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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】媒体処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/10 20190101AFI20241112BHJP
   G07D 9/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G07D11/10
G07D9/00 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021106121
(22)【出願日】2021-06-25
(65)【公開番号】P2023004460
(43)【公開日】2023-01-17
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】内林 誠
(72)【発明者】
【氏名】大山 円
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-111287(JP,A)
【文献】特開2007-179189(JP,A)
【文献】特開2010-167121(JP,A)
【文献】特開2014-052802(JP,A)
【文献】特開2019-185155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 11/10
G07D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納空間の底部に配置され、当該収納空間の内部に収納された媒体を前記収納空間から出金口への搬送方向へ搬送する搬送部と、
前記搬送部の上面と対向して配置され、当該搬送部の上面により搬送されてくる前記媒体を分離する分離部と、
前記分離部の上方に設けられ、前記搬送部の上面に前記分離部の上方まで前記媒体が積み重なった際に、前記搬送部の前記搬送方向上流側に向かって前記収納空間の外側から内側に突出する突出部と
を備えることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記突出部の上方に設けられ、前記搬送部の上面に前記分離部の上方まで前記媒体が積み重なった際に、当該媒体と当接して押し上げられる媒体当接部を備え、
前記突出部は、
前記媒体当接部が前記媒体に押し上げられることによって、当該媒体当接部と連動して突出する
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記搬送部は搬送ベルトであり、
前記分離部は分離ローラであり、
前記分離ローラの上方に設けられ、前記収納空間の一部を形成するガイドと、
前記搬送ベルトの幅方向に延びる回動軸を中心に回動可能に設けられたブレードと
を備え、
前記ブレードは、
前記回動軸から前記搬送ベルトの前記搬送方向とは逆方向に延び、前記媒体当接部として機能する第1の部分と、前記回動軸から前記分離ローラに向かって下方に延び、前記突出部として機能する第2の部分とを有しており、前記第1の部分が前記ガイドから前記収納空間の内側に突出している状態で、前記第1の部分が前記搬送ベルトの上面に積み重なった前記媒体により上方に押し上げられると、前記回動軸を中心に一方向に回動することにより、前記第2の部分が前記搬送ベルトの前記搬送方向上流側に向かって前記ガイドから前記収納空間の内側に突出する
ことを特徴とする請求項2に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記ブレードは、
前記第2の部分の先端部分が前記分離ローラよりも上側に位置し、前記第2の部分が突出して前記搬送ベルトの上面に前記分離ローラの上方まで積み重なった前記媒体を押し出す
ことを特徴とする請求項3に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記ブレードは、
前記第2の部分の先端部分が、前記第1の部分と前記搬送ベルトの上面との間に積み重なった前記媒体全体の高さ方向の中央付近に位置していて、前記ガイドから前記収納空間の内側に突出した際に、当該先端部分が、前記第1の部分と前記搬送ベルトの上面との間に積み重なった前記媒体全体の高さ方向の中央付近に位置する前記媒体を、前記搬送ベルトの前記搬送方向上流側に押し出す
ことを特徴とする請求項4に記載の媒体処理装置。
【請求項6】
前記ブレードは、
付勢部材によって前記回動軸を中心に前記一方向とは逆方向に回動するように付勢され、前記第1の部分が前記ガイドから前記収納空間の内側に突出し、前記第2の部分が前記収納空間の外側に退避する位置で保持される
ことを特徴とする請求項3~5のいずれかに記載の媒体処理装置。
【請求項7】
前記ブレードは、
前記第1の部分の先端部分の自重によって前記回動軸を中心に前記一方向とは逆方向に回動するように付勢され、前記第1の部分が前記ガイドから前記収納空間の内側に突出し、前記第2の部分が前記収納空間の外側に退避する位置で保持される
ことを特徴とする請求項3~5のいずれかに記載の媒体処理装置。
【請求項8】
前記ガイドは、前記ブレードの前記第1の部分との隙間を塞ぐ部材を有し、
前記ブレードの前記第1の部分は、上方に突出する突起部を有し、
前記部材と前記突起部とで入れ子構造を形成している
ことを特徴とする請求項3~7のいずれかに記載の媒体処理装置。
【請求項9】
前記ブレードの前記突起部には、当該突起部の上側に乗った前記媒体が当該媒体の自重により自然落下する傾斜角の傾斜が設けられている
ことを特徴とする請求項8に記載の媒体処理装置。
【請求項10】
前記分離部の上方に設けられ、前記収納空間の一部を形成するガイドと、
前記搬送部の幅方向に延びる回動軸を中心に回動可能に設けられた羽根車と
を備え、
