(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】搬送装置及び自動倉庫
(51)【国際特許分類】
B65G 1/04 20060101AFI20241112BHJP
B65G 1/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B65G1/04 547
B65G1/04 543
B65G1/04 531D
B65G1/00 521C
(21)【出願番号】P 2021094736
(22)【出願日】2021-06-04
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 浩嗣
(72)【発明者】
【氏名】玖野 仁志
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-156720(JP,A)
【文献】特開2018-111555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/04
B65G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の倉庫の外側に敷設された走行レールの上を移動する移動台車と、
前記移動台車に積載され、前記移動台車から前記走行レールの幅方向に向けて乗降して、前記複数の倉庫に入出する走行体と、
を備える搬送装置であって、
前記移動台車は、
前記複数の倉庫の外部に設けられた地上盤に対して光伝送により通信を行う光通信手段と、
前記走行体に対して無線LANにより通信を行う親側無線通信手段と、
前記光通信手段及び前記親側無線通信手段の少なくとも何れか一方が取得した情報に基づいて、前記移動台車及び前記走行体の動作を制御する親側機上盤と、を備え、
前記走行体は、
前記移動台車の前記親側無線通信手段に対して前記無線LANによって通信を行う子側無線通信手段と、
前記倉庫内の走行位置を検出する複数の近接センサと、
前記子側無線通信手段及び前記近接センサの少なくとも何れか一方が取得した情報に基づいて
、前記走行体の動作を制御する子側機上盤と、
前記子側機上盤の制御に基づいて、フィルムをコアに巻き回したロール体を前記コアの両端を支持することで搬送する一対の耐熱リニアガイド方式のシャトルフォークと、を備える
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載された搬送装置において、
前記倉庫には、前記走行体を案内するガイドレールに沿って前記近接センサを動作させるためのドグが複数設けられ、
前記子側機上盤は、前記近接センサが前記ドグを検知することにより、前記倉庫内の走行位置を検出する
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載された搬送装置において、
前記子側機上盤は、2個の前記近接センサが1枚のドグを別タイミングで検知した情報に基づいて、前記倉庫内の前記走行位置を検出する4逓倍制御を行う
ことを特徴とする搬送装置
。
【請求項4】
請求項
1に記載された搬送装置において、
前記シャトルフォークは、前記子側機上盤の制御に基づいて、垂直方向に昇降するとともに水平方向に伸縮することで、前記倉庫内において前記コアの両端を支持可能な所定の棚に前記ロール体を搬入出する
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項
1又は請求項
4に記載された搬送装置において、
前記走行体は、前記子側機上盤の制御に基づいて、前記走行体の走行又は前記シャトルフォークの昇降のために動作する耐熱クラスB又はFのモータをさらに備える
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の搬送装置において、
前記倉庫の内部及び前記走行体は、互いに接触又は近接して給電を行う耐熱型給電装置をそれぞれ備える
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項7】
複数の倉庫の外側に敷設された走行レールの上を移動する移動台車と、前記移動台車に積載され、前記移動台車から前記走行レールの幅方向に向けて乗降して、前記複数の倉庫に入出する走行体と、を備える搬送装置と、
前記搬送装置における前記移動台車から前記走行体が乗降して入出する前記複数の倉庫と、
を備える自動倉庫であって、
前記移動台車は、前記複数の倉庫の外部に設けられた地上盤に対して光伝送により通信を行う光通信手段と、前記走行体に対して無線LANにより通信を行う親側無線通信手段と、前記光通信手段及び前記親側無線通信手段の少なくとも何れか一方が取得した情報に基づいて、前記移動台車及び前記走行体の動作を制御する親側機上盤と、を備え、
前記走行体は、前記移動台車の前記親側無線通信手段に対して前記無線LANによって通信を行う子側無線通信手段と、前記倉庫内の走行位置を検出する複数の近接センサと、前記子側無線通信手段及び前記近接センサの少なくとも何れか一方が取得した情報に基づいて、前記走行体の動作を制御する子側機上盤と、を備え、
前記複数の倉庫は、前記走行体が入出するときに開閉する耐熱用シャッタをそれぞれ備える
ことを特徴とする自動倉庫。
【請求項8】
請求項
7に記載の自動倉庫において、
前記複数の倉庫は、前記倉庫の内部を所定の温度範囲内に保持することが可能な空調システムをそれぞれ備える
ことを特徴とする自動倉庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置及び自動倉庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレクトロニクス分野やエレルギー分野などにおいて、例えば、液晶パネルや二次電池を保護するための外装フィルムなどに高機能フィルムが用いられていることが知られている。高機能フィルムは、例えば、アルミ材に接着剤が塗布され、その上に重ねられたPET(polyethylene terephthalate:ポリエチレンテレフタラート)材が溶着されることによって製造される。アルミ材やPET材などの原料フィルムが溶着された高機能フィルムの製品を安定化させるためには、いわゆるエージング(エイジング)の工程が必要である。
【0003】
一般に、エージングとは、重工業製品(特に電気製品)の場合には新品が安定動作するまで動作させることを意味する。高機能フィルムの場合には、エージングは、原料フィルムを溶着させた高機能フィルム(以下、単に「フィルム」とも称する。)がロール状に巻き回されたものを、一定温度に保持された倉庫内で一定期間保管されることを意味する。なお、このようなフィルムのエージングに用いられる倉庫は、エージングルームと呼ばれている。
【0004】
フィルムがロール状に巻き回されたロール状のフィルム(以下、「ロール体」とも称する。)は、例えば、重量1トン級にもなり、非常に重量があるものである。このため、エージングルーム間及びエージングルーム内において、ロール体を搬送する搬送装置は、非常に重量があるものを搬送及び搬入出しなければならない。このような搬送装置として、例えば、走行体が、移送台車に載せられて収納棚間を移動し、所望の収納棚の位置で移送台車から降ろされて、所望の収納位置まで自走して物品を搬入出する親子クレーン方式の搬送装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、上述のとおり、ロール体は、エージング工程において、一定温度に保持された倉庫内で一定期間保管されるため、ロール体を保管する倉庫は、一定期間一定温度に保たれなければならない。このため、そのような倉庫では、倉庫内に保管した物品に満遍なく均等に風を行き渡らせて、多段多連ラック内の温度分布の均一性を確保できるような空調システムが用いられている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3731701号公報
【文献】特許第6279379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、近年は、従来よりもフィルムが高機能化してきたことや従来よりも安定化したフィルムを製造するため、フィルムを巻き回したロール体をエージングするエージング工程において、エージングルームの温度を従来よりも高温に保持することが求められている。すなわち、例えば、エージングルームの温度を従来よりも高温の80℃±2℃としてロール体を一定期間保管することが求められている。
【0008】
一方、従来の親子クレーン方式の搬送装置の耐環境温度は、一般に45℃程度であり、従来の搬送装置は、上記のような、例えば80℃という従来よりも高温のエージングルームでは用いることができない。
【0009】
また、従来の倉庫に用いられている空調システムでは、一般に室内温度を上限60℃程度とする性能しかなく、従来の空調システムは、上記のような、例えば80℃という従来よりも高温のエージングルームに用いることができない。
【0010】
また、仮に、従来の空調システムにより、無理に室温を80℃程度まで上げることができたとしても、温調した空気の吹き出しの方向やその流れ制御によって、また親子クレーン方式の搬送装置が動作することによって冷気の侵入によって温度変動が生じる。これにより、エージングルーム内の室温にムラが生じてしまう。このため、従来の空調システムでは、エージングルームの温度を80℃±2℃という高温かつ恒温に一定期間保持することができない。
【0011】
なお、親子クレーン方式の搬送装置を用いずに、エージングルーム1部屋につき1台のスタッカークレーン(子クレーン)のみを用いれば、エージングルームへの子クレーンの入出がなくなるため、親子クレーン方式よりも冷気の進入の抑制が可能である。しかし、この方式では、エージングルーム1部屋につき1台のスタッカークレーン(子クレーン)が必要である。このため、エージングルーム1部屋につき1台のスタッカークレーン(子クレーン)を用いた場合、エージングルームが複数部屋に亘る場合、子クレーン1台が複数の部屋で動作可能な親子クレーン方式の搬送装置よりもコストが増大してしまう。
【0012】
そこで、本件開示は、コストを増大させずに、高温かつ恒温の複数の倉庫においても所定期間連続して運転可能な搬送装置及び当該搬送装置を有する自動倉庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一態様に係る搬送装置は、複数の倉庫の外側に敷設された走行レールの上を移動する移動台車と、移動台車に積載され、移動台車から走行レールの幅方向に向けて乗降して、複数の倉庫に入出する走行体と、を備える搬送装置であって、移動台車は、複数の倉庫の外部に設けられた地上盤に対して光伝送により通信を行う光通信手段と、走行体に対して無線LANにより通信を行う親側無線通信手段と、光通信手段及び親側無線通信手段の少なくとも何れか一方が取得した情報に基づいて、移動台車及び走行体の動作を制御する親側機上盤と、を備え、走行体は、移動台車の親側無線通信手段に対して無線LANによって通信を行う子側無線通信手段と、倉庫内の走行位置を検出する複数の近接センサと、子側無線通信手段及び近接センサの少なくとも何れか一方が取得した情報に基づいて、走行体の動作を制御する子側機上盤と、子側機上盤の制御に基づいて、フィルムをコアに巻き回したロール体をコアの両端を支持することで搬送する一対の耐熱リニアガイド方式のシャトルフォークと、を備える。
