IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-マッチングシステム及びマッチング方法 図1
  • 特許-マッチングシステム及びマッチング方法 図2
  • 特許-マッチングシステム及びマッチング方法 図3
  • 特許-マッチングシステム及びマッチング方法 図4
  • 特許-マッチングシステム及びマッチング方法 図5
  • 特許-マッチングシステム及びマッチング方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】マッチングシステム及びマッチング方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20241112BHJP
【FI】
G06Q50/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021115721
(22)【出願日】2021-07-13
(65)【公開番号】P2023012212
(43)【公開日】2023-01-25
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西谷 暢
(72)【発明者】
【氏名】須田 理央
(72)【発明者】
【氏名】米長 浩
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 英一
(72)【発明者】
【氏名】竹中 達史
(72)【発明者】
【氏名】太田 峻
(72)【発明者】
【氏名】楠本 光優
【審査官】田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-113919(JP,A)
【文献】特開2017-138924(JP,A)
【文献】特開2020-005123(JP,A)
【文献】特開2018-169711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車場の入庫及び出庫の少なくとも一方の代行を必要とする第1車両と、遠隔操作により前記第1車両の運転を代行する遠隔運転者とのマッチングを行うマッチングシステムであって、
前記第1車両の利用者又は前記駐車場を前記利用者に提供する施設の係員によって操作される端末と、
前記端末と無線通信ネットワークを介して接続されたサーバと、
を備え、
前記端末は、前記代行の要求情報を前記サーバに送信し、
前記要求情報を受信した前記サーバは、前記遠隔運転者による遠隔操作サービスの待ち行列に前記第1車両を追加し、次いで、記遠隔操作サービスを前記第1車両が受けるまでの待ち時間情報を前記端末に送信し、
前記端末は、受信した前記待ち時間情報を前記利用者又は前記係員に通知し、前記利用者又は前記係員による前記待ち時間情報の承認又は追加料金の支払い指示を受け付け、
前記端末は、前記支払い指示を受け取った場合、前記サーバとの協働により前記追加料金の決済を実行し、
前記サーバは、前記追加料金の決済が完了した場合、前記第1車両が前記追加料金の支払いなしの第2車両よりも優先されるように前記待ち行列内の前記第1車両の順番を変更し、
前記待ち行列は、前記遠隔運転者による遠隔操作を希望する車両の一覧であり、
前記待ち行列内の前記第1車両の順番が到来すると、前記第1車両と前記遠隔運転者との前記マッチングが完了し、
前記端末が前記係員によって操作される場合における前記追加料金は、前記施設によって負担される
ことを特徴とするマッチングシステム。
【請求項2】
前記サーバは、前記第1車両の車載通信機を介して前記第1車両と通信を行う通信装置とともに遠隔操作センタに備えられており、
前記サーバは、前記第1車両の周囲の状況を認識するように前記第1車両に備えられた認識センサによる前記第1車両の周囲の車両の検出に基づいて、又は前記第1車両と前記第1車両の周囲の車両との間で通信を行って共有した各車両の位置情報に基づいて、前記マッチングのために待機している前記第1車両が交通を阻害するおそれがあるか否かを判定し、
前記サーバは、前記おそれがある場合、
前記追加料金を自動的に請求することを前記端末に送信し、かつ、
前記第1車両が前記追加料金の支払いなしの第2車両よりも優先されるように前記待ち行列内の前記第1車両の順番を変更する
ことを特徴とする請求項1に記載のマッチングシステム。
【請求項3】
