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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】EGR弁の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/49 20160101AFI20241112BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20241112BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20241112BHJP
   F02M 26/48 20160101ALN20241112BHJP
【FI】
F02M26/49
F02D9/02 S
F02D43/00 301K
F02D43/00 301N
F02M26/48
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021141190
(22)【出願日】2021-08-31
(65)【公開番号】P2023034784
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安村 昂平
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-28335(JP,A)
【文献】国際公開第02/14673(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/00
F02D 9/02
F02D 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のEGR通路に配置されたEGR弁の駆動デューティ比を制御することにより、前記EGR弁の開閉動作を制御するEGR弁の制御装置において、
前記EGR通路は、前記内燃機関の排気管と吸気管とを連通し、
前記排気管には、前記EGR通路に連通した部位よりも下流側に三元触媒が設けられ、
前記EGR弁の実開度は、位置センサにより検出され、
前記EGR弁の実開度が全閉以外の所定開度以上の場合に、前記実開度と目標開度との偏差に基づいて少なくとも積分項を算出して前記駆動デューティ比をフィードバック制御し、前記EGR弁の全閉要求があって前記EGR弁の実開度が全閉以外の前記所定開度未満の場合に、前記駆動デューティ比は前記EGR弁の実開度によらずに増減するように制御する着座制御を実行し、前記EGR弁の全閉要求がなく前記EGR弁の実開度が全閉以外の前記所定開度未満の場合に、前記偏差に基づいて少なくとも前記積分項を算出して前記駆動デューティ比をフィードバック制御する制御部と、
前記EGR弁の全閉要求があって前記フィードバック制御の実行中に前記駆動デューティ比が上限値以上となった場合に、前記EGR弁に異物の噛み込みが発生していると判定し、前記EGR弁の全閉要求があって前記着座制御の実行中に前記位置センサにより検出された前記EGR弁の実開度が所定時間以上一定の値を示す場合に、前記EGR弁に異物の噛み込みが発生していると判定する判定部と、を備え、
前記制御部は、前記EGR弁の全閉要求がある場合には前記目標開度を前記所定開度よりも小さい値に設定し、
前記判定部により前記EGR弁に異物の噛み込みが発生していると判定された場合には、前記内燃機関が低負荷運転状態の場合には、前記内燃機関の燃焼室に十分な新気を供給するために前記内燃機関のスロットルバルブの開度を増大させ、前記内燃機関が高負荷運転状態の場合には、新気が前記EGR通路を介して前記三元触媒に過剰に供給されることを防止するために、前記スロットルバルブの開度を低減する、EGR弁の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGR弁の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のEGR通路に配置されたEGR弁が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2008/081643
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなEGR弁に異物の噛み込みが発生すると、EGR弁を全閉状態にすることができない。特に異物が大きい場合には、内燃機関の運転状態にも影響を及ぼすおそれがある。従って、このようなEGR弁での異物の噛み込みを早期に判定することが望まれる。
【0005】
