(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】電気装置および回転電機装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241112BHJP
B60K 1/00 20060101ALI20241112BHJP
B60K 1/02 20060101ALI20241112BHJP
B60K 6/40 20071001ALI20241112BHJP
B60K 6/445 20071001ALI20241112BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
B60K1/00 ZHV
B60K1/02
B60K6/40
B60K6/445
(21)【出願番号】P 2021121137
(22)【出願日】2021-07-23
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】宮本 真吾
(72)【発明者】
【氏名】岩田 秀一
(72)【発明者】
【氏名】平田 修一
(72)【発明者】
【氏名】梅田 大貴
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2013/014745(JP,A1)
【文献】特開2016-055701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
B60K 1/00
B60K 6/445
B60K 6/40
B60K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の機械室(10)内に設けられるとともに、底部(911)と前記底部から環状に起立する第1環状壁(912)によって区画される第1収納空間(915)を備える第1ケース(910)に回転機(400)の収納された回転装置(410)に接続される電気装置(300)であって、
前記底部に直交する高さ方向で前記第1ケースと並ぶとともに、前記高さ方向で前記第1環状壁側に位置する下方環状壁(925)と前記下方環状壁よりも前記第1環状壁から前記高さ方向で離間した側に位置する上方環状壁(926)を含む第2環状壁(921)を備える第2ケース(920)と、
前記第2環状壁によって区画される第2収納空間(928)のうちの前記上方環状壁に囲まれる空間に収納されるパワーモジュール(391)と、を有し、
前記上方環状壁における前記車両の前方側の部位が前記下方環状壁における前記前方側の部位よりも前記車両の後方側に位置して
おり、
前記第2収納空間の前記上方環状壁に囲まれる空間に収納されて前記パワーモジュールと電気的に接続されるリアクトル(313)と、
前記第2収納空間の前記下方環状壁に囲まれる空間と前記第1収納空間とを併せた空間に収納され、前記パワーモジュールおよび前記リアクトルに電気的に接続される、前記リアクトルよりも前記高さ方向で高さの低い低背部品(340、311)と、を有する電気装置。
【請求項2】
前記車両が前記前方で外部の障壁に当たる際に前記上方環状壁に相対的に近付いてくる前記障壁の最前面とされる所定の衝突ラインよりも後方に、前記上方環状壁の前記前方側の部位が配置されている請求項1に記載の電気装置。
【請求項3】
前記第2ケースは前記上方環状壁と前記下方環状壁とを区画する区画部(922)を有し、
前記区画部に前記パワーモジュールと前記リアクトルと前記低背部品が搭載され、
前記区画部に冷媒が流されている請求項
1または請求項2に記載の電気装置。
【請求項4】
車両の機械室(10)内に設けられるとともに、底部(911)と前記底部から環状に起立する第1環状壁(912)によって区画される第1収納空間(915)を備える第1ケース(910)に回転機(400)の収納された回転装置(410)と、
前記底部に直交する高さ方向で前記第1ケースと並ぶとともに、前記高さ方向で前記第1環状壁側に位置する下方環状壁(925)と前記下方環状壁よりも前記第1環状壁から前記高さ方向で離間した側に位置する上方環状壁(926)を含む第2環状壁(921)を備える第2ケース(920)、および、前記第2環状壁によって区画される第2収納空間(928)のうちの前記上方環状壁に囲まれる空間に収納されるパワーモジュール(391)を備える電気装置(300)と、を有し、
前記上方環状壁における前記車両の前方側の部位が前記下方環状壁における前記前方側の部位よりも前記車両の後方側に位置して
おり、
前記電気装置(300)は、
前記第2収納空間の前記上方環状壁に囲まれる空間に収納されて前記パワーモジュールと電気的に接続されるリアクトル(313)と、
前記第2収納空間の前記下方環状壁に囲まれる空間と前記第1収納空間とを併せた空間に収納され、前記パワーモジュールおよび前記リアクトルに電気的に接続される、前記リアクトルよりも前記高さ方向で高さの低い低背部品(340、311)と、を有する回転電機装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の開示は、車両に搭載される電気装置および回転電機装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、PCUとPCUを収納するPCUケースと2つのモータジェネレータの収容されるトランスアクスルハウジングとPCUケースをトランスアクスルハウジングに固定するブラケットを備える電動車両が記載されている。PCUケースとトランスアクスルハウジングが電動車両のエンジンコンパーメント内に収納されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動車両が前方で外部の障壁の角に衝突し、障壁の角がエンジンコンパーメント内のPCUケースに当たったとしても、ブラケットが変形することでPCUケースにかかる衝撃を吸収してPCUにかかる衝撃が抑制されるようになっている。
【0005】
しかしながらブラケットの分、部品点数が増大しており、PCUにかかる衝撃の抑制と部品点数増大の抑制を両立させることが難しかった。
【0006】
そこで本開示の目的は、パワーモジュールにかかる衝撃の抑制と部品点数増大の抑制を両立させた電気装置および回転電機装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様による電気部品は、
車両の機械室(10)内に設けられるとともに、底部(911)と底部から環状に起立する第1環状壁(912)によって区画される第1収納空間(915)を備える第1ケース(910)に回転機(400)の収納された回転装置(410)に接続される電気装置(300)であって、
