(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用弁構造体、および、蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 50/333 20210101AFI20241112BHJP
H01M 50/317 20210101ALI20241112BHJP
H01G 11/14 20130101ALI20241112BHJP
【FI】
H01M50/333
H01M50/317 101
H01G11/14
(21)【出願番号】P 2021146216
(22)【出願日】2021-09-08
(62)【分割の表示】P 2021002115の分割
【原出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2020175038
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 美帆
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智浩
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/230743(WO,A1)
【文献】特開2017-22050(JP,A)
【文献】特開2000-216068(JP,A)
【文献】特開2003-272971(JP,A)
【文献】特開2003-272969(JP,A)
【文献】中国実用新案第204855578(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/30-50/392
H01G 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイス素子を収容する容器の内外を連通させる通路と、
前記通路を閉塞するように配置され、前記容器の内部において発生したガスに起因して前記容器の内圧が上昇した場合に開弁し、前記ガスを前記容器の内部側から外部側に通過させる逆止弁と、を備え、
前記逆止弁は、弁座および弁体を含み、
前記容器内に大気が侵入することを抑制するために、前記弁座および前記弁体と接触するように配置される液体を備える
蓄電デバイス用弁構造体。
【請求項2】
通常の使用環境下において、前記液体の融点は、10℃以下である、
請求項1に記載の蓄電デバイス用弁構造体。
【請求項3】
通常の使用環境下において、前記液体の沸点は、150℃以上である
請求項1または2に記載の蓄電デバイス用弁構造体。
【請求項4】
前記液体は、流動パラフィンを含む
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用弁構造体。
【請求項5】
前記液体の粘度は、0.1mPa・s~2000mPa・sの範囲に含まれる
請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用弁構造体。
【請求項6】
前記通路は、外部空間に面する出口を含み、
前記出口を閉じるように貼り付けられるシール部材を有する
請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用弁構造体。
【請求項7】
前記逆止弁の一次側および二次側の少なくとも一方に配置され、前記ガスが透過するように構成される蓋材を有する
請求項1~6のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用弁構造体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用弁構造体と、
前記蓄電デバイス用弁構造体が取り付けられた前記容器と、を備える
蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイス用弁構造体、および、これを備える蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電池素子をパウチに収容した電池を開示している。パウチには、その周縁に沿って形成されるヒートシール部に、逆止弁を有する弁構造体が取り付けられる。この逆止弁は、パウチの内圧が一定以上に上昇した場合に作動し、ガス抜きを行うように構成されている。
【0003】
特許文献2は、電池素子を箱型のラミネート容器に収容した電池を開示している。このラミネート容器は、その周縁に沿って形成されるフランジ状のヒートシール部に、他の部位よりも剥離し易い箇所(以下、イージーピール部という)が形成されている。イージーピール部は、ラミネート容器の内圧が一定以上に上昇した場合に剥離し、イージーピール部の中央に形成されている孔を介してガス抜きを行う。イージーピール部は、特許文献1のような逆止弁とは異なり、一度剥離すると元の状態に復帰しない破壊弁である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-31934号公報
【文献】特開2010-153841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、逆止弁とは、概ね一方通行の弁であり、逆流を防止することを目的とするものである。しかし、特許文献1のような電池においては、パウチ内に大気が少量でも侵入すると、電池の劣化が起きてしまうため、より高い精度で逆流の防止が必要となる。そのため、特許文献1のようなパウチ内のガス抜きを行う逆止弁が、電池に要求されるような高い水準で、パウチ内への大気の進入を完全に防止することは実際上困難である。よって、特許文献1のような電池では、パウチ内に大気が侵入し、電池の劣化が起きてしまうという課題が存在する。
【0006】
一方、特許文献2のような電池では、破壊弁が一度破壊してしまうと、破壊により形成された通路を介してラミネート容器内へ大気が進入する。よって、特許文献2のように破壊弁が用いられる場合も、ラミネート容器内に大気が侵入し、電池の劣化が起きてしまうという課題が存在する。
【0007】
本発明は、蓄電デバイス素子が収容される容器内へ大気が侵入することを抑制できる弁構造体、および、これを備える蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1観点に係る蓄電デバイス用弁構造体は、蓄電デバイス素子を収容する容器の内外を連通させる通路と、前記通路を閉塞するように配置され、前記容器の内部において発生したガスに起因して前記容器の内圧が上昇した場合に開弁し、前記ガスを前記容器の内部側から外部側に通過させる逆止弁と、を備え、前記逆止弁は、弁座および弁体を含み、前記弁座および前記弁体と接触するように配置される液体を備える。
【0009】
本発明の第2観点に係る蓄電デバイス用弁構造体は、第1観点に係る蓄電デバイス用弁構造体であって、前記液体の融点は、10℃以下である。
【0010】
本発明の第3観点に係る蓄電デバイス用弁構造体は、第1観点または第2観点に係る蓄電デバイス用弁構造体であって、前記液体の沸点は、150℃以上である。
