(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
G05B23/02 302Y
(21)【出願番号】P 2021059850
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 幸太
(72)【発明者】
【氏名】宇治田 康浩
【審査官】渡邊 捷太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-064407(JP,A)
【文献】米国特許第04870575(US,A)
【文献】特開2020-115311(JP,A)
【文献】特開2009-301134(JP,A)
【文献】特開2016-099930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造ラインで実施される工程における複数の機構あるいは前記複数の機構に関連する複数の事象間の因果関係を特定する関係特定部と、
前記因果関係とイベントが生じた際のイベントデータとに基づいてイベント因果関係を生成するイベント因果関係生成部と、
前記イベント因果関係および前記イベントが生じた際に確認された前記複数の機構に関連する事象に基づいて、前記イベント因果関係を更新するイベント因果関係更新部と、
更新された前記イベント因果関係を用いて、前記イベントに対応するイベントリストを登録するイベント関係登録部とを備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記イベント因果関係は、
前記複数の機構あるいは事象に関して設定されている複数のノードと、
前記複数のノード間の接続を示すエッジ情報とを含み、
前記イベント因果関係更新部は、前記複数の機構に関連する事象に対応するノードと、
前記イベント因果関係により抽出された要因候補となるノードとの間の接続を示すエッジ情報を追加する、請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記イベントリストは、イベント概要と、前記イベントが生じた際のイベントデータと、前記更新された前記イベント因果関係による要因候補位置と、確認された前記複数の機構に関連する事象と、イベント作業内容とを含む、請求項
1記載の情報処理装置。
【請求項4】
イベントデータを取得して、前記イベント関係登録部により登録されたイベントリストの中から、取得したイベントデータと同じイベントデータを含むイベントリストを抽出するイベント推定部をさらに備える、請求項
3記載の情報処理装置。
【請求項5】
製造ラインで実施される工程における複数の機構あるいは前記複数の機構に関連する複数の事象間の因果関係を特定するステップと、
イベントが生じた際のイベントデータに基づいてイベント因果関係を生成するステップと、
前記イベント
因果関係および前記イベントが生じた際に確認された前記複数の機構に関連する事象に基づいて、前記イベント因果関係を更新するステップと、
更新された前記イベント因果関係を用いて、前記イベントに対応するイベントリストを登録するステップとを備える、情報処理方法。
【請求項6】
コンピュータに、
製造ラインで実施される工程における複数の機構あるいは前記複数の機構に関連する複数の事象間の因果関係を特定するステップと、
イベントが生じた際のイベントデータに基づいてイベント因果関係を生成するステップと、
前記イベント
因果関係および前記イベントが生じた際に確認された前記複数の機構に関連する事象に基づいて、前記イベント因果関係を更新するステップと、
更新された前記イベント因果関係を用いて、前記イベントに対応するイベントリストを登録するステップとを実行させる、情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場等における製造ラインは、コンベア、ロボットアーム等の複数の機構で構成されている。この製造ラインのいずれかの機構で異常が発生すると、製品の製造が停止してしまい、大きな損害をもたらす可能性がある。そのため、工場等では、保全員が、製造ラインを定期的に巡回して、異常の発生又はその予兆の有無の確認を行っている。
【0003】
製造ライン内で異常の発生又はその予兆を検知したとき、異常が検知された機構よりも前の機構に真の異常の原因が存在する場合がある。したがって、真の異常の原因を特定するためには、製造ライン内の各機構の因果関係を把握することが重要である。しかしながら、製造ラインを構成する機構の数が多くなり、かつ各機構の動作条件が日々変化し得ることから、全ての機構の因果関係を正確に把握するのは困難である。
【0004】
そのため、従来、熟練の保全員が、自身の経験及び勘に基づいて、製造ラインを構成する複数の機構間の因果関係を把握して、製造ライン内で生じた異常又はその予兆の検知を行っていた。このような保全業務を非熟練の保全員が行うことができるようにするため、製造ラインを構成する複数の機構の因果関係を可視化する技術の開発が望まれていた。
【0005】
例えば、特許文献1に開示されている装置では、製造ライン内の装置間の関係を容易にモデル化することにより、異常の検知を可視化する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方で、異常の種類としては、データとしてセンシングできない物理現象や状態等の事象も存在し、当該異常の場合には上記モデルを用いた場合であっても異常特定することができなかった。
【0008】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであって、データとしてセンシングできない事象も因果関係に取り込むことが可能な情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一例によれば、情報処理装置は、製造ラインで実施される工程における複数の機構あるいは複数の機構に関連する複数の事象間の因果関係を特定する関係特定部と、因果関係とイベントが生じた際のイベントデータとに基づいてイベント因果関係を生成するイベント因果関係生成部と、イベント因果関係およびイベントが生じた際に確認された複数の機構に関連する事象に基づいて、イベント因果関係を更新するイベント因果関係更新部とを備える。この構成であれば、データとしてセンシングできない事象も因果関係に取り込むことが可能である。
【0010】
イベント因果関係は、複数の機構あるいは事象に関して設定されている複数のノードと、複数のノード間の接続を示すエッジ情報とを含む。イベント因果関係更新部は、複数の機構に関連する事象に対応するノードと、イベント因果関係により抽出された要因候補となるノードとの間の接続を示すエッジ情報を追加する。この構成であれば、エッジ情報に基づいて因果関係を容易に特定することが可能である。
【0011】
情報処理装置は、更新されたイベント因果関係を用いて、イベントに対応するイベントリストを登録するイベント関係登録部をさらに備える。この構成であれば、イベントリストによりイベントの管理を容易に行うことが可能である。
【0012】
イベントリストは、イベント概要と、イベントが生じた際のイベントデータと、更新されたイベント因果関係による要因候補位置と、確認された複数の機構に関連する事象と、イベント作業内容とを含む。この構成であれば、イベントリストによりイベントの種々の情報を容易に管理することが可能である。
【0013】
情報処理装置は、イベントデータを取得して、イベント関係登録部により登録されたイベントリストの中から、取得したイベントデータと同じイベントデータを含むイベントリストを抽出するイベント推定部をさらに備える。この構成であれば、イベントリストを容易に抽出することが可能である。
【0014】
本開示の別の一例に従う情報処理方法は、製造ラインで実施される工程における複数の機構あるいは複数の機構に関連する複数の事象間の因果関係を特定するステップと、
イベントが生じた際のイベントデータに基づいてイベント因果関係を生成するステップと、イベント関係およびイベントが生じた際に確認された複数の機構に関連する事象に基づいて、イベント因果関係を更新するステップとを備えた、情報処理方法。この構成であれば、データとしてセンシングできない事象も因果関係に取り込むことが可能である。
【0015】
本開示のさらに別の一例に従う情報処理プログラムは、コンピュータに、製造ラインで実施される工程における複数の機構あるいは複数の機構に関連する複数の事象間の因果関係を特定するステップと、イベントが生じた際のイベントデータに基づいてイベント因果関係を生成するステップと、イベント関係およびイベントが生じた際に確認された複数の機構に関連する事象に基づいて、イベント因果関係を更新するステップとを実行させる。この構成であれば、データとしてセンシングできない事象も因果関係に取り込むことが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、データとしてセンシングできない事象も因果関係に取り込むことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る情報処理装置の一形態である工程解析装置1の利用場面の一例を模式的に例示する図である。
