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7585991電力伝送システム、送電システムおよび電力伝送方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】電力伝送システム、送電システムおよび電力伝送方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 53/62 20190101AFI20241112BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20241112BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20241112BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20241112BHJP
   B60L 53/122 20190101ALI20241112BHJP
   B60L 53/66 20190101ALI20241112BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20241112BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20241112BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B60L53/62
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L50/60
B60L53/122
B60L53/66
B60L58/12
H02J50/10
H02J7/00 P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021104688
(22)【出願日】2021-06-24
(65)【公開番号】P2023003550
(43)【公開日】2023-01-17
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊洋
(72)【発明者】
【氏名】小林 勝也
(72)【発明者】
【氏名】村田 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】松盛 裕志
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 直弘
(72)【発明者】
【氏名】楠本 光優
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-034946(JP,A)
【文献】特開2019-068681(JP,A)
【文献】特開2006-031443(JP,A)
【文献】特開2021-064256(JP,A)
【文献】特開2021-061724(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0098723(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00- 3/12
7/00-13/00
15/00-58/40
B60M 1/00- 7/00
G08G 1/00-99/00
H02J 50/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体と、
前記移動体の走行レーンに設置され、非接触で電力を送電可能に構成された送電装置と、
前記送電装置を制御する制御装置とを備え、
前記移動体は、蓄電可能な電力量が所定量よりも小さく、前記送電装置から非接触で受電した電力に依存した上限速度で走行するように構成され、
前記制御装置は、
前記走行レーンに歩行者が検知された場合、前記走行レーンに前記歩行者が検知されていない場合と比べて、前記送電装置から前記移動体への送電電力を抑制することによって前記移動体を強制的に減速させつつも前記移動体の移動を継続させ、かつ、所定のレートで、または所定の時間をかけて前記送電電力を低減することにより前記送電電力の急変を避ける、電力伝送システム。
【請求項2】
前記制御装置は、所定の時間帯には前記時間帯以外と比べて、前記送電電力を抑制することによって前記移動体を減速させる、請求項1に記載の電力伝送システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記送電電力を抑制した旨を前記移動体に通知し、
前記移動体は、前記通知を受けた場合に、前記移動体のドライバの操作に従って、さらに減速する、請求項1または2に記載の電力伝送システム。
