(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】光学式水質測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/18 20060101AFI20241112BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20241112BHJP
G01N 21/59 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G01N33/18 106A
G01N21/64 Z
G01N21/59 Z
(21)【出願番号】P 2021126112
(22)【出願日】2021-07-30
【審査請求日】2024-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】渡部 倭斗
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼田 裕介
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】実公昭50-002581(JP,Y1)
【文献】特開2018-179556(JP,A)
【文献】特開平11-002602(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0070333(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/18
G01N 21/64
G01N 21/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定水中の測定対象の濃度を測定する光学式水質測定装置であって、
前記被測定水を貯留する測定室と、
前記測定室に前記被測定水を供給する供給ラインと、
前記測定室から前記被測定水を排出する排出ラインと、
前記供給ライン又は前記排出ラインに設けられ、指令信号に応じて開閉する給水弁と、
前記測定対象により吸収される成分又は前記測定対象を励起して蛍光を生じさせる成分を含む測定光を前記測定室に投光する投光部と、
前記測定室から出射する光の光量を検出する受光部と、
前記測定室内に、前記被測定水の流れがないときは前記測定光の光路から退避し、前記被測定水の流れがあるときは前記被測定水の水圧により前記測定光の光路に進入するよう配置される可動体と、
前記給水弁に開放を指示する前記指令信号が出力されているときに前記受光部が検出する光量に基づいて前記被測定水の供給の有無を判定する供給判定部と、
を備える、光学式水質測定装置。
【請求項2】
前記供給ラインは前記測定室の下側に接続され、前記排出ラインは前記測定光の光路より上側に接続される、請求項1に記載の光学式水質測定装置。
【請求項3】
前記測定室の底面は円錐状であり、前記可動体は前記底面に当接する球体である、請求項2に記載の光学式水質測定装置。
【請求項4】
前記受光部は、前記測定室から前記測定光の光路と異なる方向に出射する光の光量を検出する、請求項1から3のいずれかに記載の光学式水質測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式水質測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水質を確認する方法として、被測定水に測定対象を励起して蛍光を生じさせる波長の測定光を投光し、測定光が直接入射しない位置に設けた受光素子により測定対象の蛍光を測定することで、測定対象の含有量を算出する方法や、被測定水に測定対象により吸収される測定光を投光し、測定対象に吸収されずに被測定水を透過した測定光を測定することで、測定対象の含有量を算出する方法が知られている。被測定水を測定光の投光及び蛍光の測定を行うための測定室に自動的に供給する機構を備える蛍光測定装置も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるように、バルブを開放して被測定水を供給する場合、バルブの故障等によって被測定水を入れ換えることができなくなる可能性がある。かかる場合、以前に供給された被測定水の測定対象の濃度を繰り返し測定する結果となる。
【0005】
従って、本発明は、被測定水の入れ換えを担保できる光学式水質測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る光学式水質測定装置は、被測定水中の測定対象の濃度を測定する光学式水質測定装置であって、前記被測定水を貯留する測定室と、前記測定室に前記被測定水を供給する供給ラインと、前記測定室から前記被測定水を排出する排出ラインと、前記供給ライン又は前記排出ラインに設けられ、指令信号に応じて開閉する給水弁と、前記測定対象を励起して前記蛍光を生じさせる成分又は前記測定対象を励起して蛍光を生じさせる成分を含む測定光を前記測定室に投光する投光部と、前記測定室から出射する光の光量を検出する受光部と、前記測定室内に、前記被測定水の流れがないときは前記測定光の光路から退避し、前記被測定水の流れがあるときは前記被測定水の水圧により前記測定光の光路に進入するよう配置される可動体と、前記給水弁に開放を指示する前記指令信号が出力されているときに前記受光部が検出する光量に基づいて前記被測定水の供給の有無を判定する供給判定部と、を備える。
