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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】通信装置、通信システム及び通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/40 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
H04L12/40 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021078007
(22)【出願日】2021-04-30
(65)【公開番号】P2022171396
(43)【公開日】2022-11-11
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸行
(72)【発明者】
【氏名】真下 誠
(72)【発明者】
【氏名】森口 雅勝
(72)【発明者】
【氏名】萩原 剛志
(72)【発明者】
【氏名】山根 遼
(72)【発明者】
【氏名】神田 一郎
(72)【発明者】
【氏名】泉 達也
【審査官】前田 健人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-130944(JP,A)
【文献】特開2011-250272(JP,A)
【文献】特開2009-232208(JP,A)
【文献】国際公開第2019/226585(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/28-12/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを送信する通信装置であって、
複数の第2の通信装置が接続されている通信バスに接続され、データを送信する送信部を備え、
前記複数の第2の通信装置及び送信部が前記通信バスを介してデータを送信する順序は予め定められており、
前記通信バスを介して、データの送信の開始を示すビーコン信号が繰り返し送信され、
前記送信部は、前記ビーコン信号が送信された場合、前記順序に従ってデータを送信し、
前記送信部は、前記第2の通信装置に送信する送信データが存在しない場合、送信先が前記複数の第2の通信装置とは異なるダミーデータを送信し、
前記送信データが存在しない場合、前記ビーコン信号が送信されてから、データの送信の順番が回ってくるまでに、前記通信バスを介して送信されたデータのデータ量に基づいて前記ダミーデータを送信するか否かを判定する判定部を備える
通信装置。
【請求項2】
前記送信部の構成は、IEEE802.3cgの10BASE-T1Sに準拠している
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
通信バスに接続される複数の通信装置を備え、
前記複数の通信装置中の1つは、前記通信バスを介して、データの送信の開始を示すビーコン信号を繰り返し送信し、
前記ビーコン信号が送信された場合、前記複数の通信装置は、予め定められた順序に従って、前記通信バスを介してデータを送信し、
前記複数の通信装置中の少なくとも1つは、自装置以外の残りの通信装置中の1つに送信する送信データが存在しない場合、送信先が前記残りの通信装置とは異なるダミーデータを送信し、
前記送信データが存在しない場合、前記ビーコン信号が送信されてから、データの送信の順番が回ってくるまでに、前記通信バスを介して送信されたデータのデータ量に基づいて前記ダミーデータを送信するか否かを判定する判定部を備える
通信システム。
【請求項4】
前記複数の通信装置それぞれは、前記送信データが存在しない場合、前記ダミーデータを送信する
請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記複数の通信装置中の少なくとも1つは、前記送信データが存在しない場合、前記通信バスを介してデータを送信しない
請求項3に記載の通信システム。
【請求項6】
データを送信する通信装置の通信方法であって、
前記通信装置は、複数の第2の通信装置が接続されている通信バスに接続され、
前記通信装置及び複数の第2の通信装置が前記通信バスを介してデータを送信する順序は予め定められており、
前記通信バスを介して、データの送信の開始を示すビーコン信号が繰り返し送信され、
前記通信装置は、
前記ビーコン信号が送信された場合、前記順序に従ってデータを送信するステップと、
前記第2の通信装置に送信する送信データが存在しない場合、送信先が前記複数の第2の通信装置とは異なるダミーデータを送信するステップと
前記送信データが存在しない場合、前記ビーコン信号が送信されてから、データの送信の順番が回ってくるまでに、前記通信バスを介して送信されたデータのデータ量に基づいて前記ダミーデータを送信するか否かを判定するステップ
を実行する通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は通信装置、通信システム及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の通信装置が通信バスに接続されている車両用の通信システムが開示されている。各通信装置は、通信バスを介して他の通信装置にデータを送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-213653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1ビットの期間が経過する都度、通信バスの電圧を調整することによって、データが送信される。通信バスの電圧が変化した場合、通信バスを介して流れる電流の電流値は変動し、通信バスから電磁波が発生する。車両内では、通信バスとは異なる導線を介して種々の信号が出力される。通信バスから発生した電磁波は、信号の外乱ノイズとして作用する。外乱ノイズの強度が大きい場合、信号が適切に読み取られない可能性がある。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、強度が大きい外乱ノイズの発生を防止することができる通信装置、通信システム及び通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る通信装置は、データを送信する通信装置であって、複数の第2の通信装置が接続されている通信バスに接続され、データを送信する送信部を備え、前記複数の第2の通信装置及び送信部が前記通信バスを介してデータを送信する順序は予め定められており、前記通信バスを介して、データの送信の開始を示すビーコン信号が繰り返し送信され、前記送信部は、前記ビーコン信号が送信された場合、前記順序に従ってデータを送信し、前記送信部は、前記第2の通信装置に送信する送信データが存在しない場合、送信先が前記複数の第2の通信装置とは異なるダミーデータを送信する。
【0007】
本開示の一態様に係る通信システムは、通信バスに接続される複数の通信装置を備え、前記複数の通信装置中の1つは、前記通信バスを介して、データの送信の開始を示すビーコン信号を繰り返し送信し、前記ビーコン信号が送信された場合、前記複数の通信装置は、予め定められた順序に従って、前記通信バスを介してデータを送信し、前記複数の通信装置中の少なくとも1つは、自装置以外の残りの通信装置中の1つに送信する送信データが存在しない場合、送信先が前記残りの通信装置とは異なるダミーデータを送信する。
【0008】
本開示の一態様に係る通信方法は、データを送信する通信装置の通信方法であって、前記通信装置は、複数の第2の通信装置が接続されている通信バスに接続され、前記通信装置及び複数の第2の通信装置が前記通信バスを介してデータを送信する順序は予め定められており、前記通信バスを介して、データの送信の開始を示すビーコン信号が繰り返し送信され、前記通信装置は、前記ビーコン信号が送信された場合、前記順序に従ってデータを送信するステップと、前記第2の通信装置に送信する送信データが存在しない場合、送信先が前記複数の第2の通信装置とは異なるダミーデータを送信するステップとを実行する。
【0009】
なお、本開示を、このような特徴的な処理部を備える通信装置として実現することができるだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする通信方法として実現したり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムとして実現したりすることができる。また、本開示を、通信装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現したり、通信装置を含む通信システムとして実現したりすることができる。
【発明の効果】
【0010】
上記の態様によれば、強度が大きい外乱ノイズの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1における通信システムの要部構成を示すブロック図である。
