(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】内燃機関用のスパークプラグ及びこれを備えた内燃機関
(51)【国際特許分類】
H01T 13/54 20060101AFI20241112BHJP
H01T 13/20 20060101ALI20241112BHJP
H01T 13/32 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H01T13/54
H01T13/20 B
H01T13/32
(21)【出願番号】P 2021098193
(22)【出願日】2021-06-11
【審査請求日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2020203372
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 明光
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-004567(JP,A)
【文献】実開昭57-029087(JP,U)
【文献】実開平02-067030(JP,U)
【文献】特開昭57-173524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 7/00 - 23/00
F02B 1/00 - 23/10
F02P 1/00 - 3/12
F02P 7/00 - 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子の先端側に先端突出部(41)を突出させた中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有し、
上記接地電極は、上記ハウジング又は上記プラグカバーに固定された固定端部(62)から上記副燃焼室内に突出しており、
上記放電ギャップは、上記先端突出部の先端部と上記接地電極の基端面(61)とが、互いに対向することにより形成されており、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる複数の噴孔(51)が形成されており、
上記噴孔の中心軸の延長線(51L)は、上記放電ギャップを通過しないと共に、プラグ軸方向(Z)から見て、プラグ径方向に対して傾斜しており、
上記複数の噴孔のうちの一部の上記噴孔は、上記接地電極の突出端部(63)の突出側に形成された突出側噴孔(510)であり、
上記突出端部の少なくとも一部は、プラグ中心軸(C)までの距離(D1)よりも上記突出側噴孔までの距離(D2)が近い位置に配置されている、内燃機関用のスパークプラグ(1)。
【請求項2】
上記接地電極の基端面は、上記接地電極の長手方向における、少なくとも上記放電ギャップを形成する部位から上記突出端部にわたって、上記突出端部に近づくに従って先端側に向かうようにプラグ軸方向に対して傾斜した接地傾斜面(611)を有する、請求項1に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項3】
上記突出側噴孔の外側開口部(511)の基端と上記先端突出部の先端部とを最短距離でつなぐ直線(L1)を含むと共にプラグ軸方向に沿った断面において、上記突出端部は、上記直線(L1)よりも先端側に配置されている、請求項1又は2に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項4】
上記放電ギャップは、上記ハウジングの先端よりも先端側に形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項5】
上記副燃焼室は、上記絶縁碍子の外周面と上記ハウジングの内周面との間に、環状の空間であるポケット部(501)を有し、上記絶縁碍子の外周面は、上記ポケット部に対向する部位に、先端側へ向かうほど縮径する碍子傾斜面(31)を有し、上記ハウジングの内周面は、上記ポケット部に対向する部位に、基端側へ向かうほど縮径するハウジング傾斜面(21)を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項6】
プラグ軸方向から見たとき、上記突出側噴孔の中心軸の延長線と上記接地電極の基端面とは、互いに重なっている、請求項1~5のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項7】
上記突出側噴孔は、他の上記噴孔よりも開口面積が大きい、請求項1~6のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項8】
上記突出側噴孔は、他の上記噴孔よりも開口面積が大きく、
プラグ軸方向から見たとき、上記突出側噴孔の中心軸の延長線は、上記接地電極と重ならないように上記接地電極の突出方向に沿っており、かつ、上記突出側噴孔の中心(510C)は、上記接地電極を突出方向に延長した延長領域(6E)の外側に配置されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の内燃機関用のスパークプラグを備えた内燃機関(10)であって、
主燃焼室(11)と、
該主燃焼室に設けられた吸気弁(72)及び排気弁(73)と、
上記プラグカバーの外表面(52)が上記主燃焼室に面するように配置された上記スパークプラグと、を有し、
上記スパークプラグは、プラグ軸方向から見たとき、少なくとも一つの上記突出側噴孔の外側開口部(511)が上記吸気弁側を向くように、配置されている、内燃機関。
【請求項10】
請求項7又は8に記載の内燃機関用のスパークプラグを備えた内燃機関(10)であって、
主燃焼室(11)と、
上記プラグカバーの外表面(52)が上記主燃焼室に面するように配置された上記スパークプラグと、
上記主燃焼室に直接燃料を噴射するインジェクタ(71)と、を有し、
上記スパークプラグは、上記内燃機関の圧縮行程において該インジェクタから噴射された上記燃料を含む噴射流(F)が、上記突出側噴孔の外側開口部(511)に向かうように、配置されている、内燃機関。
【請求項11】
上記主燃焼室に設けられた吸気弁(72)及び排気弁(73)を有し、
上記スパークプラグは、プラグ軸方向から見たとき、少なくとも一つの上記突出側噴孔の上記外側開口部が上記吸気弁側を向くように、配置されている、請求項10に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用のスパークプラグ及びこれを備えた内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、先端に副燃焼室を備えたスパークプラグが知られている。当該スパークプラグにおいて、副燃焼室を覆うカバー部には、複数の噴孔が形成されている。これにより、噴孔を介して副燃焼室から主燃焼室に火炎を噴出させ、主燃焼室の混合気を燃焼させようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のスパークプラグは、副燃焼室内における混合気への着火、すなわち、初期火炎の形成自体については、考慮されていない。つまり、副燃焼室内の放電を引き伸ばして着火性を向上させることについては、何ら考慮されていない。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグ及びこれを備えた内燃機関を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子の先端側に先端突出部(41)を突出させた中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有し、
