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特許7585967電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
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  • 特許-電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/05 20060101AFI20241112BHJP
   G03G 5/06 20060101ALI20241112BHJP
   G03G 5/04 20060101ALI20241112BHJP
   C08K 5/18 20060101ALI20241112BHJP
   C08L 67/03 20060101ALI20241112BHJP
   C08G 63/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G03G5/05 101
G03G5/06 312
G03G5/06 313
G03G5/06 314A
G03G5/06 315Z
G03G5/06 316A
G03G5/06 319
G03G5/04
C08K5/18
C08L67/03
C08G63/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021088354
(22)【出願日】2021-05-26
(65)【公開番号】P2022181419
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2024-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】清水 智文
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 真
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-78871(JP,A)
【文献】特開2020-184041(JP,A)
【文献】特開2020-201342(JP,A)
【文献】国際公開第2013/128575(WO,A1)
【文献】特開2010-237540(JP,A)
【文献】特開平9-124781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/05
G03G 5/06
G03G 5/04
C08K 5/18
C08L 67/03
C08G 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、感光層とを備え、
前記感光層は、単層であり、
前記感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂とを含有し、
前記バインダー樹脂は、ポリアリレート樹脂を含み、
前記ポリアリレート樹脂は、式(1)、(2)、(3)、及び(4)で表される繰り返し単位を有し、前記式(1)及び(3)で表される繰り返し単位の総数に対する、前記式(3)で表される繰り返し単位の含有率は、0%より大きく20%未満であり、
前記正孔輸送剤は、1個の窒素原子を有する、電子写真感光体。
【化1】
(前記式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表し、Xは、式(X1)又は(X2)で表される二価の基を表し、
前記式(2)中、Wは、式(W1)又は(W2)で表される二価の基を表す。)
【化2】
(前記式(X1)中、tは、1以上3以下の整数を表し、*は、結合手を表し、
前記式(X2)中、R3及びR4は、水素原子、又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、R3及びR4は、互いに異なる基を表し、*は、結合手を表す。)
【化3】
(前記式(W1)及び(W2)中、*は、結合手を表す。)
【請求項2】
前記正孔輸送剤は、式(21)、(22)、又は(23)で表される化合物である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【化4】
【化5】
(前記式(21)中、R21、R22、及びR23は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、R24、R25、及びR26は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、b1、b2、及びb3は、各々独立に、0又は1を表し、
前記式(22)中、R31、R32、及びR33は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、R34は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は水素原子を表し、d1、d2、及びd3は、各々独立に、0以上5以下の整数を表し、
前記式(23)中、R50及びR51は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表し、R52、R53、R54、R55、R56、R57、及びR58は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基で置換されてもよいフェニル基を表し、f1及びf2は、各々独立に、0以上2以下の整数を表し、f3及びf4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。)
【請求項3】
前記正孔輸送剤は、式(H-1)、(H-2)、(H-3)、(H-4)、(H-5)、(H-6)、又は(H-7)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【化6】
【化7】
【化8】
【請求項4】
前記式(1)中、R1及びR2は、メチル基を表し、Xは、前記式(X1)で表される二価の基を表す、請求項1~3の何れか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記式(1)で表される繰り返し単位は、式(1-1)で表される繰り返し単位である、請求項1~4の何れか一項に記載の電子写真感光体。
【化9】
【請求項6】
前記式(1)で表される繰り返し単位は、式(1-1)で表される繰り返し単位であり、前記式(2)で表される繰り返し単位は、式(2-1)で表される繰り返し単位である、請求項1~5の何れか一項に記載の電子写真感光体。
【化10】
【請求項7】
前記式(1)で表される繰り返し単位は、式(1-1)で表される繰り返し単位であり、前記式(2)で表される繰り返し単位は、式(2-2)で表される繰り返し単位である、請求項1~5の何れか一項に記載の電子写真感光体。
【化11】
【請求項8】
前記式(1)中、R1及びR2は、水素原子を表し、Xは、前記式(X2)で表される二価の基を表す、請求項1~3の何れか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項9】
前記式(1)で表される繰り返し単位は、式(1-2)で表される繰り返し単位である、請求項1、2、3、又は8に記載の電子写真感光体。
【化12】
【請求項10】
前記式(1)で表される繰り返し単位は、式(1-2)で表される繰り返し単位であり、前記式(2)で表される繰り返し単位は、式(2-1)で表される繰り返し単位である、請求項1、2、3、8、又は9に記載の電子写真感光体。
【化13】
【請求項11】
前記電子輸送剤は、式(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)、又は(17)で表される化合物を含む、請求項1~10の何れか一項に記載の電子写真感光体。
【化14】
(前記式(11)中のQ1及びQ2、前記式(12)中のQ21、Q22、Q23、及びQ24、前記式(13)中のQ31及びQ32、前記式(14)中のQ41、Q42、及びQ43、前記式(15)中のQ51、Q52、Q53、及びQ54、前記式(16)中のQ61及びQ62、並びに前記式(17)中のQ71、Q72、Q73、Q74、Q75、及びQ76は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数2以上6以下のアルケニル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されてもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表し、
前記式(17)中のY1及びY2は、各々独立に、酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【請求項12】
前記電子輸送剤は、式(E-1)、(E-2)、(E-3)、(E-4)、(E-5)、(E-6)、(E-7)、又は(E-8)で表される化合物である、請求項1~11の何れか一項に記載の電子写真感光体。
【化15】
【請求項13】
帯電装置、露光装置、現像装置、転写装置、クリーニング装置、及び除電装置からなる群から選択される少なくとも1つと、
請求項1~12の何れか一項に記載の電子写真感光体とを備える、プロセスカートリッジ。
【請求項14】
像担持体と、
前記像担持体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像担持体の前記表面を露光して、前記像担持体の前記表面に静電潜像を形成する露光装置と、
前記像担持体の前記表面にトナーを供給して、前記静電潜像をトナー像として現像する現像装置と、
前記像担持体から被転写体へ前記トナー像を転写する転写装置とを備え、
前記像担持体が、請求項1~12の何れか一項に記載の電子写真感光体である、画像形成装置。
【請求項15】
前記像担持体の前記表面に付着している前記トナーを回収するクリーニング装置、及び前記像担持体の前記表面を除電する除電装置の一方又は両方を更に備える、請求項14に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記帯電装置は、帯電ローラーである、請求項14又は15に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記現像装置は、キャリアとの摩擦により帯電した前記トナーを、前記像担持体の前記表面に供給する、請求項14~16の何れか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体は、像担持体として電子写真方式の画像形成装置(例えば、プリンター又は複合機)において用いられる。電子写真感光体は、感光層を備える。電子写真感光体としては、例えば、単層型電子写真感光体及び積層型電子写真感光体が用いられる。単層型電子写真感光体は、電荷発生の機能と、電荷輸送の機能とを有する単層の感光層を備える。積層型電子写真感光体は、電荷発生の機能を有する電荷発生層と、電荷輸送の機能を有する電荷輸送層とを含む感光層を備える。
【0003】
特許文献1には、その表面層が下記式で示される二価カルボン酸成分と二価フェノール成分とから得られるポリアリレート樹脂を含有する電子写真感光体が記載されている。
【0004】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-20514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の電子写真感光体は、耐摩耗性の点で不十分である。また、特許文献1に記載の電子写真感光体は、転写メモリーの抑制の点、耐フィルミング性の点、及び耐傷性の点で不十分であることが、本発明者らの検討により判明した。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、感光層を良好に形成でき、転写メモリーを抑制でき、耐摩耗性、耐フィルミング性、及び耐傷性に優れる電子写真感光体を提供することである。また、本発明の別の目的は、感光層を良好に形成でき、転写メモリーを抑制でき、耐摩耗性、耐フィルミング性、及び耐傷性に優れる電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子写真感光体は、導電性基体と、感光層とを備える。前記感光層は、単層である。前記感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂とを含有する。前記バインダー樹脂は、ポリアリレート樹脂を含む。前記ポリアリレート樹脂は、式(1)、(2)、(3)、及び(4)で表される繰り返し単位を有する。前記式(1)及び(3)で表される繰り返し単位の総数に対する、前記式(3)で表される繰り返し単位の含有率は、0%より大きく20%未満である。前記正孔輸送剤は、1個の窒素原子を有する。
【0009】
【化2】
【0010】