そこで本発明は、EGR弁での異物の噛み込みの有無を早期に判定することができるEGR弁の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、内燃機関のEGR通路に配置されたEGR弁の駆動デューティ比を制御することにより、前記EGR弁の開閉動作を制御するEGR弁の制御装置において、前記EGR通路は、前記内燃機関の排気管と吸気管とを連通し、前記排気管には、前記EGR通路に連通した部位よりも下流側に三元触媒が設けられ、前記EGR弁の実開度は、位置センサにより検出され、前記EGR弁の実開度が全閉以外の所定開度以上の場合に、前記実開度と目標開度との偏差に基づいて少なくとも積分項を算出して前記駆動デューティ比をフィードバック制御し、前記EGR弁の全閉要求があって前記EGR弁の実開度が全閉以外の前記所定開度未満の場合に、前記駆動デューティ比は前記EGR弁の実開度によらずに増減するように制御する着座制御を実行し、前記EGR弁の全閉要求がなく前記EGR弁の実開度が全閉以外の前記所定開度未満の場合に、前記偏差に基づいて少なくとも前記積分項を算出して前記駆動デューティ比をフィードバック制御する制御部と、前記EGR弁の全閉要求があって前記フィードバック制御の実行中に前記駆動デューティ比が上限値以上となった場合に、前記EGR弁に異物の噛み込みが発生していると判定し、前記EGR弁の全閉要求があって前記着座制御の実行中に前記位置センサにより検出された前記EGR弁の実開度が所定時間以上一定の値を示す場合に、前記EGR弁に異物の噛み込みが発生していると判定する判定部と、を備え、前記制御部は、前記EGR弁の全閉要求がある場合には前記目標開度を前記所定開度よりも小さい値に設定し、前記判定部により前記EGR弁に異物の噛み込みが発生していると判定された場合には、前記内燃機関が低負荷運転状態の場合には、前記内燃機関の燃焼室に十分な新気を供給するために前記内燃機関のスロットルバルブの開度を増大させ、前記内燃機関が高負荷運転状態の場合には、新気が前記EGR通路を介して前記三元触媒に過剰に供給されることを防止するために、前記スロットルバルブの開度を低減する、EGR弁の制御装置によって達成できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、EGR弁での異物の噛み込みの有無を早期に判定することができるEGR弁の制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施例のエンジンシステムの概略構成図である。
図2図2A及び図2Bは、EGR弁の概略構成図である。
図3図3は、EGR弁での駆動デューティ比の制御の説明図である。
図4図4は、EGR弁での異物Fの噛み込みが生じた場合の説明図である。
図5図5は、比較例と本実施例でのF/B制御の説明図である。
図6図6は、異物の噛み込みが発生した場合での比較例と本実施例での実開度とF/B制御による駆動デューティ比との推移を示したタイミングチャートである。
図7図7は、実開度が異物開度に制限されてから駆動デューティ比が-100%となるまでの時間と、F/B制御での偏差との関係を示したグラフである。
図8図8は、ECUが実行する異物噛み込み制御の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[エンジンシステムの概略構成]
図1は、本実施例のエンジンシステムの概略構成図である。エンジン20は、内燃機関の一例であり、4つの気筒を有した直列4気筒ガソリンエンジンであるが、これに限定されず、例えばディーゼルエンジンであってもよい。また、エンジン20は過給機付きエンジンであってもよい。エンジン20では、ピストン24が収納されたシリンダブロック21上に設置されたシリンダヘッド22内の燃焼室23内で混合気を燃焼させて、ピストン24を往復動させる。ピストン24の往復動は、クランクシャフト26の回転運動に変換される。シリンダブロック21の下部には、潤滑用のオイルを貯留したオイルパン21aが設けられている。
【0010】
エンジン20のシリンダヘッド22には、吸気ポート10iを開閉する吸気弁42と、排気ポート30eを開閉する排気弁44とが気筒ごとに設けられている。また、シリンダヘッド22の頂部には、燃焼室23内の混合気に点火するための点火プラグ27が気筒ごとに取り付けられている。また、シリンダヘッド22には、燃焼室23内に燃料を噴射する筒内噴射弁12が設けられている。吸気弁42の開弁時に燃焼室23に吸入された吸入空気と筒内噴射弁12から噴射された燃料とが混合されて混合気をなし、この混合気がピストン24で圧縮され点火プラグ27で点火燃焼させられる。
【0011】
各気筒の吸気ポート10iは気筒毎の枝管を介してサージタンク18に接続されている。サージタンク18の上流側には吸気管10が接続されており、吸気管10の上流端にはエアクリーナ19が設けられている。吸気管10には、上流側から順に、吸入空気量を検出するためのエアフロメータ15、電子制御式のスロットルバルブ13が設けられている。また、サージタンク18には吸気圧を検出する吸気圧センサ17が設けられている。
【0012】
各気筒の排気ポート30eは気筒毎の枝管を介して排気管30に接続されている。排気管30には、三元触媒31が設けられている。三元触媒31の上流側には、排気ガスの空燃比を検出するための空燃比センサ33が設置されている。
