(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】硬貨鑑別装置および貨幣取扱装置
(51)【国際特許分類】
G07D 5/02 20060101AFI20241112BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G07D5/02 104
G06T1/00 420C
(21)【出願番号】P 2021093042
(22)【出願日】2021-06-02
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【氏名又は名称】町田 能章
(74)【代理人】
【識別番号】100183162
【氏名又は名称】大塚 義文
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 拓家
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-019331(JP,A)
【文献】特開2006-195382(JP,A)
【文献】特開昭63-027186(JP,A)
【文献】特開2003-241681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 5/02
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨の搬送面を形成し、光を透過させる透明部と、
前記透明部上の前記硬貨を撮像する撮像センサと、
前記撮像センサの周囲に配置され、光を出射する光源と、
前記透明部における前記搬送面とは反対側の面に配置され、前記光源から出射される光を前記透明部上の前記硬貨の方向に導く導光体と、
前記導光体を前記透明部に付勢し、前記透明部における前記搬送面とは反対側の面に前記導光体を当接させる付勢部と、
を備えることを特徴とする硬貨鑑別装置。
【請求項2】
前記導光体は、円筒状を呈し、該円筒状の外周面から外側に向かって突出した凸部を有しており、
前記付勢部は、前記凸部を介して前記導光体を付勢する、
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨鑑別装置。
【請求項3】
前記凸部は、前記外周面の同一円上であって、周方向に等間隔で配置されている、ことを特徴とする請求項2に記載の硬貨鑑別装置。
【請求項4】
前記導光体を内部に収納可能なケース部をさらに備え、
前記ケース部は、前記凸部が嵌め込まれる部分であって、前記導光体の軸心方向に沿って形成される溝状の凹部を有する、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の硬貨鑑別装置。
【請求項5】
前記導光体は、前記光源が配置される基板と前記透明部との間で、前記搬送面に対して前記軸心方向が直交するように配置され、
前記付勢部は、弾性体であり、前記凹部に嵌め込まれた前記凸部と前記基板との間で弾性変形した状態で配置されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の硬貨鑑別装置。
【請求項6】
硬貨鑑別装置を備える貨幣取扱装置であって、
前記硬貨鑑別装置は、
硬貨の搬送面を形成し、光を透過させる透明部と、
前記透明部上の前記硬貨を撮像する撮像センサと、
前記撮像センサの周囲に配置され、光を出射する光源と、
前記透明部における前記搬送面とは反対側の面に配置され、前記光源から出射される光を前記透明部上の前記硬貨の方向に導く導光体と、
前記導光体を前記透明部に付勢し、前記透明部における前記搬送面とは反対側の面に前記導光体を当接させる付勢部と、を備える、
ことを特徴とする貨幣取扱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨鑑別装置および貨幣取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば金融機関で使用される現金自動入出金機には、処理される硬貨類の金種や真贋を識別するための硬貨鑑別装置が備えられている。硬貨鑑別装置には、光学イメージセンサを備えたカメラ部で硬貨の画像データ(イメージデータ)を取得するものがある(例えば特許文献1参照)。
この光学イメージセンサは、例えば完成品からなる硬貨搬送路に設けられた窓に取り付けられ、硬貨の搬送面となるコンタクトガラス(透明部)とコンタクトガラス上を搬送される硬貨に光を照射する光源と、硬貨からの反射光を撮像センサに結像するレンズなどから構成される。