底部に直交する高さ方向で第1ケースと並ぶとともに、高さ方向で第1環状壁側に位置する下方環状壁(925)と下方環状壁よりも第1環状壁から高さ方向で離間した側に位置する上方環状壁(926)を含む第2環状壁(921)を備える第2ケース(920)と、
第2環状壁によって区画される第2収納空間(928)のうちの上方環状壁に囲まれる空間に収納されるパワーモジュール(391)と、を有し、
上方環状壁における車両の前方側の部位が下方環状壁における前方側の部位よりも車両の後方側に位置しており、
第2収納空間の上方環状壁に囲まれる空間に収納されてパワーモジュールと電気的に接続されるリアクトル(313)と、
第2収納空間の下方環状壁に囲まれる空間と第1収納空間とを併せた空間に収納され、パワーモジュールおよびリアクトルに電気的に接続される、リアクトルよりも高さ方向で高さの低い低背部品(340、311)と、を有する。
【0008】
また本開示の一態様による回転電機装置は、
車両の機械室(10)内に設けられるとともに、底部(911)と底部から環状に起立する第1環状壁(912)によって区画される第1収納空間(915)を備える第1ケース(910)に回転機(400)の収納された回転装置(410)と、
底部に直交する高さ方向で第1ケースと並ぶとともに、高さ方向で第1環状壁側に位置する下方環状壁(925)と下方環状壁よりも第1環状壁から高さ方向で離間した側に位置する上方環状壁(926)を含む第2環状壁(921)を備える第2ケース(920)、および、第2環状壁によって区画される第2収納空間(928)のうちの上方環状壁に囲まれる空間に収納されるパワーモジュール(391)を備える電気装置(300)と、を有し、
上方環状壁における車両の前方側の部位が下方環状壁における前方側の部位よりも車両の後方側に位置しており、
電気装置(300)は、
第2収納空間の上方環状壁に囲まれる空間に収納されてパワーモジュールと電気的に接続されるリアクトル(313)と、
第2収納空間の下方環状壁に囲まれる空間と第1収納空間とを併せた空間に収納され、パワーモジュールおよびリアクトルに電気的に接続される、リアクトルよりも高さ方向で高さの低い低背部品(340、311)と、を有する。
【0009】
これによれば、車両が前方側で外部の障壁の角に衝突し、障壁の角が上方環状壁(926)に相対的に近付いてきたとしても、障壁の角が上方環状壁(926)に当たりにくくなくなっている。そのためにパワーモジュール(391)に車両の前方から衝撃が加わりにくくなっている。
【0010】
また第1ケース(910)と第2ケース(920)とが直接接続されていることで部品点数増大を抑制するこができるようになっている。
【0011】
パワーモジュール(391)にかかる衝撃の抑制と部品点数の増大の抑制を両立することができるようになった。
【0012】
なお、上記の括弧内の参照番号は、後述の実施形態に記載の構成との対応関係を示すものに過ぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】車載システムを説明するための回路図である。
【
図2】回転電機装置の車両への搭載状態を説明するための模式図である。
【
図3】回転電機装置を説明するための模式図である。
【
図4】回転電機装置を説明するための模式図である。
【
図6】エンジン室内の構成を外部の障壁Bとともに側面視で概略的に示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0015】
また、各実施形態で組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士、実施形態と変形例、および、変形例同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0016】
(第1実施形態)
<車載システム>
先ず、
図1に基づいて車載システム100を説明する。車載システム100はハイブリッドシステムを構成している。
【0017】
車載システム100は電気装置300および回転機400を備える回転電機装置800とバッテリ200を有する。また車載システム100はエンジン500と動力分配機構600を有する。回転機400は第1MG401と第2MG402を有する。MGはmotor generatorの略である。なお図面においてはバッテリ200を「BATT」、エンジン500を「ENG」と省略して記載している。
【0018】
さらに車載システム100は図示しない複数のECUを有する。これら複数のECUはバス配線を介して相互に信号を送受信している。複数のECUは協調してハイブリッド自動車を制御している。複数のECUの協調制御により、バッテリ200のSOCに応じた回転機400の力行と発電(回生)、および、エンジン500の出力などが制御される。SOCはstate of chargeの略である。ECUはelectronic control unitの略である。
【0019】
バッテリ200は複数の二次電池を有する。これら複数の二次電池は直列接続された電池スタックを構成している。二次電池としてはリチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、および、有機ラジカル電池などを採用することができる。
【0020】
電気装置300はバッテリ200と第1MG401との間の電力変換を行う。また電気装置300はバッテリ200と第2MG402との間の電力変換も行う。電気装置300はバッテリ200の直流電力を第1MG401と第2MG402の力行に適した電圧レベルの交流電力に変換する。電気装置300は第1MG401と第2MG402の発電によって生成された交流電力をバッテリ200の充電に適した電圧レベルの直流電力に変換する。
【0021】
第1MG401、第2MG402、および、エンジン500それぞれは動力分配機構600に連結されている。
【0022】
第1MG401はエンジン500から供給される回転エネルギーによって発電する。この発電によって発生した交流電力は、電気装置300によって直流電力に変換されるとともに降圧される。この直流電力がバッテリ200に供給される。また直流電力はハイブリッド自動車に搭載された各種電気負荷にも供給される。
【0023】
第2MG402はハイブリッド自動車の出力軸に連結されている。第2MG402の回転エネルギーは出力軸を介して走行輪に伝達される。逆に、走行輪の回転エネルギーは出力軸を介して第2MG402に伝達される。
【0024】