前記羽根車は、前記回動軸を中心に回動する円筒状の中心部と、当該中心部の外周面から放射状に延び、前記突出部として機能する複数の舌片とを有し、当該複数の舌片のうちの少なくとも1つの舌片が前記ガイドから前記収納空間の内側に突出して、当該舌片が前記搬送部の上面に積み重なった前記媒体により上方に押し上げられると、前記回動軸を中心に一方向に回動することにより、前記媒体により押し上げられた舌片とは別の舌片が前記搬送部の前記搬送方向上流側に向かって前記ガイドから前記収納空間の内側に突出する
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項11】
前記突出部の動作を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
センサにより前記搬送部の上面に前記分離部の上方まで前記媒体が積み重なったことを検知すると、前記突出部を、前記搬送部の前記搬送方向上流側に向かって前記収納空間の外側から内側に突出させる
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は媒体処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
媒体の一種である硬貨の入出金機能を有する硬貨処理装置では、例えば、硬貨投入口に投入された硬貨を搬送しながら金種を判別し、金種ごとに硬貨収納庫に収納することで入金し、釣銭がある場合、硬貨収納庫に収納されている硬貨を硬貨出金口に釣銭として排出するようになっている。
【0003】
ここで、図10に硬貨収納庫の内部構成の従来例を示す。この図10に示すように、硬貨収納庫は、硬貨を収納する収納空間Spと、収納空間Spの底部に設けられ、硬貨を硬貨収納庫の硬貨出金口110側(図中左側)に向かって搬送する搬送ベルト100と、硬貨収納庫の硬貨出金口110側に搬送ベルト100の上面と対向して設けられ、硬貨を1枚ずつ分離する分離ローラ101と、分離ローラ101の上方に設けられ、収納空間Spの硬貨出金口110側を形成するガイド102とを有している。
【0004】
硬貨収納庫に収納された硬貨Ciは、搬送ベルト100により硬貨出金口110側に向かって搬送され、搬送ベルト100と分離ローラ101との間を通って、1枚ずつ硬貨出金口110に排出される。一方で、搬送ベルト100と分離ローラ101との間に入らなかった硬貨Ciは、搬送ベルト100と分離ローラ101の力によって上方へ押し出されるように移動する。このような動作が繰り返されることにより、収納空間Sp内では、分離ローラ101の手前側(直前)で搬送ベルト100上に硬貨Ciが上方に積み重なっていく。
【0005】
分離ローラ101の手前側で上方に積み重なった硬貨Ciは、ガイド102から遠ざかる方向(つまり搬送ベルト100の搬送方向上流側であり図中右側)に崩れ、再び搬送ベルト100によって硬貨出金口110側に向かって(つまり分離ローラ101に向かって)搬送される。このように、硬貨収納庫では、分離ローラ101の周辺で硬貨を循環させながら、継続的に硬貨を1枚ずつ分離して硬貨出金口110へと繰り出すようになっている。
【0006】
また従来、この種の硬貨処理装置として、搬送ベルト100の上面を下方から突き上げて当該上面を上下動させることで収納空間Sp内部での硬貨Ciの詰まりを解消する機能を備えた硬貨処理装置も提案されている(例えば特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-108916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図11に示すように、従来の硬貨処理装置では、分離ローラ101の手前側で上方に積み重なった硬貨Ciが、ガイド102の天井部分(つまり収納空間Spの天井部分)まで到達し、当該天井部分と搬送ベルト100の上面との間で突っ張って固定されてしまう場合があった。この場合、例えば搬送ベルト100の上面を上下動させても、積み重なった硬貨を崩すことができず、収納空間Spの内部で硬貨を循環させることができなくなり、結果として、収納空間Spから硬貨を繰り出すことができなくなってしまう。
【0009】
このように、従来の硬貨処理装置では、収納空間の内部で硬貨が詰まって循環させることができなくなる場合があり、この場合に収納空間から硬貨を繰り出すことができなくなるという問題を有していた。
【0010】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、より確実に媒体を繰り出すことができる媒体処理装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため本発明の媒体処理装置においては、収納空間の底部に配置され、当該収納空間の内部に収納された媒体を前記収納空間から出金口への搬送方向へ搬送する搬送部と、前記搬送部の上面と対向して配置され、当該搬送部の上面により搬送されてくる前記媒体を分離する分離部と、前記分離部の上方に設けられ、前記搬送部の上面に前記分離部の上方まで前記媒体が積み重なった際に、前記搬送部の前記搬送方向上流側に向かって前記収納空間の外側から内側に突出する突出部とを備える。
【0012】
こうすることで、分離部の手前側で搬送部の上面に積み重なった媒体を突出部で押し崩すことができ、これにより、収納空間の内部で媒体を滞りなく循環させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、より確実に媒体を繰り出すことができる媒体処理装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態によるレジ釣銭機の外観構成を示す斜視図である。
図2】実施の形態による硬貨処理部の内部構成(全体)を示す図である。
図3】実施の形態による硬貨処理部の内部構成(上部)を示す図である。
