(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】二軸延伸フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
C08J5/18 CEZ
(21)【出願番号】P 2021081916
(22)【出願日】2021-05-13
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 卓治
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-290403(JP,A)
【文献】特開平03-120028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸延伸フィルムであって、
脂肪族ポリケトンを主成分として含有し、
前記脂肪族ポリケトンのメルトフローレートが2.0~6.0g/10minであり、
延伸倍率が20倍以上であり、
フィルム面上の一方向の引張弾性率が0.5GPa以上であり、前記一方向とフィルム面上で直行する方向の引張弾性率が0.3GPa以上であ
り、
前記フィルム面上の一方向の引張弾性率に対する前記一方向に対するフィルム面上で直行する方向の引張弾性率の比が0.97より小さい、二軸延伸フィルム。
【請求項2】
二軸延伸フィルムであって、
脂肪族ポリケトンを主成分として含有し、
前記脂肪族ポリケトンのメルトフローレートが2.0~6.0g/10minであり、
延伸倍率が20倍以上であり、
フィルム面上の一方向の引張弾性率が0.9GPa以上であり、前記一方向とフィルム面上で直行する方向の引張弾性率が0.3GPa以上0.8GPa以下である、二軸延伸フィルム。
【請求項3】
前記一方向がTD方向であり、前記一方向とフィルム面上で直行する方向がMD方向である、請求項1
または2に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項4】
ヘーズが10%以下である、請求項
1~3のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項5】
少なくとも片面の表面粗さが0.01μm以上0.1μm以下である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項6】
厚さが15μm以上である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二軸延伸フィルムは種々の用途に展開されており、例えば、包装材料、電子材料等に広く利用されている。二軸延伸フィルムの具体例としては、例えばポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムが知られており、優れた機械強度、柔軟性、耐水性等を具備することから、その利用価値は極めて高い。その他、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルムも知られており、優れた機械特性及び表面特性に加えて耐水性も有するため、磁性材料、工業材料をはじめ各分野に展開されている。
【0003】
ポリプロピレンフィルムやポリエステルフィルムに代わる素材として、脂肪族ポリケトンが知られている。脂肪族ポリケトンは、一酸化炭素とオレフィンとを原料として製造される樹脂であり、優れた種々の特性を有することから、各用途への展開が期待されている。例えば、特許文献1には脂肪族ポリケトンを用いて、耐摩耗性、耐久性等に優れたフィルムが得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の脂肪族ポリケトンのフィルムは、引張弾性率及び衝撃強度が十分でなかったので、強度が必要な用途への適用が難しいもののであった。この観点から、引張弾性率及び衝撃強度に優れる二軸延伸フィルムの開発が強く望まれていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、脂肪族ポリケトンのフィルムを主成分としながらも引張弾性率及び衝撃強度に優れる二軸延伸フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、脂肪族ポリケトンを主成分とし、特定方向における引張弾性率を所定の値以上とすることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