【0007】
上述の光学式水質測定装置において、前記供給ラインは前記測定室の下側に接続され、前記排出ラインは前記測定光の光路より上側に接続されてもよい。
【0008】
上述の光学式水質測定装置において、前記測定室の底面は円錐状であり、前記可動体は前記底面に当接する球体であってもよい。
【0009】
上述の光学式水質測定装置において、前記受光部は、前記測定室から前記測定光の光路と異なる方向に出射する光の光量を検出してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被測定水の入れ換えを担保できる光学式水質測定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光学式水質測定装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る光学式水質測定装置1の構成を示す模式図である。なお、図示する光学式水質測定装置1の各構成要素の形状は簡略化されており、各構成要素の寸法も見やすいよう調整されている。
【0013】
光学式水質測定装置1は、被測定水中の測定対象の濃度を測定する。本実施形態の光学式水質測定装置1は、測定対象の蛍光の光量により測定対象の濃度を測定する蛍光測定装置である。光学式水質測定装置1は、ハウジング10と、投光部20と、第1受光部30と、第2受光部40と、供給ライン50と、排出ライン60と、可動体70と、制御装置80と、を備える。
【0014】
ハウジング10は、遮光性を有する材料から形成され、被測定水を貯留する測定室11と、測定室11に第1方向に光を投光する投光路12と、測定室11から第1方向と異なる方向に光を出射する測定光路13と、測定室11から投光路12の延長線上に光を出射する透過光路14と、供給ライン50が接続される供給流路15と、排出ライン60が接続される排出流路16と、を有する。
【0015】
測定室11は、ハウジング10の内部空間として画定される。測定室11は、円錐状の底面111を有することが好ましい。測定室11が円錐状の底面111を有することで、測定室11の内部に比較的均等な水流を形成することができる。また、円錐状の底面111は、測定室11の中に配置される可動体70を平面視で測定室11の中央に位置決めする。これらの効果により、測定室11の中に形成される水流を確実に可動体70に作用させられるので、可動体70を効率よく揺動させられる。
【0016】
投光路12、測定光路13及び透過光路14は、測定室11から被測定水を流出させることなく、少なくとも後述する第1測定光及び第2測定光を透過するよう構成される。例として、投光路12、測定光路13及び透過光路14は、ハウジング10に測定室11に連通するよう形成される穴によって画定され、少なくとも測定室11側の端部が透光性を有する材料で封止される構成とされ得る。投光路12、測定光路13及び透過光路14は、光の入射方向及び出射方向を限定できるよう、小さい断面を有する真直ぐな穴によって形成されることが好ましい。
【0017】
投光路12と透過光路14とは、測定室11の両側に同軸に形成される。測定光路13は、その軸が投光路12及び透過光路14の軸と交差するよう形成される。測定光路13の軸と投光路12及び透過光路14の軸との交差角度は、特に限定されず、例えば90°であってもよい。また、測定光路13の軸は、投光路12及び透過光路14の軸と測定室11の中心部で交差することが好ましい。さらに、投光路12、測定光路13及び透過光路14は、投光路12から測定光路13に至る光路の長さと投光路12から透過光路14に至る光路の長さとが等しくなるよう配設されることが好ましい。なお、
図1では、全ての構成を示すために、投光路12、測定光路13及び透過光路14の軸が同一の鉛直面内に存在するよう図示されているが、現実的には投光路12、測定光路13及び透過光路14の軸が同一の水平面内に存在するよう配設されることが想定される。
【0018】
供給流路15は、測定室11の下側に開口するよう形成されることが好ましく、排出流路16は、測定室11の上部、より詳しくは測定光の光路(投光路12の延長線上)より上側に開口するよう形成されることが好ましい。これにより、測定室11内の被測定水を効率よく入れ換えることができると共に、可動体70を確実に測定光の光路に進入させられるような水流を形成できる。
【0019】