ここで、硬貨の搬送方法として、搬送ベルトに設けたピンによって硬貨を押す方法が知られている。この硬貨搬送方法を適用した場合、搬送ベルトに取り付けたピン自体が硬貨を押しながらカメラ部を通過させ、硬貨の画像データを取得することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のピンによる搬送方法だと、カメラ部での撮像時に硬貨が搬送面(コンタクトガラス)から浮くことがある。従来の硬貨鑑別装置は、硬貨に設けられた凹凸部分(刻印)のコントラストを強調するために、LED(Light Emitting Diode)照明によって浅い角度の光を硬貨に照射する構成となっている。その為、硬貨が搬送面から浮くとLED照明が硬貨を照らす際に不均一に光が照射される形になってしまい、硬貨の鑑別に適した画像を取得できず、硬貨の判別性能に影響を与えるなどの問題があった。
【0005】
ここで、LED照明の光を硬貨に照射するための導光体とコンタクトガラスとの距離を近づける(または密着させる)ことにより、搬送面から浮いた硬貨に対してより均一な光を照射できることが分かっている。その為、導光体とコンタクトガラスとの距離を近づけることで、硬貨が搬送面から浮いた場合でも鑑別に適した画像を取得できる。しかしながら、コンタクトガラスやカメラ内部にある導光体とそれらを覆う成形品などの材質がそれぞれ異なる場合(つまり部材毎の線膨張係数が異なる場合)、部材が高温環境や低温環境下に晒されることで熱膨張や収縮が起きたときに、線膨張係数の違いによって部材間の寸法が想定したものにならない。部材の大きさの違いによっても同様の事象が発生する。その為、製造段階で導光体とコンタクトガラスとの距離を近づけたとしても、使用時における温度変化の影響などにより導光体とコンタクトガラスとの距離が想定した値にならず、鑑別に適した画像を取得できない恐れがあった。
【0006】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、温度変化による影響を低減して鑑別に適した画像を取得できる硬貨鑑別装置および貨幣取扱装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の一態様に係る硬貨鑑別装置は、硬貨の搬送面を形成し、光を透過させる透明部と、前記透明部上の前記硬貨を撮像する撮像センサと、前記撮像センサの周囲に配置され、光を出射する光源と、前記透明部における前記搬送面とは反対側の面に配置され、前記光源から出射される光を前記透明部上の前記硬貨の方向に導く導光体と、前記導光体を前記透明部に付勢し、前記透明部における前記搬送面とは反対側の面に前記導光体を当接させる付勢部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記課題を解決するため、本発明の一態様に係る貨幣取扱装置は、硬貨鑑別装置を備える貨幣取扱装置であって、前記硬貨鑑別装置が、硬貨の搬送面を形成し、光を透過させる透明部と、前記透明部上の前記硬貨を撮像する撮像センサと、前記撮像センサの周囲に配置され、光を出射する光源と、前記透明部における前記搬送面とは反対側の面に配置され、前記光源から出射される光を前記透明部上の前記硬貨の方向に導く導光体と、前記導光体を前記透明部に付勢し、前記透明部における前記搬送面とは反対側の面に前記導光体を当接させる付勢部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、温度変化による影響を低減して鑑別に適した画像を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る貨幣取扱装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る硬貨鑑別部(硬貨鑑別装置)の構成を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る硬貨鑑別部(硬貨鑑別装置)が有するカメラ部の断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る硬貨鑑別部(硬貨鑑別装置)が有するカメラ部の分解斜視図である(一部の構成を除く)。
【
図5】比較例としての従来の硬貨鑑別部(硬貨鑑別装置)で搬送面から浮いた状態の硬貨を撮像した撮像画像のイメージであり、(a)は低温時に撮像したものであり、(b)は常温時に撮像したものであり、(c)は高温時に撮像したものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、参照する図面において、本発明を構成する部材の寸法は、説明を明確にするために誇張または矮小化して表現されている場合がある。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0012】