前記式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表し、Xは、式(X1)又は(X2)で表される二価の基を表す。前記式(2)中、Wは、式(W1)又は(W2)で表される二価の基を表す。
【0011】
【化3】
【0012】
前記式(X1)中、tは、1以上3以下の整数を表し、*は、結合手を表す。前記式(X2)中、R3及びR4は、水素原子、又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、R3及びR4は、互いに異なる基を表し、*は、結合手を表す。
【0013】
【化4】
【0014】
前記式(W1)及び(W2)中、*は、結合手を表す。
【0015】
本発明のプロセスカートリッジは、帯電装置、露光装置、現像装置、転写装置、クリーニング装置、及び除電装置からなる群から選択される少なくとも1つと、上記電子写真感光体とを備える。
【0016】
本発明の画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体の表面を帯電する帯電装置と、帯電した前記像担持体の前記表面を露光して、前記像担持体の前記表面に静電潜像を形成する露光装置と、前記像担持体の前記表面にトナーを供給して、前記静電潜像をトナー像として現像する現像装置と、前記像担持体から被転写体へ前記トナー像を転写する転写装置とを備える。前記像担持体が、上記電子写真感光体である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電子写真感光体は、感光層を良好に形成でき、転写メモリーを抑制でき、耐摩耗性、耐フィルミング性、及び耐傷性に優れる。また、本発明のプロセスカートリッジ及び画像形成装置は、感光層を良好に形成でき、転写メモリーを抑制でき、耐摩耗性、耐フィルミング性、及び耐傷性に優れる電子写真感光体を備える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係る電子写真感光体の部分断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る電子写真感光体の部分断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る電子写真感光体の部分断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す図である。
図5図4に示す現像装置の構成の一例を示す図である。
図6】ポリアリレート樹脂Hの1H-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されず、本発明の目的の範囲内で適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰り返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、「一般式」及び「化学式」を包括的に、「式」と記載する。式の説明における「各々独立に」は、同一の基を表してもよく異なる基を表してもよいことを意味する。本明細書に記載の各成分は、特記なき限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
まず、本明細書で用いられる置換基について説明する。ハロゲン原子(ハロゲン基)としては、例えば、フッ素原子(フルオロ基)、塩素原子(クロロ基)、臭素原子(ブロモ基)、及びヨウ素原子(ヨード基)が挙げられる。
【0021】
炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、及び炭素原子数3のアルキル基は、各々、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、2-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、及び3-エチルブチル基が挙げられる。炭素原子数1以上5以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、及び炭素原子数3のアルキル基の例は、各々、炭素原子数1以上6以下のアルキル基の例として述べた基のうち、該当する炭素原子数を有する基である。
【0022】
炭素原子数1以上10以下のパーフルオロアルキル基、炭素原子数3以上10以下のパーフルオロアルキル基、炭素原子数5以上7以下のパーフルオロアルキル基、及び炭素原子数6のパーフルオロアルキル基は、各々、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上10以下のパーフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロ-n-プロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロ-n-ブチル基、パーフルオロ-sec-ブチル基、パーフルオロ-tert-ブチル基、パーフルオロ-n-ペンチル基、パーフルオロ-1-メチルブチル基、パーフルオロ-2-メチルブチル基、パーフルオロ-3-メチルブチル基、パーフルオロ-1-エチルプロピル基、パーフルオロ-2-エチルプロピル基、パーフルオロ-1,1-ジメチルプロピル基、パーフルオロ-1,2-ジメチルプロピル基、パーフルオロ-2,2-ジメチルプロピル基、パーフルオロ-n-ヘキシル基、パーフルオロ-1-メチルペンチル基、パーフルオロ-2-メチルペンチル基、パーフルオロ-3-メチルペンチル基、パーフルオロ-4-メチルペンチル基、パーフルオロ-1,1-ジメチルブチル基、パーフルオロ-1,2-ジメチルブチル基、パーフルオロ-1,3-ジメチルブチル基、パーフルオロ-2,2-ジメチルブチル基、パーフルオロ-2,3-ジメチルブチル基、パーフルオロ-3,3-ジメチルブチル基、パーフルオロ-1,1,2-トリメチルプロピル基、パーフルオロ-1,2,2-トリメチルプロピル基、パーフルオロ-1-エチルブチル基、パーフルオロ-2-エチルブチル基、及びパーフルオロ-3-エチルブチル基、直鎖状及び分枝鎖状のパーフルオロヘプチル基、直鎖状及び分枝鎖状のパーフルオロオクチル基、直鎖状及び分枝鎖状のパーフルオロノニル基、並びに直鎖状及び分枝鎖状のパーフルオロデシル基が挙げられる。炭素原子数3以上10以下のパーフルオロアルキル基、炭素原子数5以上7以下のパーフルオロアルキル基、及び炭素原子数6のパーフルオロアルキル基の例は、炭素原子数1以上10以下のパーフルオロアルキル基の例として述べた基のうち、該当する炭素原子数を有する基である。
【0023】
炭素原子数1以上6以下のアルカンジイル基、及び炭素原子数1以上3以下のアルカンジイル基は、各々、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルカンジイル基としては、例えば、メタンジイル基(メチレン基)、エタンジイル基、n-プロパンジイル基、イソプロパンジイル基、n-ブタンジイル基、sec-ブタンジイル基、tert-ブタンジイル基、n-ペンタンジイル基、1-メチルブタンジイル基、2-メチルブタンジイル基、3-メチルブタンジイル基、1-エチルプロパンジイル基、2-エチルプロパンジイル基、1,1-ジメチルプロパンジイル基、1,2-ジメチルプロパンジイル基、2,2-ジメチルプロパンジイル基、n-ヘキサンジイル基、1-メチルペンタンジイル基、2-メチルペンタンジイル基、3-メチルペンタンジイル基、4-メチルペンタンジイル基、1,1-ジメチルブタンジイル基、1,2-ジメチルブタンジイル基、1,3-ジメチルブタンジイル基、2,2-ジメチルブタンジイル基、2,3-ジメチルブタンジイル基、3,3-ジメチルブタンジイル基、1,1,2-トリメチルプロパンジイル基、1,2,2-トリメチルプロパンジイル基、1-エチルブタンジイル基、2-エチルブタンジイル基、及び3-エチルブタンジイル基が挙げられる。炭素原子数1以上3以下のアルカンジイル基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルカンジイル基の例として述べた基のうち、該当する炭素原子数を有する基である。
【0024】
炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基及び炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基は、各々、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基、1-メチルブトキシ基、2-メチルブトキシ基、3-メチルブトキシ基、1-エチルプロポキシ基、2-エチルプロポキシ基、1,1-ジメチルプロポキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、2,2-ジメチルプロポキシ基、n-ヘキシルオキシ基、1-メチルペンチルオキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、3-メチルペンチルオキシ基、4-メチルペンチルオキシ基、1,1-ジメチルブトキシ基、1,2-ジメチルブトキシ基、1,3-ジメチルブトキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、3,3-ジメチルブトキシ基、1,1,2-トリメチルプロポキシ基、1,2,2-トリメチルプロポキシ基、1-エチルブトキシ基、2-エチルブトキシ基、及び3-エチルブトキシ基が挙げられる。炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上3以下である基である。
【0025】
炭素原子数2以上6以下のアルケニル基は、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数2以上6以下のアルケニル基は、1つ以上3つ以下の二重結合を有する。炭素原子数2以上6以下のアルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロぺニル基、ブテニル基、ブタジエニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基、及びヘキサトリニル基が挙げられる。
【0026】
炭素原子数6以上14以下のアリール基及び炭素原子数6以上10以下のアリール基は、各々、特記なき限り、非置換である。炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、インダセニル基、ビフェニレニル基、アセナフチレニル基、アントリル基、及びフェナントリル基が挙げられる。炭素原子数6以上10以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、及びナフチル基が挙げられる。以上、本明細書で用いられる置換基について説明した。
【0027】
<第1実施形態:電子写真感光体>
第1実施形態は、電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある)に関する。以下、図1図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る電子写真感光体の構造について説明する。図1図3は、各々、感光体1の部分断面図を示す。
【0028】
図1に示すように、感光体1は、例えば、導電性基体2と、感光層3とを備える。感光層3は、単層である。感光体1は、単層の感光層3を備える単層型電子写真感光体である。
【0029】
図2に示すように、感光体1は、導電性基体2及び感光層3に加えて、中間層4(下引き層)を更に備えてもよい。中間層4は、導電性基体2と感光層3との間に設けられる。図1に示すように、感光層3は導電性基体2上に直接備えられてもよい。或いは、図2に示すように、感光層3は導電性基体2上に中間層4を介して備えられてもよい。
【0030】
図3に示すように、感光体1は、導電性基体2及び感光層3に加えて、保護層5を更に備えてもよい。保護層5は、感光層3上に設けられる。図3に示すように、保護層5が、感光体1の最表面層として備えられてもよい。しかし、図1及び図2に示すように、感光層3が、感光体1の最表面層として備えられることが好ましい。後述するポリアリレート樹脂(PA)を含有する感光層3が最表面層として備えられることで、感光体1の耐摩耗性、耐フィルミング性、及び耐傷性が向上する。
【0031】
感光層3の厚さは、特に限定されないが、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。以上、図1図3を参照して、感光体1の構造について説明した。
【0032】
以下、感光体について、更に説明する。感光体が備える感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂とを含有する。感光層は、樹脂粒子を更に含有することが好ましい。感光層は、必要に応じて、添加剤を更に含有してもよい。
【0033】
(電荷発生剤)
