様であるが、
図30に示すように、実施の形態3の制御装置7Bには、位置記憶部25、異常検出部35A、異常報知部70が追加されている。
【0372】
位置記憶部25は、例えば、記憶部20に設けられている。位置記憶部25には、異常検出部35Aが異常(欠陥)を検出した時点のノズル位置(異常(欠陥)を検出した時点のノズル18aの位置が分かる3Dプリンタの動作位置)が記憶される。
図35は、位置記憶部25に記憶されるノズル18aの位置の一例である。
【0373】
異常検出部35Aは、制御部30(プロセッサ)が記憶部20からメモリ40(例えば、RAM)に読み込まれた所定プログラムを実行することにより実現される。異常検出部35Aは、ハードウェアで実現してもよい。異常検出部35Aの動作例については後述する。
【0374】
異常報知部70は、異常検出部35Aが検出した異常を表示するディスプレイ又は異常検出部35Aが検出した異常を音声で出力するスピーカである。
【0375】
<異常検出部35Aの動作例>
次に、異常検出部35Aの動作例(自動停止判定及び欠陥発生判定ロジック)について説明する。
【0376】
図31は、異常検出部35Aの動作例(自動停止判定及び欠陥発生判定ロジック)のフローチャートである。
図31中、点線で囲った範囲が異常検出部35Aの動作例(自動停止判定及び欠陥発生判定ロジック)である。
【0377】
まず、ターゲット圧力Ptが決定される(ステップS60)。具体的には、吐出ノズル18aの移動速度から一定太さの樹脂ビードとなるよう算出される流量となるよう、吐出孔上流の溶融樹脂のターゲット圧力Ptを決定する。ターゲット圧力Ptは、例えば、実施の形態2で説明したターゲット圧力算出部31Aにより決定することができる。
【0378】
次に、実測圧力Prが検出される(ステップS61)。実測圧力Prは、圧力センサ等により直接検出するか、第1のシリンダ11の外周面又は第2のシリンダ12の外周面に取り付けられた圧力検出部65又は66(例えば、ひずみゲージ)の値(圧力検出値)から推定することができる。
【0379】
次に、圧力の差ΔPを次の式20により算出する(ステップS62)。
ΔP=Pr-Pt・・・(式20)
但し、Prは実測圧力、Ptはターゲット圧力である。
【0380】
次に、ステップS47と同様に、モータ16aに対して駆動指令値を出力する(ステップS63)。
【0381】
次に、ΔPが予め定められた基準ST1又は基準ST2を満たすか否かを判定する(ステップS64)。
【0382】
基準ST1は、例えば、ΔP>閾値Pmaxである。閾値Pmaxは、プラスの値で、例えば、実験により予め定めることができる比較的大きな値である。基準ST1(閾値Pmax等)は、例えば、記憶部20に記憶されている。基準ST1は、吐出ノズル18a(吐出孔)に未溶融の樹脂片やゴミが詰まるなどして実流量Qが目標流量(指示流量)より小さくなる場合、満たされる。その理由は、実流量Qが目標流量より小さいと、シリンダ11内の樹脂の圧縮量が想定より大きくなり、内部圧力が上昇するため、実測圧力Prがターゲット圧力Ptより大きくなるためである。
【0383】
基準ST2は、例えば、ΔP<閾値Pminである。閾値Pminは、マイナスの値で、例えば、実験により予め定めることができる比較的小さな値である。基準ST2(閾値Pmin等)は、例えば、記憶部20に記憶されている。基準ST2は、溶融樹脂の体積弾性率Kがエアの混入がないものより小さくなる場合、満たされる。その理由は、溶融樹脂にエアが混入するケースとして、ブリッジを起こして供給管内で詰まり樹脂ペレットの供給量が不十分であったり、ペレット形状や静電気の影響等でノズル18aへの充てん率が低い場合、可塑化する樹脂の量が第1のシリンダ11の容積を下回る場合等に生じる。この状態で形成された樹脂ビードには混入したエアーが膨張して生じる空洞欠陥が含まれ、造形体の品質悪化を招く。
【0384】
ΔPが基準ST1を満たす場合(ステップS64:YES)、吐出ノズル18aが詰まったため造形不具合発生と判断し造形を自動停止する(ステップS65)。停止とは、吐出ノズル18aの停止(アクチュエータ(ここでは、モータ16a又は17a)の停止)及びガントリー装置51の停止をいう。この場合(ステップS64:YES)、異常報知部70は、吐出ノズル18aが詰まった旨をディスプレイに表示してもよいし、音声で出力してもよい。
【0385】
一方、ΔPが基準ST2を満たす場合(ステップS64:YES)、溶融樹脂へのエアの巻き込みが過多であるため造形不具合発生と判断し造形を自動停止する(ステップS65)。この場合(ステップS64:YES)、異常報知部70は、溶融樹脂へのエアの巻き込みが過多である旨をディスプレイに表示してもよいし、音声で出力してもよい。
【0386】
一方、ステップS64の判定の結果、ΔPが基準ST1及び基準ST2を満たさない場合(ステップS64:NO)、ΔPが予め定められた基準DF1を満たすか否かを判定する(ステップS66)。基準DF1は、例えば、ΔP<閾値PDFである。閾値PDFは、マイナスの値で、閾値Pminより大きい。閾値PDFは、例えば、実験により予め定めることができる。基準DF1(閾値PDF等)は、例えば、記憶部20に記憶されている。
【0387】
ΔPが基準DF1を満たす場合(ステップS66:YES)、溶融樹脂へのエアの巻き込みがやや多い(空孔欠陥)と考えられる(但し、積層造形物を、製品として採用できる)ため、後でその空孔欠陥の箇所を確認できるように、ノズル位置(異常(欠陥)を検出した時点のノズル18aの位置が分かる3Dプリンタの動作位置)を位置記憶部25に記録する(ステップS67)。この場合、異常報知部70は、溶融樹脂へのエアの巻き込みがやや多い旨(及びノズル位置)をディスプレイに表示してもよいし、音声で出力してもよい。
【0388】
一方、ステップS66の判定の結果、ΔPが基準DF1を満たさない場合(ステップS66:NO)、DF1の出現回数が基準ST3を満たすか否かを判定する(ステップS68)。基準ST3は、DF1の出現回数(ΔPが閾値PDFを超えた回数)>所定回数である。所定回数は、通算の積算回数又は所定期間内の積算回数で、予め定めることができる。基準ST3(所定回数等)は、例えば、記憶部20に記憶されている。
【0389】
DF1の出現回数が基準ST3を満たす場合(ステップS68:YES)、造形不具合発生(空孔欠陥頻発)と判断し造形を自動停止する(ステップS69)。この場合、異常報知部70は、空孔欠陥頻の旨をディスプレイに表示してもよいし、音声で出力してもよい。
【0390】
一方、ステップS68の判定の結果、DF1の出現回数が基準ST3を満たさない場合(ステップS68:NO)、上記ステップS60に戻ってステップS60以下の処理が繰り返し実行される。
【0391】
<異常検出部35Aの他の動作例>
次に、異常検出部35Aの他の動作例(自動停止判定及び欠陥発生判定ロジック)について説明する。
【0392】
図32は、異常検出部35Aの他の動作例(自動停止判定及び欠陥発生判定ロジック)のフローチャートである。
図32中、点線で囲った範囲が異常検出部35Aの他の動作例(自動停止判定及び欠陥発生判定ロジック)である。
【0393】
図32は、第1のトーピード14の1サイクル目及び2サイクル目以降の動作例、並びに第2のトーピード15の1サイクル目及び2サイクル目以降の動作例共通のフローチャートである。
【0394】
以下代表して、第1のトーピードの1サイクル目の動作例(S70~S73)及び2サイクル目以降の動作例(S74~S88)を説明する。第2のトーピードの1サイクル目の動作例(S70~S73)及び2サイクル目以降の動作例(S74~S88)については、第1のトーピードの1サイクル目の動作例及び2サイクル目以降の動作例と同様であるため説明を省略する。
【0395】
まず、第1のトーピード14の1サイクル目の動作例(S70~S73)について説明する。
【0396】
まず、ターゲット圧力Ptが決定(算出)される(ステップS70)。
【0397】
次に、実測圧力Prが検出される(ステップS71)。
【0398】
次に、上記ステップS45と同様に、体積弾性率Kを設定する(ステップS72)。
【0399】
次に、上記ステップS47と同様に、モータ16aに対して駆動指令値を出力する(ステップS73)。
【0400】
次に、2サイクル目以降の動作例(S74~S101)について説明する。
【0401】
まず、ターゲット圧力Ptが決定(算出)される(ステップS74)。
【0402】
次に、実測圧力Prが検出される(ステップS75)。
【0403】
次に、圧力の差ΔPを上記式20により算出する(ステップS76)。
【0404】
次に、実位置Xrが検出される(ステップS77)。
【0405】
次に、上記ステップS31と同様に、修正体積弾性率K´を上記式18により算出する(ステップS78)。
【0406】
次に、体積弾性率の差ΔKを次の式21により算出する(ステップS79)。
ΔK=K´-K・・・(式21)
但し、K´は修正体積弾性率、Kは体積弾性率である。
【0407】
次に、上記ステップS73と同様に、モータ16aに対して駆動指令値を出力する(ステップS80)。
【0408】
次に、ΔPが予め定められた基準ST4を満たすか否かを判定する(ステップS81)。基準ST4は、例えば、ΔP>閾値Pmaxである。閾値Pmaxは、プラスの値で、例えば、実験により予め定めることができる比較的大きな値である。基準ST4(閾値Pmax等)は、例えば、記憶部20に記憶されている。
【0409】
基準ST4は、吐出ノズル18a(吐出孔)に未溶融の樹脂片やゴミが詰まるなどして実流量Qが目標流量(指示流量)より小さくなる場合、満たされる。その理由は、実流量Qが目標流量より小さいと、溶融樹脂格納室内の樹脂の圧縮量が想定より大きくなり、内部圧力が上昇するため、実測圧力Prがターゲット圧力Ptより大きくなるためである。