<実施形態に係る貨幣取扱装置の構成について>
図1を参照して、実施形態に係る貨幣取扱装置1の構成について説明する。
図1は、実施形態に係る貨幣取扱装置1の全体構成を示す斜視図である。貨幣取扱装置1は、貨幣(特に、硬貨)を取り扱う装置である。本実施形態では、貨幣取扱装置の一例としての現金自動預け払い機(ATM:Automated Teller Machine)を想定して説明する。
なお、貨幣取扱装置1は、現金自動預け払い機に限定されず、例えば釣銭機、セルフ精算機、売上金入出金機等であってもよい。貨幣取扱装置1の説明における「上下」、「前後」、「左右」は、
図1の矢印に従う。当該方向は、説明の便宜上定めるものであり、本発明を限定するものではない。
【0013】
図1に示すように、貨幣取扱装置1は、媒体取扱部2と、表示操作部3と、通帳挿入排出口4と、紙幣入出金部5と、硬貨入出金部6と、硬貨鑑別部9と、を有している。なお、貨幣取扱装置1に組み込まれていない状態の硬貨鑑別部9を「硬貨鑑別装置」と呼ぶ場合がある。
媒体取扱部2は、カードやレシート等の各種媒体を取り扱う部位である。媒体取扱部2には、カードが挿入及び排出されるカード挿入排出口2aと、取引結果等が印字されたレシートが排出されるレシート排出口2bとが設けられている。
表示操作部3は、各種情報を表示するとともに、利用者による操作を受け付ける部位である。
【0014】
通帳挿入排出口4は、通帳が挿入及び排出される開口部である。
紙幣入出金部5は、紙幣が投入される入金部と紙幣が排出される出金部を兼ねた部位である。
硬貨入出金部6は、硬貨が投入される入金部と硬貨が排出される出金部を兼ねた部位である。貨幣取扱装置1は、硬貨入出金部6の下側の奥(後方下部)に、硬貨を鑑別する硬貨鑑別部9を有している。
【0015】
(実施形態に係る硬貨鑑別装置の構成について)
図2ないし
図4を参照して、実施形態に係る硬貨鑑別部9の構成について説明する。
図2は、実施形態に係る硬貨鑑別部9の構成を示す模式図である。
図3は、実施形態に係る硬貨鑑別部9が有するカメラ部10の断面図である。
図4は、実施形態に係る硬貨鑑別部9が有するカメラ部10の分解斜視図である(一部の構成を除く)。
【0016】
図2に示すように、硬貨鑑別装置としての硬貨鑑別部9は、主に、カメラ部10と、制御部40とを備える。
カメラ部10は、硬貨Cを撮像して画像を取得する撮像装置である。カメラ部10は、搬送部30によって搬送されている硬貨Cを下側から撮像する。
【0017】
搬送部30は、主に、搬送ガイド31と、プーリ32と、搬送ベルト33とを備える。
搬送ガイド31は、硬貨Cが搬送される搬送面Hを形成する部材である。
プーリ32は、搬送ベルト33を張架する部材である。複数のプーリ32のうち少なくとも何れか一つは、図示しない駆動部(例えばモータやギヤ)に接続されており、この駆動部から伝えられた駆動力によって回転する。
搬送ベルト33は、硬貨Cを搬送する搬送手段である。搬送ベルト33は、例えば帯状の部材を環状に形成したものであり、プーリ32に張架されている。搬送ベルト33は、硬貨Cが搬送される搬送路に沿って配置されている。搬送ベルト33には、下方に延びるピン34が取り付けられており、プーリ32が回転することで搬送ベルト33の走行に伴ってピン34が移動し、移動するピン34と当接しながら押される形で硬貨Cが搬送方向に向かって搬送される。
【0018】
なお、ここまで説明した通り、本実施形態での搬送部30は、搬送ベルト33とプーリ32とを有し、水平方向(前後方向)に硬貨Cを搬送する構成になっている。しかしながら、搬送部30の構成はここで説明した構成に限定されず、他の構成にすることも可能である。例えば、搬送部30は、搬送ベルト33とプーリ32とを備えず、スロープ形状の搬送路として硬貨Cを落下(滑落)させる構成にすることもできる。
【0019】
制御部40は、硬貨鑑別部9の動作を制御する。制御部40は、CPU(Central Processing Unit)、メモリなどで構成されており、メモリに格納されたプログラムを実行することにより、硬貨鑑別部9の動作に必要な機能を実現する。制御部40は、例えば搬送部30を制御して硬貨Cを搬送させ、所定のタイミングでカメラ部10を動作させて硬貨Cを撮像させる機能を有する。また、カメラ部10によって撮像された硬貨Cの画像から、画像に写る硬貨Cの種類を判別(鑑別)する機能を有する。制御部40は、カメラ部10と共に一つの筐体内に収納されていてもよいし、カメラ部10が収納される筐体とは別の場所に配置されてもよい。つまり、制御部40の設置場所は、特に限定されない。