図2】データフレームの送信方法の説明図である。
図3】第1ECU及び複数の第2ECUのID、役割及び送信の順番を示す図表である。
図4】ビーコン信号の波形図である。
図5】データフレームの内容の説明図である。
図6】第1ECUの要部構成を示すブロック図である。
図7】ビット通信器の回路図である。
図8】送信フレームの送信準備の手順を示すフローチャートである。
図9】第1ECUのIC制御部が実行する送信処理の手順を示すフローチャートである。
図10】第2ECUのIC制御部が実行する送信処理の手順を示すフローチャートである。
図11】通信システムの効果の説明図である。
図12】通信システムの効果の他の説明図である。
図13】実施形態2におけるデータフレームの送信方法の説明図である。
図14】ダミーフレームを送信しない第1ECUのIC制御部が実行する送信処理の手順を示すフローチャートである。
図15】ダミーフレームを送信しない第2ECUのIC制御部が実行する送信処理の手順を示すフローチャートである。
図16】実施形態3におけるデータフレームの送信方法の説明図である。
図17】ダミーフレームの送信条件を示す図表である。
図18】ダミーフレームを送信する第2ECUのIC制御部が実行する送信処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0013】
(1)本開示の一態様に係る通信装置は、データを送信する通信装置であって、複数の第2の通信装置が接続されている通信バスに接続され、データを送信する送信部を備え、前記複数の第2の通信装置及び送信部が前記通信バスを介してデータを送信する順序は予め定められており、前記通信バスを介して、データの送信の開始を示すビーコン信号が繰り返し送信され、前記送信部は、前記ビーコン信号が送信された場合、前記順序に従ってデータを送信し、前記送信部は、前記第2の通信装置に送信する送信データが存在しない場合、送信先が前記複数の第2の通信装置とは異なるダミーデータを送信する。
【0014】
上記の態様にあっては、送信部は、通信バスを介してビーコン信号が送信された場合、予め定められた順序に従って、通信バスを介してデータを送信する。送信部は、送信データが存在しない場合、ダミーデータを送信する。従って、ビーコン信号が送信される送信間隔が長い。
【0015】
複数の通信器が通信バスに接続されている従来の通信システムでは、各通信器は、他の通信器に送信するデータが存在しない場合、データを送信しない。従って、ビーコン信号の送信間隔が短い。ビーコン信号は、1ビットの期間が経過する都度、通信バスの電圧を調整することによって送信される。電圧が変更された場合に外乱ノイズが発生する。ビーコン信号の送信間隔が短い場合、単位時間当たりに通信バスの電圧が切替わる回数が多いので、外乱ノイズの強度が大きい。
【0016】
しかしながら、上記の態様では、ビーコン信号の送信間隔が長いので、単位時間当たりに通信バスの電圧が切替わる回数が少ない。従って、外乱ノイズの強度が小さく、強度が大きい外乱ノイズの発生が防止される。
【0017】
(2)本開示の一態様に係る通信装置では、前記送信部の構成は、IEEE802.3cg(IEEEは登録商標)の10BASE-T1Sに準拠している。
【0018】
上記の態様にあっては、送信部は、データレートが10Mbpsであるベースバンド信号を、ツイストペア線を介して送信する。
【0019】
(3)本開示の一態様に係る通信装置では、前記送信データが存在しない場合、前記ビーコン信号が送信されてから、データの送信の順番が回ってくるまでに、前記通信バスを介して送信されたデータのデータ量に基づいて前記ダミーデータを送信するか否かを判定する判定部を備える。
【0020】
上記の態様にあっては、ビーコン信号の送信間隔が所定間隔以上である場合、強度が大きい外乱ノイズの発生が防止される。送信データが存在しない場合、送信部は、必要に応じてダミーデータを送信するため、ダミーデータが効率的に送信される。
【0021】
(4)本開示の一態様に係る通信システムは、通信バスに接続される複数の通信装置を備え、前記複数の通信装置中の1つは、前記通信バスを介して、データの送信の開始を示すビーコン信号を繰り返し送信し、前記ビーコン信号が送信された場合、前記複数の通信装置は、予め定められた順序に従って、前記通信バスを介してデータを送信し、前記複数の通信装置中の少なくとも1つは、自装置以外の残りの通信装置中の1つに送信する送信データが存在しない場合、送信先が前記残りの通信装置とは異なるダミーデータを送信する。
【0022】
上記の態様にあっては、通信バスに接続されている複数の通信装置中の少なくとも1つは、送信データが存在しない場合、ダミーデータを送信する。このため、ビーコン信号の送信間隔が長い。結果、強度が大きい外乱ノイズの発生が防止される。
【0023】
(5)本開示の一態様に係る通信システムでは、前記複数の通信装置それぞれは、前記送信データが存在しない場合、前記ダミーデータを送信する。
【0024】
上記の態様にあっては、全ての通信装置がダミーデータを送信するため、ビーコン信号の送信間隔は非常に長い。このため、通信バスから発生する外乱ノイズの強度は非常に小さい。
【0025】
(6)本開示の一態様に係る通信システムでは、前記複数の通信装置中の少なくとも1つは、前記送信データが存在しない場合、前記通信バスを介してデータを送信しない。
【0026】
上記の態様にあっては、一又は複数の通信装置はダミーデータを送信する。残りの通信装置はダミーデータを送信しない。ビーコン信号の送信間隔が所定間隔以上である場合、強度が大きい外乱ノイズの発生が防止されると仮定する。一又は複数の通信装置によって、ビーコン信号の送信間隔が所定間隔以上の値に維持されるので、強度が大きい外乱ノイズの発生が防止される。残りの通信装置は、送信データが存在しない場合、例えば、データを送信しない。この場合、効率的な送信データの送信を実現することができる。
【0027】
(7)本開示の一態様に係る通信方法は、データを送信する通信装置の通信方法であって、前記通信装置は、複数の第2の通信装置が接続されている通信バスに接続され、前記通信装置及び複数の第2の通信装置が前記通信バスを介してデータを送信する順序は予め定められており、前記通信バスを介して、データの送信の開始を示すビーコン信号が繰り返し送信され、前記通信装置は、前記ビーコン信号が送信された場合、前記順序に従ってデータを送信するステップと、前記第2の通信装置に送信する送信データが存在しない場合、送信先が前記複数の第2の通信装置とは異なるダミーデータを送信するステップとを実行する。
【0028】
上記の態様にあっては、通信装置は、通信バスを介してビーコン信号が送信された場合、予め定められた順序に従って、通信バスを介してデータを送信する。通信装置は、送信データが存在しない場合、ダミーデータを送信する。従って、ビーコン信号が送信される送信間隔が長いので、単位時間当たりに通信バスの電圧が切替わる回数が少ない。結果、外乱ノイズの強度が小さく、強度が大きい外乱ノイズの発生が防止される。
【0029】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る通信システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0030】
(実施形態1)
<通信システムの構成>
図1は、実施形態1における通信システム1の要部構成を示すブロック図である。通信システム1は、車両Mに搭載されている。通信システム1は、第1ECU11及び複数の第2ECU12を備える。ECUはElectronic Control Unitの略語である。第1ECU11及び複数の第2ECU12は通信バスBに接続されている。
【0031】
第1ECU11及び複数の第2ECU12それぞれには、電気機器及びセンサが接続されている。電気機器及びセンサの図示は省略されている。センサは、車両に関する値を検出し、検出した検出値を、センサに接続されている第1ECU11又は第2ECU12に出力する。第1ECU11及び複数の第2ECU12それぞれは、例えば、センサの検出値が入力された場合、センサの検出値をメインデータとして含むデータフレームを、通信バスBを介して送信する。データフレームは送信先を示している。なお、メインデータはセンサの検出値に限定されない。
【0032】
通信バスBに接続されている1つのECUがデータフレームを送信した場合、通信バスBに接続されている全てのECUがデータフレームを受信する。第1ECU11及び複数の第2ECU12それぞれは、データフレームを受信した場合において、データフレームの送信先が自装置ではないとき、受信したデータフレームを破棄する。
【0033】
