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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】排気管の断熱構造
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/14 20100101AFI20241112BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20241112BHJP
【FI】
F01N13/14
F01N13/08 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021145968
(22)【出願日】2021-09-08
(65)【公開番号】P2023039030
(43)【公開日】2023-03-20
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100192511
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 晃史
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 敏史
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-133019(JP,A)
【文献】特開平9-280043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される内燃機関に接続される排気管の断熱構造であって、
前記排気管は、前記排気管が屈曲又は膨出により鉛直下方に張り出す張出領域を有し、
前記張出領域よりも排気ガスの流れ方向上流側の前記排気管を覆う第1ヒートインシュレータと、前記張出領域よりも排気ガスの流れ方向下流側の前記排気管を覆う第2ヒートインシュレータと、を備え、
前記第1ヒートインシュレータにおける前記流れ方向下流側の下流側端部は、少なくとも前記張出領域の鉛直下方側において前記排気管の径方向に所定間隔で離間して前記第2ヒートインシュレータにおける前記流れ方向上流側の上流側端部を覆っており、
前記下流側端部及び前記上流側端部は、前記流れ方向に沿って互いに重複しており、
前記下流側端部は、前記排気管の径方向に拡径する拡径部を有している、排気管の断熱構造。
【請求項2】
前記第1ヒートインシュレータは、前記第1ヒートインシュレータにおいて水平方向の一方側と他方側とに配置された一対の遮熱板を有している、請求項1に記載の排気管の断熱構造。
【請求項3】
記下流側端部の端面は、前記拡径部と隣り合っている、請求項1又は2に記載の排気管の断熱構造。
【請求項4】
前記第1ヒートインシュレータは、前記排気管の軸線から前記第1ヒートインシュレータまでの径方向距離が水平方向よりも鉛直下方において大きくなるように形成された第1段差部を有する、請求項1~3の何れか一項に記載の排気管の断熱構造。
【請求項5】
車両に搭載される内燃機関に接続される排気管の断熱構造であって、
前記排気管は、前記排気管が屈曲又は膨出により鉛直下方に張り出す張出領域を有し、
前記張出領域よりも排気ガスの流れ方向上流側の前記排気管を覆う第1ヒートインシュレータと、前記張出領域よりも排気ガスの流れ方向下流側の前記排気管を覆う第2ヒートインシュレータと、を備え、
前記第1ヒートインシュレータにおける前記流れ方向下流側の下流側端部と、前記第2ヒートインシュレータにおける前記流れ方向上流側の上流側端部との一方は、少なくとも前記張出領域の鉛直下方側において前記排気管の径方向に所定間隔で離間して他方を覆っており、
前記下流側端部及び前記上流側端部は、前記流れ方向に沿って互いに重複しており、
前記第1ヒートインシュレータは、前記排気管の軸線から前記第1ヒートインシュレータまでの径方向距離が水平方向よりも鉛直下方において大きくなるように形成された第1段差部を有し、
前記第2ヒートインシュレータは、前記排気管の軸線から前記第2ヒートインシュレータまでの径方向距離が水平方向よりも鉛直下方において大きくなるように形成された第2段差部を有し、
前記第1段差部の鉛直下方への第1段差量と、前記第2段差部の鉛直下方への第2段差量とは互いに異なっており、
前記第1段差部は、前記第1ヒートインシュレータの鉛直下方側に第1溝を形成し、
前記第2段差部は、前記第2ヒートインシュレータの鉛直下方側に第2溝を形成し、