前記サーバは、前記追加料金の決済が完了した場合、前記追加料金の支払いに伴って短縮した後の修正待ち時間情報を前記端末に送信する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のマッチングシステム。
【請求項4】
駐車場の入庫及び出庫の少なくとも一方の代行を必要とする第1車両と、遠隔操作により前記第1車両の運転を代行する遠隔運転者とのマッチングを行うマッチング方法であって、
前記第1車両の利用者又は前記駐車場を前記利用者に提供する施設の係員によって操作される端末から、前記代行の要求情報を、前記端末と無線通信ネットワークを介して接続されたサーバに送信し、
前記要求情報を受信した前記サーバに、前記遠隔運転者による遠隔操作サービスの待ち行列への前記第1車両の追加を行わせ、次いで、前記サーバから、前記遠隔操作サービスを前記第1車両が受けるまでの待ち時間情報を前記端末に送信し、
前記端末から前記利用者又は前記係員に前記待ち時間情報を通知し、
前記端末において、前記利用者又は前記係員による前記待ち時間情報の承認又は追加料金の支払い指示を受け付け、
前記端末が前記支払い指示を受け取った場合、前記端末と前記サーバとの協働により前記追加料金の決済を実行し、
前記追加料金の決済が完了した場合、前記サーバに、前記第1車両が前記追加料金の支払いなしの第2車両よりも優先されるように前記待ち行列内の前記第1車両の順番の変更を行わせ
前記待ち行列は、前記遠隔運転者による遠隔操作を希望する車両の一覧であり、
前記待ち行列内の前記第1車両の順番が到来すると、前記第1車両と前記遠隔運転者との前記マッチングが完了し、
前記端末が前記係員によって操作される場合における前記追加料金は、前記施設によって負担される
ことを特徴とするマッチング方法。
【請求項5】
前記サーバは、前記第1車両の車載通信機を介して前記第1車両と通信を行う通信装置とともに遠隔操作センタに備えられており、
前記サーバに、前記第1車両の周囲の状況を認識するように前記第1車両に備えられた認識センサによる前記第1車両の周囲の車両の検出に基づいて、又は前記第1車両と前記第1車両の周囲の車両との間で通信を行って共有した各車両の位置情報に基づいて、前記マッチングのために待機している前記第1車両が交通を阻害するおそれがあるか否かの判定を行わせ、
前記おそれがある場合、
前記サーバから、前記追加料金を自動的に請求することを前記端末に送信し、かつ、
前記サーバに、前記第1車両が前記追加料金の支払いなしの第2車両よりも優先されるように前記待ち行列内の前記第1車両の順番の変更を行わせる
ことを特徴とする請求項に記載のマッチング方法。
【請求項6】
前記追加料金の決済が完了した場合、前記サーバから、前記追加料金の支払いに伴って短縮した後の修正待ち時間情報を前記端末に送信する
ことを特徴とする請求項又はに記載のマッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駐車場の入庫及び出庫の少なくとも一方の代行を必要とする車両と、遠隔操作により車両の運転を代行する遠隔運転者とのマッチングを行うマッチングシステム及びマッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、遠隔操作により車両を運転可能な車両遠隔運転装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-295360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バレー駐車サービスにおいて遠隔運転を利用するためには、車両と遠隔運転者とのマッチングを行う必要がある。ここで、入庫時又は出庫時に車両と遠隔運転者とのマッチングに時間がかかることは、当該サービスの利便性低下につながる。
【0005】
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両と遠隔運転者とのマッチングに要する時間を短縮し、バレー駐車サービスの利便性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るマッチングシステムは、駐車場の入庫及び出庫の少なくとも一方の代行を必要とする第1車両と、遠隔操作により第1車両の運転を代行する遠隔運転者とのマッチングを行う。マッチングシステムは、端末と、サーバと、を備える。端末は、第1車両の利用者又は駐車場を利用者に提供する施設の係員によって操作される。サーバは、端末と無線通信ネットワークを介して接続されている。端末は、代行の要求情報をサーバに送信する。