第1ECU11及び複数の第2ECU12それぞれは、データフレームを受信した場合において、データフレームの送信先が自装置であるとき、受信したデータフレームに含まれるメインデータに基づいて、自装置に接続されている電気機器が行う動作を決定する。第1ECU11及び複数の第2ECU12それぞれは、電気機器が行う動作を決定した場合、決定した動作を示す動作信号を電気機器に出力する。動作信号が電気機器に入力された場合、電気機器は、入力された動作信号が示す動作を行う。
【0034】
<データフレームの送信方法>
図2はデータフレームの送信方法の説明図である。図3は、第1ECU11及び複数の第2ECU12のID、役割及び送信の順番を示す図表である。IDはIdentification Dataの略語である。図2及び図3では、第1ECU11及び4つの第2ECU12がデータフレームを送信する例が示されている。
【0035】
第1ECU11及び複数の第2ECU12中の1つのECUが通信バスBを介してデータフレームを送信している間に、他のECUが通信バスBを介してデータフレームを送信した場合、複数のデータフレームが衝突する。複数のデータフレームが衝突した場合、データフレームの送信は失敗する。そこで、複数のデータフレームの衝突を回避するために、第1ECU11及び第2ECU12それぞれは、例えば、PLCA(Physical Layer Collision Avoidance)方式に従ってデータフレームを送信する。
【0036】
図2に示すように、PLCA方式では、ビーコン信号が通信バスBを介して繰り返し送信される。ビーコン信号が送信された場合、5つのデータフレームが通信バスBを介して送信される。ビーコン信号は、データフレームの送信の開始を示す。ビーコン信号は、マスターの役割を果たすECUによって送信される。図3に示すように、第1ECU11がマスターの役割を果たす。従って、第1ECU11が通信バスBを介してビーコン信号を繰り返し送信する。複数の第2ECU12それぞれはスレーブの役割を果たす。
【0037】
第1ECU11がビーコン信号を送信した場合、第1ECU11及び複数の第2ECU12は、予め定められた順序に従ってデータフレームを送信する。図3に示すように、第1ECU11及び複数の第2ECU12それぞれには、予めIDが割り当てられている。図3の例では、第1ECU11のIDは001である。4つの第2ECU12それぞれには、002~005中の1つが割り当てられている。図3では、001~005それぞれの送信の順番は、1番目~5番目に設定されている。マスターの送信の順番は1番目である。
【0038】
第1ECU11がビーコン信号を送信した場合、まず、IDが001である第1ECU11がデータフレームを送信する。次に、IDが002である第2ECU12がデータフレームを送信する。以降、003~005に対応する3つの第2ECU12がデータフレームを順次送信する。第1ECU11は、IDが005である第2ECU12がデータフレームの送信を完了した場合、ビーコン信号を再び送信する。
【0039】
第1ECU11は、ビーコン信号を送信してから一定期間が経過するまで待機する。第1ECU11は、一定期間が経過した場合、データフレームを送信する。各第2ECU12は、データフレームの送信が完了してから一定期間が経過するまで待機する。各第2ECU12は、一定期間が経過した場合、データフレームを送信する。第1ECU11及び第2ECU12それぞれは、通信装置又は第2の通信装置として機能する。
【0040】
なお、第2ECU12の数が4とは異なる場合、第2ECU12の数が4である場合と同様に、複数の第2ECU12は、第1ECU11がデータフレームを送信した後、データフレームを順次送信する。
【0041】
通信バスを介した通信の方式として、PLCA方式の他にCSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access/Collision Detection)方式が挙げられる。CSMA/CD方式では、PLCA方式と同様に、複数のECUそれぞれが通信バスを介してデータフレームを送信する。複数のデータフレームの衝突が発生した場合、各ECUは複数のデータフレームの衝突を検知する。衝突した複数のデータフレームの送信元である複数のECUそれぞれは、データフレームを再び送信する。複数のECUがデータフレームを送信するタイミングは相互に異なる。このため、複数のデータフレームの衝突は回避される。
【0042】
CSMA/CD方式では、複数のデータフレームの衝突が発生した場合、衝突によって生じるデータフレームの遅延時間は定まらない。しかしながら、PLCA方式では、第1ECU11及び複数の第2ECU12それぞれに、データフレームを送信する期間が割り当てられている。このため、データフレームの衝突が発生することはない。結果、PLCA方式では、最大遅延時間を保証することができる。最大遅延時間が保証されている場合、車載ネットワークの設計が容易である。
【0043】
<ビーコン信号>
図4はビーコン信号の波形図である。図4の縦軸及び横軸それぞれでは、電圧差及び時間が示されている。図4に示すビーコン信号の波形は一例である。通信バスBには、第1導線W1及び第2導線W2(図7参照)を含む。第1導線W1及び第2導線W2は撚り合されている。これにより、ツイストペア線が実現されている。ビーコン信号は複数のビットで構成されている。第1ECU11及び複数の第2ECU12それぞれは、1ビットの期間が経過する都度、通信バスBに含まれる第1導線W1及び第2導線W2の電圧差を、ハイレベル電圧又はローレベル電圧に調整することによって、ビーコン信号を送信する。図4では、ハイレベル電圧及びローレベル電圧それぞれをH及びLで示している。
【0044】
第1ECU11及び複数の第2ECU12それぞれは、1ビットの期間が経過する都度、通信バスBに含まれる第1導線W1及び第2導線W2の電圧差を、ハイレベル電圧又はローレベル電圧に調整することによって、データフレームを送信する。
【0045】
各ビットでは、ハイレベル電圧又はローレベル電圧が示されている。図4の例では、ビーコン信号は7ビットで構成されている。図4に示すビーコン信号では、ハイレベル電圧及びローレベル電圧で交互に出力されている。なお、ビーコン信号を構成するビットの数は7に限定されない。
【0046】
ビーコン信号の波形は予め定められている。第1ECU11が、ビーコン信号を、通信バスBを介して送信した場合、全ての第2ECU12はビーコン信号を受信する。各第2ECU12では、ハイレベル電圧及びローレベル電圧によって構成されるクロック信号が出力される。クロック信号では、電圧の立ち上がり又は立ち下がりが周期的に行われる。電圧の立ち上がりは、ローレベル電圧からハイレベル電圧への切替えである。電圧の立ち下がりは、ハイレベル電圧からローレベル電圧への切替えである。各第2ECU12は、ビーコン信号を受信した場合、クロック信号の立ち上がり又は立ち下がりの時点を調整する。各第2ECU12それぞれは、例えば、立ち上がり又は立ち下がりの時点を、ビーコン信号の終了時点に調整する。
【0047】
ここで、クロック信号の立ち上がりの時点で処理が実行される構成では、クロック信号の立ち上がりの時点が調整される。クロック信号の立ち下がりの時点で処理が実行される構成では、クロック信号の立ち下がりの時点が調整される。
【0048】
各第2ECU12がクロック信号の立ち上がり又は立ち下がりの時点を調整することによって、第1ECU11及び複数の第2ECU12の同期が実現される。これにより、第1ECU11及び複数の第2ECU12が処理を実行するタイミングが実質的に一致する。なお、ビーコン信号の波形は、図4に示す波形に限定されない。
【0049】
<データフレームの内容>
図5は、データフレームの内容の説明図である。データフレームは、送信先フィールド、データ長フィールド及びデータフィールドを含む。データフレームは、データであり、複数のビットによって構成されている。各ビットでは、ハイレベル電圧又はローレベル電圧が出力される。ビット値の1及びゼロそれぞれは、例えば、ハイレベル電圧及びローレベル電圧に対応する。
【0050】
データフレームの送信先フィールドでは、データフレームの送信先が示されている。送信先フィールドでは、例えばIDが示されている。データフレームのデータフィールドには、メインデータが含まれている。前述したように、メインデータは、例えば、センサの検出値を示す。データフレームのデータ長フィールドは、メインデータの長さを示す。メインデータの長さの単位はビットである。
【0051】
データフレームに関して、データフィールド以外の部分を構成するビットの数は固定されている。メインデータの長さが決まれば、データフレームの長さが決まる。メインデータを構成するビットの数は変動する。ただし、メインデータを構成するビットの数の上限値は予め定められている。
【0052】
第1ECU11及び複数の第2ECU12それぞれは、送信先が、通信バスBに接続されているECUの中で送信元以外の残りのECU中に存在するデータフレームを送信する。以下では、このデータフレームを送信フレームと記載する。送信フレームは送信データに相当する。
【0053】