前記第1溝と前記第2溝との間に、前記排気管の径方向に所定間隔で離間する隙間が形成される、排気管の断熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気管の断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の排気管の断熱構造として、例えば特許文献1に記載の構造が知られている。特許文献1に記載の構造は、排気管と、排気管の外周に周間隙を有して保温空間を形成するように配設される外管と、車両下方側に形成されて車両走行方向と逆方向に開口部を持つ水抜き孔とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭62-16718号のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、外管を下方に打ち出すことで水抜き孔が形成されており、車両走行方向と逆方向から見て、水抜き孔を介して排気管の表面が外管の外部に臨んでいる。そのため、例えば水抜き孔に枯れ草等の異物が入り込むと、異物が排気管の表面に容易に達するおそれがある。
【0005】
本発明は、排気管を覆うヒートインシュレータ内部の水抜きと、排気管の表面への異物到達の抑制と、を両立することができる排気管の断熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、車両に搭載される内燃機関に接続される排気管の断熱構造であって、排気管は、排気管が屈曲又は膨出により鉛直下方に張り出す張出領域を有し、張出領域よりも排気ガスの流れ方向上流側の排気管を覆う第1ヒートインシュレータと、張出領域よりも排気ガスの流れ方向下流側の排気管を覆う第2ヒートインシュレータと、を備え、第1ヒートインシュレータにおける排気ガスの流れ方向下流側の下流側端部と、第2ヒートインシュレータにおける排気ガスの流れ方向上流側の上流側端部との一方は、少なくとも張出領域の鉛直下方側において排気管の径方向に所定間隔で離間して他方を覆っており、下流側端部及び上流側端部は、流れ方向に沿って互いに重複している。
【0007】
本発明の一態様に係る排気管の断熱構造では、下流側端部及び上流側端部の一方は、少なくとも張出領域の鉛直下方側において排気管の径方向に所定間隔で離間して他方を覆っている。これにより、所定間隔の隙間が鉛直下方側で開口するため、排気管を覆う第1及び第2ヒートインシュレータ内部に浸入した水は、張出領域に向かって集まると共に、下流側端部と上流側端部との間の隙間を通って第1及び第2ヒートインシュレータ外部に排出される。また、第1ヒートインシュレータにおける排気ガスの流れ方向下流側の下流側端部と、第2ヒートインシュレータにおける排気ガスの流れ方向上流側の上流側端部とは、張出領域において排気ガスの流れ方向に沿って互いに重複している。これにより、隙間に異物が入り込んで来ても、下流側端部又は上流側端部によって異物が遮られるため、異物が排気管の表面まで達することが抑制される。したがって、本発明の一態様に係る排気管の断熱構造によれば、排気管を覆うヒートインシュレータ内部の水抜きと、排気管の表面への異物到達の抑制と、を両立することができる。
【0008】
一実施形態において、下流側端部及び上流側端部の重複長さは、所定間隔の2倍以上の長さであってもよい。この場合、例えば重複長さが所定間隔程度のような構成と比べて、排気管の表面まで異物が達することをより確実に抑制できる。
【0009】
一実施形態において、下流側端部及び上流側端部の一方は、排気管の径方向に拡径する拡径部を有し、下流側端部及び上流側端部の他方の端面は、拡径部と隣り合っていてもよい。この場合、下流側端部及び上流側端部は、張出領域において拡径部までの長さで重複する。よって、例えば下流側端部及び上流側端部の重複長さが拡径部に至らない程度のような構成と比べて、排気管の表面まで異物が達することをより確実に抑制できる。
【0010】
一実施形態において、張出領域では、排気管は車両の前後方向に沿って延在しており、下流側端部は、排気管の径方向に所定間隔で離間して上流側端部を覆っていてもよい。この場合、下流側端部と上流側端部との間の所定間隔の隙間は、車両後方に向かって開口する。そのため、例えば車両の後退の際、この隙間に入り込んで来る異物が排気管の表面まで達することを抑制できる。
【0011】