【0410】
ΔPが基準ST4を満たす場合(ステップS81:YES)、吐出ノズル18aが詰まったため造形不具合発生と判断し造形を自動停止する(ステップS82)。停止とは、吐出ノズル18aの停止(アクチュエータ(ここでは、モータ16a又は17a)の停止)及びガントリー装置51の停止をいう。この場合(ステップS81:YES)、異常報知部70は、吐出ノズル18aが詰まった旨をディスプレイに表示してもよいし、音声で出力してもよい。
【0411】
一方、ステップS81の判定の結果、ΔPが基準ST4を満たさない場合(ステップS81:NO)、ΔKが予め定められた基準ST5を満たすか否かを判定する(ステップS83)。基準ST5は、例えば、ΔK<閾値Kminである。閾値Kminは、マイナスの値で、例えば、実験により予め定めることができる比較的小さな値である。基準ST5(閾値Kmin等)は、例えば、記憶部20に記憶されている。
【0412】
ΔKが基準ST5を満たす場合(ステップS83:YES)、溶融樹脂へのエアの巻き込みが過多であるため造形不具合発生と判断し造形を自動停止する(ステップS84)。この場合(ステップS83:YES)、異常報知部70は、溶融樹脂へのエアの巻き込みが過多である旨をディスプレイに表示してもよいし、音声で出力してもよい。
【0413】
一方、ステップS83の判定の結果、ΔKが基準ST5を満たさない場合(ステップS83:NO)、ΔKが予め定められた基準DF2を満たすか否かを判定する(ステップS85)。基準DF2は、例えば、ΔK<閾値KDFである。閾値KDFは、マイナスの値で、閾値Kminより大きい。閾値KDFは、例えば、実験により予め定めることができる。基準DF2(閾値KDF等)は、例えば、記憶部20に記憶されている。
【0414】
ΔKが基準DF2を満たす場合(ステップS85:YES)、溶融樹脂へのエアの巻き込みがやや多い(空孔欠陥)と考えられる(但し、積層造形物を、製品として採用できる)ため、後でその空孔欠陥の箇所を確認できるように、ノズル位置(異常(欠陥)を検出した時点のノズル18aの位置が分かる3Dプリンタの動作位置)を位置記憶部25に記録する(ステップS86)。この場合、異常報知部70は、溶融樹脂へのエアの巻き込みがやや多い旨(及びノズル位置)をディスプレイに表示してもよいし、音声で出力してもよい。
【0415】
一方、ステップS85の判定の結果、ΔKが基準DF2を満たさない場合(ステップS85:NO)、DF2の出現回数が基準ST6を満たすか否かを判定する(ステップS87)。基準ST6は、例えば、DF2の出現回数(ΔPが閾値KDFを超えた回数)>所定回数である。所定回数は、通算の積算回数又は所定期間内の積算回数で、予め定めることができる。基準ST6(所定回数等)は、例えば、記憶部20に記憶されている。
【0416】
DF2の出現回数が基準ST6を満たす場合(ステップS87:YES)、造形不具合発生(空孔欠陥頻発)と判断し造形を自動停止する(ステップS88)。この場合、異常報知部70は、造形不具合発生(空孔欠陥頻発)の旨をディスプレイに表示してもよいし、音声で出力してもよい。
【0417】
一方、ステップS87の判定の結果、DF2の出現回数が基準ST6を満たさない場合(ステップS87:NO)、上記ステップS74に戻ってステップS74以下の処理が繰り返し実行される。
【0418】
<3Dプリンタに用いた時の造形欠陥予測位置の記録方法の実施例>
次に、3Dプリンタに用いた時の造形欠陥予測位置の記録方法の実施例(以下、実施例3と呼ぶ)について説明する。
【0419】
図33は、3Dプリンタに用いた時の造形欠陥予測位置の記録方法の実施例のフローチャートである。
【0420】
図33は、
図27に対して「自動停止判定及び欠陥発生判定ロジック(ステップS64-S69。
図31中の点線内参照)」及び「自動停止判定及び欠陥発生判定ロジック(ステップS81-S88。
図32中の点線内参照)」を追加したものに相当する。
図33中の各ステップの処理については既に説明したので、説明を省略する。
【0421】
図34は、実施例3の結果(1~6サイクル)をまとめた表である。具体的には、
図34は、
図33中のステップS40~S47の処理を1回、ステップS48~S52の処理を5回繰り返した場合の結果をまとめた表である。
【0422】
図34は、サイクル4以降、ΔK(=K´-K)<閾値K
DF(=-500)、すなわち、基準DF2を満たしたことを表している。これは、溶融樹脂へのエアの巻き込みがやや多い(空孔欠陥)と考えられるため、後でその空孔欠陥の箇所を確認できるように、ノズル位置(異常(欠陥)を検出した時点のノズル18aの位置が分かる3Dプリンタの動作位置)を位置記憶部25に記録する(ステップS86)。例えば、
図35に示すように記録する。
図35は、位置記憶部25に記憶された造形欠陥の予測位置(異常検出部35Aが異常(欠陥)を検出した時点のノズル位置)の一例である。
【0423】
<ノズル詰まりによる造形の停止の実施例>
次に、ノズル詰まりによる造形の停止の実施例(以下、実施例4と呼ぶ)について説明する。
【0424】
図36は、実施例4の結果(1~5サイクル)をまとめた表である。具体的には、
図36は、
図33中のステップS40~S47の処理を1回、ステップS48~S52の処理を4回繰り返した場合の結果をまとめた表である。
【0425】
図36は、サイクル5において、ΔP>閾値Pmax(=2.0MPa)、すなわち、基準ST4を満たしたことを表している。これは、ノズル18a(吐出孔)に未溶融樹脂またはゴミが詰まったことにより流量が低下し、圧縮容積が増えたため圧力が急上昇したと考えられる。このまま造形を継続するとノズル18aが破損する恐れがあるため、例えば、停止信号ST1を出力し造形を自動停止する(ステップS65)。
【0426】
以上説明したように、実施の形態3によれば、吐出ノズル18a(吐出孔)に未溶融の樹脂片が詰まった場合や吐出された樹脂が空気を含んでいる場合等の異常が発生したことを検出することができる射出成形機7Bを提供することができる。
【0427】
これは、ターゲット圧力と実測圧力とに基づいて、異常を検出する異常検出部35Aを備えていることによるものである。
【0428】
また、実施の形態3によれば、上記のように異常を検知することができるため、自動運転時等、人の監視が無い状態で欠陥不良の多い積層造形物を作り続けてしまうのを抑制することができる。
【0429】
また、ノズル18aが詰まった状態に気づかず樹脂を吐出しようと作動し続けると内部圧力が上昇し、シリンダ11、12又はアクチュエータ(ここでは、モータ16a、17a)が破損する恐れがあるが、実施の形態3によれば、圧力の差ΔPが閾値を超えた場合、又は体積弾性率の差が閾値を超えた場合、造形を停止するため(ステップS65、S82、S84)、シリンダ11、12又はアクチュエータ(ここでは、モータ16a、17a)が破損するのを抑制することができる。
【0430】
また、実施の形態3によれば、異常検出部35Aが異常を検出した場合、当該異常を報知する異常報知部70を備えているため、異常の発生を容易に把握できる。
【0431】
また、実施の形態3によれば、異常検出部35Aが異常を検出した場合、当該異常を検出した時点の吐出ノズル18aの座標を記憶する位置記憶部25を備えているため、当該座標を参照することで、完成後の積層造形体(3次元造形物)の検査で異常(欠陥位置)が許容できるレベルか否かを容易に判定できる。
【0432】
また、実施の形態3によれば、ターゲット圧力と実測圧力との差(ΔP)が予め定められた第1基準(例えば、基準ST2:ΔP<閾値Pmin)を満たす場合、異常検出部35Aは第1の異常(溶融樹脂へのエアの巻き込みが過多である)を検出し、かつ、吐出ノズル18aを停止する(ステップS65)。一方、ターゲット圧力と実測圧力との差(ΔP)が予め定められた第2基準(例えば、基準DF1:ΔP<閾値PDF)を満たす場合、異常検出部35Aは第2の異常(溶融樹脂へのエアの巻き込みがやや多い(空孔欠陥))を検出し、かつ、当該第2の異常を検出した時点の吐出ノズル18aの座標を位置記憶部25に記憶する(ステップS67)。
【0433】
これにより、例えば、差(ΔP)が大きい場合には、停止しないと設備が故障するので停止し、ある程度の差の大きさであれば、成形を続け、後に欠陥が発生していないかを検査することができる。
【0434】
また、実施の形態3によれば、ターゲット圧力が実測圧力より大きい場合に異常検出部35Aが検出する異常と、ターゲット圧力が実測圧力より小さい場合に異常検出部35Aが検出する異常は、互いに異なっていてもよい。
【0435】
このようにすれば、例えば、異常が、エア混入が原因か、樹脂片が詰まったことが原因かを特定することができる。
<実施の形態4>
次に、実施の形態4として3Dプリンタ300について説明する。
【0436】
<3Dプリンタ300のシステム構成(概要)>
図37は、実施の形態4の3Dプリンタ300のシステム構成図である。
【0437】
図37に示すように、実施の形態4の3Dプリンタ300は、吐出ノズル18から吐出される溶融樹脂である樹脂ビードRBをベースプレート4(本発明のテーブルの一例)上に積層することで、3次元造形物(例えば、
図37中、符号Ob1が示す3次元造形物)を造形する3次元積層物造形装置である。3Dプリンタ300は、溶融樹脂を貯留するシリンダ11、12と、シリンダ11、12に連通した吐出ノズル18と、第1のピストンユニット14(及び第2のピストンユニット15)と、を備えている。なお、図示しないが、XY軸に加えてZ軸方向にも動くロボットと、固定されたベースプレートと、を用いてもよい。
【0438】
以下、第1のピストンユニット14、第2のピストンユニット15のことを、第1のピストン14、第2のピストン15とも呼ぶ。第1のピストン14、第2のピストン15が本発明のピストンの一例である。第1のピストン14、第2のピストン15は、シリンダ11、12内を往復直線運動するピストンであって、吐出ノズル18に接近する方向(