要求情報を受信したサーバは、遠隔運転者による遠隔操作サービスの待ち行列に第1車両を追加し、次いで、遠隔運転者による遠隔操作サービスを第1車両が受けるまでの待ち時間情報を端末に送信する。端末は、受信した待ち時間情報を利用者又は係員に通知し、利用者又は係員による待ち時間情報の承認又は追加料金の支払い指示を受け付ける。端末は、支払い指示を受け取った場合、サーバとの協働により追加料金の決済を実行する。サーバは、追加料金の決済が完了した場合、第1車両が追加料金の支払いなしの第2車両よりも優先されるように待ち行列内の第1車両の順番を変更する。待ち行列は、遠隔運転者による遠隔操作を希望する車両の一覧である。待ち行列内の第1車両の順番が到来すると、第1車両と遠隔運転者とのマッチングが完了する。端末が係員によって操作される場合における追加料金は、施設によって負担される。
【0007】
サーバは、第1車両の車載通信機を介して第1車両と通信を行う通信装置とともに遠隔操作センタに備えられていてもよい。サーバは、第1車両の周囲の状況を認識するように第1車両に備えられた認識センサによる第1車両の周囲の車両の検出に基づいて、又は第1車両と第1車両の周囲の車両との間で通信を行って共有した各車両の位置情報に基づいて、マッチングのために待機している第1車両が交通を阻害するおそれがあるか否かを判定してもよい。サーバは、上記のおそれがある場合、追加料金を自動的に請求することを端末に送信し、かつ、第1車両が追加料金の支払いなしの第2車両よりも優先されるように待ち行列内の第1車両の順番を変更してもよい。
【0008】
サーバは、追加料金の決済が完了した場合、追加料金の支払いに伴って短縮した後の修正待ち時間情報を端末に送信してもよい。
【0010】
本開示に係るマッチング方法は、駐車場の入庫及び出庫の少なくとも一方の代行を必要とする第1車両と、遠隔操作により第1車両の運転を代行する遠隔運転者とのマッチングを行う。マッチング方法によれば、代行の要求情報が、第1車両の利用者又は駐車場を利用者に提供する施設の係員によって操作される端末から、端末と無線通信ネットワークを介して接続されたサーバに送信される。要求情報を受信したサーバに、遠隔運転者による遠隔操作サービスの待ち行列への第1車両の追加を行わせ、次いで、サーバから、遠隔運転者による遠隔操作サービスを第1車両が受けるまでの待ち時間情報が端末に送信される。待ち時間情報が端末から利用者又は係員に通知される。端末において、利用者又は係員による待ち時間情報の承認又は追加料金の支払い指示が受け付けられる。端末が支払い指示を受け取った場合、端末とサーバとの協働により追加料金の決済が実行される。追加料金の決済が完了した場合、第1車両が追加料金の支払いなしの第2車両よりも優先されるように待ち行列内の第1車両の順番がサーバによって変更される。待ち行列は、遠隔運転者による遠隔操作を希望する車両の一覧である。待ち行列内の第1車両の順番が到来すると、第1車両と遠隔運転者とのマッチングが完了する。端末が係員によって操作される場合における追加料金は、施設によって負担される。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係るマッチングシステム又はマッチング方法によれば、第1車両の利用者が追加料金を支払った場合には、第1車両が追加料金の支払いなしの第2車両よりも優先されるように遠隔操作サービスの待ち行列内の第1車両の順番が変更される。このように、入庫時又は出庫時の待ち時間を短縮したい場合には、追加料金の支払いにより、車両と遠隔運転者とのマッチングに要する時間を短縮できる。これにより、バレー駐車サービスの利便性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係るマッチングシステムの構成例を示すブロック図である。
図2】実施の形態1に係るマッチング方法の手順を示すフローチャートである。
図3図2に示すフローチャートの処理による待ち行列内の順番変更の一例を表した図である。
図4】実施の形態1の変形例に係るマッチングシステムの構成例を示すブロック図である。
図5】実施の形態2に係るサーバの処理を示すフローチャートである。
図6】実施の形態3に係る車両ECUの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、本開示に係る技術思想が限定されるものではない。
【0014】
1.実施の形態1
1-1.マッチングシステムの構成例