一実施形態において、第1ヒートインシュレータは、排気管の軸線から第1ヒートインシュレータまでの径方向距離が水平方向よりも鉛直下方において大きくなるように形成された第1段差部を有し、第2ヒートインシュレータは、排気管の軸線から第2ヒートインシュレータまでの径方向距離が水平方向よりも鉛直下方において大きくなるように形成された第2段差部を有し、第1段差部の鉛直下方への第1段差量と、第2段差部の鉛直下方への第2段差量とは互いに異なっており、第1段差部は、第1ヒートインシュレータの鉛直下方側に第1溝を形成し、第2段差部は、第2ヒートインシュレータの鉛直下方側に第2溝を形成し、第1溝と第2溝との間に、排気管の径方向に所定間隔で離間する隙間が形成されてもよい。この場合、第1段差量と第2段差量とを異ならせて段差を設けることで、水を案内する溝と、下流側端部と上流側端部との間の隙間とを、一挙に構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、排気管を覆うヒートインシュレータ内部の水抜きと、排気管の表面への異物到達の抑制と、を両立することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態の排気管の断熱構造の側面図である。
図2図1の排気管の断熱構造の要部を示す斜視図である。
図3図2のIII-IIIに沿っての断面図である。
図4図3のIV-IVに沿っての断面図である。
図5】変形例の排気管の断熱構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一又は同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。なお、以下の説明において、「上流」は排気ガスの流れ方向の上流を意味し、「下流」は排気ガスの流れ方向の下流を意味する。
【0015】
図1は、実施形態の排気管の断熱構造の側面図である。図1に示されるように、排気管の断熱構造1は、排気管の断熱構造1は、鉛直下方に張り出す張出領域(後述)を有する排気管10と、張出領域よりも上流側の排気管10を覆う第1ヒートインシュレータ20と、張出領域よりも下流側の排気管10を覆う第2ヒートインシュレータ30と、を備えている。排気管の断熱構造1は、第1ヒートインシュレータ20及び第2ヒートインシュレータ30によって排気管10を断熱する構造である。
【0016】
排気管10は、車両に搭載される内燃機関に接続されており、内燃機関の燃焼室での燃焼で生じた排気ガスを排出する排気通路である。図1に示される排気管10は、例えば車両の前後方向に沿って延在している。内燃機関は、一例としてディーゼルエンジンである。適用される車両としては、特に限定されないが、例えば普通乗用車、ピックアップトラック、又は、バス及びダンプといった商用車、などの何れであってもよい。
【0017】
排気管10の上流側には、例えば、ターボチャージャ、DOC[Diesel Oxidation Catalyst]、及びDPF[Diesel Particulate Filter]等が設けられている。排気管10の下流側には、例えば、SCR[Selective Catalytic Reduction]が設けられている。図1の例では、還元剤(例えば尿素水)をSCRに噴射するためのインジェクタ40が排気管10に取り付けられている。
【0018】
排気管10は、上流側端部の接続部11と、3箇所の屈曲部12,13,14とを有している。接続部11には、排気管10の上流側(内燃機関側)に配置された排気管が接続される。接続部11は、例えば、上流側の排気管の配管経路に合わせて、水平面よりも上方に傾斜した方向を軸方向として延在している。屈曲部12は、接続部11から下流側に延びる直線部分15の軸方向に対して上方に延びるように排気管10を屈曲させる。これにより、直線部分16の延在方向がインジェクタ40に沿ったものとなる。屈曲部13は、インジェクタ40の基端部付近で直線部分16の軸方向に対して下方に延びるように排気管10を屈曲させる。屈曲部14は、インジェクタ40の軸方向に沿って直線部分17が延びるように、屈曲部13のすぐ下流で排気管10を屈曲させる。これらの屈曲部12,13,14により、排気管10の配管経路は、例えば、車両の下部構成(例えばサスペンションのクロスメンバー等)との干渉が抑制される経路となっている。また、車両後方に向かって還元剤を噴射するように取り付けられたインジェクタ40により、排気管10の内部において還元剤が下流側に向かって噴射されることが可能となっている。
【0019】
本実施形態の排気管10は、屈曲部14の屈曲により鉛直下方に張り出している。すなわち、屈曲部14を含む排気管10の一定範囲は、排気管10が屈曲により鉛直下方に張り出す領域である張出領域18となっている。ここでの張出領域18は、一例として、排気管10を含む排気通路のうち最も鉛直下方に位置する点(地上高が最小の点)を含んでいる。