【
図2】実施形態に係る工程解析装置1のハードウェア構成の一例を模式的に例示する図である。
【
図3】実施形態に係るPLC2のハードウェア構成の一例を模式的に例示する図である。
【
図4】実施形態に係る工程解析装置1のソフトウェア構成の一例を模式的に例示する図である。
【
図5】実施形態に従う工程解析装置1の処理手順の一例を例示するフロー図である。
【
図6】第1解析部113の動作について模式的に説明する図である。
【
図7】実施形態に従う作成される有向グラフ情報の一例を例示する図である。
【
図9】実施形態に従うFTAを修正するフローを説明する図である。
【
図10】実施形態に従う第2関係特定部118におけるノードの事象を解析および編集する処理のサブルーチンについて説明するフロー図である。
【
図11】実施形態に従う第2関係特定部118におけるノードの属性情報の設定について説明する概念図である。
【
図12】実施形態に従うノードの統合について説明する図である。
【
図13】実施形態に従うイベント因果関係生成部116の統合処理について模式的に説明する図である。
【
図14】実施形態に従うイベント因果関係生成部116の統合処理のフローについて説明する図である。
【
図15】実施形態に従うデータ因果モデルの具体例について説明する図である。
【
図16】実施形態に従う一例として正常データおよび異常データの一例について説明する図である。
【
図17】実施形態に従う正常時および異常時のデータ因果モデルについて説明する図である。
【
図18】実施形態に従うイベント因果モデルについて説明する図である。
【
図19】実施形態に従うイベント因果モデルを用いた利用形態について説明する図である。
【
図20】実施形態に従う包装機の製造ラインの機構について説明する図である。
【
図21】実施形態に従う更新したイベント因果モデルを説明する図である。
【
図22】実施形態に従うイベント因果関係更新部119の更新処理について説明するフロー図である。
【
図23】実施形態に従うイベント関係登録部120のイベントリストについて説明する図である。
【
図24】実施形態に従うイベント推定部117のイベント推定処理について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。以下で説明される各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0019】
以下、情報処理装置の一形態である工程解析装置の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
<1.適用例>
図1は、実施形態に係る情報処理装置の一形態である工程解析装置1の利用場面の一例を模式的に例示する図である。
図1に示すように、実施形態に係る工程解析装置1は、製造ライン3を構成する複数の機構31の状態に関する複数件の状態データ222及びログデータ223を取得する。製造ライン3は、何らかの物を製造可能であればよく、複数の装置で構成されてもよいし、包装機等の1つの装置で構成されてもよい。また、各機構31は、製造工程の何らかの処理を実施可能であればよく、1又は複数の装置で構成されてもよいし、装置の一部で構成されてもよい。1つの機構31が装置の一部で構成される場合、複数の機構31は、1つの装置で構成されてもよい。また、同一の装置が複数の処理を実施する場合には、それぞれを別の機構31とみなしてもよい。例えば、同一の装置が第1の処理と第2の処理とを実施する場合に、第1の処理をする当該装置を第1の機構31とみなし、第2の処理をする当該装置を第2の機構31とみなしてもよい。更に、状態データ222は、製造ライン3を構成する各機構31の状態に関するあらゆる種類のデータを含んでよい。
【0021】
また、実施形態に係る工程解析装置1は、製造ライン3の動作を制御するための制御プログラム221を取得する。制御プログラム221は、製造ライン3を構成する各機構31の動作を制御するあらゆる種類のプログラムを含んでよい。制御プログラム221は、1件のプログラムで構成されてもよいし、複数件のプログラムで構成されてもよい。なお、実施形態では、製造ライン3の動作は、PLC(programmable logic controller)2によって制御される。そのため、工程解析装置1は、複数件の状態データ222、ログデータ223、及び制御プログラム221をPLC2から取得する。
【0022】
次に、実施形態に係る工程解析装置1は、取得した複数件の状態データ222を統計的に解析することにより、製造ライン3内における複数の機構31間の関係の強さを特定する。関係の強さは、本開示の「接続状態」の一例である。また、実施形態に係る工程解析装置1は、取得した制御プログラム221及びログデータ223を解析することにより、製造ライン3内における複数の機構31の順序関係を特定する。そして、実施形態に係る工程解析装置1は、それぞれ特定した関係の強さ及び順序関係に基づいて、製造ライン3で実行される工程における複数の機構31間の因果関係(第1因果関係)を特定する。実施形態では、複数の機構31間の因果関係(第1因果関係)を解析する過程において、複数の機構31間の順序関係を特定するために、制御プログラム221を利用している。制御プログラム221は各機構31の動作を規定しているため、制御プログラム221を利用することで、各機構31の順序関係をより正確に特定可能である。
【0023】
実施形態に係る工程解析装置1は、ユーザ設定に従う製造ライン3で実施される工程における複数の機構31に関連する複数の事象間の因果関係(第2因果関係)を特定する。
【0024】
第2因果関係は、製造ライン3で実施される工程における複数の機構31の故障のメカニズムに基づく複数の事象間の因果関係に相当する。例えば、一例として専門家が作成するFTA(Fault Tree Analysis)に相当する。
【0025】
実施形態に係る工程解析装置1は、第2因果関係を統合するとともに、正常データおよび異常データ(イベントデータ)を用いて第1因果関係に対するイベント因果関係を生成する。実施形態によれば、イベント因果関係を生成することにより、より精度の高い製造ライン3で実施される工程を構成する複数の機構31間の因果関係を正確にモデル化することができる。
【0026】
実施形態に係る工程解析装置1は、イベント因果関係に基づいて要因候補を抽出する。ユーザは、抽出された要因候補に従って製造ライン3で実施される工程における複数の機構31に関連するイベントが生じた事象を特定する。
【0027】
実施形態に係る工程解析装置1は、イベント因果関係および特定されたイベントが生じた際に確認された複数の機構31に関連する事象に基づいて、イベント因果関係を更新する。
【0028】
これにより、イベント因果関係が更新されるためイベントが生じた際の要因候補の抽出の精度が高くなる。データとしてセンシングできない事象も因果関係に取り込むことが可能である。
【0029】
<2.工程解析装置のハードウェア構成>
図2は、実施形態に係る工程解析装置1のハードウェア構成の一例を模式的に例示する図である。
図2に示されるとおり、実施形態に係る工程解析装置1は、制御部11、記憶部12、通信インタフェース13、入力装置14、出力装置15、及びドライブ16が電気的に接続されたコンピュータである。なお、
図2では、通信インタフェースを「通信I/F」と記載している。
【0030】
制御部11は、ハードウェアプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、情報処理に応じて各構成要素の制御を行う。記憶部12は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置であり、制御部11で実行される工程解析プログラム121等を記憶する。
【0031】
工程解析プログラム121は、複数件の状態データ222、ログデータ223、及び制御プログラム221を利用して、製造ライン3の実施する製造工程における複数の機構31間の因果関係を解析する処理を工程解析装置1に実行させるためのプログラムである。
【0032】
通信インタフェース13は、例えば、有線LAN(Local Area Network)モジュール、無線LANモジュール等であり、ネットワークを介した有線又は無線通信を行うためのインタフェースである。工程解析装置1は、この通信インタフェース13により、PLC2との間でネットワークを介したデータ通信を行うことができる。なお、ネットワークの種類は、例えば、インターネット、無線通信網、移動通信網、電話網、専用網等から適宜選択されてよい。
【0033】
入力装置14は、例えば、マウス、キーボード等の入力を行うための装置である。また、出力装置15は、例えば、ディスプレイ、スピーカ等の出力を行うための装置である。オペレータは、入力装置14及び出力装置15を介して、工程解析装置1を操作することができる。