図3に示すように、5つのIDが割り当てられている場合において、IDが001である第1ECU11が送信する送信フレームの送信先は、002~005に対応する4つの第2ECU12中の1つである。同様の場合において、IDが002である第2ECU12が送信する送信フレームの送信先は、001に対応する第1ECU11及び003~005に対応する3つの第2ECU12中の1つである。
【0054】
第1ECU11及び複数の第2ECU12それぞれは、更に、送信先が、通信バスBに接続されているECU中に存在しないデータフレームを送信する。以下では、このデータフレームをダミーフレームと記載する。ダミーフレームはダミーデータに相当する。即ち、送信先が存在しないデータがダミーデータである。
【0055】
図3に示すように、5つのIDが割り当てられている場合において、ダミーフレームの送信先は、001に対応する第1ECU11及び002~005に対応する4つの第2ECU12のいずれとも異なる。ダミーフレームの送信先は、例えば、IDが999であるECUである。
【0056】
前述したように、第1ECU11及び複数の第2ECU12それぞれは、データフレームを受信した場合において、データフレームの送信先が自装置とは異なるとき、受信したデータフレームを破棄する。従って、ダミーフレームが送信された場合、第1ECU11及び複数の第2ECU12それぞれは、受信したダミーフレームを破棄する。
【0057】
以上のように、ダミーフレームの送信先は、通信バスBに接続されているECU中に存在しない。従って、ダミーフレームの送信先は、通信バスBに接続されているECUの中で、送信元以外の残りのECUのいずれとも異なる。
【0058】
<第1ECU11の構成>
図6は第1ECU11の要部構成を示すブロック図である。第1ECU11は、通信IC21、入力部22、出力部23、装置記憶部24及び装置制御部25を有する。ICはIntegrated Circuitの略語である。通信IC21、入力部22、出力部23、装置記憶部24及び装置制御部25は装置バス26に接続されている。通信IC21は、更に、通信バスBに接続されている。入力部22は、更に、センサに接続されている。出力部23は、更に、電気機器に接続されている。センサ及び電気機器の図示は省略されている。
【0059】
センサは、検出値を入力部22に出力する。装置制御部25は、例えば、センサの検出値が入力部22に入力された場合、メインデータとしてセンサの検出値を含む送信フレームを生成する。装置制御部25は、生成した送信フレームを通信IC21に与える。通信IC21は、送信フレームが与えられた場合、与えられた送信フレームを、通信バスBを介して送信する。
【0060】
通信IC21は、通信バスBを介して送信されたデータフレームを受信する。通信IC21は、データフレームを受信した場合において、受信したデータフレームの送信先が第1ECU11とは異なるとき、受信したデータフレームを破棄する。従って、通信IC21は、ダミーフレームを受信した場合、受信したダミーフレームを破棄する。
【0061】
通信IC21は、データフレームを受信した場合において、受信したデータフレームの送信先が第1ECU11であるとき、受信したデータフレームを装置制御部25に与える。言い換えると、通信IC21は、送信先が自装置である送信フレームを受信した場合、受信した送信フレームを装置制御部25に与える。
【0062】
装置制御部25は、受信した送信フレームを与えられた場合、与えられた送信フレームのメインデータに基づいて、電気機器が行う動作を決定する。装置制御部25は、電気機器が行う動作を決定した場合、出力部23に指示して、決定した動作を示す動作信号を電気機器に出力させる。前述したように、電気機器は、動作信号が入力された場合、入力された動作信号が示す動作を行う。
【0063】
装置記憶部24は、例えば、不揮発性メモリである。装置記憶部24には、コンピュータプログラムPが記憶されている。装置制御部25は、処理を実行する処理素子、例えばCPU(Central Processing Unit)を有する。装置制御部25の処理素子は、コンピュータプログラムPを実行することによって、送信フレーム生成処理及び信号出力処理を並行して実行する。送信フレーム生成処理では、装置制御部25は、前述したように送信フレームを生成し、生成した送信フレームを通信IC21に与える。信号出力処理では、装置制御部25は、前述したように、出力部23に指示して動作信号を出力させる。
【0064】
なお、コンピュータプログラムPは、コンピュータプログラムPを読み取り可能に記録した非一時的な記憶媒体Aを用いて、第1ECU11に提供されてもよい。記憶媒体Aは、例えば可搬型メモリである。可搬型メモリの例として、CD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SDカード、マイクロSDカード又はコンパクトフラッシュ(登録商標)等が挙げられる。記憶媒体Aが可搬型メモリである場合、装置制御部25の処理素子は、図示しない読取装置を用いて記憶媒体AからコンピュータプログラムPを読み取ってもよい。読み取ったコンピュータプログラムPは装置記憶部24に記憶される。更に、コンピュータプログラムPは、第1ECU11の図示しない通信部が外部装置と通信することによって、第1ECU11に提供されてもよい。この場合、装置制御部25の処理素子は、通信部を通じてコンピュータプログラムPを取得する。取得したコンピュータプログラムPは装置記憶部24に記憶される。
【0065】
<通信IC21の構成>
通信IC21は、IC制御部31、インタフェース32、IC記憶部33、クロック部34及びビット通信器35を有する。これらはICバス36に接続されている。インタフェース32は、更に装置バス26に接続されている。クロック部34は、更にビット通信器35に接続されている。ビット通信器35は、更に、通信バスBに接続されている。
【0066】
装置制御部25は、インタフェース32を介して、送信フレームをIC制御部31に与える。IC制御部31は、処理を実行する処理素子、例えばCPUを有する。IC制御部31は、送信フレームが与えられた場合、与えられた送信フレームをIC記憶部33に書き込む。IC記憶部33は、例えば、不揮発性メモリである。IC記憶部33には、ダミーフレームが予め記憶されている。
【0067】
クロック部34は、クロック信号をビット通信器35に出力している。IC制御部31は、IC記憶部33に記憶されている送信フレーム又はダミーフレームを、1ビットずつビット通信器35に与える。IC制御部31は、ビーコン信号を、1ビットずつビット通信器35に与える。
【0068】
ビット通信器35は、クロック信号において、立ち上がりが行われる都度、IC制御部31から与えられた1ビットの信号又はデータを送信する。ビット通信器35は、通信バスBに含まれる第1導線W1及び第2導線W2の電圧差を、ハイレベル電圧又はローレベル電圧に調整することによって、1ビットの信号又はデータを送信する。クロック信号の1周期の間、電圧差はハイレベル電圧又はローレベル電圧に維持される。クロック信号の周期は、1ビットの期間に対応する。
【0069】
ビット通信器35は、クロック信号において、立ち上がりが行われる都度、通信バスBに含まれる第1導線W1及び第2導線W2の電圧差を検出することによって、1ビットの信号又はデータを受信する。ビット通信器35は、受信した1ビットの信号又はデータをIC制御部31に通知する。
【0070】
なお、ビット通信器35は、クロック信号において、立ち下がりが行われる都度、IC制御部31から与えられた1ビットのデータを送信してもよい。また、ビット通信器35は、クロック信号において、立ち下がりが行われる都度、通信バスBの電圧差を検出することによって、1ビットの信号又はデータを受信してもよい。
【0071】
IC制御部31は、ビット通信器35がデータフレームを受信した場合において、受信したデータフレームの送信先が第1ECU11ではないとき、受信したデータフレームを破棄する。従って、IC制御部31は、ビット通信器35がダミーフレームを受信した場合、受信したダミーフレームを破棄する。IC制御部31は、ビット通信器35がデータフレームを受信した場合において、受信したデータフレームの送信先が第1ECU11であるとき、受信したデータフレームを、インタフェース32を介して装置制御部25に与える。前述したように、IC制御部31が装置制御部25に与えるデータフレームは送信フレームである。
【0072】
IC記憶部33には、図示しないコンピュータプログラムが記憶されている。IC制御部31は、コンピュータプログラムを実行することによって、書き込み処理、送信処理及び受信処理を並行して実行する。書き込み処理では、IC制御部31は、前述したように、IC記憶部33に送信フレームを書き込む。送信処理では、IC制御部31は、ビーコン信号をビット通信器35に送信させる。IC制御部31は、ビーコン信号をビット通信器35に送信させた後、送信フレーム又はダミーフレームをビット通信器35に送信させる。受信処理では、IC制御部31は、前述したように、ビット通信器35が受信したデータフレームに関する処理を実行する。