【0011】
本発明の第4観点に係る蓄電デバイス用弁構造体は、第1観点から第3観点のいずれか1つに係る蓄電デバイス用弁構造体であって、前記液体は、流動パラフィンを含む。
【0012】
本発明の第5観点に係る蓄電デバイス用弁構造体は、第1観点から第4観点のいずれか1つに係る蓄電デバイス用弁構造体であって、前記液体の粘度は、0.1mPa・s~2000mPa・sの範囲に含まれる。
【0013】
本発明の第6観点に係る蓄電デバイス用弁構造体は、第1観点から第5観点のいずれか1つに係る蓄電デバイス用弁構造体であって、前記通路は、外部空間に面する出口を含み、前記出口を閉じるように貼り付けられるシール部材を有する。
【0014】
本発明の第7観点に係る蓄電デバイス用弁構造体は、第1観点~第6観点のいずれか1つに係る蓄電デバイス用弁構造体であって、前記逆止弁の一次側および二次側の少なくとも一方に配置され、前記ガスが透過するように構成される蓋材を有する。
【0015】
本発明の第8観点に係る蓄電デバイスは、第1観点から第7観点のいずれか1つに係る蓄電デバイス用弁構造体と、前記蓄電デバイス用弁構造体が取り付けられた前記容器と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明に関する蓄電デバイス用弁構造体、および、蓄電デバイスによれば、蓄電デバイス素子が収容される容器内へ大気が侵入することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態の蓄電デバイス用弁構造体を備える蓄電デバイスの平面図。
【
図9】第2実施形態の蓄電デバイス用弁構造体の正面図。
【
図16】さらに別の変形例の蓄電デバイスの平面図。
【
図17】さらに別の変形例の蓄電デバイスの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る蓄電デバイス用弁構造体、および、これを備える蓄電デバイス、ならびにその製造方法について説明する。
【0019】
[1.第1実施形態]
<1-1.蓄電デバイスの全体構成>
図1に、本実施形態に係る蓄電デバイス用弁構造体10を備える蓄電デバイス100の平面図を示す。
図2は、
図1のD2-D2線に沿う断面図である。これらの図では、本来外部から視認できない部位が、参考のため、部分的に点線で示されている。以下では、説明の便宜のため、特に断らない限り、
図1の上下方向を「前後」と称し、左右方向を「左右」と称し、
図2の上下方向を「上下」と称する。ただし、蓄電デバイス100の使用時の向きは、これに限定されない。
【0020】
蓄電デバイス100は、収容体110、蓄電デバイス素子120、タブ130、および、タブフィルム140を備える。収容体110は、内部空間S1および周縁シール部150を備える。蓄電デバイス素子120は、収容体110の内部空間S1に収容される。タブ130は、その一端が蓄電デバイス素子120と接合しており、その他端が収容体110の周縁シール部150から外側に突出しており、その一端と他端との間の一部は、タブフィルム140を介して周縁シール部150に融着されている。
【0021】
収容体110は、容器110Aを含む。容器110Aは、包装材料111、112を含んで構成される。平面視における容器110Aの外周部分においては、包装材料111、112がヒートシールされ、互いに融着しており、これにより、周縁シール部150が形成されている。そして、この周縁シール部150によって、外部空間から遮断された容器110Aの内部空間S1が形成される。周縁シール部150は、容器110Aの内部空間S1の周縁を画定する。なお、ここでいうヒートシールの態様には、熱源からの加熱融着、超音波融着等の態様が想定される。いずれにせよ、周縁シール部150とは、包装材料111、112が融着され、一体化している部分を意味する。なお、
図2に示すように、周縁シール部150のタブ130とタブフィルム140とを挟む部分は、包装材料112、タブ130、一対のタブフィルム140、および、包装材料111が一体化されており、周縁シール部150の一対のタブフィルム140のみを挟む部分は、包装材料112、一対のタブフィルム140、および、包装材料111が一体化されている。
【0022】
包装材料111、112は、例えば、樹脂成形品またはフィルムから構成される。ここでいう樹脂成形品とは、射出成形や圧空成形、真空成形、ブロー成形等の方法により製造することができ、意匠性や機能性を付与するためにインモールド成形を行ってもよい。樹脂の種類は、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ABS等とすることができる。また、ここでいうフィルムとは、例えば、インフレーション法やTダイ法等の方法により製造することができる樹脂フィルムや、このような樹脂フィルムを金属箔に積層したものである。また、ここでいうフィルムは、延伸されたものであってもなくてもよく、単層のフィルムであっても多層フィルムであってもよい。また、ここでいう多層フィルムは、コーティング法により製造されてもよいし、複数枚のフィルムが接着剤等により接着されたものでもよいし、多層押出法により製造されてもよい。
【0023】
以上のとおり、包装材料111、112は様々に構成することができるが、本実施形態では、ラミネートフィルムから構成される。ラミネートフィルムは、基材層、バリア層、および、熱融着性樹脂層を積層した積層体とすることができる。基材層は、包装材料111、112の基材として機能し、典型的には、容器110Aの外層側を形成し、絶縁性を有する樹脂層である。バリア層は、包装材料111、112の強度向上の他、蓄電デバイス100内に少なくとも水分等が侵入することを防止する機能を有し、典型的には、アルミニウム合金箔等からなる金属層である。熱融着性樹脂層は、典型的には、ポリオレフィン等の熱融着可能な樹脂からなり、容器110Aの最内層を形成する。
【0024】
容器110Aの形状は、特に限定されず、例えば、袋状(パウチ状)とすることができる。ここでいう袋状には、三方シールタイプ、四方シールタイプ、ピロータイプ、ガセットタイプ等が考えられる。ただし、本実施形態の容器110Aは、
図2のような形状を有し、トレイ状に成形された包装材料111と、同じくトレイ状に成形され、包装材料111の上から重ね合わされた包装材料112とを、平面視における外周部分に沿ってヒートシールすることにより製造される。包装材料111は、平面視における外周部分に相当する角環状のフランジ部111Aと、フランジ部111Aの内縁に連続し、そこから下方に膨出する成形部111Bとを含む。同様に、包装材料112は、平面視における外周部分に相当する角環状のフランジ部112Aと、フランジ部112Aの内縁に連続し、そこから上方に膨出する成形部112Bとを含む。包装材料111、112は、それぞれの成形部111B、112Bが互いに反対方向に膨出するように重ね合わされる。この状態で、包装材料111のフランジ部111Aと、包装材料112のフランジ部112Aとが、一体化するようにヒートシールされ、周縁シール部150を構成する。周縁シール部150は、容器110Aの外周全周に亘って延び、角環状に形成される。なお、包装材料111、112の一方は、シート状であってもよい。
