(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】検出装置、制御装置、および制御方法
(51)【国際特許分類】
G01D 5/12 20060101AFI20241112BHJP
H02P 29/00 20160101ALI20241112BHJP
F16H 61/32 20060101ALN20241112BHJP
F16H 63/18 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
G01D5/12 G
H02P29/00
F16H61/32
F16H63/18
(21)【出願番号】P 2021122566
(22)【出願日】2021-07-27
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 大介
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-91208(JP,A)
【文献】特開2021-83196(JP,A)
【文献】特開平11-94512(JP,A)
【文献】特開平8-5312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/38
H02K 11/00-11/40
H02P 6/00-6/34
H02P 29/00
B25J 1/00-21/02
F16H 61/32
F16H 63/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィードバック制御部(17)に制御されるアクチュエータ(2)の回転駆動によって360°を超えて回転可能な対象物(6)の回転角度を特定する検出装置であって、
前記回転角度の変化に応じて変化する第1センサ出力(X1)を出力すると共に、前記回転角度の変化に応じて前記第1センサ出力とは異なる振る舞いで変化する第2センサ出力(X2)を出力するセンサ(7)と、
前記第1センサ出力に応じた第1実角度(θa1)について実現すべき目標値である第1目標角度(θt1)と、前記第2センサ出力に応じた第2実角度(θa2)について実現すべき目標値である第2目標角度(θt2)を算出する目標算出部(10)と、
前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち一方を、前記対象物を駆動するために用いる参照先として選択する選択部(13)と、を備え
、
前記フィードバック制御部は、前記選択部が前記第1センサ出力を選択した場合、前記対象物の前記回転角度を前記第1実角度から前記第1目標角度に近付けるよう前記アクチュエータを制御し、前記選択部が前記第2センサ出力を選択した場合、前記対象物の前記回転角度を前記第2実角度から前記第2目標角度に近付けるよう前記アクチュエータを制御し、
前記第1センサ出力は、前記対象物の前記回転角度に対して360°の周期性を有し、自らの一周期内において、前記回転角度の増大と共に、所定の第1正常範囲において増大または減少し、前記第1正常範囲から外れた第1遷移範囲を経ることで前記第1正常範囲とは異なる増減方向に変化し、
前記第2センサ出力は、前記対象物の前記回転角度に対して360°の周期性を有し、自らの一周期内において、前記回転角度の増大と共に、所定の第2正常範囲において増大または減少し、前記第2正常範囲から外れた第2遷移範囲を経ることで前記第2正常範囲とは異なる増減方向に変化し、
前記第1遷移範囲と前記第2遷移範囲とは離れており、
前記選択部は、前記第1実角度と前記第1目標角度との差である第1角度偏差(Δθ1)の絶対値が小さいほど前記参照先として前記第1センサ出力を選択し易くなっており、前記第1角度偏差の絶対値が大きいほど前記参照先として前記第2センサ出力を選択し易くなっている
ことで、前記アクチュエータが前記対象物を実際とは逆の回転で実際より広い角度範囲を回転させるのを回避する、検出装置。
【請求項2】
前記選択部は、前記第1角度偏差と、前記第2目標角度に対する前記第2実角度の差である第2角度偏差(Δθ2)と、に基づいて、前記第1角度偏差の絶対値が前記第2角度偏差の絶対値より大きい場合に前記第2センサ出力を前記参照先として選択し、前記第2角度偏差の絶対値が前記第1角度偏差の絶対値より大きい場合に前記第1センサ出力を前記参照先として選択する、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記選択部は、前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち一方を前記参照先として選択する処理を、繰り返し行い、
前記選択部は、前記第1角度偏差の絶対値が前記第2角度偏差の絶対値より大きく、かつ前記第1角度偏差の絶対値の前記第2角度偏差の絶対値に対する差が閾値(P2)より大きい場合に、前記第2センサ出力を前記参照先として選択し、前記第1角度偏差の絶対値が前記第2角度偏差の絶対値より大きく、かつ前記第1角度偏差の絶対値の前記第2角度偏差の絶対値に対する差が前記閾値より小さい場合に、前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち、前回選択していた方を前記参照先として選択する、請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
360°を超えて回転可能な対象物(6)の回転角度を特定する検出装置であって、
前記回転角度の変化に応じて変化する第1センサ出力(X1)を出力すると共に、前記回転角度の変化に応じて前記第1センサ出力とは異なる振る舞いで変化する第2センサ出力(X2)を出力するセンサ(7)と、
前記第1センサ出力に応じた第1実角度(θa1)について実現すべき目標値である第1目標角度(θt1)と、前記第2センサ出力に応じた第2実角度(θa2)について実現すべき目標値である第2目標角度(θt2)を算出する目標算出部(10)と、
前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち一方を、前記対象物を駆動するために用いる参照先として選択する選択部(13)と、を備え、
前記第1センサ出力は、前記対象物の前記回転角度に対して360°の周期性を有し、自らの一周期内において、前記回転角度の増大と共に、所定の第1正常範囲において増大または減少し、前記第1正常範囲から外れた第1遷移範囲を経ることで前記第1正常範囲とは異なる増減方向に変化し、
前記第2センサ出力は、前記対象物の前記回転角度に対して360°の周期性を有し、自らの一周期内において、前記回転角度の増大と共に、所定の第2正常範囲において増大または減少し、前記第2正常範囲から外れた第2遷移範囲を経ることで前記第2正常範囲とは異なる増減方向に変化し、
前記第1遷移範囲と前記第2遷移範囲とは離れており、
前記選択部は、前記第1実角度と前記第1目標角度との差である第1角度偏差(Δθ1)の絶対値が小さいほど前記参照先として前記第1センサ出力を選択し易くなっており、前記第1角度偏差の絶対値が大きいほど前記参照先として前記第2センサ出力を選択し易くなって
おり、
前記選択部は、前記第1角度偏差と、前記第2目標角度に対する前記第2実角度の差である第2角度偏差(Δθ2)と、に基づいて、前記第1角度偏差の絶対値が前記第2角度偏差の絶対値より大きい場合に前記第2センサ出力を前記参照先として選択し、前記第2角度偏差の絶対値が前記第1角度偏差の絶対値より大きい場合に前記第1センサ出力を前記参照先として選択し、
前記選択部は、前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち一方を前記参照先として選択する処理を、繰り返し行い、
前記選択部は、前記第1角度偏差の絶対値が前記第2角度偏差の絶対値より大きく、かつ前記第1角度偏差の絶対値の前記第2角度偏差の絶対値に対する差が閾値(P2)より大きい場合に、前記第2センサ出力を前記参照先として選択し、前記第1角度偏差の絶対値が前記第2角度偏差の絶対値より大きく、かつ前記第1角度偏差の絶対値の前記第2角度偏差の絶対値に対する差が前記閾値より小さい場合に、前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち、前回選択していた方を前記参照先として選択する、検出装置。
【請求項5】
360°を超えて回転可能な対象物(6)を回転させるアクチュエータ(2)を制御する制御装置であって、
前記対象物の回転角度の変化に応じて変化する第1センサ出力(X1)を出力すると共に、前記回転角度の変化に応じて前記第1センサ出力とは異なる振る舞いで変化する第2センサ出力(X2)を出力するセンサ(7)と、
前記第1センサ出力に応じた第1実角度(θa1)について実現すべき目標値である第1目標角度(θt1)と、前記第2センサ出力に応じた第2実角度(θa2)について実現すべき目標値である第2目標角度(θt2)を算出する目標算出部(10)と、
前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち一方を、前記対象物を駆動するために用いる参照先として選択する選択部(13)と、
前記選択部が前記第1センサ出力を選択した場合、前記対象物の前記回転角度を前記第1実角度から前記第1目標角度に近付けるよう前記アクチュエータを制御し、前記選択部が前記第2センサ出力を選択した場合、前記対象物の前記回転角度を前記第2実角度から前記第2目標角度に近付けるよう前記アクチュエータを制御するフィードバック制御部(17)と、を備え、
前記第1センサ出力は、前記対象物の前記回転角度に対して360°の周期性を有し、自らの一周期内において、前記回転角度の増大と共に、所定の第1正常範囲において増大または減少し、前記第1正常範囲から外れた第1遷移範囲を経ることで前記第1正常範囲とは異なる増減方向に変化し、
前記第2センサ出力は、前記対象物の前記回転角度に対して360°の周期性を有し、自らの一周期内において、前記回転角度の増大と共に、所定の第2正常範囲において増大または減少し、前記第2正常範囲から外れた第2遷移範囲を経ることで前記第2正常範囲とは異なる増減方向に変化し、
前記第1遷移範囲と前記第2遷移範囲とは離れており、
前記選択部は、前記第1実角度と前記第1目標角度との差である第1角度偏差(Δθ1)の絶対値が小さいほど前記参照先として前記第1センサ出力を選択し易くなっており、前記第1角度偏差の絶対値が大きいほど前記参照先として前記第2センサ出力を選択し易くなっている
ことで、前記アクチュエータが前記対象物を実際とは逆の回転で実際より広い角度範囲を回転させるのを回避する、制御装置。
【請求項6】
360°を超えて回転可能な対象物(6)を回転させるアクチュエータ(2)を制御する制御装置であって、
前記対象物の回転角度の変化に応じて変化する第1センサ出力(X1)を出力すると共に、前記回転角度の変化に応じて前記第1センサ出力とは異なる振る舞いで変化する第2センサ出力(X2)を出力するセンサ(7)と、
前記第1センサ出力に応じた第1実角度(θa1)について実現すべき目標値である第1目標角度(θt1)と、前記第2センサ出力に応じた第2実角度(θa2)について実現すべき目標値である第2目標角度(θt2)を算出する目標算出部(10)と、
前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち一方を、前記対象物を駆動するために用いる参照先として選択する選択部(13)と、
前記選択部が前記第1センサ出力を選択した場合、前記対象物の前記回転角度を前記第1実角度から前記第1目標角度に近付けるよう前記アクチュエータを制御し、前記選択部が前記第2センサ出力を選択した場合、前記対象物の前記回転角度を前記第2実角度から前記第2目標角度に近付けるよう前記アクチュエータを制御するフィードバック制御部(17)と、を備え、