【0073】
<ビット通信器35の構成>
図7はビット通信器35の回路図である。ビット通信器35は、3つの抵抗41a,41b,42、3つのキャパシタ43,44a,44b、コモンモードチョークコイル45及び変換部46を有する。コモンモードチョークコイル45は、第1インダクタ45a、第2インダクタ45b及び環状の磁性体を有する。第1インダクタ45a及び第2インダクタ45bそれぞれは、磁性体に巻き付いている。
【0074】
ビット通信器35の変換部46は、機器導線Waによって通信バスBの第1導線W1に接続されている。ビット通信器35の変換部46は、機器導線Wbによって通信バスBの第2導線W2に接続されている。変換部46は、更に、クロック部34及びICバス36に接続されている。
【0075】
機器導線Waの中途にキャパシタ44aと、コモンモードチョークコイル45の第1インダクタ45aとが配置されている。キャパシタ44aは、第1インダクタ45aの第1導線W1側に配置されている。同様に、機器導線Wbの中途にキャパシタ44bと、コモンモードチョークコイル45の第2インダクタ45bとが配置されている。キャパシタ44bは、第2インダクタ45bの第2導線W2側に配置されている。
【0076】
キャパシタ44aの第1導線W1側において、抵抗41aの一端が機器導線Waに接続されている。同様に、キャパシタ44bの第2導線W2側において、抵抗41bの一端が機器導線Wbに接続されている。抵抗41aの他端は抵抗41bの他端に接続されている。抵抗41a,41b間の接続ノードは、抵抗42及びキャパシタ43の一端に接続されている。抵抗42及びキャパシタ43の他端は第1導体G1に接続されている。第1導体G1は第1ECU11内に配置されている。
【0077】
抵抗41a,41b,42及びキャパシタ43は、終端回路として機能し、第1導線W1及び第2導線W2の電圧差で表される信号又はデータの反射を抑制する。
2つのキャパシタ44a,44bそれぞれは、2つの機器導線Wa,Wbから入力された2つの電圧から直流成分を除去する。キャパシタ44a,44bは、直流成分が除去された2つの電圧をコモンモードチョークコイル45に出力する。
【0078】
コモンモードチョークコイル45は、キャパシタ44a,44bが出力した2つの電圧からコモンモードノイズを除去し、コモンモードノイズを除去した2つの電圧を変換部46に出力する。
【0079】
変換部46は、クロック部34から入力されるクロック信号の立ち上がり又は立ち下がりが行わる都度、コモンモードチョークコイル45から入力された2つの電圧の電圧差を検出する。変換部46は、電圧差を検出した場合、検出した電圧差に対応するビット値をIC制御部31に出力する。ビット値はゼロ又は1である。例えば、電圧差がローレベル電圧である場合、ビット値としてゼロを出力する。電圧差がハイレベル電圧である場合、ビット値として1を出力する。ビット値は、基準電位が第2導体G2の電位である電圧によって表される。ビット値の1及びゼロそれぞれは、例えば、基準電位が第2導体G2であるハイレベル電圧及びローレベル電圧に対応する。第2導体G2は、第1ECU11内に配置されており、第1導体G1とは異なる。
【0080】
前述したように、ビット通信器35は、1ビットの信号又はデータを送信する。IC制御部31は、1ビットの信号又はデータを変換部46に与える。変換部46は、クロック部34から入力されるクロック信号の立ち上がり又は立ち下がりが行わる都度、2つの機器導線Wa,Wbの電圧差を、IC制御部31から与えられた1ビットの信号又はデータに対応する電圧に調整する。
【0081】
変換部46から出力された2つの電圧は、コモンモードチョークコイル45に入力される。コモンモードチョークコイル45は、変換部46が出力した2つの電圧からコモンモードノイズを除去し、コモンモードノイズを除去した2つの電圧を2つのキャパシタ44a,44bに出力する。2つのキャパシタ44a,44bは、コモンモードチョークコイル45から入力された2つの電圧から直流成分を除去する。キャパシタ44a,44bは、直流成分が除去された2つの電圧を通信バスBの第1導線W1及び第2導線W2に印加する。これにより、第1導線W1及び第2導線W2の電圧差がハイレベル電圧又はローレベル電圧に調整される。
【0082】
ビット通信器35の構成は、IEEE802.3cgの10BASE-T1Sに準拠している。従って、ビット通信器35は、データレートが10Mbpsであるベースバンド信号の送信を実現するように構成されている。ここで、ベースバンド信号は、第1導線W1及び第2導線W2によって構成されるツイストペア線を介して送信される。IEEEは、登録商標であり、Institute of Electrical and Electronics Engineersの略語である。
【0083】
<第2ECU12の構成>
第2ECU12の構成の中で、ビーコン信号の送信に関する構成を除く他の構成は、第1ECU11と同様に構成されている。第1ECU11の構成の説明において、第1ECU11を第2ECU12に置き換える。これにより、第2ECU12の構成を説明することができる。
【0084】
第2ECU12では、IC制御部31は、ビーコン信号をビット通信器35に与えることはない。ビット通信器35はビーコン信号を受信する。IC制御部31は、ビーコン信号を受信した場合、ビーコン信号の説明で述べたように、受信したビーコン信号に基づいて、クロック信号の立ち上がり又は立ち下がりの時点を調整する。クロック信号の立ち上がりの時点で処理が実行される構成では、クロック信号の立ち上がりの時点が調整される。クロック信号の立ち下がりの時点で処理が実行される構成では、クロック信号の立ち下がりの時点が調整される。
【0085】
第2ECU12のIC制御部31は、第1ECU11のIC制御部31と同様に、書き込み処理、送信処理及び受信処理を実行する。ただし、第2ECU12の送信処理では、IC制御部31は、ビット通信器35が受信したビーコン信号に基づいて、クロック信号の調整を行った後、送信フレーム又はダミーフレームをビット通信器35に送信させる。
【0086】
<データフレームを送信する手順>
図8は、送信フレームの送信準備の手順を示すフローチャートである。第1ECU11及び第2ECU12それぞれにおいて、送信フレームの送信準備は同様に行われる。図8では、装置制御部25の送信フレーム生成処理と、IC制御部31の書き込み処理とが示されている。
【0087】
送信フレーム生成処理では、装置制御部25は、まず、送信フレームを生成するか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1では、装置制御部25は、例えば、センサの検出値が入力部22に入力された場合、送信フレームを生成すると判定する。この場合、送信フレームのメインデータは、入力部22に入力されたセンサの検出値である。装置制御部25は、送信フレームを生成しないと判定した場合(S1:NO)、再び、ステップS1を実行し、送信フレームを生成するタイミングが到来するまで待機する。
【0088】
装置制御部25は、送信フレームを生成すると判定した場合(S1:YES)、送信フレームを生成する(ステップS2)。例えば、ステップS2が実行される都度、装置制御部25は、データ長が予め定められている所定長である送信フレームを常に生成してもよい。所定長は、例えば、データフレームのデータフィールドを構成するビットの数の上限値である。データ長が固定されている場合、装置制御部25が生成する送信フレームを構成するビットの数は常に一定である。データ長が所定長である送信フレームが生成される構成では、ダミーフレームのデータ長も所定長であってもよい。この場合、ダミーフレームを構成するビットの数は、送信フレームを構成するビットの数と同じである。
【0089】
次に、装置制御部25は、ステップS2で生成した送信フレームを、インタフェース32を介してIC制御部31に与える(ステップS3)。装置制御部25は、ステップS3を実行した後、送信フレーム生成処理を終了する。装置制御部25は、送信フレーム生成処理を終了した後、再び送信フレーム生成処理を実行する。
【0090】
IC制御部31は、書き込み処理では、まず、装置制御部25から送信フレームが与えられたか否かを判定する(ステップS11)。IC制御部31は、送信フレームが与えられていないと判定した場合(S11:NO)、再びステップS11を実行し、装置制御部25から送信フレームが与えられるまで待機する。
【0091】
IC制御部31は、装置制御部25から送信フレームが与えられたと判定した場合(S11:YES)、与えられた送信フレームをIC記憶部33に書き込む(ステップS12)。IC制御部31は、ステップS12を実行した後、書き込み処理を終了する。IC制御部31は、書き込み処理を終了した後、再び書き込み処理を実行する。
【0092】