【0020】
図3に示すカメラ部10は、搬送ガイド31に埋め込まれた状態で設置され、搬送部30によって搬送される硬貨Cを下側から撮影する。
図3に示すように、カメラ部10は、主に、撮像センサ11と、撮像センサ11に取り付けられるレンズ12と、複数のLED13と、LED13に取り付けられる複数のLEDレンズ14と、筒状の導光体15と、遮光部16とを有する。また、カメラ部10は、導光体15を収納するケース部17と、ケース部17の上部に固定され、硬貨Cが搬送される搬送面Hを形成する透明部18と、導光体15を透明部18の方向(上方向)に付勢する付勢部19とを有する。なお、撮像センサ11、LED13、付勢部19などは、基板20上に配置されている。
【0021】
撮像センサ11は、LED13が出射する光を用いて、搬送される硬貨Cを撮像するセンサである。ここでは、撮像センサ11がCMOSイメージセンサ等の2次元撮像センサであるものとして説明する。なお、撮像センサ11は、ラインセンサなどで構成することもできる。
レンズ12は、光を撮像センサ11に結像する部品である。
LED13は、光を出射する光源である。
図4に示すように、LED13は、導光体15の筒形状に対応させてリング状(環状)に並べて配置されている。LED13は、撮像センサ11の周囲を取り囲むように配置される。つまり、LED13は、リング状光源を構成する。
LEDレンズ14は、LED13が出射する光に指向性を持たせるための部材である。
図4に示すように、LEDレンズ14は、LED13に対応してリング状(環状)に並べて配置されている。LEDレンズ14を通過した光は、導光体15の下端部15bから内部に入射する。
【0022】
導光体15は、LEDレンズ14を通過した光を透明部22の方向に導く部品である。導光体15は、光を通す材料(例えば樹脂)で製造されており、内部で反射させて光を透明部22上の硬貨Cの方向に導く。導光体15は、例えばアクリルやポリカーボネート等の透明性の高い素材で製造されているのが好ましい。
図4に示すように、本実施形態での導光体15は、円筒状を呈し、基板20と透明部18との間に搬送面Hに対して軸心方向が直交するように(つまり、軸心方向が上下方向となるように)設置される。導光体15の下端部15bにLED13およびLEDレンズ14が配置され、導光体15の上端部15cに透明部18が配置されている。また、撮像センサ11およびレンズ12は、導光体15の軸心位置に配置される。
図3の符号Kで示すように、下端部15bから導光体15内に入った光は、導光体15内を上方に向かって進み、上端部15c付近から出射されて透明部18に照射される。透明部18に照射された光は、透明部18内を通過して硬貨Cに到達する。これにより、透明部18上を通過する硬貨Cに対して全周囲から光を当てることができる。
また、導光体15の上端部15c付近の外側には、傾斜部15aが形成されている。導光体15は、LED13が出射する光を傾斜部15aで反射させて透明部18の方向に進行させる。これにより、浅い角度の光を硬貨Cに当てて、硬貨Cに設けられた凹凸部分(刻印)のコントラストを強調することができる。なお、傾斜部15aは、平面に限らず、湾曲した形状であってもよい。
【0023】
導光体15は、下端部15bの付近に、外周面から外側に向かって突出した凸部15dを有する。凸部15dは、付勢部19に当接し、付勢部19が発生させる付勢力を受ける部分である。本実施形態の凸部15dは、直方体状である。凸部15dは、付勢部19からの付勢力を受けて、導光体15を透明部18の方向に均等に押し付ける形状および配置になっているのがよい。凸部15dは、導光体15の軸心を中心にした同一円上(換言すると、円筒状の導光体の外周面上)であって、周方向に等間隔で配置されている。凸部15dの配置場所や数は特に限定されず、本実施形態では90度おきに合計で4つの凸部15dが形成されている。凸部15dは、ケース部17の内面に形成される凹部17aに嵌め込まれる。詳細は後述するが、導光体15は、凸部15dが凹部17aに嵌め込まれた状態において、軸心方向(上下方向)の位置調整が可能である。導光体15の内部には、内周面に沿って遮光部16(
図3参照)が設置されている。
【0024】
図3に示す遮光部16は、不要な光を遮ることで、撮像センサ11に入射する光を限定するための部材である。遮光部16は、透明部18の上部にある硬貨Cに反射した光以外が撮像センサ11に入らないようにするため、導光体15の内部を通る反射光を遮光する範囲に配置される。本実施形態での遮光部16は、円筒状を呈し、導光体15の内周面に沿って配置されている。遮光部16の軸心方向(上下方向)の長さは、導光体15の軸心方向(上下方向)の長さよりも短くなっている。