電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナアゾ化合物、金属ナアゾ化合物、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン-テルル、セレン-ヒ素、硫化カドミウム、及びアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、及びキナクリドン系顔料が挙げられる。感光層は、1種の電荷発生剤のみを含有してもよく、2種以上の電荷発生剤を含有してもよい。
【0034】
フタロシアニン顔料は、フタロシアニン構造を有する顔料である。フタロシアニン顔料としては、例えば、金属フタロシアニン、及び無金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、及びクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、チタニルフタロシアニンが好ましい。チタニルフタロシアニンは、式(CG-1)で表される。無金属フタロシアニンは、式(CG-2)で表される。
【0035】
【化5】
【0036】
フタロシアニン顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型、及びY型結晶(以下、それぞれをα型、β型、及びY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。
【0037】
例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、電荷発生剤としては、フタロシアニン顔料が好ましく、無金属フタロシアニン又はチタニルフタロシアニンがより好ましく、チタニルフタロシアニンが更に好ましく、Y型チタニルフタロシアニンが特に好ましい。
【0038】
Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、例えば、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有する。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、26.2℃にピークを有していない。
【0039】
CuKα特性X線回折スペクトルは、例えば、次の方法によって測定できる。まず、試料(チタニルフタロシアニン)をX線回折装置(例えば、株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、例えば3°以上40°以下(スタート角3°、ストップ角40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。得られたX線回折スペクトルから主ピークを決定し、主ピークのブラッグ角を読み取る。
【0040】
電荷発生剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
【0041】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、ポリアリレート樹脂を含む。このポリアリレート樹脂は、式(1)、(2)、(3)、及び(4)で表される繰り返し単位を有する。式(1)及び(3)で表される繰り返し単位の総数に対する、式(3)で表される繰り返し単位の含有率は、0%より大きく20%未満である。
【0042】
【化6】
【0043】
式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表し、Xは、式(X1)又は(X2)で表される二価の基を表す。式(2)中、Wは、式(W1)又は(W2)で表される二価の基を表す。
【0044】
【化7】
【0045】
式(X1)中、tは、1以上3以下の整数を表し、*は、結合手を表す。式(X2)中、R3及びR4は、水素原子、又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、R3及びR4は、互いに異なる基を表し、*は、結合手を表す。
【0046】
【化8】
【0047】
式(W1)及び(W2)中、*は、結合手を表す。
【0048】
以下、式(1)、(2)、(3)、及び(4)で表される繰り返し単位を、各々、「繰り返し単位(1)、(2)、(3)、及び(4)」と記載することがある。また、繰り返し単位(1)及び(3)の総数に対する繰り返し単位(3)の含有率を、「含有率(3)」と記載することがある。また、繰り返し単位(1)、(2)、(3)、及び(4)を有し、含有率(3)が0%より大きく20%未満であるポリアリレート樹脂を、「ポリアリレート樹脂(PA)」と記載することがある。
【0049】
ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位(1)、(2)、(3)、及び(4)を必須に有する。このような繰り返し単位を有することから、ポリアリレート樹脂(PA)は、溶剤への溶解性に優れ、感光層に含有された場合に、感光体の耐摩耗性を向上できる。また、ポリアリレート樹脂(PA)が繰り返し単位(3)及び(4)の両方を有することで、ポリアリレート樹脂(PA)は、感光層に含有された場合に、感光層の耐傷性を向上できる。その結果、感光層に傷が発生し難くなり、傷にトナーが入り込むことで発生するフィルミングも抑制できる。
【0050】
含有率(3)は、ポリアリレート樹脂(PA)が有する繰り返し単位(1)の数N1及び繰り返し単位(3)の数N3の合計に対する、繰り返し単位(3)の数N3の百分率(即ち、100×N3/(N1+N3))である。含有率(3)が20%未満であることで、ポリアリレート樹脂(PA)の溶剤への溶解性が向上する。含有率(3)が0%より大きい、即ち含有率(3)が0%ではないことで、ポリアリレート樹脂(PA)を感光層に含有させた場合に感光体の耐摩耗性が向上する。含有率(3)は、1%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましい。また、含有率(3)は、19%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0051】
繰り返し単位(2)及び(4)の総数に対する繰り返し単位(4)の含有率は、0%より大きく100%未満である。繰り返し単位(2)及び(4)の総数に対する繰り返し単位(4)の含有率を、「含有率(4)」と記載することがある。含有率(4)は、ポリアリレート樹脂(PA)が有する繰り返し単位(2)の数N2及び繰り返し単位(4)の数N4の合計に対する、繰り返し単位(4)の数N4の百分率(即ち、100×N4/(N2+N4))である。含有率(4)は0%より大きい、即ち含有率(4)は0%ではないので、ポリアリレート樹脂(PA)は繰り返し単位(4)を有する。繰り返し単位(4)を有することで、ポリアリレート樹脂(PA)の溶剤への溶解性が向上し、ポリアリレート樹脂(PA)を感光層に含有させた場合に、感光体の耐摩耗性が向上する。一方、含有率(4)は100%未満である、即ち含有率(4)は100%ではないので、ポリアリレート樹脂(PA)は繰り返し単位(2)を有する。繰り返し単位(2)を有することで、ポリアリレート樹脂(PA)を感光層に含有させた場合に、感光体の耐摩耗性が向上する。含有率(4)は、1%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、35%以上であることが更に好ましい。また、含有率(4)は、99%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、65%以下であることが更に好ましい。
【0052】
含有率(3)及び(4)は、各々、プロトン核磁気共鳴分光計を用いてポリアリレート樹脂(PA)の1H-NMRスペクトルを測定し、得られた1H-NMRスペクトルにおける各繰り返し単位に特徴的なピークの比率から算出できる。
【0053】
式(1)中、R1及びR2は、メチル基を表すことが好ましい。
【0054】
式(X1)中、tは、2を表すことが好ましい。
【0055】
式(X2)中、R3が水素原子を表し且つR4がメチル基、エチル基、又は炭素原子数3のアルキル基を表すこと、R3がメチル基を表し且つR4がエチル基又は炭素原子数3のアルキル基を表すこと、又はR3がエチル基を表し且つR4が炭素原子数3のアルキル基を表すことが好ましい。R3がメチル基を表し且つR4がエチル基を表すことがより好ましい。
【0056】
式(X1)及び(X2)中の*が表す結合手は、式(1)中のXが結合している炭素原子に結合している。式(W1)及び(W2)中の*が表す結合手は、式(2)中のWが結合している炭素原子に結合している。
【0057】
繰り返し単位(1)としては、例えば、式(1-1)、(1-2)、及び(1-3)で表される繰り返し単位(以下、それぞれを、繰り返し単位(1-1)、(1-2)、及び(1-3)と記載することがある)が挙げられる。
【0058】
【化9】
【0059】
繰り返し単位(2)は、式(2-1)又は(2-2)で表される繰り返し単位(以下、それぞれを、繰り返し単位(2-1)及び(2-2)と記載することがある)である。
【0060】
【化10】
【0061】
一態様において、式(1)中、R1及びR2は、メチル基を表し、Xは、式(X1)で表される二価の基を表すことが好ましい。繰り返し単位(1)が繰り返し単位(1-1)であることがより好ましい。繰り返し単位(1)が繰り返し単位(1-1)であり且つ繰り返し単位(2)が繰り返し単位(2-1)であること;又は繰り返し単位(1)が繰り返し単位(1-1)であり且つ繰り返し単位(2)が繰り返し単位(2-2)であることが更に好ましい。
【0062】
別の態様において、式(1)中、R1及びR2は、水素原子を表し、Xは、式(X2)で表される二価の基を表すことが好ましい。繰り返し単位(1)が繰り返し単位(1-2)であることがより好ましい。繰り返し単位(1)が繰り返し単位(1-2)であり且つ繰り返し単位(2)が繰り返し単位(2-1)であること;又は繰り返し単位(1)が繰り返し単位(1-2)であり且つ繰り返し単位(2)が繰り返し単位(2-2)であることが更に好ましい。別の態様で述べたポリアリレート樹脂(PA)が感光層に含有されることで、感光体の耐摩耗性が更に向上する。
【0063】
ポリアリレート樹脂(PA)は、末端基を有していてもよい。ポリアリレート樹脂(PA)が有する末端基としては、例えば、式(T-1)及び(T-2)で表される末端基が挙げられる。式(T-1)で表される末端基としては、式(T-DMP)で表される末端基(以下、末端基(T-DMP)と記載することがある)が好ましい。式(T-2)で表される末端基としては、式(T-PFH)で表される末端基(以下、末端基(T-PFH)と記載することがある)が好ましい。
【0064】
【化11】
【0065】
式(T-1)中、R11は炭素原子数1以上6以下のアルキル基又はハロゲン原子を表し、pは0以上5以下の整数を表す。R11は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基を表すことが更に好ましい。pは、1以上3以下の整数を表すことが好ましく、2を表すことがより好ましい。
【0066】
式(T-2)中、R12は炭素原子数1以上6以下のアルカンジイル基を表し、Rfは、炭素原子数1以上10以下のパーフルオロアルキル基を表す。R12は炭素原子数1以上3以下のアルカンジイル基を表すことが好ましく、メチレン基を表すことがより好ましい。Rfは、炭素原子数3以上10以下のパーフルオロアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数5以上7以下のパーフルオロアルキル基を表すことがより好ましく、炭素原子数6のパーフルオロアルキル基を表すことが更に好ましい。
【0067】
式(T-1)、(T-2)、(T-DMP)、及び(T-PFH)中の*は、結合手を示す。式(T-1)、(T-2)、(T-DMP)、及び(T-PFH)中の*が示す結合手は、ポリアリレート樹脂(PA)の末端に位置するジカルボン酸由来の繰り返し単位(より具体的には、繰り返し単位(2)又は(4))に対して結合している。
【0068】
ポリアリレート樹脂(PA)の好適な例としては、表1に示すポリアリレート樹脂(PA-1)~(PA-4)が挙げられる。ポリアリレート樹脂(PA-1)~(PA-4)は、各々、繰り返し単位(1)~(4)として表1に示す繰り返し単位を有する。表1及び後述する表2において、単位(1)~(4)は、各々、繰り返し単位(1)~(4)を示す。
【0069】
【表1】
【0070】
ポリアリレート樹脂(PA)の更に好適な例としては、表2に示すポリアリレート樹脂(PA-a)~(PA-h)が挙げられる。ポリアリレート樹脂(PA-a)~(PA-h)は、各々、繰り返し単位(1)~(4)として表2に示す繰り返し単位と、表2に示す末端基とを有している。
【0071】
【表2】
【0072】