【0014】
一態様に係る搬送装置において、倉庫には、走行体を案内するガイドレールに沿って近接センサを動作させるためのドグが複数設けられ、子側機上盤は、近接センサがドグを検知することにより、倉庫内の走行位置を検出してもよい。
【0015】
一態様に係る搬送装置において、子側機上盤は、2個の近接センサが1枚のドグを別タイミングで検知した情報に基づいて、倉庫内の走行位置を検出する4逓倍制御を行ってもよい。
【0017】
一態様に係る搬送装置において、シャトルフォークは、子側機上盤の制御に基づいて、垂直方向に昇降するとともに水平方向に伸縮することで、倉庫内においてコアの両端を支持可能な所定の棚にロール体を搬入出してもよい。
【0018】
一態様に係る搬送装置において、走行体は、子側機上盤の制御に基づいて、走行体の走行又はシャトルフォークの昇降のために動作する耐熱クラスB又はFのモータをさらに備えてもよい。
【0019】
一態様に係る搬送装置において、倉庫の内部及び走行体は、互いに接触又は近接して給電を行う耐熱型給電装置をそれぞれ備えてもよい。
【0020】
一態様に係る自動倉庫は、複数の倉庫の外側に敷設された走行レールの上を移動する移動台車と、移動台車に積載され、移動台車から走行レールの幅方向に向けて乗降して、複数の倉庫に入出する走行体と、を備える搬送装置と、搬送装置における移動台車から走行体が乗降して入出する複数の倉庫と、を備える。移動台車は、複数の倉庫の外部に設けられた地上盤に対して光伝送により通信を行う光通信手段と、走行体に対して無線LANにより通信を行う親側無線通信手段と、光通信手段及び親側無線通信手段の少なくとも何れか一方が取得した情報に基づいて、移動台車及び走行体の動作を制御する親側機上盤と、を備える。走行体は、移動台車の親側無線通信手段に対して無線LANによって通信を行う子側無線通信手段と、倉庫内の走行位置を検出する複数の近接センサと、子側無線通信手段及び近接センサの少なくとも何れか一方が取得した情報に基づいて、走行体の動作を制御する子側機上盤と、を備える。複数の倉庫は、走行体が入出するときに開閉する耐熱用シャッタをそれぞれ備える。
【0021】
一態様に係る自動倉庫において、複数の倉庫は、倉庫の内部を所定の温度範囲内に保持することが可能な空調システムをそれぞれ備えてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本件開示によれば、コストを増大させずに、高温かつ恒温の複数の倉庫においても所定期間連続して運転可能な搬送装置及び当該搬送装置を有する自動倉庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】搬送装置及び自動倉庫の一実施形態を示す図である。
【
図2】
図1に示す搬送装置及び自動倉庫を上面から見た様子の一例を示す図である。
【
図5】
図3及び
図4に示すシャトルフォークの動作の一例を示す図である。
【
図6】
図3及び
図4に示す近接センサの一例を拡大して示す図である。
【
図7】
図1及び
図2に示す倉庫内において、ドグの配置の一例を示す図である。
【
図8】
図3及び
図4に示す子側機上盤の盤内外の温度の推移を示す図である。
【
図9】搬送装置及び自動倉庫の比較例を示す図である。
【
図11】空調システム及び自動倉庫の一実施形態を模式的に示す図である。
【
図12】
図11に示す室内温度センサの配置の一例を示す図である。
【
図13】
図11に示す吹出口の配置構成の一例を模式的に示す上面図である。
【
図14】
図13に示す第二吹出口と第三吹出口との配置構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図15】
図11から
図14に示す実施形態に係る空調システムの検証シミュレーションに用いた構成を示す図である。
【
図16】比較例に係る空調システムの検証シミュレーションに用いた構成を示す図である。
【
図17】
図15に示した構成に基づいて行った検証シミュレーションの結果を示す図である。
【
図18】
図16に示した構成に基づいて行った検証シミュレーションの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<搬送装置及び自動倉庫の一実施形態>
以下、本件開示の搬送装置及び自動倉庫の一実施形態について、図面を用いて説明する。
【0025】
図1は、搬送装置30及び自動倉庫1の一実施形態を示す図である。
図1は、親子クレーン方式の搬送装置30が倉庫21内にロール体R(
図2参照)を搬送している様子を示している。
【0026】
図1(一部
図2)に示すように、自動倉庫1は、搬入出ゾーン10と、保管ゾーン20とを有する。自動倉庫1は、例えば、搬送装置30を用いて、高機能フィルムをコアに巻き回したロール体Rを搬入出ゾーン10から保管ゾーン20まで搬送させ、保管ゾーン20内の倉庫21内に保管させるものである。
【0027】
搬入出ゾーン10は、走行レール11と、光伝送装置12と、地上盤13とを有する。搬入出ゾーン10は、ロール体Rを搬送可能な搬送装置30がロール体Rを保管ゾーン20の倉庫21の前まで搬送するためのエリアである。なお、搬入出ゾーン10の温度は、常温であり、例えば23℃である。
【0028】
走行レール11は、搬入出ゾーン10に敷設され、搬送装置30の親トラバーサである移動台車40が走行レール11の長手方向である図中±Y方向に走行するレールである。
【0029】
光伝送装置12は、地上盤13と例えばケーブル12aで接続されている。また光伝送装置12は、地上盤13と搬送装置30における移動台車40の光通信部41と光通信する。光伝送装置12は、例えば、地上盤13からケーブル12aを介して受けた指示を移動台車40に送信し、また、移動台車40から送信された情報を受信してケーブル12aを介して地上盤13に伝送する。
【0030】
地上盤13は、例えば、プログラムを実行することにより動作するCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の不図示のプロセッサとメモリとを有する。地上盤13は、例えば、不図示のメモリに記憶された所定のプログラムを実行することにより不図示のプロセッサを動作させて、搬送装置30及び自動倉庫1の動作を統括的に制御する。なお、地上盤13は、外部装置やオペレータ等の指示に従って搬送装置30及び自動倉庫1の動作を制御してもよい。地上盤13は、光伝送装置12とケーブル12aを介して接続されている。地上盤13は、例えば、光伝送装置12を介して、搬送装置30にロール体Rの搬入出先等の行先や、ロール体Rの保管又は回収の動作を指示する。
【0031】
保管ゾーン20は、搬入出ゾーン10に隣接しており、走行レール11の幅方向(図中X方向)へ一定寸法離れた位置に、扉27で出入り口として仕切られて並列する複数の倉庫21を有する。なお、本実施形態では、一例として、搬入出ゾーン10の片側(図中X方向)のみに保管ゾーン20が存在するが、搬入出ゾーン10の両側(図中±X方向)に保管ゾーン20が存在してもよい。
【0032】
図2は、
図1に示す搬送装置30及び自動倉庫1を上面から見た様子の一例を示す図である。
【0033】
図2(一部
図1)に示すとおり、倉庫21は、棚22と、枕体23と、下部ガイドレール24と、上部ガイドレール25と、パネル26と、扉27とを有する。倉庫21は、例えば、ロール体Rをエージングするため、所定の温度範囲内に保持されたエージングルームである。すなわち、倉庫21の内部の温度は、常温(例えば、23℃)よりもはるかに高温かつ恒温に保たれており、例えば80℃±2℃である。倉庫21は、搬入出ゾーン10に隣接した保管ゾーン20内に複数存在する。以下、倉庫21は、「エージングルーム21」とも称する。
【0034】
棚22(ラック22)は、ロール体Rを保管可能に複数設けられた多段多連のラックである。棚22の垂直方向の段数や水平方向の数は、特に制限はなく、倉庫21の大きさに応じて定められる。棚22は、ロール体Rの軸方向の両側に突出するコアCを両側から支持する枕体23を有する。
【0035】
枕体23は、ロール体Rの軸方向の両側に突出するコアCを両側から支持する。枕体23は、ロール体RのコアCが載置されてロール体Rを保持する強度を有する。この枕体23二つにコアCの両端により数百キログラム~数トンの重量がかかるので、棚22は、枕体23を強固に支持するためトラス構造に組まれた支柱構造を有する。
【0036】
下部ガイドレール24は、倉庫21の手前の扉27から奥のパネル26まで図中X方向に、床面に例えば1本のレールとして存在する。下部ガイドレール24は、搬送装置30の子クレーンである後述の走行体50の下部駆動輪52を案内する。
【0037】
上部ガイドレール25は、倉庫21の手前の扉27から奥のパネル26まで図中X方向に天井面近くに例えば1本のレールとして存在する。上部ガイドレール25は、搬送装置30の子クレーンである後述の走行体50の上部駆動輪53を案内する。
【0038】
パネル26は、枕体23を強固に支持するためトラス構造に組まれた支柱構造を有する棚22を控として利用して立設されることで棚22の外部から覆い、天井も棚22の構造を利用してパネル26で外部から覆うように設置される。これにより、高温かつ恒温の倉庫21は、外部から遮断され密閉される。パネル26は、例えば、耐熱性能80℃の不燃パネルが用いられる。パネル26に近接した位置には、後述の空調システム100で使用される各種のダクトが張り巡らされている。後述のとおり、給気ダクトSAは、パネル26に直接80℃以上の空気が当たらないように吹出口140が設けられている(
図11~13参照)。このため、パネル26は、上述のとおり耐熱性能80℃であるが、80℃以上の空気が直接当たることが無いため、例えば80℃±2℃の高温かつ恒温の環境でも問題無く使用することが可能である。
【0039】