【0034】
ドライブ16は、例えば、CDドライブ、DVDドライブ等であり、記憶媒体91に記憶されたプログラムを読み込むためのドライブ装置である。ドライブ16の種類は、記憶媒体91の種類に応じて適宜選択されてよい。上記工程解析プログラム121は、この記憶媒体91に記憶されていてもよい。
【0035】
記憶媒体91は、コンピュータその他装置、機械等が記録されたプログラム等の情報を読み取り可能なように、当該プログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的又は化学的作用によって蓄積する媒体である。工程解析装置1は、この記憶媒体91から、上記工程解析プログラム121を取得してもよい。
【0036】
ここで、
図2では、記憶媒体91の一例として、CD、DVD等のディスク型の記憶媒体を例示している。しかしながら、記憶媒体91の種類は、ディスク型に限定される訳ではなく、ディスク型以外であってもよい。ディスク型以外の記憶媒体として、例えば、フラッシュメモリ等の半導体メモリを挙げることができる。
【0037】
なお、工程解析装置1の具体的なハードウェア構成に関して、実施形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換及び追加が可能である。例えば、制御部11は、複数のプロセッサを含んでもよい。工程解析装置1は、複数台の情報処理装置で構成されてもよい。また、工程解析装置1は、提供されるサービス専用に設計された情報処理装置の他、汎用のサーバ装置、PC(Personal Computer)等であってもよい。
【0038】
<3.PLC>
図3は、実施形態に係るPLC2のハードウェア構成の一例を模式的に例示する図である。
図3に示されるとおり、PLC2は、制御部21、記憶部22、入出力インタフェース23、及び通信インタフェース24が電気的に接続されたコンピュータである。これにより、PLC2は、製造ライン3の各機構31の動作を制御するように構成される。なお、
図3では、入出力インタフェース及び通信インタフェースをそれぞれ「入出力I/F」及び「通信I/F」と記載している。
【0039】
制御部21は、CPU、RAM、ROM等を含み、プログラム及びデータに基づいて各種情報処理を実行するように構成される。記憶部22は、例えば、RAM、ROM等で構成され、制御プログラム221、状態データ222、及びログデータ223等を記憶する。制御プログラム221は、製造ライン3の動作を制御するためのプログラムである。状態データ222は、各機構31の状態に関するデータである。ログデータ223は、製造ライン3の動作のログを示すデータである。
【0040】
入出力インタフェース23は、外部装置と接続するためのインタフェースであり、接続する外部装置に応じて適宜構成される。実施形態では、PLC2は、入出力インタフェース23を介して、製造ライン3に接続される。なお、単一の装置について異なる状態データを取得可能な場合、当該対象の単一の装置は、複数の機構31とみなされてもよいし、単一の機構31とみなされてもよい。そのため、入出力インタフェース23の数は、製造ライン3を構成する機構31の数と同じであってもよいし、製造ライン3を構成する機構31の数と相違していてもよい。
【0041】
通信インタフェース24は、例えば、有線LANモジュール、無線LANモジュール等であり、有線又は無線通信を行うためのインタフェースである。PLC2は、通信インタフェース24により、工程解析装置1との間でデータ通信を行うことができる。
【0042】
なお、PLC2の具体的なハードウェア構成に関して、実施の形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換、及び追加が可能である。例えば、制御部21は、複数のプロセッサを含んでもよい。記憶部22は、制御部21に含まれるRAM及びROMにより構成されてもよい。記憶部22は、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置で構成されてもよい。また、PLC2は、提供されるサービス専用に設計された情報処理装置の他、制御する対象に応じて、汎用のデスクトップPC、タブレットPC等に置き換えられてもよい。
【0043】
<4.工程解析装置のソフトウェア構成>
図4は、実施形態に係る工程解析装置1のソフトウェア構成の一例を模式的に例示する図である。
図4に示されるように、工程解析装置1の制御部11は、記憶部12に記憶された工程解析プログラム121をRAMに展開する。そして、制御部11は、RAMに展開された工程解析プログラム121をCPUにより解釈及び実行して、各構成要素を制御する。これによって、
図4に示されるとおり、実施形態に係る工程解析装置1は、ソフトウェアモジュールとして、第1取得部111と、第2取得部112と、第1解析部113と、第2解析部114と、第1関係特定部115と、イベント因果関係生成部116と、第2関係特定部118と、イベント因果関係更新部119と、イベント関係登録部120と、イベント推定部117とを含む。
【0044】
第1取得部111は、製造ライン3を構成する複数の機構31の状態に関する複数件の状態データ222を取得する。第2取得部112は、製造ライン3の動作を制御するための制御プログラム221を取得する。第1解析部113は、取得した複数件の状態データ222を統計的に解析することにより、複数の機構31間の関係の強さを特定する。第2解析部114は、取得した制御プログラム221を解析することにより、複数の機構31の順序関係を特定する。実施形態では、第2解析部114は、制御プログラム221を実行して得られるログデータ223を利用して、複数の機構31の順序関係を特定する。そして、第1関係特定部115は、それぞれ特定した関係の強さ及び順序関係に基づいて、製造ライン3で実施される工程における複数の機構31間の因果関係(第1因果関係)を特定する。
【0045】
第2関係特定部118は、ユーザ設定に従う製造ライン3で実施される工程における複数の機構31に関連する複数の事象間の因果関係(第2因果関係)を特定する。
【0046】
イベント因果関係生成部116は、第2因果関係を統合するとともに、正常データ224および異常データ225(イベントデータ)を用いて第1因果関係に対するイベント因果関係を生成する。
【0047】
イベント因果関係生成部116は、イベント因果関係に基づいてイベントの要因候補を抽出する。ユーザは、イベント因果関係に基づく抽出された要因候補に従って製造ライン3で実施される工程における複数の機構31に関連するイベントが生じた事象を特定する。
【0048】
イベント因果関係更新部119は、イベント因果関係および特定されたイベントが生じた際に確認された複数の機構31に関連する事象に基づいて、イベント因果関係を更新する。
【0049】
イベント関係登録部120は、イベントに対応するイベントリストを登録する。イベントリストは、イベント概要と、イベントが生じた際のイベントデータと、更新されたイベント因果関係による要因候補位置と、確認された複数の機構に関連する事象と、イベント作業内容とを含む。
【0050】
イベント推定部117は、イベントデータを取得して、イベント関係登録部120により登録されたイベントリストの中から、取得したイベントデータと同じイベントデータを含むイベントリストを抽出する。イベント推定部117は、抽出したイベントリストを出力することにより、ユーザは、イベントに対する要因候補を容易に特定するとともに、イベント作業内容を確認して、復旧作業を早期に実行することが可能である。
【0051】
本例においては、工程解析装置1において、第2関係特定部118を用いて第2因果関係を特定する場合の構成について説明するが、当該第2関係特定部118は、必ずしも工程解析装置1が有する必要はない。また、イベント因果関係生成部116は、第1因果関係と第2因果関係とを統合する方式について説明するが、これに限られず、第1因果関係あるいは第2因果関係の一方のみに基づいてイベント因果関係を生成するようにしてもよい。
【0052】
工程解析装置1の各ソフトウェアモジュールに関しては後述する動作例で詳細に説明する。なお、実施形態では、工程解析装置1の各ソフトウェアモジュールがいずれも汎用のCPUにより実現される例について説明している。しかしながら、以上のソフトウェアモジュールの一部又は全部が、1又は複数の専用のハードウェアプロセッサにより実現されてもよい。また、工程解析装置1のソフトウェア構成に関して、実施形態に応じて、適宜、ソフトウェアモジュールの省略、置換及び追加が行われてもよい。
【0053】
<5.1 第1因果関係>
図5は、実施形態に従う工程解析装置1の処理手順の一例を例示するフロー図である。ただし、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り変更されてもよい。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が可能である。