【0013】
排気管30と吸気管10とを連通するEGR管50が設けられている。EGR管50には、開度調整が可能なEGR弁52が設けられている。EGR弁52が開くことにより、排気ガスの一部が吸気管10に還流され、EGR弁52の開度を調整することにより、燃焼室23に吸入される吸気ガスの総量に対するEGRガスの量の比率であるEGR率を調整することができる。EGR管50には、EGRクーラが備えられていてもよい。
【0014】
ECU(Electronic Control Unit)100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及びバックアップRAMなどを備えている。ROMには、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPUは、ROMに記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAMはCPUでの演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAMはイグニッションオフ時などにおいて保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。CPU、ROM、RAM、及びバックアップRAMは、詳しくは後述する制御部及び判定部を機能的に実現する。
【0015】
ECU100には、上述の点火プラグ27、スロットルバルブ13、筒内噴射弁12、及びEGR弁52が電気的に接続されている。またECU100には、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ11、スロットルバルブ13のスロットル開度を検出するスロットル開度センサ14、エアフロメータ15、吸気圧センサ17、クランクシャフト26のクランク角を検出するクランク角センサ25、空燃比センサ33、その他の各種センサが電気的に接続されている。ECU100は、各種センサの検出値等に基づいて、所望の出力が得られるように、点火プラグ27、スロットルバルブ13、筒内噴射弁12、EGR弁52等を制御し、点火時期、燃料噴射量、燃料噴射時期、スロットル開度、EGR率等を制御する。
【0016】
[EGR弁の概略構成]
次に、EGR弁52の概略構成について説明する。図2A及び図2Bは、EGR弁52の概略構成図である。図2Aは全閉状態のEGR弁52を示しており、図2Bは全開状態のEGR弁52を示している。EGR弁52は、弁体53、弁座54、モータ55、バネ56、及び位置センサ57を含む。弁体53は、EGR管50内に配置された弁座54に対して着座可能かつ移動可能に設けられている。バネ56は、弁体53を弁座54に着座する方向に付勢する。
【0017】
モータ55は、DC(Direct Current)モータであり、弁体53を開閉方向に変位させる。具体的には、ECU100からモータ55の駆動回路にPWM(パルス幅変調)信号の駆動デューティ比が与えられると、モータ55のコイルに、駆動デューティ比に対応した電力が供給され、モータ55のコイルに開弁方向又は閉弁方向のモータ駆動電流が流れる。これにより弁体53が開き側または閉じ側へ移動する。詳細には、駆動デューティ比は+100%から-100%までの間で設定される。駆動デューティ比がプラスの値の場合には弁体53に開弁方向の力が作用し、マイナスの値の場合には弁体53に閉弁方向の力が作用する。
【0018】
位置センサ57は、弁体53の位置に応じた検出信号、換言すればEGR弁52の開度に応じた検出値をECU100に出力し、ECU100はEGR弁52の実開度を取得する。
【0019】
図3は、EGR弁52での駆動デューティ比の制御の説明図である。EGR弁52の開度が100%(全開)以下であって切替開度SD以上の区間をフィードバック制御(以下、F/B制御と称する)が実行されるF/B制御区間と称する。EGR弁52の開度が切替開度SD未満から0%(全閉)の区間を着座制御が実行される着座制御区間と称する。実開度がF/B制御区間に属している場合には、実開度と目標開度の偏差がなくなるように駆動デューティ比がPID(Proportional Integral Differential)制御によりF/B制御される。F/B制御は、実開度を目標開度に精度よく一致させるための制御である。EGR弁52への全閉要求がある場合であって実開度が着座制御区間に属している場合には、駆動デューティ比は実開度によらずに所定の順序で増減するように制御される。着座制御は、EGR弁52への全閉要求があった場合に弁体53が弁座54に着座する際の衝撃を緩和して衝突音を抑制し、弁座54の摩耗や弁体53に係合する部品(例えばモータ55のギア)の疲労破壊を防止するための制御である。切替開度SDは、上述のようにF/B制御から着座制御に切り替えられる開度であり、例えば50%未満の開度に設定される。切替開度SDは所定開度の一例である。
【0020】