以上のように、装置制御部25が送信フレームを生成した場合、生成した送信フレームはIC記憶部33に書き込まれる。IC記憶部33に記憶されている送信フレームは通信バスBを介して送信される。
【0093】
図9は、第1ECU11のIC制御部31が実行する送信処理の手順を示すフローチャートである。IC制御部31は、送信処理では、まず、ビーコン信号を送信するか否かを判定する(ステップS21)。ビーコン信号が送信されるタイミングは、順番が最後である第2ECU12がデータフレームの送信を終了したタイミングである。前述したように、データフレームのデータ長フィールドでは、メインデータのデータ長が示されている。IC制御部31は、順番が最後である第2ECU12が送信しているデータフレームのデータ長フィールドにおいて示されるデータ長に基づいて、データフレームの送信が終了するタイミングを把握することができる。
【0094】
IC制御部31は、ビーコン信号を送信しないと判定した場合(S21:NO)、再びステップS21を実行し、ビーコン信号を送信するタイミングが到来するまで待機する。IC制御部31は、ビーコン信号を送信すると判定した場合(S21:YES)、ビット通信器35に指示して、ビーコン信号を、通信バスBを介して送信させる(ステップS22)。前述したように、第2ECU12では、ビット通信器35がビーコン信号を受信した場合、IC制御部31は、クロック信号を調整する。
【0095】
IC制御部31は、ステップS22を実行した後、データフレームの送信を開始するタイミングであるか否かを判定する(ステップS23)。第1ECU11はマスターの役割を果たすので、第1ECU11の送信の順番は1番目である。この場合、ステップS23では、IC制御部31は、ビーコン信号の送信が終了してから一定期間が経過したか否かを判定する。一定期間が経過したタイミングが送信を開始するタイミングである。IC制御部31は、送信を開始するタイミングではないと判定した場合(S23:NO)、ステップS23を再び実行し、送信を開始するタイミングが到来するまで待機する。
【0096】
IC制御部31は、送信を開始するタイミングであると判定した場合(S23:YES)、送信フレームがIC記憶部33に記憶されているか否かを判定する(ステップS24)。IC制御部31は、送信フレームがIC記憶部33に記憶されていると判定した場合(S24:YES)、ビット通信器35に指示して、IC記憶部33に記憶されている送信フレームを1ビットずつ送信させる(ステップS25)。ビット通信器35は送信部として機能する。IC制御部31は、ステップS25を実行した後、送信した送信フレームをIC記憶部33から削除する(ステップS26)。
【0097】
IC制御部31は、送信フレームがIC記憶部33に記憶されていないと判定した場合(S24:NO)、ビット通信器35に指示して、IC記憶部33に記憶されているダミーフレームを1ビットずつ送信させる(ステップS27)。IC制御部31は、ステップS26,S27の一方を実行した後、送信処理を終了する。IC制御部31は、送信処理を終了した後、再び送信処理を実行する。
【0098】
図10は、第2ECU12のIC制御部31が実行する送信処理の手順を示すフローチャートである。第2ECU12のIC制御部31が実行する送信処理のステップS34~S37それぞれは、第1ECU11のIC制御部31が実行する送信処理のステップS24~S27と同様である。従って、ステップS34~S37の説明を省略する。
【0099】
第2ECU12のIC制御部31は、送信処理では、まず、ビット通信器35がビーコン信号を受信したか否かを判定する(ステップS31)。IC制御部31は、ビット通信器35がビーコン信号を受信していないと判定した場合(S31:NO)、ステップS31を再び実行し、ビット通信器35がビーコン信号を受信するまで待機する。
【0100】
IC制御部31は、ビット通信器35がビーコン信号を受信したと判定した場合(S31:YES)、クロック部34が出力しているクロック信号を調整する(ステップS32)。ステップS32では、IC制御部31は、クロック信号の立ち上がり又は立ち下がりの時点を前述したように調整する。IC制御部31は、ステップS32を実行した後、データフレームの送信を開始するタイミングであるか否かを判定する(ステップS33)。
【0101】
図3に示すように、送信の順番が割り当てられている場合、ステップS33では、IC制御部31は、順番が1つ前である第1ECU11又は第2ECU12がデータフレームの送信を終了してから一定期間が経過したか否かを判定する。一定期間が経過したタイミングが送信を開始するタイミングである。IDが002である第2ECU12に関して、順番が1つ前であるECUは、IDが001である第1ECU11である。IDが003である第2ECU12に関して、順番が1つ前であるECUは、IDが002である第2ECU12である。
【0102】
IC制御部31は、順番が1つ前である第1ECU11又は第2ECU12が送信しているデータフレームのデータ長フィールドにおいて示されるデータ長に基づいて、第1ECU11又は第2ECU12がデータフレームの送信を終了するタイミングを把握することができる。
【0103】
IC制御部31は、データフレームの送信を開始するタイミングではないと判定した場合(S33:NO)、ステップS33を実行し、データフレームの送信を開始するタイミングが到来するまで待機する。IC制御部31は、データフレームの送信を開始するタイミングであると判定した場合(S33:YES)、ステップS34を実行する。IC制御部31は、送信処理を終了した後、再び送信処理を実行する。
【0104】
以上のように、第1ECU11及び複数の第2ECU12それぞれのビット通信器35は、自装置とは異なる他のECUに送信する送信フレームがIC記憶部33内に存在しない場合、ダミーフレームを送信する。従って、第1ECU11及び複数の第2ECU12それぞれのビット通信器35は、送信の順番が回ってきた場合、送信フレーム又はダミーフレームを必ず送信する。
【0105】
また、第1ECU11及び複数の第2ECU12に関して、データフレームを送信する順序は、図3に示すように、予め定められている。従って、第1ECU11及び複数の第2ECU12のビット通信器35は、ビーコン信号が送信された場合、予め定められた順序に従って、通信バスBを介してデータフレームを送信する。
【0106】
<通信システム1の効果>
図11は通信システム1の効果の説明図である。まず、5つのECUが通信バスに接続されている従来の通信システムについて述べる。従来の通信システムでは、各ECUは、送信の順番が回ってきた場合において、送信フレームがIC記憶部33内に存在しないとき、データフレームを送信しない。ビーコン信号の送信が完了してから一定期間が経過した場合において、1番目のECUがデータフレームを送信しなかったとき、2番目のECUは、更に一定期間が経過するまで待機する。2番目のECUがデータフレームを送信しなかった場合、3番目のECUは、更に一定期間が経過するまで待機する。残り3つのECUそれぞれも、同様に、一定期間が経過するまで待機する。一定期間が経過したにも関わらず、5番目のECUがデータフレームを送信しなかった場合、ビーコン信号が再び送信される。
【0107】
結果、5つのECUそれぞれについて送信フレームがIC記憶部33内に存在しない場合、図11の上側に示すように、一定期間が5回経過する都度、ビーコン信号が送信される。ビーコン信号の送信間隔は短い。送信間隔が短い場合、電圧差がハイレベル電圧又はローレベル電圧となるように、通信バスBの電圧を切替える切替え回数が多い。通信バスBの電圧が切替えられた場合、外乱ノイズが発生する。単位時間当たりの切替え回数が多い場合、外乱ノイズの強度が大きい。この場合、通信バスBとは異なる導線を介して出力される信号、例えば、動作信号が誤って読み取られる可能性がある。
【0108】
しかしながら、通信システム1では、第1ECU11及び4つの第2ECU12それぞれについて送信フレームがIC記憶部33内に存在しない場合、図11の下側に示すように、第1ECU11及び複数の第2ECU12それぞれは、ダミーフレームを必ず送信する。従って、ビーコン信号が送信される送信間隔は長い。送信間隔が長い場合、通信バスBの電圧の切替え回数が少ない。この場合、外乱ノイズの強度は小さい。結果、強度が大きい外乱ノイズの発生が防止される。
【0109】
通信システム1では、第1ECU11及び4つの第2ECU12の全てがダミーフレームを送信するので、ビーコン信号の送信間隔は非常に長い、従って、通信バスBから発生する外乱ノイズの強度は非常に小さい。
【0110】
第2ECU12の数が4とは異なる場合であっても、通信システム1は、前述した効果と同様の効果を奏する。
なお、ダミーフレームのメインデータを構成する全てのビット値は同一であることが好ましい。この場合、単位時間当たりの電圧の切替え回数が更に少ない。
【0111】