【0054】
まず、ステップS101では、制御部11は、第1取得部111として動作し、各機構31の状態に関する複数件の状態データ222をPLC2から取得する。各機構31は、例えば、コンベア、ロボットアーム、サーボモータ、シリンダ(成形機等)、吸着パッド、カッター装置、シール装置等の装置又はその装置の一部で構成されてよい。また、各機構31は、例えば、印刷機、実装機、リフロー炉、基板検査装置等の複合装置であってもよい。更に、各機構31は、上記のような何らかの物理的な動作を伴う装置の他に、例えば、各種センサにより何らかの情報を検知する装置、各種センサからデータを取得する装置、取得したデータから何らかの情報を検知する装置、取得したデータを情報処理する装置等の内部処理を行う装置を含んでもよい。具体例として、コンベアを流れる対象物に付与されたマークを検知する光学センサを備える製造ラインにおいて、当該光学センサ及び光学センサにより検知した情報を利用する装置が各機構31として取り扱われてよい。また、各件の状態データ222は、例えば、トルク、速度、加速度、温度、電流、電圧、空圧、圧力、流量、位置、寸法(高さ、長さ、幅)及び面積の少なくともいずれかを示すデータであってよい。このような状態データ222は、公知のセンサ、カメラ等の計測装置によって得ることができる。例えば、流量は、フロートセンサにより得ることができる。また、位置、寸法、及び面積は、画像センサにより得ることができる。
【0055】
なお、状態データ222は、1又は複数の計測装置から得られるデータで構成されてもよい。また、状態データ222は、計測装置から得られるデータそのままであってもよいし、画像データから取得される位置データ等のように計測装置から得られたデータに何らかの処理を適用することで取得可能なデータであってもよい。各件の状態データ222は、各機構31に対応して取得される。
【0056】
各計測装置は、製造ライン3の各機構31を監視可能に適宜配置される。PLC2は、製造ライン3を稼働させて、各計測装置から各件の状態データ222を収集する。制御部11は、PLC2から、製造ライン3を正常に稼働させたときの各機構31の状態に関する状態データ222を取得する。これにより、制御部11は、複数件の状態データ222を取得することができる。複数件の状態データ222の取得が完了すると、制御部11は、次のステップS102に処理を進める。
【0057】
次のステップS102では、制御部11は、第2取得部112として動作し、制御プログラム221をPLC2から取得する。制御プログラム221は、PLC2で実行可能なように、例えば、ラダー・ダイアグラム言語、ファンクション・ブロック・ダイアグラム言語、ストラクチャード・テキスト言語、インストラクション・リスト言語、及びシーケンシャル・ファンクション・チャート言語、C言語の少なくともいずれかを利用して記述されていてもよい。制御プログラム221の取得が完了すると、制御部11は、次のステップS103に処理を進める。なお、ステップS102は、上記ステップS101と並列に実行されてもよいし、上記ステップS101の前に実行されてもよい。
【0058】
次のステップS103では、制御部11は、第1解析部113として動作し、ステップS101で取得した複数件の状態データ222を統計的に解析することにより、製造ライン3内における複数の機構31間の関係の強さを特定する。複数件の状態データ222の解析処理が完了すると、制御部11は、次のステップS104に処理を進める。なお、ステップS103は、上記ステップS101の後であれば、いかなるタイミングに実行されてもよい。例えば、ステップS103は、上記ステップS102の前に実行されてもよい。
【0059】
以下の説明では、説明の便宜のため、製造ライン3は、複数の機構31として、4つの機構(例えば、4つのサーボモータ)F1~F4を備えており、上記ステップS101では、制御部11は、各機構F1~F4の状態データ222を取得したものと仮定する。
【0060】
図6は、第1解析部113の動作について模式的に説明する図である。
図6に示されるように、制御部11は、ステップS101で取得した各件の状態データ222から特徴量2221を算出する。特徴量2221の種類は、特に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてもよい。また、特徴量2221を算出する方法は、実施の形態に応じて適宜決定可能である。具体例として、実施形態では、制御部11は、次のような方法で、状態データ222から特徴量2221を算出する。まず、制御部11は、特徴量2221を算出する処理範囲を規定するため、取得した各件の状態データ222をフレーム毎に分割する。各フレームの長さは、実施の形態に応じて適宜設定されてよい。
【0061】
制御部11は、例えば、各件の状態データ222を一定時間長のフレーム毎に分割してもよい。
【0062】
次に、制御部11は、状態データ222の各フレームから特徴量2221の値を算出する。状態データ222が計測データ等のような連続値データである場合には、制御部11は、例えば、フレーム内の振幅、最大値、最小値、平均値、分散値、標準偏差、瞬時値(1点サンプル)等を特徴量2221として算出してもよい。また、状態データ222が検出データ等のような離散値データである場合には、制御部11は、例えば、各フレーム内の「on」時間、「off」時間、Duty比、「on」回数、「off」回数等を特徴量2221として算出してもよい。これにより、各特徴量2221の算出が完了すると、制御部11は、各特徴量2221間の相関係数又は偏相関係数を算出する。相関係数は、以下の数1の計算式により算出することができる。また、偏相関係数は、以下の数2の計算式により算出することができる。
【0063】
【0064】
なお、rijは、行列2222のi行目j列目の要素を示す。xi及びxjは、各件の状態データ222から算出された特徴量2221を示すデータに対応する。Xi及びXjはそれぞれ、xi及びxjの標本平均を示す。nは、相関の計算に利用する各特徴量2221の数を示す。
【0065】
【0066】
なお、行列R(rij)の逆行列をR-1(rij)と表現し、rijは行列2222の逆行列のi行目j列目の要素を示す。
【0067】
これにより、制御部11は、相関係数又は偏相関係数を各要素とする行列2222を得ることができる。各特徴量2221間の相関係数及び偏相関係数は、対応する機構31間の関係の強さを示す。すなわち、行列2222の各要素により、対応する機構31間の関係の強さが特定される。各特徴量2221間の相関係数又は偏相関係数の算出が完了すると、制御部11は、各特徴量2221間の相関係数又は偏相関係数に基づいて、対応する機構31間の関係の強さを示す無向グラフ情報2223を構築する。
【0068】
例えば、制御部11は、各機構31に対応するノードを作成する。そして、2つの機構31間に対して算出した相関係数又は偏相関係数の値が閾値以上である場合に、制御部11は、対応する両ノード間をエッジで連結する。一方、2つの機構31間に対して算出した相関係数又は偏相関係数の値が閾値未満である場合には、制御部11は、対応する両ノード間をエッジで連結しない。なお、閾値は、工程解析プログラム121内で規定された固定値であってもよいし、オペレータ等により変更可能な設定値であってもよい。また、エッジの太さは、対応する相関係数又は偏相関係数の値の大きさに対応して決定されてもよい。
【0069】
これにより、例示するような無向グラフ情報2223を作成することができる。例では、4つの機構F1~F4に対応する4つのノードが作成されている。そして、機構F1及びF2のノード間、機構F1及びF3のノード間、機構F2及びF3のノード間、並びに機構F3及びF4のノード間にそれぞれエッジが形成されている。また、機構F1及びF3の間並びに機構F3及びF4の間の相関が他の機構間の相関よりも大きいことに対応して、機構F1及びF3のノード間並びに機構F3及びF4のノード間のエッジが他のエッジに比べて太く形成されている。以上により、複数の機構31間の関係の強さを示す無向グラフ情報2223の構築が完了すると、実施形態に係る状態データ222の解析処理は完了し、制御部11は、次のステップS104に処理を進める。
【0070】
なお、例では、無向グラフ情報2223は、形成された無向グラフを画像により表現している。しかしながら、無向グラフ情報2223の出力形式は、画像に限定されなくてもよく、テキスト等により表現されてもよい。また、上記の例では、相関係数又は偏相関係数と閾値との比較により、関係の弱いノード(機構31)間にエッジを形成しないようにしている。しかしながら、関係の弱いノード間のエッジを除去する方法は、このような例に限られなくてもよい。例えば、全てのノードをエッジで連結したグラフを形成した後、制御部11は、逸脱度を表わす適合度指標(GFI、SRMR等)が閾値を超えないように、相関係数又は偏相関係数の小さいエッジから順に、形成したグラフのエッジを削除してもよい。