【請求項4】
前記移動体は、前記送電電力の抑制に伴って前記移動体が減速した旨を前記歩行者に報知する報知部を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の電力伝送システム。
【請求項5】
移動体への送電システムであって、
前記移動体は、蓄電可能な電力量が所定量よりも小さく、非接触で受電した電力に依存した上限速度で走行するように構成され、
前記送電システムは、
前記移動体の走行レーンに配置され、前記移動体に非接触で電力を送電可能に構成された送電装置と、
前記送電装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記走行レーンに歩行者が検知された場合、前記走行レーンに前記歩行者が検知されていない場合と比べて、前記送電装置から前記移動体への送電電力を抑制することによって前記移動体を強制的に減速させつつも前記移動体の移動を継続させ、かつ、所定のレートで、または所定の時間をかけて前記送電電力を低減することにより前記送電電力の急変を避ける、送電システム。
【請求項6】
送電装置から移動体への電力伝送方法であって、
前記送電装置は、前記移動体の走行レーンに配置され、前記移動体に非接触で電力を送電可能に構成され、
前記移動体は、蓄電可能な電力量が所定量よりも小さく、前記送電装置から非接触で受電した電力に依存した上限速度で走行するように構成され、
前記電力伝送方法は、
前記走行レーン内の歩行者を検知するステップと、
前記走行レーンに前記歩行者が検知された場合、前記走行レーンに前記歩行者が検知されていない場合と比べて、前記送電装置から前記移動体への送電電力を抑制することによって前記移動体を強制的に減速させつつも前記移動体の移動を継続させるステップとを含み、
前記継続させるステップは、所定のレートで、または所定の時間をかけて前記送電電力を低減することにより前記送電電力の急変を避けるステップを含む、電力伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力伝送システム、送電システムおよび電力伝送方法に関し、より特定的には、非接触での電力伝送技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2012-165497号公報(特許文献1)に開示された制御装置は、地上側の給電部から車両側の受電部への非接触での給電を制御する。具体的には、制御装置は、給電運転中に給電部の周囲に生体の存在を検知したときは、生体の存在が検知されていないときの給電運転と比べて、受電部へ給電する電力を制限する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-165497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力伝送システムの周囲には歩行者等の人が存在し得る。このような状況下において、周囲の人の安全および安心をどのように確保するかが課題になり得る。本開示の目的は、電力伝送システムの周囲の人の安全および安心を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本開示のある局面に係る電力伝送システムは、移動体と、移動体の走行レーンに設置され、非接触で電力を送電可能に構成された送電装置と、送電装置を制御する制御装置とを備える。移動体は、蓄電可能な電力量が所定量よりも小さく、送電装置から非接触で受電した電力に依存した上限速度で走行するように構成されている。制御装置は、走行レーンに歩行者が検知された場合、走行レーンに歩行者が検知されていない場合と比べて、送電装置から移動体への送電電力を抑制することによって移動体を強制的に減速させる。
【0006】
上記(1)の構成においては、走行レーンに歩行者が検知された場合、走行レーンに歩行者が検知されていない場合と比べて、送電装置の送電電力が抑制されるとともに、移動体が減速させられる。送電装置の送電電力が抑制により、送電装置の周囲に形成される電磁界が歩行者に及ぼし得る影響を軽減できる。また、移動体の減速により、歩行者の恐怖心を軽減できる。よって、上記(1)の構成によれば、電力伝送システムの周囲の人の安全および安心を確保できる。
【0007】
(2)制御装置は、所定の時間帯には当該時間帯以外と比べて、送電装置から移動体への送電電力を抑制することによって移動体を強制的に減速させる。
【0008】
上記(2)の構成によれば、所定の時間帯(たとえば人出が多い時間帯)にも周囲の人の安全および安心を確保できる。
【0009】
(3)制御装置は、送電装置から移動体への送電電力を抑制した旨を移動体に通知する。移動体は、上記通知を受けた場合に、移動体のドライバの操作に従って、さらに減速する。