第2MG402は電気装置300から供給される交流電力によって力行する。この力行によって発生した回転エネルギーは、動力分配機構600によってエンジン500や走行輪に分配される。これによりクランクシャフトのクランキングや走行輪への推進力の付与が成される。
【0025】
また第2MG402は走行輪から伝達される回転エネルギーによって回生する。この回生によって発生した交流電力は、電気装置300によって直流電力に変換されるとともに降圧される。この直流電力がバッテリ200や各種電気負荷に供給される。
【0026】
エンジン500は燃料を燃焼駆動することで回転エネルギーを生成する。この回転エネルギーが動力分配機構600を介して第1MG401や第2MG402に分配される。これにより第1MG401の発電や走行輪への推進力の付与が成される。
【0027】
動力分配機構600は遊星歯車機構を有する。動力分配機構600は図示しないサンギヤ、プラネタリーギヤ、プラネタリーキャリア、および、リングギヤを有する。
【0028】
サンギヤに第1MG401のモータシャフトが連結されている。プラネタリーキャリアにエンジン500のクランクシャフトが連結されている。リングギヤに第2MG402のモータシャフトが連結されている。これにより第1MG401、エンジン500、および、第2MG402の回転数が共線図において直線の関係になっている。
【0029】
電気装置300から第1MG401と第2MG402に交流電力が供給されることでサンギヤとリングギヤにトルクが発生する。エンジン500の燃焼駆動によってプラネタリーキャリアにトルクが発生する。これにより第1MG401の発電、第2MG402の力行と回生、および、走行輪への推進力の付与それぞれが行われる。
【0030】
また上記した複数のECUのうちの1つのMGECUは、ハイブリッド自動車に搭載された各種センサで検出される物理量、および、他のECUから入力される車両情報などに基づいて、第1MG401と第2MG402それぞれの目標トルクを決定する。そしてMGECUは第1MG401と第2MG402それぞれに生成されるトルクが目標トルクになるように制御している。
【0031】
<電力変換装置の回路構成>
次に電気装置300を説明する。
図1に示すように電気装置300は電力変換回路の構成要素としてコンバータ310とインバータ320を備えている。コンバータ310は直流電力の電圧レベルを昇降圧する機能を果たす。インバータ320は直流電力を交流電力に変換する機能を果たす。インバータ320は交流電力を直流電力に変換する機能を果たす。
【0032】
コンバータ310はバッテリ200の直流電力を第1MG401と第2MG402のトルク生成に適した電圧レベルに昇圧する。インバータ320はこの直流電力を交流電力に変換する。この交流電力が第1MG401と第2MG402に供給される。またインバータ320は第1MG401と第2MG402で生成された交流電力を直流電力に変換する。コンバータ310はこの直流電力をバッテリ200の充電に適した電圧レベルに降圧する。
【0033】
図1に示すようにコンバータ310は正極バスバ301と負極バスバ302を介してバッテリ200と電気的に接続されている。コンバータ310はPバスバ303とNバスバ304を介してインバータ320と電気的に接続されている。
【0034】
<コンバータ>
コンバータ310は電気素子として、フィルタコンデンサ311、A相スイッチモジュール312、リアクトル313、および、DCDCコンバータ340を有する。DCDCコンバータ340については後で説明する。
【0035】
図1に示すように正極バスバ301の一端がバッテリ200の正極に接続されている。負極バスバ302の一端がバッテリ200の負極に接続されている。この正極バスバ301にフィルタコンデンサ311の有する2つの電極のうちの一方が接続されている。負極バスバ302にフィルタコンデンサ311の有する2つの電極のうちの他方が接続されている。
【0036】
リアクトル313の一端が正極バスバ301の他端に接続されている。リアクトル313の他端が第1連結バスバ711を介してA相スイッチモジュール312に接続されている。これによりリアクトル313と第1連結バスバ711を介してバッテリ200の正極とA相スイッチモジュール312とが電気的に接続されている。なお
図1では各種バスバの接続部位を白丸で示している。これら接続部位は例えばボルト1000や溶接などによって電気的に接続されている。
【0037】
A相スイッチモジュール312はハイサイドスイッチ331とローサイドスイッチ332を有する。またA相スイッチモジュール312はハイサイドダイオード331aとローサイドダイオード332aを有する。これら半導体素子は図示しない封止樹脂によって被覆保護されている。
【0038】
本実施形態では、ハイサイドスイッチ331とローサイドスイッチ332としてNチャネル型のIGBTを採用している。これらハイサイドスイッチ331とローサイドスイッチ332それぞれのコレクタ電極、エミッタ電極、および、ゲート電極それぞれに接続された端子の先端が上記の封止樹脂の外に露出されている。
【0039】
図1に示すようにハイサイドスイッチ331のエミッタ電極とローサイドスイッチ332のコレクタ電極とが接続されている。これによりハイサイドスイッチ331とローサイドスイッチ332とが直列接続されている。
【0040】
また、ハイサイドスイッチ331のコレクタ電極にハイサイドダイオード331aのカソード電極が接続されている。ハイサイドスイッチ331のエミッタ電極にハイサイドダイオード331aのアノード電極が接続されている。これによりハイサイドスイッチ331にハイサイドダイオード331aが逆並列接続されている。
【0041】
同様にして、ローサイドスイッチ332のコレクタ電極にローサイドダイオード332aのカソード電極が接続されている。ローサイドスイッチ332のエミッタ電極にローサイドダイオード332aのアノード電極が接続されている。これによりローサイドスイッチ332にローサイドダイオード332aが逆並列接続されている。
【0042】
上記したようにハイサイドスイッチ331とローサイドスイッチ332は封止樹脂によって被覆保護されている。この封止樹脂から、ハイサイドスイッチ331のコレクタ電極とゲート電極、ハイサイドスイッチ331とローサイドスイッチ332との間の中点、ローサイドスイッチ332のエミッタ電極とゲート電極それぞれに接続された端子の先端が露出されている。以下においてはこれら端子を、コレクタ端子330a、中点端子330c、エミッタ端子330b、および、ゲート端子330dと示す。
【0043】