ポリアリレート樹脂(PA)において、ビスフェノール由来の繰り返し単位(より具体的には、繰り返し単位(1)又は(3))と、ジカルボン酸由来の繰り返し単位(より具体的には、繰り返し単位(2)又は(4))とは、隣接して互いに結合している。即ち、繰り返し単位(1)は、繰り返し単位(2)と結合してもよく、繰り返し単位(4)と結合してもよい。また、繰り返し単位(3)は、繰り返し単位(2)と結合してもよく、繰り返し単位(4)と結合してもよい。ビスフェノール由来の繰り返し単位はジカルボン酸由来の繰り返し単位と略同数であり、計算式「ジカルボン酸由来の繰り返し単位の数=ビスフェノール由来の繰り返し単位の数+1」を満たす。ポリアリレート樹脂(PA)は、例えば、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、又はブロック共重合体であってもよい。
【0073】
ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位(1)として、1種の繰り返し単位(1)のみを有してもよく、2種以上(例えば、2種)の繰り返し単位(1)を有してもよい。ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位(2)として、1種の繰り返し単位(2)のみを有してもよく、2種の繰り返し単位(2)を有してもよい。
【0074】
ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(1)~(4)以外の繰り返し単位を更に有していてもよい。しかし、溶剤への溶解性を向上させ、感光層に含有された場合の感光体の耐摩耗性を向上させるために、ポリアリレート樹脂(PA)が有する繰り返し単位の総数における、繰り返し単位(1)~(4)の含有率は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、99%以上であることが更に好ましく、100%であることが特に好ましい。即ち、ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(1)~(4)のみを有することが特に好ましい。
【0075】
溶剤への溶解性を向上させるために、ポリアリレート樹脂(PA)が有するビスフェノール由来の繰り返し単位の総数における、繰り返し単位(3)の含有率は、20%以下であることが好ましく、20%未満であることがより好ましい。
【0076】
ポリアリレート樹脂(PA)の粘度平均分子量は、10,000以上であることが好ましく、30,000以上であることがより好ましく、50,000以上であることが一層好ましく、55,000以上であることが特に好ましい。ポリアリレート樹脂(PA)の粘度平均分子量が10,000以上であると、感光体の感光層に含有された場合に感光体の耐摩耗性が向上する。一方、ポリアリレート樹脂(PA)の粘度平均分子量は、80,000以下であることが好ましく、70,000以下であることがより好ましく、60,000以下であることが一層好ましい。ポリアリレート樹脂(PA)の粘度平均分子量が80,000以下であると、ポリアリレート樹脂(PA)の溶剤に対する溶解性が向上する。ポリアリレート樹脂(PA)の粘度平均分子量は、JIS(日本産業規格)K7252-1:2016に従って測定される。
【0077】
次に、ポリアリレート樹脂(PA)の製造方法について、説明する。ポリアリレート樹脂(PA)の製造方法として、例えば、ビスフェノール由来の繰り返し単位を構成するためのビスフェノールと、ジカルボン酸由来の繰り返し単位を構成するためのジカルボン酸とを縮重合させる方法が挙げられる。縮重合には、公知の合成方法(例えば、溶液重合、溶融重合、又は界面重合)を採用することができる。
【0078】
ビスフェノール由来の繰り返し単位を構成するためのビスフェノールとしては、例えば、式(BP-1)及び(BP-3)で表される化合物(以下、それぞれを、化合物(BP-1)及び(BP-3)と記載することがある)が挙げられる。ジカルボン酸由来の繰り返し単位を構成するためのジカルボン酸としては、例えば、式(DC-2)及び(DC-4)で表される化合物(以下、それぞれを、化合物(DC-2)及び(DC-4)と記載することがある)が挙げられる。式(BP-1)中のR1、R2、及びXは、式(1)中のR1、R2、及びXと同義である。式(DC-2)中のWは、式(2)中のWと同義である。
【0079】
【化12】
【0080】
ポリアリレート樹脂(PA)の製造における、化合物(BP-1)及び(BP-3)の総量(単位:モル)に対する、化合物(BP-3)の量(単位:モル)の百分率が、含有率(3)に相当する。また、化合物(DC-2)及び(DC-4)の総量(単位:モル)に対する、化合物(DC-4)の量(単位:モル)の百分率が、含有率(4)に相当する。
【0081】
ビスフェノールは、芳香族ジアセテートに誘導体化して使用してもよい。ジカルボン酸は、誘導体化して使用してもよい。ジカルボン酸の誘導体の例としては、ジカルボン酸ジクロライド、ジカルボン酸ジメチルエステル、ジカルボン酸ジエチルエステル、及びジカルボン酸無水物が挙げられる。ジカルボン酸ジクロライドは、ジカルボン酸が有する2個の「-C(=O)-OH」基が各々「-C(=O)-Cl」基で置換された化合物である。
【0082】
ビスフェノールとジカルボン酸との縮重合において、末端停止剤が添加されてもよい。末端停止剤としては、例えば、2,6-ジメチルフェノール、及び1H,1H-パーフルオロ-1-ヘプタノールが挙げられる。末端停止剤として2,6-ジメチルフェノールを用いることで、末端基(T-DMP)を形成できる。末端停止剤として1H,1H-パーフルオロ-1-ヘプタノールを用いることで、末端基(T-PFH)を形成できる。
【0083】
ビスフェノールとジカルボン酸との縮重合において、塩基及び触媒の一方又は両方が添加されてもよい。塩基の例としては、水酸化ナトリウムが挙げられる。触媒の例としては、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、アンモニウムクロライド、アンモニウムブロマイド、4級アンモニウム塩、トリエチルアミン、及びトリメチルアミンが挙げられる。
【0084】
感光層は、バインダー樹脂として、1種のポリアリレート樹脂(PA)のみを含有してもよく、2種以上のポリアリレート樹脂(PA)を含有してもよい。また、感光層は、バインダー樹脂として、ポリアリレート樹脂(PA)のみを含有してもよく、ポリアリレート樹脂(PA)以外のバインダー樹脂(以下、その他のバインダー樹脂と記載することがある)を更に含有してもよい。その他のバインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂(より具体的には、ポリアリレート樹脂(PA)以外のポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びポリエーテル樹脂)、熱硬化性樹脂(より具体的には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、及びこれら以外の架橋性熱硬化性樹脂)、及び光硬化性樹脂(より具体的には、エポキシ-アクリル酸系樹脂、及びウレタン-アクリル酸系共重合体)が挙げられる。
【0085】
(電子輸送剤)
電子輸送剤としては、例えば、キノン系化合物、ジイミド系化合物、ヒドラゾン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8-トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸、及びジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。キノン系化合物としては、例えば、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物、及びジニトロアントラキノン系化合物が挙げられる。
【0086】
感光層を良好に形成し、感光体の転写メモリーを抑制し、感光体の耐摩耗性、耐フィルミング性、及び耐傷性を向上させるために、電子輸送剤の好適な例としては、式(11)~(17)で表される化合物(以下、それぞれを、電子輸送剤(11)~(17)と記載することがある)が挙げられる。
【0087】
【化13】
【0088】
式(11)中のQ1及びQ2、式(12)中のQ21、Q22、Q23、及びQ24、式(13)中のQ31及びQ32、式(14)中のQ41、Q42、及びQ43、式(15)中のQ51、Q52、Q53、及びQ54、式(16)中のQ61及びQ62、並びに式(17)中のQ71、Q72、Q73、Q74、Q75、及びQ76は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数2以上6以下のアルケニル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されてもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。式(17)中のY1及びY2は、各々独立に、酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0089】
式(11)中のQ1及びQ2、式(12)中のQ21、Q22、Q23、及びQ24、式(13)中のQ31及びQ32、式(14)中のQ41、Q42、及びQ43、式(15)中のQ51、Q52、Q53、及びQ54、式(16)中のQ61及びQ62、並びに式(17)中のQ71、Q72、Q73、Q74、Q75、及びQ76は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されてもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましい。Y1及びY2は、酸素原子を表すことが好ましい。
【0090】
式(11)中のQ1及びQ2、式(12)中のQ21、Q22、Q23、及びQ24、式(13)中のQ31及びQ32、式(14)中のQ41、Q42、及びQ43、式(15)中のQ51、Q52、Q53、及びQ54、式(16)中のQ61及びQ62、並びに式(17)中のQ71、Q72、Q73、Q74、Q75、及びQ76が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上5以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又はペンチル基が好ましく、メチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、又は1,1-ジメチルプロピル基が特に好ましい。
【0091】
式(11)中のQ1及びQ2、式(12)中のQ21、Q22、Q23、及びQ24、式(13)中のQ31及びQ32、式(14)中のQ41、Q42、及びQ43、式(15)中のQ51、Q52、Q53、及びQ54、式(16)中のQ61及びQ62、並びに式(17)中のQ71、Q72、Q73、Q74、Q75、及びQ76が表す炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、炭素原子数6以上10以下のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されてもよい。置換基である炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。置換基であるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましく、塩素原子が特に好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基が置換基で置換される場合、置換基の数は、1つ以上5つ以下であることが好ましく、1つ又は2つであることがより好ましい。炭素原子数1以上6以下のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換された炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、又はエチルメチルフェニル基が好ましく、4-クロロフェニル基、2,5-ジクロロフェニル基、又は2-エチル-6-メチルフェニル基がより好ましい。
【0092】
電子輸送剤のより好適な例としては、式(E-1)~(E-8)で表される化合物(以下、それぞれを、電子輸送剤(E-1)~(E-8)と記載することがある)が挙げられる。
【0093】
【化14】
【0094】
電子輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、5質量部以上150質量部以下であることが好ましく、10質量部以上100質量部以下であることがより好ましく、30質量部以上70質量部以下であることが更に好ましい。また、感光層は、1種の電子輸送剤のみを含有してもよく、2種以上の電子輸送剤を含有してもよい。
【0095】