図1は、実施の形態1に係るマッチングシステム1の構成例を示すブロック図である。図1には、マッチングシステム1が適用される車両10及び遠隔操作センタ30が表されている。なお、図1には、1台の車両10のみが表されているが、遠隔操作センタ30による遠隔運転対象の車両10の数は複数である。
【0015】
車両10は、後述の遠隔運転端末32を操作する遠隔運転者によって遠隔運転可能に構成されている。また、一例として、車両10は自動運転車両である。具体的には、車両10は、操舵装置12、駆動装置14、制動装置16、車載電子制御ユニット(車両ECU)18、車載通信機20、車両状態センサ22、認識センサ24、GNSS受信機(Global Navigation Satellite System)26、HMI(Human Machine Interface)機器28、及びハザードランプ29を備えている。なお、車両10は、遠隔運転可能に構成されていれば、必ずしも自動運転可能に構成されていなくてもよい。
【0016】
操舵装置12、駆動装置14、及び制動装置16は、例えば何れもバイワイヤ方式であり、車両10の操舵、駆動、及び制動をそれぞれ行う。操舵装置12は、例えばステアリングホイールと機械的に切り離され、車輪の転舵を行う電動式の転舵アクチュエータを備える。駆動装置14は、例えば、電動モータ、又は電子制御式スロットルを備える内燃機関である。制動装置16は、例えば電子制御ブレーキ(ECB)である。
【0017】
車両ECU18は、車両10を制御するコンピュータである。具体的には、車両ECU18は、プロセッサ18aと記憶装置18bとを備えている。プロセッサ18aは、各種処理を実行する。各種処理は、遠隔操作センタ30からの情報に基づいて車両10の走行を制御するための処理と、自動運転制御のための処理とを含む。記憶装置18bは、各種情報を格納している。記憶装置18bとしては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、及びSSD(Solid State Drive)が例示される。車両ECU18(プロセッサ18a)が各種コンピュータプログラムを実行することにより、車両ECU18による各種処理が実現される。各種プログラムは、記憶装置18bに格納されている、あるいは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されている。なお、プロセッサ18a及び記憶装置18bは複数であってもよい。
【0018】
車載通信機20は、プロセッサを含み、無線通信ネットワーク40を介して遠隔操作センタ30(後述の通信装置36)と通信を行う。車両状態センサ22は、車両10の状態を検出する。車両状態センサ22としては、車速センサ(車輪速センサ)、操舵角センサ、ヨーレートセンサ、及び横加速度センサが例示される。認識センサ24は、車両10の周囲の状況を認識(検出)する。認識センサ24としては、カメラ、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、及びレーダが例示される。GNSS受信機26は、GNSS衛星からの信号に基づいて車両10の位置及び方位を取得する。HMI機器28としては、タッチパネル、マイクロフォン、及びスピーカが例示される。
【0019】
遠隔操作センタ30は、遠隔運転端末32、サーバ34、及び通信装置36を備える。遠隔運転端末32及び通信装置36は、無線又は通線の通信ネットワークを介してサーバ34と接続されている。
【0020】
遠隔運転端末32は、車両10の遠隔操作のためにオペレータ(遠隔運転者)によって操作される遠隔操作器として、例えば、ステアリングホイール、アクセルペダル、及びブレーキペダルを備える。また、遠隔運転端末32は、遠隔運転者による遠隔操作に用いられるディスプレイを備えている。ディスプレイは、例えば、車両10のカメラ(認識センサ24)によって撮像された車両10の周囲(少なくとも前方)の画像を表示する。
【0021】
サーバ34は、遠隔運転端末32による車両10の遠隔運転に関する処理と、マッチングシステム1におけるマッチングに関する処理とを実行するコンピュータである。具体的には、サーバ34は、プロセッサ34aと記憶装置34bとを備える。プロセッサ34aは、各種処理を実行する。記憶装置34bは、各種情報を格納している。記憶装置34bの具体例は、上述の記憶装置18bのそれと同様である。サーバ34(プロセッサ34a)が各種コンピュータプログラムを実行することにより、サーバ34による各種処理が実現される。各種コンピュータプログラムは、記憶装置34bに格納されている、あるいは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されている。なお、プロセッサ34a及び記憶装置34bは複数であってもよい。