図37中、下方向)に移動しシリンダ11、12内の溶融樹脂を加圧することにより、吐出ノズル18から溶融樹脂を吐出させる。
【0439】
<3Dプリンタ300のシステム構成(ハード構成)>
図37に示すように、3Dプリンタ300は、実施の形態2の射出成形機2A、制御装置7A、XY軸駆動装置50(ガントリー駆動装置)、Z軸駆動装置60を備えている。XY軸駆動装置50が、本発明の移動部の一例である。これらについては、上記実施の形態2等で既に説明したため、説明を省略する。
【0440】
なお、第1の圧力検出部65及び第2の圧力検出部66は、溶融樹脂の圧力を可塑化室S2、S4から吐出ノズル18(樹脂吐出孔)の間のどこかで測定又は推定できる手段(例えば、圧力センサ)であればよい。また、温度検出部63は、溶融樹脂の温度を可塑化室S2、S4から吐出ノズル18(樹脂吐出孔)の間のどこかで測定又は推定する手段(例えば、熱電対)であればよい。
【0441】
図37中、「樹脂による定数」は
図15中の各データテーブル21~23に対応し、「ノズル径、ノズル長」は
図15中のノズルの寸法24に対応する。
【0442】
さらに、3Dプリンタ300は、造形軌跡生成部80、ピストン直進アクチュエータ駆動装置81を備えている。
【0443】
造形軌跡生成部80は、造形モデルMD(例えば、STL(Standard Triangulated Language)により目的の3次元造形物を記述した3Dデータ)に対して所定処理を実行することにより造形軌跡(以下、3Dプリント軌跡とも呼ぶ)を生成する。造形軌跡生成部80は、例えば、スライサーと呼ばれる公知のソフトウェア(プログラム)をパーソナルコンピュータ等の情報処理装置(図示せず)が実行することにより実現される。
【0444】
3Dプリント軌跡は、目的の3次元造形物が造形(積層)されるように3Dプリンタ300を制御するためのデータで、例えば、Gコードである。Gコードは、積層方向(Z軸方向)に分割(スライス)された層ごとに、目的の3次元造形物を造形するために3Dプリンタ300を制御するためのデータで、例えば、吐出ノズル18の移動目標位置(XY座標)を含む。
【0445】
例えば、
図37に示すように、始点A、反転点B、途中点Cを通過する3次元造形物Ob1(積層造形体)を造形する場合を想定する。この場合、
図38(a)~
図38(c)に示す速度と時間の関係になるような3Dプリント軌跡が生成される。
図38(a)はX軸方向ノズル速度と時間との関係を表すグラフ、
図38(b)はY軸方向ノズル速度と時間との関係を表すグラフ、
図38(c)はノズル並進速度の大きさと時間との関係を表すグラフである。
図38中のA、B、Cは、
図37中のA、B、Cに対応する。
図38(c)中、「ノズル並進速度の大きさ」とは、XY各軸(またはXYZ各軸)の移動速度の合成として算出される速度ベクトルの大きさをいう。
【0446】
造形軌跡生成部80は、3Dプリント軌跡として、始点と終点との間の全ての移動目標位置を生成する場合もあるし、現在位置(吐出ノズル18の現在位置)から少なくとも1つ先の移動目標位置のみを生成する場合もある。実施の形態4では、後者を例にして説明する。
ピストン直進アクチュエータ駆動装置81は、制御装置7Aからの制御に従い(制御装置7Aから出力される駆動指令値に基づき)、モータ16a、17aを制御する。
【0447】
<3Dプリンタ300の機能構成>
図39は、3Dプリンタ300の機能ブロック図である。
制御装置7Aの制御部30A(プロセッサ)は、記憶部20からメモリ40(例えば、RAM)に読み込まれた所定プログラムを実行することにより、
図39に示すように、主に、取得部30a、ピストン制御部30b、温度制御部30c、流量予測部30d、吐出ノズル制御部30eとして機能する。これらの一部又は全部は、ハードウェアで実現してもよい。
【0448】
取得部30aは、吐出ノズル18の移動速度(並進速度)を取得する。
【0449】
ピストン制御部30bは、第1のピストン14(又は第2のピストン15)の移動(移動方向、移動速度)を制御する。具体的には、ピストン制御部30bは、吐出ノズル18の移動速度(並進速度)に基づいて、第1のピストン14(又は第2のピストン15)の移動を制御する。詳細には、ピストン制御部30bは、樹脂ビードRBの寸法が一定となるように、ピストン直進アクチュエータ駆動装置81を制御することにより第1のピストン14(又は第2のピストン15)の移動速度を制御する。
【0450】
温度制御部30cは、シリンダ11、12(可塑化室S2、S4)に貯留された溶融樹脂の温度を制御する。
流量予測部30dは、吐出ノズル18から吐出される溶融樹脂の吐出流量を予測する。
吐出ノズル制御部30eは、吐出ノズル18の移動を制御する。例えば、吐出ノズル制御部30eは、予測された吐出流量に基づいて、樹脂ビードRBの寸法が一定となるように、XY軸駆動装置50(本発明の移動部の一例)を制御することにより吐出ノズル18の移動速度(並進速度)を制御する。
【0451】
<3Dプリンタ300の動作の概略>
次に、実施の形態4の3Dプリンタ300の動作の概略について説明する。
図40は、3Dプリンタ300の動作の概略のフローチャートである。以下の処理は、制御部30A(プロセッサ)が記憶部20からメモリ40(例えば、RAM)に読み込まれた所定プログラムを実行することにより実現される。
【0452】
まず、3Dプリント軌跡を生成する(ステップS90)。3Dプリント軌跡は、造形軌跡生成部80が、造形モデルMDに対して所定処理を実行することにより生成される。
【0453】
次に、吐出ノズル18をXY軸方向に移動させる(ステップS91)。これは、制御装置7A(吐出ノズル制御部30e)が、射出成形機2A(吐出ノズル18)を3Dプリント軌跡(造形軌跡)に従って移動させるための駆動指令値をXY軸駆動装置50(ガントリー駆動装置)に出力し、XY軸駆動装置50が、制御装置7Aからの制御に従い(制御装置7Aから出力される駆動指令値に基づき)、射出成形機2A(吐出ノズル18)をXY軸方向に移動させることで実現される。
【0454】
上記ステップS91の処理は、1層の3Dプリント軌跡(造形軌跡)の造形が完了する(ステップS92:YES)まで実行される。
【0455】
次に、1層の3Dプリント軌跡(造形軌跡)の造形が完了すると(ステップS92:YES)、次の層の3Dプリント軌跡を造形するため、ベースプレート4をZ軸方向(
図37中、上方)に所定量移動させる(ステップS93)。これは、制御装置7Aが、ベースプレート4をZ軸方向に所定量移動させるための駆動指令値をZ軸駆動装置60に出力し、Z軸駆動装置60が、制御装置7Aからの制御に従い(制御装置7Aから出力される駆動指令値に基づき)、ベースプレート4をZ軸方向(
図37中、上方向)に所定量移動させることで実現される。
【0456】
上記ステップS91~S93の処理は、目的の3次元造形物が完成するまで繰り返し実行される。
【0457】
上記ステップS91~S93においては、第1のピストン14が吐出ノズル18から離れる方向(
図14中、上方向)に移動することにより、樹脂原料被供給室S1(シリンダ11内の第1の空間S1)に供給された樹脂原料M(樹脂ペレット(複数))が可塑化され、当該可塑化された樹脂原料Mである溶融樹脂が、可塑化室S2(シリンダ11内の第2の空間S2)に貯留される。なお、樹脂原料被供給室S1は、第1のピストン14に対して吐出ノズル18側とは反対側(
図14中、上側)に設けられ、可塑化室S2は、第1のピストン14に対して吐出ノズル18側(
図14中、下側)に設けられている。
【0458】
すなわち、第1のピストン14の外周面にはZ軸方向に直線状に延在する複数の溝部14f(以下、トーピード溝14fと呼ぶ)が形成されており(
図7参照)、このトーピード溝14f(複数)が形成された第1のピストン14が吐出ノズル18から離れる方向に移動することにより、当該トーピード溝14fを通過する際の摩擦により樹脂原料M(樹脂ペレット(複数))が溶融され、その下方の可塑化室S2に溶融樹脂として貯留される。この可塑化室S2に貯留された溶融樹脂は、温度制御部30cが第1の加熱部61を制御することにより、当該可塑化室S2に貯留された溶融樹脂に適した温度(過熱されず溶融状態が保たれる温度)となるように制御される。
【0459】
同様に、上記ステップS91~S93においては、第2のピストン15が吐出ノズル18から離れる方向(
図14中、上方向)に移動することにより、樹脂原料被供給室S3(シリンダ12内の第1の空間S3)に供給された樹脂原料M(樹脂ペレット(複数))が可塑化され、当該可塑化された樹脂原料Mである溶融樹脂が、可塑化室S4(シリンダ12内の第2の空間S4)に貯留される。なお、樹脂原料被供給室S3は、第2のピストン15に対して吐出ノズル18側とは反対側(
図14中、上側)に設けられ、可塑化室S4は、第2のピストン15に対して吐出ノズル18側(
図14中、下側)に設けられている。
【0460】
すなわち、第2のピストン15の外周面にはZ軸方向に直線状に延在する複数の溝部15f(以下、トーピード溝15fと呼ぶ)が形成されており(
図7参照)、このトーピード溝15f(複数)が形成された第2のピストン15が吐出ノズル18から離れる方向に移動することにより、当該トーピード溝15fを通過する際の摩擦により樹脂原料M(樹脂ペレット(複数))が溶融され、その下方の可塑化室S4に溶融樹脂として貯留される。この可塑化室S4に貯留された溶融樹脂は、温度制御部30cが第2の加熱部62を制御することにより、当該可塑化室S4に貯留された溶融樹脂に適した温度(過熱されず溶融状態が保たれる温度)となるように制御される。
【0461】