図4】実施の形態による硬貨処理部の内部構成(下部)を示す図である。
図5】実施の形態による釣銭処理部の機能構成を示すブロック図である。
図6】実施の形態による硬貨押し崩し機構の構成を示す斜視図である。
図7】実施の形態による硬貨押し崩し機構の構成を示す側断面図である。
図8】実施の形態による硬貨押し崩し機構の動作を示す遷移図である。
図9】他の実施の形態による残留硬貨除去機構の構成を示す側断面図である。
図10】従来の硬貨収納庫の内部構成を示す図である。
図11】従来の硬貨収納庫の内部で硬貨が詰まった様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0016】
[1.レジ釣銭機の外観構成]
図1に、レジ釣銭機1の外観を示す。このレジ釣銭機1は、上側のレジスタ部2と、下側の釣銭処理部3とで構成されている。このレジ釣銭機1は、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの小売店舗の精算所において、顧客が購入したい商品を精算する際に、レジ係員により操作される装置である。
【0017】
尚、このレジ釣銭機1における、レジ係員と対峙する側を前側、その反対側を後側、レジ係員から見て左手側を左側、右手側を右側とする。
【0018】
レジスタ部2は、所謂POS(Point Of Sales)レジであり、上部に例えばタッチパネル付きディスプレイで構成される操作表示部4が設けられている。またこのレジスタ部2には、図示しないバーコードリーダが接続されている。レジスタ部2は、操作表示部4に各種情報を表示させるとともに、表示した各種情報に対する操作を受け付けるようになっている。例えば、レジスタ部2は、バーコードリーダで読み取った商品の情報(商品名と金額など)を操作表示部4に表示させたり、操作表示部4に対する操作に応じて、操作表示部4に表示させている商品の情報を追加、削除、変更したりする。
【0019】
一方、釣銭処理部3は、左側に設けられた硬貨処理部10と、右側に設けられた紙幣処理部11と、上面の右側前端に設けられた操作表示部12を有している。硬貨処理部10の前面上部には、硬貨を投入する為の硬貨投入口13が設けられている。さらに硬貨投入口13の下方には、釣銭用の硬貨が排出される硬貨出金口14と、返却口15とが、左右方向に並べて設けられている。硬貨処理部10は、詳しくは後述するが、硬貨投入口13に投入された硬貨を搬送しながら金種を判別し、金種ごとに硬貨収納庫25(25a~25f)(図2参照)に収納することで入金し、釣銭がある場合、硬貨収納庫25(25a~25f)から釣銭分の硬貨を繰り出して硬貨出金口14に排出する。また硬貨処理部10は、投入された硬貨のうち入金可能な正常な硬貨ではないと判別された硬貨(以下、リジェクト硬貨と呼ぶ)や異物などについては、返却口15に排出する。
【0020】
紙幣処理部11の前面上部には、紙幣を投入及び排出する為の紙幣入出口16が設けられている。紙幣処理部11は、紙幣入出口16に投入された紙幣を搬送しながら金種を判別し、金種ごとに図示しない紙幣収納庫に収納することで入金し、釣銭がある場合、紙幣収納庫に収納されている紙幣を紙幣入出口16に釣銭として排出する。
【0021】
操作表示部12は、例えば表示パネルと操作ボタンとで構成されている。釣銭処理部3は、この操作表示部12に、各種情報を表示させるとともに、各種情報に対する操作を受け付けるようになっている。例えば、釣銭処理部3は、操作表示部12に、硬貨処理部10や紙幣処理部11の稼働状況を表示させたり、硬貨処理部10や紙幣処理部11に発生している異常に関する情報を表示させたり、操作表示部12に対する操作に応じて、硬貨処理部10や紙幣処理部11に発生している異常を復旧する為の処理を実行したりする。
【0022】
[2.硬貨処理部の内部構成]
つづけて、図2図4を用いて、硬貨処理部10の内部構成について説明する。尚、紙幣処理部11の内部構成については既存の構成である為、詳しい説明は省略する。
【0023】
図2(A)は、硬貨処理部10を上方から見た場合の上面図であり、図2(B)は、硬貨処理部10を右方から見た場合の側断面図である。図3(A)は、硬貨処理部10の上部を上方から見た場合の上面図であり、図3(B)は、硬貨処理部10の上部を右方から見た場合の側断面図である。図4(A)は、硬貨処理部10の下部を上方から見た場合の上面図であり、図4(B)は、硬貨処理部10の下部を右方から見た場合の側断面図である。
【0024】
図2図4に示すように、硬貨処理部10の内部には、主要部として、搬送路R、入金搬送部20、鑑別部21、硬貨選別部22、金種別収納部24が設けられている。硬貨処理部10は、硬貨投入口13に投入された硬貨を1枚ずつ分離し、入金搬送部20により搬送路Rに沿って硬貨選別部22へと搬送する。このとき硬貨処理部10は、搬送路Rの途中に設けられた鑑別部21により硬貨の金種等を判別する。そして硬貨処理部10は、硬貨選別部22により硬貨を金種ごとに分別し、金種別収納部24に金種別に収納する。また硬貨処理部10は、金種別収納部24に収納されている硬貨を繰り出して硬貨出金口14に排出する。
【0025】
具体的には、搬送路Rは、硬貨投入口13から後方へと延び、さらに硬貨処理部10の後部で右側にカーブして硬貨処理部10の右端部まで右方に延びていて、全体としてL字型となっている。
【0026】
入金搬送部20は、環状に形成された2本の搬送ベルト20a、20bにより構成されている。搬送ベルト20aは、硬貨投入口13に投入された硬貨を、搬送路Rへ繰り出す繰り出しローラから、搬送路Rの上流部分(後方へと延びている部分)の途中まで搬送する搬送手段であり、搬送ベルト20bは、搬送路Rの上流部分の途中から搬送路Rの下流部分(すなわち右方に延びている部分)まで搬送する搬送手段である。
【0027】