【0022】
サーバ34に接続される遠隔運転端末32は複数であってもよい。すなわち、サーバ34は、複数台の遠隔運転端末32を管理する機能を有してもよい。
【0023】
通信装置36は、無線通信ネットワーク40を介して車両10(車載通信機20)と通信を行う。具体的には、遠隔運転端末32が車両10を遠隔操作する場合、通信装置36は、遠隔運転端末32のディスプレイに表示される情報等の遠隔運転に必要な情報を車両10から取得し、サーバ34を介して遠隔運転端末32に送信する。また、通信装置36は、遠隔運転者による車両10の操作情報を遠隔運転端末32からサーバ34を介して取得し、車両10に送信する。さらに、通信装置36は、車載通信機20との間で、マッチングシステム1におけるマッチングに関する情報を送受信する。
【0024】
1-2.車両と遠隔運転者とのマッチング
図1に示すシステム構成によれば、遠隔運転者による車両10の遠隔運転をバレー駐車サービスに利用することが可能となる。より詳細には、車両10の利用者は、駐車場を有する施設(例えば、ホテル)を目的地として、自動運転又は利用者自らの手動運転で移動する。目的地周辺のバレー駐車用の待機場所(例えば、ホテルのエントランス)に到着した利用者は、駐車場への車両10の入庫の代行を遠隔運転者に依頼することができる。また、遠隔運転を利用したバレー駐車サービスは、入庫時に限らず、駐車場からの出庫時にも利用できる。すなわち、利用者は、駐車場からの車両10の出庫の代行を遠隔運転者に依頼することもできる。
【0025】
マッチングシステム1は、駐車場の入庫又は出庫の代行を必要とする車両10と、遠隔操作により車両10の運転を代行する遠隔運転者とのマッチングを行う。ここで、代行を求めて待っている車両10の数が多い等の理由により、入庫時又は出庫時に車両と遠隔運転者とのマッチングに時間がかかると、バレー駐車サービス(すなわち、入庫又は出庫の代行サービス)の利便性が低下するという課題がある。
【0026】
上述の課題に鑑み、本実施形態のマッチングシステム1におけるマッチングは、以下に説明されるマッチング方法を用いて実行される。図2は、実施の形態1に係るマッチング方法の手順を示すフローチャートである。このマッチングは、サーバ34と、車載通信機20との協働によって実行される。なお、車載通信機20は、本開示に係る「端末」の一例に相当する。また、以下の説明では、サーバ34又は車載通信機20による処理の対象として説明を行っている車両10を、マッチングを希望する他の車両10との区別のために、適宜「自車両10(本開示に係る「第1車両」に相当)」とも称する。
【0027】
図2において、車載通信機20における処理は、遠隔運転者による入庫又は出庫の代行サービス(バレー駐車サービス)を希望する自車両10の利用者が専用のアプリケーションを起動させた時に開始される。
【0028】
車載通信機20は、上記アプリケーションを利用する自車両10の利用者から入庫又は出庫の代行要求を受け付けた場合、ステップS100において、代行要求情報をサーバ34に送信する。具体的には、例えば、サーバ34の記憶装置32bには、代行サービスの利用を希望する各車両10について、遠隔運転実現のために必要な車両情報が事前に登録されている。ステップS100における代行要求情報は、代行要求を示す情報とともに、今回代行を要求する自車両10の車両情報を含む。
【0029】
サーバ34(プロセッサ34a)における処理は、車載通信機20からの代行要求情報を受信した時に開始される。代行要求情報を受信したサーバ34は、ステップS200において、代行要求情報を送信した自車両10を待ち行列Qに追加する。
【0030】
この待ち行列Qは、遠隔運転者による遠隔操作を希望する車両10の一覧である。待ち行列Qは、本実施形態の代行サービス(バレー駐車サービス)専用であってもよいし、例えば、タクシーサービス等の他の遠隔運転サービスを希望する車両と共通であってもよい。また、待ち行列Qは、原則的には、FIFO(First-In-First-Out)の規則で管理される。したがって、原則的には、先に要求を出した車両から順に遠隔運転者のマッチングが完了する。
【0031】