二軸延伸フィルムであって、
脂肪族ポリケトンを主成分として含有し、
フィルム面上の一方向の引張弾性率が0.5GPa以上であり、前記一方向とフィルム面上で直行する方向の引張弾性率が0.3GPa以上である、二軸延伸フィルム。
項2
前記一方向がTD方向であり、前記一方向とフィルム面上で直行する方向がMD方向である、項1に記載の二軸延伸フィルム。
項3
ヘーズが10%以下である、項1又は2に記載の二軸延伸フィルム。
項4
少なくとも片面の表面粗さが0.01μm以上0.1μm以下である、項1~3のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の二軸延伸フィルムは、脂肪族ポリケトンのフィルムを主成分としながらも引張弾性率及び衝撃強度に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0011】
1.二軸延伸フィルム
本発明の二軸延伸フィルムは、脂肪族ポリケトンを主成分として含有し、フィルム面上の一方向の引張弾性率が0.5GPa以上であり、前記一方向とフィルム面上で直行する方向の引張弾性率が0.3GPa以上である。斯かる二軸延伸フィルムによれば、脂肪族ポリケトンのフィルムを主成分としながらも引張弾性率及び衝撃強度に優れる。
【0012】
二軸延伸フィルムは、脂肪族ポリケトンを主成分として含有する。ここで「脂肪族ポリケトンを主成分として含有する」とは、二軸延伸フィルムを形成する樹脂成分に含まれる脂肪族ポリケトンの含有割合が50質量%以上であることを意味する。前記樹脂成分中、脂肪族ポリケトンの含有割合は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。前記樹脂成分中、脂肪族ポリケトンの含有割合が100質量%であってもよい。
【0013】
二軸延伸フィルムは、前記樹脂成分(つまり、脂肪族ポリケトンを含む樹脂成分)で形成される。二軸延伸フィルムに含まれる前記樹脂成分は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。二軸延伸フィルムは、前記樹脂成分のみで形成することもできる。
【0014】
二軸延伸フィルムに含まれる脂肪族ポリケトンの種類は特に限定されず、例えば、公知の脂肪族ポリケトンを二軸延伸フィルムに広く適用することができる。
【0015】
脂肪族ポリケトンは、例えば、下記の式(1)
-(CR1R2-CR3R4-C(=O))- (1)
で表される構造単位を繰り返しの単位として有することができる。
【0016】
ここで、式(1)中、R1、R2、R3及びR4は同一又は異なって水素又はメチル基を示し、R4は水素又は炭素数1~4のアルキル基を示す。炭素数1~4のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基が挙げられる。炭素数1~4のアルキル基の炭素数が3又は4である場合は、直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。R4は水素又はメチル基であることが好ましい。
【0017】
脂肪族ポリケトンが前記式(1)で表される構造単位を繰り返し単位として有する場合、その含有割合は特に限定されない。例えば、前記式(1)で表される構造単位の含有割合は、脂肪族ポリケトンが有する全構造単位に対して80モル%以上であることが好ましく、85モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましく、95モル%以上であることが特に好ましい。前記式(1)で表される構造単位の含有割合は、脂肪族ポリケトンが有する全構造単位に対して100モル%とすることもできる。脂肪族ポリケトンが前記式(1)で表される構造単位以外の単位を含む場合、その種類は本発明の効果が阻害されない限り、特に限定されない。
【0018】
脂肪族ポリケトンのメルトフローレート(MFR)は、1.0~8.0g/10minであることが好ましく、1.5~7.0g/10minであることがより好ましく、2.0~6.0g/10minであることがさらに好ましい。脂肪族ポリケトンのメルトフローレートの測定方法は、実施例記載の方法による。
【0019】