このコレクタ端子330aがPバスバ303に接続される。エミッタ端子330bがNバスバ304に接続される。これによりハイサイドスイッチ331とローサイドスイッチ332とがPバスバ303からNバスバ304へ向かって順に直列接続されている。
【0044】
また中点端子330cが第1連結バスバ711に接続される。第1連結バスバ711はリアクトル313と正極バスバ301を介してバッテリ200の正極と電気的に接続されている。
【0045】
以上により、A相スイッチモジュール312の備える2つのスイッチの中点には、正極バスバ301、リアクトル313、および、第1連結バスバ711を介してバッテリ200の直流電力が供給される。A相スイッチモジュール312のハイサイドスイッチ331のコレクタ電極には、インバータ320によって直流電力に変換された回転機400の交流電力が供給される。この直流電力に変換された回転機400の交流電力が、ハイサイドスイッチ331、第1連結バスバ711、リアクトル313、および、正極バスバ301を介してバッテリ200に供給される。
【0046】
このように第1連結バスバ711にはバッテリ200を入出力する直流電力が流れる。流れる物理量を限定して言えば、第1連結バスバ711にはバッテリ200を入出力する直流電流が流れる。
【0047】
ハイサイドスイッチ331とローサイドスイッチ332それぞれのゲート端子330dは図示しないゲートドライバに接続されている。MGECUは制御信号を生成し、それをゲートドライバに出力する。ゲートドライバは制御信号を増幅し、それをゲート端子330dに出力する。これによりハイサイドスイッチ331とローサイドスイッチ332はMGECUによって開閉制御される。この結果、コンバータ310に入力される直流電力の電圧レベルが昇降圧される。
【0048】
MGECUは制御信号としてパルス信号を生成している。MGECUはこのパルス信号のオンデューティ比と周波数を調整することで直流電力の昇降圧レベルを調整している。この昇降圧レベルは回転機400の目標トルクとバッテリ200のSOCに応じて決定される。
【0049】
バッテリ200の直流電力を昇圧する場合、MGECUはハイサイドスイッチ331とローサイドスイッチ332それぞれを交互に開閉する。これとは反対にインバータ320から供給された直流電力を降圧する場合、MGECUはローサイドスイッチ332に出力する制御信号をローレベルに固定する。それとともにMGECUはハイサイドスイッチ331に出力する制御信号をハイレベルとローレベルに順次切り換える。
【0050】
次にDCDCコンバータ340について説明する。DCDCコンバータ340の詳細については省略するが、DCDCコンバータ340には上記した半導体素子が含まれている。DCDCコンバータ340の備える半導体素子は上記したECUのうちの一部によってPWM制御されている。これによってバッテリ200から供給される高電圧の直流電力が低電圧の直流電力に下降変換されている。なお、図面においてはDCDCコンバータ340を省略して「DCDC」と記載している。
【0051】
図1に示すようにDCDCコンバータ340は正極バスバ301と負極バスバ302に接続されている。DCDCコンバータ340は図示しないケーブルを介して図示しない補機バッテリに接続されている。DCDCコンバータ340によって下降変換された直流電力がケーブルを介して補機バッテリに充電されるようになっている。
【0052】
補機バッテリには車両に搭載される補機が電気的に接続されている。補機バッテリから補機へ電力が供給されるようになっている。なお、補機とは、例えばパワーステアリング装置、投光装置、各種電子制御ユニット等のことである。
【0053】
<インバータ>
インバータ320は電気素子として、平滑コンデンサ321、図示しない放電抵抗、および、U相スイッチモジュール322~Z相スイッチモジュール327を有する。
【0054】
平滑コンデンサ321の有する2つの電極のうちの一方がPバスバ303に接続されている。平滑コンデンサ321の有する2つの電極のうちの他方がNバスバ304に接続されている。放電抵抗もPバスバ303とNバスバ304に接続されている。U相スイッチモジュール322~Z相スイッチモジュール327もPバスバ303とNバスバ304に接続されている。平滑コンデンサ321、放電抵抗、および、U相スイッチモジュール322~Z相スイッチモジュール327それぞれはPバスバ303とNバスバ304との間で並列接続されている。
【0055】
U相スイッチモジュール322~Z相スイッチモジュール327それぞれは、A相スイッチモジュール312と同等の構成要素を有する。すなわちU相スイッチモジュール322~Z相スイッチモジュール327それぞれは、ハイサイドスイッチ331、ローサイドスイッチ332、ハイサイドダイオード331a、ローサイドダイオード332a、および、封止樹脂を有する。またこれら6相のスイッチモジュールそれぞれはコレクタ端子330a、エミッタ端子330b、中点端子330c、および、ゲート端子330dを有する。ハイサイドスイッチ331とローサイドスイッチ332がスイッチ素子に相当する。
【0056】
これら6相のスイッチモジュールそれぞれのコレクタ端子330aはPバスバ303に接続されている。エミッタ端子330bはNバスバ304に接続されている。
【0057】
そしてU相スイッチモジュール322の中点端子330cが第2連結バスバ712を介して第1MG401のU相ステータコイルに接続されている。V相スイッチモジュール323の中点端子330cが第3連結バスバ713を介して第1MG401のV相ステータコイルに接続されている。W相スイッチモジュール324の中点端子330cが第4連結バスバ714を介して第1MG401のW相ステータコイルに接続されている。
【0058】
同様にして、X相スイッチモジュール325の中点端子330cが第5連結バスバ715を介して第2MG402のX相ステータコイルに接続されている。Y相スイッチモジュール326の中点端子330cが第6連結バスバ716を介して第2MG402のY相ステータコイルに接続されている。Z相スイッチモジュール327の中点端子330cが第7連結バスバ717を介して第2MG402のZ相ステータコイルに接続されている。
【0059】
これら6相のスイッチモジュールそれぞれのゲート端子330dは上記のゲートドライバに接続されている。第1MG401と第2MG402それぞれを力行する場合、MGECUからの制御信号の出力によって6相のスイッチモジュールの備えるハイサイドスイッチ331とローサイドスイッチ332それぞれがPWM制御される。これによりインバータ320で3相交流が生成される。第1MG401と第2MG402それぞれが発電(回生)する場合、MGECUは例えば制御信号の出力を停止する。これにより発電によって生成された交流電力が6相のスイッチモジュールの備えるダイオードを通る。この結果、交流電力が直流電力に変換される。