また、上記ステップS91~S93においては、第1のピストン14が吐出ノズル18に接近する方向(
図14中、下方向)に移動し可塑化室S2に貯留された溶融樹脂を加圧することにより、吐出ノズル18から可塑化室S2に貯留された溶融樹脂が吐出する。
【0462】
その際、第1のピストン14には逆流防止機能(逆止リング14b。
図7、
図14等参照)が設けられているため、可塑化室S2の溶融樹脂が樹脂原料被供給室S1に逆流することなく、可塑化室S2に貯留された溶融樹脂を加圧することができる。
【0463】
同様に、上記ステップS91~S93においては、第2のピストン15が吐出ノズル18に接近する方向(
図14中、下方向)に移動し可塑化室S4に貯留された溶融樹脂を加圧することにより、吐出ノズル18から可塑化室S4に貯留された溶融樹脂が吐出する。
【0464】
その際、第2のピストン15には逆流防止機能(逆止リング15b。
図7、
図14等参照)が設けられているため、可塑化室S4の溶融樹脂が樹脂原料被供給室S3に逆流することなく、可塑化室S4に貯留された溶融樹脂を加圧することができる。
【0465】
第1のピストン14、第2のピストン15は、交互に(すなわち、逆位相で)吐出ノズル18に接近する方向に移動し可塑化室S2、S4に貯留された溶融樹脂を加圧する。その際、吐出期間が一部ラップ(重複)する。そのため、吐出ノズル18aから可塑化室S2、S4に貯留された溶融樹脂を途切れることなく連続して吐出させることができる。
【0466】
<3Dプリンタ300の動作の詳細>
次に、実施の形態4の3Dプリンタ300の動作の詳細について説明する。
【0467】
図41は、3Dプリンタ300の動作の詳細のフローチャートである。以下の処理は、制御部30A(プロセッサ)が記憶部20からメモリ40(例えば、RAM)に読み込まれた所定プログラムを実行することにより実現される。
【0468】
まず、3Dプリント軌跡を生成する(ステップS100)。3Dプリント軌跡は、造形軌跡生成部80が、造形モデルMDに対して所定処理を実行することにより生成される。
次に、吐出ノズルを移動させる装置(XY軸駆動装置50)に駆動指示値を出力する(ステップS101)。具体的には、制御装置7A(吐出ノズル制御部30e)が、射出成形機2A(吐出ノズル18)を3Dプリント軌跡(造形軌跡)に従って移動させるための駆動指令値をXY軸駆動装置50(ガントリー駆動装置)に出力する。なお、吐出ノズル18の移動速度は、例えば、
図27のフローチャートに従って入力され(ステップS40)、算出される(ステップS46)。なお、吐出ノズル18の移動速度(移動開始時の移動速度)としては、初期値として入力されたものを用いてもよいし、データテーブル等の記憶部に記憶されたものを用いてもよい。
【0469】
これにより、吐出ノズル18が移動する(ステップS102)。具体的には、XY軸駆動装置50が、制御装置7Aからの制御に従い(制御装置7Aから出力される駆動指令値に基づき)、射出成形機2A(吐出ノズル18)をXY軸方向に移動させる。
【0470】
次に、吐出ノズル18の並進速度VRを算出する(ステップS103)。吐出ノズル18の並進速度VRは、レーザー測定器等を用いて算出(測定)してもよいし、他の方法で算出してもよい。例えば、互いに異なる2点間の吐出ノズル移動距離/吐出ノズル移動時間により算出してもよい。取得部30aは、この算出された吐出ノズル18の移動速度(並進速度VR)を取得する。なお、吐出ノズル18の移動速度(並進速度VR)は、XY軸駆動装置50(ガントリー駆動装置)のコントローラ(図示せず)から取得してもよい。
【0471】
次に、押し出す流量Qiを算出する(ステップS104)。押し出す流量Qiとは、吐出ノズル18から吐出される樹脂ビードRBの寸法(例えば、直径)が一定となる流量(指示流量)をいう。押し出す流量Qiは、例えば、次の式22により算出することができる。
【0472】
Q
i=V
R×S・・・(式22)
但し、V
RはステップS103で算出され取得された吐出ノズル18の並進速度、Sは吐出ノズル18から吐出される樹脂ビードRBの断面積である。
図42は、押し出す流量Q
iと吐出ノズル18の並進速度V
Rとの関係を表すグラフである。
【0473】
次に、第1のピストン14(又は第2のピストン15)の直進運動の速度Vrを算出する(ステップS105)。第1のピストン14(又は第2のピストン15)の直進運動の速度Vrとは、吐出ノズル18から吐出する溶融樹脂の流量を押し出す流量Qi(指示流量)とするための第1のピストン14(又は第2のピストン15)の速度、すなわち、指示移動速度をいう。第1のピストン14(又は第2のピストン15)の直進運動の速度Vr(指示移動速度)は、上記式17により算出することができる。
【0474】
次に、第1のピストン14(又は第2のピストン15)を移動させるアクチュエータへの駆動指示値を出力する(ステップS106)。具体的には、制御装置7A(ピストン制御部30b)が、第1のピストン14(又は第2のピストン15)の移動速度をステップS105で算出された指示移動速度Vrとするための駆動指令値をピストン直進アクチュエータ駆動装置81に出力し、ピストン直進アクチュエータ駆動装置81が、制御装置7Aからの制御に従い(制御装置7Aから出力される駆動指令値に基づき)、モータ16a(又はモータ17a)を制御する。
【0475】
次に、吐出ノズル18から溶融樹脂が吐出される(ステップS107)。具体的には、ピストン直進アクチュエータ駆動装置81が、制御装置7Aからの制御に従い(制御装置7Aから出力される駆動指令値に基づき)、モータ16a(又はモータ17a)を制御することにより、第1のピストン14(又は第2のピストン15)が吐出ノズル18に接近する方向(
図14中、下方向)に移動し可塑化室S2(又は可塑化室S4)に貯留された溶融樹脂を加圧する。これにより、吐出ノズル18から溶融樹脂(押し出す流量Q
i分の溶融樹脂)が吐出する。
【0476】
上記ステップS101~S107の処理は、目的の3次元造形物が完成するまで繰り返し実行される。例えば、所定時間(例えば、0.1秒)ごとに実行される。その結果、吐出ノズル18から吐出される樹脂ビードRBの寸法が、一定寸法に制御される。
【0477】
以上のように、吐出ノズル18の移動速度(並進速度VR)に基づいて、溶融樹脂が貯留されたシリンダ11(又はシリンダ12)内を往復直線運動する第1のピストン14(又は第2のピストン15)の直進運動の速度Vrを制御することにより、樹脂ビードRBの寸法を一定(略一定)に制御することができる。
【0478】
<造形の具体例>
次に、造形の具体例について説明する。
図43は、
図41のフローチャートにより造形した3次元造形物Ob1(積層造形体)の例である。
図43中のA、B、Cは、
図37、
図38中のA、B、Cに対応する。
【0479】
図43を参照すると、樹脂ビードRBの寸法は、吐出ノズル18が動き始めの加速する部分(
図43中の特徴1参照)で目的の太さより細くなり、吐出ノズル18が減速し加速するUターン部分(
図43中の特徴3参照)で目的の太さより太くなるものの、吐出ノズル18が定速で移動する部分(
図43中の特徴2参照)で目的の太さとなることが分かる。
【0480】
次に、比較例4~5と対比して、実施の形態4の利点についてさらに説明する。
【0481】
<比較例4>
比較例4(米国特許出願公開第2018/0056602号明細書)には、次の課題がある。
【0482】
<課題1>
樹脂ビードの寸法を安定させるために、アプリケータヘッドの並進速度の増減に基づいて、押出機スクリューの回転速度とギアポンプのギアの回転速度の両方を調整しなければならない。制御先が2つあるので複雑となり調整に工数とコストがかかる。また、樹脂ビードの寸法を一定とするのに調整限界がある領域がある可能性がある。
【0483】
この課題1が発生する理由は、次のとおりである。
すなわち、以下の2つの構造の特徴による。第1に、スクリューによる可塑化とギアポンプによる流量調整が同時に行われている。第2に、スクリューとギアポンプが直列に一つの流路でつながっている。
【0484】
ギアポンプとスクリューが一つの流路でつながっているために、スクリューから出てきた溶融樹脂をすぐにギアポンプで調整しなければならず、両方の回転速度で流量を制御しようとしても調整限界がある場合がある。例えば、アプリケータヘッドの並進速度がごく小さい速度の場合、ギアポンプの回転数を小さい値に調整し、その上流に位置するスクリューの回転数も小さい値とする。あまりにも小さい場合、「溶融エネルギーの大部分は、押出機のスクリューの回転によって生成されるので」(比較例4の詳細な説明5の段落参照)、材料の溶融不足となり流出量が不足するため樹脂ビードが細くなる。
【0485】
<課題2>
溶融樹脂の温度が上昇する問題がある。(流量が極大きい領域で)すると、樹脂が変性し造形不良がでたり、樹脂ビードが固まるまでの時間が長くなり、次の層を造形するまでの時間を後に伸ばす必要があり、造形時間が長くなる課題がある。
【0486】
この課題2が発生する理由は、次のとおりである。
すなわち、アプリケータヘット゛の並進速度が大きい場合、流量も多く必要となるが、「溶融エネルギーの大部分は、押出機のスクリューの回転によって生成されるので」(比較例4の詳細な説明5の段落参照)、「熱可塑性樹脂のような流動性材料を溶融するために生成される熱エネルギーの量も変化させる。結果的に温度が上昇する・・・」(比較例4の詳細な説明5の段落参照)。
【0487】
<課題3>
ノズルの並進速度の変化率が大きい(加速度が大きい)領域では、流量の立ち上がりに遅れが生じ、樹脂ビードの寸法を一定とするために圧力センサを用いて補償する必要があり制御が複雑化する(比較例4の請求項14~16参照)。
【0488】
この課題3が発生する理由は、次のとおりである。