なお、遠隔操作センタ30に複数の遠隔運転者が配置されている例では、待ち行列Qは、遠隔運転者毎に作成されてもよいし、1つの待ち行列Qが複数の遠隔運転者で共有されてもよい。遠隔運転者毎に待ち行列Qが作成される例では、ステップS200におけるサーバ34の処理は、今回代行要求を発した自車両10の遠隔運転業務を請け負う遠隔運転者を所定の規則に従って決定する処理を含む。
【0032】
図3(A)は、ステップS200の処理において用いられる待ち行列Qの一例を表した図である。図3には、自車両10以外に、自車両10よりも先に代行要求を出した3台の車両10A、10B、及び10Cが例示されている。これら3台の車両10の待ち順は、車両10A、10B、及び10Cの順である。FIFOの規則によれば、この例では、自車両10は、車両10Cの後で待ち行列Qに加わることになる。
【0033】
ステップS200に続くステップS202では、サーバ34は、遠隔運転者による代行サービスを自車両10が受けるまでの待ち時間情報を車載通信機20に送信する。待ち時間情報は、例えば、図3(A)に示すような自車両10の待ち順そのものを示す情報である。あるいは、例えば、サーバ34は、待ち行列Qに基づいて自車両10の待ち時間を演算し、演算した待ち時間を待ち時間情報として用いてもよい。
【0034】
車載通信機20は、ステップS102において待ち時間情報を受信した後、ステップS104において待ち時間情報を自車両10の利用者に通知する。待ち時間情報の通知は、例えば、HMI機器28を利用して、ディスプレイへの表示、及び音声の少なくとも一方によって行うことができる。その後、処理はステップS106に進む。
【0035】
ステップS106では、車載通信機20は、ステップS104において通知した待ち時間情報の承認、又は追加料金の支払い指示を利用者から受け付ける。追加料金は、例えば定額である。
【0036】
ステップS106において利用者の承認を受け取った場合には、車載通信機20は、ステップS108において、承認情報をサーバ34に送信するとともに、サーバ34との協働により基本料金の決済を実行する。ステップS108の処理が完了すると、車載通信機20の処理が終了する。
【0037】
一方、ステップS106において追加料金の支払い指示を受け取った場合には、車載通信機20は、ステップS110において、追加領域の支払い意思を示す情報をサーバ34に送信するとともに、サーバ34との協働により基本料金と追加料金の決済を実行する。
【0038】
サーバ34は、ステップS204において、承認情報、又は追加料金の支払い意思を示す情報を受け付ける。その結果、車載通信機20から承認情報を受信した場合には、サーバ34は、ステップS206において、車載通信機20との協働により基本料金の決済を実行する。その後、サーバ34の処理が終了する。
【0039】
また、ステップS206において車載通信機20から追加料金の支払い意思を示す情報を受信した場合には、サーバ34は、ステップS208において、車載通信機20との協働により基本料金と追加料金の決済を実行する。その後、処理はステップS210に進む。
【0040】
ステップS210では、サーバ34は、追加料金を支払った自車両10が追加料金の支払いなしの車両(本開示に係る「第2車両」に相当)よりも優先されるように、待ち行列Q内の自車両10の順番を変更する。
【0041】
図3(B)は、ステップS210の処理の具体例1を表した図である。具体例1は、自車両10よりも先に代行要求を出した3台の車両10A、10B、及び10Cの何れも追加料金を支払っていない例に相当する。この具体例1では、サーバ34は、追加料金を唯一支払った自車両10が待ち行列Qの先頭に移動するように自車両10の順番を変更する。それに伴い、車両10A、10B、及び10Cの待ち順が、それぞれ1つずつ繰り下がる。なお、待ち行列Qがタクシーサービス等の他の遠隔操作サービスと共有されている場合には、サーバ34は、例えば、車両10A~10Cだけでなく他の遠隔操作サービスの提供を待つ車両よりも優先されるように自車両10の順番を変更してもよい。
【0042】
図3(C)は、ステップS210の処理の具体例2を表した図である。具体例2は、車両10A、10B、及び10Cのうち、車両10Aのみが追加料金を支払っている例に相当する。この具体例2では、サーバ34は、自車両10よりも先に追加料金を支払っている車両10Aの直後に自車両10が移動するように自車両10の順番を変更する。それに伴い、追加料金の支払いのない車両10B及び10Cの待ち順が、それぞれ1つずつ繰り下がる。付け加えると、車両10Aだけでなく車両10Bも追加料金を支払っている他の例では、サーバ34は、自車両10が車両10Bの直後に移動するように、自車両10と車両10Cの順番を変更する。