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤は、1個の窒素原子を有する。正孔輸送剤は、1個の窒素原子を有する化合物(即ち、モノアミン化合物)である。正孔輸送剤は、その分子中に、窒素原子を1個のみ有しており、2個以上の窒素原子を有していない。感光層が1個の窒素原子を有する正孔輸送剤を含有することで、感光体の転写メモリーが抑制される。感光体の転写メモリーは、樹脂により被覆される部材(例えば、樹脂により被覆される帯電ローラー、及び樹脂により被覆されるクリーニングブレード)を備える画像形成装置に感光体が搭載される場合に、特に発生する傾向がある。これらの部材と感光体との摩擦により、感光層内に正孔が注入され易いからである。1個の窒素原子を有する正孔輸送剤は、2個以上の窒素原子を有する正孔輸送剤と比較して、摩擦により注入される正孔を輸送する能力が高い傾向にある。そのため、感光層が1個の窒素原子を有する正孔輸送剤を含有することで、これらの部材を備える画像形成装置に感光体が搭載された場合であっても、感光体の転写メモリーが好適に抑制される。
【0096】
感光層を良好に形成し、感光体の転写メモリーを抑制し、感光体の耐摩耗性、耐フィルミング性、及び耐傷性を向上させるために、1個の窒素原子を有する正孔輸送剤の好適な例としては、式(21)、(22)、又は(23)で表される化合物(以下、それぞれを正孔輸送剤(21)、(22)、及び(23)と記載することがある)が挙げられる。
【0097】
【化15】
【0098】
【化16】
【0099】
式(21)中、R21、R22、及びR23は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。R24、R25、及びR26は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。b1、b2、及びb3は、各々独立に、0又は1を表す。
【0100】
式(21)中、R21、R22、及びR23は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基を表すことがより好ましい。R21、R22、及びR23は、エテニル基又はブタジエニル基に対して、フェニル基のメタ位に結合することが好ましい。R24、R25、及びR26は、各々、水素原子を表すことが好ましい。b1、b2、及びb3は、何れも0を表すか、何れも1を表すことが好ましい。
【0101】
式(22)中、R31、R32、及びR33は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。R34は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は水素原子を表す。d1、d2、及びd3は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
【0102】
式(22)中、d1が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR31は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。d2が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR32は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。d3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR33は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。
【0103】
式(22)中、R34は、水素原子を表すことが好ましい。d1、d2、及びd3は、各々、0を表すことが好ましい。
【0104】
式(23)中、R50及びR51は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表す。R52、R53、R54、R55、R56、R57、及びR58は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基で置換されてもよいフェニル基を表す。f1及びf2は、各々独立に、0以上2以下の整数を表す。f3及びf4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
【0105】
式(23)中、f3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR50は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。f4が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR51は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。
【0106】
式(23)中、R50及びR51は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。R52及びR53は、各々、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基で置換されてもよいフェニル基を表すことが好ましい。R54~R58は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表すことが好ましい。f1及びf2は、何れも0を表すか、何れも1を表すか、何れも2を表すことが好ましい。f3及びf4は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。
【0107】
50及びR51が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。R52及びR53が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基で置換されてもよいフェニル基としては、フェニル基、又は炭素原子数1以上3以下のアルキル基で置換されたフェニル基が好ましい。炭素原子数1以上3以下のアルキル基で置換されたフェニル基としては、メチルフェニル基が好ましく、4-メチルフェニル基がより好ましい。R54~R58が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、又はn-ブチル基を表すことが好ましい。R54~R58が表わす炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基が好ましく、エトキシ基がより好ましい。
【0108】
正孔輸送剤のより好適な例としては、式(H-1)、(H-2)、(H-3)、(H-4)、(H-5)、(H-6)、又は(H-7)で表される化合物(以下、それぞれを、正孔輸送剤(H-1)、(H-2)、(H-3)、(H-4)、(H-5)、(H-6)、及び(H-7)と記載することがある)が挙げられる。
【0109】
【化17】
【0110】
【化18】
【0111】
【化19】
【0112】
正孔輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、30質量部以上120質量部以下であることがより好ましく、50質量部以上90質量部以下であることが更に好ましい。また、感光層は、1種の正孔輸送剤のみを含有してもよく、2種以上の正孔輸送剤を含有してもよい。
【0113】
感光層は、1個の窒素原子を有する正孔輸送剤に加えて、1個の窒素原子を有する正孔輸送剤以外の正孔輸送剤を更に含有してもよい。1個の窒素原子を有する正孔輸送剤以外の正孔輸送剤としては、例えば、ジアミン誘導体(例えば、N,N,N’,N’-テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体、及びジ(アミノフェニルエテニル)ベンゼン誘導体)、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5-ジ(4-メチルアミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1-フェニル-3-(p-ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、及びトリアゾール系化合物が挙げられる。
【0114】
(添加剤)
添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項消光剤、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、ワックス、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤、及びレベリング剤が挙げられる。
【0115】
(材料の組み合わせ)
感光層を良好に形成し、転写メモリーを抑制し、耐摩耗性、耐フィルミング性、及び耐傷性を向上させるためには、バインダー樹脂がポリアリレート樹脂(PA-1)、(PA-2)、(PA-3)、(PA-4)、(PA-a)、(PA-b)、(PA-c)、(PA-d)、(PA-e)、(PA-f)、(PA-g)、(PA-h)、A、B、C、D、E、F、G、H、I、又はJであり、電子輸送剤が電子輸送剤(E-1)、(E-2)、(E-3)、(E-4)、(E-5)、(E-6)、(E-7)、又は(E-8)であることが好ましい。同じ理由から、バインダー樹脂がポリアリレート樹脂(PA-1)、(PA-2)、(PA-3)、(PA-4)、(PA-a)、(PA-b)、(PA-c)、(PA-d)、(PA-e)、(PA-f)、(PA-g)、(PA-h)、A、B、C、D、E、F、G、H、I、又はJであり、電子輸送剤が電子輸送剤(E-1)、(E-2)、(E-3)、(E-4)、(E-5)、(E-6)、(E-7)、又は(E-8)であり、正孔輸送剤が正孔輸送剤(H-1)、(H-2)、(H-3)、(H-4)、(H-5)、(H-6)、又は(H-7)であることがより好ましい。なお、ポリアリレート樹脂A~Jについては、実施例で詳述する。
【0116】
耐摩耗性を特に向上させるためには、バインダー樹脂がポリアリレート樹脂(PA-1)、(PA-a)、(PA-e)、又はDであり、電子輸送剤が電子輸送剤(E-1)、(E-2)、(E-4)、(E-5)、又は(E-7)あることが好ましい。同じ理由から、バインダー樹脂がポリアリレート樹脂(PA-1)、(PA-a)、(PA-e)、又はDであり、電子輸送剤が電子輸送剤(E-1)、(E-2)、(E-4)、(E-5)、又は(E-7)であり、正孔輸送剤が正孔輸送剤(H-1)、(H-2)、(H-5)、(H-6)、又は(H-7)であることがより好ましい。
【0117】
転写メモリーを特に抑制するためには、バインダー樹脂がポリアリレート樹脂(PA-2)、(PA-b)、(PA-f)、又はBであり、電子輸送剤が電子輸送剤(E-3)、又は(E-8)であることが好ましい。同じ理由から、バインダー樹脂がポリアリレート樹脂(PA-2)、(PA-b)、(PA-f)、又はBであり、電子輸送剤が電子輸送剤(E-3)、又は(E-8)であり、正孔輸送剤が正孔輸送剤(H-7)であることがより好ましい。
【0118】
(導電性基体)
導電性基体は、感光体の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体は、少なくとも表面部が導電性を有する材料で構成されていればよい。導電性基体の一例としては、導電性を有する材料で構成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、及び真鍮が挙げられる。これらの導電性を有する材料のなかでも、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム及びアルミニウム合金が好ましい。
【0119】
導電性基体の形状は、画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、シート状及びドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚さは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
【0120】
(中間層)
中間層(下引き層)は、例えば、無機粒子及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇を抑制できる。
【0121】
無機粒子としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム、鉄、及び銅)の粒子、金属酸化物(例えば、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、及び酸化亜鉛)の粒子、及び非金属酸化物(例えば、シリカ)の粒子が挙げられる。
【0122】
中間層用樹脂の例は、既に述べたその他のバインダー樹脂の例と同じである。中間層及び感光層を良好に形成するためには、中間層用樹脂は、感光層に含有されるバインダー樹脂と異なることが好ましい。中間層は、添加剤を含有してもよい。中間層に含有される添加剤の例は、感光層に含有される添加剤の例と同じである。
【0123】
(感光体の製造方法)