【0020】
図2は、図1の排気管の断熱構造の要部を示す斜視図である。図3は、図2のIII-IIIに沿っての断面図である。図4は、図3のIV-IVに沿っての断面図である。なお、図3において、水平方向は紙面左右方向に対応し、鉛直方向は紙面上下方向に対応する。図4において、水平方向及び排気ガスの流れ方向は紙面左右方向に対応し、鉛直方向は紙面上下方向に対応する。
【0021】
図2及び図3に示されるように、ここでの第1ヒートインシュレータ20は、張出領域18よりも上流側の排気管10の表面に沿って設けられた一対の遮熱板21,22を有している。ここでの第2ヒートインシュレータ30は、張出領域18よりも下流側の排気管10の表面に沿って設けられた一対の遮熱板31,32を有している。
【0022】
一例として、遮熱板21は、第1ヒートインシュレータ20において水平方向の一方側に配置されている。遮熱板22は、第1ヒートインシュレータ20において水平方向の他方側に配置されている。遮熱板31は、第2ヒートインシュレータ30において水平方向の一方側に配置されている。遮熱板32は、第2ヒートインシュレータ30において水平方向の他方側に配置されている。遮熱板21,22,31,32は、断面形状が円弧状をなして排気管10に沿って延在しており、例えばプレス等により形成され得る。遮熱板21,22,31,32の材料としては、例えばステンレス鋼等を用いることができる。
【0023】
一対の遮熱板21,22は、それぞれ、排気管10を水平方向に挟む円弧部21a,22aと、鉛直下方側の端部21b,22bと、鉛直上方側の端部21c,22cとを含む。端部21b,22bが互いに接合され、端部21c,22cが互いに接合されることで、第1ヒートインシュレータ20が筒状に形成されている(図1参照)。端部21b,22b及び端部21c,22cは、例えば、第1ヒートインシュレータ20全体としての振動抑制を考慮した接合位置にて、スポット溶接等により接合される。
【0024】
一対の遮熱板31,32は、一対の遮熱板21,22よりも内側に配置されており、それぞれ、排気管10を水平方向に挟む円弧部31a,32aと、鉛直下方側の端部31b,32bと、鉛直上方側の端部31c,32cとを含む。端部31b,32bが互いに接合され、端部31c,32cが互いに接合されることで、第2ヒートインシュレータ30が筒状に形成されている(図1参照)。端部31b,32b及び端部31c,32cは、例えば、第2ヒートインシュレータ30全体としての振動抑制を考慮した接合位置にて、スポット溶接等により接合される。
【0025】
図1図4に示されるように、第1ヒートインシュレータ20の下流側端部20aは、排気管10の径方向に所定間隔で離間して第2ヒートインシュレータ30の上流側端部30aを覆っている。以下、この排気管10の径方向の離間寸法を単に「所定間隔」と記すことがある。
【0026】
具体的な一例として、図3に示されるように、一対の遮熱板21,22は、排気管10の軸線Xから遮熱板21,22までの径方向距離が水平方向よりも鉛直下方において大きくなるように形成された第1段差部23,24を有している。遮熱板21についての水平方向の径方向距離とは、例えば、排気管10の軸線Xから円弧部21aまでの距離である。遮熱板22についての水平方向の径方向距離とは、例えば、排気管10の軸線Xから円弧部22aまでの距離である。遮熱板21についての鉛直下方の径方向距離とは、例えば、排気管10の軸線Xから端部21bまでの距離である。遮熱板22についての鉛直下方の径方向距離とは、例えば、排気管10の軸線Xから端部22bまでの距離である。遮熱板21について、第1段差部23は、円弧部21aから端部21bまでに設けられた2つの折曲部23a,23bを含む。遮熱板22について、第1段差部24は、円弧部22aから端部22bまでに設けられた2つの折曲部24a,24bを含む。これにより、第1ヒートインシュレータ20では、第1段差部23,24で遮熱板21,22が鉛直下方側に拡がるように屈曲されていることによって、互いに重ね合わせられている端部21b,22bの平坦部分を底とする溝(第1溝)25が形成される。
【0027】