鑑別部21は、硬貨の金種及び真偽等を鑑別する部分であり、搬送路Rの上流部分に設けられている。硬貨処理部10は、鑑別部21により入金可能な正常な硬貨と判別された硬貨については、入金搬送部20により硬貨選別部22まで搬送する。一方、硬貨処理部10は、鑑別部21により入金可能な正常な硬貨ではない硬貨と判別された硬貨(つまりリジェクト硬貨)については、搬送路R上の鑑別部21と硬貨選別部22との間に設けられたリジェクトゲート26を開くことで、リジェクトゲート26の下方に設けられた搬送ベルト27(図4(A))上に落下させ、搬送ベルト27により返却口15まで搬送して排出する。
【0028】
硬貨選別部22は、鑑別部21により入金可能な正常な硬貨と判別された硬貨を金種別に選別する部分である。この硬貨選別部22は、搬送路Rの下流部分に上流側から順に設けられた金種別ゲート23(23a~23f)を有している。硬貨選別部22は、搬送路Rに沿って搬送されてきた硬貨の金種に対応する金種別ゲート23(23a~23f)を開くことで、当該硬貨を、金種別収納部24に設けられた硬貨収納庫25(25a~25f)のうち、当該硬貨の金種に対応する硬貨収納庫25に落下させる。
【0029】
金種別収納部24は、金種ごとに設けられた硬貨収納庫25(25a~25f)を有している。硬貨収納庫25(25a~25f)は、硬貨を金種別に収納する部分であり、硬貨を収納する機能と硬貨を繰り出す機能を有している。硬貨収納庫25(25a~25f)は、それぞれ前後方向に延び、左右方向に隣接して配置されていて、仕切り板30によって仕切られている。
【0030】
尚、金種別収納部24は、例えば、一円硬貨、五円硬貨、十円硬貨、五十円硬貨、百円硬貨、及び五百円硬貨の6種類の金種に合わせて6個の硬貨収納庫25(25a~25f)を有している。
【0031】
図4(A)、(B)に示すように、硬貨収納庫25(25a~25f)は、同一構成であり、内部に硬貨を収納する収納空間Spを有し、金種別ゲート23(23a~23f)(図2(A))から落下してきた硬貨を、収納空間Spに収納する。また硬貨収納庫25(25a~25f)は、収納空間Spの底部に、収納空間Spに収納された硬貨を硬貨収納庫25(25a~25f)の硬貨出金口14側(前方)に向かって搬送する搬送部である、搬送ベルト31を有している。つまり、搬送ベルト31は、硬貨収納庫25(25a~25f)から硬貨出金口14への方向(搬送ベルト31の搬送方向)へと硬貨を搬送する。さらに硬貨収納庫25(25a~25f)は、収納空間Spに収納された硬貨を、1枚ずつ分離して硬貨出金口14に繰り出す硬貨繰出部32を有している。
【0032】
硬貨繰出部32は、硬貨収納庫25(25a~25f)の硬貨出金口14側(前側)に搬送ベルト31の上面と対向して設けられ、硬貨を1枚ずつ分離する分離部である、分離ローラ40、分離ローラ40の上方に設けられ、収納空間Spの硬貨出金口14側(前側)を形成するガイド41、硬貨収納庫25(25a~25f)の出口を開閉するピン42、及び硬貨収納庫25(25a~25f)から硬貨出金口14に繰り出された硬貨を検知するセンサ43などを備えている。
【0033】
分離ローラ40は、図4の反時計回り方向に回転するリバースローラである。搬送ベルト31により搬送されてきた硬貨は、この分離ローラ40により1枚ずつ分離され、搬送ベルト31の上面と分離ローラ40との間に挟み込まれるようにして繰り出される。
【0034】
ガイド41は、分離ローラ40の上方に延び、そこからさらに後方に延びるアーチ状であり、収納空間Spの前面部分と、天井部分の前端とを形成している。
【0035】
ピン42は、ソレノイドにより上下方向に移動することで硬貨収納庫25(25a~25f)の出口を開閉するようになっていて、上方に移動して出口を開くことで、硬貨収納庫25(25a~25f)から硬貨を硬貨出金口14へ繰り出させ、下方に移動して出口を閉じることで、硬貨収納庫25(25a~25f)から硬貨を硬貨出金口14へ繰り出させないようになっている。
【0036】
センサ43は、例えば光学センサであり、ピン42よりも硬貨出金口14側(前方)に設けられていて、硬貨収納庫25(25a~25f)の出口から硬貨出金口14へ繰り出される硬貨を検知するようになっている。
【0037】
収納空間Spに収納された硬貨は、搬送ベルト31により硬貨出金口14側に向かって搬送され、搬送ベルト31と分離ローラ40との間を通って、1枚ずつ硬貨出金口14に繰り出される(排出される)。一方で、搬送ベルト31と分離ローラ40との間に入らなかった硬貨は、搬送ベルト31と分離ローラ40の力によって分離ローラ40の手前側で上方へ押し出されるように移動する。このような動作が繰り返されることにより、収納空間Sp内では、分離ローラ40の手前側で搬送ベルト31上に硬貨が上方に積み重なっていく。
【0038】
分離ローラ40の手前側で上方に積み重なった硬貨は、ガイド41から遠ざかる方向(つまり搬送ベルト31の搬送方向上流側であり図中右側)に崩れ、再び搬送ベルト31によって硬貨出金口14側に向かって(つまり分離ローラ40に向かって)搬送される。
【0039】
このように、硬貨繰出部32では、収納空間Spの内部で硬貨を循環させながら、継続的に硬貨を1枚ずつ分離して硬貨出金口14へと繰り出すようになっている。
【0040】
さらに硬貨繰出部32は、分離ローラ40の手前側で上方に積み重なった硬貨が、ガイド41の天井部分(つまり収納空間Spの天井部分)まで到達し、当該天井部分と搬送ベルト31の上面との間で突っ張って固定されてしまうことのないように、分離ローラ40の手前側で上方に積み重なった硬貨をガイド41から遠ざかる方向に押し崩す硬貨押し崩し機構44を備えている。この硬貨押し崩し機構44について詳しくは後述する。硬貨処理部10の内部構成は、以上のようになっている。
【0041】
[3.釣銭処理部の機能構成]
次に、図5に示すブロック図を用いて、釣銭処理部3の機能構成について説明する。釣銭処理部3は、機能構成の主要部として、硬貨処理部10と、紙幣処理部11と、操作表示部12と、制御部50と、通信部51とを有している。