投光部20は、投光路12を通して測定室11に被測定水中の測定対象を励起して蛍光を生じさせる第1波長の第1測定光(例えば、365nmの紫外光)を投光する第1光源21と、投光路12を通して測定室11に測定対象の蛍光の波長と同一又は近似する第2波長の第2測定光(例えば、420nmの紫色光)を投光する第2光源22と、第1光源21及び第2光源22が実装され、第1光源21及び第2光源22に必要に応じて電力を供給する投光回路基板23と、を有する。投光部20は、投光路12への外光の入射を防止する投光部カバー24を有することが好ましい。
【0020】
第1光源21及び第2光源22は、典型的には発光ダイオードによって構成される。発光ダイオードのように小さい素子からなる第1光源21及び第2光源22は、同じ投光回路基板23上に隣接して配設することができる。
図1では第1光源21及び第2光源22を大きく図示するが、実際には、第1光源21及び第2光源22は同じ位置に存在するものと考えて差し支えない程度小さく、互いに接近して配置され得る。このように微小な第1光源21及び第2光源22を隣接して配置することにより、第1測定光の光軸と第2測定光の光軸とを実質的に合致させることができるので、第1測定光と第2測定光の入射方向の差によって生じ得る測定誤差を小さくできる。
【0021】
投光回路基板23は、第1光源21及び第2光源22を投光路12を通して測定室11の中に測定光を投光できる位置に保持する機能を果たす。また、投光回路基板23は、制御装置80からの指令信号に従って、第1光源21又は第2光源22を選択的に発光させる駆動回路を有する。
【0022】
第1受光部30は、測定光路13を通して測定室11から出射する蛍光(第2波長の光)の光量(強度)を検出する。第1受光部30は、測定光路13から出射する光を受光してその光量に応じた電気信号を生成する第1受光素子31と、第1受光素子31が実装される第1検出回路基板32と、測定光路13から出射する光から第1波長の成分を除去するフィルタ33と、を有する。第1受光部30は、測定光路13への外光の入射を防止する第1受光部カバー34を有することが好ましい。
【0023】
第1受光素子31は、典型的にはフォトダイオードによって構成される。第1検出回路基板32は、第1受光素子31が出力する信号を増幅する第1増幅回路を備えることが好ましい。また、第1検出回路基板32は、第1受光素子31の検出信号を必要に応じてディジタル信号に変換するAD変換回路を有してもよい。
【0024】
フィルタ33は、第1波長を含む波長域の光を遮断する一方、第2波長の近傍の波長域の光を透過する。これにより、第1受光素子31は、測定光路13から出射する第2波長の光の光量を検出する。つまり、フィルタ33を設けることによって、第1受光素子31は、測定室11に第1測定光が透光されているときに、被測定水の着色による第1測定光の散乱光を受光せず、測定対象の蛍光の光量だけを検出できるので、蛍光の光量を正確に測定し、測定対象の濃度をより正確に算出することを可能にする。
【0025】
第2受光部40は、透過光路14を通して測定室11から出射する第1測定光及び第2測定光の光量を検出する。つまり、第2受光部40は、測定対象に吸収又は反射されることなく直進した第1測定光又は第2測定光の光量を検出する。第2受光部40は、透過光路14から出射する光を受光してその光量に応じた電気信号を生成する第2受光素子41と、第2受光素子41が実装される第2検出回路基板42と、を有する。第2受光部40は、透過光路14への外光の入射を防止する第2受光部カバー43を有することが好ましい。
【0026】
第2受光素子41は、第1受光素子31と同様に、典型的にはフォトダイオードによって構成される。第2検出回路基板42も、第1検出回路基板32と同様に、第2受光素子41が出力する信号を増幅する第2増幅回路を備えることが好ましく、AD変換回路を有してもよい。
【0027】
供給ライン50は、供給流路15から測定室11に新たに測定される被測定水を供給する。したがって、供給ライン50は、測定室11の下端に接続されることが好ましい。供給ライン50は、制御装置80から入力される指令信号に応じて開閉し、被測定水の供給を遮断する給水弁51を有する。つまり、被測定水は給水弁51を介して測定室11に供給される。
【0028】
排出ライン60は、測定室11から測定済みの被測定水を排出する。したがって、排出ライン60は、測定室11の測定光の光路より上側の領域に接続されることが好ましい。排出ライン60は、供給ライン50から新たな被測定水を供給したときに、被測定水をオーバーフローさせるよう、排出流路16から下方に延びるよう設けられ得る。
【0029】
可動体70は、測定室11内に、被測定水の流れがないときは測定光の光路から退避し、被測定水の流れがあるときは被測定水の水圧により測定光の光路に進入するよう配置される。具体的には、可動体70は、例えばポリアセタール樹脂等から形成されることにより被測定水よりもやや比重が大きく、被測定水の流れがないときは測定室11の底部に沈降し、供給ライン50から測定室11に被測定水が供給されているときは、被測定水の流れによって押し上げられて測定光の光路の高さまで上昇する。