前記第1センサ出力は、前記対象物の前記回転角度に対して360°の周期性を有し、自らの一周期内において、前記回転角度の増大と共に、所定の第1正常範囲において増大または減少し、前記第1正常範囲から外れた第1遷移範囲を経ることで前記第1正常範囲とは異なる増減方向に変化し、
前記第2センサ出力は、前記対象物の前記回転角度に対して360°の周期性を有し、自らの一周期内において、前記回転角度の増大と共に、所定の第2正常範囲において増大または減少し、前記第2正常範囲から外れた第2遷移範囲を経ることで前記第2正常範囲とは異なる増減方向に変化し、
前記第1遷移範囲と前記第2遷移範囲とは離れており、
前記選択部は、前記第1実角度と前記第1目標角度との差である第1角度偏差(Δθ1)の絶対値が小さいほど前記参照先として前記第1センサ出力を選択し易くなっており、前記第1角度偏差の絶対値が大きいほど前記参照先として前記第2センサ出力を選択し易くなって
おり、
前記選択部は、前記第1角度偏差と、前記第2目標角度に対する前記第2実角度の差である第2角度偏差(Δθ2)と、に基づいて、前記第1角度偏差の絶対値が前記第2角度偏差の絶対値より大きい場合に前記第2センサ出力を前記参照先として選択し、前記第2角度偏差の絶対値が前記第1角度偏差の絶対値より大きい場合に前記第1センサ出力を前記参照先として選択し、
前記選択部は、前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち一方を前記参照先として選択する処理を、繰り返し行い、
前記選択部は、前記第1角度偏差の絶対値が前記第2角度偏差の絶対値より大きく、かつ前記第1角度偏差の絶対値の前記第2角度偏差の絶対値に対する差が閾値(P2)より大きい場合に、前記第2センサ出力を前記参照先として選択し、前記第1角度偏差の絶対値が前記第2角度偏差の絶対値より大きく、かつ前記第1角度偏差の絶対値の前記第2角度偏差の絶対値に対する差が前記閾値より小さい場合に、前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち、前回選択していた方を前記参照先として選択する、制御装置。
【請求項7】
360°を超えて回転可能な対象物(6)を回転させるアクチュエータ(2)を制御する制御方法であって、
前記対象物の回転角度の変化に応じて変化する第1センサ出力(X1)を出力すると共に、前記回転角度の変化に応じて前記第1センサ出力とは異なる振る舞いで変化する第2センサ出力(X2)を出力するセンサ(7)から、前記第1センサ出力と前記第2センサ出力を取得し、前記第1センサ出力に応じた第1実角度(θa1)について実現すべき目標値である第1目標角度(θt1)と、前記第2センサ出力に応じた第2実角度(θa2)について実現すべき目標値である第2目標角度(θt2)を算出すること(10)と、
前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち一方を、前記対象物を駆動するために用いる参照先として選択すること(13)と、
前記選択することにおいて、前記第1センサ出力を選択した場合、前記対象物の前記回転角度を前記第1実角度から前記第1目標角度に近付けるよう前記アクチュエータを制御し、前記選択することにおいて
、前記第2センサ出力を選択した場合、前記対象物の前記回転角度を前記第2実角度から前記第2目標角度に近付けるよう前記アクチュエータを制御すること(17)と、を備え
前記第1センサ出力は、前記対象物の前記回転角度に対して360°の周期性を有し、自らの一周期内において、前記回転角度の増大と共に、所定の第1正常範囲において増大または減少し、前記第1正常範囲から外れた第1遷移範囲を経ることで前記第1正常範囲とは異なる増減方向に変化し、
前記第2センサ出力は、前記対象物の前記回転角度に対して360°の周期性を有し、自らの一周期内において、前記回転角度の増大と共に、所定の第2正常範囲において増大または減少し、前記第2正常範囲から外れた第2遷移範囲を経ることで前記第2正常範囲とは異なる増減方向に変化し、
前記第1遷移範囲と前記第2遷移範囲とは離れており、
前記選択することにおいては、前記第1実角度と前記第1目標角度との差である第1角度偏差(Δθ1)の絶対値が小さいほど前記参照先として前記第1センサ出力を選択し易くなっており、前記第1角度偏差の絶対値が大きいほど前記参照先として前記第2センサ
出力を選択し易くなっていることで、前記アクチュエータが前記対象物を実際とは逆の回
転で実際より広い角度範囲を回転させるのを回避する、制御方法。
【請求項8】
360°を超えて回転可能な対象物(6)を回転させるアクチュエータ(2)を制御する制御方法であって、
前記対象物の回転角度の変化に応じて変化する
第1センサ出力(X1)を出力すると共に、前記回転角度の変化に応じて前記第1センサ出力とは異なる振る舞いで変化する第2センサ出力(X2)を出力するセンサ(7)から、前記第1センサ出力と前記第2センサ出力を取得し、前記第1センサ出力に応じた第1実角度(θa1)について実現すべき目標値である第1目標角度(θt1)と、前記第2センサ出力に応じた第2実角度(θa2)について実現すべき目標値である第2目標角度(θt2)を算出すること(10)と、
前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち一方を、前記対象物を駆動するために用いる参照先として選択すること(13)と、
前記選択することにおいて、前記第1センサ出力を選択した場合、前記対象物の前記回転角度を前記第1実角度から前記第1目標角度に近付けるよう前記アクチュエータを制御し、前記選択することにおいて
、前記第2センサ出力を選択した場合、前記対象物の前記回転角度を前記第2実角度から前記第2目標角度に近付けるよう前記アクチュエータを制御すること(17)と、を備え
前記第1センサ出力は、前記対象物の前記回転角度に対して360°の周期性を有し、自らの一周期内において、前記回転角度の増大と共に、所定の第1正常範囲において増大または減少し、前記第1正常範囲から外れた第1遷移範囲を経ることで前記第1正常範囲とは異なる増減方向に変化し、
前記第2センサ出力は、前記対象物の前記回転角度に対して360°の周期性を有し、自らの一周期内において、前記回転角度の増大と共に、所定の第2正常範囲において増大または減少し、前記第2正常範囲から外れた第2遷移範囲を経ることで前記第2正常範囲とは異なる増減方向に変化し、
前記第1遷移範囲と前記第2遷移範囲とは離れており、
前記選択することにおいては、前記第1実角度と前記第1目標角度との差である第1角度偏差(Δθ1)の絶対値が小さいほど前記参照先として前記第1センサ出力を選択し易くなっており、前記第1角度偏差の絶対値が大きいほど前記参照先として前記第2センサ出力を選択し易くなっており、
前記選択することにおいては、前記第1角度偏差と、前記第2目標角度に対する前記第2実角度の差である第2角度偏差(Δθ2)と、に基づいて、前記第1角度偏差の絶対値が前記第2角度偏差の絶対値より大きい場合に前記第2センサ出力を前記参照先として選択し、前記第2角度偏差の絶対値が前記第1角度偏差の絶対値より大きい場合に前記第1センサ出力を前記参照先として選択し、
前記選択することにおいては、前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち一方を前記参照先として選択する処理を、繰り返し行い、
前記選択することにおいては、前記第1角度偏差の絶対値が前記第2角度偏差の絶対値より大きく、かつ前記第1角度偏差の絶対値の前記第2角度偏差の絶対値に対する差が閾値(P2)より大きい場合に、前記第2センサ出力を前記参照先として選択し、前記第1角度偏差の絶対値が前記第2角度偏差の絶対値より大きく、かつ前記第1角度偏差の絶対値の前記第2角度偏差の絶対値に対する差が前記閾値より小さい場合に、前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち、前回選択していた方を前記参照先として選択する、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置、制御装置、および制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アクチュエータにより駆動される対象物の回転角度を目標に近づけるようにアクチュエータをフィードバック制御する制御装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のセンサでも、対象物が360°を超えて回転する場合には、ホールICの感磁面を通過する磁束の向きが逆向きになる場所でセンサの変化量が逆になる範囲が生じる。以下、このような範囲を遷移範囲という。
【0005】
特許文献1に記載のセンサに限らず、一般に、対象物の角度を検出するセンサの出力は、遷移範囲を有している。また、一般に、アクチュエータのフィードバック制御では、対象物を目標まで回転させるため、センサで検出された現在の角度を目標角度に近づける方向に、対象物を回転させる。
【0006】
例えば、360°を中心とする2°の範囲が遷移範囲であり、センサで検出された現在の角度が350°であり、目標の回転角度が30°に設定されたとする。その場合、対象物がセンサで検出される角度を350°から30°まで徐々に低下させる方向に回転するよう、制御が行われてしまう。すなわち、320°もの広い角度範囲の回転が行われてしまう。しかし、遷移範囲を通って350°から30°まで40°の狭い角度範囲で回転することが、実際には望ましい。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、対象物を回転させるフィードバック制御において、対象物が不必要に広い角度範囲を回転してしまう可能性を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、フィードバック制御部(17)に制御されるアクチュエータ(2)の回転駆動によって360°を超えて回転可能な対象物(6)の回転角度を特定する検出装置であって、
前記回転角度の変化に応じて変化する第1センサ出力(X1)を出力すると共に、前記回転角度の変化に応じて前記第1センサ出力とは異なる振る舞いで変化する第2センサ出力(X2)を出力するセンサ(7)と、
前記第1センサ出力に応じた第1実角度(θa1)について実現すべき目標値である第1目標角度(θt1)と、前記第2センサ出力に応じた第2実角度(θa2)について実現すべき目標値である第2目標角度(θt2)を算出する目標算出部(10)と、
前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち一方を、前記対象物を駆動するために用いる参照先として選択する選択部(13)と、を備え、
前記フィードバック制御部は、前記選択部が前記第1センサ出力を選択した場合、前記対象物の前記回転角度を前記第1実角度から前記第1目標角度に近付けるよう前記アクチュエータを制御し、前記選択部が前記第2センサ出力を選択した場合、前記対象物の前記回転角度を前記第2実角度から前記第2目標角度に近付けるよう前記アクチュエータを制御し、
前記第1センサ出力は、前記対象物の前記回転角度に対して360°の周期性を有し、自らの一周期内において、前記回転角度の増大と共に、所定の第1正常範囲において増大または減少し、前記第1正常範囲から外れた第1遷移範囲を経ることで前記第1正常範囲とは異なる増減方向に変化し、
前記第2センサ出力は、前記対象物の前記回転角度に対して360°の周期性を有し、自らの一周期内において、前記回転角度の増大と共に、所定の第2正常範囲において増大または減少し、前記第2正常範囲から外れた第2遷移範囲を経ることで前記第2正常範囲とは異なる増減方向に変化し、
前記第1遷移範囲と前記第2遷移範囲とは離れており、