すなわち、押出機スクリューの回転速度の急速な変化は、溶融した流動性材料の流速の急速な変化に直ちにはならない。押出機のスクリュー速度の変化と、その結果としての溶融材料の流速の変化との間には、実質的な遅れが存在する(比較例4の詳細な説明5の段落参照)。
【0489】
比較例4に対する実施の形態4の利点は次のとおりである。
すなわち、実施の形態4においては、可塑化と流量調整のタイミングをずらす制御とし、これを実現するため、ギアポンプとスクリューを直列に一つの流路でつながない構造として、ギアポンプとスクリューを用いない方法で、樹脂原料M(樹脂ペレット)から溶融樹脂を形成し、その流量を調整して吐出することができる。また、溶融樹脂を一旦貯留し温度調整できる。これにより、上記課題1、課題2が解決される。
【0490】
また、実施の形態4においては、溶融樹脂の実際の吐出流量に基づいて、吐出ノズル18の移動速度(並進速度)を制御する。これにより、上記課題3が解決される。
【0491】
<比較例5>
比較例5(特開2020-82558号公報)には、次の課題がある。
<課題1>
吸引動作を行うための構成要素が多く、制御が複雑化する。その結果、装置のコストアップを招くことになる。
【0492】
この課題1が発生する理由は、次のとおりである。
すなわち、吸引動作を行うためには次の2つの要素の動作が必要である。第1に、バタフライバルブ72を閉状態とする。第2に、吸引部75を制御して引く。
【0493】
<課題2>
アクチュエータが3つ必要で、制御が複雑化する。その結果、装置のコストアップを招くことになる。
【0494】
この課題2が発生する理由は、次のとおりである。
すなわち、アクチュエータとしてスクリュー駆動用とバタフライバルブ駆動用と吸引部75駆動用が必要なためである。
【0495】
<課題3>
バタフライバルブ72を閉状態でスクリューを回し続けると樹脂があふれだしたり、圧が上がり過ぎて、バタフライバルブ72を次に開いたときに、必要以上の樹脂が吐出孔から出たりする。
【0496】
<課題4>
上記課題3を避けるためにスクリューをとめると、次に出したいときにすぐ出ない。
【0497】
上記課題3、4が発生する理由は、次のとおりである。
すなわち、押出機(可塑化部)とギアポンプ(流量制御部)が直列に配置されているためである。
【0498】
比較例5に対する実施の形態4の利点は次のとおりである。
すなわち、実施の形態4においては、可塑化部と流量制御部を同じ部材(第1のピストン14、第2のピストン15)で構成し、ピストン14、15の前進動作で溶融樹脂を吐出させ、その速度で流量を制御し、後退動作で溶融樹脂を吸引させる。これにより、上記課題1、2が解決される。
また、実施の形態4においては、可塑化部と流量制御部を同じ部材(第1のピストン14、第2のピストン15)で構成し、可塑化と吐出を時間的にづらす(まず可塑化し、一旦貯留した溶融樹脂を、後程吐出する)。これにより、上記課題3、4が解決される。
【0499】
以上説明したように、実施の形態4によれば、吐出ノズル18から吐出される溶融樹脂の流量の制御性を改善することができる。
【0500】
これは、押出機(スクリュー)及びギアポンプの両方の回転を制御するのではなく、溶融樹脂が貯留されたシリンダ11(又はシリンダ12)内を往復直線運動する第1のピストン14(又は第2のピストン15)の移動を制御することにより、溶融樹脂の流量を制御すること(流量制御の単純化)によるものである。
【0501】
また、実施の形態4によれば、吐出ノズル18の移動速度(並進速度)に基づいて、溶融樹脂が貯留されたシリンダ11(又はシリンダ12)内を往復直線運動する第1のピストン14(又は第2のピストン15)の直進運動の速度Vrを制御することにより、樹脂ビードRBの寸法を一定(略一定)に制御することができる。
【0502】
また、実施の形態4によれば、一旦樹脂原料Mを可塑化し貯留した後、往復直線運動する第1のピストン14(又は第2のピストン15)により当該貯留した溶融樹脂を加圧することにより、吐出ノズル18から溶融樹脂を吐出させることができる。これにより、押出機(スクリュー)及びギアポンプの両方の回転を同時に制御する上記特許文献1と比べ、制御性が改善される。また、樹脂原料Mの可塑化(溶融樹脂の生成及び貯留)と貯留された溶融樹脂の流量の制御とを、往復直線運動する第1のピストン14(又は第2のピストン15)で行うことができる。また、第1のピストン14(又は第2のピストン15)により樹脂原料Mの可塑化と貯留された溶融樹脂の流量の制御とを行うことができるため、樹脂原料Mを可塑化するための機構を別途設ける必要がない。
【0503】
また、実施の形態4によれば、シリンダ11(又はシリンダ12)に貯留された溶融樹脂の温度を当該溶融樹脂に適した温度(過熱されず溶融状態が保たれる温度)となるように制御することができる。
【0504】
また、実施の形態4によれば、シリンダとピストンとの組み合わせを複数(例えば、シリンダ11と第1のピストン14との組み合わせ、シリンダ12と第2のピストン15との組み合わせ)備えているため、途切れることなく連続して溶融樹脂を吐出させることができる。
また、実施の形態4によれば、吐出ノズル18の移動速度(並進速度)の変化率が過度に大きくない範囲内で、より簡単なノズル構造とよりシンプルな制御方法で安定した樹脂ビードRBの寸法が得られる3Dプリンタ300を提供することができる。
【0505】
<実施の形態5>
次に、実施の形態5として実施の形態4の3Dプリンタ300の他の動作例1について説明する。
【0506】
<3Dプリンタ300の他の動作例1>
図44は、3Dプリンタ300の他の動作例1の詳細のフローチャートである。以下の処理は、制御部30A(プロセッサ)が記憶部20からメモリ40(例えば、RAM)に読み込まれた所定プログラムを実行することにより実現される。
【0507】
まず、3Dプリント軌跡を生成する(ステップS110)。3Dプリント軌跡は、造形軌跡生成部80が、造形モデルMDに対して所定処理を実行することにより生成される。
次に、吐出ノズルを移動させる装置(XY軸駆動装置50)に駆動指示値を出力する(ステップS111)。具体的には、制御装置7A(吐出ノズル制御部30e)が、射出成形機2A(吐出ノズル18)を3Dプリント軌跡(造形軌跡)に従って移動させるための駆動指令値をXY軸駆動装置50(ガントリー駆動装置)に出力する。
【0508】
これにより、吐出ノズル18が移動する(ステップS112)。具体的には、XY軸駆動装置50が、制御装置7Aからの制御に従い(制御装置7Aから出力される駆動指令値に基づき)、射出成形機2A(吐出ノズル18)をXY軸方向に移動させる。
【0509】
次に、吐出ノズル18の並進速度VRを算出する(ステップS113)。吐出ノズル18の並進速度VRは、レーザー測定器等を用いて算出(測定)してもよいし、他の方法で算出してもよい。例えば、互いに異なる2点間の吐出ノズル移動距離/吐出ノズル移動時間により算出してもよい。取得部30aは、この算出された吐出ノズル18の移動速度(並進速度VR)を取得する。なお、吐出ノズル18の移動速度(並進速度VR)は、XY軸駆動装置50(ガントリー駆動装置)のコントローラ(図示せず)から取得してもよい。
【0510】
次に、押し出す流量Qiを算出する(ステップS114)。押し出す流量Qiとは、吐出ノズル18から吐出される樹脂ビードRBの寸法(例えば、直径)が一定となる流量(指示流量)をいう。押し出す流量Qiは、例えば、次の式22により算出することができる。
【0511】
Q
i=V
R×S・・・(式22)
但し、V
RはステップS113で算出され取得された吐出ノズル18の並進速度、Sは吐出ノズル18から吐出される樹脂ビードRBの断面積である。
図42は、押し出す流量Q
iと吐出ノズル18の並進速度V
Rとの関係を表すグラフである。
【0512】
次に、第1のピストン14(又は第2のピストン15)の直進運動の速度Vrを算出する(ステップS115)。第1のピストン14(又は第2のピストン15)の直進運動の速度Vrとは、吐出ノズル18から吐出する溶融樹脂の流量を押し出す流量Qi(指示流量)とするための第1のピストン14(又は第2のピストン15)の速度、すなわち、指示移動速度をいう。第1のピストン14(又は第2のピストン15)の直進運動の速度Vr(指示移動速度)は、上記式17により算出することができる。
【0513】
次に、第1のピストン14(又は第2のピストン15)を移動させるアクチュエータへの駆動指示値を出力する(ステップS116)。具体的には、制御装置7A(ピストン制御部30b)が、第1のピストン14(又は第2のピストン15)の移動速度をステップS115で算出された指示移動速度Vrとするための駆動指令値をピストン直進アクチュエータ駆動装置81に出力し、ピストン直進アクチュエータ駆動装置81が、制御装置7Aからの制御に従い(制御装置7Aから出力される駆動指令値に基づき)、モータ16a(又はモータ17a)を制御する。
【0514】
次に、吐出圧力Prを検知する(ステップS117)。吐出圧力Prは、第1の圧力検出部65、第2の圧力検出部66により検知(検出)される。
【0515】
次に、吐出流量(予測流出量QP)を予測する(ステップS118)。吐出流量(予測流出量QP)は、流量予測部30dにより予測(算出)される。予測流出量QPは、上記式11により算出することができる。
【0516】
次に、吐出ノズル18から溶融樹脂が吐出される(ステップS119)。具体的には、ピストン直進アクチュエータ駆動装置81が、制御装置7Aからの制御に従い(制御装置7Aから出力される駆動指令値に基づき)、モータ16a(又はモータ17a)を制御することにより、第1のピストン14(又は第2のピストン15)が吐出ノズル18に接近する方向(
図14中、下方向)に移動し可塑化室S2(又は可塑化室S4)に貯留された溶融樹脂を加圧する。これにより、吐出ノズル18から溶融樹脂(押し出す流量Q
i分の溶融樹脂)が吐出する。
