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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/26 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
B60Q1/26 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021122674
(22)【出願日】2021-07-27
(65)【公開番号】P2023018497
(43)【公開日】2023-02-08
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 英一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大典
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 和実
(72)【発明者】
【氏名】茂木 俊介
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-154635(JP,A)
【文献】特開2017-159881(JP,A)
【文献】特開2008-143510(JP,A)
【文献】特開2020-131897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動機構及び荷室を備え、荷物の配送を行う配送ロボットを構成する本体部と、
前記本体部の周辺障害物を検知する周辺情報検出センサと、
前記周辺情報検出センサによって検出された前記周辺障害物の情報に基づいて前記移動機構を制御することで前記本体部を自律走行させると共に、少なくとも前記本体部の進行方向の前記周辺障害物に関する情報を前記本体部の周囲に表示させる制御部と、
を有し、
前記制御部は、中心が前記本体部の位置に対応する円形の画像を表示すると共に、前記本体部と前記周辺障害物との位置関係と対応する位置に前記画像よりも小さい円形の画像で前記周辺障害物の画像を表示し、かつ、前記荷室に収容された荷物の受取人が前記本体部の周囲に存在する場合、前記周辺障害物に対応する前記画像のうち、受取人に対応する画像の色を変化させて表示する、移動体。
【請求項2】
前記制御部は、前記本体部と前記周辺障害物との距離に応じて表示態様を変化させる、請求項1に記載の移動体。
【請求項3】
前記周辺情報検出センサは、進行方向を撮像するカメラを含んで構成されており、
前記制御部は、前記カメラで撮像された前記周辺障害物の画像を表示させる請求項1に記載の移動体。
【請求項4】
前記制御部は、前記本体部の周囲の路面へ画像を投影する投影装置によって前記周辺障害物に関する情報を表示させる請求項1~3の何れか1項に記載の移動体。
【請求項5】
前記制御部は、移動予定方向を表示させる請求項1~4の何れか1項に記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、配送先へ向けて自律走行する自律走行車両と、自律走行車両に搭載され、自律走行車両が配送先の付近に到着した後、配送先まで荷物を配送するドローンを有する配送システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-70159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の配送システムのように、自律走行する移動体によって無人で配送を行う構成では、移動体が周囲の人を検知できているか分からず、不安感を払拭する観点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、移動中であっても周囲の人の不安感を払拭することができる移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る移動体は、移動機構及び荷室を備え、荷物の配送を行う配送ロボットを構成する本体部と、前記本体部の周辺障害物を検知する周辺情報検出センサと、前記周辺情報検出センサによって検出された前記周辺障害物の情報に基づいて前記移動機構を制御することで前記本体部を自律走行させると共に、少なくとも前記本体部の進行方向の前記周辺障害物に関する情報を前記本体部の周囲に表示させる制御部と、を有し、前記制御部は、中心が前記本体部の位置に対応する円形の画像を表示すると共に、前記本体部と前記周辺障害物との位置関係と対応する位置に前記画像よりも小さい円形の画像で前記周辺障害物の画像を表示し、かつ、前記荷室に収容された荷物の受取人が前記本体部の周囲に存在する場合、前記周辺障害物に対応する前記画像のうち、受取人に対応する画像の色を変化させて表示する。
【0007】