【0071】
図5に戻り、次のステップS104では、制御部11は、第2解析部114として動作し、ステップS102で取得した制御プログラム221を解析することにより、製造ライン3内における複数の機構31の順序関係を特定する。実施形態では、制御部11は、制御プログラム221を利用して製造ライン3を稼働させることで得られるログデータ223に基づいて、複数の機構31の順序関係を特定する。制御プログラム221の解析処理が完了すると、制御部11は、次のステップS105に処理を進める。なお、ステップS104は、上記ステップS102の後であれば、いかなるタイミングに実行されてもよい。例えば、上記ステップS102が上記ステップS101よりも先に実行される場合には、ステップS104は、上記ステップS101の前に実行されてもよい。
【0072】
制御プログラム221を解析する処理について詳細に説明する。以下の説明では、説明の便宜のため、上記と同様に、製造ライン3は、複数の機構31として、4つの機構F1~F4を備えており、上記ステップS102では、制御部11は、4つの機構F1~F4に対応する変数v1~v4が使用された制御プログラム221を取得したものと仮定する。
【0073】
制御部11は、制御プログラム221を利用して製造ライン3を正常に稼働させたときの実行結果を示すログデータ223をPLC2から取得する。PLC2は、例えば、上記状態データ222を収集する際に、併せて制御プログラム221の実行結果を示すログデータ223を作成してもよい。この場合、ログデータ223には、タイムスタンプ、利用された変数の値等が記録される。また、例えば、制御プログラム221には、各コード行が実行される頻度、実行されたコード行、コードの各セクションが消費する計算時間等の情報を収集するためのデバッグモードが設けられてもよい。この場合、PLC2は、制御プログラム221をデバッグモードで実行することで、各情報を記録したログデータ223を作成することができる。制御部11は、このように作成されたログデータ223をPLC2から取得してもよい。ログデータ223の取得が完了すると、制御部11は、取得したログデータ223を参照して、上記各変数(v1~v4)の順番付けを行うことで、製造ライン3内における各機構31の順序関係を特定する。
【0074】
以上により、複数の機構31の順序関係の特定が完了すると、実施形態に係る制御プログラム221の解析処理は完了し、制御部11は、次のステップS105に処理を進める。
【0075】
図5に戻り、次のステップS105では、制御部11は、第1関係特定部115として動作する。すなわち、制御部11は、ステップS103及びS104それぞれにより特定した製造ライン3内における複数の機構31間の関係の強さ及び順序関係に基づいて、当該製造ライン3で実施される工程における複数の機構31間の因果関係を特定する。
【0076】
実施形態では、制御部11は、構築した無向グラフ情報2223に特定した各機構31の順序関係を適用することにより、各機構31間の因果関係を示す有向グラフ情報を作成する。
【0077】
図7は、実施形態に従う作成される有向グラフ情報の一例を例示する図である。
図7の有向グラフ122には、以下の(a)~(d)の因果関係が示される。
(a)機構「F1」~「F4」のうち、機構「F1」又は「F2」が最初に利用される。
(b)機構「F1」及び「F2」の次には、機構「F3」が利用される。
(c)機構「F3」の次には、機構「F4」が利用される。
(d)機構「F1」~「F4」のうち、機構「F4」が最後に利用される。
【0078】
また、有向グラフ122の各エッジの太さは、無向グラフ情報2223の各エッジの太さに対応して設定されている。以上により、有向グラフ情報の作成が完了すると、制御部11は、次のステップS106に処理を進める。
【0079】
なお、
図7の例では、有向グラフ情報は、有向グラフ(有向グラフ122)を画像により表現している。しかしながら、有向グラフ情報の出力形式は、画像に限定されなくてもよく、テキスト等により表現されてもよい。また、上記の例では、ノード(機構31)間の関係の強さをエッジの太さで表現している。しかしながら、ノード間の関係の強さを表現する方法は、このような例に限定されなくてもよい。各エッジの近傍に数字を付すことにより、各ノード間の関係の強さを表現してもよい。
【0080】
次のステップS106では、制御部11は、ステップS105で作成した有向グラフ情報(第1因果関係)を出力する。具体的には、第1関係特定部115は、イベント因果関係生成部116に生成した因果関係を示す有効グラフ情報を出力する。以上により、制御部11は、本動作例に係る第1因果関係を生成する処理を終了する。
【0081】
以上のように、実施形態では、上記ステップS104により、制御プログラム221を解析することで、製造ライン3内における複数の機構31間の順序関係を特定する。そして、上記ステップS103により状態データ222から導出した関係の強さを示す無向グラフ情報に、制御プログラム221から特定した順序関係を適用することで、製造ライン3で実施される工程における複数の機構31間の因果関係を示す有向グラフ情報を作成する。ここで、制御プログラム221は、各機構31の動作を規定する。そのため、複数の機構31間の因果関係を解析する過程で、制御プログラム221を利用することで、当該複数の機構31間の順序関係を適切に特定することができる。したがって、実施形態によれば、製造ライン3を構成する複数の機構31間の因果関係を正確にモデル化することができる。
【0082】
<5.2 第2因果関係>
図8は、実施形態に従うFTAを説明する図である。
図8には、一例として包装機の製造ライン3に対して専門家が作成したFTA(Fault Tree Analysis)が示されている。FTAは、包装機の製造ライン3で生じる複数の事象間の因果関係を示す有効グラフ情報に相当する。
【0083】
具体的には、各事象がノードの形式で示されており、ノードN0~N15(総称してノードNとも称する)が設けられている。最終的な2つの事象に対応するノードN0(「シール出来ない」)、ノードN1(「接着弱い」)が設けられている。そして、当該ノードN0,N1に至るまでの他の事象に対応するノードN2~N8が因果関係に基づいて設けられている。
【0084】
ノードN0に対して、ノードN2(「温度計測が不正確」)、ノードN3(「シール圧が弱い」)、ノードN4(「シーラ表面が十分温まっていない」)、ノードN5(「温度が測れない」)、ノードN6(「温度不適(フィルム搬送メイン/サブ速度とシール温度が合っていない)」)、ノードN7(「温度不適(フィルム厚とシール温度が合っていない)」)、ノードN8(「シール温度が上がらない」)が因果関係がある事象として設けられている。
【0085】
ノードN1に対して、ノードN6(「温度不適(フィルム搬送メイン/サブ速度とシール温度が合っていない)」)が設けられている。
【0086】
そして、ノードN2~N8に至るまでの他の事象に対応するノードN9~N15が因果関係に基づいて設けられている。
【0087】
ノードN2に対してノードN9(「熱電対劣化」)が設けられている。ノードN3に対してノードN10(「プレスローラ摩耗」)およびノードN11(「プレス用ばね劣化」)が設けられている。ノードN4に対して、ノードN11(「暖気手順無視/手順無し」)が設けられている。ノードN5に対して、ノードN12(「熱電対断線」)が設けられている。ノードN6に対して、ノードN13(「設定温度、搬送速度設定ミス」)が設けられている。ノードN7に対して、ノードN14(「設定温度、フィルム厚設定ミス」)が設けられている。ノードN8に対してノードN15(「ヒータ劣化」)が設けられている。
【0088】
図9は、実施形態に従うFTAを修正するフローを説明する図である。
図9における処理は、第2関係特定部118における処理である。第2関係特定部118は、ノードの事象を解析および編集する(ステップS2)。第2関係特定部118は、ユーザからの入力を受け付けるユーザインタフェースを有しており、必要に応じてユーザ入力に基づいて処理を実行してもよい。
【0089】
次に、第2関係特定部118は、編集後のノードを統合する(ステップS4)。
【0090】
そして、処理を終了する(エンド)。
【0091】
図10は、実施形態に従う第2関係特定部118におけるノードの事象を解析および編集する処理のサブルーチンについて説明するフロー図である。
図10を参照して、第2関係特定部118は、ノードを選択する(ステップS10)。例えば、
図8で説明したノード(N0)の1つを選択する。次に、第2関係特定部118は、選択したノードの対応する事象から物理量または状態を抽出する(ステップS12)。
【0092】