【0030】
可動体70の形状としては、測定室11の底面111に密接して供給流路15を封止できる形状が好ましく、底面111が円錐状である場合には可動体70が底面111に当接する球体であることが好ましい。可動体70によって供給流路15を封止可能とすることによって、例えば供給ライン50と供給流路15との接続部等に漏れが生じた場合に、測定対象の濃度の測定中等、被測定水の供給がないときに測定室11から供給流路15を通して被測定水が流出することを防止する逆止弁として機能する。特に、円錐状の底面111に球形の可動体70を配置することで、供給流路15の封止を確実にできると共に、被測定水の水圧で確実に可動体70を測定光の光路に進入させられる。
【0031】
可動体70は、測定光を反射しやすい色を有することが好ましい。具体的には、可動体70は、光拡散材を含有し、白色又は白色に近い色を有する材料によって形成されることが好ましい。これにより、可動体70が測定光の光路に浸入したときの第1受光素子31及び第2受光素子41が受光する光量の変化が大きくなる。
【0032】
制御装置80は、投光部20及び供給ライン50を制御し、第1受光部30及び第2受光部40の検出値に基づいて被測定水中の測定対象の濃度を算出する。また、制御装置80は、供給ライン50から被測定水を供給する際に、実際に被測定水が測定室11内に供給されているか否かを確認する。制御装置80は、例えばメモリ、CPU、入出力インターフェイス等を有するコンピュータ装置に適切なプログラムを実行させることにより実現できる。
【0033】
制御装置80は、給水制御部81と、供給判定部82と、測定制御部83と、濃度算出部84と、を備える。なお、給水制御部81、供給判定部82、測定制御部83及び濃度算出部84は、制御装置80の機能を類別したものであって、物理的構成及びプログラム構成において明確に区別できるものでなくてもよい。
【0034】
給水制御部81は、測定室11中の被測定水を入れ換えるために、投光部20及び供給ライン50を動作させ、第1受光部30及び第2受光部40の少なくとも一方の検出値を取得する。具体的には、給水制御部81は、給水弁51に所定時間だけ、給水弁51に開放を指示する信号を入力すると共に、投光部20に第1光源21又は第2光源22を発光させる信号を入力し、第1受光部30及び第2受光部40が受光した光量の検出信号を取得する。給水制御部81は、第2光源22を発光させて第2測定光を投光し、第1受光部30が受光する光量を取得することが好ましい。
【0035】
供給判定部82は、給水制御部81から給水弁51に開放を指示する指令信号が出力されているときに第1受光部30及び第2受光部40の少なくとも一方が検出する光量に基づいて被測定水の供給の有無を判定する。具体的には、第1受光部30及び第2受光部40の少なくとも一方が検出する光量の変化量が予め設定される閾値以上である場合、被測定水の流れにより可動体70が移動して測定光の光路に進入することにより測定光が遮光又は反射されて検出値が変化したと考えられるため、被測定水が適切に供給されていると判定する。
【0036】
供給判定部82は、給水弁51の開放中に第1受光部30及び第2受光部40の少なくとも一方の検出値が所定の閾値に達した場合に被測定水が適切に供給されていると判定してもよい。具体的には、供給判定部82は、可動体70が測定光の光路に進入して測定光を遮光することによって第1受光部30又は第2受光部40の受光量が所定の閾値以下に減少した場合に被測定水が適切に供給されていると判定する構成とされ得る。また、可動体70が光を反射する場合、可動体70が測定光の光路に接近及び進入することによって第1受光部30の受光量が少なくとも一時的に増大し得る。このため、供給判定部82は、第1受光部30の受光量が所定の閾値以上となった場合に被測定水が適切に供給されていると判定してもよい。また、被測定水の水流による可動体70の移動は不規則であるため、供給判定部82は、検出値と閾値との単純な比較ではなく、給水弁51の開放中に一定の時間間隔で取得した検出値の標準偏差、分散等を指標として、検出値の変動量が大きい場合に被測定水が適切に供給されていると判定してもよい。また、供給判定部82は、1回の給水弁51の開放による被測定水の供給において被測定水の給水の適否を判定するのではなく、複数回の被測定水の供給における第1受光部30及び第2受光部40の少なくとも一方の検出値に基づいて被測定水の給水の適否を判定してもよい。例として、供給判定部82は、所定回数の被測定水の供給に際して連続して上述のような判定基準により被測定水が適切に供給されていない蓋然性が高いと判断された場合に、被測定水が適切に供給されていないとの最終判定を行うようにしてもよい。
【0037】