前記選択部は、前記第1実角度と前記第1目標角度との差である第1角度偏差(Δθ1)が小さいほど前記参照先として前記第1センサ出力を選択し易くなっており、前記第1角度偏差が大きいほど前記参照先として前記第2センサ出力を選択し易くなっていることで、前記アクチュエータが前記対象物を実際とは逆の回転で実際より広い角度範囲を回転させるのを回避する、検出装置である。
また、請求項4に記載の発明は、360°を超えて回転可能な対象物(6)の回転角度を特定する検出装置であって、
前記回転角度の変化に応じて変化する第1センサ出力(X1)を出力すると共に、前記回転角度の変化に応じて前記第1センサ出力とは異なる振る舞いで変化する第2センサ出力(X2)を出力するセンサ(7)と、
前記第1センサ出力に応じた第1実角度(θa1)について実現すべき目標値である第1目標角度(θt1)と、前記第2センサ出力に応じた第2実角度(θa2)について実現すべき目標値である第2目標角度(θt2)を算出する目標算出部(10)と、
前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち一方を、前記対象物を駆動するために用いる参照先として選択する選択部(13)と、を備え、
前記第1センサ出力は、前記対象物の前記回転角度に対して360°の周期性を有し、自らの一周期内において、前記回転角度の増大と共に、所定の第1正常範囲において増大または減少し、前記第1正常範囲から外れた第1遷移範囲を経ることで前記第1正常範囲とは異なる増減方向に変化し、
前記第2センサ出力は、前記対象物の前記回転角度に対して360°の周期性を有し、自らの一周期内において、前記回転角度の増大と共に、所定の第2正常範囲において増大または減少し、前記第2正常範囲から外れた第2遷移範囲を経ることで前記第2正常範囲とは異なる増減方向に変化し、
前記第1遷移範囲と前記第2遷移範囲とは離れており、
前記選択部は、前記第1実角度と前記第1目標角度との差である第1角度偏差(Δθ1)の絶対値が小さいほど前記参照先として前記第1センサ出力を選択し易くなっており、前記第1角度偏差の絶対値が大きいほど前記参照先として前記第2センサ出力を選択し易くなっており、
前記選択部は、前記第1角度偏差と、前記第2目標角度に対する前記第2実角度の差である第2角度偏差(Δθ2)と、に基づいて、前記第1角度偏差の絶対値が前記第2角度偏差の絶対値より大きい場合に前記第2センサ出力を前記参照先として選択し、前記第2角度偏差の絶対値が前記第1角度偏差の絶対値より大きい場合に前記第1センサ出力を前記参照先として選択し、
前記選択部は、前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち一方を前記参照先として選択する処理を、繰り返し行い、
前記選択部は、前記第1角度偏差の絶対値が前記第2角度偏差の絶対値より大きく、かつ前記第1角度偏差の絶対値の前記第2角度偏差の絶対値に対する差が閾値(P2)より大きい場合に、前記第2センサ出力を前記参照先として選択し、前記第1角度偏差の絶対値が前記第2角度偏差の絶対値より大きく、かつ前記第1角度偏差の絶対値の前記第2角度偏差の絶対値に対する差が前記閾値より小さい場合に、前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち、前回選択していた方を前記参照先として選択する、検出装置である。
【0009】
また、請求項5に記載の発明は、360°を超えて回転可能な対象物(6)を回転させるアクチュエータ(2)を制御する制御装置であって、
前記対象物の回転角度の変化に応じて変化する第1センサ出力(X1)を出力すると共に、前記回転角度の変化に応じて前記第1センサ出力とは異なる振る舞いで変化する第2センサ出力(X2)を出力するセンサ(7)と、
前記第1センサ出力に応じた第1実角度(θa1)について実現すべき目標値である第1目標角度(θt1)と、前記第2センサ出力に応じた第2実角度(θa2)について実現すべき目標値である第2目標角度(θt2)を算出する目標算出部(10)と、
前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち一方を、前記対象物を駆動するために用いる参照先として選択する選択部(13)と、
前記選択部が第1センサ出力を選択した場合、前記対象物の回転角度を前記第1実角度から前記第1目標角度に近付けるよう前記アクチュエータを制御し、前記選択部が第2センサ出力を選択した場合、前記対象物の回転角度を前記第2実角度から前記第2目標角度に近付けるよう前記アクチュエータを制御するフィードバック制御部(17)と、を備え、
前記第1センサ出力は、前記対象物の前記回転角度に対して360°の周期性を有し、自らの一周期内において、前記回転角度の増大と共に、所定の第1正常範囲において増大または減少し、前記第1正常範囲から外れた第1遷移範囲を経ることで前記第1正常範囲とは異なる増減方向に変化し、
前記第2センサ出力は、前記対象物の前記回転角度に対して360°の周期性を有し、自らの一周期内において、前記回転角度の増大と共に、所定の第2正常範囲において増大または減少し、前記第2正常範囲から外れた第2遷移範囲を経ることで前記第2正常範囲とは異なる増減方向に変化し、
前記第1遷移範囲と前記第2遷移範囲とは離れており、
前記選択部は、前記第1実角度と前記第1目標角度との差である第1角度偏差(Δθ1)が小さいほど前記参照先として前記第1センサ出力を選択し易くなっており、前記第1角度偏差が大きいほど前記参照先として前記第2センサ出力を選択し易くなっていることで、前記アクチュエータが前記対象物を実際とは逆の回転で実際より広い角度範囲を回転させるのを回避する、制御装置である。
また、請求項6に記載の発明は、360°を超えて回転可能な対象物(6)を回転させるアクチュエータ(2)を制御する制御装置であって、
前記対象物の回転角度の変化に応じて変化する第1センサ出力(X1)を出力すると共に、前記回転角度の変化に応じて前記第1センサ出力とは異なる振る舞いで変化する第2センサ出力(X2)を出力するセンサ(7)と、
前記第1センサ出力に応じた第1実角度(θa1)について実現すべき目標値である第1目標角度(θt1)と、前記第2センサ出力に応じた第2実角度(θa2)について実現すべき目標値である第2目標角度(θt2)を算出する目標算出部(10)と、
前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち一方を、前記対象物を駆動するために用いる参照先として選択する選択部(13)と、
前記選択部が前記第1センサ出力を選択した場合、前記対象物の前記回転角度を前記第1実角度から前記第1目標角度に近付けるよう前記アクチュエータを制御し、前記選択部が前記第2センサ出力を選択した場合、前記対象物の前記回転角度を前記第2実角度から前記第2目標角度に近付けるよう前記アクチュエータを制御するフィードバック制御部(17)と、を備え、
前記第1センサ出力は、前記対象物の前記回転角度に対して360°の周期性を有し、自らの一周期内において、前記回転角度の増大と共に、所定の第1正常範囲において増大または減少し、前記第1正常範囲から外れた第1遷移範囲を経ることで前記第1正常範囲とは異なる増減方向に変化し、
前記第2センサ出力は、前記対象物の前記回転角度に対して360°の周期性を有し、自らの一周期内において、前記回転角度の増大と共に、所定の第2正常範囲において増大または減少し、前記第2正常範囲から外れた第2遷移範囲を経ることで前記第2正常範囲とは異なる増減方向に変化し、
前記第1遷移範囲と前記第2遷移範囲とは離れており、
前記選択部は、前記第1実角度と前記第1目標角度との差である第1角度偏差(Δθ1)の絶対値が小さいほど前記参照先として前記第1センサ出力を選択し易くなっており、前記第1角度偏差の絶対値が大きいほど前記参照先として前記第2センサ出力を選択し易くなっており、
前記選択部は、前記第1角度偏差と、前記第2目標角度に対する前記第2実角度の差である第2角度偏差(Δθ2)と、に基づいて、前記第1角度偏差の絶対値が前記第2角度偏差の絶対値より大きい場合に前記第2センサ出力を前記参照先として選択し、前記第2角度偏差の絶対値が前記第1角度偏差の絶対値より大きい場合に前記第1センサ出力を前記参照先として選択し、
前記選択部は、前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち一方を前記参照先として選択する処理を、繰り返し行い、
前記選択部は、前記第1角度偏差の絶対値が前記第2角度偏差の絶対値より大きく、かつ前記第1角度偏差の絶対値の前記第2角度偏差の絶対値に対する差が閾値(P2)より大きい場合に、前記第2センサ出力を前記参照先として選択し、前記第1角度偏差の絶対値が前記第2角度偏差の絶対値より大きく、かつ前記第1角度偏差の絶対値の前記第2角度偏差の絶対値に対する差が前記閾値より小さい場合に、前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち、前回選択していた方を前記参照先として選択する、制御装置である。
【0010】
また、請求項7に記載の発明は、360°を超えて回転可能な対象物(6)を回転させるアクチュエータ(2)を制御する制御方法であって、
前記対象物の回転角度の変化に応じて変化する第1センサ出力(X1)を出力すると共に、前記回転角度の変化に応じて前記第1センサ出力とは異なる振る舞いで変化する第2センサ出力(X2)を出力するセンサ(7)から、前記第1センサ出力と前記第2センサ出力を取得し、前記第1センサ出力に応じた第1実角度(θa1)について実現すべき目標値である第1目標角度(θt1)と、前記第2センサ出力に応じた第2実角度(θa2)について実現すべき目標値である第2目標角度(θt2)を算出すること(10)と、
前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち一方を、前記対象物を駆動するために用いる参照先として選択すること(13)と、
前記選択することにおいて、第1センサ出力を選択した場合、前記対象物の回転角度を前記第1実角度から前記第1目標角度に近付けるよう前記アクチュエータを制御し、前記選択することにおいて、第2センサ出力を選択した場合、前記対象物の回転角度を前記第2実角度から前記第2目標角度に近付けるよう前記アクチュエータを制御すること(17)と、を備え
前記第1センサ出力は、前記対象物の前記回転角度に対して360°の周期性を有し、自らの一周期内において、前記回転角度の増大と共に、所定の第1正常範囲において増大または減少し、前記第1正常範囲から外れた第1遷移範囲を経ることで前記第1正常範囲とは異なる増減方向に変化し、
前記第2センサ出力は、前記対象物の前記回転角度に対して360°の周期性を有し、自らの一周期内において、前記回転角度の増大と共に、所定の第2正常範囲において増大または減少し、前記第2正常範囲から外れた第2遷移範囲を経ることで前記第2正常範囲とは異なる増減方向に変化し、
前記第1遷移範囲と前記第2遷移範囲とは離れており、
前記選択することにおいては、前記第1実角度と前記第1目標角度との差である第1角度偏差(Δθ1)が小さいほど前記参照先として前記第1センサ出力を選択し易くなっており、前記第1角度偏差が大きいほど前記参照先として前記第2センサ出力を選択し易くなっていることで、前記アクチュエータが前記対象物を実際とは逆の回転で実際より広い角度範囲を回転させるのを回避する、制御方法である。
また、請求項8に記載の発明は、360°を超えて回転可能な対象物(6)を回転させるアクチュエータ(2)を制御する制御方法であって、
前記対象物の回転角度の変化に応じて変化する第1センサ出力(X1)を出力すると共に、前記回転角度の変化に応じて前記第1センサ出力とは異なる振る舞いで変化する第2センサ出力(X2)を出力するセンサ(7)から、前記第1センサ出力と前記第2センサ出力を取得し、前記第1センサ出力に応じた第1実角度(θa1)について実現すべき目標値である第1目標角度(θt1)と、前記第2センサ出力に応じた第2実角度(θa2)について実現すべき目標値である第2目標角度(θt2)を算出すること(10)と、