【0042】
制御部50は、釣銭処理部3全体の動作を制御する部分であり、具体的には、操作表示部12に対する各種情報の表示及び操作入力の受け付け、硬貨処理部10の動作、及び紙幣処理部11の動作を制御する。また制御部50は、通信部51を介してレジスタ部2と通信することで、レジスタ部2との間で各種情報の送受信を行う。釣銭処理部3の機能構成は、以上のようになっている。
【0043】
[4.硬貨押し崩し機構の構成]
次に、図4(B)、図6図7を用いて、硬貨押し崩し機構44の構成について詳しく説明する。尚、図6は、硬貨収納庫25fに設けられた硬貨押し崩し機構44と、その隣に位置する硬貨収納庫25eに設けられた硬貨押し崩し機構44とを示し、硬貨収納庫25fと硬貨収納庫25eとの間の仕切り板30や、分離ローラ40などについては省略している。図7(A)、(B)は、図4の硬貨押し崩し機構44を拡大した断面図であり、分離ローラ40などについては省略している。
【0044】
硬貨押し崩し機構44は、硬貨収納庫25(25a~25f)のそれぞれに設けられているが、同一構成の為、ここでは、一番右側に位置する硬貨収納庫25fに設けられた硬貨押し崩し機構44について説明する。
【0045】
図7(A)に示すように、硬貨押し崩し機構44は、ガイド41に回動可能に設けられたブレード60を有している。ガイド41は、分離ローラ40(図4(B))の上部及び前部を覆う第1の部分41aと、当該第1の部分41aの上端から上方に延びる第2の部分41bと、当該第2の部分41bの上端から後方(つまり搬送ベルト31の搬送方向とは逆方向)に延びる第3の部分41cとを有している。このガイド41は、第2の部分41bと第3の部分41cの収納空間Sp側の面が硬貨をガイドするガイド面41dとなっている。このガイド面41dは、第2の部分41bと第3の部分41cとの角部において、滑らかなR形状となっていて、全体として、分離ローラ40の上端から後方ななめ上に向かって円弧状に延びている。
【0046】
さらに図6図7(A)に示すように、このガイド41には、ガイド面41dの幅方向(左右方向)の中央部分に、第2の部分41bの下端から第3の部分41cの後端まで延びる溝41eが設けられていて、この溝41eにブレード60が設けられている。
【0047】
具体的には、図7(A)に示すように、ガイド41の第2の部分41bと第3の部分41cの角部における、溝41eの奥側(つまり収納空間Spの外側)に、ガイド41の幅方向(つまり搬送ベルト31の幅方向)に延びる回動軸61が設けられていて、この回動軸61にブレード60が回動可能に取り付けられている。尚、ブレード60に回動軸61が設けられていて、この回動軸61が、ガイド41側に回動可能に支持されるようになっていてもよい。
【0048】
ブレード60は、この回動軸61からガイド41の第3の部分41cに沿って後方(つまり搬送ベルト31の搬送方向とは逆方向)に延びる第1の部分60aと、回動軸61からガイド41の第2の部分41bに沿って下方(つまり分離ローラ40側)に延びる第2の部分60bとを有し、全体として、L字型のブーメラン形状となっている。このブレード60は、第2の部分60bの先端部分(つまり下端部分)が、分離ローラ40よりも上側に位置している。またこのブレード60は、第1の部分60aと第2の部分60bの収納空間Sp側の面が硬貨をガイドするガイド面60cとなっている。このガイド面60cも、第1の部分60aと第2の部分60bの角部において、滑らかなR形状となっている。
【0049】
ブレード60の第1の部分60aと第2の部分60bは、それぞれ幅方向(左右方向)から見て先細り形状であり、また第1の部分60aの先端部分は、上側に突起部60dを有する半矢印形状となっている。ブレード60は、このような形状であり、ガイド41の溝41eから、収納空間側が露出するようにして、ガイド41に回動可能に取り付けられている。
【0050】
またガイド41の溝41eの内側には、ガイド41の第3の部分41cにおける回動軸61よりも先端側に位置する部分と、ブレード60の第1の部分60aにおける回動軸61よりも先端側に位置する部分との間に、コイルスプリングなどのばね62が圧縮された状態で設けられている。
【0051】
ブレード60は、このばね62によって第1の部分60aの先端部分が下方に向かう方向に付勢され(つまり図7(A)中時計回り方向に回動するように付勢され)、第2の部分60bが、当該第2の部分60bの前方で溝41eの奥側(つまり収納空間Spの外側)に位置するブレード当接部41fに当接した回動位置に保持されるようになっている。つまり、ブレード60は、通常、この回動位置に保持されるようになっている。以下、このときのブレード60の回動位置(つまり図7(A)に示すブレード60の回動位置)を通常位置と呼ぶ。
【0052】
この通常位置にあるとき、ブレード60の第1の部分60aは、ほぼ全体がガイド41の溝41eから収納空間Spの内側に突出した状態となる。このとき、第1の部分60aのガイド面60cが、搬送ベルト31(図4(B))の上面とほぼ平行に対向する。一方で、ブレード60の第2の部分60bは、ほぼ全体が溝41eの内部に収容された(収納空間Spの外側に退避した)状態となる。
【0053】
このような通常位置にあるときに、ブレード60の第1の部分60aと、ガイド41のガイド面41dとの間に隙間が空くと、この隙間に硬貨が入り込んでしまう。そこで、図6図7(A)に示すように、ガイド41の第3の部分41cのガイド面41d側には、通常位置にあるブレード60の第1の部分60aと対向する箇所に、溝41eの幅方向の両端から下方(つまり通常位置にあるブレード60の第1の部分60a側)に突出する板状のリブ63が設けられている。このリブ63が、通常位置にあるブレード60の第1の部分60a(具体的には第1の部分60aの先端側に形成されている上方に突出する突起部60d)と、ガイド41のガイド面41dとの間の隙間を塞ぐことで、この隙間に硬貨が入り込んでしまうことを防ぐようになっている。つまりリブ63は、通常位置にあるブレード60の第1の部分60aと、ガイド41のガイド面41dとの間の隙間を塞ぐ部材となっている。より具体的には、リブ63の下端とブレード60の突起部60dの上端とで入れ子構造を形成するようになっている。