【0025】
蓄電デバイス素子120は、少なくとも正極、負極、および、電解質を備えており、例えば、リチウムイオン電池(二次電池)、または、キャパシタ等の蓄電部材である。蓄電デバイス素子120に異常が生じると、容器110Aの内部空間S1にガスが発生し得る。蓄電デバイス100がリチウムイオン電池である場合、電解質である有機溶媒が揮発すること、および、電解液が分解することによって、容器110Aの内部空間S1に揮発有機溶媒、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、エタン、水素、フッ化水素等のガスが発生し得る。蓄電デバイス100がキャパシタである場合には、キャパシタにおける化学反応に起因して容器110Aの内部空間S1にガスが発生し得る。また、蓄電デバイス100は、全固体電池であってもよく、この場合、蓄電デバイス素子120は、ガスを発生し得る固体電解質を含み得る。例えば、固体電解質が硫化物系である場合、硫化水素のガスが発生し得る。
【0026】
タブ130は、蓄電デバイス素子120の電力の入出力に用いられる金属端子である。タブ130は、容器110Aの周縁シール部150の左右方向の端部に分かれて配置されており、一方が正極側の端子を構成し、他方が負極側の端子を構成する。各タブ130の左右方向の一方の端部は、容器110Aの内部空間S1において蓄電デバイス素子120の電極(正極または負極)に電気的に接続されており、他方の端部は、周縁シール部150から外側に突出している。以上の蓄電デバイス100の形態は、例えば、蓄電デバイス100を多数直列接続して高電圧で使用する電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両で使用するのに特に好ましい。なお、正極および負極の端子を構成する2つのタブ130の取付け位置は特に限定されず、例えば、周縁シール部150の同じ1つの辺に配置されていてもよい。
【0027】
タブ130を構成する金属材料は、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅等である。蓄電デバイス素子120がリチウムイオン電池である場合、正極に接続されるタブ130は、典型的には、アルミニウム等によって構成され、負極に接続されるタブ130は、典型的には、銅、ニッケル等によって構成される。
【0028】
左側のタブ130は、周縁シール部150のうち左端部において、タブフィルム140を介して包装材料111、112に挟まれている。右側のタブ130も、周縁シール部150のうち右端部において、タブフィルム140を介して包装材料111、112に挟まれている。
【0029】
タブフィルム140は、いわゆる接着性フィルムであり、包装材料111、112と、タブ130(金属)との両方に接着するように構成されている。タブフィルム140を介することによって、タブ130と、包装材料111、112の最内層(熱融着性樹脂層)とが異素材であっても、両者を固定することができる。なお、タブフィルム140は、タブ130に予め融着して固定することで一体化しておき、このタブフィルム140が固定されたタブ130を包装材料111、112で挟んで融着することで、
図2に示すように、一体化される。
【0030】
蓄電デバイス100の動作に伴い、容器110Aの内部空間S1でガスが発生すると、内部空間S1の圧力が徐々に上昇する。内部空間S1の圧力が過剰に上昇すると、容器110Aが破裂し、蓄電デバイス100が損傷する虞がある。収容体110は、このような事態を防止するための機構として、弁構造体10を備える。弁構造体10は、内部空間S1の圧力を調整するためのガス抜き弁であり、例えば、容器110Aの周縁シール部150に取り付けられる。以下、弁構造体10の構成について、詳細に説明する。
【0031】
<1-2.弁構造体の構成>
図3は、弁構造体10の正面図である。弁構造体10は、弁本体20および液体70(
図7Aおよび
図8参照)を含む。弁本体20は、第1ボディ30、第2ボディ40、逆止弁50(
図7Aおよび
図8参照)、シール部材80、および、蓋材90(
図7Aおよび
図8参照)を含む。本実施形態では、第1ボディ30および第2ボディ40の順に容器110A(
図1参照)の内部から外部に向かう方向(後ろ側から前側へ向かう方向)に連続して配置される。
図4は、弁構造体10を第1ボディ30側から(後ろ側から)視た図である。
図5は、弁構造体10を第2ボディ40側から(前側から)視た図である。
図6は、弁構造体10を第1ボディ30側から(後ろ側から)視た斜視図である。
【0032】
図7Aは、
図4のD7-D7線に沿う断面図である。
図8は、
図3のD8-D8線に沿う断面図である。
図7Aおよび
図8に示されるように、逆止弁50は、第1ボディ30および第2ボディ40によって画定される収容空間S2に収容される。逆止弁50は、容器110A(
図1参照)の内部において発生したガスに起因して容器110Aの内圧が上昇した場合に開弁し、ガスを容器110Aの内部側から外部側に通過させる。より詳細には、逆止弁50は、その一次側の圧力、すなわち、内部空間S1(
図1参照)の圧力に応じて、開状態と閉状態との間を切り替わるリリーフ弁を構成する。弁本体20の内部の収容空間S2には、通路LAが形成されている。通路LAは、容器110Aの内外を連通させる通路であり、容器110Aの内部空間S1に面する入口20Aと、外部空間に面する出口20Bとを有する。
【0033】
逆止弁50は、閉状態において、通路LAを閉塞するように配置される。逆止弁50は、内部空間S1において発生したガスに起因して内部空間S1の圧力が上昇した場合に、開状態となり、ガスをその一次側からその二次側へ、すなわち、内部空間S1から外部空間へ通過させる。逆止弁50は、閉状態において、内部空間S1を外部空間から密閉する。
【0034】
第1ボディ30は、取付部31および連結部32を含む。取付部31は、弁構造体10を容器110Aに取り付けるための部位である。取付部31は、容器110Aの成形時に、熱融着フィルム60(
図1参照)を介して包装材料111、112とともにヒートシールされる。このヒートシールにより、取付部31の外周面と、包装材料111、112とが熱融着フィルム60を介して融着して接合され、取付部31は、包装材料111、112に挟まれるような態様で、周縁シール部150に固定される(
図2参照)。
【0035】
連結部32は、周縁シール部150の外側に配置されており、包装材料111、112に挟まれていない(
図1および
図2参照)。また、連結部32よりもさらに外側に配置される第2ボディ40も、周縁シール部150の外側に配置されており、包装材料111、112に挟まれていない。その結果、取付部31を容器110Aにヒートシールによって取り付けるときの熱で、第2ボディ40に保持される、逆止弁50が変形等により破壊される虞が低減される。