前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち一方を、前記対象物を駆動するために用いる参照先として選択すること(13)と、
前記選択することにおいて、前記第1センサ出力を選択した場合、前記対象物の前記回転角度を前記第1実角度から前記第1目標角度に近付けるよう前記アクチュエータを制御し、前記選択することにおいて、前記第2センサ出力を選択した場合、前記対象物の前記回転角度を前記第2実角度から前記第2目標角度に近付けるよう前記アクチュエータを制御すること(17)と、を備え
前記第1センサ出力は、前記対象物の前記回転角度に対して360°の周期性を有し、自らの一周期内において、前記回転角度の増大と共に、所定の第1正常範囲において増大または減少し、前記第1正常範囲から外れた第1遷移範囲を経ることで前記第1正常範囲とは異なる増減方向に変化し、
前記第2センサ出力は、前記対象物の前記回転角度に対して360°の周期性を有し、自らの一周期内において、前記回転角度の増大と共に、所定の第2正常範囲において増大または減少し、前記第2正常範囲から外れた第2遷移範囲を経ることで前記第2正常範囲とは異なる増減方向に変化し、
前記第1遷移範囲と前記第2遷移範囲とは離れており、
前記選択することにおいては、前記第1実角度と前記第1目標角度との差である第1角度偏差(Δθ1)の絶対値が小さいほど前記参照先として前記第1センサ出力を選択し易くなっており、前記第1角度偏差の絶対値が大きいほど前記参照先として前記第2センサ出力を選択し易くなっており、
前記選択することにおいては、前記第1角度偏差と、前記第2目標角度に対する前記第2実角度の差である第2角度偏差(Δθ2)と、に基づいて、前記第1角度偏差の絶対値が前記第2角度偏差の絶対値より大きい場合に前記第2センサ出力を前記参照先として選択し、前記第2角度偏差の絶対値が前記第1角度偏差の絶対値より大きい場合に前記第1センサ出力を前記参照先として選択し、
前記選択することにおいては、前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち一方を前記参照先として選択する処理を、繰り返し行い、
前記選択することにおいては、前記第1角度偏差の絶対値が前記第2角度偏差の絶対値より大きく、かつ前記第1角度偏差の絶対値の前記第2角度偏差の絶対値に対する差が閾値(P2)より大きい場合に、前記第2センサ出力を前記参照先として選択し、前記第1角度偏差の絶対値が前記第2角度偏差の絶対値より大きく、かつ前記第1角度偏差の絶対値の前記第2角度偏差の絶対値に対する差が前記閾値より小さい場合に、前記第1センサ出力と前記第2センサ出力のうち、前回選択していた方を前記参照先として選択する、制御方法である。
【0011】
このように、選択部は、第1角度偏差が小さいほど参照先として第1センサ出力を選択し易くなっており、第1角度偏差が大きいほど参照先として第2センサ出力を選択し易くなっている。したがって、対象物6が第1遷移範囲を避けることによって意図に反して不必要に広い角度範囲を回転してしまう可能性は、第1角度偏差が大きいほど高い。したがって、上記のようにすることで、対象物が不必要に広い角度範囲を回転してしまう可能性を低減することができる。
【0012】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る機械システムの模式的構成図である。
【
図4】第1ホールICの演算部の処理内容を示す図である。
【
図5】第2ホールICの演算部の処理内容を示す図である。
【
図6】第1センサ出力、第2センサ出力の回転角度に応じた振る舞いを示す図である。
【
図8】選択部の処理内容を示すフローチャートである。
【
図9】各種量の経時的な振る舞いの事例を示す図である。
【
図10】各種量の経時的な振る舞いの事例を示す図である。
【
図11】第2実施形態における第1センサ出力、第2センサ出力の回転角度に応じた振る舞いを示す図である。
【
図12】選択部の処理内容を示すフローチャートである。
【
図13】第3実施形態における第1センサ出力、第2センサ出力の回転角度に応じた振る舞いを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態における回転システムは、
図1に示すように、ECU1、アクチュエータ2、モータギヤ3、中間ギヤ4、出力ギヤ5、対象物6、センサ7を有している。
【0015】
ECU1は、処理回路、不揮発性記憶媒体、揮発性記憶媒体等を備える装置であって、例えばマイクロコンピュータによって実現可能である。処理回路は、不揮発性記憶媒体に記録されたプログラムを実行することで後述する各種処理を実現し、その処理において、揮発性記憶媒体を作業領域として用い、センサ7から後述するセンサ出力を取得し、アクチュエータ2を制御する。ECU1の不揮発性記憶媒体、揮発性記憶媒体は、いずれも非遷移的実体的記録媒体であり、例えば、半導体メモリである。
【0016】
アクチュエータ2は、ECU1からの制御に従ってモータギヤ3を回転駆動する装置であり、例えば、電動モータである。アクチュエータ2の出力軸が回転することで、モータギヤ3が回転する。
【0017】
モータギヤ3は、中心軸と歯車とを備えている。中心軸はアクチュエータ2の出力軸に接続されて出力軸の回転トルクが伝達されることで回転する。歯車は中心軸に固定されることで、中心軸と一体に、中心軸を軸として、回転する。歯車の外周は円環状であって、外歯が形成されている。
【0018】
中間ギヤ4の外周は円環状であって、外歯が形成されている。この外歯は、モータギヤ3の外歯と噛み合う。この噛み合いにより、モータギヤ3の回転と同期して、中間ギヤ4が回転する。
【0019】
出力ギヤ5は、伝達軸と歯車とを備えている。歯車の外周は円環状であって、外歯が形成されている。この外歯は、中間ギヤ4の外歯と噛み合う。この噛み合いにより、中間ギヤ4の回転と同期して、出力ギヤ5の歯車が回転する。伝達軸は歯車に固定されることで歯車と一体に、当該伝達軸を軸として、回転する。伝達軸は、対象物6に接続されている。
【0020】
対象物6は、出力ギヤ5の伝達軸に接続され、当該伝達軸から回転トルクが伝達されることで、当該出力軸を中心軸として回転する。対象物6は、正方向6aにも負方向6bにも360°を超える角度で回転可能である。対象物6は、例えば、車両のトランスミッションに用いられるシフトドラムであってもよい。ただし、対象物6は、シフトドラムに限るものでなく、正方向にも負方向にも360°を超える角度回転可能な(すなわち、周回する)種々の物であってもよい。
【0021】
アクチュエータ2が作動して回転トルクを発生させると、その回転トルクは、アクチュエータ2の出力軸からモータギヤ3、中間ギヤ4、出力ギヤ5の順に伝達され、更に出力ギヤ5の伝達軸から対象物6に伝達される。これにより、アクチュエータ2の駆動により対象物が回転する。アクチュエータ2の出力軸が正方向に回転すると、対象物6も正方向6aに回転し、アクチュエータ2の出力軸が負方向に回転すると、対象物6も負方向6bに回転する。
【0022】
センサ7は、
図1、
図2に示すように、第1ホールIC71、第2ホールIC72、第1ヨーク73、第2ヨーク74、第1磁石75、第2磁石76を有している。第1ヨーク73、第2ヨーク74、第1磁石75、第2磁石76は、出力ギヤ5と接続されることで、出力ギヤ5と同期して一体的に回転する。
【0023】
第1ホールIC71、第2ホールIC72は、第1ヨーク73、第2ヨーク74、第1磁石75、第2磁石76に囲まれた位置に配置される。
図3に示すように、モータギヤ3、中間ギヤ4、出力ギヤ5が回転し、出力ギヤ5と同期して第1ヨーク73、第2ヨーク74、第1磁石75、第2磁石76が回転しても、第1ホールIC71、第2ホールIC72は回転せず、姿勢が変化しない。したがって、出力ギヤ5および対象物6の回転により、第1ホールIC71、第2ホールIC72を貫く磁束が変化する。
【0024】
第1磁石75、第2磁石76は、その回転中心を挟んで互いに対向する位置に配置されている。第1ヨーク73、第2ヨーク74は、第1磁石75と第2磁石76とを接続する。第1ヨーク73は、第1磁石75のN極と、第2磁石76のN極とを接続している。第2ヨーク74は、第1磁石75のS極と、第2磁石76のS極とを接続している。
【0025】
第1ホールIC71は、不図示の2個のホール素子、演算回路、およびそれらを収容するケーシングを有する。2個のホール素子のうち一方は、横型ホール素子であって、ホール効果を利用し、
図2の方向FVに沿った磁束に応じたホール電圧V11を上記演算回路に出力する。2個のホール素子のうち他方は、縦型ホール素子であって、ホール効果を利用し、
図2の方向FHに沿った磁束に応じたホール電圧V12を上記演算回路に出力する。
【0026】
第1ホールIC71の上記演算回路は、不図示のCPU、不揮発性記憶媒体、揮発性記憶媒体を備えた回路であって、CPUが不揮発性記憶媒体に記録されたプログラムを実行し、その実行において揮発性記憶媒体を作業領域として使用する。具体的には、上記演算回路は、上記2個のホール素子からのホール電圧V11、V12に基づいて、対象物6の回転角度に対応する電圧を第1ホールIC71の外部のECU1に出力する。以下この演算回路からの出力を第1センサ出力X1という。第1センサ出力X1の電圧は、例えば0.5V~4.5Vに調整される。
【0027】
第2ホールIC72は、例えば、第1ホールIC71と方向FVに対向するように配置されていてもよい。第2ホールIC72は、不図示の2個のホール素子、演算回路、およびそれらを収容するケーシングを有する。2個のホール素子のうち一方は、横型ホール素子であって、ホール効果を利用し、
図2の方向FVに沿った磁束に応じたホール電圧V21を上記演算回路に出力する。2個のホール素子のうち他方は、縦型ホール素子であって、ホール効果を利用し、
図2の方向FHに沿った磁束に応じたホール電圧V22を上記演算回路に出力する。
【0028】
第2ホールIC72の上記演算回路は、不図示のCPU、不揮発性記憶媒体、揮発性記憶媒体を備えた回路であって、CPUが不揮発性記憶媒体に記録されたプログラムを実行し、その実行において揮発性記憶媒体を作業領域として使用する。具体的には、上記演算回路は、上記2個のホール素子からのホール電圧V21、V22に基づいて、対象物6の回転角度に対応する電圧を第2ホールIC72の外部のECU1に出力する。以下この演算回路からの出力を第2センサ出力X2という。第2センサ出力X2の電圧は、例えば0.5V~4.5Vに調整される。
【0029】
第1ホールIC71、第2ホールIC72における演算回路が有する不揮発性記憶媒体、揮発性記憶媒体は、いずれも非遷移的実体的記録媒体であり、例えば、半導体メモリである。
【0030】
以下、上記のような構成の回転システムの作動について説明する。まず、第1ホールIC71の演算回路の作動について説明する。第1ホールIC71の演算回路は、自機の不揮発性記憶媒体中のプログラムに従い、第1ホールIC71の2つのホール素子から出力されたホール電圧V11、V12に基づいて、
図4に示す処理を繰り返し行う。
【0031】
図4の処理において演算回路は、まずステップS110で第1ホールIC71の2つのホール素子からホール電圧V11、V12を取得する。ホール電圧V11、V12は、
図4に示すように、対象物6の回転角度に応じて変化する磁束に比例して、360°周期で変化する。そしてホール電圧V11、V12の位相は、互いに対して90°ずれている。これは、2つのホール素子の出力に影響する磁束の方向FV、FHが90°ずれているからである。すなわち、2つのホール素子の感磁面が90°ずれているからである。例えば、ホール電圧V11は周期360°のサイン曲線となり、ホール電圧V12は周期360°のコサイン曲線となる。