扉27は、例えば両開きの自動ドアであり、後述の走行体50が倉庫21に入出するときに開閉する。両開きにすることで、上部ガイドレール25と下部ガイドレール24とを閉止時に2つの扉27で挟む、もっと言えば、扉27の締め切り端部に上部ガイドレール25と下部ガイドレール24の外形を模った逃げを設けておけば、気密よく閉止できる。扉27は、例えば、80℃以上の環境下であっても動作可能な耐熱用シャッタである。動作用モータは、例えば耐熱クラスB程度のモータを用いたものであり、プーリなども高温耐性があり、グリースなどの潤滑剤も高温対策用にしたものである。このため、扉27は、例えば80℃±2℃の高温かつ恒温の環境でも故障することなく動作することが可能である。
【0040】
図3は、
図1及び
図2に示す搬送装置30の一例を示す図である。
図3に示すように、搬送装置30は、親トラバーサとしての移動台車40と、移動台車40に積載される子クレーンとしての走行体50とを有する親子クレーン方式を採用する。なお、以下、搬送装置30は、「親子クレーン30」とも称し、移動台車40は、「親トラバーサ40」又は単に「トラバーサ40」とも称し、走行体50は、「子クレーン50」又は「スタッカークレーン50」とも称する。
【0041】
図4は、
図1及び
図2に示す搬送装置30の別の例を示す図である。
図4に示す搬送装置30も、
図3に示す搬送装置30と同様の構成を有する。
【0042】
図3及び
図4(一部
図1、
図2)に示すように、移動台車40(親トラバーサ40)は、走行体50(子クレーン50)を図中±X方向に乗降自在に積載し、地上盤13の制御に従って、走行レール11を図中±Y方向に走行する。移動台車40は、光通信部41と、給電装置42と、下部案内レール43と、上部案内レール44と、駆動輪45と、親側機上盤46とを有する。なお、親トラバーサ40は、ロール体Rを一時的に保持する保持部47を有していてもよい(
図4参照)。
【0043】
光通信部41は、地上盤13と光通信する。光通信部41は、例えば、地上盤13からの動作指示を受信し、ケーブル41aを介して親側機上盤46に伝送する。また、光通信部41は、ケーブル41aを介して親側機上盤46から受信した情報を地上盤13へ送信する。なお、光通信部41は、光通信手段の一例である。
【0044】
給電装置42は、例えば、走行レール11を走行する駆動輪45に近接されて存在し、搬入出ゾーン10の走行レール11に併設された不図示の給電部から親トラバーサ40及び子クレーン50の動作に用いる電力が供給される。なお、給電装置42の位置は、上記の位置には限られず、親トラバーサ40の形状や搬入出ゾーン10に設けられた不図示の給電部の位置に応じて適宜変更可能である。
【0045】
下部案内レール43は、親トラバーサ40の下部に図中X方向に設けられ、子クレーン50の下部駆動輪52を案内する。
【0046】
上部案内レール44は、親トラバーサ40の上部に図中X方向に設けられ、子クレーン50の上部駆動輪53を案内する。
【0047】
駆動輪45は、親トラバーサ40の底面に走行レール11の幅に沿って複数設けられる。駆動輪45は、親側機上盤46の制御に従って動作する不図示のモータを動力として回転し、親トラバーサ40を走行レール11上において図中±Y方向に走行させる。
【0048】
親側機上盤46は、プログラムを実行することにより動作するCPUやGPU等の不図示のプロセッサとメモリとを有する。親側機上盤46は、例えば、不図示のメモリに記憶された所定のプログラムを実行することにより不図示のプロセッサを動作させて、親トラバーサ40及び子クレーン50の動作を統括的に制御する。親側機上盤46は、光通信部41とケーブル41aを介して接続されており、光通信部41を介して地上盤13との間で光通信により情報を送受信する。また、親側機上盤46は、無線LAN(Local Area Network)による通信を行う無線通信部46aを有しており、子クレーン50との間で、無線LANによる通信、例えばWi-Fi(Wireless Fidelity)通信等の無線通信を行う。なお、無線LANによる通信は、無線通信手段の一例である。
【0049】
走行体50(子クレーン50)は、例えば、スタッカークレーンである。スタッカークレーンとは、一般的には、自動倉庫のラック間に設備され、ラックより荷を取出したり、納めたりするクレーンのことであり、例えば、人荷昇降式と荷昇降式とが存在する。スタッカークレーンは、一般的には、ラックの水平前後方へ移動する走行機能、ラックの上下方へアクセスする昇降機能、荷をラックへ格納、搬出するフォーク機能を有している。
【0050】
本実施形態の子クレーン50は、給電装置51と、下部駆動輪52と、上部駆動輪53と、移載機54と、近接センサ55と、子側機上盤56とを有する。子クレーン50は、移載機54にロール体Rを積載可能であり、親トラバーサ40に図中±X方向に乗降自在に積載される。子クレーン50は、倉庫21の内部を図中±X方向に走行して、移載機54を動作させ、ロール体Rを倉庫21内の棚22に搬入出する。なお、子クレーン50は、親トラバーサ40に積載されているときは、ロール体Rを親トラバーサの保持部47に保持させてもよい(
図4参照)。
【0051】
給電装置51は、例えば、倉庫21内の下部ガイドレール24に案内される下部駆動輪52の近くに設けられ、倉庫21内の棚22又は下部ガイドレール24に併設された不図示の給電部から子クレーン50の動作に用いる電力が供給される。給電装置51は、耐熱型給電装置が用いられる。子クレーン50側に設けられる給電装置51は、例えばトロリ型の集電子で銅などでできており、地上側の給電部の絶縁部は、例えばポリカーボネート樹脂など耐熱性があって、例えば耐熱2種などとする耐熱型給電装置であればよい。耐熱型給電装置であれば、例えば80℃±2℃の高温かつ恒温の環境でも故障することなく動作することが可能である。なお、給電装置51の位置は、上記の位置には限られず、子クレーン50の形状や倉庫21内に設けられた不図示の給電部の位置に応じて適宜変更可能である。
【0052】
下部駆動輪52は、例えば、子クレーン50の底面に図中X方向に沿って下部ガイドレール24に係合するよう設けられる。下部駆動輪52は、親トラバーサ40の下部案内レール43や、倉庫21内の下部ガイドレール24に上面及び両側面から接するように複数設けられる。下部駆動輪52は、子側機上盤56の制御に従って動作する不図示のモータを動力として上部駆動輪53と同時に回転し、子クレーン50を下部ガイドレール24に沿って図中±X方向に走行させる。
【0053】
上部駆動輪53は、例えば、子クレーン50の上面に図中X方向に沿って上部ガイドレール25に係合するよう設けられる。上部駆動輪53は、親トラバーサ40の上部案内レール44や、倉庫21内の上部ガイドレール25に下面及び両側面から接するように複数設けられる。上部駆動輪53は、子側機上盤56の制御に従って動作する不図示のモータを動力として下部駆動輪52と同時に回転し、子クレーン50を上部ガイドレール25に沿って図中±X方向に走行させる。
【0054】
移載機54は、昇降用駆動輪61と、シャトルフォーク62とを有する。移載機54は、子クレーン50が目的の棚22の位置に到着すると、子側機上盤56の制御に従って昇降用駆動輪61を駆動させて、目的の棚22の前まで図中±Z方向に移動する。そして、移載機54は、子側機上盤56の制御に従って目的の棚22の位置に応じてシャトルフォーク62を図中Y方向又は-Y方向に伸長させてロール体Rを保管させ又は回収する。なお、移載機54は、子クレーン50と一体であっても別体であってもよい。
【0055】
昇降用駆動輪61は、子クレーン50の両側部の支柱50aに沿ってそれぞれ複数設けられる。昇降用駆動輪61は、子側機上盤56の制御に従って動作する不図示のモータを動力として回転し、移載機54を両側の支柱50aに沿って図中±Z方向に昇降させる。
【0056】
なお、下部駆動輪52、上部駆動輪53、及び昇降用駆動輪61を動作させる不図示のモータは、少なくとも耐熱クラスBクラス、望ましくは耐熱クラスFクラスのモータが用いられる。耐熱クラスがBクラスのモータは、周囲温度80度に対して45℃以上モータ発熱でモータ表面温度が130℃まで上がってもモータ絶縁が確保されて動作可能なモータである。耐熱クラスがFクラスのモータは、周囲温度80度に対して70℃以上モータ発熱でモータ表面温度が155℃まで上がってもモータ絶縁が確保されて動作可能なモータである。耐熱クラスBでは、モータ絶縁材としてポリエステル系のエナメルフィルムなどが用いられ、耐熱クラスFでは、マイカ・ガラス繊維と耐熱接着剤のモータ絶縁材が用いられる。このため、下部駆動輪52、上部駆動輪53、及び昇降用駆動輪61を動作させる不図示のモータは、例えば80℃±2℃の高温かつ恒温の環境でも故障することなく動作することが可能である。
【0057】
シャトルフォーク62は、移載機54に図中X方向の両端に一対設けられる。一対のシャトルフォーク62は、図中±Y方向に伸縮可能である。
【0058】
図5は、
図3及び
図4に示すシャトルフォーク62の動作の一例を示す図である。
図5(a)は、シャトルフォーク62の側面を示す図であり、
図5(b)は、シャトルフォーク62の上面を示す図である。
【0059】
図5に示すように、一対のシャトルフォーク62は、図中矢印方向の前後(±Y方向)に伸縮するための複数の送り出しプレート62a、62bを有する。送り出しプレート62a、62bは、搬送物であるロール体Rを正確に±Y方向限定して移動させるために、カムフロア方式の伸縮構造、または耐熱リニアガイド方式の伸縮構造を有している。シャトルフォーク62は、送り出しプレート62a、62bを、例えば、耐熱リニアガイド方式で動作させて伸縮する。このため、シャトルフォーク62は、例えば80℃±2℃の高温かつ恒温の環境でも故障することなく動作することが可能である。なお、一対のシャトルフォーク62は、送り出しプレート62a、62bをカムフロア方式で動作させて伸縮させてもよい。カムフロア方式での連続使用は、通常は60℃以下が推奨されているものの、カムフロア方式の使用可能温度自体は、-20℃~120℃程度である。このため、通常、子クレーン50が長時間倉庫21内に滞留することは無いため、送り出しプレート62a、62bをカムフロア方式としても通常は問題とはならないと考えられる。
【0060】
また、一対のシャトルフォーク62は、それぞれコア保持部62cが設けられる。一対のコア保持部62cは、ロール体Rの軸方向の両端から突出するコアCを下部から支持してロール体Rを保持する。なお、
図3及び
図5に示すコア保持部62cは、ロール体Rを1つ(1ヶ所で)保持することが可能となっており、
図4に示すコア保持部62cは、ロール体Rを2つ(2ヶ所で)保持することが可能となっているが、これらには限られない。ロール体Rを保持可能な場所及び数は、適宜変更可能である。
【0061】
なお、自動倉庫1において、ロール体Rの棚22への移送(払い出し)は、以下のような手順で行われる。
図1から