【0054】
尚、図7(A)に示すように、通常位置にあるブレード60の第1の部分60aの先端部分は、ガイド41のガイド面41dから離れている為、通常位置にあるブレード60の第1の部分60aの先端部分の上側に硬貨Ciが乗ってしまう場合がある。この為、ブレード60の第1の部分60aの先端部分の上側には、硬貨Ciが自重により自然落下する傾斜角の傾斜が設けられている。つまり、ブレード60の第1の部分60aの先端側に形成されている突起部60dには、硬貨Ciが自重により自然落下する傾斜角の傾斜が設けられている。こうすることで、硬貨押し崩し機構44では、通常位置にあるブレード60の第1の部分60aの先端部分の上側に乗ってしまった硬貨Ciをブレード60から自然落下させることができる。
【0055】
このような通常位置にあるときに、ブレード60の第1の部分60aがばね62の付勢力より大きな力で上方に押し上げられると、ブレード60は、ばね62によって付勢されている方向とは逆方向となる図7(A)中反時計回り方向に回動し、図7(B)に示すように、第1の部分60aが、当該第1の部分60aの上方で溝41eの奥側に位置するブレード当接部41gに当接する回動位置まで回動する。
【0056】
このとき、ブレード60の第1の部分60aは、ガイド面60c側のみが、ガイド41の溝41eから収納空間Spの内側に突出した状態となる。一方で、ブレード60の第2の部分60bは、ガイド面60c側が溝41eから収納空間Spの内側に突出した状態となる。以下、このときのブレード60の回動位置(つまり図7(B)に示すブレード60の回動位置)を突出位置と呼ぶ。
【0057】
尚、突出位置にあるとき、ブレード60の第2の部分60bは、全体が溝41eから収納空間Spの内側に突出するのではなく、ガイド面60c側のみが突出するようになっている。この為、突出位置にあるブレード60の第2の部分60bと、ガイド41のガイド面41dとの間には硬貨が入り込むほどの隙間は空かない。よって、ガイド41の第2の部分41b側にはリブは必要ない。硬貨押し崩し機構44の構成は、以上のようになっている。
【0058】
尚、ここでは、上述した硬貨押し崩し機構44が、硬貨収納庫25(25a~25f)の全てに設けられているとしたが、これに限らず、硬貨収納庫25(25a~25f)のうちの任意の硬貨収納庫25に設けられていてもよい。例えば入出金の枚数が多く、硬貨が積み重なる状況が起き易い金種の硬貨収納庫25にのみ上述した硬貨押し崩し機構44を設けるなどしてもよい。
【0059】
[5.硬貨押し崩し機構の動作]
次に、図8(A)~(C)を用いて、硬貨押し崩し機構44の動作について詳しく説明する。図8(A)は、硬貨押し崩し機構44のブレード60が通常位置にあるときを示している。このとき、ブレード60は、第1の部分60aが、搬送ベルト31の上面と対向し、第2の部分60bが、収納空間Spの外側に位置している。
【0060】
この図8(A)に示すように、収納空間Spに収納されている硬貨Ciを、搬送ベルト31と分離ローラ40により1枚ずつ分離して硬貨出金口14に繰り出していく過程で、分離ローラ40の手前側に少しずつ硬貨Ciが上方に積み重なっていく。
【0061】
通常、分離ローラ40の手前側に積み重なった硬貨Ciは、積み重なっていく際にガイド41に沿って少しずつ後方に移動する為、ある程度積み重なると後方に崩れ、再び搬送ベルト31によって硬貨出金口14側に向かって(つまり前方に向かって)搬送される。このようにして、収納空間Spの内部で硬貨Ciが循環する。
【0062】
一方で、図8(B)に示すように、収納空間Spに収納されている硬貨Ciの枚数が多いなどの理由で、分離ローラ40の手前側に、硬貨Ciが崩れることなく積み重なっていく場合がある。この場合、積み重なっている1番上の硬貨Ciが、ブレード60の第1の部分60aまで到達し、当該第1の部分60aを上方に押し上げる。
【0063】
すると、図8(C)に示すように、ブレード60は、第1の部分60aが上方に押し上げられることにともなって、図中反時計回り方向に回動し、ガイド41の溝41eの内部に収容されていた第2の部分60bが、搬送ベルト31の搬送方向上流側(つまり後方)に向かって当該溝41eから収納空間Spの内側に突出する。
【0064】
このとき、ブレード60の第2の部分60bの先端部分の後方には、分離ローラ40の手前側に積み重なっている硬貨Ci全体の高さ方向の中央付近の数枚の硬貨Ciが位置している。この為、ブレード60の第2の部分60bが後方に突出すると、当該第2の部分60bの先端部分が高さ方向の中央付近に位置する数枚の硬貨Ciに当接して、これらを後方に押し出す。
【0065】
このとき、分離ローラ40の手前側に積み重なっている硬貨Ciは、ブレード60の第1の部分60aと搬送ベルト31との間に挟み込まれていて、且つ第1の部分60aが搬送ベルト31側に付勢されている為、1本の柱のように第1の部分60aと搬送ベルト31との間で突っ張った状態になっている。この為、積み重なっている硬貨Ci全体の高さ方向の中央付近に位置する硬貨Ciを、当該硬貨Ciの重心が他の硬貨Ciの重心よりも後方にずれるように押し出すだけで、1本の柱が座屈するようにして、積み重なっている硬貨Ciを容易に後方に崩すことができる。
【0066】