【0036】
取付部31、連結部32、および、第2ボディ40は、互いに同軸に延びる。取付部31、連結部32、および、第2ボディ40は、共通の中心軸C1を有する。取付部31は、第1通気路LXを有し、第2ボディ40は、第2通気路LYを有し、連結部32は、第3通気路LZを有する。これらの通気路LX~LZも、中心軸C1を中心軸として、互いに同軸に延びる。本実施形態では、入口20Aおよび出口20Bは、弁本体20の外周面ではなく、前後方向の端面に配置されており、特に、前後方向に直線状に延びる中心軸C1は、入口20Aおよび出口20Bの中心を通る。これに限定されないが、通気路LX~LZの中心軸C1に直交する断面は、円形である。通気路LX~LZは、互いに連通しており、全体として通路LAを構成する。第3通気路LZは、第1通気路LXよりも容器110Aの外部側に配置される。第2通気路LYは、第3通気路LZよりもさらに容器110Aの外部側に配置される。
【0037】
図4および
図6に示されるように、取付部31は、中心軸C1の延びる方向に沿って視認したときに、その外形が非円形である。より具体的には、取付部31は、中心軸C1の延びる方向に沿って視認したときに、その左右方向の中央部から左に向かうほど薄く形成された第1翼状部31A、および、右に向かうほど薄く形成された第2翼状部31Bを有する。このため、本実施形態では、取付部31は、蓄電デバイス100の幅方向(左右方向)の中央部に近づくほど厚くなり、蓄電デバイス100の幅方向(左右方向)の端部に近づくほど薄くなる。
【0038】
本実施形態では、第1翼状部31Aおよび第2翼状部31Bが形成されているため、取付部31の外周面は、包装材料111に覆われる下側半分においても、包装材料112に覆われる上側半分においても、それぞれ滑らかな湾曲面を描いている。また、例えば、取付部31が円筒状に形成されている場合と比べて、第1翼状部31Aおよび第2翼状部31Bによって、周縁シール部150のうちの取付部31が挟まれていない部分から周縁シール部150のうちの取付部31が挟まれている部分へ移行する位置において、蓄電デバイス100の上下方向の厚みの変化が滑らかになる。その結果、周縁シール部150において取付部31が取り付けられている位置の周辺部分において、包装材料111、112に無理な力が加わらない。このため、取付部31を熱融着フィルム60を介して周縁シール部150に強固に固定できる。
【0039】
連結部32の外形は、概ね、中心軸C1を中心軸とする円柱の一部を切り欠いたような形状を有する。より具体的には、連結部32の外形は、概ね、中心軸C1を中心軸とする円柱を、中心軸C1から一定の距離を空けた平面で切り欠くとともに、中心軸C1に対し当該平面と対称な位置にある平面でさらに切り欠いたような形状を有する。よって、連結部32は、一対の平面である第1平面32Aおよび第2平面32Bを有する。第1平面32Aおよび第2平面32Bは、互いに平行(略平行である場合を含む。以下、同様。)である。第1平面32Aおよび第2平面32Bは、中心軸C1の延びる方向に平行(略平行な場合を含む。以下、同様。)である。また、本実施形態では、第1平面32Aおよび第2平面32Bは、周縁シール部150が延びる方向に平行(略平行な場合を含む。以下、同様。)である。連結部32の外周面は、第1平面32Aおよび第2平面32B、および、第1平面32Aと第2平面32Bとを連結する湾曲面32C、32Dによって構成される。湾曲面32C、32Dは、各々、中心軸C1の延びる方向に沿って視たときに、中心軸C1を中心とする円弧状であり、第2ボディ40の外形に重なる。以上のような連結部32は、第1平面32Aおよび第2平面32Bが形成されるように、円筒形の部材の外周面を切削することにより、成形することができる。
【0040】
第2ボディ40は、円筒状であり、第1ボディ30とともに逆止弁50を収容する収容空間S2を画定する。第1ボディ30と第2ボディ40とは、収容空間S2に逆止弁50を収容した状態で組み付けられる。第1ボディ30と第2ボディ40との結合態様は、例えば、接着剤による結合、ねじ構造による結合、および、凹凸の噛み合いによる結合の少なくとも1つである。本実施形態では、第1ボディ30の連結部32の外面に形成される雄ねじ32X(
図7A参照)と第2ボディ40の内面に形成される雌ねじ40A(
図7A参照)との噛み合い、ならびに、雄ねじ32Xおよび雌ねじ40Aに塗布される接着剤によって、第1ボディ30と第2ボディ40とが結合される。接着剤の材料は、特に限定されないが、酸変性ポリオレフィンおよびエポキシ樹脂から構成することができる。このような接着剤は、例えば、変性シリコン樹脂製の接着剤が使用される場合に比べて、容器110A内に収容される電解液による接着性能の劣化を抑制することができる点で優れる。なお、第1ボディ30と第2ボディ40との結合に関しては、任意の手段を採用することができる。このため、本実施形態において、雄ねじ32Xと雌ねじ40Aとの噛み合いに関する構造、および、接着剤の少なくとも一方を省略してもよい。
【0041】
以上のとおり、本実施形態では、取付部31、連結部32、および、第2ボディ40の外形は、中心軸C1の延びる方向に沿って視たときに、それぞれの部分に割り当てられている役割に応じて、いずれも異なる形状を有する。
【0042】
第2ボディ40には、弁構造体10のガス抜き弁としての機能を発揮するための主な構造を有する部分が保持される。本実施形態では、逆止弁50は、第2ボディ40の内部の第2通気路LY内に収容される弁機構としてのばね51、弁体52、および、弁座53を有する。ばね51、弁体52、および、弁座53は、第2通気路LY内において出口20Bから入口20Aに向かって、この順に配置されている。なお、本実施形態では、
図7Aおよび
図8に示されるように、第1ボディ30と弁座53とは、別部品として構成されているが、これらを一体的に構成してもよい。
【0043】
弁座53は、ばね51により外側から付勢される弁体52を受け取り、このとき、弁構造体10の閉状態が形成される。ばね51は、例えば、コイルばねであるが、これに限定されず、例えば、板ばねとすることもできる。本実施形態では、弁座53は、中心軸C1を中心軸として延びる円筒状であり、前後方向の前側の端面を規定する天面53A、および、後ろ側の端面を規定する底面53Bを有する。弁体52は、例えば、ボール型である。弁体52の表面の一部は、弁座53の天面53Aで受け取られ、逆止弁50が閉状態の場合に天面53Aに接触する。ばね51は、中心軸C1を中心軸として螺旋状に延びる。ばね51は、弁体52と連結される。
【0044】
弁座53と、第1ボディ30とは、例えば、接着剤により接着することができる。接着剤の材料は、特に限定されないが、弁座53をフッ素ゴム製とし、第1ボディ30をアルミニウム等の金属製とする場合の好ましい例としては、第1ボディ30と第2ボディ40とを結合する際に例示した接着剤と同様である。また、弁構造体10の開封防止の観点から、その他の様々な箇所にも、適宜接着剤を塗布することができる。例えば、第2ボディ40の後ろ側の端面41と、連結部32の前側の端面32Eとの間に接着剤を塗布することができる。