上記接地電極は、上記ハウジング又は上記プラグカバーに固定された固定端部(62)から上記副燃焼室内に突出しており、
上記放電ギャップは、上記先端突出部の先端部と上記接地電極の基端面(61)とが、互いに対向することにより形成されており、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる複数の噴孔(51)が形成されており、
上記噴孔の中心軸の延長線(51L)は、上記放電ギャップを通過しないと共に、プラグ軸方向(Z)から見て、プラグ径方向に対して傾斜しており、
上記複数の噴孔のうちの一部の上記噴孔は、上記接地電極の突出端部(63)の突出側に形成された突出側噴孔(510)であり、
上記突出端部の少なくとも一部は、プラグ中心軸(C)までの距離(D1)よりも上記突出側噴孔までの距離(D2)が近い位置に配置されている、内燃機関用のスパークプラグ(1)にある。
【0007】
本発明の第2の態様は、上記内燃機関用のスパークプラグを備えた内燃機関(10)であって、
主燃焼室(11)と、
該主燃焼室に設けられた吸気弁(72)及び排気弁(73)と、
上記プラグカバーの外表面(52)が上記主燃焼室に面するように配置された上記スパークプラグと、を有し、
上記スパークプラグは、プラグ軸方向から見たとき、少なくとも一つの上記突出側噴孔の外側開口部(511)が上記吸気弁側を向くように、配置されており、
上記突出側噴孔は、他の上記噴孔よりも開口面積が大きい、内燃機関にある。
【0008】
本発明の第3の態様は、上記内燃機関用のスパークプラグを備えた内燃機関(10)であって、
主燃焼室(11)と、
上記プラグカバーの外表面(52)が上記主燃焼室に面するように配置された上記スパークプラグと、
上記主燃焼室に直接燃料を噴射するインジェクタ(71)と、を有し、
上記スパークプラグは、上記内燃機関の圧縮行程において該インジェクタから噴射された上記燃料を含む噴射流(F)が、上記突出側噴孔の外側開口部(511)に向かうように、配置されており、
上記突出側噴孔は、他の上記噴孔よりも開口面積が大きい、内燃機関にある。
【発明の効果】
【0009】
上記第1の態様にかかる内燃機関用のスパークプラグにおいて、噴孔の中心軸の延長線は、放電ギャップを通過しないと共に、プラグ軸方向から見て、プラグ径方向に対して傾斜している。これにより、噴孔を介して副燃焼室に導入される気流によって、副燃焼室内にスワール流を形成することができる。そして、副燃焼室内に形成されたスワール流によって、放電ギャップに形成された放電を伸長させることができる。その結果、着火性を向上させることができる。
【0010】
また、突出端部の少なくとも一部は、プラグ中心軸までの距離よりも突出側噴孔までの距離が近い位置に配置されている。それゆえ、突出側噴孔を介して副燃焼室から流出する気流は、接地電極の基端面に案内されて、放電ギャップを通過しやすい。それゆえ、放電ギャップに形成された放電が突出側噴孔に向かって伸長しやすい。その結果、着火性を向上させることができる。
【0011】
上記第2の態様にかかる内燃機関において、上記スパークプラグは、他の噴孔よりも開口面積が大きい突出側噴孔を有する。そして、当該スパークプラグは、プラグ軸方向から見たとき、少なくとも一つの突出側噴孔の外側開口部が吸気弁側を向くように、配置されている。これにより、プラグ軸方向から見たとき、突出側噴孔を介して、副燃焼室から主燃焼室の吸気弁側へ大きい火炎を噴出させることができる。それゆえ、プラグ軸方向から見て主燃焼室における吸気弁側の混合気の着火性を向上させることができる。それゆえ、主燃焼室全体の混合気をバランスよく燃焼させることができる。その結果、ノッキング等の原因となる燃焼異常の抑制を図ることができる。
【0012】
上記第3の態様にかかる内燃機関において、上記スパークプラグは、インジェクタから噴射された噴射流が、他の噴孔よりも開口面積が大きい突出側噴孔の外側開口部に向かうように、配置されている。これにより、燃料密度の高い混合気が、突出側噴孔から副燃焼室内へ導入されやすくなる。その結果、燃料密度の高い混合気が、放電ギャップに到達しやすくなり、着火性を向上させることができる。
【0013】
以上のごとく、上記態様によれば、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグ及びこれを備えた内燃機関を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態1における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図であって、
図2のI-I線矢視断面相当図。
【
図3】実施形態1における、突出端部からプラグ中心軸までの距離と、突出端部から突出側噴孔までの距離とを示す、説明図。
【
図4】実施形態1における、突出端部の位置を説明する、プラグ軸方向に沿った断面説明図。
【
図5】実施形態1における、突出側噴孔の延長領域と接地電極の基端面との位置関係を説明する、断面説明図。
【
図6】実施形態1における、接地電極の延長領域と突出側噴孔との位置関係を説明する、断面説明図。
【
図7】実施形態1における、内燃機関の断面説明図。
【
図8】実施形態1における、主燃焼室に形成された気流の向きを説明する、内燃機関を先端側から見た図。
【
図9】実施形態1における、圧縮行程時の、放電が伸長する前のスパークプラグの先端部の断面図。
【
図10】実施形態1における、圧縮行程時の、放電が伸長したときのスパークプラグの先端部の断面図。
【
図11】実施形態1における、膨張行程時の、放電が伸長する前のスパークプラグの先端部付近の断面図。
【
図12】実施形態1における、膨張行程時の、放電が伸長したときのスパークプラグの先端部付近の断面図。
【
図13】実施形態1における、膨張行程時の、放電が主燃焼室まで伸長したときのスパークプラグの先端部付近の断面図。
【
図14】実施形態2における、内燃機関の断面説明図。
【
図15】実施形態2における、スパークプラグに対する噴射流の向きを説明する、断面説明図。
【
図16】実施形態3における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図。
【
図17】実施形態4における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図。
【
図18】実施形態4における、ポケット部の気流の模式図。
【
図19】実施形態5における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図。
【
図20】実施形態6における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図。
【
図21】実施形態7における、スパークプラグの先端部の、プラグ軸方向に直交する断面図。
【
図22】
図21のXXII矢視図(プラグカバー及びハウジングの図を省略)。
【
図23】実施形態7における、接地電極を、接地電極の突出方向から見た図。
【
図24】実施形態8における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図。
【