図12は通信システム1の効果の他の説明図である。ここでは、通信バスBを介して伝播する信号(データ)のスペクトルを用いて、通信システム1の効果を説明する。従来の通信システムにおいて、5つのECUそれぞれについて送信フレームがIC記憶部33内に存在しない場合、一定の送信間隔が経過する都度、ビーコン信号が送信される。結果、同一波形が周期的に繰り返される。この場合、(1/送信間隔)の周波数間隔でスペクトルが励起する。従来の通信システムに関しては、送信間隔が短いので、図12に左側に示すように、励起するスペクトルの周波数間隔は大きい。
【0112】
通信システム1において、第1ECU11及び第2ECU12それぞれについて送信フレームがIC記憶部33内に存在しない場合、従来の場合と同様に、一定の送信間隔が経過する都度、ビーコン信号が送信される。従って、(1/送信間隔)の周波数間隔でスペクトルが励起する。通信システム1に関しては、送信間隔が長いので、図12の右側に示すように、励起するスペクトルの周波数間隔が短い。
【0113】
従来の通信システムに関しては、一定の周波数の範囲内において励起するスペクトルの数は少ない。このため、各スペクトルの強度は大きい。結果、強度が大きい外乱ノイズとして作用するスペクトルが存在する。一方、通信システム1に関しては、一定の周波数の範囲内において励起するスペクトルの数は多い。このため、各スペクトルの強度は小さい。従って、強度が大きい外乱ノイズとして作用するスペクトルは存在しない。結果、強度が大きい外乱ノイズの発生が防止される。
【0114】
(実施形態2)
実施形態1では、通信バスBに接続されている全てのECUがダミーフレームを送信する。これにより、強度が大きい外乱ノイズの発生が防止される。しかしながら、強度が大きい外乱ノイズの発生が防止される構成は、全てのECUがダミーフレームを送信する構成に限定されない。
以下では、実施形態2について、実施形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施形態1と共通しているため、実施形態1と共通する構成部には実施形態1と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0115】
<データフレームの送信方法>
図13は、実施形態2におけるデータフレームの送信方法の説明図である。図13には、第1ECU11及び4つの第2ECU12がデータフレームを送信する例が示されている。第1ECU11及び4つの第2ECU12のID、役割及び送信の順序は、図3に示すように決められている。
【0116】
実施形態2における通信システム1では、ビーコン信号の送信間隔が所定間隔以上である場合、強度が大きい外乱ノイズは発生しない。所定間隔は一定値である。更に、所定間隔は、第1ECU11及び4つの第2ECU12の全てがデータフレームを送信した場合における最大の送信間隔よりも短い。
【0117】
図13の例では、第1ECU11及び4つの第2ECU12の中で3つのECUがデータフレームを送信した場合、送信間隔は所定間隔以上である。この場合、残り2つのECUはダミーフレームを送信する必要はない。
【0118】
以下では、通信システム1において、通信バスBに接続されているECUの数をNと記載する。Nは3以上の整数である。N個のECUは、第1ECU11と、(N-1)個の第2ECU12とによって構成される。ダミーフレームを送信するECUの数をPと記載する。Pは、自然数であり、N未満である。ダミーフレームを送信しないECUの数をQと記載する。Qは、自然数であり、(N-P)によって算出される。図13の例では、N、P及びQそれぞれは、5、3及び2である。
【0119】
前述したように、P個のECUがデータフレームを送信した場合、ビーコン信号の送信間隔は所定間隔以上である。Q個のECUは、ダミーフレームを送信する必要はない。ダミーフレームを送信しないQ個のECUそれぞれは、第1ECU11及び(N-1)個の第2ECU12のいずれであってもよい。
【0120】
<データフレームを送信する手順>
ダミーフレームを送信する第1ECU11のIC制御部31は、実施形態1と同様に送信処理を実行する。ただし、送信処理のステップS21に関して、一定期間が経過した時点において、順番が最後である第2ECU12がデータフレームの送信を開始しなかった場合、この時点が、ビーコン信号が送信されるタイミングである。
【0121】
図14は、ダミーフレームを送信しない第1ECU11のIC制御部31が実行する送信処理の手順を示すフローチャートである。ダミーフレームを送信しない第1ECU11のIC制御部31は、送信処理において、ダミーフレームを送信する第1ECU11のIC制御部31が実行する送信処理のステップS21~S26を同様に実行する。このため、ステップS21~S26の説明を省略する。
【0122】
ダミーフレームを送信しない第1ECU11のIC制御部31は、送信フレームがIC記憶部33に記憶されていないと判定した場合(S24:NO)、送信処理を終了する。IC制御部31は、送信処理を終了した場合、再び送信処理を実行する。
【0123】
ダミーフレームを送信する第2ECU12のIC制御部31は、実施形態1と同様に送信処理を実行する。ただし、送信処理のステップS33に関して、一定期間が経過した時点において、順番が1つ前である第1ECU11又は第2ECU12がデータフレームの送信を開始しなかった場合、この時点から更に一定期間が経過した時点が、データフレームの送信を開始するタイミングである。
【0124】
図15は、ダミーフレームを送信しない第2ECU12のIC制御部31が実行する送信処理の手順を示すフローチャートである。ダミーフレームを送信しない第2ECU12のIC制御部31は、送信処理において、ダミーフレームを送信する第2ECU12のIC制御部31が実行する送信処理のステップS31~S36を同様に実行する。ステップS31~S36の説明を省略する。
【0125】
ダミーフレームを送信しない第2ECU12のIC制御部31は、送信フレームがIC記憶部33に記憶されていないと判定した場合(S34:NO)、送信処理を終了する。IC制御部31は、送信処理を終了した場合、再び送信処理を実行する。
【0126】
実施形態2における通信システム1では、P個のECUそれぞれは、送信フレームがIC記憶部33内に存在しない場合、ダミーフレームを送信する。Q個のECUそれぞれは、送信フレームがIC記憶部33内に存在しない場合、ダミーフレームを送信しない。
【0127】
第1ECU11がP個のECUに含まれている場合、第1ECU11のIC制御部31は、実施形態1と同様に送信処理を実行する。第1ECU11がQ個のECUに含まれている場合、第1ECU11のIC制御部31は、図14に示す送信処理を実行する。
【0128】
第2ECU12がP個のECUに含まれている場合、P個のECUに含まれている第2ECU12のIC制御部31は、実施形態1と同様に送信処理を実行する。第2ECU12がQ個のECUに含まれている場合、Q個のECUに含まれている第2ECU12のIC制御部31は、図15に示す送信処理を実行する。
【0129】
<通信システム1の効果>
実施形態2における通信システム1では、P個のECUによって、ビーコン信号の送信間隔は所定間隔以上の値に維持されるので、強度が大きい外乱ノイズの発生が防止される。Q個のECUそれぞれのビット通信器35は、送信フレームがIC記憶部33内に存在しない場合、データフレームを送信しない。このため、効率的な送信フレームの送信が実現される。
【0130】
(実施形態3)
実施形態2において、Q個のECUのビット通信器35は、送信フレームがIC記憶部33内に存在しない場合にダミーフレームを必ず送信しなくてもよい。
以下では、実施形態3について、実施形態2と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施形態2と共通しているため、実施形態2と共通する構成部には実施形態2と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0131】
<データフレームの送信方法>
図16は、実施形態3におけるデータフレームの送信方法の説明図である。図16には、第1ECU11及び4つの第2ECU12がデータフレームを送信する例が示されている。実施形態3においては、実施形態2と同様に、P個のECUがデータフレームを送信した場合、ビーコン信号の送信間隔は所定間隔以上である。図16の例では、Pは3である。
【0132】
実施形態2における通信システム1では、P個のECUそれぞれは、送信フレームがIC記憶部33内に存在しない場合、ダミーフレームを送信する。しかしながら、例えば、Q個のECU中の1つが送信フレームを送信した場合、(P-1)個のECUがダミーフレームを送信することによって、所定間隔以上である送信間隔が実現される。
【0133】
実施形態3における通信システム1では、最後のP個の第2ECU12がダミーフレームを送信するECUとして機能する。送信間隔が所定間隔以上となるように、最後のP個の第2ECU12が送信間隔を調整する。図16の例では、003~005に対応する3つの第2ECU12が送信間隔を調整する。P個の第2ECU12それぞれのビット通信器35がデータフレームを送信する順番は、2番目以降である。