【0045】
取付部31は、容器110Aの内部空間S1において発生したガスが第1通気路LXに流入するように、周縁シール部150に固定される。すなわち、取付部31の内部の第1通気路LXは、容器110Aの内部空間S1に連通している。よって、内部空間S1の圧力、すなわち、逆止弁50の一次側の空間の圧力が所定の圧力に達すると、内部空間S1から流れ出し、第1通気路LXおよび第3通気路LZを通過したガスが、弁体52を出口20B側に押圧する。弁体52が押圧され、弁体52が弁座53から離れると、ばね51が変形して、弁体52が出口20B側へ移動し、逆止弁50の開状態が形成される。この開状態において、内部空間S1に発生したガスは、弁体52と弁座53との間に形成された隙間を介して、出口20Bに向かって流れ出し、外部空間へ排出される。このようにして、内部空間S1のガスが通路LAを介して排出されると、弁体52を出口20B側に押圧する内部空間S1側の圧力が弱まり、これよりもばね51が弁体52を入口20A側に付勢する力が大きくなる。その結果、ばね51の形状が復元し、再度、逆止弁50の閉状態が形成される。
【0046】
逆止弁50は、閉状態において、外部空間から容器110Aの内部空間S1への大気の進入を防止することができる。逆止弁50が一度開いた後は、内部空間S1が大気圧と同等以上の比較的高圧の状態に保たれるため、内部空間S1への大気の進入は特に起こり難い。弁構造体10は、以上のような逆止弁50により、内部空間S1への大気の進入を効果的に防止し、これに含まれる水分等による蓄電デバイス素子120の劣化を防止することができる。また、逆止弁50の開状態においても、内部空間S1への大気の進入は生じ難い。開状態においては、逆止弁50の一次側の圧力がその二次側の圧力よりも高い、または、同等の状態が維持されるためである。
【0047】
図7Aおよび
図8に示される液体70は、収容空間S2に配置される。
図7Aおよび
図8に示されるハッチングの範囲は、液体70が存在する範囲の一例である。
【0048】
液体70は、内部空間S1(
図1参照)に大気が侵入することを抑制するために、弁体52および弁座53と接触するように配置される。液体70の種類は、任意に選択可能である。本実施形態では、液体70は、流動パラフィンである。液体70としては、シリコンオイル等の液油、または、イオン液体等を用いることもできる。好ましい例では、液体70は、蓄電デバイス100の通常の使用環境下において、液体で存在する性質を有することが好ましい。このような観点から、液体70の融点は、10℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがさらに好ましい。同様に、液体70の沸点は、150℃以上であることが好ましい。
【0049】
液体70の粘度は、任意に選択可能である。好ましい例では、液体の粘度は、ガスを好適に透過させる観点と、ハンドリングの観点とに基づいて決められる。液体70の粘度の最大値の好ましい一例は、2000mPa・sである。液体70の粘度が2000mPa・s以下である場合、ガスを好適に透過させることができる。液体70の粘度の最大値のさらに好ましい一例は、500mPa・sである。液体70の粘度の最大値のさらに好ましい一例は、100mPa・sである。液体70の粘度の最小値の好ましい一例は、0.1mPa・sである。液体70の粘度が0.1mPa・s以上である場合、好適にハンドリングできる。液体70の粘度の最小値のさらに好ましい一例は、0.5mPa・sである。液体70の粘度の最小値のさらに好ましい一例は、1.0mPa・sである。液体70の粘度の好ましい範囲の一例は、0.1mPa・s~2000mPasである。液体70の粘度のさらに好ましい範囲の一例は、0.5mPa・s~500mPasである。液体70の粘度のさらに好ましい範囲の一例は、1.0mPa・s~100mPasである。なお、液体70の粘度とは、10℃~40℃の測定範囲における粘度である。また、液体70が原油または石油の場合、液体70の粘度は、「JIS K2283 原油及び石油製品-動粘度試験方法・及び粘度指数算出方法」に基づいて測定した動粘度から密度をかけることで算出される粘度である。液体70が原油および石油以外の場合、液体70の粘度は、「JIS Z8803 液体の粘度測定方法」に基づいて測定される粘度である。
【0050】
液体70の具体的な配置態様は、液体70が弁体52および弁座53と接触する態様であれば、任意に選択可能である。本実施形態では、液体70は、収容空間S2のうちの所定範囲に充填される。液体70は、例えば、第1ボディ30と第2ボディ40とを組み付けた後に、入口20Aおよび出口20Bの少なくとも一方から充填される。本実施形態によれば、逆止弁50の開状態において、内部空間S1(
図1参照)に発生したガスは、弁体52と弁座53との間に形成された隙間から流れ出す。流れ出したガスは、液体70を泡状になって通過し、液体70を通過した後、出口20Bに向かって流れ出す。一方、大気、および、これに含まれる水分等が出口20Bを介して弁構造体10内に侵入した場合、その水分等が逆止弁50よりも容器110Aの内部側まで侵入することが、液体70によって妨げられる。このため、容器110A内に大気、および、これに含まれる水分等が侵入することが抑制される。なお、
図11に示されるように、液体70は、逆止弁50の閉状態において、弁体52の表面のうちの弁座53と接触する部分、および、弁座53の表面のうちの弁体52と接触する部分に少なくとも付着していればよい。このような液体70の配置態様は、例えば、
図7Aに示される状態において、入口20Aからエアーを注入して液体70を吹き飛ばすことによって形成することができる。
図11に示される液体70の配置態様では、液体70は、逆止弁50の閉状態において、弁体52の表面のうちの弁座53と接触する部分、および、弁座53の表面のうちの弁体52と接触する部分に膜を形成する。逆止弁50の開状態において、内部空間S1に発生したガスは、液体70の膜を泡状になって通過する、または、液体70の膜を突き破り、出口20Bに向かって流れ出す。ガスが液体70の膜を突き破った場合、逆止弁50が開状態から閉状態に移行することによって、弁体52と弁座53とが接触し、液体70の膜が再生される。
【0051】
弁構造体10の各部を構成する材料は、特に限定されない。好ましい例を挙げると、弁体52をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂製とし、弁座53をフッ化ビニリデン系(FKM)等のフッ素ゴム製とすることができる。さらに、ばね51をステンレス等の金属製とし、取付部31、第2ボディ40および連結部32を、アルミニウム合金、ステンレス、鋼板、チタン等の金属製とすることができる。また、弁体52をステンレス等の金属製、または、FKM等のフッ素ゴム製とすることもできる。なお、弁体52をFKM等のフッ素ゴム製とする場合、弁座53は、PTFE等のフッ素樹脂製であることが好ましい。
【0052】