例えば、第2関係特定部118は、ノードN0の「シール出来ない」の事象に基づいて物理量(「シール接着強度」)を抽出する。同様に、第2関係特定部118は、ノードN1の「接着弱い」の事象に基づいて物理量(「シール接着強度」)を抽出する。当該事象に対する物理量あるいは、状態の抽出は、事象に対応して物理量あるいは状態が関連付けられた物理量/状態対応テーブルが予め設けられており、当該物理量/状態対応テーブルを参照して物理量あるいは状態が抽出されるものとする。なお、当該物理量/状態対応テーブルに該当する物理量あるいは状態が存在しない場合には、ユーザインタフェースを介してユーザが入力するようにしても良い。なお、当該ユーザインタフェースを介してユーザが入力することにより物理量/状態対応テーブルが随時更新されるようにしても良い。なお、事象と、物理量あるいは状態が1対1に対応付けられている必要はなく、事象に関連する関連度合いから物理量あるいは状態が抽出されるようにしても良い。
【0093】
次に、第2関係特定部118は、抽出した物理量あるいは状態から変数を特定する(ステップS14)。例えば、第2関係特定部118は、物理量(「シール温度」)から変数(「CurrentTemprature CenterSeal」)を特定する。当該抽出した物理量あるいは状態から変数への特定は、物理量あるいは状態に対応して変数が関連付けられた変数対応テーブルが予め設けられており、当該変数対応テーブルを参照して変数が特定されるものとする。なお、当該変数対応テーブルに該当する変数が存在しない場合には、ユーザインタフェースを介してユーザが入力するようにしても良い。ユーザインタフェースを介してユーザが入力する方式については後述する。
【0094】
なお、当該ユーザインタフェースを介してユーザが入力することにより変数対応テーブルが随時更新されるようにしても良い。
【0095】
次に、第2関係特定部118は、抽出した物理量あるいは状態から複数の変数が特定されたか否かを判断する(ステップS16)。
【0096】
ステップS16において、第2関係特定部118は、複数の変数が特定されないと判断した場合(ステップS16においてNO)には、ノードの属性情報を設定する(ステップS18)。
【0097】
一方で、ステップS16において、第2関係特定部118は、複数の変数が特定されたと判断した場合(ステップS16においてYES)には、ノードを分割する(ステップS20)。次に、ステップS18に進み、ノードの属性情報を設定する。
【0098】
次に、第2関係特定部118は、全てのノードの解析が終了したか否かを判断する(ステップS22)。
【0099】
ステップS22において、第2関係特定部118は、全てのノードの解析が終了したと判断した場合(ステップS22においてYES)には、処理を終了する(リターン)。
【0100】
一方、ステップS22において、第2関係特定部118は、全てのノードの解析が終了しないと判断した場合(ステップS22においてNO)には、ステップS24に進む。
【0101】
ステップS24において、第2関係特定部118は、別のノードを選択する。そして、ステップS12に戻り、上記処理を繰り返す。
【0102】
図11は、実施形態に従う第2関係特定部118におけるノードの属性情報の設定について説明する概念図である。
図11(A)を参照して、各ノードに対応して設けられる属性情報のデータ構造が示されている。一例として各ノードに対応する属性情報として3層構造のデータD1~D3が設けられている。本例においては、各ノードに対応する属性情報として1層目のデータD1には、抽出した物理量あるいは状態の情報が設定される。2層目のデータD2には、事象の情報が設定される。3層目のデータD3には、変数が設定される。なお、当該データ構造は一例であり、どのような順番であってもよい。
【0103】
図11(B)を参照して、ノードN6に対して物理量(「フィルム搬送メイン/サブ速度とシール温度」)が抽出された場合が示されている。
【0104】
図11(C)を参照して、ノードN7に対して物理量(「フィルム搬送メイン速度」)と、物理量(「フィルム搬送サブ速度」)、物理量(「シール温度」)とはそれぞれ別々の変数があるため複数の変数が特定されたと判断した場合が示されている。本例においては、物理量(「フィルム搬送メイン速度」)に対して変数(「FilmFeedMain」)が特定され、物理量(「フィルム搬送サブ速度」)に対して変数(「FilmFeedSub」)が特定され、物理量(「シール温度」)に対して変数(「CurrentTemprature CenterSeal」)が特定された場合が示されている。
【0105】
したがって、当該場合には、ノードを分割する。分割されたノードとしてノードN16, N17が設けられた場合が示されている。
【0106】
図11(D)を参照して、それぞれのノードN6およびN16,N17に属性情報が設定された場合が示されている。具体的には、ノードN6に対応する属性情報として、データD1(「フィルム搬送メイン速度」)、データD2(「温度不適」)、データD3(「FilmFeedMain」)が設定される。ノードN16に対応する属性情報として、データD1(「フィルム搬送サブ速度」)、データD3(「FilmFeedSub」)が設定される。ノードN17に対応する属性情報として、データD1(「シール温度」)、データD2(「温度不適」)、データD3(「CurrentTemprature CenterSeal」)が設定される。
【0107】
上記処理を各ノードに対して順次実行する。
【0108】
図12は、実施形態に従うノードの統合について説明する図である。
図12を参照して、編集後のノードを統合した場合を説明する図である。
【0109】
統合の方法は、種々があるが、一例として、各ノードNに対応する属性情報に含まれる物理量あるいは状態の情報に基づいて統合する。すなわち、各ノードNに対応する属性情報に含まれる物理量あるいは状態の情報が同じであれば当該ノードを統合する。例えば、
図8のノードN0と、ノードN1は、共に同じ物理量(「シール接着強度」)が抽出されるため統合されたノードN20として設けられる。ノードN20の属性情報として、データD1(「シール接着強度」)、データD2(「シール出来ない、接着弱い」)、データD3(「無し」)が設定される。また、因果関係のエッジ情報(矢印情報)も統合される。
【0110】
同様にして、統合されたノードN21~N32が設けられる。統合された場合には、各ノードの属性情報は、データD1およびD3は共通となるが、D2は情報が追加されて設定される。
【0111】
ノードN21の属性情報として、データD1(「シール温度」)、データD2(「計測が不正確、温度が上がらない、温度不適、温度が測れない」)、データD3(「CurrentTemprature CenterSeal」)が設定される。
【0112】
ノードN22の属性情報として、データD1(「シール圧力」)、データD2(「シール圧が弱い」)、データD3(「無し」)が設定される。
【0113】
ノードN23の属性情報として、データD1(「フィルム搬送メイン速度」)、データD2(「温度不適」)、データD3(「FilmFeedMain」)が設定される。
【0114】
ノードN24の属性情報として、データD1(「フィルム搬送サブ速度」)、データD2(「温度不適」)、データD3(「FilmFeedSub」)が設定される。
【0115】
ノードN25の属性情報として、データD1(「フィルム厚」)、データD2(「温度不適」)、データD3(「無し」)が設定される。
【0116】
ノードN26の属性情報として、データD1(「熱電対状態」)、データD2(「断線、劣化」)、データD3(「無し」)が設定される。
【0117】
ノードN27の属性情報として、データD1(「暖気手順状態」)、データD2(「無視、手順無し」)、データD3(「無し」)が設定される。
【0118】
ノードN28の属性情報として、データD1(「ヒータ状態」)、データD2(「劣化」)、データD3(「無し」)が設定される。
【0119】
ノードN29の属性情報として、データD1(「シーラ設定温度」)、データD2(「設定ミス」)、データD3(「CenterHeaterDPC_MV」)が設定される。
【0120】
ノードN30の属性情報として、データD1(「プレスローラ状態」)、データD2(「プレスローラ摩耗」)、データD3(「無し」)が設定される。
【0121】
ノードN31の属性情報として、データD1(「プレス用ばね状態」)、データD2(「プレス用ばね劣化」)、データD3(「無し」)が設定される。
【0122】
ノードN31の属性情報として、データD1(「フィルム搬送速度設定」)、データD2(「設定ミス」)、データD3(「FilmFeed_MV」)が設定される。
【0123】
上記処理により、ノードN20に対して、ノードN21~N25が因果関係があるノードとして設けられる。また、ノードN21に対して、ノードN26~N29が因果関係があるノードとして設けられる。ノードN22に対して、ノードN30,N31が因果関係があるノードとして設けられる。ノードN23は、ノードN32が因果関係があるノードとして設けられる。
【0124】