【0517】
次に、予測された吐出流量(予測流出量QP)に基づいて、吐出ノズル18の並進速度Viを算出する(ステップS120)。吐出ノズル18の並進速度Viとは、吐出ノズル18から吐出される樹脂ビードRBの寸法(例えば、直径)が一定となる吐出ノズル18の移動速度(並進速度)をいう。吐出ノズル18の並進速度Viは、例えば、次の式23により算出することができる。
【0518】
V
i=Q
P/S・・・(式23)
但し、Q
PはステップS118で予測された吐出流量(予測流出量)、Sは吐出ノズル18から吐出される樹脂ビードRBの断面積である。
図45は、吐出ノズル18の並進速度V
iと予測された吐出流量Q
P(予測流出量)との関係を表すグラフである。
【0519】
次に、吐出ノズルを移動させる装置(XY軸駆動装置50)に駆動指示値を出力する(ステップS121)。具体的には、制御装置7A(吐出ノズル制御部30e)が、射出成形機2A(吐出ノズル18)をステップS120で算出された並進速度Viで移動させるための駆動指令値をXY軸駆動装置50(ガントリー駆動装置)に出力する。
【0520】
これにより、吐出ノズル18が移動する(ステップS122)。具体的には、XY軸駆動装置50が、制御装置7Aからの制御に従い(制御装置7Aから出力される駆動指令値に基づき)、射出成形機2A(吐出ノズル18)をXY軸方向に移動させる。
【0521】
上記ステップS113~S122の処理は、目的の3次元造形物が完成するまで繰り返し実行される。例えば、所定時間(例えば、0.1秒)ごとに実行される。その結果、吐出ノズル18から吐出される樹脂ビードRBの寸法が、一定寸法に制御される。
【0522】
以上のように、吐出ノズル18の3Dプリンタ300上での移動速度(並進速度)を制御する。その際、吐出ノズル18から押し出す流量Qiを目標とする吐出ノズル18の移動速度(並進速度)に基づいて決定したのち、第1のピストン14(又は第2のピストン15)の直進運動の速度Vrを制御し、その結果生じる吐出ノズル18(吐出孔)から出る直前の溶融樹脂の圧力Prを検知し、その圧力Prと溶融樹脂の温度とその他の定数とから実際に吐出される流量QPを予測し、その予測流出量QPに基づいて、樹脂ビードRBの寸法が一定となるように、3Dプリンタ300上での吐出ノズル18の移動速度(並進速度)を制御する。このように、予測された吐出流量QP(予測流出量)に基づいて、吐出ノズル18の移動速度(並進速度)を制御することにより、樹脂ビードRBの寸法を一定(略一定)に制御することができる。
【0523】
<造形の具体例>
次に、造形の具体例について説明する。
図46は、
図44のフローチャートにより造形した3次元造形物Ob2(積層造形体)の例である。
図46中のA、B、Cは、
図37、
図38中のA、B、Cに対応する。
【0524】
図46を参照すると、樹脂ビードRBの寸法は、吐出ノズル18が減速し加速するUターン部分(
図46中の特徴2参照)で目的の太さより若干太くなるものの、吐出ノズル18が動き始めの加速する部分(
図46中の特徴1参照)で目的の太さとなること、吐出ノズル18が減速し加速するUターン部分(
図46中の特徴2参照)で実施の形態4のUターン部分(
図46中の符号Ob1参照)より細くなることが分かる。
【0525】
以上説明したように、実施の形態5によれば、吐出ノズル18から吐出される溶融樹脂の流量の制御性を改善することができる。また、ノズルの加減速時などは指示流量と実際の吐出流量に差異が生じる場合があるが、この場合でも、実際の吐出流量に基づいて、吐出ノズル18の移動速度(並進速度)を制御するので常に安定した樹脂ビードRBの寸法が得られる3Dプリンタ300を提供することができる。その他、実施の形態5によれば、実施の形態4と同様の効果を奏することができる。
【0526】
また、実施の形態5によれば、予測された吐出流量に基づいて、吐出ノズル18の移動速度を制御することにより、樹脂ビードRBの寸法を一定(略一定)に制御することができる。
【0527】
<実施の形態6>
次に、実施の形態6として実施の形態4の3Dプリンタ300の他の動作例2について説明する。
【0528】
<3Dプリンタ300の他の動作例2>
図47は、3Dプリンタ300の他の動作例2の詳細のフローチャートである。以下の処理は、制御部30A(プロセッサ)が記憶部20からメモリ40(例えば、RAM)に読み込まれた所定プログラムを実行することにより実現される。
【0529】
まず、3次元造形物造形処理を実行する(ステップS130)。3次元造形物造形処理は、3Dプリンタ300により、目的の3次元造形物を造形する処理であり、例えば、
図27のフローチャートの処理、
図41のフローチャートの処理、
図44のフローチャートの処理である。
【0530】
この3次元造形物造形処理に続いて、所定タイミングか否かを判定する(ステップS131)。所定タイミングについては、後述の所定タイミングの具体例1、2で説明する。ステップS131の判定の結果、所定タイミングである場合(ステップS131:YES)、漏れ抑制処理を実行する(ステップS132)。
<漏れ抑制処理>
漏れ抑制処理は、第1のピストン14(又は第2のピストン15)を引き戻し方向(第1のピストン14(又は第2のピストン15)が吐出ノズル18から離れる方向)に所定量移動させる処理である。引き戻しの移動量(所定量)については、後述の所定タイミングの具体例1、2で説明する。
【0531】
上記ステップS130~S132の処理は、3次元造形物造形処理が終了するまで(ステップS133:YES)繰り返し実行される。
【0532】
<所定タイミングの具体例1>
所定タイミングの具体例1は、溶融樹脂を吐出しながらXY軸方向に移動している吐出ノズル18の移動速度(並進速度)が0以外から0に変化したタイミング(移動する吐出ノズル18が停止したタイミング)である。
【0533】
<引き戻しの移動量の具体例>
第1のピストン14(又は第2のピストン15)の引き戻しの移動量X(mm)は、次の式24を満たす値であることが望ましい。
【0534】
Pt×V0/K/S < X ≦ (Pt+0.1)×V0/K/S・・・(式24)
但し、Pt(大気圧との相対圧力で単位MPa)は引き戻す直前の溶融樹脂の圧力、V0 (mm3)は可塑化室の容積、K(MPa)は溶融樹脂の体積弾性率、S(mm2)は第1のピストン14(又は第2のピストン15)の断面積、0.1(MPa)は大気圧である。
【0535】
この式24は次の2つの式25、式26により導出される。
ΔV=X×S・・・(式25)
Pt+0.1=ΔV/V0×K・・・(式26)
所定タイミングの具体例1によれば、ステップS132における第1のピストン14(又は第2のピストン15)の引き戻し方向への移動量X(本発明の所定量の一例)が上記式24の「Pt×V0/K/S < X」を満たすことにより、吐出ノズル18(吐出孔)内の溶融樹脂の圧力が吐出ノズル18の外の圧力(樹脂圧力。大気圧)より低くなるため、溶融樹脂が大気圧により押され、吐出ノズル18(吐出孔)に引っ込められるため、吐出ノズル18(吐出孔)から溶融樹脂が漏れることが抑制される。これにより、残圧や重力等により溶融樹脂が吐出され続けるのを抑制(漏れ抑制)することができる。その結果、樹脂ビードRBの寸法を一定(略一定)に制御することができる。
【0536】
一方、ステップS132における第1のピストン14(又は第2のピストン15)の引き戻し方向への移動量Xが上記式24の「X ≦ (Pt+0.1)×V0/K/S」を満たすことにより、吐出ノズル18(吐出孔)内や可塑化室S2(又は可塑化室S4)内の溶融樹脂の圧力が(大気圧‐0.lMPa)すなわち絶対真空、以下になることはないため、可塑化室S2(又は可塑化室S4)内にエアを巻き込んだり、気泡が生じたりして次の造形のタイミングで欠陥が発生することが抑制される。
すなわち、第1のピストン14(又は第2のピストン15)を引き戻し方向へ移動量X移動させた場合に発生する差圧(吐出ノズル18外の圧力-吐出ノズル18内の圧力)が大気圧(例えば、0.1MPa)を超えないようにすることで、可塑化室S2(又は可塑化室S4)内にエアを巻き込んだり、気泡が生じたりするのを抑制することができる。これは、本発明者が経験的に見出した、可塑化室S2(又は可塑化室S4)内にエアを巻き込んだり、気泡が生じたりするのを抑制するための条件である。
【0537】
なお、移動量X(mm)を求める際の、引き戻す直前の溶融樹脂の圧力Ptは圧力検出部65、66(圧力センサ)で求めた値でもよいし、流量を得るためのターゲット圧力の概ねの値でもよいし、毎回算出するターゲット圧力でもよい。
【0538】
また、可塑化室S2(又は可塑化室S4)の容積は第1のピストン14(又は第2のピストン15)を駆動するアクチュエータにつけられたポテンシオメータなどの位置検出手段から得る値とデッドボリュームと第1のピストン14(又は第2のピストン15)の断面積とから計算することができる。
【0539】
また、溶融樹脂の体積弾性率はデータテーブルにある対応する樹脂の値を持ってきてもよいし、一般的な樹脂を代表する概ねの値でもよい。大気圧は天候によらず0.1MPaでよい。
上記引き戻しの移動量の具体例1によれば、残圧や重力等により溶融樹脂が吐出され続けるのを抑制することができる。その結果、樹脂ビードRBの寸法を一定(略一定)に制御することができる。
【0540】
<所定タイミングの具体例2>
所定タイミングの具体例2は、溶融樹脂を吐出しながらXY軸方向に移動している吐出ノズル18の移動速度(並進速度)が0(ゼロ)以外から0に変化する(移動する吐出ノズル18が停止する)と予測されるタイミングより所定時間前のタイミングである。
【0541】