【0134】
図17はダミーフレームの送信条件を示す図表である。図17に示す送信条件は、図16の構成に対応する。即ち、図17では、N、P及びQそれぞれが5、3及び2である通信システム1の送信条件が示されている。Q個のECUには、IDが001である第1ECU11と、IDが002である第2ECU12とが含まれている。最初のQ個のECUそれぞれのビット通信器35は、送信フレームがIC記憶部33内に存在しない場合、ダミーフレームを送信しない。
【0135】
P個のECUには、003~005に対応する第2ECU12が含まれている。IDが003である第2ECU12は、送信フレームがIC記憶部33内に存在しない場合において、最初のQ個のECUが送信したデータフレームの数がゼロであるとき、ダミーフレームを送信する。IDが003である第2ECU12は、送信フレームがIC記憶部33内に存在しない場合において、最初のQ個のECUが送信したデータフレームの数が1以上であるとき、データフレームを送信しない。データフレームの数が1以上である場合、送信間隔が所定間隔以上となるように、最後の(P-1)個のECUが送信間隔を調整することができる。
【0136】
IDが004である第2ECU12は、送信フレームがIC記憶部33内に存在しない場合において、最初の(Q+1)個のECUが送信したデータフレームの数が1であるとき、ダミーフレームを送信する。IDが004である第2ECU12は、送信フレームがIC記憶部33内に存在しない場合において、最初の(Q+1)個のECUが送信したデータフレームの数が2以上であるとき、データフレームを送信しない。データフレームの数が2である場合、送信間隔が所定間隔以上となるように、最後の(P-2)個のECUが送信間隔を調整することができる。データフレームの数が3(=P)である場合、送信間隔は既に所定間隔以上であるので、ダミーフレームの送信は不要である。
【0137】
IDが005である第2ECU12は、送信フレームがIC記憶部33内に存在しない場合において、最初の(Q+2)個のECUが送信したデータフレームの数が2であるとき、ダミーフレームを送信する。IDが004である第2ECU12は、送信フレームがIC記憶部33内に存在しない場合において、最初の(Q+2)個のECUが送信したデータフレームの数が3(=P)以上であるとき、データフレームを送信しない。データフレームの数が3以上である場合、送信間隔は既に所定間隔以上であるので、ダミーフレームの送信は不要である。
【0138】
<データフレームを送信する手順>
実施形態3における通信システム1では、第1ECU11のビット通信器35は、送信フレームがIC記憶部33内に存在しない場合、データフレームを送信しない。従って、実施形態3における第1ECU11のIC制御部31は、図14に示す送信処理を実行する。
【0139】
IDが002である第2ECU12のビット通信器35は、送信フレームがIC記憶部33内に存在しない場合、ダミーフレームを送信しない。ダミーフレームを送信しない第2ECU12のIC制御部31は、実施形態2と同様に、図15に示す送信処理を実行する。
【0140】
図18は、ダミーフレームを送信する第2ECU12のIC制御部31が実行する送信処理の手順を示すフローチャートである。ダミーフレームを送信する第2ECU12のIC制御部31は、送信処理において、ダミーフレームを送信する実施形態2の第2ECU12のIC制御部31が実行する送信処理のステップS31~S36を同様に実行する。このため、ステップS31~S36の説明を省略する。
【0141】
ダミーフレームを送信する第2ECU12のIC制御部31は、送信処理において、送信フレームがIC記憶部33に記憶されていないと判定した場合(S34:NO)、ビーコン信号が送信されてから、データフレームの送信の順番が回ってくるまでに、通信バスBを介して送信されたデータフレームの数に基づいて、ダミーフレームを送信するか否かを判定する(ステップS41)。例えば、IDが003である第2ECU12の送信処理のステップS41では、IC制御部31は、図17に示すように、最初のQ個のECUが送信したデータフレームの数がゼロである場合、ダミーフレームを送信すると判定する。IC制御部31は、最初のQ個のECUが送信したデータフレームの数が1以上である場合、ダミーフレームを送信しないと判定する。
【0142】
データフレームのデータフィールドに含まれるデータの量が変動する構成であっても、変動幅が小さいため、1つのデータフレームのデータ量は実質的に一定である。従って、通信バスBを介して送信されたデータフレームの数は、通信バスBを介して送信されたデータのデータ量に相当する。IC制御部31は判定部として機能する。
【0143】
IC制御部31は、ダミーフレームを送信すると判定した場合(S41:YES)、ビット通信器35に指示して、IC記憶部33に記憶されているダミーフレームを1ビットずつ送信させる(ステップS42)。IC制御部31は、ダミーフレームを送信しないと判定した場合(S41:NO)、又は、ステップS42を実行した後、送信処理を終了する。IC制御部31は、送信処理を終了した後、送信処理を再び実行する。
【0144】
<通信システム1の効果>
P個の第2ECU12それぞれのビット通信器35は、必要に応じてダミーフレームを送信するため、ダミーフレームが効率的に送信される。
実施形態3における通信システム1は、実施形態2における通信システム1が奏する効果を同様に奏する。
【0145】
<実施形態3の変形例>
実施形態3において、データフレームのデータ量の変動幅が大きい場合、ダミーフレームを送信する第2ECU12のIC制御部31は、以下のように送信処理のステップS41を実行してもよい。IC制御部31は、ステップS41では、ビーコン信号が送信されてから、データフレームの送信の順番が回ってくるまでに、通信バスBを介して送信されたデータのデータ量に基づいて、ダミーフレームを送信するか否かを判定する。
【0146】
前述したように、実施形態3では、2種類のECUが通信バスBに接続されている。これらは、ダミーフレームを送信しないECU、及び、送信フレームが存在しない場合において、通信バスBを介して送信されたデータのデータ量に基づいて、ダミーフレームを送信するか否かを判定するECUである。実施形態3における通信システム1では、実施形態1,2の説明で述べたように、送信フレームが存在しない場合にダミーフレームを必ず送信するECUが通信バスBに接続されてもよい。また、実施形態3において、Pが1である場合、P個のECUには、第2ECU12は含まれない。
【0147】
<実施形態1~3の変形例>
実施形態1~3における第1ECU11及び第2ECU12それぞれにおいて、IC制御部31ではなく、装置制御部25が送信処理を実行してもよい。また、第1ECU11及び第2ECU12それぞれにおいて、装置制御部25及びIC制御部31が協同して送信処理を実行してもよい。更に、ダミーフレームの送信先は送信元であってもよい。この場合、第1ECU11及び複数の第2ECU12それぞれは、データフレームを受信した場合において、受信したデータフレームの送信先及び送信元が同じであるとき、受信したデータフレームを破棄する。また、通信バスBに接続される装置はECUに限定されない。通信バスBに接続される装置は、通信バスBを介してデータを送信する通信装置であれば、問題はない。
【0148】
データフレームの送信が終了するタイミングを把握する方法は、データ長に基づく方法に限定されない。データフレームの最後に、送信の終了を示すEOFフィールドが設けられている場合、EOFフィールドの送信が終了したタイミングがデータフレームの送信が終了するタイミングである。EOFはEnd Of Frameの略語である。EOFフィールドの波形は予め決定されている。
【0149】
開示された実施形態1~3はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0150】
1通信システム
11 第1ECU(通信装置、第2の通信装置)
12 第2ECU(通信装置、第2の通信装置)
21 通信IC
22 入力部
23 出力部
24 装置記憶部
25 装置制御部
26 装置バス
31 IC制御部(判定部)
32 インタフェース
33 IC記憶部
34 クロック部
35 ビット通信器(送信部)
36 ICバス
41a,41b,42 抵抗
43,44a,44b キャパシタ
45 コモンモードチョークコイル
45a 第1インダクタ
45b 第2インダクタ
46 変換部
A 記憶媒体
B 通信バス
G1 第1導体
G2 第2導体
M 車両
P コンピュータプログラム
W1 第1導線
W2 第2導線
Wa,Wb 機器導線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18