制御部11は、FTAの有効グラフ情報に基づいて修正した有効グラフ情報(第2因果関係)を出力する。具体的には、第2関係特定部118は、ユーザ設定に従う製造ライン3で実施される工程における複数の機構31に関連する複数の事象間の因果関係を示す有効グラフ情報(第2因果関係)を特定する。イベント因果関係生成部116は、第2関係特定部118から複数の事象間の因果関係を示す有効グラフ情報(第2因果関係)を取得する。
【0125】
<5.3 統合処理>
図13は、実施形態に従うイベント因果関係生成部116の統合処理について模式的に説明する図である。
図13(A)を参照して、本例においては、一例として第1関係特定部115から出力された有効グラフ情報(第1因果関係)と、第2関係特定部118から出力された有効グラフ情報(第2因果関係)とを統合する方式が示されている。
【0126】
後述するが、第1関係特定部115から出力された有効グラフ情報(第1因果関係)と、正常データ224および異常データ225に基づいてイベント因果関係(イベント因果モデル)が生成される。
【0127】
イベント因果関係生成部116は、生成されたイベント因果モデルと、第2関係特定部118から出力された有効グラフ情報(第2因果関係)であるFTA因果モデルとを統合したイベント因果モデルを生成する。
【0128】
説明を簡略化するためにイベント因果モデルには、ノードA1~A5が設けられている。FTA因果モデルには、ノードB1~B4と、ノードA2とが設けられている。
【0129】
図13(B)を参照して、イベント因果モデルのノードにFTA因果モデルのノードを加える。また、同じ変数を有するノードを1つのノードに纏める。ここでは、ノードA2が1つに纏められた場合が示されている。
【0130】
図13(C)を参照して、FTA因果モデルのノードを加えたイベント因果モデルにFTA因果モデルのエッジ情報を追加した場合が示されている。これにより、イベント因果モデルにFTA因果モデルを統合することが可能となる。
【0131】
図14は、実施形態に従うイベント因果関係生成部116の統合処理のフローについて説明する図である。
図14を参照して、イベント因果関係生成部116は、イベント因果モデルのノードにFTA因果モデルのノードを加える(ステップS30)。次に、イベント因果関係生成部116は、同じ変数を有するノードを1つのノードに纏める(ステップS32)。次に、イベント因果関係生成部116は、FTA因果モデルのノードを加えたイベント因果モデルにFTA因果モデルのエッジ情報を追加する(ステップS34)。次に、イベント因果関係生成部116は、ノードおよびエッジの属性情報にデータ起源情報を登録する(ステップS36)。具体的には、データ因果モデルの起源か、FTA因果モデルの起源か、両方の起源かをそれぞれ示すデータ起源情報を登録する。
【0132】
そして、イベント因果関係生成部116は処理を終了する(エンド)。
【0133】
<6.具体例>
以下、イベント因果関係生成部116で生成するイベント因果モデルの具体例について説明する。
【0134】
図15は、実施形態に従うデータ因果モデルの具体例について説明する図である。
【0135】
図15(A)を参照して、第1関係特定部115から出力されたデータ因果モデルが示されている。具体的には、一例として、包装機の製造ライン3に対して複数の機構31間の関係の強さおよび制御プログラム221を解析して得られた複数の機構31の順序関係に基づいて特定された因果モデルである。
【0136】
具体的には、ノードN40~N56が設けられており、ノード間のエッジ情報が示されている。また、各ノードNに対応して制御プログラム221で用いられる変数が対応付けられている。
【0137】
図15(B)は、データ因果モデルのグラフ構造データの一例を示すものである。
図15(B)に示されるように、グラフ構造データは、各ノードの情報とともに、各ノード間のエッジ情報が記述されている。一例として、ノードの属性情報の一例(ノードID)として変数が割り当てられている場合が示されている。なお、上記グラフ構造データは一例であり、当該記述に限定されるものではない。
【0138】
図16は、実施形態に従う一例として正常データおよび異常データの一例について説明する図である。
図16には、各ノードにおける正常データおよび異常データが示されている。
【0139】
上記で説明したデータ因果モデルと、正常データとに基づいて正常時のデータ因果モデルが生成される。
【0140】
また、上記で説明したデータ因果モデルと、異常データとに基づいて異常時のデータ因果モデルが生成される。
【0141】
図17は、実施形態に従う正常時および異常時のデータ因果モデルについて説明する図である。
図17(A)は、正常時のデータ因果モデルである。
図17(B)は、異常時のデータ因果モデルである。データ因果モデルに対して正常データを用いることにより正常時のノード間の因果関係を特定する。また、データ因果モデルに対して異常データを用いて異常時のノード間の因果関係を特定する。ノード間の数値は関係の強さを示す数値である。
【0142】
図18は、実施形態に従うイベント因果モデルについて説明する図である。
図18を参照して、イベント因果関係生成部116は、
図17で説明した正常時のデータ因果モデルと、異常時のデータ因果モデルとを用いて、乖離度合いを算出する。乖離度合いの大きさから要因候補となるノードを推定したイベント因果モデルを生成する。また、
図13および
図14のフローで説明した方式に従ってイベント因果モデルにFTA因果モデルを統合する。イベント因果モデルのノードにFTA因果モデルのノードを加えて、FTA因果モデルのノードを加えたイベント因果モデルにFTA因果モデルのエッジ情報を追加した場合が示されている。上記したように、同じ変数を有するノードを1つのノードに纏めた場合が示されている。
【0143】
具体的には、
図12で説明したノードN21の属性情報に含まれる変数(「CurrentTemprature CenterSeal」)は、ノードN54と同じであるため1つに纏められる。ノードN23の属性情報に含まれる変数(「FilmFeedMain」)は、ノードN45と同じであるため1つに纏められる。ノードN24の属性情報に含まれる変数(「FilmFeedSub」)は、ノードN50と同じであるため1つに纏められる。ノードN29の属性情報に含まれる(「CenterHeaterDPC_MV」)は、ノードN53と同じであるため1つに纏められる。ノードN32の属性情報に含まれる変数(「FilmFeed_MV」)は、同じ変数が無いため新たに追加される。
【0144】
当該処理により、イベント因果関係生成部116は、FTA因果モデルを統合したイベント因果モデルを生成することが可能となる。
<7.利用形態>
図19は、実施形態に従うイベント因果モデルを用いた利用形態について説明する図である。
【0145】
図19を参照して、一例としてシール接着強度に異常があった場合について考える。イベント因果モデルを用いることによりエッジの末端のノードを抽出する。本例においては、ノードN25~N28,N30~N31およびN50,N51が抽出される。
【0146】
したがって、当該抽出されたノードの情報を表示することにより、ユーザは、当該ノードの情報に基づいて異常の原因を容易に予測することが可能である。
【0147】
図20は、実施形態に従う包装機の製造ラインの機構について説明する図である。
【0148】
図20を参照して、製造ラインは、ワーク位置ズレセンサ300、フィルム搬送軸302、ワーク乗り上げセンサ303、ワーク検知センサ304、ワーク搬送軸306、フィルム搬送軸307、トップシール軸310等の機構を含む。当該機構には、それぞれ変数が割り当てられている。
【0149】
また、機構に関連するデータについても変数が割り当てられている。例えば、フィルム残量301(「RoomHumidity」)、駆動時間305(「Chapter」)、センターシール温度308(「CurrentTemprature CenterSeal」)、センターシール温度操作量309(「CenterHeaterDPC_MV」)、トップシール下温度(「CurrentTempratureLowerTopSeal」)、やトップシール下温度操作量(「TopSealLowHeaterDPC_MC」)、トップシール上温度314(「CurrentTempratureUpperTopSeal」)、トップシール上温度操作量313(「TopSealUpHeaterDPC_MC」)が割り当てられている。
【0150】
ユーザは、イベント因果モデルにより抽出されたノードに関連する箇所を現物確認する。本例においては、ユーザは、シール接着強度に異常があった場合に事象としてプレスローラの摩耗を確認した場合について説明する。
【0151】
<8.モデル更新>
イベント因果関係更新部119は、イベント因果関係および特定されたイベントが生じた際に確認された複数の機構31に関連する事象に基づいて、イベント因果関係を更新する。
【0152】
本例においては、ユーザは、シール接着強度不良の現物確認によりプレスローラの摩耗を確認したものとする。