次に、感光体の製造方法の一例を説明する。感光体の製造方法は、感光層形成工程を含む。感光層形成工程では、感光層を形成するための塗布液(以下、感光層用塗布液と記載することがある)を調製する。感光層用塗布液を導電性基体上に塗布する。次いで、塗布した感光層用塗布液に含有される溶剤の少なくとも一部を除去して感光層を形成する。感光層用塗布液は、例えば、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂と、溶剤と、必要に応じて添加剤とを含有する。感光層用塗布液は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂と、必要に応じて添加剤とを、溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。
【0124】
感光層用塗布液に含有される溶剤は、感光層用塗布液に含有される各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶剤としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びブタノール等)、脂肪族炭化水素(より具体的には、n-ヘキサン、オクタン、及びシクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、トルエン、及びキシレン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、及びクロロベンゼン等)、エーテル(より具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、及びジエチレングリコールジメチルエーテル等)、ケトン(より具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、及びシクロヘキサノン等)、エステル(より具体的には、酢酸エチル、及び酢酸メチル等)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0125】
感光層用塗布液は、それぞれ各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー、棒状音波発振子、又は超音波分散器を用いることができる。
【0126】
感光層用塗布液を塗布する方法は、感光層用塗布液を均一に塗布できる方法であれば、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、及びバーコート法が挙げられる。
【0127】
感光層用塗布液に含有される溶剤の少なくとも一部を除去する方法としては、例えば、加熱、減圧、又は加熱と減圧との併用が挙げられる。より具体的には、高温乾燥機、又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理の温度は、例えば、40℃以上150℃以下である。熱処理の時間は、例えば、3分以上120分以下である。
【0128】
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて中間層を形成する工程を更に含んでいてもよい。中間層を形成する工程は、公知の方法を適宜選択することができる。
【0129】
<第2実施形態:画像形成装置>
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置100について説明する。図4は、画像形成装置100の構成の一例を示す図である。画像形成装置100は、例えば、タンデム方式のカラープリンターである。
【0130】
図4に示すように、画像形成装置100は、制御部10、操作部20、給紙部30、搬送部40、トナー補給部50、画像形成部60、転写装置70、定着装置80、及び排出部90を備える。
【0131】
制御部10は、画像形成装置100が備える各部の動作を制御する。制御部10は、プロセッサー(不図示)及び記憶部(不図示)を備える。プロセッサーは、例えばCPU(Central Processing Unit)を備える。記憶部は、半導体メモリーのようなメモリーを備え、HDD(Hard Disk Drive)を備えてもよい。プロセッサーは、制御プログラムを実行することによって、画像形成装置100の動作を制御する。記憶部は、制御プログラムを記憶している。
【0132】
操作部20は、ユーザーからの指示を受け付ける。操作部20は、ユーザーからの指示を受け付けると、ユーザーからの指示を示す信号を制御部10へ送信する。この結果、画像形成装置100による画像形成動作が開始される。
【0133】
給紙部30は、給紙カセット31、及び給紙ローラー群32を有する。給紙カセット31は、複数枚の記録媒体P(例えば、用紙)を収容可能である。給紙ローラー群32は、給紙カセット31に収容された記録媒体Pを1枚ずつ搬送部40へ給紙する。
【0134】
搬送部40は、ローラー及びガイド部材を備える。搬送部40は、給紙部30から排出部90まで延在する。搬送部40は、画像形成部60及び定着装置80を経由するように、給紙部30から排出部90まで記録媒体Pを搬送する。
【0135】
トナー補給部50は、画像形成部60にトナーを補給する。トナー補給部50は、第1装着部51Y、第2装着部51C、第3装着部51M、及び第4装着部51Kを備える。
【0136】
第1装着部51Yには第1トナーコンテナ52Yが、装着される。同様に、第2装着部51Cには第2トナーコンテナ52Cが、第3装着部51Mには第3トナーコンテナ52Mが、第4装着部51Kには第4トナーコンテナ52Kが装着される。
【0137】
第1トナーコンテナ52Y、第2トナーコンテナ52C、第3トナーコンテナ52M、及び第4トナーコンテナ52Kには、トナーがそれぞれ収容される。第2実施形態において、第1トナーコンテナ52Yには、イエロートナーが収容される。第2トナーコンテナ52Cには、シアントナーが収容される。第3トナーコンテナ52Mには、マゼンタトナーが収容される。第4トナーコンテナ52Kには、ブラックトナーが収容される。
【0138】
画像形成部60は、露光装置61、第1画像形成ユニット62Y、第2画像形成ユニット62C、第3画像形成ユニット62M、及び第4画像形成ユニット62Kを備える。
【0139】
第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kの各々は、帯電装置63、現像装置64、像担持体65、クリーニング装置66、及び除電装置67を有する。
【0140】
なお、第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kの構成は、トナー補給部50から補給されるトナーの種類が異なるのみで、他の構成は同じである。従って、図4において、第2画像形成ユニット62C~第4画像形成ユニット62Kが有する各構成については、符号を省略して示している。
【0141】
像担持体65は、第1実施形態の感光体1である。第1実施形態において述べたように、第1実施形態の感光体1は、感光層を良好に形成でき、転写メモリーを抑制でき、耐摩耗性、耐フィルミング性、及び耐傷性に優れる。従って、第2実施形態の画像形成装置100は、像担持体65である感光体1の感光層を良好に形成でき、転写メモリーを抑制でき、耐摩耗性、耐フィルミング性、及び耐傷性を向上できる。
【0142】
帯電装置63、現像装置64、クリーニング装置66、及び除電装置67は、像担持体65の周面に沿って配置される。第2実施形態において、像担持体65は、図4の矢印R1で示す方向(時計回り方向)に回転する。
【0143】
帯電装置63は、像担持体65の表面(周面)を帯電させる。帯電装置63は、像担持体65を放電によって所定の極性に均一に帯電させる。第2実施形態において、帯電装置63は、像担持体65を正の極性に帯電させる。帯電装置63は、例えば、帯電ローラーである。
【0144】
露光装置61は、帯電した像担持体65の表面を露光する。詳しくは、露光装置61は、帯電した像担持体65の表面にレーザー光を照射する。これにより、像担持体65の表面に静電潜像が形成される。
【0145】
現像装置64には、トナー補給部50からトナーが補給される。現像装置64は、トナー補給部50から補給されたトナーを、像担持体65の表面に供給する。この結果、像担持体65の表面に形成された静電潜像が、トナー像として現像される。
【0146】
第2実施形態において、第1画像形成ユニット62Yが有する現像装置64は、第1トナーコンテナ52Yと接続する。従って、第1画像形成ユニット62Yが有する現像装置64には、イエロートナーが補給される。よって、第1画像形成ユニット62Yが有する像担持体65の表面には、イエロートナー像が形成される。
【0147】
同様に、第2画像形成ユニット62Cが有する現像装置64、第3画像形成ユニット62Mが有する現像装置64、及び第4画像形成ユニット62Kが有する現像装置64は、各々、第2トナーコンテナ52C、第3トナーコンテナ52M、及び第4トナーコンテナ52Kと接続する。従って、第2画像形成ユニット62Cが有する現像装置64、第3画像形成ユニット62Mが有する現像装置64、及び第4画像形成ユニット62Kが有する現像装置64には、各々、シアントナー、マゼンタトナー、及びブラックトナーが補給される。よって、第2画像形成ユニット62Cが有する像担持体65の表面、第3画像形成ユニット62Mが有する像担持体65の表面、及び第4画像形成ユニット62Kが有する像担持体65の表面には、各々、シアントナー像、マゼンタトナー像、及びブラックトナー像が形成される。
【0148】
クリーニング装置66は、クリーニング部材661を有する。後述する一次転写ローラー71による転写後に、クリーニング装置66は、像担持体65の表面に付着しているトナーを回収する。詳しくは、クリーニング装置66は、像担持体65の表面にクリーニング部材661を圧接させて、像担持体65の表面に付着したトナーを回収する。クリーニング部材661は、例えば、クリーニングブレードである。
【0149】
除電装置67は、像担持体65の表面に除電光を照射して、像担持体65の表面を除電する。
【0150】
転写装置70は、像担持体65から、被転写体である記録媒体Pへ、トナー像を転写する。詳しくは、転写装置70は、第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kが有する各像担持体65の表面に形成された各トナー像を、記録媒体Pに重ねて転写する。第2実施形態において、転写装置70は、二次転写方式(中間転写方式)によって、各トナー像を、記録媒体Pに重ねて転写する。転写装置70は、4つの一次転写ローラー71、中間転写ベルト72、駆動ローラー73、従動ローラー74、及び二次転写ローラー75を有する。
【0151】
中間転写ベルト72は、4つの一次転写ローラー71、駆動ローラー73、及び、従動ローラー74に張架された無端ベルトである。中間転写ベルト72は、駆動ローラー73の回転に応じて駆動する。図4において、中間転写ベルト72は、反時計回りに周回する。従動ローラー74は、中間転写ベルト72の駆動に応じて回転駆動する。
【0152】
第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kは、中間転写ベルト72の下面と対向して配置される。第2実施形態において、第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kは、中間転写ベルト72の下面の駆動方向Dの上流側から下流側に向けて第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kの順で配置される。
【0153】
各一次転写ローラー71は、中間転写ベルト72を介して各像担持体65に対向して配置され、各像担持体65に向けて押圧されている。このため、各一次転写ローラー71によって、各像担持体65の表面に形成されたトナー像が、中間転写ベルト72に順次転写される。第2実施形態において、中間転写ベルト72には、イエロートナー像、シアントナー像、マゼンタトナー像、及びブラックトナー像がこの順で重ねて転写される。以下、イエロートナー像、シアントナー像、マゼンタトナー像、及びブラックトナー像が重ねられたトナー像を「積層トナー像」と記載する場合がある。
【0154】
二次転写ローラー75は、中間転写ベルト72を介して駆動ローラー73に対向して配置される。二次転写ローラー75は、駆動ローラー73に向けて押圧されている。これにより、二次転写ローラー75と駆動ローラー73との間に転写ニップが形成される。記録媒体Pが転写ニップを通過する際に、二次転写ローラー75によって、中間転写ベルト72上の積層トナー像が記録媒体Pに転写される。第2実施形態において、イエロートナー像、シアントナー像、マゼンタトナー像、及びブラックトナー像がこの順で、上層から下層となるように記録媒体Pに転写される。積層トナー像が転写された記録媒体Pは、搬送部40によって定着装置80へ向けて搬送される。
【0155】