【0032】
続いて演算回路は、ステップS120で、ホール電圧V11、V12を用いた直線化演算により、第1センサ出力X1を算出する。このとき算出される第1センサ出力X1は、360°周期の周期性を有する電圧値である。そして第1センサ出力X1は、自らの一周期内において、対象物6の回転角度の増大と共に、所定の第1正常範囲において下限値から上限値まで徐々に増大する。そして第1センサ出力X1は、対象物6の回転角度の増大と共に、第1正常範囲から外れた第1遷移範囲を経ることで、第1正常範囲とは異なる増減方向(すなわち減少方向)に、上記上限値から上記下限値まで、第1通常範囲よりも急激に、変化する。
【0033】
ここで、第1正常範囲の角度幅は、第1遷移範囲の角度幅よりも十分大きい。本実施形態では、第1正常範囲は、0°から360°までのほぼ360°の範囲等であり、第1遷移範囲は、0°、360°等を中心とする幅がほぼ0°の範囲である。しかし、第1正常範囲の角度幅はもっと狭くてもよいし、第1遷移範囲の角度幅はもっと広くてもよい。また、本実施形態では、第1センサ出力X1は、第1正常範囲において、回転角度に対して線形に単調増加するが、非線形に単調増加してもよいし、階段状に増加してもよい。また、第1正常範囲は、後述する第2遷移範囲の全体をカバーしている。また、本実施形態では、また、本実施形態では、第1遷移範囲において第1センサ出力X1が不連続に変化しているが、連続的に変化してもよい。
【0034】
具体的には、第1センサ出力X1は、X1=K×atan2(V11/V12)+V0という演算式により算出される。ここで、atan2(V11/V12)は、値域が-180°から180°までの範囲に拡張された逆正接関数である。具体的には、atan2(V11/V12)=arctan(V11/V12)-180°×sgn(V11)×{1-U(V12)}という式で得られる。ここで、arctan()は値域gが-90°から90°までの範囲をとる通常の逆正接関数である。また、sgn()は、引数が正なら1、負なら-1、ゼロなら0となる符号関数である。また、U()は引数が0以上なら1、負なら0となる単位ステップ関数である。また、V0は中央値等の基準値となるようあらかじめ定められた正の電圧値である。また、Kは、あらかじめ定められた正の係数である。
【0035】
続いて演算回路は、ステップS130で、算出済の第1センサ出力X1に相当する電圧をECU1に出力する。第1ホールIC71の演算回路は、このようなステップS110~S130の処理を繰り返すことで、逐次第1センサ出力X1に相当する電圧をECU1に出力する。
【0036】
次に、第2ホールIC72の演算回路の作動について説明する。第2ホールIC72の演算回路は、自機の不揮発性記憶媒体中のプログラムに従い、第2ホールIC72の2つのホール素子から出力されたホール電圧V21、V22に基づいて、
図5に示す処理を繰り返し行う。
【0037】
図5の処理において演算回路は、まずステップS210で第2ホールIC72の2つのホール素子からホール電圧V21、V22を取得する。ホール電圧V21、V22は、対象物6の回転角度に応じて変化する磁束に比例して、360°周期で変化する。そしてホール電圧V21、V22の位相は、互いに対して90°ずれている。これは、2つのホール素子の出力に影響する磁束の方向FV、FHが90°ずれているからである。すなわち、2つのホール素子の感磁面が90°ずれているからである。例えば、ホール電圧V21は周期360°のサイン曲線となり、ホール電圧V22は周期360°のコサイン曲線となる。より具体的には、本実施形態では、ホール電圧V21は、ホール電圧V11と同じであり、ホール電圧V22は、ホール電圧V12と同じであるが、他の例としては、同じでなくてもよい。
【0038】
続いて演算回路は、ステップS220で、ホール電圧V21、V22を用いた直線化演算により、第2センサ出力X2を算出する。このとき算出される第2センサ出力X2は、360°周期の周期性を有する電圧値である。そして第2センサ出力X2は、自らの一周期内において、対象物6の回転角度の増大と共に、所定の第2正常範囲において下限値から上限値まで徐々に増大する。そして第2センサ出力X2は、対象物6の回転角度の増大と共に、第2正常範囲から外れた第2遷移範囲を経ることで、第2正常範囲とは異なる増減方向(すなわち減少方向)に、上記上限値から上記下限値まで、第2通常範囲よりも急激に、変化する。なお、第2正常範囲および第2遷移範囲は、対象物6の回転角度についての範囲である。
【0039】
ここで、第2正常範囲の角度幅は、第2遷移範囲の角度幅よりも十分大きい。本実施形態では、第2正常範囲は、
図6に示すように、180°から540°までのほぼ360°の範囲等であり、第2遷移範囲は、180°、540°等を中心とする幅がほぼ0°の範囲である。しかし、第2正常範囲の角度幅はもっと狭くてもよいし、第2遷移範囲の角度幅はもっと広くてもよい。また、本実施形態では、第2センサ出力X2は、第2正常範囲において、回転角度に対して線形に単調増加するが、非線形に単調増加してもよいし、階段状に増加してもよい。また、第2正常範囲は、第1遷移範囲の全体をカバーしている。また、本実施形態では、第2遷移範囲において第2センサ出力X2が不連続に変化しているが、連続的に変化してもよい。
【0040】
具体的には、第2センサ出力X2は、X2=K×{atan3(V21/V22)+180°}+V0という演算式により算出される。ここで、atan3(V21/V22)は、値域が-180°から180°までの範囲に拡張された逆正接関数である。具体的には、atan3(V21/V22)=arctan(V21/V22)+180°×sgn(V21)×{1-U(-1×V22)}という式で得られる。arctan()、sgn()、U()、V0、Kは、既に説明した通りである。
【0041】
このようにして算出された第2センサ出力X2は、
図6に示すように、第1センサ出力X1に対して、位相を180°ずらしたものとなっている。すなわち、第1センサ出力X1と第2センサ出力X2の位相差Dは180°である。したがって、第1遷移範囲の中心と第2遷移範囲の中心との角度差は180°である。そして、第1遷移範囲と第2遷移範囲とは、重ならず互いに離れている。このように、第1センサ出力X1と第2センサ出力X2とは、対象物6の回転角度の変化に応じて、互いに異なる振る舞いで変化する。
【0042】
なお、上記の手法は、第2センサ出力X2が第1センサ出力X1に対して180°位相がずれたものとするためのいくつかる手法のうちの1つに過ぎず、別の手法が採用されてもよい。具体的には、上記の手法は、ホール電圧V21、V22をホール電圧V11、V12とそれぞれ同じにし、更に、第2センサ出力X2の計算式を第1センサ出力X1の計算式とは異ならせる手法であった。
【0043】
それ以外の採用できる手法としては、例えば、第2センサ出力X2の計算式を第1センサ出力X1の計算式と同じにする手法がある。この手法では、ホール電圧V21、V22がホール電圧V11、V12に対してそれぞれ180°位相がずれるよう、第2ホールIC72の2個のホール素子の配置が調整される。
【0044】
続いて演算回路は、ステップS230で、算出済の第2センサ出力X2に相当する電圧をECU1に出力する。第2ホールIC72の演算回路は、このようなステップS210~S230の処理を繰り返すことで、第2センサ出力X2に相当する電圧をECU1に逐次繰り返し出力する。
【0045】
次に、ECU1の作動について説明する。ECU1は、自機の不揮発性記憶媒体に記録されたプログラムを実行して、
図7に示す目標算出部10、第1偏差算出部11、第2偏差算出部12、選択部13、比例制御器14、積分器15、積分制御器16、フィードバック制御部17として機能する。あるいは、ECU1は、目標算出部10、第1偏差算出部11、第2偏差算出部12、選択部13、比例制御器14、積分器15、積分制御器16、フィードバック制御部17の各々に対応する専用のハードウェアを備えていてもよい。
【0046】
目標算出部10は、第1目標角度θt1を算出して第1偏差算出部11に出力すると共に、第2目標角度θt2を算出して第2偏差算出部12に出力する。第1目標角度θt1、第2目標角度θt2はいずれも、対象物6の回転角度の目標値であり、0°以上360°未満の値として設定される。第1目標角度θt1は、対象物6の第1実角度θa1が実現すべき目標値であり、第2目標角度θt2は、対象物6の第2実角度θa2が実現すべき目標値である。第1実角度θa1、第2実角度θa2はいずれも、0°以上360°未満の値として設定される。
【0047】
第1実角度θa1は、第1偏差算出部11によって第1センサ出力X1に基づいて算出される対象物6の検出角度である。第1実角度θa1は、第1センサ出力X1が最小値のとき0°となり、第1センサ出力X1が最大値のとき360°となり、第1センサ出力X1に対して線形的に変化する。第2実角度θa2は、第2偏差算出部12によって第2センサ出力X2に基づいて算出される対象物6の検出角度である。第2実角度θa2は、第2センサ出力X2が最小値のとき0°となり、第2センサ出力X2が最大値のとき360°となり、第2センサ出力X2に対して線形的に変化する。
【0048】
第1目標角度θt1は、どのような方法で算出されてもよい。例えば、何らかの対象物6の動作目的に応じて決定されてもよい。第2目標角度θt2は、第1目標角度θt1に基づいて算出される。例えば、本実施形態では、第2センサ出力X2の位相が第1センサ出力X1に対してD=180°ずれているので、第2目標角度θt2は、第1目標角度θt1に180°を加算した値とする。ただし、そのように加算して算出された第2目標角度θt2が360°以上であれば、更にそこから360°を減算した結果を、第2目標角度θt2とする。
【0049】
第1偏差算出部11は、目標算出部10から出力された第1目標角度θt1と、第1ホールIC71から出力された第1センサ出力X1に基づいて、第1角度偏差Δθ1を算出する。具体的には、第1センサ出力X1から、上述の通り第1実角度θa1を算出し、第1目標角度θt1から第1実角度θa1を減算し、その減算結果を第1角度偏差Δθ1とする。そして第1偏差算出部11は、この第1角度偏差Δθ1を選択部13に出力する。
【0050】
第2偏差算出部12は、目標算出部10から出力された第2目標角度θt2と、第2ホールIC72から出力された第2センサ出力X2に基づいて、第2角度偏差Δθ2を算出する。具体的には、第2センサ出力X2から、上述の通り第2実角度θa2を算出し、第2目標角度θt2から第2実角度θa2を減算し、その減算結果を第2角度偏差Δθ2とする。そして第2偏差算出部12は、この第2角度偏差Δθ2を選択部13に出力する。
【0051】
選択部13は、第1偏差算出部11から出力された第1角度偏差Δθ1と第2偏差算出部12から出力された第2角度偏差Δθ2のうち一方を選択し、選択した方を角度偏差Δθとして比例制御器14、積分器15に出力する。すなわち、選択部13は、対象物6を駆動するために用いる参照先として、第1センサ出力X1と第2センサ出力X2のうち一方を切り替え可能に選択する。選択部13の処理内容については、後に詳述する。
【0052】
比例制御器14は、選択部13から出力された角度偏差Δθに比例するP項を算出し、算出したP項をフィードバック制御部17に出力する。積分器15は、選択部13から出力された複数回分の角度偏差Δθに応じた積分演算を行い、積分演算の結果を積分制御器16に出力する。積分制御器16は、積分器15が出力した積分演算の結果に比例するI項を算出し、算出したI項をフィードバック制御部17に出力する。
【0053】