【0010】
上記(3)の構成によれば、移動体をさらに減速させることで、周囲の人の安全をさらに確実に確保できる。
【0011】
(4)移動体は、送電装置からの送電電力の抑制に伴って移動体が減速した旨を歩行者に報知する報知部を含む。
【0012】
上記(4)の構成によれば、周囲の人が移動体の走行速度低下を把握することで、周囲の人の安心をさらに確実に確保できる。
【0013】
(5)本開示の他の局面に係る移動体への送電システムにおいて、移動体は、蓄電可能な電力量が所定量よりも小さく、非接触で受電した電力に依存した上限速度で走行するように構成されている。送電システムは、移動体の走行レーンに配置され、移動体に非接触で電力を送電可能に構成された送電装置と、送電装置を制御する制御装置とを備える。制御装置は、走行レーンに歩行者が検知された場合、走行レーンに歩行者が検知されていない場合と比べて、送電装置から移動体への送電電力を抑制することによって移動体を強制的に減速させる。
【0014】
上記(5)の方法によれば、上記(1)の構成と同様に、周囲の人の安全および安心を確保できる。
【0015】
(6)本開示のさらに他の局面に係る電力伝送方法は、送電装置から移動体に電力に伝送する。送電装置は、移動体の走行レーンに配置され、移動体に非接触で電力を送電可能に構成されている。移動体は、蓄電可能な電力量が所定量よりも小さく、送電装置から非接触で受電した電力に依存した上限速度で走行するように構成されている。電力伝送方法は、走行レーン内の歩行者を検知するステップと、走行レーンに歩行者が検知された場合、走行レーンに歩行者が検知されていない場合と比べて、送電装置から移動体への送電電力を抑制することによって移動体を強制的に減速させるステップとを含む。
【0016】
上記(6)の方法によれば、上記(1)の構成と同様に、周囲の人の安全および安心を確保できる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、電力伝送システムの周囲に歩行者等が存在する状況下における安全および安心を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の実施の形態に係る電力伝送システムの設置状況を概略的に示す図である。
図2】非接触送電システムの構成の一例を示す図である。
図3】第2レーンの様子の一例を示す図である。
図4】非接触送電システムからの送電電力および小型モビリティの走行速度の時間推移の一例を示す図である。
図5】非接触送電システムからの送電電力および小型モビリティの走行速度の時間推移の他の一例を示す図である。
図6】本実施の形態における送電処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0020】
[実施の形態]
<電力伝送システムの設置状況>
図1は、本開示の実施の形態に係る電力伝送システムの設置状況を概略的に示す図である。この例では、2つの方向毎に第1レーンL1~第3レーンL3が設けられている状況を想定する。
【0021】
第1レーンL1は、車両1が高速で走行可能なレーンである。車両1は、たとえば、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)または燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)等のゼロエミッションのモビリティである。ただし、車両1は、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)またはプラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)等の他の種類のモビリティであってもよい。
【0022】
第2レーンL2は、小型モビリティが低速で走行するレーンである。小型モビリティ2は、たとえば定員1名のパーソナルモビリティである。小型モビリティ2は、たとえば、完全自動運転が可能な荷物運搬用のモビリティであってもよい。なお、小型モビリティ2は、本開示に係る「移動体」に相当する。本実施の形態において、第2レーンL2には非接触送電システム10が設置されている。
【0023】
第3レーンL3は、歩行者3のみが通行可能な専用レーンである。第3レーンL3は、第2レーンL2と隣接して設けられている。なお、本開示における「歩行者」とは、歩行動作に必ずしも着目した用語ではなく、徒歩で移動中の人全般を意味する。いずれかのレーンを走っていたり立ち止まっていたりする人も「歩行者」に含まれ得る。
【0024】