【0060】
以上に示した第1MG401および第2MG402それぞれに入出力する交流電力が、第1MG401および第2MG402それぞれとインバータ320とを接続する第2連結バスバ712~第7連結バスバ717を流れる。流れる物理量を限定して言えば、第1MG401および第2MG402それぞれを入出力する交流電力が、第2連結バスバ712~第7連結バスバ717を流れる。
【0061】
なお、A相スイッチモジュール312、U相スイッチモジュール322~Z相スイッチモジュール327それぞれの備えるスイッチ素子の種類としては特に限定されず、例えばMOSFETを採用することもできる。その場合MOSFETのそれぞれには、還流用のダイオードが逆並列に接続されている。ダイオードは、MOSFETの寄生ダイオード(ボディダイオード)でもよいし、寄生ダイオードとは別に設けたものでもよい。ダイオードのアノードは対応するMOSFETのソースに接続され、カソードはドレインに接続される。
【0062】
またこれらスイッチモジュールに含まれるスイッチやダイオードなどの半導体素子は、Siなどの半導体、および、SiCなどのワイドギャップ半導体によって製造することができる。半導体素子の構成材料としては特に限定されない。
【0063】
<回転電機装置の機械的構成>
次に、回転電機装置800の機械的構成を説明する。それに当たって、以下においては互いに直交の関係にある3方向を前後方向、幅方向、および、高さ方向とする。高さ方向とは重力方向のことである。前後方向とは車両の進行方向に沿う方向のことである。前方が車両の進行方向に相当する。後方が車両の後退方向に相当する。
図2~
図8においては左方が車両前方に、右方が車両の後方に相当する。幅方向とは高さ方向と前後方向それぞれに直交する方向のことである。
【0064】
図2に示すように車両は前方にエンジン500と回転電機装置800を収容するエンジン室10を有する。エンジン室10の上方はフードパネル11によって覆われている。
【0065】
エンジン室10の後方が隔壁によって車室内と仕切られている。また
図2に示すように回転電機装置800が車両の後方から車両の前方に向かって重力方向で下方に傾斜する態様でエンジン室10に設けられている。なお、回転電機装置800が車両の後方から車両の前方に傾斜していなくてもよい。この開示は、エンジン500を備えないシステムにも適用可能である。エンジン室10は、車両の機械室10とも呼ばれる場合がある。
【0066】
図2に示すように第1ケース910が重力方向すなわち高さ方向で車両の下方に配置されている。第2ケース920が重力方向すなわち高さ方向で車両の上方に配置されている。なお、図面においてはエンジン500の記載を省略している。
【0067】
回転電機装置800はこれまでに説明した構成要素の他に、各種電気部品を収納するケースと冷却器390とセンサユニット700と第1ケース910と第2ケース920を有する。
【0068】
各種電気部品を収納するケースとしては、
図2~
図4に示すようにフィルタコンデンサケース311a、平滑コンデンサケース321a、リアクトルケース313a、および、DCDCコンバータケース340aがある。
【0069】
フィルタコンデンサケース311a、平滑コンデンサケース321aおよび、リアクトルケース313aそれぞれは絶縁性の樹脂材料によって形成される。DCDCコンバータケース340aは金属部材の鋳造などによって形成される。
【0070】
フィルタコンデンサケース311aにフィルタコンデンサ311が収納されている。平滑コンデンサケース321aに平滑コンデンサ321が収納されている。リアクトルケース313aにリアクトル313が収納されている。DCDCコンバータケース340aにDCDCコンバータ340が収納されている。なお、DCDCコンバータ340とフィルタコンデンサ311は低背部品に相当する。
【0071】
なお、図面においてはこれまでに説明した各種バスバおよびECUやゲートドライバの搭載される制御基板の記載を省略している。
【0072】
冷却器390にコンバータ310とインバータ320に含まれるスイッチモジュールが収納されている。冷却器390はこれら複数のスイッチモジュールを冷却する機能を果たしている。冷却器390に複数のスイッチモジュールが収納されることで、パワーモジュール391が構成されている。冷却器390の詳細については後で説明する。
【0073】
<第1ケースと第2ケース>
次に第1ケース910および第2ケース920について説明する。第1ケース910は第1MG401および第2MG402を収納するケースである。第2ケース920は、パワーモジュール391、フィルタコンデンサケース311a、平滑コンデンサケース321a、リアクトルケース313a、DCDCコンバータケース340a、およびセンサユニット700を収納するケースである。
【0074】
また第1ケース910と第2ケース920とがブラケットなどを介さずにボルト1000を介して機械的に直接接続されている。これによっていわゆる機電一体型の電気装置300が構成されている。以下に第1ケース910の具体的な構成と第2ケース920の具体的な構成を説明する。
【0075】
<第1ケース>
図3に示すように第1ケース910は底部911と第1環状壁912と対向部913を有する。底部911は高さ方向に厚さの薄い扁平形状を成している。底部911は第1表面911aとその裏側の第1裏面911bを有している。
【0076】
第1環状壁912が第1表面911aに連結されている。第1環状壁912が第1表面911aから環状に起立している。第1環状壁912は前後方向に離間して並ぶ第1下側部912aおよび第3下側部912cと幅方向に離間して並ぶ第2下側部912bおよび第4下側部912dを有する。
【0077】
第1下側部912a~第4下側部912dが高さ方向周りの周方向に順に連結されることで第1環状壁912が構成されている。第1下側部912aが車両の前方側に配置されている。第3下側部912cが車両の後方側に配置されている。第2下側部912bが車両の右方に配置されている。第4下側部912dが車両の左方に配置されている。
【0078】
なお、第1ケース910は第2ケース920よりも高さ方向で車両の下方に配置される。そのために本実施形態では第1環状壁912の備える側部を下側部と称している。
【0079】
また