【0153】
図21は、実施形態に従う更新したイベント因果モデルを説明する図である。
図21には、更新したイベント因果モデルが示されている。
【0154】
イベント因果関係更新部119は、ユーザによりプレスローラの摩耗度合がシール接着強度不良が生じた事象であるとして入力を受け付ける。
【0155】
イベント因果関係更新部119は、ユーザの入力に従ってプレスローラの摩耗度合に対応するノードN30が不良が生じた事象であることを特定するとともに、当該ノードと、抽出されたイベント因果モデルで要因候補として抽出されたノードとの因果関係を更新する。具体的には、ノードN30からノードN50,N51へのエッジを追加する。
【0156】
これにより、イベント因果モデルを更新することが可能である。
【0157】
図22は、実施形態に従うイベント因果関係更新部119の更新処理について説明するフロー図である。
図22を参照して、イベント因果関係更新部119は、特定した事象に対する入力が有るか否かを判断する(ステップS40)。
【0158】
ステップS40において、イベント因果関係更新部119は、特定した事象に対する入力が有ると判断した場合(ステップS40においてYES)には、対応するノードが有るか否かを判断する(ステップS42)。
【0159】
ステップS42において、イベント因果関係更新部119は、対応するノードがないと判断した場合(ステップS42においてNO)には、ノードを作成する(ステップS48)。
【0160】
そして、イベント因果関係更新部119は、要因候補とノードとの間にエッジを追加する(ステップS44)。
【0161】
そして、イベント因果関係更新部119は、モデルを更新する(ステップS46)。
【0162】
そして、処理を終了する(エンド)。
【0163】
一方、ステップS42において、イベント因果関係更新部119は、対応するノードがあると判断した場合(ステップS42においてYES)には、ステップS48をスキップして、ステップS44に進む。以降の処理は同様である。
【0164】
図21で説明した例によれば、イベント因果関係更新部119は、ユーザによりプレスローラの摩耗度合がシール接着強度不良が生じた事象であるとして入力を受け付ける。イベント因果関係更新部119は、プレスローラの摩耗度合のノードN30が有ると判断して、ステップS48をスキップして、ステップS44においてノードN50およびノードN51へのエッジを追加する。そして、イベント因果関係更新部119は、ステップS46においてイベント因果モデルを更新する。
【0165】
<9.イベントリスト>
図23は、実施形態に従うイベント関係登録部120のイベントリストについて説明する図である。
図23を参照して、ユーザにより複数のイベントが登録されたイベントリストが示されている。
【0166】
具体的には、イベント関係登録部120は、イベントリストとして、イベント概要、イベントデータ、因果モデル、実際の物理現象および復旧作業内容の情報を含む。
【0167】
イベント概要として、「シール接着強度不良」に対応して、イベントデータと、因果モデルが登録されるとともに、実際の物理現象として「プレスローラ摩耗」と、復旧作業内容として「プレスローラの交換」が登録されている場合が示されている。
【0168】
また、イベント概要として、「シール接着強度不良」に対応して、イベントデータと、因果モデルが登録されるとともに、実際の物理現象として「革ベルト摩耗」と、復旧作業内容として「革ベルト交換」が登録されている場合が示されている。
【0169】
イベント概要として、「シール接着強度不良」に対応して、イベントデータと、因果モデルが登録されるとともに、実際の物理現象として「集電リング接触不良」と、復旧作業内容として「集電リング交換」が登録されている場合が示されている。
【0170】
また、イベント概要として、「シール接着強度不良」に対応して、イベントデータと、因果モデルが登録されるとともに、実際の物理現象として「フィルム蛇行」と、復旧作業内容として「フィルム搬送軸の歪み補正」が登録されている場合が示されている。
【0171】
<10.イベント推定>
図24は、実施形態に従うイベント推定部117のイベント推定処理について説明する図である。
図24を参照して、イベント推定部117は、イベント関係登録部120で登録したイベントリストを用いてイベント推定を行う。
【0172】
具体的には、イベント推定部117は、イベントデータを取得して、当該イベントデータと一致するイベントデータを有するイベントリストを参照する。
【0173】
本例においては、イベント推定部117は、イベントデータと一致するイベントリストとして、最上段のイベントリストが一致した場合が示されている。
【0174】
具体的には、イベント概要が「シール接着強度不良」、因果モデル、実際の物理現象「プレスローラ摩耗」、復旧作業内容「プレスローラの交換」が登録されているイベントリストである。
【0175】
したがって、当該内容に基づいて、ユーザに異常の推定箇所として「プレスローラ摩耗」を提示するとともに、その復旧作業内容であるプレスローラの交換を提示することにより、早期にイベントに対する復旧作業を実行することが可能である。
【0176】
なお、イベント推定部117は、イベントデータは、完全に一致する場合に限られず、例えば一致度(類似度)を算出して、当該一致度(類似度)が所定値以上の場合に一致していると判断してもよい。
【0177】
<11.付記>
以上のように、本実施の形態は以下のような開示を含む。
【0178】
(構成1)
製造ラインで実施される工程における複数の機構あるいは前記複数の機構に関連する複数の事象間の因果関係を特定する関係特定部(115,118)と、
前記因果関係とイベントが生じた際のイベントデータとに基づいてイベント因果関係を生成するイベント因果関係生成部(116)と、
前記イベント因果関係および前記イベントが生じた際に確認された前記複数の機構に関連する事象に基づいて、前記イベント因果関係を更新するイベント因果関係更新部(119)とを備える、情報処理装置。
【0179】
(構成2)
前記イベント因果関係は、
前記複数の機構あるいは事象に関して設定されている複数のノードと、
前記複数のノード間の接続を示すエッジ情報とを含み、
前記イベント因果関係更新部は、前記複数の機構に関連する事象に対応するノードと、前記イベント因果関係により抽出された要因候補となるノードとの間の接続を示すエッジ情報を追加する、請求項1記載の情報処理装置。
【0180】
(構成3)
更新された前記イベント因果関係を用いて、前記イベントに対応するイベントリストを登録するイベント関係登録部(120)をさらに備える、請求項1記載の情報処理装置。
【0181】
(構成4)
前記イベントリストは、イベント概要と、前記イベントが生じた際のイベントデータと、前記更新された前記イベント因果関係による要因候補位置と、確認された前記複数の機構に関連する事象と、イベント作業内容とを含む、請求項3記載の情報処理装置。
【0182】
(構成5)
イベントデータを取得して、前記イベント関係登録部により登録されたイベントリストの中から、取得したイベントデータと同じイベントデータを含むイベントリストを抽出するイベント推定部(121)をさらに備える、請求項4記載の情報処理装置。
【0183】
(構成6)
製造ラインで実施される工程における複数の機構あるいは前記複数の機構に関連する複数の事象間の因果関係を特定するステップと、
イベントが生じた際のイベントデータに基づいてイベント因果関係を生成するステップと、
前記イベント関係および前記イベントが生じた際に確認された前記複数の機構に関連する事象に基づいて、前記イベント因果関係を更新するステップとを備えた、情報処理方法。
【0184】
(構成7)
コンピュータに、
製造ラインで実施される工程における複数の機構あるいは前記複数の機構に関連する複数の事象間の因果関係を特定するステップと、
イベントが生じた際のイベントデータに基づいてイベント因果関係を生成するステップと、
前記イベント関係および前記イベントが生じた際に確認された前記複数の機構に関連する事象に基づいて、前記イベント因果関係を更新するステップとを実行させる、情報処理プログラム。
【0185】
本開示の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0186】
1 工程解析装置、3 製造ライン、11,21 制御部、12,22 記憶部、13,24 通信インタフェース、14 入力装置、15 出力装置、16 ドライブ、23 入出力インタフェース、31 機構、91 記憶媒体、111 第1取得部、112 第2取得部、113 第1解析部、114 第2解析部、115 第1関係特定部、116 イベント因果関係生成部、117 イベント推定部、118 第2関係特定部、119 イベント因果関係更新部、120 イベント関係登録部、121 工程解析プログラム、221 制御プログラム、222 状態データ、223 ログデータ。