請求項1に係る移動体では、本体部は移動機構を備えており、制御部が移動機構を制御することで本体部が自律走行する。また、周辺情報検出センサによって本体部の周辺障害物が検知される。ここで、制御部は、少なくとも本体部の進行方向の周辺障害物に関する情報を本体部の周囲に表示させる。これにより、移動体の周囲の人に対して、移動体が検知した周辺障害物の情報を認識させることができる。また、本体部(移動体)に対する周辺障害物の相対位置を円形の画像で表示することで、周囲の人に対して、移動体との位置関係を認識させることができる。なお、ここでいう「本体部の周囲に表示させる」とは、本体部の外面に表示する構成に限定されず、本体部の周囲に路面に投影する構成を広く含む概念である。また、ここでいう「周辺障害物」とは、移動体の進行の障害となり得る対象を広く含む概念であり、人、動物及び車両などを含む。
【0010】
請求項に係る移動体は、請求項において、前記制御部は、前記本体部と前記周辺障害物との距離に応じて表示態様を変化させる。
【0011】
請求項に係る移動体では、移動体に不用意に近づいてくる人に対して、表示態様を変化させることで、周辺の人が移動体に近づいていることを認識させることができる。
【0012】
請求項に係る移動体は、請求項1において、前記周辺情報検出センサは、進行方向を撮像するカメラを含んで構成されており、前記制御部は、前記カメラで撮像された前記周辺障害物の画像を表示させる。
【0013】
請求項に係る移動体では、周辺障害物の画像を表示することで、周囲の人は、移動体が認識している対象を把握することができる。
【0014】
請求項に係る移動体は、請求項1~の何れか1項において、前記制御部は、前記本体部の周囲の路面へ画像を投影する投影装置によって前記周辺障害物に関する情報を表示させる。
【0015】
請求項に係る移動体では、投影装置によって周辺障害物に関する情報が路面へ投影されるため、表示領域が移動体のサイズに依存しない。このため、移動体の外面に直接表示する構成と比較して、比較的小型の移動体であっても表示領域を広く確保することができる。
【0016】
請求項に係る移動体は、請求項1~の何れか1項において、前記制御部は、移動予定方向を表示させる。
【0017】
請求項に係る移動体では、移動予定方向を表示することで、周囲の人に対して移動体の移動方向を事前に把握させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明に係る移動体によれば、移動中であっても周囲の人の不安感を払拭することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る移動体を側方から見た概略側面図である。
図2】実施形態に係る移動体のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】実施形態に係る移動体が路面に投影した表示例を示す図である。
図4】実施形態に係る移動体が路面に投影した表示例を示す図である。
図5】実施形態に係る移動体が路面に投影した表示例を示す図である。
図6】変形例における表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る移動体10について説明する。図1に示されるように、本実施形態の移動体10は、略直方体状の本体部12を備えている。なお、図1に示す矢印FR及び矢印UPはそれぞれ、移動体10の進行方向(前方)、及び移動体10の上方を示す。
【0021】
本体部12は、側面視で略矩形状に形成されており、本体部12の内部には荷物Bが収容される荷室が確保されている。ここで、本実施形態の移動体10は一例として、荷物の配送を行う配送ロボットとされている。なお、図1には、一つの荷物Bが収容された状態が図示されているが、これに限定されず、複数の荷物Bを収容可能に構成してもよい。
【0022】
本体部12の上部には、移動体10の周辺の障害物である周辺障害物を検知する周辺情報検出センサ14が設けられている。本実施形態の周辺情報検出センサ14は一例として、ライダ(LIDAR;Light Detection and RangingまたはLaser Imaging Detection and Ranging)などのセンサ類を含んで構成されている。また、周辺情報検出センサ14として、他に工学カメラ及びレーダなどを備えていてもよい。
【0023】
本体部12の上部かつ前部には、投影装置16が設けられている。投影装置16は、移動体10の周囲の路面へ向けて所定の画像を投影する装置であり、本実施形態では一例として、移動体10の前方の路面へ画像を投影するように構成されている。また、投影装置16によって路面へ投影される画像は、周辺情報検出センサ14によって検出された移動体10の周辺障害物に関する情報となっている。
【0024】
本体部12の前面には、前面表示パネル18Fが設けられており、本体部12の後面には、後面表示パネル18Rが設けられている。前面表示パネル18F及び後面表示パネル18Rにはそれぞれ、種々の情報が表示される。本実施形態では一例として、前面表示パネル18F及び後面表示パネル18Rには、移動体10の周辺障害物の画像が表示される。例えば、前面表示パネル18F及び後面表示パネル18Rには、移動体10の周辺を歩行している人の顔が表示される。