図25】実施形態9における、スパークプラグの先端部の、プラグ軸方向に直交する断面図。
【
図26】実施形態9における、接地電極の延長領域と突出側噴孔の中心との位置関係を説明する、断面説明図。
【
図27】
図26のXXVII矢視図(プラグカバー及びハウジングの図を省略)。
【
図28】実施形態9における、膨張行程時の、放電が伸長したときの断面図。
【
図29】実施形態9における、膨張行程時の、放電が突出側噴孔まで伸長したときの断面図。
【
図30】実施形態9における、膨張行程時の、放電が主燃焼室まで伸長したときの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
内燃機関用のスパークプラグ及びこれを備えた内燃機関に係る実施形態について、
図1~
図13を参照して説明する。
本形態の内燃機関用のスパークプラグ1は、
図1、
図2に示すごとく、筒状の絶縁碍子3と、中心電極4と、筒状のハウジング2と、接地電極6と、プラグカバー5と、を有する。中心電極4は、絶縁碍子3の内周側に保持されると共に絶縁碍子3の先端側に先端突出部41を突出させている。ハウジング2は、絶縁碍子3を内周側に保持する。接地電極6は、中心電極4との間に放電ギャップGを形成する。プラグカバー5は、放電ギャップGが配される副燃焼室50を覆うようハウジング2の先端部に設けられている。
【0016】
接地電極6は、ハウジング2又はプラグカバー5に固定された固定端部62から副燃焼室50内に突出している。放電ギャップGは、先端突出部41の先端部と接地電極6の基端面61とが、互いに対向することにより形成されている。
【0017】
プラグカバー5には、副燃焼室50と外部とを連通させる複数の噴孔51が形成されている。
図2に示すごとく、噴孔51の中心軸の延長線51Lは、放電ギャップGを通過しないと共に、プラグ軸方向Zから見て、プラグ径方向に対して傾斜している。複数の噴孔51のうちの一部の噴孔51は、接地電極6の突出端部63の突出側に形成された突出側噴孔510である。
図3に示すごとく、突出端部63の少なくとも一部は、プラグ中心軸Cまでの距離D1よりも突出側噴孔510までの距離D2が近い位置に配置されている。本形態においては、突出端部63の全体が、プラグ中心軸Cまでの距離D1よりも突出側噴孔510までの距離D2が近い位置に配置されている。
【0018】
本形態のスパークプラグ1は、例えば、自動車、コージェネレーション等の内燃機関における着火手段として用いることができる。
図7に示すごとく、ハウジング2の外周面に形成した取付ネジ部22を、シリンダヘッド76のプラグホール761の雌ネジ部に螺合して、スパークプラグ1が内燃機関10に取り付けられる。そして、スパークプラグ1の軸方向Zの一端を、内燃機関10の主燃焼室11に配置する。スパークプラグ1の軸方向Zにおいて、主燃焼室11に露出する側を先端側、その反対側を基端側というものとする。また、スパークプラグ1の軸方向Zを、適宜、プラグ軸方向Z、或いは単に、Z方向ともいう。なお、プラグ中心軸Cは、スパークプラグ1の中心軸Cを意味するものとする。また、プラグ中心軸Cは、本形態において、中心電極4の中心軸でもある。また、プラグ径方向とは、スパークプラグ1の中心軸Cに直交する平面上において、スパークプラグ1の中心軸Cを中心とする円の半径方向を意味する。
【0019】
図1に示すごとく、プラグカバー5は、ハウジング2の先端部に溶接等によって接合されている。スパークプラグ1が内燃機関に取り付けられた状態において、プラグカバー5は、副燃焼室50を主燃焼室と区画している。
【0020】
副燃焼室50は、中心電極4の先端突出部41の周辺における、ハウジング2の先端部の内周側の空間を含む。また、副燃焼室50は、後述するポケット部501をも含む。
【0021】
絶縁碍子3は、先端側へ向かうほど縮径するテーパ状先端部30を有する。絶縁碍子3は、ハウジング2の内側に配置されるとともに、ハウジング2によってZ方向に支持されている。すなわち、ハウジング2の内周面に設けられた係止部23に、絶縁碍子3の外周面に設けられた被係止部32が、Z方向の先端側から係止されている。この被係止部32よりも先端側の絶縁碍子3の部分が、テーパ状先端部30となっている。
【0022】
副燃焼室50は、絶縁碍子3の外周面とハウジング2の内周面との間に、環状の空間であるポケット部501を有する。つまり、ポケット部501は、プラグ径方向における、テーパ状先端部30とハウジング2との間に形成された空間である。
【0023】
また、本形態において、プラグカバー5は、副燃焼室50の外周側の一部を覆う周壁部53と、副燃焼室50の先端側を覆う底壁部54と、周壁部53と底壁部54とをつなぐ角部55とを有する。噴孔51は、角部55に形成されている。内燃機関に設置されたスパークプラグ1において、プラグカバー5に形成された噴孔51は、副燃焼室50と主燃焼室とを連通させている。
【0024】
内燃機関の圧縮行程等においては、噴孔51を通じて主燃焼室から副燃焼室50へ、気流が導入される。ここで、噴孔51を通じて副燃焼室50に導入される気流によって、副燃焼室50にスワール流(
図9、
図10の破線矢印Asd及びAsu参照)が生じるように、噴孔51が形成されている。具体的には、
図2に示すごとく、Z方向から見たとき、噴孔51とプラグ中心軸Cとを通過するプラグ径方向に延びる仮想直線VLに対して、噴孔の中心軸の延長線51Lは鋭角の角度をもって傾斜している。複数の噴孔51は、各噴孔51における仮想直線VLに対する噴孔の中心軸の延長線51Lの傾斜方向が、プラグ周方向における同じ側となっている。なお、プラグ周方向は、プラグ中心軸Cを中心とする円周に沿った方向である。
【0025】
このような噴孔51の形成態様により、
図9、
図10に示すごとく、噴孔51を介して副燃焼室50に導入された気流によって、副燃焼室50にスワール流が形成される。本形態の場合、スワール流は、プラグ中心軸Cの周りに、
図9、
図10における反時計回りの螺旋状に生じる。
【0026】
また、内燃機関の膨張行程においては、それぞれの噴孔51を介して、副燃焼室50から主燃焼室へとガスが流出することにより、圧縮行程において形成されるスワール流とは逆回りのスワール流が形成される。
【0027】
本形態において、プラグカバー5に形成された噴孔51は、
図1、
図2に示すごとく、略円柱形状をなしている。噴孔51は、
図2に示すごとく、Z方向から見たとき、プラグ周方向に等間隔で形成されている。また、噴孔51は、
図1に示すごとく、先端側へ向かうほどプラグ径方向の外側へ向かうように、Z方向に対して傾斜して開口している。
【0028】
図2に示すごとく、本形態において、プラグカバー5には、4つの噴孔51が形成されており、そのうちの一つが突出側噴孔510となっている。
【0029】
図2に示すごとく、Z方向から見たとき、接地電極6の突出方向において、突出側噴孔510の少なくとも一部と放電ギャップGとは、接地電極6の突出端部63を挟んで、互いに反対側に位置している。
【0030】
また、Z方向から見たとき、接地電極6の突出方向において、突出側噴孔510の少なくとも一部と接地電極6の固定端部62とは、突出端部63を挟んで、互いに反対側に位置している。
【0031】
また、突出端部63から突出側噴孔510までの距離は、突出端部63から突出側噴孔510以外の噴孔51までの距離よりも短い。
【0032】
本形態においては、