【0043】
ステップS210に続くステップS212では、サーバ34は、追加料金の支払いに伴って短縮した後の修正待ち時間情報を車載通信機20に送信する。その後、サーバ34の処理が終了する。
【0044】
車載通信機20は、ステップS110に続くステップS112において修正待ち時間情報を受信した後、受信した修正待ち時間情報をステップS114においてHMI機器28を用いて利用者に通知する。これにより、利用者は、追加料金の支払い後の待ち時間を把握できるようになる。その後、車載通信機20の処理が終了する。
【0045】
1-3.効果
以上説明したマッチングシステム1によれば、自車両10の利用者が遠隔操作センタ30に対して追加料金を支払った場合には、自車両10が追加料金の支払いなしの車両よりも優先されるように遠隔操作サービスの待ち行列Q内の自車両10の順番が変更される。このように、入庫時又は出庫時の待ち時間を短縮したい場合には、追加料金の支払いにより、車両10と遠隔運転者とのマッチングに要する時間を短縮できる。これにより、代行サービス(バレー駐車サービス)の利便性を向上できる。
【0046】
1-4.変形例
上述した実施の形態1では、本開示に係る「端末」の一例として車載通信機20が説明された。しかしながら、「端末」は、車両10の利用者が所有するスマートフォン等の携帯端末であってもよい。
【0047】
図4は、実施の形態1の変形例に係るマッチングシステム2の構成例を示すブロック図である。マッチングシステム2は、携帯端末50を追加的に備える点において、図1に示すマッチングシステム1と相違している。具体的には、携帯端末50は、プロセッサを含み、無線通信ネットワーク40を介して遠隔操作センタ30及び車両10と接続されている。
【0048】
携帯端末50は、例えば車両10の利用者によって所持されている。バレー駐車用の待機場所に到着した利用者は、車載通信機20に代えて携帯端末50を操作して代行サービスをサーバ34に要求してもよい。すなわち、マッチングに関し、携帯端末50は、実施の形態1にて説明された車載通信機20の処理と同様の処理を実行する。携帯端末50の利用により、利用者は、車両10から降りた後に代行サービスを要求することができる。ただし、携帯端末50を利用する場合には、サーバ34は、代行サービスを受ける車両10を特定するために、携帯端末50と車両10との紐づけがなされていることを必要とする。このため、例えば、マッチングのための通信を行う携帯端末50の情報から車両10を特定するために必要な情報が、サーバ34の記憶装置32bが備えるデータベースに事前に登録されていてもよい。
【0049】
また、入庫時又は出庫時における遠隔運転者への代行依頼は、車両10の利用者に代え、駐車場を利用者に提供する施設(例えば、ホテル)の係員によって行われてもよい。このため、図4に示す携帯端末50は、車両10の利用者ではなく、当該係員によって所持されていてもよい。このように係員が携帯端末50を操作する例によれば、追加料金の支払いを含め、上記施設が、マッチングシステム2を利用した利便性の高いバレー駐車サービス(代行サービス)を利用者に提供できるようになる。
【0050】
さらに、上述した実施の形態1では、待ち時間の短縮のために支払われる追加料金が定額である例が説明された。しかしながら、追加料金の額は、一定ではなく、例えば利用者又は係員によって任意に決定されてもよい。そして、待ち行列Q内に追加料金を支払った車両が複数存在している場合、代行サービスの要求を出したタイミングが早いことよりも追加料金の額が多いことが優先されてもよい。すなわち、代行サービスの要求タイミングが後かつ追加料金が多い車両が、代行サービスの要求タイミングが先かつ追加料金が少ない車両よりも優先されるように、待ち行列Q内の車両の順番が変更されてもよい。
【0051】
2.実施の形態2
実施の形態2は、サーバ34が下記の図5に示す処理を追加的に行う点において実施の形態1と相違している。
【0052】
図5は、実施の形態2に係るサーバ34の処理を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、サーバ34が車載通信機20からの代行要求情報を受信した時に開始される。
【0053】