図5に示すように、まず、親トラバーサ40が目的の倉庫21の前まで±Y方向に移動する。次に、倉庫21の扉27が開くと、親トラバーサ40から降りた子クレーン50が、目的の棚22の前まで倉庫21内を走行し、目的の棚22の前で停止する。子クレーン50は、コア保持部62cが目的の棚22の枕体23の高さより若干高い位置となるように、移載機54を図中±Z方向に昇降させる。そして、移載機54は、シャトルフォーク62をY方向に伸長させて、コア保持部62cが保持しているロール体RのコアCを目的の棚22の枕体23の位置における枕体23より高い位置に位置させる。その後、子クレーン50は、移載機54を下降させることでシャトルフォーク62を下降させ、ロール体RのコアCの両端をコア保持部62cから棚22の枕体23に置くことでロール体Rを受け渡す。このようにして、ロール体RのコアCの両端は、枕体23に支持されて保持されることになる。
【0062】
一方、自動倉庫1において、ロール体Rの搬送装置30への移送(取り込み)は、上記と逆の手順で行われる。すなわち、目的の棚22の前で停止した子クレーン50は、コア保持部62cが目的の棚22の枕体23の高さより若干低い位置となるように、移載機54を図中±Z方向に昇降させる。そして、移載機54は、シャトルフォーク62をY方向に伸長させて、コア保持部62cを目的の棚22の枕体23の位置における枕体23より低い位置に位置させる。その後、子クレーン50は、移載機54を上昇させることでシャトルフォーク62を上昇させ、棚22の枕体23に保持されているロール体RのコアCの両端を棚22の枕体23からすくいあげることでロール体Rがコア保持部62cに受け渡される。このようにして、ロール体RのコアCの両端は、コア保持部62cに支持されて保持されることになる。その後、移載機54は、シャトルフォーク62を-Y方向に収縮させてロール体Rを回収する。
【0063】
上記の工程によれば、自動倉庫1において、搬送装置30を介したロール体Rの棚22への移送、棚22での保管、及び棚22からの回収のいずれの工程においても、ロール体Rは、コアC以外の部分には全く触れられることがない。このため、自動倉庫1では、コアCに巻き回されたフィルムが傷つくことが防止される。
【0064】
図3及び
図4に戻り、近接センサ55は、子クレーン50の下部に設けられ、倉庫21内の子クレーン50の走行位置等を検出する。近接センサ55は、リミットスイッチなどの接触式検出方式とは異なり、検出対象に接触することなく検出することを目的とするセンサである。近接センサ55は、光電センサやフルクローズド制御に使用するレーザ距離計とは異なり、これらの計測機と比較して構造が簡単なことと検出原理のため温度の影響をほとんど受けない。このため、近接センサ55は、例えば80℃±2℃の高温かつ恒温の環境でも故障することなく動作することが可能である。
【0065】
従来よく用いられる光電センサは、発光部にCMOSレーザーなど、受光部にも半導体、アンプなどが構成として必須であり、せいぜい50℃程度までしか対応できない精密機械である。対して近接センサ55は、これを動作させるための検出物体であるドグ80に発生する渦電流や、ドグ80への接近による電気的な容量の変化や、磁石やリードスイッチを利用して、ドグ80への接近及び離反を電気的信号に置き換える。そして、近接センサ55は、これらの電気信号に基づいてドグ80の移動情報や存在情報を検知する構成であり、どの形式でも高温に耐性があり高温で利用可能である。
【0066】
図6は、
図3及び
図4に示す近接センサ55の一例を拡大して示す図である。
図6は、近接センサ55を-X方向からX方向に向かって見た様子を示している。
【0067】
近接センサ55は、原点検出センサ71と、フロント側オーバーラン検出センサ72と、リア側オーバーラン検出センサ73と、フロント側減速センサ74と、リア側減速センサ75と、棚番号カウントセンサ76と、棚位置確認センサ77とを有する。各近接センサ55は、子側機上盤56と接続されており、検知した情報を子側機上盤56に出力する。
【0068】
また、倉庫21内の棚22の下部には、棚22と平行して、近接センサ55と同じ高さに複数のドグ80が設けられている。ドグ80は、近接センサ55を動作させるための検出物体である。ドグ80は、原点検出センサ用ドグ81と、オーバーラン検出センサ用ドグ82と、フロント側減速センサ用ドグ84と、リア側減速センサ用ドグ85と、棚番号カウントセンサ用ドグ86と、棚位置確認センサ用ドグ87とを有する。
【0069】
各近接センサ55は、それぞれ対応する各ドグ80への近接及び離反を検知する。例えば、近接センサ55は、ドグ80に発生する渦電流や、ドグ80への接近による電気的な容量の変化や、磁石やリードスイッチ等を利用して、ドグ80への接近及び離反を電気的信号に置き換えて、ドグ80の移動情報や存在情報を検知する。各近接センサ55は、検知した情報を子側機上盤56に出力する。近接センサ55の方式の詳しくは以下に示す。
【0070】
一つ目の、ドグ80に発生する渦電流の変化検出は、誘導形近接センサで、近接センサ側のコイルに交流自戒を発生させて検出体となる金属体であるドグ80に発生した渦電流によるインピーダンスの変化を検出する方式である。誘導型近接センサ自体は80℃をはるかに超える耐熱型もある。二つ目のドグ80への近接による電気的容量変化は、静電容量形近接センサで、ドグとセンサとの間に生じる静電容量の変化を検出する。ドグ80が近接すると、静電誘導効果によりセンサ内部の電極と大地電位間の静電塗料が増加することを、電極の静電容量変化に応じた発信振幅を検出する。三つ目の磁石やリードスイッチ等を利用して、ドグ80への接近及び離反を電気的信号に置き換える磁気近接センサは、磁石やリードスイッチなどを利用して磁石であるドグ80の近接による磁界によってセンサ内スイッチのリード片を動作させる検知である。近接センサ55は、このような磁界や静電誘導を利用するので、高温でも検知ができる。
【0071】
図7は、
図1及び
図2に示す倉庫21内において、ドグ80の配置の一例を示す図である。上述のとおり、倉庫21内の棚22の下部には、棚22と平行して、対応する近接センサ55と同じ高さに対応するドグ80が設けられている。
【0072】
例えば、原点検出センサ71は、同じ高さの位置にある原点検出センサ用ドグ81を検知する。子側機上盤56は、原点検出センサ71からの情報に基づいて原点を検出し、棚番号のカウントを開始又は終了する。また、例えば、フロント側オーバーラン検出センサ72又はリア側オーバーラン検出センサ73は、同じ高さの位置にあるオーバーラン検出センサ用ドグ82を検知する。子側機上盤56は、フロント側オーバーラン検出センサ72又はリア側オーバーラン検出センサ73からの情報に基づいて子クレーン50を異常停止させる。また、例えば、フロント側減速センサ74は、同じ高さの位置にあるフロント側減速センサ用ドグ84を検知し、リア側減速センサ75は、同じ高さの位置にあるリア側減速センサ用ドグ85を検知する。子側機上盤56は、フロント側減速センサ74又はリア側減速センサ75からの情報に基づいて子クレーン50を減速させる。
【0073】
また、例えば、棚番号カウントセンサ76は、同じ高さの位置にある棚番号カウントセンサ用ドグ86を検知する。子側機上盤56は、棚番号カウントセンサ76からの情報に基づいて棚番号をカウントする。なお、棚番号カウントセンサ76は水平方向に2個設けられており、子側機上盤56は、例えば、2個の棚番号カウントセンサ76が、1枚の棚番号カウントセンサ用ドグ86を別タイミングで検知することによる4逓倍制御によって、棚番号をカウントする。4逓倍制御によれば、2個の棚番号カウントセンサ76のそれぞれの立ち上り、立ち下り波形を微分して4倍出力が得られるため、分解能が4倍となり、高速で移動する子クレーン50においても、子側機上盤56は、棚番号を正確にカウントすることができる。例えば、子側機上盤56は、2個の棚番号カウントセンサ76の波形の変化を使用して、最初の棚22が4、次の棚22が8、さらに次の棚22が12と、4逓倍制御によってカウントしていく。
【0074】
また、例えば、棚位置確認センサ77は、棚位置確認センサ用ドグ87を検知する。子側機上盤56は、棚位置確認センサ77からの情報に基づいて棚位置を確認する。なお、棚位置確認センサ77は、水平方向に2個設けられており、子側機上盤56は、例えば、2個の棚位置確認センサ77が、1枚の棚位置確認センサ用ドグ87を別タイミングで検知することによる4逓倍制御によって、棚位置を確認する。4逓倍制御の方法は、上記の棚番号カウントセンサ76による方法と同様である。なお、棚番号カウントセンサ76及び棚位置確認センサ77以外の他の近接センサ55もそれぞれ水平方向に2個設けられ、子側機上盤56は、他の近接センサ55についても4逓倍制御による検出を行ってもよい。
【0075】
なお、倉庫21内の子クレーン50の位置を検出するためのセンサは、近接センサ55の代わりに耐熱リミットスイッチを用いてもよい。ドグ80との距離調整に手間がかかることや耐摩耗のローラレバーの対応を要するが、耐熱リミットスイッチであっても、高温の環境下において破損しないため、近接センサ55と同様の効果を奏する。
【0076】
図3及び
図4に戻り、子側機上盤56は、プログラムを実行することにより動作するCPUやGPU等の不図示のプロセッサとメモリとを有する。子側機上盤56は、不図示のメモリに記憶された所定のプログラムを実行することにより不図示のプロセッサを動作させて、子クレーン50の動作を統括的に制御する。子側機上盤56は、無線LANによる通信を行う無線通信部56aを有しており、親トラバーサ40との間で、例えばWi-Fi通信等の無線通信を行う。
【0077】
無線通信部56aは、その構成が子側機上盤56の内部に全て搭載される。このため、例えば、子側機上盤56の外部に光通信部を設けなければならない光伝送装置とは異なり、子側機上盤56が冷却されている限り、例えば80℃±2℃の高温かつ恒温の環境でも故障することなく動作することが可能である。また、無線LANによる無線通信によれば、光通信とは異なり、倉庫21のパネル26や扉27に遮られることなく、倉庫21の内部の子クレーン50と、倉庫21の外部の遠方の親トラバーサ40との間でも、通信することが可能である。なお、無線通信部56aは、子側無線通信手段の一例である。
【0078】
通信による動作の一例として、例えば、地上盤13から親トラバーサ40の親側機上盤46に光通信によって、搬送元~搬送先(From To)が指示される。そして、親トラバーサ40が対象となる倉庫21の前まで移動し、扉27が開いた後、親トラバーサ40の親側機上盤46から子クレーン50の子側機上盤56に無線通信によって、搬送元~搬送先(From To)が指示される。そして、子クレーン50は、指示された搬送先と近接センサ55による位置検出とに基づいて、目的の棚22まで移動し、ロール体Rを保管又は回収する。
【0079】