図1等に示される熱融着フィルム60は、ヒートシールによって、弁構造体10、および、容器110Aの包装材料111、112の両方に接着するように構成されている。熱融着フィルム60は、収容空間S2(
図7A参照)に逆止弁50が収容しつつ、第1ボディ30および第2ボディ40が組み付けられる前に、第1ボディ30のうちの取付部31に融着される。熱融着フィルム60は、取付部31の表面の大部分を覆うように取付部31に融着される。熱融着フィルム60としては、公知の種々の接着性フィルムを採用することができる。熱融着フィルム60は、例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa)の単層フィルムであってもよいし、PPa、ポリエチレンナフタレート(PEN)、および、PPaの複数層の積層フィルムであってもよい。また、PPa、ポリプロピレン(PP)、PPaの複数層の積層フィルムが適用されてもよい。また、上記のPPa樹脂に替えて、アイオノマー樹脂、変性ポリエチレン、EVA等の金属接着可能な樹脂も適用可能である。本実施形態において、熱融着フィルム60は、PPa/ポリエステル繊維/PPaからなる、芯材が含まれている三層構造の積層フィルムを採用している。芯材としては、上記したポリエステル繊維以外にも公知の種々の材料を採用することができる。例えば、芯材は、PEN、ポリエチレンテレフタレート、または、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルムであってもよいし、ポリアミド繊維であってもよいし、カーボン繊維であってもよい。
【0053】
また、取付部31の表面には、特に耐電解液性の観点から、腐食防止剤のコーティングを施し、腐食防止被膜層を形成することが好ましい。なお、これは、特に取付部31をアルミニウム等の金属製とする場合に当てはまるが、取付部31をその他の材料から構成する場合にも当てはまり得る。このようなコーティングは、取付部31を腐食防止剤の液体中に浸漬した後に焼き付け処理を実施することにより施すことができる。これにより、取付部31の外側表面、および、第1通気路LXに面する内側表面に腐食防止被膜層を形成することができ、蓄電デバイス素子120から発生したガスによる外側表面の腐食、および、第1通気路LXを通り抜けるガスによる内側表面の腐食を防止することができる。また、特に耐電解液性の観点から、取付部31だけでなく、連結部32、第2ボディ40、および、逆止弁50の表面にも、同様のコーティングを施し、腐食防止被膜層を形成してもよい。連結部32、第2ボディ40、および、逆止弁50の表面に腐食防止剤のコーティングを施す場合、特に、連結部32の雄ねじ32X、第2ボディ40の雌ねじ40A、弁体52、第2ボディ40と弁座53とが接触する箇所を含む所定範囲に腐食防止被膜層を形成することが好ましい。ただし、電解液による取付部31と包装材料111、112との接着性能の劣化を抑制する観点からは、このようなコーティングは、特に取付部31に施すことが有意義である。腐食防止剤の材料は、特に限定されないが、耐酸性のものが好ましく、腐食防止被膜層は、クロム酸クロメート処理またはリン酸クロメート処理等により形成することができる。
【0054】
シール部材80は、出口20Bを閉じるように第2ボディ40に貼り付けられる。このため、例えば、弁構造体10の輸送時に出口20Bを介して液体70が漏れ出すこと、および、出口20Bを介して弁構造体10の内部に異物が混入することが抑制される。弁構造体10が容器110Aに取り付けられた場合、シール部材80は、第2ボディ40から剥離される。
図7Bに示されるシール部材80は、例えば、出口20Bを閉じる表面層81、および、表面層81に積層される基材層82を含む。なお、シール部材80は、アクリル樹脂を含む粘着剤であってもよく、表面層81のみの単層構造であってもよい。
【0055】
表面層81を構成する材料は、例えば、ポリオレフィンおよびエラストマーの少なくとも一方を含むことが好ましい。表面層81の表面にポリオレフィンが存在する場合、弁構造体10の使用時にシール部材80を第2ボディ40から容易に剥離できる。ポリオレフィンは、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンである。表面層81を構成する材料にエラストマーが含まれる場合、表面層81が粘着性を有するため、出口20Bに対するシール部材80の位置決めを容易に実施できる。エラストマーは、例えば、熱可塑性エラストマーである。
【0056】
基材層82は、例えば、表面層81に積層される第1基材層82A、および、第1基材層82Aに積層される第2基材層82Bを含む。第1基材層82Aを構成する材料は、例えば、水蒸気バリア性および気密性の向上の観点から、アルミニウム合金等の金属を含むことが好ましい。第1基材層82Aを構成する材料に金属が含まれる場合、シール部材80が全体として張りを有するため、第2ボディ40から容易に剥離できる。第2基材層82Bは、例えば、接着剤を介して第1基材層82Aに積層される。第2基材層82Bを構成する材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレートを含む。
【0057】
蓋材90は、例えば、10-2μm~100μmのポアー直径(pore diameter)を有し、蓄電デバイス素子120に含まれる有機溶媒、および、液体70を透過させず、ガスのみを選択的に透過するPTFE(PolyTetraFluoroEthylene)メンブレンによって構成される。PTFEメンブレンは柔らかい材質のため、強度が不足する場合には、蓋材90として、ポリプロピレンおよびポリエステル等のメッシュ、または、不織布とPTFEメンブレンとを一体成型して補強したものを用いてもよい。また、蓋材90を構成する材料は、例えば、金属製のメッシュ、合成樹脂製のメッシュ、または、不織布であってもよい。蓋材90は、逆止弁50の一次側に配置される第1蓋材91、および、逆止弁50の二次側に配置される第2蓋材92を含む。
【0058】
第1蓋材91は、蓄電デバイス素子120(
図2参照)に含まれる有機溶媒が通路LAを通過して逆止弁50を開弁して、弁本体20の外部に流出することを抑制する。弁本体20において第1蓋材91が配置される位置は、逆止弁50の一次側であれば任意に選択可能である。本実施形態では、第1蓋材91は、通路LAにおいて、弁座53の底面53Bの近傍に配置される。第1蓋材91は、通路LAにおいて、入口20Aの近傍に配置されてもよく、弁座53の底面53Bと入口20Aとの間の任意の箇所に配置されてもよい。
【0059】
第2蓋材92は、例えば、弁構造体10の使用時等、シール部材80が剥離されている状態において、液体70が出口20Bを介して漏れ出すことを抑制する。第2蓋材92は、例えば、出口20Bの近傍に配置される。第2蓋材92は、液体70の液面と出口20Bとの間の任意の位置に配置されてもよい。
【0060】
[2.第2実施形態]