フィードバック制御部17は、比例制御器14から出力されたP項と積分制御器16から出力されたI項に基づいて、対象物6の回転角を目標の角度に近付けるよう、アクチュエータ2を制御するための制御信号を出力する。したがって、比例制御器14、積分器15、積分制御器16、フィードバック制御部17が、全体としてPI制御によるフィードバック制御を行っている。
【0054】
ここで、選択部13の処理について、
図8、
図9、
図10を用いて詳細に説明する。選択部13は、
図8に示す処理を実行する。具体的には、選択部13は、作動の開始後、まずステップS300で、参照先を初期設定する。すなわち、第1センサ出力X1と第2センサ出力X2のうち一方を、参照先とする。具体的には、第1センサ出力X1を参照先としてもよいし、第2センサ出力X2を参照先としてもよい。
【0055】
続いてステップS305では、第1角度偏差Δθ1、第2角度偏差Δθ2を、それぞれ第1偏差算出部11、第2偏差算出部12から取得する。続いてステップS310では、第1角度偏差Δθ1の絶対値が第2角度偏差Δθ2の絶対値を比較し、前者が後者以上であるか否かを判定する。前者が後者未満であれば、ステップS320に進み、前者が後者以上であれば、ステップS330に進む。
【0056】
ステップS320では、第1角度偏差Δθ1の絶対値から第2角度偏差Δθ2の絶対値を減算した値が、負の閾値P1よりも小さいか否かを判定し、小さければステップS340に進み、小さくなければステップS350に進む。
【0057】
ステップS330では、第1角度偏差Δθ1の絶対値から第2角度偏差Δθ2の絶対値を減算した値が、正の閾値P2よりも大きい否かを判定し、大きければステップS360に進み、大きくなければステップS350に進む。
【0058】
ステップS350では、現在の参照先が第1センサ出力X1であるか否かを判定する。そして、第1センサ出力X1であれば、現在の参照先を維持するためにステップS340に進み、第1センサ出力X1でなければ(すなわち、第2センサ出力X2であれば)、現在の参照先を選択するためにステップS360に進む。
【0059】
ステップS340では、現在の参照先を第1センサ出力X1とする。すなわち、第1角度偏差Δθ1の値を角度偏差Δθとして比例制御器14、積分器15に出力する。そしてステップS340の後、ステップS305に戻る。
【0060】
ステップS360では、現在の参照先を第2センサ出力X2とする。すなわち、第2角度偏差Δθ2の値を角度偏差Δθとして比例制御器14、積分器15に出力する。そしてステップS360の後、ステップS305に戻る。
【0061】
以下、このような選択部13による選択に応じた各種量の経時的な振る舞いの事例を、
図9、
図10に示す。
図9の事例では、時点t10において参照先が第1センサ出力X1であり、その後の時点t11で参照先が第1センサ出力X1から第2センサ出力X2に切り替わる。
図10の事例では、時点t11において参照先が第2センサ出力X2であり、その後の時点t21で参照先が第2センサ出力X2から第1センサ出力X1に切り替わる。
【0062】
[
図9:時点t10から時点t11の直前まで]
まず、
図9の事例について説明する。この事例では、時点t10から時点t11の直前まで、第1目標角度θt1が一定であり、第1実角度θa1は第1目標角度θt1とほぼ同じ値でほぼ一定となっている。したがって同様に、時点t10から時点t11の直前まで、第2目標角度θt2が一定であり、第2実角度θa2は第2目標角度θt2とほぼ同じ値でほぼ一定となっている。なお、上述の通り、第2目標角度θt2は第1目標角度θt1に対して180°ずれている。
【0063】
したがって、時点t10から時点t11の直前まで、第1角度偏差Δθ1および第2角度偏差Δθ2はほぼゼロであり、第1角度偏差Δθ1の絶対値から第2角度偏差Δθ2の絶対値を減じた値も、ほぼゼロである。
【0064】
この時点t10から時点t11の直前までの期間、選択部13は、ステップS305でほぼゼロの第1角度偏差Δθ1、第2角度偏差Δθ2を取得し、続くステップS310で第1角度偏差Δθ1の絶対値と第2角度偏差Δθ2の絶対値を比較する。
【0065】
この期間中、これら2つの絶対値は、共にほぼゼロであり、それらの大小関係は、第1ホールIC71、第2ホールIC72における僅かな検出誤差に応じて、変動する。そして、第1角度偏差Δθ1の絶対値と第2角度偏差Δθ2の絶対値がほぼ同じなので、第1角度偏差Δθ1の絶対値と第2角度偏差Δθ2の絶対値との差は、閾値P1より大きく、閾値P2よりも小さい。
【0066】
したがってこの期間中、選択部13は、第2角度偏差Δθ2の絶対値が第1角度偏差Δθ1の絶対値より大きい場合は、ステップS310からステップS320に進み、ステップS320からステップS350に進む。また、第2角度偏差Δθ2の絶対値が第1角度偏差Δθ1の絶対値より小さい場合および第1角度偏差Δθ1の絶対値と同じ場合は、ステップS310からステップS330に進み、ステップS330からステップS350に進む。
【0067】
なお、閾値P1、P2は、第1角度偏差Δθ1と第2角度偏差Δθ2の僅かな違いをフィルタリングするためにあらかじめ設定される。例えば、閾値P1、P2の絶対値は、第1センサ出力X1と第2センサ出力X2の位相差の絶対値の1/2より小さくてもよいし、1/5より小さくてもよい。
【0068】
選択部13は、このようにしてステップS350に進んだ場合、現在の参照先が第1センサ出力X1であるので、更にステップS340に進み、出力する角度偏差Δθとして第1角度偏差Δθ1を選択する。すなわち、現在の参照先を第1センサ出力X1に維持する。時点t10から時点t11の直前まで、このような作動が繰り返される。
【0069】
この期間、選択部13から出力される角度偏差Δθはほぼゼロなので、比例制御器14、積分器15、積分制御器16、フィードバック制御部17によって行われるフィードバック制御により、アクチュエータ2は、対象物6の回転角度をほぼ同じに維持し続ける。
【0070】
[
図9:時点t11]
図9の事例において時点t11になると、目標算出部10は、第1目標角度θt1を70°から330°に変更して出力する。なお、変更先の値は、あくまで一例であり、これに限定されるわけではない。これに伴い、第2目標角度を250°から330°+180°-360°=150°に変更して出力する。第1実角度θa1、第2実角度θa2は、時点t11よりも前と同じである。
【0071】
したがって、第1偏差算出部11で算出されて出力される第1角度偏差Δθ1は260°となる。また、第2偏差算出部12で算出されて出力される第2角度偏差Δθ2は-100°となる。したがって、第1角度偏差Δθ1の絶対値と第2角度偏差Δθ2の絶対値との差は、160°となり、閾値P2より大きくなる。
【0072】
したがって時点t11において、選択部13は、第2角度偏差Δθ2の絶対値が第1角度偏差Δθ1の絶対値より小さいので、ステップS310からステップS330に進む。そして更に、第1角度偏差Δθ1の絶対値と第2角度偏差Δθ2の絶対値との差が閾値P2より大きいので、ステップS330からステップS360に進む。そしてステップS360では、参照先を現在の第1センサ出力X1から第2センサ出力X2に切り替える。すなわち、角度偏差Δθとして出力する値を第1角度偏差Δθ1から第2角度偏差Δθ2に切り替える。
【0073】
この結果、選択部13から出力される角度偏差Δθに応じて、比例制御器14、積分器15、積分制御器16、フィードバック制御部17によってフィードバック制御が行われる。そして、フィードバック制御部17は、対象物6の回転角度を第2実角度θa2から第2目標角度θt2に近付けるようアクチュエータ2を制御する。角度偏差Δθは第2目標角度θt2と第2実角度θa2との差に相当する第2角度偏差Δθ2だからである。その結果、第2実角度θa2が減少する方向(すなわち、負方向6b)に対象物6が回転するよう駆動される。
【0074】
もし仮にこの時点t11で、角度偏差Δθが第1角度偏差Δθ1であって、フィードバック制御部17が対象物6の回転角度を第1実角度θa1から第1目標角度θt1に近付けるようアクチュエータ2を制御したとする。すると、最終的には第1遷移範囲を避けて正方向6aに260°も対象物6の回転角を変化させなければならない。これに対し、本事例では、第2遷移範囲を避けることで第1遷移範囲を経由して負方向6bに100°だけ対象物6の回転角を変化させる。すなわち、本事例のようにすることで、対象物6が無駄に広い角度範囲を回転してしまうことを回避することができる。
【0075】
[
図9:時点t11の直後から時点t12の直前まで]
図9の事例において時点t11の後から時点t12の直前までの期間は、第1目標角度θt1、第2目標角度θt2の値は時点t11と同じである。そして、第1実角度θa1、第2実角度θa2は、逐次変化する。具体的には、後述するフィードバック制御により、第1実角度θa1も第2実角度θa2も減少する。
【0076】
そしてこの期間、第1角度偏差Δθ1は260°から増大してゼロから離れる。また、第2角度偏差Δθ2は-100°から増大してゼロに近付く。したがって、第1角度偏差Δθ1の絶対値と第2角度偏差Δθ2の絶対値との差も増大するので、依然として閾値P2より大きい。
【0077】
したがって、この期間において、選択部13は、第2角度偏差Δθ2の絶対値が第1角度偏差Δθ1の絶対値より小さいので、ステップS310からステップS330に進む。そして更に、第1角度偏差Δθ1の絶対値と第2角度偏差Δθ2の絶対値との差が閾値P2より大きいので、ステップS330からステップS360に進む。そしてステップS360では、参照先を現在の第2センサ出力X2に維持する。すなわち、角度偏差Δθとして出力する値を第2角度偏差Δθ2に維持する。
【0078】
この結果、選択部13から出力される角度偏差Δθに応じて、比例制御器14、積分器15、積分制御器16、フィードバック制御部17によってフィードバック制御が行われる。そして、フィードバック制御部17は、対象物6の回転角度を第2実角度θa2から第2目標角度θt2に近付けるようアクチュエータ2を制御する。角度偏差Δθは第2目標角度θt2と第2実角度θa2との差に相当する第2角度偏差Δθ2だからである。その結果、第2実角度θa2が減少する方向(すなわち、負方向6b)に対象物6が回転するよう駆動される。
【0079】
この期間においても、時点t11と同様、対象物6の回転角度を第1遷移範囲を経由する方向に変化させることで、対象物6が無駄に広い角度範囲を回転してしまうことを回避することができる。
【0080】
[
図9:時点t12以降]
図9の事例において時点t12では、第1目標角度θt1、第2目標角度θt2の値は時点t11と同じである。そして、第2実角度θa2は、時点t12直前と同様、低下する方向に変化する。一方、第1実角度θa1は、第1遷移範囲を通過することで、0°から、360°より僅かに小さい値まで、不連続に増大する。
【0081】
したがって、第1角度偏差Δθ1は30°まで急激に減少して正から負に変化し、絶対値も急激にゼロに近付く。また、第2角度偏差Δθ2は増大してゼロに近付き続ける。したがって、第1角度偏差Δθ1の絶対値と第2角度偏差Δθ2の絶対値との差は急激に減少してほぼゼロに近付き、P1より大きくP2より小さい。そして、第1角度偏差Δθ1と第2角度偏差Δθ2の大小関係は、第1ホールIC71、第2ホールIC72における僅かな検出誤差に応じて、変動する。
【0082】
したがって、時点t12以降の期間において、選択部13は、第2角度偏差Δθ2の絶対値が第1角度偏差Δθ1の絶対値より大きい場合は、ステップS310からステップS320に進み、ステップS320からステップS350に進む。また、第2角度偏差Δθ2の絶対値が第1角度偏差Δθ1の絶対値より小さい場合および第1角度偏差Δθ1の絶対値と同じ場合は、ステップS310からステップS330に進み、ステップS330からステップS350に進む。