図3に示すように第1下側部912aと第3下側部912cに自身から前後方向に遠ざかるように延びる第1締結部914が形成されている。第1締結部914が後述の第2締結部924にボルト1000を介して締結されることで第1ケース910と第2ケース920とが機械的に直接接続される。なお、第1締結部914と第2締結部924の間にパッキンや封止材などが介在されている場合も第1締結部914と第2締結部924がボルト1000を介して締結されていれば直接接続されているとみなすことができる。
【0080】
なお、第1締結部914は第1下側部912aと第3下側部912cに形成されていなくてもよい。第1締結部914は第1環状壁912に形成されていればどこに形成されていてもよい。
【0081】
また
図3に示すように底部911と第1環状壁912によって第1収納空間915が区画されている。第1環状壁912における第1表面911aから離間した側に第1開口部910aが形成されている。第1環状壁912における第1表面911a側の部位と第1開口部910a側の部位の間に、底部911と高さ方向で対向し扁平形状を成す対向部913が設けられている。なお、対向部913は第1環状壁912に形成されていなくてもよい。
【0082】
対向部913によって第1収納空間915が2つに区画されている。2つに区画された第1収納空間915のうちの底部911側の収納空間に第1MG401と第2MG402それぞれが収納されている。このようにして回転装置410が構成されている。なお、第1MG401と第2MG402は前後方向に離間する態様で収納空間に収納されている。
【0083】
<第2ケース>
図3に示すように第2ケース920は、高さ方向周りの周方向に環状を成す第2環状壁921と、第2環状壁921の開口の1つを閉塞する蓋部923と、後述の第2収納空間928を区画する区画部922と、を有する。
【0084】
第2環状壁921は前後方向に離間して並ぶ第1上側部921aおよび第3上側部921cと幅方向に離間して並ぶ第2上側部921bおよび第4上側部921dを有する。第1上側部921a~第4上側部921dが高さ方向周りの周方向に順に連結されることで第2環状壁921が構成されている。第1上側部921aが車両の前方に配置されている。第3上側部921cが車両の後方に配置されている。第2上側部921bが車両の右方に配置されている。第4上側部921dが車両の左方に配置されている。
【0085】
なお、第2ケース920は第1ケース910よりも高さ方向で車両の上方に配置される。そのために本実施形態では第2環状壁921の備える側部を上側部と称している。
【0086】
また
図3に示すように第1上側部921aと第3上側部921cに自身から前後方向に遠ざかるように延びる第2締結部924が形成されている。第2締結部924が第1締結部914にボルト1000を介して締結されることで第2ケース920と第1ケース910とが機械的に連結される。なお、第2締結部924は第1上側部921aと第3上側部921cに形成されていなくてもよい。第2締結部924は第2環状壁921に形成されていればどこに形成されていてもよい。
【0087】
また
図3に示すように、第2環状壁921の第1環状壁912側に位置する部位の高さ方向の投影領域に、第2環状壁921の第1環状壁912から離間した側に位置する部位が含まれている。
【0088】
以下説明を簡便とするために、第2環状壁921の第1環状壁912側に位置する部位を下方環状壁925と示す。第2環状壁921の第1環状壁912から離間した側に位置する部位を上方環状壁926と示す。下方環状壁925の高さ方向の投影領域に上方環状壁926が含まれている。
【0089】
上方環状壁926の第1上側部921aが前後方向で下方環状壁925の第1上側部921aよりも車両の後方側にずれて配置されている。上方環状壁926の第3上側部921cが前後方向で下方環状壁925の第3上側部921cよりも車両の前方側にずれて配置されている。
【0090】
なお、上方環状壁926の第1上側部921aにおける車両の後方側へのずれ量は後述する供給管390aおよび排出管390cの径の長さよりも長くなっている。供給管390aおよび排出管390cの径とは内径であっても外径であってもどちらでもよい。さらに上方環状壁926の第1上側部921aにおける車両の後方側へのずれ量は供給管390aと排出管390cのどちらか一方の径の長さよりも長くなっていてもよい。
【0091】
また上方環状壁926の第2上側部921bが車両幅方向で下方環状壁925の第2上側部921bよりも車両の左方側に配置されている。上方環状壁926の第4上側部921dが車両幅方向で下方環状壁925の第4上側部921dよりも車両の右方側に配置されている。
【0092】
図3に示すように第2環状壁921は上記の下方環状壁925と上方環状壁926の他に下方環状壁925と上方環状壁926を連結する連結部927を有する。下方環状壁925の上方環状壁926側の端部と上方環状壁926の下方環状壁925側の端部とが連結部927によって連結されている。
【0093】
また下方環状壁925の第1環状壁912側の端部に第2開口部920aが形成されている。上方環状壁926の第1環状壁912から離間した側の端部に第3開口部920bが形成されている。そして蓋部923が第3開口部920bを閉塞する態様で上方環状壁926の第3開口部920b側の端部に設けられている。
【0094】
このように下方環状壁925と上方環状壁926と連結部927と蓋部923によって第2収納空間928が区画されている。なお、第2ケース920に蓋部923が含まれていなくてもよい。下方環状壁925と上方環状壁926と連結部927によって第2収納空間928が区画されていてもよい。
【0095】
<電気装置>
次に電気装置300について説明する。
図3に示すように区画部922が下方環状壁925と上方環状壁926の境界に設けられている。そのために第2収納空間928が区画部922によって2つに分けられている。
【0096】
第2収納空間928における区画部922と蓋部923の間の空間に上記したパワーモジュール391とリアクトルケース313aと平滑コンデンサケース321aとセンサユニット700が収納されている。言い換えれば第2収納空間928における上方環状壁926に囲まれた空間にパワーモジュール391とリアクトルケース313aと平滑コンデンサケース321aとセンサユニット700が収納されている。
【0097】