第2実施形態においては、第1実施形態と比較して、弁構造体10の構成が異なる。他の構成は、基本的に第1実施形態と同様である。以下では、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0061】
図9は、第2実施形態の弁構造体200の正面図である。
図10は、
図9のD10-D10線に沿う断面図である。本実施形態の第2ボディ40は、複数の逆止弁50を保持するように構成される。本実施形態では、第2ボディ40は、2つの逆止弁50を保持する。以下では、2つの逆止弁50を区別するため、入口20Aに近い位置に配置される逆止弁50を逆止弁210と称し、出口20Bに近い位置に配置される逆止弁50を逆止弁220と称する場合がある。
【0062】
逆止弁210、220は、通路LAの延びる方向に沿って配列されており、逆止弁220は、逆止弁210の二次側(外部側)に配置される。通路LAは、逆止弁210、220が開弁することにより、内部空間S1(
図1参照)において発生したガスを容器110Aの外部へ排出することができる。なお、逆止弁210、220は、同時に開くとは限らず、しばしば、異なるタイミングで開状態となる。
【0063】
逆止弁210、220は、各々、閉状態において、通路LAの延びる方向に沿って異なる位置において通路LAを閉塞するように配置される。本実施形態では、逆止弁210、220に含まれるボディを構成する部分(弁箱)は、第2ボディ40によって構成され、逆止弁210、220に含まれる弁機構は、第2ボディ40の内部に配置される。通路LAに含まれる空間であって、逆止弁210の二次側(外部側)かつ逆止弁220の一次側(内部側)に位置する空間を、弁間空間S3と称する。逆止弁210は、内部空間S1において発生したガスに起因して内部空間S1の圧力が上昇した場合に、開状態となり、ガスをその一次側からその二次側へ、すなわち、弁間空間S3へ通過させる。逆止弁210が開状態となり、内部空間S1で発生したガスが弁間空間S3に流入すると、弁間空間S3の圧力が上昇する。逆止弁220は、このようにして弁間空間S3の圧力が上昇した場合に開状態となり、ガスをその一次側からその二次側へ、すなわち、外部空間へ通過させる。弁構造体200は、逆止弁210、220のいずれかの閉状態において、内部空間S1を外部空間から密閉する。
【0064】
内部空間S1の圧力、すなわち、逆止弁210の一次側の空間の圧力が所定の圧力に達すると、内部空間S1から流れ出し、第1通気路LXおよび第3通気路LZを通過したガスが、弁体52を逆止弁220側に押圧する。弁体52が押圧され、弁座53から離れると、ばね51が変形して、弁体52が逆止弁220側へ移動し、逆止弁210の開状態が形成される。この開状態において、内部空間S1に発生したガスは、弁体52と弁座53との間に形成された隙間を介して、弁間空間S3に流れ出す。このようにして、内部空間S1のガスが逆止弁210の二次側に排出されると、弁体52を逆止弁220側に押圧する内部空間S1側の圧力が弱まり、これよりもばね51が弁体52を入口20A側に付勢する力が大きくなる。その結果、ばね51の形状が復元し、再度、逆止弁210の閉状態が形成される。
【0065】
逆止弁210が開弁し、第2通気路LYに含まれる弁間空間S3の圧力、すなわち、逆止弁220の一次側の空間の圧力が所定の圧力に達すると、弁間空間S3のガスが、弁体52を出口20B側に押圧する。弁体52が押圧され、弁座53から離れると、ばね51が変形して、弁体52が出口20B側へ移動し、逆止弁220の開状態が形成される。この開状態において、弁間空間S3に収容されていたガスは、弁体52と弁座53との間に形成された隙間を介して出口20Bに向かって流れ出し、出口20Bを介して外部空間へ排出される。このようにして、弁間空間S3のガスが通路LAを介して排出されると、弁体52を出口20B側に押圧する弁間空間S3側の圧力が弱まり、これよりもばね51が弁体52を逆止弁210側に付勢する力が大きくなる。その結果、ばね51の形状が復元し、再度、逆止弁220の閉状態が形成される。
【0066】
逆止弁210、220は、各々、閉状態において、外部空間から容器110Aの内部空間S1への大気の進入を防止することができる。なお、外部空間から内部空間S1内へ大気が進入するためには、複数の逆止弁210、220を逆流しなければならないため、このような大気の進入は起こり難い。また、逆止弁210が一度開いた後は、弁間空間S3が大気圧と同等以上の比較的高圧の状態に保たれるため、大気は外部空間から弁間空間S3へ進入することすら難しい。従って、弁構造体200は、通路LAに沿って多段階に配置される逆止弁210、220により、内部空間S1への大気の進入を効果的に防止し、これに含まれる水分等による蓄電デバイス素子120の劣化を防止することができる。
【0067】
逆止弁210、220の開状態においても、内部空間S1への大気の進入は生じ難い。開状態においては、逆止弁210、220の各々について、その一次側の圧力がその二次側の圧力よりも高いまたは同等の状態が維持されるためである。
【0068】
逆止弁210、220の開弁圧は適宜設定することができ、逆止弁210の開弁圧は、(i)逆止弁220の開弁圧と等しい、(ii)逆止弁220の開弁圧よりも低い、または、(iii)逆止弁220の開弁圧よりも高い、のいずれでもよいが、以下の観点からは、(i)および(ii)が好ましい。(ii)の場合、内部空間S1の圧力をより高く維持することができるため、内部空間S1と外部空間との圧力差により、外部空間の大気が内部空間S1に進入することがより効果的に防止される。(i)の場合、内部空間S1の圧力を比較的高く維持しつつ、逆止弁210、220の製造が容易になり、例えば、逆止弁210、220の取り違いが生じないという利点がある。例えば、逆止弁210、220の開弁圧を、ともに0.05MPaとすることができる。なお、弁構造体200の全体としての開弁圧は、逆止弁210、220の開弁圧の合計となるため、この例の場合、0.1MPaとなる。開弁圧とは、一次側の圧力と二次側の圧力との差圧である。
【0069】
弁構造体200を容器110Aに取り付ける前、または、取り付けた直後において、大気圧よりも高圧になるように、弁間空間S3にガスを充填しておくことが好ましい。この場合、蓄電デバイス100が製造された直後から、すなわち、逆止弁210が一度も開弁する前から、弁間空間S3が大気圧よりも高圧の状態に保たれる。そのため、外部空間から弁間空間S3への、ひいては、内部空間S1への大気の進入がより効果的に防止される。なお、弁構造体200の製造後に、逆止弁210の一次側の圧力を高圧にして、逆止弁210、220の開弁検査を行う場合、同検査が、弁間空間S3へのガスの充填の工程を兼ねることができる。また、弁間空間S3に充填されるガスは、アルゴン等の不活性ガスであることが好ましい。逆止弁210、220の開弁検査により、弁間空間S3にガスを充填する場合には、不活性ガスを使用して開弁検査を行えばよい。この場合、内部空間S1へ僅かに進入するガスにより、蓄電デバイス素子120が劣化することまでもが防止される。
【0070】
液体70は、内部空間S1(