図2は、非接触送電システム10の構成の一例を示す図である。非接触送電システム10は、地上ユニット11と、センサユニット12と、電力変換ユニット13と、コントローラ14とを含む。
【0025】
地上ユニット11は、小型モビリティ2の走行レーン(第2レーンL2)の路面に配置(たとえば埋設)される。地上ユニット11は、複数の送電コイルユニット111を含む。複数の送電コイルユニット111の各々は、その上方に小型モビリティ2が位置する場合に、コントローラ14からの制御信号に従って小型モビリティ2に非接触で送電可能に構成されている。なお、図2には10台の送電コイルユニット111が1列に配置された例が示されているが、地上ユニット11に含まれる送電コイルユニットの台数および配置は特に限定されるものではない送電コイルユニット111が2列以上配置されていてもよい。なお、地上ユニット11は、本開示に係る「送電装置」に相当する。
【0026】
センサユニット12は、地上ユニット11上を通過する小型モビリティ2の位置を検出し、その検出信号をコントローラ14に出力する。センサユニット12は、たとえば、カメラ、レーダー(Radar)およびライダー(LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging)(いずれも図示せず)のうちの少なくとも1つを含む。なお、地上ユニット11に対して1台のセンサユニット12が設けられるのに代えて、複数の送電コイルユニット111の各々に小型モビリティ2の位置を検出するためのセンサ(光学センサ、重量センサ等)が設けられていてもよい。
【0027】
電力変換ユニット13は、外部の交流電源9(典型的には商用電源)に電気的に接続されている。電力変換ユニット13は、交流電源9から供給される交流電力の電圧を適切な値に変換する。そして、電力変換ユニット13は、変換後の交流電力を、地上ユニット11に含まれる複数の送電コイルユニット111のうちの選択された送電コイルユニットに出力する。電力変換ユニット13も路面に埋設されていてもよい。
【0028】
コントローラ14は、通信モジュールを介して管理サーバ(図示せず)と双方向通信が可能に構成され、管理サーバからの指令に従って電力変換ユニット13を制御する。より具体的には、センサユニット12からの検出信号に基づいて、小型モビリティ2の位置を特定する。そして、コントローラ14は、複数の送電コイルユニット111のうち小型モビリティ2の下方に位置している送電コイルユニットに交流電力が出力されるように、電力変換ユニット13を制御する。たとえば、ある送電コイルユニットの上方に小型モビリティ2が検出された場合、コントローラ14は、当該送電コイルユニットを選択する。そうすると、当該送電コイルユニット内の送電コイルに交流電流が流れることで、送電コイルの周囲に電磁界が形成される。これにより、小型モビリティ2の受電装置22(後述)内の受電コイルに電力が伝送される(非接触充電)。その後、当該送電コイルユニットの上方に小型モビリティ2が検出されなくなると、コントローラ14は、当該送電コイルユニットを非選択とすることで、当該送電コイルユニットへの交流電力の出力を停止させる。このような一連の制御が送電コイルユニット毎に行われることで、小型モビリティ2が走行中であっても非接触で電力を伝送できる。小型モビリティ2が停止している場合にも当然ながら非接触での電力伝送が可能である。なお、コントローラ14も路面に埋設されていてもよい。
【0029】
図3は、第2レーンL2の様子の一例を示す図である。小型モビリティ2は、電力を非接触で受電して走行可能な電動のモビリティであって、バッテリ21と、受電装置22と、報知部23とを含む。
【0030】
バッテリ21は、複数のセルを含む組電池である。各セルは、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池などの二次電池である。バッテリ21は、小型モビリティ2の駆動力を発生させるための電力をモータジェネレータ(図示せず)に供給する。また、バッテリ21は、モータジェネレータにより発電された電力を蓄える。
【0031】
受電装置22は、図3に示す例では、小型モビリティ2の底面を形成するフロアパネルの下面に配置されている。受電装置22内には受電コイルが収容されている。受電コイルは、非接触送電システム10から送電される電力を非接触で受電する。受電装置22により受電された交流電力は、インバータ(図示せず)により直流電力に変換されてバッテリ21に充電される。
【0032】