子側機上盤56は、冷却機能を有する盤クーラー56bを搭載する。盤クーラー56bは、例えば、冷媒を保持し、冷媒の気化熱及び凝縮熱を用いて周辺環境中の空気等と熱のやり取りを行う公知のヒートポンプ方式が用いられる。例えば、盤クーラー56bは、冷媒を減圧し膨張させて蒸発器で気化熱により熱を奪うことにより倉庫21内の周囲温度よりも子側機上盤56の内部の温度を下げる。子側機上盤56は、盤クーラー56bを搭載することにより、例えば80℃±2℃の高温かつ恒温の環境でも内部の温度上昇を抑えることで盤内機器を故障することなく動作させることが可能である。また、盤クーラー56bは、子側機上盤56の内部の温度を下げたことによる廃熱を子側機上盤56の外部に放出する。しかし、当該外部すなわち周囲の温度が、倉庫21の内部の温度であり、例えば80℃±2℃の高温かつ恒温に保持させる空調の空気場よりも低温(例えば60℃程度)であっても、隙間風と比べれば倉庫21内部温度に近い。このため、当該廃熱は、周囲の恒温空調システムによりすぐに処理され外乱とまではならない。なお、盤クーラー56bは、盤内部を規定の例えば内部温度に冷却し維持するためヒートポンプでその廃熱を外部に放出する。このため、内部規定温度が例えば50℃などの高温でよい場合に、廃熱が倉庫21の内部の温度80℃に近い温度となるのであれば、盤クーラー56bを、倉庫21の内部温度を例えば高温かつ恒温に保持させることに貢献する空調システムとして機能させてもよい。
【0080】
図8は、
図3及び
図4に示す子側機上盤56の盤内外の温度の推移を示す図である。
図8において、縦軸は、測定温度(℃)であり、横軸は、連続運転時間(min)である。上部の帯グラフは、子クレーン50の動作を示している。斜線部は、子クレーンが80℃の倉庫21(エージングルーム21)の内部で搬送中であることを示し、斜線の無い部分は、エージングルーム21の外部で待機中であることを示している。また、上部の折れ線グラフは、子側機上盤56の外側の温度を示し、下部の折れ線グラフは、子側機上盤56の内側の温度を示している。また、中央部に水平方向に引かれた太線は、子側機上盤56が故障する可能性のある温度である盤内温度上限の45℃を示している。
【0081】
図8によれば、子側機上盤56において、子側機上盤56の外側の温度は、盤内温度上限の45℃を超えてしまっている。一方、子側機上盤56は、盤クーラー56bを有しているため、子側機上盤56の内側の温度は、子クレーン50が80℃のエージングルーム21の内部で作業している間も、盤内温度上限の45℃を超えることがない。すなわち、
図8によれば、子側機上盤56は、盤クーラー56bを有しているため、例えば80℃±2℃の高温かつ恒温の環境でも故障することなく動作することが可能であることがわかる。
【0082】
<搬送装置及び自動倉庫の比較例>
図9は、搬送装置30A及び自動倉庫1Aの比較例を示す図である。なお、
図9に示す比較例において、
図1から
図8に示す実施形態と同一又は同様の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。なお、
図9では、一部の構成が省略又は切り欠かれて示されている。
【0083】
図9に示す比較例においては、自動倉庫1Aには、搬入出ゾーン10は存在せず、保管ゾーン20Aのみが存在する。保管ゾーン20Aには、倉庫21Aが複数存在し、各倉庫21Aは、搬送装置30Aとして±X方向に走行するスタッカークレーン50Aをそれぞれ有する。すなわち、1つの倉庫21Aにつき、それぞれ1台のスタッカークレーン50Aが必要である。このため、
図9に示す比較例における自動倉庫1Aでは、倉庫21Aの数が多くなると、その倉庫21Aの数に応じた台数のスタッカークレーン50Aを用意しなければならず、
図1から
図8に示す実施形態における自動倉庫1よりもコストが増大してしまう。一方、
図1から
図8に示す実施形態における自動倉庫1では、スタッカークレーン50は親子クレーン方式を用いているため、倉庫21の数が多くなったとしても、1台の親トラバーサ40と1台のスタッカークレーン50(子クレーン50)とを用いればよい。このため、
図1から
図8に示す実施形態における自動倉庫1では、倉庫21の数が多くなったとしても、
図9に示す比較例における自動倉庫1Aよりもコストの増大を抑制することができる。
【0084】
図10は、
図9に示す比較例と
図1から
図8に示す実施形態とを比較した表である。
図10の表の左側の列は、各構成要素(品名)を示し、中央の列は、
図9に示す比較例で用いられている構成を示し、右側の列は、
図1から
図8に示す実施形態で用いられている構成を示している。なお、以下の説明において、
図9に示す比較例における自動倉庫1A及び搬送装置30Aは、単に「比較例」とも称し、
図1から
図8に示す実施形態における自動倉庫1及び搬送装置30は、単に「本実施形態」とも称する。
【0085】
図10に示すとおり、シャトルフォークは、比較例では、カムフロア(カムフォロア)方式が採用されているのに対し、本実施形態では、耐熱リニアガイド方式が採用されている。カムフロアとは、例えば、内部にニードルベアリングが組込まれた、コンパクトで剛性の高いシャフト付きベアリングであり、正確に±Y方向に延長するガイドレールに拘束されるよう複数が並列された直線運動のガイドローラーとして用いられる。リニアガイド(LMガイド:Linear Motion Guide)とは、機械の直線運動部を「ころがり」を用いてガイドする機械要素部品である。すなわち、リニアガイドは、がっちりLMブロックを一方向しか移動できないようくわえ込むLMレールと、中にらせん状に溝が切られ、転がり軸受が数珠状に連結されたエンドレス鎖が前記の溝内を移動しながらLMレールに点接触し転がる。このため、リニアガイドは、非常に移動のための力が小さくて済む、摩擦損失の少ない直線移動機構である。本実施形態では、このリニアガイドを耐熱仕様にしたもの、つまり高温ゴムシールや高温用グリースなどを使ったリニアガイドを用いている。このため、本実施形態によれば、シャトルフォーク62は、例えば80℃±2℃の高温かつ恒温のエージングルーム21においても故障することなく動作することが可能である。なお、上述のとおり、本実施形態においてもカムフロア方式を採用してもよい。カムフロア方式を採用しても、上述のとおり、短時間であれば、シャトルフォーク62は、例えば80℃±2℃の高温かつ恒温のエージングルーム21においても故障することなく動作することが可能だからである。
【0086】
また、走行・昇降モータは、比較例では、一般モータが用いられているのに対し、本実施形態では、耐熱クラスB・Fのモータが用いられている。このため、本実施形態によれば、子クレーン50は、例えば80℃±2℃の高温かつ恒温のエージングルーム21においても故障することなく動作することが可能である。
【0087】
また、給電装置は、比較例では、一般給電装置が用いられているのに対し、本実施形態では、耐熱型給電装置が用いられている。このため、本実施形態によれば、子クレーン50は、例えば80℃±2℃の高温かつ恒温のエージングルーム21においても故障することなく給電されることが可能である。
【0088】
また、各種センサは、比較例では、光電センサが用いられているのに対し、本実施形態では、近接センサが用いられている。光電センサは、高温の環境下では破損してしまうのに対し、近接センサは、あらゆる温度条件においても動作する。このため、本実施形態によれば、子クレーン50は、例えば80℃±2℃の高温かつ恒温のエージングルーム21においても故障することなく位置検出を行うことが可能である。
【0089】
また、機上盤(子側機上盤)は、比較例では、ファン搭載制御盤が用いられているのに対し、本実施形態では、盤クーラー搭載制御盤が用いられている。このため、本実施形態の子側機上盤56は、盤の内部の温度の上昇を抑制することができる。このため、本実施形態によれば、子側機上盤56は、例えば80℃±2℃の高温かつ恒温のエージングルーム21においても故障することなく連続して動作を行うことが可能である。
【0090】
また、地上盤と機上盤との間の通信には、比較例では光伝送装置が用いられているのに対し、本実施形態では、無線LANが用いられている。光伝送装置は、子側機上盤56の外部に光通信部を設けなければならないのに対し、無線LANの装置は、子側機上盤56の内部に全ての構成を搭載可能である。このため、無線LANの装置は、子側機上盤56が冷却されている限り、外部の高温の状況にさらされることがない。このため、本実施形態によれば、無線LANの装置は、例えば80℃±2℃の高温かつ恒温のエージングルーム21においても故障することなく通信することが可能である。また、無線LANによる通信によれば、光通信とは異なり、エージングルーム21がパネル26及び扉27で密閉されても、エージングルーム21の内部の子クレーン50と、エージングルーム21の外部の親トラバーサ40との間で通信することも可能である。
【0091】
また、シャッタ(扉)は、比較例では、
図9に示すとおり存在しないのに対し、本実施形態では、耐熱用シャッタが用いられている。このため、本実施形態によれば、シャッタ(扉)は、例えば80℃±2℃の高温かつ恒温の環境でも故障することなく動作することが可能である。なお、本実施形態によれば、パネル26も耐熱性能を有する不燃パネルが用いられている。このため、本実施形態によれば、扉27及びパネル26を用いることで、エージングルーム21を例えば80℃±2℃の高温かつ恒温の空間として保持することが可能である。また、本実施形態の扉27を用いれば、自動倉庫1を搬入出ゾーン10と保管ゾーン20とに分けて、親子クレーン方式の搬送装置30を用いることが可能である。これにより、本実施形態によれば、1つの倉庫に1台の搬送装置30A(スタッカークレーン50A)が必要な比較例よりも、コストの増大を抑制させることができる。
【0092】
以上の構成を有することにより、耐環境温度は、比較例では、
図10に示すとおり、最大45℃となるのに対し、本実施形態では、
図10に示すとおり、最大80℃となる。このため、本実施形態によれば、自動倉庫1は、例えば80℃±2℃の高温かつ恒温の環境でも故障することが抑制される。
【0093】
<搬送装置及び自動倉庫の一実施形態の作用効果>
以上より、
図1から
図8に示す本実施形態によれば、倉庫21や子クレーン50における各構成要素が高温仕様となっている。また、子側機上盤56は、盤クーラー56b有し、冷却機能を備えている。また、子側機上盤56は、無線通信部56aを有し、親側機上盤46と無線LANによる通信を行う。これにより、
図1から
図8に示す本実施形態によれば、コストを増大させずに、高温かつ恒温の複数の倉庫21においても所定期間連続して運転可能な搬送装置30及び当該搬送装置30を有する自動倉庫1を提供することができる。
【0094】
<空調システム及び自動倉庫の一実施形態>
次に、本件開示の空調システム100及び自動倉庫1の一実施形態について、図面を用いて説明する。