図6に示すごとく、Z方向から見たとき、接地電極6を突出方向に延長した延長領域6Eと、突出側噴孔510の一部とが、互いに重なっている。また、延長領域6Eは、突出側噴孔510の少なくとも一部を通過する。なお、突出側噴孔510は、Z方向から見たとき、延長領域6Eと突出側噴孔510の全体とが互いに重なるように、形成することもできる。
【0033】
本形態においては、
図5に示すごとく、Z方向から見たとき、突出側噴孔510を開口方向に延長した延長領域510Eと接地電極6の基端面61とが、互いに重なっている。また、Z方向から見たとき、延長領域510Eと突出端部63とは、互いに重なっている。
【0034】
また、
図2に示すごとく、プラグ軸方向Zから見たとき、突出側噴孔510の中心軸の延長線51Lと接地電極6の基端面61とは、互いに重なっている。また、Z方向から見たとき、突出側噴孔510の中心軸の延長線51Lと接地電極6の突出端部63とは、互いに重なっている。
【0035】
また、本形態において、突出側噴孔510は、
図1~
図6に示すごとく、他の噴孔51よりも開口面積が大きい。
【0036】
突出側噴孔510の内径は、例えば、突出側噴孔510以外の噴孔51の内径の1.2倍~1.4倍とすることができる。また、突出側噴孔510の開口面積は、例えば、突出側噴孔510以外の噴孔51の開口面積の1.4倍~2.0倍とすることができる。
【0037】
図4に示すごとく、突出側噴孔510の外側開口部511の基端と先端突出部41の先端部とを最短距離でつなぐ直線を、直線L1とする。直線L1を含むと共にプラグ軸方向Zに沿った断面において、突出端部63は、直線L1よりも先端側に配置されている。
【0038】
突出側噴孔510の外側開口部511の中心と、先端突出部41の先端部とを最短距離でつなぐ直線を、直線L2とする。
図4に示すごとく、直線L2を含むと共にプラグ軸方向Zに沿った断面において、突出端部63は、直線L2よりも先端側に配置されている。
【0039】
突出側噴孔510の内側開口部512の先端と、先端突出部41の先端部とを最短距離でつなぐ直線を、直線L3とする。
図4に示すごとく、直線L3を含むと共にプラグ軸方向Zに沿った断面において、突出端部63は、直線L3よりも先端側に配置されている。
【0040】
また、本形態において、接地電極6の基端面61は、
図1に示すごとく、接地電極6の長手方向における、少なくとも放電ギャップGを形成する部位から突出端部63にわたって、接地傾斜面611を有する。接地傾斜面611は、突出端部63に近づくに従って先端側に向かうようにプラグ軸方向Zに対して傾斜している。本形態においては、接地電極6の基端面61の全体が、接地傾斜面611となっている。
【0041】
本形態において、接地電極6は、接地電極6の長手方向に直交する断面(図示略)が扁平な長方形状をなしている。また、接地電極6は、接地電極6の長手方向における放電ギャップGを形成する部位から突出端部63にわたって、接地電極6の長手方向に直交する方向の厚みが、突出端部63に近づくに従って小さくなっている。そして、接地電極6の先細り形状となった部分の接地傾斜面611は、接地電極6の他の部分の接地傾斜面611よりも、Z方向に直交する面に対する傾斜角度が大きくなっている。
【0042】
また、本形態において、接地電極6の固定端部62は、ハウジング2に固定されている。そして、接地電極6をハウジング2に固定した後に、プラグカバー5をハウジング2に固定することによって、本形態のスパークプラグ1を製造することができる。
【0043】
また、本形態において、放電ギャップGは、先端突出部41と接地電極6とが、プラグ軸方向Zに互いに対向することにより形成されている。
【0044】
具体的には、中心電極4の先端面411と接地電極6の基端面61とが互いにZ方向に対向することにより、放電ギャップGが形成されている。なお、Z方向において互いに対向する中心電極4の先端面411と接地電極6の基端面61とのそれぞれに、チップを接合することもできる(図示略)。つまり、中心電極4の先端面411に接合されたチップと接地電極6の基端面61に接合されたチップとの間に、放電ギャップGを形成することもできる。チップは、例えば、イリジウムや白金等の貴金属、又はこれらを主成分とする合金とすることができる。
【0045】
次に、上記スパークプラグ1を備えた内燃機関10を、
図7、
図8に示す。
内燃機関10は、主燃焼室11と、主燃焼室11に設けられた吸気弁72及び排気弁73と、スパークプラグ1とを有する。スパークプラグ1は、プラグカバー5の外表面52が主燃焼室11に面するように配置されている。スパークプラグ1は、
図8に示すごとく、プラグ軸方向Zから見たとき、少なくとも一つの突出側噴孔510の外側開口部511が吸気弁72側を向くように、配置されている。
【0046】
また、本形態の内燃機関10は、
図7に示すごとく、シリンダヘッド76と、シリンダブロック75と、シリンダ70内を往復運動するピストン74とを備える。そして、シリンダヘッド76、シリンダブロック75、及びピストン74に囲まれて、主燃焼室11が形成される。シリンダヘッド76には、吸気ポート721及び排気ポート731が形成されており、それぞれ吸気弁72又は排気弁73が備えられている。そして、シリンダヘッド76における吸気ポート721と排気ポート731との間に、スパークプラグ1が取り付けられる。詳細には、スパークプラグ1は、
図8に示すごとく、シリンダヘッド76における、2つの吸気ポート721と2つの排気ポート731とに囲まれた位置に配設されている。
【0047】
吸気ポート721及び排気ポート731は、
図7に示すごとく、その開口方向が主燃焼室11の中心軸側に向かうように、ピストン74の進退方向に対して傾斜している。また、主燃焼室11の基端面は、スパークプラグ1から遠ざかるにつれて先端側へ向かうように傾斜している。
【0048】
また、内燃機関10においては、ピストン74の往復運動に伴って、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程が順次繰り返される。内燃機関10の吸気行程において、2つの吸気ポート721からガスが主燃焼室11内に導入され、排気行程において、2つの排気ポート731から主燃焼室11内のガスが排出される。吸気行程における気流の導入のされ方等に起因して、主燃焼室11に所定の気流が形成され、圧縮行程においても、その気流は残る。
【0049】
そして、主燃焼室11内においては、主として、
図7の矢印A1に示すごとく、ピストン74の摺動方向に直交する方向の軸周りの気流である、タンブル流が形成される。そして、この気流A1は、
図7、
図8に示すごとく、主燃焼室11内のスパークプラグ1の先端部付近において、吸気弁72側から排気弁73側へ向かう向きとなる。より具体的には、
図8に示すごとく、プラグ軸方向Zから見たとき、2つの吸気ポート721の中間位置から、2つの排気ポート731の中間位置へ向かう方向に沿った気流A1が、スパークプラグ1の先端部付近の主な気流となる。
【0050】
なお、主燃焼室11内の気流は、常に一定となっているわけではなく、サイクル間、或いは1サイクル中の異なるタイミングの間において、変動し得る。ただし、主な気流の向き、特に、点火タイミングにおける気流の向きは、概略定まっており、上述した気流A1は、点火タイミングにおける主な気流を意味する。
【0051】
次に、本形態の作用効果を説明する。