また第2収納空間928における区画部922と第3開口部920bの間の空間と第1収納空間915の一部を併せた部位に上記したDCDCコンバータケース340aとフィルタコンデンサケース311aが収納されている。言い換えれば第2収納空間928における下方環状壁925に囲まれた空間と第1収納空間915の対向部913よりも第1開口部910a側の空間を併せた空間にDCDCコンバータケース340aとフィルタコンデンサケース311aが収納されている。このようにして電気装置300が構成されている。
【0098】
図3に示すように区画部922は上方環状壁926の第1内壁面926aに連結される第1搭載部931と連結部927の第2内壁面927aに連結される第2搭載部932を有する。第1搭載部931は高さ方向に離間して並ぶ第1搭載表面931aとその裏側の第1搭載裏面931bを有する。第2搭載部932は高さ方向に離間して並ぶ第2搭載表面932aとその裏側の第2搭載裏面932bを有する。第1搭載表面931aが蓋部923に対向する態様で、第1搭載部931が第1内壁面926aに設けられている。第2搭載裏面932bが第1搭載裏面931bに対向する態様で、第2搭載部932が第2内壁面927aに設けられている。
【0099】
さらに第1搭載表面931aにパワーモジュール391とリアクトルケース313aと平滑コンデンサケース321aとセンサユニット700が搭載されている。第2搭載部932の第1ケース910側の第2搭載表面932aにこれまでに説明したDCDCコンバータケース340aとフィルタコンデンサケース311aが搭載されている。なお、パワーモジュール391は第1搭載部931に搭載されていなくもよい。パワーモジュール391は上方環状壁926に固定されていてもよい。
【0100】
図3および
図4に示すようにDCDCコンバータケース340aの高さ方向の高さは、リアクトルケース313aの高さ方向の高さよりも低くなっている。フィルタコンデンサケース311aの高さ方向の高さは、リアクトルケース313aの高さ方向の高さよりも低くなっている。
【0101】
またDCDCコンバータケース340aの第2搭載表面932aへの高さ方向の投影領域が、リアクトルケース313aの第1搭載表面931aへの高さ方向の投影領域よりも大きくなっている。フィルタコンデンサケース311aの第2搭載表面932aへの高さ方向の投影領域が、リアクトルケース313aの第1搭載表面931aへの高さ方向の投影領域よりも小さくなっている。
【0102】
また
図3および
図4に示すようにパワーモジュール391はリアクトルケース313aよりも前後方向で車両の前方側に搭載されている。DCDCコンバータケース340aがフィルタコンデンサケース311aよりも前後方向で車両の前方側に搭載されている。平滑コンデンサケース321aがパワーモジュール391よりも幅方向で車両の右方側に搭載されている。センサユニット700がパワーモジュール391よりも方向で車両の左方側に搭載されている。
【0103】
これまでに説明したように上方環状壁926の第1内壁面926aに第1搭載部931が設けられている。連結部927の第2内壁面927aに第2搭載部932が設けられている。
図3に示すように第1搭載部931と第2搭載部932とが高さ方向に離間して並んでいる。第1搭載部931と第2搭載部932との間に流路933が設けられている。
【0104】
図5に示すように流路933は高さ方向の平面視で略U字形状を成している。そしてその流路933に冷媒が通されている。これによってパワーモジュール391、リアクトルケース313a、平滑コンデンサケース321a、DCDCコンバータケース340a、フィルタコンデンサケース311a、および、センサユニット700それぞれが積極的に冷却されるようになっている。
【0105】
<冷却構造>
上記したように流路933は高さ方向の平面視で略U字形状を成している。流路933は略U字形状に沿って一方向に延びている。そして流路933の一方向の一端に冷媒の供給される供給口933aが形成されている。流路933の一方向の他端に冷媒の排出される排出口933bが形成されている。
【0106】
またこれまでに説明したようにパワーモジュール391に冷却器390が含まれている。冷却器390は
図3および
図4に示すように供給管390a、排出管390c、および、複数の中継管390bを有している。
【0107】
供給管390aと排出管390cは前後方向に向かって延びている。供給管390aと排出管390cは幅方向に離間している。複数の中継管390bそれぞれは供給管390aから排出管390cに向かって幅方向に沿って延びている。
【0108】
図3および
図4に示すように供給管390aと排出管390cの一端が上方環状壁926の外に突出している。供給管390aの一端と、上記した流路933の排出口933bとが図示しない連結管によって連結されている。
【0109】
上記した流路933の供給口933aから冷媒が供給されると、冷媒は流路933を通って排出口933bから排出される。そして排出口933bから排出される冷媒は図示しない連結管を通って冷却器390の供給管390aへと供給される。供給管390aに供給された冷媒は複数の中継管390bを介して排出管390cへと流れる。そして外部へと排出される。
【0110】
<回転電機装置の車両への搭載状態>
図6は、エンジン室10内の構成を外部の障壁Bとともに側面視で概略的に示した図面である。
図6に示される外部の障壁Bは、例えば、コンクリートブロック、鉄塊等によって構成される。
図6では外部の障壁Bが地面Gから所定の高さ離間した位置P1と所定の高さ離間した位置P2との間に設けられている例を示す。
【0111】
これは地面Gから車台までの高さが乗用車に比べて高いトラック等の荷台の後方側かつ地面G側の角との衝突を想定しているためである。
図6に示すように位置P1は下方環状壁925の第1上側部921aよりも高さ方向で車両の上方側に位置している。
【0112】
図7は車両が前方で外部の障壁Bと衝突したときに、外部の障壁Bがエンジン室10内の上方環状壁926に向かって進入してきたときの様子を示す側面図である。上方環状壁926の第1上側部921aは前方での衝突によって上方環状壁926に相対的に近付いてくる外部の障壁Bの最前面とされる衝突ラインLよりも後方に配置されている。
【0113】
これは外部の障壁Bと上方環状壁926の間にフードパネル11や図示しないラジエータ等が配置され、これらが外部からの衝撃を吸収しているためである。そのために上方環状壁926はフードパネル11やラジエータよりも衝撃を受ける可能性が低くなっている。
【0114】
<作用効果>
これまでに説明したように、第2収納空間928の上方環状壁926に囲まれた空間にパワーモジュール391とリアクトルケース313aと平滑コンデンサケース321aとセンサユニット700が収納されている。上方環状壁926の第1上側部921aが前後方向で下方環状壁925の第1上側部921aよりも車両の後方側にずれて配置されている。