【0095】
図11は、空調システム100及び自動倉庫1の一実施形態を模式的に示す図である。
図11では、空調システム100及び自動倉庫1の構成を模式的に示している。なお、以下の図面の説明において、
図1から
図8に示す実施形態と同一又は同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0096】
自動倉庫1は、倉庫21を複数有し、複数の倉庫21は、空調システム100を有する。なお、空調システム100は、複数の倉庫21に共通のものが設けられていてもよいし、各倉庫21に別々に設けられていてもよい。なお、倉庫21は、
図1から
図8に示す実施形態と同様に、例えば、ロール体Rをエージングするため、所定の温度範囲内に保持されたエージングルームである。すなわち、倉庫21の内部の温度は、常温(例えば、23℃)よりもはるかに高温かつ恒温に保たれており、例えば80℃±2℃に保持されている。以下、倉庫21は、
図1から
図8に示す本実施形態と同様に、「エージングルーム21」とも称する。
【0097】
空調システム100は、排気ダクトEA(Exhaust Air)と、外気ダクトOA(Outdoor Air)と、還気ダクトRA(Return Air)と、給気ダクトSA(Supply Air)と、空調制御装置120と、室内温度センサ130とを有する。
【0098】
排気ダクトEAは、エージングルーム21内の空気をエージングルーム21の外部に排出するダクトである。排気ダクトEAは、一端が還気ダクトRAと接続されており、他端が外部と接続されている。排気ダクトEAは、還気ダクトRA側である一端側にモータダンパMD(Motor Damper)1を有し、他端側に排気ファン111を有する。
【0099】
モータダンパMD1は、排気の流量を調節するダンパであり、空調制御装置120の制御に従って駆動する電動モータM1の動作に応じて開閉する。モータダンパMD1は、エージングルーム21の昇温時や定常時(例えば80℃±2℃の高温かつ恒温に保持されているとき)には閉鎖され、エージングルーム21の冷却時には開放される。
【0100】
排気ファン111は、例えば、軸に対して放射状に配置された羽根が回転することで空気を移動させる装置であり、空調制御装置120の制御に従って動作して、エージングルーム21内の空気をエージングルーム21の外部に排出する。排気ファン111は、昇温時や定常時には停止し、エージングルーム21の冷却時には運転する。
【0101】
外気ダクトOAは、エージングルーム21の外の空気をエージングルーム21の内部に取り込むダクトである。外気ダクトOAは、一端が還気ダクトRAと接続されており、他端が外部と接続されている。外気ダクトOAは、還気ダクトRA側である一端側にモータダンパMD2を有し、他端側は外部と直接接続されている。
【0102】
モータダンパMD2は、外気の流量を調節するダンパであり、空調制御装置120の制御に従って駆動する電動モータM2の動作によって開閉する。モータダンパMD2は、エージングルーム21の昇温時や定常時には閉鎖され、エージングルーム21の冷却時には開放される。
【0103】
還気ダクトRAは、エージングルーム21内の空気を給気ダクトSAに戻すためのダクトである。還気ダクトRAは、一端が換気口112と接続されており、他端が給気ダクトSAと接続されている。還気ダクトRAは、換気口112側である一端側にモータダンパMD3を有し、給気ダクトSA側である他端側に給気ファン113を有する。
【0104】
モータダンパMD3は、還気の流量を調節するダンパであり、空調制御装置120の制御に従って駆動する電動モータM3の動作によって開閉する。モータダンパMD3は、エージングルーム21の昇温時や定常時には開放され、エージングルーム21の冷却時には閉鎖される。
【0105】
給気ファン113は、排気ファン111と同様の構成を有する装置であり、空調制御装置120の制御に従って動作して、還気ダクトRA又は外気ダクトOAの空気を給気ダクトSAに供給する。給気ファン113は、エージングルーム21の昇温時や定常時には運転し、エージングルーム21の冷却時には間欠運転する。
【0106】
給気ダクトSAは、還気ダクトRAを介して取り込んだエージングルーム21内の空気をエージングルーム21内に送るためのダクトである。給気ダクトSAは、一端が給気ファン113を介して還気ダクトRAと接続されており、他端がエージングルーム21内の吹出口140と接続されている。給気ダクトSAは、還気ダクトRA側である一端側から吹出口140側である他端側に向けて、給気ファン113と、フィルタ114と、電気ヒータ115と、温度センサ116とを順に有する。
【0107】
フィルタ114は、給気ダクトSAから給気ファン113を介して送り込まれた空気の塵や埃等を取り除くフィルタである。フィルタ114は、倉庫21内におけるロール体Rのフィルム表面に塵埃が付着しないために設置され、例えば、中性能フィルタが用いられる。なお、フィルタ114は、例えば、クリーンルーム等で用いられるHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)であってもよい。
【0108】
電気ヒータ(Electric Heater)115は、空調制御装置120の制御に従って動作し、フィルタ114を通過した空気を温める。なお、電気ヒータ115は、後述の各温度センサから受けた温度情報に基づいて、電気ヒータ115自身で自己の動作を制御してもよい。電気ヒータ115は、エージングルーム21の昇温時や定常時には運転し、エージングルーム21の冷却時には停止する。なお、電気ヒータ115は、ヒータの一例である。後述の操作器がサイリスタではなく流量調整弁となるが、蒸気ヒータであっても高温水ヒータであってもよい。
【0109】
温度センサ116は、給気ダクトSAにおいて、電気ヒータ115で温められた空気の温度を測定する。温度センサ116は、測定した温度情報を空調制御装置120に出力する。なお、温度センサ116は、温度情報を電気ヒータ115に出力してもよい。温度センサ116から受けた温度情報によって、電気ヒータ115の出口温度を空調制御装置120又は電気ヒータ115自身が監視することにより、給気温度の上がり過ぎを抑制することができる。なお、温度センサ116は、第二温度センサの一例である。
【0110】
空調制御装置120は、プログラムを実行することにより動作するCPUやGPU等の不図示のプロセッサとメモリとを有する。空調制御装置120は、不図示のメモリに記憶された所定のプログラムを実行することにより不図示のプロセッサを動作させて、エージングルーム21の温度や給気温度を監視するとともに、空調システム100の動作を統括的に制御する。空調制御装置120は、選択部121と、温度制御部122と、動作制御部123とを有する。
【0111】
選択部121は、エージングルーム21内の温度を測定する後述の複数の室内温度センサ130と接続されており、これらの複数の室内温度センサ130のうち一部の室内温度センサ130が測定した温度の値を選択する。例えば、エージングルーム21内の任意の9個の室内温度センサ130のうち、代表する2個の室内温度センサ130の値を選択する。選択部121は、例えば、オペレータがモニタ画面上に表示された複数の室内温度センサ130から任意の室内温度センサ130を選択可能なタッチパネル付の表示器であるGOT(Graphic Operation Terminal)であってもよい。
【0112】
温度制御部122は、選択部121で選択された一部の室内温度センサ130の温度の値における平均温度の値と、温度センサ116が測定した温度の値とを監視し、これらの温度の値に基づいて、電気ヒータ115の出力を制御する。具体的には、複数から選択された室内温度センサ130の平均温度の値を定常時の計測温度とする。そして、温度制御部122において予め室内温度設定値(例えば80℃)として設定された設定値と計測温度との偏差に基づいて、例えばPID制御するべく温度制御部122にて演算した結果が操作器へ信号として出力される。昇温時や冷却時では、温度センサ116が計測した温度の値を計測温度とする。そして、ヒータによって加熱された空気温度が想定された温度上限値を超えないように、温度制御部122において予め設定されたダクト内空気温度設定値と前記計測温度(温度センサ116の値)との偏差に基づいて、温度制御部122にて演算した結果が操作器へ信号として出力される。
【0113】
温度制御部122は、操作器としてのサイリスタを含んでおり、主にゲートからカソードへゲート電流を流すことにより、アノードとカソードとの間を導通させることが出来る3端子の半導体素子であるサイリスタであってもよい。サイリスタは、スイッチングにより電流制御を行うものであり、上流から制御信号を受け、その弱電の計装信号によってスイッチングすることで大電流大電圧の動力回線である電気ヒータへの供給商用電流を制御する操作器である。なお、サイリスタは、シリコン制御整流子SCR(Silicon Controlled Rectifier)とも呼ばれる。
図11の中で温度制御部122からの矢印の一部は、図示していないが直接電気ヒータ115へ向かうものがあり、それがサイリスタから供給される商用電力を元とする供給電力である。
【0114】
動作制御部123は、室内温度センサ130や、温度センサ116が測定した温度の値や、温度制御部122からの情報や、昇温・定常・冷却等の外部指示等に基づいて、空調システム100の各部の動作を制御する。例えば、動作制御部123は、排気ファン111、給気ファン113、電気ヒータ115、モータダンパMD1~MD3(モータM1~M3)等の動作を制御する。
【0115】
例えば、昇温・定常時には、動作制御部123は、モータダンパMD1、MD2を閉鎖させ、モータダンパMD3を開放させ、排気ファン111を停止させ、給気ファン113を運転させ、電気ヒータ115を運転させる。すなわち、例えば、昇温・定常時には、エージングルーム21内の空気が還気ダクトRA及び給気ダクトSAを介して常に回転しており、エージングルーム21内の空気は、排気ダクトEAからは送出されず、外気ダクトOAを介して外気も流入しない。
【0116】
一方、例えば、冷却時には、動作制御部123は、モータダンパMD1、MD2を開放させ、モータダンパMD3を閉鎖させ、排気ファン111を運転させ、給気ファン113を間欠運転させ、電気ヒータ115を停止させる。すなわち、例えば、冷却時には、エージングルーム21内の空気は、還気ダクトRA及び給気ダクトSAを介して循環して再び室内へ供給されずに排気ダクトEAから送出し、また、外気ダクトOAからはエージングルーム21内に外気が流入する。
【0117】