吐出ノズル18の移動速度が0以外から0に変化すると予測されるタイミングは、例えば、造形軌跡生成部80等から事前に取得される、吐出ノズル18の移動速度(並進速度)が0となるタイミングである。そのタイミングより所定時間前に第1のピストン14(又は第2のピストン15)を引き戻し始める。所定時間は、上記式24で求めた引き戻しの移動量X(mm)を移動するのに要する時間である。
所定タイミングの具体例2によれば、吐出ノズル18の移動速度(並進速度)が0以外から0に変化するタイミング(移動する吐出ノズル18が停止するタイミング)と同じタイミングで、残圧や重力等により溶融樹脂が吐出され続けるのを抑制することができる(吐出ノズル18から吐出される溶融樹脂の流量を0(ゼロ)にできる)。その結果、例えば、終点で樹脂ビードRBが目的の寸法より太くなるのを抑制することができる。
【0542】
<第1のピストン14(又は第2のピストン15)の引き戻し動作の速度>
上記所定タイミングの具体例1、2においては、第1のピストン14(又は第2のピストン15)の引き戻し動作の速度は、十分早くするのが望ましい。ここで、「十分」とは、第1のピストン14(又は第2のピストン15)に設けられた溶融樹脂の逆流防止機能の部分(逆止リング14b、15b。
図7、
図14等参照)を通じて、引き戻し動作中に樹脂原料被供給室S1(又は樹脂原料被供給室S3)から可塑化室S2(又は可塑化室S4)にエアが入り込んでこない程度である。この「程度」は、溶融樹脂の粘度と逆流防止機能を構成する部品の隙間や慣性モーメントなどから計算してもよいし、可塑化実験などで求めてもよい。
このようにすれば、可塑化室S2(又は可塑化室S4)内にエアを巻き込んだり、気泡が生じたりして次の造形のタイミングで欠陥を生成することが抑制される。
【0543】
<逆止弁13b>
図48は、吐出ノズル18近傍の拡大断面図である。
図48に示すように、樹脂吐出ユニット(第1のピストン14又は第2のピストン15)においては、可塑化室S2、S4と吐出ノズル18(吐出孔)との間に逆止弁13bが設けられている。
【0544】
逆止弁13bはシール面13kとそれに密着して溶融樹脂の流路を閉鎖するチェックボール13eと、チェックボール13eをシール面13kに押さえつけるスプリング13f(本発明の弾性部材の一例)で構成されている。可塑化室S2(又は可塑化室S4)の圧力と吐出ノズル18(吐出孔)手前の圧力の差が開弁圧を超えると、チェックボール13eはスプリング13f側に押されてストローク(
図48中の符号S参照)し、溶融樹脂の流路が開く開位置(
図48中、左側のチェックボール13eの位置参照)に位置する。
【0545】
チェックボール13eは、第1のピストン14(又は第2のピストン15)が吐出ノズル18に接近する方向に移動しシリンダ11(又はシリンダ12)内の溶融樹脂を加圧する圧力が所定圧力を超えた場合、スプリング13fを弾性変形させつつ溶融樹脂の流路が閉鎖される閉位置から溶融樹脂の流路が開く開位置(
図48中、左側のチェックボール13eの位置参照)に移動し、第1のピストン14(又は第2のピストン15)が吐出ノズル18から離れる方向に移動した場合、スプリング13fが弾性変形前の形状に戻る復元力により開位置から閉位置(
図48中、右側のチェックボール13eの位置参照)に移動する。
【0546】
チェックボール13eのストロークSは、次の式27を満たすように決められる。
(S×π/4×Dc2)/Vd×K>Pt・・・(式27)
但し、Dcはチェックボールの直径、Vdはデッドボリューム、Kは溶融樹脂の体積弾性率である。
【0547】
より有効に機能するように、チェックボール13eの上下流間には絞り13mが設けられている(
図48参照)。絞り13mとは、上下流(逆止弁13bが収容される収容部13d)のうち上部13d1と下部13d2との間の部分で、上部13d1の断面積S
13d(及び下部13d2の断面積S
13d)と比べ、断面積S
13m(XY平面に対して平行な平面上の断面積)が小さい部分のことをいう。
【0548】
上記構成の逆止弁13bによれば、次の作用効果を奏する。
第1のピストン14(又は第2のピストン15)引き戻し操作時、可塑化室S2(又は可塑化室S4)の圧力が下がると、吐出ノズル18(吐出孔)との間の差圧により、チェックボール13eは上方に移動し、シール面13kに当たると、すなわち、チェックボール13eが溶融樹脂の流路を閉鎖する閉位置(
図48中、左側のチェックボール13eの位置参照)に位置すると、そこから溶融樹脂は吸い出されないため、それ以降、吐出ノズル18(吐出孔)出口直前付近の圧力は変わらない。チェックボール13eのストロークSが過度に小さいと直ぐに閉鎖してしまい、狙い通りに吐出ノズル18(吐出孔)付近の圧力が下がらず、溶融樹脂が残圧により漏れ出してしまう恐れがある。
【0549】
ここで、第1のピストン14(又は第2のピストン15)引き戻し操作時の吐出ノズル18(吐出孔)出口直前付近の圧力を決めるメカニズムを考えると、1つはチェックボール13eが閉まるまでの間に可塑化室S2(又は可塑化室S4)側に移動する吸い出される量Qと、もう一つは、チェックボール13eが上方にストロークS分移動することによる、容積の増大ΔVのそれぞれにより、圧力低下量ΔPが決まる。次の式28にその関係を示す。
【0550】
ΔP = (Q+ ΔV )/Vd×K・・・(式28)
ΔV = S×π/4×Dc2・・・(式29)
ここで、Qはチェックボール13eが作動するまでの一瞬で決まる量であり、値の算出が難しいため、最悪を想定した0(ゼロ)とすると、上記式29を用いてΔPを求めると、次の式30となる。
【0551】
ΔP=(S×π/4×Dc2)/Vd×K・・・(式30)
圧力低下量ΔPは吐出孔出口直前付近の圧力Ptより大きくしなければ、残圧が残るため、次の式31の関係となる。
ΔP>Pt・・・(式31)
上記式30、式31より、上記式27を求めることができる。
【0552】
次に、比較例6と対比して、実施の形態6の利点についてさらに説明する。
【0553】
<比較例6>
比較例6(米国特許出願公開第2019/0322044号明細書)には、次の課題がある。
【0554】
<課題1>
狙った外形より、はみ出した部分がある造形体が出来てしまう。スクリューとギアポンプの速度をノズルの並進速度に合わせて調整し、樹脂ビードの寸法を安定させ、所望の重複量を比較例6のFig.6の符号101が示す範囲では得ることが出来る(比較例6「詳細な説明」[0066]参照)。
しかしながら、樹脂ビードの終点と反転点(3Dプリントで必ず存在する)では樹脂ビードが過度に重複してしまうため、その分は、はみだす部分となる。
図51は、比較例6の課題1を図示した図である。
図51中、一点鎖線の矢印AR2は、吐出ノズルの軌跡を表す。また、ハッチング領域HA2は、樹脂ビードRBが重なった部分を表す。
【0555】
この課題1が発生する理由は、次のとおりである。
すなわち、反転点と終点ではノズル速度が0(ゼロ)となるが、止まった瞬間に溶融樹脂の吐出流量を0としたいが、比較例6のノズル構造ではできず、しばらく出続けるためである。これは比較例6のFig.2に示すように、スクリュー60から送られた溶融樹脂はギアポンプ74で調整され、導管52を通じ、アプリケータヘッド43に送られ樹脂ビードとなるためである。すなわち、ノズル速度が0に対応し、ギアポンプの回転を止めても、導管内に残る残圧と、溶融樹脂自体の自重によりかなりの量が出続けるためである。
【0556】
比較例6に対する実施の形態6の利点は次のとおりである。
すなわち、実施の形態6においては、溶融樹脂を第1のピストン14(又は第2のピストン15)で押し出して吐出と流量調整出来る構造の吐出ノズル18(
図48参照)とし、吐出ノズル18の移動速度(並進速度)0の時、すぐさま流量を0とするため、吐出圧力を負圧(外気圧より小さい圧力)となるよう、第1のピストン14(又は第2のピストン15)を引き戻す。これにより、上記課題1が解決される。
【0557】
図52は、実施の形態6の利点及び比較例6の課題1を図示した図である。
実施の形態6においては、
図52に示す反転点や終点のような移動速度(並進速度)が0(ゼロ)となる部位の手前から、吐出動作を行っていた方のピストン(第1のピストン14又は第2のピストン15)は引き戻す制御とし、引き戻す移動量は、吐出ノズル(吐出孔)直前の溶融樹脂の圧力が吐出ノズル外の圧力より小さく、大気圧以下にならないようにするので、溶融樹脂が大気圧に押されて引っ込められるため漏れない上に、可塑化室S2、S4内にエアを巻き込んだり、気泡が生じたりして次の造形のタイミングで欠陥を生成することがない。また、幾何学的な樹脂ビードRBの重なり部では一旦積層した樹脂ビードRBを吸い取ることではみ出すことがない。
図52を参照すると、実施の形態6の3次元造形体の外形が狙った外形とほぼ一致することが分かる。
【0558】
これに対して、比較例6においては、
図52に示すように、樹脂ビードの終点と反転点では樹脂ビードが過度に重複してしまい、狙った外形からはみ出す部分(
図52中、符号HA3が示すハッチング領域参照)ができることが分かる。
【0559】
以上説明したように、実施の形態6によれば、吐出ノズル18から吐出される溶融樹脂の流量の制御性を改善することができる。その他、実施の形態6によれば、実施の形態4、5と同様の効果を奏することができる。
【0560】
また、実施の形態6によれば、所定タイミングで、第1のピストン14(又は第2のピストン15)が吐出ノズル18から離れる方向に所定量移動するように第1のピストン14(又は第2のピストン15)を制御することにより、吐出圧力を負圧(例えば、外気圧より小さい圧力)にすることができる。これにより、残圧や重力等により溶融樹脂が吐出され続けるのを抑制することができる。その結果、樹脂ビードRBの寸法を一定(略一定)に制御することができる。
【0561】
また、実施の形態6によれば、吐出ノズル18の移動速度(並進速度)が0以外から0に変化したタイミング(移動する吐出ノズルが停止したタイミング)で吐出圧力を負圧(例えば、外気圧より小さい圧力)にすることができる。