【0115】
これによれば、車両が前方で例えばトラックの荷台の角に衝突した際に、荷台の角が上方環状壁926の第1上側部921aに近付いてきたとしても、荷台の角が上方環状壁926の第1上側部921aに当たりにくくなくなっている。そのためにパワーモジュール391などの電気部品に衝撃が加わりにくくなっている。
【0116】
これまでに説明したように第1ケース910と第2ケース920とがブラケットなどを介さずにボルト1000を介して機械的に直接接続されている。これによれば部品点数の増大を抑制するこができるようになっている。
【0117】
パワーモジュール391などの電気部品にかかる衝撃の抑制と部品点数の増大の抑制を両立することができるようになっている。
【0118】
これまでに説明したように上方環状壁926の第1上側部921aは車両の前方での衝突によって上方環状壁926に相対的に近付いてくる外部の障壁Bの最前面とされる衝突ラインLよりも後方に配置されている。
【0119】
これによれば、車両が前方で例えばトラックの荷台の角に衝突した際に、荷台の角が上方環状壁926の第1上側部921aに相対的に近付いてきたとしても、荷台の角が上方環状壁926の第1上側部921aに当たらなくなっている。そのためにパワーモジュール391などの電気部品に衝撃が加わらなくなっている。
【0120】
またトラックの荷台の角は下方環状壁925の第1上側部921aよりも車両上方にあることが想定されるため下方環状壁925にも当たらなくなっている。そのためにDCDCコンバータ340やフィルタコンデンサ311にも衝撃が加わらなくなっている。
【0121】
これまでに説明したように第1搭載表面931aにパワーモジュール391とリアクトルケース313aと平滑コンデンサケース321aとセンサユニット700が搭載されている。第2搭載部932の第2搭載表面932aにDCDCコンバータケース340aとフィルタコンデンサケース311aが搭載されている。
【0122】
DCDCコンバータケース340aの高さ方向の高さは、リアクトルケース313aの高さ方向の高さよりも低くなっている。フィルタコンデンサケース311aの高さ方向の高さは、リアクトルケース313aの高さ方向の高さよりも低くなっている。
【0123】
また第2収納空間928の下方環状壁925に囲まれた空間と第1収納空間915の対向部913よりも第1開口部910a側の空間を併せた空間にDCDCコンバータケース340aとフィルタコンデンサケース311aが収納されている。
【0124】
第1収納空間915の底部911側の空間には回転機400が収納されているために、第1収納空間915の対向部913よりも第1開口部910a側の空間が狭くなっている。しかしながら本実施形態ではこの空間と第2収納空間928の下方環状壁925に囲まれた空間とを併せた空間に積極的にリアクトルケース313aよりも高さの低い低背部品を収納している。
【0125】
さらにDCDCコンバータケース340aの高さ方向の投影領域が、リアクトルケース313aの高さ方向の投影領域よりも大きくなっている。フィルタコンデンサケース311aの高さ方向の投影領域が、リアクトルケース313aの高さ方向の投影領域よりも小さくなっている。
【0126】
これによれば第2収納空間928の下方環状壁925に囲まれた空間と第1収納空間915の対向部913よりも第1開口部910a側の空間を併せた空間に効率的に電気部品を配置しやすくなっている。それに伴ってこの空間にデッドスペースが生じにくくなっている。高さ方向で電気装置300の体格が増大することが抑制されやすくなっている。例えばエンジン室10内のエンジン500の上方の空間にエンジン部品を収納することができるようになっている。
【0127】
これまでに説明したように第1搭載部931と第2搭載部932との間に冷媒の通る流路933が設けられている。これによれば第1搭載部931と第2搭載部932それぞれに搭載される電気部品の冷却効率が向上できるようになっている。
図1に示す電力変換回路に大電流が流れた際に熱くなってしまう各種バスバやフィルタコンデンサ311を積極的に冷却することができるようになっている。
【0128】
(第1変形例)
本実施形態ではパワーモジュール391がリアクトルケース313aよりも第1上側部921a側に設けられる形態を説明した。しかしながら
図8に説明するようにリアクトルケース313aがパワーモジュール391よりも第1上側部921a側に設けられる形態であってもよい。その場合であっても、パワーモジュール391などの電気部品にかかる衝撃の抑制と部品点数の増大の抑制を両立することができるようになっている。
【0129】
(第2変形例)
本実施形態ではDCDCコンバータケース340aとフィルタコンデンサケース311aが第2収納空間928の下方環状壁925に囲まれた空間と第1収納空間915の対向部913よりも第1開口部910a側の空間を併せた空間に収納された形態を説明した。しかしながら図示しないがこの空間にDCDCコンバータケース340aが収納されていなくてもよい。
【0130】
第2ケース920に収納されるリアクトルケース313aと平滑コンデンサケース321aとセンサユニット700とDCDCコンバータケース340aとフィルタコンデンサケース311aそれぞれの配置は限定されない。リアクトルケース313aと平滑コンデンサケース321aとセンサユニット700とDCDCコンバータケース340aとフィルタコンデンサケース311aのすべてが第2ケース920に収納されていなくてもよい。少なくともパワーモジュール391が第2収納空間928の上方環状壁926で囲まれた空間に収納されていればよい。
【0131】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態が本開示に示されているが、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範ちゅうや思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0132】
10…エンジン室、300…電気装置、311…フィルタコンデンサ、313…リアクトル、340…DCDCコンバータ、391…パワーモジュール、400…回転機、410…回転装置、910…第1ケース、911…底部、912…第1環状壁、915…第1収納空間、920…第2ケース、921…第2環状壁、922…区画部、925…下方環状壁、926…上方環状壁、928…第2収納空間