なお、エージングルーム21内のパネル26の許容温度変化率が定められている場合、冷却時に外気が多く流入して定められた温度変化率を超えることがないように、給気ファン113は、動作制御部123の制御に従って間欠運転する。例えば、パネル26の許容温度変化率が1℃/分であるとき、動作制御部123は、エージングルーム21内の温度を10分毎に監視し、温度が1℃以上下がったときは給気ファン113の運転を所定時間停止させ、給気ファン113を間欠運転させる。
【0118】
なお、本実施形態において、ロール体Rは、80℃±2℃という高温かつ恒温で一定期間保管しなければならないとして、温度の条件は定められているが、湿度の条件は定められていない。このため、本実施形態の空調制御装置120は、温度は監視するが、湿度は監視せず、成行に任されている。但し、例えば、空調システム100は、エージングルーム21に保管する物品の性質によっては、湿度を監視してもよい。この場合、空調システム100は、不図示の湿度センサと、湿度制御部と、除加湿装置等を有してもよい。
【0119】
室内温度センサ130は、例えば、エージングルーム21の温度を所定時間間隔おき(例えば、10分おき)に測定する。エージングルーム21内の温度は、例えば、エージングルーム21内に配置された複数の室内温度センサ130のうち、代表する一部の複数の室内温度センサ130の温度の値に基づいて、空調制御装置120により制御される。例えば、エージングルーム21内の温度は、エージングルーム21内に設けられた9個の室内温度センサ130のうち代表する2個の室内温度センサ130の温度の値における平均の値に基づいて、空調制御装置120により制御される。これにより、空調制御装置120は、精度よくエージングルーム21の温度を制御することができる。なお、室内温度センサ130は、第一温度センサの一例である。
【0120】
図12は、
図11に示す室内温度センサ130の配置の一例を模式的に示す図である。
図12(a)は、
図11に示す室内温度センサ130の配置の一例を模式的に示すエージングルーム21の上面図である。
図12(b)は、
図11に示す室内温度センサ130の配置の一例を模式的に示すエージングルーム21の側面図である。
図12(c)は、
図11に示す室内温度センサ130の配置の一例を模式的に示すエージングルーム21の正面図である。
【0121】
図12に示すとおり、室内温度センサ130は、室内温度センサ130-1~130-9で示すとおり、例えば、エージングルーム21内に縦3ヶ所×横3ヶ所=計9ヶ所設けられる。
【0122】
すなわち、
図12(a)~(c)に示すとおり、室内温度センサ130-1~130-3は、図中Y方向のパネル26の扉27側に垂直方向に3ヶ所並べて設けられる。また、室内温度センサ130-4~130-6は、図中-Y方向のパネル26の中央付近に垂直方向に3ヶ所並べて設けられる。また、室内温度センサ130-7~130-9は、図中Y方向のパネル26の扉27とは反対側に垂直方向に3ヶ所並べて設けられる。
【0123】
すなわち、室内温度センサ130は、エージングルーム21内に垂直方向に3ヶ所設けられ、当該3ヶ所の設けられた室内温度センサ130のセットが水平方向に3ヶ所、両側のパネル26に交互に設けられる。すなわち、室内温度センサ130は、エージングルーム21内に縦3ヶ所×横3ヶ所=計9ヶ所設けられる。このような配置にすることにより、空調制御装置120は、精度よくエージングルーム21の温度を制御することができる。なお、上述の室内温度センサ130の位置及び数は一例であり、任意の複数の位置及び数に変更してもよい。
【0124】
図11に戻り、吹出口140は、給気ダクトSAに複数設けられ、電気ヒータ115で温められた空気をエージングルーム21内に吹き出して送り込む。吹出口140から送り込まれた空気によって、エージングルーム21は、高温かつ恒温である所定温度、例えば、80℃±2℃に保たれる。以下、吹出口140の配置構成について説明する。
【0125】
図13は、
図11に示す吹出口140の配置構成の一例を模式的に示す上面図である。
図13において、給気ダクトSAは、図中下部(-X方向)の扉27の両脇(両側部)に、図中-Z方向に立ち下がるように垂直に設けられた第一給気ダクトSA1と、第一給気ダクトSA1から図中X方向に向けて水平に伸びる第二給気ダクトSA2とを有する。なお、第一給気ダクトSA1と第二給気ダクトSA2とは、同一のダクトとして連続して設けられていてもよく、別のダクトとして別々に設けられていてもよい。
【0126】
扉27の両脇の第一給気ダクトSA1には、複数の吹出口140がそれぞれ対向するように垂直方向(Z方向)に連続して設けられ、複数の吹出口140は、図中矢印A1で示すように、両側からそれぞれ対向する方向に空気を吹き出す。以下、第一給気ダクトSA1に設けられた吹出口140を第一吹出口141と称する。両側の第一吹出口141は、それぞれ対向する方向に空気を吹き出すことで、扉27の前にエアカーテンを形成させる。これにより、走行体50が扉27を開閉して入出するときも、外気がエージングルーム21に進入することが抑制され、エージングルーム21を、高温かつ恒温に保つことができる。なお、第一給気ダクトSA1及び第一吹出口141は、図中下部(-X方向)の扉27側だけではなく、図中上部(X方向)の扉27とは反対側にも設けられていてもよい。
【0127】
エージングルーム21の両側の第二給気ダクトSA2にも、複数の吹出口140がそれぞれ設けられる。すなわち、第二給気ダクトSA2には、図中矢印A2で示すように、両側からそれぞれ対向するように空気を吹き出す吹出口140と、図中Z方向、すなわち下から上に向けて垂直に空気を吹き出す吹出口140とが設けられる。以下、第二給気ダクトSA2に設けられ、図中矢印A2で示すように両側からそれぞれ対向するように空気を吹き出す吹出口140を第二吹出口142と称し、図中Z方向すなわち下から上に向けて垂直に空気を吹き出す吹出口140を第三吹出口143と称する。
【0128】
図13に示すように、対向する第二吹出口142は、互い違いになるように両サイドの第二給気ダクトSA2にそれぞれ等間隔に交互に複数設けられている。また、第三吹出口143も、互い違いになるように両サイドの第二給気ダクトSA2にそれぞれ等間隔に交互に複数設けられている。さらに、同サイドの第二給気ダクトSA2において、第二吹出口142と第三吹出口143とも互い違いになるように等間隔に交互に複数設けられている。なお、第二吹出口142同士、第三吹出口143同士、及び第二吹出口142と第三吹出口143とがそれぞれ互い違いに等間隔に交互に複数設けられている配置は一例に過ぎず、第二吹出口142及び第三吹出口143の配置構成は適宜変更してもよい。
【0129】
図14は、
図13に示す第二吹出口142と第三吹出口143との配置構成の一例を模式的に示す断面図である。
図14は、
図13の所定の場所をYZ平面で切断した様子を示している。
【0130】
図14に示すとおり、第二給気ダクトSA2は、エージングルーム21において、下部ガイドレール24及び棚22と平行して、両側の棚22の下部と床面26aとの間の空間にそれぞれ、図中±X方向に亘って水平に設けられる。
【0131】
ここで、現状、非常に重量のあるロール体Rを搬送する走行体50であるスタッカークレーン50は、ある程度の強度が必要なものである。さらに、今回では親子クレーンとしての下部ガイドレール24への乗り込み機構、重量物であるロール体Rを横方向へ持ち出し引き取る伸縮機構を有するシャトルフォーク62のおさまりなど、ある程度の下部の大きさを有するものである。このため、スタッカークレーン50は、所定の高さよりも下側にはロール体Rを積載することができない。このため、ロール体Rは、エージングルーム21の棚22の所定の高さ以上の位置にしか保管することができず、棚22の下部の空間(デッドスペース)は空調にも従来有効に活用されてこなかった。しかし、本実施形態の上記の構成によれば、スタッカークレーン50の動作の妨げとなることもなく、従来有効に利用されていなかった棚22の下部の空間ではあるが、後述するように空調の気流としては利用すべき空間を有効に活用することができる。
【0132】
両側の第二吹出口142は、それぞれ第二給気ダクトSA2から対向する向きに設けられ、図中矢印A2方向に向けて床面26aと平行に空気を吹き出す。
【0133】
一般に、温かい空気は周囲の空気との密度差から下から上に流れる。このため、上記の構成によれば、ロール体Rが静置されていて大きな空間であり活用されていなかったロール体Rの棚下空間から温めた空気を吹出し、周囲の空気との密度差をうまく利用して倉庫21内の空気を効率よく入れ替えていくことができる。これにより、空調システム100は、エージングルーム21を満遍なく均等に効率よく温めることができる。また、上記の構成によれば、第二吹出口142から床面26a沿って温かい空気が吹き出される。このため、昇温時には床面26aが最初に温められるため、他の構造体を先に温める場合によく起きる床面26aから熱が外に逃げることを、予め床面26aを所定の昇温温度に早く近づけるために効率的に抑制することができる。また、上記の構成によれば、床面26aには直接的には温かい空気は当たらないため、床面26aの温度が過度に上昇することによる床面26aの変形や破損を抑制することができる。
【0134】
一方、両側の第三吹出口143は、それぞれ第二給気ダクトSA2からパネル26側に伸びて上方に折り返した位置に設けられ、図中矢印A3方向に向けてパネル26と平行に上方向に空気を吹き出す。
【0135】
上記の構成によれば、温かい空気は下から上に流れるため、空調システム100は、エージングルーム21を満遍なく均等に効率よく温めることができる。また、上記の構成によれば、第三吹出口143からパネル26沿って温かい空気が吹き出され、パネル26が最初に温められるため、昇温時の当初にパネル26から熱が外に逃げることを抑制することができる。また、上記の構成によれば、パネル26には直接的には温かい空気は当たらないため、パネル26の温度が過度に上昇することによるパネル26の変形や破損を抑制することができる。
【0136】
なお、第一吹出口141、第二吹出口142、及び第三吹出口143の各吹出口140は、それぞれ不図示の吹出口用シャッタを有していてもよい。なお、不図示の吹出口用シャッタは、手動で開閉されてもよく、空調制御装置120により開閉動作が制御されていてもよい。これにより、空気の流量を調整することができる。
【0137】
なお、付言すると、上記の
図3及び
図4で説明したとおり、走行体50の盤クーラー56bは、子側機上盤56の内部の温度を下げたことによる廃熱を子側機上盤56の外部に放出する。しかし、当該外部すなわち周囲の温度が、倉庫21の内部の温度であり、例えば80℃±2℃の高温かつ恒温に保持させる空調の空気場よりも低温(例えば60℃程度)であっても、隙間風と比べれば倉庫21内部温度に近い。このため、当該廃熱は、周囲の恒温空調システムによりすぐに処理され外乱とまではならない。なお、盤クーラー56bは、盤内部を規定の例えば内部温度に冷却し維持するためヒートポンプでその廃熱を外部に放出する。このため、内部規定温度が例えば50℃などの高温でよい場合に、廃熱が倉庫21の内部の温度80℃に近い温度となるのであれば、盤クーラー56bを、倉庫21の内部温度を例えば高温かつ恒温に保持させることに貢献する空調システムとして機能させてもよい。