光学式水質測定装置1では、給水制御部81が第2光源22を発光させて第2測定光を投光し、第1受光部30が受光する光量を取得することで、供給判定部82による被測定水の供給の有無の判定が容易となる。第1受光部30は、第2測定光の投光時に、第2測定光の光路と異なる方向に出射する光、つまり被測定水の着色等による微弱な散乱光を検出するため、可動体70の移動によって検出光量の変化が大きくなる。第1受光部30が検出する散乱光は、着色による複数回の反射によって第1受光素子31に入射する光を含む。このため、測定光の光路、つまり投光路12延長線上の空間に測定光を反射する可動体70が接近するだけでも、第1受光部30の受光量は変化し得る。したがって、第1受光部30の受光量は、第2受光部40の受光量と比較して被測定水の水流に起因する可動体70の移動による変動が大きくなるため、第1受光部30の受光量によって被測定水の供給の有無を比較的正確に判定できる。
【0038】
供給判定部82は、給水弁51を開放したにもかかわらず、第1受光部30の受光量が変動せず、被測定水が供給されていないと判断される場合には、被測定水の供給不良を示す信号を出力するよう構成され得る。光学式水質測定装置1は、供給判定部82から出力される被測定水の供給不良を示す信号を受信してオペレータに視覚情報、聴覚情報等を用いて報知する報知装置をさらに備えてもよい。
【0039】
測定制御部83は、給水制御部81による被測定水の入れ替えの後に、第1光源21及び第2光源22を順番に一定時間ずつ発光させ、第1受光部30及び第2受光部40が受光した光量の検出値を取得する。
【0040】
濃度算出部84は、測定制御部83により取得した第1受光部30及び第2受光部40の検出値に基づいて被測定水における測定対象の濃度を算出する。基本的な考え方として、第1光源21から第1測定光を投光したときの第1受光素子31が受光する第2波長の光は、被測定水中の測定対象の蛍光によるものであるため、第1測定光の投光時の第1受光素子31の受光量から被測定水中の測定対象が算出できる。しかしながら、投光路12から測定光路13に至るまでの被測定水中の光路において第1測定光及び測定対象の蛍光が測定対象及び被測定水の着色等によって吸光されることにより、第1受光素子31の受光量が正確に測定対象の濃度と対応しなくなり得る。このため、濃度算出部84は、第1測定光の投光時の第2受光素子41の受光量、第2測定光の投光時の第1受光素子31の受光量及び第2受光素子41の受光量に基づいて、吸光及び散乱による受光量の誤差を補正して正確な測定対象の濃度を算出する。
【0041】
光学式水質測定装置1は、給水弁51に開放を指示する指令信号が出力されているときに受光部30,40が検出する光量に基づいて被測定水の供給の有無を判定する供給判定部82を備えるため、被測定水が適切に入れ替えられているか否かを判断できる。
【0042】
以上、本発明の光学式水質測定装置の好ましい各実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0043】
例として、本発明の光学式水質測定装置において、供給ラインが測定室の上側に接続され、排出ラインが測定室の下側に接続されてもよい。この場合可動体は、被測定水よりも小さい比重を有し、水流によって沈降するよう形成される。また、本発明の光学式水質測定装置において、給水弁は、排出ラインに設けられてもよい。
【0044】
上述の実施形態では、補正に用いるデータを得るために第2光源及び第2受光素子を有するが、第2光源及び第2受光素子は省略されてもよい。また、第1測定光を投光する光路と、第2測定光を投光する光路とが別に設けられてもよい。
【0045】
また、上述の実施形態は測定対象の濃度を測定対象の蛍光の光量により測定する蛍光測定装置であるが、本発明に係る光学式水質測定装置は、測定対象による測定光の吸収量を測定することにより測定対象の濃度を算出する吸光光度計であってもよい。また、本発明に係る光学式水質測定装置は、多波長の測定光を用いて被測定水に含まれる未知測定対象の種類を特定すると共にその濃度を算出する分光光度計であってもよい。従って、本発明に係る光学式水質測定装置における測定光は、短波長の光に限られず、測定対象により吸収される成分又は測定対象を励起して蛍光を生じさせる成分を含む光であればよい。
【符号の説明】
【0046】
1 光学式水質測定装置
10 ハウジング
11 測定室
111 底面
12 投光路
13 測定光路
14 透過光路
15 供給流路
16 排出流路
20 投光部
21 第1光源
22 第2光源
23 投光回路基板
24 透光部カバー
30 第1受光部
31 第1受光素子
32 第1検出回路基板
33 フィルタ
34 第1受光部カバー
40 第2受光部
41 第2受光素子
42 第2検出回路基板
43 第2受光部カバー
50 供給ライン
51 給水弁
60 排出ライン
70 可動体
80 制御装置
81 給水制御部
82 供給判定部
83 測定制御部
84 濃度算出部