【0025】
(移動体10のハードウェア構成)
ここで、移動体10には、制御部19が設けられている。図2に示されるように、移動体10を構成する制御部19は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)20、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)24、ストレージ26、通信I/F(通信インタフェース)28及び入出力I/F(入出力インタフェース)30を含んで構成されている。各構成は、内部バス32を介して相互に通信可能に接続されている。
【0026】
CPU20は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU20は、ROM22又はストレージ26からプログラムを読み出し、RAM24を作業領域としてプログラムを実行する。CPU20は、ROM22又はストレージ26に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0027】
ROM22は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM24は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ26は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0028】
通信I/F28は、洗車装置10が本体部12及び他の機器と通信するためのインタフェースであり、たとえば、CAN(Controller Area Network)、イーサネット(登録商標)、LTE(Long Term Evolution)、FDDI(Fiber Distributed Data Interface)、Wi-Fi(登録商標)などの規格が用いられる。
【0029】
入出力I/F30は、移動機構34、周辺情報検出センサ14、投影装置16、前面表示パネル18F及び後面表示パネル18Rと電気的に接続されている。
【0030】
移動機構34は、本体部12を自律走行させるための機構であり、一対の前輪36Fと、一対の後輪36Rと、前輪36F及び後輪36Rへ駆動力を伝達する図示しないモータと、前輪36F及び後輪36Rの操舵角を変更する図示しない操舵角制御装置とを含んで構成されている。
【0031】
また、本実施形態の移動体10は、制御部19によって自律走行が制御される。具体的には、制御部19は、周辺情報検出センサ14によって検出された周辺情報と、サーバから取得した地図情報とに基づいて走行計画を生成し、生成された走行計画通りに移動体10を移動させるように移動機構34を制御することで自律走行を行う。
【0032】
ここで、制御部19は、少なくとも本体部12(移動体10)の進行方向の周辺障害物に関する情報を本体部の周囲に表示させるように投影装置16を制御する。
【0033】
次に、制御部19が投影装置16によって路面へ投影させる画像の一例について説明する。図3には、投影装置16によって路面へ投影された画像の一例が示されている。この図3に示されるように、制御部19は、投影装置16によって略円形の画像M1を表示させる。画像M1は、最も外側の円形部分と、この円形部分よりも薄く表示された2つの同心円とを含んでいる。
【0034】
また、投影装置16によって画像M1よりも小さい略円形の画像M2、画像M3及び画像M4が表示されている。ここで、画像M2、画像M3及び画像M4はそれぞれ、移動体10の周辺障害物を示したものである。具体的には、画像M1の中心が移動体10の位置に対応しており、この移動体10の位置に対する周辺障害物の相対位置が画像M2、画像M3及び画像M4によって示されている。
【0035】
一例として、画像M2の方向が移動体10の進行方向(前方)と一致している。このため、画像M2と対応する周辺障害物が移動体10の前方に位置していることとなる。また、画像M3と対応する周辺障害物が移動体10の右側に位置していることとなる。さらに、画像M4と対応する周辺障害物が移動体10の左後方に位置していることとなる。このように、本実施形態では、制御部19は、投影装置16によって移動体10の本体部12に対する周辺障害物の相対位置を表示させる。
【0036】
また、制御部19は、移動体10と周辺障害物との距離に応じて画像M2、画像M3及び画像M4の表示態様を変化させる。具体的には、図4に示されるように、画像M2に対応する周辺障害物と移動体10との距離が所定の距離未満になった場合、制御部19は、画像M2の色を変化させて表示する。具体的には、制御部19は、画像M1のうち最も内側の円よりも画像M1の中心(移動体10)に近づいた周辺障害物に対応する画像M2の色を変化させるように構成されている。
【0037】
さらに、本実施形態では、制御部19は、投影装置16によって本体部12の移動予定方向を路面へ投影させる。具体的には、図5に示されるように、矢印を模した画像M5を路面へさせる。
【0038】