【0138】
<検証シミュレーション>
図15は、
図11から
図14に示す実施形態に係る空調システムの検証シミュレーションに用いた構成を示す図である。
図15(a)は、
図11から
図14に示す実施形態に係る空調システムの検証シミュレーションに用いた構成を示す斜視図である。
図15(b)は、
図11から
図14に示す実施形態に係る空調システムの検証シミュレーションに用いた構成を示す上面図である。なお、
図15において、
図1から
図8及び
図11から
図14に示す実施形態と同一又は同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。また、
図15においては、一部の構成を省略している。なお、
図15に示す構成は、下部吹き出し方式である。
【0139】
図15において、図中左側は
図11から
図14に示す本実施形態の搬入出ゾーン10に対応し、図中右側は
図11から
図14に示す本実施形態の保管ゾーン20、すなわち倉庫21(エージングルーム21)に対応する。また、垂直方向に立ち下がっているダクトは、
図11から
図14に示す本実施形態の第一給気ダクトSA1に対応し、水平方向に伸びているダクトは、
図11から
図14に示す本実施形態の第二給気ダクトSA2に対応する。なお、搬入出ゾーン10と保管ゾーン20との間には、扉27が図示されていないが、実際には、扉27(スライドドア27)が存在するものとしてシミュレーションを行っている。
【0140】
図15によれば、複数の第一給気ダクトSA1の吹出口140(第一吹出口141に相当)からは水平方向に空気が吹き出され、エアカーテンが形成されている。また、複数の第二給気ダクトSA2の吹出口140(第二吹出口142に相当)からは床面26aに沿って水平方向に空気が吹き出されている。なお、
図15に示すシミュレーションの構成においては、
図11から
図14に示す本実施形態の第三吹出口143に相当するものは形成されていなかった。
図15において、各吹出口140から吹き出されている空気は
図15では不図示のヒータ115により温められた空気(温風)である。
【0141】
図16は、比較例に係る空調システムの検証シミュレーションに用いた構成を示す図である。
図16(a)は、比較例に係る空調システムの検証シミュレーションに用いた構成を示す斜視図である。
図16(b)は、比較例に係る空調システムの検証シミュレーションに用いた構成を示す上面図である。なお、
図16においても、
図1から
図8及び
図11から
図14に示す実施形態と同一又は同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。また、
図16においても、一部の構成を省略している。なお、
図16に示す構成は、上部吹き出し方式である。
【0142】
図16においても、図中左側は
図11から
図14に示す本実施形態の搬入出ゾーン10に対応し、図中右側は
図11から
図14に示す本実施形態の保管ゾーン20、すなわち倉庫21(エージングルーム21)に対応する。
図16においては、これらを倉庫21’(エージングルーム21’)と称する。なお、搬入出ゾーン10と保管ゾーン20との間には、扉27が図示されていないが、実際には、扉27(スライドドア)が存在するものとしてシミュレーションを行っている。
【0143】
また、給気ダクトSA’は、
図11から
図14に示す本実施形態の給気ダクトSA(SA1、SA2)とは異なり、天井面26bに設けられている。そして、給気ダクトSA’には、搬送物への気流の直撃回避のため、上方から下方の複数方向に向けて空気を吹き出す吹出口140’が複数設けられている。なお、
図16においても、各吹出口140’から吹き出されている空気は
図16では不図示のヒータ115により温められた空気(温風)である。また、
図16における前室は、
図16では不図示の搬送装置30が待機する部屋である。
【0144】
図17は、
図15に示した構成に基づいて行った検証シミュレーションの結果を示す図である。
図17は、保管ゾーン20内の代表的な温度評価面における時間変化を図示している。評価面の高さは、下から1段目<2段目<…<5段目となる。空気の吹き出し温度は82℃であり、基準温度は78℃である。図中縦軸は、基準温度以上(%)を示し、横軸は、経過時間(s)を示す。また、図中下側の点線の折れ線グラフは、スライドドア開度(%)を示し、上側の複数の折れ線グラフは、1段目から5段目までの評価面を示す。
【0145】
図17によれば、スライドドアの開度が100%のときも、1段目から5段目まで全て基準温度以上が常時90%以上を占めており、2段目の評価面は基準温度以上が常時100%を維持していたことがわかった。
【0146】
図18は、
図16に示した構成に基づいて行った検証シミュレーションの結果を示す図である。
図18は、
図17と同様に、保管ゾーン20内の代表的な温度評価面における時間変化を図示している。
図18に示すグラフの意味内容は、
図17と同様であるため、説明を省略する。なお、
図18(
図16)に示す上部吹き出し方式では、
図17(
図15)に示す下部吹き出し方式との比較のため、室寸法と循環風量は、下部吹き出し方式と同一の条件とした。
【0147】
図18によれば、部屋の上部にあたる3~5段目の評価面は基準温度以上が常時100%を維持しており、2段目の評価面は、基準温度以上が常時90%以上を占めていたことがわかった。しかし、
図18によれば、部屋の下部にあたる1段目の評価面は、スライドドアの開度が100%となると基準温度以上が70~80%程度となってしまい問題があることがわかった。
【0148】
以上、
図15から
図18に示すシミュレーション結果によれば、80℃程度の高温域の恒温倉庫において、
図16に示す空調システムのような上部吹き出し方式の場合、スライドドア開閉時に侵入する冷気は室内下部に滞留し易く、温度低下幅も大きいと考えられる。また、高温の吹出し気流には浮力が生ずるので建屋が高くなるほど下部まで気流を到達させるためにより多くの風量と風速が必要になると考えられる。さらに、高速の吹き出し気流がロール体R等の製品に直撃しないことを要求される場合もあるため、吹出口140’の配置や吹出し角度の計画が困難と考えられる。
【0149】
一方、
図15に示す空調システムのような下部吹き出し方式の場合、冷気侵入時においてもクレーン動作を考慮したエアカーテンにより保管ゾーン20の温度低下を抑制し、より精度の高い恒温環境を構築可能と考えられる。また、下部からの吹出しの場合、低速かつ小風量でも、浮力により上部まで気流が撹拌され易いので搬送動力を低減可能であると考えられる。同時に、高速の吹出し気流がロール体R等の製品に直撃する問題も回避されると考えられる。
【0150】
以上より、
図15から
図18に示すシミュレーション結果によれば、
図11から
図14に示す実施形態と同様の構成である
図15に示す下部吹き出し方式の方が、
図16に示す上部吹き出し方式よりも、有利であることが分かった。すなわち、
図15に示す下部吹き出し方式の方が、
図16に示す上部吹き出し方式よりも、温度変動が抑制されるため、循環風量が削減され、空調システム全体のスペース(室容積)を減少させることができると考えられるためである。
【0151】
<空調システム及び自動倉庫の一実施形態の作用効果>
以上より、
図11から
図14に示す本実施形態によれば、第一吹出口141による扉27の前のエアカーテンと、第二吹出口142による床面26aに平行した空気の吹き出しと、第三吹出口143によるパネル26に平行した上方への空気の吹き出しが行われる。これにより、
図11から
図14に示す本実施形態によれば、コストを増大させずに、複数の倉庫21において所定期間連続して高温かつ恒温の環境を保持させることが可能な空調システム100及び自動倉庫1を提供することができる。
【0152】
また、
図11から
図14に示す実施形態は、
図15に示す構成と同様の下部吹き出し方式を採用しているため、
図15から
図18で説明したシミュレーション結果と同様の有利な効果を有する。
【0153】
<実施形態の補足事項>
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
【符号の説明】
【0154】
1,1A…自動倉庫;10…搬入出ゾーン;11…走行レール;12…光伝送装置;12a…ケーブル;13…地上盤;20,20A…保管ゾーン;21,21’,21A…倉庫(エージングルーム);22…棚(ラック);23…枕体;24…下部ガイドレール;25…上部ガイドレール;26…パネル;26a…床面;26b…天井面;27…扉(耐熱用シャッタ,スライドドア);30,30A…搬送装置(親子クレーン);40…移動台車(トラバーサ、親トラバーサ);41…光通信部;41a…ケーブル;42…給電装置;43…下部案内レール;44…上部案内レール;45…駆動輪;46…親側機上盤(親機上盤);46a…無線通信部;47…保持部;50,50A…走行体(スタッカークレーン、子クレーン);50a…支柱;51…給電装置;52…下部駆動輪;53…上部駆動輪;54…移載機;55…近接センサ;56…子側機上盤;56a…無線通信部;56b…盤クーラー;61…昇降用駆動輪;62…シャトルフォーク;62a,62b…送り出しプレート;62c…コア保持部;71…原点検出センサ;72…フロント側オーバーラン検出センサ;73…リア側オーバーラン検出センサ;74…フロント側減速センサ;75…リア側減速センサ;76…棚番号カウントセンサ;77…棚位置確認センサ;80…ドグ;81…原点検出センサ用ドグ;82…オーバーラン検出センサ用ドグ;84…フロント側減速センサ用ドグ;85…リア側減速センサ用ドグ;86…棚番号カウントセンサ用ドグ;87…棚位置確認センサ用ドグ;100…空調システム;111…排気ファン;112…換気口;113…給気ファン;114…フィルタ;115…電気ヒータ(ヒータ);116…温度センサ;120…空調制御装置(制御装置);121…選択部;122…温度制御部;123…動作制御部;130,130-1~130-9…室内温度センサ;140,140’…吹出口;141…第一吹出口;142…第二吹出口;143…第三吹出口;A1~A3…矢印;C…コア;R…ロール体;EA…排気ダクト;OA…外気ダクト;RA…還気ダクト;SA,SA’…給気ダクト;SA1…第一給気ダクト;SA2…第二給気ダクト;MD,MD1~MD3…モータダンパ;M1~M3…電動モータ(モータ)