【0562】
また、実施の形態6によれば、吐出ノズル18内の樹脂圧力が吐出ノズル18外の樹脂圧力より低くなることにより、残圧や重力等により溶融樹脂が吐出され続けるのを抑制することができる。また、第1のピストン14(又は第2のピストン15)を引き戻し方向へ移動量X移動させた場合に発生する差圧(吐出ノズル18外の圧力-吐出ノズル18内の圧力)が大気圧(例えば、0.1MPa)を超えないようにすることで、可塑化室S2(又は可塑化室S4)内にエアを巻き込んだり、気泡が生じたりするのを抑制することができる。
【0563】
また、実施の形態6によれば、吐出ノズル18の移動速度(並進速度)が0以外から0に変化する(移動する吐出ノズル18が停止する)と予測されるタイミングより前の所定時間の間、吐出圧力を負圧(例えば、外気圧より小さい圧力)にすることができる。
【0564】
また、実施の形態6によれば、吐出ノズル18の移動速度(並進速度)が0以外から0に変化するタイミング(移動する吐出ノズル18が停止するタイミング)と同じタイミングで、残圧や重力等により溶融樹脂が吐出され続けるのを抑制することができる(吐出ノズル18から吐出される溶融樹脂の流量を0(ゼロ)にできる)。
【0565】
また、実施の形態6によれば、吐出ノズル18から離れる方向への第1のピストン14(又は第2のピストン15)の移動速度を、樹脂原料被供給室S1(又は樹脂原料被供給室S3)から可塑化室S2(可塑化室S4)にエアが流入しない速度とすることにより、
可塑化室S2(可塑化室S4)へのエアの混入を防止することができる。
【0566】
また、実施の形態6(他の実施形態も同様)によれば、シリンダ11(又はシリンダ12)内を往復直線運動する第1のピストン14(又は第2のピストン15)の移動に応じてチェックボール13eが自動的に開位置又は閉位置に移動することにより、吐出ノズル18から吐出される溶融樹脂の流量を制御することができる。これによっても、吐出ノズル18から吐出される溶融樹脂の流量の制御性を改善することができる。
【0567】
<実施の形態7>
次に、実施の形態7として実施の形態4の3Dプリンタ300の他の動作例3について説明する。
【0568】
<3Dプリンタ300の他の動作例3の詳細>
図49は、3Dプリンタ300の他の動作例3の詳細のフローチャートである。以下の処理は、制御部30A(プロセッサ)が記憶部20からメモリ40(例えば、RAM)に読み込まれた所定プログラムを実行することにより実現される。
【0569】
まず、3次元造形物造形処理を実行する(ステップS140)。3次元造形物造形処理は、3Dプリンタ300により、目的の3次元造形物を造形する処理であり、例えば、
図27のフローチャートの処理、
図41のフローチャートの処理、
図44のフローチャートの処理である。
ここでは、
図50に示すように、始点P1、反転点P2a、P2a、終点P3を通過する樹脂ビードRBにより3次元造形物Ob3(積層造形体)が造形されるものとする。
図50は、
図49のフローチャートにより造形した3次元造形物Ob3(積層造形体)の例である。
図50中、一点鎖線の矢印AR1は、吐出ノズル18の軌跡を表す。また、ハッチング領域HA1は、樹脂ビードRBが重なった部分を表す。
【0570】
この3次元造形物造形処理に続いて、溶融樹脂を吐出しながらXY軸方向に移動している吐出ノズル18の現在位置が反転点(又は終点)か否かを判定する(ステップS141)。ステップS141の判定の結果、吐出ノズル18の現在位置が反転点(又は終点)である場合(ステップS141:YES)、樹脂ビード吸引処理を実行する(ステップS142)。
【0571】
<樹脂ビード吸引処理>
樹脂ビード吸引処理は、3次元造形物のうち一旦積層された未硬化の樹脂ビードRB(例えば、樹脂ビードRBが重なった部分の樹脂ビードRB)を吸引する処理である。これは、ピストン制御部30bが、吐出ノズル18の出口と3次元造形物とが流体的につながった状態で、第1のピストン14(又は第2のピストン15)が吐出ノズル18から離れる方向(引き戻し方向)に所定量(以下の式32を満たす移動量X)移動するように第1のピストン14(又は第2のピストン15)を制御することにより実現される。
【0572】
前提として、吐出ノズル18(吐出孔)の出口と3次元造形物(積層造形体)とは、流体的につながるほど近くに配置される。これは、例えば、吐出ノズル制御部30eが、吐出ノズル18の出口と3次元造形物とが流体的につながるように、XY軸駆動装置50(ガントリー駆動装置)を制御することによりベースプレート4に対して吐出ノズル18を相対的に移動させることにより実現される。流体的につながった状態とは、固化前の溶融樹脂でつながった状態をいう。例えば、
図53中、吐出ノズル18(吐出孔18a)から近い範囲(
図53中符号L1が示す範囲参照)内の溶融樹脂RB
L1は固化しておらず流体的につながった状態である。一方、吐出ノズル18(吐出孔18a)から遠い範囲(
図53中符号L2が示す範囲参照)内の溶融樹脂RB
L2は固化しており流体的につながった状態ではない。
図53は、流体的に繋がった状態を説明する図である。
【0573】
<引き戻しの移動量の具体例>
第1のピストン14(又は第2のピストン15)の引き戻しの移動量X(mm)は、次の式32を満たす値であることが望ましい。
X ≧ (Pt+0.1)×V0/K/S・・・(式32)
【0574】
上記ステップS140~S142の処理は、3次元造形物造形処理が終了するまで(ステップS143:YES)繰り返し実行される。
これにより、反転点P2a、P2bのような、幾何学的に樹脂ビードRBの重なりが避けられない部位で樹脂ビードRBがはみ出したり造形高さが増加するのを抑制することができる。
【0575】
また、吐出ノズル18が停止する終点P3のような部位では通常部よりも細い形状を提供することができる(造形形状自由度の向上)。
【0576】
以上説明したように、実施の形態7によれば、吐出ノズル18から吐出される溶融樹脂の流量の制御性を改善することができる。その他、実施の形態6によれば、実施の形態4、5と同様の効果を奏することができる。
【0577】
また、実施の形態7によれば、3次元造形物のうち一旦積層された未硬化の樹脂ビードRB(例えば、樹脂ビードRBが重なった部分の樹脂ビードRB)を吸引することができる。その結果、樹脂ビードRBの寸法を一定(略一定)に制御することができる。
【0578】
<変形例>
次に、変形例について説明する。
【0579】
上記実施の形態4~7では、本発明の3次元積層物造形装置を、シリンダとピストン(トーピード)との組み合わせを複数(シリンダ11、第1のピストン14、及びシリンダ12、第2のピストン15)備えた射出成形機2Aを備えた3Dプリンタに適用した例について説明したが、これに限らない。例えば、本発明の3次元積層物造形装置を、シリンダとピストン(トーピード)との組み合わせを1つ備えた射出成形機を備えた3Dプリンタ(図示せず)に適用してもよい。すなわち、本発明の3次元積層物造形装置は、シリンダとピストン(トーピード)との組み合わせの数を特に限定しない。
【0580】
上記実施の形態では、本発明をハードウェアの構成として説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、任意の処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0581】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0582】
1 射出成形装置
2 射出成形機
3 供給装置
31 排気部、31a 排気路、31b 排気孔、31c 排気弁
32 ホッパ(32a 第1のホッパ、32b 第2のホッパ)
33 加圧部
34 第2の制御部
35 排気管
36 第1の供給管
37 第2の供給管
38 第1の接続管
39 第2の接続管
4 テーブル
5 移動装置
51 ガントリー装置
52 昇降装置
53 第3の制御部
6 加熱装置
61 第1の加熱部
62 第2の加熱部
62a シートヒータ
62b 伝熱部材
63 温度検出部
64 第4の制御部
7 制御装置
8 冷却部、8a 貫通孔、8b 冷却路
11 第1のシリンダ、11a 閉塞部、11b 側壁部、11c 貫通孔、11d 供給孔
12 第2のシリンダ、12a 閉塞部、12b 側壁部、12c 貫通孔、12d 供給孔
13 端部プレート
13a 本体部
13b 逆止弁、13e チェックボール、13f スプリング
13c 貫通孔
13d 収容部
13g ボルト孔
13h ボルト
14 第1のピストンユニット
14a トーピードピストン
14b 逆止リング
14c ストッパ、14g リング部、14h 引っ掛け部
14d 加圧ピストン
14e 付勢手段
14f 溝部
14i シール部材
14j 侵入部
15 第2のピストンユニット
15a トーピードピストン
15b 逆止リング
15c ストッパ、15g リング部、15h 引っ掛け部
15d 加圧ピストン
15e 付勢手段
15f 溝部
15i シール部材
15j 侵入部
16 第1の駆動部、16a モータ、16b ネジ軸、16c スライダ、16d ロッド、16e ケース、16f エンコーダ、16h、16i 貫通孔
17 第2の駆動部、17a モータ、17b ネジ軸、17c スライダ、17d ロッド、17e ケース、17f エンコーダ、17h、17i 貫通孔
18 射出部、18a 射出口、18b 第1の分岐路、18c 第2の分岐路、18d リテーリングナット、18e 第1のプレート、18f 第2のプレート
19 第1の制御部
M 樹脂原料
R 溶融樹脂
S1 第1のシリンダの第1の空間
S2 第1のシリンダの第2の空間
S3 第2のシリンダの第1の空間
S4 第2のシリンダの第2の空間