画像M5は、移動体10が進路を変更する際に、移動予定方向を画像M1に重ねて表示する。図5の表示例は、進行方向に画像M2に対応する周辺障害物が存在するため、移動体10が周辺障害物を避けるために進路を変更する際の一例である。
【0039】
(作用)
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0040】
本実施形態に係る移動体10では、図1及び図2に示されるように、本体部12が移動機構34を備えており、制御部19が移動機構34を制御することで本体部12が自律走行する。また、周辺情報検出センサ14によって本体部12の周辺障害物が検知される。
【0041】
ここで、制御部19は、少なくとも本体部12の進行方向の周辺障害物に関する情報を本体部12の周囲に表示させる。これにより、移動体10の周囲の人に対して、移動体10が検知した周辺障害物の情報を認識させることができる。
【0042】
また、図3及び図4に示されるように、本実施形態では、投影装置16によって本体部12に対する周辺障害物の相対位置を路面に画像M2、画像M3及び画像M4として表示させることで、周囲の人に対して、移動体10との位置関係を認識させることができる。
【0043】
さらに、投影装置16によって周辺障害物に関する情報が路面へ投影されるため、表示領域が移動体10のサイズに依存しない。このため、比較的小型の移動体10であっても表示領域を広く確保することができる。
【0044】
さらにまた、移動体10に不用意に近づいてくる人に対して、画像M2、画像M3及び画像M4の表示色(表示態様)を変化させることで、周辺の人が移動体に近づいていることを認識させることができる。
【0045】
また、図5に示されるように、本実施形態では、本体部12(移動体10)の移動予定方向を画像M5として表示することで、周囲の人に対して移動体10の移動方向を事前に把握させることができる。
【0046】
また、本実施形態では、前面表示パネル18F及び後面表示パネル18Rによって周辺障害物の画像を表示することで、周囲の人は、移動体10が認識している対象を把握することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、投影装置16によって投影する画像として、図6に示される変形例の構成を採用してもよい。
【0048】
(変形例)
図6に示されるように、本変形例では、投影装置16によって画像M1及び画像M6が路面へ投影される。ここで、画像M6は、移動体10の進行方向を撮像するカメラによって撮像された周辺障害物の画像である。具体的には、制御部19は、移動体10の進行方向の人の顔を画像M6として路面へ投影している。
【0049】
また、移動体10の進行方向に複数の周辺障害物としての人が検知された場合、制御部19は、移動体10に最も近い人の顔を画像M6として路面へ投影させる。
【0050】
本変形例では、移動体10によって検知された人の顔を画像M6として路面へ投影することで、移動体10の周囲の人に対して、移動体10が人の顔を認識していることを把握させることができる。
【0051】
以上、実施形態に係る移動体10について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。上記実施形態では、図1に示されるように、投影装置16によって路面に周辺障害物に関する情報を表示したが、これに限定されない。例えば、投影装置16を備えていない構成であってもよい。この場合、周辺障害物に関する情報を前面表示パネル18F及び後面表示パネル18Rに表示してもよい。また、本体部12の側面にも表示パネルを配置し、各表示パネルと対向する周辺障害物の画像などを各表示パネルに表示させてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、図4に示されるように、移動体10に近づいた周辺障害物の画像M2の色を変化して表示させたが、これに限定されない。例えば、移動体10に近づいた周辺障害物に対応する画像を点滅させてもよい。さらに、上記実施形態では、周辺障害物を略円形の画像で表示したが、これに限定されず、画像の形状は適宜変更してもよい。例えば、周辺障害物の種類に応じて画像の形状を変えてもよい。すなわち、周辺情報検出センサ14によって検知された周辺障害物が車両である場合、車両を模した形状の画像を表示してもよい。
【0053】
さらに、移動体10が配送している荷物Bの受取人が近くに居る場合に、受取人に対応する画像を他の周辺障害物とは異なる色で表示してもよい。例えば、受取人の携帯端末から発信される信号を移動体10が受信することで、荷物Bの受取人であることを認証する場合、受取人に対応する画像の色を変化させる。これにより、受取人の周囲に複数の移動体が走行している場合であっても、荷物Bを配送している移動体10を迅速に把握することができる。
【符号の説明】
【0054】
10 移動体
12 本体部
14 周辺情報検出センサ
16 投影装置
19 制御部
34 移動機構
36F 前輪(移動機構)
36R 後輪(移動機構)
図1
図2
図3
図4
図5
図6