脂肪族ポリケトンの製造方法は特に限定されず、例えば、公知の脂肪族ポリケトンの製造方法と同様の方法で脂肪族ポリケトンを得ることができる。また、脂肪族ポリケトンは、市販品等からも入手することが可能である。
【0020】
二軸延伸フィルムに含まれる脂肪族ポリケトンは1種単独であってもよいし、あるいは、2種以上を含むこともできる。
【0021】
二軸延伸フィルムを形成する前記樹脂成分は、必要に応じて添加剤を含むことができる。当該添加剤は、例えば、あらかじめ脂肪族ポリケトンに含まれていてもよい。
【0022】
添加剤の種類は特に限定されず、例えば、二軸延伸フィルムに添加される公知の添加剤を挙げることができる他、脂肪族ポリケトンに添加される公知の添加剤を挙げることもできる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、塩素吸収剤や紫外線吸収剤等の安定剤、滑剤、結晶核剤、可塑剤、難燃化剤、帯電防止剤、着色剤等を挙げることができる。
【0023】
本発明の二軸延伸フィルムは、例えば、1μm以上100μm以下の厚さを有することが好ましい。二軸延伸フィルムの厚さは、2μm以上であることがより好ましく、3μm以上であることがさらに好ましく、5μm以上であることが特に好ましい。また、二軸延伸フィルムの厚さは、80μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることがさらに好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。二軸延伸フィルムの厚さは、外側マイクロメータ(株式会社ミツトヨ製 高精度デジマチックマイクロメータ MDH-25MB)を用いて、JIS K 7130:1999 A法に準拠して測定される値である。
【0024】
本発明の二軸延伸フィルムは、フィルム面上の一方向(以下、方向Aと表記することがある)の引張弾性率が0.5GPa以上であり、前記一方向とフィルム面上で直行する方向(以下、方向Bと表記することがある)の引張弾性率が0.3GPa以上である。これにより、本発明の二軸延伸フィルムは、引張弾性率が優れることはもちろんこと、衝撃強度に優れる材料となる。
【0025】
前記方向Aの引張弾性率は、0.6GPa以上であることが好ましく、0.7GPa以上であることがより好ましく、0.8GPa以上であることがさらに好ましく、0.9GPa以上であることが特に好ましい。また、前記方向Aの引張弾性率の上限は特に限定されないが、例えば、1.5GPa以下とすることができる。
【0026】
前記方向Bの引張弾性率は、0.35GPa以上であることが好ましく、0.4GPa以上であることがより好ましく、0.45GPa以上であることがさらに好ましく、0.5GPa以上であることが特に好ましい。また、前記方向Bの引張弾性率の上限は特に限定されないが、例えば、0.8GPa以下とすることができ。
【0027】
前記方向Aは、二軸延伸フィルムのTD方向であり、前記方向B(つまり、方向Aとフィルム面上で直行する方向)がTD方向であることが好ましい。この場合、二軸延伸フィルムの製造が容易になりやすく、また、引張弾性率及び衝撃強度の両方が特に優れる材料となる。
【0028】
二軸延伸フィルムのヘーズは、高い透明性を有しやすいという点で、10%以下とすることができ、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下、特に好ましくは1%以下である。二軸延伸フィルムのヘーズは0%であってもよい。二軸延伸フィルムのヘーズは、一般的に市販されているヘーズメーターによって測定することができ、当該ヘーズメーターとしては、日本電色社製のヘーズメーターNDH-5000等が挙げられる。
【0029】
二軸延伸フィルムは、少なくとも片面の表面粗さが0.01μm以上であることが好ましく、0.02μm以上であることがより好ましい。また、二軸延伸フィルムは、少なくとも片面の表面粗さが0.1μm以下であることが好ましく、0.09μm以下であることがより好ましい。ここでいう表面粗さは、線形パラメータであるRpkの値を意味する。表面粗さは、非接触法の光干渉方式で測定することができ、測定装置として、日立ハイテク社製の光干渉方式表面・層断面形状計測器「VertScan(登録商標)2.0」を使用することができる。測定はJIS B-0671-2:2002の規定に準拠して行うことができ、当該規定におけるコア部のレベル差(Rk)、突出山部高さ(Rpk)、突出谷部深さ(Rvk)のうち、コア部のレベル差(Rk)及び突出山部高さ(Rpk)を二軸延伸フィルムの表面粗さの指標とすることができる。