また、一対の遮熱板31,32は、排気管10の軸線Xから遮熱板31,32までの径方向距離が水平方向よりも鉛直下方において大きくなるように形成された第2段差部33,34を有している。遮熱板31についての水平方向の径方向距離とは、例えば、排気管10の軸線Xから円弧部31aまでの距離である。遮熱板32についての水平方向の径方向距離とは、例えば、排気管10の軸線Xから円弧部32aまでの距離である。遮熱板31についての鉛直下方の径方向距離とは、例えば、排気管10の軸線Xから端部31bまでの距離である。遮熱板32についての鉛直下方の径方向距離とは、例えば、排気管10の軸線Xから端部32bまでの距離である。遮熱板31について、第2段差部33は、円弧部31aから端部31bまでに設けられた1つの折曲部である。遮熱板32について、第2段差部34は、円弧部32aから端部32bまでに設けられた1つの折曲部である。これにより、第2ヒートインシュレータ30では、第2段差部で遮熱板31,32が鉛直下方側に拡がるように屈曲されていることによって、互いに重ね合わせられている端部31b,32bの平坦部分を底とする溝(第2溝)35が形成される。
【0028】
図3の断面視で、第1段差部の鉛直下方への第1段差量は、第2段差部33,34の鉛直下方への第2段差量よりも大きい。遮熱板21についての第1段差量とは、第1段差部23の屈曲(ここでは2つの折曲部23a,23bの屈曲)によって生じた端部21bの鉛直下方へのシフト量を意味する。遮熱板22についての第1段差量とは、第1段差部24の屈曲(ここでは2つの折曲部24a,24bの屈曲)によって生じた端部22bの鉛直下方へのシフト量を意味する。遮熱板31についての第2段差量とは、第2段差部33の屈曲によって生じた端部31bの鉛直下方へのシフト量を意味する。遮熱板32についての第2段差量とは、第2段差部34の屈曲によって生じた端部32bの鉛直下方へのシフト量を意味する。
【0029】
図3に示されるように、第1段差部23,24で遮熱板21,22が第1段差量で屈曲されていることによって、第2段差部33,34で第2段差量で屈曲されている遮熱板31,32の端部31b,32bと比べてより鉛直下方に、端部21b,22bが配置されることとなる。これにより、第1ヒートインシュレータ20の下流側端部20aと第2ヒートインシュレータ30の上流側端部30aとの間には、排気管10の径方向に所定間隔で離間する隙間26が形成されることとなる。所定間隔は、第1段差量と第2段差量との差と同等の寸法である。なお、鉛直上方側においては、端部21c,22c,31c,32cが、端部21b,22b,31b,32bと同様に構成されていてもよい。
【0030】
ここで、図4に示されるように、第1ヒートインシュレータ20の下流側端部20aは、排気管10の径方向に拡径する拡径部27を有している。拡径部27は、第1ヒートインシュレータ20の径寸法が大きくなる部分である。拡径部27は、上述の第1段差量と第2段差量との差の分だけ、遮熱板21,22を遮熱板31,32よりも鉛直下方において径方向外側に位置させる。これにより、排気管10の軸線Xから遮熱板21,22までの鉛直下方の径方向距離と、排気管10の軸線Xから遮熱板31,32までの鉛直下方の径方向距離とが、拡径部27よりも上流側では略同等であるのに対し、拡径部27よりも下流側では隙間26の所定間隔だけ大きい距離となる。一方、第2ヒートインシュレータ30の上流側端部30aは直線状に延在し、第1ヒートインシュレータ20の下流側端部20aの内側に挿入される。その結果、第1ヒートインシュレータ20の下流側端部20aは、排気管10の径方向に所定間隔で離間して、第2ヒートインシュレータ30の上流側端部30aを覆うこととなる。
【0031】
したがって、例えば車両が略水平な地面に止まっている際に、第1ヒートインシュレータ20と排気管10との間(ヒートインシュレータ内部)に水が浸入した場合、この水は、端部21b,22bを底とする溝25を通って張出領域18に向かって流れて集まってくる(図4の矢印W1参照)。第2ヒートインシュレータ30と排気管10との間(ヒートインシュレータ内部)に水が浸入した場合、この水は、端部31b,32bを底とする溝35を通って張出領域18に向かって流れて集まってくる(図4の矢印W2参照)。張出領域18に向かって流れて集まってきた水は、隙間26からヒートインシュレータ外部に排出される(図4の矢印W3参照)。
【0032】
ところで、例えば車両が後退する際に、枯れ草100等の可燃性で長尺の異物が隙間26に入り込む可能性がある。排気管10は高温となる部位であるため、このような異物が排気管10の表面に達しないようにすることが望まれる。
【0033】
そこで、排気管の断熱構造1では、第1ヒートインシュレータ20の下流側の下流側端部20aと、第2ヒートインシュレータ30の上流側の上流側端部30aとが、排気ガスの流れ方向に沿って互いに重複している。図4の例では、排気ガスの流れ方向は、排気管10の延在方向に対応する。