マッチングに時間がかかると、車両(自車両)10の後ろに他の車両が列をなしてしまい、車両10が交通を阻害するおそれがある。そこで、図5では、サーバ34は、ステップS300において、マッチングのために待機場所で待機している車両10が交通を阻害するおそれがあるか否かを判定する。
【0054】
ステップS300の判定は、例えば、認識センサ24に含まれるカメラを利用して車両10の周囲の車両を検出することによって行うことができる。また、この判定は、例えば、車両10とその周囲の車両との間で通信を行って共有した各車両の位置情報を利用して行うこともできる。
【0055】
ステップS300において車両10が交通を阻害するおそれがない場合には、図5に示すフローチャートの処理が終了される。この場合には、図2に示すフローチャートに従うマッチングのための処理が継続される。
【0056】
一方、ステップS300において車両10が交通を阻害するおそれがある場合には、図2に示すフローチャートの処理に代え、次のステップS302及びS304の処理が実行される。
【0057】
ステップS302では、サーバ34は、車両10と遠隔運転者との速やかなマッチング完了のために追加料金を自動的に請求することを車載通信機20に送信する。携帯端末50を備える例では、サーバ34は、追加料金を自動的に請求することを携帯端末50に送信してもよい。
【0058】
ステップS302に続くステップS304では、サーバ34は、車両(自車両)10が追加料金の支払いなしの車両よりも優先されるように待ち行列Q内の自車両10の順番を変更する。
【0059】
以上説明した図5に示すフローチャートの処理によれば、マッチングのために待機している車両10が交通を阻害する恐れがある場合には、車両10の利用者の追加料金の支払い意思の有無に関係なく、サーバ34が追加料金を自動的に請求する。その結果、マッチングのための待ち時間が短縮され、車両10を速やかに移動できるようになる。このため、マッチングのために待機している車両10が交通を阻害することを抑制しつつ、遠隔運転を利用したバレー駐車サービスを提供できるようになる。
【0060】
3.実施の形態3
実施の形態3は、車両ECU18が下記の図6に示す処理を追加的に行う点において実施の形態1と相違している。
【0061】
図6は、実施の形態3に係る車両ECU18の処理を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、上述の図2に示すフローチャートのステップS100における車載通信機20による代行要求情報の送信がなされた時に開始される。
【0062】
図6では、車両ECU18(プロセッサ18a)は、ステップS400において、車載通信機20(端末)による代行要求情報の送信から所定時間Tが経過したか否かを判定する。この所定時間Tは、例えば、代行要求情報の送信から遠隔運転者による遠隔操作の開始までに要すると想定される標準的な時間に相当する。その結果、所定時間Tが経過した場合には、処理はステップS402に進む。
【0063】
ステップS402では、車両ECU18は、遠隔運転者による車両(自車両)10の遠隔操作が開始されたか否かを判定する。遠隔操作が開始されたか否かは、例えば、サーバ34と車両ECU18との間での遠隔操作のための信号の送受信結果に基づいて判定できる。その結果、遠隔操作が開始されている場合には、今回のフローチャートの処理が終了される。
【0064】
一方、ステップS402において所定時間Tが経過しても遠隔操作が開始されていない場合には、処理はステップS404に進む。ステップS404では、車両ECU18は、自車両10が待機場所を離れて路肩に停車するように自動運転制御を実行する。また、車両ECU18は、ハザードランプ29を点滅させる。
【0065】
以上説明した図6に示すフローチャートの処理によれば、想定される標準的な所定時間Tに対して遠隔運転者による遠隔操作の開始に時間がかかっている場合に、車両10の自動運転制御を利用して車両が交通の妨げとなることを抑制できる。
【符号の説明】
【0066】
1、2 マッチングシステム
10 車両
12 操舵装置
14 駆動装置
16 制動装置
18 車両ECU
20 車載通信機
22 車両状態センサ
24 認識センサ
26 GNSS受信機
28 HMI機器
29 ハザードランプ
30 遠隔操作センタ
32 遠隔運転端末
34 サーバ
36 通信装置
40 無線通信ネットワーク
50 携帯端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6