上記内燃機関用のスパークプラグ1において、噴孔の中心軸の延長線51Lは、放電ギャップGを通過しないと共に、プラグ軸方向Zから見て、プラグ径方向に対して傾斜している。これにより、噴孔51を介して副燃焼室50に導入される気流によって、副燃焼室50内にスワール流を形成することができる。そして、副燃焼室50内に形成されたスワール流によって、放電ギャップGに形成された放電を伸長させることができる。その結果、着火性を向上させることができる。
【0052】
また、突出端部63の少なくとも一部は、プラグ中心軸Cまでの距離D1よりも突出側噴孔510までの距離D2が近い位置に配置されている。それゆえ、突出側噴孔510を介して副燃焼室50から流出する気流は、接地電極6の基端面61に案内されて、放電ギャップGを通過しやすい。それゆえ、
図11、
図12に示すごとく、放電ギャップGに形成された放電が突出側噴孔510に向かって伸長しやすい。その結果、着火性を向上させることができる。
【0053】
すなわち、圧縮行程等においては、
図9、
図10に示すごとく、上昇スワール流Asuと下降スワール流Asdとが形成される。上昇スワール流Asuは、主として副燃焼室50の内周壁付近を、プラグ周方向に回転しながら基端側へ向かう。下降スワール流Asdは、主としてプラグ中心軸Cに近い位置において、プラグ周方向に回転しながら先端側へ向かう。そして、下降スワール流Asdは、放電ギャップGの外周側にも形成される。これにより、放電ギャップG及びその周辺のガスは、下降スワール流Asdに引き込まれやすい。それゆえ、
図9、
図10に示すごとく、放電ギャップG及びその周辺において、下降スワール流Asdに向かう気流A21が形成されやすい。それゆえ、
図9に示すごとく、放電ギャップGに形成された放電Sは、
図10に示すごとく、気流A21によって伸長しやすい。その結果、着火性を向上させることができる。
【0054】
さらに、着火した初期火炎は、上昇スワール流Asuによって副燃焼室50における基端側へ運ばれる。これによって、噴孔51から充分離れた位置から火炎が広がり、充分に内圧が高い状態で、火炎ジェットが噴孔51から主燃焼室に噴出することが期待できる。その結果、内燃機関の高負荷時のノック抑制、低負荷時もしくは中負荷時におけるEGR率(すなわち、排気再循環率)の向上が期待でき、燃費向上、エミッション低減が期待できる。
【0055】
また、膨張行程においては、ピストンが先端側に移動することにより、主燃焼室が副燃焼室50に対して陰圧となる。これにより、噴孔51を介して、副燃焼室50から主燃焼室へとガスが導出される。そして、
図11、
図12に示すごとく、突出側噴孔510を介したガスの導出に伴って副燃焼室50に形成された気流A22は、接地電極6の基端面61に案内されて放電ギャップGを通過し、突出側噴孔510へ向かうこととなる。それゆえ、
図11に示すごとく、膨張行程において、放電ギャップGに生じた放電Sは、
図12に示すように、気流A22によって突出側噴孔510に向かって伸長し易く、副燃焼室50内での着火性を向上することができる。また、着火位置を突出側噴孔510に近付けやすいため、例えば、副燃焼室50の温度が低い運転条件などでは、冷損も抑制され、主燃焼室への火炎ジェットを強化することができる。さらに、放電ギャップGにて生じた放電S或いは放電プラズマ、又は初期火炎が、突出側噴孔510から噴出しやすいため、主燃焼室での着火性を向上させることができる。
【0056】
また、
図11に示すごとく、膨張行程において、放電ギャップGに生じた放電Sの接地電極6側の起点SPは、
図12に示すごとく、気流A22により、突出側噴孔510に向って移動しやすい。それゆえ、放電Sは、突出側噴孔510に向かって伸長しやすい。その結果、着火性を向上させることができる。また、場合によっては、
図13に示すごとく、放電Sの起点SPは、接地電極6の突出端部63から突出側噴孔510の内面に移ることもある。そうすると、更に放電Sは伸長されると共に、放電Sの一部が突出側噴孔510から主燃焼室側へ飛び出すことも期待できる。これによって、更に内燃機関の着火性を向上させることができる。
【0057】
接地電極6の基端面61は、接地電極6の長手方向における、少なくとも放電ギャップGを形成する部位から突出端部63にわたって、接地傾斜面611を有する。それゆえ、膨張行程において、突出側噴孔510を介して副燃焼室50から導出される気流は、接地傾斜面611を有する基端面61によって一層案内されやすい。それゆえ、放電ギャップGに形成された放電は、突出側噴孔510に向かって一層伸長しやすい。その結果、着火性を一層向上させることができる。
【0058】
直線L1(
図4参照)を含むと共にプラグ軸方向Zに沿った断面において、突出端部63は、直線L1よりも先端側に配置されている。それゆえ、膨張行程において、放電ギャップGに生じた放電は、突出端部63によって短絡されることなく、突出側噴孔510及び主燃焼室に向かって確実に伸長しやすい。その結果、着火性を確実に向上させることができる。
【0059】
つまり、仮に、突出端部63が直線L1よりも基端側にある場合を想定する。この場合、突出側噴孔510に向かって伸長する放電は、突出端部63よりも突出側噴孔510側に伸長しようとしたときに、突出端部63によって短絡されやすい。一方、本形態において、突出端部63は、上記の位置に配置されている。それゆえ、
図11に示すごとく、膨張行程において、放電ギャップGに生じた放電Sは、
図12、
図13に示すように、突出端部63よりも突出側噴孔510側に伸長したとしても、突出端部63によって短絡されにくい。その結果、着火性を向上させることができる。
【0060】
また、突出端部63が上記の位置に配置されていることにより、放電Sの接地電極6側の起点SPは、
図13に示すように、突出側噴孔510の内面に移りやすい。さらに、起点SPは、突出側噴孔510の外側開口部511に向かって移動しやすい。それゆえ、放電Sを主燃焼室側に一層伸長させやすい。その結果、主燃焼室の着火性を一層向上させることができる。
【0061】
また、直線L2(
図4参照)を含むと共にプラグ軸方向Zに沿った断面において、突出端部63は、直線L2よりも先端側に配置されている。それゆえ、放電ギャップGに生じた放電は、突出端部63によって短絡されることなく、突出側噴孔510及び主燃焼室に向かって一層確実に伸長しやすい。
【0062】
また、直線L3(
図4参照)を含むと共にプラグ軸方向Zに沿った断面において、突出端部63は、直線L3よりも先端側に配置されている。それゆえ、放電ギャップGに生じた放電は、突出端部63によって短絡されることなく、突出側噴孔510及び主燃焼室に向かって一層確実に伸長しやすい。
【0063】
プラグ軸方向Zから見たとき、突出側噴孔510の中心軸の延長線51Lと接地電極6の基端面61とは、互いに重なっている。それゆえ、突出側噴孔510を介して副燃焼室50から導出される気流は、接地電極6の基端面61によって確実に案内されやすい。それゆえ、放電ギャップGに形成された放電は、突出側噴孔510に向かって確実に伸長しやすい。
【0064】
突出側噴孔510は、他の噴孔51よりも開口面積が大きい。それゆえ、膨張行程において、突出側噴孔510を介して副燃焼室50から導出される気流が強くなりやすい。それゆえ、接地電極6の基端面61によって案内される気流が強くなりやすい。それゆえ、放電ギャップGに生じた放電が、突出側噴孔510に向かって一層伸長しやすい。その結果、着火性を一層向上させることができる。
【0065】
また、噴孔51の中心軸の延長線51Lは、放電ギャップGを通過しない。それゆえ、噴孔51を介して副燃焼室50に導入された気流は、放電ギャップGに直接流入しにくい。その結果、気流による放電の吹き消え、短絡を抑制することができる。