【0083】
選択部13は、このようにしてステップS350に進んだ場合、現在の参照先が第2センサ出力X2であるので、ステップS360に進み、出力する角度偏差Δθとして第2角度偏差Δθ2を選択する。すなわち、現在の参照先を第2センサ出力X2に維持する。
【0084】
この結果、選択部13から出力される角度偏差Δθに応じて、比例制御器14、積分器15、積分制御器16、フィードバック制御部17によってフィードバック制御が行われる。そして、フィードバック制御部17は、対象物6の回転角度を第2実角度θa2から第2目標角度θt2に近付けるようアクチュエータ2を制御する。これにより、徐々に第2実角度θa2が第2目標角度θt2に近付いていくと共に、徐々に第1実角度θa1が第1目標角度θt1に近付いていく。
【0085】
[
図10:時点t20から時点t21の直前まで]
次に、
図10の事例について説明する。この事例は、
図9の事例の直後の期間で発生してもよいし、
図9の事例の直前の期間で発生してもよいし、
図9の事例とは時間的に大きく離れた期間で発生してもよい。
【0086】
この事例では、時点t20から時点t21の直前までの期間、第1目標角度θt1が一定であり、第1実角度θa1は第1目標角度θt1とほぼ同じ値でほぼ一定となっている。したがって同様にこの期間、第2目標角度θt2が一定であり、第2実角度θa2は第2目標角度θt2とほぼ同じ値でほぼ一定となっている。なお、上述の通り、第2目標角度θt2は第1目標角度θt1に対して180°ずれている。
【0087】
したがって、この期間、第1角度偏差Δθ1および第2角度偏差Δθ2はほぼゼロであり、第1角度偏差Δθ1の絶対値から第2角度偏差Δθ2の絶対値を減じた値も、ほぼゼロである。
【0088】
この期間、選択部13は、ステップS305でほぼゼロの第1角度偏差Δθ1、第2角度偏差Δθ2を取得し、続くステップS310で第1角度偏差Δθ1の絶対値と第2角度偏差Δθ2の絶対値を比較する。
【0089】
この期間中、これら2つの絶対値は、共にほぼゼロであり、それらの大小関係は、第1ホールIC71、第2ホールIC72における僅かな検出誤差に応じて、変動する。そして、第1角度偏差Δθ1の絶対値と第2角度偏差Δθ2の絶対値がほぼ同じなので、第1角度偏差Δθ1の絶対値と第2角度偏差Δθ2の絶対値との差は、閾値P1より大きく、閾値P2よりも小さい。
【0090】
したがってこの期間中、選択部13は、第2角度偏差Δθ2の絶対値が第1角度偏差Δθ1の絶対値より大きい場合は、ステップS310からステップS320に進み、ステップS320からステップS350に進む。また、第2角度偏差Δθ2の絶対値が第1角度偏差Δθ1の絶対値より小さい場合および第1角度偏差Δθ1の絶対値と同じ場合は、ステップS310からステップS330に進み、ステップS330からステップS350に進む。
【0091】
選択部13は、このようにしてステップS350に進んだ場合、現在の参照先が第2センサ出力X2であるので、更にステップS360に進み、出力する角度偏差Δθとして第2角度偏差Δθ2を選択する。すなわち、現在の参照先を第2センサ出力X2に維持する。時点t20から時点t21の直前まで、このような作動が繰り返される。
【0092】
この期間、選択部13から出力される角度偏差Δθはほぼゼロなので、比例制御器14、積分器15、積分制御器16、フィードバック制御部17によって行われるフィードバック制御により、アクチュエータ2は、対象物6の回転角度をほぼ同じに維持し続ける。
【0093】
[
図10:時点t21]
図10の事例において時点t21になると、目標算出部10は、第1目標角度θt1を160°から260°に変更して出力する。なお、変更先の値は、あくまで一例であり、これに限定されるわけではない。これに伴い、第2目標角度を340°から260°+180°-360°=80°に変更して出力する。第1実角度θa1、第2実角度θa2は、時点t21よりも前と同じである。
【0094】
したがって、第1角度偏差Δθ1は100°となる。また、第2角度偏差Δθ2は-260°となる。したがって、第1角度偏差Δθ1の絶対値と第2角度偏差Δθ2の絶対値との差は、-160°となり、閾値P1より小さくなる。
【0095】
したがって時点t21において、選択部13は、第2角度偏差Δθ2の絶対値が第1角度偏差Δθ1の絶対値より大きいので、ステップS310からステップS320に進む。そして更に、第1角度偏差Δθ1の絶対値と第2角度偏差Δθ2の絶対値との差が閾値P1より小さいので、ステップS320からステップS340に進む。そしてステップS340では、参照先を現在の第2センサ出力X2から第1センサ出力X1に切り替える。すなわち、角度偏差Δθとして出力する値を第2角度偏差Δθ2から第1角度偏差Δθ1に切り替える。
【0096】
この結果、選択部13から出力される角度偏差Δθに応じて、比例制御器14、積分器15、積分制御器16、フィードバック制御部17によってフィードバック制御が行われる。そして、フィードバック制御部17は、対象物6の回転角度を第1実角度θa1から第1目標角度θt1に近付けるようアクチュエータ2を制御する。角度偏差Δθは第1目標角度θt1と第1実角度θa1との差に相当する第1角度偏差Δθ1だからである。その結果、第1実角度θa1が増加する方向(すなわち、正方向6a)に対象物6が回転するよう駆動される。
【0097】
もし仮にこの時点t21で、角度偏差Δθが第2角度偏差Δθ2であって、フィードバック制御部17が対象物6の回転角度を第2実角度θa2から第2目標角度θt2に近付けるようアクチュエータ2を制御したとする。すると、最終的には第2遷移範囲を避けて負方向6bに260°も対象物6の回転角を変化させなければならない。これに対し、本事例では、第1遷移範囲を避けることで第2遷移範囲を経由して正方向6aに100°だけ対象物6の回転角を変化させる。すなわち、本事例のようにすることで、対象物6が無駄に広い角度範囲を回転してしまうことを回避することができる。
【0098】
[
図10:時点t21の直後から時点t22の直前まで]
図10の事例において時点t21の後から時点t22の直前までの期間は、第1目標角度θt1、第2目標角度θt2の値は時点t21と同じである。そして、第1実角度θa1、第2実角度θa2は、逐次変化する。具体的には、後述するフィードバック制御により、第1実角度θa1も第2実角度θa2も増加する。
【0099】
そしてこの期間、第1角度偏差Δθ1は100°から減少してゼロに近付く。また、第2角度偏差Δθ2は-260°から減少してゼロから離れる。したがって、第1角度偏差Δθ1の絶対値と第2角度偏差Δθ2の絶対値との差も減少するので、依然として閾値P1より小さい。
【0100】
したがって、この期間において、選択部13は、第2角度偏差Δθ2の絶対値が第1角度偏差Δθ1の絶対値より大きいので、ステップS310からステップS320に進む。そして更に、第1角度偏差Δθ1の絶対値と第2角度偏差Δθ2の絶対値との差が閾値P1より小さいので、ステップS320からステップS340に進む。そしてステップS340では、参照先を現在の第1センサ出力X1に維持する。すなわち、角度偏差Δθとして出力する値を第1角度偏差Δθ1に維持する。
【0101】
この結果、選択部13から出力される角度偏差Δθに応じて、比例制御器14、積分器15、積分制御器16、フィードバック制御部17によってフィードバック制御が行われる。そして、フィードバック制御部17は、対象物6の回転角度を第1実角度θa1から第1目標角度θt1に近付けるようアクチュエータ2を制御する。角度偏差Δθは第1目標角度θt1と第1実角度θa1との差に相当する第1角度偏差Δθ1だからである。その結果、第1実角度θa1が増加する方向(すなわち、正方向6a)に対象物6が回転するよう駆動される。
【0102】
この期間においても、時点t21と同様、対象物6の回転角度を第2遷移範囲を経由する方向に変化させることで、対象物6が無駄に広い角度範囲を回転してしまうことを回避することができる。
【0103】
[
図10:時点t22以降]
図10の事例において時点t22では、第1目標角度θt1、第2目標角度θt2の値は時点t21と同じである。そして、第1実角度θa1は、時点t22直前と同様、増加する方向に変化する。一方、第2実角度θa2は、第2遷移範囲を通過することで、360°より僅かに小さい値から、0°まで、不連続に減少する。
【0104】
したがって、第2角度偏差Δθ2は80°まで急激に増加して負から正に変化し、絶対値も急激にゼロに近付く。また、第1角度偏差Δθ1は減少してゼロに近付き続ける。したがって、第1角度偏差Δθ1の絶対値と第2角度偏差Δθ2の絶対値との差は急激に減少してほぼゼロに近付き、P1以上P2以下の範囲に入る。そして、第1角度偏差Δθ1と第2角度偏差Δθ2の大小関係は、第1ホールIC71、第2ホールIC72における僅かな検出誤差に応じて、変動する。
【0105】
したがって、時点t22以降の期間において、選択部13は、第2角度偏差Δθ2の絶対値が第1角度偏差Δθ1の絶対値より大きい場合は、ステップS310からステップS320に進み、ステップS320からステップS350に進む。また、第2角度偏差Δθ2の絶対値が第1角度偏差Δθ1の絶対値より小さい場合および第1角度偏差Δθ1の絶対値と同じ場合は、ステップS310からステップS330に進み、ステップS330からステップS350に進む。
【0106】
選択部13は、このようにしてステップS350に進んだ場合、現在の参照先が第1センサ出力X1であるので、ステップS340に進み、出力する角度偏差Δθとして第1角度偏差Δθ1を選択する。すなわち、現在の参照先を第1センサ出力X1に維持する。
【0107】
この結果、選択部13から出力される角度偏差Δθに応じて、比例制御器14、積分器15、積分制御器16、フィードバック制御部17によってフィードバック制御が行われる。そして、フィードバック制御部17は、対象物6の回転角度を第1実角度θa1から第1目標角度θt1に近付けるようアクチュエータ2を制御する。これにより、徐々に第1実角度θa1が第1目標角度θt1に近付いていくと共に、徐々に第2実角度θa2が第2目標角度θt2に近付いていく。
【0108】
以上説明した通り、第1センサ出力X1の第1遷移範囲と第2センサ出力X2の第2遷移範囲とは、対応する対象物6の回転角度に関して、離れている。そして、選択部13は、第1実角度θa1と第1目標角度θt1との差である第1角度偏差Δθ1の絶対値が小さいほど参照先として第1センサ出力を選択し易くなっており、第1角度偏差Δθ1の絶対値が大きいほど参照先として第2センサ出力を選択し易くなっている。
【0109】
対象物6が第1遷移範囲を避けることによって意図に反して不必要に広い角度範囲を回転してしまう可能性は、第1角度偏差Δθ1が大きいほど高い。したがって、上記のようにすることで、対象物6が不必要に広い角度範囲を回転してしまう可能性を低減することができる。
【0110】
(1)また、選択部13は、第1角度偏差Δθ1の絶対値が第2角度偏差Δθ2の絶対値より大きい場合に、第2センサ出力X2を参照先として選択する。また、第2角度偏差Δθ2の絶対値が第1角度偏差Δθ1の絶対値より大きい場合に、第1センサ出力X1を参照先として選択する。
【0111】
このようにすることで、第1センサ出力X1を用いたフィードバック制御と、第2センサ出力X2を用いたフィードバック制御のうち、より狭い角度範囲を回転する方を採用することができる。したがって、上記のようにすることで、対象物6が不必要に広い角度範囲を回転してしまう可能性を、より高い確度で低減することができる。
【0112】