定着装置80は、加熱部材81、及び加圧部材82を備える。加熱部材81、及び加圧部材82は互いに対向して配置され、定着ニップを形成する。画像形成部60から搬送された記録媒体Pは、定着ニップを通過することにより所定の定着温度で加熱されながら、加圧される。この結果、積層トナー像が記録媒体Pに定着する。記録媒体Pは、搬送部40によって定着装置80から排出部90へ向けて搬送される。
【0156】
排出部90は、排出ローラー対91及び排出トレイ93を有する。排出ローラー対91は、排出口92を介して排出トレイ93へ記録媒体Pを搬送する。排出口92は、画像形成装置100の上部に形成される。
【0157】
次に、図5を参照して、現像装置64の構成について詳細に説明する。図5は、現像装置64の構成の一例を示す図である。詳しくは、図5は、第1画像形成ユニット62Yが有する現像装置64を示す。なお、図5では、理解を容易にするために像担持体65を、2点鎖線で図示している。第2実施形態において、現像装置64は、二成分現像剤を使用する二成分現像方式で且つタッチダウン現像方式を採用している。
【0158】
図4を参照して既に説明したように、現像装置64の現像容器640は、第1トナーコンテナ52Yに接続する。従って、現像装置64の現像容器640には、トナー補給口640hを介して、イエロートナーが補給される。
【0159】
図5に示すように、現像装置64は、現像容器640の内部に現像ローラー641、磁気ローラー642、第1攪拌スクリュー643、第2攪拌スクリュー644、及びブレード645を有する。詳しくは、現像ローラー641は、磁気ローラー642と対向して配置される。磁気ローラー642は、第2攪拌スクリュー644と対向して配置される。ブレード645は、磁気ローラー642と対向して配置される。
【0160】
現像容器640は、仕切り壁640cによって第1攪拌室640aと第2攪拌室640bとに区画される。仕切り壁640cは、現像ローラー641の軸方向に延びる。第1攪拌室640aと第2攪拌室640bとは、仕切り壁640cの長手方向の両端の外方において連通している。
【0161】
第1攪拌室640aには、第1攪拌スクリュー643が配置される。第1攪拌室640aには、磁性体であるキャリアが収容されている。第1攪拌室640aには、非磁性体であるトナーが、トナー補給口640hを介して補給される。図5に示す例では、第1攪拌室640aには、イエロートナーが補給される。
【0162】
第2攪拌室640bには、第2攪拌スクリュー644が配置される。第2攪拌室640bには、磁性体であるキャリアが収容されている。
【0163】
第1攪拌スクリュー643及び第2攪拌スクリュー644によって、イエロートナーはキャリアと攪拌される。この結果、キャリア、及びイエロートナーを含有する二成分現像剤が構成される。
【0164】
第1攪拌スクリュー643及び第2攪拌スクリュー644は、第1攪拌室640aと第2攪拌室640bとの間で、二成分現像剤を循環させながら攪拌する。この結果、キャリアとの摩擦によってトナーが所定の極性に帯電する。第2実施形態において、トナーは、正の極性に帯電する。
【0165】
磁気ローラー642は、非磁性の回転スリーブ642aと、マグネット体642bとによって構成される。マグネット体642bは、回転スリーブ642aの内部に固定して配置される。マグネット体642bは、複数の磁極を含む。二成分現像剤は、マグネット体642bの磁力によって、磁気ローラー642に吸着する。この結果、磁気ローラー642の表面に磁気ブラシが形成される。
【0166】
第2実施形態において、磁気ローラー642は、図5の矢印R3で示す方向(反時計回り方向)に回転する。磁気ローラー642は、回転することによって磁気ブラシをブレード645と対向する位置まで搬送する。ブレード645は、磁気ローラー642との間にギャップ(隙間)が形成されるように配置されている。従って、磁気ブラシの厚さがブレード645によって規定される。ブレード645は、磁気ローラー642と現像ローラー641とが対向する位置よりも磁気ローラー642の回転方向の上流側に配置される。
【0167】
現像ローラー641及び磁気ローラー642には、所定の電圧が印加される。所定の電圧が印加されて、現像ローラー641と磁気ローラー642との間が所定の電位差になると、二成分現像剤に含まれるイエロートナーが現像ローラー641に移行する。この結果、イエロートナーから成るトナー薄層が現像ローラー641の表面に形成される。
【0168】
現像ローラー641は、図5の矢印R2で示す方向(反時計回り方向)に回転する。これにより、表面に形成されたトナー薄層が像担持体65と対向する位置まで搬送され、像担持体65に付着される。このようにして、現像装置64は、キャリアとの摩擦により帯電したトナーを、像担持体65の表面に供給する。
【0169】
以上、図5を参照して、第1画像形成ユニット62Yが有する現像装置64について説明した。第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kの各々が有する現像装置64の構成は、トナー補給部50から補給されるトナーの種類が異なるのみで、他の構成は同じである。従って、第2画像形成ユニット62C~第4画像形成ユニット62Kが有する現像装置64の構成については、説明を省略する。
【0170】
以上、図4及び図5を参照して画像形成装置の一例について説明したが、画像形成装置は、上記画像形成装置100に限定されない。上記画像形成装置100はカラー画像形成装置であったが、画像形成装置はモノクロ画像形成装置であってもよい。この場合、画像形成装置は、例えば画像形成ユニットを1つだけ備えていればよい。また、上記画像形成装置100はタンデム方式を採用していたが、画像形成装置は例えばロータリー方式を採用してもよい。帯電装置63として帯電ローラーを例に挙げて説明したが、帯電装置は帯電ローラー以外の帯電装置(例えば、スコロトロン帯電器、帯電ブラシ、又はコロトロン帯電器)であってもよい。上記画像形成装置100は二成分現像剤を使用する二成分現像方式を採用していたが、画像形成装置は一成分現像剤を使用する一成分現像方式を採用してもよい。上記画像形成装置100はタッチダウン現像方式を採用していたが、画像形成装置はタッチダウン現像方式以外の現像方式(例えば、現像ローラーを備えず、磁気ローラーが現像ローラーも兼ねる現像方式)を採用してもよい。上記画像形成装置100は中間転写方式を採用していたが、画像形成装置は直接転写方式を採用してもよい。画像形成装置が直接転写方式を採用する場合、像担持体65が記録媒体Pに接触しながら、像担持体65から記録媒体Pにトナー像が直接転写される。クリーニング部材661としてクリーニングブレードを例に挙げて説明したが、クリーニング部材はクリーニングローラーであってもよい。また、画像形成装置は、クリーニング装置66を備えていなくてもよい。また、上記第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kは除電装置67を備えていたが、画像形成ユニットは除電装置を備えていなくてもよい。
【0171】
<第3実施形態:プロセスカートリッジ>
次に、図4を引き続き参照して、本発明の第3実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。第3実施形態のプロセスカートリッジは、第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kの各々に相当する。プロセスカートリッジは、像担持体65を備える。像担持体65は、第1実施形態の感光体1である。第1実施形態において述べたように、第1実施形態の感光体1は、感光層を良好に形成でき、転写メモリーを抑制でき、耐摩耗性、耐フィルミング性、及び耐傷性に優れる。従って、第3実施形態のプロセスカートリッジは、像担持体65である感光体1の感光層を良好に形成でき、転写メモリーを抑制でき、耐摩耗性、耐フィルミング性、及び耐傷性に優れる。
【0172】
プロセスカートリッジは、像担持体65に加えて、帯電装置63、露光装置61、現像装置64、転写装置70(特に、一次転写ローラー71)、クリーニング装置66、及び除電装置67からなる群から選択される少なくとも1つ(例えば、1つ以上6つ以下)を更に備える。プロセスカートリッジは、画像形成装置100に対して着脱自在に設計される。そのため、プロセスカートリッジは取り扱いが容易であり、像担持体65の感度特性等が劣化した場合に、像担持体65を含めて容易かつ迅速に交換することができる。以上、図4を参照して、第3実施形態のプロセスカートリッジについて説明した。
【実施例
【0173】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
【0174】
まず、感光体の感光層を形成するための材料として、以下の電荷発生剤、電子輸送剤、正孔輸送剤、及びポリアリレート樹脂を準備した。
【0175】
<電荷発生剤、電子輸送剤、及び正孔輸送剤>
電荷発生剤として、第1実施形態で述べたY型チタニルフタロシアニンを準備した。電子輸送剤として、第1実施形態で述べた電子輸送剤(E-1)~(E-8)の各々を準備した。正孔輸送剤として、第1実施形態で述べた正孔輸送剤(H-1)~(H-7)を準備した。また、比較例で使用する正孔輸送剤として、式(H-A)及び(H-B)で表される化合物(以下、それぞれを、正孔輸送剤(H-A)及び(H-B)と記載することがある)を準備した。
【0176】
【化20】
【0177】
<ポリアリレート樹脂A~M及びО~P>
実施例に係るポリアリレート樹脂A~J、並びに比較例に係るポリアリレート樹脂K~M及びО~Pを、以下に示す方法により合成した。ポリアリレート樹脂A~M及びО~Pの組成を、下記表3に示す。
【0178】
【表3】
【0179】
表3において、「BisCZ」、「BisB」、「BisZ」、「BP」、「14NACC」、「26NACC」、「DPEC」、「TPC」、及び「IPC」は、各々、下記式(BisCZ)、(BisB)、(BisZ)、(BP)、(14NACC)、(26NACC)、(DPEC)、(TPC)、及び(IPC)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(BisCZ)、(BisB)、(BisZ)、(BP)、(14NACC)、(26NACC)、(DPEC)、(TPC)、及び(IPC)と記載することがある)を示す。
【0180】
【化21】
【0181】
また、表3における各用語の意味は、次のとおりである。
モノマー:ポリアリレート樹脂の合成に使用したモノマー
形成単位:該当するモノマーから形成される繰り返し単位
樹脂:ポリアリレート樹脂
ビスフェノール添加率:ポリアリレート樹脂の合成において添加されたビスフェノールモノマーの総量(単位:モル)に対する該当するビスフェノールモノマーの量(単位:モル)の百分率(単位:%)
ジカルボン酸添加率:ポリアリレート樹脂の合成において添加されたジカルボン酸モノマーの総量(単位:モル)に対する該当するジカルボン酸モノマーの量(単位:モル)の百分率(単位:%)
分子量:粘度平均分子量
単位:繰り返し単位
TPC/IPC:モル比が1/1である化合物(TPC)及び(IPC)の混合物
TPC/IPC欄の50/50:化合物(TPC)のジカルボン酸添加率が50%であり且つ化合物(IPC)のジカルボン酸添加率が50%であること
DMP:2,6-ジメチルフェノール
PFH:1H,1H-パーフルオロ-1-ヘプタノール
測定不可:粘度分子量測定用の溶剤にポリアリレート樹脂が溶解せず、粘度平均分子量を測定できなかったこと
【0182】
(ポリアリレート樹脂Aの合成)
反応容器として、温度計、三方コック、及び滴下ロートを備えた三口フラスコを用いた。反応容器に、モノマーである化合物(BisCZ)(38.95ミリモル)と、モノマーである化合物(BP)(2.05ミリモル)と、末端停止剤である2,6-ジメチルフェノール(0.413ミリモル)と、水酸化ナトリウム(98ミリモル)と、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド(0.384ミリモル)とを入れた。反応容器内の空気をアルゴンガスで置換した。反応容器の内容物に水(300mL)を加えた。反応容器の内容物を50℃で1時間攪拌した。反応容器の内容物を10℃まで冷却して、アルカリ性水溶液S-Aを得た。
【0183】
次に、モノマーである化合物(14NACC)のジカルボン酸ジクロライド(16.0ミリモル)、及びモノマーである化合物(26NACC)のジカルボン酸ジクロライド(16.0ミリモル)を、クロロホルム(150mL)に溶解させた。これにより、クロロホルム溶液S-Bを得た。
【0184】