【0025】
図3に示すケース部17は、カメラ部10の構成要素(撮像センサ11、LED13、導光体15など)を保護する部材である。ケース部17は、略円筒状を呈しており、内部に導光体15などの構成要素を収納可能である。ケース部17の内径と導光体15の外径とは同じ寸法または導光体15が少しだけ小さくなっている。ケース部17は、図示しない固定手段(例えばネジなど)によって、
図4に示す固定部17bがカメラ部10の筐体などに固定される。ケース部17の上端部には、透明部18を設置する段差部17cが形成されている。
【0026】
図4に示すように、ケース部17の内周面には、導光体15の凸部15dが嵌め込まれる凹部17aが形成されている。凹部17aは、凸部15dが嵌め込まれた状態で、軸心を中心とする導光体15の回転を規制すると共に軸心方向(上下方向)の移動(位置調整)を可能にする。つまり、凹部17aは、導光体15の移動を軸心方向(上下方向)のみに限定する役割を担う。本実施形態での凹部17aは、導光体15(またはケース部17)の軸心方向(上下方向)に沿って形成される溝状を呈する。凹部17aの断面形状や幅は、凸部15dに対応しており、本実施形態では軸心方向に直交する断面形状が長方形状を呈する。本実施形態での凹部17aは、凸部15dに対応して周方向に等間隔で配置され、90度おきに合計で4つの凹部17aが形成されている。
【0027】
透明部18は、硬貨Cを搬送する搬送面Hを形成し、硬貨Cを撮像するための光を透過させる部分である。透明部18は、板状の円形を呈し、ケース部17の上端に形成される段差部17cに固定(例えば接着)されている。透明部18の上面18aは、ケース部17の上端部や搬送ガイド31(
図2参照)の上面と面一である。透明部18は、例えばサファイアガラスなどであってよい。
【0028】
付勢部19は、導光体15を透明部18の方向(上方)に付勢し、導光体15を透明部18に押し付ける(当接させる)部分である。付勢部19は、導光体15に対する付勢力を発生させることができるものであれば種類は限定されない。付勢部19は、例えば弾性体(スポンジ、スプリング、ゲル等)であってよく、本実施形態でも付勢部19として弾性体を想定する。
付勢部19は、導光体15の凸部15dと基板20との間に配置される。本実施形態での付勢部19は、凸部15dに対応して周方向に等間隔で配置され、90度おきに合計で4つの付勢部19が配置されている。つまり、導光体15の凸部15dと共にケース部17の凹部17a内に弾性変形した状態で収納される。これにより、付勢部19は、凸部15dを介して導光体15を透明部18に向かって押し上げて、透明部18の下面18bに導光体15の上端部15cを当接(密着)させる。
【0029】
本実施形態を構成する透明部18、導光体15、ケース部17で使用する材料の線膨張係数の一例を以下に示す。ここで示す材料の種類はあくまで例示である。以下に示すように、線膨張係数の大小関係は、例えば「透明部18<ケース部17<導光体15」である。
・透明部18(サファイアガラスの場合):6.5~8.0×10-6(「毎ケルビン(/K)」または「毎度(/℃)」)
・導光体15(PCやPMMAなどの透明樹脂):60~70×10-6(「/K」または「/℃」)
・ケース部17(ガラスフィラー配合樹脂PC、FPSなど):10~20×10-6(「/K」または「/℃」)
【0030】
(実施形態に係る硬貨鑑別装置の動作について)
次に、
図1ないし
図4を参照して、実施形態に係る硬貨鑑別部9の動作について説明する。
図2に示す制御部40は、プーリ32を稼動させ、プーリ32の回転に伴い搬送ベルト33を走行させる。これにより、硬貨Cは、搬送ベルト33のピン34に押されて搬送面Hを搬送方向に向かって搬送され、カメラ部10に到達する。カメラ部10は、透明部18上を通過する硬貨Cを撮像する。ここまで説明した通り、カメラ部10は、指向性が高く入射角の浅い光を硬貨Cに対して照射し、硬貨Cが有する凹凸部分に当たった光が撮像センサ11へ反射する。その為、硬貨Cの鑑別に適した画像が取得できる。
【0031】
ここで、例えばカメラ部10が常温から低温に晒された場合、一般的にはガラスや樹脂材料の寸法は縮まる(小さくなる)ことが分かっている。上記で列挙した線膨張係数は、ケース部17より導光体15の方が大きいため、導光体15の収縮量がケース部17に比べて大きくなり、導光体15は透明部18から遠ざかるように寸法が小さくなる(つまり、導光体15は、上端部15cと透明部18との間に隙間が発生するように変形する)。しかしながら、付勢部19が導光体15を上方(すなわち透明部18側)に押し上げる働きをするため、導光体15と透明部18とが温度変化によって変形(収縮)したとしても常に密着する。