本実施の形態において、バッテリ21に蓄電可能な電力は所定値よりも小さい。したがって、小型モビリティ2は、バッテリ21に蓄えられた電力ではわずかな距離しか走行できない。小型モビリティ2の走行時に消費される電力の大部分は非接触送電システム10から小型モビリティ2に受電された電力であって、バッテリ21に蓄えられた電力は補助的に消費されるに過ぎない。言い換えると、小型モビリティ2は、基本的に、非接触送電システム10から受電した電力をそのまま消費することで走行するため、小型モビリティ2の上限速度は非接触送電システム10から受電した電力に依存する。なお、バッテリ21は小型モビリティ2にとって必須の構成ではない。小型モビリティ2は、バッテリ21等の蓄電装置を非搭載であってもよい。蓄電装置を非搭載の小型モビリティ2に関しても「蓄電可能な電力量が所定量よりも小さい」と言える。
【0033】
報知部23は、小型モビリティ2の速度変化を歩行者3に報知する。より具体的には、報知部23は、たとえば外部から視認可能なランプまたはインジケータであって、小型モビリティ2の速度が低下した場合に点灯する。報知部23は、小型モビリティ2の速度が低下した旨のメッセージを表示するディスプレイであってもよい。また、報知部23は、小型モビリティ2の速度が低下した旨を音声により出力するスピーカーであってもよい。
【0034】
<歩行者検知>
前述のように、第2レーンL2は小型モビリティ2の走行レーンであるが、隣接する第3レーンL3は歩行者3の専用レーンである。したがって、歩行者3が第2レーンL2に侵入し、第2レーンL2内を一時的に歩行する可能性がある。あるいは、第2レーンL2が小型モビリティ2と歩行者3との共存を目指す共用の走行レーンであってもよい。このような状況下において、歩行者3の安全および安心をどのように確保するかが課題になり得る。本実施の形態においては、第2レーンL2に歩行者3が検知された場合には、第2レーンL2に歩行者3が検知されていない場合と比べて、非接触送電システム10から受電装置22への非接触での送電電力を抑制し、それにより小型モビリティ2を強制的に減速させる。
【0035】
図4は、非接触送電システム10からの送電電力および小型モビリティ2の走行速度の時間推移の一例を示す図である。図4および後述する図5において、横軸は経過時間を表す。縦軸は、上から順に、第2レーンL2における歩行者3の検知の有無、非接触送電システム10から小型モビリティ2への送電電力、および、小型モビリティ2の走行速度を表す。初期時刻t0では歩行者3は検知されていない。小型モビリティ2は、非接触送電システム10からのPaの送電電力を消費して速度Vaで走行している状況を想定する。
【0036】
時刻t1において、コントローラ14は、センサユニット12を用いて第2レーンL2内に歩行者3を検知する。なお、コントローラ14が歩行者3を検知する距離は、小型モビリティ2のプリクラッシュセーフティ(自動被害軽減ブレーキ)が作動しないと小型モビリティ2と歩行者3とが衝突し得る距離よりも長い距離(たとえば十数メートル~数十メートル)であることが望ましい。また、歩行者3を検知する範囲は、小型モビリティ2が走行予定のルートに限らず、小型モビリティ2が走行予定のルートから少し外れた範囲も含むように一定程度の幅を有することが望ましい。
【0037】
コントローラ14は、歩行者3を検知すると、非接触送電システム10(より詳細には小型モビリティ2の走行ルート直下の送電コイルユニット111)から小型モビリティ2への送電電力をPaからPbへと低減させる。図4に示すように、たとえば所定のレート(傾き)で、または所定の時間をかけて送電電力を低減することで、送電電力の急変を避けることが望ましい。送電電力の低減に伴い、非接触送電システム10により発生する電磁界が弱まる。よって、電磁界が歩行者3に及ぼし得る影響を軽減できる。また、非接触送電システム10の節電も可能である。
【0038】
それに加えて、前述したように、小型モビリティ2は、基本的にはバッテリ21に蓄えられた電力ではなく、非接触送電システム10から受電した電力を消費することで走行する。したがって、非接触送電システム10からの送電電力をPaからPbへと低減すると、一定程度の時間遅れを伴い得るものの、小型モビリティ2の走行速度(ここでは走行速度=上限速度)もVaからVbへと低下する。そうすると、小型モビリティ2の走行音が低減される。よって、小型モビリティ2が歩行者3の近くを通過するときに歩行者3が驚いたり恐怖を感じたりすることを抑制できる。
【0039】
図5は、非接触送電システム10からの送電電力および小型モビリティ2の走行速度の時間推移の他の一例を示す図である。コントローラ14は、非接触送電システム10からの送電電力を低減する旨(あるいは歩行者3を検知した旨)をドライバに通知してもよい。これにより、通知を受けたドライバが手動で小型モビリティ2の減速操作を行うことが可能になる。減速操作に伴って小型モビリティ2の走行速度がさらに低下するので、小型モビリティ2の走行音がさらに低減される。その結果、歩行者3の驚きおよび/または恐怖心を一層抑制できる。