(2)また選択部13は、第1角度偏差Δθ1の絶対値が第2角度偏差Δθ2の絶対値より大きく、かつ第1角度偏差Δθ1の絶対値の第2角度偏差Δθ2の絶対値に対する差が閾値P2より大きい場合に、第2センサ出力を参照先として選択する。また選択部13は、第1角度偏差Δθ1の絶対値が第2角度偏差Δθ2の絶対値より大きく、かつ上記差が閾値P2より小さい場合に、第1センサ出力X1と第2センサ出力X2のうち、前回選択していた方を参照先として選択する。
【0113】
このようにすることで、第1角度偏差Δθ1と第2角度偏差Δθ2がほぼ同じ場合において、センサ7の検出誤差に左右されて参照先が不必要に頻繁に切り替わってしまう可能性を低減することができる。
【0114】
(第2実施形態)
次に第2実施形態について、
図11、
図12を用いて説明する。本実施形態は、第1実施形態の回転システムに対して、第2ホールIC72が出力する第2センサ出力X2の振る舞いが異なる。
【0115】
具体的には、本実施形態の第2ホールIC72は、
図11に示すような第2センサ出力X2を出力する。この第2センサ出力X2は、第1実施形態と同様、
図5の処理のステップS220で、第2ホールIC72の演算回路が算出する。
【0116】
第2センサ出力X2の電圧は、例えば第1実施形態と同様に0.5V~4.5Vに調整される。このとき算出される第2センサ出力X2は、第1実施形態と同様、360°周期の周期性を有する電圧値である。そして第2センサ出力X2は、自らの一周期内において、対象物6の回転角度の増大と共に、所定の第2正常範囲において上限値から下限値まで徐々に減少する。そして第2センサ出力X2は、対象物6の回転角度の増大と共に、第2正常範囲から外れた第2遷移範囲を経ることで、第2正常範囲とは異なる増減方向(すなわち増加方向)に、上記下限値から上記上限値まで、第2通常範囲よりも急激に、変化する。
【0117】
第1実施形態の第2センサ出力X2と比較すると、本実施形態の第2センサ出力X2は、増減が逆になっている。ここで、第2正常範囲の配置および角度幅と、第2遷移範囲の配置および角度幅については、第1実施形態と同様である。したがって第1センサ出力X1と第2センサ出力X2の位相差Dは180°である。すなわち、第1遷移範囲の中心と第2遷移範囲の中心との角度差は180°である。そして、第1遷移範囲と第2遷移範囲とは、重ならず互いに離れている。
【0118】
また、本実施形態では、第2センサ出力X2は、第2正常範囲において、回転角度に対して線形に単調減少するが、非線形に単調減少してもよいし、階段状に減少してもよい。また、本実施形態では、第2正常範囲は、0°、360°を跨ぐが、跨がないでもよい。ただし、第2正常範囲は、第1遷移範囲の全体をカバーしている。また、本実施形態では、第2遷移範囲において第2センサ出力X2が不連続に変化しているが、連続的に変化してもよい。
【0119】
例えば、ホール電圧V21、V22が第1実施形態と同じなら、第2センサ出力X2は、X2=-K×{atan3(V21/V22)+180°}+V0という演算式により算出される。ここで、atan3(V21/V22)は、第1実施形態と同じものである。あるいは、第1実施形態と同様の計算式で
図11のような第2センサ出力X2が得られるホール電圧V21、V22が実現するよう、第2ホールIC72の2つのホール素子の配置が調整されていてもよい。
【0120】
その他の回転システムのハードウェア構成は第1実施形態と同じである。また、センサ7から出力される第1センサ出力X1の振る舞いも、第1実施形態と同じである。また、ECU1における目標算出部10、選択部13以外の作動は、第1実施形態と同様である。
【0121】
目標算出部10で算出されて出力される第2目標角度θt2は、第1実施形態では、0°以上360°未満の範囲内で第1目標角度θt1に対して180°ずれた値である。しかし、本実施形態では、第1センサ出力X1と第2センサ出力X2の関係が
図12に示すようになっているので、単純に第1目標角度θt1に対して180°ずらすように算出されるのではない。具体的には、第1目標角度θt1が0°以上180°未満の範囲では、θt2=180°-θt1という式で算出され、第1目標角度θt1が180°以上360°未満の範囲では、θt2=360°-θt1という式で算出される。それ以外の目標算出部10の作動は、第1実施形態と同じである。
【0122】
また、ECU1における選択部13は、
図4に代えて、
図12の処理を実行する。
図12の処理のうち、
図8と異なるのは、ステップS360のみである。ステップS360で、参照先を第2センサ出力X2とするのは、第1実施形態と同じであるが、角度偏差Δθとして、第2角度偏差Δθ2ではなく、第2角度偏差Δθ2の符号を反転させたものを採用する。これは、第2センサ出力X2に基づく第2実角度θa2の増減の向きとアクチュエータ2の制御による対象物6の回転角の増減の向きが逆だからである。つまり、第2センサ出力X2とアクチュエータ2の逆特性の関係の補正のために、符号が反転される。
【0123】
以上のような作動により、本実施形態の回転システムは、第1実施形態の回転システムと同等の作用および同等の効果を実現することができる。
【0124】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、
図13を用いて説明する。本実施形態は、第1実施形態の回転システムに対して、第2ホールIC72が出力する第2センサ出力X2の振る舞いが異なる。
【0125】
具体的には、本実施形態の第2ホールIC72は、
図13に示すような第2センサ出力X2を出力する。この第2センサ出力X2は、第1実施形態と同様、
図5の処理のステップS220で、第2ホールIC72の演算回路が算出する。
【0126】
第2センサ出力X2の電圧は、例えば第1実施形態と同様に0.5V~4.5Vに調整される。このとき算出される第2センサ出力X2は、第1実施形態の第2センサ出力X2に対し、位相のみが異なる。
【0127】
ここで、第2正常範囲は、
図13に示すように、270°から450°までのほぼ360°の範囲等であり、第2遷移範囲は、270°、450°等を中心とする幅がほぼ0°の範囲である。しかし、第2センサ出力X2において、第2正常範囲の角度幅はもっと狭くてもよいし、第2遷移範囲の角度幅はもっと広くてもよい。また、本実施形態では、第2センサ出力X2は、第2正常範囲において、回転角度に対して線形に単調増加するが、非線形に単調増加してもよいし、階段状に増加してもよい。
【0128】
また、本実施形態では、第2正常範囲は、0°、360°を跨ぐが、跨がないでもよい。ただし、第2正常範囲は、第1遷移範囲の全体をカバーしている。また、本実施形態では、第2遷移範囲において第2センサ出力X2が不連続に変化しているが、連続的に変化してもよい。
【0129】
したがって、第1センサ出力X1と第2センサ出力X2の位相差Dは90°である。第2センサ出力X2の位相は、第1センサ出力X1に対して90°進んでいる。すなわち、第1遷移範囲の中心と第2遷移範囲の中心との角度差は90°である。そして、第1遷移範囲と第2遷移範囲とは、重ならず互いに離れている。
【0130】
例えば、ホール電圧V21、V22が第1実施形態と同じなら、第2センサ出力X2は、X2=K×{atan3(V21/V22)+90°}+V0という演算式により算出される。ここで、atan3(V21/V22)は、第1実施形態と同じものである。あるいは、第1実施形態と同様の計算式で
図13のような第2センサ出力X2が得られるホール電圧V21、V22が実現するよう、第2ホールIC72の2つのホール素子の配置が調整されていてもよい。
【0131】
その他の回転システムのハードウェア構成は第1実施形態と同じである。また、センサ7から出力される第1センサ出力X1の振る舞いも、第1実施形態と同じである。また、ECU1における目標算出部10以外の作動は、第1実施形態と同様である。
【0132】
目標算出部10は、第1目標角度θt1から90°を加算した値を、第2目標角度θt2とする。ただし、そのように加算して算出された第2目標角度θt2が360°以上であれば、更にそこから360°を減算した結果を、第2目標角度θt2とする。それ以外の目標算出部10の作動は、第1実施形態と同じである。
【0133】
以上のような作動により、本実施形態の回転システムは、第1実施形態の回転システムと同等の作用および同等の効果を実現することができる。なお、位相差Dは、180°、90°に限られない。
【0134】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。特に、ある量について複数個の値が例示されている場合、特に別記した場合および原理的に明らかに不可能な場合を除き、それら複数個の値の間の値を採用することも可能である。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。また、本発明は、上記各実施形態に対する以下のような変形例および均等範囲の変形例も許容される。なお、以下の変形例は、それぞれ独立に、上記実施形態に適用および不適用を選択できる。すなわち、以下の変形例のうち任意の組み合わせを、上記実施形態に適用することができる。
【0135】
(変形例1)
上記実施形態では、選択部13は、第1センサ出力X1が参照先として選択されているときに、第1角度偏差Δθ1の絶対値が第2角度偏差Δθ2の絶対値よりも大きい場合でも、必ずしも参照先を第2センサ出力X2に変更しない。すなわち、第1角度偏差Δθ1の絶対値と第2角度偏差Δθ2の絶対値の差が閾値P1以上かつ閾値P2未満なら、参照先を第1センサ出力X1に維持している。
【0136】
しかし、必ずしもこのようになっていなくてもよい。第1センサ出力X1が参照先として選択されているときに、第1角度偏差Δθ1の絶対値が第2角度偏差Δθ2の絶対値よりも大きい場合、必ず参照先を第2センサ出力X2に変更してもよい。同様に、第2センサ出力X2が参照先として選択されているときに、第2角度偏差Δθ2の絶対値が第1角度偏差Δθ1の絶対値よりも大きい場合、必ず参照先を第1センサ出力X1に変更してもよい。
【0137】
このようにすることで、第1ホールIC71、第2ホールIC72の検出誤差に左右されて参照先が不必要に頻繁に切り替わる可能性がある。すなわち、ハンチングが発生する可能性がある。しかし、そうなったとしても、ハンチングが発生するようなタイミングでは第1センサ出力X1と第2センサ出力X2のどちらを採用しても対象物6が遠回りするような制御は発生する可能性が低い。
【0138】
(変形例2)
上記実施形態では、選択部13は、第1角度偏差Δθ1の絶対値と第2角度偏差Δθ2の絶対値の比較結果に基づいて、参照先を決定している。しかし、第1角度偏差Δθ1の絶対値と所定の基準値(例えば、180°、270°等)との比較に基づいて、参照先を決定してもよい。具体的には、第1角度偏差Δθ1の絶対値が当該基準値より小さければ参照先を第1センサ出力X1とし、第1角度偏差Δθ1の絶対値が当該基準値より大きければ参照先を第2センサ出力X2としてもよい。このような処理でも、対象物6が遠回りするような制御が発生する可能性を低減できる。
【0139】
(変形例3)
上記各実施形態において、第1センサ出力X1の振る舞いと第2センサ出力X2の振る舞いを入れ替えてもよい。
【0140】
(変形例4)
上記各実施形態において、センサ7は、第1ホールIC71、第2ホールIC72という異なる2つのホールICを有し、第1ホールIC71が第1センサ出力X1を出力し、第2ホールIC72が第2センサ出力X2を出力している。しかし、センサ7から、第2ホールIC72が廃され、第1ホールIC71から、第1センサ出力X1、第2センサ出力X2の両方が出力されてもよい。第1ホールIC71で生成されるホール電圧V11、V12から、各実施形態の第1センサ出力X1、第2センサ出力X2に相当する電圧値を算出することができるからである。
【符号の説明】
【0141】
1 ECU
6 対象物
7 センサ
10 目標算出部
13 選択部
17 フィードバック制御部