【0032】
また、逆の温度変化である高温時の場合で考えたときにも同様なことが言える。高温時は一般的にガラスや樹脂材料の寸法は膨張する(大きくなる)ことが分かっている。上記で列挙した線膨張係数は、ケース部17より導光体15の方が大きいため、導光体15の膨張量がケース部17に比べて大きくなり、導光体15は透明部18を下方から押し上げるように寸法が大きくなる(つまり、導光体15は、上端部15cが透明部18を当接した状態からさらに上方へ押圧するように変形する)。そのため、膨張量が大きい場合に、導光体15から透明部18に対して過度な力がかかり、透明部18を損傷させる(例えば、表面を剥がしてしまう)恐れがある。しかしながら、付勢部19の方が透明部18よりも柔らかいため、導光体15が透明部18を過度に押圧する力が掛かる前に付勢部19がその力を吸収するため、透明部18が損傷するのを抑制できる。
【0033】
以上のように、実施形態に係る硬貨鑑別部9は、導光体15を透明部18の方向(上方向)に付勢する付勢部19を備えるので、硬貨鑑別部9を構成する部材(例えば、導光体15、ケース部17など)が温度変化により収縮した場合でも、導光体15と透明部18との間に隙間が発生しない。つまり、この付勢部19は、導光体15を透明部18へ常に押し付ける役割をなすので、低温時に導光体15が収縮したとしても、導光体15と透明部18とが常に密着した状態になるため、硬貨Cに対して浅く指向性の強い光を照射することを維持できるので、硬貨Cの鑑別に適した画像が取得できる。硬貨鑑別部9を備える貨幣取扱装置1についても同様である。
【0034】
また、付勢部19を弾性体とすることにより、硬貨鑑別部9を構成する部材(例えば、導光体15、ケース部17など)が温度変化により膨張した場合でも、透明部18に対して過度な押圧力が加わることを抑制できる。つまり、この付勢部19は、高温時では導光体15の過度な膨張を吸収する役割をなすので、透明部18が損傷するのを抑制できる。硬貨鑑別部9を備える貨幣取扱装置1についても同様である。
【0035】
ここで、実施形態で説明した付勢部19を備えない従来の硬貨鑑別装置によって500円硬貨を撮像した撮像画像を
図5に示す。
図5は、比較例としての従来の硬貨鑑別装置で硬貨を撮像した撮像画像のイメージであり、(a)は低温時に撮像したものであり、(b)は常温時に撮像したものであり、(c)は高温時に撮像したものである。
常温時では、導光体15と透明部18との間に隙間がない(あったとしても無視できる程度に小さい)ので、硬貨Cに対して浅く指向性の強い光を照射できる。その結果、
図5(b)に示すように、撮像画像は、硬貨Cに光が均一に配光された鑑別に適したものとなる。
これに対して低温時では、部材の縮小によって導光体15と透明部18との間に隙間が発生するので、硬貨Cに対して浅く指向性の強い光を照射できない(硬貨Cに対して不均一に光が照射される形になってしまう)ことがある。その結果、例えば
図5(a)に示すように、撮像画像は、硬貨Cの縁部周辺が暗くなってしまい、硬貨Cの判別性能に影響を与えるなどの問題が発生する。
また、高温時では、導光体15と透明部18との間に隙間がない(あったとしても無視できる程度に小さい)ので、
図5(c)に示すように、撮像画像は、常温時と同様の硬貨Cに光が均一に配光された鑑別に適したものとなる。しかしながら、部材の膨張によって、透明部18に過度な負荷がかかってしまい、透明部18が剥離する懸念がある。部材同士を固定する固定部分についても同様の問題(破損(クラック)や接着剥がれ)が発生する可能性がある。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を変えない範囲で実施することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 貨幣取扱装置
2 媒体取扱部
3 表示操作部
4 通帳挿入排出口
5 紙幣入出金部
6 硬貨入出金部
9 硬貨鑑別部(硬貨鑑別装置)
10 カメラ部
11 撮像センサ
12 レンズ
13 LED(光源)
14 LEDレンズ
15 導光体
15d 凸部
16 遮光部
17 ケース部
17a 凹部
18 透明部
19 付勢部
20 基板
30 搬送部
31 搬送ガイド
32 プーリ
33 搬送ベルト
34 ピン
40 制御部
C 硬貨
H 搬送面