図1参照)に大気が侵入することを抑制するために、逆止弁210の弁体52および弁座53と接触するように配置される。液体70の具体的な配置態様は、液体70が弁体52および弁座53と接触する態様であれば、任意に選択可能である。本実施形態では、液体70は、弁間空間S3の所定範囲まで充填される。液体70は、例えば、逆止弁210と逆止弁220とを組み付ける前に充填してもよく、逆止弁210と逆止弁220とを組み付けた後に、入口20Aから充填してもよい。また、液体70は、逆止弁220のうちのばね51および弁体52を配置する前に、出口20Bから充填してもよい。なお、液体70は、逆止弁210の閉状態において、弁体52の表面のうちの弁座53と接触する部分、および、弁座53の表面のうちの弁体52と接触する部分に少なくとも付着していればよい。このような液体70の配置態様は、例えば、
図10に示される状態において、入口20Aからエアーを注入して液体70を吹き飛ばすことによって形成することができる。
【0071】
本実施形態によれば、逆止弁50の開状態において、内部空間S1(
図1参照)に発生したガスは、弁体52と弁座53との間に形成された隙間から流れ出す。流れ出したガスは、液体70を泡状になって通過し、液体70を通過した後、出口20Bに向かって流れ出す。一方、大気、および、これに含まれる水分等が出口20Bを介して弁構造体200内に侵入した場合、その水分等が逆止弁210よりも容器110Aの内部側まで侵入することが、液体70によって妨げられる。このため、容器110A内に大気、および、これに含まれる水分等が侵入することが抑制される。
【0072】
<3.変形例>
上記各実施形態は本発明に関する蓄電デバイス用弁構造体、および、蓄電デバイスが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関する蓄電デバイス用弁構造体、および、蓄電デバイスは、各実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、各実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、各実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に各実施形態の変形例の幾つかの例を示す。なお、以下の変形例の要旨は、第1実施形態に加えて、第2実施形態にも同様に適用可能である。
【0073】
<3-1>
逆止弁50の構成は、各実施形態で示したものに限定されず、任意に変更可能である。例えば、逆止弁50は、上述したようなボールスプリング型ではなく、ポペット型、ダックビル型、アンブレラ型、ダイヤフラム型等、繰り返しのガス抜きが可能な別の形態の逆止弁を構成することができる。
【0074】
<3-2>
第2実施形態において、逆止弁210または逆止弁220に代えて、1回限りのガス抜きが可能な破壊弁、すなわち、容器110Aの内部において発生したガスに起因して容器110Aの内圧が上昇した場合に裂開するように構成される破壊弁を用いてもよい。この変形例では、液体70を入口20Aから充填する点を考慮した場合、逆止弁220に代えて破壊弁を用いることが好ましい。
【0075】
<3-3>
第2実施形態において、
図12に示されるように、液体70を逆止弁220の弁体52および弁座53と接触するように配置してもよい。液体70の具体的な配置態様は、液体70が逆止弁220の弁体52および弁座53と接触する態様であれば、任意に選択可能である。この変形例では、液体70は、収容空間S2の所定範囲に充填される。また、この変形例では、逆止弁210の弁体52および弁座53と接触するように配置される液体70を省略することもできる。
【0076】
<3-4>
図10に示される第2実施形態、および、
図12に示される第2実施形態の変形例において、逆止弁220の一次側、かつ、逆止弁210の弁体52および弁座53と接触する液体70の液面よりも上方に第1蓋材91を配置してもよい。この変形例によれば、逆止弁210の弁体52および弁座53と接触する液体70、および、蓄電デバイス素子120(
図2参照)に含まれる有機溶媒によって、逆止弁220が開弁することが抑制される。
【0077】
<3-5>
第2実施形態では、弁構造体200は、2つの逆止弁210、220を有していたが、通路LAの延びる方向に沿って配列される3つ以上の逆止弁を有していてもよい。これらの3つ以上の逆止弁は、閉状態において、通路LA内の異なる位置において通路LAを閉塞する。
【0078】
<3-6>
弁体52の構成は、各実施形態で示したものに限定されず、任意に変更可能である。
図13は、変形例の弁体252を有する弁構造体10の断面図である。弁体252は、逆T字状であり、円盤状の部位252A、および、円盤状の部位252Aの前後方向の前面側の端面252AXに連続し、端面252AXの中央部から前方へ延びる、円柱状の軸部252Bを有する。円盤状の部位252Aと、軸部252Bとは、いずれも中心軸C1を中心軸として延びる。円盤状の部位252Aの前後方向の後ろ側の端面である底面252AYは、弁座253の天面253Aで受け取られ、逆止弁250の閉状態で天面253Aに接触する。弁体252の軸部252Bは、ばね51の内側の空間に挿入され、これにより、弁体252とばね51とが連結される。
【0079】
<3-7>
周縁シール部150の構成は、各実施形態で示したものに限定されず、任意に変更可能である。
図14に示されるように、周縁シール部150は、弁構造体10に接近するにつれてシール幅が狭くなる傾斜シール部151、152を有していてもよい。
図15に示されるように、周縁シール部150は、弁構造体10と包装材料111、112とがシールされている弁シール部253に接近するように傾斜する傾斜シール部251、252を有していてもよい。
図16に示されるように、周縁シール部150は、弁構造体10と包装材料111、112とがシールされている弁シール部353に接近するように傾斜する階段状の傾斜シール部351、352を有していてもよい。
図17に示されるように、周縁シール部150は、弁構造体10に接近するように傾斜し、シール幅が実質的に一定である傾斜シール部451、452を有していてもよい。
図14~
図17に示される変形例によれば、内部空間S1で発生したガスが弁構造体10に向けて誘導されるため、弁構造体10を介してガスを好適に排出できる。
【0080】
<3-8>
容器110Aは、包装材料111と包装材料112とがヒートシールされることによって構成されたが、容器110Aを1枚の包装材料を折り畳み、周縁部をヒートシールすることによって構成してもよい。
【0081】
<3-9>
容器110Aは、上記のような包装材料111、112から構成されてもよいが、その他、例えば、金属缶であってもよい。
【符号の説明】
【0082】
10、200 :蓄電デバイス用弁構造体
20B :出口
50 :逆止弁
52、252 :弁体
53 :弁座
70 :液体
80 :シール部材
90 :蓋材
100 :蓄電デバイス
110A :容器
120 :蓄電デバイス素子
LA :通路