【0066】
上記内燃機関10において、上記スパークプラグ1は、他の噴孔51よりも開口面積が大きい突出側噴孔510を有する。そして、当該スパークプラグ1は、プラグ軸方向Zから見たとき、少なくとも一つの突出側噴孔510の外側開口部511が吸気弁72側を向くように、配置されている。これにより、プラグ軸方向Zから見たとき、突出側噴孔510を介して、副燃焼室50から主燃焼室11の吸気弁72側へ大きい火炎を噴出させることができる。それゆえ、プラグ軸方向Zから見て主燃焼室11における吸気弁72側の混合気の着火性を向上させることができる。それゆえ、主燃焼室11全体の混合気をバランスよく燃焼させることができる。その結果、ノッキング等の原因となる燃焼異常の抑制を図ることができる。
【0067】
つまり、Z方向から見たとき、主燃焼室11における、高温のガスを排出する排気ポート731が設けられた排気弁73側と比較し、比較的低温のガスを主燃焼室11へ導入する吸気ポート721が設けられた吸気弁72側は、低温となりやすい。それゆえ、Z方向から見たとき、主燃焼室11における、排気弁73側の混合気に対し、吸気弁72側の混合気の燃焼が遅れることによって、主燃焼室11における混合気の燃焼のバランスが悪くなるおそれがある。しかし、本形態においては、上記のごとく、Z方向から見たとき、副燃焼室50から主燃焼室11の吸気弁72側へ大きい火炎を噴出させることができる。そのため、主燃焼室11全体の混合気をバランスよく燃焼させることができ、未燃燃料の局所的な残留も抑えることができる。その結果、ノッキング等の原因となる燃焼異常の抑制を図ることができる。
【0068】
以上のごとく、本形態によれば、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグ1及びこれを備えた内燃機関10を提供することができる。
【0069】
(実施形態2)
本形態は、
図14、
図15に示すごとく、インジェクタ71から噴射された噴射流Fが、突出側噴孔510の外側開口部511に向かうように、スパークプラグ1が配置された内燃機関10の形態である。
【0070】
本形態の内燃機関10は、
図14に示すごとく、主燃焼室11に直接燃料を噴射するインジェクタ71を有する。スパークプラグ1は、内燃機関10の圧縮行程においてインジェクタ71から噴射された燃料を含む噴射流Fが、突出側噴孔510の外側開口部511に向かうように、配置されている。なお、
図14に示す矢印Fは、燃料噴射直後の噴射流の向きを示すものであり、これは、必ずしも、圧縮行程又は膨張行程における主燃焼室11内の気流と一致するものではない。また、噴射流Fが突出側噴孔510の外側開口部511に向かうような状態は、
図15に示すプラグカバー5近傍の噴射流Fの方向から突出側噴孔510の外側開口部511が見えるような状態である。
【0071】
本形態において、スパークプラグ1は、Z方向から見たとき、突出側噴孔510の外側開口部511が、排気弁73側を向くように、配置されている(図示略)。
【0072】
また、
図14に示すごとく、吸気ポート721に隣接する位置に、インジェクタ71が設けてある。インジェクタ71は、主燃焼室11の中心軸側に向かって燃料を噴射するような姿勢にて、取り付けられている。
【0073】
圧縮行程においては、主燃焼室11内の雰囲気が圧縮され、噴孔51を介して、副燃焼室50へ気流が流入する。これにより、副燃焼室50内にスワール流が形成されると共に、副燃焼室50内の圧力も上昇する。そして、例えば、圧縮行程において、インジェクタ71が燃料を直接、主燃焼室11へ噴射する。
【0074】
そして、主燃焼室11へ噴射された燃料は、
図14に示すごとく、主燃焼室11内の空気と共に噴射流Fを形成して、ピストン74の基端面に当たる。本形態において、ピストン74の基端面は、凹状面を有する。ピストン74の基端面に当たった噴射流Fは、軌道を変えて、基端側、すなわちスパークプラグ1側へ向かう。このとき、噴射流Fは、
図15に示すごとく、スパークプラグ1における突出側噴孔510の外側開口部511付近に到達する。
【0075】
噴射流Fは、燃料割合の比較的大きい混合気となっている。それゆえ、噴射流Fが到達した突出側噴孔510の外側開口部511付近は、燃料を多く含む混合気となる。そして、この混合気は、スワール流が形成されている副燃焼室50に、突出側噴孔510を介して引き込まれることとなる。そして、突出側噴孔510から引き込まれた燃料密度の高い混合気が、放電ギャップGに向かうこととなる。
【0076】
そして、圧縮上死点付近において、スパークプラグ1の放電ギャップGに放電を生じさせる。これにより、混合気への着火が効率的に行われる。なお、上述の燃料噴射タイミング、スパークプラグ1の放電点火タイミングは、後述するように、状況や目的等によって、種々変更しうる。
その他は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0077】
上記内燃機関10において、上記スパークプラグ1は、インジェクタ71から噴射された噴射流Fが、他の噴孔51よりも開口面積が大きい突出側噴孔510の外側開口部511に向かうように、配置されている。これにより、燃料密度の高い混合気が、突出側噴孔510から副燃焼室50内へ導入されやすくなる。その結果、燃料密度の高い混合気が、放電ギャップGに到達しやすくなり、着火性を向上させることができる。
【0078】
また、例えば、内燃機関の高負荷運転において、プレイグニッションの抑制を目的として、リタード噴射、リタード点火を行う場合がある。リタード噴射、リタード点火は、一般的な燃料噴射及び点火のタイミングよりも遅いタイミングで行う、燃料噴射及び点火である。つまり、インジェクタ71からの燃料噴射タイミングを、例えば、圧縮行程における、ピストン74が上死点に達する直前のタイミングとする。具体的には、例えば、BTDC30°のタイミングにて、燃料を噴射する。BTDCは、Before Top Dead Center の略であり、圧縮上死点に対してどの程度前のクランク角のタイミングかを示す。そして、スパークプラグ1の点火を、実質的に圧縮上死点のタイミングとする。
【0079】
このようなタイミングにて、燃料噴射及び点火を行うことで、所望のタイミングよりも早いタイミングでの着火、すなわち早期着火を抑制し、プレイグニッションを抑制することができる。その一方で、リタード噴射を行う場合、燃料が主燃焼室11に供給される際には、すでに副燃焼室50内にある程度空気が充填されていると共に、主燃焼室11内の気流も弱まった状態となる。そうすると、プラグカバー5に形成された噴孔51から副燃焼室50に導入される燃料が、比較的少なくなりやすい状況となる。
【0080】
しかし、本形態のスパークプラグ1は、インジェクタ71から噴射された噴射流が、他の噴孔51よりも開口面積が大きい突出側噴孔510の外側開口部511に向かうように、配置されている。それゆえ、燃料密度の高い混合気が、突出側噴孔510から副燃焼室50内へ導入されやすい。その結果、副燃焼室50内における着火性を向上させ、ひいては、主燃焼室11の着火性を向上させることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0081】