【0040】
<処理フロー>
図6は、本実施の形態における送電処理の処理手順を示すフローチャートである。図中、左側に非接触送電システム10(コントローラ14)により実行される一連の処理を示し、右側に小型モビリティ2により実行される処理を示す。このフローチャートは、たとえば予め定められた条件成立時にメインルーチン(図示せず)から呼び出されて実行される。非接触送電システム10により実行される各ステップは、コントローラ14によるソフトウェア処理により実現されるが、コントローラ14内に配置されたハードウェア(電気回路)により実現されてもよい。以下、ステップをSと略す。
【0041】
S11において、コントローラ14は、センサユニット12からの検出信号に基づき、第2レーンL2内に歩行者3が検知されたかどうかを判定する。第2レーンL2内に歩行者3が検知された場合(S11においてYES)、コントローラ14は処理をS13に進める。また、第2レーンL2内に歩行者3が検知されていない場合(S11においてNO)であっても、第2レーンL2の周囲が混雑する予め定められた走行区間および時間帯に小型モビリティ2が走行中である場合(S13においてYES)には、コントローラ14は処理をS13に進める。
【0042】
S13において、コントローラ14は、第2レーンL2内に歩行者3が検知されていない場合と比べて、非接触送電システム10から小型モビリティ2への送電電力を抑制する。これにより、小型モビリティ2が減速する。さらに、コントローラ14は、送電電力を抑制した旨を小型モビリティ2に通知する(S14)。
【0043】
小型モビリティ2は、通知を受けると、小型モビリティ2が減速している旨を報知部23を用いて周囲の歩行者3に報知する(S21)。これにより、歩行者3は、小型モビリティ2が自身を検知していることを把握できるので、安心感を得ることができる。たとえば小型モビリティ2が完全自動運転車の場合、歩行者3は、自身がドライバに認知されているかどうかをドライバとのアイコンタクト等によって把握することができない。したがって、報知部23からの報知によって安心感を得ることが特に重要であり得る。
【0044】
さらに、小型モビリティ2のドライバは、通知を受けると、小型モビリティ2の減速操作を実施してもよい。そうすると、ドライバによる減速操作に従って、小型モビリティ2がさらに減速する(S22)。
【0045】
なお、第2レーンL2内に歩行者3が検知されておらず(S11においてNO)、かつ、第2レーンL2の周囲に人出が多い走行区間または時間帯でもない場合(S12においてNO)、コントローラ14は、非接触送電システム10から小型モビリティ2への送電電力を通常値に設定する(S15)。この通常値は、小型モビリティ2の仕様、第2レーンL2の制限速度等に応じて定められる。この場合、コントローラ14は、非接触送電システム10から小型モビリティ2への送電電力の抑制を停止する旨を小型モビリティ2に通知してもよい(S16)。図示しないが、通知を受けた小型モビリティ2は、ドライバによる加速操作に従って、非接触送電システム10から受けた電力で出力可能な速度範囲内で加速できる。
【0046】
以上のように、本実施の形態においては、第2レーンL2に歩行者3が検知された場合に、第2レーンL2に歩行者3が検知されていない場合と比べて、非接触送電システム10から小型モビリティ2への送電電力を抑制するとともに、小型モビリティ2を減速させる。非接触送電システム10からの送電電力を抑制することで、非接触送電システム10の周囲に形成される電磁界が歩行者3に及ぼし得る影響を軽減できる。また、小型モビリティ2の減速させることで、小型モビリティ2の走行音により歩行者3が受け得る恐怖心を軽減できる。よって、本実施の形態によれば、非接触送電システム10の周囲に歩行者3が存在する状況下における歩行者3の安全および安心を確保できる。
【0047】
また、小型モビリティ2が非密閉型である場合(たとえば小型モビリティ2の側面にドアが設けられていない場合)、状況によっては、非接触送電システム10により発生した電磁界が小型モビリティ2内のドライバに影響を及ぼす可能性も考えられる。本実施の形態によれば、歩行者3に加えて小型モビリティ2のドライバを電磁界から保護できる。
【0048】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
1 車両、10 非接触送電システム、11 地上ユニット、111 送電コイルユニット、12 センサユニット、13 電力変換ユニット、14 コントローラ、2 小型モビリティ、21 バッテリ、22 受電装置、23 通知部、3 歩行者、9 交流電源。
図1
図2
図3
図4
図5
図6