ECU100は、エンジン20の運転状態に応じて目標開度を算出する。ここで目標開度は、100%以下の範囲内で算出される。またECU100は、エンジン20の運転状態に応じて、EGR弁52の実開度を0%にする全閉を要求する。全閉要求がある場合には、上述したF/B制御に用いられる目標開度を0%に設定するのではなく、後述する予め定められた、0%以外の値である暫定目標開度をF/B制御での目標開度に設定する。
【0021】
例えば実開度がF/B制御区間に属している状態で全閉要求がある場合には、目標開度として暫定目標開度に設定されて上述したF/B制御が実行される。これにより実開度が切替開度SD未満になると、上述した着座制御が実行される。尚、目標開度が0以外である全閉要求がない場合では、実開度に関わらず、換言すれば、実開度が切替開度SD未満の場合であっても、上述したF/B制御が実行される。
【0022】
[EGR弁での異物の噛み込み]
次に、EGR弁52での異物の噛み込みについて説明する。図4は、EGR弁52での異物Fの噛み込みが生じた場合の説明図である。弁体53が弁座54から離れた開弁状態から弁体53が弁座54に着座する閉弁状態に移行する際に、弁体53と弁座54との間に異物Fが噛みこまれる可能性がある。図4に示すように、弁体53と弁座54との間に異物Fが噛みこむと、弁体53と弁座54との間に隙間が生じる。このため、本来EGR管50が閉鎖すべきところ、この隙間によりEGR管50が連通状態となる場合がある。
【0023】
このような異物が大きいと、例えば低負荷運転時には吸気圧よりも排気圧が高いことからEGRガスが吸気管10を過剰に流れて、燃焼室23に十分な新気を供給できないおそれがある。また過給機エンジンであってターボ上流からコンプレッサ下流に排気ガスを還流させる過給EGRシステムの場合には、高負荷運転時には吸気圧の方が排気圧よりも高いため、新気がEGR管50を介して三元触媒31に過剰に供給され三元触媒31が過昇温するおそれがある。従ってこのような異物の噛み込みを早期に判定することが望まれる。
【0024】
図5は、比較例と本実施例でのF/B制御の説明図である。図5では、異物Fにより制限される開度を異物開度FDと称して示している。また、図5では実開度がF/B制御区間に属しており全閉要求があった場合である。異物開度FDは、切替開度SDよりも大きい場合を示している。比較例では、全閉要求がある場合にF/B制御での目標開度として設定される暫定目標開度TDxは、切替開度SDに一致している。これに対して本実施例では、全閉要求がある場合にF/B制御での目標開度として設定される暫定目標開度TDeは、切替開度SDよりも小さい。即ち比較例では、異物Fが存在していなかった場合には、実開度が切替開度SDになると実開度と暫定目標開度TDxとの偏差が0になり、F/B制御から着座制御に切り替えられる。本実施例では、異物Fが存在していなかった場合には、実開度が切替開度SDとなっても実開度と暫定目標開度TDeとの偏差が存在した状態のまま、F/B制御から着座制御に切り替えられる。
【0025】
異物Fが存在していた場合には、実開度は異物開度FDに制限される。この状態で、比較例での実開度(異物開度FD)と暫定目標開度TDxとの偏差よりも、本実施例での実開度(異物開度FD)と暫定目標開度TDeとの偏差の方が大きい。
【0026】
図6は、異物Fの噛み込みが発生した場合での比較例と本実施例での実開度とF/B制御による駆動デューティ比との推移を示したタイミングチャートである。時刻t0で全閉要求があると、比較例では暫定目標開度TDxに基づいてF/B制御が実行され、本実施例では暫定目標開度TDxよりも小さい暫定目標開度TDeに基づいてF/B制御が実行される。このため上述したように、比較例よりも本実施例の方が偏差が大きく、比較例よりも本実施例の方が実開度の低下速度は速い。従って時刻t1で本実施例の方が先に実開度が異物開度FDとなり、その後の時刻t2で比較例での実開度が異物開度FDとなる。また、本実施例では時刻t1以降で偏差が一定であるため積分項が増大して、駆動デューティ比が負の方向に増大し、時刻t3で駆動デューティ比が最大の-100%となる。同様に比較例でも時刻t2以降で偏差が一定であるため積分項が増大して、駆動デューティ比が負の方向に増大し、時刻t4で駆動デューティ比が最大の-100%となる。ここで、上述したように比較例よりも本実施例の方が偏差が大きいため、比較例よりも本実施例の方が先に駆動デューティ比が-100%となる。
【0027】
図7は、実開度が異物開度FDに制限されてから駆動デューティ比が-100%となるまでの時間[ms]と、F/B制御での偏差「%」との関係を示したグラフである。縦軸は時間を示し、横軸は偏差を示している。上記の時間は、図6の例では比較例では時刻t2から時刻t4までの間の時間に相当し、本実施例では時刻t1から時刻t3までの時間に相当する。図7に示すように、偏差が大きいほど上記の時間は短くなる。
【0028】