上記内燃機関10において、スパークプラグ1は、Z方向から見たとき、突出側噴孔510の外側開口部511が、排気弁73側を向くように、配置されている。ただし、スパークプラグは、実施形態1と同様に、Z方向から見たとき、少なくとも一つの突出側噴孔の外側開口部が、吸気弁側を向くように、配置することもできる。この場合も、圧縮行程においてインジェクタから噴射された燃料を含む噴射流が、突出側噴孔の外側開口部に向かうように、スパークプラグとインジェクタとを配置する。これにより、Z方向から見たとき、突出側噴孔を介して、副燃焼室から主燃焼室の吸気弁側へ大きい火炎を噴出させることができる。
【0082】
(実施形態3)
本形態は、
図16に示すごとく、実施形態1に対し、放電ギャップの形成位置を変更した形態である。
【0083】
本形態において、放電ギャップGは、ハウジング2の先端よりも先端側に形成されている。すなわち、中心電極4の先端突出部41が、ハウジング2の先端よりも先端側に突出している。
【0084】
接地電極6は、
図16に示すごとく、固定端部62よりも突出端部63に近い側の一部における、接地電極6の長手方向に直交する方向の厚みが、突出端部63に近づくに従って、徐々に小さくなっている。そして、接地電極6の先細り形状となった部分の先端側の面は、プラグカバー5の底壁部54の内壁面に沿って形成されている。
その他は、実施形態1と同様である。
【0085】
放電ギャップGは、ハウジング2の先端よりも先端側に形成されている。それゆえ、ハウジング2にプラグカバー5を固定する前において、ハウジング2に固定された接地電極6と中心電極4との間に形成された放電ギャップGを確認しやすい。それゆえ、放電ギャップGの調整を容易に行うことができる。その結果、スパークプラグ1を容易に製造することができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0086】
(実施形態4)
本形態は、
図17、
図18に示すごとく、実施形態1に対し、ポケット部501の形状を変更した形態である。
【0087】
本形態において、絶縁碍子3の外周面は、
図17、
図18に示すごとく、ポケット部501に対向する部位に、先端側へ向かうほど縮径する碍子傾斜面31を有する。ハウジング2の内周面は、ポケット部501に対向する部位に、基端側へ向かうほど縮径するハウジング傾斜面21を有する。
【0088】
本形態においては、絶縁碍子3の外周面のうち、ポケット部501に対向する部位の略全体に、碍子傾斜面31が設けてある。また、本形態においては、ハウジング2の内周面のうち、ポケット部501に対向する部位の略全体に、ハウジング傾斜面21が設けてある。
その他は、実施形態1と同様である。
【0089】
本形態のスパークプラグ1は、ポケット部501に対向する部位に、碍子傾斜面31とハウジング傾斜面21とを有する。これにより、副燃焼室50に形成されたスワール流が、放電ギャップGの外周側において、充分な強さの気流として形成されやすい。
【0090】
すなわち、噴孔51から副燃焼室50に導入された気流は、副燃焼室50の内周壁に沿って上昇スワール流を形成しつつ基端側へ向かう。そして、上昇スワール流は、ポケット部501をハウジング2の内周面に沿って基端側へ移動しながら旋回する。ここで、
図18に示すごとく、ハウジング2の内周面はハウジング傾斜面21を有するため、基端側へ移動する上昇スワール流Asuは、ポケット部501の基端部に向かうにつれて徐々にプラグ中心軸Cに近付く。
図18に符号Asuを付した記号は、ポケット部501における、基端側へ向かう上昇スワール流の主流のイメージを示す。
【0091】
その後、ポケット部501の基端部において跳ね返ったスワール流は、先端側へ向かいながら旋回する。このときの下降スワール流Asdには、プラグ中心軸Cに近付く方向のベクトル成分も残っている。それゆえ、絶縁碍子3の外周面に沿って先端側へ向かいながら旋回する。
図18に符号Asdを付した記号は、ポケット部501における、先端側へ向かう下降スワール流の主流のイメージを示す。
【0092】
絶縁碍子3の外周面は碍子傾斜面31を有するため、先端側へ向かう下降スワール流Asdは、徐々にプラグ中心軸Cに近付く。すなわち、スワール流は、基端側へ移動する際も、その後先端側へ移動する際も、徐々にプラグ中心軸Cに近付く。これにより、中心電極4及び放電ギャップGの外周側において、充分な強さの気流を確実に形成することができる。その結果、放電ギャップGに形成された放電が確実に伸長されやすく、副燃焼室50における着火性を向上させることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0093】
(実施形態5)
本形態は、
図19に示すごとく、実施形態1に対し、中心電極4の先端部の形状を変更した形態である。
すなわち、中心電極4の先端面411は、接地電極6の接地傾斜面611に沿って傾斜している。
【0094】
本形態において、中心電極4の先端面411と接地電極6の接地傾斜面611とは、それぞれ平坦な面となっている。そして、
図19に示すごとく、それぞれの平坦な面同士が、互いに略平行に対向配置されることにより、放電ギャップGが形成されている。
その他は、実施形態1と同様である。
【0095】
中心電極4の先端面411は、接地電極6の接地傾斜面611に沿って傾斜している。それゆえ、中心電極4の先端面411と接地電極6の接地傾斜面611とを略平行にすることができる。これにより、中心電極4側の放電の起点位置を分散させやすい。そのため、中心電極4が局部的に摩耗することを抑制し、放電ギャップGの距離が拡大することを抑制することができる。その結果、スパークプラグ1の寿命を延ばすことができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0096】
(実施形態6)
本形態は、
図20に示すごとく、実施形態5に対し、中心電極4の先端部の形状を変更した形態である。
【0097】
本形態において、中心電極4の先端部は、
図20に示すごとく、先端側に向かうに従って縮径したテーパ形状を有する。テーパ形状を有する中心電極4の先端部は、略円錐台形状を有する。なお、中心電極4の先端部は、略円錐形状、略四角錐台形状、略四角錐形状等とすることができる。
【0098】
中心電極4におけるテーパ形状を有する先端部のテーパ面412は、環状に形成されている。テーパ面412の一部は、接地電極6の接地傾斜面611に沿って傾斜している。そして、テーパ面412と、接地電極6の接地傾斜面611との間に、放電ギャップGが形成されている。
その他は、実施形態5と同様である。
【0099】
本形態は、テーパ面412と接地傾斜面611との間に、放電ギャップGが形成されている。それゆえ、本形態においても、中心電極4の局部的な摩耗を抑制し、放電ギャップGの距離が拡大することを抑制することができる。
その他、実施形態5と同様の作用効果を有する。
【0100】
(実施形態7)
本形態は、
図21~
図23に示すごとく、実施形態1に対し、接地電極6の形状を変更した形態である。
【0101】
本形態において、接地電極6の基端面61は、
図21~
図23に示すごとく、接地電極6の長手方向における、少なくとも、中心電極4の先端面411とZ方向に対向する部分よりも突出端部63側に、突出側傾斜面612を有する。突出側傾斜面612は、
図23に示すごとく、接地電極6の突出方向から見たとき、突出側噴孔に近づくに従って先端側に向かうように、Z方向に対して傾斜している。
【0102】
言い換えると、突出側傾斜面612は、
図21~
図23に示すごとく、接地電極6の長手方向と直交する方向である接地電極6の幅方向において、突出側噴孔510に近づくに従って、徐々に先端側に向かっている。