このように、硬貨押し崩し機構44では、ガイド41に設けられたブレード60の第1の部分60aが、積み重なっている1番上の硬貨Ciにより上方に押し上げられると、ブレード60が回動して第2の部分60bが、搬送ベルト31の搬送方向上流側に向かって収納空間Spの外側から内側に突出し、積み重なっている硬貨Ci全体の高さ方向の中央付近の硬貨Ciを搬送ベルト31の搬送方向上流側(後方)に押し出すことで、積み重なっている硬貨Ciを搬送ベルト31の搬送方向上流側に押し崩すようになっている。
【0067】
積み重なっていた硬貨Ciが押し崩されると、ブレード60の第1の部分60aを上方に押し上げる力がなくなる為、ブレード60は、ばね62の付勢力により図8(C)中時計回り方向に回動して、突出位置から通常位置に戻る。またブレード60の第2の部分60bによって搬送ベルト31の搬送方向上流側に押し崩された硬貨Ciは、再び搬送ベルト31によって分離ローラ40側へと搬送される。このようにして、収納空間Spの内部で硬貨Ciが循環する。硬貨押し崩し機構44の動作は、以上のようになっている。
【0068】
[6.まとめと効果]
ここまで説明したように、本実施の形態では、釣銭処理部3の硬貨処理部10に、収納空間Spの底部に配置され、収納空間Spの内部に収納された硬貨を搬送する搬送ベルト31と、搬送ベルト31の上面に対向配置され、当該搬送ベルト31の上面により搬送されてくる硬貨を分離する分離ローラ40と、分離ローラ40の上方に設けられ、搬送ベルト31の上面に分離ローラ40の上方まで硬貨が積み重なった際に、搬送ベルト31の搬送方向上流側に向かって収納空間Spの外側から内側に突出する突出部として機能するブレード60を設けた。
【0069】
すなわち、硬貨処理部10では、分離ローラ40の上方に、収納空間Spの一部(出口側)を形成するガイド41を設け、当該ガイド41に、搬送ベルト31の幅方向に延びる回動軸61を中心に回動可能なブレード60を設けた。ブレード60は、回動軸61から搬送ベルト31の搬送方向とは逆方向(後方)へ延びる媒体当接部である第1の部分60aと、回動軸61から下方の分離ローラ40側へ延びる突出部である第2の部分60bとを有するL字型であり、第1の部分60aがガイド41から収納空間Spの内側に突出して搬送ベルト31の上面と対向している状態(つまり通常位置にある状態)で、第1の部分60aが搬送ベルト31の上面に積み重なった硬貨により上方に押し上げられると、ブレード60全体が回動軸61を中心に一方向に回動することにより、第2の部分60bが搬送ベルト31の搬送方向上流側(後方)に向かって収納空間Spの外側から内側に突出するようにした。
【0070】
こうすることで、硬貨処理部10では、搬送ベルト31の上面に積み重なった硬貨をブレード60の第2の部分60bで、搬送ベルト31の搬送方向上流側に押し崩すことができ、これにより、収納空間Spの内部で硬貨を滞りなく循環させることができる。かくして、硬貨処理部10では、より確実に収納空間Spから硬貨を繰り出すことができる。
【0071】
また硬貨処理部10では、収納空間Spの内部で硬貨を滞りなく循環させることができるので、例えば、収納空間Spの内部で硬貨が特定の場所に偏ってしまうことを防ぐことができ、収納空間Spの内部を有効利用することができる。この結果として、硬貨処理部10では、収納空間Spの大きさを変えることなく、収納空間Spに収納可能な硬貨の枚数を増加することができる。
【0072】
別の言い方をすると、硬貨処理部10では、収納空間Spに収納可能な硬貨の枚数を増加すると、分離ローラ40の手前側で搬送ベルト31の上面に硬貨が積み重なり易くなるが、ブレード60により積み重なった硬貨を押し崩すことができるので、収納空間Spから硬貨を繰り出すことができる。
【0073】
さらに硬貨処理部10では、搬送ベルト31の上面に積み重なった硬貨により、第1の部分60aが上方に押し上げられると、第2の部分60bが搬送ベルト31の搬送方向上流側に向かって収納空間Spの外側から内側に突出するようになっていることから、硬貨が積み重なっていることを検知する為のセンサや、第2の部分60bを突出させる為の駆動部(モータ、ソレノイドなど)などを必要とせず、簡易な構成で積み重なっている硬貨を押し崩すことができる。
【0074】
さらに硬貨処理部10では、ガイド41とブレード60の間に、ブレード60を、第2の部分60bが収納空間Spの内側に突出する突出位置から突出しない通常位置に戻す方向に付勢するばね62を設けた。こうすることで、硬貨処理部10では、ブレード60の第2の部分60bによって積み重なっている硬貨を押し崩し、第1の部分60aを上方に押し上げる力がなくなると、ばね62の付勢力により、ブレード60を突出位置から通常位置まで確実に戻すことができる。
【0075】
[7.他の実施の形態]
[7-1.他の実施の形態1]
尚、上述した実施の形態では、搬送ベルト31の上面に積み重なった硬貨により、上方に押し上げられると回動して収納空間Spの外側から内側に突出部が突出する硬貨押し崩し機構44に、L字型のブーメラン形状の部材であるブレード60を用いた。これに限らず、ブレード60と同様に機能するものであれば、ブレード60とは構成が異なる部材を用いてもよい。
【0076】
例えば、図9に示すように、ブレード60の代わりに、分離ローラ40の上方に設けられたガイド200に回動可能に支持される羽根車201を用いてもよい。この羽根車201は、円筒状の中心部201aと、中心部201aの外周面から放射状に延びる舌片201bとで構成されている。尚、図9に示す羽根車201は、中心部201aの外周面に等間隔で4本の舌片201bが設けられている。また、舌片201bは、硬貨Ciによって押し上げられたり、硬貨Ciを押し崩したりする為、ゴムや樹脂といった可撓性の部材ではなく、硬い部材で形成されていることが望ましい。この羽根車201は、回動することで各舌片201bが順に収納空間Spの外側から内側へ入り、その後、内側から外側へ出ていくようになっている。
【0077】