【0034】
下流側端部20aと、上流側端部30aの端面30bとは、拡径部27において互いに隣り合っている。つまり、下流側端部20a及び上流側端部30aは、張出領域18において拡径部27までの長さで重複している。換言すれば、下流側端部20a及び上流側端部30aの重複長さは、張出領域18において隙間26の入口26aから拡径部27までの排気ガスの流れ方向に沿う長さである。重複長さとは、下流側端部20a及び上流側端部30aが張出領域18において重複している部分の排気ガスの流れ方向に沿う長さである。このような重複により、排気管10の鉛直下方側の表面は、隙間26の入口26aから拡径部27に至るまで、上流側端部30aによって覆われることとなる。そのため、例えば車両が後退する際に隙間26の入口26aから枯れ草100等の異物が入り込んだとしても、異物が上流側端部30aによって遮られるため、異物が排気管10の鉛直下方側の表面に接触することが抑制される。
【0035】
以上説明したように、排気管の断熱構造1では、下流側端部20aは、少なくとも張出領域18の鉛直下方側において排気管10の径方向に所定間隔で離間して他方の上流側端部30aを覆っている。これにより、所定間隔の隙間26が鉛直下方側で開口するため、排気管10を覆う第1ヒートインシュレータ20及び第2ヒートインシュレータ30内部に浸入した水は、張出領域18に向かって集まると共に、下流側端部20aと上流側端部30aとの間の隙間26を通って第1ヒートインシュレータ20及び第2ヒートインシュレータ30外部に排出される。また、下流側端部20aと上流側端部30aとは、張出領域18において排気ガスの流れ方向に沿って互いに重複している。これにより、隙間26に枯れ草等の異物が入り込んで来ても、上流側端部30aによって異物が遮られるため、異物が排気管10の表面まで達することが抑制される。したがって、排気管の断熱構造1によれば、排気管10を覆う第1ヒートインシュレータ20及び第2ヒートインシュレータ30内部の水抜きと、排気管10の表面への異物到達の抑制と、を両立することができる。
【0036】
排気管の断熱構造1では、下流側端部20aは、排気管10の径方向に拡径する拡径部27を有している。上流側端部30aの端面30bは、拡径部27と隣り合っている。これにより、下流側端部20a及び上流側端部30aは、張出領域18において拡径部27までの長さで重複する。よって、例えば重複長さが拡径部27に至らない程度のような構成と比べて、排気管10の表面まで異物が達することをより確実に抑制できる。
【0037】
排気管の断熱構造1において、張出領域18では、排気管10は車両の前後方向に沿って延在しており、下流側端部20aは、排気管10の径方向に所定間隔で離間して上流側端部30aを覆ってる。これにより、下流側端部20aと上流側端部30aとの間の隙間26は、車両後方に向かって開口する。そのため、例えば車両の後退の際、この隙間26に入り込んで来る枯れ草等の異物が排気管10の表面まで達することを抑制できる。
【0038】
排気管の断熱構造1では、第1ヒートインシュレータ20は、排気管10の軸線Xから遮熱板21,22(第1ヒートインシュレータ20)までの径方向距離が水平方向よりも鉛直下方において大きくなるように形成された第1段差部23,24を有している。第2ヒートインシュレータ30は、排気管10の軸線Xから遮熱板31,32(第2ヒートインシュレータ30)までの径方向距離が水平方向よりも鉛直下方において大きくなるように形成された第2段差部33,34を有している。第1段差部23,24の鉛直下方への第1段差量と、第2段差部33,34の鉛直下方への第2段差量とは互いに異なっている(第1段差量の方が第2段差量よりも大きい)。第1段差部23,24は、第1ヒートインシュレータ20の鉛直下方側に溝25を形成し、第2段差部33,34は、第2ヒートインシュレータ30の鉛直下方側に溝35を形成する。溝25と溝35との間に、排気管10の径方向に所定間隔で離間する隙間26が形成されている。これにより、第1段差量と第2段差量とを異ならせて段差を設けることで、水を案内する溝25,35と、下流側端部20aと上流側端部30aとの間の隙間26とを、一挙に構成することができる。
【0039】
[変形例]
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限られるものではない。
【0040】