【0103】
また、
図21に示すごとく、Z方向から見たとき、突出側噴孔510の中心軸の延長線51Lと突出側傾斜面612とは、互いに重なっている。
その他は、実施形態1と同様である。
【0104】
本形態の接地電極6は、突出側傾斜面612を有する。それゆえ、突出側噴孔510を介して副燃焼室50から導出される気流は、突出側傾斜面612を有する基端面61によって一層案内されやすい。それゆえ、放電ギャップGに形成された放電は、突出側噴孔510に向かって一層伸長しやすい。その結果、着火性を一層向上させることができる。
【0105】
また、放電ギャップGに生じた放電の接地電極6側の起点は、突出側噴孔510を介して副燃焼室50から導出される気流により、突出側噴孔510に向かって一層移動しやすい。それゆえ、放電は、突出側噴孔510に向かって一層伸長しやすい。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0106】
(実施形態8)
本形態は、
図24に示すごとく、実施形態1に対し、接地電極6の形状を変更した形態である。
すなわち、接地電極6は、ハウジング2の先端部に固定されると共に、固定端部62を含む固定側部64と、接地傾斜面611を備えた傾斜部65とを有する。固定側部64は、プラグ径方向に沿って形成されている。傾斜部65は、突出端部63に近づくに従って先端側に向かうようにZ方向に対して傾斜している。
【0107】
本形態において、接地電極6の固定端部62は、
図24に示すごとく、ハウジング2の先端面24に接合されている。なお、接地電極6は、ハウジング2の先端部の内周面に接合することもできる。
その他は、実施形態1と同様である。
【0108】
本形態において、接地電極6は、固定側部64と傾斜部65とを有する。それゆえ、突出端部63を突出側噴孔510の近くとなるように配置しつつ、接地電極6を安定してハウジング2の先端部に固定しやすい。その結果、スパークプラグ1の生産性を向上させやすい。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0109】
(実施形態9)
本形態は、
図25~
図30に示すごとく、実施形態1に対し、接地電極6の固定位置を変更した形態である。
【0110】
本形態において、突出側噴孔510は、
図25、
図26、
図28~
図30に示すごとく、他の噴孔51よりも開口面積が大きい。
図25に示すごとく、プラグ軸方向Zから見たとき、突出側噴孔510の中心軸の延長線51Lは、接地電極6と重ならないように接地電極6の突出方向に沿っている。また、
図26に示すごとく、プラグ軸方向Zから見たとき、突出側噴孔510の中心510Cは、接地電極6を突出方向に延長した延長領域6Eの外側に配置されている。
【0111】
接地電極6は、Z方向から見たとき、プラグ径方向に沿うように、ハウジング2に固定されている。また、接地電極6は、
図25~
図30に示すごとく、プラグ周方向を向く、2つの周方向側面66を有する。
【0112】
また、本形態のスパークプラグ1は、
図25、
図26、
図28、
図29に示すごとく、突出側噴孔510以外の噴孔51として、隣接噴孔513を有する。
図26に示すごとく、隣接噴孔513は、Z方向から見て、接地電極6の延長領域6Eを挟んで突出側噴孔510とプラグ周方向に隣り合う噴孔である。
【0113】
突出側噴孔510と隣接噴孔513とは、プラグ周方向に90°、互いにずれた位置に形成されている。そして、Z方向から見て、プラグ周方向における突出側噴孔510と隣接噴孔513との間に向かって、接地電極6が突出している。
【0114】
Z方向から見て、接地電極6の突出端部63と突出側噴孔510との距離は、突出端部63と隣接噴孔513との距離よりも短い。つまり、突出端部63は、プラグカバー5に形成された複数の噴孔51のうち、突出側噴孔510に最も近接している。
【0115】
また、突出側噴孔510の内径は、例えば、他の噴孔51の内径の1.2~1.4倍とすることができる。突出側噴孔510の内径をこの範囲に規定することで、突出側噴孔510から流出する気流を充分に強くしやすくなる。本形態においては、隣接噴孔513を含め、突出側噴孔510以外のすべての噴孔51が、互いに同じ内径を有する。
その他は、実施形態1と同様である。
【0116】
本形態において、突出側噴孔510は他の噴孔51よりも内径が大きい。それゆえ、特に膨張行程において、突出側噴孔510を介して副燃焼室50から主燃焼室へと多くのガスが導出されることにより、
図28~
図30に示すごとく、副燃焼室50内に突出側噴孔510へと向かう気流A22が形成される。また、気流A22は、放電ギャップGから突出側噴孔510に向かうように形成される。それゆえ、膨張行程点火によって生じた放電Sは、気流A22によって、突出側噴孔510に向かって引き伸ばされる。
【0117】
また、本形態において、突出側噴孔510の中心軸の延長線51Lは、Z方向から見たとき、接地電極6と重ならないように接地電極6の突出方向に沿っている。また、Z方向から見たとき、突出側噴孔510の中心510Cは、延長領域6E(
図26参照)の外側に配置されている。それゆえ、膨張行程においては、接地電極6の突出側噴孔510側の周方向側面66に沿う気流A22も、効果的に形成されやすい。それゆえ、放電Sの接地電極6側の起点SPは、
図28に示すごとく、突出側噴孔510側の周方向側面66に沿って、突出端部63に向かって移動しやすい。それゆえ、放電Sが一層伸長しやすく、膨張行程における着火性を一層向上させることができる。
【0118】
また、突出側噴孔510と接地電極6とが上記位置に配置されていることにより、放電Sの起点SPは、
図29に示すごとく、気流A22によって、突出側噴孔510の内面にまで移動しやすい。それゆえ、
図30に示すごとく、放電Sの一部が突出側噴孔510から主燃焼室側へ飛び出しやすい。その結果、主燃焼室における着火性を向上させることができる。
【0119】
また、エンジン始動時等には、排気系に設けられた排ガス浄化フィルタにおける触媒温度を高くすることを目的として、ピストンが上死点を通過した直後の膨張行程の初期に点火を行う場合がある。そのため、上述のごとく、膨張行程における着火性が向上することにより、エンジン始動時等において、排ガス浄化フィルタの触媒温度を、短期間に上昇させることができる。そのため、燃費向上、エミッション低減が期待できる。
【0120】
また、Z方向から見て、突出端部63と突出側噴孔510との距離は、突出端部63と隣接噴孔513との距離よりも短い。それゆえ、膨張行程において、放電ギャップGに形成された放電は、突出側噴孔510に向かって、より一層伸長しやすい。その結果、膨張行程における着火性を、より一層向上させることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0121】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0122】
1…スパークプラグ、2…ハウジング、3…絶縁碍子、4…中心電極、41…先端突出部、5…プラグカバー、50…副燃焼室、51…噴孔、510…突出側噴孔、6…接地電極、61…基端面、62…固定端部、63…突出端部、51L…噴孔の中心軸の延長線、C…プラグ中心軸、G…放電ギャップ、Z…プラグ軸方向、D1…突出端部からプラグ中心軸までの距離、D2…突出端部から突出側噴孔までの距離