アルカリ性水溶液S-Aに対して、滴下ロートを用いて、110分間かけてゆっくりとクロロホルム溶液S-Bを滴下した。反応容器の内容物の温度(液温)を15±5℃に調節しながら、反応容器の内容物を4時間攪拌して重合反応を進行させた。デカントを用いて反応容器の内容物の上層(水層)を除去し、有機層を得た。次いで、三角フラスコに、イオン交換水(400mL)を加えた。三角フラスコ内に、得られた有機層を更に加えた。三角フラスコ内に、クロロホルム(400mL)及び酢酸(2mL)を更に加えた。三角フラスコ内容物を、室温(25℃)で30分間攪拌した。デカントを用いて三角フラスコ内容物の上層(水層)を除去し、有機層を得た。分液ロートを用いて、イオン交換水(1L)で、得られた有機層を洗浄した。イオン交換水による洗浄を5回繰り返し、水洗した有機層を得た。次に、水洗した有機層をろ過し、ろ液を得た。メタノール(1L)に得られたろ液をゆっくりと滴下し、沈殿物を得た。沈殿物をろ過により取り出した。取り出した沈殿物を温度70℃で12時間真空乾燥させた。その結果、ポリアリレート樹脂Aが得られた。
【0185】
(ポリアリレート樹脂B~M及びО~Pの合成)
表3に示すモノマーを、表3に示す添加率で使用したこと以外は、ポリアリレート樹脂Aの合成と同じ方法で、ポリアリレート樹脂B~M及びО~Pの各々を合成した。なお、ビスフェノールモノマーの総量が41.0ミリモルとなり、且つ表3に示すビスフェノール添加率となるように、各ビスフェノールモノマーの添加量を設定した。例えば、ポリアリレート樹脂Bの合成において、化合物(BisB)の添加量は38.95ミリモル(=41.0×95/100)であり、化合物(BP)の添加量は2.05ミリモル(=41.0×5/100)であった。また、ジカルボン酸モノマーの総量が32.0ミリモルとなり、且つ表3に示すジカルボン酸添加率となるように、各ジカルボン酸モノマーの添加量を設定した。例えば、ポリアリレート樹脂Bの合成において、化合物(14NACC)の添加量は16.0ミリモル(=32.0×50/100)であり、化合物(26NACC)の添加量は16.0ミリモル(=32.0×50/100)であった。
【0186】
プロトン核磁気共鳴分光計(日本電子株式会社製、600MHz)を用いて、得られたポリアリレート樹脂A~M及びО~Pの1H-NMRスペクトルを測定した。溶媒として重水素化クロロホルムを用いた。内部標準試料としてテトラメチルシラン(TMS)を用いた。ポリアリレート樹脂A~M及びО~Pのうちの代表例として、ポリアリレート樹脂Hの1H-NMRスペクトルを、図6に示す。1H-NMRスペクトルから読み取られる化学シフトから、ポリアリレート樹脂Hが得られていることを確認した。ポリアリレート樹脂A~G、I~M及びО~Pについても同じ方法で、ポリアリレート樹脂A~G、I~M及びО~Pが得られていることを確認した。
【0187】
<ポリアリレート樹脂N>
比較例に係るポリアリレート樹脂Nを準備した。ポリアリレート樹脂Nは、下記式(N)で表される。式(N)中のビスフェノール由来の繰り返し単位の右下に付された数字は、ポリアリレート樹脂Nに含まれるビスフェノール由来の繰り返し単位の総数に対する、該当するビスフェノール由来の繰り返し単位の含有率(単位:%)を示す。また、式(N)中のジカルボン酸由来の繰り返し単位の右下に付された数字は、ポリアリレート樹脂Nに含まれるジカルボン酸由来の繰り返し単位の総数に対する、該当するジカルボン酸由来の繰り返し単位の含有率(単位:%)を示す。ポリアリレート樹脂Nは、末端基として、2,6-ジメチルフェノール由来の末端基を有していた。ポリアリレート樹脂Nの粘度平均分子量は、54400であった。
【0188】
【化22】
【0189】
<粘度平均分子量の測定>
ポリアリレート樹脂の粘度平均分子量を、JIS(日本産業規格)K7252-1:2016に従って測定した。測定された粘度平均分子量を、表3に示す。
【0190】
<感光体の製造>
(感光体(A-1)の製造)
電荷発生剤であるY型チタニルフタロシアニン2質量部、正孔輸送剤(H-1)70質量部、電子輸送剤(E-1)50質量部、バインダー樹脂であるポリアリレート樹脂Aの100質量部、及び溶剤であるテトラヒドロフラン500質量部を、棒状音波発振子を用いて20分間混合し、分散液を得た。目開き5μmのフィルターを用いて、分散液を濾過し、感光層用塗布液を得た。ディップコート法により、導電性基体(アルミニウム製のドラム状支持体)上に、感光層用塗布液を塗布し、120℃で50分間熱風乾燥させた。このようにして、導電性基体上に感光層(膜厚30μm)を形成し、感光体(A-1)を得た。感光体(A-1)において、導電性基体上に単層の感光層が直接備えられていた。
【0191】
(感光体(A-2)~(A-26)及び(B-1)~(B-8)の製造)
表4及び表5に示す正孔輸送剤、電子輸送剤、及びポリアリレート樹脂を使用したこと以外は、感光体(A-1)の製造と同じ方法により、感光体(A-2)~(A-26)及び(B-1)~(B-8)の各々を得た。
【0192】
<評価>
耐摩耗性、耐フィルミング性、及び耐傷性の評価には、用紙(アスクル株式会社販売「Askul Multipaper Super Economy+」)を使用した。また、耐摩耗性、耐フィルミング性、耐傷性、及び転写メモリー抑制の評価を行う評価機として、画像形成装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS-C5250DN」)の改造機を使用した。この評価機は、帯電装置として、導電性カーボンを分散させたエピクロルヒドリン樹脂から構成された帯電ローラーを備えていた。帯電ローラーの帯電極性は正極性であり、帯電ローラーの印加電圧は直流電圧であった。また、この評価機は、二成分現像方式、及び中間転写方式を採用していた。また、この評価機は、クリーニングブレード、及び除電装置を備えていた。
【0193】
(耐摩耗性の評価)
耐摩耗性の評価は、温度23℃且つ相対湿度50%RHの環境下で行った。感光体の感光層の膜厚T1を測定した。次いで、感光体を評価機に搭載した。評価機を用いて、5万枚の用紙に、画像I(印字率5%の文字画像)を連続して印刷した。印刷後に、感光体の感光層の膜厚T2を測定した。なお、膜厚T1及びT2の測定には、渦電流膜厚計(株式会社ケツト科学研究所製「LH-373」)を使用した。そして、式「摩耗量=T1-T2」から、感光層の摩耗量(単位:μm)を求めた。求めた摩耗量を、表4及び表5に示す。摩耗量が少ないほど、感光体の耐摩耗性が優れていることを示す。
【0194】
(耐フィルミング性及び耐傷性の評価)
上記耐摩耗性を評価した後の感光体を、評価機に搭載した。温度23℃且つ相対湿度50%RHの環境下で、評価機を用いて、5万枚の用紙に、画像I(印字率5%の文字画像)を連続して印刷した。次いで、評価機を用いて、1枚の用紙に、画像II(ハーフトーン画像及び白地画像を含む画像)を印刷し、得られた画像を第1評価用画像とした。
【0195】
第1評価用画像を得た後に、評価機から感光体を取り出した。肉眼で感光体の表面を観察し、感光体の表面における傷及びフィルミングの発生の有無を確認した。肉眼観察後、再び感光体を評価機に搭載した。
【0196】
次いで、温度10℃且つ相対湿度15%RHの環境下で、評価機を用いて、5万枚の用紙に、画像I(印字率5%の文字画像)を連続して印刷した。次いで、評価機を用いて、1枚の用紙に、画像II(ハーフトーン画像及び白地画像を含む画像)を印刷し、得られた画像を第2評価用画像とした。
【0197】
第1評価用画像及び第2評価用画像を観察し、傷及びフィルミングに由来する画像不良の有無を確認した。傷に由来する画像不良は、例えば、白筋、及び黒筋である。フィルミングに由来する画像不良は、例えば、ダッシュマーク、及びカブリである。ダッシュマークは、用紙の搬送方向に対して平行に配列した黒点である。感光体の表面においてフィルミングが発生した面積が広くなる程、形成画像において、ダッシュマークを起点としたカブリが発生する。感光体の表面の確認結果、並びに第1評価用画像及び第2評価用画像の画像不良の確認結果から、下記基準に基づき、耐フィルミング性及び耐傷性を評価した。耐フィルミング性及び耐傷性の評価結果を、表4及び表5に示す。
【0198】
評価A(特に良好):感光体の表面に、傷及びフィルミングの両方が発生していなかった。また、第1評価用画像及び第2評価用画像の両方において、画像不良が発生していなかった。
評価B(良好):感光体の表面に、傷及びフィルミングの少なくとも一方が発生していた。しかし、第1評価用画像及び第2評価用画像の両方において、画像不良が発生していなかった。
評価C(不良):感光体の表面に、傷及びフィルミングの少なくとも一方が発生していた。第2評価用画像において、画像不良が発生していた。しかし、第1評価用画像において、画像不良が発生していなかった。
評価D(特に不良):感光体の表面に、傷及びフィルミングの少なくとも一方が発生していた。また、第1評価用画像及び第2評価用画像の両方で、画像不良が発生していた。
【0199】
(転写メモリー抑制の評価)
転写メモリー抑制の評価は、温度23℃且つ相対湿度50%RHの環境下で行った。上記耐摩耗性の評価、並びに耐フィルミング性及び耐傷性の評価を実施した後の感光体を、評価機に搭載した。感光体の帯電電位が+570Vとなるように、帯電ローラーの印加電圧を設定した。露光装置の露光光を、波長780nm、半値幅20nm、且つ光強度1.16μJ/m2に設定した。一次転写ローラーの転写バイアスを、-2.0kVに設定した。
【0200】
評価機を用いて、感光体を帯電し、露光し、非露光領域(白紙部領域に相当)の表面電位を測定した。測定された非露光領域の表面電位を、転写前非露光領域電位V1(単位:+V)とした。
【0201】
次いで、感光体に転写バイアスを印加し、非露光領域(白紙部領域に相当)の表面電位を測定した。測定された非露光領域の表面電位を、転写後非露光領域電位V2(単位:+V)とした。
【0202】
また、計算式「ΔVtc=V1-V2」から、転写メモリー電位ΔVtc(単位:V)を求めた。ΔVtcを、表4及び表5に示す。ΔVtcの絶対値が小さいほど、転写メモリーが抑制されていることを示す。
【0203】
表4及び表5における用語の意味は、次の通りである。「HTM」は、正孔輸送剤を示す。「ETM」は、電子輸送剤を示す。「樹脂」は、バインダー樹脂であるポリアリレート樹脂を示す。「フィルミング・傷」は、耐フィルミング性及び耐傷性の評価結果を示す。「ΔVtc」は、転写メモリー電位を示す。「調製不可」は、ポリアリレート樹脂が感光層用塗布液を形成するための溶剤に溶解せず、感光層用塗布液を調製できなかったため、該当する評価及び測定を実施できなかったことを示す。
【0204】
【表4】
【0205】
【表5】
【0206】
表5から理解できるように、感光体(B-1)~(B-2)の感光層は、正孔輸送剤(H-A)~(H-B)を含有していた。しかし、正孔輸送剤(H-A)~(H-B)は、1個の窒素原子を有する正孔輸送剤ではなかった。このため、表5に示すように、感光体(B-1)~(B-2)の転写メモリー抑制の評価は、感光体(A-1)~(A-26)と比較して、劣っていた。
【0207】
表3から理解できるように、ポリアリレート樹脂K~M及びO~Pは、ポリアリレート樹脂(PA)に包含される樹脂ではなかった。また、式(N)から理解できるように、ポリアリレート樹脂Nは、ポリアリレート樹脂(PA)に包含される樹脂ではなかった。表5から理解できるように、感光体(B-3)~(B-6)の感光層は、ポリアリレート樹脂(PA)に包含される樹脂を含有していなかった。このため、表5に示すように、感光体(B-3)~(B-6)の耐摩耗性は、感光体(A-1)~(A-26)と比較して、劣っていた。また、感光体(B-3)~(B-6)の耐フィルミング性及び耐傷性は、特に不良であった。また、表5に示すように、ポリアリレート樹脂O及びPが感光層用塗布液を形成するための溶剤に溶解せず、感光層用塗布液を調製できず、感光体(B-7)~(B-8)の感光層を形成できなかった。
【0208】
一方、表3から理解できるように、ポリアリレート樹脂A~Jは、ポリアリレート樹脂(PA)に包含される樹脂であった。表4から理解できるように、感光体(A-1)~(A-26)の感光層は、ポリアリレート樹脂(PA)に包含される樹脂と、1個の窒素原子を有する正孔輸送剤とを含有していた。このため、感光体(A-1)~(A-26)は、感光層を良好に形成でき、転写メモリーを抑制でき、耐摩耗性、耐フィルミング性、及び耐傷性に優れていた。
【0209】
以上のことから、感光体(A-1)~(A-26)を包含する本発明の感光体は、感光層を良好に形成でき、転写メモリーを抑制でき、耐摩耗性、耐フィルミング性、及び耐傷性を向上できることが示された。また、本発明のプロセスカートリッジ及び本発明の画像形成装置は、感光層を良好に形成でき、転写メモリーを抑制でき、耐摩耗性、耐フィルミング性、及び耐傷性に優れる電子写真感光体を備えていると判断される。
【産業上の利用可能性】
【0210】
本発明に係る感光体及びプロセスカートリッジは、画像形成装置に利用できる。本発明に係る画像形成装置は、記録媒体に画像を形成するために利用できる。
【符号の説明】
【0211】
1 :感光体(電子写真感光体)
2 :導電性基体
3 :感光層
61 :露光装置
63 :帯電装置
64 :現像装置
65 :像担持体
66 :クリーニング装置
67 :除電装置
70 :転写装置
100 :画像形成装置
P :記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6