上記実施形態では、隙間26の所定間隔は、入口26a側と、入口26aから拡径部27までの区間とで互いに同じ寸法であったが、これに限定されない。例えば、図4の断面視で下流側端部20a(拡径部27を除く)が排気管10の軸方向に対して傾斜面をなすことで、隙間26の所定間隔が変化するようにしてもよい。
【0041】
あるいは、図5の排気管の断熱構造1Aに示されるように、図4の隙間26の入口26aに相当する位置にガード部28が形成されて、入口26bが形成されてもよい。図5は、変形例の排気管の断熱構造1Aの断面図である。図5の例では、ガード部28は、例えば、図4の断面視で入口26aの端面に対応する位置から車両後方且つ斜め上方に向かって延びる板片状とすることができる。これにより、隙間26の所定間隔が入口26bにおいて実質的に小さくなる。そのため、例えば車両が後退する際に、枯れ草100等の異物がガード部28によって遮られると共に、異物が隙間26の入口26bに一層入り込みにくくなる。よって、異物が排気管10の表面に到達することを一層の抑制することができる。
【0042】
上記実施形態では、張出領域18は、排気管10において最も鉛直下方に位置する点(地上高が最小の点)を含んでいたが、これに限定されない。張出領域は、排気管10における一部区間が屈曲又は膨出により鉛直下方に張り出すことで、地上高が極小となる点を含む領域であってもよい。地上高が最小ではなく極小となる領域であっても、水が集まってくるようであれば、本発明の排気管の断熱構造を適用することで、排気管を覆うヒートインシュレータ内部の水抜きと、排気管の表面への異物到達の抑制と、を両立することが可能となる。
【0043】
上記実施形態では、張出領域18は、屈曲により排気管10が鉛直下方に張り出していたが、排気通路断面積が大きくなるような排気管10の外側面の膨出により鉛直下方に張り出していてもよい。例えば、排気管10の一部がクラムシェル形状であって、膨出により鉛直下方に張り出す部分が存在する場合には、その部分が張出領域に相当する。このような張出領域であっても、水が集まってくるようであれば、本発明の排気管の断熱構造を適用することで、排気管を覆うヒートインシュレータ内部の水抜きと、排気管の表面への異物到達の抑制と、を両立することが可能となる。なお、この場合、張出領域18において、排気管10の軸線は、屈曲せずに直線状に延びていてもよい。
【0044】
上記実施形態では、第1ヒートインシュレータ20は、一対の遮熱板21,22の2部材で構成されるものとして説明したが、排気管10の周方向に3以上の部材に分割されていてもよいし、端部21b,22b同士又は端部21c,22c同士のいずれか一方が連結されない断面C字状の一部材とされてもよいし、排気管10の周方向の全周に亘って連続するの一部材とされてもよい。第2ヒートインシュレータ30についても同様に変形されてもよい。
【0045】
上記実施形態では、下流側端部20a及び上流側端部30aは、張出領域18において隙間26の入口26aから拡径部27までの長さで重複していたが、これに限定されない。例えば、下流側端部20a及び上流側端部30aの重複長さは、隙間26の所定間隔の2倍以上の長さであってもよい。この場合、例えば重複長さが所定間隔程度のような構成と比べて、排気管10の表面まで異物が達することをより確実に抑制できる。
【0046】
上記実施形態では、第1ヒートインシュレータ20の下流側端部20aは、排気管10の径方向に所定間隔で離間して第2ヒートインシュレータ30の上流側端部30aを覆っていたが、これとは逆に、第2ヒートインシュレータ30の上流側端部30aは、排気管10の径方向に所定間隔で離間して第1ヒートインシュレータ20の下流側端部20aを覆っていてもよい。この場合、第1ヒートインシュレータ20の下流側端部20aが拡径部27を有していたのに代えて、第2ヒートインシュレータ30の上流側端部30aが拡径部を有していてもよい。
【0047】
上記実施形態では、内燃機関としてSCR及びインジェクタ40を有するディーゼルエンジンを例示したが、これに限定されない。排気管の断熱構造は、排気管、第1及び第2ヒートインシュレータを備えるものであれば、例えばガソリンエンジン等、その他の内燃機関であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1,1A…断熱構造、10…排気管、18…張出領域、20…第1ヒートインシュレータ、20a…下流側端部、23,24…第1段差部、27…拡径部、30…第2ヒートインシュレータ、30a…上流側端部、30b…端面、33,34…第2段差部、X…軸線。

図1
図2
図3
図4
図5