【0030】
本発明の二軸延伸フィルムの製造方法は特に限定されず、例えば、公知の二軸延伸フィルムの製造方法と同様の方法を採用することができる。例えば、二軸延伸フィルムは、未延伸原反シートを用いて製造することが好ましい。従って、二軸延伸フィルムの製造方法は、未延伸原反シートを延伸処理する工程を備えることができる。
【0031】
未延伸原反シートを製造する方法は特に限定されず、例えば、公知の方法を広く適用することができる。例えば、未延伸原反シートは前記脂肪族ポリケトンを含む原料を押出機に供給して加熱溶融し、Tダイから溶融押出をし、金属ドラムで冷却及び固化させることで得られる。
【0032】
未延伸原反シートを得るための前記脂肪族ポリケトンは、例えば、ペレット形状、粉末状等、特にその形状は限定されない。前記脂肪族ポリケトンを含む原料には、必要に応じて添加剤が含まれていてもよい。
【0033】
押出機によって前記脂肪族ポリケトンを含む原料を溶融するにあたって、シリンダ温度は、例えば、220℃以上300℃未満とすることができ、また、Tダイ温度は、例えば、220℃以上300℃未満とすることができる。シリンダ温度及びTダイ温度が220℃以上であることで、樹脂の未溶融物の発生を抑制することができ、また、300℃未満であることで、樹脂の分解を抑制することができる。
【0034】
押出機によって前記脂肪族ポリケトンを含む原料は、加熱溶融した後、Tダイにより溶融押出する前に、必要に応じてポリマーフィルターを通過させることも好ましい。つまり、未延伸原反シートを製造するにあたっては、押出機と前記Tダイとの間にはポリマーフィルターを設置することが好ましい。前記ポリマーフィルターのろ過精度、つまり、ポリマーフィルターの開き目寸法は特に限定されず、ポリマーフィルターの使用ろ材の種類も特に限定されない。
【0035】
加熱溶融した原料は、Tダイから溶融押出された後、金属ドラムで冷却及び固化する。これにより、未延伸のキャスト原反シートが成形される。この冷却固化の際には、エアーナイフによるエアを樹脂に吹き付けることもできる。金属ドラムでの冷却にあたって、冷却温度(金属ドラム温度)は特に限定されない。例えば、80~140℃に保持された少なくとも1個以上の金属ドラムで冷却、固化させることで、未延伸原反シート(キャスト原反シート)が成形され得る。
【0036】
得られる未延伸原反シートの厚みは、たとえば、0.05mm以上2mm以下であることが好ましく、0.1mm以上1mm以下であることがより好ましい。
【0037】
得られた未延伸原反シートの延伸処理を行うことで、目的の二軸延伸フィルムを製造することができる。未延伸原反シートの延伸処理の方法は特に限定されず、例えば、公知の延伸方法を広く採用することができる。延伸方法としては、縦及び横に二軸に配向せしめる二軸延伸を採用でき、中でも逐次二軸延伸方法が好ましい。
【0038】
逐次二軸延伸方法の一例は次の通りである。まず、未延伸原反シートを所定の温度に保ち、速度差を設けたロール間に通して流れ方向(MD方向)に所定倍数で延伸し、引き続き、所定の温度で幅方向(TD方向)に所定倍数で延伸する。
【0039】
その後、適宜のアニール処理をすることがで、二軸延伸フィルムが得られる。二軸延伸フィルムの引張弾性率及び衝撃強度が向上しやすいという点で、アニール処理は行わないことが好ましい。
【0040】
流れ方向(MD方向)へ延伸するにあたっての温度は、例えば、180℃以上、220℃未満であり、また、幅方向(TD方向)へ延伸するにあたっての温度は、例えば、180℃以上、220℃未満である。両方向への延伸温度が180℃以上であるより良好な成型性を得ることができ、また、20℃未満であることで、溶融張力が低下しにくく、成型性の悪化を抑制することができる。
【0041】
流れ方向(MD方向)へ延伸するにあたっての延伸倍率は、例えば、3倍以上、好ましくは3.5倍以上、より好ましくは4倍以上である。また、幅方向(TD方向)へ延伸するにあたっての延伸倍率は、例えば、3倍以上、好ましくは3.5倍以上、より好ましくは4倍以上である。これにより、前述の表面粗さ(Rpk)を前述の範囲に調整されやすい。
【0042】