この羽根車201の中心部201aを、ブレード60の代わりとして、ガイド200に設けられた、ガイド200の幅方向に延びる回動軸202に取り付ける。ここで、羽根車201は、舌片201bのうちの少なくとも1枚がガイド200に設けられた隙間(図示せず)から収納空間Spの内部に突出するようになっている。この羽根車201は、搬送ベルト31の上面に積み重なった硬貨Ciにより、収納空間Spの内部に突出している舌片201bが上方に押し上げられると、図中反時計回り方向に回動することで、上方に押し上げられた舌片201bの隣の舌片201bが、収納空間Spの外側から内側に突出してきて、搬送ベルト31の上面に積み重なった硬貨Ciを押し崩すようになっている。
【0078】
またこれに限らず、図は省略するが、例えば、硬貨押し崩し機構44に、ブレード60の代わりとして、分離ローラ40の上方まで硬貨が積み重なったことを検知するセンサと、ガイド41の第2の部分41bのガイド面41dに設けられた穴から突出する突出部と、突出部を動作させる駆動部とを設けるようにしてもよい。
【0079】
この場合、例えば、硬貨押し崩し機構44のセンサにより分離ローラ40の上方まで硬貨Ciが積み重なったことが検知されると、制御部50は、駆動部を駆動させて、第2の部分41bのガイド面41dから突出部を突出させる。これにより、分離ローラ40の上方まで積み重なった硬貨が押し崩される。その後、制御部50は、駆動部の動作を制御して、突出部を、ガイド面41dから突出しない位置まで戻す。
【0080】
またこれに限らず、例えば、硬貨押し崩し機構44に、ブレード60の代わりとして、ガイド41の第2の部分41bのガイド面41dに設けられた穴から突出する突出部と、突出部を動作させる駆動部とを設け、例えば、硬貨収納庫25の出口に設けられたセンサ43(図4(B))が、本来硬貨を検知するタイミングになっても検知しない場合に、制御部50が、ガイド41の天井部分まで硬貨が積み重なっていると検知して、駆動部を駆動させ、第2の部分41bのガイド面41dから突出部を突出させるようにしてもよい。
【0081】
またこれに限らず、例えば、操作表示部12に対する操作に応じて、制御部50が、駆動部を駆動させて、第2の部分41bのガイド面41dから突出部を突出させるようにしてもよい。
【0082】
上述したように、硬貨押し崩し機構44としては、分離ローラ40の上方で、搬送ベルト31の搬送方向上流側に向かって収納空間Spの外側から内側に突出し、搬送ベルト31上に積み重なった硬貨を押し崩す突出部を備える機構であればよい。
【0083】
[7-2.他の実施の形態2]
また上述した実施の形態では、図7(A)に示すように、ガイド41の第3の部分41cとブレード60の第1の部分60aとの間に、ブレード60の第1の部分60aを、ガイド41の第3の部分41cのブレード当接部41gから離れる方向(下方)に付勢するばね62を設けることで、ブレード60を図中時計回り方向に付勢して通常位置に保持するようにした。これに限らず、ばね62の代わりに、ガイド41の第2の部分41bとブレード60の第2の部分60bとの間に、ブレード60の第2の部分60bを、ガイド41のブレード当接部41f側に引っ張る図示しないばねを設けてもよい。この場合も、ブレード60は図中時計回り方向に付勢され、通常位置に保持されることになる。
【0084】
またこれに限らず、コイルスプリングのばね62の代わりに、トーションバネや板ばねなどの付勢部材を用いて、ブレード60を図中時計回り方向に付勢して通常位置に保持するようにしてもよい。またこれに限らず、例えば、ブレード60の第1の部分60aの先端部分の重さを調整して、ブレード60の第1の部分60aの先端部分が自重により下方に付勢されるようにし、ブレード60全体が図中時計回り方向に付勢され通常位置に保持されるようにしてもよい。この場合、ばね62などの付勢部材を省略することができる。
【0085】
[7-3.他の実施の形態3]
さらに上述した実施の形態では、収納空間Spの底部に搬送ベルト31を設け、当該搬送ベルト31により収納空間Spに収納された硬貨を搬送するようにした。これに限らず、搬送ベルト31と同様にして硬貨を搬送できるものであり、また搬送ベルト31と同様に硬貨が積み重なるものであれば、搬送ベルト31とは異なる搬送部を設けてもよい。さらに上述した実施の形態では、搬送ベルト31の上面により搬送されてくる硬貨を分離ローラ40に分離よりするようにした。これに限らず、分離ローラ40と同様にして硬貨を分離できるものであれば、分離ローラ40とは異なる分離部を設けてもよい。
【0086】
[7-4.他の実施の形態4]
さらに上述した実施の形態では、本発明を、硬貨を扱う釣銭処理部3に適用したが、これに限らず、本発明は、硬貨以外の媒体(例えばメダルなど)を扱う様々な媒体処理装置にも適用することができる。さらに上述した実施の形態では、本発明を、硬貨と紙幣の両方を扱う釣銭処理部3に適用したが、これに限らず、硬貨のみを扱う(つまり紙幣処理部11を有していない)媒体処理装置にも適用することができる。
【0087】
[7-5.他の実施の形態5]
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、例えば硬貨を扱う硬貨処理装置で利用できる。
【符号の説明】
【0089】
1……レジ釣銭機、3……釣銭処理部、10……硬貨処理部、13……硬貨投入口、14……硬貨出金口、24……金種別収納部、25……硬貨収納庫、31……搬送ベルト、32……硬貨繰出部、40……分離ローラ、41……ガイド、43……センサ、44……硬貨押し崩し機構、50……制御部、60……ブレード、60a……第1の部分、60b……第2の部分、60d……突起部、61……回動軸、62……ばね、200……ガイド、201……羽根車、201a……中心部、201b……舌片、202……回動軸、Ci……硬貨、Sp……収納空間。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11