ここで、異物Fの噛み込みの有無の判定方法として以下のようなものがある。ECU100は、全閉要求がある場合に駆動デューティ比が上限値以上、ここでは-100%となって、この状態が所定時間以上継続したことをもって、異物Fの噛み込みが発生していると判定する。上述したように比較例よりも本実施例の方が、実開度が異物に制限されてから駆動デューティ比が-100%になるまでの時間は短く、先に駆動デューティ比が-100%になる。このため、比較例よりも本実施例の方が早期に異物Fの噛み込みが発生していることを判定することができる。
【0029】
[異物噛み込み判定制御]
次にECU100が実行する異物噛み込み判定制御の一例について説明する。図8は、ECU100が実行する異物噛み込み判定制御の一例を示したフローチャートである。ECU100は、全閉要求があるか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1でNoの場合には、目標開度としてエンジン20の運転状態に応じて100%以下の範囲内の開度に設定され(ステップS3)、F/B制御が実行される(ステップS6)。ステップS1でYesの場合には、上述したようにF/B制御での目標開度として、切替開度SDよりも小さい暫定目標開度TDeを設定する(ステップS2)。ステップS2は、制御部が実行する処理の一例である。
【0030】
次にECU100は、位置センサ57の検出値に基づいて実開度が切替開度SD未満となったか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4でYesの場合には、ECU100は着座制御を実行する(ステップS5)。ステップS4でNoの場合には、F/B制御を実行する(ステップS6)。ステップS6は、制御部が実行する制御の一例である。
【0031】
次にECU100は、異物の噛み込みが発生しているか否かの判定を行う(ステップS7)。具体的には、F/B制御の継続中においては、ECU100は上述したように駆動デューティ比が-100%となってから所定時間経過した場合に、異物の噛み込みが発生していると判定される。着座制御の継続中においては、位置センサ57により検出された実開度が所定時間以上一定の値を示す場合に、異物の噛み込みが発生していると判定される。ステップS7でNoの場合、即ち異物の噛み込みは発生していないと判定された場合には、本制御は終了する。ステップS7は、判定部が実行する制御の一例である。尚、ステップS1でNoと判定され、ステップS3及びS6が実行されている場合にも、上述したステップS7が実行される。
【0032】
ステップS7でYesの場合、即ち異物の?み込みが発生していると判定された場合には、ECU100は所定のフェールセーフ処理を実行する(ステップS8)。例えばエンジン20が低負荷運転状態の場合には、燃焼室23に十分な新気を供給するためにスロットルバルブ13の開度を増大させる。また、エンジン20が高負荷運転状態の場合には、新気がEGR管50を介して三元触媒31に過剰に供給されることを防止するために、スロットルバルブ13の開度を低減する。
【0033】
上記実施例では、全閉要求がある場合でのF/B制御に用いられる暫定目標開度TDeは0よりも大きい値であったが、0であってもよい。この場合も、全閉要求がある場合でのF/B制御での偏差を最大化することができ、切替開度SDよりも大きい異物の噛み込み時に早期に異物の噛み込みが発生していると判定することができるからである。
【0034】
上記実施例では、PID制御によりF/B制御を実行したが、PI(Proportional Integral)制御であってもよい。この場合も、異物の噛み込み時に積分項が増大して駆動デューティ比が-100%にまで増大するからである。
【0035】
上記実施例では、上限値として-100%を例に説明したが、これに限定されず、たとえば-90%であってもよい。上限値は、異物の噛み込みが発生していない場合には駆動デューティ比がその値にまで増大することはないが、異物の噛み込み時にその値以上にまで増大することが考えられる値に設定するのが好ましい。
【0036】
上記実施例では、駆動デューティが上限値以上となって所定時間経過したことをもって異物の噛み込みが発生していると判定したが、これに限定されない。例えば、駆動デューティが上限値以上となった場合に直ちに異物の噛み込みが発生していると判定してもよい。これにより、より早期に異物の?み込みの判定を行うことができる。
【0037】
本実施例のエンジンシステムは、ハイブリッド車両に搭載されたエンジンシステムであってもよい。また、エンジンは過給機付きエンジンであってもよい。
【0038】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
20 エンジン
50 EGR管
52 EGR弁
53 弁体
54 弁座
55 モータ
56 バネ
57 位置センサ
100 ECU(制御部、判定部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8