延伸倍率(MD方向の延伸倍率×TD方向の延伸倍率)は、10倍以上である。これにより、得られる二軸延伸フィルムは、前述の引張弾性率を満たすことができ、かつ、優れた衝撃強度を有することもできる。延伸倍率が10倍未満であると、得られる二軸延伸フィルムは、前述の引張弾性率を満たすことができず、結果として衝撃強度に劣るものとなる。延伸倍率(MD方向の延伸倍率×TD方向の延伸倍率)は、12倍以上であることが好ましく、14倍以上であることがより好ましく、18倍以上であることがさらに好ましく、20倍以上であることが特に好ましい。
【0043】
一般に、二軸延伸フィルムにおいて、延伸倍率と、引張弾性率及び衝撃強度との間に関連性があることは知られていない。しかしながら、驚くべきことに本発明者らは、脂肪族ポリケトンを主成分として含有する二軸延伸フィルムにあっては、延伸倍率が引張弾性率及び衝撃強度の両方に及ぼす影響が大きいことを見出している。この結果、従来困難であった、高い引張弾性率及び優れた衝撃強度を有する、本発明の二軸延伸フィルムの完成に至ったものである。
【0044】
本発明の二軸延伸フィルムは、脂肪族ポリケトンを主成分として含有するフィルムであって、通常は単層構造を有する。本発明の二軸延伸フィルムは、他のフィルムと積層させて積層体を形成することもできる。他のフィルムとしては、例えば、公知の樹脂フィルムを広く採用することができる。積層方法も特に限定されず、公知の積層手段を広く採用することができる。
【0045】
本発明の二軸延伸フィルムは、各種用途に使用することができ、例えば、包装材料用のフィルムとして好適に使用することができ、その他、ボイルレトルト、光学用途、太陽電池用バックシート等の各種用途に本発明の二軸延伸フィルムを使用することができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
脂肪族ポリケトン(POKと略記する)として、Hyosung製POK樹脂「M701F」(MFR:4.0g/10min、230℃、2.16Kg)を押出機(東洋精機製ラボプラストミルμ 単軸押出器D1220B (スクリュー径15mm、L/D=20))に投入し、シリンダ温度230℃、Tダイス温度260℃、スクリュー回転数60rpmで押し出した後、テーブルキャスト引取機(東洋精機製)にてキャストロール温度90℃、ライン速度0.2m/minで連続した未延伸原反シートを作製した。得られた未延伸原反シートの厚みは500μm、幅は90mmであった。次にテーブルテンター(Bruckner製 KARO IV)を用い、当該未延伸原反シートを200℃に加熱し、MD方向に4倍延伸した後、設定温度200℃でTD方向に6倍延伸し、次いで、設定温度200℃で30秒間アニール処理し、延伸倍率24倍の二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの厚さは15μmであった。
【0048】
(実施例2)
アニール処理をしなかったこと以外は実施例1と同様の手順で二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの延伸倍率は24倍、厚さは15μmであった。
【0049】
(実施例3)
TD方向への延伸倍率を5倍に変更したこと以外は実施例2と同様の手順で二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの延伸倍率は20倍、厚さは18μmであった。
【0050】
(実施例4)
TD方向への延伸倍率を4倍に変更したこと以外は実施例2と同様の手順で二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの延伸倍率は16倍、厚さは22μmであった。
【0051】
(実施例5)
MD方向への延伸倍率を3倍に、TD方向への延伸倍率を6倍に変更したこと以外は実施例2と同様の手順で二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの延伸倍率は18倍、厚さは19μmであった。
【0052】
(実施例6)
MD方向への延伸倍率を3倍に、TD方向への延伸倍率を5倍に変更したこと以外は実施例2と同様の手順で二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの延伸倍率は15倍、厚さは23μmであった。
【0053】
(実施例7)
POK樹脂をHyosung製POK樹脂「M630F」(MFR:2.0g/10min、230℃、2.16Kg)に変更したこと以外は実施例2と同様の手順で二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの延伸倍率は24倍、厚さは26μmであった。
【0054】
(実施例8)
POK樹脂をHyosung製POK樹脂「M630F」(MFR:2.0g/10min、230℃、2.16Kg)及びHyosung製POK樹脂「M701F」(MFR:4.0g/10min230℃、2.16Kg)の質量比1:1の混合物に変更したこと以外は実施例2と同様の手順で二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの延伸倍率は24倍、厚さは23μmであった。
【0055】
(比較例1)
MD方向への延伸倍率を2.5倍に、TD方向への延伸倍率を2.5倍に変更したこと以外は実施例2と同様の手順で二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの延伸倍率は6.3倍、厚さは15μmであった。
【0056】
(比較例2)
MD方向への延伸倍率を3倍に、TD方向への延伸倍率を3倍に変更したこと以外は実施例2と同様の手順で二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの延伸倍率は9倍、厚さは15μmであった。
【0057】
[引張弾性率]
各実施例及び比較例で得られた二軸延伸フィルムを、MD方向およびTD方向に、長手150mm、幅15mmに切り出し引張試験サンプルを作製した。なお、比較例3は、未延伸原反シートこのサンプルを長手150mm、幅15mmに切り出し引張試験サンプルを作製した。サンプルをテンシロン万能試験機(オリエンテック社製)にセットし、300mm/minのスピードでサンプルが破断するまで引張り、このときの破断点応力(引張強度)及び破断伸び(引張伸度)を計測すると共に、SSカーブの立ち上がり傾きとサンプルの断面積(幅×厚み)より、MD方向及びTD方向の引張弾性率を求めた。
【0058】
[衝撃強度(1/4金属球)]
安田精機製フィルムインパクトテスターを使用し、ASTM-D3420に基づき衝撃強度を測定した。当該測定には、15Kgf・cmの錘を使用し、先端球として1/4インチ金属球を使用した。衝撃強度測定は1サンプルあたり3回の測定を行い、その平均値を衝撃強度とした
【0059】
[表面粗さ]
実施例及び比較例の二軸延伸フィルムの表面粗さ(突出山部高さRpk)を光干渉式非接触表面形状測定機により測定した。光干渉式非接触表面形状測定機として、日立ハイテク社製の「VertScan2.0(型式:R5500GML)」を使用した。測定用サンプルとして、フィルムを20cm四方程度の任意の大きさに切り出し、シワを十分に伸ばした状態で、静電密着板などを利用して測定ステージにセットした。WAVEモードを用い、530whiteフィルタ及び1×BODYの鏡筒を適用し、10倍対物レンズを用いて、一視野あたり(470.92μm×353.16μm)の計測を行った。この操作を測定用サンプルのチルロール側の表面の流れ方向・幅方向ともに中央となる箇所から流れ方向に1cm間隔で5箇所について行った。得られたデータに対して、メディアンフィルタ(3×3)によるノイズ除去処理を行ない、その後、カットオフ値30μmによるガウシアンフィルタ処理を行い、うねり成分を除去した。これにより、表面の状態を適切に計測できる状態とした。次に、「VertScan2.0」の解析ソフトウェアを用いて解析を行い、Rpk(μm)を求め、上記10箇所で得られた各値の平均値を算出した。
【0060】
[ヘーズ]
日本電色社製のヘーズメーターNDH-5000により、ヘーズを計測した。
【0061】
表1には、各実施例及び比較例で得られた二軸延伸フィルムの製造条件及び物性の評価結果を示している。
【0062】
表1から、実施例で得られた二軸延伸フィルムはいずれも、TD方向の引張弾性率が0.5GPa以上であり、MD方向の引張弾性率が0.3GPa以上であり、優れた引張弾性率を有していると共に優れた衝撃強度も有していた。比較例1および2では、延伸倍率が十分でないため、引張弾性率が低く、しかも、衝撃強度も劣るものであった。
【0063】